説明

マイクロおよびナノ構造のレーザ加工用の近接場走査型光学顕微鏡

超高速レーザ源を用いて、表面上に要素をレーザ加工するための近接場走査型光学顕微鏡(NSOM)レーザマイクロ加工システムおよび、そのような要素をレーザ加工する方法。システムは、1ns未満のパルス期間およびピーク波長を有するレーザ光パルスを生成する超高速レーザ源と、実質的に円柱形状を有するNSOMプローブと、NSOMプローブおよび加工されるマイクロ構造ワークピースを制御可能に保持なNSOMマウントと、NSOMプローブのプローブチップと表面との間の距離を決定するための、NSOMマウントに結合されたNSOMプローブモニタと、NSOMプローブモニタおよびNSOMマウント中の移送台に結合されたNSOM制御とを有する。NSOMマウントは、XY移送台およびZ移送台を有する。これらの移送台がNSOMプローブまたはマイクロ構造ワークピースに結合され、あるいは1つの移送台が各々に結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接場走査型光学顕微鏡(NSOM)を用いて、ナノ構造を含むマイクロ構造上におけるサブミクロン要素をレーザ加工する装置および方法に関する。本方法はまた、汎用の電子機械的マイクロ構造の大量カスタマイゼーションまたは補修を可能にし得る。
【背景技術】
【0002】
製品の小型化につれ、マイクロ電気機械システム(MEMS)、マイクロ光学デバイスおよびフォトニック結晶への需要が高まっている。この需要に対応して、マイクロおよびナノ加工への関心が高まっている。MEMSには無数のアプリケーションの可能性がある。生物学とマイクロエレクトロニクスのように、以前には無関係だった分野間に比類なき相乗効果を可能にする画期的な技術として、新しいMEMSアプリケーションが急速に出現しつつあり、現在認識されているあるいは公知のものを越えて広がろうとしている。また量子電気デバイス、マイクロ光学デバイスおよびフォトニック結晶においてさらなるアプリケーションが出現しつつある。
【0003】
現在関心を持たれているアプリケーションをいくつか列挙する。
【0004】
量子電気デバイス
量子計算などのアイデアへの関心から、セルラーオートマトンや結合量子ドット技術などの、より小さな寸法を要求するデバイスの開発がなされている。透過電子の量子効果を利用してマイクロ波回路の効率を増大し得る、共鳴トンネルダイオードなどの共鳴トンネルデバイスは、特に微細な要素を必要とする。
【0005】
マイクロ光学
マイクロ加工技術の光学系への応用は、階調技術などの光学製造において数々の進歩をもたらしてきた。階調技術は、達成し得る最高の光学性能を可能にする、様々な形状の作製を可能にする。伝統的なバイナリオプティクスは、理想的な表面形状を「階段状」にした近似に依拠する。階調は、その理想形状を実際に作製することができる。曲線、傾斜面(ramps)、トロイド(torroids)、またはその他の任意の形状が可能である。多機能光学系、マイクロレンズアレイ、ディフューザ、ビームスプリッタ、およびレーザダイオード補正器はすべて、階調技術を用いることにより恩恵を受ける。これらおよび他の光学デバイス(より短波長光用の微細ピッチ格子を含む)は、マイクロ加工を用いて得られるより高い精度の恩恵を受ける。また、マイクロ加工技術の進歩により、ビームシェーパー、連続膜変形ミラー、チューナブルレーザ用移動ミラー、および走査2軸傾動ミラーを含む光学的MEMSデバイスが登場している。
【0006】
フォトニック結晶
フォトニック結晶は、ユニークな性質を有する光学デバイスを作製するために用い得る、人工形態の光学材料を代表するものである。フォトニック結晶は、半導体結晶の電気的性質に類似する多くの光学性質を有するため、現在の電気的半導体回路と同様な光学回路の開発をも可能にし得る。フォトニック結晶を形成するために用いられる要素サイズおよび、これらの要素の高精度位置揃え要求が、これらの材料の製造を複雑にする。位置揃え技術の改善ならびに、マイクロ加工システムにおけるより小さな最小要素サイズ能力によって、この領域におけるさらなる発展が得られる可能性がある。
【0007】
バイオテクノロジー
MEMS技術は、科学および工学において以下のような新しい発見を可能にしている。すなわち、DNA増幅および同定のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)マイクロシステム、マイクロ加工された走査トンネル顕微鏡(STM)プローブチップ、有害な化学および生物物質の検出のためのバイオチップ、および、高スループットドラッグスクリーニングおよび選択のためのマイクロシステムである。
【0008】
通信
共鳴トンネルデバイスの使用により得られ得る進歩に加えて、高周波回路もまた、RF−MEMS技術の出現により大きく恩恵を受け得る。MEMS技術を用いて作製したインダクタおよびチューナブルキャパシタなどの電気部品は、現在の対応する集積回路に比較して、有意により良く性能し得る。そのような部品を集積することにより、通信回路の性能が改善され得る一方、総回路面積、消費電力およびコストが減少し得る。さらに、いくつかの研究グループによって開発されているように、MEMS機械的スイッチは、様々なマイクロ波回路において多大な潜在能力を秘めたキー部品となり得る。デモンストレーションされたMEMS機械的スイッチのサンプルは、以前に利用可能であったいかなるものよりもずっと高いQファクターを有している。RF−MEMS部品の信頼性、高精度チューニング、そしてパッケージングは、RF−MEMS部品が市場においてより幅広く受け入れられるために解決されなければならない重要な問題点である。
【0009】
マイクロ光学の進歩ならびにフォトニック結晶を用いた新しい光学デバイスの導入によりまた、通信技術は恩恵を受け得る。
【0010】
加速度計
MEMS加速度計は、自動車両の衝突エアバッグ作動システムにおいて、従来の加速度計に急速にとって代わりつつある。従来のアプローチは、の前部に実装された別個の部品からなるいくつかのかさ高い加速度計と、エアバッグ近傍の別の電子系とを用いるものである。MEMS技術は、従来のアプローチのコストの1/5から1/10のコストで、加速度計と電子系とを単一のシリコンチップ上に集積することを可能にした。従来のマクロスケールの加速度計素子に比較して、これらのMEMS加速度計はずっと小さく、より機能的であり、より軽く、また信頼性が高い。
【0011】
マイクロ回路
電子回路のサイズの縮小もまた、MEMS技術が多くの分野に影響し得る領域である。これらのマイクロ回路において部品や接続の密度が高まるにつれ、加工公差は減少する。マイクロ回路の製造における一つの難題は、だんだん位置が近くなりつつある部品やナノ配線間の短絡を防ぐことにある。これらの欠陥を補修する能力を有するマイクロ加工方法によって、歩留まりは有意に増大され得る。
【0012】
