説明

ボールリテーナ及び直動転がり案内ユニット

【課題】 コンパクト化及び作動性の向上が可能なボールリテーナ及び直動転がり案内ユニットを提供する。
【解決手段】 ボールリテーナ8を、第一のボールリテーナ8aと第二のボールリテーナ8bとから形成し、第一のボールリテーナ8aを複数の間座部26と,複数の間座部26を連結する一つの連結部28aとから形成し、第二のボールリテーナ8bを、複数の間座部26と、複数の間座部26を連結する一つの連結部28bとから形成し、連結部28a,28bに連結される各間座部26同士の間隔を、間座部26の厚さ分の長さ及びボール6二つの直径分の長さとする。そして、連結部28aの一方の端に位置する間座部26a及び間座部26aと隣り合う間座部26cが、連結部28bよりも連結部28bの長手方向外側に位置するように、ボールリテーナ8aとボールリテーナ8bとを組み合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械や射出成形機等に用いられる直動転がり案内ユニットに関し、特に、隣り合うボール間に間座部が介装されているボールリテーナ及びボールリテーナを備えた直動転がり案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械用や射出成形機等に用いられている直動転がり案内ユニットは、転動体転動路内を複数のボールが転動しつつ移動することによって、スライダを案内レールに対して相対移動させている。
このような直動転がり案内ユニットは、騒音の発生を抑制するとともに、直動転がり案内ユニットを円滑に作動させるために、隣り合うボール同士の間隔を所定の間隔に保つことにより、隣り合うボール同士の接触を防止するボールリテーナを備えている。
【0003】
このようなボールリテーナとしては、例えば、図18(a),(b)に示すようなものがある。このボールリテーナ8は、隣り合うボール6間にそれぞれ介装される複数の円板状の間座部26と、隣り合う間座部26同士を連結する連結部28とから形成されている。そして、ボール6とボールリテーナ8とからなる転動体列34が形成されており、この転動体列34が転動体転動路内に装填されている。
【0004】
間座部26には、ボール6の外周に対して摺動自在に接触する一対の凹部32a、32bが設けられており、これらの凹部32a、32bが設けられることによって、隣り合う間座部26間にボール6を保持している。連結部28は、湾曲可能な弾性材料によって形成されている。なお、図18(a)は、転動体転動路内の直線部における転動体列34の一部を示しており、図18(b)は、転動体転動路内の曲線部における転動体列34の一部を示している。
【0005】
また、図19(a),(b)に示すようなボールリテーナ8もある。このボールリテーナ8は、間座部26に凹部が設けられていない点を除き、図18に示すボールリテーナ8と同様の構成となっている。なお、図19(a)は、転動体転動路内の直線部における転動体列34の一部を示しており、図19(b)は、転動体転動路内の曲線部における転動体列34の一部を示している。
【0006】
これらのボールリテーナは、転動体列の長さを転動体転動路の路長と対応する長さとするために、転動体転動路の路長よりも長手方向の長さが短いボールリテーナを、転動体転動路に沿って複数連結して形成されている。これらのボールリテーナはその両端部に連結機構が設けられており、ボールリテーナ同士を連結する際は、それぞれの端部に設けられている連結機構同士を接続する。この連結機構は、間座部及び連結部とは別個の構成である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来のボールリテーナでは、転動体転動路内に、ボール及び間座部が存在する空間に加え、ボールリテーナ同士の連結部分が存在する空間が必要となるため、転動体転動路が長くなってしまい、直動転がり案内ユニットが大型化してしまう。
また、ボールリテーナ同士の連結部分にはボールが保持されていないため、この連結部分が、転動体転動路内をボールが転動しながら移動する際に、転動体転動路の特に曲線部において転動体転動路に引っ掛かってしまい、直動転がり案内ユニットの作動性が低下してしまう。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、ボールリテーナ同士を連結する際に間座部及び連結部とは別個の連結機構を必要とせず、直動転がり案内ユニットのコンパクト化及び作動性の向上が可能な、ボールリテーナ及び直動転がり案内ユニットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、直動転がり案内ユニットの転動体転動路内に転動自在に装填される複数のボールに対し、隣り合う前記ボール同士の間隔を所定の間隔に保つために、隣り合う前記ボール間にそれぞれ介装される複数の間座部を備えたボールリテーナにおいて、
