説明

ホスフェート−ホスホネート結合を有する有機リン化合物、およびそれを用いた難燃性ポリエステル繊維、難燃性ポリウレタン樹脂組成物

【課題】低揮発性で、リン含有率が高く、原料として用いた際にその製品の諸物性に影響を与えず、かつ、リサイクル性を考慮し環境負荷の少ない、塩素や臭素といったハロゲン原子を含有しないホスフェート−ホスホネート化合物を提供すること。
【解決手段】1分子内にホスフェート−ホスホネート結合を有し、かつ特定の環構造を有することにより、難燃性に優れたリン含有化合物が提供される。本発明によればまた、ホスフェート−ホスホネート化合物をポリウレタン用難燃剤またはポリエステル用難燃剤として添加することで好適な可塑性及び難燃性が得られる。これらの難燃剤によれば、特に、ポリウレタンフォームまたはポリエステル繊維などの物性に対する悪影響が少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1分子中にホスフェート−ホスホネート結合を有する新規なリン化合物に関する。本明細書中において、ホスフェート−ホスホネート結合とは、リン原子とリン原子との間を置換基を有してもよいアルキレン基および酸素原子からなる連結基で連結する結合をいう。本明細書中においては、1分子中にホスフェート−ホスホネート結合を有する化合物を便宜上「ホスフェート−ホスホネート化合物」という。
この化合物は、難燃剤として有用である。特に、樹脂材料の難燃剤として有用である。
【0002】
別の局面において本発明はまた、1分子中にホスフェート−ホスホネート結合を有する有機リン化合物を難燃剤として含有する、難燃性、耐熱性、耐加水分解性に優れた難燃性ポリエステル繊維に関する。さらに詳しくは、本発明は、該リン化合物を用いて難燃性を施した、繊維としての諸物性に与える悪影響が少なく、且つ、洗濯耐久性を維持した、ハロゲンを含有しない難燃性ポリエステル繊維に関する。
【0003】
さらに別の局面において本発明は、難燃性ポリウレタン樹脂組成物に関する。本発明は、さらに詳しくは、1分子中にホスフェート−ホスホネート結合を有する、特定の有機リン化合物を難燃剤として含有する難燃性、耐熱性、耐揮発性に優れた難燃性ポリウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
背景技術
リン化合物は、一般に多機能な化合物として様々な分野で使用されており、多数の品種が開発されている。なかでも、リン化合物は難燃剤として有用であることが従来より知られている。その難燃化の対象となる樹脂は多岐にわたっており、例えば、ポリカーボネート、ABS樹脂、PPEなどの熱可塑性樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂またはポリエステル繊維などが例示される。
その難燃性はリン化合物中のリン含有率に依存しているのが一般的であるが、目的とする難燃性を付与させる量まで添加するとその物性が著しく低下することがある。故に、より少ない添加量で十分な難燃性を得るために、リン含有率の高いリン化合物が望まれている。
他方、樹脂の難燃剤は、樹脂の混練および成形加工の際に非常に高い温度に曝される。従って、高温において安定性の高いリン化合物が望まれている。
【0005】
上述した各種樹脂および繊維材料の中でも、ポリエステル繊維はその優れた力学特性、昜加工性から衣類、インテリア、詰め綿、不織布、産業用資材等、様々な分野で使用されている。これらのポリエステル繊維製品においては、マッチやタバコなどを出火源とする火災の被害を最小限に抑えるため、ホテル、病院、あるいは映画館などで使用されるインテリア材料については消防法により厳しい規制がある。近年の防災意識の高まりの中で、安全性が高く快適な生活環境をつくる上で、難燃性を備えたポリエステル繊維製品の開発が望まれている。
【0006】
その難燃性はリン化合物中のリン含有率に依存している、すなわち、リン含有率が高いほど難燃性能も高くなるのが一般的であるが、ポリエステル繊維を難燃化する際には、この一般論は必ずしも当てはまらない。
例えば、リン含有率の高いリン化合物を使用しても、難燃処理時にそのリン化合物がポリエステル繊維の奥深くまで入らずに繊維の表面に付着しているだけのような状態となっていれば、処理済みの繊維を用いた衣類等を洗濯した際に、洗濯により容易にリン化合物が繊維から脱着してしまって、その結果、目的とする難燃性を継続的に付与することができない場合がある。
逆に、リン含有率の低いリン化合物を使用しても、そのリン化合物のポリエステル繊維への浸透性およびポリエステル繊維との物理的密着力が大きい場合は、目的とする難燃性を付与することができるということは十分に起こり得る。
【0007】
従って、ポリエステル繊維の技術分野においては、十分な難燃性を得るために、その使用量が少なくなるという点で、リン含有率の高いリン化合物が、かつ、ポリエステル繊維から容易に脱着しないリン化合物が望まれている。
他方、ポリウレタン樹脂は、安価で、軽量かつ形成が容易であるという特性を有することから主に自動車内装材料、家具用、電材関係、建築材料等、生活に密接した分野で幅広く用いられ、その使用形態は大半がポリウレタンフォームとして使用されている。しかし、高分子有機化合物であるポリウレタン樹脂は可燃性であり、一度着火すれば、制御不能な燃焼を起こす可能性があり、生活環境の場で火災が起これば、人命に関わる災害になりかねない。このような側面からポリウレタンフォーム製造業界では、フォームに難燃化技術を導入することで、火災現象を回避する努力がなされてきた。また、今日では、自動車の内装品、家具、電気被覆材料等、各ポリウレタンフォームの利用分野に応じて一部難燃化が法律にて義務づけられてきている。例えば、米国の電気製品におけるUL規格、米国の自動車関係におけるFMVSS−302の難燃規制が知られている。
【0008】
ポリウレタン樹脂に難燃性を付与させるには、発泡時に難燃剤を添加することで対応することができるのが一般的であるが、目的とする難燃性を付与させる量まで添加するとその物性が著しく低下することがある。故に、より少ない添加量で十分な難燃性を得るために、リン含有率の高いリン化合物を使用することが望まれている。ただし、リン含有率の高いリン化合物を使用することにより高難燃性のみならず、ポリウレタン樹脂組成物に要求される諸物性を満たすことができるとは必ずしもいえない。
【0009】
難燃剤のタイプとしては、燃焼時に発泡炭化しチャーを形成することで、酸素を遮断し難燃効果を与えるものが徐々に用いられてきている(この特性をイントメンセントという)。この効果は、リン含有率のみに支配されるのではなく、難燃剤の分子構造によって左右される場合が多い。この両者が満たされた場合には、その相乗効果によって、さらに高難燃のポリウレタンフォームを得ることができる。また、ポリウレタン発泡時においては、発泡規模が大きくなるにつれてフォーム中の内部蓄熱温度が高くなるため、そのような高温下においても、熱安定性の高いリン化合物が望まれている。
【0010】
リン化合物の構造は主に、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスファイト、ホスホナイト、ホスフィナイト、ホスフィンオキサイド、ホスフィンなどに大別される。また、これらの異なる複数種類の結合を1分子中に有するリン化合物も存在する。例えば、ホスフェート−ホスホネート化合物がその一例である。さらに具体的には、例えば、分子中に塩素や臭素などのハロゲン原子を含有するホスフェート−ホスホネート化合物、分子中にアルコール性水酸基を含有するホスフェート−ホスホネート化合物、エチル基のような短いアルキル基を有するホスフェート−ホスホネート化合物などが知られている。
【0011】
これらのホスフェート−ホスホネート化合物としては、例えば以下に示す先行文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−328450号公報(第2−6頁)
【特許文献2】特開昭57−137377号公報(第1−10頁)
【特許文献3】米国特許第4697030号公報(第2−9頁)
【特許文献4】米国特許第3060008号公報(第1−3頁)
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Zhurnal ObshcheI KhImII (1987), 57(12), 2793−4
【0014】
例えば、特開2000−328450号公報にはハロゲン原子を含有するホスフェート−ホスホネート化合物を使用してメタ型芳香族ポリアミド繊維を難燃化する技術が開示されている。さらに特開昭57−137377号公報にはヘキサブロモシクロドデカンなどのハロゲン原子を含有する化合物を使用して繊維を難燃化する技術が開示されている。
しかしながら、これらハロゲンを含有する化合物を用いる場合には、その繊維を例えば焼却する際、難燃剤として用いたリン化合物の分解などによって人体に有害なハロゲン化水素などの有害ガスが発生したり、焼却炉を腐食させたり、あるいはハロゲン化水素よりもさらに有害なダイオキシンが発生するという問題がある。
【0015】
米国特許第4697030号公報には、アルコール性水酸基を含有するホスフェート−ホスホネート化合物、および、ポリエステル繊維やポリウレタンフォームにおけるその使用例が開示されている。
しかしながら、アルコール性水酸基を有するホスフェート−ホスホネート化合物は耐水性が優れているとはいえない。例えば、ポリエステル繊維に添加した場合、水との親和性を有するため度重なる洗濯を行っていくうちにホスフェート−ホスホネート化合物が洗濯水の方へ徐々に溶出していき、その結果、繊維の難燃性が低下してしまいやすい。
ポリエステルの合成時にこのリン化合物を反応させて、ポリエステルの骨格に組み込ませる方法を採用すれば、上記の問題は解決されるが、単にポリエステル繊維を購入して難燃剤を吸尽させるという加工方法(後加工)を採用する加工メーカーでは、このような反応を行うことができない。つまり、このリン化合物を使用するには制約があるという問題が生じる。
また、ポリウレタンフォームは、ポリオールの水酸基と発泡剤である水の水酸基の2種の水酸基と、ポリイソシアネートのイソシアネート基とを反応させることにより形成されるのが一般的であるが、このリン化合物をポリウレタンフォームに使用する場合、合計3種の反応性の異なる水酸基と、イソシアネート基との反応を制御する必要が生じる。その反応の制御の困難性のため、従来の処方ではフォームに必要とされる諸物性を充分に満足するフォームを得ることが非常に困難である。かりに諸物性の良好なフォームが得られるとしても、フォームの形成に必要な各原料および触媒の配合比率の適用範囲が非常に狭くなり、実際のフォームの生産工程において非常に厳密な管理の必要があるという欠点がある。
【0016】
さらに、この公報に記載の化合物は、耐加水分解性が悪く、保存安定性に問題があり、例えばポリエステル繊維を染色加工または難燃加工する際、その化合物を乳化させて用いるのであるが、その乳化安定性が悪いため、そのまま熱を加えて加工を施すと染色ムラやオイルスポットを生じる恐れがある。
【0017】
学術文献Zhurnal ObshcheI KhImII (1987), 57(12), 2793−4は、分子内に4個のエトキシ基(CO−
)を有するホスフェート−ホスホネート化合物が開示されている。
しかしながら、この化合物は、揮発性が比較的高いために、例えば、ポリウレタンフォームに用いた場合に、得られたポリウレタンフォームが高温下に曝されると、フォギング現象が生じやすい。その結果、得られるポリウレタンフォームの難燃性を低下させたり、また、人体に有害なガスを発生させたりする恐れがあるという欠点がある。
【0018】
さらに、この文献に記載のリン化合物をポリウレタン樹脂またはポリエステル繊維の難燃剤として利用することに関しては、具体的な記載もなく示唆もされてない。
【0019】
米国特許第3060008号公報には、難燃剤以外の用途として、下記式(V)で示される化合物をエンジンの燃料へ添加する技術が開示されている。
【化41】


(式中、Rはn−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチルのいずれかである。)
しかしながら、2個あるRが互いに結合した環状構造を有するリン化合物については、具体的な記載もなく示唆もされてない。
【0020】
さらに、この公報に記載のリン化合物をポリウレタン樹脂またはポリエステル繊維の難燃剤として利用することに関しては、具体的な記載もなく示唆もされてない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
(発明が解決しようとする課題)
第1の局面において本発明は、上記問題点を解決する新規化合物を提供することを目的とする。具体的には、水、熱に対する安定性を有し、かつ揮発性が低く、原料として用いた際にその製品の諸物性に与える影響が少なく、リサイクル性を考慮し環境負荷の少ない、塩素や臭素などのハロゲン原子を含有しないホスフェート−ホスホネート化合物を提供することを課題とする。
【0022】
別の局面において本発明は、上記問題点を解決する難燃性ポリエステル繊維を提供することを目的とする。具体的には、ホスフェート−ホスホネート結合を1分子内に有する、特定の有機リン化合物を使用することにより、水、熱に対する安定性を有し、かつ、洗濯耐久性を維持した難燃性ポリエステル繊維を提供することを課題とする。
【0023】
さらに別の局面において本発明は、上記問題点を解決するポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。具体的には、ホスフェート−ホスホネート結合を1分子内に有する、特定の有機リン化合物を使用することにより、優れた難燃性を有し、かつ諸物性に与える悪影響が少ない難燃性ポリウレタン樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
(課題を解決するための手段)
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、式(I)または式(III)で表されるホスフェート−ホスホネート化合物が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】
さらに、本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行なった結果、ある特定のリン化合物を難燃剤としてポリエステル繊維に使用した際、難燃剤自体の耐熱性、耐加水分解性に優れ、また、繊維としての諸物性(難燃性、洗濯耐久性など)を維持した良好な物性を有する難燃性ポリエステル繊維が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0026】
さらにまた、本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ある特定のリン化合物を難燃剤として使用することにより、耐熱性に優れ、ウレタンフォームの劣化がなく、かつ発泡時におけるスコーチを発生することがなく、樹脂に優れた難燃性を付与するという良好な特性を有する難燃性ポリウレタン樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0027】
かくして、本発明の第1の局面によれば、以下のリン化合物が提供される。
【0028】
(1) 下記式(I)で表される化合物であって:
【化42】


式(I)において、R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なって、
直鎖または枝分かれを有するC2〜8アルキル基であるか;
置換基を有していてもよいC5〜10シクロアルキル基であるか;
置換基を有していてもよいC6〜15アリール基であるか;
あるいは、RとRとが結合してC2〜9アルキレン基となって酸素原子およびリン原子とともに以下の式の環状構造Aを形成してもよく、
環状構造A:
【化43】


(環状構造A中の−R−R−はC2〜9アルキレン基である)
または、RとRとが結合してC2〜9アルキレン基となって酸素原子およびリン原子とともに以下の式の環状構造Bを形成してもよく、
環状構造B:
【化44】


(環状構造B中の−R−R−はC2〜9アルキレン基である)
ただし、環状構造Aまたは環状構造Bの少なくともどちらか一方を有することを必須とし、
20は、式67の連結基であり、
(式67)
【化45】


ここで、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、水素、C1〜6アルキル基、または、C6〜11アリール基のいずれかであるか、あるいはRとRとが結合して置換基を有していてもよいC4〜10アルキレン基となって炭素原子とともに以下の式の環状構造を形成し、
【化46】


の炭素数とRの炭素数との和は0〜12である、化合物。
【0029】
(2) RとRとが結合して前記環状構造Aを形成し、かつ、RとRとが結合して前記環状構造Bを形成する、前記項(1)に記載の化合物。
【0030】
(3) RとRとが結合して下記式(II)のアルキレン基となって前記環状構造Aを形成するか、または、RとRとが結合して下記式(II)のアルキレン基となって前記環状構造Bを形成する、前記項(1)に記載の化合物。
【化47】

【0031】
(4) R20がメチレン基または−CH(CH)−基または−C(CH−基のいずれかである、前記項(1)に記載の化合物。
【0032】
(5) 前記環状構造Aを有する場合にはRおよびRのうち少なくとも1つがC6〜15アリール基であり、前記環状構造Bを有する場合にはRおよびRのうち少なくとも1つがC6〜15アリール基である、前記項(1)に記載の化合物。
【0033】
(6) 下記式(III)で示される化合物:
【化48】


(式(III)において、
はC2〜9アルキレン基であり、
21は、式89の連結基であり、
(式89)
【化49】


ここで、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、水素、C1〜6アルキル基、または、C6〜11アリール基のいずれかであるか、あるいはRとRとが結合して置換基を有していてもよいC4〜10アルキレン基となって炭素原子とともに以下の式の環状構造を形成し、
【化50】


の炭素数とRの炭素数との和は0〜12である)。
【0034】
(7) R21がメチレン基または−CH(CH)−基または−C(CH−基のいずれかである、前記項(6)に記載の化合物。
【0035】
(8) Rが下記式(IV)である、前記項(6)に記載の化合物。
【化51】


さらに、本発明によれば、以下の難燃剤、難燃性ポリエステル繊維および難燃性ポリウレタン樹脂組成物などが提供される。
【0036】
(9) 下記式(I)で表される化合物からなる樹脂用難燃剤であって:
【化52】


式(I)において、R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なって、
直鎖または枝分かれを有するC2〜8アルキル基であるか;
置換基を有していてもよいC5〜10シクロアルキル基であるか;
置換基を有していてもよいC6〜15アリール基であるか;
あるいは、RとRとが結合してC2〜9アルキレン基となって酸素原子およびリン原子とともに以下の式の環状構造Aを形成してもよく、
環状構造A:
【化53】


(環状構造A中の−R−R−はC2〜9アルキレン基である)
または、RとRとが結合してC2〜9アルキレン基となって酸素原子およびリン原子とともに以下の式の環状構造Bを形成してもよく、
環状構造B:
【化54】