サブミクロン要素のマイクロ加工は、電子ビーム、紫外線ビーム、およびX線リソグラフィ機、ならびに集束イオンビーム機によって支配される領域であった。これらの高コスト技術は通常、高度な真空またはクリーンルーム条件などの、厳しい環境条件を要求する。あらゆるリソグラフィ方法は、複数のマスクを生成しフォトレジストを用いることを包含する、一連の複雑な手順を必要とする。
【0013】
ビーム処理法を用いた場合、適正な処理のためには、高いレベルの精度でビームが正確に所望の位置に導かれることをこのプロセスは要求する。現在4つの利用可能な技術(レーザ直接描画、集束イオンビーム描画、マイクロ放電機、および光化学エッチング)だけが、この潜在能力を有する。その他の技術(例えばイオンビーム加工(ion beam milling))は、平坦なウェハ処理においてのみ望ましい。ただし、レーザ直接描画は、周囲大気中での動作と言うさらなる利点を有する。依然として、サブミクロン要素をレーザの波長よりも小さなレーザビームで形成することは、難しい問題である。
【0014】
近接場走査型光学顕微鏡(near-field scanning optical microscope)(NSOM)−−時に走査型近接場光学顕微鏡(scanning near-field optical microscope)として知られる−−の近接場放射を用いることによる表面のレーザ加工が、サブミクロン要素をレーザ加工する一手段として提案されている。このように表面をマイクロ加工する一つの方法の可能性が、H.Owariらの日本国特許出願第2000−51975号、レーザ加工装置及び方法とこれを用いて加工された光学素子に開示されている。Owariらは、原子間力顕微鏡のプローブを透過した、短波長紫外レーザからの光を用いて、光学格子をレーザ加工することを開示している。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施形態例は、超高速レーザ源を用いて、表面上に要素をレーザ加工するための近接場走査型光学顕微鏡(NSOM)レーザマイクロ加工システムである。本システムは、1ns未満のパルス期間およびピーク波長を有するレーザ光パルスを生成する超高速レーザ源と、実質的に円柱形状を有するNSOMプローブと、NSOMプローブおよび加工されるマイクロ構造ワークピースを制御可能に保持するNSOMマウントと、NSOMプローブのプローブチップと表面との間の距離を決定するための、NSOMマウントに結合されたNSOMプローブモニタと、NSOMプローブモニタおよびNSOMマウント中の移送台に結合されたNSOM制御器とを有する。NSOMプローブは、一端の入射面と、レーザ光パルスのピーク波長の2乗未満の断面積を有する他端のプローブチップと、入射面からプローブチップに実質的に延びる光透過性コアと、プローブチップの近隣において、NSOMプローブの側面の一部上に形成された放射閉じ込めコーティングとを有する。光透過性コアは、入射面を介して超高速レーザ源に光学的に結合される。NSOMマウントは、XY移送台およびZ移送台を有する。これらの移送台がNSOMプローブまたはマイクロ構造ワークピースに結合され、あるいは1つの移送台が各々に結合される。NSOM制御器は、NSOMプローブモニタによって決定されたNSOMプローブのプローブチップとマイクロ構造ワークピースの表面との間の距離に基づいて、NSOMプローブまたはマイクロ構造ワークピースのいずれか(どちらがZ移送台に結合されているかに依存して)の垂直位置を制御する。NSOM制御器は、マイクロ構造ワークピースの表面上にレーザ加工されるべき要素に基づいて、NSOMプローブまたはマイクロ構造ワークピースのいずれか(どちらがXY移送台に結合されているかに依存して)の水平位置を制御する。
【0016】
本発明の別の実施形態例は、超高速レーザ源およびNSOMを用いて、マイクロ構造ワークピース上に要素をレーザ加工する方法である。マイクロ構造ワークピースはNSOMに装着される。NSOMプローブのプローブチップとマイクロ構造ワークピースの表面との間の距離を決定する。この距離は、加工距離に実質的に等しいように制御される。超高速レーザ源を用いて、1ns未満のパルス期間およびピーク波長を有するレーザ光パルスを生成する。これらのレーザ光パルスをNSOMプローブ中に結合し、レーザ光パルスの近接場モード部分を、NSOMプローブのプローブチップを介して、プローブチップの位置に対応するマイクロ構造ワークピースの表面の近接場照射エリア上に結合する。レーザ光パルスの近接場モード部分が、近接場照射エリアをレーザ加工する。NSOMプローブおよびマイクロ構造ワークピースのうち少なくとも一方を、要素に対応する表面の要素領域上をプローブチップがスキャンされるように移動する。プローブチップがスキャンされている間、プローブチップと表面との間の距離を決定し、プローブチップと表面との間の距離が加工距離に実質的に等しく維持されるように、制御する。また、プローブチップがスキャンされる間、レーザ光パルスが生成されてNSOMプローブ中に結合されており、またレーザ光パルスの近接場モード部分がプローブチップを介して近接場照射エリア上に結合されていることにより、マイクロ構造ワークピースの表面上に、要素がレーザ加工される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、以下の詳細な説明を添付の図面とともに読んだときもっともよく理解される。一般に行われるように、図面の様々な要素は縮尺通りではないことを強調しておく。逆に、明瞭さのために様々な要素の寸法を任意に拡大または縮小している。図面には以下の図が含まれる。
【0018】
NSOMは、原子間力顕微鏡(AFM)と同じ原理の多くを用いて、正確に表面のプロファイルを採る。NSOMプローブチップからの近接場放射を用いてこれら表面をレーザマイクロ加工することにより、非近接場放射および自由空間光学系を用いることに比べて、いくつかの利点が得られ得る。これらの利点としては、NSOMプローブチップの高精度な位置決め制御および、最小要素サイズが減少することが含まれ得る。NSOMデバイスにおいて用いられる高精度移送台を用いて、高精度な水平および垂直位置決め制御を得ることができる。また、NSOMにより表面のプロファイルを採る能力は、有意な近接場放射を表面に結合するために望まれる、プローブチップの正確な垂直位置決めを可能にする。
【0019】
近接場放射を用いた本発明のNSOMレーザ加工システム例により加工され得る最小要素サイズは、近接場放射の生成に用いられるレーザ光の波長ではなく、NSOMプローブチップのサイズによって決定される。このことにより、同じレーザ源からの自由空間レーザビームの回折限界のスポットサイズよりも小さな表面上のエリアを、Owariらによって開示されるようなレーザ加工装置によって加工することが可能になる。ただし、レーザの波長は依然として問題になる。なぜなら、レーザの波長は、光がNSOMプローブチップを介して近接場に結合する効率に影響するからである。したがってOwariらは、そのNSOMプローブチップの円形の断面の直径におよそ等しい波長を有する短波長UVレーザの使用を開示している。
【0020】
