説明

ポリマー基材の表面を処理する方法、それによって得られる基材及び多層材料の製造におけるその使用

本発明は、ポリマー基剤の表面を処理する方法であって、基材は、少なくとも1種のキャリアガスと1種の活性ガスとを含んだ気体状の処理混合物中、大気圧に実質的に等しい圧力下で、フィラメントタイプの誘電体バリア放電に曝され、活性ガスは、一不飽和又は多価不飽和の直鎖又は分岐炭化水素であって、好ましくは2個乃至10個の炭素原子、より好ましくは2個乃至5個の炭素原子、更により好ましくは2個又は3個の炭素原子を有した炭化水素を含んだ群より選択され、処理混合物の残留酸素含有量は、250ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満であることを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、非常に多くの産業、特には、食品包装若しくは薬品包装、グラフィックアート、接着ラベル若しくはテープの製造、家具保護、フロアマット、又は断熱材の産業、或いは絶縁電気部品の製造のための産業において広く使用されるポリマー基材の表面処理の分野に関する。
【0002】
より詳細には、これら産業によって使用されるプリントされた又はプリントされていない単層又は多層材料の製造に関する。このような材料は、プリント又は接着などの、そのプロセスにおいて基材の湿潤と塗料(インク、接着剤、ワニスなど)に対するその接着とが絶対的に必要な転換(transformation)工程の最中に、優れた湿潤性及び非常に良好な接着をそれらに提供する高い界面エネルギーを持っていなければならない。しかしながら、通常、これら材料は、これら転換プロセスにおけるそれらの使用を困難にする表面特性を有している。同様に、疎水性オレフィンタイプ又は他のタイプのプラスチックフィルム又はシート、紙、アルミニウム箔といった、使用する様々な材料の間での性質の違いは、接触障害をもたらし、これは、基材の表面の特定の準備によって解決されるのみである。
【0003】
ポリマーの表面を「活性」にすることを可能にするこの特定の準備を行うのに最も広く使用されている操作の中には、2つの異なる基材の層の間の接着又はインク若しくはワニスの基材に対する接着を特には提供する「接着プライマ」として知られた適切な二官能価化合物によって表面を予め液体塗布する方法が特にはある。
【0004】
これら技術は、接着プライマを、約20%の固形物濃度で汚染性有機溶媒中に溶解させることを必要とする。それ故、それらの使用は、この溶媒を蒸発させ、その後、それを再循環させるか又はそれを焼却するための必然的なエネルギー消費を必要とする。
【0005】
それ故に、アミン基、アミド基、ニトリル基か、又はカルボニル基、カルボキシル基若しくは他のアルコール基若しくはエステル基などの化学的官能性/官能基をポリマー表面に導入し、それによってポリマーの表面特性を変更すること、例えば、それに或る程度の親水性を与えることか、又はインク、ワニス若しくは接着剤との接着を向上させることを目的とした、低圧プラズマ表面処理などの他の処理が開発されてきた。このカテゴリーの低圧処理は、特には、1996年に出版されたN.Inagakiによる「Plasma surface modification and plasma polymerization」, Laboratory of Polymer Chemistry at Shizuoka University, TECHNOMIC Publishing Co. Inc.という著書及び欧州特許出願公開第679680号という文献において説明されている。
【0006】
極めて環境に優しいにもかかわらず、これら低圧プラズマ法は、それらが減圧下で及びバッチ式で行われるという事実に関連した重要な欠点を有しており、そのため、連続式で使用されねばならない高い生産速度での大規模なポリマー表面の処理に適合していない。
【0007】
今日、これら処理に代わる或る代替策が、産業界で広く使用されている。それは、空気中、大気圧での放電によるポリマー基材の表面処理(一般に、「コロナ処理」として知られている)である。
【0008】
しかしながら、このような処理は、十分なものではない。具体的に言うと、ポリプロピレンなどの或るポリマーの場合、この処理によって得られる界面エネルギー値は、低過ぎるだけでなく、それらは、更に、時間の経過と共に急速に低下する(意に満たないエージング)。
【0009】
それ故、本出願人は、国際公開第92/11321号及び欧州特許出願公開第622474号という文献において、ポリマー基材を表面処理する方法であって、この処理の間、シリコン系の層を基材の表面に堆積することを目的として、基材が、キャリアガスと、シランと、酸化性ガスとを含有した雰囲気中、大気圧に実質的に等しい圧力で、誘電体バリア放電に曝される方法を提案している。これらの文献が示しているように、当該プロセスは確かに優れた表面特性をもたらすが、シランの使用は更なる費用をもたらすことが認められており、この費用は、特には低付加価値用途に常に許容されるとは限らない。
【0010】
