ポテト形状で、表面に不純物が僅かな割合でしか存在しないグラファイト粒子、およびその製法
【課題】形状がポテト形である特色を持つ、新規なグラファイト粒子、又はグラファイトを主成分とする粒子とその製造方法を提供する。
【解決手段】ポテト形状の変形されたグラファイト粒子群は、内部に不純物を含み、表面には低い割合で一つ乃至複数の不純物を含むか全く含まず、表面の不純物のレベルは、天然のグラファイトに存在するものと同様である。又、変形されたグラファイトを主成分とする粒子群は、金属の沈着物及び/又は炭酸の沈着物で被覆されたグラファイトのプリズム形の粒子群から成るものであり、吸湿剤及び/又は酸素捕集剤として有用であり、循環過程に於ける性能故に、負極の製作に有用である。負極は、充電できる電気化学式発電機用の負極の製作に用いるのが好ましい。
【解決手段】ポテト形状の変形されたグラファイト粒子群は、内部に不純物を含み、表面には低い割合で一つ乃至複数の不純物を含むか全く含まず、表面の不純物のレベルは、天然のグラファイトに存在するものと同様である。又、変形されたグラファイトを主成分とする粒子群は、金属の沈着物及び/又は炭酸の沈着物で被覆されたグラファイトのプリズム形の粒子群から成るものであり、吸湿剤及び/又は酸素捕集剤として有用であり、循環過程に於ける性能故に、負極の製作に有用である。負極は、充電できる電気化学式発電機用の負極の製作に用いるのが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形したグラファイト(黒鉛)の粒子、および、形状がポテト形であるという特色を持つグラファイトを主成分とする粒子に関するものである。本発明は又、このような新規の粒子の製法、並びに、こうして作られた粒子を、特に吸湿剤及び/又は酸素捕集剤として用いる使用法に関するものでもある。本発明の製法は、数学関数を用いて得られる数値を制御することによって監視することができる。この数学関数は、グラファイトの結晶構造の形状(端縁、基底部、LcおよびLa)の特徴を表す規則正しい関数である。本発明の新規の粒子を、電気化学的な用途に用いる場合には、電極の密度が増し、リチウム、ナトリウムなどの添加物質の拡散の動きが増しつつ循環過程に於ける安定性も増している。
【背景技術】
【0002】
グラファイトは、電気化学的に興味深い性質を持っている。自然界においてふんだんに入手できる天然のグラファイトの場合はといえば、可逆容量が372mAh/gであることと電圧の山の高さがリチウムに近いことが目立っている。
合衆国に於いてSanyoに対してUS-A-5,882,818として交付された特許中に言及されているように、グラファイトは、市販のリチウム−イオン−バッテリ中に導入されている。グラファイトには、原価が安く済むという他にも様々な興味深い特徴があるので、天然のグラファイトが、リチウム−イオン−バッテリ中のアノードの素材として有力な候補となったのである。しかしながら、グラファイトの粒子は小片の形で存在しているので、こうした物理的形状のために、一様な電極の分散は不確かなままとなっている。こういう次第で、この分散を効果的なものとするためには、リチウム−イオン−バッテリ用の電極を製作する際に、カレンダー(ロール機械)にかける段階を追加して設ける必要がある(Tetsuya Osaka及びMadhav Datta著、電子機器用のエネルギー貯蔵システム、2000年刊、125ページ)。圧密度が低いと電極の厚みは増すことになるものである。アノードの性能は、グラファイトのタイプと、グラファイト粒子の物理的形状次第で決まってくる。グラファイト中にイオンを最初に有効に付加できるかどうかは、固有の表面と、表面の端縁部の割合とに関わってくる(K,Zaghib他、電気化学学会誌、147(6)2110〜2115,2000)。固有の表面がわずかだと、薄膜に於ける不動態化もそれだけ起こらなくなる。
【0003】
天然のグラファイトは、専ら薄片の形で存在しているが、これに対して人造のグラファイトは、薄片の形にでも、繊維状にでも、或いは球形にでもできる。薄片形状の場合には、特恵的な向きにある程度揃えやすくなり、電極中に異方性がもたらされることになる。このように向きを揃えておけば、端縁部を横切るリチウム付加の動きが減少する。市場に出ている唯一の球形の炭素としては、メゾカーボン・マイクロビーズ(MCMB)がある。このMCMBは、大阪ガスの製品で、2800℃に於いて処理されたものである(T.Kasuh他 J.電力源68(1997)、99)。この炭素は、人造のグラファイトであるが、形を整えるためには高温に於いて費用の掛かる処理を施さなければならず、さらに複雑な合成が必要とされているので生産コストが嵩むことになる。この人造グラファイトの場合に得られる最大の可逆容量は280mAh/g程度で、これは、天然のグラファイトの場合の容量が372mAh/gであるのに比べると低い数値である。
【0004】
2000年10月31日に、Kansai Netsukkagaku株式会社に対して交付された米国特許US-A-6,139,990には、変形を加えて丸くしたグラファイトの粒子についての説明がある。その説明によれば、このグラファイト粒子は、ほぼ球形であるが、円形度は0.86以上で、X線回析法によって計測すると、面002と面110との間の強度の比のピーク値が0.0050を下回ることはないという特色がある。なお、面002はグラファイトの層に平行な面であり、面110はグラファイトの層に垂直な面であって、グラファイトの層は、任意に方向を決める場合に指標となるものである。これらの粒子は粒径分布に関していえば均質性に乏しいので、電気化学的電池、特に、電解質としてプロピレンの炭酸塩(propylene carbonate)を用いている電池に於ける使用は制限されることになり、又、低温での使用のためには大いに不利な点となっている。同様に、これらのグラファイト粒子を使用している電気化学電池は安全性に乏しいことも確言されている。
【0005】
OSAKA GAS株式会社の名前で出願された特許願EP-A-0,916,618について言えば、空洞部を設けたグラファイト材が説明されているが、このグラファイト材を含む電極の電気化学的な容量が増すように、グラファイト材には最適の方法で空洞部が設けられていると説明されている。これらのグラファイト材を、一次タイプのバッテリに使用した場合には利益のあることが明らかにされているが、他の電気化学的な用途に用いても余り利益はない。というのも、これらのグラファイト材は、特に、構造がもろく、そのため、400mAh/gを上回る容量に対しては安定性がないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
天然のグラファイトを球形のグラファイトに変形するために必要な操作には、薄片の形で存在している標準的天然グラファイトと比べても、球形の人造グラファイト(MCMB)と比べても、明らかな利点がある。
こういう次第で、安定した形状であって且つ簡単に圧密して密度を増すことのできるグラファイトを主成分とする粒子群、しかも、電気化学的な容量や異方性が、既知の形状のグラファイト粒子群よりも優っているような粒子群が必要とされてきたのである。こうした粒子を用いれば、特に、均質で密な電極を作ることができ、一方では、PCの使用を促進することにもなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に述べる特徴を有する。
請求項1に記載の本発明は、グラファイト(好ましくは、合成グラファイト)から得た変形グラファイトの粒子群である。これらの粒子群の構造面のパラメータは、次の関係式f1e=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/2T)(Y-1)〕と、f2e=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/T)(Y-1)〕との少なくとも一つにあてはまっているものとするが、これらの関係式において、Yは、1以上の実数を表し、Bは粒子の長さをμm単位で表した数値、Tは、粒子の厚みをμm単位で表した数値とし、該粒子は、ポテト形状で、次の二つの特徴の少なくとも一つを備えているものとする。
二つの特徴とは、即ち:
−密度表示が0.3〜1.5の範囲、好ましくは0.5〜1.4の範囲、さらに好ましくは1〜1.3g/ccの範囲であること;および、
−分布比D90/D10のような粒径分布のばらつきが2〜5の範囲内におさまっていて、粒子の大きさが1μm〜50μmの範囲であり、好ましくは分布比D90/D10が2.2〜4.2の範囲で、粒子の大きさが2μm〜30μmの範囲であること、の二つである。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、グラファイトから得られた変形グラファイトの粒子群で、これらの粒子はポテト形状で、その内部構造中に不純物を含み、表面においても一つ以上の不純物を好ましくは2%〜4%の範囲の割合で含み、さらに次の三つの特徴の少なくとも一つを備えているものとする。三つの特徴とは即ち:
−先述の方法で計測した密度表示が0.3〜1.5の範囲、好ましくは0.5〜1.4の範囲、さらに好ましくは1〜1.3g/ccの範囲の数値であること;
−先述の方法で計測した、比D90/D10のような粒径分布のばらつきが、2.2〜4.2の範囲内におさまっていて、粒子の大きさが2〜30μmの範囲内であること;および
−粒子の表面にはNaCl及び/またはNH4Fの粒子(好ましくはポテト形状、さらに好ましくは球形の粒子)が付けられていて、好ましくは、これらのNaCl及び/又はNH4Fの粒子の総量が変形グラファイトの粒子の総量の1〜10%、好ましくは1〜4%に相当していること、の三つである。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、請求項2による変形グラファイトの粒子であって、TGA分析の結果、重量損に関わる初期温度の数値が、560〜660℃の範囲内のものであることを特徴とするグラファイト粒子である。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜3のいずれかによる変形グラファイト粒子群において、該不純物が、次の化学元素群の中の少なくとも一つの化学元素であるグラファイトの粒子群である。化学元素群とは、即ち、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、Sb(アンチモン)、As(ヒ素)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Pb(鉛)、Co(コバルト)、Ca(カルシウム)、Al(アルミニウム)、Ge(ゲルマニウム)、Si(ケイ素)、Ba(バリウム)、Be(ベリリウム)、Cd(カドミウム)、Ce(セリウム)、Co(コバルト)、Ciu、Dy(ジスプロシウム)、Eu(ユーロピウム)、La(ランタン)、Li(リチウム)、Mo(モリブデン)、Nd(ネオジウム)、Ni(ニッケル)、Pb(鉛)、及びPr(プラセオジム)である。
【0011】
請求項5に記載の本発明は、請求項4による変形グラファイト粒子群において、粒子群中に存在する不純物の重量パーセンテージが、変形グラファイト粒子の総量に対して表した場合、そして焼灰法によって計測した場合、1〜10%の範囲内、好ましくは2〜4%の範囲内に収まっているグラファイト粒子群である。
【0012】
請求項6に記載の本発明は、請求項5による変形グラファイト粒子群であって、表面に不純物はほとんどなく、好ましくは表面に不純物がないグラファイト粒子群である。
【0013】
請求項7に記載の本発明は、グラファイトから得た変形グラファイトの粒子群であって、これらの粒子はポテト形状をしていて、次の化合物群、すなわち、SiO2、MgO、セラミック、或いはこれらの混合物のうちの少なくとも一つを5〜20%の割合で含んでおり、これらの化合物は、変形グラファイト粒子に対して物理的な力によって付けられているのが好ましく、該粒子は次の三つの特徴の少なくとも一つを備えているものとする。三つの特徴とは即ち:
−先述の方法によって計測した密度表示が0.3〜1.5の範囲内、好ましくは0.4〜1.4の範囲内、更に好ましくは1〜1.3g/ccの範囲内におさまっていること;
−先述の方法によって計測した比D90/D10のような粒径分布のばらつきが、大きさが1〜50μmの範囲の粒子の場合には2〜5の範囲におさまっており、大きさが2〜30μmの範囲の粒子の場合には、比D90/D10が2.2〜4.2の範囲におさまっていること;及び
−粒子の表面には、NaCl及び/又はNH4Fの粒子(できれば・・・形が好ましい)が付けてあり、好ましくは、NaCl及び/又はNH4Fのこれらの粒子の総量が変形グラファイト粒子の総量の1〜4%となっていること、の三つである。
【0014】
請求項8に記載の本発明は、請求項1〜7のいずれかによる変形グラファイト粒子群において、面と面との間の距離d002が33〜3.4オングストロームの範囲におさまっており、及び/又は、BETが0.5g/m2〜50g/m2の範囲におさまっているグラファイト粒子群である。
【0015】
請求項9に記載の本発明は、請求項1〜8のいずれかによる変形グラファイト粒子群であって、循環過程における安定性が500サイクルを上廻っているグラファイト粒子群である。
【0016】
請求項10に記載の本発明は、請求項6〜9のいずれかによるグラファイト粒子の製法であって(好ましくは天然グラファイトからの製法)、グラファイト粒子の基底部の割合(fb)の少なくとも50%を減少させ端縁部の割合(fe)の少なくとも50%を増大させることのできる物理的な技法を少なくとも一つ用い、この物理的な技法というのは、好ましくは、アトリション、ジェット・ミル、ボール・ミル、ハンマ・ミル、アトマイザ・ミル技法とし、しかも次の物質群から選んだ化学化合物が少なくとも一つ存在するところで該技法を用いるようにし、次の物質群とは、化学式がMFzの化合物とNaClとNH4Fと、或いはこれらの混合物とから成る物質群とし、ただし、Mはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を表し、Zは1又は2を表すものとし、(好ましくはMFzは、CaF2、BaF2、LiFを表すものとし、)この物質群から選んだ少なくとも一つの化合物を好ましくは固体の形で、そして好ましくは、該基底部の割合を減少させることのできる物理的技法を実施する段階のはじめに加えるようにしてある製法である。
【0017】
請求項11に記載の本発明は、請求項10による製法において、基底部の割合の減少と端縁部の割合の増大、つまり好ましくは粒子を丸くすることは、好ましくは、アトリションの技法を用いて実施されるものとし、この技法には、好ましくは、鋼球、セラミックの球、あるいは鋼球とセラミック球とを混ぜ合わせたもののような球体が用いられるものとした製法である。
【0018】
請求項12に記載の本発明は、請求項1または2による変形グラファイト粒子の製法であって、変形グラファイト粒子は、好ましくは天然のグラファイトから作るものとし、少なくとも次のi)とii)の2つの段階を含む製法である:
i)基底部の割合(fb)の少なくとも50%を減少させ、端縁部の割合(fe)の少なくとも50%を増大させることのできる物理的な技法を少なくともひとつ実施してグラファイト粒子の形を変える段階。ただし、該物理的な技法は、好ましくはアトリション技法とし(ジェット・ミル、ボール・ミル、ハンマ・ミル、アトマイザ・ミルも好ましい技法とし)この技法を合成グラファイト粒子(好ましくは天然グラファイト)に対して、次の物質群から選んだ少なくとも一つの化学化合物の存在下において施すものとし、その物質群とは、化学式がMFzの化合物とし、この化学式において、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表し、zは1または2を表し、好ましくはMFzはCaF2、BaF2、LiFまたはこれらの混合物を表しているものとし、該少なくとも一つの化合物は、好ましくは固体の形で、好ましくは周囲温度において、そして、基底部の割合を減少させ端縁部の割合を増大させることのできる少なくとも一つの技法を実施する段階の好ましくは初めに加えられるのが好ましいものとする;そして
ii)上の段階i)で得られたグラファイト粒子を、好ましくは純化によって、好ましくは化学的純化によって純化して、表面の不純物の割合を減少させる段階である。
【0019】
請求項13に記載の本発明は、請求項10〜12のいずれかによる方法において、方法の最初に使用されるグラファイト粒子の大きさは、1〜450μmの範囲、好ましくは2〜350μmの範囲におさまっているようにした方法である。
【0020】
請求項14に記載の本発明は、請求項10〜13のいずれかによる方法において、アトリションの処理は、添加剤の存在下において行われるものとし、好ましくは、SiO2、TiO2、ZrO2のような金属酸化物タイプの添加剤の存在下において行われるものとし、そして、好ましくは、鋼球、セラミック球、あるいは鋼球とセラミック球との混合物の存在下において行われるものとした方法である。
【0021】
請求項15に記載の本発明は、請求項10〜14のいずれかによる方法において、該二つの段階のうち少なくとも一つの段階は、制御された大気中において、あるいは外気中において行われるものとし、該制御された大気は、好ましくは、窒素、アルゴン、ヘリウム、あるいはこれらの気体の混合物を主成分とするものとした方法である。
【0022】
請求項16に記載の本発明は、請求項9〜15のいずれかによる方法において、段階i)は、ジェット・ミル技法とアトリション技法を共に行う混成式の段階とし、好ましくは、ジェット・ミルを実施した後でアトリションを実施するようにした方法である。
【0023】
請求項17に記載の本発明は、請求項10〜15のいずれかによる方法において、段階i)はジェット・ミル技法を用いて実施されるものとした方法である。
【0024】
請求項18に記載の本発明は、請求項1〜9のいずれかによる変形グラファイト粒子を、燃料電池、電気化学式発電機用に、吸湿剤及び/又は酸素捕集剤として用いる使用法である。
【0025】
請求項19に記載の本発明は、好ましくは、充電できる電気化学式発電機用の負の電極であって、結合剤−好ましくは、PVDF、PTFEタイプの結合剤を用い、さらに請求項1〜8のいずれかによるグラファイト粒子を用いて作られる負の電極である。
【0026】
請求項20に記載の本発明は、請求項1〜9のいずれかに記されているようなグラファイト粒子を主成分とするか、あるいは請求項1〜17のいずれかによる方法によって得られるようなグラファイト粒子を主成分とする電極の製法であって、充電のできる発電機用の電極の製法で、少なくとも次の段階を含む製法である。次の段階とはすなわち、
b−少なくともひとつの結合剤(好ましくは、PVDF、PTFEよりなる物質群から選んだ結合剤)を、好ましくはNMP(n−メチル・ピロリドン)、シクロペンタノンよりなる物質群から選んだ溶剤の中に、濃度をできるかぎり高くして(好ましくは、1g/ccを上回る濃度)溶かすことができるようにして粘り気のある溶液(A)を得るようにする段階と、
