説明

ペースト塗布装置及びペースト塗布方法

【課題】閉環状のペーストパターンにおける接続部分の形状を安定させる。
【解決手段】ペースト塗布装置1は、塗布対象物Kの表面に向けてペースト材を吐出する吐出部4と、塗布対象物Kと吐出部4とを塗布対象物Kの表面に沿って相対移動させる駆動部3と、塗布対象物Kの表面にペースト材を閉環状に塗布するように吐出部4及び駆動部3を制御する制御装置7と、吐出部4により吐出されて塗布対象物Kの表面に塗布されたペースト材の塗布始点を検出する検出部6とを備え、制御装置7は、ペースト材の吐出中に検出部6により検出された塗布始点に応じて、ペースト材の塗布終了動作開始点を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト塗布装置及びペースト塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平面表示装置(FPD)、例えば、液晶表示装置(LCD)やプラズマ表示装置(PDP)、有機発光ダイオード(OLED)などの製造工程には、2枚のガラス基板を貼り合わせる貼り合わせ工程が存在している。この貼り合わせ工程では、ガラス基板の貼り合わせ前に、例えば、UV硬化性樹脂や熱硬化性樹脂、ガラスフリットなどのペースト材がディスペンサによりガラス基板上に線引き塗布され、そのガラス基板上に矩形のペーストパターンが形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−261701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ペースト特性(例えば、粘度や材料組成、粒径など)やディスペンサのシリンジ内のペースト量、さらに、ノズル内のペースト位置の違いなどにより、ガラス基板に対するペーストの塗布始点(塗布開始位置)が所定のパターンを形成する度にずれることがあり、しかも、そのずれ量は一定とならない。
【0005】
このような塗布始点の位置ずれに起因して、線の途切れや線のくびれ、線の太りなどが発生し、閉環状(閉ループ状)のペーストパターンにおける接続部分(つなぎ部)の形状が不安定になってしまう。なお、線のくびれや線の太りは、塗布始点の位置ずれによって塗布始点と塗布終点におけるペースト材の重ね合わせ長さのばらつきが生じ、ペースト材の塗布量(塗布断面形状)が変動するために発生する。
【0006】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、閉環状のペーストパターンにおける接続部分の形状を安定させることができるペースト塗布装置及びペースト塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態に係る第1の特徴は、ペースト塗布装置において、塗布対象物の表面に向けてペースト材を吐出する吐出部と、塗布対象物と吐出部とを塗布対象物の表面に沿って相対移動させる駆動部と、塗布対象物の表面にペースト材を閉環状に塗布するように吐出部及び駆動部を制御する制御装置と、吐出部により吐出されて塗布対象物の表面に塗布されたペースト材の塗布始点を検出する検出部とを備え、制御装置は、ペースト材の吐出中に検出部により検出された塗布始点に応じて、ペースト材の塗布終了動作開始点を設定することである。
【0008】
本発明の実施の形態に係る第2の特徴は、ペースト塗布方法において、塗布対象物と塗布対象物の表面に向けてペースト材を吐出する吐出部とを塗布対象物の表面に沿って相対移動させ、塗布対象物の表面にペースト材を閉環状に塗布する塗布工程を有し、塗布工程は、吐出部により吐出されて塗布対象物の表面に塗布されたペースト材の塗布始点を検出する工程と、ペースト材の吐出中に検出した塗布始点に応じて、ペースト材の塗布終了動作開始点を設定する工程とを有していることである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、閉環状のペーストパターンにおける接続部分の形状を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の一形態に係るペースト塗布装置の概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】塗布始点のずれを説明するための説明図である。
【図3】塗布量による塗布始点形状の違いを説明するための説明図である。
【図4】塗布始点のずれによるつなぎ形状の違いを説明するための説明図である。
【図5】図1に示すペースト塗布装置が行う塗布終了動作(つなぎ動作)を説明するための説明図である。
