説明

ポリイミドフィルムの製造方法

【課題】 ポリアミック酸ドープと閉環触媒との混練性向上、及び製膜時におけるポリアミック酸混合溶液の配管送液性を向上させたポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 (1)有機溶媒中でジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させることにより、ポリアミック酸の濃度が0.5〜30重量%であるポリアミック酸ドープを調整し
(2)得られたポリアミック酸ドープに、ポリアミック酸の繰り返し単位1モル当たり0.01〜25モルの三級有機アミン化合物を、10℃以上の温度で加え攪拌混練することにより、ポリアミック酸組成物を調整し、
(3)ついで得られたポリアミック酸組成物に0℃以下にて無水酢酸を連続添加し、ポリアミック酸混合溶液を得る工程を含むポリイミドフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミック酸ドープと閉環触媒である三級有機アミン化合物とからなるポリアミック酸組成物を調整する工程を含むポリイミドフィルムの製造方法である。さらに詳細にはポリアミック酸ドープと閉環触媒との混練性向上、及び製膜時におけるポリアミック酸混合溶液の配管送液性を向上させたポリイミドフィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは高耐熱性、高電気絶縁性を有することから耐熱性を必要とする電気絶縁用素材として広範な産業分野で使用されている。その製造方法として、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分を反応させることにより生成するポリアミック酸ドープを支持体上にキャスト製膜し、閉環触媒および脱水剤を含有する溶媒中に浸漬させイミド化もしくはイソイミド化を行いゲル状フィルムを調整し、膨潤状態で二軸延伸を行いイミド化する製造方法いわゆる湿式法と、アミック酸ドープと閉環触媒・脱水剤を含有する溶液を低温でキャスト製膜し、溶媒を飛ばしながら固化させた後、膨潤状態で二軸延伸してイミド化する乾式法がある。連続生産を考慮した場合、乾式法がコスト的に優位性がある。高温でのドープの送液はゲル化反応が進行するため行えず、低温ではドープの見かけ粘度が上がるためドープ送液の定量性が確保できないという問題や閉環触媒・脱水剤との混練が不十分になるという問題がある。さらに生産性向上を目的とした場合、ドープの濃度を高くすることが望まれ最近報告がなされているが(例えば特許文献1、および2)、ドープ濃度が高くなるほど上記の問題が顕著になり高生産性に適した乾式ゲル製膜方法は知られていない。
【0003】
【特許文献1】特開2004−2880号公報
【特許文献2】特開2004−223787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、工業化に有利なポリイミドフィルムの製造方法である乾式ゲル製膜においてポリアミック酸ドープと閉環触媒である三級有機アミン化合物とからなるポリアミック酸組成物の混練の均一性向上、さらには該組成物と脱水剤である無水酢酸とからなるポリアミック酸混合溶液の混練の均一性向上、及び低温でのポリアミック酸混合溶液の安定した送液性、製膜性を確保できるポリイミドフィルムの乾式ゲル製膜製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは支持体上に流延されたポリアミック酸混合溶液のゲル化を安定して行うことが可能である乾式ゲル製膜製造方法について鋭意検討した結果、ポリアミック酸ドープと閉環触媒である三級有機アミン化合物とを10℃以上の温度で攪拌混練することによりポリアミック酸組成物を得た後、0℃以下にて無水酢酸を連続添加してポリアミック酸混合溶液を得る工程を含むポリイミドフィルムを製造する方法を見出し本発明に到った。さらに詳細には本発明はポリアミック酸と三級有機アミン化合物および無水酢酸の混合条件をコントロールして見かけ粘度を調整することにより、ポリアミック酸組成物、およびポリアミック酸混合溶液の送液性を確保したポリイミドフィルムの製造方法である。
【0006】
すなわち本発明は(1)有機溶媒中でジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させることにより、ポリアミック酸の濃度が0.5〜30重量%であるポリアミック酸ドープを調整し
(2)得られたポリアミック酸ドープに、ポリアミック酸の繰り返し単位1モル当たり0.01〜25モルの三級有機アミン化合物を、10℃以上の温度で加え攪拌混練することにより、ポリアミック酸組成物を調整し、
(3)ついで得られたポリアミック酸組成物に0℃以下にて無水酢酸を連続添加しポリアミック酸混合溶液を得て、
(4)ついで得られたポリアミック酸混合溶液を水の濃度1〜4000ppmの雰囲気下にて支持体上に流延して流延フィルムを得て、
(5)得られた流延フィルムを支持体とともに10℃以上に加熱して、ポリアミック酸の少なくとも一部がポリイミドもしくはポリイソイミドに変換されたゲル状フィルムを得て、
(6)得られたゲル状フィルムを支持体から分離して必要に応じ洗浄した後、同時二軸延伸または逐次二軸延伸し二軸延伸フィルムを得て、
