説明

ポリウレタン樹脂、印刷インキ用組成物、コーティング剤組成物および接着剤組成物

【課題】優れた耐性とコーティング適性を有し、かつ種々のプラスチック成形品に対して優れた密着性を示すポリウレタン樹脂を提供する。
【解決手段】一般式(1):R−(A−OH)x(式中、Rは、1分子中に1〜8個の水酸基を有するヒドロキシ化合物から水酸基を除いた残りの基、Aは、一般式(2):−(OOC−X)−(式中、Xは、分岐構造を有していてもよい炭素数2〜12のアルキレン基を表す。)で表される繰り返し単位および一般式(3):−(O−Y)−(式中、Yは、分岐構造を有していてもよい炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)で表される繰り返し単位から構成される構造、xは1〜8の整数を表す。)で表されるアルコール類(a)を含有するアルコール成分(A)、ポリイソシアネート類(B)ならびに必要に応じて鎖伸張剤(C)および/または鎖長停止剤(D)を反応させることにより得られるポリウレタン樹脂を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂、当該ポリウレタン樹脂を含有する印刷インキ用組成物、コーティング剤組成物および接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設業界、自動車業界、包装業界、オーディオ・ビジュアル産業など各種の産業分野にて多種多様のプラスチック成形品などが使用されるようになってきており、これら各種のプラスチック成形品を対象としたコーティング剤、印刷インキ、接着剤としては、基材への密着性に優れ、汎用性のあるポリウレタン樹脂が広く用いられている。特にラッカータイプのポリウレタン樹脂は、基材に塗工するだけで溶剤や水が揮散後にポリマー皮膜が得られることから、短時間で乾燥、成膜させる必要があるライン塗装や塗工または印刷等に適している。
【0003】
これらポリウレタン樹脂の製造には、通常、ポリエーテル系ポリオールやポリエステル系ポリオールが用いられるが、ポリエーテル系ポリオールには、溶剤や水への溶解性に優れる半面、塗膜の耐油性や耐水性に劣るという欠点があり、ポリエステル系ポリオールには耐油性や耐水性に優れる反面、耐加水分解性が劣り水存在下で分子量が低下したり、溶剤や水への親和性に劣るため印刷適性や塗工適性が劣る等の欠点を有していた。
【0004】
なお、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールと分子構造が1,2付加体を主成分とする水酸基末端ポリブタジエンからなる混合ポリオールとポリイソシアネートから構成されるポリウレタンが密着性等に優れるとの提案がなされているが(特許文献1)、単にポリオール成分を併用をするだけでは、各効果のよいところのみを引き出すことはできなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−1732458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は優れた耐性(耐水性、耐油性、耐加水分解性等)とコーティング適性(印刷適性、塗工適性等)を有し、かつ種々のプラスチック成形品に対して優れた密着性を示すポリウレタン樹脂を提供することを目的とする。さらに、当該ポリウレタン樹脂を含有する、印刷インキ用組成物、コーティング剤組成物および接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ポリエステルポリオール類とポリエーテルポリオール類を単に併用するのではなく、ポリエステル結合とポリエーテル結合を有するポリオール類と、ポリイソシアネート類とを反応させて得られるポリウレタン樹脂を用いることにより、前記従来技術の課題が悉く解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、一般式(1):R−(A−OH)x(式中、Rは、1分子中に1〜8個の水酸基を有するヒドロキシ化合物から水酸基を除いた残りの基、Aは、一般式(2):−(OOC−X)−(式中、Xは、分岐構造を有していてもよい炭素数2〜12のアルキレン基を表す。)で表される繰り返し単位および一般式(3):−(O−Y)−(式中、Yは、分岐構造を有していてもよい炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)で表される繰り返し単位から構成される構造、xは1〜8の整数を表す。)で表されるアルコール類(a)を含有するアルコール成分(A)、ポリイソシアネート類(B)ならびに必要に応じて鎖伸張剤(C)および/または鎖長停止剤(D)を反応させることにより得られるポリウレタン樹脂;当該ポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする印刷インキ用組成物;当該ポリウレタン樹脂を含有することを特徴とするコーティング剤組成物;当該ポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする接着剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた耐性(耐水性、耐油性、耐加水分解性等)コーティング適性(印刷適性、塗工適性等)を有し、かつ種々のプラスチック成形品などに対して優れた密着性を示すポリウレタン樹脂が得られる。