【図6】図5の塗布終了動作によるつなぎ形状の一致を説明するための説明図である。
【図7】図5の塗布終了動作におけるパラメータ制御を説明するための説明図である。
【図8】図1に示すペースト塗布装置が行う塗布動作を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るペースト塗布装置1は、塗布対象物としての基板Kが載置されるステージ2と、そのステージ2を保持してX軸方向及びY軸方向に移動させるステージ駆動部3と、ステージ2上の基板Kに向けてペースト材を吐出する吐出ヘッド4と、その吐出ヘッド4をZ軸方向に移動させるヘッド駆動部5と、ステージ2上の基板Kに塗布されたペースト材の塗布始点を検出する検出センサ6と、各部を制御する制御装置7とを備えている。
【0013】
ステージ2は、ガラス基板などの基板Kが載置されるテーブルであり、ステージ駆動部3上に移動可能に設けられている。このステージ2の載置面には、基板Kが静電チャックや吸着チャックなどの機構により保持されるが、これに限るものではなく、例えば、自重により載置されるだけでもよい。
【0014】
ステージ駆動部3は、X軸移動機構3a及びY軸移動機構3bを有しており、ステージ2をX軸方向及びY軸方向に案内して移動させる。このステージ駆動部3は制御装置7に電気的に接続されており、その駆動が制御装置7により制御される。X軸移動機構3a及びY軸移動機構3bとしては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の機構などが用いられる。
【0015】
吐出ヘッド4は、ペースト材を収容する容器であるシリンジ4aと、そのシリンジ4aに収容されたペースト材を吐出するためのノズル4bとを有している。この吐出ヘッド4は、気体供給チューブなどの配管を介してシリンジ4a内に供給される気体により、そのシリンジ4a内のペースト材をノズル4bの先端から吐出する。この吐出ヘッド4が、基板Kの表面に向けてペースト材を吐出する吐出部として機能する。
【0016】
ここで、ペースト吐出機構としては、ペースト材に圧力を加えてノズル4bの先端から押し出す空圧方式の機構が用いられているが、この他にも、例えば、スクリューねじを回転させて送り出す機械方式の機構などが用いられても良く、用いる機構はペースト材の特性に合わせて選択される。このような機構が制御装置7に電気的に接続されており、その駆動が制御装置7により制御される。なお、ペースト材としては、熱硬化性樹脂やUV硬化性樹脂、ガラスフリットなどが製品に合わせて選択されて用いられる。
【0017】
ヘッド駆動部5は、吐出ヘッド4を保持する保持部材5a及びその保持部材5aをZ軸方向に移動させるZ軸移動機構5bを有しており、吐出ヘッド4を保持部材5aと共にZ軸方向に案内して移動させる。このヘッド駆動部5は、コラムなどの門型の支柱8により支持されている。Z軸移動機構5bは制御装置7に電気的に接続されており、その駆動が制御装置7により制御される。Z軸移動機構5bとしては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の機構やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の機構などが用いられる。
【0018】
検出センサ6は、ステージ2上の基板Kに塗布されたペースト材の塗布始点を検出する検出部である。この検出センサ6は、吐出ヘッド4の移動と共に移動可能にヘッド駆動部5の保持部材5aに設けられており、制御装置7に電気的に接続されている。検出センサ6としては、例えば、光学式ファイバセンサや色判別センサ、カメラなどが用いられる。なお、ガラス基板などの基板K上のペースト材の有無を検出することが可能であるセンサが用いられれば良く、ペースト材の特性にあわせて最適な検出を行うことができるセンサが選定される。
【0019】
制御装置7は、ステージ駆動部3を制御するステージ制御部7aと、吐出ヘッド4を制御する塗布制御部7bと、ヘッド駆動部5を制御するヘッド制御部7cとを備えている。また、制御装置7は、各種プログラムや各種情報などを記憶する記憶部、さらに、操作者からの入力操作を受け付ける操作部(いずれも図示せず)などを備えている。
【0020】
この制御装置7は、記憶部に記憶された各種プログラムや各種情報などに基づいて各部の動作を制御する。なお、記憶部には、描画パターン(塗布パターン)や塗布条件などを含む塗布情報が記憶されている。塗布条件は、塗布速度や塗布圧力(吐出圧力)、ノズルギャップなどの設定情報である。このような塗布情報は、操作部に対する入力操作やデータ通信、あるいは携帯可能な記憶装置の媒介により記憶部に予め記憶されている。記憶部としては、メモリやハードディスクドライブ(HDD)などが用いられる。