(7)得られた二軸延伸フィルムを必要に応じて洗浄して溶媒を除去した後、乾燥・熱処理に付して二軸配向ポリイミドフィルムを形成することを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、ポリアミック酸ドープと閉環触媒である三級有機アミン化合物とをあらかじめ10℃以上の温度で加え攪拌混練することにより、ポリアミック酸ドープと閉環触媒の混練性が向上し均一性が増し、またポリアミック酸組成物、およびポリアミック酸混合溶液の配管輸送や流延工程での見かけ粘度を制御でき、安定してポリイミドフィルムを製造することができる。また本発明方法により高濃度のポリアミック酸ドープからも安定してポリイミドフィルムを製造できることから、高生産性のポリイミドフィルム製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の方法について詳述する。
本発明で得られるポリイミドを構成するジアミン成分はp−フェニレンジアミンから主としてなり、さらにそれとは異なる芳香族ジアミンを含んでも良い。
【0009】
p−フェニレンジアミンと異なる芳香族ジアミン成分としては、例えばm−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノアントラセン、2,7−ジアミノアントラセン、1,8−ジアミノアントラセン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,5−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノトルエンベンジジン、3,3’−ジメチルアミノビフェニル、3,3’―ジクロロベンジジン、3,3’―ジメチルベンジジン、3,3’―ジメトキシベンジジン、2,2’―ジアミノベンゾフェノン、4,4’―ジアミノベンゾフェノン、3,3’―ジアミノジフェニルエーテル、4,4’―ジアミノジフェニルエーテル、3,4’―ジアミノジフェニルエーテル、3,3’―ジアミノジフェニルメタン、4,4’―ジアミノジフェニルメタン、3,4’―ジアミノジフェニルスルホン、4,4’―ジアミノジフェニルスルホン、3,3’―ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’―ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’―ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’―ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’―ジアミノー3,3’,5,5’―テトラメチルジフェニルエーテル、4,4’―ジアミノー3,3’,5,5’―テトラエチルジフェニルエーテル、4,4’―ジアミノー3,3’,5,5’―テトラメチルジフェニルメタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、1,4−ビス(3−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホニル)ベンゼン、4,4’―ビス(3−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’―ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、ビス(4−アミノフェニル)アミンビス(4−アミノフェニル)−N−メチルアミンビス(4−アミノフェニル)−N−フェニルアミンビス(4−アミノフェニル)ホスフィンオキシド、1,1―ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,1―ビス(4−アミノフェニル)エタン、2,2―ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2―ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2―ビス(4−アミノー3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’ービス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−メチルー4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3−クロロー4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3、5−ジメチルー4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[ビス4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−メチルー(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3−クロロー(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[3、5−ジメチルー(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4ー(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−メチルー(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3、5−ジメチルー(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4ー(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3、5−ジブロモ−4ー(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロー2,2−ビスー(4−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロー2,2−ビスー[3−メチルー(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等及びそれらのハロゲン原子あるいはアルキル基による芳香族置換体が挙げられる。
