説明

ポリイミドフィルムおよびその製造方法

【課題】フィルムの走行性、接着性及び寸法安定性が優れると共に、フレキシブルプリント配線基板(FPC)やチップオンフィルム(COF)の自動光学検査システム(AOI)に適応可能なポリイミドフィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】ジアミン成分として3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物とから主としてイミド化によって製造されるポリイミドフィルムであって、粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内にあり、かつ平均粒子径が0.05〜0.7μmであり、さらに粒子径0.15〜0.60μmの無機粒子が全粒子中80体積%以上の割合を占める粒度分布を有する無機粒子がフィルム樹脂重量当たり0.1〜0.9重量%の割合で、フィルム中に分散されていることを特徴とするポリイミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミドフィルムおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、添加した無機粒子が露出せず、フィルム中に均一に分散した状態で表面突起を発生させて表面状態を良好に制御可能であり、フィルムの走行性、接着性及び寸法安定性が優れると共に、フレキシブルプリント配線基板(FPC)やチップオンフィルム(COF)の自動光学検査システム(AOI)に適応可能なポリイミドフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、耐熱性、耐寒性、耐薬品性、電気絶縁性および機械強度などにおいて優れた特性を有することが知られており、電線の電気絶縁材料、断熱材、フレキシブルプリント配線基板(FPC)のベースフィルム、ICのテープオートメイティッドボンディング(TAB)用のキャリアテープフィルム、およびICのリードフレーム固定用テープなどに広く利用されている。これらのうち、特にFPC、TAB用キャリアテープおよびリード固定用テープなどの用途においては、通常、種々の接着剤を介してポリイミドフィルムと銅箔とが接着されて用いられている。
【0003】
ポリイミドフィルムがこれらの用途に用いられる際に重要な実用特性は、フィルムの滑り性(易滑性)である。様々なフィルム加工工程において、フィルム支持体(たとえばロール)とフィルムとの易滑性、またフィルム同志の易滑性が確保されることにより、各工程における操作性、取り扱い性を向上させ、更にはフィルム上にシワ等の不良個所の発生が回避できるからである。
【0004】
また一方、ポリイミドフィルムの主用途であるフレキシブルプリント配線板用途においては、通常、種々の接着剤を介して銅箔と接着されているが、ポリイミドフィルムは、その化学構造及び耐薬品(溶剤)安定性により銅箔との接着性が不十分な場合が多いため、現状ではポリイミドフィルムにアルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、サンドブラスト処理などの表面処理を施してから、銅箔と接着されている。
【0005】
また、最近の電子部品のファインピッチ化、特にFPCの検査においては、従来は目視による線幅、異物などの検査が主流であったが、自動光学検査システム(AOI)が導入されるようになってからは、無機粉体を混入する従来処方で製造された耐熱性フィルムでは、走行性に関して十分満足したものが得られていたものの、AOIにおいては、無機粉体が大き過ぎるために、最近のFPCなどの狭ピッチ化に伴い、無機粒子が異物と判断されることがあり、これが自動検査システムの大きな障害になっている。
【0006】
従来、ポリイミドフィルムの易滑化技術としては、不活性無機化合物(例えばアルカリ土類金属のオルトリン酸塩、第2リン酸カルシウム無水物、ピロリン酸カルシウム、シリカ、タルク)をポリアミック酸に添加する方法(例えば、特許文献1参照)、更には微細粒子によってフィルム表面に微細な突起を形成後、プラズマ処理を施す方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。しかし、これらに示される無機粒子は粒子径が大きいために、自動光学検査システムには適応しないという問題があった。
【0007】
また、ポリイミド表層に平均粒子径が0.01〜100μmである無機質粒子が各粒子の一部をそれぞれ埋設させて保持されていて、一部露出した前記無機質粒子からなる多数の突起をフィルムの表面層に1×10〜5×10個/mm存在させる方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。この方法は、積極的に表面に無機粒子を露出させ、フィルム表面の摩擦係数を低減させることにより、易滑性効果を効果的に得ることを特徴としているが、無機質粒子が一部露出しているため、接面する他のフィルム表面にすり傷が発生し外観不良をきたすといった問題を抱えていた。
【特許文献1】特開昭62−68852号公報
【特許文献2】特開2000−191810号公報
