説明

ポリビニルアルコールおよびポリビニルアルコールコポリマーをベースとする新規ハイドロゲル

本発明は、特殊な幾何学構造を持つポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーを含むハイドロゲル、該ハイドロゲルの製造方法および該ハイドロゲルの、バイオ医療、製薬分野における材料として、コンタクトレンズの製造用、作用物質のコントロールした放出のための使用、封入固定化バイオ触媒用担体、遷移金属触媒用担体、反応性膜製造用材料、ボーリング液への添加剤、石油採掘用置換剤、セメント添加剤および、例えば原油など高粘性液の流動性向上と輸送速度増進のための添加剤および化粧品の成分としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルアルコールコポリマーを含むハイドロゲル、該ハイドロゲルの製造方法および該ハイドロゲルの、バイオ医療、製薬分野おける材料として、コンタクトレンズの製造のため、作用物質のコントロールした放出のための使用、封入固定化バイオ触媒用担体、遷移金属触媒用担体、反応性膜製造用材料、ボーリング液への添加剤、石油採掘時の置換剤、セメント添加剤、例えば原油など高粘性液の流動性向上と輸送速度増進のための添加剤、および化粧品の成分としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲルは、三次元網状構造体として存在する親水性ポリマーをベースとする含水ゲルである。これらのポリマーはハイドロゲルとして水には不溶であるが、しかしその形態をきちんと維持したまま平衡体積に至るまで膨潤する。網状構造体の形成は、主として個々のポリマーチェーンの化学的結合によるが、またポリマーチェーン個々のセグメント間における静電的、疎水的相互作用あるいは双極子/双極子の相互作用により物理的にも可能である。所望のハイドロゲルの特性は、ポリマーの構成に使用されるモノマーの選択、架橋の仕方および架橋密度によって、設定した照準どおりに調整することができる。ポリマーに必要な親水性は、特にヒドロキシ基、カルボキシレート基、スルフォネート基またはアミノ基によって与えられる。合成ハイドロゲルは、特にポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルアルコールがベースになっている。ハイドロゲルは、一般的には生体組織に対して良好な相容性がある(原典:非特許文献1)。
【0003】
ポリビニルアルコールベースのハイドロゲルは公知である(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、非特許文献2、非特許文献3)。
【0004】
ポリビニルアルコールベースのハイドロゲルは、例えばポリビニルアルコール水溶液の冷凍及び解凍の繰返しや、ポリビニルアルコール水溶液へのイオン化ビーム(UV光、ガンマ線)の作用、およびビニルアルコールと、グルタルアルデヒド、アセトアルデヒド、フォルムアルデヒド、マレイン酸、蓚酸、アルギン酸、ジメチル尿素、グリオキサール、塩酸、ポリアクロレイン、ジイソアネートおよび/またはジビニルサルフェートなどの架橋性試薬との反応によってなど、多様な方法によって製造することができる。
【0005】
ポリビニルアルコールベースのハイドロゲルは、通例では従来の線状ポリビニルアルコールから製造される。その場合、結晶領域によるハイドロゲルの混濁が生じるため、従来のポリビニルアルコールからのハイドロゲルは、例えばコンタクトレンズなど光学領域には制限付きでしか適用することができない。しかも、従来のポリビニルアルコールからのハイドロゲルは、ハイドロゲルが架橋されて初めてその機械的特性を発現する。
【0006】
驚いたことに、特許文献7(Schulte et al./Celanese Ventures GmbH)及び特許文献8(Bruckmann et al./Celanese Ventures GmbH)に記載されているような、例えば星形など特殊な幾何学構造を持つポリビニルアルコールからのハイドロゲルは、ハイドロゲル内の微結晶度が低く、しかもそれが光学特性および機械特性を改善させていることを発見した。その上、ハイドロゲル形成前におけるポリマーの架橋によりできたポリビニルアルコールの特殊な幾何学構造が、摩耗低下をもたらしている。
【0007】
【特許文献1】米国特許第2003008396A1号明細書
【特許文献2】米国特許第2001029399A1号明細書
【特許文献3】米国特許第0006231605B1号明細書
【特許文献4】米国特許第0005981826A号明細書
【特許文献5】国際公開第2001044307A3号パンフレット