複数の前記間座部を連結し且つ前記転動体転動路に沿って湾曲可能な弾性材料からなる対向配置した一対の連結部を有し、
前記一対の連結部は、配列される複数の前記間座部を交互に連結したことを特徴とするものである。
【0009】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記一対の連結部のうち一方の連結部に連結される複数の前記間座部群のうち一方の端に位置する間座部及びその間座部と隣り合う間座部が、前記一対の連結部のうち他方の連結部よりも当該他方の連結部の長手方向外側に位置していることを特徴とするものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、各連結部に連結される複数の前記間座部群の端に位置する間座部の厚さを、それぞれ他の間座部の半分の厚さとしたことを特徴とするものである。
【0010】
次に、請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した発明であって、前記一対の連結部のうち一方の連結部に連結される複数の前記間座部群のうち一方の端に位置する前記間座部が、前記一対の連結部のうち他方の連結部の一方の端部よりも長手方向外側に位置しており、
前記一対の連結部のうち他方の連結部に連結される複数の前記間座部群のうち他方の端に位置する前記間座部が、前記一対の連結部のうち一方の連結部の他方の端部よりも長手方向外側に位置していることを特徴とするものである。
【0011】
次に、請求項5に記載した発明は、直動転がり案内ユニットの転動体転動路内に転動自在に装填される複数のボールに対し、隣り合う前記ボール同士の間隔を所定の間隔に保つボールリテーナであって、
前記ボールリテーナは、隣り合う前記ボール間にそれぞれ介装される複数の間座部と、複数の前記間座部を連結し且つ前記転動体転動路に沿って湾曲可能な弾性材料からなる一対の連結部と、から形成されるボールリテーナにおいて、
前記一対の連結部のうち一方の連結部を当該連結部の一方の端部から間座部二つの厚さ分の長さ及び前記ボール二つの直径分の長さに亘って延長し、その延長部分の先端に間座部を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
次に、請求項6に記載した発明は、直動転がり案内ユニットの転動体転動路内に転動自在に装填される複数のボールに対し、隣り合う前記ボール同士の間隔を所定の間隔に保つボールリテーナであって、
前記ボールリテーナは、隣り合う前記ボール間にそれぞれ介装される複数の間座部と、複数の前記間座部を連結し且つ前記転動体転動路に沿って湾曲可能な弾性材料からなる一対の連結部と、から形成されるボールリテーナにおいて、
複数の前記間座部群のうち両端に位置する間座部の厚さを他の間座部の半分の厚さとし、
前記一対の連結部のうち一方の連結部を当該連結部の一方の端部から前記間座部の半分の厚さ及び前記ボールの直径分の長さに亘って延長し、その延長部分の先端に厚さを半分とした前記間座部を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
次に、請求項7に記載した発明は、請求項1から6のうちいずれかに記載した発明であって、前記間座部と連結部とを同一材料を用いて成形し、これらの成形された前記間座部及び連結部を一体成形して形成されることを特徴とするものである。
本発明によると、同一材料を用いて間座部及び連結部を成形し、これらの成形した間座部及び連結部を一体成形してボールリテーナを形成したため、ボールリテーナの形成が容易となるとともにボールリテーナの強度が向上する。
【0014】
次に、請求項8に記載した発明は、請求項1から7のうちいずれかに記載した発明であって、複数の前記間座部を円板状に形成し、当該円板状に形成した間座部に前記ボールを保持する保持部を設けたことを特徴とするものである。
本発明によると、間座部に設けた保持部によって間座部によるボールの保持力が向上するため、直動転がり案内ユニットの組立効率が向上する。
【0015】
次に、請求項9に記載した発明は、請求項1から8のうちいずれかに記載した発明であって、複数の前記間座部を円板状に形成し、当該円板状に形成した間座部の外周部に面取り部を設けたことを特徴とするものである。
本発明によると、隣り合う間座部間にボールを装填する際に、ボールが外周部に引っ掛かることが防止されるため、隣り合う間座部間へのボールの装填が容易となる。また、間座部と転動体転動路との間に生じる摩擦力が低下するため、直動転がり案内ユニットの作動性が向上する。
【0016】
次に、請求項10に記載した発明は、請求項1から9のうちいずれかに記載した複数のボールリテーナ同士を前記転動体転動路に沿って連結し、前記連結したボールリテーナを一本の前記転動体転動路内に転動体転動路に沿って配置したことを特徴とする直動転がり案内ユニットである。