b−上の段階で得た粘り気のある溶液は、粉末―結合剤組成物の混合物(B)であるが、この溶液を集電器タイプの装置、好ましくは金属製の集電器タイプの装置上、及び/又は、金属製で穴をあけてある集電器タイプの装置上に注ぎ広げ、このように処理された集電器が電極となるようにする段階と、
c−段階bで作られた電極を、好ましくは赤外線ランプか発熱要素を用いて乾燥させる段階である。
【0027】
請求項21に記載の本発明は、充電のできる発電機用でグラファイトを主成分とする電極を請求項20に従って作る製法であって、この製法には、請求項18に記されている段階が段階c以外はすべてそのまま含まれているが、段階cのところでは、電極を乾かすために、赤外線ランプによる技法と発熱要素による技法との二つの乾燥技法が並行して使用されている。
【0028】
請求項22に記載の本発明は、金属の沈着物及び/又は炭酸の沈着物によって覆われたグラファイトのプリズム形粒子からなる、変形グラファイトを主成分とする粒子群である。これらの粒子の構造面のパラメータは次の二つの関係式にあてはまっている。すなわち、fe1=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/2T)(Y-1)〕および fe2=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/T)(Y-1)〕で、これらの関係式において、Yは1以上の実数を表し、Bは粒子の長さを表し、Tは粒子の厚みを表しているものとし、これらの粒子はポテト形状をしていて、次の二つの特徴のうちの少なくとも一つを備えているものとする。二つの特徴とはすなわち、:
−先述の方法によって計測した密度表示が好ましくは、0.3〜1.5の範囲、より好ましくは、0.5〜1.4の範囲内、さらにより好ましくは、1〜1.3g/ccの範囲内におさまっている、という特徴と;
−先述の方法によって計測した比D90/D10のような粒径分布のばらつきが、2〜5の範囲内におさまっており、粒子の大きさは1〜50μmの範囲内であって、好ましくは、比D90/D10が2.2〜4.2の範囲内、粒子の大きさが2〜30μmの範囲内である、という特徴の二つである。
【0029】
請求項23に記載の本発明は、請求項22によるグラファイトを主成分とする粒子群であって、粒子の大きさが1〜50μmの範囲である粒子群である。
【0030】
請求項24に記載の本発明は、請求項22又は23によるグラファイトを主成分とする粒子群であって、球形度が80%以上である粒子群である。
【0031】
請求項25に記載の本発明は、請求項22〜24のいずれかによるグラファイトを主成分とする粒子群において、金属被覆及び/又は炭素被覆の平均の厚みが、50nm〜2μmの範囲内であるようにした粒子群である。
【0032】
請求項26に記載の本発明は、グラファイトの核を被覆した、グラファイトを主成分とする粒子であって、該核はグラファイトを主成分とする粒子全体に対して重量パーセントにして少なくとも90%を占めており、残りの10%は、好ましくは、Ag(銀)、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)及びCu(銅)より成る金属グループから選んだ金属の少なくとも一つ、及び/又は炭素、及び/又は好ましくはプリズム形か繊維形の炭素ポリマーより成っているものとする粒子である。
【0033】
請求項27に記載の本発明は、請求項22〜26のいずれかによる、グラファイトを主成分とする粒子の製法であって、プリズム形の粒子を素材とし、これらの粒子の基底部の割合(fb)と、端縁部の割合(fe)とを一定に保ちつつ、グラファイトの表面を、金属の沈着物か炭酸の沈着物によってそっくりくるんで80%の球形度が得られるようにして粒子をくるみ込む、という製法である。
【0034】
請求項28に記載の本発明は、請求項22〜26のいずれかに記載されているような、或いは請求項13〜27のいずれかに記載されている方法の一つによって得られるような、変形グラファイトを主成分とする粒子群を、燃料電池、電気化学式発電機用として、或いは、吸湿剤及び/又は酸素捕集剤として用いる使用法である。
【0035】
請求項29に記載の本発明は、好ましくは、充電のできる電気化学式発電機用の負の電極であって、結合剤−好ましくはPVDF、PTFEタイプの結合剤を用い、さらに請求項22〜26のいずれかに記載されているような、或いは請求項27に記載されている方法によって得られるようなグラファイト粒子を用いて作られる電極である。
【0036】
請求項30に記載の本発明は、グラファイト粒子の表面を、自然な環境の下で純化する方法であって、不純物の存在するところで、粒子を炭素によって被覆することによって純化する方法である。
【0037】
請求項31に記載の本発明は、請求項1による粒子群を、電気化学式の電池に用いる使用法であって、基底部の割合(fb)を制御して、ポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下において粒子を使用できるようにし、その場合、電解質中におけるPC濃度が、体積パーセンテージにして、電解質混合体の50%を下回っているようにしてある使用法である。
【0038】
請求項32に記載の本発明は、請求項31に記載の使用法によってできる安全バッテリである。
【0039】
請求項33に記載の本発明は、請求項22によるグラファイトを主成分とする粒子群の使用法であって、基底部の割合(fb)を一定に保って、ポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下において粒子を使用できるようにし、その場合、電解質中におけるPC濃度が、体積パーセンテージにして、電解質混合体の100%を下回っているようにしてある使用法である。
【0040】
請求項34に記載の本発明は、請求項33に記載の使用法によってできる安全バッテリである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の第一の目的は、グラファイト(できれば合成グラファイトが好ましい)から変形したグラファイト粒子であるが、これらの粒子の構造上のパラメータは、次の関係式のうちの少なくとも一つにあてはまっている。即ち、fe1=[Y+1]/[(Y+1)+(B/2T)(Y-1)]およびfe2=[Y+1]/[(Y+1)+(B/T)(Y-1)]で、これらの関係式に於いて、Yは1以上の整数を表しており、Bは粒子の長さをμm単位で表した数値であり、Tは粒子の厚みをμm単位で表した数値である。これらの粒子は、さらに、形状がポテト形で、次の二つの特徴のうち、少なくとも一つの特徴を備えている。二つの特徴というのは、即ち、
−Logan Instrument社モデルTap-2という呼称で市販されている装置を使った方法で計測した密度表示が0.3と1.5の間の数値であり、できれば0.5〜1.4の範囲内の数値、さらにできれば1〜1.3g/ccの範囲内の数値であれば好ましい、という特徴と、
−MicrotacモデルX100Particle Analyserという製品名で市販されている粒子分析器を使った方法で計測した粒径分布のばらつき(例えば、分布比D90/D10)が2〜5の範囲内の数値であり、粒子の大きさは1〜50μmの範囲内の数値であること、そして分布比D90/D10はできれば2.2〜4.2の範囲内の数値が好ましく、粒子の大きさは2〜30μmの範囲内の数値が好ましい、という特徴の二つである。
【0042】
本発明の第二の目的は、グラファイトから変形したグラファイト粒子であって、ポテト形の形状を有し、内部構造中には不純物を有するが、表面に於いて一つ以上の不純物を含む割合は、10%を下回るか、できれば2〜4%の範囲内の数値であるグラファイト粒子である。なお、表面に於いて一つ以上の不純物を含む割合を計測するには、後方散乱式探知器を用いた方法による。この方法については、1966年刊のKimoto S.とHashimoto H.共著の出版物や、ニューヨークのJohn Wiley著“電子顕微鏡”の480ページや、イリノイ州、AMF O'hare所在のSEM社から1978年に刊行されたGedcke,D.A.とAyers,J.B.とDenee,P.B.との共著“SEM(走査電子顕微鏡)”の581ページに明確に説明されている。さらに該グラファイト粒子には、次の三つの特徴のうちの少なくとも一つの特徴が備わっている。三つの特徴というのは、即ち、
−先述の方法によって計測した密度表示が0.3と1.5の間の数値であり、できれば0.5〜1.4の範囲内の数値、さらにできれば1〜1.3g/ccの範囲内の数値であれば好ましい、という特徴と;
−先述の方法によって計測した粒径分布のばらつき(例えば分布比D90/D10)が2.2〜4.2の範囲内の数値であり、粒子の大きさが2〜30μmの範囲内の数値である、という特徴と;
−これらの粒子の表面には、NaCl及び/又はNH4Fの粒子(できれば、ポテト形、さらにできれば球形の粒子が好ましい)が付着しており、NaCl及び/又はNH4Fのこれらの粒子の質量が変形されたグラファイト粒子の全質量の1〜4%となっていることが好ましい、という特徴の三つである。
【0043】
グラファイトの表面の不純物の割合は、様々なやり方で減らすことができる。特に有効な方法は、Hydro-Quebec社が権利を所有しているPCT出願、PCT/CA100233中に説明されている方法である。この出願書類の内容は、ここに言及して本特許願にも含まれるものとする。
【0044】
本発明の第二の目的に適った粒子の好ましい今一つの例としては、次のような変形グラファイト粒子がある。即ち、デラウェア州、ニューカッスルに所在するTA Instruments社から、TGA/DTAモデルSDT2960という製品名で販売されている装置を使った方法によって行われるTGA分析の結果、第11/11図に示されているように、重量の減損が見られる最初の温度が560〜660℃の範囲内の温度となるような変形グラファイト粒子である。
本発明による変形グラファイト粒子は不純物を含んでいてもかまわない。例えば、次の化学元素群に含まれる不純物なら少なくとも一つ含んでいてもかまわない。化学元素群というのは即ち、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、Sb(アンチモン)、As(ヒ素)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Pb(鉛)、Co(コバルト)、Ca(カルシウム)、Al(アルミニウム)、Ge(ゲルマニウム)、Si(ケイ素)、Ba(バリウム)、Be(ベリリウム)、Cd(カドミウム)、Ce(セリウム)、Co(コバルト)、Ciu、Dy(ジスプロシウム)、Eu(ユーロピウム)、La(ランタン)、Li(リチウム)、Mo(モリブデン)、Nd(ネオジム)、Ni(ニッケル)、Pb(鉛)、及びPr(プラセオジム)である。
【0045】
本発明によるグラファイト粒子の中で今一つの好ましい粒子は、次のような粒子である。即ち、変形グラファイト粒子の全重量に対して、これらの粒子中に存在する不純物の重量パーセンテージが焼灰法によって計測すると、1〜10%の範囲であり、好ましくは2〜4%の範囲であるような粒子である。
さらに特に興味深いのは、本発明によるグラファイト粒子であって、表面に不純物がほとんどないグラファイト粒子、できれば表面に不純物がないグラファイト粒子である。
【0046】
本発明の第三の目的は、グラファイトから変形したグラファイト粒子であって、ポテト形状を有し、次の化合物のうちの少なくとも一つの化合物を5〜20%の割合で含むグラファイト粒子である。次の化合物というのは、即ち、SiO2、MgO、セラミック、或いはセラミックの混合物のことで、該化合物は、変形グラファイト粒子に対して物理的な力によって付着させられるのが好ましく、該粒子は次の三つの特徴のうち少なくとも一つを備えている。三つの特徴というのは、即ち、
−先述の方法によって計測した密度表示が0.3と1.5の間の数値であり、できれば0.4〜1.4の範囲内の数値、さらにできれば1〜1.3g/ccの範囲内の数値であれば好ましい、という特徴と;
−先述の方法によって計測した粒径分布のばらつき(例えば、分布比D90/D10)が、1〜50μmの範囲の大きさの粒子の場合には、2〜5の範囲の数値であり、2〜30μmの範囲の大きさの粒子の場合には、分布比D90/D10が2.2〜4.2の範囲の数値であるのが好ましい、という特徴と;そして
−該グラファイト粒子の表面には、NaCl及び/又はNH4Fの粒子(できれば、ポテト形状のものが好ましく、さらにできれば球形の粒子が好ましい)が付着せしめられており、できれば、これらのNaCl及び/又はNH4Fの粒子の質量が変形グラファイト粒子の全質量の1〜10%に相当しているのが好ましい、という特徴の三つである。
【0047】
本発明によるグラファイト粒子の今一つの特に好都合な例は、次のような変形グラファイト粒子群である。即ち、その粒子群に於いては、粒子の面と面との間の距離d002(XRD analysis SiemensモデルD500 Diffractometerという製品名で市販されている回析計器を使った方法で計測した値)が33〜3.4オングストロームの範囲の数値であり、及び/又は、BET(N2を使用した自動ガス吸着システムであるQuantachrome Autosorbという装置を使った方法で計測した値)が0.5〜50g/m2の範囲の数値であるような粒子群である。
本発明の変形グラファイト粒子の中でも、循環過程に於ける安定性が500サイクルを上回っているものは、電気化学的な用途にあてると特に利益が得られるものである。
【0048】
本発明の第四の目的は、やはり本発明の目的であるグラファイト粒子の製法(できれば天然グラファイトからの製法)であるが、粒子の基底部の割合(fb)を少なくとも50%減少させ端縁部の割合(fe)を少なくとも50%増大させることができるような物理的な手段を少なくとも一つ用い、化学化合物群から選んだ化合物が少なくとも一つ存在するところでグラファイト粒子を製造する方法である。なお、該物理的な手段というのは、できれば、アトリション、ジェット・ミル、ボール・ミル、ハンマ・ミル、アトマイザ・ミルが好ましく、又、該化学化合物群というのは、化学式MFzで表される化合物(この化学式で、Mはアルカリ金属かアルカリ土類金属を表しており、zは1又は2を表している。そして、この化学式で表される化合物としては、CaF2、BaF2、LiFが好ましい)やNaClやNH4F、或いはこれらの混合物から成る物質群のことである。該化合物は、できれば固体の形で、しかもできれば該物理的な手段を用いる段階の最初に加えるようにするのが好ましく、こうして、fb=1−feで表される基底部の割合を減少させ、(2B/La+T/d002):(2B/d100+T:d002)という関係式で示される割合feを増大させることができる。なお、上の関係式に於いて、B、La=d100(2n+1)はd002を表しており、nは平面の数を表している。これらの割合を明確に規定し分析するやり方については、2000年に刊行された電気化学学会誌147(6)2110〜2115のK.Zaghib,G.Nadeau及びK.Kinoshita共著の“グラファイト粒子の大きさが不可逆容量損に及ぼす影響”という著述中に詳述されている。この文書も、ここに言及することによって、本出願に組み込むこととする。
【0049】
Hydro-Quebecによる特許願PCT/CA0100233中に説明されているように、粉砕作業を行う際、グラファイトの表面に於いてNH4Fを使用することが非常に大切である。なぜならH2SO4と水の存在下に於いてグラファイトの純化を行う際、NH4FによってHFが発生して不純物、特にSiO2を溶かすからである。
同じように、粉砕作業を行う際、グラファイトの表面に於いてNaClを使用することも非常に大切である。何故なら、H2SO4の存在下に於いてグラファイトの純化を行う際、NaClによってHClが発生し、このHClが又、表面の不純物、特にFe(鉄)、Mo(モリブデン)などの金属を溶かすからである。
この製法の好ましい実施態様によれば、基底部の割合を減少させて端縁部の割合を増大させる(つまり、できれば粒子を丸くすることが好ましい)ためには、アトリションという手段を用いている。この手段としては、球を用いるのが好ましく、球は、鋼球、セラミック製の球、或いは、鋼球とセラミック球との混合物である。
【0050】
本発明の第五の目的は、請求項1又は2によるによる変形グラファイト粒子の製法(できれば天然のグラファイトから製造する方法)であって、少なくとも次のi)とii)の二つの段階を含む方法である。即ち;
i)基底部の割合(fb)の少なくとも50%を減少させ、端縁部の割合(fe)の少なくとも50%を増大させることができるような物理的手段を少なくとも一つ用いてグラファイト粒子の形を変える段階。このような物理的手段としては、できればアトリション(できれば、ジェット・ミル、ボール・ミル、ハンマ・ミル、アトマイザ・ミル)が好ましく、グラファイト粒子は合成グラファイト粒子を用いるが、できれば天然のグラファイトの方がよい。そして、該物理的手段を用いる時には、次の物質群から選んだ化学化合物が少なくとも一つ存在しているところで用いるようにする。即ち、MFzという化学式で表される化合物から成る物質群で、この化学式に於いて、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表し、zは1又は2を表しており、できれば、MFzはCaF2、BaF2、LiF又は、これらの混合物を表しているものとするのが好ましい。該少なくとも一つの化合物は、固体の形で加えられる方が好ましく、さらに、周囲温度に於いて、基底部の割合を減少させ端縁部の割合を増大させることのできる手段を用いる段階の最初に加えられる方が好ましい;そして
ii)表面の不純物の割合をできれば純化によって減少せしめる段階。純化は、段階i)で得られたグラファイト粒子をできれば化学的な純化によって純化するのが好ましい。
好ましい実施態様によれば、この方法の最初に使用されるグラファイト粒子の大きさは、1〜450μmの範囲、できれば2〜350μmの範囲とするのが好ましい。
今一つの好ましい実施態様によれば、アトリションの処理を行う時には、添加剤(できれば、SiO2、TiO2、ZrO2のような金属酸化物タイプの添加剤が好ましい)の存在下に於いて、しかも、できれば、鋼球の存在下、セラミックの球の存在下、或いは鋼球とセラミック球との混合物の存在下に於いて行うのが好ましい。
【0051】
好ましい変形例に於いては、本発明の方法が次のような条件の下に実施される。即ち、前記の二つの段階のうちの少なくとも一つの段階が、制御された空気中か、或いは外気中に於いて実施されるようになっている。制御された空気というのは、窒素、アルゴン、ヘリウム、或いは、これらの気体の混合物を主成分としているものが好ましい。
段階i)は、混成式の段階としてもかまわない。即ち、ジェット・ミルとアトリションを同時に行う段階としてもかまわないが、その場合、ジェット・ミルを行ってからアトリションを行うようにする方が好ましい。
特に好都合な実施態様によれば、該方法の段階i)はジェット・ミルを利用して行われる。
