説明

ボタン電話装置及びエコー制御方法

【課題】種類の異なるアナログ電話機に適切に対応してエコーを除去するボタン電話装置を提供する。
【解決手段】複数のアナログ電話機1−1〜1−nを収容し、インターネット回線を使用する通話を中継するボタン電話装置100であって、各アナログ電話機1−1〜1−nがインターネット回線を使用して通話するときに発生するエコー量を測定するエコー量測定部8と、エコー量に応じて、キャンセルするエコー量を特定するパラメータを算出する制御部3と、各アナログ電話機に対応づけて、パラメータを保持する記憶装置4と、任意のアナログ電話機に応じたパラメータを用いて、エコーをキャンセルするエコーキャンセラ5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VoIPインターフェイス、及び、アナログインターフェイスを持ったボタン電話システムに関し、特に、各アナログ電話に応じてエコーをキャンセルするボタン電話システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の回線交換を行うボタン電話装置にVoIP(Voice over Internet Protocol)のインターフェイスを具備させる場合、アナログ電話インターフェイスのハイブリッド回路等で発生するエコーの除去方法が問題になる。具体的には、IP網では遅延が存在するため、IP網を介して相手方より到来する音声が、ハイブリッド回路やアナログ電話機で反射すると、IP網を介して相手方へ返り、相手方ではエコーとして聞こえてしまう。このため、エコーを除去する技術が開発されている。
【0003】
また、ボタン電話装置が複数の種類のアナログ電話機を収容する場合、アナログ電話機によって発生するエコーの量が異なるため、エコーキャンセラを適切に動作させるためには、通話の度にエコーキャンセラのパラメータを適切に設定する必要がある。
例えば、特許文献1には、エコーキャンセラを有するゲートウェイ装置と接続したIP電話システムを構成する構内交換装置において、収容する公衆回線に対応して付加する利得を示すゲイン情報をエコーキャンセラのエコー消去に用いる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−33261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術など、関連するボタン電話装置で使用されているVoIPインターフェイスはエコー除去時のパラメータをアナログ電話機毎に設定せず、固定されていた。このため、あるアナログ電話機では最適にエコー除去ができても、別のアナログ電話機ではエコー除去が十分でないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、種類の異なるアナログ電話機に適切に対応してエコーを除去するボタン電話装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るボタン電話装置の一態様は、複数のアナログ電話機を収容し、インターネット回線を使用する通話を中継する中継手段を有するボタン電話装置であって、各アナログ電話機が前記中継手段を介して前記インターネット回線を使用して通話するときに発生するエコー量を測定するエコー量測定手段と、前記エコー量に応じて、キャンセルするエコー量を特定するパラメータを算出する制御手段と、各アナログ電話機に対応づけて、前記パラメータを保持する記憶手段と、任意のアナログ電話機に応じた前記パラメータを用いて、エコーをキャンセルするエコーキャンセル手段と、を備える。
【0008】
また、本発明に係るエコー制御方法の一態様は、複数のアナログ電話機を収容し、インターネット回線を使用する通話を中継するボタン電話装置のエコー制御方法であって、各アナログ電話機が前記インターネット回線を使用して通話するときに発生するエコー量を測定し、前記エコー量に応じて、キャンセルするエコー量を特定するパラメータを算出し、各アナログ電話機に対応づけて、前記パラメータを記憶手段に保持し、任意のアナログ電話機に応じた前記パラメータを用いて、エコーをキャンセルする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、種類の異なるアナログ電話機に適切に対応してエコーを除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係るボタン電話装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態2に係るボタン電話装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0012】
また、以下の各実施形態では、次の機能を有する装置をボタン電話装置に適用することを前提とする。
(1)ボタン電話装置100は、VoIPインターフェイス及びアナログインターフェイスを備える。
(2)ボタン電話装置は2つのモード、具体的にはエコー測定モードと通常動作モードで動作する。
エコー測定モード:ポート毎にエコー量測定部にてアナログインターフェイスで発生するエコーの測定を行い、エコー量またはエコー量に基づいて算出したパラメータを記憶装置に記録する。
通常動作モード:VoIPインターフェイスとアナログインターフェイスで通話する場合、記憶装置に記録されたエコー量をパラメータとして、または、パラメータを用いてエコー除去を行う。