【特許文献6】国際公開第1998050017A1号パンフレット
【特許文献7】独国特許第10343607号明細書
【特許文献8】独国特許第10356574号明細書
【非特許文献1】レンプ(Roempp)化学事典、第2.0版、シュトゥットガルト/ニューヨーク、ゲオルク ティーメ(Georg Thieme)社刊/1999年
【非特許文献2】ハッサン、クリスティ エム.(Hassan,Christie M.)、ペッパス、ニコラオス エー.(Peppas,Nikolaos A.) “Biopolymers,PVA Hydrogels Anionic Polymerisation Nanocomposites”、 Advances in Polymer Science、2000年、第153巻、37〜65ページ
【非特許文献3】ペッパス,ニコラオス エー.(Peppas,Nikolaos A.) “Hydrogels Med.Pharm.”、1987年、第2巻、1〜48ページおよびそこでの引用文献
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は少なくとも一つのポリビニルアルコール星形ポリマーを含むハイドロゲルを目的としている。
【0009】
本発明において、少なくとも一つのポリビニルアルコール星形ポリマーを含むハイドロゲルは、ポリマーとして専ら一つまたは複数のポリビニルアルコール星形ポリマーが使用されているハイドロゲルだけでなく、ポリビニルアルコール星形ポリマーと他のポリマーとの混合物をも意味するものと理解される。この場合、ポリビニルアルコール星形ポリマーと従来のポリビニルアルコールとの混合物で特に好ましいのは、混合比が99:1〜1:99のものである。さらに、ポリビニルアルコール−星形ポリマーとポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレートおよびポリビニルピロリドンとの混合物で、混合比が99:1〜1:99のものが特に好ましい。
【0010】
本発明に基づくハイドロゲルは、その名前が既に示唆しているように上記ポリビニルアルコール星形ポリマーのほかに水も含んでいる。
【0011】
特殊な幾何学構造を持つポリビニルアルコールは、様々な方法によって製造することができる。1つには、独国特許第10238659号明細書に記載されているように遷移金属触媒によりポリビニルアセテートを製造し、ついで独国特許第10343607号明細書に記載されているように鹸化を行う方法、また1つには、ビニルアセテートと架橋性コモノマーを共重合したあと、独国特許第10356574号明細書に記載されているように鹸化を行う方法がある。
【0012】
以下では、独国特許第10343607号明細書および独国特許第10356574号明細書に記載されているポリビニルアルコールおよびポリビニルアルコールコポリマーをポリビニルアルコール星形ポリマーと言う。
【0013】
独国特許第10343607号明細書および独国特許第10356574号明細書に記載のポリビニルアルコール星形ポリマーとは、下記の式I、IIおよびIIIで表わされる化合物を言う。
【0014】
【化1】

【0015】
但し、式中の略符号は次の意味である。
Pol: ポリビニルアルコールベースのポリマー、特に好ましくはポリビニルアルコールベースのホモポリマーまたはコポリマー、さらに好ましくはポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール−ポリビニルアセテートコポリマー、ポリビニルアルコール−ポリエチレンコポリマー、ポリビニルアルコール−塩化ポリビニルコポリマーまたはポリビニルアルコール−ポリアクリル酸メチルエステルコポリマー、
Z: 中心原子であって、元素の周期表の第13〜第16族の原子、好ましくは炭素、珪素、窒素、燐、酸素または硫黄、特に好ましくは炭素または珪素、
: それぞれ同じまたは異なるハロゲン原子で、好ましくは弗素、塩素、臭素または沃素、特に好ましくは塩素、臭素または沃素、
: 同じ又は異なり、水素またはC〜C20の炭素含有基、
: 同じ又は異なり、中心原子Zと連鎖開始ユニット[R−X]間を繋ぐC〜C20炭素含有基または珪素または酸素、
: 同じ又は異なり、炭素または珪素、
:同じ又は異なり、水素原子またはC〜C20の炭素含有基、
:同じ又は異なり、水素またはC〜C20の炭素含有基、
I: 自然整数で0、1、2または3、
m: それぞれ同じ又は異なり、自然整数で0、1、2、3、4および5、
n: それぞれ同じ又は異なり、自然整数で0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20、
