説明

ポリアミン−金属キレーター接合体

多くの金属キレーターは、細胞膜の通過を困難とする極性官能基または荷電官能基を有する。本発明のポリアミン/金属キレーター接合体は、金属キレーターである第一の部分とポリアミンである第二の部分からなり、該ポリアミン部分が生理学的pHで正に荷電できる三つ以上の窒素原子を含む化合物である。スペルミン/L1接合体は、L1210細胞に非複合L1キレーターよりも数百倍蓄積することが示された。本発明は、金属キレーターである第一の部分とポリアミンである第二の部分からなる化合物において、該ポリアミン部分が生理学的pHで正に荷電できる三つ以上の窒素原子を含む化合物、またはその塩、溶媒和物または水和物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国仮特許出願番号第60/501.341号(2003年9月9日出願)の利益を主張する。この出願の全体的教示は、本明細書中に参考として援用される。
(政府支援)
本発明は、米国国立衛生研究所の補助金R01−DK49108により全てまたは部分的に支援を受けた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
金属イオンは、荷電中和、電圧ゲート、シグナル、酸素輸送、電子輸送、構造安定化と調節および酵素活性への寄与を含む一連の生物学的機能を有する。しかし、金属イオンの活性は金属の場所と量の両方に依存する。過剰な金属が存在するとき、または金属が望まれない場所に存在する場合、これは典型的には金属過多(overload)と称される状態をもたらす。
【0003】
金属過多状態は遺伝子欠陥(例えば、金属の過剰な吸収または過剰な蓄積)、食事または中毒から生じうる。金属過多状態は、被験体が規則的な輸血を受ける場合のある種の血症(例えば、サラセミアから生じる血症)を有する被験体にも起こる。これらの輸血からの鉄は時間とともに被験体に蓄積し、やがて生物学的損傷を引き起こす。
【0004】
金属過多状態において最も大きな懸念となる金属は、鉄、クロムおよび銅等の酸化還元活性金属である。これらの酸化還元活性金属は、過酸化物やチオールとの反応等により被験体にフリーラジカル損傷を起こしうる。鉄(II)および過酸化水素の反応は、ヒドロキシルラジカルを作るFenton反応として知られている。ヒドロキシルラジカルは非常に反応性があり、多くの有機分子から水素原子を容易に引き抜き、このことが顕著な生物学的損傷を導きうる。したがって、そのような金属過多状態は治療する必要がある。
【0005】
金属欠乏は一般的に食事手段により治療することができるが、金属過多状態の治療はさらに困難である。金属過多疾患の治療はしばしば、過剰な金属を除去するために被験体をキレート化剤により処置することをともなう。キレート化剤は、金属に結合する一つ以上の官能基を有する。キレート官能基は極性があり、しばしば荷電しているために、キレート化剤は細胞に容易には取り込まれない。その結果、治療量のキレート化剤を細胞内で達成することが困難となることがあり、細胞から除去される金属は望まれるよりも少ない。これらの因子はキレート治療の成功を制限する。
【0006】
また、金属キレーターは、がん等の金属過多に直接関連しない状態に利用性を有する。これらのさらなる状態の金属キレーターによる治療の成功も、細胞に輸送されるキレーターの一般的に低い濃度によって制限される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、キレート治療および金属キレーターによる他の治療の有効性を高めるためにキレート化剤の細胞への取り込みを増加させる方法を見出す必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
金属キレート化剤をポリアミンと反応させることにより、金属キレーターである第一の部分とポリアミンである第二の部分からなる化合物をもたらすことによって金属キレート化剤の取り込みを著しく増加させることができることが今回発見された。一例において、1−(12−アミノ−4,9−ジアザドデシル)−2−メチル−3−ヒドロキシ−4−(1H)−ピリジドンがスペルミンと3−O−ベンジルマルトールから合成された。この化合物は、鉄(III)と3:1接合体を形成することが示され、L1210白血病細胞のポリアミン輸送体によって、濃度勾配に対して1900倍取り込まれた。また、この化合物は、L1210ネズミ白血病細胞の増殖を抑制するのにその親リガンドである1,2−ジメチル−3−ヒドロキシピリジン−4−オンよりも少なくとも230倍以上の活性があったように、抗がん剤としても有効である。スペルミンとポリ(ヒドロキサム酸)からなる化合物も、ポリアミン輸送体に取り込まれ、白血病細胞の増殖を抑制するのに有効であった。
【0009】
本発明は、金属キレーターである第一の部分とポリアミンである第二の部分からなる化合物において、該ポリアミン部分が生理学的pHで正に荷電できる三つ以上の窒素原子を含む化合物、またはその塩、溶媒和物または水和物に関する。そのような化合物は、本出願において、「接合体」と称される。本発明の特定の実施態様において、金属キレーターは鉄キレーターである。
【0010】
一実施態様において、接合体は、下記構造式(I):
【0011】
【化21】

(式中、
a、bおよびcはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
Rは、−Hまたは置換または非置換のアルキル、アシルまたはアリール基であり、好ましくは−Hまたは置換または非置換のアルキルまたはアリール基であり;
R’は、−Hまたは置換または非置換のアシル基であり;および
R’’は、−Hまたは置換または非置換のアルキル基である。)により表わされるか、またはその塩、溶媒和物または水和物である。
【0012】
別の実施態様において、接合体は、下記構造式(II):
【0013】
【化22】

(式中、
d、eおよびfはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
は、−Hまたは置換または非置換のアルキル、アシルまたはアリール基であり、好ましくは−Hまたは置換または非置換のアルキルまたはアリール基であり;
は、−H、または置換または非置換のアルキル基、または一つ以上の酸素原子により中断された置換または非置換のヒドロカルビル基であり;および
各Rは独立して−Hまたは置換または非置換のアシル基である。)により表わされるか、またはその塩、溶媒和物または水和物である。
【0014】
さらに別の実施態様において、接合体は下記構造式(III):
【0015】
【化23】

(式中、
g、hおよびiはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
Lは結合基であり;
は、−Hまたは置換または非置換のアルキル、アシルまたはアリール基であり、好ましくは−Hまたは置換または非置換のアルキルまたはアリール基であり;および
各Rは独立して−Hまたは置換または非置換のアシル基である。)により表わされるか、またはその塩、溶媒和物または水和物である。
【0016】
さらなる実施態様において、接合体は下記構造式(VII):
【0017】
【化24】

(式中、
jおよびkはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
mは1〜12の整数であり;
は、−Hまたは置換または非置換のアルキル、アシルまたはアリール基であり、好ましくは−Hまたは置換または非置換のアルキルまたはアリール基であり;
は、−Hまたは置換または非置換のアシル基であり;
は、−Hまたは置換または非置換のアルキルまたはアリール基であり;
は、−Hまたは置換または非置換のアルキル基であり;および
およびRは、それぞれ独立して−Hまたは置換または非置換のアルキル基である。)により表わされるか、またはその塩、溶媒和物または水和物である。
【0018】
また、本発明は、薬学的に許容される担体または希釈剤およびここに開示の接合体の一つからなる薬学的組成物を含む。
【0019】
本発明の化合物および薬学的組成物は、該化合物および薬学的組成物を被験体に投与することからなる、被験体のがんまたは腫瘍を治療する方法に用いることができる。
【0020】
また、本発明の化合物および薬学的組成物は、該化合物および薬学的組成物を被験体に投与することからなる、金属過多状態に苦しむ被験体を治療する方法に用いることができる。
【0021】
さらに、本発明の化合物および薬学的組成物は、酸化ストレスの治療を必要とする被験体に、該薬学的組成物を被験体に投与することからなる、酸化ストレスを減少させる方法に用いることができる。
【0022】
本発明の別の特徴は、ポリアミンを、任意に結合基を経て金属キレーターに共有結合して、ポリアミン部分と金属キレーター部分を有する接合体において該ポリアミン部分が生理学的pHで正に荷電できる三つ以上の窒素原子を含む接合体を形成し、細胞を接合体またはその塩、溶媒和物または水和物に接触させることをからなる金属キレーターの細胞への取り込みを高める方法である。
【0023】
また、本発明は、薬学的に許容される担体または希釈剤と、金属キレーターである第一の部分とポリアミンである第二の部分からなり、該ポリアミン部分が生理学的pHで正に荷電できる三つ以上の窒素原子を含む化合物の金属塩とからなる薬学的組成物を被験体に投与し、そして器官、組織、腫瘍またはそれらの組合せを画像化またはスキャンニングすることからなる、被験体中の一つ以上の器官、組織、腫瘍またはそれらの組合せを画像化または検査する方法を含む。
【0024】
本発明の別の実施態様は、薬学的に許容される担体または希釈剤と、金属キレーターである第一の部分とポリアミンである第二の部分からなり、該ポリアミン部分が生理学的pHで正に荷電できる三つ以上の窒素原子を含む化合物の放射性金属塩とからなる薬学的組成物を被験体に投与することからなる、治療を必要とする被験体中の腫瘍を治療するか、または細胞機能を抑制する方法である。
【0025】
本発明は、ここに開示された化合物または薬学的組成物の医学治療での使用を含む。また、本発明は、ここに開示された化合物または薬学的組成物の、ここに開示された状態の治療に用いられる医薬製造における使用も含む。
【0026】
本発明のポリアミン/金属キレーター接合体は分子の金属キレート化性質を維持しながら、金属キレーターの細胞への取り込みを非常に向上させる利点を有する。これは、さらに高い濃度の金属キレーターが細胞中に存在することを可能とする。この増加した細胞内濃度の金属キレーターは、悪性細胞の増殖の阻止等、キレーターの治療剤としての有効性を高める。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、金属キレーター部分とポリアミン部分からなる複合化合物およびその塩、溶媒和物および水和物に関する。該ポリアミンは、典型的には、生理学的pHで正に荷電できる三つ以上の窒素原子を含む。好ましい実施態様において、該ポリアミン部分は、pHが約7.0〜約7.6である場合に正に荷電できる三つ以上の窒素原子を含む。
【0028】
金属キレーターは、ここでは、中央金属に配位結合することにより環状構造を有する接合体を形成することのできる二つ以上のドナー原子を有する分子と定義する。キレーターが全体的に正電荷または中性電荷、典型的には中性電荷を有するように、ドナー原子は加水分解可能な官能基により任意に保護することができる。金属キレーター中の負に電荷した基は加水分解可能な官能基により保護されることで未電荷の保護されたキレート化基を作ることが特に好ましい。
【0029】
金属キレーター錯体は熱力学的に安定で、このことは、金属の配位圏から非キレート性リガンド(例えば、溶媒、特に水)が放出することから生じるエントロピーによるものと考えられる。ここで用いられるキレーターは大員環も包含するものとする。したがって、本発明の接合体中の金属キレーター部分は、金属に結合することのできる二つ以上の原子または二つ以上の官能基を有する。本発明の金属キレーター部分は、例えば、二座、三座、四座、五座、六座、七座、八座、九座または十座であることができる。一実施態様において、キレート化される金属は、鉄(II)または鉄(III)であり、金属キレーター部分は五座以下である。別の実施態様において、キレート化される金属は、鉄(II)または鉄(III)であり、金属キレーター部分は六座以上である。
【0030】
金属キレーターは一つ以上の金属、典型的には遷移金属、主なグループの金属、重金属、ランタニドまたはアクチニドに結合することができる。アルミニウムおよびガリウムが主なグループの金属である。遷移金属として、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、パラジウム、銀、白金および金が挙げられる。重金属として、カドミウム、鉛、ビスマス、水銀、ルテニウム、ロジウム、インジウム、錫、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、タリウムおよびポロニウムが挙げられる。ランタニドとして、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムおよびルテチウムが挙げられる。アクチニドとして、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウムおよびカリホルニウムが挙げられる。
【0031】
ここに開示の接合体の金属キレーター部分は、鉄(II)または鉄(III)等の金属イオンとのその生成定数により特徴付けることができる。例えば、金属キレーター部分は、約25℃、約pH7および約0.1Mモル強度で少なくとも約1012の全体的な生成定数を有することができる。好ましくは、金属キレーター部分はこれらの条件下で少なくとも約1025の全体的な生成定数を有する。さらに好ましくは、全体的な生成定数は、これらの条件下で少なくとも約1035である。金属/金属キレーターの対は、約25℃、約pH7および約0.1Mモル強度で少なくとも約1030、1040、1045または1050の全体的な生成定数を有するように選択できる。
【0032】
また、金属キレーター部分は、一つまたはいくつかの(例えば、二、三の)特別な金属イオンに対するそれらの選択性に基づいて選択することもできる。好ましくは、選択的な金属キレーター部分は、他の金属イオンよりも標的金属イオンに対して少なくとも約一桁大きい全体的な生成定数を有する。さらに好ましくは、選択的な金属キレーター部分は、他の金属イオンよりも標的金属イオンに対して少なくとも約三桁大きい全体的な生成定数を有する。
【0033】
本発明の金属キレーター部分は、典型的には二つ以上の求核性または負に荷電した官能基を有する。金属に対する(適当な官能基を有する)適当なキレーターはハード〜ソフト酸−塩基理論の原理を用いて選択することができる。一般的に、「ハード」金属イオンは「ハード」塩基とさらに安定な接合体を形成し、「ソフト」金属イオンは「ソフト」塩基とさらに安定な接合体を形成する。ハードな金属イオンは高荷電および/または小さいイオン半径により特徴付けられ、該イオンとしてMn2+、Al3+、Ga3+、Tl3+、Ln3+、Ti2+、Yb2+、Sm2+、Eu2+、Cr3+、Co3+およびFe3+が挙げられる。ソフトな金属イオンは、低電荷および/または大きいイオン半径を持つ傾向があり、該イオンとして、Cu、Ag、Au、Tl、Hg、Cd2+、Pd2+、Pt2+、Pt4+およびHg2+が挙げられる。中間硬度の金属イオンとして、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Pb2+、Sn2+、Tc2+およびRu2+が挙げられる。ハード塩基(リガンド)は、比較的小さいイオン半径と高い電気陰性度(例えば、電子密度を容易に供与しない)により特徴付けられ、該塩基として、ヒドロキシル、ヒドロキサメート、エーテル、リン酸エステル、アミンおよびカルボキシレート基が挙げられる。ソフト塩基は低い電気陰性度を有し、該塩基として、チオール、チオエーテル、ホスフィンおよびイソニトリルが挙げられる。イミダゾール、アリールアミンおよびピリジンは中間軟度の塩基である。
【0034】
鉄キレーター部分は、鉄(II)、鉄(III)またはその両方をキレート化することのできる部分をいう。適当な鉄キレーター部分は、鉄に結合することのできる二つ以上の原子または二つ以上の官能基を含む。適当な鉄キレーター部分として、ヒドロキサメート、カテコール、ポルフィリン、アミン、ヒドロキシル、カルボキシレート、チオール、イミダゾール、フェノールまたはジチオカルバメート基およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、鉄キレーター部分は、二種類以上の官能基を含んでよい。
【0035】
普通の鉄キレーターとして、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロ酢酸(NTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)およびN,N’−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−二酢酸(HBED)が挙げられる。
【0036】
鉄キレーターの一般的な種類は、微生物により作られる多様な種類の鉄キレーターであるシデロホアである。シデロホアの多くはヒドロキサメートまたはカテコール部分を有する。シデロホアの例として、エンテロバクチン、パラバクチン、アグロバクチン、フルビアバクチン、ブルニバクチン、ビブリオバクチン、フェリオキサミンB、フェリオキサミンE、アエロバクチンおよびフェリクロムが挙げられる。
【0037】
シデロホアの一タイプはデスフェリチオシン(desferrithiocin)およびその類似体および誘導体である。デスフェリチオシンの構造を以下に示す:
【0038】
【化25】

