説明

ポンプ及びポンプの制御方法

【課題】簡単な構造と簡単な制御で不必要なエネルギーを減少できるようにしてポンプ効率を上げられるようにする。
【解決手段】一端側に流体吸込み口を設けると共に、他端側に流体吐出口を設けたポンプケーシング3の内側に、回転駆動軸5を設けると共に、その回転駆動軸5に流体吸込み口から流体を吸い込む羽根車4を取り付け、ポンプケーシング3と回転駆動軸5との間で、且つ、羽根車4よりも流体吐出口側に、流体吸込み口から吸い込んだ流体を回転駆動軸5に沿って案内する案内羽根9を、回転駆動軸5の周りに設け、案内羽根9を回転駆動軸5の周りに遊転可能に取り付け、案内羽根9の遊転を制動する制動装置11を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端側に流体吸込み口を設けると共に、他端側に流体吐出口を設けたポンプケーシングの内側に、回転駆動軸を設けると共に、その回転駆動軸に前記流体吸込み口から流体を吸い込む羽根車を取り付け、
前記ポンプケーシングと前記回転駆動軸との間で、且つ、前記羽根車よりも前記流体吐出口側に、前記流体吸込み口から吸い込んだ流体を前記回転駆動軸に沿って案内する案内羽根を、前記回転駆動軸の周りに設けてあるポンプ及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に前記案内羽根はポンプケーシングに固定してあって、羽根車の回転によって発生する流れの速度エネルギーを圧力エネルギーに変換すると共に、羽根車の回転によって発生する旋回流を、回転駆動軸に沿う方向に流れ方向を変換して流体吐出口に向けて案内し、ポンプによるポンプ効率を上げるものである。
しかし、流体吐出口側のバルブが絞られて、ポンプの吐出流量が低下させられると、ポンプの吐出圧力は上昇すると共に、ポンプ効率が低下し、ポンプの回転駆動軸にかかる負荷が上昇し、不必要に駆動エネルギーが消費されてしまう。
そこで、ポンプの回転駆動軸にかかる負荷の上昇を抑制し、不必要にポンプの回転駆動力が消費されるのを防止するために、案内羽根をその傾き角が変更できるように取り付け、ポンプ効率を上げられるようにするものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−193000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したポンプは、案内羽根の傾き角を変更して吸込み流量に対する圧力への変換率を調整できるものの、ポンプの構造及び案内羽根の傾斜角の制御が複雑であるという問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、簡単な構造と簡単な制御でポンプの吐出流量が減少した時に不必要なエネルギーを減少できるようにして小流量域でのポンプ効率を上げられるようにするところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポンプの第1の特徴構成は、一端側に流体吸込み口を設けると共に、他端側に流体吐出口を設けたポンプケーシングの内側に、回転駆動軸を設けると共に、その回転駆動軸に前記流体吸込み口から流体を吸い込む羽根車を取り付け、前記ポンプケーシングと前記回転駆動軸との間で、且つ、前記羽根車よりも前記流体吐出口側に、前記流体吸込み口から吸い込んだ流体を前記回転駆動軸に沿って案内する案内羽根を、前記回転駆動軸の周りに設けてあるポンプであって、前記案内羽根を前記回転駆動軸の周りに遊転可能に取り付け、前記案内羽根の遊転を制動する制動装置を設けてあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記案内羽根を前記回転駆動軸の周りに遊転可能に取り付けることにより、流体吐出口側のバルブが絞られて、羽根車の下流側の圧力が上昇または流量が低下させられる際には、案内羽根を遊転させることにより、流体の速度エネルギーの圧力エネルギーへの変換が抑制されると共に、羽根車の回転により生じる流体の旋回流は、案内羽根による回転駆動軸に沿った方向への変換機能が減少して旋回流と共に遊転する。そのために、ポンプの駆動に必要な負荷は軽減できる。