【特許文献3】特開平5−25295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、フィルムの走行性、接着性及び寸法安定性が優れると共に、フレキシブルプリント配線基板(FPC)やチップオンフィルム(COF)の自動光学検査システム(AOI)に適応可能なポリイミドフィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目標を達成するために本発明によれば、ジアミン成分として3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物を主たる構成成分とし、イミド化によって製造されるポリイミドフィルムであって、粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内にあり、かつ平均粒子径が0.05〜0.7μmであり、さらに粒子径0.15〜0.60μmの無機粒子が全粒子中80体積%以上の割合を占める粒度分布を有する無機粒子がフィルム樹脂重量当たり0.1〜0.9重量%の割合で、フィルム中に分散されていることを特徴とするポリイミドフィルムが提供される。
【0011】
なお、本発明ポリイミドフィルムにおいては、
前記ポリイミドフィルムにおける各構成成分の割合が、ジアミン成分として30〜60モル%の3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び40〜70モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、酸二無水物成分として100モル%のピロメリット酸二無水物からなること、
前記無機粒子がフィルム樹脂重量当たり0.3〜0.8重量%の割合で含まれていること、
前記無機粒子の平均粒子径が0.1〜0.6μmであること、
前記無機粒子の平均粒子径が0.3〜0.5μmであること、
前記無機粒子に起因する突起がフィルム表面に存在し、その突起の高さが2μm以上のものの数が5個/40cm角以下であること、および
フィルム厚みが5〜75μmであること
が、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【0012】
また、上記本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとからなるジアミン成分と、ピロメリット酸二無水物からなるテトラカルボン酸二無水物成分を、極性有機溶媒中で反応させてポリアミド酸を製造し、これをイミド化した後、フィルムに成形するに際し、粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内にあり、かつ平均粒子径が0.05〜0.7μmであり、さらに粒子径0.15〜0.60μmの無機粒子が全粒子中80体積%以上の割合を占める粒度分布を有する無機粒子を、前記極性有機溶媒と同じ極性有機溶媒に分散させたスラリーを、ポリイミド製造工程中のポリアミド酸溶液に、前記無機粒子が樹脂重量当たり0.1〜0.9重量%の割合となるように添加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下に説明するとおり、添加した無機粒子が露出せず、フィルム中に均一に分散した状態で表面突起を発生させて表面状態を良好に制御可能であり、フィルムの走行性、接着性及び寸法安定性が優れると共に、フレキシブルプリント配線基板(FPC)やチップオンフィルム(COF)の自動光学検査システム(AOI)に適応可能なポリイミドフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
まず、本発明のポリイミドフィルムを得るに際しての前駆体であるポリアミド酸について説明する。
【0016】
本発明においては、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分と芳香族ジアミン成分または、この両者を主成分とする化学物質を有機溶媒中で付加重合させることによって、ワニス状ポリアミド酸を得るものであり、芳香族ジアミン成分として3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを、芳香族テトラカルボン酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物を、それぞれ主たる構成成分に使用する。すなわち、パラフェニレンジアミン、4、4’−ジアミノジフェニルエーテル、及びピロメリット酸二無水物、の3種類を必須の構成成分とし、これら3種類のみ、あるいはこれら3種類に加えて少量の別成分を加えることにより得られる。好ましくはジアミン成分として30〜60モル%の3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び40〜70モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用い、酸二無水物成分として100モル%のピロメリット酸二無水物を用いて得られる。3,4’−ジアミノジフェニルエーテルが多すぎると硬くなり、少なすぎると柔らかすぎるので、30〜60モル%が好ましく、更に好ましくは35〜55モル%、より好ましくは40〜50モル%である。4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが多すぎると柔らかくなり、少なすぎると硬くなるので、40〜70モル%が好ましく、更に好ましくは45〜65モル%、より好ましくは50〜60モル%である。
【0017】
本発明においては、上述の通り、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルや4,4’−ジアミノジフェニルエーテル以外に少量の他のジアミンを添加してもよい。また、ピロメリット酸二無水物以外に少量の他の酸二無水物を添加してもよい。具体的な他のジアミン及び酸二無水物としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
