説明

マイクロプレート分割処理装置およびマイクロプレート分割処理方法

【課題】装置規模を拡大することなく規格化されたマイクロプレートを用いて効率の高いマイクロプレート分割処理装置およびマイクロプレート処理方法を提供することである。
【解決手段】複数のウェルが行列状に配列された所定マイクロプレートと、複数のノズルが行列状に配列された1または2以上のノズルヘッドと、該ノズルを介して気体の吸引吐出を行う吸引吐出機構と、前記マイクロプレートとノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動手段と、を有するとともに、前記各ノズルヘッドに設けられた全ノズルの先端は、前記マイクロプレートの一部のウェルに一斉に挿入可能に設けられ、配列された前記ノズルの行間隔および列間隔は、配列された前記ウェルの行間隔および列間隔に各々等しく設けられたマイクロプレート分割処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプレート分割処理装置およびマイクロプレート分割処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロプレートは、液を収容可能な複数のウェルがマトリクス状(行列状)に配列して設けられたものであり、12行×8列(=96ウェル、9mmの行間隔および列間隔)、24行×16列(=384ウェル、4.5mmの行間隔および列間隔)、48行×32列(=1536ウェル、2.25mmの行間隔および列間隔)等が知られ、国際的にほぼ標準規格化される傾向にある。ここで、行間隔とは、そのウェルの中心またはウェルが設けられた行の中心線と列方向に隣接するウェルの中心またはウェルが設けられた行の中心までの列方向の距離であり、列間隔とは、そのウェルの中心またはウェルが設けられた列の中心線と行方向に隣接するウェルの中心またはウェルが設けられた列の中心線までの行方向の距離である。
【0003】
これらのマイクロプレートを用いて、並行して複数種類の溶液を用いた同時処理を行う場合には、マイクロプレートの各ウェルの全個数に等しい本数のノズルまたは装着用ノズルに分注チップを装着させた1のノズルヘッドを用いて、マイクロプレートごとに一斉に全ウェルに全ノズルを挿入して、一斉に同一種類または同一量として取り扱うべき溶液または懸濁液の吸引吐出を行う分注装置を用いていた(特許文献1)。
【0004】
例えば、処理対象となる多数の検体等から抽出された多数の対象物質について、複数種類の試薬を順次反応させて一連の処理を行う場合には、前記検体数に応じた個数のウェルを有するマイクロプレートを、処理に必要な試薬溶液、検体、磁性粒子懸濁液を予め収容するために、処理工程で必要とする工程数または試薬等の必要な種類数に相当する枚数用意する。前記ノズルに相当する分注チップの内壁に前記磁性粒子を吸着可能な前記装置を用いて、磁性粒子を複数枚のマイクロプレートの各ウェルに順次移送してウェル内に懸濁させて反応を起こさせるという工程を順次行うことで処理を行っていた(特許文献1、2)。
【0005】
そのために、処理に用いる試薬の種類が増大すると、その種類ごとに1枚のマイクロプレートを割り当てるため使用するマイクロプレートの枚数が増加し、作業面積が増大することになる。また、ノズルヘッドの移動距離は、前記処理に必要な試薬等の種類数に相当する枚数の全マイクロプレートを通過する距離に相当するので、マイクロプレートの枚数が増加すると前記ノズルヘッドの移動量が増加することになり処理を迅速かつ効率的に行うことができないおそれがあるという問題点を有していた。
【0006】
また、検体数があまり大きくない場合に、その数に見合ったマイクロプレートを、処理工程数に相当する枚数を用意する場合には、そのマイクロプレートのウェルの配列の行間隔および列間隔に対応した行間隔および列間隔をもつようにノズルが配列されたノズルヘッドを用いる必要があり、検体数に応じて別のノズルヘッドを用意しておく必要がある。
【0007】