【0010】
ジアミン成分は、p−フェニレンジアミン単独からなるかあるいはp−フェニレンジアミンおよび上記のごとくそれと異なる芳香族ジアミンとの組み合わせからなる。後者の組み合わせの場合、p−フェニレンジアミンは全ジアミン成分に基づき30モル%以上、好ましくは90モル%を超える割合すなわちそれと異なる芳香族ジアミンが70モル%以下、好ましくは10モル%未満からなる。また本発明のポリイミドを構成するテトラカルボン酸成分は、ピロメリット酸およびそれと異なる芳香族テトラカルボン酸である。
【0011】
ピロメリット酸と異なる芳香族カルボン酸成分としては、例えば1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水物、2,2’、3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3’、3,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’、3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’、3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’、3,3’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’、4,4’−p−テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2、4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2、5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2、6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4、5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3、6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3、6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2、5,6−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2、6,7−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2、7,8−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2、9,10−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2、6,7−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2、7,8−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、1,2、9,10−フェナンスレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレンー1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレンー1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレンー1,4,5,8ーテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−テトラクロロナフタレンー2,3,6,7ーテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロー2,2−ビスー(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物等が挙げられる。テトラカルボン酸成分は、ピロメリット酸単独からなるかあるいはピロメリット酸及び上記のごとき異なる芳香族カルボン酸との組み合わせからなる。後者の組み合わせの場合、ピロメリット酸は、全テトラカルボン酸成分に基づき、80モル%を超える割合、好ましくは90モル%を超える割合すなわちそれと異なる芳香族テトラカルボン酸が20モル%未満、好ましくは10モル%未満からなる。
【0012】
以下工程を詳述する。
まず工程(1)として、ジアミン成分、テトラカルボン酸成分、および有機溶媒とからなるポリアミック酸ドープを調整する。ジアミン成分は、p−フェニレンジアミン単独からなるかあるいはp−フェニレンジアミンおよびそれと異なる芳香族ジアミンとの組み合わせからなる。p−フェニレンジアミンと異なるジアミンとしては、ポリイミドについて前記したのと同じ具体例を挙げることができる。後者の組み合わせの場合、p−フェニレンジアミンは、全ジアミン成分に基づき、30モル%を超える割合、好ましくは90モル%を超える割合、すなわちそれと異なる芳香族ジアミンが70モル%以下、好ましくは10モル%未満からなる。
【0013】
またテトラカルボン酸成分は、ピロメリット酸単独からなるかあるいはピロメリット酸およびそれと異なる芳香族テトラカルボン酸との組み合わせからなる。ピロメリット酸と異なる芳香族テトラカルボン酸としては、ポリイミドについて前記したのと同じ具体例を挙げることができる。後者の組み合わせの場合、ピロメリット酸は全テトラカルボン酸成分に基づき、80モル%を超える割合、好ましくは90モル%を超える割合であり、それと異なる芳香族テトラカルボン酸が20モル%未満、好ましくは10モル%未満からなる。