図1は、本発明のNSOMレーザマイクロ加工システム例の、単純化したブロック図を示す。量子セルラーオートマトン、結合量子ドットデバイス、共鳴トンネルデバイス、多機能光学アレイ、回折光学素子、ビームシェーパー、マイクロレンズアレイ、光学ディフューザ、ビームスプリッタ、レーザダイオード補正器、微細ピッチ格子、フォトニック結晶、マイクロ電気機械システム、マイクロ回路、マイクロ表面弾性波デバイス、マイクロメカニカルオシレータ、ポリメラーゼ連鎖反応マイクロシステム、有害な化学および生物物質検出のためのバイオチップ、高スループットドラッグスクリーニングおよび選択マイクロシステム、および他のマイクロ構造を形成するための鋳型が、本発明のNSOMレーザマイクロ加工システム例によって加工され得るマイクロ構造の例である。このようなシステム例を用いて、これらマイクロ構造を、製造、補修、または大量カスタマイゼーションすることができる。このシステム例は、レーザ光パルスを生成しワークピース112まで伝達させるための超高速レーザ源100、光ファイバ106、NSOMプローブホルダ108、およびNSOMプローブ110、ならびに光ビーム102を光ファイバ106に結合するレンズ104および、NSOMプローブ110を位置決めするための多くのNSOM部品を有している。
【0021】
なお、図1のシステム例において超高速レーザ源を用いることに特に留意されたい。超高速レーザ源は、より長いパルスのレーザ源(すなわちパルス期間>1nsのレーザ)やCWレーザ源よりも、有意に高いピークパワーを提供し得る。これらの高ピークパワーは、プローブチップを介してレーザ光が近接場に結合されるときの低効率性を克服するために望ましい。NSOMプローブ110により高いピークパワーを提供することにより、超高速レーザ源100の波長に比べさらに小さなNSOMプローブチップを用いることが可能である。
【0022】
2004年3月4日付けで出願されMETHOD OF PRECISE LASER NANOMACHINING WITH UV ULTRAFAST LASER PULSESの名称を有する、M.Liの米国特許出願第10/793,543号に開示されるように、非近接場レーザ加工アプリケーションにおける超高速レーザの使用は、レーザ加工される要素の周囲の熱影響ゾーンを有意に減少させることが示されている。熱影響ゾーンの減少は、レーザ加工された要素の品質を劇的に改善し得る。同じ利点が、本発明において超高速レーザ源100をNSOMレーザマイクロ加工システムの一部として用いることにより、得られ得る。また、超高速レーザパルスのピークパワーが増大することは、NSOMプローブ110のプローブチップを介してより高いパワー量を近接場モード部分に結合し得ることを意味する。この近接場モード部分におけるより高いパワー量は、各レーザ光パルスが、マイクロ構造ワークピース112のワークピース材料のより大きな深さを加工することを可能にする。
【0023】
図1のシステム例において、超高速レーザ源100は望ましくは、超高速レーザ加工アプリケーションにおいて典型的に用いられる任意のタイプの固相利得媒体を含み得る。例えば、Cr:YAG(ピーク基本波長、λf=1520nm)、Cr:苦土カンラン石(λf=1230−1270nm)、Nd:YAGおよびNd:YVO4(λf=1064nm)、Nd:GdVO4(λf=1063nm)、Nd:YLF(λf=1047nmおよび1053nm)、Nd:ガラス(λf=1047−1087nm)、Yb:YAG(λf=1030nm)、Cr:LiSAF(λf=826−876nm)、Ti:サファイア(λf=760−820nm)、およびPr:YLF(λf=612nm)である。これらの固相利得媒体は、エルビウムドーピングされたファイバレーザおよびダイオードレーザなどの標準的な光ポンピングシステムを用いて励起され得る。これらの標準的な光ポンピングシステムの出力パルスは、固相利得媒体に直接結合されてよく、あるいは固相利得媒体を励起するために用いられる前に、高調波生成を経てもよい。固相利得媒体(単数または複数)は、レーザ発振器、シングルパス増幅器(single pass amplifier)、および/またはマルチプルパス増幅器(multiple pass amplifier)のうち1つ以上として動作するように構成され得る。この素子はまた、レーザ光を実質的に平行光化するための光学系を有する。超高速レーザ源100は、約1ns未満の期間を有するレーザ光パルスを生成する。これらのパルスは望ましくは、約20ps未満の期間を有し得、多くの場合においてその期間は200fs未満であり得る。超高速レーザ源100によって生成されるレーザ光パルスは望ましくは、ほぼフーリエ変換限界であり得る。レーザ源100の出力パワーを増大するために、XeCl、KrF、ArFまたはF2エキシマ増幅器(図示せず)などの、追加的な非固相のシングルまたはマルチプルパス増幅器を含めてもよい。または、レーザ源100は、エキシマレーザシステム(例えばXeCl、λf=308nm、KrF、λf=248nm、ArF、λf=193nm、またはF2、λf=157nm)、あるいは色素レーザシステム(例えば7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、λf=435−500nm、安息香酸、2−[6−(エチルアミノ)−3−(エチルイミノ)−2,7−ジメチル−3H−キサンテン−9−イル]−エチルエステル、一塩酸塩、λf=555−625nm;4−ジシアンメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン、λf=598−710nm;または2−(6−(4−ジメチルアミノフェニル)−2,4−ネオペンチレン−1,3,5−ヘキサトリエニル)−3−メチルベンゾチアゾリウム過塩素酸塩、λf=785−900nm)を含み得る。
【0024】
超高速レーザ源100が約400nm未満のピーク波長を有することが望ましくあり得る。この部品内において、レーザ光パルスのピーク波長を減少させるために高調波生成結晶を用い得る。望ましくは、周波数2逓倍、150fsのTi:サファイアレーザ(例えばClark MXR CPA2000)を超高速レーザ源100として用い得る。
【0025】
また、超高速レーザ源100は、レーザビーム出力の強度、偏光および/または平行化を制御するための光学系を含んでいてもよい。超高速レーザ源100により生成されたレーザ光パルスの偏光を制御するために、偏光制御器が含まれていてもよい。これらのパルスは望ましくは円偏光であり得る。また、シャッタおよび/または可変アッテネータを超高速レーザ源100に含み得る。これらの部品は、マイクロ構造ワークピース112の表面上における要素のレーザ加工を制御するためのNSOMの制御回路(図示せず)に、結合され得る。
【0026】
