説明

ホトレジスト除去用処理液および基板の処理方法

【課題】 プラズマアッシング処理の有無にかかわらず、ドライエッチング後の変質されたホトレジスト膜の溶解性(除去促進効果)を大幅に向上させ、かつその効果を安定して得ることができ、しかも銅配線、低誘電体層を形成した基板に用いた場合であっても、低誘電体層の誘電率への悪影響を及ぼさず、防食性にも優れるホトレジスト除去用処理液および基板の処理方法の提供。
【解決手段】 (a)酸化剤(例えば過酸化水素水等)と、(b)アルキレンカーボネートおよびその誘導体の中から選ばれる少なくとも1種(例えばプロピレンカーボネート等)と、(c)水を含有するホトレジスト除去用処理液、および、該ホトレジスト除去用処理液にて、ドライエッチング処理後の変質したホトレジスト膜を有する基板、あるいは前記ドライエッチング処理後所望によりプラズマアッシング処理を行った基板、を処理し、次いでホトレジスト用剥離液で剥離処理する基板の処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライエッチング処理後の変質したホトレジスト膜除去のために用いられるホトレジスト除去用処理液、およびこれを用いた基板の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやLSI等の半導体素子は、シリコンウェーハ等の基板上にCVD蒸着等により形成された導電性金属層、絶縁層や低誘電体層上にホトレジストを均一に塗布し、これを選択的に露光、現像処理をしてホトレジストパターンを形成し、このパターンをマスクとして上記CVD蒸着された導電性金属層、絶縁層や低誘電体層を選択的にエッチングし、微細回路を形成した後、不要のホトレジスト層を剥離液で除去して製造される。
【0003】
そして近年の集積回路の高密度化に伴い、より高密度の微細エッチングが可能なドライエッチングが主流となっている。このドライエッチングにより、ホトレジスト膜は変質膜となる。近年、これらの処理条件はより厳しくなり、変質膜は有機膜から無機的性質を有する膜になってきており、この変質膜の剥離も従来に比して難しくなってきている。
【0004】
さらに近年、半導体素子の高集積化とチップサイズの縮小化に伴い、配線回路の微細化および多層化が進む中、半導体素子では用いる金属層の抵抗(配線抵抗)と配線容量に起因する配線遅延なども問題視されるようになってきた。このため、配線材料として従来おもに使用されてきたアルミニウム(Al)よりも抵抗の少ない金属、例えば銅(Cu)などを用いることが提案され、最近では、Al配線(Al、Al合金など、Alを主成分とする金属配線)を用いたものと、Cu配線(Cuを主成分とする金属配線)を用いたものの2種類のデバイスが用いられるようになってきた。
【0005】
特にCu金属配線の形成においては、Cuのエッチング耐性が低いこともあり、デュアルダマシン法を用いて、CuをエッチングすることなくCu多層配線を形成する方法が用いられている。このようなデュアルダマシン法では、例えば、基板上にCu層/低誘電体層(SiOC層など)/ホトレジストパターンを形成し、このホトレジストパターンをマスクとして低誘電体層をドライエッチング後、プラズマアッシング処理等を行い、ホトレジストパターンを剥離する、という工程を重ねることにより、ビアホール、該ビアホールに連通する配線用の溝(トレンチ)を形成し、該ビアホール、トレンチ内に電解めっき等によりCuを充填して多層配線を形成する。上記ビアホール、トレンチ形成のドライエッチング処理、プラズマアッシング処理等により、低誘電体層に由来するSi系残渣物(Siデポジション)が発生しやすく、これがトレンチの開口部外周にSiデポジションとして残渣物が形成されることがある。またホトレジスト変質膜など、ホトレジスト由来の残渣物も発生しやすい。したがってこれら残渣物が完全に除去されないと、半導体製造の歩留まりの低下をきたすなどの問題を生じる。このように従来、金属配線パターン形成では、ホトレジストパターンやエッチング後残渣物の除去にプラズマアッシング処理を用いていた。
【0006】
一方、パターンの超微細化が進む中、銅配線基板に用いられる低誘電体層は、より低い誘電率の材料が使用されるようになり、現在では誘電率が3以下の低誘電体層を用いるプロセスが開発されている段階にある。このような低誘電率の材料(low−k材)は、アッシング耐性が弱い、若しくはアッシング耐性がないともいわれ、low−k材を用いる場合は、ドライエッチング後、プラズマアッシング工程を行わないプロセスを採用する必要がある。
【0007】
したがって微細化、多層化が進んだ半導体素子製造におけるホトリソグラフィーにおいて、従来から慣用されているプラズマアッシング処理工程の有無にかかわらず、プラズマアッシング工程を採用していたプロセスと同程度若しくはそれ以上のドライエッチング処理後のホトレジスト変質膜の剥離性に優れる技術の開発が急務となっている。
【0008】
なお従来、半導体素子の製造分野において、酸化剤(過酸化水素等)を含有する洗浄液やホトレジスト剥離液などが提案されている(例えば特許文献1〜8参照)。具体的には、過酸化水素水やオゾン水等の酸化剤水溶液、あるいはこれらにアンモニア水や第4級アンモニウム水酸化物等を添加した洗浄液、剥離液等である。しかし、これらの特許文献1〜8に記載された洗浄液、剥離液を用いたところで、本願発明において所望とするホトレジスト変質膜の溶解性(除去促進効果)は得られないか、あるいは液自体の安定性が悪いため、実際の生産ラインでは使用できないなどの問題があった。