(1)酸二無水物
3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンジカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−デカヒドロナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,5,6−ヘキサヒドロナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロ−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロ−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,8,9,10−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等。
【0019】
(2)ジアミン
パラフェニレンジアミン、3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、メタフェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、3,4'−ジアミノジフェニルプロパン、3,3'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、ベンチジン、4,4'−ジアミノジフェニルサルファイド、3,4'−ジアミノジフェニルサルファイド、3,3'−ジアミノジフェニルサルファイド、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、2,6−ジアミノピリジン、ビス−(4−アミノフェニル)ジエチルシラン、3,3'−ジクロロベンチジン、ビス−(4−アミノフェニル)エチルホスフィノキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)フェニルホスフィノキサイド、ビス−(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミン、ビス−(4−アミノフェニル)−N−メチルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,4'−ジメチル−3',4−ジアミノビフェニル3,3'−ジメトキシベンチジン、2,4−ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、p−ビス(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス−(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3−ジアミノアダマンタン、3,3'−ジアミノ−1,1'−ジアミノアダマンタン、3,3'−ジアミノメチル1,1'−ジアダマンタン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4'−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサエチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾール、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N−(3−アミノフェニル)−4−アミノベンズアミド、4−アミノフェニル−3−アミノベンゾエート等。
【0020】
また、本発明において、ポリアミド酸溶液の形成に使用される有機溶媒の具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−,m−,またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどの非プロトン性極性溶媒を挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、さらにはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。
【0021】
重合方法は公知のいずれの方法で行ってもよく、例えば
(1)先に芳香族ジアミン成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族テトラカルボン酸類成分を芳香族ジアミン成分全量と当量になるよう加えて重合する方法。
【0022】
(2)先に芳香族テトラカルボン酸類成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族ジアミン成分を芳香族テトラカルボン酸類成分と等量になるよう加えて重合する方法。
【0023】
(3)一方の芳香族ジアミン化合物を溶媒中に入れた後、反応成分に対して芳香族テトラカルボン酸類化合物が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、もう一方の芳香族ジアミン化合物を添加し、続いて芳香族テトラカルボン酸類化合物を全芳香族ジアミン成分と全芳香族テトラカルボン酸類成分とがほぼ等量になるよう添加して重合する方法。
【0024】