また本発明に係るポリウレタン樹脂は、塗料、磁気塗料、木材、ゴム、プラスチックなどの有機材用のコーティング剤、ガラス、金属などの無機材用のコーティング剤、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ナイロンなどのフィルム用のコーティング剤など、各種コーティング剤、グラビアインキ、フレキソインキ、オーバープリントニスなどの印刷インキ、接着剤、各種プライマー、アンカーコート剤などの接着剤として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のポリウレタン樹脂は、一般式(1):R−(A−OH)x(式中、Rは、1分子中に1〜8個の水酸基を有するヒドロキシ化合物から水酸基を除いた残りの基、Aは、一般式(2):−(OOC−X)−(式中、Xは、分岐構造を有していてもよい炭素数2〜12のアルキレン基を表す。)で表される繰り返し単位および一般式(3):−(O−Y)−(式中、Yは、分岐構造を有していてもよい炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)で表される繰り返し単位から構成される構造、xは1〜8の整数を表す。)で表されるアルコール類(a)(以下、(a)成分という)を含有するアルコール成分(A)(以下、(A)成分という)、ポリイソシアネート類(B)(以下、(B)成分という)ならびに必要に応じて鎖伸張剤(C)(以下、(C)成分という)および/または鎖長停止剤(D)(以下、(D)成分という)を反応させることにより得られるものである。
なお、一般式(1)で表されるアルコール類(a)中、一般式(2)で表される繰り返し単位の繰り返し数mが、1〜500の整数および一般式(3)で表される繰り返し単位の繰り返し数nが1〜1000の整数となるようにすることが好ましい。mは2〜200がより好ましく、2〜50が特に好ましく、nは、2〜200がより好ましく、2〜50が特に好ましい。
【0011】
本発明の(A)成分は、(a)成分および必要に応じて(a)成分以外のポリオール類を含有するものである。(A)成分中の(a)成分の含有量は特に限定されず、用途に応じて適宜決定すればよいが、通常、30〜100重量%程度とすることが、耐水性、耐加水分解性等の点から好ましい。なお、(a)成分が水酸基を1つしか有しない場合には、(a)成分以外のポリオール類を用いることが、高分子量化することができるため好ましい。
【0012】
(a)成分は、例えば、1分子中に1〜8個の水酸基を有するヒドロキシ化合物、ラクトンおよびアルキレンオキシドを反応させることにより得られる。
【0013】
1分子中に1〜8個の水酸基を有するヒドロキシ化合物としては、1分子中に1〜8個の水酸基を有する化合物であれば特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、たとえば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、2−エチルヘキサノール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、およびオレイルアルコール等の1価アルコール;ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、および1,4−シクロヘキサンジメタノール等の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、および1,2,6−ヘキサントリオール等の3価アルコール;ジグリセリンおよびペンタエリスリトール等の4価アルコール;トリグリセリン等の5価アルコール;ソルビトールおよびグルコース等の6価アルコール;ならびに、スクロースおよびマルトース等の8価アルコールが挙げられる。また、前記アルコール類や、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、およびエチレンジアミン等のポリアミン等にアルキレンオキシドを付加させて得られる水酸基あたりの分子量が500以下のポリエーテル化合物も同様に用いることができる。これらヒドロキシ化合物は、1種類のみを用いても、2種類以上を併用してもよい。これらのなかでは、得られるポリウレタン樹脂の分子量制御が容易になることから、2価アルコールを用いることが好ましい。
【0014】
ラクトンとしては、特に限定されず、公知のものを使用することができるが、具体的には、例えば、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、およびε−カプロラクトン等の炭素数が2〜12のアルキレン基を有するものが好ましい化合物として挙げられる。得られる生成物の融点をあまり高くしないことから、特にδ−バレロラクトン、およびε−カプロラクトンが好ましい。これらのラクトンは1種類のみを用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0015】
アルキレンオキシドとしては、分岐構造を有していてもよい炭素数2〜4のアルキレンオキシドを用いることが好ましく、炭素数2〜3のアルキレンオキシドがさらに好ましく、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドが挙げられる。これらのアルキレンオキシドは1種類のみを用いても、2種類以上を併用してもよい。プロピレンオキシドとエチレンオキシドの組み合わせまたはエチレンオキシドのみであることが特に好ましい。