レーザ源100の出力は、レンズ104によって光ファイバ106に集束され得る。光ファイバ106は、レーザ光パルスのピーク波長近傍において低吸収率を有する導波路材料から形成された、ファイバコアを望ましくは有する。光ファイバ106はNSOMプローブ110の一部であってもよく、光ファイバ106の切断端がNSOMプローブ110の入射面として機能してもよい。これはシステムの結合ロスを減少させるために望ましい。NSOMプローブ110(その光ファイバ部分106を含む)は、NSOMプローブホルダ108内に保持される。
【0027】
あるいは、光ファイバ106はNSOMプローブ110と別であってもよい。この別の実施形態においては、NSOMプローブ110は単にプローブチップからNSOMプローブホルダ108中に延びていればよい。光ファイバ106は、NSOMプローブ110の端部の入射面を介して、レーザ光パルスをNSOMプローブ110に伝達する。光ファイバ106とNSOMプローブ110との両方が、NSOMプローブホルダ108内に保持される。光ファイバ106およびNSOMプローブ110は、NSOMプローブへのレーザ光パルスの低損失結合を可能にするように位置揃えされる。NSOMプローブ110の入射面は望ましくはファイバ切断端であり、光ファイバ106の切断端の断面積におおよそ等しい入射面積を有している。NSOMプローブホルダ108は、光ファイバ106とNSOMプローブ110とを光学的に結合することを助けるために、ボールレンズなどの光学系を有していてもよい。なお、分散効果を減少させるために、光ファイバ106を用いずに光ビーム102のパルスをNSOMプローブ110に直接結合してもよいが、これはシステムの位置揃えを複雑にし得ることに留意されたい。
【0028】
NSOMプローブ110は、実質的に円柱形状に形成される。なお、この実質的な円柱形状の有する断面形状は、望ましくはNSOMプローブ110の入射面として作用する端部近傍において光ファイバ106と同様であるが、このことは必ずしも必要ではないことに留意されたい。NSOMプローブ110の断面形状は望ましくは円形またはその他の楕円形状であるか、あるいは長方形などの導波路に用いられる他の形状であってもよく、その長さに沿ってサイズまたは形状が変化してもよい。例えば、NSOMプローブ110の実質的に円柱の形状は、端部近傍でテーパーすることによってプローブチップを作り出す。また、NSOMプローブ110の実質的に円柱の形状は、図1に示すようにその軸に沿って曲げを有していてもよい。
【0029】
図3は、NSOMプローブ例110の先端部のクローズアップ図である。入射面を含むNSOMプローブの端部は図3には図示していない。NSOMプローブ110の入射面とは反対側の端部に位置するプローブチップ310を示している。図示のようにNSOMプローブ110は、光透過性コア300の部分および、クラッディング層302の部分を有している。プローブチップ310において、光透過性コア300とクラッディング層302との材料は区別不能であり得、図3のチップ例のチップ領域において、これらの材料を分ける鎖線によって示している。近接場306が発生するNSOMプローブチップ310は望ましくは、レーザ光パルスのピーク波長の二乗未満の断面積を有しかつ楕円形の断面形状を有することにより、マイクロ構造ワークピース112の近接場照射エリア308において、ピーク波長より短い軸を有する相似な楕円形状の加工を可能にする。
【0030】
光透過性コア300は望ましくは、入射面からプローブチップ310まで延び、入射面において光ファイバ106を介して超高速レーザ源100に光学的に結合する。光ファイバ106のファイバコアと同様に、NSOMプローブ110の光透過性コア300は、レーザ光パルスのピーク波長近傍において低吸収率を有する材料から形成されており、望ましくは同じ導波路材料から形成され得る。クラッディング層302は望ましくは、入射面からプローブチップ310まで延びて、レーザ光パルスを透過性コア300内に閉じ込めることをたすけるが、これ無しで十分な閉じ込めが起こり得るならば省略可能である。
【0031】
また、放射閉じ込めコーティング304がNSOMプローブ110上に形成され、プローブチップ310の近隣からプローブの側面に沿って延びる。放射閉じ込めコーティング304は、NSOMプローブ110のうち特に漏れが大きい部分(例えばプローブチップ310近くの狭い部分や、曲率半径がタイトである任意の部分)において、レーザ光パルスの光透過性コア300中へのさらなる閉じ込めを提供する。さらに、放射閉じ込めコーティング304が無いことで、実質的にプローブチップ310のエリアが規定される。これは入射面に隣接する開口部まで延びてもよく、あるいはこの距離の一部だけ延びていてもよい。NSOMプローブが90°の曲げを有している実施形態例においては、図4に示すように、放射閉じ込めコーティング304は少なくとも曲げの周りに延びていることが望ましい。放射閉じ込めコーティング403は、レーザ光パルスのピーク波長近傍において高反射率を有し、望ましくはこの帯域においても低吸収率を有する。少なくとも1つの金属および/または誘電体層が含まれ得る。さらに、図4に示すように、NSOMプローブ110の位置を光学的に監視することに用い得る光に対して、放射閉じ込めコーティング304は実質的に反射性であることが望ましくあり得ることに留意されたい。
【0032】
図1にもどって、NSOMプローブホルダ108はNSOMプローブ110を制御可能に保持および位置決めするように、NSOMマウントに結合される。NSOMマウントはまた、NSOMプローブ110に対してマイクロ構造ワークピース112を制御可能に保持および位置決めする。NSOMマウントは、ヒンジ120によってNSOMベース114に接続された上部サポート118を有する。この構成により、NSOMプローブ110を容易にマイクロ構造ワークピース112から取り外して、プローブの検査および/または取り替え、あるいはワークピースの装着および取り外しを行うことが可能になる。マイクロ構造ワークピース112上におけるNSOMプローブ110の粗垂直あるいはZ位置決めは、リードねじ(図示せず)またはステッパモータ(図示せず)に結合され得るセットねじ122を用いて、達成し得る。図1のNSOMマウント例はまた、マイクロ構造ワークピース112が装着されるワークピース位置決め部116を有する。ワークピース位置決め手段116はNSOMベース114に結合される。なお、図1の実施形態例はマイクロ構造ワークピース112をNSOMプローブ110に対して位置決めするためのワークピース位置決め手段116を含むが、NSOMプローブ110をマイクロ構造ワークピース112に対して位置決めする位置決め手段を、ワークピース位置決め手段116に加えてあるいはこの代わりに用い得ることが当業者には理解されることに留意されたい。
【0033】
ワークピース位置決め手段116は例えば、マイクロメートル分解能を持つコンピュータ制御XYZ移送台(例えばBurleigh製のミクロン分解能XYZ移送台)を有する。またナノメートル分解能を持つコンピュータ制御圧電XY移送台(例えばQueensgate製の圧電XY移送台)を有してもよい。微妙なZ位置決めは、ワークピース位置決め手段116において圧電Z移送台を用いることにより達成され得る。ワークピース位置決め手段116のこれらのコンピュータ制御移送台を、レーザマイクロ加工システムのNSOMをマイクロ構造ワークピース112の表面上に位置決めするために用い得、マイクロメートル分解能XYZ移送台が粗い位置決めを提供し、圧電移送台が微妙な位置決めを提供する。あるいは、ナノメートル分解能が可能な、その他の微移送台を用いて微妙な位置決めを提供してもよい。