【0052】
本発明の第六の目的は、ここまでに説明されこの後に説明されるような変形グラファイト粒子であって、吸湿剤及び/又は酸素捕集剤としての変形グラファイト粒子である。
【0053】
本発明の第七の目的は、負の電極であるが、充電のできる電気化学式発電機用の負の電極であって、結合剤(といってもPVDF、PTFEタイプの結合剤が好ましい)を用い、さらに、本発明の諸目的のいずれか一つによるグラファイト粒子を用いて作られる負の電極である。
【0054】
本発明の第八の目的は、充電のできる発電機用の電極の製法であるが、本発明によるグラファイト粒子を主成分とするか、或いは、少なくとも次の段階a〜cを含む本発明による方法によって得られるようなグラファイト粒子を主成分とする電極の製法である。
a−少なくとも一つの結合剤(できれば、PVDF、PTFEという物質群から選んだ結合剤が好ましい)が溶剤(できれば、NMP《n−メチル・ピロリドン》とシクロペンタノンという物質群から選んだ溶剤が好ましい)の中に、できる限り高濃度(1g/ccを上回る濃度が好ましい)にして溶かすことができるようにして粘り気のある溶液(A)を得る段階と;
b−上の段階で得られた粘り気のある溶液は、粉末−結合剤組成物の混合物(B)であるがこの溶液を集電器タイプの装置上に注ぎ広げる段階。この装置は、金属タイプの集電器及び/又は、金属製で穴をあけてある集電器タイプのものが好ましく、このような処理を施した集電器が電極となる;そして
c−段階bで作られた電極を乾燥させる段階。乾燥させるには、できれば、赤外線ランプか発熱要素を用いる方が好ましい。
この方法の好ましい実施態様によれば、段階cに於いて、電極を乾燥させるために、二つの別々の手段を並行して用いている。二つの別々の手段というのは、赤外線ランプによる乾燥と(発熱)要素による乾燥の二つであることが好ましい。
【0055】
本発明の第九の目的は、変形グラファイトを主成分とする粒子群であるが、この粒子群は、金属の沈着物及び/又は炭酸の沈着物で被覆されたプリズム形グラファイト粒子から成っている。これらの粒子の構造上のパラメータは、次の関係式に当てはまっている。即ち、fe1=[Y+1]/[(Y+1)+(B/2T)(Y-1)]およびfe2=[Y+1]/[(Y+1)+(B/T)(Y-1)]である。これらの関係式に於いて、Yは1以上の実数を表し、Bは粒子の長さをμm単位で表した数値であり、Tは粒子の厚みをμm単位で表した数値である。そして該粒子は、ポテト形状であり、且つ、次の二つの特徴のうちの少なくとも一つの特徴を備えている。二つの特徴というのは、即ち;
−先述の方法によって計測した密度表示ができれば0.3と1.5の間の数値であることが好ましく、さらに0.5〜1.4の範囲であればなお好ましく、1〜1.3g/ccの範囲であればなお一層好ましい、という特徴と;そして
−前記の方法によって計測した粒径分布のばらつき(例えば、分布比D90/D10)が2〜5の範囲で、粒子の大きさは1〜50μmの範囲であり、できれば分布比D90/D10の値が2.2〜4.2の範囲で、粒子の大きさは2〜30μmの範囲であれば好ましい、という特徴の二つである。
【0056】
グラファイトを主成分とするこれらの粒子の大きさは、1〜50μmの範囲が好ましい。
好ましい実施態様によれば、これらの粒子の球形度は80%以上である。
グラファイトを主成分とするこれらの粒子群の中には、次のような粒子から成る好ましい小群がある。即ち、金属被覆及び/又は炭素を含む被覆の平均の厚みが50nm〜2μmの範囲の粒子である。
グラファイトを主成分とする粒子群によって今一つの好ましい小群が成っている。即ちグラファイトの芯を被覆した粒子から成る小群であるが、この芯が、グラファイトを主成分とする粒子の全質量の少なくとも90%を占めており、残りの10%は、少なくとも金属及び/又は炭化したポリマーから成っているのが好ましい。なお、該金属は、Ag(銀)、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)、及びCu(銅)から成る金属群より選ぶものとし、該ポリマーは、プリズム形もしくは繊維形のものが好ましい。
【0057】
本発明の第十の目的は、グラファイトを主成分とする粒子群を作る方法であるが、プリズム形の粒子を素材として、基底部の割合(fb)と端縁部の割合(fe)とを一定に保ちながら、そして、金属又は炭酸の沈着物によってグラファイトの表面をそっくり覆って粒子を被覆し80%以上の球形度を得るようにする方法である。
【0058】
本発明の第十一の目的は、グラファイトの粒子の表面を(できれば)自然な環境の下で純化する方法であるが、これらの粒子を、不純物が存在するままで炭素によって被覆して純化する方法である。
【0059】
本発明の第十二の目的は、本発明による変形グラファイト粒子を電気化学式の電池に使用することであるが、基底部の割合(fb)を制御して、ポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下に於いてグラファイト粒子を使用できるようにし、その場合電解質中のPCの濃度が、電解質の混合物の体積の50%には及ばないようにする。
このようにグラファイト粒子を使用して出来る安全バッテリも又、本発明の目的とする。
【0060】
本発明の第十三の目的は、本発明によるグラファイトを主成分とする粒子を使用することであるが、基底部の割合(fb)を一定に保ってポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下に於いて該粒子を使用できるようにし、その場合、電解質中のPCの濃度が、電解質の混合物の体積の100%以下であればよいようにする。このように粒子を使用して出来るバッテリは安全であり、これらのバッテリも本発明の目的とする。
【0061】
このように、本発明の範囲内に於いて、天然グラファイトの粒子を球形の粒子に変形するための新しい方法が特に説明されている。自然のままのグラファイトの粉末の粒子は、最初の大きさは375μmであるが、微少な研磨剤の役割を果たす不純物の存在下に於いて、この粉末をアトリションによって粉砕し、その大きさを10μmのd50にまで減少させる。グラファイトの粉末には鋼球が加えられるが、グラファイトと球体との質量比が1対10になるように加えられる。粉砕(摩滅器としては、ユニオン・プロセス社のAKRONのタイプB、サイズBを用いる)は、60分間で400rpmの速度に加速される。60分後、粉砕を停止して粉径分布の算定と特定の表面の評価をサンプル試料について行う。もし所期の粉径分布が達成されていなければ、粉砕を再び10分間行う。こういった段階を、粒子の大きさが10μmのd50になるまで繰り返し行っていく。今一つ500gの試料をとって、噴射式粉砕機Alpine中で粉砕して10μmのd50とする。これら二つの試料について粉砕を行ってから走査顕微鏡によって比較調査を行う。このようにすれば、アトリションによって得られた小片の形が球形により近くなっているかどうかを鑑定することが出来る。我々は又、二つの技法を併せ用いるハイブリッド式の粉砕も行っている。即ち、最初にジェット・ミル技法によって粒子の大きさを20μmにまで減少させてから、アトリションによって10μmにまで小さくするのである。
【0062】
充電のできるバッテリ配置に於いて、球形のグラファイトをアノードとして使用すると、小片形状のグラファイトを使用する場合に比べて利点が多い。特に次のような利点がある:
−圧密性が増す;
−一層均一に分散する;
−間隙が減る;
−基底平面の割合が減少する;
−粒子間の電気的接触が良くなる;
−電解質の分解が減少する;
−充電-放電が迅速に行われる;
−挿入物の動きが良くなる;
−バッテリの安全性が向上する。
【0063】
この方法を天然のグラファイトに適用すると、グラファイトの電気化学的性能が向上し、電極に於ける分散も改善される。球形にした天然グラファイトには、二つの炭素、即ち天然グラファイトと球形の人造グラファイトの利点が兼ね備わっている。エネルギーは、天然のグラファイトと共に最大に保たれている(容量と電圧は中程度である)。基底面は余り貢献しなくなるが、このことは、一方では、不可逆容量を減少させるために役立っている。結晶軸c(炭素原子によって形作られている面に対して垂直)沿いの拡散し得る部分(端縁部)が増し、不動態化するためである。その上、異方性の問題も減ってきており、挿入物の動きが改善されている。球形の粒子を用いると電極の分散が均一化され、こうしてできた電極には間隙が少なくなっている。球形の粒子を用いた場合、電極の厚みはより良く制御され、より薄くすることが出来るので、遠距離通信用のパルスとかハイブリッド車用の電力需要のような電力用途に当てられる。以上のような特徴のおかげで、リチウム・イオン・バッテリを極く薄手に設計することが容易になっており、ポリマー・バッテリの規模にまで薄く設計することが容易になっている。
【0064】
グラファイト粒子とそれらの粒子の表面(基底部と端縁部)との間の関係の計算モデル:プリズム形の構造と球形の構造との間の比較。
モデルI
グラファイトの晶子(クリスタライト)の大きさと表面に於ける部位との間の関係を、結晶学上のパラメータa、b及びcを用いて表すために、球形粒子用の数学モデルが開発された。このモデルに於いては、球体は次のようにして形成される。即ち、広さがAi・Biで(基底面)、厚みがT(端縁)の層を一層又一層と積み重ねてプリズム形としたものから形成されている。
【0065】
又、第1図に示されているように、パラメータAとBは、粒子の中心の層(0)から最上層(n)もしくは最下層(n)の方へと遠ざかるにつれて、同じ因子(Y)に対してより小さくなるものと考えられている。
【0066】
第1図
【0067】
中心層(0):A、B、T
層(1):
A1、B1、T ただし、A=YA1、B=YB1
そしてY≧1とする。 (1)
A1=A/Y、B1=B/Y
層(2):
A2、B2、T ただし、A1=YA2、B1=YB2 (2)
A2=A1/Y=A/Y2、B2=B1/Y=B/Y2
層(3):
A3、B3、T ただし、A2=YA3、B2=YB3 (3)
A3=A2/Y=A/Y3、B3=B2/Y=B/Y3
・
・
・
層(n):
An、Bn、T ただし、An-1=YAn、Bn-1=YBn (4)
An=An-1/Y=A/Yn、Bn=Bn-1/Y=B/Yn
従って、端縁部表面積については:
EA=2T{(A+B)+(A1+B1)+(A2+B2)+(A3+B3)+…+(An+Bn)} (5)
この(5)に、方程式(1)、(2)、(3)及び(4)のA1、B1、A2、B2、・・・An、Bnの値を代入すると;
EA=2T(A+B){1+1/Y+1/Y2+1/Y3+…+1/Yn}
=2T(A+B)Σ1/Yi(i=0→n) (6)
球体の対称性を考えると、方程式(6)は次の形に変えられる:
EA=4T(A+B)[Σ1/Yi]−2T(A+B)、(i=0→n) (7)
級数[Σ1/Yi](i=0→n)はY/(Y-1)の項へと収束する。
(1+X+X2+…+Xn=1/1-X、ただし1<X<1)
EA=4T(A+B)Y(Y-1)-1−2T(A+B)
EA=2T(A+B)[2Y(Y-1)-1−1] (8)
基底面の表面積のためには:
BA=2[(AB-A1B1)+(A1B1-A2B2)+(A2B2-A3B3)+…+(An-1Bn-1-AnBn)]
=2[(AB-AnBn)]
=2AB[1-1/Y2n]
BA=2AB[1-1/Y2n] (9)
全体の表面積は:
St=EA+BA
=2T(A+B)[2Y(Y-1)-1−1]+2AB[1-1/Y2n]
端縁部位の割合(fe)は:
fe=EA/St
=2T(A+B)[2Y(Y-1)-1−1]/{2T(A+B)[2Y(Y-1)-1−1]+2AB[1-1/Y2n]}
fe=[Y+1]/{(Y+1)+[AB/T(A+B)][1-1/Y2n](Y-1)} (10)
A=Bの場合には:
fe=[Y+1]/[(Y+1)+(B/2T)(1-Y-2n)(Y-1)] (11)
1)理想的な場合、n→∞、Y-2n→0とすると;
(プリズム形の層の数が無限大と考えると)
fe=[Y+1]/[(Y+1)+(B/2T)(Y-1)] (12)
この方程式(12)は、粒子の大きさとパラメータYとに応じる端縁部表面積間の関係を表している。
【0068】
モデル2
直径がBで厚みがTの円柱状の基本粒子(第2図)によってグラファイト粒子がおおよそ形作られていると考えられる場合。
【0069】
第2図
【0070】
端縁部と基底部の表面積は次の式によって定められる:
EA=πBT
BA=πB2/2
以上からfeの割合は、
fe=[Y+1]/[(Y+1)+(B/T)(1-Y-2n)(Y-1)] (13)
1)n→∞、Y-2n→0の場合、
fe=[Y+1]/[(Y+1)+(B/T)(Y-1)] (14)
【0071】
以上の二つのモデルについて、プリズム形の基底面と端縁面を推移させて球形へと変えていくと、基底面の表面積が著しく減少することが分かる。すると、粒子の全表面積に対する端縁部の表面積の割合が増すことになる。電気化学的な観点からすれば、基底部の表面積が減少するとそれにつれて不動態化も減少し、他方では、端縁部の表面が増えるので挿入物にはアクセスしやすくなる。パラメータ(Y)の数値が与えられると、(ただしY≧1)、この数値に対して、方程式(12)と(14)から得られる端縁部の表面積の割合feを比較することが出来る。以下の表1.a-dは、これら二つの方程式から算出した端縁部の割合の結果を示している。
【0072】
(表1)
表1.a:Y=1.001
【0073】
(表2)
表2.b:Y=1.01
【0074】
(表3)
表3.c:Y=1.1
【0075】
(表4)
表4.d:Y=1.5
【0076】
普通、パラメータYの値が1に最も近い場合に概算値も最良に近いものが得られる。Y=1.001の場合、feの値は、粒子の大きさとは関係なく、1へと収束している。これはどういうことかというと、基底面Iの表面積が0へと向かっているということで、理想的な場合である(表1.a)。
近似法によって得た二つの概算値の間の偏差は、Yと共に大きくなっており、粒子の大きさによっても増大している。Y=1.01の場合、二つの概算値の間には3%の偏差があり粒子の大きさの間では2%より小さい。Y=1.5の場合には、偏差はおよそ16%であるが粒子の間の差は、2〜3%のままである。
このように因子feが変化するのは、基本粒子の形状、並びに基本粒子間の隔たり(Y)をどのようにみなすか、というそのみなし方に依っている。そして、基本粒子間の隔たりによって、最終的な球形粒子が形作られるのである。feが1から発散していくと、基底面の割合が増してくる。実際、天然グラファイト粒子が球形であれば利点が多く、挿入物の挿入をより迅速に行うことができ、不可逆容量をより小さく(基底面の表面積をより小さく)することができる。
【0077】
2)方程式(11)及び(13)に於いて、項(1-Y-2n)を考える場合;
仮にY=1.1とすると、n<50の範囲でnを逐次代入した後、二つの方程式は急速に収束する(第3図)。第7/11図に示されているように、結果は、次のことを示している:
−小さな粒子が一番球形にしやすい(fe(2μm)>fe(40μm))。
−プリズム形の場合にfeの値を近似法によって概算すると、feの値が高くなる。
【実施例】
【0078】
以下の実例は、純粋に説明のために載せたものであって、本発明に何らかの限定を設けるものと解されるべきではない。
【0079】
実例1−天然のグラファイトからアトリションの技法を使って、ポテト形状の変形グラファイト粒子を作ること。
素材として用いる天然グラファイトは、粒子の最初の大きさが375μm、純度が98%で、薄片(フレーク)形状のものである。このグラファイトの固有の表面積は、およそ1m2/gである。天然グラファイトの粉末は、“アトリション”法によって粉砕され、これらの粒子は球形の粒子へと変形される。
球形に変化させた後でも、d002は変わらず、3.36オングストロームであった。走査電子顕微鏡(SEM)によって写真1a(第8/11図)について分析を行い、アトリションを行う前の写真1b(第9/11図)とJを比較して、粒子の大きさはほぼ同じままに保たれているのに粒子の形状が変わっていることを示した。
結合剤PVDF(フッ化ポリビニリデン)は、NMP(n−メチル・ピロリドン)中に溶かすことが出来る。PVDF-NMPのペーストに、溶剤アセトンとトルエンを80対20の割合で混合したものを加えて、分散組成物を形作る。球形に変形された天然グラファイトの粉末が、この分散組成物中に、質量比にして90:10の割合で分散せしめられる。こうしてできた混合物は、ドクター・ブレイド法によって銅の集電器上に塗布される。電極は、赤外線ランプによって乾かされる。この電極は2035タイプのボタン電池中に使われる。隔離板としては、CelgardTM2300を使用するが、この隔離板には電解液1M LiPF6+EC/DMCがしみこませてあり、EC/DMCは50:50の割合でエチレンの炭酸塩とジメチルカルボナートとを混ぜ合わせたものである。
電気化学的な検査は、周囲温度に於いて行われた。二つのボタン電池P1とP2について(第10/11図)c/24に於いて0〜2.5ボルトの範囲で電荷曲線が得られた。可逆容量は、370mAh/gである。この結果は、薄片(フレーク)上の標準的な天然グラファイト並びに、球形の人造グラファイト(MCMB28-25)から作られる電極によって得られる結果に比較することができる。
【0080】
実例2−天然のグラファイトからジェット・ミルの技法を使って、ポテト形状の変形グラファイト粒子を作ること。
素材として用いる天然グラファイトは、粒子の最初の大きさが375μm、純度が98%で、薄片(フレーク)形状のものである。このグラファイトの固有の表面積は、およそ1m2/gである。粒子は、最初、ジェット・ミル技法によって20μmの大きさにまで小さくされ次いでアトリション技法によって10μmの大きさの球形にまで小さくされる。
【0081】
実例3−ジェット・ミルの技法を使って、NH4Fの存在下に於いて、ポテト形状の変形グラファイト粒子を作ること。
平均の大きさ(d50)が350μmで純度が98.5%のブラジル・グラファイト20kgと重量パーセントにして10%のNH4Fとを反応装置の中で混合する。
この混合物を均質化するために、ジャー・ミル法を、直径50mmのセラミック球を用いて24時間実施する。この混合物は、ジェット・ミルを用いて粉砕されるが、この処理を行っている間、ジェット・ミル中の気圧は、100〜125psiの範囲で変動する。
処理が終わると、粒子の平均の大きさは、10〜20μmの範囲に減少せしめられており、粒子はポテト形状となっている。
第12/15図は、MEB(走査電子顕微鏡)による写真で、12μmの粒子がポテト形状となっていることがよくわかる。
第13図もMEBによる写真であるが、基底部の割合(fb)が減って端縁部の割合(fe)が増し、従って底面のグラファイト面が端縁のグラファイト面に鋸歯上につながっている様子がよくわかる(数学モデル1の検証)。
【0082】
実例4−アトリションの技法を使って、且つNaClの存在下に於いて、ポテト形状の変形グラファイト粒子を作ること。