他のシデロホアの例は下記構造式(V)と(VI)により表わされる:
【0039】
【化26】

式中、
は−OH、−OR14または−N(OH)R15であり;
は−H、−CHまたは2〜6炭素のアルキル基であり;
は−H、−CHまたは2〜6炭素のアルキル基であり;
10は−H、−CHまたは2〜6炭素のアルキル基であり、またはRとRは一緒に二重結合を形成し;
11は−Hまたはアシルであり;
12は−H、−OH、−O−アシル、−O−アルキルまたは−L−Xであり;
13は−H、−OH、アルキル、ハロゲン、−L−Yであるか、または−C=C−C=C−であり、R18とともに以下の縮合環系を形成する:
【0040】
【化27】

14はアルキルまたは任意に置換されたベンジルであり;
15は−H、アルキル、任意に置換されたベンジル、
【0041】
【化28】

であり;
16は−H、アルキルまたは任意に置換されたベンジルであり;
18は−H、−OH、−O−アシル、−O−アルキルまたは利用可能な電子であり;
Aは−N−、−CH−または−C(OH)−であり;
Bは−S−、−O−、−NR16−、−CH−または−CHS−であり;
Lは、一つ以上の酸素原子により任意に中断される3〜約20炭素原子のアルキレン基であり;
aは2または3であり;
mは1〜8の整数であり;
nは0、1または2であり;
pは0、1または2であり;
Xは、
【0042】
【化29】

であり;
Yは、
【0043】
【化30】

であり;
Zは、
【0044】
【化31】

であり;
(上記式で示されている各置換基は既に定義されている。)または該シデロホアは構造式(V)または(VI)により表わされる化合物の薬学的に許容される塩または該化合物の立体異性体または立体異性体の混合物である。
【0045】
デスフェリチオシンの好ましい類似体は、4−ヒドロキシ−デスアザデスフェリチオシンとしても知られている2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4−(S)−メチルチアゾリン−4−カルボン酸である。
【0046】
さらなる金属キレーターが、「Iron Chelators and Therapeutic Uses,」 by R.J. Bergeron, J.S. McManis, W.R. Weimar, J. Wiegand and E. Eiler−McManis in Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery, Sixth Edition, Volume 3: Cardiovascular Agents and Endocrines, edited by D.J. Abraham, John Wiley & Sons, Inc., 2003(これらの内容は文献の援用により本文中に編入される)に記載されている。米国特許第6,083,966号、同第6,521,652号、同第6,525,080号および同第6,559,315号(これらの内容は文献の援用により本文中に編入される)も本発明に使用される金属キレーターを提供する。さらなる金属キレーターが2003年9月9日出願のPCT出願第PCT/US03/28304号(これらの内容は文献の援用により本文中に編入される)に開示されている。
【0047】
本発明の鉄キレート化部分は切断可能な基により保護することができる。アミン類用およびヒドロキシル基用の特に適切な保護基はアシル基である。
【0048】
金属キレーター部分とポリアミン部分が結合して接合体分子を形成する手段は重大とは考えられない。しかし、結合の手段は金属キレーター部分のキレート化能力に有害な影響を与えるべきではないし、またポリアミン部分の電荷を三カチオン未満に減少させるべきでないことを理解されたい。下記の構造で図示するように、ポリアミン部分を、末端(第一)窒素により直接的または間接的に金属キレーター部分に結合させるのが好ましい。
【0049】
【化32】

本発明の一実施態様において、ポリアミン部分と金属キレーター部分は下記のように共有結合により直接連結させる。
【0050】
ポリアミン―金属キレーター
これらの接合体は、例えば、実施例1に記載のように、金属キレーターをポリアミンに直接反応させて接合体を形成させることにより形成する。
【0051】
別の実施態様において、ポリアミン部分と金属キレーター部分は下記のように結合基により間接的に結合する。
【0052】
ポリアミン−結合基−金属キレーター
例えば、これらの接合体はポリアミンまたは金属キレーターのいずれかを結合基前駆体と反応させて中間生成物を形成し、続いて中間生成物を金属キレーターまたはポリアミンと反応させることにより形成される。
【0053】
ポリアミン部分と金属キレーター部分は、切断可能な官能基により直接的または間接的に結合させることができる。切断可能な官能基は親のポリアミン、金属キレーターおよび/または結合基前駆体に由来するものでよい。
【0054】
ポリアミン部分は、天然のポリアミンに由来するものでよい。そのような天然のポリアミンはフィードバック機構によりポリアミン合成を遅らせるかもしれないが、そのようなポリアミンはポリアミン代謝を実質的に変えることはないであろう。そのような天然のポリアミンとして、スペルミン、スペルミジン、ノルスペルミン、ノルスペルミジン、ホモスペルミンおよびホモスペルミジンが挙げられる。スペルミン、スペルミジン、ノルスペルミンおよびノルスペルミジンは哺乳類細胞に存在する。ポリアミン部分は、天然には存在しないポリアミンに由来するものであってもよい。これらの非天然のポリアミンはポリアミン代謝酵素(例えば、ポリアミンオキシダーゼ)により容易には処理されないので、それらポリアミンは一般的にポリアミン代謝を変えるだろう。そのような非天然のポリアミンとして、末端がアルキル化されたスペルミン、スペルミジン、ノルスペルミン、ノルスペルミジン、ホモスペルミンおよびホモスペルミジン等の末端がアルキル化されたポリアミン類が挙げられる。末端がアルキル化されたポリアミンは、好ましくは末端窒素原子がモノアルキル化されている。アルキル化ポリアミンを用いる場合、ポリアミンの非アルキル化窒素原子は、ポリアミン部分を、接合体分子残りの部分(すなわち、第一アミン)に結合させることが望ましい。
【0055】
本発明の使用に適するポリアミンの一群は下記構造式(IV)により表わされる。
【0056】
【化33】

〜Rは独立して水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキルであるか、またはアルキル鎖が一つ以上のエーテル性酸素原子により中断された前記の基である。
【0057】
、N、NおよびNは生理学的pHでプロトン化されうる窒素原子である。
【0058】
jおよびkは独立して1〜4の整数である。
【0059】
A、BおよびCは独立して窒素原子間の架橋基である。これらの架橋基は、たとえば環内にポリアミンの窒素原子の一つを導入する1〜8炭素原子、シクロアルカン、シクロアルケンまたは複素環基を有するアルキレン基であってよい。好ましくは、ヒトまたは非ヒト動物への投与の際にポリアミンが標的細胞による取り込みを受けられるように、架橋基は窒素原子間の距離を維持する。標的細胞による取り込みの際に、正に荷電した窒素原子間の静電的相互作用により、ポリアミンが、標的細胞中の細胞内天然のポリアミンと実質的に同一の生物学的対アニオンに競合的に結合するように、架橋基は窒素原子間の距離を保つこともできる。
【0060】
本発明に使用されるさらなる適当なポリアミンは米国特許第5,091,576号、同第5,342,945号、同第5,455,277号、同第5,866,613号、同第5,886,051号、同第6,184,232号および同第6,342,534号(これらの内容は文献の援用により本文中に編入される)に見ることができる。
【0061】
下記構造式(I)で表わされる本発明の接合体について、RおよびR’は好ましくはそれぞれ−Hであり、R’’は好ましくはメチルである。
【0062】
【化34】

RおよびR’がそれぞれ−Hであり、R’’がメチルである一実施態様において、a、bおよびcはそれぞれ独立して3または4である。好ましい実施態様において、R’’はメチルであり、a、bおよびcはそれぞれ3である。別の好ましい実施態様において、R’’はメチルであり、aは3であり、bは4であり、cは3である。
【0063】
構造式(II)により表わされる本発明の接合体について、Rおよび各Rが−Hであることが好ましい。
【0064】
【化35】

および各Rが−Hである一実施態様において、d、eおよびfはそれぞれ3または4である。一つの好ましい実施態様において、d、eおよびfはそれぞれ3である。別の好ましい実施態様において、dは3であり、eは4であり、fは3である。別の実施態様において、Rは好ましくは、一つ以上の酸素原子が間に入った非置換のヒドロカルビル基、例えば、3,6,9−トリオキサデシル基である。特に好ましい実施態様において、d、eおよびfは上記数値の組の一つを有し、Rは3,6,9−トリオサデシル基である。
【0065】
下記構造式(III)で表わされる本発明の接合体について、Rおよび各Rは好ましくは−Hである。
【0066】
【化36】

および各Rが−Hである一実施態様において、g、hおよびiはそれぞれ独立して3または4である。一つの好ましい実施態様において、g、hおよびiはそれぞれ3である。別の好ましい実施態様において、gは3であり、hは4であり、iは3である。別の実施態様において、Lは好ましくは置換または非置換のアルキレン基、さらに好ましくは非置換のアルキレン基、例えばジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレンまたはオクタメチレン基である。本発明の特に好ましい実施態様において、g、hおよびiは上記数値の組の一つを有し、Lはペンタメチレン基である。
【0067】
下記構造式(VII)により表わされる本発明の接合体について、Rは好ましくは−Hである。
【0068】
【化37】