o: それぞれ同じ又は異なり、1または2、
p :それぞれ同じ又は異なり、自然整数で1、2、3、4および5、
q: 自然整数で2、3および4、
【0016】
Ar: 一つ以上のC原子が硼素、窒素または燐で置換されていてもよい、少なくとも4つの炭素原子を有する芳香族基本骨格であって、好ましい芳香族またはヘテロ芳香族の基本骨格が、ベンゾール、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニル、キノリン、ピリジン、ビピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾピロール、ベンゾトリアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジジン、ベンゾピリミジン、ベンゾピラジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、キノリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジンに由来するものであり、必要に応じて置換されていてもよい、
y: 自然整数で0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20、
z: 自然整数で2、3、4、5、6、7、8、9および10、
Ap: 窒素、硼素、燐、酸素または硫黄などの異種原子を含んでもよい、少なくとも3つの炭素原子を有する非芳香族環状基本骨格であって、好ましい脂肪族基本骨格が、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルなどのシクロアルキル基、または例えばアジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、1,3,5−トリアジナン、1,3,5−トリオキサン、オキセタン、フラン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、オキセパン、オキソカンなどのシクロへテロアルキル基、または例えばα−グルコース、β−グルコースなどのサッカリド基に由来するものであり、
a: 自然整数で0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20、
b: 自然整数で2、3、4、5、6、7、8、9および10、
c: 自然整数で0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20、
d: 同じ又は異なってよく、0または1
である。
【0017】
ポリビニルエステルコポリマーベースのポリビニルアルコールコポリマーは、下記の工程、すなわち
A)ラジカル形成剤の存在下、および場合によってはラジカル捕獲剤の存在下におけるビニルエステルの溶液または塊状ラジカル重合、
B)架橋性ポリアルケニル化合物の添加、
C)必要に応じて行う、生成ポリビニルエステルコポリマーの後処理および単離、
D)B)で製造されたポリビニルエステル/ポリビニルエステル−ポリアルケン混合物またはC)で単離されたポリビニルエステル−ポリアルケンコポリマーを塩基により鹸化し、ポリビニルアルコール/ポリビニルアルコール−ポリアルケン混合物またはポリビニルアルコール−ポリアルケンコポリマーを形成し、該生成物を単離する、
各工程を含む方法によって得られ、
工程B)で使用されるポリアルケニル化合物が、式IVで表わされる化合物であることを特徴とする。
【0018】
【化2】

【0019】
ここで、
: 一つ以上の直接隣り合わないC原子が、周期表第5または第6族の元素、好ましくは窒素、燐、酸素または硫黄、特に好ましくは窒素または酸素によって置換されていてもよいC〜C20のアリール基、C〜C20のヘテロアリール基、C〜C20のシクロアルキル基、C〜C20のヘテロシクロアルキル基またはC〜C20のアルキル基、
: 同じ又は異なり、水素、酸素、硫黄、またはヒドロキシ基、カルバモイル基、アミノ基、カルボキシル基、C〜C20のアルキルカルボニル基、C〜C20のアルキルオキシ基、C〜C20のアリールオキシ基、イミノ基、C〜C20のアルキルイミノ基、C〜C20のアルキルイミノ基、シアノ基、C〜C20のアルキル基、C〜C20のアリール基、C〜C20のヘテロアリール基、C〜C20のシクロアルキル基、C〜C20のヘテロシクロアルキル基、C〜C20のアルキルアリール基、C〜C30のアリールアルキル基、C〜C20のアルケニル基、C〜C20のα−オキシアルケニル基、ハロゲン含有C〜C20のアルキル基、C〜C20のアリール基、C〜C20のアルキルアリール基、C〜C30のアリールアルキル基、またはC〜C20のアルケニル基、