【0009】
なお特許文献9には、水溶性有機溶媒として非プロトン性極性溶媒としてプロピレンカーボネートを用いたホトレジスト用剥離液が開示されているが、該剥離液では、現在の極微細化、多層化の進んだ半導体素子製造分野の要求するレベルを十分に満足し得るまでには至っていない。
【0010】
【特許文献1】特開平5−259140号公報
【特許文献2】特開平6−112178号公報
【特許文献3】特開平11−74180号公報
【特許文献4】特開2000−56478号公報
【特許文献5】特開2002−202617号公報
【特許文献6】特開2003−124173号公報
【特許文献7】特開2003−221600号公報
【特許文献8】特開2004−4775号公報
【特許文献9】特開平11−16882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、プラズマアッシング処理の有無にかかわらず、ドライエッチング後の変質されたホトレジスト膜の溶解性(除去促進効果)を大幅に向上させ、かつその効果を安定して得ることができ、しかも銅配線、低誘電体層を形成した基板に用いた場合であっても、低誘電体層の誘電率への悪影響を及ぼさず、防食性にも優れるホトレジスト除去用処理液および基板の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、(a)酸化剤と、(b)アルキレンカーボネートおよびその誘導体の中から選ばれる少なくとも1種と、(c)水を含有することを特徴とするホトレジスト除去用処理液を提供する。
【0013】
また本発明は、ドライエッチング処理後の変質したホトレジスト膜を有する基板、あるいは、前記ドライエッチング処理後所望によりプラズマアッシング処理を行った基板を、請求項1〜12のいずれか1項に記載のホトレジスト除去用処理液にて処理し、次いでホトレジスト用剥離液で剥離処理する、基板の処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プラズマアッシング処理の有無にかかわらず、ドライエッチング後の変質されたホトレジスト膜の溶解性(除去促進効果)を大幅に向上させ、かつその効果を安定的に得ることができ、しかも銅配線、低誘電体層を形成した基板に用いた場合であっても、低誘電体層の誘電率への悪影響を及ぼさず、防食性にも優れる処理液および基板の処理方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳述する。なお以下において、配合量は、特記しない限り固形分、実分で示す。
【0016】
本発明に係る処理液は、(a)酸化剤と、(b)アルキレンカーボネートおよびこれらの誘導体の中から選ばれる少なくとも1種と、(c)水を含有する。
【0017】
(a)成分としては、過酸化水素水(H)、およびオゾン水(O)の中の少なくとも1種が好ましく用いられる。処理液中の酸化剤濃度は0.1〜35質量%程度が好ましく、特には0.5〜30質量%程度の水溶液が好ましい。(a)成分の配合量を上記範囲内とすることにより、特にドライエッチング後のホトレジスト変質膜に対してより優れた溶解作用(除去促進効果)の向上が図られる。
【0018】
(b)成分としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の低級アルキレンカーボネート、あるいはこれらの誘導体が挙げられる。該誘導体としては、アルキレンカーボネートのアルキル置換体等が挙げられる。中でもエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートが好ましく、特にはプロピレンカーボネートが好ましく用いられる。
【0019】
(b)成分の配合量は、処理液中、5〜90質量%が好ましく、特には10〜70質量%が好ましい。(b)成分の配合量を上記範囲内とすることにより、特にドライエッチング後のホトレジスト変質膜に対してより優れた溶解作用(除去促進効果)の向上が図られる。
【0020】
本発明処理液には、上記の他に、(c)成分として水が残余配合される。
【0021】
本発明処理液はさらに、(d)水溶性有機溶媒を含有してもよい。(d)成分として、本発明では多価アルコール類およびこれらの誘導体が好ましい。多価アルコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール等が挙げられる。またこれらの誘導体としては、例えばアルキルエーテル化物が挙げられ、具体的にはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどが例示されるが、これら例示に限定されるものでない。中でもグリセリン、プロピレングリコールが、銅配線、低誘電体層の防食性向上の点から好ましく用いられる。
【0022】
(d)成分を配合する場合、防食性の点から、その配合量は、処理液中、0.01〜30質量%が好ましく、特には0.1〜20質量%が好ましい。
【0023】
本発明に係るホトレジスト除去用処理液は、基板上に設けたホトレジストを選択的に露光、現像してホトレジストパターンを形成した後、ドライエッチングし、これにより変質したホトレジスト膜を処理するのに用いられる。本発明処理液を用いることにより、ホトレジスト変質膜の溶解性(除去促進効果)を大幅に向上させることができる。
【0024】