【0016】
前記1分子中に1〜8個の水酸基を有するヒドロキシ化合物とラクトンおよびアルキレンオキシドを反応させる際には、通常、触媒を用いる。触媒としては、複合金属シアン化物錯体触媒、ホスファゼン化合物触媒、ルイス酸触媒等が例示できる。これらは、重合体中に触媒残渣があっても、(a)成分の安定性に悪影響を及ぼすことが少ない。これらの触媒は、(a)成分製造後、除去してもよい。これらのうち、活性が高く比較的少量で重合体を合成でき、また、触媒残渣があっても(a)成分の安定性に悪影響を及ぼさない点で、複合金属シアン化物錯体触媒が特に好ましい。複合金属シアン化物錯体触媒を用いた場合は、特に触媒残渣を除去する必要がない。また、複合金属シアン化物錯体触媒を用いることにより、(a)成分の分子量分布が狭くなるため好ましい。
【0017】
複合金属シアン化物錯体触媒としては、特に限定されず、公知のものを使用できる。特に亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体触媒に有機配位子が配位したものが好ましい。有機配位子としては水溶性のものが好ましく、具体例としてはtert−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコールジメチルエーテル(グライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテル、イソプロピルアルコール、1,4−ジオキサンおよび1,3−ジオキサン等の化合物が挙げられる。好ましい有機配位子はtert−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、グライムおよびエチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルであり、tert−ブチルアルコールが特に好ましい。これらの有機配位子は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。また、複合金属シアン化物錯体触媒を用いる場合は、反応開始までの時間を短くできることから、上記1分子中に1〜8個の水酸基を有するヒドロキシ化合物の水酸基の数が2以上のときは特に分子量400以上の1分子中に1〜8個の水酸基を有するヒドロキシ化合物であって、水酸基あたりの分子量が500以下のものを用いることが好ましく、水酸基あたりの分子量が200〜400の水酸基含有開始剤を用いることより好ましい。このような1分子中に1〜8個の水酸基を有するヒドロキシ化合物は多価アルコールにアルカリ触媒等を用いてエチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを開環付加重合させた後、アルカリ触媒を精製除去して得られる。また、複合金属シアン化物錯体触媒を用いた反応においては触媒を活性化する誘導期間を設けることが好ましい。具体的には、ラクトンおよびアルキレンオキシドの混合物を反応させる前に少量のアルキレンオキシドを反応系に導入し、触媒を活性化させた後、ラクトンとアルキレンオキシドの混合物を反応系に導入して開環付加重合反応させることが好ましい。なお、一般的に開環付加重合触媒として用いられる、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等の金属水酸化物は、重合後、触媒および触媒残渣を完全除去することが困難な上、それが潤滑性、保存安定性に悪影響を及ぼすので、ラクトンとアルキレンオキシドの混合物を開環付加重合させる際には使用しないことが好ましい。
【0018】
当該反応は、特に限定されず公知の方法を採用すればよいが、高温加圧条件で重合反応を行うことが好ましい。ラクトンおよびアルキレンオキシドを重合反応容器内に同時に存在させることによってランダム共重合することができ、これによりランダム共重合鎖が得られる。なお、ラクトンおよびアルキレンオキシドの使用量は特に限定されないが、通常、ラクトンの使用量は、一般式(2)で表される構造が1〜500程度、一般式(3)で表される構造が1〜1000程度となるように、すなわち、ヒドロキシ化合物の水酸基数のモル数の1〜500倍モルのラクトンと、ヒドロキシ化合物の水酸基数の1〜1000モルのアルキレンオキシドを用いればよい。重合反応後は、合成珪酸マグネシウム等を用いて、得られた生成物をさらに精製してもよい。重合触媒として複合金属シアン化物錯体触媒を用い、特に精製することなく製品として使用できる場合は、得られたポリエステル化合物を特に精製することなく使用することもできる。また、当該(a)成分としては、市販のものを使用してもよい。市販品としては、たとえば、アドバノール(商品名、旭硝子(株)製)などが挙げられる。
【0019】