最後に、本出願人名義の文献である国際公開第01/58992号は、ポリマーフィルム及びシートを表面処理する方法であって、この処理の間、基材が、キャリアガスと更には還元性ガス及び/又は酸化性ガスとを含有したガス混合物中、大気圧に実質的に等しい圧力で、誘電体バリア放電に曝される方法を記載している。
【0011】
この処理は、窒素原子を、共有結合を介し、アミン、アミド及びイミド官能基の形で基材の表面へとグラフトする効果を有している。処理ガス混合物の変更は、基材の表面へとグラフトされる窒素の量を3乃至8%の間で調節することを可能にし、これは、放電に曝される表面の一部のみの転換を示している。
【0012】
しかしながら、国際公開第01/58992号に従う方法を使用は、幾つかの用途において、以下のように要約され得る幾つかの特有の問題を生ずる。
【0013】
−まず、それは、大型且つそれ故に高価な装置を必要とする。具体的に言うと、大気圧に実質的に等しい圧力では、プラズマを発生させるのに使用されるガス混合物のイオン化閾値が高いので、必要な電力を送ることを可能とするために、電極の数を増やす必要がある。それ故、経済的な産業上の操作に適合した状態を保つためには、処理速度を制限することが必要である。
【0014】
−次に、大きな電位差で作動する電極によって加熱されるプラントを冷却することに関連した問題に対処することも必要である。
【0015】
−更に、(熱収縮性タイプの)感熱フィルムは、このようなプロセスによると、放出された熱によってダメージを受けずに処理され得ない。
【0016】
−最後に、このプロセスの実施に必要な大きな電力は、通常の発電機の大きさによって制限され、それ故に、処理できる材料の群の範囲を制限する。
【0017】
最後に言及したプロセスが或る材料の処理に関連して有している問題点を解決することを可能にする新規なプロセスを有することおいて、存在するであろう大きな関心は、以下のように理解され得る。
【0018】
−より広範囲の材料、特には感熱フィルムを処理することを可能にする新規なプロセスを提供することが可能であることが、とりわけ最も有利であろう。
【0019】
−表面の処理に必要な比エネルギー(l'energie specifique)を低減させ、それにより投資費用を低減させるように、このプロセスを改善することが望ましい。
【0020】
−また、この新規なプロセスが、プラスチックフィルムの転換又はプリント用の現代の装置と同程度の、例えば、典型的には300乃至600m/分の高い処理速度を達成することを可能にすることが望ましい。
【0021】
以下に示す更なる詳細から分かり得るように、本発明者らは、フィラメントタイプの誘電体バリア放電プロセスにおいて、大気圧に実質的に等しい圧力で、キャリアガスと更には或る特定の活性ガスとを含んだ処理雰囲気を、酸素が存在していないか又は存在していても極めて低減された残留酸素分の存在下で使用することによってこれらの問題に対する解決策を提供できたことを強調している。
【0022】
本発明に従うと、「大気圧に実質的に等しい圧力」という表現は、本発明の範囲から外れることなく、大気圧から数十ミリバールか又は数百ミリバールにある圧力で効果を示し得るという事実を意味すると理解される。しかしながら、注目すべきは、それは、大気圧から±200Paの範囲にあることが好ましいであろうし、更には、この大気圧から±25Paの範囲にあることがより好ましいであろうことである。
【0023】
このように、本発明は、ポリマー基材(それらが合成ポリマーであるか又は天然ポリマーであるかはともかくとして)に対する表面処理方法(それは、本発明の範囲から何ら逸れることなく、「表面機能付与方法」とも呼ばれる)であって、基材は、少なくとも1種のキャリアガスと1種の活性ガスとを含んだ処理ガス混合物中、大気圧に実質的に等しい圧力で、フィラメントタイプの誘電体バリア放電に曝され、活性ガスは、少なくとも1種の直鎖又は分岐の一不飽和又は多価不飽和炭化水素であって、好ましくは2個乃至10個の炭素原子、より好ましくは2個乃至5個の炭素原子、更により好ましくは2個又は3個の炭素原子を有し、任意に、アミン、アミド、酸、アルコール、イミン、イミド又はハライドタイプの少なくとも1つの官能基によって置換されているか、又は少なくとも1種のカップリング剤、特にはシラノール基によって置換されている炭化水素及びこれらの組み合わせを含んだ群より選択され、処理混合物の残留酸素含有量は、250ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満であることを特徴とする方法に関する。
【0024】
説明の目的で、一般に、「カップリング剤」は、2つの巨大分子又は2つの表面を、「カップリング剤」の官能基と当該2つの表面との間の化学反応によって、「結合」又は「架橋」させることを可能にする二官能価分子(言い方を変えると、建物の2つの階を「相互連絡」するコンクリート柱のようなもの)を指す。
【0025】
本発明に従うと、例として、クロライド及びシラノール基の双方を含んだ錯体分子を使用することができる。
【0026】