一方、検体数の大きな場合に対応することができるマイクロプレートを利用して、検体数が小さい場合にも利用する場合に、一列状、または一行状に、各処理工程で用いる溶液等を配列し、対応する一列状、または一行状に配列したノズルを有するノズルヘッドを用いる場合には、最大の検体数が、1の行数または1の列数に相当する場合に限られ、検体数が前記1の行数または1の列数を超える場合には、扱いが困難になるおそれがあるという問題点を有していた。
【0008】
特に、検体数が1行数または1列数を超えるが、その個数が前記全ウェル数の約数であり、かつその約数が2つの数の積で表される場合には、1のマイクロプレートを分割して無駄なく用いて処理を完成させることができる可能性がある。
【0009】
並行して取り扱う並行処理数が増加すると、マイクロプレートのウェル数が増加して集積化の必要性が高まり、各ノズルを密接して設ける必要があるために、分注チップ間の間隔が狭まり、各分注チップの占める領域が狭まり該分注チップに組み込むべき機能の低下を余儀なくされるおそれがあるという問題点を有していた。
【0010】
【特許文献1】国際公開WO99/47267号公報
【特許文献2】特許第3115501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本願発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、その第1の目的は、装置規模を拡大することなく、規格化されたマイクロプレートを用いて、作業面積または装置体積当たり、より多くの種類の溶液または懸濁液、またはより大きい容量の溶液または懸濁液を扱うことができる効率の高いマイクロプレート分割処理装置およびマイクロプレート処理方法を提供することである。第2の目的は、並行して取り扱うべき処理対象数が、規格化されたマイクロプレートのウェル数よりも小さい場合であっても、該マイクロプレートのウェル数にとらわれずに処理することができる汎用性の高いマイクロプレート分割処理装置およびマイクロプレート分割処理方法を提供することである。第3の目的は、ウェル数が大きく集積されたマイクロプレートを取り扱う場合でも高い機能性をもったマイクロプレート分割処理装置およびマイクロプレート分割処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の発明は、複数のウェルが行列状に配列された所定マイクロプレートと、複数のノズルが行列状に配列された1または2以上のノズルヘッドと、該ノズルを介して気体の吸引吐出を行う吸引吐出機構と、前記マイクロプレートとノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動手段と、を有するとともに、前記各ノズルヘッドに設けられた全ノズルの先端は、前記マイクロプレートの一部のウェルに一斉に挿入可能に設けられ、配列された前記ノズルの行間隔および列間隔は、配列された前記ウェルの行間隔および列間隔に各々等しく設けられたマイクロプレート分割処理装置である。
【0013】
ここで、「行列状」とは、列方向および行方向の2方向に沿って要素、例えば、ウェルまたはノズル等が所定の行間隔および列間隔で各々所定の行数個および列数個配列された構造をいい、前記行数および列数は各々2以上であるが、好ましくは、行数および列数は各々3以上である。なお、前記列方向および行方向は、通常直交しているが必ずしもこれに限定されず斜交していてもよい。また、各隣接する行または列間で、例えば、列間隔の半分または行間隔の半分の距離だけ配列をずらせて要素が互い違いとなるようにして、最密状に配列するような場合も含む。「行間隔」とは、行列状に配列された1の要素の中心またはその要素が設けられた行の中心線と、列方向に隣接する要素の中心またはその要素が設けられた行の中心線との間の列方向の距離であり、「列間隔」とは、マトリクス状配列された1の要素の中心またはその要素が設けられた列の中心線と、行方向に隣接する要素の中心またはその要素が設けられた列の中心線との間の行方向の距離をいう。
【0014】