(4)芳香族テトラカルボン酸類化合物を溶媒中に入れた後、反応成分に対して一方の芳香族ジアミン化合物が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、芳香族テトラカルボン酸類化合物を添加し、続いてもう一方の芳香族ジアミン化合物を全芳香族ジアミン成分と全芳香族テトラカルボン酸類成分とがほぼ等量になるよう添加して重合する方法。
【0025】
(5)溶媒中で一方の芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸類をどちらかが過剰になるよう反応させてポリアミド酸溶液(A)を調整し、別の溶媒中でもう一方の芳香族ジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸類をどちらかが過剰になるよう反応させポリアミド酸溶液(B)を調整する。こうして得られた各ポリアミド酸溶液(A)と(B)を混合し、重合を完結する方法。この時ポリアミド酸溶液(A)を調整するに際し芳香族ジアミン成分が過剰の場合、ポリアミド酸溶液(B)では芳香族テトラカルボン酸成分を過剰に、またポリアミド酸溶液(A)で芳香族テトラカルボン酸成分が過剰の場合、ポリアミド酸溶液(B)では芳香族ジアミン成分を過剰にし、ポリアミド酸溶液(A)と(B)を混ぜ合わせこれら反応に使用される全芳香族ジアミン成分と全芳香族テトラカルボン酸類成分とがほぼ等量になるよう調整する。
【0026】
なお、重合方法はこれらに限定されることはなく、その他公知の方法を用いてもよい。
【0027】
こうして得られるポリアミド酸溶液は、固形分を5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%を含有しており、またその粘度はブルックフィールド粘度計による測定値で10〜2000Pa・s、好ましくは、100〜1000Pa・sのものが、安定した送液のために好ましく使用される。また、有機溶媒溶液中のポリアミド酸は部分的にイミド化されていてもよい。
【0028】
本発明のフィルム表面上に突起を形成させるために樹脂に添加される無機粒子は、前記のポリイミドフィルム製造工程で接触する全ての化学物質に対して不溶であるであることが必要である。
【0029】
本発明において使用可能な無機粒子としては、SiO(シリカ)、TiO、CaHPO、Ca等を好適に挙げることができる。中でもゾル・ゲル法の湿式粉砕法で製造したシリカが、ワニス状ポリアミド酸溶液中で安定かつ物理的に安定し、ポリイミドの諸物性に影響を与えないことから好ましく使用される。
【0030】
さらに、微細シリカ粉は、N,N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキサイド、n−メチルピロリドン等の極性溶媒に均一に分散させたシリカスラリーとして使用することで、凝集を防止できるため好ましい。このスラリーは、粒子径が非常に小さいため、沈降速度が遅く安定している。また、たとえ沈降しても再攪拌する事で容易に再分散可能である。
【0031】
本発明において、ポリイミドフィルムの表面に突起を形成させる為に添加される無機粒子は、その粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内にあり、かつ平均粒子径が0.05μm〜0.7μmの範囲、より好ましくは0.1〜0.6μmの範囲、さらにより好ましくは0.3〜0.5μmの範囲にある場合に、ポリイミドフィルムを自動光学検査システムへ検査上での問題を生じることなく適応可能とするばかりか、フィルムの機械物性等の低下を発生させずに使用可能とする。逆にこれらの範囲より平均粒子径が下回ると、フィルムへの充分な易滑性が得られず、逆に上回ると、自動検査システムで無機粒子が異物と判断され障害を来すことになるため好ましくない。また、通常のフィルムの厚さは5μm〜75μmであるため、この粒子径範囲での無機粒子がボリアミドフィルムの表面に露出することはない。
【0032】
無機粒子の添加量は、フィルム樹脂重量当たり0.1〜0.9重量%が好ましく、0.3〜0.8重量%の割合で含まれていることがより好ましい。0.1重量%以下であるとフィルム表面の突起数も不足することによってフィルムへの充分な易滑性が得られず、搬送性が悪化し、ロールに巻いた時のフィルム巻姿も悪化するため好ましくない。また、逆に0.9重量%以上であると、フィルムの易滑性は良化するものの、無機粒子の異常凝集による粗大突起が増加し、これが結果的に自動検査システムで異物と判断され障害を来すことになるため好ましくない。
【0033】
無機粒子による表面突起の形成により、フィルム表面積も拡大し、十分に粗面化されアンカー効果が見られ接着性を損なうこともなくなるのである。
【0034】
無機粒子の粒度分布については、狭い分布であること、つまり類似の大きさの粒子が全粒子に占める割合が高い方が良く、具体的には粒子径0.15〜0.60μmの粒子が全粒子中80体積%以上の割合を占めることが好ましい。この範囲を下回り0.15μm以下の粒子の占める割合が高くなると、フィルムの易滑性が低下するため好ましくない。また、無機粒子送液の際には5μmカットフィルターや10μmカットフィルターにより粗粒を除去することが可能であるが、0.60μm以上の粒子の占める割合が高くなると、フィルターの目詰まりを頻発させてしまい工程安定性を損ねるばかりか、粒子の粗大凝集が生じやすくなるため好ましくない。
【0035】