好ましくは、活性ガスは、気体であるか、又は、その蒸気と平衡状態にあり、20℃の温度での蒸気圧が10パスカルよりも大きい液体である。
【0027】
好ましくは、活性ガスは、1個、2個又は3個の炭素原子を有する不飽和炭化水素から選択される。より好ましくは、活性ガスは、アセチレン若しくはエチレン若しくはプロピレン、又はこれらガスの混合物である。
【0028】
如何なる理論にも束縛されることを望むものではないが、発明者は、ガス状分子又は蒸気の形態にある液体分子であり、低いイオン化閾値と、ラジカル機構を介した非常に高い化学反応性とを有した活性ガスは、基材へとグラフトされる窒素の割合の大いなる増加と、この方法を実施するのに必要な比出力(la puissance specifique)の著しい低下と、それ故に、本発明に従う前記方法に適合するポリマー基材の多様性の拡張とを可能にすると信じている。
【0029】
より詳細には、以下に示す本発明に従って得られる優秀な結果は、本発明に従う複合的及び相乗的な手段、即ち、選択される放電の種類と、存在する活性ガスの種類と、処理雰囲気中の酸素の非存在との使用に起因するはずであるということが信じられ得る。
【0030】
酸素は、エネルギー源に曝されているときには特に反応的なガスであり、実際、容易に励起可能である。O2の存在下では、非常に低い含有量であっても、O2及びN2間の競合反応は、酸素の方を選択する。本発明の場合、酸素の存在下で働く炭化水素、例えばアセチレンを使用することによって、O2とC22と間の反応が優先的に起こるであろう。
【0031】
それ故に、注入される炭化水素の大部分が酸素と反応せず且つそれによりこの炭化水素の表面処理への効果を妨害しないように、酸素含有量を最小限の値に制限することが必要である。
【0032】
酸素分子は、非常に低い励起閾値を有し、非常に容易に励起されて、非常に反応的であり且つポリマーを酸化させる不安定な種、イオン及びラジカルの生成をもたらすという事実に加え、酸素との再結合が起きて、オゾンを生成し、これが酸化によってポリマーを強く劣化させると仮定することも可能である。また、酸素分子は、気相の活性ガスの励起によって生成されたラジカルと非常に迅速に反応し、それにより、グラフト反応をもたらす反応メカニズムの進行を妨げるとも考えられ得る。
【0033】
本発明の実施に特に適した1つのキャリアガスは窒素であるが、当業者は、他のキャアガス、特には、アルゴン、ヘリウム又はこれらガスの互いとの及び/又は窒素との混合物を選択することが可能である。しかしながら、当業者は、これらガスの代わりに、本発明の実施を可能にする任意の他のガスを用いるのに適した能力を有しているので、本発明は、これらガスに制限されるべきでない。
【0034】
本発明の或る態様では、この方法は、処理ガス混合物が、追加の還元性ガス及び/又は酸化性ガス(周知のように、アセチレンなどの炭化水素は一般に還元性ガスと見なされるので、できる限り十分に明確にするために、ここでは、「追加」の還元性ガスと呼ぶ)を更に含んでいることを特徴とする。好ましくは、水素が還元性ガスとして選択され、酸化性ガスが、CO2、NO2及びH2O又はこれらガスの混合物から選択される。もちろん、当業者は、本発明に適した他の還元性又は酸化性ガスを選択することができる。
【0035】
従って、本発明の特に好ましい主題は、上記したポリマー基材の表面処理方法であって、前記処理ガス混合物が、本発明に従う活性ガスと組み合わせられた、N2/H2、N2/CO2又はN2/N2Oの混合物である方法である。好ましくは、選択される活性ガスはアセチレンであり、それ故に、処理混合物は、好ましくは、以下の組み合わせ,N2/C22、N2/H2/C22、N2/CO2/C22又はN2/N2O/C22,のうちの1つである。
【0036】
本発明の実施のために、活性ガス並びに還元性及び/又は酸化性ガスの含有量は、好ましくは、それによって処理された基材の界面エネルギーが約60mN/mとなるように調節される。約60mN/mの界面エネルギーは、当業者によって十分であると一般的に許容される湿潤性に対応する。
【0037】
特に、混合物中の活性ガスの含有量は、50乃至1000体積ppm、好ましくは100乃至600体積ppmの範囲内にあり、より好ましくは300体積ppm付近にある。
【0038】
同様に、混合物中の還元性ガス又は酸化性ガスの含有量は、有利には、50乃至3000体積ppm、好ましくは100乃至1500ppm、より好ましくは250乃至1000体積ppmの範囲内にある。
【0039】
本発明の他の態様では、最初に、基材が、大気圧に実質的に等しい圧力のもと、空気又は不活性ガス又はこれらガスの混合物からなる前処理ガス混合物中で、誘電体バリア放電中に通すことにより、前処理に供される。不活性ガスは、本発明に従うキャリアガスと同様の性質又は異なる性質のものであり、特には、窒素、アルゴン、ヘリウム又はこれらガスの混合物から選択される。
【0040】
本発明に従うと、ポリマー基材は、好ましくは巨視的に平坦であり、シート、フィルム又は発泡体の形態にある。更に、基材は、好ましくは、織られた又は不織のポリマー繊維からなる。