【0014】
高弾性率発現の観点から、もっとも好ましいテトラカルボン酸とジアミンの組み合わせとして、ピロメリット酸とp−フェニレンジアミンの組み合わせが好ましい。
【0015】
またポリアミック酸の製造方法は特に限定されず、製造には従来公知の方法を用いることができるが、これらのジアミンと酸無水物は、ジアミン対無水物のモル比として好ましくは0.90から1.10、より好ましくは0.95から1.05、さらに好ましくは0.97から1.03で用いることが好ましい。
【0016】
モル比が0.95未満または1.05より大きい値の場合、得られるポリアミック酸の重合度が低く、製膜が困難となる。重合反応は有機溶媒中で攪拌しながら−20℃以上、80℃以下の範囲で行うことが好ましい。−20℃未満の場合、十分な反応速度が得られず好ましくない。また80℃より高いと、部分的にイミド化が起きたり、副反応が発生するため安定してポリアミック酸が得られなくなる場合がある。好ましくは−10℃以上、70℃以下であり、さらに好ましくは0℃以上50℃以下である。また、用いられる溶媒は可能な限り乾燥されていることが好ましい。
【0017】
有機溶媒としてはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略すことがある)、1,3−ジメチルイミダゾリジノンよりなる群から選ばれる少なくとも一種からなる溶媒が挙げられる。好ましくは、NMP及びまたはN,N−ジメチルアセトアミドである。有機溶媒中に水分が多く含まれている場合、所望の重合度のポリアミック酸を得ることが困難となる場合がある。具体的には有機溶媒に含まれる水分率としては0.1〜1000ppmであることが好ましい。好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは100ppm以下であり、50ppm以下であることが好ましい。溶媒に含まれる水分率が0.1ppm未満の場合、このような水分率を維持管理するには設備的負荷が大きくなる。
【0018】
工程(1)によれば、ポリアミック酸の濃度が0.5〜30重量%、より好ましくは2〜15重量%のポリアミック酸ドープが調整される。0.5重量%未満の場合、十分に重合を進めることが困難でありフィルムを調整するのに、十分な粘度の溶液が得られなくなることがある。30重量%より濃い濃度の場合、逆に高粘度となり、製膜性に劣る溶液となる場合がある。好ましくは1重量%以上20重量%以下であり、さらに好ましくは4重量%以上20重量%以下である。またポリアミック酸の重合途中及び/または重合終了時に溶媒で希釈し、最終的に得られるポリアミック酸ドープの濃度を調整することもできる。
【0019】
次いで工程(2)においては上記工程(1)で調整したポリアミック酸ドープに閉環触媒である三級有機アミン化合物をバッチで添加混合する。三級有機アミン化合物は無水酢酸とポリアミック酸の反応触媒として働くものであり、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチレンジアミンといった三級脂肪族アミン;N,N−ジメチルアニリン、1,8−ビス(N,N−ジメチルアミノ)ナフタレンのごとき芳香族アミン、ピリジンおよびその誘導体、ピコリンおよびその誘導体―ルチジン、キノリン、イソキノリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、N,N−ジメチルアミノピリジンのごとき複素環式化合物を用いることができる。この中で経済性からはピリジンおよびピコリンが好ましく、なかでもピリジンが好ましい。
【0020】
またトリエチレンジアミンおよびN,N−ジメチルアミノピリジンは無水酢酸との組み合わせにおいて極めて高いイミド基分率が実現可能であり、水に対する耐性の高いゲル状フィルムを与えることから好ましく用いられる。
【0021】
また用いる三級有機アミン化合物は、脱水乾燥されたものが好ましい。三級有機アミン化合物中に多くの水分を含んでいるとポリアミック酸が加水分解を起したり、均質なゲル状フィルムを得ることが困難となる場合がある。具体的には三級有機アミン化合物中に含まれる水分率としては0.1〜3000ppmであることが好ましい。より好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは500ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下であることが好ましい。三級有機アミン化合物中に水分率の下限は実質的に0.1ppm程度である。水分率が0.1ppm未満の場合、このような水分率の維持管理をするには、設備的負担が大きく、コスト高となり好ましくない。
【0022】
すなわち、三級有機アミン化合物がピリジンであり、ピリジンに含まれる水分率が0.1〜500ppmであることが好ましい。
添加量はポリアミック酸繰り返し単位1モルに対して0.01から25倍モル、好ましくは0.01から8倍モル、さらに好ましくは0.04から10倍モルである。
【0023】
この際、三級有機アミン化合物添加後のポリミック酸組成物の見かけ粘度(−10℃、せん断速度:1s−1)が1000〜7000ポイズとなるように調整することが好ましい。ここで見かけ粘度とは流体(ドープ)に浸漬した素子を回転させ回転運動に対する粘性抵抗に打ち勝つのに必要なトルクを測定し、スピンドルと呼ばれる素子を浸漬させてベリリウム銅製スプリングを介して駆動させ、スプリングに巻かれる流体の量は流体の粘度に比例して換算して測定する。1000ポイズ未満であると無水酢酸添加後にさらにポリアミック酸混合溶液の見かけ粘度が低下し、製膜が不可能となり、7000ポイズ以上であると厚みムラが生じ、表面性が悪くなることがある。好ましい見かけ粘度は1000〜6000ポイズである。見かけ粘度は各成分のモル比を調整することや、組成物の温度を調整することにより調整可能である。