(環状構造B中の−R−R−はC2〜9アルキレン基である)
ただし、環状構造Aまたは環状構造Bの少なくともどちらか一方を有することを必須とし、
20は、式67の連結基であり、
(式67)
【化55】


ここで、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、水素、C1〜6アルキル基、または、C6〜11アリール基のいずれかであるか、あるいはRとRとが結合して置換基を有していてもよいC4〜10アルキレン基となって炭素原子とともに以下の式の環状構造を形成し、
【化56】


の炭素数とRの炭素数との和は0〜12である、難燃剤。
【0037】
(10) 下記式(III)で示される化合物からなる樹脂用難燃剤:
【化57】


(式(III)において、
はC2〜9アルキレン基であり、
21は、式89の連結基であり、
(式89)
【化58】


ここで、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、水素、C1〜6アルキル基、または、C6〜11アリール基のいずれかであるか、あるいはRとRとが結合して置換基を有していてもよいC4〜10アルキレン基となって炭素原子とともに以下の式の環状構造を形成し、
【化59】


の炭素数とRの炭素数との和は0〜12である)。
【0038】
(11) 前記項(9)に記載の難燃剤であって、ポリエステル繊維の難燃化のために使用される、難燃剤。
【0039】
(12) 前記項(10)に記載の難燃剤であって、ポリエステル繊維の難燃化のために使用される、難燃剤。
【0040】
(13) 難燃剤で処理されたポリエステル繊維であって、該難燃剤が、下記式(I)で表される化合物である、ポリエステル繊維:
【化60】


式(I)において、R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なって、直鎖または枝分かれを有するC2〜8アルキル基であるか;
置換基を有していてもよいC5〜10シクロアルキル基であるか;
置換基を有していてもよいC6〜15アリール基であるか;
あるいは、RとRとが結合してC2〜9アルキレン基となって酸素原子およびリン原子とともに以下の式の環状構造Aを形成してもよく、
環状構造A:
【化61】


(環状構造A中の−R−R−はC2〜9アルキレン基である)
または、RとRとが結合してC2〜9アルキレン基となって酸素原子およびリン原子とともに以下の式の環状構造Bを形成してもよく、
環状構造B:
【化62】


(環状構造B中の−R−R−はC2〜9アルキレン基である)
ただし、環状構造Aまたは環状構造Bの少なくともどちらか一方を有することを必須とし、
20は、式67の連結基であり、
(式67)
【化63】


ここで、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、水素、C1〜6アルキル基、または、C6〜11アリール基のいずれかであるか、あるいはRとRとが結合して置換基を有していてもよいC4〜10アルキレン基となって炭素原子とともに以下の式の環状構造を形成し、
【化64】


の炭素数とRの炭素数との和は0〜12である。
【0041】
(14) 前記難燃剤のRとRとが結合して前記環状構造Aを形成し、かつ、RとRとが結合して前記環状構造Bを形成する、前記項(13)に記載のポリエステル繊維。
【0042】
(15) 前記難燃剤のRとRとが結合して下記式(II)のアルキレン基となって前記環状構造Aを形成するか、または、RとRとが結合して下記式(II)のアルキレン基となって前記環状構造Bを形成する、前記項(13)に記載のポリエステル繊維。
【化65】

【0043】
(16) 前記難燃剤のR20がメチレン基または−CH(CH)−基または−C(CH−基のいずれかである、前記項(13)に記載のポリエステル繊維。
【0044】
(17) 前記難燃剤において、前記環状構造Aを有する場合にはRおよびRのうち少なくとも1つがC6〜15アリール基であり、前記環状構造Bを有する場合にはRおよびRのうち少なくとも1つがC6〜15アリール基である、前記項(13)に記載のポリエステル繊維。
【0045】
(18) 前記項(13)に記載のポリエステル繊維であって、難燃剤の含有量が、難燃剤を含むポリエステル繊維の全重量のうちの、0.1〜30重量%である、ポリエステル繊維。
【0046】
(19) 難燃剤で処理されたポリエステル繊維であって、該難燃剤が、下記式(III)で示される化合物である、ポリエステル繊維:
【化66】


(式(III)において、
はC2〜9アルキレン基であり、
21は、式89の連結基であり、
(式89)
【化67】


ここで、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、水素、C1〜6アルキル基、または、C6〜11アリール基のいずれかであるか、あるいはRとRとが結合して置換基を有していてもよいC4〜10アルキレン基となって炭素原子とともに以下の式の環状構造を形成し、
【化68】


の炭素数とRの炭素数との和は0〜12である)。
【0047】
(20) 前記難燃剤のR21がメチレン基または−CH(CH)−基または−C(CH−基のいずれかである、前記項(19)に記載のポリエステル繊維。
【0048】
(21) 前記難燃剤のRが下記式(IV)である、前記項(19)に記載のポリエステル繊維。
【化69】

【0049】
(22) 前記項(19)に記載のポリエステル繊維であって、難燃剤の含有量が、難燃剤を含むポリエステル繊維の全重量のうちの、0.1〜30重量%である、ポリエステル繊維。
【0050】
(23) ポリエステル繊維を難燃化する方法であって、ポリエステル繊維を、前記項(11)に記載の難燃剤で処理する工程を包含する、方法。
【0051】
(24) ポリエステル繊維を難燃化する方法であって、ポリエステル繊維を、前記項(12)に記載の難燃剤で処理する工程を包含する、方法。
【0052】
(25) 前記項(9)に記載の難燃剤であって、ポリウレタン樹脂の難燃化のために使用される、難燃剤。
【0053】
(26) 前記項(10)に記載の難燃剤であって、ポリウレタン樹脂の難燃化のために使用される、難燃剤。
【0054】
(27) 難燃性ポリウレタン樹脂組成物であって、(a)難燃剤、(b)ポリオール成分、および(c)ポリイソシアネート成分を含み、ここで、該難燃剤が、下記一般式(I)で示される、組成物:
【化70】


式(I)において、R、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なって、直鎖または枝分かれを有するC2〜8アルキル基であるか;
置換基を有していてもよいC5〜10シクロアルキル基であるか;
置換基を有していてもよいC6〜15アリール基であるか;
あるいは、RとRとが結合してC2〜9アルキレン基となって酸素原子およびリン原子とともに以下の式の環状構造Aを形成してもよく、
環状構造A:
【化71】


(環状構造A中の−R−R−はC2〜9アルキレン基である)
または、RとRとが結合してC2〜9アルキレン基となって酸素原子およびリン原子とともに以下の式の環状構造Bを形成してもよく、
環状構造B:
【化72】


(環状構造B中の−R−R−はC2〜9アルキレン基である)
ただし、環状構造Aまたは環状構造Bの少なくともどちらか一方を有することを必須とし、
20は、式67の連結基であり、
(式67)
【化73】


ここで、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、水素、C1〜6アルキル基、または、C6〜11アリール基のいずれかであるか、あるいはRとRとが結合して置換基を有していてもよいC4〜10アルキレン基となって炭素原子とともに以下の式の環状構造を形成し、
【化74】


の炭素数とRの炭素数との和は0〜12である。
【0055】
(28) さらに、(d)触媒、(e)シリコーン整泡剤、および(f)発泡剤を含む、前記項(27)に記載の組成物。
【0056】
(29) 前記難燃剤のRとRとが結合して前記環状構造Aを形成し、かつ、RとRとが結合して前記環状構造Bを形成する、前記項(27)に記載の組成物。
【0057】
(30) 前記難燃剤のRとRとが結合して下記式(II)のアルキレン基となって前記環状構造Aを形成するか、または、RとRとが結合して下記式(II)のアルキレン基となって前記環状構造Bを形成する、前記項(27)に記載の組成物。
【化75】

【0058】
(31) 前記難燃剤のR20がメチレン基または−CH(CH)−基または−C(CH−基のいずれかである、前記項(27)に記載の組成物。
【0059】
(32) 前記難燃剤が前記環状構造Aを有する場合にはRおよびRのうち少なくとも1つがC6〜15アリール基であり、前記難燃剤が前記環状構造Bを有する場合にはRおよびRのうち少なくとも1つがC6〜15アリール基である、前記項(27)に記載の組成物。
【0060】
(33) 前記ポリオール成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオールからなる群から選択される、前記項(27)に記載の組成物。
【0061】
(34) 前記ポリイソシアネート成分が、トリレンジイソシアネート(TDI)およびジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)からなる群から選択される、前記項(27)に記載の組成物。
【0062】
(35) 前記難燃剤の配合量が、ポリオール成分100重量部に対して、0.1〜60重量部である、前記項(27)に記載の組成物。
【0063】
(36) さらに、酸化防止剤として、(g)下記一般式(VII)で表されるヒドロキノン化合物及び/または3価の有機リン化合物を含む、前記項(27)に記載の組成物:
(式VII)
【化76】


(式中、R31、R32、R33およびR34は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜14のアルキル基)。
【0064】
(37) 難燃性ポリウレタン樹脂組成物であって、(a)難燃剤、(b)ポリオール成分、および(c)ポリイソシアネート成分を含み、ここで、該難燃剤が、下記一般式(III)で示される、組成物:
【化77】


(式(III)において、
はC2〜9アルキレン基であり、
21は、式89の連結基であり、
(式89)
【化78】


ここで、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、水素、C1〜6アルキル基、または、C6〜11アリール基のいずれかであるか、あるいはRとRとが結合して置換基を有していてもよいC4〜10アルキレン基となって炭素原子とともに以下の式の環状構造を形成し、
【化79】


の炭素数とRの炭素数との和は0〜12である。
【0065】
(38) さらに、(d)触媒、(e)シリコーン整泡剤、および(f)発泡剤を含む、前記項(37)に記載の組成物。
【0066】
(39) 前記難燃剤のR21がメチレン基または−CH(CH)−基または−C(CH−基のいずれかである、前記項(37)に記載の組成物。
【0067】
(40) 前記難燃剤のRが下記式(IV)である、前記項(37)に記載の組成物。
【化80】

【0068】
(41) 前記ポリオール成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオールからなる群から選択される、前記項(37)に記載の組成物。
【0069】
(42) 前記ポリイソシアネート成分が、トリレンジイソシアネート(TDI)およびジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)からなる群から選択される、前記項(37)に記載の組成物。
【0070】
(43) 前記難燃剤の配合量が、ポリオール成分100重量部に対して、0.1〜60重量部である、前記項(37)に記載の組成物。
【0071】
(44) さらに、酸化防止剤として、(g)下記一般式(VII)で表されるヒドロキノン化合物及び/または3価の有機リン化合物を含む、前記項(37)に記載の組成物:
(式VII)
【化81】


(式中、R31、R32、R33およびR34は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜14のアルキル基)。
【0072】
(45) 前記項(27)に記載の組成物を成形して得られる成形品。
【0073】
(46) 前記項(37)に記載の組成物を成形して得られる成形品。
【0074】
(47) 難燃化ポリウレタンフォームを成形する方法であって、前記項(27)に記載の組成物を発泡させる工程を包含する、方法。
【0075】
(48) 難燃化ポリウレタンフォームを成形する方法であって、前記項(37)に記載の組成物を発泡させる工程を包含する、方法。
【発明の効果】
【0076】
(発明の効果)
本発明によるホスフェート−ホスホネート化合物はリン含有率が高く、原料として用いた際にその製品の諸物性に影響を与えず、かつ、塩素や臭素などのハロゲン原子を含有しないため、燃焼時や廃棄時の環境汚染がなく、リサイクル性にも優れていることがわかる。
本発明のホスフェート−ホスホネート化合物は、ポリカーボネート、ABS樹脂、PPEなどの熱可塑性樹脂用の難燃剤、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂用の難燃剤、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂またはポリエステル繊維用の難燃剤として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1A】図1Aは、リン化合物(1)のH−NMRチャートを示す。
【図1B】図1Bは、リン化合物(1)のH−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図2A】図2Aは、リン化合物(1)の13C−NMRチャートを示す。
【図2B】図2Bは、リン化合物(1)の13C−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図3A】図3Aは、リン化合物(1)のGC−MSチャートを示す。
【図3B】図3Bは、リン化合物(1)のGC−MSチャートの部分拡大図を示す。
【図3C】図3Cは、リン化合物(1)のGC−MSチャートの部分拡大図を示す。
【図3D】図3Dは、リン化合物(1)のGC−MSチャートの部分拡大図を示す。
【図4A】図4Aは、リン化合物(2)のH−NMRチャートを示す。
【図4B】図4Bは、リン化合物(2)のH−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図4C】図4Cは、リン化合物(2)のH−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図4D】図4Dは、リン化合物(2)のH−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図5A】図5Aは、リン化合物(2)の13C−NMRチャートを示す。
【図5B】図5Bは、リン化合物(2)の13C−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図5C】図5Cは、リン化合物(2)の13C−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図6A】図6Aは、リン化合物(2)のGC−MSチャートを示す。
【図6B】図6Bは、リン化合物(2)のGC−MSチャートの部分拡大図を示す。
【図6C】図6Cは、リン化合物(2)のGC−MSチャートの部分拡大図を示す。
【図6D】図6Dは、リン化合物(2)のGC−MSチャートの部分拡大図を示す。
【図7A】図7Aは、リン化合物(3)のH−NMRチャートを示す。
【図7B】図7Bは、リン化合物(3)のH−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図7C】図7Cは、リン化合物(3)のH−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図8A】図8Aは、リン化合物(3)の13C−NMRチャートを示す。
【図8B】図8Bは、リン化合物(3)の13C−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図8C】図8Cは、リン化合物(3)の13C−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図9A】図9Aは、リン化合物(3)のGC−MSチャートを示す。
【図9B】図9Bは、リン化合物(3)のGC−MSチャートの部分拡大図を示す。
【図9C】図9Cは、リン化合物(3)のGC−MSチャートの部分拡大図を示す。
【図9D】図9Dは、リン化合物(3)のGC−MSチャートの部分拡大図を示す。
【図10A】図10Aは、リン化合物(4)のH−NMRチャートを示す。
【図10B】図10Bは、リン化合物(4)のH−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図10C】図10Cは、リン化合物(4)のH−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図11A】図11Aは、リン化合物(4)の13C−NMRチャートを示す。
【図11B】図11Bは、リン化合物(4)の13C−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図12A】図12Aは、リン化合物(4)のGC−MSチャートを示す。
【図12B】図12Bは、リン化合物(4)のGC−MSチャートの部分拡大図を示す。
【図12C】図12Cは、リン化合物(4)のGC−MSチャートの部分拡大図を示す。
【図13A】図13Aは、リン化合物(5)のH−NMR測定データを示す。
【図13B】図13Bは、リン化合物(5)のH−NMRチャートを示す。
【図13C】図13Cは、リン化合物(5)のH−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図13D】図13Dは、リン化合物(5)のH−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図14A】図14Aは、リン化合物(5)の13C−NMR測定データを示す。
【図14B】図14Bは、リン化合物(5)の13C−NMRチャートを示す。
【図14C】図14Cは、リン化合物(5)の13C−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図14D】図14Dは、リン化合物(5)の13C−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図14E】図14Eは、リン化合物(5)の13C−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図14F】図14Fは、リン化合物(5)の13C−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図14G】図14Gは、リン化合物(5)の13C−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図14H】図14Hは、リン化合物(5)の13C−NMRチャートの部分拡大図を示す。
【図15】図15は、リン化合物(5)のLC−MS測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
発明を実施するための最良の形態
本発明者は、ここに一連の新規な該リン化合物を合成し、分析により特徴付けることができた。従って、本発明は、上記一般式(I)で表される化合物および上記一般式(III)で表される化合物に関する。以下にその詳細を説明する。
【0079】
(本発明の化合物(I))
本発明の化合物および本発明の難燃剤に使用される化合物は、上記一般式(I)で表される。
【0080】
(R〜R
式(I)において、R〜Rはそれぞれ同一または異なって、C2〜8の直鎖または枝分かれを有するアルキル基、置換基を有していてもよいC5〜10シクロアルキル基、置換基を有していてもよいC6〜15アリール基、RとRが結合して環状構造を形成した場合はC2〜9アルキレン基、RとRが結合して環状構造を形成した場合はC2〜9アルキレン基のいずれかであり、RとRの組み合わせもしくはRとRの組み合わせのうちの少なくとも一方は酸素原子およびリン原子とともに環状構造を形成する。
〜Rのいずれかが、直鎖または枝分かれを有するアルキル基である場合、当該アルキル基は、炭素数2〜5であることが好ましく、炭素数3〜5であることがより好ましく、炭素数4〜5であることがさらに好ましい。小さすぎる場合には、合成が困難となる場合があり、かつ化合物の耐熱性、耐水性などが低下することがある。また、大きすぎる場合には、化合物が配合された材料(例えば、リン化合物を含有するポリウレタン樹脂組成物またはリン化合物で処理されたポリエステル繊維)の難燃性が低下することがある。
〜Rのいずれかが、置換基を有してもよいC5〜10シクロアルキル基である場合、このシクロアルキル基が有し得る置換基とは、例えば、C1〜7の直鎖または枝分かれ状のアルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなど)である。R〜Rの炭素数が小さすぎる場合には、化合物の耐熱性、耐水性などが低下することがある。R〜Rの炭素数が大きすぎる場合には、化合物が配合された材料(例えば、リン化合物を含有するポリウレタン樹脂組成物またはリン化合物で処理されたポリエステル繊維)の難燃性が低下することがある。
シクロアルキル基中の環は、3〜10員環であり得る。原料の入手のしやすさという点で、5員環〜7員環が好ましく、6員環がより好ましい。
〜Rのいずれかが、C6〜15アリール基である場合、アリール基としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなどが挙げられる。化合物中のリン含有率を低下させないという点で、フェニルが好ましい。
〜Rのいずれかが、置換基を有してもよいC6〜15アリール基である場合、このアリール基が有し得る置換基とは、例えば、C1〜9の直鎖または枝分かれ状のアルキルである。当該置換基を有してもよい置換アリールとしては、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニルなどが挙げられる。R〜Rの炭素数が小さすぎる場合には、化合物の耐熱性、耐水性などが低下することがある。R〜Rの炭素数が大きすぎる場合には、化合物が配合された材料(例えば、リン化合物を含有するポリウレタン樹脂組成物またはリン化合物で処理されたポリエステル繊維)の難燃性が低下することがある。
とRとが結合してC2〜9アルキレン基となって酸素原子およびリン原子とともに環状構造Aを形成する場合、RとRとが結合した連結基−R−R−は、好ましくはC2〜6アルキレン基である。環状構造Aにおける環は、5〜7員環であることが好ましく、より好ましくは5員環もしくは6員環であり、さらに好ましくは6員環である。環が大き過ぎる場合もしくは小さすぎる場合には、環が不安定になりやすく、その結果、環の開裂によって生じる酸成分(P−OH)が材料(例えば、リン化合物を含有するポリウレタン樹脂組成物またはリン化合物で処理されたポリエステル繊維)に悪影響を及ぼすおそれがある。
特に好ましくは、環状構造Aは、以下の構造式で示される環状構造A1である。
環状構造A1:
【化82】