が−Hである一実施態様において、jおよびkは独立して3または4であり、mは3〜6の整数である。一つの好ましい実施態様において、jおよびkはともに3であり、mは4である。Rが−Hであり、j、kおよびmが上で開示された数値を有する別の実施態様において、Rは−Hまたは非置換のアシル基であり、好ましくは−Hまたはアセチル基であり、Rは−Hまたは非置換のアルキル基、好ましくはエチル基であり、Rは非置換のアルキル基、好ましくはメチル基であり、RおよびRはそれぞれ−Hまたは非置換のアルキル基(例えば、メチル)であり、好ましくは−Hである。特に好ましい実施態様において、jおよびkはともに3であり、mは4であり、R、R、RおよびRは−Hであり、Rはエチル基であり、Rはメチル基である。
【0069】
がんまたは腫瘍を治療する方法のために、一実施態様において、鉄キレーター部分は、鉄中心に配位結合する5個以下の原子を有する。したがって、がんまたは腫瘍を治療するために用いられる鉄キレーター部分は典型的には二座、三座、四座または五座である。別の実施態様において、鉄キレーター部分は鉄中心(例えば、六座および八座部分)に配位結合する6個以上の原子を有する。
【0070】
本発明の接合体は、ここに開示する治療法において一種類以上の他の活性物質とともに投与することができる。本発明の接合体とともに投与できる活性物質の一群はポリアミン合成阻害剤である。ポリアミン合成阻害剤として、オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤、S−アデノシルメチオニン阻害剤、スペルミジンシンターゼ阻害剤およびスペルミンシンターゼ阻害剤が挙げられる。そのようなポリアミン合成阻害剤は本発明の化合物および薬学的組成物の細胞による取り込みを高めるだろう。一般的に、本発明の化合物または薬学的組成物を共に投与することは、例えば治療の有効性を向上させ、治療が病気の症状を低減する速度を増加させ、および/または本発明の化合物または薬学的組成物に関連する副作用を減少させよう。
【0071】
オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤として、アルファ−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)、アルファ−モノフルオロメチルオルニチン、(2R,5R)−デルタ−メチルアセチレニックプトレシン、(E)−アルファ−モノフルオロメチルデヒドロオルニチンおよびそのエステル(例えば、メチルエステル)、3−アミノオキシ−1−プロパンアミンおよび3−(アミノオキシ)−2−フルオロ−1−プロパンアミンが挙げられる。
【0072】
S−アデノシルメチオニン阻害剤として、S−(5’−デオキシ−5−アデノシル)メチルチオエチルヒドロキシルアミン、5’−デオキシ−5’−[(2−アミノオキシエチル)メチルアミノ]アデノシン、5’−デオキシ−5’−[(3−ヒドラジノプロピル)メチルアミノ]アデノシン、5’−{[(Z)−4−アミノ−2−ブテニル]メチルアミノ}−5’−デオキシアデノシン、S−(5’−デオキシ−5’−アデノシル)−1−アミノ−4−メチルチオ−2−シクロペンテン、メチルグリオキサールビス(グアニルヒドラゾン)、エチルグリオキサールビス(グアニルヒドラゾン)、ジエチルグリオキサールビス(グアニルヒドラゾン)、[2,2−ビピリジン]−6,6−ジカルボキシイミダミドおよび4−アミジノインダン−1−オン2’−アミジノヒドラゾンが挙げられる。
【0073】
スペルミジンシンターゼ阻害剤として、S−アデノシル−1,8−ジアミノ−3−チオオクタン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミンおよびtrans−4−メチルシクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0074】
スペルミンシンターゼ阻害剤として、S−アデノシル−1,12−ジアミノ−3−チオ−9−アザドデカン、N−(n−ブチル)−1,3−ジアミノプロパンおよびN−(3−アミノプロピル)シクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0075】
本発明の接合体はさらなる抗腫瘍剤とともに投与することもできる。抗腫瘍剤の具体例として、代謝拮抗物質(例えば、アザシチジン、シタラビン、フルオロウラシル、メルカプトプリン、メトトレキセート、チオグアニン、クラドリビン、フルダラビン、アロプリノール)、ブレオマイシンペプチド抗生物質、ポドフィリンアルカロイド類(例えば、エトポシド、テニポシド)、植物アルカロイド類(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、ドセタキセル)、アルキル化剤(例えば、ブスルファン、シクロホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、チオテパ、クロラムブシル、トリエチレンメラミン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン、ダヌオルビシン、ドキソルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン)、シス−プラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、ダカルバジン、アルトレタミン、ニトロソウレア類(例えば、ビス(クロロエチル)ニトソロウレア(カルムスチン)、1−(2−クロロエチル)−3−シクロヘキシル−1−ニトロソウレア(ロムスチン)、1−(2−クロロエチル)−3−(4−メチルシクロヘキシル)−1−ニトロソウレア(セムスチン))、ホルモン剤(例えば、テストステロンおよびフルオキシメステロン等のアンドロゲン、フルタミド等の抗アンドロゲン、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール等のエストロゲン、タモキシフェン等の抗エストロゲン、ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロンおよびメゲストロール等のプロゲスチン、ヒドロコルチゾンおよびプレドニゾン等のアドレノコルチコスレロイド、ゴセレリンおよびロイプロリド等のゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト、アミノグルテチミドおよびアナストロゾール等のアロマターゼ阻害剤、オクトレオチド等のペプチドホルモン阻害剤)および多様な抗腫瘍剤(例えば、アムサクリン、アスパラギナーゼ、ヒドロキシウレア、ミトキサントロン、ミトタン、レチン酸誘導体、骨髄成長因子、アミホスチン)が挙げられる。
【0076】
本発明により治療することのできる腫瘍またはがんとして、白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、マクログロブリン血症、真正多血症、肺腫瘍、頭および首の腫瘍、脳腫瘍(神経芽腫)、子宮内膜腫瘍、卵巣腫瘍、子宮頸部腫瘍、乳腫瘍、絨毛がん、精巣腫瘍、前立腺腫瘍、Wilms腫瘍、甲状腺腫瘍、副腎腫瘍、胃腫瘍、膵臓腫瘍、結腸腫瘍、カルチノイド、インスリノーマ、骨腫瘍(骨原性肉腫)、雑多な肉腫および皮膚がん(黒色腫)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
金属過多状態に苦しむ被験体は、過剰に存在する単一金属または複数の金属に特異的および/または強固に結合する接合体によって処置することができる。例えば、鉄過多状態は好ましくは鉄キレーター部分を有する接合体により処置する。さらに好ましくは、この適用のための鉄キレーター部分は六座以上である。
【0078】
鉄過多状態または疾患は全身性の鉄過多または局所的な鉄過多により特徴付けることができる。全身性鉄過多状態は、通常は多組織に過剰な鉄または生物全身にわたる過剰な鉄をともなう。全身性鉄過多状態は、被験体による鉄の過剰な摂取、例えば食事中の鉄または輸血からの鉄の過剰な保存および/または保持から生じうる。一つの全身性鉄過多状態は一次血色素症であり、これは典型的に遺伝子疾患である。第二の全身性鉄過多状態は二次血色素症であり、これは典型的には多回数の輸血を受けた結果である。輸血はしばしばサラミセアまたは鎌状赤血球貧血に苦しむ被験体に必要とされる。食事中の鉄過多の一つのタイプはバンツーシデローシスと称され、これは自家製醸造ビールの高い鉄含量に関連する。
【0079】
局所的な鉄過多状態において、過剰な鉄は一種類または二〜三種類の細胞タイプまたは組織または特定の器官に限定される。もしくは、過剰な鉄に関連する徴候は、心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓または脳等の別々の器官に限定される。局所的な鉄過多は、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ニューロフェリチノパシー、筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症等の神経学的または神経変性疾患を導きうると考えられる。
【0080】
ウイルソン病は、本発明の接合体、好ましくは銅に特異的および/または強固に結合する金属キレーター部分を有する接合体を用いて治療することのできる銅過多状態である。
【0081】
酸化ストレスの減少を必要とする被験体は、還元剤の減少レベル、反応性酸素種の増加レベル、抗酸化剤酵素(例えば、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ、Mnスーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオンレダクターゼ、グルタチオンパーオキシダーゼ、チオレドキシン、チオレドキシンパーオキシダーゼ、DT−ジアホラーゼ)の変異または減少レベル、金属結合タンパク質(例えば、トランスフェリン、フェリチン、セルロプラスミン、アルブミン、メタロチオネイン)の変異またはその減少レベル、スーパーオキシドを作ることができる変異または過活性酵素(例えば、酸化窒素シンターゼ、NADPHオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、NADHオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、ジヒドロオロテートデヒドロゲナーゼ、チトクロムcオキシダーゼ)および照射傷害等の状態の一つ以上を有しうる。還元剤、反応性酸素種およびタンパク質の増加または減少レベルは、健康なヒトに典型的に見られるそのような物質の量を基準にして決定する。
【0082】
酸化ストレスの減少を必要とする被験体は、虚血性出来事から苦しみうる。虚血性出来事は、動脈が狭くなったり、壊れたりする等によって血液供給の機械的な傷害のために局所的な貧血が存在する場合に起こりうる。狭心症や心筋梗塞を引き起こしうる心筋虚血は、通常、冠状動脈病による血液の心筋へ不十分な循環から起こる。24時間以内に消散する脳中の虚血性出来事は一時的な虚血性発作と称される。さらに長く続く虚血性出来事である脳卒中は非可逆的な脳の損傷をともない、ここで徴候の種類と程度は、循環が損なわれている脳組織の位置と程度に依存する。虚血性出来事に苦しむ危険性のある患者は、典型的にはアテローム性動脈硬化症、血管の他の疾患、血液が凝固する増加傾向、または心臓病に苦しむ。本発明の化合物はこれらの疾患を治療するために用いることができる。
【0083】
酸化ストレスの減少を必要とする患者は炎症に苦しむことがありうる。炎症は、傷害または物理的、化学的または生物的因子により引き起こされる異常な刺激に応答して血管または隣接する組織に起こる細胞学的および化学的反応の複合からなる基本的な病理学的プロセスである。炎症疾患は、長期間続く(すなわち、慢性炎症)か、または組織を損傷する炎症により特徴付けられる。そのような炎症疾患は、呼吸器、関節、腸および軟組織等の多様な組織に影響を与えうる。本発明の化合物はこれらの疾患を治療するために用いることができる。
【0084】
金属キレーター部分(例えば、鉄キレーター部分)は、接合体の鉄キレーター部分が金属のすべての配位部位に結合できるように、酸化ストレスを減少させるのに使用するために選択することができる。例えば、鉄キレーター部分は、鉄に結合するために利用可能な六つ以上の原子(すなわち、六座以上)を有することができるか、または利用可能な配位部位のすべてを満たす安定な接合体を形成することができる。
【0085】
理論に縛られるわけではないが、接合体は、多様な機構により酸化ストレスを減少させる能力を引き出すと考えられる。一機構において、接合体は金属、特に酸化還元活性金属(例えば、銅、鉄)に結合し、金属の配位部位のすべてを満たす。金属配位部位のすべてが満たされている場合、酸化および/または還元剤は、金属と相互作用し、酸化還元サイクルを引き起こす減少能力を有すると考えられる。別の機構において、接合体の金属キレーター部分は、酸化還元サイクルをあまり受けないように金属を特別な酸化状態で安定化する。さらに別の機構において、金属キレーター部分自体は抗酸化活性(例えば、フリーラジカル捕捉、反応性酸素または窒素種の捕捉)を有する。デスフェリチオシンおよびその誘導体および類似体は、米国出願第10/227,158号および同第60/405,463号(ともに2002年8月22日出願)および米国出願第10/645,348号(2003年8月21日出願)(これらの内容は文献の援用により本文中に編入される)に記載されているように、固有の抗酸化活性を有することが知られている。
【0086】
一つ以上の器官、組織、腫瘍またはそれらの組み合わせの画像化または検査は、本発明の接合体の金属塩を被験体に投与した後に実施することができる。画像化または検査の方法は、X線法(CSスキャンおよび慣用のX線像等)、磁気画像化(磁気共鳴画像化、電子常磁性共鳴画像化)および放射性化学法等の診断に用いられる多様な機器技術を含むものである。
【0087】
典型的には、画像化または検査に用いられる金属塩は造影剤として役立つ。造影剤として役立てることのできる金属として、ガドリニウム、鉄、マンガン、クロム、ジスプロシウム、テクネチウム、スカンジウム、バリウム、アルミニウムおよびホルミウムが挙げられる。放射性金属塩は、241Am、51Cr、60Co、57Co、58Co、64Cu、153Gd、67Ga、198Au、113mIn、111In、59Fe、55Fe、197Hg、203Hg、99mTc、201Tlおよび169Yb等の同位元素から作ることができる。
【0088】
本発明の接合体の放射性金属塩は、腫瘍の治療または細胞機能の阻害をするために、それを必要とする被験体においても有用である。この方法により治療することのできる腫瘍は悪性または良性であってよい。治療することのできる腫瘍の具体的な種類は上記の通りである。細胞機能を阻害することは、好ましくは特定の領域における細胞の増殖を遅らせるか、またはそれらの活性を阻害するためにそれら細胞を損傷するか、または破壊することを伴う。例えば、甲状腺または膵臓島細胞は、作られる甲状腺ホルモンまたはインシュリンの量を減少させるために損傷させることができる。同様に、本発明を用いて、ある細胞または組織によるホルモンまたは他の生物学的分子の生産または放出を阻害または妨げることができると考えられる。本発明に使用される放射性金属同位元素の例として、60Co、67Cu、90Sr、90Y、106Ru、111In、153Sm、186Re、188Re、192Ir、198Au、210Pb、210Bi、212Pb、212Biおよび241Amが挙げられる。
【0089】
ここに記載の接合体の塩および薬学的に許容される塩も本発明に含まれる。十分に酸性の官能基、十分に塩基性の官能基またはその両方を有するここに開示の接合体は多くの有機または無機の塩基および無機および有機の酸のいずれかと反応して塩を形成することができる。
【0090】
酸性基は、アルカリおよびアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム)とともに、一種類以上の上記金属と塩を形成することができる。さらに、酸性基はアミンとともに塩を形成することができる。本発明の一部実施態様において、金属塩等の接合体を(例えば被験体に)供給するのが有利である。例えば、接合体の鉄(鉄(II)または鉄(III))塩を被験体に投与することができる。もしくは、接合体を、実質的に金属を含まない(例えば、鉄を含まない)塩として供給する。金属を含まない塩は、典型的にはアルカリおよびアルカリ土類金属塩を包含することを意図するものではない。金属を含まない塩は、例えば金属過多状態に苦しむ被験体に有利に投与される。
【0091】
塩基性基を有する化合物から酸付加塩を形成するために普通用いられる酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等の無機酸およびp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモフェニル−スルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸等の有機酸である。そのような塩の具体例として、水酸化物、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオエート、ヘキシン−1,6−ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ガンマ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩等が挙げられる。
【0092】
ここに開示される接合体はそれらの水和物、例えば半水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物等として、および溶媒和物として調製することができる。
【0093】
「被験体」とは、典型的にはヒトであるが、治療を必要する動物、例えば伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ等)、農場動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ等)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット等)であってもよい。
【0094】
本発明の接合体またはその薬学的に許容される塩は適当な経路により投与することができる。投与の適当な経路として、経口、腹腔内、皮下、筋内、皮内、経皮、直腸内、舌下、静脈内、頬または吸入が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
経口投与に適する形態として、当分野で認識されている操作により調製される錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハー、チューインガム等が挙げられる。そのような治療に有用な組成物または調製物中の有効化合物の量は適当な投与量が得られるようなものとする。
【0096】
本発明の薬学的組成物は、化合物または混合物を経口、非経口、静脈内、皮内、筋内または皮下、直腸内、吸入または頬投与、または経皮により投与可能とするのに適当な薬学的に許容される担体または希釈剤を含むことが好ましい。有効成分は、慣用の薬学的に許容される担体または希釈剤に混合または配合してよい。投与のいかなる態様、有効物質に関して不活性な慣用のベヒクルまたは担体を本発明の薬学的組成物の調製と投与に用いてよいことは当業者により理解されよう。そのような方法、ベヒクルおよび担体を例示するものは、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed.(1990)(その内容は文献の援用により本文中に編入される)に記載されている。
【0097】
被験体に使用される本発明の処方物は、本物質を一種類以上の許容される担体または希釈剤および任意に他の治療成分とともに含む。担体および希釈剤は、処方物の他の成分に対して適合性があり、かつその受容者に対して有害ではないという意味で「許容される」ものでなければならない。処方物は、便利には単位投与形で提示され、薬学の分野でよく知られたいずれかの方法により調製することができる。すべての方法は、本物質を、一種類以上の補助成分を構成する担体または希釈剤と混合する工程を有する。一般的に、処方物は、本物質を担体と均一かつ十分混合にし、次に、必要に応じ、その生成物をその単位投与量に分割することにより調製する。
【0098】
非経口投与に適する処方物は、便利には、好ましくは受容者の血液に等張の本物質の滅菌水性調製物を含む。適当な担体溶液として、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、水、ラクテートリンガーまたはデキストロース(水中5%)が挙げられる。そのような配合物は、便利には、本物質を水と混合して溶液または懸濁液を作り、これを滅菌容器に充填し、細菌汚染に対して密閉することで調製することができる。好ましくは、滅菌材料は、最終滅菌の必要がないように無菌製造条件下に用いる。
【0099】
そのような処方物は、メチルヒドロキシベンゾエート、クロロクレゾール、メタクレゾール、フェノールおよび塩化ベンズアルコニウム等の保存剤を含むことのできる一種類以上のさらなる成分を任意に含むことができる。そのような物質は、処方物が多投与量容器で提示される場合に特別な価値を有する。
【0100】
さらに、緩衝液を処方物に適当なpH値を提供するために含ませることができる。適当な緩衝液材料として、リン酸ナトリウムおよび酢酸塩が挙げられる。塩化ナトリウムまたはグリセリンを用いて処方物を血液に対して等張にすることができる。
【0101】
所望であれば、処方物は、窒素等の不活性雰囲気下に容器に充填することができ、便利には、例えば密閉アンプル中の単位投与量または多投与量形で提示することができる。
【0102】
当業者は、本発明の方法にしたがって被験体に投与される本発明の組成物の多様な成分の量が上記の因子に依存することを知っているであろう。
【0103】