また、流体吐出口側のバルブが開放されて羽根車の下流側への供給流体の流量を増加または圧力を減少するように求められる際には、制動装置による案内羽根の遊転を制動するようにすれば、流体吸込み口から取り込まれる流体は、制動された案内羽根で速度エネルギーに変換されると共に、案内羽根により回転駆動軸に沿った方向の流れに変換され、ポンプの駆動に必要な負荷の不必要な増加を抑えながら、流体吐出口から出る流体の流量や圧力を増加させることができる。
従って、案内羽根を遊転可能に取り付け、制動装置を設けるだけの簡単な構造により、ポンプの効率が上がり、効率よくエネルギーを使用することができるようになった。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記流体吐出口側の流体の状態を検出する吐出水状況検出手段を設け、前記吐出水状況検出手段による検出状況に基づいて、前記制動装置による制動操作を調整するポンプの制御装置を設けてあるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、吐出水の流体の状態の変化に伴う吐出水状況検出手段による検出に基づいて制御装置による制動装置の制動操作を調整するように制御されるために、流体の状態変化に伴うポンプの駆動に必要な負荷が大きく変動することを防止し、ポンプ効率を向上させることができる。
従って、回転駆動軸を駆動回転する駆動装置の出力が小型な物で済むようになり、装置全体を安価なものにすることができるようになった。
【0010】
本発明の第3のポンプの作動方法の特徴構成は、前記流体吐出口側の流体の状態を検出し、その流体の状態が変化するに伴って、前記制動装置による制動操作を調整させて前記回転駆動軸の回転に必要な駆動力を低下させるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、流体吐出口側のバルブが絞られて流体の状態、つまり水圧が増加または流量が低下しても、制動装置による制動操作を軽減させられるために、案内羽根は遊転し易くなり、羽根車の駆動回転により流体吸込み口から取り込まれる流体が、案内羽根による流体の流動方向の変換率及び、速度エネルギーから圧力エネルギーへの変換率が低下し、ポンプの吐出圧力の上昇が抑えられ、ポンプの駆動に必要な負荷が減少する。
従って、使用する水量が少ない時にも、吐出圧力の上昇が抑えられ、ポンプの駆動に必要な駆動力は、小さな動力で済み、ポンプ効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ポンプの全体縦断面図である。
【図2】要部の縦断面図である。
【図3】別実施形態の要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図2に示すように、下端部に流体吸込み口1を形成すると共に、上部横側部に流体吐出口2を形成する筒状のポンプケーシング3を設け、ポンプケーシング3内に配置する流体を吸い込む斜流羽根形式の羽根車4と、羽根車4を下端部に回動自在に装着して上端部に駆動装置としてのモーターMに連動連結した回転駆動軸5と、回転駆動軸5の先端側の軸受6を下部に取り付けてなる吐出ボウル8を、作動部として下側に配置し、回転駆動軸5を回転自在に荷重支持するための軸受装置20を、回転駆動軸5の上端側で駆動装置とポンプケーシングとの間に設けて、立軸ポンプを構成してある。
【0014】
前記吐出ボウル8はポンプケーシング3の一部を構成し、ポンプケーシング3と回転駆動軸5との間で、且つ、羽根車4よりも流体吐出口2側に、流体吸込み口1から吸い込んだ流体を整流して回転駆動軸5に沿って案内すると共に、速度エネルギーを圧力エネルギーに変換する案内羽根9を、回転駆動軸5の周りに軸受部10を介して遊転可能に取り付けてある回転側吐出ボウル15と、流体の流路を形成する壁面と軸受6とを接続するリブ16と、軸受6を介して回転駆動軸5を回転自在に挿入する固定側吐出ボウル14から構成される。
【0015】
前記回転側吐出ボウル15と固定側吐出ボウル14との間には、案内羽根9の遊転を制動する制動装置11が設けられている。流体吐出口2には、流体吐出口側の流体の状態である水圧、流速または流量を検出する吐出水状況検出手段12が設けられ、吐出水状況検出手段12による検出状況、つまり、流体吐出口側の流体の状態である水圧、流速または流量の変化に伴って、制動装置11による制動操作を調整するポンプの制御装置13が設けてある。吐出水状況検出手段12としては、例えば、水圧計、流速計、流量計がある。