(a)成分と併用する(a)成分以外のポリオール類としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の飽和もしくは不飽和の各種公知の低分子グリコール類、ダイマー酸を水素化して得られるジオール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリブタジエンポリオール類等が挙げられる。これらは、1種類のみを用いても、2種類以上を併用してもよい。なお、本発明の効果を損なわない範囲で、グリセリン等の3価アルコールやペンタエリスリトール等の4価のアルコールを併用してもよい。なお、得られるポリウレタンを水に分散させる場合や水溶性にする場合には、カルボキシル基含有ジオール化合物を用いることが好ましい。カルボキシル基含有ジオール化合物としては、例えば、α,α´−ジメチロールアルカン酸(グリセリン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸等)、ジオキシマレイン酸、ジオキシフマル酸、酒石酸、2,6−ジオキシ安息香酸、4,4−ビス(ヒドロキシフェニル)吉草酸、4,4−ビス(ヒドロキシフェニル)酪酸等が挙げられる。また、これらのカルボキシル基を含有するジオール化合物を開始剤としてε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られる化合物、またラクトン類を開環重合して得られる高分子量化合物類を使用することもできる。
【0020】
本発明に用いられる(B)成分としては、1分子中にイソシアネート基を少なくとも2つ有するものであれば、特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸が有するカルボキシル基をイソシアネート基に置き換えたダイマージイソシアネートなどの鎖状脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどの環状脂肪族ジイソシアネート;4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネートなどのジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルテトラメチルメタンジイソシアネートなどのテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;リジンジイソシアネートなどのアミノ酸ジイソシアネートなどが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。また、本発明では、本発明の効果を損なわない範囲で、ジイソシアネート類のほかに、他のイソシアネート類(モノイソシアネート、3価のイソシアネート類等)も用いることができる。
【0021】
(C)成分としては、(A)成分および(B)成分との反応物と反応し、高分子量化することができるものであれば特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素を有する官能基を少なくとも2つ以上有する化合物が挙げられる。具体例としては、前記(A)成分に例示したポリオール類((a)成分のうち水酸基を2つ以上有するものを含む);エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミンなどのアミン類;2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなどの分子内に水酸基を有するジアミン類;ダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に置き換えたダイマージアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を適宜に組み合わせて用いられる。
【0022】
また、ポリウレタン樹脂にイオン性官能基を付与して水への分散性を向上させる目的で、(C)成分として、イオン性官能基を有する化合物を用いることができる。当該イオン性官能基としては、特に制限されないが、例えば、4級アミノ塩基やカルボキシル基などがあげられる。当該化合物の具体例としては、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−イソプロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−イソブチルジエタノールアミン、N−オレイルジエタノールアミン、N−ステアリルジエタノールアミン、エトキシ化椰子油アミン、N−アリルジエタノールアミン、N−メチルジイソプロパノールアミン、N−エチルジイソプロパノールアミン、N−プロピルジイソプロパノールアミン、N−ブチルジイソプロパノールアミン、ジメチルジエトキシヒドラジン、プロポキシメチルジエタノールアミン、N−(3−アミノプロピル)−N−メチルエタノールアミン、N,N’−ビス(オキシエチル)プロピレンジアミン、ジエタノールアミノアセトアミド、ジエタノールアミノプロピオンアミド、N,N−ビス(オキシメチル)セミカルバジドなどのアルコキシ化鎖状脂肪族アミン;N−シクロヘキシルジイソプロパノールアミンなどのアルコキシ化環状脂肪族アミン;N,N−ジエトキシアニリン、N,N−ジエトキシトルイジン、N,N−ジエトキシ−1−アミノピリジン、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N、N’−ジエチルヘキサヒドロ−p−フェニレンジアミン、N,N’−ビス(オキシエチル)フェニルセミカルバジドなどのアルコキシ化芳香族アミン;N,N’−ジエトキシピペラジン、N−2−ヒドロキシエチルピペラジンなどのアルコキシ化複素環アミン;N−メチル−N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミン、N−(3−アミノプロピル)−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−N,N’−ジメチルエチレンジアミン、2−メチル−2−[(N,N−ジメチルアミノ)メチル]プロパン−1,3−ジオールなどの鎖状脂肪族アミン;2,6−ジアミノピリジン、p,p’−ビス−アミノメチルジベンジルメチルアミンなどの芳香族アミン;N,N’−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジンなどの複素環アミンなどが挙げられる。なお、前記鎖伸長剤が有する塩基性窒素は、当該鎖伸長剤を水に分散させる前または水に分散させた後で、塩化物イオン、硫酸塩イオン、有機物カルボン酸のアニオンなどの4級化剤を用いて4級化しても良い。