ここで、R51およびR52は同一であってもよく、または異なってもよく、水素またはアルキルであり、R51およびR52の炭素数の合計は0〜6であり、より好ましくは0〜4である。
とRとが結合してC2〜9アルキレン基となって酸素原子およびリン原子とともに環状構造Bを形成する場合、RとRとが結合した連結基−R−R−は、好ましくはC2〜6アルキレン基である。環状構造Bにおける環は、5〜7員環であることが好ましく、より好ましくは5員環もしくは6員環であり、さらに好ましくは6員環である。環が大き過ぎる場合もしくは小さすぎる場合には、環が不安定になりやすく、その結果、環の開裂によって生じる酸成分(P−OH)が材料(例えば、リン化合物を含有するポリウレタン樹脂組成物またはリン化合物で処理されたポリエステル繊維)に悪影響を及ぼすおそれがある。
特に好ましくは、環状構造Bは、以下の構造式で示される環状構造B1である。
環状構造B1:
【化83】


ここで、R53およびR54は同一であってもよく、または異なってもよく、水素またはアルキルであり、R53およびR54の炭素数の合計は0〜6であり、より好ましくは0〜4である。
(R〜Rの炭素数の合計)
上述した基R〜Rは、それぞれ独立して上述した各種の基であり得るが、化合物が環状構造Aおよび環状構造Bの両方を有する場合、R〜Rの炭素数の合計が、6以上となるように選択されることが好ましい。10以上となるように選択されることがより好ましい。また、化合物が環状構造Aおよび環状構造Bのいずれか1つを有する場合、R〜Rの炭素数の合計が、9以上となるように選択されることが好ましい。13以上となるように選択されることがより好ましい。R〜Rの炭素数の合計が小さすぎる場合には、化合物の耐熱性、耐水性、耐加水分解性などが低下しやすく、その結果、リン化合物を使用した材料(例えば、リン化合物を含有するポリウレタン樹脂組成物またはリン化合物で処理されたポリエステル繊維)の諸物性に悪影響を及ぼす恐れがある。また、R〜Rの炭素数の合計は、25以下となるように選択されることが好ましい。21以下となるように選択されることがより好ましい。17以下となるように選択されることがさらに好ましい。R〜Rの炭素数の合計が大きすぎる場合には、化合物が配合された材料(例えば、リン化合物を含有するポリウレタン樹脂組成物またはリン化合物で処理されたポリエステル繊維)の難燃性が低下することがある。
(好ましいRとRとの組み合わせ、およびRとRとの組み合わせ)
原料として入手しやすくまた合成(合成方法については後述する)も容易となる点を考慮すると、RとRとが環状構造Aを構成しない場合には、RとRとが同一であることが好ましく、RとRとが環状構造Bを構成しない場合にはRとRとが同一であることが好ましい。あるいは、RとRとが酸素原子およびリン原子と一緒になって環状構造を形成し、かつRとRとが酸素原子およびリン原子と一緒になって環状構造を形成することも好ましい。
【0081】
〜RのすべてがC以下のアルキル基の場合、または、R〜Rのいずれかがメチル基の場合は、その部分の結合力が弱まるため、水に対する分解性が高まり、加水分解が生じやすくなる。従って耐水性および耐熱性が低下しやすくなる。さらに加水分解により酸成分が生成すると、難燃剤として樹脂に添加された際に樹脂に悪影響を与える可能性がある。ただし、理由は定かではないが、環状構造Aまたは環状構造Bを有する場合には、環状構造を有さない基がエチル基であっても加水分解は比較的生じにくくなる。
【0082】
(連結基R20
20は、式67の連結基である。
(式67)
【化84】


ここで、RおよびRは、同一であってもよく、異なってもよく、水素、C1〜6アルキル基、または、C6〜11アリール基のいずれかであるか、あるいはRとRとが結合して置換基を有していてもよいC4〜10アルキレン基となって炭素原子とともに以下の式の環状構造を形成し、
【化85】


の炭素数とRの炭素数との和は0〜12である。RまたはRがC6〜11アリール基である場合、好ましくは、C6〜11アリール基は、C1〜5アルキルで置換されてもよいフェニルであり、より好ましくはフェニルである。すなわち、R20は、メチレン基またはC2〜13の枝分かれ状のアルキレン基あるいはC5〜11の環構造を有するアルキレン基、もしくは、C7〜12アリール置換アルキレン基のいずれかである。これらの中では、メチレン基またはC2〜13の枝分かれ状のアルキレン基が好ましく、メチレン基またはC2〜7の枝分かれ状のアルキレン基がより好ましく、メチレン基または−CH(CH)−基または−C(CH−基がさらに好ましい。
20は、2つのリン原子の間を、炭素1原子と酸素1原子とで連結する。すなわち、P−C−O−Pの形式の骨格となるように選択される。従って、R20は、−CH−またはその置換体である。例えば、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−CH(C)−、−C(CH)(C)−、−C(CH)(CHCH(CH)−などが例示される。R20が環状構造となる場合の具体例としては、例えば、環状の−C10−、すなわちシクロヘキシレンが例示される。
7〜12アリール置換アルキレン基とは、アルキレン基の水素をアリールで置換した基であって、アリール置換アルキレン基の全体として炭素数がC7〜12であるものをいう。C7〜12アリール置換アルキレン基中のアルキレン部分の炭素数は、C1〜4であることが好ましく、より好ましくはC(メチレン)である。C7〜12アリール置換アルキレン基中のアリール部分は任意のアリールであり、好ましくは、C7〜12アリール置換アルキレン基中のアリール部分はフェニルである。具体的には例えば、このような好ましいR20の例としては、−CH(C)−が挙げられる。
20の具体例としては、原料として入手しやすい点から、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CH)(C)−、−C(CH)(CHCH(CH)−、−CH(C)−、−C10−(すなわち、シクロヘキシレン)が好ましく、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH(CH)−がより好ましく、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−がさらに好ましい。
【0083】
(本発明の化合物(III))
別の局面において、本発明によれば、上記一般式(III)で表される化合物が提供される。
【0084】
式(III)において、RはC2〜9アルキレン基であり、好ましくはC3〜9アルキレン基である。上記式(I)の化合物の環状構造Aにおける連結基−R−R−について説明した連結基と同様の連結基がRとして適用可能である。
式(III)の環状構造における環は、5〜7員環であることが好ましく、より好ましくは5員環もしくは6員環であり、さらに好ましくは6員環である。
特に好ましくは、式(III)の環状構造は、以下の構造式で示される環状構造A2である。
環状構造A2:
【化86】


ここで、R11およびR12は同一であってもよく、または異なってもよく、水素またはアルキルであり、R11およびR12の炭素数の合計は0〜6であり、炭素数の合計の下限は1であることが好ましく、2がより好ましい。炭素数の合計が多いほど、安定性が向上する傾向がある。R11およびR12の炭素数の合計の上限は、6が好ましく、4がより好ましい。炭素数の合計が多すぎる場合には、化合物が配合された材料(例えば、リン化合物を含有するポリウレタン樹脂組成物またはリン化合物で処理されたポリエステル繊維)の難燃性が低下することがある。
は、原料として入手しやすい点から、−(CH−、−CH−CH(CH)−CH−、−CH−C(CH−CH−、−CH−C(C)(C)−CH−が好ましく、−CH−C(CH−CH−、−CH−C(C)(C)−CH−がより好ましい。
【0085】
の部分が環状構造を有していない場合、最終的に得られるリン化合物中のリン含有率が低下し、それに伴って難燃性能も低下するのが一般的であって、例えば、目的とする難燃性を付与させる量まで添加すると難燃化された製品の物性が著しく低下することがあって好ましくない。
【0086】
21は、式89の連結基である。
(式89)
【化87】


ここで、RおよびRは、同一であってもよく、異なってもよく、水素、C1〜6アルキル基、または、C6〜11アリール基のいずれかであるか、あるいはRとRとが結合して置換基を有していてもよいC4〜10アルキレン基となって炭素原子とともに以下の式の環状構造を形成し、
【化88】


の炭素数とRの炭素数との和は0〜12である。RまたはRがC6〜11アリール基である場合、好ましくは、C6〜11アリール基は、C1〜5アルキルで置換されてもよいフェニルであり、より好ましくはフェニルである。すなわち、R21は、メチレン基またはC2〜13の枝分かれ状のアルキレン基あるいはC5〜11の環構造を有するアルキレン基、もしくは、C7〜12アリール置換アルキレン基のいずれかである。これらの中では、メチレン基またはC2〜13の枝分かれ状のアルキレン基が好ましく、メチレン基またはC2〜7の枝分かれ状のアルキレン基がより好ましく、メチレン基または−CH(CH)−基または−C(CH−基がさらに好ましい。
21は、2つのリン原子の間を、炭素1原子と酸素1原子とで連結する。すなわち、P−C−O−Pの形式の骨格となるように選択される。従って、R21は、−CH−またはその置換体である。例えば、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−CH(C)−、−C(CH)(C)−、−C(CH)(CHCH(CH)−などが例示される。R21が環状構造となる場合の具体例としては、例えば、環状の−C10−、すなわちシクロヘキシレンが例示される。
7〜12アリール置換アルキレン基とは、アルキレン基の水素をアリールで置換した基であって、アリール置換アルキレン基の全体として炭素数がC7〜12であるものをいう。C7〜12アリール置換アルキレン基中のアルキレン部分の炭素数は、C1〜4であることが好ましく、より好ましくはC(メチレン)である。C7〜12アリール置換アルキレン基中のアリール部分は任意のアリールであり、好ましくは、C7〜12アリール置換アルキレン基中のアリール部分はフェニルである。具体的には例えば、このような好ましいR21の例としては、−CH(C)−が挙げられる。
21の具体例としては、原料として入手しやすい点から、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CH)(C)−、−C(CH)(CHCH(CH)−、−CH(C)−、−C10−(すなわち、シクロヘキシレン)が好ましく、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CH)(CHCH(CH)−がより好ましく、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−がさらに好ましい。
【0087】
(化合物の合成方法)
式(I)または式(III)で表される化合物は、リン化合物、特にホスフェートの合成方法およびホスファイトの合成方法として従来公知のプロセスを適宜組み合わせることにより製造できる。
【0088】
(1.ホスファイトの合成方法)
ホスファイトは、例えば、三ハロゲン化リンと、アルコール類またはフェノール類とを原料として用いて合成することができる。
三ハロゲン化リンとアルコール類との反応の場合、1モルの三ハロゲン化リン(PX)に対して、約3モルのアルコール類(ROH)と反応させることにより、以下の反応式に従ってホスファイトが得られる。
3ROH + PX → O=PH(−OR + RX +2HX
また、三ハロゲン化リンとフェノール類(ROH)との反応の場合、1モルの三ハロゲン化リンに対して、約3モルのフェノール類(ROH)と反応させ、その後、1モルの水と反応させることにより、以下の反応式に従ってホスファイトが得られる。
3ROH + PX → P(−OR
P(−OR + HO → O=PH(−OR + ROH
【0089】
あるいは、たとえば、1モルの三ハロゲン化リンに対して、約1モルのジオール(HOROH)と約1モルの水を同時に反応させてもよい。
【化89】

【0090】
上記の反応で使用される三ハロゲン化リンとしては、三塩化リン、三臭化リンなどが挙げられる。入手のしやすさやコストの点で三塩化リンが好ましい。
【0091】
上記の反応で使用されるアルコール類としては、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。耐加水分解性が高い、つまり安定性があり、かつ最終的に得られるリン化合物中のリン含有率が比較的高くなるという点で、n−ブタノールまたはsec−ブタノールが好ましい。また、リン含有率が高く、比較的耐加水分解性が高いという点で、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールが好ましい。また、リン含有率は低下するが、安定性があり、揮発性が低いという点で、2−エチルヘキサノールが好ましい。
【0092】
上記の反応で使用されるフェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトールなどが挙げられる。最終的に得られるリン化合物中のリン含有率が高くなるという点で、フェノールが好ましい。
【0093】
上記の反応で使用されるジオール類としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオールなどが挙げられる。化学的に安定な6員環構造が得られるという点で、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ヘキサンジオールが好ましく、ネオペンチルグリコールがさらに好ましい。
【0094】
上記の反応においては、必要に応じて、反応に関与しない溶媒を使用してもよい。例えば、ジオール類の出発原料としてネオペンチルグリコールを使用した場合、ネオペンチルグリコールは常温で固体であり、溶媒を使用することによりネオペンチルグリコールが溶解または分散し、反応を円滑に進めることが可能となる。反応に関与しない溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジクロロエタンなどが例示される。
【0095】
上記の反応では、アルコール類またはジオール類もしくはフェノール類、さらに必要であれば水および/または溶媒を仕込んでおき、そこへ三ハロゲン化リンを追加し、発生するハロゲン化水素を系外に出すという反応を行うことが一般的である。
【0096】
(2.ホスホネートの合成方法)
上記の反応によって得られたホスファイトを、たとえば、塩基性触媒の存在下で、アルデヒド類またはケトン類と反応させることによって、アルコール性水酸基を含有するホスホネートが得られる。
【0097】
上記の反応で使用される塩基性触媒としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ルチジン、ピコリン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)などのアミン類、または、金属ナトリウム、金属カリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアルコキシドなどのアルカリ金属類または金属含有塩基類が挙げられる。反応終了後に容易に除去ができるという点で、トリエチルアミンが好ましい。
【0098】
上記の反応で使用されるアルデヒド類としては、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。原料が安価であり、かつ最終的に得られるリン化合物中のリン含有率が高くなるという点で、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドが好ましい。ただし、得られるホスホネートの構造によっては水に対して加水分解を受けやすいものもあるため、ホルムアルデヒド水溶液(ホルマリン)を使用する場合には、得られるホスホネートが加水分解しないように留意するべきである。
【0099】
上記の反応で使用されるケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどが挙げられる。最終的に得られるリン化合物中のリン含有率が高くなるという点で、アセトンが好ましい。
【0100】
上記の反応においては、反応に関与しない溶媒を使用してもよい。反応に関与しない溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロエタンなどが例示される。
【0101】
(3.ホスフェート−ホスホネート化合物の合成方法)
上記の反応によって得られたホスホネートを、たとえば、ハロゲン化水素捕捉剤および必要であれば触媒の存在下で、ジ置換ホスホロハリデートと反応させることにより、化合物(I)が得られる。
また、上記の反応によって得られたホスホネートを、たとえば、ハロゲン化水素捕捉剤および必要であれば触媒の存在下で、オキシハロゲン化リンと反応させることにより、化合物(III)が得られる。
【0102】
上記の反応で使用されるハロゲン化水素捕捉剤の例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジンなどが挙げられる。また、触媒の例としては塩化マグネシウム、塩化アルミニウムなどのルイス酸系触媒、4−(ジメチルアミノ)ピリジンなどのアミン系触媒が挙げられる。
【0103】
上記の反応で使用されるジ置換ホスホロハリデートの例としては、ジフェニルホスホロハリデート、ジクレジルホスホロハリデートなどのジアリールホスホロハリデート、ジプロピルホスホロハリデート、ジブチルホスホロハリデートなどのジアルキルホスホロハリデート、ネオペンチレンホスホロハリデートなどの環状ホスホロハリデートが挙げられる。これらのジ置換ホスホロハリデートの製造方法は、たとえば、特開2000−239286号公報に記載されており、その方法に基づき、合成することができる。
【0104】
上記の反応で使用されるオキシハロゲン化リンとしては、オキシ塩化リン、オキシ臭化リンなどが挙げられる。安価であるという点で、オキシ塩化リンが好ましい。
【0105】
さらなる具体例として、式(VI)で表されるホスフェート−ホスホネート化合物の製造方法の例を示す。
【0106】
【化90】