「マイクロプレート」は、所定個数のウェルが所定の行間隔および列間隔で行列状に配列された容器をいう。そのうち、前記行間隔および列間隔が、その個数(行数および列数)に応じて定まるもの(例えば、容器全体の大きさおよび形状を予め一定に定め、前記個数のウェルが該容器内に等間隔に配列されるように前記行間隔および列間隔を定める場合、すなわち、前記行間隔および列間隔が前記ウェルの個数の関数となっている場合をいう。)を規格マイクロプレートという。規格マイクロプレートのうち行間隔と列間隔とが等しい長さをもつマイクロプレートを正規格マイクロプレートといい、さらにその中で、所定の標準規格個数(行数および列数)のウェルがその個数に応じて定まる所定の標準規格行間隔(=標準規格列間隔)で行列状に配列されたものを標準規格マイクロプレートという。「標準規格マイクロプレート」としては、世界的に標準規格化されている、例えば、12行×8列の96ウェルのマイクロプレート、24行×16列の384ウェルのマイクロプレート、48行×32列の1536ウェルのマイクロプレートがあり、その標準規格行間隔(=標準規格列間隔)は、各々、9mm、4.5mm、2.25mmである。マイクロプレートの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリビニール、アクリル等の樹脂である。
【0015】
「マイクロプレートの一部」には、例えば、前記規格(または正規格もしくは標準規格)マイクロプレートに属する一部のウェル、または前記規格(または正規格もしくは標準規格)マイクロプレートの規格(または正規格もしくは標準規格)個数よりも小さい個数であるにも拘らず前記規格(または正規格もしくは標準規格)個数により定まる規格(または正規格もしくは標準規格)行間隔および規格(または正規格もしくは標準規格)列間隔をもって前記行列状にウェルを配列した部分的規格(または部分的正規格もしくは部分的標準規格)マイクロプレートに属するウェルの一部またはその全部の場合を含む。
【0016】
「ノズル」とは、流体の吸引吐出がなされる部分であって、流体には、気体および液体を含む。ノズルは、プランジャを有するシリンダ、または蛇腹や弾性体の変形により、流体を吸引吐出する機構と連通した流路である。また、ノズルには、装着用ノズルに装着した分注チップ等の流路も含める。また、各ノズルには、ノズル内の圧力変化を検知する圧力センサを設けるのが好ましい。
【0017】
「全ノズルの先端は、前記マイクロプレートの一部のウェルに一斉に挿入可能に設けられて」いるので、ウェルのマトリクスよりもノズルのマトリクスの方が行数または列数は小さく、ノズルの行列とウェルの行列とは、その行方向および列方向の成す角は同一であり、ノズルの行列の行間隔または列間隔は、そのウェルの行列の行間隔または列間隔の自然数倍である必要があるが、「前記ノズルの行間隔および列間隔は、配列された前記ウェルの行間隔および列間隔に各々等しく設定された」のであるから、ここでは、その自然数は1ということになる。
【0018】
第2の発明は、前記マイクロプレートは、前記ノズルヘッドに設けられた全ノズルの先端が一斉に挿入可能でかつ相互にウェルが重複しない複数のウェル部分行列を含有するマイクロプレート分割処理装置である。
【0019】
前記マイクロプレートには、前記全ノズルの先端が一斉に挿入可能でかつ相互にウェルが重複しない複数のウェル部分行列を含有する、すなわち、マイクロプレート内には、ノズルのマトリクス状配列と同一の配列をもち、相互に重複しない少なくとも2個のマトリクス状のウェルの配列が存在することになる。
【0020】
これによって、検体数等の処理対象数が小さい場合であって、複数の処理工程を要する場合であっても、1の既存のマイクロプレート内に作業面積を限定することが可能なので、作業面積をいたずらに拡大することがない。また、ノズルヘッドのウェル部分行列間の移動は、マイクロプレート内のそのウェル部分行列の個数回繰り返すことで、マイクロプレート内のみで、全ウェル部分行列にノズルヘッドの全ノズルの先端を挿入可能に位置させることができる。
【0021】
「配列された前記ノズルの行間隔および列間隔は、配列された前記ウェルの行間隔および列間隔に各々等しく設定された」としているので、マイクロプレート内には、ノズルの行列状配列と同一の配列をもち、相互に重複しない少なくとも自然数個分(>1)の部分行列の領域、すなわち、ノズルヘッドに配列されたノズルの行列に相当する面積ごとに直線状の境界線を用いて分割されることになる。