なお、半導体基板形成工程では、本発明レジスト除去用処理液による処理に続いて、ホトレジスト用剥離液による剥離処理を行って基板の処理を行うのが好ましい。また、銅配線、低誘電体層を有する基板であっても、プラズマアッシング処理の有無にかかわらず、好適に半導体基板素子を製造することができる。このように本発明処理液を用いた後に、ホトレジスト剥離液により剥離処理した場合、同一ホトレジスト剥離液を用いて剥離処理のみを行った場合(すなわち本発明処理液による処理を行うことなく、剥離処理を行った場合)に比べて、本発明処理液によるホトレジスト変質膜の溶解性(除去促進効果)が奏功して、ホトレジスト剥離効果を格段に向上させることができる。
【0025】
上記基板の処理方法は、より具体的には以下の方法が例示される。ただしこれに限定されるものでない。
【0026】
すなわち、本発明が好適に適用される基板の処理方法として、(I)少なくとも銅配線と低誘電体層を有する基板上に設けられたホトレジストパターンをマスクとして低誘電体層を選択的にドライエッチングする工程、(II)前記(I)工程を経た基板を本発明ホトレジスト除去用処理液に接触させる工程、および(III)前記(II)工程を経た基板を、ホトレジスト用剥離液に接触させる工程を含む処理方法が挙げられる。
【0027】
(I)工程:
公知のホトリソグラフィー技術を適用することができる。例えば、シリコンウェーハ等の基板上に銅(Cu)配線を形成し、この上に低誘電体層を形成する。所望により、中間層としてCu配線上にバリアメタル層やエッチングストッパー層を設けてもよく、また、絶縁層等を設け、多層積層させてもよい。
【0028】
バリアメタル層やエッチングストッパー層としてはTa層、TaN層、SiN層、SiC層、などが挙げられるが、これら例示に限定されるものでない。
【0029】
低誘電体層としては、誘電率3以下の材料が特に好ましく用いられる。なお誘電率とは、電束密度をD、電界の強さをEとすれば、D=εEの関係で示される比例の定数(ε)をいう。
【0030】
上記低誘電体層としては、「ブラックダイアモンド」(Applied Materials社製)、「コーラル」(Novelus Systems社製)、「Aurora」(日本ASM社製)などのカーボンドープドシリコンオキシド(SiOC)系材料;「OCD T−7」、「OCD T−9」、「OCD T−11」、「OCD T−31」、「OCD T−39」(いずれも東京応化工業社製)などのMSQ(メチルシルセスキオキサン)系材料;「OCD T−12」、「OCD T−32」(いずれも東京応化工業社製)などのHSQ(ヒドロキシシルセスキオキサン)系材料等の低誘電率材料(low-k材料)が好ましいものとして挙げられるが、これら例示に限定されるものでない。
【0031】
次いでホトレジスト組成物を低誘電体層上に塗布、乾燥した後、露光、現像等により公知のホトリソグラフィー技術によりホトレジストパターンを形成する。
【0032】
ホトレジスト組成物としては、KrF、ArF、Fエキシマレーザー、あるいは電子線用に慣用されるホトレジスト組成物が好適に用いられるが、特に限定されるものでない。
【0033】
露光、現像条件は、目的に応じて用いるホトレジストにより適宜、選択し得る。露光は、例えば紫外線、遠紫外線、エキシマレーザ、X線、電子線などの活性光線を発光する光源、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ等により、所望のマスクパターンを介してホトレジスト層を露光するか、あるいは電子線を操作しながらホトレジスト層に描画する。その後、必要に応じて露光後加熱処理(ポストエクスポージャーベーク)を行う。
【0034】
現像方法は特に限定されるものでなく、例えばホトレジストが塗布された基板を現像液に一定時間浸漬した後、水洗して乾燥する浸漬現像、塗布されたホトレジストの表面に現像液を滴下し、一定時間静置した後、水洗乾燥するパドル現像、ホトレジスト表面に現像液をスプレーした後に水洗乾燥するスプレー現像等、目的に応じた種々の現像を行うことができる。
【0035】
次いで、形成されたホトレジストパターンをマスクとして、上記低誘電体層を選択的にドライエッチングによりエッチングし、ビアホールあるいはトレンチ(配線用の溝)を形成する。
【0036】
(II)工程:
上記ドライエッチング工程後の基板を、本発明処理液に接触させる。接触の方法は、上記現像液処理の場合に示したような浸漬法、パドル法、シャワー法等が挙げられる。例えば後述する実施例においては50℃、20分間の処理条件を採用しているが、これに限定されるものではない。
【0037】
(III)工程:
前記(II)工程を経た基板を、ホトレジスト用剥離液に接触させる。
【0038】
ホトレジスト用剥離液としては特に限定されるものでないが、4級アンモニウム水酸化物、水溶性有機溶媒、水を含むアミン系剥離液が好ましく用いられる。
【0039】
上記第4級アンモニウム水酸化物としては、下記一般式(I)
【0040】

【0041】
〔式中、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜4のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を示す〕