【0034】
本発明のNSOMレーザマイクロ加工システム例はまた、NSOM制御システムを有する。本発明によるNSOM制御システム例を図4および5に示す。これらのNSOM制御システム例は、NSOMプローブモニタおよびNSOM制御器(NSOMプローブモニタ、圧電XY移送台、および圧電Z移送台に結合されている)を有している。NSOMプローブモニタは、NSOMプローブ110のプローブチップ310とマイクロ構造ワークピース112の表面との間の距離を決定する。
【0035】
NSOM制御器(図示せず)はこの距離情報を用いて、Z移送台(単数または複数)に信号を送ることにより、どちらが位置決め手段に結合されているかに依存して、NSOMプローブ110またはマイクロ構造ワークピース112のいずれか(あるいは両方)の垂直位置を制御する。NSOM制御器はまた、マイクロ構造ワークピース112の表面上にレーザ加工されるべき要素に基づいて、XY移送台(単数または複数)に信号を送ることにより、NSOMプローブ110またはマイクロ構造ワークピース112のいずれかの水平位置を制御する。NSOM制御器は回路またはASICを含み得、また、NSOMプローブモニタからの距離情報およびマイクロ構造ワークピースの表面上に加工されるべき要素に関する入力データに応じて移送台を駆動するようにプログラミングされた、汎用コンピュータを含み得る。
【0036】
図4および5は、原子間力測定を行う光学手段に基づいた、2つのNSOMプローブモニタ例を示す。図4の実施形態例は、90°の曲げを有するNSOMプローブを含み、図5の実施形態例は、まっすぐなNSOMプローブを含む。NSOMプローブ110のこれらの別の実施形態は単に例示であり、限定的なものではない。
【0037】
図4および5におけるNSOMプローブモニタ例のそれぞれは、NSOMプローブホルダ108をNSOM上部サポート118に結合する片持ちアーム400を用いる。NSOM上部サポート118は実質的に剛性であり、片持ちアーム400は、マイクロ構造ワークピース112の表面の実質的に法線方向において、NSOM上部サポート118に対し較正された量だけ移動し得る。この較正された移動は、プローブチップ310とマイクロ構造ワークピース112の表面との間の原子間力に応じた、片持ちアーム400の撓み、あるいは片持ちアーム400とNSOM上部サポート118との間の結合部(図示せず)における片持ちアーム400の旋回により、得られ得る。あるいは、NSOMプローブ110は、片持ちアーム400に結合されたNSOMプローブオシレータによって、周期的に往復振動されてもよい。NSOMプローブ110のこの周期的往復振動の振幅は望ましくは小さく、0から20nmの範囲である。NSOMプローブ110のこの周期的往復振動の周期または振幅のうちいずれか一方あるいは両方の変化が、較正された移動をプローブモニタに提供し得る。
【0038】
図4のNSOMプローブモニタ例は、光が放射閉じ込めコーティング304から直接反射される、光学的感知方法を包含する。光源402は、実質的に剛性の上部サポート118に結合されており、少なくとも2つの光学領域404を有する光検出器もまた同様である。光源402は、実質的に平行化された光ビームを生成する。この実質的に平行化された光ビームは、放射閉じ込めコーティング304から反射され、光検出器によって検出される。プローブチップ310とマイクロ構造プリフォーム112の表面との間の原子間力に応答してNSOMプローブ110が上下動するにつれ、片持ちアーム400は撓みあるいは旋回し、光源402からの実質的に平行化された光ビームと放射閉じ込めコーティング304との間の入射角を変化させる。これは、実質的に平行化された光ビームが光検出器に入射する位置を変化させる。片持ち撓みもまた入射位置を変化させ得、これによってさらに実質的に平行化された光ビームが光検出器に入射する位置が変化し得る。さらに、原子間力によってNSOMプローブ110が撓む可能性があるが、これもまた検出され得る。複数の検出器領域404は、各検出器領域によって検出された光の量に基づいて、光検出器が信号を生成することを可能にする。NSOM制御器中の処理手段は、この検出器信号を受け取り、光検出器の各検出器領域404によって検出された光の量に基づいて、NSOMプローブのプローブチップとマイクロ構造ワークピースの表面との間の距離を決定し得る。処理手段によるこの距離決定は、NSOMプローブのプローブチップとマイクロ構造ワークピースの表面との間の距離が所望の距離より大きいか小さいかを決定し表示することを包含するか、あるいは較正された距離読み取り値を提供し得る。
【0039】
図5のNSOMプローブモニタ例は、光が片持ちアーム400に結合された反射性の平坦な表面500から反射される、別の光学的感知方法を用いる。光源402からの実質的に平行化された光ビームは、反射性の平坦な表面500から反射され、光検出器によって検出され、実質的に平行化された光ビームが光検出器に入射する位置を変化させる。そして、図4の実施形態例と同様に、NSOMプローブ110にかかる原子間力、ひいてはNSOMプローブのプローブチップとマイクロ構造ワークピースの表面との間の距離を、光信号の検出器信号から決定する。
【0040】
あるいは、NSOMプローブモニタ例は、NSOMプローブにかかる原子間力を検出する別の手段に基づいていてもよい。原子間力顕微鏡に用いられる任意の手段を、本発明において用い得る。例えば、音叉方法を用いた場合、マッチングされた一対の音叉の共振周波数を比較する。1つの音叉をNSOMプローブに結合することにより、プローブにかかる力が音叉の共振周波数に影響するようにする。そして音叉の共振周波数の差を、NSOMプローブにかかる原子間力に相関させる。
【0041】
図2は、本発明によるNSOMおよび超高速レーザ源を用いて、マイクロ構造ワークピース上に要素をレーザ加工する方法例を示す。図1のNSOMレーザマイクロ加工システム例を、この方法例を実行するために用い得る。マイクロ構造ワークピース112をNSOMに装着する(ステップ200)。NSOMプローブ110のプローブチップ310とマイクロ構造ワークピース112の表面との間の距離を決定する(ステップ202)。図4および5の実施形態例を参照して上述したように、この距離は望ましくは、プローブチップ310と表面との間の原子間力を検出することにより決定され得る。
【0042】