【0021】
ペースト塗布装置1は、基板K上にペースト材を塗布する場合、ヘッド駆動部5により吐出ヘッド4の位置をプログラムに従って所定の位置に移動させた状態で、ステージ駆動部3により基板Kを搭載したステージ2を描画パターンに合わせて移動させながら、吐出ヘッド4によりペースト材を塗布する。
【0022】
塗布プログラムでは、基板K上に一つ以上の多数の描画パターンの条件を設定することができる。描画パターンは、パーツと呼ばれる直線や曲線を任意に組み合わせて作成されており、それぞれのパーツに対して制御パラメータとして、塗布速度、塗布圧力及びノズルギャップを設定することができる構成になっている。このパラメータは吐出ヘッド4が空圧方式である場合の一例であるが、吐出ヘッド4が機械式である場合には、ペースト材を送り出すスクリューねじの回転速度や回転量をパラメータとする。
【0023】
ペースト材を描画する場合には、制御装置7からステージ制御部7aやヘッド制御部7cに描画パターンに従った指令を出し、ステージ駆動部3及びヘッド駆動部5を制御しながら、吐出ヘッド4をプログラム設定の塗布開始位置に移動させた後、塗布制御部7bから吐出ヘッド4に塗布開始信号を送信し、塗布を開始する。なお、プログラム設定の塗布開始位置は、プログラムによりあらかじめ設定されている位置である。
【0024】
ここで、図2に示すように、プログラム設定の塗布開始位置Aと実際の塗布始点aはずれることがあり、さらに、そのずれ量も一定ではない。これは、ペースト材の特性(粘度や材料組成、粒径など)、さらに、シリンジ4a内のペースト量、直前の塗布終了状態の違いによるノズル4b内のペースト位置の違いなど、複数の要因が重なり合って生じる現象であり、ずれ量を制御することは難しい。
【0025】
また、パターン塗布毎に塗布始点aを合わせるため、あらかじめノズル4bからペースト材を出しぎみにして、その状態で塗布を開始すると、図3に示すように、塗布開始位置Aのペースト材の量が多くなって玉状となり、塗布したペースト材の断面形状を一定に保つことができないことが実験によりわかっている。断面形状を一定に保った状態でパターン塗布毎に塗布始点aを揃えることは前述のパラメータだけでは非常に困難である。
【0026】
また、通常の塗布プログラムでは、塗布中以外であって例えば生産前などに、描画パターンの塗布開始位置Aと塗布終了動作開始位置Bを指定することが可能であり、ペースト材を重ね合わせることでペースト材をつなぎ合わせることができる。しかしながら、図4に示すように、プログラム設定の塗布開始位置Aと実際の塗布始点aとがずれた状態で描画されたパターン(図4中のNGのパターン参照)に対しても、塗布終了動作開始位置Bは常に同じとなる。このため、塗布始点aの位置ずれ量の違いにより、つなぎ部(接続部分)にくびれ(図4中の一番上参照)や途切れ、ペースト材過多による太り(図4中の一番下参照)などの不良が発生してしまう。
【0027】
そこで、図5に示すように、本発明の実施の形態では、検出センサ6を用いて、塗布終了直前に検出センサ6により実際の塗布始点aを検出し、あらかじめ測定してある検出センサ6とノズル4bとの離間距離(平面上の離間距離)L1及び塗布速度から塗布終了動作開始点bを算出し、吐出ヘッド4のノズル4bが塗布終了動作開始点b上に到達した時点で塗布終了動作を行う。なお、図5における離間距離L1はノズル4bの中心線と検出センサ6の中心線との離間距離である。
【0028】
ここで、吐出ヘッド4のノズル4bと検出センサ6は平面内において一直線上に配置されており、検出センサ6は、ノズル4bが塗布終了動作開始点b上を通過する前に、塗布進行方向にある塗布始点aを検出することが可能な位置に配置されている。すなわち、検出センサ6は、描画パターンの最後の直線部分において、ノズル4bより塗布進行方向の下流側に位置するように設けられている。
【0029】
塗布終了動作開始点bは、図6に示すように、検出センサ6により検出された塗布始点aに応じて変わることになる。これにより、塗布終了動作開始点bは実際の塗布始点aから常に一定の位置となるので、塗布始点aの位置ずれに起因して接続部分の形状が乱れることが防止され、さらに、塗布始点aと塗布終点cにおけるペースト材の重ね合わせ長さのばらつきが抑えられる。
【0030】