【0022】
これによって、1のマイクロプレート内に作業面積を限定することができるので、前記作業面積をいたずらに拡大することがない。また、ノズルヘッドのウェル部分行列間の移動は、マイクロプレート内に限定されることができる。
【0023】
なお、前記ノズルヘッドの台数、およびマイクロプレートの枚数が、前記各マイクロプレートが有する前記ウェル部分行列数に等しくすることによって、マイクロプレートの行列状に配列された全ウェル数に相当する行列および個数をもつ全ノズルを配列したノズルヘッドを用いる場合に比較して、同一数の検体の処理を行う場合には、同一のノズル数のノズルを使用しているにも拘らず、前記ノズルヘッドの台数倍の効率を得ることができる。
【0024】
第3の発明は、前記ノズルヘッドに設けられた各ノズルの内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように、前記各ノズル近傍を通り該各ノズルと交差しない直線または曲線に沿って各ノズルに対して相対的に接離可能となるように設けた磁石を有する磁力手段が設けられたマイクロプレート分割処理装置である。
【0025】
前記直線は、好ましくは前記ノズル行またはノズル列に隣接するように前記行方向または列方向に沿ったものであり、前記曲線は、好ましくは前記ノズルの周辺においてその水平面へ投影された場合は直線を示し列方向または行方向に沿ったものであって、例えば、円弧である。直線とは無限遠から無限遠まで延びる線であるが、「沿って接近しまたは離間することができる」のはその直線の一部の線分においてである。「該ノズルと直線または曲線の交差」には、直線または曲線もしくはその延長部分が、該ノズルと交差し、または該ノズルを貫通し、該ノズルに突き当たり、または該ノズルと衝突する場合を含む。「ノズル近傍」とは、ノズル内に有効な磁場を及ぼすことができる程度の近さであって、ノズルに接する場合も含む。直線または曲線の本数は、前記ノズルヘッドに設けられた全ノズル数よりも小さいことが好ましい。より好ましくは、前記ノズルの(行数+1)または(列数+1)以下である。
【0026】
「接離可能」とは、対象に対して接近しおよび離間することが可能であることを意味する。「接近」は、言い換えれば、前記ノズル近傍位置に達することである。「接離可能」とするためには、前記磁力手段を前記ノズルヘッドと異なる場所に設けて、前記移動手段を用いて磁力手段を前記ノズルに対して接近させ、離間させる場合、または、磁力手段を前記ノズルヘッドに設けて、前記移動手段とは別個に設けた接近離間手段によって行う場合、さらには、前記磁力手段を、前記移動手段の一部と、該移動手段とは異なる手段との両者を用いてノズルに対して接近させまたは離間させる場合がある。これによって、行数および列数が各々3以上、すなわち、3行以上×3列以上の行列状にノズルが配列する場合には、磁石の磁場が及ばない程度に離れた磁石の退避距離をノズル間の間隔として確保することなく、磁石が通過可能な空隙をノズル間に確保する程度に密集して集積することができることになる。なお、この磁力手段は、一般的に、ウェルが行列状に配列されたマイクロプレートと、複数のノズルが行列状に配列された1または2以上のノズルヘッドと、該ノズルを介して気体の吸引吐出を行う吸引吐出機構と、前記マイクロプレートとノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動手段とを有するマイクロプレート処理装置にも適用することができる。「対象」は、前記ノズルまたはノズルの軸線であり、ノズルの軸線はノズルの軸に沿って伸びる直線をいう。「磁石」には、永久磁石または電磁石を含む。
【0027】
第4の発明は、前記磁力手段は、前記行方向または列方向に沿って伸び1若しくは2のノズル行またはノズル列と隣接可能であって各々列方向または行方向に沿って配列され1または2以上の棒状の櫛歯部材と、前記ノズルに対して相対的に移動可能に設けられ1または2以上の該櫛歯部材の一端で連結した支持部材と、隣接する1または2の前記ノズル行またはノズル列に属する各ノズルに対応する位置において前記各櫛歯部材に設けた磁石とを有するマイクロプレート分割処理装置である。ここで、前記櫛歯部材の少なくとも1本は前記ノズル行間またはノズル列間に挿入可能であり、支持部材の移動方向は、列方向または行方向である。