次にプローブチップ310とマイクロ構造ワークピース112の表面との間の距離を、所望の加工距離に実質的に等しくなるように制御する(ステップ204)。所望の加工距離は、レーザ光パルスのピークパワー、そのピーク波長、プローブチップ310のサイズ、および達成すべき加工のタイプを含むいくつかのファクターに基づくが、望ましくは、表面の加工に用いられる光パルスの波長の約半分までの範囲である。NSOMプローブ110のプローブチップ310とマイクロ構造ワークピース112の表面との間の距離は望ましくは、圧電またはその他の微移送Z移送台を用いてNSOMプローブまたはマイクロ構造ワークピースのいずれかの垂直位置を制御することにより、制御される。移送台に印加される駆動電圧の量は、ステップ202で決定したプローブチップ310とマイクロ構造ワークピース112の表面との間の距離に基づく。プローブチップ310とマイクロ構造ワークピース112の表面との間の距離は、5nm未満の公差で制御されることが望ましい。
【0043】
ステップ202および204においてNSOMがプローブチップを位置決めする際、超高速レーザ源100を用いて、約1ns未満のパルス期間を有するレーザ光パルスを生成する(ステップ206)。超高速レーザ源100によって生成される初期レーザ光パルスから、高調波生成結晶を用いてより短いピーク波長を有するレーザ光パルスを生成し得る。さらに、アッテネータをレーザ源100に含めることにより、レーザ光パルスのフルエンスを制御し、所定の近接場加工フルエンスを有するレーザ光パルスを生成してもよい。偏光制御器は、パルスの偏光を実質的に円であるように調整する。得られるレーザ光パルスをNSOMプローブ110中に結合する(ステップ208)。
【0044】
図3に示すように、プローブチップ310とマイクロ構造ワークピース112の表面との間の距離がステップ204において所望の加工距離に設定され、ステップ208においてNSOMプローブ110中に結合されれば、これらのレーザ光パルスの近接場モード部分306を、NSOMプローブのプローブチップ310を介して伝達し、マイクロ構造ワークピース112の表面の近接場照射エリア308上に消失的に結合する(ステップ210)。この結果、近接場照射エリア308が近接場モード部分306によってレーザ加工される。近接場照射エリア308は望ましくは、プローブチップ310の形状およびサイズを模倣しており、プローブチップ310の水平位置に対応している。図3を参照して上述したように、プローブチップ310は望ましくは楕円形の断面形状を有し、かつレーザ光パルスのピーク波長の二乗未満のチップ面積を有する。ステップ210における近接場照射エリア308のレーザ加工は、近接場照射エリアにおいてマイクロ構造ワークピースのワークピース材料をアブレーションすること、近接場照射エリアにおいてマイクロ構造ワークピースの表面に堆積材料をレーザ補助化学蒸着すること、近接場照射エリアにおいてマイクロ構造ワークピースの表面のフォトレジストを露光すること、近接場照射エリアにおいてマイクロ構造ワークピースのワークピース材料の屈折率を変更すること、近接場照射エリアにおいてマイクロ構造ワークピースのワークピース材料の格子構造を変更すること、および近接場照射エリアにおいてマイクロ構造ワークピースのワークピース材料の化学組成を変更することを含む。
【0045】
加工されるべき微細要素のすべてが加工されたかどうかを決定する(ステップ212)。要素のすべてが加工されれば、要素のレーザ加工は完了し(ステップ216)、マイクロ構造ワークピースをNSOMから除去し得る。もしまだであれば、プローブチップ310を、マイクロ構造ワークピース112の表面の加工されていない部分(要素のある部分に対応する)に移動する(ステップ214)。これは、NSOMプローブ110またはマイクロ構造ワークピース112のいずれかを移動させることにより行い得る。
【0046】
本方法例はステップ202および204を通って戻ることによりプローブチップ310と表面との間を加工距離に実質的に等しく維持し、ステップ206、208、210および212を通って戻ることにより、プローブチップ310の各新しい位置において、要素の対応する部分をレーザ加工する。このように、この移動は、要素に対応して、マイクロ構造ワークピースの表面の全要素領域にわたってプローブチップをスキャンさせる。
【0047】
超高速レーザ源100がレーザ光パルスを生成するための超高速レーザ発振器およびパルスの出射を制御するためのシャッタを有する場合には、要素領域を含んだマイクロ構造ワークピース112の表面のより大きな部分上を、プローブチップ310はスキャンされ得る。要素領域上をプローブチップ310がスキャンしているときにシャッタを開けることにより、微細要素のレーザ加工を許可し、表面の他の領域上をプローブチップがスキャンしているときにはシャッタを閉じることにより、マイクロ構造ワークピース112の表面のこれらの他のスキャンされた領域が、不用意にレーザ加工されてしまうことを防ぐ。
【0048】
本発明は、近接場放射を用いて、マイクロ構造ワークピースの表面をレーザ加工するシステム例および方法例を包含する。これらの方法例を使用することにより、周囲雰囲気条件において、大きく簡素化されかつ高精度なマイクロ加工が可能になる。このような技術は、マイクロ構造およびナノテクノロジーを、より一般に使用されるよう導くたすけとなり得る。本発明を特定の実施形態について図示および説明したが、本発明は示された詳細に限定されるものではない。むしろ、請求項の均等物の範疇・範囲内において、本発明から逸脱することなく、詳細について様々な改変をなし得る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明によるNSOMレーザマイクロ加工システム例のブロック図である。
【図2】本発明による、マイクロ構造の要素をレーザ加工する方法例を示す、フローチャートである。
【図3】本発明によるNSOMプローブ例の、NSOMプローブ例の直径に沿って切った側破断図である。
【図4】本発明による、NSOMプローブ、プローブホルダ、およびプローブ位置監視構成例の側面図である。
【図5】本発明による、別のNSOMプローブ、プローブホルダ、およびプローブ位置監視構成例の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高速レーザ源を用いてマイクロ構造ワークピースの表面上に要素をレーザ加工するための近接場走査型光学顕微鏡(NSOM)であって、前記NSOMは、
1ns未満のパルス期間およびピーク波長を有するレーザ光パルスを生成する前記超高速レーザ源と、
実質的に円柱形状を有するNSOMプローブであって、
前記NSOMプローブの一端の入射面と、
前記NSOMプローブの他端のプローブチップであって、前記レーザ光パルスの前記ピーク波長の2乗未満の断面積を有するプローブチップと、
前記入射面から前記プローブチップに実質的に延びる光透過性コアであって、前記入射面を介して前記超高速レーザ源に光学的に結合された、光透過性コア部分と、
前記プローブチップの近隣において、前記NSOMプローブの側面の一部上に形成された放射閉じ込めコーティングと、
を有する、NSOMプローブと、
前記NSOMプローブおよび前記マイクロ構造ワークピースを制御可能に保持するNSOMマウントであって、