前述の塗布終了動作においては、図7に示すように、ノズル4bが塗布終了動作開始点b上に到達した時点で、ノズルギャップ、塗布圧力(押し出し量)及び塗布速度があらかじめ設定されたプログラムに従って制御され、つなぎ部の形状が調整される。各制御パラメータの設定に関しては、ペースト材の特性に合わせて事前に評価が行われ、各制御パラメータのタイミングと設定値が決定されている。なお、図7に示す制御パラメータは吐出ヘッド4が空圧方式である場合の一例であるが、吐出ヘッド4が機械方式である場合においても同様に必要な制御パラメータの設定が行われる。
【0031】
次に、前述のペースト塗布装置1が行う塗布動作について詳しく説明する。ここでは、ペースト材の描画パターン(ペーストパターン)の一例として、矩形の閉環状(閉ループ状)に描画パターンPを描画する場合について説明する。
【0032】
図8に示すように、ペースト塗布装置1は、ステージ2上の基板Kに例えば反時計回りに線状にペースト材を塗布し、矩形の閉ループの描画パターンPを順次描画する。矩形の閉ループの描画パターンPには、4つの直線部及び4つのコーナー部が存在する。
【0033】
まず、制御装置7は、塗布情報や各種のプログラムに基づいてステージ駆動部3を制御し、プログラムの塗布開始位置Aに吐出ヘッド4のノズル4bを対向させ、ヘッド駆動部5を制御してノズルギャップを調整する。その後、制御装置7は、吐出ヘッド4のノズル4bとステージ2上の基板Kとを基板Kの表面に沿って相対移動させながら、吐出ヘッド4のノズル4bの先端からペースト材を吐出させることによって、ステージ2上の基板Kに矩形の閉ループの描画パターンPを描画する。なお、塗布始点aは描画パターンの最初の直線部(吐出ヘッド4のノズル4bと検出センサ6とを通る直線上)の途中の位置となる。
【0034】
また、制御装置7は、ペースト材の吐出中に検出センサ6により検出された塗布始点aに応じて、ペースト材の塗布終了動作開始点bを求める。詳しくは、制御装置7は、検出センサ6とノズル4bとの離間距離L1及び塗布速度(基板Kとノズル4bとの相対速度)に基づいて塗布終了動作開始点bを求めて設定する。次いで、制御装置7は、求めた塗布終了動作開始点bに基板Kの表面上におけるノズル4bの現在位置が一致した場合、塗布終了動作を開始する。
【0035】
塗布終了動作としては、例えば、図7に示すように、まず、塗布圧力(ノズル4bの吐出圧力)を塗布終了動作開始点bから塗布始点aへのノズル4bの移動に応じて徐々に減少させ、その後、塗布速度(基板Kとノズル4bとの相対速度)、及び、ノズルギャップ(基板Kの表面とノズル4bとの離間距離)も、あらかじめ設定されている条件に基づいて、ノズル4bが塗布終点c上に移動するまで制御する。ここで、図7中において塗布圧力をゼロ以下にすることは、ノズル4bからの液だれを防止するためであり、塗布速度を急激に上げることは、ノズル4bによる糸引きを防止するためである。
【0036】
なお、図8に示すように、検出センサ6は吐出ヘッド4と共に移動するように設けられているため、すでに描画を完了したペースト材や塗布中のペースト材を検出する状態が発生する。この誤検出を避け、塗布始点a以外のペースト材を検出しないようにするため、塗布プログラム(あるいはハードウエア)により検出センサ6の検出結果を有効とする領域を設定する機能が設けられている。例えば、制御装置7が描画パターンの最終直線部における検出結果のみを用いるように塗布プログラムが設定されている。
【0037】
詳しくは、制御装置7は、検出センサ6の位置がその検出センサ6の検出結果を有効とする領域にあるか否かを判断し、検出センサ6が有効領域内にある場合、検出センサ6の検出結果を用いる。なお、検出センサ6の位置がその検出センサ6の検出結果を有効とする領域にあるか否かを判定することは、検出センサ6が塗布始点aより吐出ヘッド4の移動方向の上流側に存在するか否かを判断することと同等であり、制御装置7は、検出センサ6が塗布始点aより吐出ヘッド4の移動方向の上流側に存在すると判断した場合だけ、検出センサ6により検出された塗布始点aを用いることになる。
【0038】
このように、ペースト塗布装置1は、検出センサ6により塗布始点aを検出して塗布終了動作開始点bを算出し、吐出ヘッド4のノズル4bが塗布終了動作開始点b上に位置した時点で塗布終了動作を開始する。これにより、実際の塗布始点aに基づいて塗布終了動作開始点bが算出され、塗布終了動作開始点bは実際の塗布始点aから常に一定の位置となるので、塗布始点aの位置ばらつきによるつなぎ部の形状に対する影響が排除され、さらに、塗布始点aと塗布終点cにおけるペースト材の重ね合わせ長さのばらつきが抑えられる。その結果、閉環状のペーストパターンのつなぎ部の形状を安定させ、くびれや太り、途切れなどが発生しないペースト材の塗布を行うことができる。すなわち、つなぎ部の塗布断面形状を他の塗布部分と同様の形状に安定させることができる。