、R、R10: 同じ又は異なり、水素またはC〜C20の炭素含有基および
e: 0〜40の自然整数
である。
【0020】
本発明おいて、C〜C20の炭素含有基は、好ましくはC〜C20のアルキル残基、特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチルまたはシクロオクチルであり、C〜C20のアルケニル、特に好ましくはエテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、オクテニルまたはシクロオクテニルであり、C〜C20のアルキニル、特に好ましくはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルまたはオクチニルであり、C〜C20のアリール、特に好ましくはフェニル、ビフェニル、ナフチルまたはアントラセニルであり、C〜C20のフルオロアルキル、特に好ましくはトリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは2,2,2−トリフルオロエチルであり、C〜C20のアリール、特に好ましくはフェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、トリフェニレニル、[1,1’;3’,1’’]トリフェニル−2’−イル、ビナフチルまたはフェナントレニルであり、C〜C20のフルオロアリール、特に好ましくはテトラフルオロフェニルまたはヘプタフルオロナフチルであり、C〜C20のアルコキシ、特に好ましくはメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシまたはt−ブトキシであり、C〜C20のアリールオキシ、特に好ましくはフェノキシ、ナフトキシ、ビフェニルオキシ、アントラセニルオキシ、フェナントレニルオキシであり、C〜C20のアリールアルキル、特に好ましくはo−トリル、m−トリル、p−トリル、2,6−ジメチルフェニル、2,6−ジエチルフェニル、2,6−ジ−i−プロピルフェニル、2,6−ジ−t−ブチルフェニル、o−t−ブチルフェニル、m−t−ブチルフェニル、p−t−ブチルフェニルであり、C〜C20のアルキルアリール、特に好ましくはベンジル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチルまたはナフタリニルメチルであり、C〜C20のアリールオキシアルキル、特に好ましくはo−メトキシフェニル、m−フェノキシメチル、p−フェノキシメチルであり、C12〜C20のアリールオキシアリール、特に好ましくはp−フェノキシフェニルであり、C〜C20のヘテロアリール、特に好ましくは2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、ベンゾキノリニルまたはベンゾイソキノリニルであり、C〜C20のヘテロシクロアルキル、特に好ましくはフリル、ベンゾフリル、2−ピロリジニル、2−インドリル、3−インドリル、2,3−ジヒドロインドリルであり、C〜C20のアリールアルケニル、特に好ましくはo−ビニルフェニル、m−ビニルフェニル、p−ビニルフェニルとし、C〜C20のアリールアルキニル、特に好ましくはo−エチニルフェニル、m−エチニルフェニルまたはp−エチニルフェニルであり、C〜C20のヘテロ原子含有基、特に好ましくはカルボニル、ベンゾイル、オキシベンゾイル、ベンゾイルオキシ、アセチル、アセトキシまたはニトリルである。但し、一つ以上のC〜C20の炭素含有基が環状系を形成していてもよい。
【0021】
本発明において、架橋性のC〜C20炭素含有基は、好ましくはC〜C20のアルキル、特に好ましくはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、シクロペンチレン、ヘキシレンまたはシクロヘキシレンであり、C〜C20のアルケニル、特に好ましくはエテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニルまたはシクロヘキセニルであり、C〜C20のアルキニル、特に好ましくはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニルまたはヘキシニルであり、C〜C20のアリール、特に好ましくはo−フェニレン、m−フェニレンまたはp−フェニレンであり、C〜C20のヘテロ原子含有基、特に好ましくはカルボニル、オキシカルボニル、カルボニルオキシ、カルバモイルまたはアミドである。
【0022】