無機粒子に起因したフィルム表面突起においては、高さ2μm以上の突起数が5個/40cm角以下であること、より好ましくは3個/40cm角以下、さらにより好ましくは1個/40cm角以下であることが望ましい。これよりも多いと自動検査システムで無機粒子が異物と判断され障害を来すことになるため好ましくない。
【0036】
本発明においては、このような無機粒子を、ポリイミドフィルムの製造に使用される有機溶媒と同じ極性溶媒に分散させたスラリーを、ポリイミド製造工程中のポリアミド酸溶液に添加した後、脱環化脱溶媒させてポリイミドフィルムを得ることが好ましいが、ポリアミド酸重合前の有機溶媒中に無機粒子スラリーを添加した後、ポリアミド酸重合、脱環化脱溶媒を経てポリイミドフィルムを得ることなど、脱環化脱溶媒前の工程であればいかなる工程において無機粒子スラリーを添加することが可能である。
【0037】
次に、本発明のポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
【0038】
ポリイミドフィルムを製膜する方法としては、ポリアミック酸溶液をフィルム状にキャストし熱的に脱環化脱溶媒させてポリイミドフィルムを得る方法、およびポリアミック酸溶液に環化触媒及び脱水剤を混合し化学的に脱環化させてゲルフィルムを作成しこれを加熱脱溶媒することによりポリイミドフィルムを得る方法が挙げられるが、後者の方が得られるポリイミドフィルムの熱膨張係数を低く抑えることができることから好ましい。
【0039】
化学的に脱環化させる方法においては、まず上記ポリアミック酸溶液を調製する。
【0040】
上記ポリアミック酸溶液は、環化触媒(イミド化触媒)、脱水剤およびゲル化遅延剤などを含有することができる。
【0041】
本発明で使用される環化触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミンなどの脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、およびイソキノリン、ピリジン、β−ピコリンなどの複素環第3級アミンなどが挙げられるが、なかでも複素環式第3級アミンから選ばれる少なくとも一種類のアミンを使用するのが好ましい。
【0042】
本発明で使用される脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族カルボン酸無水物、および無水安息香酸などの芳香族カルボン酸無水物などが挙げられるが、なかでも無水酢酸および/または無水安息香酸が好ましい。
【0043】
ポリアミック酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法としては、環化触媒および脱水剤を含有せしめたポリアミック酸溶液をスリット付き口金から支持体上に流延してフィルム状に成形し、支持体上でイミド化を一部進行させて自己支持性を有するゲルフィルムとした後、支持体より剥離し、加熱乾燥/イミド化し、熱処理を行う。
【0044】
上記ポリアミック酸溶液は、スリット状口金を通ってフィルム状に成型され、加熱された支持体上に流延され、支持体上で熱閉環反応をし、自己支持性を有するゲルフィルムとなって支持体から剥離される。
【0045】
上記支持体とは、金属製の回転ドラムやエンドレスベルトであり、その温度は液体または気体の熱媒、および/または電気ヒーターなどの輻射熱により制御される。
【0046】
上記ゲルフィルムは、支持体からの受熱および/または熱風や電気ヒータなどの熱源からの受熱により、30〜200℃、好ましくは40〜150℃に加熱されて閉環反応し、遊離した有機溶媒などの揮発分を乾燥させることにより自己支持性を有するようになり、支持体から剥離される。
【0047】
上記支持体から剥離されたゲルフィルムは、通常回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向に延伸される。延伸は、140℃以下の温度で1.05〜1.9倍、好ましくは1.1〜1.6倍、さらに好ましくは1.1〜1.5倍の倍率で実施される。走行方向に延伸されたゲルフィルムは、テンター装置に導入され、テンタークリップに幅方向両端部を把持されて、テンタークリップと共に走行しながら、幅方法へ延伸される。
【0048】
上記の乾燥ゾーンで乾燥したフィルムは、熱風、赤外ヒーターなどで15秒から10分加熱される。次いで、熱風および/または電気ヒーターなどにより、250〜500の温度で15秒から20分熱処理を行う。走行方向への延伸倍率と幅方向への延伸倍率を調整しながら、得られるポリイミドフィルムのフィルム厚みを5〜75μmに調整するのが好ましい。この範囲より厚くても薄くなっても、製膜性が著しく低下することになるため好ましくない。
【実施例】
【0049】
以下、本発明について実施例を用いて説明する。
【0050】
本発明における各種物性の測定方法について以下に説明する。
【0051】
[摩擦係数(静摩擦係数)]
フィルムの処理面同士を重ね合わせ、JIS K−7125(1999)に基づき測定した。すなわち、スベリ係数測定装置Slip Tester(株式会社テクノニーズ製)を使用し、フィルム処理面同士を重ね合わせて、その上に200gのおもりを載せ、フィルムの一方を固定、もう一方を100mm/分で引っ張り、摩擦係数を測定した。
【0052】
[接着力]
接着性評価方法は具体的にはIPC−FC−241の方法に基づき、ポリイミドフィルムと銅箔とを市販の熱可塑性ポリイミド接着剤で接着し、硬板上にフィルムを固定し、測定することによって求めた。
【0053】
[自動光学検査(AOI)]