【0024】
添加方法としては混合釜内でアンカー翼、ヘリカルリボン翼などによりバッチで添加混合する方法が挙げられる。三級有機アミン化合物の添加混合温度は10℃以上である。10℃未満であるとポリアミック酸組成物の見かけ粘度が高いため三級有機アミン化合物の混練り性が良くない。混練に供するポリアミック酸組成物の温度は好ましくは10〜50℃である。
【0025】
次に工程(3)で、得られたポリアミック酸組成物に0℃以下にて無水酢酸を連続添加してポリアミック酸混合溶液を得る。
添加量は無水酢酸がポリアミック酸繰り返し単位1モルに対して1〜30倍モル、好ましくは0.01〜8倍モル、さらに好ましくは0.04〜10倍モルである。添加方法としてはニーダーなどの回転式混合機、スタティックミキサーなどの静的混合機により連続的に添加混合される。混練り性・ポリアミック酸の化学的安定性の観点から−30〜60℃が好ましい。より好ましくは−25〜40℃、さらに好ましくは−20〜20℃である。また無水酢酸・三級有機アミン化合物混合後は、安定した送液を確保するために速やかに支持体上に流延することが好ましく、またポリアミック酸の閉環による著しい粘度増加が原因でおこる配管内での閉塞および流延時の閉塞・流延不良を防ぐために溶液温度を室温以下にすることが好ましく、−20から0℃に保つことがさらに好ましい。
【0026】
次いで工程(4)で上記工程(3)で得られたポリアミック酸混合溶液を水の濃度1〜4000ppmの雰囲気下にて支持体上に流延してフィルムを得て、得られた流延フィルムを支持体と一緒に工程(5)に送る。
【0027】
支持体上に流延する製膜方法としては、ダイ押し出しによる工夫、アプリケーターを用いたキャスティング、コーターを用いる方法などが例示される。ポリアミック酸の流延に際して支持体として金属製のベルト、キャスティングドラムなどを用いることができる。またポリエステルやポリプロピレンのような有機高分子フィルム上に流延しそのまま工程(5)へ送ることもできる。流延する際のポリアミック酸混合溶液の温度は−30〜40℃の範囲であることが好ましい。−30℃未満の場合、ポリアミック酸の粘性が著しく高くなったり、溶液が固化したりするため、著しく成形加工性が低下したり、流延できなくなる場合がある。40℃より高い場合、ポリアミック酸溶液の化学的安定性が失われ、流延前に一部ゲル化したり、成形加工性が低下したりして流延できなくなる場合がある。好ましくは−25〜30℃でありさらに好ましくは−20〜20℃の範囲である。−15〜15℃の範囲が特に好ましい。
【0028】
工程(4)は水の濃度1〜4000ppmの低湿度雰囲気下で行うことが好ましく、水分濃度が4000ppmより高い場合、支持体上に流延されたフィルム中のポリアミック酸が加水分解を受けたり、後の工程(5)における化学イミド化反応が十分に進まない為製膜性に劣るゲル状フィルムや非常に脆いゲル状フィルムしか得られなくなる。特に流延温度が0℃以下といった低温の場合、水分がフィルム表面に氷結し表面性に劣るフィルムとなる場合がある。より好ましくは1000ppm以下であり、500ppm以下が特に好ましい。一方、水の濃度の下限は実質的に1ppm程度である。1ppmより低い湿度条件を維持管理しようとすると、設備設計、設備的負荷などの観点からコスト高となる。用いられる水の濃度1〜4000ppmの気体としては乾燥窒素、乾燥空気などが挙げられる。より具体的にはフィルム・エンドレスベルト等支持体搬送装置と温度制御可能なダイを備えた槽内の気体が槽外に漏れることを防ぐ機構を施した流延装置にて、−30から40℃に温度制御されたポリアミック酸混合溶液を温度管理しながら、搬送される支持体上へ連続的にダイ押し出しを行うことが例示され、さらにこの際の流延槽内を水の濃度1〜4000ppmの雰囲気下として流延を行う形態を例示することができる。流延槽内の気体が槽外に漏れることを防ぐ機構としては例えば、流延槽内と槽外の間に、フィルム面に垂直に気体を吹き付ける気体カーテンを設置する方法が挙げられるが、水の濃度1〜4000ppmの気体を該流延槽内に向かって流し、かつ該気体が該流延槽内に流入する前に排気する方法が好ましい。
【0029】
工程(5)では、得られた流延フィルムを支持体とともに10℃以上に加熱してポリアミック酸の少なくとも一部がポリイミドもしくはポリイソイミドに変換されたゲル状フィルムを得る。より具体的に好ましい形態としては、フィルムを支持体とともに槽内の気体が槽外に漏れることを防ぐ機構を施した反応凝固槽に導入し、水の濃度1〜2000ppmの雰囲気下で行う形態を例示することができる。反応凝固槽内の気体が槽外に漏れることを防ぐ機構として、例えば、反応凝固槽内と槽外の間にフィルム面に垂直に気体を吹き付ける気体カーテンを設置する方法やフィルム上限面に接触するようにロールやプレートを設置する方法が挙げられるが、水の濃度が1〜2000ppmの気体を該反応凝固槽内に向かって流し、かつ該気体が該反応凝固槽内に流入する前に排気する方法が好ましい。水の濃度が1〜2000ppmの気体としては乾燥窒素、乾燥空気などが上げられる。また水の濃度2000ppm以上の外気が該反応凝固槽内に混入しないために、反応凝固槽およびシール槽は外気から遮断されることが好ましい。外気から遮断する方法としては、水の濃度1〜2000ppmの気体を槽から外気側に流出させる方法やフィルムを水以外の溶媒の封入された液封槽を通すことにより溶媒により外気と隔離する方法などが挙げられる。反応凝固槽内は水の濃度1〜2000ppmの雰囲気にすることが好ましい。反応凝固槽内が水の濃度が2000ppmより高い雰囲気となると化学イミド化反応が十分進まなくなり、得られるフィルムはもろくなる。逆に水の濃度を1ppm以下にするには設備負荷が大きくなり好ましくない。より好ましくは1000ppm以下であり、更に好ましくは水の濃度300ppm以下である。