【0013】
(実施形態1)
図1に本発明の実施形態1に係るボタン電話装置の構成例をしめす。図1では、実施形態1のボタン電話を実施に関係する構成要素を示し、その他の構成要素については説明を省略している。ボタン電話装置100は、アナログ電話機1−1〜1−n(nは、n>0の整数)と、IP(Internet Protocol)中継網(インターネット回線)2とに接続する。ボタン電話装置100は、制御部(CPU : Central Processing Unit)3、記憶装置4、エコーキャンセラ5、IPパケット変換部6、スイッチ部7、エコー量測定部8、ハイブリッド回路9及びアナログインターフェイス部11−1〜11−nを備える。図1の構成では、アナログインターフェイス部11はアナログ回線(アナログ電話機1)と接続し、IPパケット変換部6がIP中継網2側と接続するインターフェイスとなる。従って、VoIPインターフェイスの役割をIPパケット変換部6が実現している。
【0014】
以降の説明において、複数のアナログ電話機1−1〜1−nまたは複数のアナログインターフェイス部11−1〜11−nそれぞれを区別する必要がない場合、適宜アナログ電話機1またはアナログインターフェイス部11と記す。また、IPパケット変換部6、スイッチ部7及びアナログインターフェイス部11−1〜11−nとは、複数のアナログ電話機1−1〜1−nを収容し、IP中継網2を使用する通話を中継する中継手段101を構成する。
【0015】
まず、図1を基に各構成要素の説明を行う。
制御部3は、中継手段101全体を制御する。制御部3は、CPU(Central Processing Unit)を含む。また、本実施形態では、制御部3は、エコー量に基づいてエコーキャンセラ5が用いるパラメータを算出する。パラメータを算出する処理は、ソフトウェア(プログラム)、ハードウェアあるいはこれらの組み合わせを用いて実現することが可能である。
記憶装置4は、記憶領域であり、制御部3または中継手段101が処理を実行するときに必要なデータを記憶する。本実施形態では、エコーキャンセラ5が使用するパラメータを記憶する。パラメータは、エコーキャンセラ8がキャンセルするエコー量を特定する。記憶装置4は、一時的に記憶する記憶領域(揮発性記憶装置)と、継続して記憶する記憶領域(不揮発性記憶装置)とを備えている。
【0016】
エコーキャンセラ5は、パラメータを用いてエコーをキャンセルする。
IPパケット変換部6は、IP中継網2から転送されるパケットを音声(アナログデータ)に変換する。ここでは、VoIPインターフェイスの役割を果たす。
スイッチ部7は、IPパケット変換部6と接続するアナログインターフェイス部11を選択する。
エコー量測定部8は、エコー測定モードにおいて、ハイブリッド回路9及びアナログ電話機1において発生するエコー量を測定する。
ハイブリッド回路9は、アナログ電話機1とスイッチ部7とを接続する。
IP中継網2は、インターネット回線へ中継するネットワークである。
アナログインターフェイス部11は、アナログ電話機1と接続する。
【0017】
以下に、本発明における実施例の動作の説明を記す。
エコー測定モードでは、エコー量測定部8は、ハイブリッド回路9及びアナログ電話機1において発生するエコー量を測定し、制御部3に通知する。このとき、エコー量測定部8は、アナログインターフェイス部11毎にエコー量を測定する。制御部3はエコー量からエコーキャンセラ5がエコーをキャンセルするときに用いるパラメータを計算する。そして、制御部3は、アナログインターフェイス部11毎に記憶装置4にエコーキャンセラ5のパラメータを記憶させる。
【0018】
通常動作モードでは、IP中継網2とアナログ電話機1を通話させる場合、まず、制御部3はスイッチ部7にて、アナログ電話機1とIPパケット変換部6の通話をさせる。このとき、制御部3は記憶装置4に記憶されたパラメータをエコーキャンセラ5に知らせる。エコーキャンセラ5は通知されたパラメータに従い、エコー除去を行う。
【0019】
以上説明したように、本実施形態によれば、エコー除去のパラメータをアナログインターフェイス部11毎に、すなわち、アナログ電話機1毎に設定することができる。具体的には、アナログ電話機1毎にエコー量を測定し、測定した結果に応じて、エコーキャンセラ5が用いるパラメータを計算する。その結果、各アナログ電話機1に応じてパラメータを、きめ細かく変更・設定することができる。従って、アナログ電話機1の種類に適切なパラメータを用いて、エコーを除去することが可能になる。これにより、エコーの発生を極力抑えることが可能になる。
【0020】
(実施形態2)
図1では、エコー量測定部8がアナログインターフェイス部11毎に設置されている構成例を説明したが、エコー量測定部8をIPパケット変換部6に設置することも可能である。図2は、本発明の実施形態2に係るボタン電話装置200の構成例を示すブロック図である。
【0021】
図2の構成では、IPパケット変換部6のエコーキャンセラ5内にエコー量測定部8を配置した例を示している。中継手段201内では、エコー量測定部8は、各アナログ電話機1がスイッチ部7を介してIPパケット変換部6と接続されたときにエコー量を測定する。その他の動作は実施形態1と同様であるため説明を省略する。
【0022】
本実施形態では、実施形態1の効果に加え、エコー量測定部8を配置する数を削減できることにより、図1の構成に比べ、ボタン電話装置の製造コストを削減することが可能になる。