【0041】
詳細には、ポリマー基材は、特には、
・ポリアミド、ポリビニルクロライド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルジクロライド若しくはポリビニルアセテート、又はポリテトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマーから選択される合成ポリマー、
・合成又は天然ゴム、
・ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)及び澱粉系ポリマーから特に選択される生分解性ポリマー
から選択される。
【0042】
ポリマーに関する上のこのリストは、単に例として示されており、何ら限定するものではない。
【0043】
本発明に従うポリマー基材は、上記リストからのポリマーの少なくとも1種を含んだ任意の多層フィルムでもある。
【0044】
本発明の他の主題は、本発明の方法に従って処理されたことを特徴とする任意のポリマー基材である。
【0045】
好ましくは、本発明に従って処理されたポリマー基材は、巨視的に平坦であり、シート、フィルム又は発泡体の形状を有している。更に、このポリマー基材は、織られた又は不織のポリマー繊維からなり得る。
【0046】
より好ましくは、本発明の方法によって処理されるポリマーは、
・ポリアミド、ポリビニルクロライド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルジクロライド若しくはポリビニルアセテート、又はポリテトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマーから選択される合成ポリマー、
・合成又は天然ゴム、
・ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)及び澱粉系ポリマーから特に選択される生分解性ポリマー
から選択される。
【0047】
ポリマーに関する上のこのリストは、単に例として示されており、何ら限定するものではない。
【0048】
また、本発明のポリマー基材の表面処理方法は、現在までのところ未だに取り組まれていない付帯的な技術的問題を解決することを可能にする。
【0049】
具体的に言うと、2つの表面間の接着は、一般には、これらの表面のうちの一方若しくは他方にあるか又はそれら双方にあるにわか(接着剤)からなる塗料を介して達成される。これら接着剤は、製品の最終使用中に、例えば食品製品に接触するように又はその中に入るように移動し得る化学薬品を使用する。このような接着剤をなくすることは、経済的理由(投資、運転費用、溶媒回収)及び衛生上の理由の双方にとって、とりわけ最も有利であろう。
【0050】
従って、本発明が対処することを提案する1つの付帯的な技術的課題は、2つの表面間の接着を、接着剤を使用せずに、互いに化学的に反応する分子の各々の表面へのグラフトであって、先の反応の生成物が先の2つの表面間の結合を提供するグラフトによって達成することである。
【0051】
それ故に、本発明の更なる主題は、接着剤を使用することなく2つの表面の接着を達成するための、本発明の方法に従って処理されたポリマー基材の使用である。
【0052】
或る態様では、本発明に従う2つの表面間の接着は、2つの表面を接触させることを含んでおり、第1表面は、本発明の方法に従って処理されたポリマー基材の表面、即ち、塩基性官能基がグラフトされた表面であり、第2表面は、前記第1表面と相互作用が可能な基材の表面である。
【0053】
或る特定の態様では、前記第2表面は、主には酸性である分子の処理されるべき表面へのグラフトを起こす、従来技術で説明されているような「コロナ」タイプの従来の方法によって処理される。従って、グラフトされた2つの表面の接触の間、グラフトされた官能基は、互いに反応することが可能であり、実際に、にわかも接着剤もなしに、これら2つの面間の接着をもたらすことが可能である。
【0054】
この態様は、2つの表面間の接着を促進する他の周知の方法に適用されてもよい。例えば、押出被覆であり、ここでは、溶融樹脂が塗布される表面は、本発明に従った方法で予備処理されたポリマー基材の表面であり、一方では、溶融樹脂のフィルムが、空気中に存在している分子の酸素によってか、又は、更に良好には、酸性の性質を有する酸素含有官能基をその表面上に生成するオゾナイザーによって生成されたオゾンによって、酸化反応を受ける。押出ラミネートは、2つの基材を、先の2つの基材の各々の一方の表面に同時に塗布された溶融樹脂を接着剤として使用して結合させること(assemblage)に対応している。より詳細には、2つの表面は、その後、発明の方法に従って処理されて、酸素分子か又はオゾンによって2つの面が処理された溶融樹脂のフィルムを介して接触される。
【0055】
本発明に適合する他の変形は、当業者に更に周知である高温ラミネート若しくはコーティング技術、接着剤ラミネート技術か、又はサーマルラミネート技術である。
【0056】