平均の大きさ(d50)が350μmで純度が98.5%のブラジル・グラファイト20kgとm重量パーセントにして10%のNaClとを反応装置の中で混合する。
直径50mmのセラミック球を用いてジャー・ミル法を24時間実施し、混合物を均質化する。
この混合物は、ジェット・ミルを用いて粉砕される。混合物をジェット・ミル室中に入れておく時間は、45分である。
処理を行っている間、ジェット・ミル中の気圧は、100〜125psiの範囲で変動する。
この処理の間に、粒子の大きさは10〜20μmの範囲に減少せしめられ、粒子の形状は、ポテト形となる。
第14/15図のMEB写真には、12μmの粒子の形状がポテト形と成っている様子がよく示されている。
第15/15図のMEB写真には、基底部の割合(fb)が減少し、端縁部の割合(fe)が増大して、その結果、粒子が丸くなっている様子がよく示されている(数学モデル1の検証)。
【0083】
実例5−セルロースの炭酸塩の層でくるんだグラファイトを主成分とする粒子群を作ること。
容積200mlの容器中で、粒子の平均の大きさ(d50)が20μmでプリズム形のブラジル・グラファイト2gと10%のアセチルセルロースとの混合物を用意する。
この混合物をアセトン中に溶かし、ボール・ミル法を用いて(この混合物を)均質化する。混合物は、窒素を含む大気下に於いて400℃で3時間処理される。
こうして得られた粒子は、ポテト形状となっている。
この処理の利点の一つは、表面に出来る炭化された層が純化剤の役目を果たしているということである。何故なら、この層は、表面に存在するすべての不純物を覆うからである。
【0084】
実例6−炭化したPE-PEO-グリコールの層でくるんだグラファイトを主成分とする粒子群を作ること。
200mlの反応装置の中で、粒子の平均の大きさ(d50)が20μmでプリズム形のブラジル・グラファイト2gと、10%の化合物PE-PEO-グリコールとの混合物を用意する。
この混合物をアセトン中に溶かしてから、ボール・ミル技法を用いて均質化する。この混合物は、窒素を含む大気下で400℃で3時間処理される。
こうして得られた粒子は、ポテト形となっている。
この処理の利点の一つは、表面に出来る炭化層が純化剤の役目を果たしているということである。何故なら、この層は、表面に存在するすべての不純物を覆うからである。
【0085】
実例7−銀の層でくるんだグラファイトを主成分とする粒子群を作ること。
粒子の平均の大きさ(d50)が20μm、プリズム形で純度が98.5%のブラジル・グラファイトの表面が、重量パーセントにして10%の銀の沈着物によって覆い尽くされる。
沈着物は、Edwards Coating SystemモデルE306Aタイプの蒸発装置を用いた蒸発によって作られる。
可逆容量は387mAh/gで、天然グラファイトの理論的容量より15mA/g大きい。
固有の表面積が小さくなっているので、不動態化の薄膜も少なくなっている。このように、本発明の枠内では、この不動態化の層が基底部分上(有機物:ICLbasal)と端縁部分上(無機物;ICLedge)に形成されることが明らかにされている。他方、ICLbasalは、ICLedgeを40倍も上回っている。このことは、基底部の割合を減らすことが、不可逆容量と気体の発散を減らすために、非常に重要であることを示しており、バッテリの安全性と関連している。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】モデル1による粒子群の変形で、fbを減少させfeを増大させて、プリズム形の粒子を球形の粒子へと変形する。この変形はいくつもの技法によって実現することができる。いくつもの技法というのは、即ち、ジェット・ミル、アトリション(摩擦摩鉱)、ボール・ミル、ハンマ・ミル、CFミルもしくはアトマイザ(噴霧器)ミル、遊星歯車装置付きミキサー、混成器を用いる技法である。モデル1による粒子群の変形は、feとfbを一定に保ちながら、プリズム形の粒子を球形の粒子へと変形する。この変形は、金属、ポリマー、あるいは炭素で粒子を被覆することによって実施される。
【図2】モデル2による粒子群の変形で、fbを減少させfeを増大させて、円柱状の粒子を球形の粒子へと変形する。この変形はいくつもの技法によって実施することができる。いくつもの技法というのは、即ち、ジェット・ミル、アトリション、ボール・ミル、ハンマ・ミル、CFミルもしくはアトマイザ・ミル、遊星歯車装置付きミキサー、混成器を用いる技法である。 モデル2による粒子群の変形で、feとfbを一定に保ちながら、プリズム形の粒子を球形の粒子へと変形する。この変形は、金属、ポリマー、或いは炭素で粒子を被覆することによって実施される。
【図3】モデル1によるプリズム形の人造もしくは天然のグラファイトの変形で、基底部分fbを減少させ端縁部分feを増大させて、プリズム形のグラファイトを球形のグラファイトに変形するのであるが、不純物や可溶性の作用物質の存在下に置いて変形する。可溶性の作用物質は、NaClやNH4Fといったタイプのもので、できれば球形のものが好ましい。この変形はいくつもの技法によって実施することができる。いくつもの技法というのは、即ち、ジェット・ミル、アトリション、ボール・ミル、ハンマ・ミル、CFミルもしくはアトマイザ・ミル、遊星歯車装置付きミキサー、混成器を用いる技法である。
【図4】モデル2による炭素の繊維、円柱状の人造若しくは天然のグラファイトの変形で、基底部分fbを減少させ端縁部分feを増大させて、円柱状のグラファイトを球形のグラファイトに変形するのであるが、不純物や可溶性の作用物質の存在下に於いて変形する。可溶性の作用物質は、NaClやNH4Fといったタイプのもので、できれば球形のものが好ましい。この円形はいくつもの技法によって実施することができる。いくつもの技法というのは、即ち、ジェット・ミル、アトリション、ボール・ミル、ハンマ・ミル、CFミルもしくはアトマイザ・ミル、遊星歯車装置付きミキサー、混成器を用いる技法である。
【図5】モデル1によるプリズム形の人造もしくは天然のグラファイトの変形で、基底部分fbを減少させ端縁部分feを増大させて、プリズム形のグラファイトを球形のグラファイトに変形するのであるが、不純物や不溶性の作用物質の存在下に於いて変形する。不溶性の作用物質は、SiO2やTiO2、セラミック、堅い化合物といったタイプのもので、できれば球形のものが好ましい。この変形はいくつもの技法によって実施することができる。いくつもの技法というのは、即ち、ジェット・ミル、アトリション、ボール・ミル、ハンマ・ミル、CFミルもしくはアトマイザ・ミル、遊星歯車装置付きミキサー、混成器を用いる技法である。
【図6】モデル2による円柱状の人造もしくは天然のグラファイトの変形で、基底部分fbを減少させ端縁部分feを増大させて、円柱状のグラファイトを球形のグラファイトに変形するのであるが、不純物や不溶性の作用物質の存在下に於いて変形する。不溶性の作用物質は、SiO2やTiO2、セラミック、堅い化合物といったタイプのもので、できれば球形のものが好ましい。この変形はいくつもの技法によって実施することができる。いくつもの技法というのは、即ち、ジェット・ミル、アトリション、ボール・ミル、ハンマ・ミル、CFミルもしくはアトマイザ・ミル、遊星歯車装置付きミキサー、混成器を用いる技法である。
【図7】2μmと40μmという二つのタイプの粒子についてのプリズム形状モデルと円柱状モデルとの間の比較モデル化。
【図8】アトリション(摩擦摩鉱)を行う前のグラファイト粒子。
【図9】アトリションを行った後のグラファイト粒子。
【図10】アトリションを行った後の天然のグラファイトNG20の場合の電気化学的な成果。
【図11】市販されている球形のグラファイトMCMBの場合の電気化学的な成果。
【図12】本発明に従って実例3に於いて得られた12μmの粒子のポテト形状を示す走査電子顕微鏡で撮影した写真。
【図13】やはりMEB(走査電子顕微鏡)で撮影した写真で、数学モデル1に適合するグラファイト粒子の場合の基底部及び端縁部の割合の推移を示している。
【図14】MEBで撮影した写真で、実例3に於いて得られた12μmのグラファイト粒子のポテト形状を示している。
【図15】実例3に於いて得られた粒子を、MEBで撮った写真で、減少した基底部の割合(fb)と増大した割合(fe)を示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、変形したグラファイト(黒鉛)の粒子、および、形状がポテト形であるという特色を持つグラファイトを主成分とする粒子に関するものである。本発明は又、このような新規の粒子の製法、並びに、こうして作られた粒子を、特に吸湿剤及び/又は酸素捕集剤として用いる使用法に関するものでもある。本発明の製法は、数学関数を用いて得られる数値を制御することによって監視することができる。この数学関数は、グラファイトの結晶構造の形状(端縁、基底部、LcおよびLa)の特徴を表す規則正しい関数である。本発明の新規の粒子を、電気化学的な用途に用いる場合には、電極の密度が増し、リチウム、ナトリウムなどの添加物質の拡散の動きが増しつつ循環過程に於ける安定性も増している。
【背景技術】
【0002】
グラファイトは、電気化学的に興味深い性質を持っている。自然界においてふんだんに入手できる天然のグラファイトの場合はといえば、可逆容量が372mAh/gであることと電圧の山の高さがリチウムに近いことが目立っている。
合衆国に於いてSanyoに対してUS-A-5,882,818として交付された特許中に言及されているように、グラファイトは、市販のリチウム−イオン−バッテリ中に導入されている。グラファイトには、原価が安く済むという他にも様々な興味深い特徴があるので、天然のグラファイトが、リチウム−イオン−バッテリ中のアノードの素材として有力な候補となったのである。しかしながら、グラファイトの粒子は小片の形で存在しているので、こうした物理的形状のために、一様な電極の分散は不確かなままとなっている。こういう次第で、この分散を効果的なものとするためには、リチウム−イオン−バッテリ用の電極を製作する際に、カレンダー(ロール機械)にかける段階を追加して設ける必要がある(Tetsuya Osaka及びMadhav Datta著、電子機器用のエネルギー貯蔵システム、2000年刊、125ページ)。圧密度が低いと電極の厚みは増すことになるものである。アノードの性能は、グラファイトのタイプと、グラファイト粒子の物理的形状次第で決まってくる。グラファイト中にイオンを最初に有効に付加できるかどうかは、固有の表面と、表面の端縁部の割合とに関わってくる(K,Zaghib他、電気化学学会誌、147(6)2110〜2115,2000)。固有の表面がわずかだと、薄膜に於ける不動態化もそれだけ起こらなくなる。
【0003】
天然のグラファイトは、専ら薄片の形で存在しているが、これに対して人造のグラファイトは、薄片の形にでも、繊維状にでも、或いは球形にでもできる。薄片形状の場合には、特恵的な向きにある程度揃えやすくなり、電極中に異方性がもたらされることになる。このように向きを揃えておけば、端縁部を横切るリチウム付加の動きが減少する。市場に出ている唯一の球形の炭素としては、メゾカーボン・マイクロビーズ(MCMB)がある。このMCMBは、大阪ガスの製品で、2800℃に於いて処理されたものである(T.Kasuh他 J.電力源68(1997)、99)。この炭素は、人造のグラファイトであるが、形を整えるためには高温に於いて費用の掛かる処理を施さなければならず、さらに複雑な合成が必要とされているので生産コストが嵩むことになる。この人造グラファイトの場合に得られる最大の可逆容量は280mAh/g程度で、これは、天然のグラファイトの場合の容量が372mAh/gであるのに比べると低い数値である。
【0004】
2000年10月31日に、Kansai Netsukkagaku株式会社に対して交付された米国特許US-A-6,139,990には、変形を加えて丸くしたグラファイトの粒子についての説明がある。その説明によれば、このグラファイト粒子は、ほぼ球形であるが、円形度は0.86以上で、X線回析法によって計測すると、面002と面110との間の強度の比のピーク値が0.0050を下回ることはないという特色がある。なお、面002はグラファイトの層に平行な面であり、面110はグラファイトの層に垂直な面であって、グラファイトの層は、任意に方向を決める場合に指標となるものである。これらの粒子は粒径分布に関していえば均質性に乏しいので、電気化学的電池、特に、電解質としてプロピレンの炭酸塩(propylene carbonate)を用いている電池に於ける使用は制限されることになり、又、低温での使用のためには大いに不利な点となっている。同様に、これらのグラファイト粒子を使用している電気化学電池は安全性に乏しいことも確言されている。
【0005】
OSAKA GAS株式会社の名前で出願された特許願EP-A-0,916,618について言えば、空洞部を設けたグラファイト材が説明されているが、このグラファイト材を含む電極の電気化学的な容量が増すように、グラファイト材には最適の方法で空洞部が設けられていると説明されている。これらのグラファイト材を、一次タイプのバッテリに使用した場合には利益のあることが明らかにされているが、他の電気化学的な用途に用いても余り利益はない。というのも、これらのグラファイト材は、特に、構造がもろく、そのため、400mAh/gを上回る容量に対しては安定性がないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
天然のグラファイトを球形のグラファイトに変形するために必要な操作には、薄片の形で存在している標準的天然グラファイトと比べても、球形の人造グラファイト(MCMB)と比べても、明らかな利点がある。
こういう次第で、安定した形状であって且つ簡単に圧密して密度を増すことのできるグラファイトを主成分とする粒子群、しかも、電気化学的な容量や異方性が、既知の形状のグラファイト粒子群よりも優っているような粒子群が必要とされてきたのである。こうした粒子を用いれば、特に、均質で密な電極を作ることができ、一方では、PCの使用を促進することにもなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に述べる特徴を有する。
請求項1に記載の本発明は、グラファイト(好ましくは、合成グラファイト)から得た変形グラファイトの粒子群である。これらの粒子群の構造面のパラメータは、次の関係式f1e=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/2T)(Y-1)〕と、f2e=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/T)(Y-1)〕との少なくとも一つにあてはまっているものとするが、これらの関係式において、Yは、1以上の実数を表し、Bは粒子の長さをμm単位で表した数値、Tは、粒子の厚みをμm単位で表した数値とし、該粒子は、ポテト形状で、次の二つの特徴の少なくとも一つを備えているものとする。
二つの特徴とは、即ち:
−密度表示が0.3〜1.5の範囲、好ましくは0.5〜1.4の範囲、さらに好ましくは1〜1.3g/ccの範囲であること;および、
−分布比D90/D10のような粒径分布のばらつきが2〜5の範囲内におさまっていて、粒子の大きさが1μm〜50μmの範囲であり、好ましくは分布比D90/D10が2.2〜4.2の範囲で、粒子の大きさが2μm〜30μmの範囲であること、の二つである。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、グラファイトから得られた変形グラファイトの粒子群で、これらの粒子はポテト形状で、その内部構造中に不純物を含み、表面においても一つ以上の不純物を好ましくは2%〜4%の範囲の割合で含み、さらに次の三つの特徴の少なくとも一つを備えているものとする。三つの特徴とは即ち:
−先述の方法で計測した密度表示が0.3〜1.5の範囲、好ましくは0.5〜1.4の範囲、さらに好ましくは1〜1.3g/ccの範囲の数値であること;
−先述の方法で計測した、比D90/D10のような粒径分布のばらつきが、2.2〜4.2の範囲内におさまっていて、粒子の大きさが2〜30μmの範囲内であること;および
−粒子の表面にはNaCl及び/またはNH4Fの粒子(好ましくはポテト形状、さらに好ましくは球形の粒子)が付けられていて、好ましくは、これらのNaCl及び/又はNH4Fの粒子の総量が変形グラファイトの粒子の総量の1〜10%、好ましくは1〜4%に相当していること、の三つである。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、請求項2による変形グラファイトの粒子であって、TGA分析の結果、重量損に関わる初期温度の数値が、560〜660℃の範囲内のものであることを特徴とするグラファイト粒子である。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、請求項1〜3のいずれかによる変形グラファイト粒子群において、該不純物が、次の化学元素群の中の少なくとも一つの化学元素であるグラファイトの粒子群である。化学元素群とは、即ち、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、Sb(アンチモン)、As(ヒ素)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Pb(鉛)、Co(コバルト)、Ca(カルシウム)、Al(アルミニウム)、Ge(ゲルマニウム)、Si(ケイ素)、Ba(バリウム)、Be(ベリリウム)、Cd(カドミウム)、Ce(セリウム)、Co(コバルト)、Ciu、Dy(ジスプロシウム)、Eu(ユーロピウム)、La(ランタン)、Li(リチウム)、Mo(モリブデン)、Nd(ネオジウム)、Ni(ニッケル)、Pb(鉛)、及びPr(プラセオジム)である。
【0011】
請求項5に記載の本発明は、請求項4による変形グラファイト粒子群において、粒子群中に存在する不純物の重量パーセンテージが、変形グラファイト粒子の総量に対して表した場合、そして焼灰法によって計測した場合、1〜10%の範囲内、好ましくは2〜4%の範囲内に収まっているグラファイト粒子群である。
【0012】
請求項6に記載の本発明は、請求項5による変形グラファイト粒子群であって、表面に不純物はほとんどなく、好ましくは表面に不純物がないグラファイト粒子群である。
【0013】
請求項7に記載の本発明は、グラファイトから得た変形グラファイトの粒子群であって、これらの粒子はポテト形状をしていて、次の化合物群、すなわち、SiO2、MgO、セラミック、或いはこれらの混合物のうちの少なくとも一つを5〜20%の割合で含んでおり、これらの化合物は、変形グラファイト粒子に対して物理的な力によって付けられているのが好ましく、該粒子は次の三つの特徴の少なくとも一つを備えているものとする。三つの特徴とは即ち:
−先述の方法によって計測した密度表示が0.3〜1.5の範囲内、好ましくは0.4〜1.4の範囲内、更に好ましくは1〜1.3g/ccの範囲内におさまっていること;