本発明によると、複数のボールリテーナ同士を連結する際に間座部及び連結部とは別個の連結機構を必要としないため、転動体転動路の長さをボール及び間座部が存在するための長さとすることが可能となる。また、複数のボールリテーナ同士の連結部分にボールが存在しているため、転動体転動路内にボールが均等に配置される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数のボールリテーナ同士を連結する際に間座部及び連結部とは別個の連結機構を必要とせず、また、転動体転動路内にボールが均等に配置されるため、直動転がり案内ユニットのコンパクト化及び作動性の向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の第一の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、図1及び図2を参照して本発明の第一の実施形態の構成を説明する。なお、図18及び図19と同様の構成については、同一符号を付して説明する。
図1に示すように、本実施形態の直動転がり案内ユニット1は、案内レール2と、案内レール2と相対移動可能に案内レール2に跨架されるスライダ4と、鋼球からなる複数のボール6と、二つのボールリテーナ8とを備えている。
【0019】
案内レール2は、軸方向に延びるレール側転動体転動溝10を外面に有している。
スライダ4は、スライダ本体12と、スライダ本体12の軸方向両端面にそれぞれ接合されるエンドキャップ14とから構成されている。スライダ本体12は、レール側転動体転動溝10に対向するスライダ側転動体転動溝16と、スライダ側転動体転動溝16と平行をなす転動体戻り路18とを有している。エンドキャップ14は、レール側転動体転動溝10とスライダ側転動体転動溝16との間に形成される負荷転動路20と転動体戻り路18とを連通させる方向転換路22を有している。また、転動体戻り路18と、負荷転動路20及び方向転換路22により、転動体転動路24が形成されており、この転動体転動路24内には、複数のボール6が転動自在に装填されており、隣り合うボール6同士の間隔は、ボールリテーナ8によって所定の間隔に保たれている。ボールリテーナ8は、転動体転動路24の路長よりも長手方向長さが短いボールリテーナ8を、転動体転動路24に沿って二つ連結して構成されている。
【0020】
ボールリテーナ8は、複数の円板状の間座部26と、隣り合う間座部26同士を連結する一対の連結部28とから形成されている。複数の間座部26は、隣り合うボール6間にそれぞれ介装され、ボール6と対向する平面部30に、ボール6の保持部として、ボール6の外周に対して摺動自在に接触する凹部32が設けられている。連結部28は転動体転動路24に沿って湾曲可能な弾性材料からなり、間座部26及び連結部28は同一材料を用いて成形されている。そして、これらの成形された間座部26及び連結部28を一体成形することにより、ボールリテーナ8が形成されている。すなわち、転動体転動路24内には、ボール6とボールリテーナ8とからなる転動体列34が無端状に形成されている。なお、本実施形態では、二つのボールリテーナ8を同一形状のものとして説明するが、これに限定されるものではない。
【0021】
また、ボールリテーナ8は、図2(a),(b)に示すように、第一のボールリテーナ8aと第二のボールリテーナ8bとを組み合わせて形成されている。なお、図2(a)はボールリテーナ8a及びボールリテーナ8bの上方からの斜視図であり、図2(b)は図2(a)を横方向から見た図である。
ボールリテーナ8aは、複数の間座部26が一つの連結部28aに連結されて形成されており、ボールリテーナ8bは、複数の間座部26が一つの連結部28bに連結されて形成されている。各間座部26は、連結部28a,28bの端から間座部26の厚さ分の長さ及びボール6二つの直径分の長さを開けて連結されている。また、連結部28a,28bの隣り合う間座部26同士の中間には、間座部26が連結されている位置と同形状の凸部36が設けられている。なお、本実施形態においては、ボールリテーナ8a及びボールリテーナ8bは共に、複数の間座部26のうち、一方の端に位置する間座部26を間座部26a、他方の端に位置する間座部26を間座部26bと示し、間座部26aと隣り合う間座部26を間座部26cと示す。また、複数の凸部36のうち、間座部26aと間座部26cとの中間に設けられている凸部36を凸部36aと示し、凸部36aと隣り合う凸部36を凸部36bと示す。
【0022】
次に、上記の構成を備えた直動転がり案内ユニット1の作用・効果等を説明する。
本実施形態の直動転がり案内ユニット1の組立作業は、以下の手順に沿って行う。