本発明のまた別な主題は、本発明に基づくハイドロゲルの製造および使用である。
【0023】
ポリビニルアルコール星形ポリマーを含む本発明によるハイドロゲルの製造は、例えば下記作業過程により実施することができる。
・ポリビニルアルコール星形ポリマーおよびその他任意成分を含む水溶液の冷凍および解凍の繰返し、
・ポリビニルアルコール星形ポリマーおよびその他任意成分を含む水溶液へのイオン化ビーム(UV光、ガンマ線)の作用、および
・ポリビニルアルコール星形ポリマーおよびその他任意成分を含む水溶液と、例えばグルタルアルデヒド、アセトアルデヒド、フォルムアルデヒド、マレイン酸、蓚酸、アルギン酸、ジメチル尿素、グリオキサール、塩酸、ポリアクロレイン、ジイソアネートおよび/またはジビニルサルフェートなど架橋性試薬との、必要に応じて酸触媒または塩基触媒存在下での反応。
【0024】
その他成分とは、なかでも下記のものを指している。
・従来型のポリビニルアルコール、
・例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレートおよびポリビニルピロリドンなどのその他ポリマー、
・微生物、
・例えばアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸誘導体、
・例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸アンモニウム、燐酸マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよび/または塩化アルミニウムなどの塩。
【0025】
本発明に基づくハイドロゲルは、従来のポリマーからのハイドロゲルに比べて透明性が高いという特徴がある(Haze値比較、実施例3および4参照)。
【0026】
本発明に基づくハイドロゲルは、従来のポリマーからのハイドロゲルに比べて耐水性が優れていることから、例えば廃水処理用の封入固定化バイオ触媒用担体として使用する場合有利である(耐水性比較、実施例7および8参照)。
【0027】
下記混合物からの製品は、本発明のハイドロゲルを説明する実施例であるが、本発明を限定するものではない。
・ポリビニルアルコール星形ポリマー/水
・ポリビニルアルコール星形ポリマー/従来のポリビニルアルコール/水
・ポリビニルアルコール星形ポリマー/ポリアクリル酸/水
・ポリビニルアルコール星形ポリマー/ポリメタクリル酸/水
・ポリビニルアルコール星形ポリマー/ポリアクリレート/水
・ポリビニルアルコール星形ポリマー/ポリメタクリレート/水
・ポリビニルアルコール星形ポリマー/ポリビニルピロリドン/水
・ポリビニルアルコール星形ポリマー/従来のポリビニルアルコール/アルギン酸ナトリウム/塩化カルシウム/フォルムアルデヒド/水
・ポリビニルアルコール星形ポリマー/従来のポリビニルアルコール/微生物/水
・ポリビニルアルコール星形ポリマー/従来のポリビニルアルコール/塩化カルシウム/水
・ポリビニルアルコール星形ポリマー/従来のポリビニルアルコール/塩化カルシウム/微生物/水
【0028】
本発明のもう一つの主題は、一つ以上のポリビニルアルコール星形ポリマーを含むハイドロゲルを以下の形態として、すなわち
・バイオ医療および製薬分野における、例えば人造組織として、あるいは創傷治療用材料として
・コンタクトレンズ製造材料として
・作用物質をコントロールして放出するための材料として
・例えば廃水処理用の封入固定化バイオ触媒用担体として
・例えばパラジウム触媒など遷移金属触媒用担体として
・反応性膜製造用の材料として
・ボーリング液への添加剤として、特に分解性のあることからオフショワーで行うボーリングの洗浄液への添加剤として
・石油採掘時の置換剤として
・セメント添加剤として
・例えば原油など高粘性液体の流動性向上および輸送速度増進のための添加剤として
・化粧品成分として
使用することである。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例によって説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
実施例1:独国特許第10343607号明細書に基づくポリビニルアルコール星形ポリマーの製造
【0030】
【化3】

【0031】
1000mlの丸底フラスコに167mlのメタノール性1%苛性ソーダ溶液を入れ、水浴で50℃に加熱する。そこへ、333mlのメタノールに50gのポリビニルアセテート星形ポリマー(独国特許第10238659号明細書に基づき製造)を含む溶液を30分間かけて滴下する。添加終了後さらに30分間撹拌する。白色沈殿物を濾別し、メタノール洗浄によりアルカリ分を除去し、その後真空乾燥する。収量:25.0g H−NMR(500MHz、[D]−DSMO):δ=6.65(s,芳香族H)、4.65、4.46、3.89、3.84、3.31、1.44−1.33(4×s、1×m、PVOH)ppm。