【0030】
反応凝固槽内の温度が20〜150℃であることが好ましい。反応凝固槽内温度が20℃より低いとポリアミック酸のポリイミド化またはポリイソイミド化反応が非常に遅くなるため反応を進めるためには反応凝固槽を非常に長くする必要があるため実用的ではない。また150℃より高いと設備負荷が増すだけでなく無水酢酸・三級有機アミン化合物の蒸発が顕著になるため無水酢酸・三級有機アミン化合物が反応に十分寄与できなくなる。より好ましくは30〜130℃、さらに好ましくは40から120℃である。
【0031】
工程(6)では、得られたゲル状フィルムを支持体から分離して必要に応じ洗浄した後、同時二軸延伸または逐次二軸延伸する。ここで延伸は洗浄してから行っても、未洗浄のまま行ってもよい。洗浄には例えば工程(1)で用いられた有機溶媒と同様の溶媒が用いられる。延伸は縦横それぞれの方向に1.1から6.0倍の倍率で行うことができる。
【0032】
二軸延伸に供するゲル状フィルムは50〜10000%の膨潤度を持つことが好ましい。50%より低いと十分な延伸性が確保できず一方10000%より高いと十分な自己支持性が得られず延伸工程に供することが事実上困難となる場合がある。より好ましくは膨潤度は50〜9000%でありさらに好ましくは100〜8000%である。
【0033】
延伸温度は特に限定するものではないが、溶剤が揮発し延伸性が低下しない程度であればよく、例えば−20℃〜80℃が好ましい。なお延伸は逐次あるいは同時二軸延伸のいずれの方式で行っても良い。延伸は溶剤中、空気中、不活性雰囲気下、また低温加熱した状態でもよい。
【0034】
ついで工程(7)では得られた二軸延伸フィルムを必要に応じて洗浄して溶媒を除去した後、乾燥・熱処理に付して二軸配向ポリイミドフィルムを形成する。熱処理方法としては、熱風加熱、真空加熱、赤外線加熱、マイクロ波加熱のほか熱板、ホットロールを用いた接触による加熱などが例示できる。この際、段階的に温度を上げることで溶媒除去乾燥、イミド化及び/またはイソイミドをイミドへの転移反応を進行させることが好ましい。
【0035】
この熱処理は定長及び緊張下において行うことができる。また熱処理温度と開始温度は特に限定されるものではないが、最高温度としては250〜650℃の温度で熱処理することが好ましい。多段階で徐々に昇温及び/または降温せしめながら実施することもできる。該熱処理により、配向緩和を抑制したまま、95%を超えるイミド化率のポリイミドフィルムを実現しうる。250℃未満の熱処理では95%を超えるイミド化率を達成するのが困難であったり95%を越えるイミド化率を達成するのに長時間を要する場合があり好ましくない。650℃より高温の場合は、ポリイミドが熱劣化を起こす場合があり好ましくない。好ましくは300〜600℃であり、さらに好ましくは300〜550℃である。なお、熱処理前に二軸延伸フィルムを洗浄して溶媒を除去することができる。洗浄には溶媒を溶解しうる例えばイソプロパノールのごとき低級アルコール、オクチルアルコールのごとき高級アルコール、トルエン、キシレンのごとき芳香族炭化水素、ジオキサンのごときエーテル系溶媒およびアセトン、メチルエチルケトンのごときケトン系溶媒等を挙げることができる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに詳細かつ具体的に説明するが本発明の範囲はこれらによってなんら限定されるものではない。
なおポリアミック酸の還元粘度は1重量%塩化リチウム/NMP溶液を溶解液として用いてポリマー濃度0.05g/dLにて、温度0℃にて測定したものである。また膨潤度(wt%/wt%)は膨潤した状態の重量(Ww)と乾燥した状態の重量(Wd)とから下記式、
膨潤度(wt%/wt%)=(Ww/Wd−1)×100
により算出した。また引張強度、破断伸度および弾性率は50mm×10mmのサンプルを用いて引っ張り速度5mm/分にてオリエンテックUCT−1Tにより測定を行ったものである。
【0037】
[実施例1]
温度計、攪拌装置及び原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、脱水NMP21Lを入れ、更にp−フェニレンジアミンを0.801kgを加え溶解させた後、その後ジアミン溶液の温度を20℃としてこのジアミン溶液に無水ピロメリット酸1.60kgを複数回に分けて段階的に添加し、一時間反応させた。このときの反応温度は20〜40℃であった。更に該反応液を60℃として、5時間30分反応させ粘調溶液としてポリアミック酸NMPドープを得た。ポリアミック酸ドープの還元粘度は3.8dl/gであり、見かけ粘度は9300ポイズ(−10℃、せん断速度:1s−1)であった。得られたポリアミック酸ドープに閉環触媒であるピリジンを1.15L(モル比:ドープ中ポリアミック酸繰り返し単位/ピリジン=1/4)添加したポリアミック酸組成物を調整した。このときの見かけ粘度は4540ポイズであった(−10℃、せん断速度:1s−1)。次にこのピリジンを添加したポリアミック酸組成物をギアポンプにより10.2ml/分で−10℃に冷却された配管内に送液し、反応容器とTダイ間の送液配管途中に設置したエレメント数48段のΦ6.5のスタティックミキサーにおいて反応容器側を0段目、Tダイ側を48段目として、0段目に無水酢酸を0.4ml/minで添加混合し(モル比:ドープ中ポリアミック酸繰り返し単位/ピリジン/無水酢酸=1/4/1.5)、ポリアミック酸混合溶液を得た。−10℃の本混合液を窒素雰囲気の流延槽内にてリップ開度350μm、幅320mmのTダイより、PETフィルム上に流延しフィルムを得た。次に本フィルムをPETフィルムとともに0.1m/minで反応凝固槽内に導入した。反応凝固槽内温度は55℃であり水の濃度40ppmの乾燥窒素を反応凝固槽の両端外側から反応凝固槽に取り付けた該乾燥窒素の吹き込み距離が7.5cmの排気口に向かって同一の流速で、かつフィルム垂直面内での平均流速が20cm/秒で流した。該乾燥窒素流速と吹き込み距離の積は150cm/秒であった。また反応時間は20分であった。その後NMP溶液でゲル状フィルムを洗浄した。