まず、図3に示すように、ボールリテーナ8aとボールリテーナ8bとを組み合わせて、ボールリテーナ8を形成する。このとき、ボールリテーナ8aの間座部26bが、ボールリテーナ8bの凸部36bと接し、ボールリテーナ8bの間座部26bが、ボールリテーナ8aの凸部36bと接するように組み合わせる。
【0023】
すなわち、連結部28aに連結される間座部26a及び間座部26cが、連結部28bよりも連結部28bの長手方向外側に位置するように、ボールリテーナ8aとボールリテーナ8bとを組み合わせる。このとき、連結部28bに連結される間座部26a及び間座部26cは、連結部28aよりも連結部28aの長手方向外側に位置する。
ボールリテーナ8aとボールリテーナ8bとを組み合わせると、隣り合う間座部26間にはボール6の保持領域38が形成される。そして、各保持領域38にボール6を装填することにより、ボールリテーナ8が形成される。このとき、連結部28は湾曲可能な弾性材料で形成されているため、各保持領域38へのボール6の装填は容易となっている。また、各間座部26に設けられた凹部32にボール6の一部が保持されるため、ボールリテーナ8aとボールリテーナ8bとの連結状態が保持される。なお、図3では、説明のために各保持領域38に装填されているボール6を省略している。
【0024】
次に、図4に示すように、二つのボールリテーナ8同士を各ボールリテーナ8の長手方向に沿って連結する。以下、二つのボールリテーナ8のうち、一方をボールリテーナ8と示し、他方をボールリテーナ8´と示す。このとき、ボールリテーナ8の間座部26aをボールリテーナ8´の凸部36a´と接触させるとともに、ボールリテーナ8´の間座部26a´をボールリテーナ8の凸部36aと接触させる。
【0025】
そして、間座部26aと間座部26a´との間に形成された保持領域38a、間座部26aと間座部26c´との間に形成された保持領域38b、間座部26a´と間座部26cとの間に形成された保持領域38cに、それぞれボール6を装填し、ボールリテーナ8とボールリテーナ8´とを連結する。このとき、連結部28a,28bは湾曲可能な弾性材料で形成されているため、各保持領域38a〜38cへのボール6の装填は容易となっている。また、各間座部26に設けられた凹部32にボール6の一部が保持されるため、ボールリテーナ8とボールリテーナ8´との連結状態が保持される。なお、図4(a)はボールリテーナ8とボールリテーナ8´との連結部分を拡大した上方からの斜視図であり、図4(b)は図4(a)を横方向から見た図である。また、図4(a),(b)では、説明のために、各保持領域38に装填されているボール6を省略している。
【0026】
図5に示すように、全保持領域38にボール6を装填し、ボールリテーナ8とボールリテーナ8´とを連結した後、この連結したボールリテーナ8とボールリテーナ8´とを、転動体転動路24に沿って、転動体転動路24内に挿入する。なお、以下の説明はボールリテーナ8側を先頭にして、連結したボールリテーナ8及びボールリテーナ8´を転動体転動路24内に挿入した場合についての説明である。
【0027】
次に、ボールリテーナ8に連結されている間座部26aを、ボールリテーナ8´の凸部36a´に接触させるとともに、ボールリテーナ8´に連結されている間座部26a´を、ボールリテーナ8の凸部36aに接触させる。そして、これらの間座部26によって形成される二箇所の保持領域38にそれぞれボール6を装填することにより、転動体転動路24内において無端状の転動体列34を形成して、直動転がり案内ユニット1の組立作業を終了する。
【0028】
したがって、本実施形態のボールリテーナ8を備えた直動転がり案内ユニット1であれば、ボールリテーナ8とボールリテーナ8´とを連結する際に、間座部26及び連結部28以外の構成を必要としないため、転動体転動路24内の長さを、ボール6及び間座部26が存在するための長さとすることが可能となり、直動転がり案内ユニット1のコンパクト化が可能となる。また、転動体転動路24内にボール6を均等に装填することが可能となるため、直動転がり案内ユニット1の作動性が向上する。
【0029】
さらに、ボールリテーナ8a及びボールリテーナ8bを、間座部26及び連結部28を同一材料を用いて成形し、これらの成形した間座部26及び連結部28を一体成形して形成したため、ボールリテーナ8a及びボールリテーナ8bの製造が容易となり、直動転がり案内ユニット1の生産性が向上する。
なお、本実施形態では、連結部28が湾曲可能な方向を、転動体転動路24に沿った方向としたが、これに限定されるものではなく、ボール6の円滑な転動を阻害することが無い方向に湾曲可能であればよい。
【0030】
また、図6に示すように、間座部26の外周部に面取り部40を形成してもよい。この場合、ボール6を各保持領域38に装填する際に、ボール6が間座部26の外周部に引っ掛かることが防止されるため、ボール6の装填が容易となる。また、間座部26の外周部と転動体転動路24との接触面積が減少して、特に転動体転動路24の曲線部における、間座部26と転動体転動路24との間に生じる摩擦力が減少するため、直動転がり案内ユニット1の作動性が向上する。