本発明の組成物は、経口または頬投与により投与される場合、シロップ、錠剤、カプセルおよび薬用ドロップとして処方できる。シロップ処方物は一般的に、香料または着色剤を含む、エタノール、グリセリンまたは水等の液体担体中の本化合物または塩の懸濁液または溶液からなる。組成物が錠剤の形にある場合、固体調製物を調製するために普通用いられる一種類以上の医薬担体を用いることができる。そのような担体の例として、ステアリン酸マグネシウム、デンプン、ラクトースおよびスクロースが挙げられる。組成物がカプセルの形にある場合、慣用のカプセル化の使用が一般的に適切であり、例えば、上記の担体を硬ゼラチンカプセルシェルに用いる。組成物が軟ゼラチンシェルカプセルの形にある場合、分散物または懸濁物を調製するために慣用的に用いられる医薬担体、例えば、水性ガム、セルロース類、シリケート類またはオイル類が考えられ、軟ゼラチンカプセルシェルに配合する。
【0104】
典型的な座薬処方物として、このように投与された場合に活性のある接合体またはその薬学的に許容される塩を、結合剤および/または潤滑剤、例えば、ポリマーグリコール、ゼラチン、ココアバターまたは他の低融点植物ワックスまたは脂肪とともに含む。
【0105】
典型的な経皮処方物として、慣用の水性または非水性ベヒクル、例えば、クリーム、軟膏、ローションまたはペーストが挙げられ、または薬が加えられたプラスチック、パッチまたはメンブレンの形態を有する。
【0106】
吸入用の典型的な組成物は、ジクロロジフルオロメタンまたはトリクロロフルオロメタン等の慣用の噴射剤を用いるエアゾールの形で投与することのできる溶液、懸濁液または乳濁液の形態を有する。
【0107】
本発明の接合体または薬学的組成物の治療効果のある量は、それぞれの場合で、幾つかの因子、例えば治療される被験体の健康、年齢、性別、大きさおよび状態、投与の意図する態様および所望の投与形物を取り入れる被験体の能力にとりわけ依存する。有効物質の治療効果量は、治療される状態に所望の効果を有するのに十分な量である。例えば、がんまたは腫瘍を治療する方法において、所望の効果は、がん転移を含むがんまたは腫瘍の進展の部分的または全体的な阻害、遅延または防止;がん転移を含むがんまたは腫瘍の再発の阻害、遅延または防止;または哺乳類、例えばヒトにおけるがんまたは腫瘍の発症または発達の防止(化学的予防)である。金属過多状態に苦しむ被験体を治療する方法において、有効物質の治療効果のある量は、例えば、被験体中の金属の負担を減少させるか、金属過多に関連する症状を減少させるか、または金属過多に関連する症状の発症および/または激しさを防止、阻害または遅延するのに十分な量である。酸化ストレスの治療を必要とする被験体において酸化ストレスを低減する方法では、有効物質の治療効果のある量は、例えば酸化ストレスに関連した症状を減少させるか、または酸化ストレスに関連する症状の発症および/または激しさを防止、阻害または遅延するのに十分な量である。
【0108】
被験体に投与される本発明の化合物の典型的な量は、(被験体が70kgとして)1日につき約500マイクログラム〜約5グラムである。特に、その量は約1ミリグラム〜1グラムの範囲、例えば、約50ミリグラム〜約500ミリグラム等の約5ミリグラム〜約700ミリグラムの範囲であってよい。
【0109】
アルキル基は分子中の飽和炭化水素であり、分子中でその炭素原子の一つからの単一の共有結合により他の一つの基に結合している。アルキル基は環式または非環式かつ分鎖または未分鎖であってよい。典型的には、アルキル基は1〜約6炭素原子または1〜約4炭素原子を有する。低級アルキル基は1〜4炭素原子を有し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルが挙げられる。
【0110】
アルキレン基は分子中の飽和炭化水素であり、分子中で単一の共有結合により他の二つの基に結合している。アルキレン基は環式または非環式かつ分鎖または未分鎖であってよい。典型的には、アルキレン基は1〜約6炭素原子または1〜約4炭素原子を有する。
【0111】
アシル基は、式−C(O)R(式中、Rは置換または非置換アルキル基である)により表わされる。アシル基は、化合物から酵素、酸または塩基により加水分解または切断させることができる。アシル基の一つ以上の水素原子は下記のように置換することができる。典型的には、アシル基は、本発明の化合物が鉄(III)等の金属イオンに結合する前に除去される。
【0112】
ヒドロカルビル基は一価または二価の炭化水素である。ヒドロカルビル基は置換または非置換、環式または非環式、分鎖または未分鎖、飽和または未飽和であってよい。上記のように、ヒドロカルビル基はエーテル結合を形成するために一つ以上の酸素原子により任意に中断されてよい。典型的には、ヒドロカルビル基は1〜約12炭素原子、1〜約6炭素原子または1〜約4炭素原子を含む。
【0113】
アルキル基、アルキレン基、ヒドロカルビル基およびアシル基の適当な置換基として、−OH、−O(R’)、−O−CO−(R’)、−NO、−COOH、=O、−NH、−NH(R’)、−N(R’)、−COO(R’)、−CONH、−CONH(R’)、−CON(R’)およびグアニジンが挙げられる。各R’は独立してアルキル基またはアリール基である。これらの基はさらにアリール基によって置換してよい(例えば、アルキル基は芳香族基により置換されてアリールアルキル基を形成できる)。置換されたアルキル、アルキレン、ヒドロカルビルまたはアシル基は二つ以上の置換基を有することができる。
【0114】
アリール基として、フェニル、p−トリル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントラシルおよび2−アントラシル等の炭素環式芳香族基が挙げられる。アリール基として、さらにN−イミダゾリル、2−イミダゾール、2−チエニル、3−チエニル、2−フラニル、3−フラニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、2−ピラニル、3−ピラニル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−ピラジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリルおよび5−オキサゾリル等の複素芳香族基が挙げられる。
【0115】
アリール基として、炭素環式、脂環式または芳香族環またはヘテロアリール環が一つ以上の他のヘテロアリールまたはアリール環に縮合した縮合多環式芳香族環系も挙げられる。具体例として、2−ベンゾチエニル、3−ベンゾチエニル、2−ベンゾフラニル、3−ベンゾフラニル、2−インドリル、3−インドリル、2−キノリニル、3−キノリニル、2−ベンゾチアゾール、2−ベンゾオキサゾール、2−ベンゾイミダゾール、2−キノリニル、3−キノリニル、1−イソキノリニル、3−キノリニル、1−イソインドリルおよび3−イソインドリルが挙げられる。
【0116】
切断可能な官能基は化学的または酵素的に切断することができる。好ましくは、切断可能な官能基は加水分解性である。切断可能な官能基の具体例として、エステル、アミド、カルバメート、カルボネート、ジチオカルバメート、ホスフェートエステルおよびホスフィトエステル基が挙げられる。
【0117】
ここで用いられる結合基は接合体の金属キレーター部分を同接合体のポリアミン部分に結合させる。結合基は典型的には二つの部分を互いに結合させるために各末端に適当な官能基を有する。結合基が金属キレーター部分の金属キレート化活性またはポリアミン部分の窒素原子のpKに悪影響を与えないようにそれら結合基を選択する。結合基は、接合体から金属キレーター部分およびポリアミン部分のいずれかまたは両方の放出を可能とするように、一つ以上の切断可能な官能基を任意に含むことができる。好ましくは、いずれかの部分または両部分の放出が細胞内で起こる。適当な結合基として、上記のようにヒドロカルビル基が挙げられる。好ましくは、結合基はペンタメチレン基等のアルキレン基である。
【0118】
金属キレーター部分がポリアミン部分に共有結合で直接結合している場合、接合体には結合基は存在しない。そのような接合体の例を実施例1に示す。ポリアミン部分と金属キレーター部分とが直接結合する接合体の一種類において、ポリアミン部分は金属キレーター部分から単一の単位として切断することはできない(ただし、アミノプロピル断片は個々に切断できる)。
【実施例】
【0119】
ここで、本発明を下記実施例により詳細に示すが、本発明は決して実施例により限定されるものではない。
【0120】
(実施例1)
(1−(12−アミノ−4,9−ジアザドデシル)−2−メチル−3−ヒドロキシ−4(1H)−ピリジノン四塩酸(化合物3)の合成)
合成を模式的に図1に示す。
【0121】
試薬はAldrich Chemical Co.(Milwaukee, WI)から購入し、Fisher Optimaグレードの溶媒を日常的に用いた。Selecto Scientific, Inc.(Suwanee, GA)からのシリカゲル32〜63をフラッシュカラムクロマトグラフィーに用い、セファデックスLH−20はAmersham Biosciences(Piscataway, NJ)から得た。融点は未補正である。NMRスペクトルは、300MHz(H)または75MHz(13C)で、DO中Varian Unity 300により得られ、3−(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム−2,2,3,3−d(0.0)または1,4−ジオキサン(67.19)をそれぞれリファレンスとしたピーピーエムで与えられる化学シフト(δ)を有した。カップリング定数(J)はヘルツで表わされる。元素分析はAtlantic Microlabs(Norcross, GA)により実施した。
【0122】
(1−(12−アミノ−4,9−ジアザドデシル)−2−メチル−3−(フェニルメトキシ)−4(1H)−ピリジノン四塩酸(化合物2))
水酸化ナトリウム(2N、190mL、0.38mol)を、氷浴で冷却しながら、39%水性EtOH(570mL)中の3−ベンジルオキシ−2−メチル−4−ピロン(化合物1)(11.49g、53.15mmol)とスペルミン・4HCl(20.20g、58.01mmol)の溶液に少しずつ加えた。反応混合物を室温で1日間攪拌し、その体積をロータリー蒸発により減少させた。水(200mL)を加えた後、CHCl抽出を数回行った。有機部分を飽和NaClで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下に濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(30%濃縮NHOH/CHOH)およびEtOH中の濃HClによる酸化により化合物2(3.35g、12%)を白色固体として得た: 融点188〜190℃; H NMRδ1.7−1.8(m,4H),2.0−2.2(m,4H),2.28(s,3H),3.0−3.2(m,10H),4.23(t,2H,J=7.7),5.12(s,2H),6.91(d,1H,J=7.2),7.4−7.5(m,5H),7.98(d,1H,J=7.5); 13C NMRδ13.5,23.4,24.4,26.8,37.2,44.8,45.2,47.6,47.7,53.7,76.0,114.3,129.5,129.9,130.3,135.8,142.5,143.7,150.6,165.9。分析値(C2340Cl・2HO)C,H,N。
【0123】
(1−(12−アミノ−4,9−ジアザドデシル)−2−メチル−3−ヒドロキシ−4(1H)−ピリジノン四塩酸(化合物3))
蒸留溶媒、および3NのHClに15分間前もって浸しておいたガラス製品を用いた。Pd−C(10%、400mg)を、38%水性CHOH(130mL)中の化合物2(1.43g、2.62mmol)に加えた。反応混合物は、H下で1気圧、5時間攪拌し、Celiteでろ過し、水(10mL)とEtOH(30mL)で洗浄した。溶媒を減圧下に除去した後、セファデックスLH−20(EtOH)によるクロマトグラフィーにより化合物3(0.911g、76%)を白色固体として得た: 融点216〜218℃; H NMRδ1.7−1.8(m,4H),2.02−2.15(m,2H),2.18−2.31(m,2H),2.57(s,3H),3.0−3.2(m,10H),4.39(t,2H,J=7.6),6.99(d,1H,J=7.0),7.97(d,1H,J=7.0); 13C NMRδ12.8,23.4,24.4,26.9,37.2,44.9,45.2,47.6,53.8,112.0,139.0,142.5,143.6,160.1。分析値(C1634Cl・HO)C,H,N。
【0124】
環形成を単一の第一アミンに向けるように設計された化合物3の合成において、N,N,N−トリス(tert−ブトキシカルボニル)スペルミンを化合物1およびEtOH中のNaOHとともに加熱して、化合物2のtris(BOC)誘導体を9%収率で得た。
【0125】
(実施例2)
(金属/リガンド接合体の化学量論)
1,2−ジメチル−3−ヒドロキシピリジン−4−オン(L1)は、H.H.ピーター博士(Ciba−Geigy,Basel、スイス)からの寛大な寄贈品であった。
【0126】
金属/リガンド接合体の化学量論は、化合物3とL1に関して、鉄接合体の可視吸収バンドのλmax(図2Aと2B、それぞれ459nmと455nm)にて分光光度法で決定した。簡単に説明すれば、0.5mMのFe(III)ニトリロトリアセテート(NTA)溶液を、使用の直前に50mMのFe(III)−NTA保存溶液をトリス緩衝液による希釈を用いて調製した。次に、異なるリガンド/Fe(III)比を有する鉄接合体の溶液を、リガンドとFe(III)の組み合わせた濃度が1.00mMで一定となるように100mMトリス塩酸、pH7.4中の0.5mMリガンドと0.5mM Fe(III)−NTAの適当な量を混合することにより調製した。次に各組の混合物に関するJobのプロットを引き出した。
【0127】
化合物3とL1に関するプロットは基本的に同一であり、両化合物は3:1のリガンド/金属接合体を形成することを示した。これらの結果は、L1/ポリアミン接合体化合物3のスペルミン断片が鉄接合体の化学量論を変えないことを明らかに示した。
【0128】
(実施例3)
(接合体の細胞増殖に対する効果)
−アセチルスペルミン(AcSPM)をその三塩酸塩(A−2679)として、Sigma(St.Louis, MO)から購入した。
【0129】
ネズミL1210白血病細胞は、水ジャケット付きの5%COインキュベーター中、37℃で、10%ウシ胎児血清(Gibco)、2%HEPES−MOPS緩衝液、1mMのL−グルタミン(Gibco)および1mMアミノグアニジンを含むRPMI−1640培地(Gibco, Grand Island, NY)中で懸濁培養物として対数増殖で維持した。
【0130】
細胞を25cm組織培養フラスコで10mLの全体積で増殖させた。Bergeron, R.J., Muller, R., Bussenius, J., McManis, J.S., Merriman, R.L., Smith, R.E., Yao, H., Weimar, W.R., 「Synthesis and Evaluation of Hydroxylated Polyamine Analogues as Antiproliferatives,」 J. Med. Chem 43:224−235(2000)に記載のように、培養物は対数増殖中(0.5〜1.0×10細胞/mL)、興味のある化合物で処理し、再播種し、インキュベートした。細胞数の計測とコントロール成長のパーセントの計算もBergeronらにより記載されたように実施した。IC50は、定められた間隔の露出後に、細胞成長をコントロール成長の50%に減少させるのに必要な化合物の濃度と定義される。
【0131】
幾つかの異なるポリアミンについて細胞増殖に対する効果を調べた(図3)。トリカチオンであるN−アセチルスペルミン(AcSPM); テトラカチオンであるN−エチルスペルミン(MESPM)、;および別のトリカチオンであるN−プロピルスペルミジン[MPSPD(N)]。これらのポリアミンのいずれかにおいて、分子の一末端が、接合体3におけるように、第一アミンをアミノプロピル基に固定させている。それぞれの場合において、48時間と96時間のIC50とK値を示す。MESPMとMPSPD(N)に関する数値は史料である; AcSPM、L1および化合物3は最近の一連の実験で調べられた。48時間の処理後、三モデルのポリアミン類似体のいずれも有意なIC50値を有さず、IC50値はMESPMに関して99μMであり、MPSPD(N)およびAcSPMに関して100μMを超える。この状況は、MESPMに関して96時間の時点で顕著に異なる(0.33μM); MPSPD(N)およびAcSPMのいずれも特に活性はない(それぞれ、55μMおよび>100μM)。親の鉄キレーターであるL1は48時間(46μM)および96時間(55μM)のいずれも特に有効でない。しかし、接合体3はかなり効果的である。IC50は、両時間点において0.2μMであり、親のリガンドよりも少なくとも230倍高い活性がある。48時間の時点で、化合物3は親のポリアミン類似体のいずれに対しても500倍近く活性が高いが、96時間の時点までにそのIC50はMESPMに匹敵するようになる。接合体とポリアミン類似体との最も重要な違いは、処置の長さが減少するにしたがってアルキルポリアミン類似体のIC50値が減少する一方で、接合体のIC50は48時間の時点で低く、98時間の時点で同一であることである。この挙動は、その挙動が静的であるキレーター部分L1のそれに類似するが、その対応するIC50値は化合物3よりもはるかに高い。
【0132】
(実施例4)
(ポリアミン輸送体の競合)
Bergeron, R. J., Hawthorne, T.R., Vinson, J.R.T., Beck, D.E., Jr., Ingeno, M.J.,「Role of the Methylene Backbone in the Antiproliferative Activity of Polyamine Analogues on L1210 Cells,」 Cancer Res. 49:2959−2964(1989); Bergeron, R.J., McManis, J.S., Liu, C.Z., Feng, Y., Weimar, W.R., Luchetta, G.R., Wu, Q., Ortiz−Ocasio, J., Vinson, J.R.T., Kramer, D., Porter, C.,「Antiproliferative Properties of Polyamine Analogues: A Structure−Activity Study,」 J. Med. Chem. 37:3464−3476(1994);およびBergeron, R.J., Weimar, W.R., Wu, Q., Feng, Y., McManis, J.S.,「Polyamine Analogue Regulation of NMDA MK−801 Binding: A Structure−Activity Study,」 J. Med. Chem. 39:5257−5266(1996)に記載されたように、興味のある化合物を、インビトロでL1210白血病細胞懸濁液への取り込みに関して[H]SPDと競合する能力について調べた。簡単に説明すると、細胞懸濁液を、放射標識SPDのみ、または徐々に増加する濃度のキレーターまたは誘導体の存在下の放射標識SPDを含有する1mLの培養培地中でインキュベートした。インキュベーション時間の最後に、チューブを遠心した; シンチレーション計測前に、得られたペレットを洗浄し、消化し、中和した。Lineweaver−BurkプロットはSPDに関して単純な競合阻害を示した。
【0133】
各ポリアミン類似体はポリアミン輸送装置(polyamine transport apparatus)に対して効果的に競合した。K値は、AcSPM、MESPMおよびMPSPD(N)に関してそれぞれ10、1.7および8.5μMであった(図3)。親リガンドL1は輸送競合物ではないが、そのスペルミン接合体3は非常に効果的な輸送競合物であり(K、3.7μM)、該ポリアミンはリガンドのベクターとして働かないことを示唆している(図3)。
【0134】
(実施例5)
(ポリアミンプールに対する接合体の効果および類似体の蓄積)
対数増殖中、L1210白血病細胞を、興味ある化合物により、48時間のIC50濃度で処理した。処理時間の最後に、細胞懸濁液をサンプリングし、氷冷の不完全媒体で三回洗浄し、0.6N過塩素酸を用いる抽出のためにペレット化し、次に液体窒素/熱水で三回凍結破砕した。各上清を、HPLCによるポリアミン含量の分析まで−20℃で凍結した。L1はHPLC法により文献に記載のUV検出を用いて測定したが、下記の改良を行った: 移動相A、20%緩衝液/80%CHOH; 移動相B、98%緩衝液/2%CHCN。緩衝液はリン酸カリウム(10mM)およびEDTA(2mM)、pH2.9からなった。これらの条件下に、ポリアミンはクロマトグラム上で下記のように溶出した(分): プトレシン、10.8; AcSPM、27.3; スペルミジン、33.1; 化合物3、47.1; スペルミン、48.0。
【0135】
そのままのポリアミンに対する効果は未処理のコントロール細胞に見られるポリアミンのパーセントとして報告し、類似体蓄積はmMとして報告する(図4)。接合体3等、四つすべてのポリアミン類似体のうち、MESPMはポリアミンプールを減少するのに最も効果的であった。100μMの処理濃度において、プトレシン、スペルミジンおよびスペルミンはコントロールのそれぞれ0、1および21%まで減少した。同じ処理濃度において、MPSPD(N)はプトレシンおよびスペルミジンを低下させたが、スペルミンは影響を受けなかった(103%)。しかし、100μMの処理濃度において、AcSPMはプトレシンに実質的な効果を有し、スペルミジンのわずかな減少を引き起こし、スペルミンレベルを増加した。これらの三つのポリアミンのうち、MPSPD(N)は最大の細胞内濃度(3.52mM)を達成し、AcSPMとMESPMはそれぞれこの半分以下の濃度(それぞれ1.62および1.24mM)に達した。恐らく驚くべきことでないであろうが、L1(50μM)による細胞の処理はそのままのポリアミンにほとんど衝撃を与えなかった(図4);プトレシンおよびスペルミジンはコントロールレベルに近く、スペルミンはコントロール値の127%まで上昇した。接合体3の挙動は、そのIC50濃度(0.2μM)で与えられたときに、L1とは非常に異なり、AcSPMとは非常に類似した。プトレシンはコントロールの33%まで減少し、スペルミジンはコントロールの64%まで減少し、スペルミンはコントロール値の139%まで増加した。接合体3は細胞に非常に効率的に運ばれた;0.39mMの細胞内濃度は細胞外処理濃度よりも1900倍超高く、親リガンドL1により達成された細胞内濃度よりも数百倍高い。