オルボテック社製のSK−75を使用してベースフィルムを検査した。異物と微粒子の区別の付く場合を「○」評価、一方異物と微粒子の大きさが類似していて、両者の区別が付かない場合を「×」評価とした。
【0054】
[無機粒子の評価]
堀場製作所のレーザ回析/散乱式粒度分布測定装置LA−910を用い、極性溶媒に分散させた試料を測定、解析した結果から粒子径範囲、平均粒子径、粒子径0.15〜0.60μmの全粒子中に対する占有率を読み取った。
【0055】
[異常突起数]
フィルム40cm角面積当たりにおいて、高さ2μm以上の突起数をカウントした。高さ測定は、レーザーテック(株)製走査型レーザー顕微鏡「1LM15W」にて、ニコン製100倍レンズ(CF Plan 100×/0.95 ∞/0 EPI)を用いて、「SURFACE1」モードにてフィルム表面を撮影・解析することにより確認した。
【0056】
[フィルム厚み]
Mitutoyo製ライトマチック(Series318)を使用して測定した。
【0057】
[線膨張係数]
島津製作所製TMA−50を使用し、測定温度範囲:50〜200℃、昇温速度:10℃/minの条件で測定した。
【0058】
次に、ボリアミド酸溶液の合成例を説明する。
【0059】
[合成例1]
ピロメリット酸二無水物(分子量218.12)/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)/3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)をモル比で5/2/3の割合で用意し、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)中18.5重量%溶液にして重合し、3000poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0060】
[合成例2]
ピロメリット酸二無水物(分子量218.12)/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)/3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)をモル比で2/1/1の割合で用意し、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)中18.5重量%溶液にして重合し、3000poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0061】
[合成例3]
ピロメリット酸二無水物(分子量218.12)/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)/3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)をモル比で100/45/55の割合で用意し、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)中18.5重量%溶液にして重合し、3000poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0062】
[合成例4]
ピロメリット酸二無水物(分子量218.12)/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)/3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)をモル比で100/55/45の割合で用意し、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)中18.5重量%溶液にして重合し、3000poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0063】
[合成例5]
ピロメリット酸二無水物(分子量218.12)/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(分子量200.24)をモル比で50/50の割合で混合し、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)18.5重量%溶液にして重合し、3000poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0064】
[実施例1]
全粒子の粒子径が0.01μm以上1.5μm以下に収まっており、平均粒子径0.32μm、粒子径0.15〜0.60μmの粒子が全粒子中87.5体積%のシリカのN,N−ジメチルアセトアミドスラリーを合成例1で得たポリアミド酸溶液に樹脂重量当たり0.3重量%添加し、十分攪拌、分散させた。このポリアミド酸溶液に無水酢酸(分子量102.09)とイソキノリンからなる転化剤をポリアミド酸溶液に対し50重量%の割合で混合、攪拌した。この時、ポリアミド酸のアミド酸基に対し、無水酢酸及びイソキノリンがそれぞれ2.0及び0.4モル当量になるように調製した。得られた混合物を、T型スリットダイより回転する90℃のステンレス製ドラム上にキャストし、残揮発成分が55重量%、厚み約0.05mmの自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをドラムから引き剥がし、その両端を把持し、加熱炉にて200℃×30秒、350℃×30秒、550℃×30秒処理し、厚さ38μmのポリイミドフィルムを得た。
【0065】