【0032】
実施例2:独国特許第10356574号明細書に基づくポリビニルアルコール星形ポリマーの製造
132ml(1.43mol)のビニルアセテート、9.0g(70.2mmol)のジアリルフォルマール、1.6ml(7.3mmol)のトリス−2,2,2−トリフルオロエチルフォスファイトおよび1.25g(3.6mmol)の過酸化ジベンゾイル(70%、残量HO)を68mlのトルエンに加える。この無色透明の溶液を70℃で20時間撹拌する。揮発性成分を油真空ポンプで除去し、ポリビニルアセテート星形ポリマーを200mlのメタノール中に収容する。この溶液を400mlのメタノール性1%NaOH溶液に15分以内で滴下する。50℃でさらに90分撹拌する。ポリビニルアルコールを濾別し、メタノールで中性まで洗浄後に油真空ポンプで乾燥する。収量:14.4g(22%)H−NMR(500MHz、[D]−DSMO):δ=5.92−5.87(m)、5.24、5.13(2×d)、4.66、4.61、4.46、4.22、4.21、4.10、4.09、4.00、3.89、3.84、3.35、3.16、1.43−1.33(13×m)ppm。
【0033】
実施例3:ポリビニルアルコール星形ポリマーを含むハイドロゲルの製造
25gのポリビニルアルコール星形ポリマー(実施例1)を75mlの脱塩水に入れて70℃で溶解する。この溶液を平たい金属皿(20×20cm)に取り入れ、蓋をして−30℃で12時間保管する。その後、この溶液を12時間以内で室温に戻し、さらに2回冷凍/解凍工程を繰返し行う。ハイドロゲルは厚さ0.25cmの被膜状で得られる。混濁値(Haze値、%単位):1.3。
【0034】
実施例4:線状ポリビニルアルコールを含むハイドロゲルの製造(比較例)
25gのポリビニルアルコール(セラニーズ(Celanese)社のCelvol−103)を75mlの脱塩水に入れて70℃で溶解する。この溶液を平たい金属皿(20×20cm)に取り入れ、蓋をして−30℃で12時間保管する。その後、この溶液を12時間以内で室温に戻し、さらに2回冷凍/解凍工程を繰返し行う。ハイドロゲルは厚さ0.25cmの被膜状で得られる。混濁値(Haze値、%単位):4.6。
【0035】
実施例5:ポリビニルアルコール星形ポリマーと線状ポリビニルアルコールとの混合物を含むハイドロゲルの製造
2gのポリビニルアルコール星形ポリマー(実施例2)、2gのポリビニルアルコール(セラニーズ(Celanese)社のCelvol−103)、0.5gのアルギン酸ナトリウム塩および0.15gの炭酸水素ナトリウムを50mlの水に70℃で溶かし、その溶液を室温に冷却した後、ゆっくり撹拌しながら250mlの0.1モル塩化カルシウム溶液に、挿入管を使わず大粒の滴として注入器から滴下する。この時、約3mm大の球形粒子が形成される。粒子をガラスフリットで注意深く濾過して分離し、5gのフォルムアルデヒド(37%の水溶液)、50gの濃縮硫酸および25gの硫酸ナトリウムから成る40℃の溶液に入れる。1時間後、固化した球形粒子を濾過により分離し、水で中性まで洗浄する。収量:球形粒子として43gのハイドロゲル。
【0036】
実施例6:線状ポリビニルアルコールを含むハイドロゲルの製造(比較例)
4gのポリビニルアルコール(セラニーズ(Celanese)社のCelvol−103)、0.5gのアルギン酸ナトリウム塩および0.15gの炭酸水素ナトリウムを50mlの水に70℃で溶かし、その溶液を室温に冷却した後、ゆっくり撹拌しながら250mlの0.1モル塩化カルシウム溶液に、挿入管を使わず大粒の滴として注入器から滴下する。この時、約3mm大の球形粒子が形成される。粒子をガラスフリットで注意深く濾過して分離し、5gのフォルムアルデヒド(37%の水溶液)、50gの濃縮硫酸および25gの硫酸ナトリウムから成る40℃の溶液に入れる。1時間後、固化した球形粒子を濾過により分離し、水で中性まで洗浄する。収量:球形粒子として37gのハイドロゲル。
【0037】
実施例7:実施例5のハイドロゲルの消耗度検査
底部にプラスチック製篩(網目0.75mm)の置かれた50mlの使い捨て注入器に実施例5のハイドロゲルを10g入れた。ハイドロゲルはプラスチック製篩で覆い、ハイドロゲル上方の空隙にはグラスウールを詰めた。注入器は、径1mmのテフロン(登録商標)チューブの通されたゴム栓で封鎖した。ポンプを使って水道水を流入速度1ml/分で1週間に亘りテフロン(登録商標)チューブからハイドロゲル上へ流し入れた。その後、ハイドロゲルを注入器から取り出し秤量した。一週間後、実施例5のハイドロゲルを9.2g採取した。