【0016】
制動装置11は、固定側吐出ボウル14と回転側吐出ボウル15に夫々設けられた摺動部材と、制御装置からの信号により摺動部材に向けて押付け動作を行う摺動部材駆動部から構成されている。
この摺動部材駆動部は、流体出口側の流体の状態である水圧が上がる、または流速あるいは流量が減少すると押し付けを緩め、最終的には、案内羽根9がポンプケーシング3に対して自在に遊転するように、また、流体吐出口側の流体の状態である水圧が下がる、または流速あるいは流量が増えると押し付けを強め、最終的には、遊転を止め、案内羽根9(回転側吐出ケーシング)がポンプケーシング3に対して停止するように制御を行う。
【0017】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0018】
〈1〉 前記羽根車4は、斜流羽根形式のものに限らず、軸流羽根形式のものであってもよい。
〈2〉 ポンプは、回転駆動軸5を縦方向に設置する立軸ポンプの他に、回転駆動軸5を横方向に設置する横軸ポンプであってもよい。
〈3〉 前記制動装置11は、案内羽根9の遊転に無段階で抵抗を与えるブレーキ以外に、段階的に異なった回転抵抗力の付与状態に切換えるクラッチであっても良い。
〈4〉 前記制御装置13は、必ずしも設けなくても良く、その場合は、手動により制動装置を制動操作するようにしてあればよい。
〈5〉 前記制動装置11は、固定側吐出ボウル14と回転側吐出ボウル15との間であって、内側の摺動面に設ける以外に、図3に示すように、固定側吐出ボウル14と回転側吐出ボウル15との間であって、外側の摺動面、つまり、案内羽根9の外周部でポンプケーシング3との間に配設してあってもよい。
〈6〉 流体の状態として水圧、流速、流量で説明したが、これらの組合せから求められるポンプの軸動力などを流体の状態として使用しても良い。つまり、吐出水状況検出手段としては、圧力計、流量計、流速計以外に、ポンプの軸にかかる力を測定するトルク計や、駆動装置のエネルギー消費を測定する電力計、電流計、電圧計、燃料流量計なども利用することができる。
【0019】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0020】
1 流体吸込み口
2 流体吐出口
3 ポンプケーシング
4 羽根車
5 回転駆動軸
9 案内羽根
11 制動装置
12 吐出水状況検出手段
13 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に流体吸込み口を設けると共に、他端側に流体吐出口を設けたポンプケーシングの内側に、回転駆動軸を設けると共に、その回転駆動軸に前記流体吸込み口から流体を吸い込む羽根車を取り付け、
前記ポンプケーシングと前記回転駆動軸との間で、且つ、前記羽根車よりも前記流体吐出口側に、前記流体吸込み口から吸い込んだ流体を前記回転駆動軸に沿って案内する案内羽根を、前記回転駆動軸の周りに設けてあるポンプであって、
前記案内羽根を前記回転駆動軸の周りに遊転可能に取り付け、
前記案内羽根の遊転を制動する制動装置を設けてあるポンプ。
【請求項2】
前記流体吐出口側の流体の状態を検出する吐出水状況検出手段を設け、
前記吐出水状況検出手段による検出状況に基づいて、前記制動装置による制動操作を調整するポンプの制御装置を設けてある請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載のポンプの制御方法であって、
前記流体吐出口側の流体の状態を検出し、
その流体の状態が変化するに伴って、前記制動装置による制動操作を調整させて前記回転駆動軸の回転に必要な駆動力を低下させるポンプの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−215101(P2012−215101A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80279(P2011−80279)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】