【0136】
(実施例6)
(ポリアミン代謝酵素に対する効果)
オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)およびアデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ(AdoMetDC)活性を、Seely, J.E., Pegg, A.E.,「Ornithine Decarboxylase(Mouse Kidney),」 Methods Enzymol. 94:158−161(1983)およびPegg, A.E., Poso, H.,「S−Adenosylmethionine Decarboxylase(Rat Liver),」 Methods Enzymol. 94:234−239(1983)の手順にそれぞれ従って、[14C]カルボキシル標識L−オルニチンまたはS−アデノシル−L−メチオニンから放出された14COの定量に基づいて決定した。陰性コントロールとして未処理L1210細胞、陽性コントロールとして、各酵素に対して公知の再現性のある効果を有する医薬であるDEHSPMで処理した細胞を各アッセイに含めた。
【0137】
スペルミジン/スペルミンN−アセチルトランスフェラーゼ(SSAT)活性は、Libby, P.R., Bergeron, R.J., Porter, C.W.,「Structure−Function Correlations of Polyamine Analog−Induced Increases in Spermidine/Spermine Acetyltransferase Activity,」 Biochem. Pharmacol. 38:1435−1442(1989)の方法にしたがって、SPDの[14C]アセチルコエンザイムAによるアセチル化により形成された[14C]−N−アセチルスペルミジンの定量に基づいた。DENSPMで処理された細胞は陽性コントロールであった。
【0138】
MESPMおよびMPSPD(N)の両方が三種類のすべてのポリアミン酵素に対してかなり顕著な効果をおよぼした(図5)。MESPMは、ODCとAdoMetDCをそれぞれコントロールの10%と27%まで低下させ、SSAT活性をコントロールの150%までわずかに増加させた。ODCに対するその衝撃はMESPMに類似するが、MPSPD(N)は、AdoMetDCをより低い程度(コントロールの64%)まで減少させ、SSAT活性をコントロールの500%まで実質的に増強した。AcSPMの場合、ODCに対するその衝撃は他の二つのポリアミンの衝撃(コントロールの25±11%)に匹敵するが、AdoMetDCに対するその効果はそのようには高くなかった(86±11%); このポリアミンはSSAT活性をコントロールの180±11%まで高めた。親キレーターL1がポリアミン酵素のいずれの活性にも実質的に影響を与えなかった(ODC、114±5%;AdoMetDC、120±4%;SSAT、108±58%)ことは予期されないものではなかった。接合体3はMPSPD(N)とかなり同じように働き、ODCとAdoMetDCをそれぞれコントロールの20±4%と77±11%まで減少させ、SSAT活性をコントロールの275±6%まで増加させた。これらの結果はさらに接合体の取り込みという考えを支持する。
【0139】
(実施例7)
(デスフェリオキサミンの無トリエーテルアミド類似体のスペルミン接合体の調製)
この反応順序を図6に概略的に示す。トリヒドロキサム酸試薬7を、CHCl中のトリフルオロ酢酸(TFA)を用いてO−ベンジルヒドロキシルアミン8に変換した。ピリジン中の無水コハク酸を用いて四炭素スペーサーを8に付加して、カルボン酸9を形成する。酸9はカルボニルジイミダゾールにより活性化し、N,N,N−トリス−(tert−ブトキシカルボニル)スペルミン(5)で処理して、完全に保護されたキレーター10を得た。10のベンジル基の水素化分解およびセファデックスLH−20を用いる精製によって、アミンが保護されたままであるトリヒドロキサメート11を得た。エタノール性HClによる11の処理によりトリアミノキレーター12を作った。11をTFAとともに攪拌することにより、アミノ基のきれいな脱保護を実施し、イオン交換により三塩酸塩12を得た。
【0140】
(実施例8)
(デスフェリオキサミンの無トリエーテルアミド類似体のスペルミン接合体の細胞増殖に対する効果)
L1210ネズミ白血病細胞(IC50)の増殖に対する類似体12(実施例7)の効果およびポリアミン輸送装置に対する放射能標識スペルミジンとのその競合能力(K)を実施例4に記載の方法を用いて調べた。96時間のIC50値は1.5μMであり、これは多くのテトラアミン類似体に匹敵する。K値は7μMであり、ポリアミン輸送装置に対する良好な競合を示した。
【0141】
(実施例9)
(ノルスペルミジン/デスフェリオキサミン接合体の調製)
反応順序を図7A〜7Cに概略的に示す。ジ(t−ブチル)ジカルボネート、炭酸ナトリウムおよび水性ジオキサンとの反応により、デスフェラル(17)をN−BOC誘導体18に変換した。18のヒドロキサメートを、ジメチルホルムアミド(DMF)中室温で1日間、3.2当量の臭化ベンジルと3.3当量の水素化ナトリウムによってベンジル化し、3gのテトラ保護DFO試薬19を得た。トリフルオロ酢酸による19の部分的な脱保護によりO,O’,O’’−トリベンジルデスフェリオキサミン(14)を得た。
【0142】
ノルスペルミジン(20)を、DMF中、1.4当量の水酸化セシウム一水和物および4Åモレキュラーシーブの存在下に室温で1日間、ベンジル4−ブロモブチルエーテル(2L、1.2当量)と反応させて、22を得た。アミノ基を、水性テトラヒドロフラン(THF)中のジ(t−ブチル)ジカルボネートを用いて保護して23を得た。アンモニアとTHF中のカルシウムにより効果的にアルコール24を作った。アルコールを、CHCl中のピリジニウムジクロメートを用いてアルデヒドに変換した。
【0143】
アルデヒドおよびO,O’,O’’−トリベンジルデスフェリオキサミン(14)をCHCl中のNaBH(CHCOの存在を用いて結合して16を作った。16を、エタノール中でHとPd−Cにより部分的に脱保護した。脱保護をトリフルオロ酢酸により完結して、ノルスペルミジン/デスフェリオキサミン接合体13を得た。
【0144】
複合物13を、実施例3に記載のようにIC50アッセイで調べ、80マイクロモルであると決定された。接合体13に関するKを実施例4に記載のように測定し、5マイクロモルであることがわかった。
【0145】
(実施例10)
(ノルスペルミジン−4’−ヒドロキシデスアザデスフェリチオシン接合体(ノルスペルミジン−(S)−4’−(OH)DADFT接合体)の調製)
試薬はAldrich Chemical Co.(Milwaukee, WI)から購入し、Fisher Optimaグレードの溶媒を普通に用いた。Selecto Scientific, Inc.(Suwanee, GA)のシリカゲル32〜63をフラッシュカラムクロマトグラフィーに用い、セファデックスLH−20をAmersham Biosciences(Piscataway, NJ)から得た。融点は補正しない。NMRスペクトルは、300MHz(H)または75MHz(13C)で、DO中Varian Unity 300により得られ、3−(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム−2,2,3,3−d(0.0)または1,4−ジオキサン(67.19)をそれぞれリファレンスとしてピーピーエムで与えられる化学シフト(δ)を有した。カップリング定数(J)はヘルツで表わされる。元素分析はAtlantic Microlabs(Norcross, GA)により実施した。
【0146】
図9に示されるノルスペルミジン−(S)−4’−(HO)−DADFT接合体(化合物9と10)を調製するための反応式を図8と図9に示す。合成の最初の工程は、図8に示されているように、Nに4−ヒドロキシブチルコネクターを有する保護トリアミン(20)の調製を伴った。ビス(BOC)アミノニトリル15を、エタノール性NaOH中の高いアルカリ条件下にラネーニッケルによりN,N−ビス(tert−ブトキシカルボニル)ノルスペルミジン(16)へと水素化した。ω−ヒドロキシ鎖を16のアミノ末端に二段階で付加した。塩化メシチレンスルホニルを、水性NaOHとCHCl中で16に反応させ(二段階で85%の収率)、得られたスルホンアミド17を、NaHとDMFの存在下で1.1当量のベンジル4−ブロモブチルエーテルによりアルキル化して、ベンジルエーテル18を78%の収率で得た。18の三窒素および酸素を、酢酸中の30%HBrとCHCl中のフェノールを用いて脱マスクし、トリヒドロブロミド塩19のアミノ基を、THFおよびトリエチルアミン中のジ−(t−ブチル)−ジカルボネートを用いて、それらのtert−ブチルカルバメートとして捕捉し、N−(4−ヒドロキシブチル)−N,N,N−トリス(tert−ブトキシカルボニル)ノルスペルミジン(20)を59%の収率で18から得た。
【0147】
NSPD試薬20のアルコール基を、トリエチルアミンおよびCHCl中の塩化トシルによりトシレートとして80%収率で活性化した(図9)。(S)−4’−(HO)−DADFT(8)を、DMF中のヨードエタンとN,N−ジプロピルエチルアミン(DIEA)を用いて、エチル(S)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,5−ジヒドロ−4−メチル−4−チアゾールカルボキシレート(22)に92%の収率で変換した。エトキシドナトリウムおよび60℃での加熱を用いて、エタノール中のトシレート21による22の脱プロトン化はレソルシノール系のモノアルキル化を67%収率で達成した。23の構造的な帰属は、2,4−ジヒドロカルボキシル系の選択的4−O−アルキル化および最終生成物10のNOESYに基づいた。エーテル機能のα−メチレンに対応するδ4.18での照射は、δ6.59および6.69での芳香族シグナルならびに直鎖のβ−メチレンを顕著に増強した。同様に、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒドのメチル基から、芳香族環上の隣接するプロトン(H−3とH−5)へのNOE相関が観察された。しかし、わずかに一つの環プロトン(H−3)が、4−ヒドロキシ−2−メトキシベンズアルデヒドによる類似の実験でかなり影響を受けた。すなわち、図9中の23のO−アルキル基の4’位が確認された。塩化アセチルからその場で発生させたエタノールHClによる23の処理はBOC基を除去し、NSPD−(S)−4’−(HO)−DADFT接合体のエチルエステル(図9の9)が得られた(75%)。水性メタノール中の1N NaOHによる23中のエステルのけん化はトリス(BOC)酸24を70%の収率でもたらした。24のカルバメートを、CHCl中のトリフルオロ酢酸(TFA)で切断した後、イオン交換クロマトグラフィーにより、(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(12−アミノ−5,9−ジアザドデシルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸三塩酸(図9の10)を68%の収率で得た。
【0148】
(実施例11)
(ノルスペルミジン−4’−ヒドロキシデスアザデスフェリチオシン接合体(図9の化合物10)のイオン結合化学量論)
このアッセイは実施例2に記載の操作を用いて実施した。(S)−4,5−ジヒドロ−2−[2−ヒドロキシ−4−(12−アミノ−5,9−ジアザドデシルオキシ)フェニル]−4−メチル−4−チアゾールカルボン酸三塩酸の鉄接合体の化学量論をそのλmax、480nmにて分光光度法で決定した。簡単に説明すれば、異なるリガンド/Fe(III)比を有する溶液を、[リガンド]+[Fe(III)]=1.0mMとなるように調製した。データ点を、(1)0〜0.60および(2)0.70〜1.00のモル分率に適合させた; それぞれr=0.9997(4データ点)および0.9999(5データ点)。2:1のリガンド/Fe接合体の最大の理論的モル分率は0.667である;最大0.675の直線切片が見られた。接合体のJobのプロット(図10)は、この接合体に関する2:1リガンド/金属接合体と一致し、非複合の対応するものと同じである。
【0149】
(実施例12)
(細胞増殖に対するノルスペルミジン−4’−ヒドロキシデスアザフェリチオシン接合体の効果)
L1210細胞中のIC50値を48時間と96時間の両時点で決定した(図11Aおよび11B)。DESPM(1)、FDESPM(2)、L1(4)およびSPM−L1接合体(5)に関する値を比較の目的から図11Aおよび図11Bに含める。FDESPM(2)はIC50アッセイで活性がないが(>100μM)、IC50アッセイでのDESPM(1)の挙動は多くのポリアミン類似体に典型的なものであり、すなわち、処置の長さが増加するにしたがって、IC50は、この場合では、48時間での30μMから96時間での0.2μMに減少する。
【0150】
ネズミL1210白血病細胞は、水ジャケット付きの5%COインキュベーター中、37℃で、10%ウシ胎児血清(Gibco)、2%HEPES−MOPS緩衝液、1mMのL−グルタミン(Gibco)および1mMアミノグアニジンを含むRPMI−1640培地(Gibco, Grand Island, NY)にて懸濁培養物として対数増殖に維持した。
【0151】
処理時間が進むにしたがって、鉄キレーターは典型的には一定のIC50値を維持する。例えば、同じ時間点で、DFO(3)は7μM(48時間)と6μM(96時間)のIC50値を有する; L1(4)IC50値は幾分か高く、48時間と96時間の時点でそれぞれ46μMと55μMである。ポリアミンベクターのL1(5)への付加は、48時間と96時間の両時点でIC50を0.2μMへとかなり減少させた。
【0152】
これらの発見に一致して、48時間と96時間の時点の4’−ヒドロキシデスアザデスフェリチオシン((S)−4’−(HO)−DADFT(8))のIC50値は、それぞれ誤差内のそれぞれ19と20μMであった。NSPD−(S)−4’−(HO)−DADFT(10)を作るブチル結合によるノルスペルミジン(NSPD)の(S)−4’−(HO)−DADFT(8)の4’−ヒドロキシルへの付加は48時間と96時間のIC50値を40μMに増加させたが、この接合体の対応するエチルエステル(9)への変換は、IC50を両時間点で1.5μMに減少させた。テレフタレート類似体のN−テレフタロイルスペルミジンメチルエステル(NTS−ME、6)またはN−テレフタロイルスペルミジン(NTS、7)のいずれも細胞増殖に衝撃を与えなかった;両化合物に関する48時間と96時間のIC50値は>100μMであった。
【0153】
(実施例13)
(ポリアミン輸送体に対する競合での荷電の役割)
興味のある分子を、インビトロでのL1210白血病細胞懸濁液中への取り込みに関して[H]SPDと競合する能力について研究した。簡単に説明すると、細胞懸濁液を、放射標識SPDのみ、または徐々に増加する濃度のキレーターまたは誘導体の存在下の放射標識SPDを含有する1mLの培養培地中でインキュベートした。インキュベーション時間の最後に、チューブを遠心した;シンチレーション計測前に、得られたペレットを洗浄し、消化し、中和した。Lineweaver−BurkプロットはSPDに関して単純な競合阻害を示した。
【0154】
生理学的pHでトリカチオンである、テレフタル酸のモノメチルエステルとのスペルミジンの接合体は、3.1μMのKを有するポリアミン輸送体とよく競合した。しかし、アミドのメチルエステルは、生理学的pHでアニオンであるカルボン酸へと切断された場合、Kは27μMへと9倍増加した。これらの結果は、ポリアミンのカチオン中心が輸送体中の負の対イオンに結合できることを示す。すなわち、カチオン中心を有する接合体は、アニオン特性を有する接合体に比較して、輸送装置に対して増加した結合、または増加した細胞取り込みを示すだろう。例えば、NSPD−(S)−4’−(HO)−DADFT接合体(図11Bの化合物9および10)により、アッセイ条件下でカルボキシレートアニオンとして存在する遊離酸のKは73μMであり、これは5.7μMのKを有する、対応する「カルボキシレート−中性」エチルエーテルよりも実質的に(12.8倍)高い。
【0155】
(実施例14)
(ポリアミン、鉄キレーターおよびポリアミン/キレーター接合体の細胞内濃度)
対数増殖中、細胞を該化合物で処理した。処理時間の終わりに、細胞懸濁液をサンプリングし、氷冷の不完全媒体で三回洗浄し、0.6N過塩素酸を用いる抽出のためにペレット化し、次に液体窒素/熱水で三回凍結破砕した。各上清を、HPLCによる類似体含量の分析まで−20℃で凍結した。
【0156】
テレフタル酸/ポリアミン接合体(図11Aおよび11Bの6および7)。分析的分離は、Rainin Instrument Company HPLCシステムを用いて、ガードカラムを有するWaters Symmetry C18カラム(250mm×4.6mm、5μm)により実施した。使用された緩衝液は、リン酸カリウム(25mM)、pH3.0中のオクタンスルホン酸ナトリウム(2.5mM)であった。移動相Aは5%CHCN、95%緩衝液からなり、移動相Bは60%CHCN、40%緩衝液からなった。溶媒の勾配プログラムは、20%移動相Bから40%移動相Bに増加する40分間にわたる直線勾配および5分間にわたる100%Bへの5分間勾配を用いた。カラム後の誘導体化は、o−フタルジアルデヒド(緩衝液1LあたりCHOH中の10mLの4% w/v溶液)を含有するホウ酸緩衝液系(HBO、3.1% w/v; KOH、2.6% w/v; 2−メルカプトエタノール、0.6% v/v)を用いた。流速は0.4mL/分、イソクラチック; UV検出(λex、340nm; λem、445nm)を利用した。
【0157】
ノルスペルミジン/(S)−4’−(HO)−DADFT接合体(図11Bの9および10)。分析的分離は、上記のシステムを用いて、逆相Supelco Discovery RP Amide C16カラム(150×4.6mm、5μm)により実施し、UV検出は300nmで行った。移動相は、1.5mL/分の流速にてポンプで供給した。緩衝液および移動相AとBは上記のものと同一であった。溶媒勾配プログラムは、5%移動相B(95%A)を有する最初の10分間のイソクラチック部分を用いた後に、35分の時点で80%移動相Bまで増加させる直線勾配、次に5分間の勾配で100%Bとし、この濃度を10分間保持し、次に8分間(58〜65分合計)にわたる5%移動相Bへの勾配を用いた。この方法は直接の注入物として0.2μMの検出限界を有した; これは湿重量1gあたり10nmolの組織濃度に対応する。
【0158】
両方の場合で、濃度は、Rainin Dynamax HPLC Method Managerソフトウエア(Rainin Instrument Co.)による非加重最少二乗直線回帰による検量線に適合させたピーク領域から計算した。
【0159】
以前の研究は、細胞外処理濃度が30μMである場合、DESPMが400μMの細胞内レベルに達することを示した(図11A)。しかし、ポリアミン輸送装置に対して不十分なKを示した二カチオン性FDESPM(2)は細胞中に効果的に濃縮されなかった。100μMの細胞外処理濃度においてさえ、FDESPMは<20μMの細胞レベルを達成した。L1自体は50μMの細胞外処理濃度で1μMの細胞内レベルに達したのみであったが、スペルミジン5とのその接合体は、0.2μMの細胞外濃度で390μMの細胞内レベルに達した(図11A)。
【0160】
メチルテレフタレート/SPD接合体6で100μMの濃度にて処理された細胞は430μMの細胞内医薬レベルを達成した。しかし、対応する酸接合体(7)で100μMの濃度にて処理された細胞は<70μMの細胞内レベルに達した。
【0161】
類似する結果が(S)−4’−(HO)−DADFTシリーズ(8〜10)により観察された。それぞれの場合で、細胞外処理濃度は100μMであった。これらの処理条件下、親リガンドである(S)−4’−(HO)−DADFT(8)の細胞内濃度は50μMを超えない(図11B)。しかし、NSPD−(S)−4’−(HO)−DADFT接合体(9)のエチルエステルは細胞内に効果的に運ばれ、947±110μMの濃度を達成した; さらに、加水分解生成物である酸接合体10はエステルの量の約3倍(2980±280μM)存在した。NSPD接合体酸10自体で処理した細胞において、細胞内医薬量は約70μMに上昇した。両シリーズ(6/7、9/10)において、それらの結果は、対応する遊離酸ポリアミン接合体(それぞれ7および10)に比較してエステル(6および9)のKの有意な低下と一致し、輸送装置が、負の電荷を持たない基質を好むことを示した。さらに、エステル6および9は細胞内に運ばれ、次にそれぞれの遊離酸に加水分解されるように思われる。
【0162】
(実施例15)
(ポリアミン/キレーター接合体の鉄除去効率)
キレーター接合体対親キレーター、すなわち、L1(図11Aの5対4)および(S)−4’−(HO)−DADFTシリーズ(図11Bの9および10対8)の挙動をげっ歯動物鉄クリアランスモデルである胆管にカニューレ挿入したラットで評価した。このモデルにおいて、キレーターで促進された鉄排出を胆汁中と尿中で測定する。さらに、本方法は複数の胆汁試料を集めることを可能とするので、鉄排出の速度論を決定することができる。それぞれの場合で、医薬を皮下投与した。L1とそのSPM接合体(4および5)を450μmol/kgの投与量で投与し、(S)−4’−(HO)−DADFT(8)およびそのNSPD接合体(9および10)を300μmol/kgの投与量で投与した;すなわち全て当量鉄結合容量で投与した。(L1およびそのSPM接合体は3:1リガンド/金属接合体を形成する一方、(S)−4’−(HO)−DADFT系化合物は2:1リガンド/金属接合体を形成する。エステル10が投与された動物の組織は主として遊離酸を含有したので、エチルエステルが非特異的な血清エステラーゼよりも長く残ることはありそうもない。)