【0107】
反応は、主として次式による。
【0108】
【化91】

【0109】
一般式(I)で表される化合物としては、一般式(VI)以外には、具体的には、たとえば以下の化合物が挙げられる。以下に例示する化合物は、上述した製造方法と同様の製造方法により得ることができる。
ただし、本発明の化合物は以下の例示により何ら制限されるものではない。
【0110】
化合物12:
【化92】

【0111】
化合物13:
【化93】

【0112】
化合物14:
【化94】

【0113】
化合物15:
【化95】

【0114】
化合物16:
【化96】

【0115】
化合物17:
【化97】

【0116】
化合物18:
【化98】

【0117】
化合物19:
【化99】

【0118】
化合物20:
【化100】

【0119】
化合物21:
【化101】

【0120】
化合物22:
【化102】

【0121】
化合物23:
【化103】

【0122】
化合物24:
【化104】

【0123】
化合物25:
【化105】

【0124】
化合物26:
【化106】

【0125】
化合物27:
【化107】

【0126】
化合物28:
【化108】

【0127】
化合物29:
【化109】

【0128】
化合物30:
【化110】

【0129】
化合物31:
【化111】

【0130】
化合物32:
【化112】

【0131】
化合物33:
【化113】

【0132】
化合物34:
【化114】

【0133】
化合物35:
【化115】

【0134】
化合物36:
【化116】

【0135】
化合物37:
【化117】


本発明の難燃剤として使用可能な化合物の具体例としては、さらに、以下の化合物が例示される。
【0136】
化合物38:
【化118】

【0137】
化合物39:
【化119】

【0138】
化合物40:
【化120】

【0139】
化合物41:
【化121】

【0140】
化合物42:
【化122】

【0141】
一般式(III)で表される化合物としては、具体的には、たとえば以下の化合物が挙げられる。以下に例示する化合物は、上述した製造方法と同様の製造方法により得ることができる。
ただし、本発明の化合物は以下の例示により何ら制限されるものではない。
化合物43:
【化123】

【0142】
化合物44:
【化124】

【0143】
化合物45:
【化125】

【0144】
化合物46:
【化126】

【0145】
本発明のホスフェート−ホスホネート化合物は、各種難燃剤として有用である。例えば、各種樹脂の難燃剤として有用である。樹脂は合成樹脂であってもよく、天然樹脂であってもよい。特に合成樹脂において有用である。樹脂は熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。より具体的には、例えば、ポリカーボネート、ABS樹脂、PPEなどの熱可塑性樹脂用の難燃剤、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂用の難燃剤、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂またはポリエステル繊維用の難燃剤として極めて有用である。
(ポリエステル用難燃剤)
【0146】
本発明のポリエステル用難燃剤としては、一般式(I)で表される化合物が使用され得る。その詳細な説明(例えば、その化合物の具体例および製造方法など)については、本願明細書中にその化合物の説明として説明されているとおりである。
【0147】
また、本発明のポリエステル用難燃剤としては、一般式(III)で表される化合物が使用され得る。その詳細な説明(例えば、その化合物の具体例および製造方法など)については、本願明細書中にその化合物の説明として説明されているとおりである。
これらのポリエステル用難燃剤は、特に、ポリエステル繊維に対して有効である。例えば、難燃剤をポリエステル繊維の表面に固着させることにより、良好な難燃性を有するポリエステル繊維とすることができる。
【0148】
本発明のポリエステル用難燃剤を用いる場合、ポリエステル繊維に固着させるリン化合物の量は、リン化合物とポリエステル繊維との合計重量のうち、0.1重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がさらに好ましく、0.5重量%以上が特に好ましい。また、30重量%以下が好ましく、10重量%以下がさらに好ましく、5重量%以下が特に好ましい。リン化合物の含有量が少なすぎる場合には、ポリエステル繊維に十分な難燃性を付与することが困難となる。一方、その含有量が多すぎる場合には、リン化合物の増加分に応じた難燃性の増大効果が得られ難くなるばかりでなく、繊維表面にブリードアウトを生じやすくなり、逆に、繊維表面に生じた難燃剤成分が繊維を容易に燃焼させる要因を引き起こすおそれがあって好ましくない。
【0149】
(ポリエステル繊維)
本発明に用いられるポリエステル繊維については、特に制限はなく、従来公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、その材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレートなどが使用可能である。ポリエチレンテレフタレートが好ましい。ポリエステル繊維の断面形態は、任意の形状を採用することができ、丸形であってもよく、異形であってもよい。丸形が好ましい。
ポリエステル繊維のフィラメントの太さに特に限定はなく、任意の太さのポリエステル繊維に本発明の難燃剤を使用することができる。例えば、0.001〜3000D(デニール:長さ9000mあたりのグラム数)のポリエステル繊維に好ましく使用することができ、より好ましくは、0.01〜200Dである。
ポリエステル繊維は、任意の形態で使用可能であり、使用可能な形態の例としては例えば、織物、編物、不織布、紐、ロープ、糸、トウ、トップ、カセ、編織物などが挙げられる。
さらに、ポリエステル繊維とそれ以外の繊維との混合物に本発明の難燃剤を用いてもよい。例えば、上記ポリエステル繊維と他の繊維との混合物(例えば、天然、再生、半合成、合成繊維との混紡織物もしくは交織織物)などに本発明の難燃剤を使用することが可能である。
繊維の用途にも特に限定はなく、例えば、被服用、工業用、漁網等の各種用途の繊維製品等に本発明の難燃剤が使用可能である。
【0150】
(ポリエステル繊維用難燃処理剤の作製方法)
本発明のポリエステル繊維用難燃剤は、公知の各種の方法でポリエステル繊維に固着させられる。例えば、本発明のポリエステル繊維用難燃剤に必要に応じて溶媒などを加えて液状の材料とし、この液状材料をポリエステル繊維に接触させ、その後必要に応じて乾燥工程などにより溶媒等を除去することにより、ポリエステル繊維にポリエステル繊維用難燃剤を固着させることができる。
本発明において、ポリエステル繊維に難燃性を付与させるために作製される難燃処理剤は、通常、リン化合物を水に溶解、乳化もしくは分散させたもの、または有機溶剤中に分散または溶解させたものが好ましく使用される。リン化合物を水に分散させる方法としては、従来公知の各種の方法が可能であり、たとえばリン化合物とアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤などの界面活性剤と有機溶剤とを配合して攪拌し、徐々に湯を加えて乳化分散させる方法がある。この際に使用される界面活性剤は、従来公知のものを制限なく使用することができる。
【0151】
アニオン界面活性剤としては、具体的には、例えば、脂肪酸セッケン等のカルボン酸塩;
高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルポリアルキレングリコールエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化脂肪酸、硫酸化オレフィン等の硫酸エステル塩;
アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸等のホルマリン縮合物、α−オレフィンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、イゲポンT型(オレイン酸クロリドとN−メチルタウリンとの反応によって得られる化合物)、スルホコハク酸ジエステル塩等のスルホン酸塩;
高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩;
等が挙げられる。
【0152】
非イオン界面活性剤としては、具体的には、例えば、高級アルコールアルキレンオキサイド付加物、アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、スチレン化アルキルフェノールアルキレンオキサイド付加物、スチレン化フェノールアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルアルキレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドアルキレンオキサイド付加物、油脂のアルキレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリアルキレングリコール型;
グリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等の多価アルコール型;
等が挙げられる。
【0153】
さらに、分散液の場合には、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ザンタンガム、デンプン糊等の分散安定化剤を使用することができる。
【0154】
分散安定化剤の使用量は、難燃処理剤100重量部に対して0.05重量部以上が好ましく、0.1重量部以上がさらに好ましい。5重量部以下が好ましく、3重量部以下がさらに好ましい。使用量が少なすぎる場合には、リン化合物の凝集や沈降が生じるおそれがあって好ましくない。一方、使用量が多すぎる場合には、分散液の粘性が増大し、その結果、難燃処理剤が繊維の奥深くまで入り込むことが困難となって、処理後のポリエステル繊維の難燃性が低下することがある。
【0155】
有機溶剤としては、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、アルキルナフタレンなどの芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;ジオキサン、エチルセロソルブなどのエーテル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;メチレンクロライド、クロロホルムなどのハロゲン系炭化水素類などが挙げられる。これらを単独で、または二種以上混合して用いることができる。
【0156】
難燃処理剤が乳化又は分散した水性液の場合には、従来より乳化又は分散型の難燃処理剤の製造に用いられているホモジナイザー、コロイドミル、ボールミル、サンドグラインダー等の乳化機や分散機を用いて得ることができる。
【0157】
さらにまた、難燃性の他に耐光堅牢度等が要求される場合には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤や従来から用いられている他の繊維用処理剤を、難燃性を損なわない程度に難燃処理剤と併用することもできる。このような繊維用処理剤としては、帯電防止剤、撥水撥油剤、防汚剤、硬仕上剤、風合調整剤、柔軟剤、抗菌剤、吸水剤、スリップ防止剤等が挙げられる。これらは、かかるポリエステル繊維に、予め付着あるいは吸着されていてもよい。また、繊維に難燃化処理を施す際に吸着させてもよい。
【0158】
(ポリエステル繊維の難燃処理方法)
本発明においては、任意の方法でポリエステル繊維に難燃剤を付与することができる。好ましくは、ポリエステル繊維が形成された後に、難燃剤を付与する。具体的には例えば、繊維に難燃処理剤を付与し(難燃処理剤付与工程)、この繊維に熱を印加して難燃処理する(熱処理工程)などの方法であり、より具体的には、例えば以下の三種の方法(方法1、方法2および方法3)のいずれかの方法を用いることが特に好ましい。
【0159】
(方法1)
方法1は、難燃処理剤付与工程でポリエステル繊維に難燃処理剤を付与した後、熱処理工程で難燃処理剤が付与されたポリエステル繊維を100〜220℃で熱処理する方法であり、スプレー処理−ドライ−キュア方式、パッド−ドライ−スチーム方式、パッド−スチーム方式、パッド−ドライ−キュア方式等の乾熱又は湿熱法が適用される方法である。
【0160】
具体的には、まず、難燃処理剤を含む処理液又はその希釈液でポリエステル繊維をスプレー処理又はパッド処理し、乾燥させた後、常圧にて好ましくは100〜220℃、より好ましくは160〜190℃の温度の熱処理を、例えば、数十秒から数分程度行う。
このときの温度が低すぎる場合には、ポリエステル繊維の分子中の非結晶領域が、難燃処理剤中に存在するリン化合物の分子を受け入れうる程に弛緩又は膨張し難い傾向にあり、その結果、処理後のポリエステル繊維の難燃性が低下することがある。一方、熱処理の温度が高すぎる場合には、難燃処理剤のポリエステル繊維への固着をより強固にすることができるが、方法1では、熱処理温度が高すぎる場合には、加熱時間によって差異があるものの、ポリエステル繊維自体の繊維強度が低下したり熱変性が生じるおそれがある。
【0161】
上記のような好適な温度範囲で熱処理工程を行うことにより、難燃処理剤中に存在するリン化合物が、常圧においてもポリエステル繊維分子中の非結晶領域に安定に且つより多く固着される。したがって、ポリエステル繊維に対して十分な難燃性及び洗濯耐久性を与えることが可能となる。
【0162】
(方法2)
方法2は、難燃処理剤付与工程において、難燃処理剤を含む処理液又はその希釈液にポリエステル繊維を浸漬することによってポリエステル繊維に難燃処理剤を付与しつつ、熱処理工程において、ポリエステル繊維を浸漬させながら、この処理液を高温常圧下もしくは高温加圧下(例えば、90〜150℃、常圧〜0.4MPa)にて熱処理する方法である。すなわち、難燃処理剤付与工程と熱処理工程とを同時に実施する方法である。
【0163】
具体的には、液流染色機、ビーム染色機、チーズ染色機等のパッケージ染色機を用い、難燃処理剤にポリエステル繊維織物を浸漬した状態で、好ましくは90〜150℃、常圧〜0.4MPaの高温常圧下もしくは高温加圧下、より好ましくは110〜140℃、0.05〜0.3MPaの高温加圧下で、例えば、数分〜数十分間浸漬熱処理することにより、難燃処理剤をポリエステル繊維に固着することができる。
このときの温度が低すぎる場合には、ポリエステル繊維の分子における非結晶領域が、リン系化合物の分子又は粒子を受け入れうる程に弛緩又は膨張し難い傾向にあり、その結果、処理後のポリエステル繊維の難燃性が低下することがある。一方、この温度が高すぎる場合には、加熱時間によって差異があるものの、ポリエステル繊維自体の繊維強度が低下したり、熱変性が生じるおそれがある。
【0164】
上記のような好適な条件下で熱処理工程を行うことにより、方法1と同様、難燃処理剤中に存在するリン化合物が、ポリエステル繊維分子中の非結晶領域に安定に且つより多く固着される。したがって、ポリエステル繊維に対して十分な難燃性及び洗濯耐久性を付与することが可能となる。なお、ポリエステル繊維を浸漬する前に、難燃処理剤を上記の好適範囲内の温度に予め加熱しておき、その中にポリエステル繊維を浸漬しても、優れた難燃処理剤の固着効果が同様に奏される。
【0165】
(方法3)
方法3は、難燃処理剤付与工程において、難燃処理剤とキャリヤーとを含む処理液又はその希釈液にポリエステル繊維を浸漬することによってポリエステル繊維に難燃処理剤を付与しつつ、熱処理工程において難燃処理液を加熱し、ポリエステル繊維を例えば、80〜130℃、常圧〜0.2MPaの高温常圧下もしくは高温加圧下にて熱処理する方法である。ここで、キャリヤーとは、ポリエステル繊維を膨潤させることにより、難燃処理剤がポリエステル繊維の分子配列中に良好に固着することを促進する物質である。
【0166】
ここで、キャリヤーとしては、従来のキャリヤー染色で使用されているキャリヤーが使用可能である。具体例としては例えば、クロルベンゼン系、芳香族エステル系、メチルナフタレン系、ジフェニル系、安息香酸系、オルソフェニルフェノール系等の化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。
【0167】
この方法においては、難燃処理剤中に乳化又は分散されたキャリヤーがポリエステル繊維に吸着することにより、難燃処理剤がポリエステル繊維の分子配列中に良好に固着することが促進される。その結果、より穏やかな条件、例えば、80〜130℃、常圧〜0.2MPaなどの条件で熱処理を行っても、難燃処理剤中に存在する難燃化が発揮されうる十分な量のリン化合物をポリエステル繊維の内部に安定に固着させることができる。
【0168】
また、熱処理時の条件がこのように穏やかであるため、熱処理工程におけるポリエステル繊維に対する熱的な影響(熱負荷、熱履歴等)が軽減される。よって、熱処理工程におけるポリエステル繊維の強度低下や熱変性を十分に防止することができる。さらに、この方法では、上述した方法2と同様に、難燃処理剤付与工程と熱処理工程とを同時に実施し、或いは、ポリエステル繊維を浸漬する前に処理液を上記の好適な温度に加熱しておいてもよい。
【0169】
ここで、キャリヤーの含有量としては、加工されるポリエステル繊維の重量に対して、0.1〜10% o.w.f.(「on the weight of fiber」の略;以下同様)が好ましく、1.0〜5.0% o.w.f.がさらに好ましい。キャリヤーの含有量が少なすぎる場合には、ポリエステル繊維への難燃処理剤の固着が十分に促進されない傾向にあり、その結果、処理後のポリエステル繊維の難燃性が低下することがある。一方、キャリアーの含有量が多すぎる場合には、キャリヤーが処理液中に乳化又は分散され難くなる傾向にある。
【0170】
さらに、キャリヤーを処理液中に良好に乳化又は分散させるために、界面活性剤として、ヒマシ油硫酸化油、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレン(POE)ヒマシ油エーテル、POEアルキルフェニルエーテル等を処理液に適宜添加してもよい。
【0171】
なお、浸漬熱処理(難燃処理剤付与工程及び熱処理工程)によって難燃処理剤中に存在するリン化合物をポリエステル繊維に固着させるにあたっては、ポリエステル繊維を染色する前、染色と同時、染色した後のいずれの時期に行ってもよく、工程数及び作業工数を低減して作業効率を高める観点からは、染色と同時に行うことが好ましい。
【0172】
また、上記に記載の各方法において、熱処理工程を実施した後に、通常の方法によってポリエステル繊維のソーピング処理を行い、ポリエステル繊維に強固に固着せず、表面に緩やかに(ルースに)付着しているリン化合物を除去することが好ましい。
このソーピング処理に用いられる洗浄剤としては、通常の陰イオン系、非イオン系、両性系の界面活性剤及びこれらが配合された洗剤を用いることができる。
【0173】
なお、ポリエステル繊維に高度の洗濯耐久性が必要とされない場合には、難燃処理剤中に存在するリン化合物がポリエステル繊維の表面に強固に固着される必要はなく、リン化合物が繊維の表面に緩く付着するだけでもよい。この場合には、熱処理工程を実質的に省略できる。また、ポリエステル繊維の表面にリン化合物が緩く付着しているだけの状態でもポリエステル繊維に難燃性を付与することができる。
【0174】
(ポリウレタン樹脂用難燃剤)
上述したリン化合物は、ポリウレタン樹脂用難燃剤として優れた性能を有する。
本発明のポリウレタン樹脂用難燃剤としては、一般式(I)で表される化合物が使用され得る。その詳細な説明(例えば、その化合物の具体例および製造方法など)については、本願明細書中にその化合物の説明として説明されているとおりである。
また、本発明のポリウレタン樹脂用難燃剤としては、一般式(III)で表される化合物が使用され得る。その詳細な説明(例えば、その化合物の具体例および製造方法など)については、本願明細書中にその化合物の説明として説明されているとおりである。
これらのポリウレタン用難燃剤は、特に、ポリウレタンフォームに対して有効である。
上記したリン化合物をポリウレタン樹脂用難燃剤として使用する際の使用量は、必要とされる難燃性の程度に応じて適宜決定すればよいが、使用量が少なすぎる場合には、充分な難燃化効果が得られず、一方、使用量が多すぎると、得られる樹脂組成物の物理的特性に悪影響を及ぼすおそれがある。従って、ポリウレタン樹脂配合中のポリオール成分100重量部に対して、0.1重量部以上使用することが好ましく、1重量部以上使用することがより好ましく、5重量部以上使用することがさらに好ましい。60重量部以下使用することが好ましく、40重量部以下使用することがより好ましく、30重量部以下使用することがさらに好ましい。
【0175】
(ポリオール成分)
本発明のポリウレタン樹脂組成物に用いられるポリオール成分としては、ポリウレタン樹脂用のポリオールとして公知の各種のポリオールが使用可能である。具体例としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオールなどが挙げられる。一般にポリウレタン形成の原料として使用されるものであれば特に限定されない。一分子当たり約2〜15個の水酸基を含有するポリオールが好ましく、1分子当り約2〜8個の水酸基を含有するポリオールがより好ましい。またポリオールの分子量は、約100〜20000が好ましく、約250〜6500がより好ましい。分子量がこの範囲であれば、ウレタンフォーム形成に適した活性と粘度が得られやすく、逆に分子量が大きすぎる場合または小さすぎる場合には、良好なウレタンフォームが得られにくい。
【0176】
これらの内で、ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ショ糖等の多官能ポリオール類、アンモニア、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、アミノエチルピペラジン、アニリン等のアミン化合物等に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドをランダムまたはブロック状に付加させて得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、二官能ポリプロピレングリコールタイプのDiol−700(水酸基価:160.0KOHmg/g:三井武田ケミカル社製)、三官能ポリプロピレングリコールタイプのMN−3050 ONE(水酸基価:56.0KOHmg/g:三井武田ケミカル社製)、多官能ポリプロピレングリコールタイプのサンニックスFA−311S(水酸基価:42.0KOHmg/g:三洋化成工業社製)、SU−464(水酸基価:460KOHmg/g:三井武田ケミカル社製)等が挙げられる。
【0177】
ポリエステルポリオールは、多官能カルボン酸と多官能ヒドロキシ化合物との重縮合によって得られる末端に水酸基を有する化合物であり、アジピン酸系ポリエステル、フタル酸系ポリエステル、アゼライン酸ポリエステル、セバシン酸ポリエステル、ポリカプロラクトンポリエステル等が挙げられる。具体的には、例えば、フタル酸系ポリエステルタイプのES−30、ES−40(三井武田ケミカル社製)、長鎖二塩基酸であるアゼライン酸およびセバシン酸ポリエステルタイプのODX2,460(大日本インキ化学工業社製)やPMAZ(クラレ社製)等が挙げられる。
【0178】
ポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体を混合し、必要により、連鎖移動剤、分散安定剤等を加えて、ラジカル開始剤の存在下にエチレン性不飽和単量体をラジカル重合させることによって得ることができる。エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物含有モノマー、ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン等の炭化水素化合物、スチレン、α−メチルスチレン、フェニルスチレン、クロルスチレン等の芳香族炭化水素化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有モノマー、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルエチルケトン等のビニルケトン類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド等のアクリルアミド類,N,N−ジメチルメタクリロイルアミド等のメタクリルアミド類等を例示できる。これらのエチレン性不飽和単量体は、1種類を単独で用いてもよく、又は二種以上混合して用いてもよい。具体的には、例えば、POP−90/20(水酸基価:36.0KOHmg/g:三井武田ケミカル社製)、サンニックスFL−555(水酸基価:30.0KOHmg/g:三洋化成工業社製)等が挙げられる。
【0179】
上記したポリオール成分は、形成されるポリウレタン発泡体に対して要求される特性に応じて、1種類を単独で用いてもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0180】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートはイソシアネート基を分子内に2個以上有する化合物である。本発明のポリウレタン樹脂組成物において、ポリイソシアネートとしては、従来公知の任意のポリウレタン樹脂に使用されるポリイソシアネートを使用することができる。この様なポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート等を用いることができ、更に、これらのポリイソシアネートを変性して得られる変性ポリイソシアネート等を用いることができる。また、必要に応じて、2種類以上のポリイソシアネートの混合物を用いてもよい。
これらのポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが使用可能である。また、これらのポリイソシアネートの変性物、例えば、カルボジイミド変性物、ビュウレット変性物、2量体、3量体等を用いることができる。さらにこれらのポリイソシアネートと活性水素化合物とから得られる末端イソシアネート基プレポリマー等も用いることができる。具体的には、例えば、コスモネートT−80(三井武田ケミカル社製)、コスモネートT−65(三井武田ケミカル社製)、コスモネートT−100(三井武田ケミカル社製)、コスモネートM−200(三井武田ケミカル社製)、コスモネートLL(三井武田ケミカル社製)、コスモネートPM−80(三井武田ケミカル社製)等が挙げられる。
【0181】
本発明のポリウレタン樹脂組成物には、特に、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等の異性体を持つトリレンジイソシアネート(TDI)および/またはジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)を単独でまたは混合して用いることが好ましい。
ポリイソシアネート成分の使用量に特に限定はなく、ポリオールと反応してポリウレタンが形成され得る限り、任意の量で使用可能である。従って、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の総モル数と、ポリオール中の水酸基の総モル数と、発泡剤の水のモル数とを勘案して、ウレタン合成反応が良好に進行するように配合量を適宜決定することができる。配合量を決定する際にイソシアネートインデックスという言葉がよく用いられる。ここで、イソシアネートインデックスとは、例えば、ポリオールや水などの活性水素含有化合物に対して、化学量論的に必要なポリイソシアネートの量を100とした場合の比率を意味する。軟質ポリウレタンフォームの場合には、ポリイソシアネートの量は、イソシアネートインデックスが90〜120程度となる量とすることが好ましく、95〜115程度となる量とすることがより好ましく、100〜115程度となる量とすることがさらに好ましい。一方、硬質ポリウレタンフォームの場合には、ポリイソシアネートの量は、通常、イソシアネートインデックスが100〜110程度で用いられる。また、ポリイソシアヌレートフォーム(PIR)の場合には、ポリイソシアネートの量は、イソシアネートインデックスが180〜300程度となる量とすることが好ましく、220〜260程度となる量とすることがより好ましい。ポリイソシアネートの量が多すぎる場合または少なすぎる場合には、良好な物性を有するポリウレタンフォームを得ることが困難になりやすい。
【0182】
(触媒)
本発明のポリウレタン樹脂組成物には、必要に応じて触媒が添加される。本発明のポリウレタン樹脂組成物に用いられる触媒に特に限定はなく、ポリウレタンを合成する反応を促進するための従来公知の各種の触媒を使用することができる。大別してアミン触媒と金属触媒が挙げられる。アミン触媒としては、トリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N−エチルモルホリン等が挙げられる。また、金属触媒としては、錫、銅、亜鉛、コバルト、ニッケルなどの各種金属を含む有機金属化合物が代表的なものであり、特にスタナスオクテート、ジブチルチンジラウレート等の錫触媒が好適に用いられる。有機金属触媒は、スラブ系軟質ポリウレタンフォーム作製時に好適に用いられる。
アミン触媒の使用量は、好ましくは、ポリオール成分100重量部に対して、0.05〜1.0重量部程度である。有機金属触媒の使用量は、活性の強さにもよるが、例えば、スタナスオクテートの場合であれば、ポリオール成分100重量部に対して、0.01〜0.8重量部程度である。
なお、本発明のウレタン樹脂組成物においては有機金属触媒は必須成分ではない。従って、触媒を添加しなくても充分なウレタン合成反応が行われる場合には、触媒を添加する必要はない。例えば、硬質ポリウレタンフォーム作製時には、一般的には、有機金属触媒は使用されない。
【0183】
(シリコーン整泡剤)
本発明のウレタン樹脂組成物には、通常、シリコーン整泡剤が使用される。難燃性の軟質または硬質ポリウレタンフォームを製造する際には、シリコーン整泡剤を使用することにより、原料成分の混合乳化、巻き込みガスの分散が容易になると共に、泡の合一防止、セル膜の安定化等の効果が奏されて、より良好な特性を有するフォームを得ることができる。
【0184】
本発明に使用可能なシリコーン整泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサンとポリエーテルのブロック共重合体が挙げられ、その分子構造は、直鎖型、枝分かれ型、ペンダント型などの形態となっている。特に、枝分かれ型、ペンダント型の共重合体が多く用いられているが、本発明においては、使用されるシリコーン整泡剤に特に制限はなく、従来から軟質または硬質ポリウレタンフォーム用として用いられている各種のシリコーン整泡剤を適宜選択して用いればよい。
シリコーン整泡剤の使用量については、好ましくは、ポリオール成分100重量部に対して、0.2重量部以上である、より好ましくは、0.5重量部以上である。少なすぎる場合には、シリコーン整泡剤の添加効果が得られにくい。シリコーン整泡剤の使用量はまた、ポリオール成分100重量部に対して、5重量部以下が好ましく、2重量部以下がより好ましい。
【0185】
(発泡剤)
軟質または硬質ポリウレタンフォームを製造する際には、通常、発泡剤が使用される。発泡剤を用いない場合には、充分に発泡させることが困難になりやすいので、発泡剤を用いることが非常に好ましい。本発明のポリウレタン樹脂組成物においては発泡剤として、通常のポリウレタンフォームに使用される公知の発泡剤を使用することができる。具体的には例えば、水、フロン、ジクロロメタン、n−ペンタン、イソペンタン等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。工業的には、ポリウレタンフォームを得る場合に水を使用することが非常に好ましい。従って、要求される発泡体の密度やその他の物性等に応じて、水を単独で用いるか、もしくは、水と水以外の発泡剤との混合物を使用することが好ましい。
【0186】
ポリウレタンフォーム形成のための発泡剤の使用量に特に限定はないが、発泡剤として水を用いる場合であれば、ポリオール成分100重量部に対して、水を好ましくは、0.1重量部以上、より好ましくは、1.0重量部以上使用する。好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは、6重量部以下である。さらに、要求される発泡体の密度やその他の物性等に応じて、必要であれば、水以外の発泡剤を例えば、1.0〜30重量部程度併用することができる。発泡剤の使用量が少なすぎる場合には、充分に発泡させることが困難になりやすい。また、発泡剤の使用量が多すぎる場合には、発泡体の物性が低下する場合がある。
【0187】
(酸化防止剤)
本発明のポリウレタン樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止有効量の酸化防止剤を含有させることができる。ここで酸化防止剤の例としては、ヒドロキノン化合物及び3価の有機リン酸化合物が挙げられる。ヒドロキノン化合物は、一般に、式(VII)で示される:
【0188】
(式VII)
【化127】