本発明によって提供される多くの利点は、明細を説明している図面及び例を考慮することによって、十分理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、一方では、適用された比出力に応じた、N2/H2混合物(500ppmのH2)を用いた処理後の厚さが20μmのBOPP(二軸延伸ポリプロピレン)フィルムの界面エネルギーの変化を示しており、他方では、30日間に亘るこの処理の安定性を示したグラフである。
【図2】図2は、一方では、適用された比出力に応じた、N2/H2/C22混合物(500ppmのH2、500ppmのC22)を用いた本発明に従う処理後の厚さが20μmのBOPPフィルムの界面エネルギーの変化を示しており、他方では、30日間に亘るこの処理の安定性を示している。
【0058】
例1
国際公開第02/40738号という文献において本出願人によって説明されたものと同じタイプの誘電体バリア放電デバイスにおいて、厚さが20μmであり、幅が200乃至2000mmの範囲に亘っている様々な二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)フィルムに対し、75m/分の速度及び以下の条件下で放電が行われた。
【0059】
試験1:N2/H2(500ppmのH2)。
【0060】
試験2:N2/H2(500ppmのH2)+500ppmのアセチレンC22
【0061】
各試験において、20W.分/m2乃至100W.分/m2の、様々な比出力が適用された。
【0062】
次に、このようにして得られた処理済みフィルムの界面エネルギーが、DIN ISO8296及びASTM D 2578-99a基準に従って、較正済みインク(encreas calibrees)を塗付することによる処理の直後、この処理の1日後、7日後、14日後及び30日後に測定された。
【0063】
結果は、図1に示されている。
【0064】
これらの結果から、以下のことが明らかになる。
【0065】
−試験1では、少なくとも70W.分/m2の比出力が適用されていれば、少なくとも30日間に亘って安定であった60mN/mの界面エネルギー(t30)が得られた。
【0066】
−試験2では、この場合、単に30W.分/m2の比出力、即ち、試験No.1よりも2.5倍小さい比出力の適用によって、少なくとも30日間に亘って安定であった60mN/mの界面エネルギーが得られた。
【0067】
このように、或る処理速度では、本発明に従う方法を用いると、十分な界面エネルギーのポリマー基材を得るのに、より小型の装置が使用され得る。
【0068】
同様に、或る装置の大きさでは、ポリマー基材の処理が、2.5倍高い速度で行われ得る。
【0069】
最後に、高い比出力の適用後の電極の加熱に関連した熱の影響は、低減されるであろうし、そのおかげで、感熱フィルムは、本発明に従う方法によって処理されることが可能であろう。
【0070】
例2
例1と同一のデバイスにおいて、厚さが20μmである二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)の様々なフィルムが、以下の条件下で、様々な放電によって処理された。
【0071】
試験3:N2/H2(500ppmのH2
試験4:N2/H2(500ppmのH2)+50ppmのC22
試験5:N2/H2(500ppmのH2)+100ppmのC22
試験6:N2/H2(500ppmのH2)+500ppmのC22
試験7:N2/CO2(500ppm)
試験8:N2/CO2(500ppm)+50ppmのC22
試験9:N2/CO2(500ppm)+100ppmのC22
試験10:N2/CO2(500ppm)+500ppmのC22
各試験において、20W.分/m2乃至100W.分/m2の、様々な比出力が適用された。
【0072】
次に、このようにして得られた処理済みフィルムの界面エネルギーが、上述の例1と同様に測定され、60mN/mの界面エネルギーを得るのに必要な比出力が明らかになった。最上位の値(les valeurs les plus plus significatives)が、以下の表1に示されている。
【表1】

【0073】
表1からの結果から、反応性ガスの混合物中のアセチレンの添加は、たとえ少量であっても(N2/H2/C22混合物の場合、50ppmから)、システムに適用されるべき比出力の非常に著しい低減を可能にすることが明らかに分かる。更に、この低減は、使用されるガス混合物が、三元N2/H2/C22混合物であっても、三元N2/CO2/C22混合物であっても観察された。
【0074】
本発明に従う表面処理を行うためにシステムに適用されるべき出力のこの低減は、堅いポリプロピレンシートのタイプの厚い材料、又は、今日までは多量のエネルギーが供給されるのを必要としていた、ポリテトラフルオロエチレン、PTFEなどの、大気圧プラズマによって処理するのが困難な材料を、より低費用で処理することを可能にし、これは、本発明の他の利点を構成する。
【0075】
例3