−先述の方法によって計測した比D90/D10のような粒径分布のばらつきが、大きさが1〜50μmの範囲の粒子の場合には2〜5の範囲におさまっており、大きさが2〜30μmの範囲の粒子の場合には、比D90/D10が2.2〜4.2の範囲におさまっていること;及び
−粒子の表面には、NaCl及び/又はNH4Fの粒子(できれば・・・形が好ましい)が付けてあり、好ましくは、NaCl及び/又はNH4Fのこれらの粒子の総量が変形グラファイト粒子の総量の1〜4%となっていること、の三つである。
【0014】
請求項8に記載の本発明は、請求項1〜7のいずれかによる変形グラファイト粒子群において、面と面との間の距離d002が33〜3.4オングストロームの範囲におさまっており、及び/又は、BETが0.5g/m2〜50g/m2の範囲におさまっているグラファイト粒子群である。
【0015】
請求項9に記載の本発明は、請求項1〜8のいずれかによる変形グラファイト粒子群であって、循環過程における安定性が500サイクルを上廻っているグラファイト粒子群である。
【0016】
請求項10に記載の本発明は、請求項6〜9のいずれかによるグラファイト粒子の製法であって(好ましくは天然グラファイトからの製法)、グラファイト粒子の基底部の割合(fb)の少なくとも50%を減少させ端縁部の割合(fe)の少なくとも50%を増大させることのできる物理的な技法を少なくとも一つ用い、この物理的な技法というのは、好ましくは、アトリション、ジェット・ミル、ボール・ミル、ハンマ・ミル、アトマイザ・ミル技法とし、しかも次の物質群から選んだ化学化合物が少なくとも一つ存在するところで該技法を用いるようにし、次の物質群とは、化学式がMFzの化合物とNaClとNH4Fと、或いはこれらの混合物とから成る物質群とし、ただし、Mはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を表し、Zは1又は2を表すものとし、(好ましくはMFzは、CaF2、BaF2、LiFを表すものとし、)この物質群から選んだ少なくとも一つの化合物を好ましくは固体の形で、そして好ましくは、該基底部の割合を減少させることのできる物理的技法を実施する段階のはじめに加えるようにしてある製法である。
【0017】
請求項11に記載の本発明は、請求項10による製法において、基底部の割合の減少と端縁部の割合の増大、つまり好ましくは粒子を丸くすることは、好ましくは、アトリションの技法を用いて実施されるものとし、この技法には、好ましくは、鋼球、セラミックの球、あるいは鋼球とセラミック球とを混ぜ合わせたもののような球体が用いられるものとした製法である。
【0018】
請求項12に記載の本発明は、請求項1または2による変形グラファイト粒子の製法であって、変形グラファイト粒子は、好ましくは天然のグラファイトから作るものとし、少なくとも次のi)とii)の2つの段階を含む製法である:
i)基底部の割合(fb)の少なくとも50%を減少させ、端縁部の割合(fe)の少なくとも50%を増大させることのできる物理的な技法を少なくともひとつ実施してグラファイト粒子の形を変える段階。ただし、該物理的な技法は、好ましくはアトリション技法とし(ジェット・ミル、ボール・ミル、ハンマ・ミル、アトマイザ・ミルも好ましい技法とし)この技法を合成グラファイト粒子(好ましくは天然グラファイト)に対して、次の物質群から選んだ少なくとも一つの化学化合物の存在下において施すものとし、その物質群とは、化学式がMFzの化合物とし、この化学式において、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表し、zは1または2を表し、好ましくはMFzはCaF2、BaF2、LiFまたはこれらの混合物を表しているものとし、該少なくとも一つの化合物は、好ましくは固体の形で、好ましくは周囲温度において、そして、基底部の割合を減少させ端縁部の割合を増大させることのできる少なくとも一つの技法を実施する段階の好ましくは初めに加えられるのが好ましいものとする;そして
ii)上の段階i)で得られたグラファイト粒子を、好ましくは純化によって、好ましくは化学的純化によって純化して、表面の不純物の割合を減少させる段階である。
【0019】
請求項13に記載の本発明は、請求項10〜12のいずれかによる方法において、方法の最初に使用されるグラファイト粒子の大きさは、1〜450μmの範囲、好ましくは2〜350μmの範囲におさまっているようにした方法である。
【0020】
請求項14に記載の本発明は、請求項10〜13のいずれかによる方法において、アトリションの処理は、添加剤の存在下において行われるものとし、好ましくは、SiO2、TiO2、ZrO2のような金属酸化物タイプの添加剤の存在下において行われるものとし、そして、好ましくは、鋼球、セラミック球、あるいは鋼球とセラミック球との混合物の存在下において行われるものとした方法である。
【0021】
請求項15に記載の本発明は、請求項10〜14のいずれかによる方法において、該二つの段階のうち少なくとも一つの段階は、制御された大気中において、あるいは外気中において行われるものとし、該制御された大気は、好ましくは、窒素、アルゴン、ヘリウム、あるいはこれらの気体の混合物を主成分とするものとした方法である。
【0022】
請求項16に記載の本発明は、請求項9〜15のいずれかによる方法において、段階i)は、ジェット・ミル技法とアトリション技法を共に行う混成式の段階とし、好ましくは、ジェット・ミルを実施した後でアトリションを実施するようにした方法である。
【0023】
請求項17に記載の本発明は、請求項10〜15のいずれかによる方法において、段階i)はジェット・ミル技法を用いて実施されるものとした方法である。
【0024】
請求項18に記載の本発明は、請求項1〜9のいずれかによる変形グラファイト粒子を、燃料電池、電気化学式発電機用に、吸湿剤及び/又は酸素捕集剤として用いる使用法である。
【0025】
請求項19に記載の本発明は、好ましくは、充電できる電気化学式発電機用の負の電極であって、結合剤−好ましくは、PVDF、PTFEタイプの結合剤を用い、さらに請求項1〜8のいずれかによるグラファイト粒子を用いて作られる負の電極である。
【0026】
請求項20に記載の本発明は、請求項1〜9のいずれかに記されているようなグラファイト粒子を主成分とするか、あるいは請求項1〜17のいずれかによる方法によって得られるようなグラファイト粒子を主成分とする電極の製法であって、充電のできる発電機用の電極の製法で、少なくとも次の段階を含む製法である。次の段階とはすなわち、
b−少なくともひとつの結合剤(好ましくは、PVDF、PTFEよりなる物質群から選んだ結合剤)を、好ましくはNMP(n−メチル・ピロリドン)、シクロペンタノンよりなる物質群から選んだ溶剤の中に、濃度をできるかぎり高くして(好ましくは、1g/ccを上回る濃度)溶かすことができるようにして粘り気のある溶液(A)を得るようにする段階と、
b−上の段階で得た粘り気のある溶液は、粉末―結合剤組成物の混合物(B)であるが、この溶液を集電器タイプの装置、好ましくは金属製の集電器タイプの装置上、及び/又は、金属製で穴をあけてある集電器タイプの装置上に注ぎ広げ、このように処理された集電器が電極となるようにする段階と、
c−段階bで作られた電極を、好ましくは赤外線ランプか発熱要素を用いて乾燥させる段階である。
【0027】
請求項21に記載の本発明は、充電のできる発電機用でグラファイトを主成分とする電極を請求項20に従って作る製法であって、この製法には、請求項18に記されている段階が段階c以外はすべてそのまま含まれているが、段階cのところでは、電極を乾かすために、赤外線ランプによる技法と発熱要素による技法との二つの乾燥技法が並行して使用されている。
【0028】
請求項22に記載の本発明は、金属の沈着物及び/又は炭酸の沈着物によって覆われたグラファイトのプリズム形粒子からなる、変形グラファイトを主成分とする粒子群である。これらの粒子の構造面のパラメータは次の二つの関係式にあてはまっている。すなわち、fe1=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/2T)(Y-1)〕および fe2=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/T)(Y-1)〕で、これらの関係式において、Yは1以上の実数を表し、Bは粒子の長さを表し、Tは粒子の厚みを表しているものとし、これらの粒子はポテト形状をしていて、次の二つの特徴のうちの少なくとも一つを備えているものとする。二つの特徴とはすなわち、:
−先述の方法によって計測した密度表示が好ましくは、0.3〜1.5の範囲、より好ましくは、0.5〜1.4の範囲内、さらにより好ましくは、1〜1.3g/ccの範囲内におさまっている、という特徴と;
−先述の方法によって計測した比D90/D10のような粒径分布のばらつきが、2〜5の範囲内におさまっており、粒子の大きさは1〜50μmの範囲内であって、好ましくは、比D90/D10が2.2〜4.2の範囲内、粒子の大きさが2〜30μmの範囲内である、という特徴の二つである。
【0029】
請求項23に記載の本発明は、請求項22によるグラファイトを主成分とする粒子群であって、粒子の大きさが1〜50μmの範囲である粒子群である。
【0030】
請求項24に記載の本発明は、請求項22又は23によるグラファイトを主成分とする粒子群であって、球形度が80%以上である粒子群である。
【0031】
請求項25に記載の本発明は、請求項22〜24のいずれかによるグラファイトを主成分とする粒子群において、金属被覆及び/又は炭素被覆の平均の厚みが、50nm〜2μmの範囲内であるようにした粒子群である。
【0032】
請求項26に記載の本発明は、グラファイトの核を被覆した、グラファイトを主成分とする粒子であって、該核はグラファイトを主成分とする粒子全体に対して重量パーセントにして少なくとも90%を占めており、残りの10%は、好ましくは、Ag(銀)、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)及びCu(銅)より成る金属グループから選んだ金属の少なくとも一つ、及び/又は炭素、及び/又は好ましくはプリズム形か繊維形の炭素ポリマーより成っているものとする粒子である。
【0033】
請求項27に記載の本発明は、請求項22〜26のいずれかによる、グラファイトを主成分とする粒子の製法であって、プリズム形の粒子を素材とし、これらの粒子の基底部の割合(fb)と、端縁部の割合(fe)とを一定に保ちつつ、グラファイトの表面を、金属の沈着物か炭酸の沈着物によってそっくりくるんで80%の球形度が得られるようにして粒子をくるみ込む、という製法である。
【0034】
請求項28に記載の本発明は、請求項22〜26のいずれかに記載されているような、或いは請求項13〜27のいずれかに記載されている方法の一つによって得られるような、変形グラファイトを主成分とする粒子群を、燃料電池、電気化学式発電機用として、或いは、吸湿剤及び/又は酸素捕集剤として用いる使用法である。
【0035】
請求項29に記載の本発明は、好ましくは、充電のできる電気化学式発電機用の負の電極であって、結合剤−好ましくはPVDF、PTFEタイプの結合剤を用い、さらに請求項22〜26のいずれかに記載されているような、或いは請求項27に記載されている方法によって得られるようなグラファイト粒子を用いて作られる電極である。
【0036】
請求項30に記載の本発明は、グラファイト粒子の表面を、自然な環境の下で純化する方法であって、不純物の存在するところで、粒子を炭素によって被覆することによって純化する方法である。
【0037】
請求項31に記載の本発明は、請求項1による粒子群を、電気化学式の電池に用いる使用法であって、基底部の割合(fb)を制御して、ポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下において粒子を使用できるようにし、その場合、電解質中におけるPC濃度が、体積パーセンテージにして、電解質混合体の50%を下回っているようにしてある使用法である。
【0038】
請求項32に記載の本発明は、請求項31に記載の使用法によってできる安全バッテリである。
【0039】
請求項33に記載の本発明は、請求項22によるグラファイトを主成分とする粒子群の使用法であって、基底部の割合(fb)を一定に保って、ポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下において粒子を使用できるようにし、その場合、電解質中におけるPC濃度が、体積パーセンテージにして、電解質混合体の100%を下回っているようにしてある使用法である。
【0040】
請求項34に記載の本発明は、請求項33に記載の使用法によってできる安全バッテリである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の第一の目的は、グラファイト(できれば合成グラファイトが好ましい)から変形したグラファイト粒子であるが、これらの粒子の構造上のパラメータは、次の関係式のうちの少なくとも一つにあてはまっている。即ち、fe1=[Y+1]/[(Y+1)+(B/2T)(Y-1)]およびfe2=[Y+1]/[(Y+1)+(B/T)(Y-1)]で、これらの関係式に於いて、Yは1以上の整数を表しており、Bは粒子の長さをμm単位で表した数値であり、Tは粒子の厚みをμm単位で表した数値である。これらの粒子は、さらに、形状がポテト形で、次の二つの特徴のうち、少なくとも一つの特徴を備えている。二つの特徴というのは、即ち、
−Logan Instrument社モデルTap-2という呼称で市販されている装置を使った方法で計測した密度表示が0.3と1.5の間の数値であり、できれば0.5〜1.4の範囲内の数値、さらにできれば1〜1.3g/ccの範囲内の数値であれば好ましい、という特徴と、
−MicrotacモデルX100Particle Analyserという製品名で市販されている粒子分析器を使った方法で計測した粒径分布のばらつき(例えば、分布比D90/D10)が2〜5の範囲内の数値であり、粒子の大きさは1〜50μmの範囲内の数値であること、そして分布比D90/D10はできれば2.2〜4.2の範囲内の数値が好ましく、粒子の大きさは2〜30μmの範囲内の数値が好ましい、という特徴の二つである。
【0042】
本発明の第二の目的は、グラファイトから変形したグラファイト粒子であって、ポテト形の形状を有し、内部構造中には不純物を有するが、表面に於いて一つ以上の不純物を含む割合は、10%を下回るか、できれば2〜4%の範囲内の数値であるグラファイト粒子である。なお、表面に於いて一つ以上の不純物を含む割合を計測するには、後方散乱式探知器を用いた方法による。この方法については、1966年刊のKimoto S.とHashimoto H.共著の出版物や、ニューヨークのJohn Wiley著“電子顕微鏡”の480ページや、イリノイ州、AMF O'hare所在のSEM社から1978年に刊行されたGedcke,D.A.とAyers,J.B.とDenee,P.B.との共著“SEM(走査電子顕微鏡)”の581ページに明確に説明されている。さらに該グラファイト粒子には、次の三つの特徴のうちの少なくとも一つの特徴が備わっている。三つの特徴というのは、即ち、
−先述の方法によって計測した密度表示が0.3と1.5の間の数値であり、できれば0.5〜1.4の範囲内の数値、さらにできれば1〜1.3g/ccの範囲内の数値であれば好ましい、という特徴と;
−先述の方法によって計測した粒径分布のばらつき(例えば分布比D90/D10)が2.2〜4.2の範囲内の数値であり、粒子の大きさが2〜30μmの範囲内の数値である、という特徴と;
−これらの粒子の表面には、NaCl及び/又はNH4Fの粒子(できれば、ポテト形、さらにできれば球形の粒子が好ましい)が付着しており、NaCl及び/又はNH4Fのこれらの粒子の質量が変形されたグラファイト粒子の全質量の1〜4%となっていることが好ましい、という特徴の三つである。
【0043】
グラファイトの表面の不純物の割合は、様々なやり方で減らすことができる。特に有効な方法は、Hydro-Quebec社が権利を所有しているPCT出願、PCT/CA100233中に説明されている方法である。この出願書類の内容は、ここに言及して本特許願にも含まれるものとする。
【0044】
本発明の第二の目的に適った粒子の好ましい今一つの例としては、次のような変形グラファイト粒子がある。即ち、デラウェア州、ニューカッスルに所在するTA Instruments社から、TGA/DTAモデルSDT2960という製品名で販売されている装置を使った方法によって行われるTGA分析の結果、第11/11図に示されているように、重量の減損が見られる最初の温度が560〜660℃の範囲内の温度となるような変形グラファイト粒子である。
本発明による変形グラファイト粒子は不純物を含んでいてもかまわない。例えば、次の化学元素群に含まれる不純物なら少なくとも一つ含んでいてもかまわない。化学元素群というのは即ち、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、Sb(アンチモン)、As(ヒ素)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Pb(鉛)、Co(コバルト)、Ca(カルシウム)、Al(アルミニウム)、Ge(ゲルマニウム)、Si(ケイ素)、Ba(バリウム)、Be(ベリリウム)、Cd(カドミウム)、Ce(セリウム)、Co(コバルト)、Ciu、Dy(ジスプロシウム)、Eu(ユーロピウム)、La(ランタン)、Li(リチウム)、Mo(モリブデン)、Nd(ネオジム)、Ni(ニッケル)、Pb(鉛)、及びPr(プラセオジム)である。
【0045】
本発明によるグラファイト粒子の中で今一つの好ましい粒子は、次のような粒子である。即ち、変形グラファイト粒子の全重量に対して、これらの粒子中に存在する不純物の重量パーセンテージが焼灰法によって計測すると、1〜10%の範囲であり、好ましくは2〜4%の範囲であるような粒子である。
さらに特に興味深いのは、本発明によるグラファイト粒子であって、表面に不純物がほとんどないグラファイト粒子、できれば表面に不純物がないグラファイト粒子である。
【0046】
本発明の第三の目的は、グラファイトから変形したグラファイト粒子であって、ポテト形状を有し、次の化合物のうちの少なくとも一つの化合物を5〜20%の割合で含むグラファイト粒子である。次の化合物というのは、即ち、SiO2、MgO、セラミック、或いはセラミックの混合物のことで、該化合物は、変形グラファイト粒子に対して物理的な力によって付着させられるのが好ましく、該粒子は次の三つの特徴のうち少なくとも一つを備えている。三つの特徴というのは、即ち、
−先述の方法によって計測した密度表示が0.3と1.5の間の数値であり、できれば0.4〜1.4の範囲内の数値、さらにできれば1〜1.3g/ccの範囲内の数値であれば好ましい、という特徴と;
−先述の方法によって計測した粒径分布のばらつき(例えば、分布比D90/D10)が、1〜50μmの範囲の大きさの粒子の場合には、2〜5の範囲の数値であり、2〜30μmの範囲の大きさの粒子の場合には、分布比D90/D10が2.2〜4.2の範囲の数値であるのが好ましい、という特徴と;そして