げっ歯動物モデル(図12)において、L1(4)は2.2±0.9%の鉄除去効率を有した; 鉄の74%は胆汁に存在し、26%は尿に存在した。対応するSPM接合体(5)の性能はほとんど同じ(1.8±0.9%)であったが、鉄排出の態様は53%胆汁中および47%尿中とわずかに変化した。親(S)−4’−(HO)−DADFTリガンド(8)の効率は1.1±0.6%であった; 胆汁/尿比は93:7であった。NSPDベクターを(S)−4’−(HO)−DADFTにいったん付加して接合体10を提供すると、効率は9.2±2.6%に増加した。対応するエステル(9)の場合、効率はさらに13.6±3.3%に増加した。鉄排出の態様は親化合物8のものと類似していた。しかし、遊離(S)−4’−(HO)−DADFT(8)に対してポリアミンベクター化(S)−4’−(HO)−DADFT(9および10)に関連する鉄速度論の重大な違いは注目すべきものである(図13)。NSPD接合体(9および10)の両方が、遅延性の胆嚢鉄クリアランスを引き出した。対照的に、非接合体リガンドが誘導する鉄クリアランスは、8の単一投与後の9時間後に基本的にベースラインに戻った。接合体酸10の場合、ベースラインへの戻りは医薬投与後の48時間までには起こらなかった。エステル9の場合、鉄排出は、動物を安楽死させる時点の72時間後でさえベースラインに戻らなかった。
【0163】
(実施例16)
(テレフタル酸接合体(図11Aおよび図11Bの6および7)の合成)
,N,N−トリス(tert−ブトキシカルボニル)スペルミンを、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)により活性化させておいたモノ−メチルテレフタレート(12)によって70%の収率でアシル化した。得られた付加物13のアミン保護基を、メタノール性HClを用いて除去し、トリアミノアミド/メチルエステル6を75%収率で生成させた。もしくは、水性メタノール中のNaOHによる中間体13中エステルの最初の切断はトリス(BOC)酸14をもたらした。14のカルバメートをトリフルオロ酢酸により切断した後、イオン交換クロマトグラフィーによって、スペルミンのテレフタル酸誘導体をその三塩酸塩7として45%の収率で13から得た。
【0164】
本発明を、その好適な実施態様により特に詳細に説明し、記載してきたが、当業者は形態と詳細の多様な変更が添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から離れることなくなされてよいことを理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】図1は、スペルミン/L1接合体の概略的合成を示す。
【図2】図2Aと図2Bは、鉄(III)とのスペルミン/L接合体とL1のそれぞれのJobのプロットを示す。
【図3】図3は、いくつかの一置換ポリアミン、L1、およびスペルミン/L1接合体に関するL1210細胞成長の阻害および輸送を示す。
【図4】図4は、L1210細胞中のポリアミンプールに対するいくつかの一置換ポリアミン、L1、およびスペルミン/L1接合体の効果を示す。
【図5】図5は、L1210細胞中のオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)、S−アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ(AdoMetDC)およびスペルミン/スペルミジン−N−アセチルトランスフェラーゼ(SSAT)に対するいくつかの一置換ポリアミン、L1、およびスペルミン/L1接合体の衝撃を示す。
【図6】図6は、トリエーテルアミドのないデスフェリオキサミンのスペルミン誘導体の概略的合成を示す。
【図7A】図7Aは、ノルスペルミジン/デスフェリオキサミン接合体の概略的合成を示す。
【図7B】図7Bは、ノルスペルミジン/デスフェリオキサミン接合体の概略的合成を示す。
【図7C】図7Cは、ノルスペルミジン/デスフェリオキサミン接合体の概略的合成を示す。
【図8】図8は、Nに4−ヒドロキシブチルコネクターを有する保護ノルスペルミジンの概略的合成を示す。
【図9】図9は、Nに4−ヒドロキシブチルコネクターを有するノルスペルミジンからのノルスペルミジン/4−ヒドロキシデスアザデスメチルデスフェリチオシン接合体の概略的合成を示す。
【図10】図10は、鉄(III)とのノルスペルミジン/4−ヒドロキシデスアザデスメチルデスフェリチオシン接合体のJobのプロットを示す。
【図11A】図11Aおよび11Bは、L1210細胞の増殖を阻害する多様なポリアミン、鉄キレーター、およびポリアミン/キレーター接合体のIC50値を示し(実施例12)、これらの化合物の細胞内濃度を示す(実施例14)。
【図11B】図11Aおよび11Bは、L1210細胞の増殖を阻害する多様なポリアミン、鉄キレーター、およびポリアミン/キレーター接合体のIC50値を示し(実施例12)、これらの化合物の細胞内濃度を示す(実施例14)。
【図12】図12は、げっ歯動物における複合化または非複合化キレーターの鉄除去効率を示す。
【図13】図13は、胆管にカニューレ挿入したラット(各化合物につきn=4)に皮下投与された300μmol/kgの投与量において、遊離の(S)−4’−ヒドロキシデスアザデスフェリチオシン(8)、その遊離酸のノルスペルミジン(9)との接合体、およびその対応するエチルエステル(10)の胆汁鉄速度論を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属キレーターである第一の部分およびポリアミンである第二の部分を含む化合物であって、該ポリアミン部分が生理学的pHで正に荷電され得る三つ以上の窒素原子を含む化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物。
【請求項2】
前記金属キレーターが、アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、パラジウム、銀、白金、金、カドミウム、鉛、ビスマス、水銀、ルテニウム、ロジウム、インジウム、錫、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、タリウム、ポロニウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウムおよびカリホルニウムからなる群より選択される金属をキレートする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記ポリアミン部分が、pHが約7.0〜約7.6である場合に、正に荷電され得る三つ以上の窒素原子を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記金属キレーター部分が、鉄キレーター部分である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記鉄キレーター部分が、約25℃、約pH7および約0.1Mモル強度で、鉄(II)または鉄(III)と少なくとも約1012の全生成定数を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記鉄キレーター部分が、約25℃、約pH7および約0.1Mモル強度で、鉄(II)または鉄(III)と少なくとも約1025の全生成定数を有する、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記鉄キレーター部分が、約25℃、約pH7および約0.1Mモル強度で、鉄(II)または鉄(III)と少なくとも約1035の全生成定数を有する、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
前記鉄キレーター部分が、二座、三座、四座または五座である、請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
前記鉄キレーター部分が、六座、七座、八座、九座または十座である、請求項5に記載の化合物。
【請求項10】
前記ポリアミン部分が、末端窒素により直接的または間接的に前記鉄キレーター部分に結合する、請求項5に記載の化合物。
【請求項11】
前記ポリアミン部分および前記鉄キレーター部分が、共有結合により直接的に結合する、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
前記ポリアミン部分および前記鉄キレーター部分が、結合基により間接的に結合する、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
前記ポリアミン部分および前記鉄キレーター部分が、切断可能な官能基により直接的または間接的に結合する、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
前記鉄キレーター部分が、一つ以上のヒドロキサメート部分を含む、請求項10に記載の化合物。
【請求項15】
前記鉄キレーター部分が、一つ以上のカテコール部分を含む、請求項10に記載の化合物。
【請求項16】
前記鉄キレーター部分が、デスフェリチオシンまたはその類似体もしくは誘導体である、請求項10に記載の化合物。
【請求項17】
前記鉄キレーター部分が、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4(S)−メチルチアゾリン−4−カルボン酸である、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
前記鉄キレーター部分が、一つ以上のポルフィリン、アミン、ヒドロキシル、カルボキシレート、チオール、イミダゾール、フェノールまたはジチオカルバメート部分またはそれらの組合せを含む、請求項10に記載の化合物。
【請求項19】
前記鉄キレーター部分が、切断可能な保護基により保護される、請求項5に記載の化合物。
【請求項20】
前記化合物への共有結合前の前記ポリアミン部分が、天然に存在するポリアミンである、請求項10に記載の化合物。
【請求項21】
前記ポリアミン部分が、スペルミン、スペルミジン、ノルスペルミン、ノルスペルミジン、ホモスペルミンまたはホモスペルミジンである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
前記化合物への共有結合前の前記ポリアミン部分が、天然には存在しないポリアミンである、請求項10に記載の化合物。
【請求項23】
前記ポリアミン部分が、末端アルキル化されたスペルミン、スペルミジン、ノルスペルミン、ノルスペルミジン、ホモスペルミンまたはホモスペルミジンである、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
前記化合物が、鉄を含む塩である、請求項5に記載の化合物。
【請求項25】
前記化合物が、実質的に金属を含まない、請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
前記化合物が、実質的に鉄を含まない、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
下記構造式(I):
【化1】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物であって、
ここで、
a、bおよびcはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
Rは、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
R’は、−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基であり;そして
R’’は、−Hまたは置換もしくは非置換のアルキル基である、
化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物。
【請求項28】
RおよびR’が、両方とも−Hである、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
a、bおよびcが、それぞれ独立して3または4である、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
aが3であり、bが4であり、cが3である、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
a、bおよびcが、それぞれ3である、請求項29に記載の化合物。
【請求項32】
下記構造式(II):
【化2】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物であって、
ここで、
d、eおよびfはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
は、−H、または置換もしくは非置換のアルキル基、または一つ以上の酸素原子が間に入った置換もしくは非置換のヒドロカルビル基であり;そして
各Rは、独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基である、
化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物。
【請求項33】
および各Rが−Hである、請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
d、eおよびfがそれぞれ独立して3または4である、請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
が、一つ以上の酸素原子が間に入った非置換のヒドロカルビル基である、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
dが3であり、eが4であり、fが3である、請求項34に記載の化合物。
【請求項37】
が3,6,9−トリオキサデシル基である、請求項36に記載の化合物。
【請求項38】
d、eおよびfがそれぞれ3である、請求項34に記載の化合物。
【請求項39】
下記構造式(III):
【化3】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物であって、
ここで、
g、hおよびiはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
Lは結合基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;そして
各Rは、独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基である、
化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物。
【請求項40】
および各Rが−Hである、請求項39に記載の化合物。
【請求項41】
g、hおよびiがそれぞれ独立して3または4である、請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
Lが置換または非置換のアルキレン基である、請求項41に記載の化合物。
【請求項43】
g、hおよびiがそれぞれ3である、請求項42に記載の化合物。
【請求項44】
Lがペンタメチレン基である、請求項43に記載の化合物。
【請求項45】
gが3であり、hが4であり、iが3である、請求項42に記載の化合物。
【請求項46】
下記構造式(VII):
【化4】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物であって、
ここで、
jおよびkはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
mは1〜12の整数であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換のアルキル基またはアリール基であり;
は、−H、または置換もしくは非置換のアルキル基であり;そして
およびRは、それぞれ独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアルキル基である、
化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物。
【請求項47】
が−Hである、請求項46に記載の化合物。
【請求項48】
jおよびkがそれぞれ3であり、mが3〜6の整数である、請求項47に記載の化合物。
【請求項49】
が−Hまたは非置換のアシル基であり、Rが−Hまたは非置換のアルキル基であり、Rが非置換のアルキル基である、請求項47に記載の化合物。
【請求項50】
jおよびkがそれぞれ3であり、mが4であり、R、RおよびRがそれぞれ−Hであり、Rがエチル基であり、Rがメチル基である、請求項47に記載の化合物。
【請求項51】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と、金属キレーターである第一の部分およびポリアミンである第二の部分を含む化合物またはその塩、溶媒和物もしくはその水和物とを含有する薬学的組成物であって、該ポリアミン部分は、生理学的pHで正に荷電され得る三つ以上の窒素原子を含む、薬学的組成物。
【請求項52】
前記金属キレーターが、アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、パラジウム、銀、白金、金、カドミウム、鉛、ビスマス、水銀、ルテニウム、ロジウム、インジウム、錫、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、タリウム、ポロニウム、ランタン、セリウム、プラセオジミウム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウムおよびカリホルニウムからなる群より選択される金属をキレートする、請求項51に記載の薬学的組成物。
【請求項53】
前記ポリアミン部分が、pHが約7.0〜約7.6である場合に、正に荷電され得る三つ以上の窒素原子を含む、請求項51に記載の薬学的組成物。
【請求項54】
前記金属キレーター部分が、鉄キレーター部分である、請求項51に記載の薬学的組成物。
【請求項55】
前記鉄キレーター部分が、約25℃、約pH7および約0.1Mモル強度で、鉄(II)または鉄(III)と少なくとも約1012の全生成定数を有する、請求項54に記載の薬学的組成物。
【請求項56】
前記鉄キレーター部分が、二座、三座、四座または五座である、請求項54に記載の薬学的組成物。
【請求項57】
前記鉄キレーター部分が、六座、七座、八座、九座または十座である、請求項54に記載の薬学的組成物。
【請求項58】
前記ポリアミン部分が、末端窒素により直接的または間接的に前記鉄キレーター部分に結合する、請求項54に記載の薬学的組成物。
【請求項59】
前記化合物への共有結合前の前記ポリアミン部分が、天然に存在するポリアミンである、請求項58に記載の薬学的組成物。
【請求項60】
前記化合物への共有結合前の前記ポリアミン部分が、天然には存在しないポリアミンである、請求項58に記載の薬学的組成物。
【請求項61】
前記ポリアミン部分および前記鉄キレーター部分が、共有結合により直接的に結合する、請求項58に記載の薬学的組成物。
【請求項62】
前記ポリアミン部分および前記鉄キレーター部分が、結合基により間接的に結合する、請求項58に記載の薬学的組成物。
【請求項63】
前記鉄キレーター部分が、切断可能な保護基により保護される、請求項54に記載の薬学的組成物。
【請求項64】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(I):
【化5】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物であって、
ここで、
a、bおよびcはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
Rは、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
R’は、−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基であり;そして
R’’は、−Hまたは置換もしくは非置換のアルキル基である、
薬学的組成物。
【請求項65】
RおよびR’が両方とも−Hであり、aが3であり、bが4であり、cが3である、請求項64に記載の薬学的組成物。
【請求項66】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(II):
【化6】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物であって、
ここで、
d、eおよびfはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
は、−H、または置換もしくは非置換のアルキル基、または一つ以上の酸素原子が間に入った置換もしくは非置換のヒドロカルビル基であり;そして
各Rは、独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基である、
薬学的組成物。
【請求項67】
および各Rが−Hであり、dが3であり、eが4であり、fが3であり、Rが3,6,9−トリオキサデシル基である、請求項66に記載の薬学的組成物。
【請求項68】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(III):