(式中、R31、R32、R33およびR34は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜14のアルキル基である)。
上記ヒドロキノン化合物の具体例としては、例えば、ヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、2,5−ジオクチルヒドロキノン、tert−アミルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、オクチルヒドロキノン等が挙げられる。特に2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン等が耐熱性に優れており、好ましい。
【0189】
また上記3価の有機リン化合物の具体例としては、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス−(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイト等が挙げられる。
【0190】
酸化防止剤を用いる場合、酸化防止剤は、ポリイソシアネートと混合する前のポリオール、もしくは難燃剤(有機リン化合物)に添加して均一に混合して、使用することができる。酸化防止剤の使用量は、ポリウレタン樹脂組成物100重量部に対し0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜2重量部になるように配合することがより好ましい。酸化防止剤がこの範囲であれば、有効な酸化防止効果が得られる。なお、長期の保存安定性が要求されない場合には、酸化防止剤を使用する必要はない。
【0191】
(その他の成分)
更に、本発明のポリウレタン樹脂組成物には、必要に応じて、形成される樹脂組成物に対して悪影響を及ぼさない範囲内で、その他の成分として、メラミンなどの他の難燃剤、難燃助剤、着色剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、充填剤等の添加剤を配合することができる。これらの添加剤の種類及び添加量については特に限定はなく、通常用いられている添加剤を、通常の使用量の範囲において使用できる。
(組成物の混合方法)
ポリウレタン樹脂組成物の各成分の混合方法およびその順序は特に限定されず、任意の方法および順序が可能である。一般的には、ポリイソシアネート以外の成分を攪拌混合しておき、発泡させる直前にポリイソシアネートを添加して発泡させる方法が好適である。
(その他の樹脂製品用途)
本明細書においては、特に、ポリエステル繊維およびポリウレタンフォームについて詳細に本発明の難燃剤の使用方法を説明している。これらの用途において、本発明の難燃剤の効果が極めて有利であるからである。しかしながら、本発明の難燃剤の用途はこれらに限定される訳ではない。従って、繊維の形態以外の形態のポリエステルに用いることも可能であり、フォームの形態以外の形態のポリウレタンに用いることも可能である。さらに、ポリエステルおよびポリウレタン以外の熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィンなど)に用いることも可能であり、熱硬化性樹脂に用いることも可能である。
【実施例】
【0192】
(実施例)
本発明を以下の実施例、試験例および比較試験例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
【0193】
(合成実施例1 リン化合物(1)の合成)
(原料1の合成)
攪拌機、温度計、滴下装置、塩酸回収装置および還流管を備えた1リットルの四つ口フラスコに、ネオペンチルグリコール208.0g(2モル)及びトルエン135gを充填した。この混合溶液を攪拌しながらオキシ塩化リン307.0g(2モル)を50℃で1時間かけて添加し、追加終了後、温度50℃から70℃まで2時間掛けて昇温し反応させることで、発生する塩化水素を125.6g回収した。その後、70℃、33kPaにて1時間減圧することで、残存する副生塩化水素ガスを取り除いた。その後、再結晶により反応生成物を得た。かくしてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による純度は100面積%で221.4g(収率60%)のネオペンチレンホスホロクロリデート(原料1)を得ることが出来た。原料1は、融点が105.0℃で、白色結晶の性状を有した。
(中間体1の合成)
攪拌器、温度計、滴下装置、塩酸回収装置および還流管を備えた1リットルの四つ口フラスコに、ネオペンチルグリコール208.0g(2モル)、水36.0g(2モル)およびトルエン200gを充填した。この混合溶液を攪拌しながら三塩化リン274.6g(2モル)を40℃で2時間かけて追加し、追加終了後1時間かけて120℃まで昇温加熱した後、同温度(120℃)で30分間反応させることで、発生する塩化水素を214.2g回収した。その後、60℃、53kPaにて2時間減圧することで、残存する副生塩化水素ガスを取り除いた。さらに60℃を保持しつつ、徐々に減圧し最終的に2.0kPaになるまでトルエンを回収した。このようにして反応生成物311.4gを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による純度は95.6面積%であった。かくして得られた反応生成物は127℃、0.27kPaにて蒸留することで、純度100%で241.2g(収率80.4%)のネオペンチレンホスファイト(中間体1)を得ることが出来た。中間体1は、融点が56.0℃で、白色結晶の性状を有した。
【0194】
(中間体2の合成)
次に、攪拌器、温度計、滴下装置および還流管を備えた2リットルの新たな四つ口フラスコに、94%パラホルムアルデヒド31.9g(1モル)、1,2−ジクロロエタン90gおよびトリエチルアミン3.0g(0.03モル)を充填した。この混合溶液を攪拌しながら中間体1の150.1g(1モル)と1,2−ジクロロエタン90gの混合溶液を60℃で2時間かけて追加した。その後1時間、同温度(60℃)で反応させ、ネオペンチレン(ヒドロキシメチル)ホスホネート(中間体2)を主成分とする溶液を得た。溶剤およびトリエチルアミンを除いたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による純度は95.8面積%、溶液中の純収率は96.0%であった。なお、触媒として用いたトリエチルアミン、および溶媒として用いた1,2−ジクロロエタンは次の工程でも使用するため、回収は行わなかった。
ちなみに、中間体2の物性を調べるために、中間体2を主成分とする溶液の一部を採取し、溶剤およびトリエチルアミンを(中間体1の合成)の項に記載の方法と同様な操作で取り除いた結果、融点が116.0℃で、白色結晶の性状を有することがわかった。
【0195】
(リン化合物(1)の合成)
上記反応終了後の中間体2を含む溶液を収容するフラスコに、トリエチルアミン121.4g(1.2モル)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン1.85g(0.015モル)および1,2−ジクロロエタン420gを充填し、攪拌しながら原料1を177.1g(0.96モル)と1,2−ジクロロエタン450gの混合溶液を20℃で2時間かけて追加し、その後8時間同温度(20℃)にて反応させた。この反応終了溶液を過剰分のトリエチルアミンに相当する量の塩酸水溶液にて室温で中和処理を行い、静置分離し、続けて炭酸水素ナトリウム水溶液にて有機層の中和処理を行った後、有機層はさらに2回水洗を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥を行った後、その濾液へトルエンを追加して再結晶を行いリン化合物(1)171.4gを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による純度は100面積%、収率は54.4%であった。
【0196】
三塩化リンを基準とした全体的な収率は、
(中間体1)80.4%×(中間体2)96.0%×(リン化合物1)54.4%=42.0%
であった。
【0197】
得られた生成物は、融点が152.0℃で、白色結晶の性状を有した。また、元素分析結果およびUV分光器を用いたリンの定量値は表1に示したとおりで、理論値とほぼ一致した。なお、FT−IRに関しては、その赤外吸収領域を数値化し下記した。H−NMR、13C−NMRおよびGC−MSチャートをそれぞれ図1A−1B、図2A−2Bおよび図3A−3Dに示した。以上の結果から、生成物の構造は以下の化学式で表される化合物であることを確認した。
【0198】
【表1】