で表される第4級アンモニウム水酸化物が好ましい。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド〔=TMAH〕、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド〔=コリン〕、(2−ヒドロキシエチル)トリエチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリプロピルアンモニウムヒドロキシド、(1−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド等が例示される。中でもテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、コリン等が、Cu、Si系残渣物の剥離性、ホトレジスト剥離性の点から好ましい。第4級アンモニウム水酸化物は1種または2種以上を用いることができる。
【0042】
第4級アンモニウム水酸化物の配合量は、ホトレジスト用剥離液中、1〜20質量%程度が好ましく、特には2〜10質量%程度である。
【0043】
上記水溶性有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類;ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホン、テトラメチレンスルホン〔=スルホラン〕等のスルホン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアミド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン等のラクタム類;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコール類およびその誘導体などが挙げられる。中でも、ジメチルスルホキシド、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリドン、およびジエチレングリコールモノブチルエーテル、スルホラン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が好ましく用いられる。水溶性有機溶媒は1種または2種以上を用いることができる。
【0044】
他に水が含有されるが、水の配合量は5〜60質量%程度が好ましく、特には10〜50質量%である。残部は上記水溶性有機溶媒である。
【0045】
上記ホトレジスト用剥離液にはさらに、所望により水溶性アミンを配合してもよい。水溶性アミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、N−エチル−エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等のポリアルキレンポリアミン類;2−エチル−ヘキシルアミン、ジオクチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族アミン;ベンジルアミン、ジフェニルアミン等の芳香族アミン類;ピペラジン、N−メチル−ピペラジン、メチル−ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン等の環状アミン類等が挙げられる。中でも、モノエタノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N−メチルエタノールアミン等が、ドライエッチング後のホトレジスト変質膜・残渣物の除去性、金属配線に対する防食性など点から好ましく用いられる。水溶性アミンを配合する場合、その配合量はホトレジスト用剥離液中、10〜50質量%程度とするのが好ましい。
【0046】
カルボキシル基含有酸性化合物としては、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸などが好ましいものとして挙げられる。カルボキシル基含有酸性化合物を配合する場合、ホトレジスト用剥離液中2〜20質量%程度とするのが好ましい。
【0047】
上記ホトレジスト用剥離液には、さらに、所望により、特に中間層としてのバリアメタル層やエッチングストッパー層を設けない基板を用いる場合や、あるいはバリアメタル層を設けた基板を用いる場合であってバリアメタル層をエッチング除去した後にホトレジスト剥離処理を行うような場合は、Cu配線の防食性等の点から、防食剤として芳香族ヒドロキシ化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、およびメルカプト基含有化合物の中から選ばれる少なくとも1種を配合するのが望ましい。
【0048】
上記芳香族ヒドロキシ化合物としては、具体的にはフェノール、クレゾール、キシレノール、ピロカテコール〔=1,2−ジヒドロキシベンゼン〕、tert−ブチルカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、サリチルアルコール、p−ヒドロキシベンジルアルコール、o−ヒドロキシベンジルアルコール、p−ヒドロキシフェネチルアルコール、p−アミノフェノール、m−アミノフェノール、ジアミノフェノール、アミノレゾルシノール、p−ヒドロキシ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸等を挙げることができる。中でもピロカテコール、ピロガロール、没食子酸等が好適に用いられる。芳香族ヒドロキシ化合物は1種または2種以上を用いることができる。
【0049】
上記ベンゾトリアゾール系化合物としては、下記一般式(II)