【0039】
ここで、ペースト材として樹脂を用いた場合には、つなぎ部の形状が不十分であっても、基板Kと他の基板との貼り合わせを行う際、つなぎ部が多少潰れるため、封止不良などの発生がある程度抑えられる。ところが、ペースト材としてガラスフリットを用いた場合には、ガラスフリットの仮乾燥や焼成などを行った後で、基板Kと他の基板の貼り合わせを行うため、つなぎ部はほとんど変形しないことから、塗布時のつなぎ部の形状を安定させることが重要となる。
【0040】
なお、パターン塗布毎に塗布終了動作開始点bを算出してもよいが、例えば、最初のパターンで塗布終了動作開始点bを算出し、その塗布終了動作開始点bと、検出センサ6が塗布始点aを検出したときの吐出ヘッド4のノズル4bの位置との離間距離(平面上の離間距離)L2(図5参照)を記憶部に保存しておき、次のパターンでは、塗布始点aの検出に応じて、記憶部に記憶されている離間距離L2を用いるようにしてもよい。この場合、次のパターンにおける塗布始点aが検出センサ6により検出され、その検出時点からの吐出ヘッド4の移動距離が前述の離間距離L2に一致すると、吐出ヘッド4は塗布終了動作開始点b上に位置することになる。
【0041】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、ペースト材の吐出中に検出センサ6により塗布始点aを検出し、その塗布始点aに応じてペースト材の塗布終了動作開始点bを設定することによって、閉環状のペーストパターンのつなぎ部(接続部分)の形状を調整することが可能となる。これにより、塗布始点aの位置ずれに起因してつなぎ部の形状が乱れることが防止され、さらに、塗布始点aと塗布終点cにおけるペースト材の重ね合わせ長さのばらつきが抑えられる。その結果、線の途切れや線のくびれ、線の太りなどの発生が防止されるので、閉環状のペーストパターンのつなぎ部の形状を安定させることができる。
【0042】
また、制御装置7は、ペースト材の吐出中に検出センサ6により検出された塗布始点aに応じて、検出センサ6と吐出ヘッド4との平面上の離間距離L1及び基板Kと吐出ヘッド4との相対速度(塗布速度)に基づいて、塗布終了動作開始点bを求め、求めた塗布終了動作開始点b上に吐出ヘッド4が位置した場合、基板Kと吐出ヘッド4との相対速度(塗布速度)、基板Kの表面と吐出ヘッドとの離間距離(ノズルギャップ)及び吐出ヘッド4の吐出圧力(塗布圧力)の少なくとも一つを変更する塗布終了動作を開始する。これにより、塗布始点aがパターン塗布毎にずれた場合でも、塗布終了動作開始点bは実際の塗布始点aから常に一定の位置となるので、塗布始点aの位置ずれに起因してつなぎ部の形状が乱れることを確実に防止することができ、さらに、塗布始点aと塗布終点cにおけるペースト材の重ね合わせ長さのばらつきを確実に抑えることができる。
【0043】
また、検出センサ6は、吐出ヘッド4と共に基板Kに対して相対移動するように設けられており、制御装置7は、検出センサ6が塗布始点aより吐出ヘッド4の移動方向の上流側に存在するか否かを判断し、検出センサ6が塗布始点aより吐出ヘッド4の移動方向の上流側に存在すると判断した場合だけ、検出センサ6により検出された塗布始点aを用いる。これにより、すでに描画を完了したペースト材や塗布中のペースト材を検出した際の検出結果は用いられず、実質、塗布始点a以外のペースト材を検出することが防止されることになるので、正確に塗布終了動作開始点bを求めることができ、その結果、誤動作を防ぐことができる。
【0044】
なお、本発明は、前述の実施の形態に限るものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。例えば、前述の実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。また、前述の実施の形態においては、各種の数値を挙げているが、それらの数値は例示であり、限定されるものではない。
【0045】
例えば、前述の実施の形態においては、基板Kを搭載したステージ2だけを描画パターンPに合わせて移動させながらペースト材を塗布しているが、これに限るものではなく、ステージ2を固定して、吐出ヘッド4だけを描画パターンPに合わせて移動させながらペースト材を塗布するようにしても良く、また、ステージ2及び吐出ヘッド4の両方を描画パターンPに基づいて移動させながらペースト材を塗布するようにしても良く、描画に関する駆動方法の制約はない。また、吐出ヘッド4も複数個設けるようにして良く、その数は限定されない。
【0046】