【0023】
(実施形態3)
上記各実施形態では、各アナログ電話機に応じたパラメータを用いる場合を説明したが、実施形態3では、複数のアナログ電話機に共通のパラメータを用いる機能を併せて備える場合を説明する。例えば、システム立ち上げ時、共通パラメータを用いて通話を開始し、その後各アナログ電話機に応じたパラメータを用いて通話を行うようにすることができる。これにより、システム立ち上げ時にパラメータを設定するまでに時間がかかる場合に、共通パラメータを用いて通話を開始することを優先させ、その後各アナログ電話機に応じたパラメータを設定する。これにより、通話の需要に応じてシステムを柔軟に運用させることが可能になる。例えば、通話が混み合う時間にシステムを立ち上げた場合など、共通パラメータを用いることによって迅速に通話を開始させる場合に有効である。また、本実施形態は、上記各実施形態に適用することが可能である。
【0024】
本実施形態では、記憶装置4は、複数のアナログ電話機に共通して適用する共通パラメータと、モード情報とをさらに保持する。モード情報は、各アナログ電話機に応じたパラメータを用いる個別モードと、複数のアナログ電話機に共通のパラメータを用いる共通モードとを指定する。
【0025】
制御部3は、任意の一つのアナログ電話機に応じたパラメータを共通パラメータとして記憶装置4へ格納する。また、個別モードと共通モードとのいずれかの指定を受け付け、記憶装置4が保持するモード情報を更新する。モード情報の指定は、外部から(システム管理者など)から入力される。また、システム立ち上げ時には、デフォルト値として共通モードが指定されてもよい。
【0026】
エコーキャンセラ5は、モード情報に基づいて、各アナログ電話機1に応じたパラメータと共通パラメータとのいずれかを選択する。エコーキャンセラ5は、モード情報を、制御部3から通知されるようにしてもよいし、記憶装置4から読み出してもよい。
【0027】
なお、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1−1〜1−n アナログ電話機1
2 IP中継網
3 制御部
4 記憶装置
5 エコーキャンセラ
6 IPパケット変換部
7 スイッチ部
8 エコー量測定部
9 ハイブリッド回路
11−1〜11−n アナログインターフェイス部
100、200 ボタン電話装置
101、201 中継手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアナログ電話機を収容し、インターネット回線を使用する通話を中継する中継手段を有するボタン電話装置であって、
各アナログ電話機が前記中継手段を介して前記インターネット回線を使用して通話するときに発生するエコー量を測定するエコー量測定手段と、
前記エコー量に応じて、キャンセルするエコー量を特定するパラメータを算出する制御手段と、
各アナログ電話機に対応づけて、前記パラメータを保持する記憶手段と、
任意のアナログ電話機に応じた前記パラメータを用いて、エコーをキャンセルするエコーキャンセル手段と、を備えるボタン電話装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、
前記複数のアナログ電話機に共通して適用する共通パラメータと、
各アナログ電話機に応じたパラメータを用いる個別モードと、前記複数のアナログ電話機に前記共通のパラメータを用いる共通モードとのいずれかを指定するモード情報と、をさらに保持し、
前記制御手段は、任意のアナログ電話機に応じた前記パラメータを前記共通パラメータとして前記記憶手段へ格納し、前記モード情報の指定を受け付けて前記記憶手段が保持するモード情報を更新し、
前記エコーキャンセル手段は、前記モード情報に基づいて、各アナログ電話機に応じた前記パラメータと前記共通パラメータとのいずれかを選択することを特徴とする請求項2に記載のボタン電話装置。
【請求項3】
前記エコー量測定手段は、各アナログ電話機に対応づけて備えられ、対応づけられたアナログ電話機のエコー量を測定することを特徴とする請求項1または2記載のボタン電話装置。
【請求項4】
前記中継手段は、一つのエコー量測定手段を有し、前記複数のアナログ電話機毎にインターネット回線と接続させ、
前記エコー量測定手段は、アナログ電話機毎のエコー量を測定することを特徴とする請求項1または2記載のボタン電話装置。
【請求項5】
複数のアナログ電話機を収容し、インターネット回線を使用する通話を中継するボタン電話装置のエコー制御方法であって、
各アナログ電話機が前記インターネット回線を使用して通話するときに発生するエコー量を測定し、
前記エコー量に応じて、キャンセルするエコー量を特定するパラメータを算出し、
各アナログ電話機に対応づけて、前記パラメータを記憶手段に保持し、
任意のアナログ電話機に応じた前記パラメータを用いて、エコーをキャンセルするエコー制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−200219(P2010−200219A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45319(P2009−45319)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)
【Fターム(参考)】