IR(KBr):2976,1482,1378,1334,1288,1084,1048,1002,983,955,922,863,830,818,624,615,528,498,and 466cm−1
【0199】
化合物VI:
【化128】

【0200】
(合成実施例2 リン化合物(2)の合成)
合成実施例1における中間体2を含む反応終了溶液を収容するフラスコにトリエチルアミン121.4g(1.2モル)、1,2−ジクロロエタン420gを充填した。攪拌しながらジフェニルホスホロクロリデート(DPC:大八化学工業社製)257.8g(0.96モル)を20℃で1時間かけて追加し、その後3時間同温度(20℃)にて反応させた。この反応終了溶液を過剰分のトリエチルアミンに相当する量の塩酸水溶液にて室温で中和処理を行い、静置分離し、続けて炭酸水素ナトリウム水溶液にて有機層の中和処理を行った後、有機層はさらに2回水洗を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥を行った後、溶剤および水を留去してリン化合物(2)251.0gを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による純度は93.0面積%、収率は63.5%であった。
【0201】
三塩化リンを基準とした全体的な収率は、
(中間体1)80.4%×(中間体2)96.0%×(リン化合物2)63.5%=49.0%
であった。
【0202】
得られた生成物は、常温で淡黄色透明液体の性状を有した。また、元素分析結果およびUV分光器を用いたリンの定量値は表2に示したとおりで、理論値とほぼ一致した。なお、FT−IRに関しては、その赤外吸収領域を数値化し下記した。H−NMR、13C−NMR、およびGC−MSチャートをそれぞれ図4A−4D、図5A−5Cおよび図6A−6Dに示した。以上の結果から、生成物の構造は以下の化学式で表される化合物であることを確認した。
【0203】
【表2】


IR:3072,2976,2900,1594,1491,1376,1293,1219,1190,1165,1085,1053,1011,960,838,774,691,and 618cm−1
【0204】
化合物20:
【化129】

【0205】
(合成実施例3 リン化合物(3)の合成)
(中間体3の合成)
攪拌器、温度計、滴下装置、塩酸回収装置および還流管を備えた2リットルの四つ口フラスコに、三塩化リン275.0g(2モル)、およびn−ブチルクロライド400gを充填した。この混合溶液を攪拌しながらn−ブタノール444.0g(6モル)を室温から30分間かけて追加し、最終的に70℃まで昇温した。その後、60℃で約33kPaに達するまで徐々に減圧し、残存する副生塩化水素ガス、副生n−ブチルクロライドを取り除いた。さらに90℃で0.67kPaにて減圧蒸留を行いジブチルホスファイト(中間体3)343.8gを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による純度は100面積%、収率は88.6%であり、常温で無色透明液体の性状を有した。
【0206】
(中間体4の合成)
次に、攪拌器、温度計、滴下装置および還流管を備えた2リットルの新たな四つ口フラスコに、94%パラホルムアルデヒド31.9g(1モル)、トルエン90gおよびトリエチルアミン20.2g(0.2モル)を充填した。この混合溶液を攪拌しながら中間体3の194.0g(1モル)とトルエン90gの混合溶液を60℃で2時間かけて追加した。その後1時間、同温度(60℃)で反応させて、ジブチル(ヒドロキシメチル)ホスホネート(中間体4)を主成分とする溶液を得た。溶剤およびトリエチルアミンを除いたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による純度は93.2面積%、溶液中の純収率は89.1%であった。なお、触媒として用いたトリエチルアミン、および溶媒として用いたトルエンは次の工程でも使用するため、回収は行わなかった。
ちなみに、中間体4の物性を調べるために、中間体4を主成分とする溶液の一部を採取し、溶剤およびトリエチルアミンを(中間体1の合成)の項に記載の方法と同様な操作で取り除いた結果、無色透明液体の性状を有することがわかった。
【0207】
上記反応終了後の中間体4を含む溶液を収容するフラスコに、トリエチルアミン121.4g(1.2モル)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン1.83g(0.015モル)を充填し、攪拌しながら原料1を164.2g(0.89モル)とトルエン450gの混合溶液を20℃で2時間かけて追加し、その後8時間同温度(20℃)にて反応させた。この反応終了溶液を過剰分のトリエチルアミンに相当する量の塩酸水溶液にて室温で中和処理を行い、静置分離し、続けて炭酸水素ナトリウム水溶液にて有機層の中和処理を行った後、有機層はさらに2回水洗を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥を行った後、溶剤および水を留去してリン化合物(3)311.2gを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による純度は95.1面積%、収率は94.0%であった。
【0208】
三塩化リンを基準とした全体的な収率は、
(中間体3)88.6%×(中間体4)89.1%×(リン化合物3)94.0%=74.2%
であった。
【0209】
得られた生成物は、常温で無色透明液体の性状を有した。また、元素分析結果およびUV分光器を用いたリンの定量値は表3に示したとおりで、理論値とほぼ一致した。なお、FT−IRに関しては、その赤外吸収領域を数値化し下記した。H−NMR、13C−NMRおよびGC−MSチャートをそれぞれ図7A−7C、図8A−8Cおよび図9A−9Dに示した。以上の結果から、生成物の構造は以下の化学式で表される化合物であることを確認した。
【0210】
【表3】


IR:2976,1475,1379,1306,1264,1056,1011,918,858,and 627cm−1
【0211】
化合物27:
【化130】

【0212】
(合成実施例4 リン化合物(4)の合成)
攪拌器、温度計、滴下装置、塩酸回収装置および還流管を備えた2リットルの四つ口フラスコに、合成実施例1における中間体2の302.4g(1.68モル)と1,2−ジクロロエタン1kg、及び4−(ジメチルアミノ)ピリジンを1.02g(0.008モル)とトリエチルアミンを202.4g(2.0モル)の混合溶液を攪拌しながらオキシ塩化リン86.0g(0.56モル)を室温にて60分間かけて追加した。その後その温度のまま8時間攪拌し、反応を完結させた。室温で過剰分のトリエチルアミンに相当する量の塩酸水溶液にて中和処理を行い、静置分離し、有機層はさらに1回水洗を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥を行った後、その濾液から溶剤を留去してリン化合物(4)180.1gを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による純度は97.5面積%、収率は55.1%であった。
【0213】
三塩化リンを基準とした全体的な収率は、
(中間体1)80.4%×(中間体2)96.0%×(リン化合物4)55.1%=42.5%
であった。
【0214】
得られた生成物は、融点が151.0℃で、白色結晶の性状を有した。また、元素分析結果およびUV分光器を用いたリンの定量値は表4に示したとおりで、理論値とほぼ一致した。なお、FT−IRに関しては、その赤外吸収領域を数値化し下記した。H−NMR、13C−NMR、およびGC−MSチャートをそれぞれ図10A−10C、図11A−11B、および図12A−12Cに示した。以上の結果から、生成物の構造は以下の化学式で表される化合物であることを確認した。
【0215】
【表4】


IR(KBr):2976,2912,1478,1437,1411,1376,1290,1248,1053,1008,979,950,925,877,864,819,614,and 477cm−1
【0216】
化合物43:
【化131】


(合成実施例5)
中間体2の原料として、パラホルムアルデヒド1モルの代わりにアセトアルデヒド1モルを用いた以外は、合成実施例1と同様に合成を行った。その結果、リン化合物(1)のリン原子とリン原子との間の連結基(−CH−O−)が(−CH(CH)−O−)に置換された構造の化合物が良好な収率で得られた。
(合成実施例6)
中間体2の原料として、パラホルムアルデヒド1モルの代わりにアセトアルデヒド1モルを用いた以外は、合成実施例2と同様に合成を行った。その結果、リン化合物(2)におけるリン原子とリン原子との間の連結基(−CH−O−)が(−CH(CH)−O−)に置換された構造の化合物が良好な収率で得られた。
(合成実施例7)
中間体4の原料として、パラホルムアルデヒド1モルの代わりにアセトアルデヒド1モルを用いた以外は、合成実施例3と同様に合成を行った。その結果、リン化合物(3)のリン原子とリン原子との間の連結基(−CH−O−)が(−CH(CH)−O−)に置換された構造の化合物が良好な収率で得られた。
(合成実施例8)
中間体2の原料として、パラホルムアルデヒド1モルの代わりにアセトアルデヒド1モルを用いた以外は、合成実施例4と同様に合成を行った。その結果、リン化合物(4)のリン原子とリン原子との間の連結基(−CH−O−)が(−CH(CH)−O−)に置換された構造の化合物が良好な収率で得られた。
【0217】
(合成実施例9 リン化合物(5)の合成)
(中間体5の合成)
攪拌器、温度計、滴下装置、塩酸回収装置および還流管を備えた2リットルの四つ口フラスコに、2−エチルヘキサノール643.5g(4.95モル)を充填した。この液を攪拌しながら三塩化リン206.3g(1.50モル)を20℃で2時間かけて追加し、発生する副生塩化水素を33.2g回収した。その後、最終的に148℃、2.0kPaに達するまで徐々に昇温減圧し、残存する副生塩化水素ガスおよび副生2−エチルヘキシルクロライドを取り除いた。さらに150℃で0.7kPaにて減圧蒸留を行いビス(2−エチルヘキシル)ホスファイト(中間体5)393.9gを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による純度は100面積%、収率は85.8%であり、常温で無色透明液体の性状を有した。
【0218】
(中間体6の合成)
次に、攪拌器、温度計、滴下装置および還流管を備えた2リットルの新たな四つ口フラスコに、アセトン63.8g(1.1モル)、1,2−ジクロロエタン90gおよびナトリウムメトキシド5.4g(0.1モル)を充填した。この混合溶液を攪拌しながら中間体5の306.0g(1.0モル)を50℃で2時間かけて追加した。その後1時間、同温度(50℃)で反応させて、ビス(2−エチルヘキシル)ジメチルヒドロキシメチルホスホネート(中間体6)を主成分とする溶液を得た。溶媒およびナトリウムメトキシドを除いたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による純度は93.0面積%、溶液中の純収率は67.0%であった。なお、溶媒として用いた1,2−ジクロロエタンは次の工程でも使用するため、回収は行わなかった。また、触媒として用いたナトリウムメトキシドは次の工程における中和処理にて除去できるため、ここでは回収は行わなかった。
ちなみに、中間体6の物性を調べるために、中間体6を主成分とする溶液の一部を採取し、溶媒および触媒を(中間体1の合成)の項に記載の方法と同様な操作で取り除いた結果、常温で無色透明液体の性状を有することがわかった。
【0219】
(リン化合物(5)の合成)
上記反応終了後の中間体6を含む溶液を収容するフラスコに、トリエチルアミン80.8g(0.8モル)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン4.1g(0.034モル)および1,2−ジクロロエタン420gを充填し、攪拌しながら原料1を123.6g(0.67モル)と1,2−ジクロロエタン450gの混合溶液を20℃で2時間かけて追加し、その後8時間同温度(20℃)にて反応させた。この反応終了溶液を過剰分のトリエチルアミンおよび中間体6の合成時に使用されたナトリウムメトキシドの分に相当する量の塩酸水溶液にて室温で中和処理を行い、静置分離し、続けて炭酸水素ナトリウム水溶液にて有機層の中和処理を行った後、有機層はさらに2回水洗を行った。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥を行った後、溶剤および水を留去してリン化合物(5)212.9gを得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による純度は82.0面積%、収率は62.1%であった。
三塩化リンを基準とした全体的な収率は、
(中間体5)85.8%×(中間体6)67.0%×(リン化合物5)62.1%=35.7%
であった。
得られた生成物は、常温で無色透明液体の性状を有した。また、元素分析結果およびUV分光器を用いたリンの定量値は表5に示したとおりで、理論値とほぼ一致した。なお、FT−IRに関しては、その赤外吸収領域を数値化し下記した。H−NMR、13C−NMRおよびLC−MSチャートをそれぞれ図13A−13D、図14A−14Hおよび図15に示した。以上の結果から、生成物の構造は以下の化学式で表される化合物であることを確認した。
【0220】
【表5】


IR:2960,1466,1376,1309,1264,1216,1152,1069,1014,996,918,851,816,733,624cm−1
【0221】
化合物40:
【化132】


(合成実施例10)
中間体6の原料として、アセトン1.1モルの代わりにメチルイソブチルケトン(MIBK)1.1モルを用いた以外は、合成実施例9と同様に合成を行った。その結果、リン化合物(5)のリン原子とリン原子との間の連結基(−C(CH−O−)が(−C(CH)(CHCH(CH)−O−)に置換された構造の化合物が得られた。
(合成実施例11)
中間体5の代わりに中間体3を用いた以外は、合成実施例9と同様に合成を行った。その結果、対応する化合物が良好な収率で得られた。
(合成実施例12)
中間体5の代わりに中間体3を用い、中間体6の合成においてアセトン1.1モルの代わりにシクロヘキサノン1.1モルを用いた以外は、合成実施例9と同様に合成を行った。その結果、対応する化合物が良好な収率で得られた。
【0222】
(試験例および比較試験例)
試験例および比較試験例に用いたリン化合物および試験方法を以下に示す。
【0223】
(ポリエステル繊維に対する難燃性試験)
リン化合物を溶解または分散させた7.5wt%メタノール溶液中に、ポリエチレンテレフタレート100%のポリエステル繊維織物(目付250g/m)を約10分浸漬し、マングルでピックアップが70〜80%になるように絞った後、110℃にて乾燥、180℃にて数分キュアーを行った。その後、洗浄を行い、乾燥した。これを難燃性試験および洗濯耐久性試験に用いた。リン化合物として、合成実施例1〜3で得られたものを使用した。これらの結果を表6に示す。
【0224】
(難燃性)
難燃性は、JIS L 1091 A−1(ミクロバーナー法)にて評価した。また、洗濯耐久性は、JIS L 1091(繊維製品の難燃性試験方法)に記載されている洗濯方法により評価した。
【0225】
【表6】

【0226】
本発明の有機リン化合物をポリエステル繊維用の難燃剤として使用した場合に、十分な難燃性を付与することができた。
【0227】
本発明のポリエステル難燃剤を以下の合成実施例、ポリエステル実施例およびポリエステル比較例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
【0228】
合成実施例で得られたリン化合物、ならびに実施例および比較例において用いた配合成分を下記する。
(a)リン化合物(難燃剤)成分
(以下、便宜上、ポリエステルのための難燃剤1、難燃剤2、…をそれぞれ、「ポリエステル難燃剤1」、「ポリエステル難燃剤2」、…と記載する。)
ポリエステル難燃剤1:下記式の化合物
【化133】


ポリエステル難燃剤2:下記式の化合物
【化134】


ポリエステル難燃剤3:下記式の化合物
【化135】


ポリエステル難燃剤4:下記式の化合物
【化136】


ポリエステル難燃剤5:下記式の化合物
【化137】


ポリエステル難燃剤6:米国特許第4697030号公報に記載のEXAMPLE 10に準拠して得られた合成品
ポリエステル難燃剤7:1,2,5,6,9,10−ヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)
ポリエステル難燃剤8:下記式の化合物
【化138】