【0031】
さらに、本実施形態では、ボールリテーナ8a及びボールリテーナ8bを、同一材料を用いて成形された間座部26及び連結部28を一体成形することにより形成したが、これに限定されるものではない。すなわち、間座部26及び連結部28を、それぞれの使用条件等に適した材料によって成形し、これらの成形した間座部26及び連結部28を一体成形することにより、ボールリテーナ8a及びボールリテーナ8bを形成してもよい。この場合、ボールリテーナ8a及びボールリテーナ8bの強度が増加し、ボールリテーナ8の強度が向上するため、直動転がり案内ユニット1の長寿命化が可能となる。
【0032】
また、本実施形態では、間座部26の平面部30にボール6の保持部として凹部32を設けたが、ボール6の保持部はこれに限定されるものではなく、例えば、間座部26に、間座部26を軸方向に貫通する貫通孔を設けてもよい。この場合、貫通孔の直径は、隣り合うボール6同士が接触しないだけの大きさとする。
また、本実施形態では、ボールリテーナ8a及びボールリテーナ8bを、共に六つの間座部26と一つの連結部28とから構成した場合について説明するが、ボールリテーナ8a及びボールリテーナ8bの構成はこれに限定されるものではない。
また、本実施形態では、連結部28a,28bは共に、その両端が間座部26と面一になっているが、これに限定されるものではなく、ボールリテーナ8とボールリテーナ8´との連結を阻害しない形状であればよい。
【0033】
次に、本発明の第二の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、図7を参照して本発明の第二の実施形態の構成を説明する。なお、第一の実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明する。
図7(a),(b)に示すように、本実施形態の直動転がり案内ユニット1に備えられるボールリテーナ8は、第一の実施形態で説明したボールリテーナ8と以下の点で構成が異なっている。すなわち、第一のボールリテーナ8a及び第二のボールリテーナ8bは共に、複数の間座部26のうち、連結部28a,28bの両端にそれぞれ位置する間座部26a,26bの厚さが、他の間座部26の半分の厚さとなっている。また、連結部28a,28bの両端が、間座部26a,26bと間座部26a,26bの径方向に沿って面一となるように形成されている。なお、図7(a)はボールリテーナ8a及びボールリテーナ8bの上方からの斜視図であり、図7(b)は図7(a)を横方向から見た図である。
その他の構成は、上述した第一の実施形態と同様である。
【0034】
次に、上記の構成のボールリテーナ8を備えた直動転がり案内ユニット1の作用・効果等を説明する。
本実施形態の直動転がり案内ユニット1の組立作業は、以下の手順に沿って行う。なお、ボールリテーナ8の組立を除くその他の作業は、第一の実施形態と同様であるため説明を省略する。
まず、図8に示すように、ボールリテーナ8aとボールリテーナ8bとを組み合わせて、ボールリテーナ8を形成する。このとき、ボールリテーナ8aの間座部26bがボールリテーナ8bの凸部36aと接し、かつボールリテーナ8bの間座部26bがボールリテーナ8aの凸部36aと接するように組み合わせる。
【0035】
すなわち、連結部28aの一方の端に位置する間座部26aが、連結部28bの他方の端部よりも連結部28bの長手方向外側に位置するとともに、連結部28bの一方の端に位置する間座部26aが、連結部28aの他方の端部よりも連結部28aの長手方向外側に位置するように、ボールリテーナ8aとボールリテーナ8bとを組み合わせる。
ボールリテーナ8aとボールリテーナ8bとを組み合わせると、隣り合う間座部26間にボール6の保持領域38が形成される。そして、各保持領域38にボール6を装填することにより、ボールリテーナ8が形成される。なお、図8では、説明のために各保持領域38に装填されているボール6を省略している。
【0036】
次に、図9に示すように、二つのボールリテーナ8同士を各ボールリテーナ8の長手方向に沿って連結する。このとき、ボールリテーナ8の間座部26aを,ボールリテーナ8´の凸部36a´及び間座部26b´と接触させるとともに、ボールリテーナ8´の間座部26a´を、ボールリテーナ8の凸部36a及び間座部26bと接触させる。
【0037】
そして、間座部26aと間座部26a´との間に形成された保持領域38aにボール6を装填し、ボールリテーナ8とボールリテーナ8´とを連結して、ボールリテーナ8の組立作業を終了する。なお、図9(a)はボールリテーナ8とボールリテーナ8´との連結部分を拡大した上方からの斜視図、図9(b)は図9(a)を横方向から見た図、図9(c)は図9(a)を上方から見た図である。また、図9(a),(b)中では、説明のために、各保持領域38に装填されたボール6を省略している。