【化7】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物であって、
ここで、
g、hおよびiはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
Lは結合基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;そして
各Rは、独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基である、
薬学的組成物。
【請求項69】
および各Rが−Hであり、g、hおよびiがそれぞれ3であり、Lがペンタメチレン基である、請求項68に記載の薬学的組成物。
【請求項70】
薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(VII):
【化8】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物であって、
ここで、
jおよびkはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
mは1〜12の整数であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキルまたはアリール基であり;
は、−H、または置換もしくは非置換のアルキル基であり;そして
およびRは、それぞれ独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアルキル基である、
薬学的組成物。
【請求項71】
jおよびkがそれぞれ3であり、mが4であり、R、R、RおよびRがそれぞれ−Hであり、Rがエチル基であり、Rがメチル基である、請求項70に記載の薬学的組成物。
【請求項72】
被験体における癌または腫瘍を治療する方法であって、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と、金属キレーターである第一の部分およびポリアミンである第二の部分を含む化合物またはその塩、溶媒和物もしくはその水和物とを含有する薬学的組成物を治療有効量、該被験体に投与する工程を包含し、該ポリアミン部分は、生理学的pHで正に荷電され得る三つ以上の窒素原子を含む、方法。
【請求項73】
前記ポリアミン部分が、pHが約7.0〜約7.6である場合に、正に荷電され得る三つ以上の窒素原子を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記金属キレーター部分が、鉄キレーター部分である、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記金属キレーター部分が、約25℃、約pH7および約0.1Mモル強度で、鉄(II)または鉄(III)と少なくとも約1012の全生成定数を有する、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記鉄キレーター部分が、二座、三座、四座または五座である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記鉄キレーター部分が、六座以上である、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記ポリアミン部分が、末端窒素により直接的または間接的に前記金属キレーター部分に結合する、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記化合物への共有結合前の前記ポリアミン部分が、天然に存在するポリアミンである、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
前記化合物への共有結合前の前記ポリアミン部分が、天然には存在しないポリアミンである、請求項75に記載の方法。
【請求項81】
前記ポリアミン部分および前記鉄キレーター部分が、共有結合により直接的に結合する、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記ポリアミン部分および前記鉄キレーター部分が、結合基により間接的に結合する、請求項78に記載の方法。
【請求項83】
前記鉄キレーター部分が、切断可能な保護基により保護される、請求項75に記載の方法。
【請求項84】
さらに、前記被験体に一つ以上のポリアミン合成阻害剤を投与する工程を包含する、請求項75に記載の方法。
【請求項85】
前記ポリアミン合成阻害剤が、オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記ポリアミン合成阻害剤が、S−アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ阻害剤である、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記ポリアミン合成阻害剤が、スペルミジンシンターゼ阻害剤である、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記ポリアミン合成阻害剤が、スペルミンシンターゼ阻害剤である、請求項84に記載の方法。
【請求項89】
さらなる抗腫瘍剤を被験体に投与する工程をさらに包含する、請求項75に記載の方法。
【請求項90】
被験体における癌または腫瘍を治療する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(I):
【化9】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、
a、bおよびcはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
Rは、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
R’は、−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基であり;そして
R’’は、−Hまたは置換もしくは非置換のアルキル基である。
、方法。
【請求項91】
前記RおよびR’が両方とも−Hであり、aが3であり、bが4であり、cが3である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
被験体における癌または腫瘍を治療する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(II):
【化10】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、
d、eおよびfはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
は、−H、または置換もしくは非置換のアルキル基、または一つ以上の酸素原子が間に入った置換もしくは非置換のヒドロカルビル基であり;そして
各Rは、独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基である、
方法。
【請求項93】
および各Rが−Hであり、dが3であり、eが4であり、fが3であり、Rが3,6,9−トリオキサデシル基である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
被験体における癌または腫瘍を治療する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(III):
【化11】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、
g、hおよびiはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
Lは結合基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;そして
各Rは、独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基である、
方法。
【請求項95】
および各Rが−Hであり、g、hおよびiがそれぞれ3であり、Lがペンタメチレン基である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
被験体における癌または腫瘍を治療する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(VII):
【化12】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、
jおよびkはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
mは1〜12の整数であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基もしくはアリール基であり;
は、−H、または置換もしくは非置換のアルキル基であり;そして
およびRは、それぞれ独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアルキル基である、
方法。
【請求項97】
jおよびkがそれぞれ3であり、mが4であり、R、R、RおよびRがそれぞれ−Hであり、Rがエチル基であり、Rがメチル基である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
金属過多状態を罹患する被験体を治療する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と、金属キレーターである第一の部分およびポリアミンである第二の部分を含む化合物またはその塩、溶媒和物もしくはその水和物とを含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、該ポリアミン部分が生理学的pHで正に荷電され得る三つ以上の窒素原子を含む、方法。
【請求項99】
前記ポリアミン部分が、pHが約7.0〜約7.6である場合に正に荷電され得る三つ以上の窒素原子を含む、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記金属キレーター部分が、鉄キレーター部分である、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記金属過多状態が、鉄過多状態である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記鉄過多状態が、全体的な鉄過多により特徴付けられる、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記鉄過多状態が、原発性ヘモクロマトーシスである、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記鉄過多状態が、慢性の輸血により引き起こされる、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記鉄過多状態が、局所的な鉄過多により特徴付けられる、請求項101に記載の方法。
【請求項106】
前記鉄過多状態が、神経学的疾患または神経変性疾患により特徴付けられる、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記鉄キレーター部分が、約25℃、約pH7および約0.1Mモル強度で、鉄(II)または鉄(III)と少なくとも約1012の全生成定数を有する、請求項101に記載の方法。
【請求項108】
前記鉄キレーター部分が、六座、七座、八座、九座または十座である、請求項101に記載の方法。
【請求項109】
前記ポリアミン部分が、末端窒素により直接的または間接的に前記金属キレーター部分に結合する、請求項101に記載の方法。
【請求項110】
前記化合物への共有結合前の前記ポリアミン部分が、天然に存在するポリアミンである、請求項101に記載の方法。
【請求項111】
前記ポリアミン部分および前記鉄キレーター部分が、共有結合により直接的に結合する、請求項109に記載の方法。
【請求項112】
前記ポリアミン部分および前記鉄キレーター部分が、結合基により間接的に結合する、請求項109に記載の方法。
【請求項113】
前記鉄キレーター部分が、切断可能な保護基により保護される、請求項101に記載の方法。
【請求項114】
前記被験体に一つ以上のポリアミン合成阻害剤を投与する工程をさらに包含する、請求項101に記載の方法。
【請求項115】
鉄過多状態を罹患する被験体を治療する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(I):
【化13】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、
a、bおよびcはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
Rは、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
R’は、−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基であり;そして
R’’は、−Hまたは置換もしくは非置換のアルキル基である、
方法。
【請求項116】
RおよびR’が両方とも−Hであり、aが3であり、bが4であり、cが3である、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
鉄過多状態を罹患する被験体を治療する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(II):
【化14】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、
d、eおよびfはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
は、−H、または置換もしくは非置換のアルキル基、または一つ以上の酸素原子が間に入った置換または非置換のヒドロカルビル基であり;そして
各Rは、独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基である、
方法。
【請求項118】
および各Rが−Hであり、dが3であり、eが4であり、fが3であり、Rが3,6,9−トリオキサデシル基である、請求項117に記載の方法。
【請求項119】
鉄過多状態を罹患する被験体を治療する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(III):
【化15】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、
g、hおよびiはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
Lは結合基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;そして
各Rは、独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基である、
方法。
【請求項120】
およびRが−Hであり、g、hおよびiがそれぞれ3であり、Lがペンタメチレン基である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
鉄過多状態を罹患する被験体を治療する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(VII):
【化16】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、
jおよびkはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
mは1〜12の整数であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基またはアリール基であり;
は、−H、または置換もしくは非置換のアルキル基であり;そして
およびRは、それぞれ独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアルキル基である、
方法。
【請求項122】
jおよびkがそれぞれ3であり、mが4であり、R、R、RおよびRが、それぞれ−Hであり、Rがエチル基であり、Rがメチル基である、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
酸化ストレスの治療を必要とする被験体における酸化ストレスを低減する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と、金属キレーターである第一の部分およびポリアミンである第二の部分を含む化合物またはその塩、溶媒和物もしくはその水和物とを含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、該ポリアミン部分が生理学的pHで正に荷電され得る三つ以上の窒素原子を含む、方法。
【請求項124】
前記ポリアミン部分が、pHが約7.0〜約7.6である場合に、正に荷電され得る三つ以上の窒素原子を含む、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記金属キレーター部分が、鉄キレーター部分である、請求項123に記載の方法。
【請求項126】
前記鉄キレーター部分が、約25℃、約pH7および約0.1Mモル強度で、鉄(II)または鉄(III)と少なくとも約1030の全生成定数を有する、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
前記鉄キレーター部分が、二座、三座、四座、五座、六座、七座、八座、九座または十座である、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記ポリアミン部分が、末端窒素により直接的または間接的に前記金属キレーター部分に結合する、請求項126に記載の方法。
【請求項129】
前記ポリアミン部分および前記鉄キレーター部分が、共有結合により直接的に結合する、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
前記ポリアミン部分と前記鉄キレーター部分が、結合基により間接的に結合する、請求項128に記載の方法。
【請求項131】
前記鉄キレーター部分が、切断可能な保護基により保護される、請求項126に記載の方法。
【請求項132】
さらに、前記被験体に一つ以上のポリアミン合成阻害剤を投与する工程を包含する、請求項126に記載の方法。
【請求項133】
酸化ストレスの治療を必要とする被験体における酸化ストレスを低減する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(I):
【化17】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、
a、bおよびcはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
Rは、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
R’は、−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基であり;そして
R’’は、−Hまたは置換もしくは非置換のアルキル基である、
方法。
【請求項134】
RおよびR’が両方とも−Hであり、aが3であり、bが4であり、cが3である、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
酸化ストレスの治療を必要とする被験体における酸化ストレスを低減する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(II):
【化18】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、
d、eおよびfはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
は、−H、または置換もしくは非置換のアルキル基、または一つ以上の酸素原子が間に入った置換または非置換のヒドロカルビル基であり;そして
各Rは、独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基である、
方法。
【請求項136】
および各Rが−Hであり、dが3であり、eが4であり、fが3であり、Rが3,6,9−トリオキサデシル基である、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
酸化ストレスの治療を必要とする被験体における酸化ストレスを低減する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(III):
【化19】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、
g、hおよびiはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
Lは結合基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;そして
各Rは、独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基である、
方法。
【請求項138】
および各Rが−Hであり、g、hおよびiがそれぞれ3であり、Lがペンタメチレン基である、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
酸化ストレスの治療を必要とする被験体における酸化ストレスを低減する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤および下記構造式(VII):
【化20】