得られたポリイミドフィルムの特性を表1に示した。
【0066】
[実施例2〜6]
使用したポリアミド酸溶液、シリカの平均粒子径、シリカ添加量、粒子径0.15〜0.60μmの粒子の全粒子中に占める割合をそれぞれ表1のように設定した以外は実施例1と同様にして得られた38μm厚みのポリイミドフィルムについてそれぞれ特性を評価し、表1に示した。
【0067】
[実施例7]
全粒子の粒子径が0.01μm以上1.5μm以下に収まっており、平均粒子径0.37μm、粒子径0.15〜0.60μmの粒子が全粒子中86.5体積%のシリカのN,N−ジメチルアセトアミドスラリーを合成例1で得たポリアミド酸溶液に樹脂重量当たり0.35重量%添加し、十分攪拌、分散させた。このポリアミド酸溶液に無水酢酸(分子量102.09)とイソキノリンからなる転化剤をポリアミド酸溶液に対し50重量%の割合で混合、攪拌した。この時、ポリアミド酸のアミド酸基に対し、無水酢酸及びイソキノリンがそれぞれ2.0及び0.4モル当量になるように調製した。得られた混合物を、T型スリットダイより回転する90℃のステンレス製ドラム上にキャストし、残揮発成分が55重量%、厚み約0.05mmの自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをドラムから引き剥がし、その両端を把持し、加熱炉にて200℃×30秒、350℃×30秒、550℃×30秒処理し、厚さ25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0068】
得られたポリイミドフィルムの特性を表2に示した。
【0069】
[実施例8]
ドラムの回転速度は実施例7と同一で、ドラムから引き剥がし後のゲルフィルム搬送速度(製膜速度)を実施例7よりも2倍に速め、12.5μm厚みのフィルムを得た以外は、実施例7と同様にして得たポリイミドフィルムについてそれぞれ特性を評価し、表2に示した。
【0070】
[実施例9]
ドラムの回転速度は実施例7と同一で、ドラムから引き剥がし後のゲルフィルム搬送速度(製膜速度)を実施例7よりも4倍に速め、7.5μm厚みのフィルムを得た以外は、実施例7と同様にして得たポリイミドフィルムについてそれぞれ特性を評価し、表2に示した。
【0071】
[実施例10]
ドラムの回転速度は実施例7と同一で、ドラムから引き剥がし後のゲルフィルム搬送速度(製膜速度)を実施例7よりも2分の1の速度とし、50μm厚みのフィルムを得た以外は、実施例7と同様にして得たポリイミドフィルムについてそれぞれ特性を評価し、表2に示した。
【0072】
[実施例11]
ドラムの回転速度は実施例7と同一で、ドラムから引き剥がし後のゲルフィルム搬送速度(製膜速度)を実施例7よりも3分の1の速度とし、75μm厚みのフィルムを得た以外は、実施例7と同様にして得たポリイミドフィルムについてそれぞれ特性を評価し、表2に示した。
【0073】
[比較例1]
シリカを添加しない以外は、実施例1と同様にして、38μm厚みのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムについて特性を評価し、表3に示した。静摩擦係数が高く滑り性の悪いフィルムが得られた。また接着力も低かった。
【0074】
[比較例2]
全粒子の粒子径が0.1μm以上4.5μm以下に収まっており、平均粒子径1.1μm、粒子径0.15〜0.60μmの粒子が全粒子中27.3体積%のシリカのN,N−ジメチルアセトアミドスラリーを合成例6で得たポリアミド酸溶液に樹脂重量当たり0.2重量%添加し、十分攪拌、分散させた。このポリアミド酸溶液に無水酢酸(分子量102.09)とイソキノリンからなる転化剤をポリアミド酸溶液に対し50重量%の割合で混合、攪拌した。この時、ポリアミド酸のアミド酸基に対し、無水酢酸及びイソキノリンがそれぞれ2.0及び0.4モル当量になるように調製した。得られた混合物を、T型スリットダイより回転する90℃のステンレス製ドラム上にキャストし、残揮発成分が55重量%、厚み約0.05mmの自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをドラムから引き剥がし、その両端を把持し、加熱炉にて200℃×30秒、350℃×30秒、550℃×30秒処理し、厚さ38μmのポリイミドフィルムを得た。
【0075】
得られたポリイミドフィルムの特性を表3に示した。AOI検査では異物と微粒子の区別が付かなく、異常突起も多く発生した。また線膨張係数が高いため寸法変化が大きかった。
【0076】
[比較例3]
粒子径範囲が0.01〜0.3μm、平均粒子径0.08μm、添加量0.35重量%、粒子径0.15〜0.60μmの粒子の全粒子中に占める割合31.4体積%のリン酸水素カルシウムを用いた以外は、比較例2と同様にして得られた38μm厚みのポリイミドフィルムについて特性を評価し、表3に示した。静摩擦係数が高く、滑り性がやや悪いフィルムが得られた。また線膨張係数が高いため寸法変化が大きかった。
【0077】
[比較例4]
粒子径範囲が0.01〜1.5μm、平均粒子径0.4μm、添加量0.35重量%、粒子径0.15〜0.60μmの粒子の全粒子中に占める割合72.6体積%のリン酸水素カルシウムを用いた以外は、比較例2と同様にして得られた38μm厚みのポリイミドフィルムについて特性を評価し、表3に示した。この例では、0.9〜1.3μmの粒子径の占有率が全体の22.3体積%を占めていたため、これが原因で異常突起数が多くなった。またAOI検査では異物と微粒子の区別が付けづらい結果となった。さらには線膨張係数が高いため寸法変化が大きかった。