【0028】
ここで、前記櫛歯部材の本数は、1のノズルに対して重複して磁場を及ぼさない場合であって、1の磁石の磁場を1の隣接するノズルにのみ及ぼす場合には、例えば、前記各ノズル行間または各ノズル列間のみに挿入可能に設けた場合には、前記ノズルの(行数―1)本または(列数―1)本であり、ノズル行間外またはノズル列間外にも設けた場合には、前記ノズルの行数本または列数本であり、1の磁石の磁場を2つの隣接するノズルに及ぼす場合には、例えば、行数/2、(行数+1)/2,または列数/2、(列数+1)/2等である。1のノズルに対して重複して磁場を及ぼさない場合には、2以上の櫛歯部材を設ける場合とは、行数および列数が3以上の場合である。前記櫛歯部材に設けられた各磁石のノズルに対する相対的な移動経路は、前記各ノズルと交差しない直線または曲線に沿うことになる。
【0029】
第5の発明は、制御部をさらに有し、該制御部は、前記移動手段に対して、前記ノズルヘッドと前記マイクロプレートとの間で相対的に移動させることによって、前記ノズルヘッドに設けられた全ノズルの先端が前記マイクロプレートの1のウェル部分行列に属するウェルに一斉に挿入可能に位置させた後に、前記ノズルの先端を前記ウェル内に一斉に挿入させて処理を行った後に抜出する動作を、他のウェル部分行列に属するウェルに対しても順次繰り返すように制御するマイクロプレート分割処理装置である。
【0030】
特に、検体数が、マイクロプレートの行数または列数に一致しない場合であって、該検体数が、マイクロプレートのウェル数の約数となっている場合であって、検体数が素数でない場合には、前記ノズルの配列を行列状に構成して処理することによって、マイクロプレートを効率良く利用することができる。例えば、12行×8列の96ウェルのマイクロプレートに対して、検体数が16個の場合には、前記行数、列数または全ウェル数とも異なるが、16は96の約数であって素数でない場合は、4行×4列のノズルが配列されたノズルヘッドを用いるとともに、マイクロプレートを4行×4列の6個の部分行列に分割することによって、前記ノズルヘッドを用いて該マイクロプレートを無駄なく利用することができることになる。
【0031】
第6の発明は、前記ノズルヘッドの移動経路に沿った複数の前記ウェル部分行列の各々には、処理の各工程で必要とする溶液または懸濁液が各工程の順序に応じて収容されたマイクロプレート分割処理装置である。
【0032】
ここで、「移動経路」とは、前記全部分行列に順次前記ノズルヘッドを平行移動させる際に通過する経路であって、移動経路に沿った距離が最も短い経路が好ましい。したがって、処理工程に応じた順序に各ウェル部分行列を選択して必要な試薬等の溶液等を収容する。また、例えば、前記同一のウェル部分行列に属するウェルには相互に同一種類または同一量として取り扱うべき溶液または懸濁液が収容され、異なるウェル部分行列に属するウェル間では、相互に異なる種類または異なる量として取り扱うべき溶液または懸濁液が収容される。これは、同一のノズルヘッドに設けられた各ノズルの吸引吐出の動作は連動しており、実質的に同等であるからである。または、大容量の液体を扱う場合には、異なるウェル部分行列に属するウェル間でも、同一の種類の溶液または懸濁液が収容される場合もありうる。
【0033】
第7の発明は、前記ノズルヘッドに設けられた前記ノズルは、装着用ノズルと、該装着用ノズルに着脱可能に装着された分注チップとを有し、前記ノズルヘッドは、前記装着用ノズルに装着された分注チップを脱着するチップ脱着部を有するマイクロプレート分割処理装置である。
【0034】
第8の発明は、前記ノズルヘッドに設けられた各ノズル内部の液体の状態を順次検出可能とするように、前記各ノズル近傍を通り該各ノズルと交差しない直線または曲線に沿って、各ノズルに対して順次接近可能に設けた光検出部を有する光検出手段をさらに有するマイクロプレート分割処理装置である。したがって、ノズルまたは装着用ノズルに装着される分注チップ等は透光性部材で形成される必要がある。検出の対象は、例えば、液体の状態であり、該状態には、液体の有無、液体の水位、液面、液体の吸引量または吐出量を含む。