によって表される化合物、またはその塩、溶媒和物もしくは水和物を含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、
ここで、
jおよびkはそれぞれ独立して1〜5の整数であり;
mは1〜12の整数であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基、アシル基もしくはアリール基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換のアシル基であり;
は、−Hまたは置換もしくは非置換の、アルキル基またはアリール基であり;
は、−H、または置換もしくは非置換のアルキル基であり;そして
およびRは、それぞれ独立して−Hまたは置換もしくは非置換のアルキル基である、
方法。
【請求項140】
jおよびkはそれぞれ3であり、mは4であり、R、R、RおよびRはそれぞれ−Hであり、Rはエチル基であり、Rはメチル基である、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
金属キレーターの細胞への取り込みを高める方法であって、該方法は、ポリアミンを、任意に結合基によって間接的に該金属キレーターに共有結合させて、ポリアミン部分を有する接合体を形成する工程、および該細胞を該接合体またはその塩、溶媒和物または水和物と接触させる工程を包含し、該ポリアミン部分は、生理学的pHで正に荷電され得る三つ以上の窒素原子を含む、方法。
【請求項142】
前記ポリアミン部分が、pHが約7.0〜約7.6である場合に正に荷電され得る三つ以上の窒素原子を含む、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
前記金属キレーター部分が、鉄キレーター部分である、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記鉄キレーター部分が、約25℃、約pH7および約0.1Mモル強度で、鉄(II)または鉄(III)と少なくとも約1012の全生成定数を有する、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
前記鉄キレーター部分が、二座、三座、四座または五座である、請求項144に記載の方法。
【請求項146】
前記鉄キレーター部分が、六座、七座、八座、九座または十座である、請求項144に記載の方法。
【請求項147】
前記ポリアミン部分が、末端窒素により直接的または間接的に金属キレーター部分に結合する、請求項144に記載の方法。
【請求項148】
さらに、前記細胞を一つ以上のポリアミン合成阻害剤に接触させる工程を包含する、請求項144に記載の方法。
【請求項149】
被験体中の一つ以上の器官、組織、腫瘍またはそれらの組合せを画像化または検査する方法であって、該方法は、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と、金属キレーターである第一の部分およびポリアミンである第二の部分を含む化合物の金属塩とを含有する薬学的組成物を該被験体に投与する工程、および該器官、組織、腫瘍またはこれらの組合せを画像化またはスキャニングする工程を包含し、該ポリアミン部分は、生理学的pHで正に荷電され得る三つ以上の窒素原子を含む、方法。
【請求項150】
前記金属塩が造影剤である、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
前記金属塩の金属が、ガドリニウム、鉄、マンガン、クロム、ジスプロシウム、テクネチウム、スカンジウム、バリウム、アルミニウムまたはホルミウムである、請求項149に記載の方法。
【請求項152】
前記画像化工程または検査工程が、X線方法を用いて実施される、請求項149に記載の方法。
【請求項153】
前記画像化工程が、磁気画像化工程である、請求項149に記載の方法。
【請求項154】
前記画像化工程が、磁気共鳴画像化工程である、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
前記画像化工程または検査工程が、放射化学方法を用いて実施される、請求項149に記載の方法。
【請求項156】
前記金属塩が、放射性金属塩である、請求項149に記載の方法。
【請求項157】
治療を必要とする被験体中の腫瘍を治療するか、または細胞機能を阻害する方法であって、該方法は、
、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と、金属キレーターである第一の部分およびポリアミンである第二の部分を含む化合物の放射性金属塩とを含有する薬学的組成物の治療有効量を該被験体に投与する工程を包含し、該ポリアミン部分は、生理学的pHで正に荷電され得る三つ以上の窒素原子を含む、方法。
【請求項158】
腫瘍が治療され、該腫瘍が悪性である、請求項157に記載の方法。
【請求項159】
腫瘍が治療され、該腫瘍が良性である、請求項157に記載の方法。
【請求項160】
細胞機能が甲状腺において阻害される、請求項157に記載の方法。
【請求項161】
前記放射性金属が、60Co、67Cu、90Sr、90Y、106Ru、111In、153Sm、186Re、188Re、192Ir、198Au、210Pb、210Bi、212Pb、212Biおよび241Amからなる群より選択される、請求項157に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−505044(P2007−505044A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525542(P2006−525542)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/029318
【国際公開番号】WO2005/023310
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(500021701)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデイション、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】