【0229】
(b)ポリエステル繊維
ポリエチレンテレフタレート100%のポリエステル繊維織物(目付250g/m)を使用した。
【0230】
(ポリエステル難燃剤1の合成)
上記「(リン化合物(1)の合成)」の欄に記載の方法と同一の方法によって得られた化合物をポリエステル難燃剤1とした。
【0231】
(ポリエステル難燃剤2の合成)
上記「(リン化合物(2)の合成)」の欄に記載の方法と同一の方法によって得られた化合物をポリエステル難燃剤2とした。
【0232】
(ポリエステル難燃剤3の合成)
上記「(リン化合物(3)の合成)」の欄に記載の方法と同一の方法によって得られた化合物をポリエステル難燃剤3とした。
【0233】
(合成実施例13 ポリエステル難燃剤4の合成)
(中間体7の合成)
攪拌器、温度計、滴下装置および還流管を備えた2リットルの新たな四つ口フラスコに、ジエチルホスファイト(城北化学社製)138.0g(1モル)およびトリエチルアミン20.2g(0.2モル)を充填し、この混合溶液を攪拌しながら94%パラホルムアルデヒド31.9g(1モル)を60℃で1時間かけて追加した。その後2時間、同温度(60℃)で反応させて、ジエチル(ヒドロキシメチル)ホスホネート(中間体7)を主成分とする溶液を得た。
【0234】
(ポリエステル難燃剤4の合成)
上記反応終了後の中間体7を含む反応終了溶液を用いること以外は(ポリエステル難燃剤3の合成)に記載の方法と同様にしてポリエステル難燃剤4を得た。
【0235】
(ポリエステル難燃剤5の合成)
上記「(リン化合物(4)の合成)」の欄に記載の方法と同一の方法によって得られた化合物をポリエステル難燃剤5とした。
【0236】
(ポリエステル難燃剤6の合成)
米国特許第4697030号公報に記載のEXAMPLE 10に準拠して、ポリエステル難燃剤6を得た。
【0237】
(ポリエステル難燃剤8の合成)
上記「合成実施例7」の欄に記載の方法と同一の方法によって得られた化合物をポリエステル難燃剤8とした。
【0238】
(ポリエステル難燃処理剤の作製)
(以下、便宜上、ポリエステルのための難燃処理剤1、難燃処理剤2、…をそれぞれ、「ポリエステル難燃処理剤1」、「ポリエステル難燃処理剤2」、…と記載する。)
(ポリエステル難燃処理剤1の作製)
ポリエステル難燃剤1を40gと、界面活性剤としてトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド15モル付加物を5g配合し、湯55gを攪拌しながら加えた。その後、分散安定化剤としてカルボキシメチルセルロースを0.2g添加し、白色分散液状のポリエステル難燃処理剤1を得た。
(ポリエステル難燃処理剤2の作製)
ポリエステル難燃剤2を40gと、界面活性剤としてトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド20モル付加物を5g配合し、湯55gを攪拌しながら加えた。その後、分散安定化剤としてサンタンガムを0.2g添加し、白色分散液状のポリエステル難燃処理剤2を得た。
(ポリエステル難燃処理剤3の作製)
ポリエステル難燃剤1の代わりに、ポリエステル難燃剤3を用いたこと以外は(ポリエステル難燃処理剤1の作製)に記載の方法と同様にして、白色分散液状の難燃処理剤3を得た。
(ポリエステル難燃処理剤4の作製)
ポリエステル難燃剤1の代わりに、ポリエステル難燃剤4を用いたこと以外は(ポリエステル難燃処理剤1の作製)に記載の方法と同様にして、白色分散液状のポリエステル難燃処理剤4を得た。
(ポリエステル難燃処理剤5の作製)
ポリエステル難燃剤1の代わりに、ポリエステル難燃剤5を用いたこと以外は(ポリエステル難燃処理剤1の作製)に記載の方法と同様にして、白色分散液状のポリエステル難燃処理剤5を得た。
(ポリエステル難燃処理剤6の作製)
ポリエステル難燃剤1の代わりに、ポリエステル難燃剤6を用いたこと以外は(ポリエステル難燃処理剤1の作製)に記載の方法と同様にして、白色分散液状のポリエステル難燃処理剤6を得た。
(ポリエステル難燃処理剤7の作製)
ポリエステル難燃剤7を40gと、界面活性剤としてトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド20モル付加物を5g配合し、湯55gを攪拌しながら加えた。その後、分散安定化剤としてカルボキシメチルセルロースを0.2g添加し、白色分散液状のポリエステル難燃処理剤7を得た。
(ポリエステル難燃処理剤8の作製)
ポリエステル難燃剤1の代わりに、ポリエステル難燃剤8を用いたこと以外は(ポリエステル難燃処理剤1の作製)に記載の方法と同様にして、白色分散液状のポリエステル難燃処理剤8を得た。
(難燃処理剤適合性試験)
ポリエステル繊維に対する難燃処理剤としての適合性を以下に示す耐加水分解性試験および乳化安定性試験で判断した。
(1)耐加水分解性試験
蓋のないガラス円筒容器(直径30mm×高さ80mm)にポリエステル難燃剤1〜4(ポリエステル実施例1〜4)およびポリエステル難燃剤6(ポリエステル比較例1)を各容器に秤量して加え、飽和水蒸気圧雰囲気(130℃×1時間)下における、各難燃剤の酸性成分の耐加水分解性試験前後の酸価増加率を計算し、耐加水分解性試験とした。
(2)乳化安定性試験
作製したポリエステル難燃処理剤1〜4(ポリエステル実施例1〜4)およびポリエステル難燃処理剤6(ポリエステル比較例1)を、60℃で2週間保持したときの難燃処理剤の乳化安定性を目視にて評価した。その乳化安定性は、乳化性に応じて○(極めて良好)、△(良好)、×(不良)にて判定した。これら耐加水分解性試験および乳化安定性試験の結果を表7に示す。なお、表7において、「実施例」とは上記ポリエステル実施例を示し、「比較例」とは、上記ポリエステル比較例を示す。以下の表8および表9においても同様である。
【表7】


表7において増加率が大きいということは、飽和水蒸気によりリン化合物が加水分解を受けやすいことを意味する。
本発明の難燃性ポリエステル繊維に使用されるポリエステル実施例1〜4のリン化合物(ポリエステル難燃剤1〜4)とポリエステル比較例1のリン化合物(ポリエステル難燃剤6)とを比較すると、ポリエステル比較例1で使用したリン化合物は加水分解を受けやすいことがわかる。
さらに、ポリエステル実施例4のリン化合物(ポリエステル難燃剤4)とポリエステル比較例1のリン化合物(ポリエステル難燃剤6)とを比較すると、環状構造を有することで耐加水分解性の向上が見られることがわかる。
また、乳化安定性試験結果から、ポリエステル比較例1のリン化合物(ポリエステル難燃剤6)は、ポリエステル実施例1〜4(ポリエステル難燃剤1〜4)と比較すると、乳化安定性が良好とは言い難い。
これらの結果から、ポリエステル難燃剤6のようなタイプの従来のリン化合物を、例えば、水系の乳化分散液状態の難燃処理剤として使用すると、加水分解によって生じた酸性成分が難燃処理剤の乳化安定性を悪化させ、繊維の難燃処理時に熱を加えて加工を施した場合に染色ムラやオイルスポット等の不良を生じることが当然に予想される。
【0239】
(ポリエステル繊維の難燃処理方法)
【0240】
(処理方法1)
分散染料(カヤロン・ポリエスター・ブルー;日本化薬株式会社製)2%owfの染浴中に、難燃処理剤を7.5%濃度になるように添加し、その浴中にポリエチレンテレフタレート100%のポリエステル繊維織物(目付250g/m)を、浴比1:20により、ミニカラー試験機(テクサム技研社製)を使用し130℃×60分間処理し、還元洗浄、水洗、乾燥(100℃×5分間)した。その後、熱処理(170℃×1分間)した。
【0241】
(処理方法2)
難燃処理剤を7.5%濃度に調整した水分散液に、濃色顔料で染色されたポリエチレンテレフタレート100%のポリエステル繊維織物(目付250g/m)を浸漬し、マングルでピックアップが70%〜80%になるように絞った後、乾燥(110℃×3分間)し、180℃×1分間加熱処理した。その後、水洗・乾燥した。
【0242】
以下のポリエステル実施例およびポリエステル比較例で得られた繊維織物の物性を、下記の試験方法に基づいて測定した。
(1)難燃性試験
難燃性試験として、上記の処理方法1,2によって難燃処理されたポリエステル繊維織物について、JIS L 1091に規定されるD法に準拠して防炎性能試験を行った。なお、防炎性能試験は、難燃処理されたポリエステル繊維織物、JIS L 1042に規定される洗濯を5回行ったもの、JIS L 1018に規定されるドライクリーニングを5回行ったものについて評価した。
(2)染色性
各難燃処理法で得られた試験片、及び洗濯耐久性試験を経た後の試験片を目視にて評価した。不良の有無を評価した。
(3)風合い
各難燃処理法で得られた試験片、及び洗濯耐久性試験を経た後の試験片を手触りにて評価した。良好、やや良好、不良の判定を行った。
【0243】
(ポリエステル実施例5〜8およびポリエステル比較例2)
ポリエステル難燃処理剤1〜4(ポリエステル実施例5〜8)およびポリエステル難燃処理剤7(ポリエステル比較例2)を用いて、処理方法1による難燃処理方法で得られたポリエステル繊維織物の物性を表8A〜8Cに示す。
【0244】
【表8A】


【表8B】


【表8C】

【0245】
(ポリエステル実施例9〜13およびポリエステル比較例3)
ポリエステル難燃処理剤1〜5(ポリエステル実施例9〜13)およびポリエステル難燃処理剤7(ポリエステル比較例3)を用いて、処理方法2による難燃処理方法で得られたポリエステル繊維織物の物性を表9A〜9Cに示す。
【0246】
【表9A】


【表9B】


【表9C】

【0247】
表8A〜Cおよび表9A〜Cに示す結果から明らかなように、ポリエステル実施例5〜13に示す本発明によるホスフェート−ホスホネート化合物よりなる難燃性ポリエステル繊維は、非ハロゲン系化合物であるにもかかわらず、洗濯前、洗濯後およびドライクリーニング後のいずれの状態においても、ハロゲン系化合物であるヘキサブロモシクロドデカンからなる難燃性ポリエステル繊維(ポリエステル比較例2、3)以上の優れた難燃性を示し、さらに、該リン化合物からなる難燃性ポリエステル繊維は、染色性、風合いなどの繊維としての諸物性が良好であることがわかる。
表8A〜Cに示す結果より、つまり、処理方法1において、本発明による該リン化合物を染色浴に添加することにより、染色と同時に難燃性を付与した難燃性ポリエステル繊維が得られることがわかる。
また、表9A〜Cに示す結果より、つまり、処理方法2において、予め染色された繊維織物を用いても、得られた難燃性ポリエステル繊維は、染色性、風合いなどの繊維としての諸物性を維持できることがわかる。
上記各ポリエステル実施例では、難燃剤のリン化合物として、リン原子とリン原子との間の連結基として−CH−O−基を有し、リン原子とリン原子とが「P−CH−O−P」との構造で連結される化合物を用いたが、その連結基を−CH(CH)−O−基に変更して、リン原子とリン原子とが「P−CH(CH)−O−P」との構造で連結される化合物を難燃剤として用いて同様に試験をしたところ、上記各ポリエステル実施例と同様の良好な結果が得られた。具体的には、以下のとおりである。
(ポリエステル実施例14および15)
ポリエステル難燃処理剤8を用いて、処理方法1(ポリエステル実施例14)および処理方法2(ポリエステル実施例15)による難燃処理方法で得られたポリエステル繊維織物の物性を表10に示す。
【表10】

【0248】
さらに、本発明のポリウレタン難燃剤を以下のポリウレタン実施例、試験例および比較試験例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
【0249】
合成例で得られたリン化合物、ならびにポリウレタン実施例およびポリウレタン比較例において用いた配合成分を下記する。
(a)リン化合物(ポリウレタン難燃剤)成分
(以下、便宜上、ポリウレタンのための難燃剤1、難燃剤2、…をそれぞれ、「ポリウレタン難燃剤1」、「ポリウレタン難燃剤2」、…と記載する。)
ポリウレタン難燃剤1:下記式の化合物
【化139】


ポリウレタン難燃剤2:下記式の化合物
【化140】


ポリウレタン難燃剤3:下記式の化合物
【化141】


ポリウレタン難燃剤4:下記式の化合物
【化142】


ポリウレタン難燃剤5:下記式で表される2種のハロゲン(塩素)含有リン化合物の混合物(大八化学工業株式会社製、商品名:UF−500 酸価:0.03KOHmg/g)
【化143】