【0035】
ここで、液体の有無、液体の水位、液面等の検知を行う場合には、ノズルに光を照射し、ノズルの透過光を受光することで行うのが好ましい。この光検出手段は、前記マイクロプレート処理装置にも適用することができる。ここで、「光検出部」とは、光を照射する照射部を含む発光部および/または受光部である。「各ノズル近傍」とは、前記光検出によってノズル内部の液体の状態を検出できる程度の近さをいい、ノズルに接する場合も含む。直線または曲線の本数は、前記ノズルヘッドに設けられた全ノズル数よりも小さいことが好ましい。より好ましくは、前記ノズルの(行数+1)または(列数+1)以下である。その他、「直線」「曲線」については、第3の発明における説明が適用される。「接近」は、言い換えれば、前記ノズル近傍位置にまで達することである。
【0036】
第9の発明は、前記光検出手段は、前記ノズルに対して相対的に移動可能となるように前記行方向または列方向に沿って伸び1若しくは2のノズル行またはノズル列と隣接可能であって各々列方向または行方向に沿って配列された1または2以上の棒状の櫛歯部材と、前記ノズルに対して相対的に移動可能に設けられ1または2以上の該櫛歯部材の一端で連結した支持部材と、隣接する1または2の前記ノズル行またはノズル列に属する各ノズル内を光学的に順次検出するために前記各櫛歯部材の他端近傍に設けた光検出部とを有するマイクロプレート分割処理装置である。該光検出部の移動経路は、各ノズルと交差しない直線または曲線ということになる。
【0037】
ここで、液体の有無、液体の水位、液面等の検知を行うために、ノズルに光を透過させる場合には、前記櫛歯部材は、各ノズル列またはノズル行を挟むように両側に設けて、一方の櫛歯部材には照射手段を設け、他方の櫛歯部材には受光手段を設けることが好ましい。したがって、この場合には、櫛歯部材の本数は、(行数+1)本または(列数+1)本ということになる。なお、照射手段と受光手段とを同じ側に設けてノズル内部からの反射を測定する場合には、前述した磁力手段で説明した本数の例をそのまま適用することができる。また、前記櫛歯部材の少なくとも1本は前記ノズル行間またはノズル列間に挿入可能であり、支持部材の移動方向は、列方向または行方向である。
【0038】
第10の発明は、前記ノズルヘッドは、行列状に配列された2以上のノズルの一部の複数のノズルまたは全体のノズルが一体に集積したノズル集積体を有し、前記吸引吐出機構は、該ノズル集積体の各ノズルと連通する2以上の吸引吐出要素を有するマイクロプレート分割処理装置である。
【0039】
ここで、「一体」とは、集積した対象が個々に分離できない状態をいう。ノズルヘッドに設けられたノズルは、ノズルの先端が1平面上に位置しかつノズルの軸方向が相互に平行となるように揃えるのが好ましい。また、前記吸引吐出機構の2以上の前記吸引吐出要素は、前記行列状に配列されているのが好ましい。さらに、吸引吐出要素が相互に一体に集積化されて吸引吐出要素集積体を形成するのが好ましい。また、前記吸引吐出要素集積体を前記ノズル集積体とを合体させて、吸引吐出機構付ノズル集積体を形成しても良い。
【0040】
また、2以上のノズルは、その液体を貯溜する部分が相互に1枚の壁板のみで隔てるように密集して集積することによって、各ノズルにおける液体の貯溜用の容積を増加させることができる。この場合、口部があるノズル先端はマイクロプレートの各ウェルに個々に挿入可能となるように集積する必要がある。なお、このノズル集積体は前記マイクロプレート処理装置にも適用することができる。
【0041】
第11の発明は、前記ノズル集積体は、2以上の装着用ノズルを行列状に配列され一体として集積した装着用ノズル集積体と、該装着用ノズル集積体の各装着用ノズルに装着される2以上の分注チップが行列状に配列され一体として集積した分注チップ集積体とを有し、前記装着用ノズル集積体の前記各装着用ノズルは、前記分注チップ集積体の対応する1の分注チップと連通するマイクロプレート分割処理装置である。2以上の分注チップは、その液体を貯溜する部分が相互に1枚の壁板のみで隔てるように密集して集積化することによって、液体の貯溜用の容積を増加させることができる。