【0050】

【0051】
〔式中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子、置換若しくは非置換の炭素原子数1〜10の炭化水素基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、シアノ基、ホルミル基、スルホニルアルキル基、またはスルホ基を示し;Qは水素原子、水酸基、置換若しくは非置換の炭素原子数1〜10の炭化水素基(ただし、その構造中にアミド結合、エステル結合を有していてもよい)、アリール基、または下記式(III)
【0052】

【0053】
〔式(III)中、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基を示し;R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、または炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基若しくはアルコキシアルキル基を示す)で表される基を示す〕
で表されるベンゾトリアゾール系化合物が挙げられる。
【0054】
本発明において、上記基Q、R、Rの各定義中、炭化水素基としては、芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基のいずれでもよく、また飽和、不飽和結合を有していてもよく、さらに直鎖、分岐鎖のいずれでもよい。置換炭化水素基としては、例えばヒドロキシアルキル基、アルコキシアルキル基等が例示される。
【0055】
また、純Cu配線が形成された基板の場合、上記一般式(II)中、Qとしては特に上記式(III)で表される基のものが好ましい。中でも式(III)中、R、Rとして、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基若しくはアルコキシアルキル基を選択するのが好ましい。
【0056】
また上記一般式(II)中、Qとして、水溶性の基を示すものも好ましく用いられる。具体的には水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基(すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基)、炭素原子数1〜3のヒドロキシアルキル基、水酸基等が、無機材料層(例えば、ポリシリコン膜、アモルファスシリコン膜、等)を基板上に有する場合、その防食性の点で好ましい。
【0057】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、具体的には、例えばベンゾトリアゾール、5,6−ジメチルベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−メチルベンゾトリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾール、1−フェニルベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシメチルベンゾトリアゾール、1−ベンゾトリアゾールカルボン酸メチル、5−ベンゾトリアゾールカルボン酸、1−メトキシ−ベンゾトリアゾール、1−(2,2−ジヒドロキシエチル)−ベンゾトリアゾール、1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、あるいは「IRGAMET」シリーズとしてチバ・スペシャリティー・ケミカルズより市販されている、2,2’−{[(4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ}ビスエタノール、2,2’−{[(5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ}ビスエタノール、2,2’−{[(4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ}ビスエタン、または2,2’−{[(4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ}ビスプロパン等を挙げることができる。これらの中でも、1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−ベンゾトリアゾール、2,2’−{[(4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ}ビスエタノール、2,2’−{[(5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ}ビスエタノール等が好ましく用いられる。ベンゾトリアゾール系化合物は1種または2種以上を用いることができる。
【0058】
上記メルカプト基含有化合物としては、メルカプト基に結合する炭素原子のα位、β位の少なくとも一方に、水酸基および/またはカルボキシル基を有する構造の化合物が好ましい。このような化合物として、具体的には1−チオグリセロール、3−(2−アミノフェニルチオ)−2−ヒドロキシプロピルメルカプタン、3−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−ヒドロキシプロピルメルカプタン、2−メルカプトプロピオン酸、および3−メルカプトプロピオン酸等が好ましいものとして挙げられる。中でも1−チオグリセロールが特に好ましく用いられる。メルカプト基含有化合物は1種または2種以上を用いることができる。