【0023】
カルボキシル基を有する鎖伸長剤は、得られる水性ポリウレタン樹脂にカルボキシル基を導入するために用いることができるため、(A)成分としてカルボキシル基含有ジオール化合物を用いない場合には、当該カルボキシル基を有する鎖伸長剤を使用する必要がある。その具体例としては、グリセリン酸、ジオキシマレイン酸、ジオキシフマル酸、酒石酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール吉草酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)吉草酸、4,4−ジ(ヒドロキシフェニル)酪酸などの脂肪族カルボン酸;2,6−ジオキシ安息香酸などの芳香族カルボン酸などが挙げられる。
【0024】
(D)成分としては、(A)成分、(B)成分の反応物または(A)〜(C)成分の反応物と反応して高分子量化を妨げる化合物であれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体的には、たとえば、水酸基、アミノ酸基等の活性水素を有する官能基を1つ有する化合物などが挙げられる。具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の一価アルコール;モノエチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン等のモノアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミンなどが挙げられる。
【0025】
本発明のポリウレタン樹脂は、前記(A)成分、(B)成分ならびに必要に応じて(C)成分および/または(D)成分を反応させることにより得られる。
【0026】
各成分の使用量は特に限定されないが、通常は、(B)成分中に含まれるイソシアネート基数に対する(A)成分中の水酸基数の比を、1.1〜3.0程度とすることが好ましい。当該範囲にすることで、ポリウレタン樹脂の接着性が向上するため、後述する印刷インキ、コーティング剤、接着剤等の各種用途に適用し易くなるため好ましい。
【0027】
(C)成分を使用する場合の使用量は、特に限定はされないが、得られる水性ポリウレタン樹脂から形成される皮膜の柔軟性および強靭性を両立させるという観点から、水性ポリウレタン樹脂中の0.1〜20重量%程度であるのが好ましく、さらに好ましくは1〜15重量%である。0.1重量%に満たない場合は強靭性が不足する傾向があり、20重量%を超える場合は柔軟性が損なわれる傾向がある。
【0028】
イオン性官能基を有する前記鎖伸長剤を用いる場合、当該伸長剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、前記塩基性窒素を有するポリウレタン樹脂中の塩基性窒素が、該ポリウレタン樹脂固形分1gに対して3×10−5〜1.8×10−3グラム当量程度となるように調整することが好ましい。また、イオン性官能基を有する前記鎖伸長剤のうち、カルボキシル基を有する化合物の使用量は、とくに限定はされないが、例えば、当該ポリウレタン樹脂中のカルボキシル基が、該ポリウレタン樹脂固形分1gに対して3×10−5〜1.8×10−3グラム当量程度となるように調整することが好ましい。
【0029】
(D)成分は高分子量化反応を停止させるために用いるものであるから、所望とする分子量となるように適宜使用すればよいが、(C)成分の活性水素を有する官能基に対し、(D)成分中の活性水素を有する官能基の当量比([(D)成分中の活性水素の当量]/[(C)成分中の活性水素の当量])が、0.01〜100程度の範囲とすることが好ましい。
【0030】
なお、各成分を反応させる順序は特に限定されないが、通常は、(A)成分および(B)成分を反応させた後に必要に応じて(C)成分および/または(D)成分を反応させればよい。(C)成分、(D)成分は同時に添加し、反応させても、(A)成分と(B)成分を反応させた後に、(C)成分を反応させ、その後に(D)成分を反応させてもよい。
【0031】
当該反応は、無溶媒の条件で行ってもよく、溶媒を用いて行ってもよい。溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、N−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;へキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ビロリドン、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒およびそれら二種類以上の混合物が挙げられる。
【0032】
また、ウレタン化反応には、必要に応じて触媒を用いてもよい。触媒としては、具体的には、たとえば、ウレタン化反応を促進する触媒としては、例えばトリエチルアミン、ジメチルアニリン等の三級アミン系触媒または有機錫、有機亜鉛等の有機金属系触媒等が挙げられる。