前記NSOMプローブまたは前記マイクロ構造ワークピースのうち一方に結合されたXY移送台と、
前記NSOMプローブまたは前記マイクロ構造ワークピースのうち一方に結合されたZ移送台と、
を有する、NSOMマウントと、
前記NSOMプローブの前記プローブチップと前記マイクロ構造ワークピースの前記表面との間の距離を決定するための、前記NSOMマウントに結合されたNSOMプローブモニタと、
前記NSOMプローブモニタ、前記XY移送台、および前記Z移送台に結合されたNSOM制御器であって、
前記NSOMプローブモニタによって決定された前記NSOMプローブの前記プローブチップと前記マイクロ構造ワークピースの前記表面との間の距離に基づいて、前記NSOMプローブまたは前記マイクロ構造ワークピースのうち前記Z移送台に結合された前記一方の垂直位置を制御し、
前記マイクロ構造ワークピースの前記表面にレーザ加工されるべき前記要素に基づいて、前記NSOMプローブまたは前記マイクロ構造ワークピースのうち前記XY移送台に結合された前記一方の水平位置を制御する、NSOM制御器と、
を備えている、NSOM。
【請求項2】
前記超高速レーザ源に光学的に結合され、前記レーザ光パルスを前記NSOMプローブに伝達する光ファイバをさらに備えており、
前記NSOMプローブの前記入射面は、前記光ファイバの断面積におよそ等しい入射面積を有する、
請求項1に記載のNSOM。
【請求項3】
前記光ファイバは、前記レーザ光パルスの前記ピーク波長近傍において低吸収率を有する導波路材料から形成されたファイバコアを有している、
請求項2に記載のNSOM。
【請求項4】
前記超高速レーザ源は、
前記レーザ光パルスの前記ピーク波長を減少させる高調波生成結晶、
前記要素のレーザ加工を制御する、前記NSOM制御器に結合されたシャッタ、
前記要素のレーザ加工を制御する、前記NSOM制御器に結合されたアッテネータ、または
前記超高速レーザ源によって生成された前記レーザ光パルスの偏光を円偏光に制御する、偏光制御器
のうち少なくとも1つを有する、請求項1に記載のNSOM。
【請求項5】
前記レーザ光パルスの前記ピーク波長は約400nm未満である、請求項1に記載のNSOM。
【請求項6】
前記レーザ光パルスの前記パルス期間は約20ps未満である、請求項1に記載のNSOM。
【請求項7】
前記NSOMプローブの前記プローブチップは楕円形の断面形状を有する、請求項1に記載のNSOM。
【請求項8】
前記NSOMプローブの前記光透過性コアは、前記レーザ光パルスの前記ピーク波長近傍において低吸収率を有する導波路材料から形成されている、請求項1に記載のNSOM。
【請求項9】
前記放射閉じ込めコーティングは、前記レーザ光パルスの前記ピーク波長近傍において、低吸収率および高反射率を有する、請求項1に記載のNSOM。
【請求項10】
前記放射閉じ込めコーティングは、金属層または誘電体層のうち少なくとも一方から形成されている、請求項1に記載のNSOM。
【請求項11】
前記NSOMプローブは、前記入射面と前記プローブチップとの間に実質的に90°の曲げを形成しており、
そのことによって、前記NSOMプローブの前記光透過性コア中における前記レーザ光パルスの伝播方向が、前記入射面と前記プローブチップとの間で実質的に90°曲げられる、
請求項1に記載のNSOM。
【請求項12】
前記放射閉じ込めコーティングによってコーティングされた前記NSOMプローブの前記側面の前記一部は、前記プローブチップ近隣から、少なくとも前記実質的に90°の曲げまで延びている、請求項11に記載のNSOM。
【請求項13】
前記XY移送台は圧電XY移送台であり、
前記Z移送台は圧電Z移送台である、
請求項1に記載のNSOM。
【請求項14】
前記NSOMマウントは、前記NSOMプローブの前記プローブチップと前記マイクロ構造ワークピースの前記表面との間の原子間力に応答して、前記NSOMプローブの較正された移動を可能にするように構成された、方持ちNSOMプローブホルダをさらに有しており、
前記NSOMプローブモニタは、前記NSOMプローブの前記較正された移動に基づいて、前記NSOMプローブの前記プローブチップと前記マイクロ構造ワークピースの前記表面との間の距離を決定する、
請求項1に記載のNSOM。
【請求項15】
前記NSOMマウントは、前記マイクロ構造ワークピースの前記表面に対して実質的に法線方向に前記NSOMプローブの周期的往復振動を発生させる、前記方持ちNSOMプローブホルダに結合されたNSOMプローブオシレータをさらに有しており、
前記NSOMプローブの前記プローブチップと前記マイクロ構造ワークピースの前記表面との間の原子間力に応答した、前記NSOMプローブの前記較正された移動は、
前記NSOMプローブの前記周期的往復振動の周期または、
前記NSOMプローブの前記周期的往復振動の振幅
のうち少なくとも一方の変化である、
請求項14に記載のNSOM。
【請求項16】
前記NSOMプローブの前記周期的往復振動の前記振幅は、0から20nmの範囲である、
請求項15に記載のNSOM。
【請求項17】
前記NSOMプローブモニタは、
実質的に平行化されたビーム光を生成する光源と、
前記NSOMプローブおよび前記方持ちNSOMプローブホルダの一方に結合され、前記実質的に平行化されたビーム光を反射する、反射性平坦面と、
前記反射された実質的に平行化されたビーム光を検出し、各検出器領域によって検出された光量に基づいて信号を生成する少なくとも2つの検出器領域を有する、光検出器と、
前記光検出器によって生成された信号に基づいて、前記NSOMプローブの前記プローブチップと前記マイクロ構造ワークピースの前記表面との間の距離を決定する、処理手段と、
を有する、請求項14に記載のNSOM。
【請求項18】
前記NSOMプローブモニタは、
前記NSOMマウントと、
前記NSOMプローブまたは前記マイクロ構造ワークピースのうち一方と、
の間に結合された力計器を有している、請求項1に記載のNSOM。
【請求項19】
超高速レーザ源および近接場走査型光学顕微鏡(NSOM)を用いて、マイクロ構造ワークピース上に要素をレーザ加工する方法であって、
a)前記マイクロ構造ワークピースを前記NSOMに装着するステップと、
b)前記NSOMのNSOMプローブのプローブチップと前記マイクロ構造ワークピースの表面との間の距離を決定するステップと、
c)前記プローブチップと前記マイクロ構造ワークピースの前記表面との間の距離を、前記距離が加工距離に実質的に等しいように制御するステップと、
d)前記超高速レーザ源を用いて、1ns未満のパルス期間およびピーク波長を有するレーザ光パルスを生成するステップと、
e)前記レーザ光パルスを前記NSOMプローブ中に結合するステップと、
f)前記レーザ光パルスの近接場モード部分を、前記NSOMプローブの前記プローブチップを介して、前記プローブチップの位置に対応する前記マイクロ構造ワークピースの前記表面の近接場照射エリア上に結合することにより、前記近接場照射エリアをレーザ加工するステップと、