【0038】
実施例8:実施例6のハイドロゲルの消耗度検査(比較例)
底部にプラスチック製篩(網目0.75mm)の置かれた50mlの使い捨て注入器に実施例6のハイドロゲルを10g入れた。ハイドロゲルはプラスチック製篩で覆い、ハイドロゲル上方の空隙にはグラスウールを詰めた。注入器は、径1mmのテフロン(登録商標)チューブの通されたゴム栓で封鎖した。ポンプを使って水道水を流入速度1ml/分で1週間に亘りテフロン(登録商標)チューブからハイドロゲル上へ流し入れた。その後ハイドロゲルを注入器から取り出し秤量した。一週間後、実施例6かのハイドロゲルを8.1g採取した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのポリビニルアルコール星形ポリマーを含むハイドロゲル。
【請求項2】
ハイドロゲルが、前記ポリビニルアルコール星形ポリマーの他に、別なポリビニルアルコール星形ポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲル。
【請求項3】
ハイドロゲルが、前記ポリビニルアルコール星形ポリマーの他に、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレートおよびポリビニルピロリドンからなる群から選らばれた別なポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲル。
【請求項4】
ポリビニルアルコール星形ポリマーが、式I、II及びIIIで表わされる化合物の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲル。
【化1】

ここで、
Pol: ポリビニルアルコールベースのポリマー、特に好ましくはポリビニルアルコールベースのホモポリマーまたはコポリマー、さらに好ましくはポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール−ポリビニルアセテートコポリマー、ポリビニルアルコール−ポリエチレンコポリマー、ポリビニルアルコール−塩化ポリビニルコポリマーまたはポリビニルアルコール−ポリアクリル酸メチルエステルコポリマー、
Z: 中心原子であって、元素の周期表の第13〜第16族の原子、好ましくは炭素、珪素、窒素、燐、酸素または硫黄、特に好ましくは炭素または珪素、
: それぞれ同じまたは異なるハロゲン原子で、好ましくは弗素、塩素、臭素または沃素、特に好ましくは塩素、臭素または沃素、
: 同じ又は異なり、水素またはC〜C20の炭素含有基、
: 同じ又は異なり、中心原子Zと連鎖開始ユニット[R−X]間を繋ぐC〜C20炭素含有基または珪素または酸素、
: 同じ又は異なり、炭素または珪素、
:同じ又は異なり、水素原子またはC〜C20の炭素含有基、
:同じ又は異なり、水素またはC〜C20の炭素含有基、
I: 自然整数で0、1、2または3、
m: それぞれ同じ又は異なり、自然整数で0、1、2、3、4および5、
n: それぞれ同じ又は異なり、自然整数で0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20、
o: それぞれ同じ又は異なり、1または2、
p :それぞれ同じ又は異なり、自然整数で1、2、3、4および5、
q: 自然整数で2、3および4、
Ar: 一つ以上のC原子が硼素、窒素または燐で置換されていてもよい、少なくとも4つの炭素原子を有する芳香族基本骨格であって、好ましい芳香族またはヘテロ芳香族の基本骨格が、ベンゾール、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、トリフェニル、キノリン、ピリジン、ビピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ベンゾピロール、ベンゾトリアゾール、ベンゾピリジン、ベンゾピラジジン、ベンゾピリミジン、ベンゾピラジン、ベンゾトリアジン、インドリジン、キノリジン、カルバゾール、アクリジン、フェナジン、ベンゾキノリン、フェノキサジンに由来するものであり、必要に応じて置換されていてもよい、
y: 自然整数で0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20、
z: 自然整数で2、3、4、5、6、7、8、9および10、