【0042】
ここで、例えば、前記分注チップ集積体は、前記装着用ノズルと各々接続する前記行列状に配列された2以上の貯溜区域に仕切られ内部に液体を貯溜可能な貯溜集積体と、該貯溜集積体の各貯溜区域と連通し、前記行列状に配列された液体の吸引吐出が行われる2以上の口部を先端に有する前記行列状に配列された2以上の細管とを有し、前記装着用ノズル集積体の先端開口面は行列状に配列された各装着用ノズルの先端開口部を有し、前記分注チップ集積体の後端開口面は行列状に配列された前記貯溜区域の後端開口部を有し、前記装着用ノズルの先端開口部と対応する前記貯溜区域の後端開口部とが密接した状態で接続する。前記装着用ノズル集積体は、前記吸引吐出要素集積体と合体させて、吸引吐出機構が付属した吸引吐出機構付装着用ノズル集積体を形成するようにしても良い。
【0043】
ここで、前記「貯溜区域」は、例えば、薄板状の隔壁によって相互に連通することなく格子状に仕切られ、貯溜集積体全体としては、例えば直方体状、角柱状、立方体状である。
【0044】
第12の発明は、複数のウェルが行列状に配列された所定マイクロプレートと、複数のノズルが行列状に配列された1または2以上のノズルヘッドと、該ノズルを介して気体の吸引吐出を行う吸引吐出機構と、前記マイクロプレートとノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動手段とを有し、前記各ノズルヘッドに設けられた全ノズルの先端は、前記マイクロプレートの一部のウェルに一斉に挿入可能に設けられ、配列された前記ノズルの行間隔および列間隔は、配列された前記ウェルの行間隔および列間隔に各々等しく設けられ、前記ノズルヘッドを前記マイクロプレートに対して相対的に移動させて前記マイクロプレート内の一部のウェルに前記各ノズルヘッドに設けられた全ノズルを一斉に挿入可能に位置させる工程を有するマイクロプレート分割処理方法である。
【0045】
第13の発明は、前記工程は、前記マイクロプレートに含有され、前記ノズルヘッドに設けられた全ノズルの先端が一斉に挿入可能でかつ相互にウェルが重複しない複数のウェル部分行列に対して順次行われるマイクロプレート分割処理方法である。
【0046】
なお、前記ノズルヘッドの移動経路に沿った複数の前記ウェル部分行列の各々には、処理の各工程で必要とする溶液または懸濁液が各工程の順序に応じて収容されていることが好ましい。また、溶液を収容した前記ウェルを、ウェル部分行列を単位にして、マイクロプレートの表面にシールを張ることによって密閉することが好ましい。これによって試薬液の蒸発や汚染を防止することができる。この場合には、前記分注チップの先端で、前記シールを穿孔することによって吸引または吐出を行うことになる。
【0047】
第14の発明は、前記各ノズル近傍を通り該各ノズルと交差しない直線または曲線に沿って、各ノズルに対して相対的に接近させることによって前記ノズル内部に磁場を及ぼす工程および相対的に離間させることによって磁場を除去する工程を有するマイクロプレート分割処理方法である。
【0048】
この発明は、複数のウェルが行列状に配列されたマイクロプレートと、複数のノズルが行列状に配列された1または2以上のノズルヘッドと、該ノズルを介して気体の吸引吐出を行う吸引吐出機構と、前記マイクロプレートとノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動手段とを有し、前記各ノズルヘッドに設けられた全ノズルの先端は、前記マイクロプレートの一部のウェルに一斉に挿入可能に設けられ、前記各ノズルヘッドに設けられた全ノズルを一斉に挿入可能に位置させる工程を有するマイクロプレート処理方法に適用することができる。
【0049】
第15の発明は、前記ノズル内部に磁場を及ぼす工程および磁場を除去する工程は、前記行方向または列方向に沿って伸び1若しくは2のノズル行またはノズル列と隣接可能な1または2以上の棒状の櫛歯部材と、前記ノズルに対して相対的に移動可能に設けられ1または2以上の該櫛歯部材の一端で連結した支持部材と、隣接する1または2の前記ノズル行またはノズル列に属する各ノズルに対応する位置において前記各櫛歯部材に設けた磁石とを有する磁力手段を用いて、前記櫛歯部材を前記ノズルに対して接近させることによって磁場を各ノズルに及ぼし、該櫛歯部材を前記ノズルに対して離間させることによって磁場を各ノズルから除去するマイクロプレート分割処理方法である。