【0038】
したがって、このような構成のボールリテーナ8を備えた直動転がり案内ユニット1であれば、間座部26a及び間座部26a´と、連結部28とによって保持領域38aが形成されるため、保持領域38aにおけるボール6の保持能力が向上して、直動転がり案内ユニット1の組立効率が向上する。
その他の作用・効果は、上述した第一の実施形態と同様である。
【0039】
次に、本発明の第三の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、図10を参照して本発明の第三の実施形態の構成を説明する。なお、第一及び第二の実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明する。
図10に示すように、本実施形態の直動転がり案内ユニット1に備えられるボールリテーナ8は、第一の実施形態で説明したボールリテーナ8と、以下の点で構成が異なっている。すなわち、ボールリテーナ8は、第一のボールリテーナ8aと第二のボールリテーナ8bとを組み合わせて形成されておらず、複数の間座部26及び一対の連結部28a,28bを一体成形して形成されている。
【0040】
また、連結部28aは、一方の端部から間座部26二つの厚さ分の長さ及びボール6二つの直径分の長さに亘って延長されており、この延長部分の先端部には間座部26aが設けられている。連結部28bは、他方の端部から間座部26二つの厚さ分の長さ及びボール6二つの直径分の長さに亘って延長されており、その延長部分の先端部には間座部26aが設けられている。
その他の構成は、上述した第一の実施形態と同様である。
【0041】
次に、上記の構成のボールリテーナ8を備えた直動転がり案内ユニット1の作用・効果等を説明する。
本実施形態の直動転がり案内ユニット1の組立作業は、以下の手順に沿って行う。なお、ボールリテーナ8の組立を除くその他の作業は、第一の実施形態と同様であるため説明を省略する。
まず、図11に示すように、二つのボールリテーナ8同士を各ボールリテーナ8の長手方向に沿って連結する。このとき、ボールリテーナ8の間座部26aを、ボールリテーナ8´の凸部36a´と接触させるとともに、他方のボールリテーナ8´の間座部26a´を、一方のボールリテーナ8の間座部26bと接触させる。
【0042】
そして、間座部26aと間座部26a´との間に形成された保持領域38a、間座部26aと間座部26b´との間に形成された保持領域38b、間座部26a´と間座部26bとの間に形成された保持領域38cに、それぞれボール6を装填し、ボールリテーナ8とボールリテーナ8´とを連結して、ボールリテーナ8の組立作業を終了する。なお、図11(a)はボールリテーナ8とボールリテーナ8´との連結部分を拡大した上方からの斜視図、図11(b)は図11(a)を上方から見た図である。また、図11(a)では、説明のために、保持領域38a〜38c以外の各保持領域38に装填されたボール6を省略している。
【0043】
したがって、このような構成のボールリテーナ8を備えた直動転がり案内ユニット1であれば、ボールリテーナ8が一体成形によって形成されているため、ボールリテーナ8の組立作業にかかる時間が短縮され、直動転がり案内ユニット1の生産性が向上する。
また、ボールリテーナ8が、複数の間座部26及び一対の連結部28a,28bを一体成形して形成されているため、ボールリテーナ8の強度が向上し、直動転がり案内ユニット1の耐久性が向上する。
【0044】
その他の作用・効果は、上述した第一の実施形態と同様である。
なお、ボールリテーナ8の構成は、図10に示したものに限定されるものではなく、例えば、図12に示すような構成としてもよい。すなわち、複数の間座部26のうち、間座部26a,26bを除くその他の間座部26に、ボール6の保持部を形成しない構成としてもよい。この場合、隣り合う間座部26間へのボール6の装填が容易となるため、直動転がり案内ユニット1の組立時間が短縮され、直動転がり案内ユニット1の生産性が向上する。
なお、図12に示すボールリテーナ8同士の組立作業は、図13に示すものであるが、本実施形態で説明したものと同様であるため、その説明は省略する。
【0045】
次に、本発明の第四の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
まず、図14を参照して本発明の第四の実施形態の構成を説明する。なお、第一から第三の実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明する。