また、前述の実施の形態においては、装置の駆動構成の簡略化及び装置の小型化を実現するため、吐出ヘッド4と共に検出センサ6を移動させているが、これに限るものではなく、吐出ヘッド4及び検出センサ6を個別に移動させるようにしても良い。この場合には、検出センサ6を吐出ヘッド4の移動を妨げないように移動可能に設け、その検出センサ6により塗布始点aをペースト塗布中に検出し、その位置から前述と同様に離間距離L1及び塗布速度を用いて塗布終了動作開始点bを求め、求めた塗布終了動作開始点bを記憶部に保存しておき、描画パターンの最後の直線部で用いる。また、図8において、吐出ヘッド4と検出センサ6との位置を入れ替えた場合には、吐出ヘッド4が塗布始点a上を通過して直ぐに、検出センサ6がその塗布始点aを検出することになる。この場合も、検出した塗布始点aの位置から前述と同様に離間距離L1及び塗布速度を用いて塗布終了動作開始点bを求め、求めた塗布終了動作開始点bを記憶部に保存しておき、描画パターンの最後の直線部で用いる。
【符号の説明】
【0047】
1…ペースト塗布装置、3…ステージ駆動部(駆動部)、4…吐出ヘッド(吐出部)、6…検出センサ(検出部)、7…制御装置、a…塗布始点、b…塗布終了動作開始点、c…塗布終点、K…基板(塗布対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象物の表面に向けてペースト材を吐出する吐出部と、
前記塗布対象物と前記吐出部とを前記塗布対象物の表面に沿って相対移動させる駆動部と、
前記塗布対象物の表面に前記ペースト材を閉環状に塗布するように前記吐出部及び前記駆動部を制御する制御装置と、
前記吐出部により吐出されて前記塗布対象物の表面に塗布された前記ペースト材の塗布始点を検出する検出部と、
を備え、
前記制御装置は、前記ペースト材の吐出中に前記検出部により検出された前記塗布始点に応じて、前記ペースト材の塗布終了動作開始点を設定することを特徴とするペースト塗布装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記ペースト材の吐出中に前記検出部により検出された前記塗布始点に応じて、前記検出部と前記吐出部との平面上の離間距離及び前記塗布対象物と前記吐出部との相対速度に基づいて前記塗布終了動作開始点を求め、求めた前記塗布終了動作開始点上に前記吐出部が位置した場合、前記塗布対象物と前記吐出部との相対速度、前記塗布対象物の表面と前記吐出部との離間距離及び前記吐出部の吐出圧力の少なくとも一つを変更する塗布終了動作を開始することを特徴とする請求項1記載のペースト塗布装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記吐出部と共に前記塗布対象物に対して相対移動するように設けられており、
前記制御装置は、前記検出部が前記塗布始点より前記吐出部の移動方向の上流側に存在するか否かを判断し、前記検出部が前記塗布始点より前記吐出部の移動方向の上流側に存在すると判断した場合だけ、前記検出部により検出された前記塗布始点を用いることを特徴とする請求項1又は2記載のペースト塗布装置。
【請求項4】
塗布対象物と前記塗布対象物の表面に向けてペースト材を吐出する吐出部とを前記塗布対象物の表面に沿って相対移動させ、前記塗布対象物の表面に前記ペースト材を閉環状に塗布する塗布工程を有し、
前記塗布工程は、
前記吐出部により吐出されて前記塗布対象物の表面に塗布された前記ペースト材の塗布始点を検出する工程と、
前記ペースト材の吐出中に検出した前記塗布始点に応じて、前記ペースト材の塗布終了動作開始点を設定する工程と、
を有していることを特徴とするペースト塗布方法。
【請求項5】
前記設定する工程では、前記ペースト材の吐出中に検出した前記塗布始点に応じて、前記検出部と前記吐出部との平面上の離間距離及び前記塗布対象物と前記吐出部との相対速度に基づいて前記塗布終了動作開始点を求め、求めた前記塗布終了動作開始点上に前記吐出部が位置した場合、前記塗布対象物と前記吐出部との相対速度、前記塗布対象物の表面と前記吐出部との離間距離及び前記吐出部の吐出圧力の少なくとも一つを変更する塗布終了動作を開始することを特徴とする請求項4記載のペースト塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−194358(P2011−194358A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65910(P2010−65910)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】