および
【化144】


ポリウレタン難燃剤6:米国特許第4697030号公報に記載のEXAMPLE 9に準拠して得られた合成品
ポリウレタン難燃剤7:下記式の化合物
【化145】


ポリウレタン難燃剤8:下記式の化合物
【化146】


ポリウレタン難燃剤9:下記式の化合物
【化147】


ポリウレタン難燃剤10:下記式の化合物
【化148】


ポリウレタン難燃剤11:下記式の化合物
【化149】

【0250】
(b)ポリオール成分
ポリオール1:三官能ポリプロピレングリコールタイプのポリエーテルポリオール(数平均分子量3000、水酸基価:56.0KOHmg/g)(三井武田ケミカル社製、商品名:MN−3050 ONE)
ポリオール2:多官能ポリプロピレングリコールタイプのポリエーテルポリオール(数平均分子量400、水酸基価:460KOHmg/g)(三井武田ケミカル社製、商品名:SU−464)
【0251】
(c)ポリイソシアネート成分
ポリイソシアネート1:トリレンジイソシアネート(2,4−/2,6−異性体比=80/20)(三井武田ケミカル株式会社製、商品名:コスモネートT−80)
ポリイソシアネート2:ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(三井武田ケミカル株式会社製、商品名:コスモネートM−200)
【0252】
(d)触媒成分
(d1)アミン触媒
アミン触媒1:33重量%のトリエチレンジアミンを含有するジプロピレングリコール溶液(三共エアープロダクツ株式会社製、商品名:DABCO 33LV)
アミン触媒2:70重量%のビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテルを含有するジプロピレングリコール溶液(クランプトン株式会社製、商品名:NIAX A1)
アミン触媒3:トリエタノールアミン(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)
アミン触媒4:N,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(花王株式会社製、商品名:カオライザーNo.3)
(d2)錫触媒
錫触媒1:スタナスオクテート(三共エアープロダクツ株式会社製、商品名:DABCO T−9)
【0253】
(e)シリコーン整泡剤成分
整泡剤1:L−620(クランプトン株式会社製、商品名:L−620)
整泡剤2:SH−193(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、商品名:SH−193)
【0254】
(f)発泡剤成分
発泡剤1:水
発泡剤2:ジクロロメタン(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)
【0255】
その他の成分
メラミン:粒子径が40〜50μmであるメラミン粉末(日産化学株式会社製)
以下に各種リン化合物の合成例を記載するが、合成方法はこれらに限定されるものではない。
【0256】
(ポリウレタン難燃剤1の合成)
上記「(リン化合物(1)の合成)」の欄に記載の方法と同一の方法によって得られた化合物をポリウレタン難燃剤1とした。ポリウレタン難燃剤1の酸価は0.04KOHmg/gであった。
【0257】
(ポリウレタン難燃剤2の合成)
上記「(リン化合物(2)の合成)」の欄に記載の方法と同一の方法によって得られた化合物をポリウレタン難燃剤2とした。ポリウレタン難燃剤2の酸価は0.03KOHmg/gであった。
【0258】
(ポリウレタン難燃剤3の合成)
上記「(リン化合物(3)の合成)」の欄に記載の方法と同一の方法によって得られた化合物をポリウレタン難燃剤3とした。ポリウレタン難燃剤3の酸価は0.05KOHmg/gであった。
【0259】
(ポリウレタン難燃剤4の合成)
上記「(リン化合物(4)の合成)」の欄に記載の方法と同一の方法によって得られた化合物をポリウレタン難燃剤4とした。ポリウレタン難燃剤4の酸価は0.09KOHmg/gであった。
【0260】
(ポリウレタン難燃剤6の合成)
米国特許第4697030号公報に記載のEXAMPLE 9に準拠して、ポリウレタン難燃剤6を得た。得られたポリウレタン難燃剤6の物性を下記する。
水酸基価:167KOHmg/g(Example9記載値:173KOHmg/g)
酸価:1.4KOHmg/g(Example9記載値:0.8KOHmg/g)
【0261】
(ポリウレタン難燃剤7の合成)
上記「合成実施例7」の欄に記載の方法と同一の方法によって得られた化合物をポリウレタン難燃剤7とした。ポリウレタン難燃剤7の酸価は0.06KOHmg/gであった。
【0262】
(ポリウレタン難燃剤8の合成)
上記「(リン化合物(5)の合成)」の欄に記載の方法と同一の方法によって得られた化合物をポリウレタン難燃剤8とした。ポリウレタン難燃剤8の酸価は0.06KOHmg/gであった。
【0263】
(ポリウレタン難燃剤9の合成)
上記「合成実施例10」の欄に記載の方法と同一の方法によって得られた化合物をポリウレタン難燃剤9とした。ポリウレタン難燃剤9の酸価は0.07KOHmg/gであった。
(ポリウレタン難燃剤10の合成)
上記「合成実施例11」の欄に記載の方法と同一の方法によって得られた化合物をポリウレタン難燃剤10とした。ポリウレタン難燃剤10の酸価は0.06KOHmg/gであった。
(ポリウレタン難燃剤11の合成)
上記「合成実施例12」の欄に記載の方法と同一の方法によって得られた化合物をポリウレタン難燃剤11とした。ポリウレタン難燃剤11の酸価は0.07KOHmg/gであった。
【0264】
以下の実施例および比較例で得られた樹脂組成物の物性を、下記の試験方法に基づいて測定した。
I.軟質ポリウレタンフォーム用試験
(1)水平燃焼試験
試験方法:FMVSS−302に準拠
試験片:長さ250mm、幅70mm、厚さ5mm
評価基準:平均燃焼速度(100mm/分以下)
ただし、A標線(38mm基準線)を越えていない場合は、燃焼距離(mm)で明記した。
(2)UL耐炎性試験
試験方法:UL94(HF試験)に準拠
試験片:長さ152mm、幅50.8mm、厚さ12.7mm
評価基準:HF−1、HF−2、HBFにより区分
(3)フォギング試験
試験片厚さ:10mm
試験片直径:80mm
110℃で3時間、円筒形ガラス容器にて上記形状の発泡体を保管し、頂上部のガラス板に対する揮発性物質の付着量を測定する。なお、ガラス板上部には、20℃に冷却できるように冷却装置を装備する。
(4)圧縮残留歪み
試験方法:JIS K−6400に準拠
フォーム片:縦6cm、横6cm、厚さ5cm
70℃×22時間の条件下において、6cm×6cmのフォーム片の面を50%圧縮し、圧縮を解除した後、発泡体の厚さを測定し、圧縮前の発泡体の厚さに対する厚さの減少率を圧縮残留歪みとして評価した。例えば、4cmに戻った場合には、圧縮残留歪みは(1−4/5)×100=20%となる。
II.California 117燃焼試験
(1)縦型燃焼試験
試験方法:California 117, Section A, Part I.試験法に準拠
試験片:長さ305mm、幅75.0mm、厚さ13.0mm
評価基準:常温保管試験片と熱老化後(104±2℃、24時間保管)の試験片を5枚ずつ準備し計10枚の縦型燃焼を行う。評価は、平均燃焼距離(147mm以下)、最大燃焼距離(196mm以下)、平均燃焼時間(5秒以下)、最大燃焼時間(10秒以下)の4項目で判定し、全てを満足した場合に限り合格とする。
(2)イス型燃焼試験(スモルダー燃焼試験)
試験方法:California 117, Section D, Part II.試験法に準拠
試験片:A片 長さ203mm、幅184mm、厚さ51mm
B片 長さ203mm、幅102mm、厚さ51mm
被覆布:A片用 長さ375mm、幅200mm
B片用 長さ275mm、幅200mm
薄い布:長さ150mm、幅150mm
木枠:上記試験片が収まるイス型木枠
評価基準:前記載のフォーム試験片A、Bをそれぞれのサイズに適合した被覆布で覆い、規定の木枠にフォームをセットする。背もたれ部分の被覆布はセロハンテープで木枠に固定する。指定のたばこ(CABIN LIGHT 100's)に火をつけフィルター部分を外し、イス型木枠にセットしたフォームの中心背もたれ部にセットし、そのたばこの上に薄い布をかぶせる。たばこの火が消えた後、燃焼により燃えた残渣を除去し、テスト前後のフォーム重量を求める。試験は、n=3で行い、その全てが80%以上の残存率であれば合格となる。
III.British Standard 5852燃焼試験
試験方法:BS5852 Schedule 1 Part 1, Source 5試験法に準拠
試験片:A 長さ450mm、幅450mm、厚さ75mm
B 長さ300mm、幅450mm、厚さ75mm
評価基準:上記フォームを規定通り布で覆いイス型に組み立て、背もたれ中心部に規定通り作製した点火木枠をセットし最下部のリント布に1.4mlのn−ブタノールをしみこませ着火する。
残炎、残塵時間 10分以内
重量ロス 60g以内
試験はn=2で行いその全てが上記の結果であれば合格となる。
IV.硬質ポリウレタンフォーム用試験
(1)燃焼試験
試験方法:JIS A−9511(燃焼試験B法)に準拠
試験片:長さ150mm、幅50mm、厚さ13mm
(2)曲げ試験
試験方法:JIS K−7221−1に準拠
試験片:長さ120mm、幅25mm、厚さ20mm
(3)圧縮試験
試験方法:JIS K−7220に準拠
試験片:長さ50mm、幅50mm、厚さ30mm
【0265】
(ポリウレタンフォームの作製)
以下のようなワンショット法により軟質および硬質ポリウレタンフォームを作製した。まず、ポリオール、シリコーン整泡剤、アミン触媒、水およびリン化合物を配合し、3500rpmの回転数を持つ攪拌機で1分間攪拌して均一に混和した。軟質ポリウレタンフォームの場合に限っては、更にスズ触媒およびジクロロメタンを添加した後、さらに10秒間撹拌した。次いで、このプレミックス混合物にジイソシアネートを加えて、3500rpmで5〜7秒間攪拌後、混合物を発泡容量に適した立方体の形状を有するボール箱に注いだ。数秒間の後、発泡現象が起こり数分後に最大の容積に達した。軟質発泡体の場合のみ、これをさらに20分間75℃の乾燥機内で乾燥硬化させた。得られた軟質発泡体は、白色で連続気泡を有するものであった。得られた硬質発泡体は、茶褐色で通気性を有しないものであった。
上記の方法で得られた各種ポリウレタンフォームにおいて、プレミックス混合物をボール箱に注いでから最大の容積まで達した時間(ライズタイム(RT))を測定し、試験規格に合致する試験片を切り取り、恒温恒湿器で24時間以上保存した後、密度(JIS K−6400)〔kg/m〕、通気度(JIS K−6400)〔ml/cm/sec〕を測定した後、物性試験として圧縮残留歪み(JIS K−6400)〔%〕の測定を行った。燃焼試験としては、自動車用スラブフォームの水平燃焼試験(FMVSS−302)、電気材料用フォームの燃焼規格UL94(HF試験)による試験、および家具用フォーム燃焼規格California 117試験を行った。更に電子レンジ(500W)×3分及び熱風乾燥機140℃×3時間の耐熱試験を行い、フォームの黄変状態(スコーチ性)を黄色度(JIS K−7105)で示し、フォギング試験においては揮発成分の割合を分光計により数値化した。
【0266】
(ポリウレタン実施例1〜12およびポリウレタン比較例1〜6)
結果を軟質ポリウレタンフォームの配合成分とその割合と共に下記表11〜表14に示す。なお、これらの表中における「実施例」および「比較例」はそれぞれ、ポリウレタン実施例およびポリウレタン比較例を示す。また、表中における矢印「→」は、その欄の数値がその欄の左の欄の数値と同一であることを意味する。例えば、表11の実施例2の錫触媒の配合量は、実施例1と同じ0.33重量部である。
【0267】
【表11】


【0268】
【表12A】



【表12B】


【0269】
【表13】


【0270】
【表14】

【0271】
表11〜表14の結果より、本発明のホスフェート−ホスホネート化合物を難燃剤として使用したポリウレタンフォームはハロゲンを有していないにも関わらず十分な難燃性を有していることがわかる。
【0272】
表11に記載のポリウレタン実施例1〜4においては、UL−94燃焼試験およびフォギング特性が極めて良好であることから、難燃性が高いのみならず揮発性物質(VOC)問題が生じる恐れも非常に少ないことがわかる。
一方、ポリウレタン難燃剤5を使用したポリウレタン比較例1では水平試験に対する難燃性は有するものの、UL−94燃焼試験においては試験規格をクリアーすることはできていない。また、揮発物質を有していることが明確で、耐フォギング性を重視する用途には使用しづらいことがわかる。
また、ポリウレタン難燃剤6を使用したポリウレタン比較例2では、フォームを作製することができなかった。原因としては、ポリウレタン難燃剤6が反応性の水酸基を有しているため、一般の処方ではフォームを作製できなかった、あるいはポリウレタン難燃剤1〜ポリウレタン難燃剤4の酸価と比較すると、ポリウレタン難燃剤6の酸価が大きすぎるために触媒が活性を失い、その結果フォームを作製することができなかったことなどが類推される。
【0273】
表12Aおよび表12Bに記載のポリウレタン実施例5〜8においては、縦型燃焼試験では、熱老化前後に関係なく平均燃焼距離(147mm以下)、最大燃焼距離(196mm以下)、平均燃焼時間(5秒以下)および最大燃焼時間(10秒以下)の4項目を完全にクリアーしている。また、スモルダー試験においても、満足ゆく結果が得られているため、家具用の軟質ポリウレタンフォームとして使用しても何ら問題のないことがわかる。
一方、ポリウレタン比較例3で使用したフォームはカリフォルニア117試験には、合格するレベルではあるが、ハロゲン含有の難燃剤を使用しているため、実際の燃焼時にはハロゲン化水素やダイオキシンなどの有害物質が生成する可能性があるため、将来の環境問題を考慮した場合、実使用には難があることが想定される。
【0274】
表13に記載のポリウレタン実施例9〜10においては、燃焼時間(10分以内)および重量ロス(60g以内)の2項目を完全にクリアーしており、表13に記載の試験よりもさらに厳しい家具用の軟質ポリウレタンフォームに適用することができることがわかる。
また、従来、BS5852試験は表13に記載のような低密度(25〜30kg/m)のフォームには不利となる試験であり、通常は密度が35〜40kg/m程度のフォームを用いて試験されることが多い。一般的にハロゲン系難燃剤とメラミンを併用したポリウレタン比較例4のような場合においては、本試験は合格する可能性はあるが、その難燃機構はハロゲンとメラミンの相乗効果に依存する場合が多く、本発明に使用しているリン化合物で合格できるということは、ノンハロゲンという見地からも非常に意義深い。
【0275】
表14に記載のポリウレタン実施例11〜12は、硬質ポリウレタンフォームに対する本発明の化合物の適用例を示す。リン化合物を使用していないポリウレタン比較例5と比較しても、本発明の化合物が他の諸物性に悪影響を与えることなく、優れた難燃性を有することがわかる。
また、ポリウレタン難燃剤6を使用したポリウレタン比較例6では、フォームを作製することができなかった。原因としては、ポリウレタン比較例2の場合と同様、ポリウレタン難燃剤6が反応性の水酸基を有しているため、一般の処方ではフォームを作製できなかった、あるいはポリウレタン難燃剤2やポリウレタン難燃剤3の酸価と比較すると、ポリウレタン難燃剤6の酸価が大きすぎるために触媒が活性を失い、その結果フォームを作製することができなかったことなどが類推される。
上記各ポリウレタン実施例では、難燃剤のリン化合物として、リン原子とリン原子との間の連結基として−CH−O−基を有し、リン原子とリン原子とが「P−CH−O−P」との構造で連結される化合物を用いたが、その連結基を−CH(CH)−O−基などに変更して、リン原子とリン原子とが「P−CH(CH)−O−P」との構造で連結される化合物、「P−C(CH−O−P」との構造で連結される化合物、「P−C10−O−P」との構造で連結される化合物、および、「P−C(CH)(CHCH(CH)−O−P」との構造で連結される化合物を難燃剤として用いて同様に試験をしたところ、上記各ポリウレタン実施例と同様の良好な結果が得られた。具体的には、以下のとおりである。
【0276】
【表15A】


【表15B】



【表16A】


【表16B】


なお、Cal.117. Section A Part Iの欄において、左列の数値は、燃焼距離(mm)を示し、右列の数値は、残炎時間(秒)を示す。
【表17】

【0277】
(発明の効果)
本発明によるホスフェート−ホスホネート化合物はリン含有率が高く、原料として用いた際にその製品の諸物性に影響を与えず、かつ、塩素や臭素などのハロゲン原子を含有しないため、燃焼時や廃棄時の環境汚染がなく、リサイクル性にも優れていることがわかる。
本発明のホスフェート−ホスホネート化合物は、ポリカーボネート、ABS樹脂、PPEなどの熱可塑性樹脂用の難燃剤、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂用の難燃剤、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂またはポリエステル繊維用の難燃剤として極めて有用である。
【0278】
本発明のポリエステル用難燃剤によれば、難燃性に優れ、また、繊維としての諸物性を維持し、且つ、洗濯耐久性を維持したハロゲンを含有しない難燃性ポリエステル繊維を得ることができる。また、本発明による難燃性ポリエステル繊維はハロゲン原子を含まないために、燃焼時に有害なハロゲン化ガス等を発生することがなく、環境保護においても有効である。
【0279】
本発明のポリウレタン用難燃剤によれば、ホスフェート−ホスホネート化合物を使用することにより、軟質、半硬質、硬質フォームなどのフォームに使用可能な、優れた難燃性が付与されたポリウレタン樹脂組成物が得られる。本発明の樹脂組成物から得られるポリウレタンフォームは、難燃剤から導かれる揮発性物質を発生することがなく、耐熱性に優れ、さらにフォームの物性を低下させることが極めて少ない。また、本発明のフォーム形成用のポリウレタン樹脂組成物は、非ハロゲン系であるために燃焼時にハロゲン化水素やダイオキシンなどの発生がなく、人体に対して悪影響を及ぼすことが極めて少ない。
【産業上の利用可能性】
【0280】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(III)で示される化合物:
【化7】


(式(III)において、
はC2〜9アルキレン基であり、
21は、式89の連結基であり、
(式89)
【化8】


ここで、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、水素、C1〜6アルキル基、または、C6〜11アリール基のいずれかであるか、あるいはRとRとが結合してC4〜10アルキレン基となって炭素原子とともに以下の式の環状構造を形成し、
【化9】


の炭素数とRの炭素数との和は0〜12である)。
【請求項2】
21がメチレン基または−CH(CH)−基または−C(CH−基のいずれかである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が下記式(IV)である、請求項1に記載の化合物。
【化10】

【請求項4】
下記式(III)で示される化合物からなる樹脂用難燃剤:
【化16】


(式(III)において、
はC2〜9アルキレン基であり、
21は、式89の連結基であり、
(式89)
【化17】


ここで、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、水素、C1〜6アルキル基、または、C6〜11アリール基のいずれかであるか、あるいはRとRとが結合してC4〜10アルキレン基となって炭素原子とともに以下の式の環状構造を形成し、
【化18】


の炭素数とRの炭素数との和は0〜12である)。
【請求項5】
請求項4に記載の難燃剤であって、ポリエステル繊維の難燃化のために使用される、難燃剤。
【請求項6】
難燃剤で処理されたポリエステル繊維であって、該難燃剤が、下記式(III)で示される化合物である、ポリエステル繊維:
【化25】


(式(III)において、
はC2〜9アルキレン基であり、
21は、式89の連結基であり、
(式89)
【化26】


ここで、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、水素、C1〜6アルキル基、または、C6〜11アリール基のいずれかであるか、あるいはRとRとが結合してC4〜10アルキレン基となって炭素原子とともに以下の式の環状構造を形成し、
【化27】


の炭素数とRの炭素数との和は0〜12である)。
【請求項7】
前記難燃剤のR21がメチレン基または−CH(CH)−基または−C(CH−基のいずれかである、請求項6に記載のポリエステル繊維。
【請求項8】
前記難燃剤のRが下記式(IV)である、請求項6に記載のポリエステル繊維。
【化28】

【請求項9】
請求項6に記載のポリエステル繊維であって、難燃剤の含有量が、難燃剤を含むポリエステル繊維の全重量のうちの、0.1〜30重量%である、ポリエステル繊維。
【請求項10】
ポリエステル繊維を難燃化する方法であって、ポリエステル繊維を、請求項5に記載の難燃剤で処理する工程を包含する、方法。
【請求項11】
請求項4に記載の難燃剤であって、ポリウレタン樹脂の難燃化のために使用される、難燃剤。
【請求項12】
難燃性ポリウレタン樹脂組成物であって、(a)難燃剤、(b)ポリオール成分、および(c)ポリイソシアネート成分を含み、ここで、該難燃剤が、下記一般式(III)で示される、組成物:
【化36】


(式(III)において、
はC2〜9アルキレン基であり、
21は、式89の連結基であり、
(式89)
【化37】


ここで、RおよびRは、同一であっても異なってもよく、水素、C1〜6アルキル基、または、C6〜11アリール基のいずれかであるか、あるいはRとRとが結合してC4〜10アルキレン基となって炭素原子とともに以下の式の環状構造を形成し、
【化38】


の炭素数とRの炭素数との和は0〜12である。
【請求項13】
さらに、(d)触媒、(e)シリコーン整泡剤、および(f)発泡剤を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記難燃剤のR21がメチレン基または−CH(CH)−基または−C(CH−基のいずれかである、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記難燃剤のRが下記式(IV)である、請求項12に記載の組成物。
【化39】

【請求項16】
前記ポリオール成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオールからなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリイソシアネート成分が、トリレンジイソシアネート(TDI)およびジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)からなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
前記難燃剤の配合量が、ポリオール成分100重量部に対して、0.1〜60重量部である、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】
さらに、酸化防止剤として、(g)下記一般式(VII)で表されるヒドロキノン化合物及び/または3価の有機リン化合物を含む、請求項12に記載の組成物:
(式VII)
【化40】


(式中、R31、R32、R33およびR34は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜14のアルキル基)。
【請求項20】
請求項12に記載の組成物を成形して得られる成形品。
【請求項21】
難燃化ポリウレタンフォームを成形する方法であって、請求項12に記載の組成物を発泡させる工程を包含する、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図14F】
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【図14G】
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【図14H】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−265281(P2010−265281A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144328(P2010−144328)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【分割の表示】特願2005−506799(P2005−506799)の分割
【原出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【出願人】(000149561)大八化学工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】