【0078】
[比較例5]
合成例1で得たポリアミド酸溶液を用いた以外は、比較例2と同様にして、38μm厚みのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムについて特性を評価し、表3に示した。AOI検査では異物と微粒子の区別が付かなく、異常突起も多く発生した。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
表1〜3の結果から明らかな通り、ジアミン成分として3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物とから主としてイミド化によって製造されるポリイミドフィルムであって粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内にあり、かつ平均粒子径が0.05〜0.7μmである無機粒子を主体とする粉体がフィルム樹脂重量当たり0.1〜0.9重量%の割合で、フィルム中に均一に分散された本発明のポリイミドフィルムは、優れた易滑性、寸法安定性、接着性を保持し、粗大粒子による突起数も少ないことからAOI検査により該粒子が異物と判断されるような障害もなく、したがって微細な配線を形成するフレキシブルプリント配線基板(FPC)やチップオンフィルム(COF)などの用途に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明のポリイミドフィルムは、フィルムの走行性、接着性及び寸法安定性が優れると共に、フレキシブルプリント配線基板(FPC)やチップオンフィルム(COF)の自動光学検査システム(AOI)に適応可能であることから、AOI検査により無機粒子が異物と判断されるような障害もなく、微細な配線を形成するフレキシブルプリント配線基板(FPC)やチップオンフィルム(COF)などの用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジアミン成分として3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、酸二無水物成分としてピロメリット酸二無水物を主たる構成成分とし、イミド化によって製造されるポリイミドフィルムであって、粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内にあり、かつ平均粒子径が0.05〜0.7μmであり、さらに粒子径0.15〜0.60μmの無機粒子が全粒子中80体積%以上の割合を占める粒度分布を有する無機粒子がフィルム樹脂重量当たり0.1〜0.9重量%の割合で、フィルム中に分散されていることを特徴とするポリイミドフィルム。
【請求項2】
前記ポリイミドフィルムにおける各構成成分の割合が、ジアミン成分として30〜60モル%の3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び40〜70モル%の4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、酸二無水物成分として100モル%のピロメリット酸二無水物からなることを特徴とする請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記無機粒子がフィルム樹脂重量当たり0.3〜0.8重量%の割合で含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記無機粒子の平均粒子径が0.1〜0.6μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記無機粒子の平均粒子径が0.3〜0.5μmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
前記無機粒子に起因する突起がフィルム表面に存在し、その突起の高さが2μm以上のものの数が5個/40cm角以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
フィルム厚みが5〜75μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項8】
3,4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとからなるジアミン成分と、ピロメリット酸二無水物からなるテトラカルボン酸二無水物成分を、極性有機溶媒中で反応させてポリアミド酸を製造し、これをイミド化した後、フィルムに成形するに際し、粒子径が0.01〜1.5μmの範囲内にあり、かつ平均粒子径が0.05〜0.7μmであり、さらに粒子径0.15〜0.60μmの無機粒子が全粒子中80体積%以上の割合を占める粒度分布を有する無機粒子を、前記極性有機溶媒と同じ極性有機溶媒に分散させたスラリーを、ポリイミド製造工程中のポリアミド酸溶液に、前記無機粒子が樹脂重量当たり0.1〜0.9重量%の割合となるように添加することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2008−106141(P2008−106141A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290152(P2006−290152)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】