【0033】
(A)成分と(B)成分の反応は、公知のウレタン化反応の方法により行うことができ、通常、50〜150℃程度で4〜12時間程度反応させればよい。(C)成分および/または(D)成分との反応も同様の方法で行えばよい。
【0034】
このようにして得られたポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、通常、5,000〜500,000程度、さらに好ましくは10,000〜100,000である。
【0035】
本発明のポリウレタン樹脂を用いた印刷インキ用組成物は、本発明のポリウレタン樹脂に顔料、顔料分散剤、界面活性剤、ワックス、その他添加剤等を加え、ボールミル等の通常のインキ製造装置を用いて混練することによって印刷インキとすることができる。また必要に応じて、これと相溶性のある樹脂を副成分として使用することができる。例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレンポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、クロルスルフォン化ポリオレフィン、硝化綿、エチレン酢酸ビニル共重合体もしくはその塩素化物、クロルスルフォン化物、マレイン酸樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂およびポリウレタン樹脂等があげられる。
【0036】
本発明のポリウレタン樹脂は、接着性および耐熱性が優れていることから、種々の合成樹脂成形品用の装飾、表面保護のためのコーティング剤組成物としても有用である。コーティング剤として用いるには、本発明のポリウレタン樹脂を、クリアーワニスとしてそのまままたは希釈して適用しうる他、適宜に顔料、分散剤、垂れ止め剤、紫外線吸収剤等の公知のコーティング剤用添加剤を併用し、ボールミル、サンドミル、アトライターや三本ロールミル等の公知の分散機械を使用して使用することもできる。本発明のコーティング剤の適用対象である基材としては、プラスチック成形品が好適であるが、その他、紙、木材、金属等にも塗装できる。本発明のコーティング組成物をこれらの基材に塗装するに際しては、特に塗装方法は限定されず、ハケ塗り、スプレー、浸漬、ロールコート、グラビア印刷、フレキソ印刷など各種公知の方法を採用することができる。
【0037】
また、本発明のポリウレタン樹脂は接着性に優れることから、接着剤組成物としても使用することができる。接着剤として使用する場合には、粘度調節剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、消泡剤、着色剤、安定剤等の各種接着剤用の添加物を添加することができるが、特に硬化剤を用いることが好ましい。硬化剤としては、通常、ポリウレタン系接着剤用の硬化剤として用いることができるものを用いればよいが、具体的には、たとえば、ポリウレタンの製造に用いた有機ポリイソシアネート化合物やその縮合物、鎖伸長剤に用いた低分子ポリアミン等があげられる。硬化剤は、通常、ポリウレタン100重量部に対して、20重量部程度以下の範囲で用いる。接着力を向上させるには、0.5重量部以上とするのが好ましい。硬化剤は、接着用組成物が使用される各種用途に適したものを、適宜に選択して使用でき、いわゆる一液型または二液型のいずれの形態でも使用できる。なお、末端がアミノ基または水酸基のポリウレタンには硬化剤として有機ポリイソシアネート化合物を、末端がイソシアネート基のポリウレタンには硬化剤としてポリアミン類を加える二液型とした場合が、硬化が早くなるため好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明するが本発明は、当該実施例に限定されるものではない。なお、各例中、部および%は特記ない限り重量基準である。
【0039】
実施例1
攪拌機、温度計および窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、数平均分子量2,000のε-カプロラクトン(含有量50%)とプロピレンオキサイド(含有量50%)のランダム共重合ポリオール(商品名:アドバノールADL−X1400:旭硝子(株)製)1,000部とイソホロンジイソシアネート222部を仕込み、窒素気流下に100℃で6時間反応させ遊離イソシアネート価3.44%のプレポリマーとなし、これにメチルエチルケトン523部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン73.8部、ジ−n−ブチルアミン16.9部、メチルエチルケトン1,518部およびイソプロピルアルコール1,020部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液1,745部を添加し、50℃で3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂溶液は、樹脂固形分濃度が30%、粘度が400mPa・s/25℃、数平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値、以下同じ)は18,000であった。
【0040】
実施例2