g)前記NSOMプローブまたは前記マイクロ構造ワークピースのうち少なくとも一方を、
ステップ(b)および(c)を繰り返して前記プローブチップと前記表面との間の距離を前記加工距離に実質的に等しく維持し、
ステップ(d)、(e)および(f)を繰り返して前記マイクロ構造ワークピースの前記表面上に前記要素をレーザ加工しながら、
前記要素に対応する前記マイクロ構造ワークピースの前記表面の要素領域上を前記プローブチップがスキャンされるように、移動させるステップと、
を包含する方法。
【請求項20】
前記NSOMプローブの前記プローブチップと前記マイクロ構造ワークピースの前記表面との間の距離を決定する前記ステップは、前記プローブチップと前記表面との間の原子間力を検出することを包含する、請求項19に記載に方法。
【請求項21】
前記NSOMプローブの前記プローブチップと前記マイクロ構造ワークピースの前記表面との間の距離を決定する前記ステップは、
b1)前記マイクロ構造ワークピースの前記表面に対して実質的に法線方向に、前記NSOMプローブの周期的往復振動を発生させることと、
b2)以下のうち少なくとも一方を検出するステップと:
前記NSOMプローブの前記周期的往復振動の周期または
前記NSOMプローブの前記周期的往復振動の振幅、
b3)前記周期的往復振動の前記周期または前記振幅のうち少なくとも一方の変化に基づいて、前記プローブと前記表面との間の距離を決定することと、
を包含する、請求項19に記載に方法。
【請求項22】
前記NSOMプローブの前記プローブチップと前記マイクロ構造ワークピースの前記表面との間の距離を制御する前記ステップは、Z移送台を用いて、ステップ(b)で決定した前記NSOMプローブの前記プローブチップと前記マイクロ構造ワークピースの前記表面との間の距離に基づいて、前記NSOMプローブまたは前記マイクロ構造ワークピースのうち一方の垂直位置を制御することを包含する、請求項19に記載に方法。
【請求項23】
前記加工距離は、前記レーザ光パルスの前記ピーク波長の約半分までの範囲であり、
ステップ(c)において、前記NSOMプローブの前記プローブチップと前記マイクロ構造ワークピースの前記表面との間の距離は、5nm未満の公差で制御される、
請求項19に記載に方法。
【請求項24】
前記超高速レーザ源は、超高速レーザ発振器およびアッテネータを有しており、
ステップ(d)は、
d1)前記超高速レーザ発振器を用いて、1ns未満のパルス期間、前記ピーク波長、および初期フルエンスを有する初期レーザ光パルスを生成するステップと、
d2)前記アッテネータを用いて、前記初期レーザ光パルスの前記フルエンスを制御することにより、所定の近接場加工フルエンスを有する前記レーザ光パルスを生成するステップと、
を包含する、請求項19に記載に方法。
【請求項25】
前記超高速レーザ源は、超高速レーザ発振器および偏光制御器を有しており、
ステップ(d)は、
d1)前記超高速レーザ発振器を用いて、1ns未満のパルス期間、前記ピーク波長、および初期偏光を有する初期レーザ光パルスを生成するステップと、
d2)前記偏光制御器を用いて、前記初期レーザ光パルスの前記初期偏光を実質的に円偏光に調節することにより、前記レーザ光パルスを生成するステップと、
を包含する、請求項19に記載に方法。
【請求項26】
前記NSOMプローブの前記プローブチップは、楕円形の断面形状を有しており、
ステップ(f)は、
f1)前記光パルスの前記近接場モード部分を、前記NSOMプローブの前記プローブチップを介して伝達することと、
f2)前記光パルスの前記近接場モード部分を、前記マイクロ構造ワークピースの前記表面の、前記プローブチップと実質的に同じ楕円形の断面形状を有する前記近接場照射エリア上に、消失的に結合することと、
を包含する、請求項19に記載に方法。
【請求項27】
前記NSOMプローブの前記プローブチップは、前記ピーク波長の2乗未満のチップ面積を有しており、
ステップ(f)は、
f1)前記光パルスの前記近接場モード部分を、前記NSOMプローブの前記プローブチップを介して伝達することと、
f2)前記光パルスの前記近接場モード部分を、前記マイクロ構造ワークピースの前記表面の、前記プローブチップの前記チップ面積に実質的に等しい前記近接場照射エリア上に、消失的に結合することと、
を包含する、請求項19に記載に方法。
【請求項28】
ステップ(f)において前記近接場照射エリアをレーザ加工することは、
前記近接場照射エリアにおいて、前記マイクロ構造ワークピースのワークピース材料をアブレーションすること、
前記近接場照射エリアにおいて、前記マイクロ構造ワークピースの前記表面上に堆積材料をレーザ補助化学蒸着すること、
前記近接場照射エリアにおいて、前記マイクロ構造ワークピースの前記表面上のフォトレジストを露光すること、
前記近接場照射エリアにおいて、前記マイクロ構造ワークピースのワークピース材料の屈折率を変更すること、
前記近接場照射エリアにおいて、前記マイクロ構造ワークピースのワークピース材料の格子構造を変更すること、または
前記近接場照射エリアにおける、前記マイクロ構造ワークピースのワークピース材料の化学組成を変更すること、
のうち少なくとも1つを包含する、請求項19に記載に方法。
【請求項29】
前記超高速レーザ源は、ステップ(d)において前記レーザ光パルスを生成する超高速レーザ発振器および、前記パルスの出射を制御するシャッタを有しており、
ステップ(g)は、
g1)前記NSOMプローブまたは前記マイクロ構造ワークピースのうち前記少なくとも一方を移動させることにより、前記マイクロ構造ワークピースの前記表面のうち前記要素領域を含む部分上において、前記プローブチップをスキャンさせるステップと、
g2)前記プローブチップが、前記マイクロ構造ワークピースの前記表面の前記要素領域上をスキャンされたときに前記シャッタを開くことにより、前記要素のレーザ加工を許可するステップと、
g3)前記プローブチップが、前記マイクロ構造ワークピースの前記表面の他のスキャンされた領域上をスキャンされたときに前記シャッタを閉じることにより、前記マイクロ構造ワークピースの前記表面の前記他のスキャンされた領域がレーザ加工されることを防ぐステップと、
を包含する、請求項19に記載に方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−533978(P2007−533978A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506465(P2007−506465)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/010493
【国際公開番号】WO2005/097397
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「フェムト秒テクノロジーの研究開発(超高速光デバイス技術)」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】