−該グラファイト粒子の表面には、NaCl及び/又はNH4Fの粒子(できれば、ポテト形状のものが好ましく、さらにできれば球形の粒子が好ましい)が付着せしめられており、できれば、これらのNaCl及び/又はNH4Fの粒子の質量が変形グラファイト粒子の全質量の1〜10%に相当しているのが好ましい、という特徴の三つである。
【0047】
本発明によるグラファイト粒子の今一つの特に好都合な例は、次のような変形グラファイト粒子群である。即ち、その粒子群に於いては、粒子の面と面との間の距離d002(XRD analysis SiemensモデルD500 Diffractometerという製品名で市販されている回析計器を使った方法で計測した値)が33〜3.4オングストロームの範囲の数値であり、及び/又は、BET(N2を使用した自動ガス吸着システムであるQuantachrome Autosorbという装置を使った方法で計測した値)が0.5〜50g/m2の範囲の数値であるような粒子群である。
本発明の変形グラファイト粒子の中でも、循環過程に於ける安定性が500サイクルを上回っているものは、電気化学的な用途にあてると特に利益が得られるものである。
【0048】
本発明の第四の目的は、やはり本発明の目的であるグラファイト粒子の製法(できれば天然グラファイトからの製法)であるが、粒子の基底部の割合(fb)を少なくとも50%減少させ端縁部の割合(fe)を少なくとも50%増大させることができるような物理的な手段を少なくとも一つ用い、化学化合物群から選んだ化合物が少なくとも一つ存在するところでグラファイト粒子を製造する方法である。なお、該物理的な手段というのは、できれば、アトリション、ジェット・ミル、ボール・ミル、ハンマ・ミル、アトマイザ・ミルが好ましく、又、該化学化合物群というのは、化学式MFzで表される化合物(この化学式で、Mはアルカリ金属かアルカリ土類金属を表しており、zは1又は2を表している。そして、この化学式で表される化合物としては、CaF2、BaF2、LiFが好ましい)やNaClやNH4F、或いはこれらの混合物から成る物質群のことである。該化合物は、できれば固体の形で、しかもできれば該物理的な手段を用いる段階の最初に加えるようにするのが好ましく、こうして、fb=1−feで表される基底部の割合を減少させ、(2B/La+T/d002):(2B/d100+T:d002)という関係式で示される割合feを増大させることができる。なお、上の関係式に於いて、B、La=d100(2n+1)はd002を表しており、nは平面の数を表している。これらの割合を明確に規定し分析するやり方については、2000年に刊行された電気化学学会誌147(6)2110〜2115のK.Zaghib,G.Nadeau及びK.Kinoshita共著の“グラファイト粒子の大きさが不可逆容量損に及ぼす影響”という著述中に詳述されている。この文書も、ここに言及することによって、本出願に組み込むこととする。
【0049】
Hydro-Quebecによる特許願PCT/CA0100233中に説明されているように、粉砕作業を行う際、グラファイトの表面に於いてNH4Fを使用することが非常に大切である。なぜならH2SO4と水の存在下に於いてグラファイトの純化を行う際、NH4FによってHFが発生して不純物、特にSiO2を溶かすからである。
同じように、粉砕作業を行う際、グラファイトの表面に於いてNaClを使用することも非常に大切である。何故なら、H2SO4の存在下に於いてグラファイトの純化を行う際、NaClによってHClが発生し、このHClが又、表面の不純物、特にFe(鉄)、Mo(モリブデン)などの金属を溶かすからである。
この製法の好ましい実施態様によれば、基底部の割合を減少させて端縁部の割合を増大させる(つまり、できれば粒子を丸くすることが好ましい)ためには、アトリションという手段を用いている。この手段としては、球を用いるのが好ましく、球は、鋼球、セラミック製の球、或いは、鋼球とセラミック球との混合物である。
【0050】
本発明の第五の目的は、請求項1又は2によるによる変形グラファイト粒子の製法(できれば天然のグラファイトから製造する方法)であって、少なくとも次のi)とii)の二つの段階を含む方法である。即ち;
i)基底部の割合(fb)の少なくとも50%を減少させ、端縁部の割合(fe)の少なくとも50%を増大させることができるような物理的手段を少なくとも一つ用いてグラファイト粒子の形を変える段階。このような物理的手段としては、できればアトリション(できれば、ジェット・ミル、ボール・ミル、ハンマ・ミル、アトマイザ・ミル)が好ましく、グラファイト粒子は合成グラファイト粒子を用いるが、できれば天然のグラファイトの方がよい。そして、該物理的手段を用いる時には、次の物質群から選んだ化学化合物が少なくとも一つ存在しているところで用いるようにする。即ち、MFzという化学式で表される化合物から成る物質群で、この化学式に於いて、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を表し、zは1又は2を表しており、できれば、MFzはCaF2、BaF2、LiF又は、これらの混合物を表しているものとするのが好ましい。該少なくとも一つの化合物は、固体の形で加えられる方が好ましく、さらに、周囲温度に於いて、基底部の割合を減少させ端縁部の割合を増大させることのできる手段を用いる段階の最初に加えられる方が好ましい;そして
ii)表面の不純物の割合をできれば純化によって減少せしめる段階。純化は、段階i)で得られたグラファイト粒子をできれば化学的な純化によって純化するのが好ましい。
好ましい実施態様によれば、この方法の最初に使用されるグラファイト粒子の大きさは、1〜450μmの範囲、できれば2〜350μmの範囲とするのが好ましい。
今一つの好ましい実施態様によれば、アトリションの処理を行う時には、添加剤(できれば、SiO2、TiO2、ZrO2のような金属酸化物タイプの添加剤が好ましい)の存在下に於いて、しかも、できれば、鋼球の存在下、セラミックの球の存在下、或いは鋼球とセラミック球との混合物の存在下に於いて行うのが好ましい。
【0051】
好ましい変形例に於いては、本発明の方法が次のような条件の下に実施される。即ち、前記の二つの段階のうちの少なくとも一つの段階が、制御された空気中か、或いは外気中に於いて実施されるようになっている。制御された空気というのは、窒素、アルゴン、ヘリウム、或いは、これらの気体の混合物を主成分としているものが好ましい。
段階i)は、混成式の段階としてもかまわない。即ち、ジェット・ミルとアトリションを同時に行う段階としてもかまわないが、その場合、ジェット・ミルを行ってからアトリションを行うようにする方が好ましい。
特に好都合な実施態様によれば、該方法の段階i)はジェット・ミルを利用して行われる。
【0052】
本発明の第六の目的は、ここまでに説明されこの後に説明されるような変形グラファイト粒子であって、吸湿剤及び/又は酸素捕集剤としての変形グラファイト粒子である。
【0053】
本発明の第七の目的は、負の電極であるが、充電のできる電気化学式発電機用の負の電極であって、結合剤(といってもPVDF、PTFEタイプの結合剤が好ましい)を用い、さらに、本発明の諸目的のいずれか一つによるグラファイト粒子を用いて作られる負の電極である。
【0054】
本発明の第八の目的は、充電のできる発電機用の電極の製法であるが、本発明によるグラファイト粒子を主成分とするか、或いは、少なくとも次の段階a〜cを含む本発明による方法によって得られるようなグラファイト粒子を主成分とする電極の製法である。
a−少なくとも一つの結合剤(できれば、PVDF、PTFEという物質群から選んだ結合剤が好ましい)が溶剤(できれば、NMP《n−メチル・ピロリドン》とシクロペンタノンという物質群から選んだ溶剤が好ましい)の中に、できる限り高濃度(1g/ccを上回る濃度が好ましい)にして溶かすことができるようにして粘り気のある溶液(A)を得る段階と;
b−上の段階で得られた粘り気のある溶液は、粉末−結合剤組成物の混合物(B)であるがこの溶液を集電器タイプの装置上に注ぎ広げる段階。この装置は、金属タイプの集電器及び/又は、金属製で穴をあけてある集電器タイプのものが好ましく、このような処理を施した集電器が電極となる;そして
c−段階bで作られた電極を乾燥させる段階。乾燥させるには、できれば、赤外線ランプか発熱要素を用いる方が好ましい。
この方法の好ましい実施態様によれば、段階cに於いて、電極を乾燥させるために、二つの別々の手段を並行して用いている。二つの別々の手段というのは、赤外線ランプによる乾燥と(発熱)要素による乾燥の二つであることが好ましい。
【0055】
本発明の第九の目的は、変形グラファイトを主成分とする粒子群であるが、この粒子群は、金属の沈着物及び/又は炭酸の沈着物で被覆されたプリズム形グラファイト粒子から成っている。これらの粒子の構造上のパラメータは、次の関係式に当てはまっている。即ち、fe1=[Y+1]/[(Y+1)+(B/2T)(Y-1)]およびfe2=[Y+1]/[(Y+1)+(B/T)(Y-1)]である。これらの関係式に於いて、Yは1以上の実数を表し、Bは粒子の長さをμm単位で表した数値であり、Tは粒子の厚みをμm単位で表した数値である。そして該粒子は、ポテト形状であり、且つ、次の二つの特徴のうちの少なくとも一つの特徴を備えている。二つの特徴というのは、即ち;
−先述の方法によって計測した密度表示ができれば0.3と1.5の間の数値であることが好ましく、さらに0.5〜1.4の範囲であればなお好ましく、1〜1.3g/ccの範囲であればなお一層好ましい、という特徴と;そして
−前記の方法によって計測した粒径分布のばらつき(例えば、分布比D90/D10)が2〜5の範囲で、粒子の大きさは1〜50μmの範囲であり、できれば分布比D90/D10の値が2.2〜4.2の範囲で、粒子の大きさは2〜30μmの範囲であれば好ましい、という特徴の二つである。
【0056】
グラファイトを主成分とするこれらの粒子の大きさは、1〜50μmの範囲が好ましい。
好ましい実施態様によれば、これらの粒子の球形度は80%以上である。
グラファイトを主成分とするこれらの粒子群の中には、次のような粒子から成る好ましい小群がある。即ち、金属被覆及び/又は炭素を含む被覆の平均の厚みが50nm〜2μmの範囲の粒子である。
グラファイトを主成分とする粒子群によって今一つの好ましい小群が成っている。即ちグラファイトの芯を被覆した粒子から成る小群であるが、この芯が、グラファイトを主成分とする粒子の全質量の少なくとも90%を占めており、残りの10%は、少なくとも金属及び/又は炭化したポリマーから成っているのが好ましい。なお、該金属は、Ag(銀)、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)、及びCu(銅)から成る金属群より選ぶものとし、該ポリマーは、プリズム形もしくは繊維形のものが好ましい。
【0057】
本発明の第十の目的は、グラファイトを主成分とする粒子群を作る方法であるが、プリズム形の粒子を素材として、基底部の割合(fb)と端縁部の割合(fe)とを一定に保ちながら、そして、金属又は炭酸の沈着物によってグラファイトの表面をそっくり覆って粒子を被覆し80%以上の球形度を得るようにする方法である。
【0058】
本発明の第十一の目的は、グラファイトの粒子の表面を(できれば)自然な環境の下で純化する方法であるが、これらの粒子を、不純物が存在するままで炭素によって被覆して純化する方法である。
【0059】
本発明の第十二の目的は、本発明による変形グラファイト粒子を電気化学式の電池に使用することであるが、基底部の割合(fb)を制御して、ポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下に於いてグラファイト粒子を使用できるようにし、その場合電解質中のPCの濃度が、電解質の混合物の体積の50%には及ばないようにする。
このようにグラファイト粒子を使用して出来る安全バッテリも又、本発明の目的とする。
【0060】
本発明の第十三の目的は、本発明によるグラファイトを主成分とする粒子を使用することであるが、基底部の割合(fb)を一定に保ってポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下に於いて該粒子を使用できるようにし、その場合、電解質中のPCの濃度が、電解質の混合物の体積の100%以下であればよいようにする。このように粒子を使用して出来るバッテリは安全であり、これらのバッテリも本発明の目的とする。
【0061】
このように、本発明の範囲内に於いて、天然グラファイトの粒子を球形の粒子に変形するための新しい方法が特に説明されている。自然のままのグラファイトの粉末の粒子は、最初の大きさは375μmであるが、微少な研磨剤の役割を果たす不純物の存在下に於いて、この粉末をアトリションによって粉砕し、その大きさを10μmのd50にまで減少させる。グラファイトの粉末には鋼球が加えられるが、グラファイトと球体との質量比が1対10になるように加えられる。粉砕(摩滅器としては、ユニオン・プロセス社のAKRONのタイプB、サイズBを用いる)は、60分間で400rpmの速度に加速される。60分後、粉砕を停止して粉径分布の算定と特定の表面の評価をサンプル試料について行う。もし所期の粉径分布が達成されていなければ、粉砕を再び10分間行う。こういった段階を、粒子の大きさが10μmのd50になるまで繰り返し行っていく。今一つ500gの試料をとって、噴射式粉砕機Alpine中で粉砕して10μmのd50とする。これら二つの試料について粉砕を行ってから走査顕微鏡によって比較調査を行う。このようにすれば、アトリションによって得られた小片の形が球形により近くなっているかどうかを鑑定することが出来る。我々は又、二つの技法を併せ用いるハイブリッド式の粉砕も行っている。即ち、最初にジェット・ミル技法によって粒子の大きさを20μmにまで減少させてから、アトリションによって10μmにまで小さくするのである。
【0062】
充電のできるバッテリ配置に於いて、球形のグラファイトをアノードとして使用すると、小片形状のグラファイトを使用する場合に比べて利点が多い。特に次のような利点がある:
−圧密性が増す;
−一層均一に分散する;
−間隙が減る;
−基底平面の割合が減少する;
−粒子間の電気的接触が良くなる;
−電解質の分解が減少する;
−充電-放電が迅速に行われる;
−挿入物の動きが良くなる;
−バッテリの安全性が向上する。
【0063】
この方法を天然のグラファイトに適用すると、グラファイトの電気化学的性能が向上し、電極に於ける分散も改善される。球形にした天然グラファイトには、二つの炭素、即ち天然グラファイトと球形の人造グラファイトの利点が兼ね備わっている。エネルギーは、天然のグラファイトと共に最大に保たれている(容量と電圧は中程度である)。基底面は余り貢献しなくなるが、このことは、一方では、不可逆容量を減少させるために役立っている。結晶軸c(炭素原子によって形作られている面に対して垂直)沿いの拡散し得る部分(端縁部)が増し、不動態化するためである。その上、異方性の問題も減ってきており、挿入物の動きが改善されている。球形の粒子を用いると電極の分散が均一化され、こうしてできた電極には間隙が少なくなっている。球形の粒子を用いた場合、電極の厚みはより良く制御され、より薄くすることが出来るので、遠距離通信用のパルスとかハイブリッド車用の電力需要のような電力用途に当てられる。以上のような特徴のおかげで、リチウム・イオン・バッテリを極く薄手に設計することが容易になっており、ポリマー・バッテリの規模にまで薄く設計することが容易になっている。
【0064】
グラファイト粒子とそれらの粒子の表面(基底部と端縁部)との間の関係の計算モデル:プリズム形の構造と球形の構造との間の比較。
モデルI
グラファイトの晶子(クリスタライト)の大きさと表面に於ける部位との間の関係を、結晶学上のパラメータa、b及びcを用いて表すために、球形粒子用の数学モデルが開発された。このモデルに於いては、球体は次のようにして形成される。即ち、広さがAi・Biで(基底面)、厚みがT(端縁)の層を一層又一層と積み重ねてプリズム形としたものから形成されている。
【0065】
又、第1図に示されているように、パラメータAとBは、粒子の中心の層(0)から最上層(n)もしくは最下層(n)の方へと遠ざかるにつれて、同じ因子(Y)に対してより小さくなるものと考えられている。
【0066】
第1図
【0067】
中心層(0):A、B、T
層(1):
A1、B1、T ただし、A=YA1、B=YB1
そしてY≧1とする。 (1)
A1=A/Y、B1=B/Y
層(2):
A2、B2、T ただし、A1=YA2、B1=YB2 (2)
A2=A1/Y=A/Y2、B2=B1/Y=B/Y2
層(3):
A3、B3、T ただし、A2=YA3、B2=YB3 (3)
A3=A2/Y=A/Y3、B3=B2/Y=B/Y3
・
・
・
層(n):
An、Bn、T ただし、An-1=YAn、Bn-1=YBn (4)
An=An-1/Y=A/Yn、Bn=Bn-1/Y=B/Yn
従って、端縁部表面積については:
EA=2T{(A+B)+(A1+B1)+(A2+B2)+(A3+B3)+…+(An+Bn)} (5)
この(5)に、方程式(1)、(2)、(3)及び(4)のA1、B1、A2、B2、・・・An、Bnの値を代入すると;
EA=2T(A+B){1+1/Y+1/Y2+1/Y3+…+1/Yn}
=2T(A+B)Σ1/Yi(i=0→n) (6)
球体の対称性を考えると、方程式(6)は次の形に変えられる:
EA=4T(A+B)[Σ1/Yi]−2T(A+B)、(i=0→n) (7)
級数[Σ1/Yi](i=0→n)はY/(Y-1)の項へと収束する。
(1+X+X2+…+Xn=1/1-X、ただし1<X<1)
EA=4T(A+B)Y(Y-1)-1−2T(A+B)
EA=2T(A+B)[2Y(Y-1)-1−1] (8)
基底面の表面積のためには:
BA=2[(AB-A1B1)+(A1B1-A2B2)+(A2B2-A3B3)+…+(An-1Bn-1-AnBn)]
=2[(AB-AnBn)]
=2AB[1-1/Y2n]
BA=2AB[1-1/Y2n] (9)
全体の表面積は:
St=EA+BA
=2T(A+B)[2Y(Y-1)-1−1]+2AB[1-1/Y2n]
端縁部位の割合(fe)は:
fe=EA/St
=2T(A+B)[2Y(Y-1)-1−1]/{2T(A+B)[2Y(Y-1)-1−1]+2AB[1-1/Y2n]}
fe=[Y+1]/{(Y+1)+[AB/T(A+B)][1-1/Y2n](Y-1)} (10)
A=Bの場合には:
fe=[Y+1]/[(Y+1)+(B/2T)(1-Y-2n)(Y-1)] (11)
1)理想的な場合、n→∞、Y-2n→0とすると;
(プリズム形の層の数が無限大と考えると)
fe=[Y+1]/[(Y+1)+(B/2T)(Y-1)] (12)
この方程式(12)は、粒子の大きさとパラメータYとに応じる端縁部表面積間の関係を表している。
【0068】
モデル2
直径がBで厚みがTの円柱状の基本粒子(第2図)によってグラファイト粒子がおおよそ形作られていると考えられる場合。
【0069】