【0038】
次に該ゲル状フィルムの両端をチャック固定し、走行(MD)方向に1.7倍、幅方向を1.7倍に10mm/secの速度で同時二軸延伸した。延伸開始時のゲル状フィルムの膨潤度は600%であった。延伸後のゲル状フィルムを枠固定し、乾燥空気を熱風乾燥機にて160℃、20分乾燥処理を実施した。ついで熱風循環式オーブンを用いて300〜450℃まで多段的に昇温していきポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの弾性率は15Gpa、引張強度は360MPa、破断伸度は5%であった。
【0039】
[実施例2]
温度計、攪拌装置及び原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、脱水NMP21Lを入れ、更にp−フェニレンジアミンを1.282kgを加え溶解させた後、その後ジアミン溶液の温度を20℃としてこのジアミン溶液に無水ピロメリット酸2.565kgを複数回に分けて段階的に添加し、一時間反応させた。このときの反応温度は20〜40℃であった。更に該反応液を60℃として、5時間30分反応させ粘調溶液としてポリアミック酸NMPドープを得た。ポリアミック酸の還元粘度は2.3dl/gであり、見かけ粘度は12500ポイズ(−10℃、せん断速度:1s−1)であった。得られたポリアミック酸ドープに閉環触媒であるピリジンを1.834L(モル比:ドープ中ポリアミック酸繰り返し単位/ピリジン=1/2)添加したポリアミック酸組成物を調整した。このときの見かけ粘度は5100ポイズであった(−10℃、せん断速度:1s−1)。次にこのピリジンを添加したアミック酸組成物をギアポンプにより11.6ml/分で−10℃に冷却された配管内を送液し、反応容器とTダイ間の送液配管途中に設置したエレメント数48段のΦ6.5のスタティックミキサーに対して反応容器側を0段、Tダイ側を48段として、0段目に無水酢酸を1.4ml/minで添加混合し(モル比:ドープ中ポリアミック酸繰り返し単位/ピリジン/無水酢酸=1/2/3)、ポリアミック酸混合溶液を得た。−10℃の本混合液を窒素雰囲気の流延槽内にてリップ開度400μm、幅320mmのTダイより、PETフィルム上に流延しフィルムを得た。次に本フィルムをPETフィルムとともに0.1m/minで反応凝固槽内に導入した。反応凝固槽内温度は60℃であり水の濃度40ppmの乾燥窒素を反応凝固槽の両端外側から反応凝固槽に取り付けた該乾燥窒素の吹き込み距離が7.5cmの排気口に向かって同一の流速で、かつフィルム垂直面内での平均流速が20cm/秒で流した。該乾燥窒素流速と吹き込み距離の積は150cm/秒である。また反応時間は20分である。その後NMP溶液でゲル状フィルムを洗浄した。
【0040】
次に該ゲル状フィルムの両端をチャック固定し、走行(MD)方向に1.3倍、幅方向を1.3倍に10mm/secの速度で同時二軸延伸した。延伸開始時のゲル状フィルムの膨潤度は430%であった。延伸後のゲル状フィルムを枠固定し、乾燥空気を熱風乾燥機にて160℃、20分乾燥処理を実施した。ついで熱風循環式オーブンを用いて300〜450℃まで多段的に昇温していきポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの弾性率は12.8Gpa、引張強度は234MPa、破断伸度は2.8%であった。
【0041】
[比較例1]
実施例1と同様にポリアミック酸ドープを調整し、ピリジンをあらかじめ重合釜で添加せずに、配管中での添加を試みたが見掛け粘度が9300ポイズで高いためギヤポンプによるドープ配管送液が行えなかった。
【0042】
[比較例2]
実施例2と同様にポリアミック酸ドープを調整し、ピリジンをあらかじめ重合釜で添加せずに、配管中での添加を試みたが見掛け粘度が12500ポイズで高いためギヤポンプによるドープ配管送液が行えなかった。
【0043】
[比較例3]
温度計、攪拌装置及び原料投入口を備えた反応容器に、窒素雰囲気下、脱水NMP21Lを入れ、更にp−フェニレンジアミンを1.282kgを加え溶解させた後、その後ジアミン溶液の温度を20℃としてこのジアミン溶液に無水ピロメリット酸2.546kgを複数回に分けて段階的に添加し、一時間反応させた。このときの反応温度は20〜40℃であった。更に該反応液を60℃として、5時間30分反応させ粘調溶液としてポリアミック酸NMPドープを得た。ポリアミック酸の還元粘度は2.1dl/gであり、見かけ粘度は4000ポイズ(−10℃、せん断速度:1s−1)であった。ポリアミック酸ドープをギアポンプにより11.6ml/分で−10℃に冷却された配管内を送液し、反応容器とTダイ間の送液配管途中に設置したエレメント数48段のΦ6.5のスタティックミキサーにおいて反応容器側を0段目、Tダイ側を48段目として、0段目にピリジンを0.9ml/minで添加し、次いで24段目に無水酢酸を1.5ml/minで添加混合し(モル比:ドープ中ポリアミック酸繰り返し単位/ピリジン/無水酢酸=1/2/3)、−10℃の本混合液を窒素雰囲気の流延槽内にてリップ開度400μm、幅320mmのTダイより、PETフィルム上に流延したが混練温度が−10℃と低いためポリアミック酸と無水酢酸の混練性が不十分であり、ダイ筋が消滅せず、連続製膜を行うことができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)有機溶媒中でジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させることにより、ポリアミック酸の濃度が0.5〜30重量%であるポリアミック酸ドープを調整し