攪拌機、温度計および窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、数平均分子量2,000のε-カプロラクトン(含有量50%)とプロピレンオキサイド(含有量50%)のランダム共重合ポリオール(商品名:アドバノールADL−X1400:旭硝子(株)製)500部、数平均分子量2,000のポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)グリコール(商品名:クラレポリオールP2010:(株)クラレ製)500部とイソホロンジイソシアネート222部を仕込み、窒素気流下に100℃で6時間反応させ遊離イソシアネート価3.44%のプレポリマーとなし、これにメチルエチルケトン523部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン73.8部、ジ−n−ブチルアミン16.9部、メチルエチルケトン1,518部およびイソプロピルアルコール1,020部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液1,745部を添加し、50℃で3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂溶液は、樹脂固形分濃度が30%、粘度が500mPa・s/25℃、数平均分子量は20,000であった。
【0041】
比較例1
攪拌機、温度計および窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、数平均分子量2,000のポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)グリコール(商品名:クラレポリオールP2010:(株)クラレ製)1,000部とイソホロンジイソシアネート222部を仕込み、窒素気流下に100℃で6時間反応させ遊離イソシアネート価3.44%のプレポリマーとなし、これにメチルエチルケトン523部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン73.8部、ジ−n−ブチルアミン16.9部、メチルエチルケトン1,518部およびイソプロピルアルコール1,020部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液1,745部を添加し、50℃で3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂溶液は、樹脂固形分濃度が30%、粘度が600mPa・s/25℃、数平均分子量は21,000であった。
【0042】
比較例2
攪拌機、温度計および窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール(商品名:アデカポリエーテルP2000:(株)ADEKA製)5000部と数平均分子量2,000のポリオキシテトラメチレングリコール(商品名:PTMG2000:三菱化学(株)製)500部とイソホロンジイソシアネート222部を仕込み、窒素気流下に100℃で6時間反応させ遊離イソシアネート価3.44%のプレポリマーとなし、これにメチルエチルケトン523部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン73.8部、ジ−n−ブチルアミン16.9部、メチルエチルケトン1,518部およびイソプロピルアルコール1,020部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー溶液1,745部を添加し、50℃で3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂溶液は、樹脂固形分濃度が30%、粘度が400mPa・s/25℃、数平均分子量は17,000であった。
【0043】
(印刷インキの調製例1)
チタン白(ルチル型)30部、酢酸エチル10部、メチルエチルケトン10部、イソプロピルアルコール10部、製造例1〜2および比較製造例1〜2で得られたポリウレタン樹脂溶液を40部、それぞれペイントシェイカーで練肉して白色印刷インキを調製した。製造例1〜2および比較製造例1〜2で得られたポリウレタン樹脂を用いた印刷インキを、それぞれ評価例1〜2および比較評価例1〜2とする。
【0044】
上記評価例1〜2および比較評価例1〜2の各白色印刷インキを、版深30μmのグラビア版を備えた簡易グラビア印刷機を用いて、厚さ15μmのコロナ放電処理ナイロンの放電処理面にそれぞれ印刷し、印刷物を40〜50℃で乾燥した。
【0045】
接着性:上記印刷物を1日大気中に放置後、印刷面に粘着テープを貼り付け、これを剥した後に残存するインキ皮膜の外観を以下の基準で観察評価した。評価結果を表1に示す。
【0046】
耐水接着性:上記印刷物を1日大気中に放置後、50℃の温水に20分浸し水をふき取った後、印刷面に粘着テープを貼り付け、これを剥した後に残存するインキ皮膜の外観を以下の基準で観察評価した。評価結果を表1に示す。
◎:全く剥れなかった。
〇:インキ皮膜の80%以上がフィルムに残った。
△:インキ皮膜の50%以上80%未満がフィルムに残った。
×:インキ皮膜の50%未満がフィルムに残った。
【0047】
再溶解性:上記白色印刷インキを、版深30μmのグラビア版を備えた簡易グラビア印刷機を用いて、ガラス板上に展色した後に乾燥させ、次いで酢酸エチル/メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール=1/1/1(重量比)からなる混合溶剤に浸漬し、インキ塗膜の溶解具合を以下の基準にて目視評価した。評価結果を表1に示す。