第2図
【0070】
端縁部と基底部の表面積は次の式によって定められる:
EA=πBT
BA=πB2/2
以上からfeの割合は、
fe=[Y+1]/[(Y+1)+(B/T)(1-Y-2n)(Y-1)] (13)
1)n→∞、Y-2n→0の場合、
fe=[Y+1]/[(Y+1)+(B/T)(Y-1)] (14)
【0071】
以上の二つのモデルについて、プリズム形の基底面と端縁面を推移させて球形へと変えていくと、基底面の表面積が著しく減少することが分かる。すると、粒子の全表面積に対する端縁部の表面積の割合が増すことになる。電気化学的な観点からすれば、基底部の表面積が減少するとそれにつれて不動態化も減少し、他方では、端縁部の表面が増えるので挿入物にはアクセスしやすくなる。パラメータ(Y)の数値が与えられると、(ただしY≧1)、この数値に対して、方程式(12)と(14)から得られる端縁部の表面積の割合feを比較することが出来る。以下の表1.a-dは、これら二つの方程式から算出した端縁部の割合の結果を示している。
【0072】
(表1)
表1.a:Y=1.001
【0073】
(表2)
表2.b:Y=1.01
【0074】
(表3)
表3.c:Y=1.1
【0075】
(表4)
表4.d:Y=1.5
【0076】
普通、パラメータYの値が1に最も近い場合に概算値も最良に近いものが得られる。Y=1.001の場合、feの値は、粒子の大きさとは関係なく、1へと収束している。これはどういうことかというと、基底面Iの表面積が0へと向かっているということで、理想的な場合である(表1.a)。
近似法によって得た二つの概算値の間の偏差は、Yと共に大きくなっており、粒子の大きさによっても増大している。Y=1.01の場合、二つの概算値の間には3%の偏差があり粒子の大きさの間では2%より小さい。Y=1.5の場合には、偏差はおよそ16%であるが粒子の間の差は、2〜3%のままである。
このように因子feが変化するのは、基本粒子の形状、並びに基本粒子間の隔たり(Y)をどのようにみなすか、というそのみなし方に依っている。そして、基本粒子間の隔たりによって、最終的な球形粒子が形作られるのである。feが1から発散していくと、基底面の割合が増してくる。実際、天然グラファイト粒子が球形であれば利点が多く、挿入物の挿入をより迅速に行うことができ、不可逆容量をより小さく(基底面の表面積をより小さく)することができる。
【0077】
2)方程式(11)及び(13)に於いて、項(1-Y-2n)を考える場合;
仮にY=1.1とすると、n<50の範囲でnを逐次代入した後、二つの方程式は急速に収束する(第3図)。第7/11図に示されているように、結果は、次のことを示している:
−小さな粒子が一番球形にしやすい(fe(2μm)>fe(40μm))。
−プリズム形の場合にfeの値を近似法によって概算すると、feの値が高くなる。
【実施例】
【0078】
以下の実例は、純粋に説明のために載せたものであって、本発明に何らかの限定を設けるものと解されるべきではない。
【0079】
実例1−天然のグラファイトからアトリションの技法を使って、ポテト形状の変形グラファイト粒子を作ること。
素材として用いる天然グラファイトは、粒子の最初の大きさが375μm、純度が98%で、薄片(フレーク)形状のものである。このグラファイトの固有の表面積は、およそ1m2/gである。天然グラファイトの粉末は、“アトリション”法によって粉砕され、これらの粒子は球形の粒子へと変形される。
球形に変化させた後でも、d002は変わらず、3.36オングストロームであった。走査電子顕微鏡(SEM)によって写真1a(第8/11図)について分析を行い、アトリションを行う前の写真1b(第9/11図)とJを比較して、粒子の大きさはほぼ同じままに保たれているのに粒子の形状が変わっていることを示した。
結合剤PVDF(フッ化ポリビニリデン)は、NMP(n−メチル・ピロリドン)中に溶かすことが出来る。PVDF-NMPのペーストに、溶剤アセトンとトルエンを80対20の割合で混合したものを加えて、分散組成物を形作る。球形に変形された天然グラファイトの粉末が、この分散組成物中に、質量比にして90:10の割合で分散せしめられる。こうしてできた混合物は、ドクター・ブレイド法によって銅の集電器上に塗布される。電極は、赤外線ランプによって乾かされる。この電極は2035タイプのボタン電池中に使われる。隔離板としては、CelgardTM2300を使用するが、この隔離板には電解液1M LiPF6+EC/DMCがしみこませてあり、EC/DMCは50:50の割合でエチレンの炭酸塩とジメチルカルボナートとを混ぜ合わせたものである。
電気化学的な検査は、周囲温度に於いて行われた。二つのボタン電池P1とP2について(第10/11図)c/24に於いて0〜2.5ボルトの範囲で電荷曲線が得られた。可逆容量は、370mAh/gである。この結果は、薄片(フレーク)上の標準的な天然グラファイト並びに、球形の人造グラファイト(MCMB28-25)から作られる電極によって得られる結果に比較することができる。
【0080】
実例2−天然のグラファイトからジェット・ミルの技法を使って、ポテト形状の変形グラファイト粒子を作ること。
素材として用いる天然グラファイトは、粒子の最初の大きさが375μm、純度が98%で、薄片(フレーク)形状のものである。このグラファイトの固有の表面積は、およそ1m2/gである。粒子は、最初、ジェット・ミル技法によって20μmの大きさにまで小さくされ次いでアトリション技法によって10μmの大きさの球形にまで小さくされる。
【0081】
実例3−ジェット・ミルの技法を使って、NH4Fの存在下に於いて、ポテト形状の変形グラファイト粒子を作ること。
平均の大きさ(d50)が350μmで純度が98.5%のブラジル・グラファイト20kgと重量パーセントにして10%のNH4Fとを反応装置の中で混合する。
この混合物を均質化するために、ジャー・ミル法を、直径50mmのセラミック球を用いて24時間実施する。この混合物は、ジェット・ミルを用いて粉砕されるが、この処理を行っている間、ジェット・ミル中の気圧は、100〜125psiの範囲で変動する。
処理が終わると、粒子の平均の大きさは、10〜20μmの範囲に減少せしめられており、粒子はポテト形状となっている。
第12/15図は、MEB(走査電子顕微鏡)による写真で、12μmの粒子がポテト形状となっていることがよくわかる。
第13図もMEBによる写真であるが、基底部の割合(fb)が減って端縁部の割合(fe)が増し、従って底面のグラファイト面が端縁のグラファイト面に鋸歯上につながっている様子がよくわかる(数学モデル1の検証)。
【0082】
実例4−アトリションの技法を使って、且つNaClの存在下に於いて、ポテト形状の変形グラファイト粒子を作ること。
平均の大きさ(d50)が350μmで純度が98.5%のブラジル・グラファイト20kgとm重量パーセントにして10%のNaClとを反応装置の中で混合する。
直径50mmのセラミック球を用いてジャー・ミル法を24時間実施し、混合物を均質化する。
この混合物は、ジェット・ミルを用いて粉砕される。混合物をジェット・ミル室中に入れておく時間は、45分である。
処理を行っている間、ジェット・ミル中の気圧は、100〜125psiの範囲で変動する。
この処理の間に、粒子の大きさは10〜20μmの範囲に減少せしめられ、粒子の形状は、ポテト形となる。
第14/15図のMEB写真には、12μmの粒子の形状がポテト形と成っている様子がよく示されている。
第15/15図のMEB写真には、基底部の割合(fb)が減少し、端縁部の割合(fe)が増大して、その結果、粒子が丸くなっている様子がよく示されている(数学モデル1の検証)。
【0083】
実例5−セルロースの炭酸塩の層でくるんだグラファイトを主成分とする粒子群を作ること。
容積200mlの容器中で、粒子の平均の大きさ(d50)が20μmでプリズム形のブラジル・グラファイト2gと10%のアセチルセルロースとの混合物を用意する。
この混合物をアセトン中に溶かし、ボール・ミル法を用いて(この混合物を)均質化する。混合物は、窒素を含む大気下に於いて400℃で3時間処理される。
こうして得られた粒子は、ポテト形状となっている。
この処理の利点の一つは、表面に出来る炭化された層が純化剤の役目を果たしているということである。何故なら、この層は、表面に存在するすべての不純物を覆うからである。
【0084】
実例6−炭化したPE-PEO-グリコールの層でくるんだグラファイトを主成分とする粒子群を作ること。
200mlの反応装置の中で、粒子の平均の大きさ(d50)が20μmでプリズム形のブラジル・グラファイト2gと、10%の化合物PE-PEO-グリコールとの混合物を用意する。
この混合物をアセトン中に溶かしてから、ボール・ミル技法を用いて均質化する。この混合物は、窒素を含む大気下で400℃で3時間処理される。
こうして得られた粒子は、ポテト形となっている。
この処理の利点の一つは、表面に出来る炭化層が純化剤の役目を果たしているということである。何故なら、この層は、表面に存在するすべての不純物を覆うからである。
【0085】
実例7−銀の層でくるんだグラファイトを主成分とする粒子群を作ること。
粒子の平均の大きさ(d50)が20μm、プリズム形で純度が98.5%のブラジル・グラファイトの表面が、重量パーセントにして10%の銀の沈着物によって覆い尽くされる。
沈着物は、Edwards Coating SystemモデルE306Aタイプの蒸発装置を用いた蒸発によって作られる。
可逆容量は387mAh/gで、天然グラファイトの理論的容量より15mA/g大きい。
固有の表面積が小さくなっているので、不動態化の薄膜も少なくなっている。このように、本発明の枠内では、この不動態化の層が基底部分上(有機物:ICLbasal)と端縁部分上(無機物;ICLedge)に形成されることが明らかにされている。他方、ICLbasalは、ICLedgeを40倍も上回っている。このことは、基底部の割合を減らすことが、不可逆容量と気体の発散を減らすために、非常に重要であることを示しており、バッテリの安全性と関連している。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】モデル1による粒子群の変形で、fbを減少させfeを増大させて、プリズム形の粒子を球形の粒子へと変形する。この変形はいくつもの技法によって実現することができる。いくつもの技法というのは、即ち、ジェット・ミル、アトリション(摩擦摩鉱)、ボール・ミル、ハンマ・ミル、CFミルもしくはアトマイザ(噴霧器)ミル、遊星歯車装置付きミキサー、混成器を用いる技法である。モデル1による粒子群の変形は、feとfbを一定に保ちながら、プリズム形の粒子を球形の粒子へと変形する。この変形は、金属、ポリマー、あるいは炭素で粒子を被覆することによって実施される。
【図2】モデル2による粒子群の変形で、fbを減少させfeを増大させて、円柱状の粒子を球形の粒子へと変形する。この変形はいくつもの技法によって実施することができる。いくつもの技法というのは、即ち、ジェット・ミル、アトリション、ボール・ミル、ハンマ・ミル、CFミルもしくはアトマイザ・ミル、遊星歯車装置付きミキサー、混成器を用いる技法である。 モデル2による粒子群の変形で、feとfbを一定に保ちながら、プリズム形の粒子を球形の粒子へと変形する。この変形は、金属、ポリマー、或いは炭素で粒子を被覆することによって実施される。
【図3】モデル1によるプリズム形の人造もしくは天然のグラファイトの変形で、基底部分fbを減少させ端縁部分feを増大させて、プリズム形のグラファイトを球形のグラファイトに変形するのであるが、不純物や可溶性の作用物質の存在下に置いて変形する。可溶性の作用物質は、NaClやNH4Fといったタイプのもので、できれば球形のものが好ましい。この変形はいくつもの技法によって実施することができる。いくつもの技法というのは、即ち、ジェット・ミル、アトリション、ボール・ミル、ハンマ・ミル、CFミルもしくはアトマイザ・ミル、遊星歯車装置付きミキサー、混成器を用いる技法である。
【図4】モデル2による炭素の繊維、円柱状の人造若しくは天然のグラファイトの変形で、基底部分fbを減少させ端縁部分feを増大させて、円柱状のグラファイトを球形のグラファイトに変形するのであるが、不純物や可溶性の作用物質の存在下に於いて変形する。可溶性の作用物質は、NaClやNH4Fといったタイプのもので、できれば球形のものが好ましい。この円形はいくつもの技法によって実施することができる。いくつもの技法というのは、即ち、ジェット・ミル、アトリション、ボール・ミル、ハンマ・ミル、CFミルもしくはアトマイザ・ミル、遊星歯車装置付きミキサー、混成器を用いる技法である。
【図5】モデル1によるプリズム形の人造もしくは天然のグラファイトの変形で、基底部分fbを減少させ端縁部分feを増大させて、プリズム形のグラファイトを球形のグラファイトに変形するのであるが、不純物や不溶性の作用物質の存在下に於いて変形する。不溶性の作用物質は、SiO2やTiO2、セラミック、堅い化合物といったタイプのもので、できれば球形のものが好ましい。この変形はいくつもの技法によって実施することができる。いくつもの技法というのは、即ち、ジェット・ミル、アトリション、ボール・ミル、ハンマ・ミル、CFミルもしくはアトマイザ・ミル、遊星歯車装置付きミキサー、混成器を用いる技法である。
【図6】モデル2による円柱状の人造もしくは天然のグラファイトの変形で、基底部分fbを減少させ端縁部分feを増大させて、円柱状のグラファイトを球形のグラファイトに変形するのであるが、不純物や不溶性の作用物質の存在下に於いて変形する。不溶性の作用物質は、SiO2やTiO2、セラミック、堅い化合物といったタイプのもので、できれば球形のものが好ましい。この変形はいくつもの技法によって実施することができる。いくつもの技法というのは、即ち、ジェット・ミル、アトリション、ボール・ミル、ハンマ・ミル、CFミルもしくはアトマイザ・ミル、遊星歯車装置付きミキサー、混成器を用いる技法である。
【図7】2μmと40μmという二つのタイプの粒子についてのプリズム形状モデルと円柱状モデルとの間の比較モデル化。
【図8】アトリション(摩擦摩鉱)を行う前のグラファイト粒子。
【図9】アトリションを行った後のグラファイト粒子。
【図10】アトリションを行った後の天然のグラファイトNG20の場合の電気化学的な成果。
【図11】市販されている球形のグラファイトMCMBの場合の電気化学的な成果。
【図12】本発明に従って実例3に於いて得られた12μmの粒子のポテト形状を示す走査電子顕微鏡で撮影した写真。
【図13】やはりMEB(走査電子顕微鏡)で撮影した写真で、数学モデル1に適合するグラファイト粒子の場合の基底部及び端縁部の割合の推移を示している。
【図14】MEBで撮影した写真で、実例3に於いて得られた12μmのグラファイト粒子のポテト形状を示している。
【図15】実例3に於いて得られた粒子を、MEBで撮った写真で、減少した基底部の割合(fb)と増大した割合(fe)を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトから得た変形グラファイトの粒子群であって、これらの粒子群の構造面のパラメータは、次の関係式f1e=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/2T)(Y−1)〕と、f2e=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/T)(Y−1)〕との少なくとも一つにあてはまっているものとするが、これらの関係式において、Yは、1以上の実数を表し、Bは粒子の長さをμm単位で表した数値、Tは、粒子の厚みをμm単位で表した数値とし、該粒子は、ポテト形状で、次の二つの特徴の少なくとも一つを備えているものとし、
二つの特徴とは、即ち:
−密度表示が0.3〜1.5の範囲であること;および、
−分布比D90/D10が2〜5の範囲内におさまっていて、ポテト形状の粒子の大きさが1μm〜50μmの範囲であること、の二つとした変形グラファイトの粒子群。
【請求項2】
グラファイトから得られた変形グラファイトの粒子群で、これらの粒子はポテト形状で、その内部構造中に不純物を含み、表面においても、一つ以上の不純物を、2wt%〜4wt%の範囲の割合で含み、
さらに次の三つの特徴の少なくとも一つを備えているものとし、三つの特徴とは即ち:
−密度が0.3〜1.5の範囲であること;
−比D90/D10が、2.2〜4.2の範囲内におさまっていて、粒子の大きさが2〜30μmの範囲内であること;および
−粒子の表面にはNaCl及び/またはNH4Fの粒子が付けられているものとした変形グラファイトの粒子群。
【請求項3】
請求項2に記載の変形グラファイトの粒子であって、TGA分析の結果、重量損に関わる初期温度の数値が、560〜660℃の範囲内のものであることを特徴とするグラファイト粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の変形グラファイト粒子群において、該不純物が、次の化学元素群の中の少なくとも一つの化学元素であるグラファイトの粒子群であって、化学元素群とは、即ち、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、Sb(アンチモン)、As(ヒ素)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Pb(鉛)、Co(コバルト)、Ca(カルシウム)、Al(アルミニウム)、Ge(ゲルマニウム)、Si(ケイ素)、Ba(バリウム)、Be(ベリリウム)、Cd(カドミウム)、Ce(セリウム)、Co(コバルト)、Dy(ジスプロシウム)、Eu(ユーロピウム)、La(ランタン)、Li(リチウム)、Mo(モリブデン)、Nd(ネオジウム)、Ni(ニッケル)、Pb(鉛)、及びPr(プラセオジム)であることを特徴とする変形グラファイトの粒子群。
【請求項5】
請求項4に記載の変形グラファイト粒子群において、粒子群中に存在する不純物の重量パーセンテージが、変形グラファイト粒子の総量に対して表した場合、そして焼灰法によって計測した場合、1〜10%の範囲内に収まっているグラファイト粒子群。
【請求項6】
請求項5に記載の変形グラファイト粒子群であって、表面に不純物がないグラファイト粒子群。
【請求項7】
グラファイトから得た変形グラファイトの粒子群であって、これらの粒子はポテト形状をしていて、次の化合物群、すなわち、SiO2、MgO、セラミック、或いはこれらの混合物のうちの少なくとも一つを5〜20%の割合で含んでおり、これらの化合物は、変形グラファイト粒子に対して物理的な力によって付けられ、該粒子は次の三つの特徴の少なくとも一つを備えているものとし、三つの特徴とは即ち:
−密度が0.3〜1.5の範囲内におさまっていること;
−比D90/D10が、大きさが1〜50μmの範囲の粒子の場合には2〜5の範囲におさまっていること;及び