例1からのデバイスと同一のデバイスにおいて、適用する比出力を変化させながら、三元N2/H2/C22混合物(500ppmのH2及び500ppmのC22)の雰囲気によって、厚さが20μmであるBOPP基材が処理された。
【0076】
各試験に対し、処理済みの表面の化学組成を、ESCA分光法(化学分析用電子分光法)によって分析した。各場合において、例1において説明したのと同様に測定した界面エネルギーは、60mN/mであって、30日間安定であった。
【0077】
以下の表2は、得られた結果をまとめている。
【表2】

【0078】
上の表2に示された結果から、第1に、等量に固定されたレベルの窒素のとき、N2/H2混合物では70W.分/m2が消費され、N2/H2/C22混合物では単に30W.分/m2が消費されることが分かる。
【0079】
第2に、システムへと供給される比出力が増加するほど、グラフトされる窒素の量が増加し、それと共にN/O比の値が増加して、2.5に近付く。
【0080】
第3に、適用される比出力が70W.分/m2で同一である場合、三元N2/H2/C22混合物を用いると、二元N2/H2混合物と比較して、更に70%の窒素がグラフトされる。
【0081】
最後に、従来の処理では単に8.3%であったのに対し、三元N2/H2/C22混合物を用い且つ適用した比出力が70W.分/m2であった処理では、BOPPの表面への14%近くの窒素の付着、即ち、グラフトされる窒素原子の数の約75%の増加が達成される。
【0082】
このように、本発明に従う方法の様々な実施例から、この方法が、実際に、従来技術の方法よりも性能が高いことが明らかになる。具体的に言うと、本発明の方法は、ガス混合物の反応性を高めることと、基材へとグラフトされる窒素の割合を高めることと、この方法の実施に必要な比出力を著しく低減させることと、最後に、本発明に従う前記方法に適合するポリマー基材の多様性を拡げることとを同時に可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー基材の表面処理方法であって、前記基材は、少なくとも1種のキャリアガスと1種の活性ガスとを含んだ処理ガス混合物中、大気圧に実質的に等しい圧力で、フィラメントタイプの誘電体バリア放電に曝され、前記活性ガスは、少なくとも1種の直鎖又は分岐の一不飽和又は多価不飽和炭化水素であって、好ましくは2個乃至10個の炭素原子、より好ましくは2個乃至5個の炭素原子、更により好ましくは2個又は3個の炭素原子を有した炭化水素からなる群より選択され、前記処理混合物の残留酸素含有量は、250ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満であることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の表面処理方法であって、前記炭化水素は、アミン、アミド、酸、アルコール、イミン、イミド又はハライドタイプの少なくとも1つの官能基によって置換されているものであるか、又は少なくとも1種のカップリング剤、特にはシラノール基によって置換されているものであるか、又はそれら組み合わせであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の表面処理方法であって、前記活性ガスは、気体であるか、又は、20℃の温度での蒸気圧が10パスカルよりも大きな蒸気の形態にある液体であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項記載の表面処理方法であって、前記活性ガスは、2個又は3個の炭素原子を有した不飽和炭化水素から選択されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項記載の表面処理であって、前記活性ガスは、アセチレン若しくはエチレン若しくはプロピレン又はこれらガスの混合物であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項記載の表面処理方法であって、前記処理ガス混合物は、追加の還元性ガス及び/又は酸化性ガスを更に含んでいることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の表面処理方法であって、前記追加の還元性ガスは水素であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6又は7記載の表面処理方法であって、前記酸化性ガスは、CO2、NO2及びH2Oから選択されるか又はこれらガスの混合物であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項記載の表面処理方法であって、前記混合物中の活性ガスの含有量は、50乃至1000体積ppm、好ましくは100乃至600体積ppmの範囲内にあり、より好ましくは300体積ppm付近にあることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項6乃至8の何れか1項記載の表面処理方法であって、追加の還元性ガスの含有量又は酸化性ガスの含有量は、50乃至3000体積ppmの範囲内にあることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項記載の表面処理方法であって、最初に、前記基材は、大気圧に実質的に等しい圧力のもと、空気又は不活性ガス又はこれらガスの混合物からなる前処理ガス混合物中で、誘電体バリア放電に通すことにより、前処理に供されていることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11記載の表面処理方法であって、前記キャリアガス及び/又は前記不活性ガスは、同一であるか又は互いに異なり、窒素、アルゴン、ヘリウム又はこれらガスの混合物から選択されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項記載の表面処理方法であって、前記基材は、巨視的に平坦であり、シート、フィルム又は発泡体の形状を有していることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項記載の表面処理方法であって、前記基材は、織られた又は不織のポリマー繊維からなることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか1項記載の表面処理方法であって、前記ポリマーは、
・ポリアミド、ポリビニルクロライド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルジクロライド若しくはポリビニルアセテート、又はポリテトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマーから選択される合成ポリマー、
・合成又は天然ゴム、
・ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)及び澱粉系ポリマーから特に選択される生分解性ポリマー
から選択されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか1項記載の方法によって処理されたことを特徴とするポリマー基材。
【請求項17】
請求項16記載のポリマー基材であって、巨視的に平坦であり、シート、フィルム又は発泡体の形状を有していることを特徴とするポリマー基材。
【請求項18】
請求項16又は17記載のポリマー基材であって、織られた又は不織のポリマー繊維からなることを特徴とするポリマー基材。
【請求項19】
請求項16乃至18の何れか1項記載のポリマー基材であって、前記ポリマーは、
・ポリアミド、ポリビニルクロライド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルジクロライド若しくはポリビニルアセテート、又はポリテトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマーから選択される合成ポリマー、
・合成又は天然ゴム、
・ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)及び澱粉系ポリマーから特に選択される生分解性ポリマー
から選択されることを特徴とするポリマー基材。
【請求項20】
接着剤を使用せずに2つの表面の接着を達成するための、請求項1乃至15に記載の方法に従って処理されたポリマー基材の使用。
【請求項21】
2つの表面の接着を達成するための請求項20記載の使用であって、第1表面は、請求項1乃至15に記載の方法に従って処理されたポリマー基材の表面であって、第2表面は、前記第1表面との相互作用が可能な基材の表面であることを特徴とする使用。
【請求項22】
請求項21記載の使用であって、前記第2表面は、空気コロナタイプの方法によって処理された基材の表面である使用。
【請求項23】
2つの表面の接着を達成するための請求項20記載の使用であって、請求項1乃至15に記載の方法に従って処理されたポリマー基材の一方の表面を、酸素又はオゾンによる酸化を受けた溶融樹脂と接触させることを含んだ使用。
【請求項24】
請求項20記載の使用であって、請求項1乃至15に記載の方法に従って処理された2つのポリマー表面を、酸素又はオゾンによる酸化によって2つの面が処理された溶融樹脂の層を介して接触させることを含んだ使用。
【請求項25】
請求項20記載の使用であって、高温ラミネート若しくはコーティング技術、接着ラミネート技術、又はサーマルラミネート技術を実施するための使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−516850(P2010−516850A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546786(P2009−546786)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052252
【国際公開番号】WO2008/090292
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】