(2)得られたポリアミック酸ドープに、ポリアミック酸の繰り返し単位1モル当たり0.01〜25モルの三級有機アミン化合物を、10℃以上の温度で加え攪拌混練することにより、ポリアミック酸組成物を調整し、
(3)ついで得られたポリアミック酸組成物に0℃以下にて無水酢酸を連続添加し、ポリアミック酸混合溶液を得て、
(4)ついで得られたポリアミック酸混合溶液を水の濃度1〜4000ppmの雰囲気下にて支持体上に流延して流延フィルムを得て、
(5)得られた流延フィルムを支持体とともに10℃以上に加熱して、ポリアミック酸の少なくとも一部がポリイミドもしくはポリイソイミドに変換されたゲル状フィルムを得て、
(6)得られたゲル状フィルムを支持体から分離して必要に応じ洗浄した後、同時二軸延伸または逐次二軸延伸し二軸延伸フィルムを得て、
(7)得られた二軸延伸フィルムを必要に応じて洗浄して溶媒を除去した後、乾燥・熱処理に付して二軸配向ポリイミドフィルムを形成することを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項2】
工程(2)における三級有機アミン化合物がピリジンであり、ピリジンに含まれる水分率が0.1〜500ppmである請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】
工程(4)において流延する際のポリアミック酸混合溶液の温度が−30〜40℃の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項4】
工程(5)において流延フィルムを支持体とともに槽内の気体が槽外に漏れることを防ぐ機構を施した反応凝固槽に導入し、水の濃度1〜2000ppmの雰囲気下加熱することにより、ポリアミック酸の少なくとも一部がポリイミドもしくはイソイミドに変換されたゲル状フィルムを得ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項5】
工程(5)における該反応凝固槽内の温度が20〜150℃である請求項4に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項6】
有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンおよび1,3−ジメチルイミダゾリジノンからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜5のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項7】
工程(1)において、有機溶媒に含まれる水分率が0.1〜1000ppmの範囲である請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項8】
工程(7)において、乾燥・熱処理を定長または緊張条件で行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項9】
ジアミン成分は30モル%以上のp−フェニレンジアミン成分と0モル%以上70モル%以下のp−フェニレンジアミンとは異なる芳香族ジアミン成分とからなり、テトラカルボン酸成分は、80モル%を超えるピロメリット酸成分と、0モル%以上20モル%未満のピロメリット酸とは異なる芳香族テトラカルボン酸成分とからなる請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法で得られるポリイミドフィルム。
【請求項10】
有機溶媒中でジアミン成分とテトラカルボン酸成分を反応させることにより得られ、ポリアミック酸の濃度が0.5〜30重量%であるポリアミック酸ドープと、三級有機アミン化合物とからなり、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して三級有機アミン化合物が0.01〜25モルであるポリアミック酸組成物。
【請求項11】
ジアミン成分は30モル%以上のp−フェニレンジアミン成分と0モル%以上70モル%以下のp−フェニレンジアミンとは異なる芳香族ジアミン成分とからなり、テトラカルボン酸成分は、80モル%を超えるピロメリット酸成分と、0モル%以上20モル%未満のピロメリット酸とは異なる芳香族テトラカルボン酸成分とからなる請求項10記載のポリアミック酸組成物。
【請求項12】
三級有機アミン化合物がピリジンであり、ピリジンに含まれる水分率が0.1〜100ppmである請求項10または11のいずれかに記載のポリアミック酸組成物。
【請求項13】
有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよび1,3−ジメチルイミダゾリジノンからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項10〜12のいずれかに記載のポリアミック酸組成物。

【公開番号】特開2006−265371(P2006−265371A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85378(P2005−85378)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】