−粒子の表面には、NaCl及び/又はNH4Fの粒子が付けてあること、の三つであるものとした変形グラファイトの粒子群。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の変形グラファイト粒子群において、面と面との間の距離d002が3.3〜3.4オングストロームの範囲におさまっており、及び/又は、BET比表面積が0.5g/m2〜50g/m2の範囲におさまっているグラファイト粒子群。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の変形グラファイト粒子群であって、循環過程における安定性が500サイクルを上廻っているグラファイト粒子群。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の変形グラファイト粒子を使用して得られる、燃料電池、電気化学式発電機用の吸湿剤。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の変形グラファイト粒子を使用して得られる、燃料電池、電気化学式発電機用の酸素捕集剤。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載のグラファイト粒子を用いて、PVDF、PTFEタイプの結合剤を用いて作られる充電できる電気化学式発電機用の負の電極。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記されているようなグラファイト粒子を主成分とする電極の製法であって、充電のできる発電機用の電極の製法で、少なくとも次の段階を含み、次の段階とはすなわち、
a−少なくともひとつの結合剤を、溶剤の中に、1g/ccを上回る濃度で溶かして粘り気のある溶液(A)を得るようにする段階と、
b−上の段階で得た粘り気のある溶液は、粉末―結合剤組成物の混合物(B)であるが、この溶液を集電器タイプの装置上に注ぎ広げ、このように処理された集電器が電極となるようにする段階と、
c−段階bで作られた電極を、赤外線ランプか発熱要素を用いて乾燥させる段階であるものとした製法。
【請求項14】
充電のできる発電機用でグラファイトを主成分とする電極を請求項13に従って作る製法であって、この製法には、請求項20に記されている段階が段階c以外はすべてそのまま含まれているが、段階cのところでは、電極を乾かすために、赤外線ランプによる技法と発熱要素による技法との二つの乾燥技法が並行して使用されている製法。
【請求項15】
金属の沈着物及び/又は炭酸の沈着物によって覆われたグラファイトのプリズム形粒子からなる、変形グラファイトを主成分とする粒子群であって、これらの粒子の構造面のパラメータは次の二つの関係式にあてはまっており、すなわち、
f1e=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/2T)(Y−1)〕および
f2e=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/T)(Y−1)〕で、
これらの関係式において、Yは1以上の実数を表し、Bは粒子の長さを表し、Tは粒子の厚みを表しているものとし、これらの粒子はポテト形状をしていて、次の二つの特徴のうちの少なくとも一つを備えているものとし、二つの特徴とはすなわち、:
−密度が0.3〜1.5の範囲内におさまっている、という特徴と;
−比D90/D10が、2〜5の範囲内におさまっており、粒子の大きさは1〜50μmの範囲内である、という特徴の二つとした粒子群。
【請求項16】
請求項15に記載のグラファイトを主成分とする粒子群であって、粒子の大きさが1〜50μmの範囲である粒子群。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のグラファイトを主成分とする粒子群であって、球形度が80%以上である粒子群。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれかに記載のグラファイトを主成分とする粒子群において、金属被覆及び/又は炭素被覆の平均の厚みが、50nm〜2μmの範囲内であるようにした粒子群。
【請求項19】
グラファイトの核を被覆した、グラファイトを主成分とするポテト形状の粒子であって、該核はグラファイトを主成分とする粒子全体に対して重量パーセントにして少なくとも90%を占めており、残りの10%以下は、Ag(銀)、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)及びCu(銅)より成る金属グループから選んだ金属少なくとも一つ、及び/又は炭素、及び/又はプリズム形か繊維形の炭素ポリマーより成っているものとする粒子。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれかに記載のグラファイトを主成分とするポテト形状の粒子の製法であって、
プリズム形の粒子を素材とし、これらの粒子の基底部の割合(fb)と、端縁部の割合(fe)とを一定に保ちつつ、グラファイトの表面を、金属の沈着物か炭酸の沈着物によってそっくりくるんで、80%の球形度が得られるようにする製法。
【請求項21】
表面に不純物を含むグラファイト粒子の表面を、自然な環境の下で純化する方法であって、不純物の存在するところで、該粒子を炭素によって、及び/又は炭素ポリマーによって、ポテト形状となるまで被覆することによって純化する方法。
【請求項22】
請求項1による粒子群を使用した電気化学式の電池であって、
基底部の割合(fb)を制御して、ポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下において粒子を使用し、
その場合、電解質中におけるPC濃度が、体積パーセンテージにして、電解質混合体の50%を下回っていることを特徴とする電気化学式の電池。
【請求項23】
請求項1による粒子群を使用した安全バッテリであって、
基底部の割合(fb)を制御して、ポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下において粒子を使用できるようにし、
その場合、電解質中におけるPC濃度が、体積パーセンテージにして、電解質混合体の50%を下回っていることを特徴とする安全バッテリ。
【請求項24】
請求項15によるグラファイトを主成分とする粒子群を使用した電気化学式の電池であって、
基底部の割合(fb)を一定に保って、ポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下において粒子を使用できるようにし、
その場合、電解質中におけるPC濃度が、体積パーセンテージにして、電解質混合体の100%を下回っていることを特徴とする電気化学式の電池。
【請求項25】
請求項15によるグラファイトを主成分とする粒子群を使用した安全バッテリであって、
基底部の割合(fb)を一定に保って、ポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下において粒子を使用できるようにし、
その場合、電解質中におけるPC濃度が、体積パーセンテージにして、電解質混合体の100%を下回っていることを特徴とする安全バッテリ。
【請求項1】
グラファイトから得た変形グラファイトの粒子群であって、これらの粒子群の構造面のパラメータは、次の関係式f1e=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/2T)(Y−1)〕と、f2e=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/T)(Y−1)〕との少なくとも一つにあてはまっているものとするが、これらの関係式において、Yは、1以上の実数を表し、Bは粒子の長さをμm単位で表した数値、Tは、粒子の厚みをμm単位で表した数値とし、該粒子は、ポテト形状で、次の二つの特徴の少なくとも一つを備えているものとし、
二つの特徴とは、即ち:
−密度表示が0.3〜1.5の範囲であること;および、
−分布比D90/D10が2〜5の範囲内におさまっていて、ポテト形状の粒子の大きさが1μm〜50μmの範囲であること、の二つとした変形グラファイトの粒子群。
【請求項2】
グラファイトから得られた変形グラファイトの粒子群で、これらの粒子はポテト形状で、その内部構造中に不純物を含み、表面においても、一つ以上の不純物を、2wt%〜4wt%の範囲の割合で含み、
さらに次の三つの特徴の少なくとも一つを備えているものとし、三つの特徴とは即ち:
−密度が0.3〜1.5の範囲であること;
−比D90/D10が、2.2〜4.2の範囲内におさまっていて、粒子の大きさが2〜30μmの範囲内であること;および
−粒子の表面にはNaCl及び/またはNH4Fの粒子が付けられているものとした変形グラファイトの粒子群。
【請求項3】
請求項2に記載の変形グラファイトの粒子であって、TGA分析の結果、重量損に関わる初期温度の数値が、560〜660℃の範囲内のものであることを特徴とするグラファイト粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の変形グラファイト粒子群において、該不純物が、次の化学元素群の中の少なくとも一つの化学元素であるグラファイトの粒子群であって、化学元素群とは、即ち、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、Sb(アンチモン)、As(ヒ素)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Pb(鉛)、Co(コバルト)、Ca(カルシウム)、Al(アルミニウム)、Ge(ゲルマニウム)、Si(ケイ素)、Ba(バリウム)、Be(ベリリウム)、Cd(カドミウム)、Ce(セリウム)、Co(コバルト)、Dy(ジスプロシウム)、Eu(ユーロピウム)、La(ランタン)、Li(リチウム)、Mo(モリブデン)、Nd(ネオジウム)、Ni(ニッケル)、Pb(鉛)、及びPr(プラセオジム)であることを特徴とする変形グラファイトの粒子群。
【請求項5】
請求項4に記載の変形グラファイト粒子群において、粒子群中に存在する不純物の重量パーセンテージが、変形グラファイト粒子の総量に対して表した場合、そして焼灰法によって計測した場合、1〜10%の範囲内に収まっているグラファイト粒子群。
【請求項6】
請求項5に記載の変形グラファイト粒子群であって、表面に不純物がないグラファイト粒子群。
【請求項7】
グラファイトから得た変形グラファイトの粒子群であって、これらの粒子はポテト形状をしていて、次の化合物群、すなわち、SiO2、MgO、セラミック、或いはこれらの混合物のうちの少なくとも一つを5〜20%の割合で含んでおり、これらの化合物は、変形グラファイト粒子に対して物理的な力によって付けられ、該粒子は次の三つの特徴の少なくとも一つを備えているものとし、三つの特徴とは即ち:
−密度が0.3〜1.5の範囲内におさまっていること;
−比D90/D10が、大きさが1〜50μmの範囲の粒子の場合には2〜5の範囲におさまっていること;及び
−粒子の表面には、NaCl及び/又はNH4Fの粒子が付けてあること、の三つであるものとした変形グラファイトの粒子群。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の変形グラファイト粒子群において、面と面との間の距離d002が3.3〜3.4オングストロームの範囲におさまっており、及び/又は、BET比表面積が0.5g/m2〜50g/m2の範囲におさまっているグラファイト粒子群。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の変形グラファイト粒子群であって、循環過程における安定性が500サイクルを上廻っているグラファイト粒子群。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の変形グラファイト粒子を使用して得られる、燃料電池、電気化学式発電機用の吸湿剤。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の変形グラファイト粒子を使用して得られる、燃料電池、電気化学式発電機用の酸素捕集剤。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載のグラファイト粒子を用いて、PVDF、PTFEタイプの結合剤を用いて作られる充電できる電気化学式発電機用の負の電極。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記されているようなグラファイト粒子を主成分とする電極の製法であって、充電のできる発電機用の電極の製法で、少なくとも次の段階を含み、次の段階とはすなわち、
a−少なくともひとつの結合剤を、溶剤の中に、1g/ccを上回る濃度で溶かして粘り気のある溶液(A)を得るようにする段階と、
b−上の段階で得た粘り気のある溶液は、粉末―結合剤組成物の混合物(B)であるが、この溶液を集電器タイプの装置上に注ぎ広げ、このように処理された集電器が電極となるようにする段階と、
c−段階bで作られた電極を、赤外線ランプか発熱要素を用いて乾燥させる段階であるものとした製法。
【請求項14】
充電のできる発電機用でグラファイトを主成分とする電極を請求項13に従って作る製法であって、この製法には、請求項20に記されている段階が段階c以外はすべてそのまま含まれているが、段階cのところでは、電極を乾かすために、赤外線ランプによる技法と発熱要素による技法との二つの乾燥技法が並行して使用されている製法。
【請求項15】
金属の沈着物及び/又は炭酸の沈着物によって覆われたグラファイトのプリズム形粒子からなる、変形グラファイトを主成分とする粒子群であって、これらの粒子の構造面のパラメータは次の二つの関係式にあてはまっており、すなわち、
f1e=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/2T)(Y−1)〕および
f2e=〔Y+1〕/〔(Y+1)+(B/T)(Y−1)〕で、
これらの関係式において、Yは1以上の実数を表し、Bは粒子の長さを表し、Tは粒子の厚みを表しているものとし、これらの粒子はポテト形状をしていて、次の二つの特徴のうちの少なくとも一つを備えているものとし、二つの特徴とはすなわち、:
−密度が0.3〜1.5の範囲内におさまっている、という特徴と;
−比D90/D10が、2〜5の範囲内におさまっており、粒子の大きさは1〜50μmの範囲内である、という特徴の二つとした粒子群。
【請求項16】
請求項15に記載のグラファイトを主成分とする粒子群であって、粒子の大きさが1〜50μmの範囲である粒子群。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のグラファイトを主成分とする粒子群であって、球形度が80%以上である粒子群。
【請求項18】
請求項15〜17のいずれかに記載のグラファイトを主成分とする粒子群において、金属被覆及び/又は炭素被覆の平均の厚みが、50nm〜2μmの範囲内であるようにした粒子群。
【請求項19】
グラファイトの核を被覆した、グラファイトを主成分とするポテト形状の粒子であって、該核はグラファイトを主成分とする粒子全体に対して重量パーセントにして少なくとも90%を占めており、残りの10%以下は、Ag(銀)、Si(ケイ素)、Al(アルミニウム)及びCu(銅)より成る金属グループから選んだ金属少なくとも一つ、及び/又は炭素、及び/又はプリズム形か繊維形の炭素ポリマーより成っているものとする粒子。
【請求項20】
請求項15〜19のいずれかに記載のグラファイトを主成分とするポテト形状の粒子の製法であって、
プリズム形の粒子を素材とし、これらの粒子の基底部の割合(fb)と、端縁部の割合(fe)とを一定に保ちつつ、グラファイトの表面を、金属の沈着物か炭酸の沈着物によってそっくりくるんで、80%の球形度が得られるようにする製法。
【請求項21】
表面に不純物を含むグラファイト粒子の表面を、自然な環境の下で純化する方法であって、不純物の存在するところで、該粒子を炭素によって、及び/又は炭素ポリマーによって、ポテト形状となるまで被覆することによって純化する方法。
【請求項22】
請求項1による粒子群を使用した電気化学式の電池であって、
基底部の割合(fb)を制御して、ポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下において粒子を使用し、
その場合、電解質中におけるPC濃度が、体積パーセンテージにして、電解質混合体の50%を下回っていることを特徴とする電気化学式の電池。
【請求項23】
請求項1による粒子群を使用した安全バッテリであって、
基底部の割合(fb)を制御して、ポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下において粒子を使用できるようにし、
その場合、電解質中におけるPC濃度が、体積パーセンテージにして、電解質混合体の50%を下回っていることを特徴とする安全バッテリ。
【請求項24】
請求項15によるグラファイトを主成分とする粒子群を使用した電気化学式の電池であって、
基底部の割合(fb)を一定に保って、ポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下において粒子を使用できるようにし、
その場合、電解質中におけるPC濃度が、体積パーセンテージにして、電解質混合体の100%を下回っていることを特徴とする電気化学式の電池。
【請求項25】
請求項15によるグラファイトを主成分とする粒子群を使用した安全バッテリであって、
基底部の割合(fb)を一定に保って、ポリエチレン・カルボナート(PC)を主成分とする電解質の存在下において粒子を使用できるようにし、
その場合、電解質中におけるPC濃度が、体積パーセンテージにして、電解質混合体の100%を下回っていることを特徴とする安全バッテリ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
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【図12】
【図13】
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【図15】
【公開番号】特開2009−184915(P2009−184915A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83796(P2009−83796)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【分割の表示】特願2002−537668(P2002−537668)の分割
【原出願日】平成13年10月24日(2001.10.24)
【出願人】(591117930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【分割の表示】特願2002−537668(P2002−537668)の分割
【原出願日】平成13年10月24日(2001.10.24)
【出願人】(591117930)
【Fターム(参考)】
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