図14に示すように、本実施形態の直動転がり案内ユニット1に備えられるボールリテーナ8は、第二の実施形態で説明したボールリテーナ8と、以下の点で構成が異なっている。すなわち、ボールリテーナ8は、第一のボールリテーナ8a及び第二のボールリテーナ8bを組み合わせて形成されておらず、複数の間座部26及び一対の連結部28a,28bを一体成形して形成されている。
【0046】
また、複数の間座部26のうち、一対の連結部28a,28bの両端に位置する間座部26bは、それぞれの厚さが他の間座部26の半分の厚さとなっている。また、連結部28aは、一方の端部から、間座部26の厚さの半分の長さ及びボール6の直径分の長さに亘って延長されており、その延長部分の先端には、その厚さを他の間座部26の半分の厚さとした間座部26aが設けられている。連結部28bも連結部28aと同様に、一方の端部から、間座部26の厚さの半分の長さ及びボール6の直径分の長さに亘って延長されており、その延長部分の先端には、その厚さを他の間座部26の半分の厚さとした間座部26aが設けられている。
その他の構成は、上述した第二の実施形態と同様である。
【0047】
次に、上記の構成のボールリテーナ8を備えた直動転がり案内ユニット1の作用・効果等を説明する。
本実施形態の直動転がり案内ユニット1の組立作業は、以下の手順に沿って行う。なお、ボールリテーナ8の組立を除くその他の作業は、第一の実施形態と同様であるため説明を省略する。
まず、図15に示すように、二つのボールリテーナ8同士を各ボールリテーナ8の長手方向に沿って連結する。このとき、ボールリテーナ8の間座部26aを,ボールリテーナ8´の凸部36a´及び間座部26b´と接触させるとともに、ボールリテーナ8´の間座部26a´を、ボールリテーナ8の凸部36a及び間座部26bと接触させる。
【0048】
そして、間座部26aと間座部26a´との間に形成された保持領域38aにボール6を装填し、ボールリテーナ8とボールリテーナ8´とを連結して、ボールリテーナ8の組立作業を終了する。なお、図15(a)はボールリテーナ8とボールリテーナ8´との連結部分を拡大した上方からの斜視図、図15(b)は図15(a)を上方から見た図である。また、図15(a)中では、説明のために、保持領域38a以外の各保持領域38に装填されたボール6を省略している。
したがって、このような構成のボールリテーナ8を備えた直動転がり案内ユニット1であれば、ボールリテーナ8が一体成形によって形成されているため、ボールリテーナ8の組立作業にかかる時間が短縮され、直動転がり案内ユニット1の生産性が向上する。
その他の作用・効果は、上述した第二の実施形態と同様である。
【0049】
なお、ボールリテーナ8の構成は、図14に示したものに限定されるものではなく、例えば、図16に示すような構成としてもよい。すなわち、複数の間座部26のうち、間座部26a,26bを除き、その他の間座部26にボール6の保持部を形成しない構成としてもよい。この場合、隣り合う間座部26間へのボール6の装填が容易となるため、直動転がり案内ユニット1の組立時間が短縮され、直動転がり案内ユニット1の生産性が向上する。
なお、図16に示すボールリテーナ8によるボールリテーナ8の組立作業は、図17に示すものであるが、本実施形態で説明したものと同様であるため、その説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の直動転がり案内ユニットの軸方向断面図である。
【図2】本発明の第一の実施形態における第一及び第二のボールリテーナを示す図である。
【図3】本発明の第一の実施形態におけるボールリテーナを示す図である。
【図4】本発明の第一の実施形態におけるボールリテーナを示す図である。
【図5】本発明の第一の実施形態におけるボールリテーナを示す図である。
【図6】本発明の第一の実施形態の変形例におけるボールリテーナを示す図である。
【図7】本発明の第二の実施形態における第一及び第二のボールリテーナを示す図である。
【図8】本発明の第二の実施形態におけるボールリテーナを示す図である。
【図9】本発明の第二の実施形態におけるボールリテーナを示す図である。
【図10】本発明の第三の実施形態におけるボールリテーナを示す図である。
【図11】本発明の第三の実施形態におけるボールリテーナを示す図である。
【図12】本発明の第三の実施形態の変形例におけるボールリテーナを示す図である。
【図13】本発明の第三の実施形態の変形例におけるボールリテーナを示す図である。
【図14】本発明の第四の実施形態におけるボールリテーナを示す図である。
【図15】本発明の第四の実施形態におけるボールリテーナを示す図である。
【図16】本発明の第四の実施形態の変形例におけるボールリテーナを示す図である。
【図17】本発明の第四の実施形態の変形例におけるボールリテーナを示す図である。
【図18】従来の直動転がり案内ユニットに備えられているボールリテーナを示す図である。
【図19】従来の直動転がり案内ユニットに備えられているボールリテーナを示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 直動転がり案内ユニット