【0059】
芳香族ヒドロキシ化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、メルカプト基含有化合物を配合する場合、その配合量は、用いるホトレジスト用剥離液によっても異なるが、上記各群の化合物を併用する場合、それぞれを0.1〜10質量%程度ずつ配合するのが好ましく、特には0.5〜5質量%程度ずつ配合するのがより好ましい。また総合計配合量の上限は15質量%以下程度とするのが好ましい。
【0060】
本発明に用いられるホトレジスト用剥離液には、さらに、浸透性向上の点から、アセチレンアルコールに対してアルキレンオキシドを付加したアセチレンアルコール・アルキレンオキシド付加物などの界面活性剤を配合してもよい。アセチレンアルコール・アルキレンオキシド付加物は、「サーフィノール」(Air Product and Chemicals Inc.製)のシリーズ、あるいは「アセチレノール」(川研ファインケミカル(株)製)のシリーズ等として市販されており、好適に用いられる。アセチレンアルコール・アルキレンオキシド付加物を配合する場合、配合量は0.05〜5質量%程度が好ましく、特には0.1〜2質量%程度である。
【0061】
当該(III)工程では、ホトレジスト用剥離液を、(II)工程処理を経た基板に接触させて、ドライエッチング後のホトレジスト変質膜を剥離除去する。接触方法は特に限定されるものでないが、通常、浸漬法、パドル法、スプレー法により施される。剥離時間は、剥離されるに十分な時間であればよく、特に限定されるものではない。
【0062】
上記剥離工程の後、慣用的に施されている有機溶媒、水等を用いたリンス処理および乾燥処理を施してもよい。該有機溶媒としては低級アルコールが好ましく、中でもイソプロピルアルコール等が好ましく用いられる。
【0063】
本発明に係る処理液は、ネガ型およびポジ型ホトレジストを含めてアルカリ水溶液で現像可能なホトレジストに有利に使用できる。このようなホトレジストとしては、(i)ナフトキノンジアジド化合物とノボラック樹脂を含有するポジ型ホトレジスト、(ii)露光により酸を発生する化合物、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する化合物およびアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型ホトレジスト、(iii)露光により酸を発生する化合物、酸により分解しアルカリ水溶液に対する溶解性が増大する基を有するアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型ホトレジスト、および(iv)光により酸を発生する化合物、架橋剤およびアルカリ可溶性樹脂を含有するネガ型ホトレジスト等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
本発明の基板の処理方法を用いることにより、プラズマアッシング処理の有無にかかわらず、ドライエッチング後のホトレジスト変質膜の溶解性(除去促進効果)を格段に向上させることができ、かつ、銅配線、低誘電体層に対する防食効果を得ることができる。
【実施例】
【0065】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、配合量は特記しない限り質量%(実分、固形分)で示す。また表1中、「PC」はプロピレンカーボネートを示し、「PG」はプロピレングリコールを示す。
【0066】
(ホトレジスト用剥離液A)
テトラアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を10質量%、ジメチルスルホキシド(DMSO)を57.5質量%、水30質量%、チオグリセロール1.5質量%、および2,2’−{[(4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)メチル]イミノ}ビスエタノール(=「IR42」)を1.0質量%含有するホトレジスト用剥離液Aを常法により調製した。
【0067】
(ドライエッチング処理基板の作製)
銅配線が形成され、その上層にSiOC層(カーボンドープドオキサイド層;low−k層)が積層された基板上に、ポジ型ホトレジストであるTDUR−P722(東京応化工業(株)製)を塗布し、140℃にて90秒間加熱しホトレジスト層を形成した。これをNSR−S203B(Nikon社製)を用いて選択的に露光処理し、次いで140℃にて90秒間ポストエクスポージャベーク処理を行い、2.38質量%テトラアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液にて現像処理し、ホトレジストパターンを形成した。次いでSiOC層をドライエッチング処理した。
【0068】
上記ドライエッチング処理後の基板を用いて、以下の処理を行った。
【0069】
(実施例1〜4)
上記ドライエッチング処理後の基板を、表1に示す処理液に50℃、20分間浸漬処理した後、純水にてリンス処理した。
【0070】
このときの基板表面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、下記評価基準により評価した。結果を表1に示す。なお低誘電体層の腐食はみられなかった。