○:インキ塗膜がすぐに溶解を始めた。
△:インキ塗膜が徐々に溶解した。
×:インキ塗膜がほとんど溶解しなかった。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例3
攪拌機、温度計および窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、数平均分子量2,000のε-カプロラクトン(含有量50%)とプロピレンオキサイド(含有量50%)のランダム共重合ポリオール(商品名:アドバノールADL−X1400:旭硝子(株)製)1,010部、ジメチロールブタン酸99部、イソホロンジイソシアネート391部を仕込み、窒素気流下に70℃で6時間反応させ遊離イソシアネート価3.29%のプレポリマーを得た。次いで、イソプロピルアルコール233部、イソホロンジアミン81部、ジ−n−ブチルアミン28部、28%アンモニア水41部および水2705部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー1,495部を添加し、50℃で3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂水分散液は、樹脂固形分濃度が35%、粘度が300mPa・s/25℃、数平均分子量は15,000であった。
【0050】
比較例3
攪拌機、温度計および窒素ガス導入管を備えた丸底フラスコに、数平均分子量2,000のポリ(1,4−ブチレンアジペート)グリコール(商品名:アデカニューエースF9−30:(株)ADEKA製)505部、数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール(商品名:アデカポリエーテルP2000:(株)ADEKA製)505部、ジメチロールブタン酸99部、イソホロンジイソシアネート391部を仕込み、窒素気流下に70℃で6時間反応させ遊離イソシアネート価3.29%のプレポリマーを得た。次いで、イソプロピルアルコール233部、イソホロンジアミン81部、ジ−n−ブチルアミン28部、28%アンモニア水41部および水2705部からなる混合物の存在下に上記ウレタンプレポリマー1,495部を添加し、50℃で3時間反応させた。こうして得られたポリウレタン樹脂水分散液は、樹脂固形分濃度が35%、粘度が400mPa・s/25℃、数平均分子量は15,000であった。
【0051】
水分散安定性
実施例3および比較例3で得られたポリウレタン樹脂水分散液を40℃で一ヶ月保温し、状態の変化を観察した。結果を表2に示す。
○:変化なし
×:沈殿物あり
【0052】
(塗料の調製例)
チタン白(ルチル型)30部、水20部、イソプロピルアルコール10部、製造例3および比較製造例3で得られたポリウレタン樹脂水分散液を40部、それぞれペイントシェイカーで練肉し、さらに水20部、イソプロピルアルコール10部を混合して白色塗料を調製した。
【0053】
レベリング性
上記白色塗料をABS板上に、乾燥後の膜厚が20μmになるようにスプレー塗布し、室温で放置した後、塗膜のレベリング状態を目視で観察した。
○:塗膜表面が平滑で光沢あり
△:塗膜表面の平滑性に乏しく、光沢が劣る
×:塗膜表面が梨地状で光沢がない
【0054】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):R−(A−OH)x(式中、Rは、1分子中に1〜8個の水酸基を有するヒドロキシ化合物から水酸基を除いた残りの基、Aは、一般式(2):−(OOC−X)−(式中、Xは、分岐構造を有していてもよい炭素数2〜12のアルキレン基を表す。)で表される繰り返し単位および一般式(3):−(O−Y)−(式中、Yは、分岐構造を有していてもよい炭素数2〜4のアルキレン基を表す。)で表される繰り返し単位から構成される構造、xは1〜8の整数を表す。)で表されるアルコール類(a)を含有するアルコール成分(A)、ポリイソシアネート類(B)ならびに必要に応じて鎖伸張剤(C)および/または鎖長停止剤(D)を反応させることにより得られるポリウレタン樹脂。
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるアルコール類(a)が、一般式(2)で表される繰り返し単位の繰り返し数mが、1〜500の整数および一般式(3)で表される繰り返し単位の繰り返し数nが1〜1000の整数である請求項1に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるアルコール類(a)が、1分子中に1〜8個の水酸基を有するヒドロキシ化合物、ラクトンおよびアルキレンオキシドを反応させて得られるものである請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする印刷インキ用組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂を含有することを特徴とするコーティング剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする接着剤組成物。

【公開番号】特開2008−115276(P2008−115276A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299760(P2006−299760)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】