2 案内レール
4 スライダ
6 ボール
8 ボールリテーナ
10 レール側転動体転動溝
12 スライダ本体
14 エンドキャップ
16 スライダ側転動体転動溝
18 負荷転動路
20 転動体戻り路
22 方向転換路
24 転動体転動路
26 間座部
28 連結部
30 平面部
32 凹部
34 転動体列
36 凸部
38 保持領域
40 面取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直動転がり案内ユニットの転動体転動路内に転動自在に装填される複数のボールに対し、隣り合う前記ボール同士の間隔を所定の間隔に保つために、隣り合う前記ボール間にそれぞれ介装される複数の間座部を備えたボールリテーナにおいて、
複数の前記間座部を連結し且つ前記転動体転動路に沿って湾曲可能な弾性材料からなる対向配置した一対の連結部を有し、
前記一対の連結部は、配列される複数の前記間座部を交互に連結したことを特徴とするボールリテーナ。
【請求項2】
前記一対の連結部のうち一方の連結部に連結される複数の前記間座部群のうち一方の端に位置する間座部及びその間座部と隣り合う間座部が、前記一対の連結部のうち他方の連結部よりも当該他方の連結部の長手方向外側に位置していることを特徴とする請求項1に記載したボールリテーナ。
【請求項3】
各連結部に連結される複数の前記間座部群の端に位置する間座部の厚さを、それぞれ他の間座部の半分の厚さとしたことを特徴とする請求項1に記載したボールリテーナ。
【請求項4】
前記一対の連結部のうち一方の連結部に連結される複数の前記間座部群のうち一方の端に位置する前記間座部が、前記一対の連結部のうち他方の連結部の一方の端部よりも長手方向外側に位置しており、
前記一対の連結部のうち他方の連結部に連結される複数の前記間座部群のうち他方の端に位置する前記間座部が、前記一対の連結部のうち一方の連結部の他方の端部よりも長手方向外側に位置していることを特徴とする請求項3に記載したボールリテーナ。
【請求項5】
直動転がり案内ユニットの転動体転動路内に転動自在に装填される複数のボールに対し、隣り合う前記ボール同士の間隔を所定の間隔に保つボールリテーナであって、
前記ボールリテーナは、隣り合う前記ボール間にそれぞれ介装される複数の間座部と、複数の前記間座部を連結し且つ前記転動体転動路に沿って湾曲可能な弾性材料からなる一対の連結部と、から形成されるボールリテーナにおいて、
前記一対の連結部のうち一方の連結部を当該連結部の一方の端部から間座部二つの厚さ分の長さ及び前記ボール二つの直径分の長さに亘って延長し、その延長部分の先端に間座部を設けたことを特徴とするボールリテーナ。
【請求項6】
直動転がり案内ユニットの転動体転動路内に転動自在に装填される複数のボールに対し、隣り合う前記ボール同士の間隔を所定の間隔に保つボールリテーナであって、
前記ボールリテーナは、隣り合う前記ボール間にそれぞれ介装される複数の間座部と、複数の前記間座部を連結し且つ前記転動体転動路に沿って湾曲可能な弾性材料からなる一対の連結部と、から形成されるボールリテーナにおいて、
複数の前記間座部群のうち両端に位置する間座部の厚さを他の間座部の半分の厚さとし、
前記一対の連結部のうち一方の連結部を当該連結部の一方の端部から前記間座部の厚さ分の半分の長さ及び前記ボールの直径分の長さに亘って延長し、その延長部分の先端に厚さを半分とした前記間座部を設けたことを特徴とするボールリテーナ。
【請求項7】
前記間座部と連結部とを同一材料を用いて成形し、これらの成形された前記間座部及び連結部を一体成形して形成されることを特徴とする請求項1から6のうちいずれかに記載したボールリテーナ。
【請求項8】
複数の前記間座部を円板状に形成し、当該円板状に形成した間座部に前記ボールを保持する保持部を設けたことを特徴とする請求項1から7のうちいずれかに記載したボールリテーナ。
【請求項9】
複数の前記間座部を円板状に形成し、当該円板状に形成した間座部の外周部に面取り部を設けたことを特徴とする請求項1から8のうちいずれかに記載したボールリテーナ。
【請求項10】
請求項1から9のうちいずれかに記載した複数のボールリテーナ同士を前記転動体転動路に沿って連結し、前記連結したボールリテーナを一本の前記転動体転動路内に転動体転動路に沿って配置したことを特徴とする直動転がり案内ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−200699(P2006−200699A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15467(P2005−15467)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】