【0071】
[ホトレジスト変質膜の溶解性(除去促進効果)]
○: ホトレジスト変質膜に対して除去促進効果がみられた
×: ホトレジスト変質膜に対して除去促進効果がみられなかった
続いて、ホトレジスト用剥離液Aに50℃、20分間浸漬した。次いでこれを純水にてリンス処理した後、乾燥した。
【0072】
このときの基板表面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、下記評価基準により評価した。結果を表1に示す。なお低誘電体層の腐食はみられなかった。
【0073】
[ホトレジスト変質膜の剥離効果]
○: ホトレジスト変質膜が完全に除去された(基板上に残存する残渣物がみられなかった)
△: ホトレジスト変質膜の除去が不完全であった
×: ホトレジスト変質膜がほとんど除去できていなかった
【0074】
(比較例1〜3)
比較例1〜2においては、上記ドライエッチング処理後の基板を、表1に示す処理液に50℃、20分間浸漬処理した後、純水にてリンス処理し、ホトレジスト剥離液Aに50℃、20分間浸漬した。次いでこれを純水にてリンス処理した後、乾燥した。
【0075】
比較例3では、処理液による処理を行うことなく、ホトレジスト剥離液Aに上記と同様に浸漬し、次いで純粋にてリンス処理した後、乾燥した。
【0076】
このときの基板表面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察し、上記評価基準により評価した。結果を表1に示す。なお低誘電体層の腐食はみられなかった。
【0077】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)酸化剤と、(b)アルキレンカーボネートおよびその誘導体の中から選ばれる少なくとも1種と、(c)水を含有することを特徴とするホトレジスト除去用処理液。
【請求項2】
(a)成分がオゾン水および/または過酸化水素水である、請求項1記載のホトレジスト除去用処理液。
【請求項3】
(a)成分が過酸化水素水である、請求項1または2記載のホトレジスト除去用処理液。
【請求項4】
(b)成分がエチレンカーボネートおよび/またはプロピレンカーボネートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のホトレジスト除去用処理液。
【請求項5】
(b)成分がプロピレンカーボネートである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のホトレジスト除去用処理液。
【請求項6】
(a)成分を0.1〜35質量%、(b)成分を5〜90質量%含有し、残余が(c)成分である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のホトレジスト除去用処理液。
【請求項7】
さらに(d)水溶性有機溶媒を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のホトレジスト除去用処理液。
【請求項8】
(d)成分が多価アルコール類およびその誘導体の中から選ばれる少なくとも1種である、請求項7記載のホトレジスト除去用処理液。
【請求項9】
(d)成分を0.01〜30質量%含有する、請求項7または8記載のホトレジスト除去用処理液。
【請求項10】
ドライエッチング処理後の変質したホトレジスト膜を有する基板、あるいは、前記ドライエッチング処理後所望によりプラズマアッシング処理を行った基板、に用いる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のホトレジスト除去用処理液。
【請求項11】
ドライエッチング処理後の変質したホトレジスト膜を有する基板、あるいは、前記ドライエッチング処理後所望によりプラズマアッシング処理を行った基板、を処理液で処理し、次いでホトレジスト用剥離液で剥離処理するホトレジスト剥離工程に用いられる上記処理液であって、請求項1〜10のいずれか1項に記載のホトレジスト除去用処理液。
【請求項12】
上記基板が、少なくとも銅配線と低誘電体層が形成された基板である、請求項10または11記載のホトレジスト用除去用処理液。
【請求項13】
ドライエッチング処理後の変質したホトレジスト膜を有する基板、あるいは、前記ドライエッチング処理後所望によりプラズマアッシング処理を行った基板、を請求項1〜12のいずれか1項に記載のホトレジスト除去用処理液にて処理し、次いでホトレジスト用剥離液で剥離処理する、基板の処理方法。
【請求項14】
ホトレジスト用剥離液が、第4級アンモニウム水酸化物、水溶性有機溶媒、および水を含有するアミン系ホトレジスト用剥離液である、請求項13記載の基板の処理方法。
【請求項15】
ホトレジスト用剥離液が、さらに芳香族ヒドロキシ化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、およびメルカプト基含有化合物の中から選ばれる少なくとも1種の防食剤を含有する、請求項14記載の基板の処理方法。

【公開番号】特開2006−106616(P2006−106616A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296606(P2004−296606)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】