Ap: 窒素、硼素、燐、酸素または硫黄などの異種原子を含んでもよい、少なくとも3つの炭素原子を有する非芳香族環状基本骨格であって、好ましい脂肪族基本骨格が、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルなどのシクロアルキル基、または例えばアジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、1,3,5−トリアジナン、1,3,5−トリオキサン、オキセタン、フラン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、オキセパン、オキソカンなどのシクロへテロアルキル基、または例えばα−グルコース、β−グルコースなどのサッカリド基に由来するものであり、
a: 自然整数で0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20、
b: 自然整数で2、3、4、5、6、7、8、9および10、
c: 自然整数で0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20、
d: 同じ又は異なってよく、0または1。
【請求項5】
ポリビニルアルコール星形ポリマーが、下記の工程、すなわち
A)ラジカル形成剤の存在下、および場合によってはラジカル捕獲剤の存在下におけるビニルエステルの溶液または塊状ラジカル重合、
B)架橋性ポリアルケニル化合物の添加、
C)必要に応じて行う、生成ポリビニルエステルコポリマーの後処理および単離、
D)B)で製造されたポリビニルエステル/ポリビニルエステル−ポリアルケン混合物またはC)で単離されたポリビニルエステル−ポリアルケンコポリマーを塩基により鹸化し、ポリビニルアルコール/ポリビニルアルコール−ポリアルケン混合物またはポリビニルアルコール−ポリアルケンコポリマーを形成し、該生成物を単離する、
各過程を含む方法によって得られるポリビニルエステルコポリマーをベースとするポリビニルアルコールコポリマーであり、
工程B)で使用されるポリアルケニル化合物が、
式IVで表わされる化合物であることを特徴とする請求項1に記載のハイドロゲル。
【化2】

: 一つ以上の直接隣り合わないC原子が、周期表第5または第6族の元素、好ましくは窒素、燐、酸素または硫黄、特に好ましくは窒素または酸素によって置換されていてもよいC〜C20のアリール基、C〜C20のヘテロアリール基、C〜C20のシクロアルキル基、C〜C20のヘテロシクロアルキル基またはC〜C20のアルキル基、
: 同じ又は異なり、水素、酸素、硫黄、またはヒドロキシ基、カルバモイル基、アミノ基、カルボキシル基、C〜C20のアルキルカルボニル基、C〜C20のアルキルオキシ基、C〜C20のアリールオキシ基、イミノ基、C〜C20のアルキルイミノ基、C〜C20のアルキルイミノ基、シアノ基、C〜C20のアルキル基、C〜C20のアリール基、C〜C20のヘテロアリール基、C〜C20のシクロアルキル基、C〜C20のヘテロシクロアルキル基、C〜C20のアルキルアリール基、C〜C30のアリールアルキル基、C〜C20のアルケニル基、C〜C20のα−オキシアルケニル基、ハロゲン含有C〜C20のアルキル基、C〜C20のアリール基、C〜C20のアルキルアリール基、C〜C30のアリールアルキル基、またはC〜C20のアルケニル基、
、R、R10: 同じ又は異なり、水素またはC〜C20の炭素含有基および
e: 0〜40の自然整数。
【請求項6】
バイオ医療および製薬分野における、特に人造組織の製造用、あるいは創傷治療用、コンタクトレンズ製造用、作用物質をコントロールして放出するための担体として、特に廃水処理における封入固定化バイオ触媒用担体として、遷移金属触媒用担体として、反応性膜製造用の材料として、ボーリング液、特にボーリング洗浄液への添加剤として、石油採掘時の置換剤として、構成体、特に分散液またはエマルジョンへの添加剤として、特に流動性向上および輸送速度増進のための高粘性液体への添加剤としておよび化粧品成分としての請求項1から5のいずれか1項に記載のハイドロゲルの使用。

【公表番号】特表2007−533810(P2007−533810A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508856(P2007−508856)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004348
【国際公開番号】WO2005/103097
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(500552560)セラニーズ ベンチャーズ ゲー・エム・ベー・ハー (1)
【Fターム(参考)】