【0050】
第16の発明は、前記ノズルヘッドを前記マイクロプレートに対して相対的に移動させて前記ノズルヘッドに設けられた前記全ノズルを一斉に挿入可能に位置させた後、前記ノズルヘッドの前記全ノズルの先端を、前記マイクロプレートの前記ウェル内に一斉に挿入させて処理を行い、該ウェルから前記ノズルを一斉に抜出する工程を有するマイクロプレート分割処理方法である。
【0051】
ここで、「処理」は、例えば、吸引または吐出する動作、磁場をかけることによる磁性粒子のノズル内壁への吸着による分離、吸引および吐出を繰り返すことによる攪拌、洗浄液の吸引および吐出を繰り返すことによる洗浄、光検出を行うことによる吸引または吐出後の液体測定、または、磁場を除去して吸引および吐出を繰り返すことによる磁性粒子の再懸濁を含む。
【0052】
第17の発明は、前記ノズルヘッドに設けられた前記ノズルは、装着用ノズルと、装着用ノズルに着脱可能に装着された分注チップとを有し、前記分注チップを前記ノズルヘッドに設けられた前記装着用ノズルの全ておよびその一部に対して、装着させる工程または脱着させる工程を有するマイクロプレート分割処理方法である。
【0053】
「装着」は、例えば、前記ノズルヘッドを、分注チップを行列状に配列して収容可能なチップ収容部に向けて下降させ、装着用ノズルの全部または一部に前記分注チップの上端に設けた装着用開口部に挿入かつ嵌合させることによって行う。「脱着」は、例えば、前記ノズルヘッドに設けられたチップ脱着部としてのしごき用板、しごき用パイプ等を各装着用ノズルの軸線方向に沿って下降させて、該装着用ノズルに装着された分注チップの全てをまたはその一部をこそぎ落とすことによって行う。
【0054】
第18の発明は、前記各ノズル近傍を通り該各ノズルと交差しない直線または曲線に沿って各ノズルに対して光検出部を相対的に順次接近させることによって、前記ノズル内部の液体の状態を順次検出する工程を有するマイクロプレート分割処理方法である。
【発明の効果】
【0055】
第1の発明または第12の発明によれば、検体数が小さくて、マイクロプレートの全ウェル数やマイクロプレートの行数または列数を必要としない場合であっても、該検体数に応じた行数または列数およびその行間隔または列間隔をもつマイクロプレートおよび該マイクロプレートに適合したノズルヘッドを用いるのではなく、例えば、標準規格マイクロプレート、および、該マイクロプレートの一部のウェルに一斉に挿入可能なノズルが行列状に配列されたノズルヘッド、または部分的標準規格マイクロプレートを用いることで、新たな種類または型のマイクロプレートを使用せずに、安価かつ簡単に利用することができる。また、1のマイクロプレートを種々の処理対象数または試薬数に対して使用することができるので、マイクロプレートの汎用性を高めることができる。
【0056】
また、1のマイクロプレートに対して処理に必要な工程数または使用する試薬の種類数に応じて全ウェルを対応する複数個の領域(後述するウェル部分行列に相当)に分割し、各領域を前記ノズルヘッドを用いて一斉に処理可能とすることで、1のマイクロプレートを用いて処理を完了することができる。したがって、用いるマイクロプレートの占める面積、すなわち作業面積を削減することができる。
【0057】
また、ノズルヘッドにはノズルを行列状に配列しているので、必要な試薬を収容する容器としては、1行状または1列状にウェルを配列した容器を用いる場合に比較して、ウェル数が小さくまたは各ウェルが小容量の容器であっても、行列状の容器は安定性が高く扱いやすい。また、全ノズル、または該当するウェルが行列状に配列されることで、その行列に属する要素の相互間の距離が比較的小さく、すなわち、分散性が比較的小さくコンパクトに集中しているので、特に、温度制御を必須とする処理においては、ノズル、ウェル、または恒温装置等の保温性が高く、外界からの影響を遮断することができて扱いやすい。
【0058】
第2の発明または第13の発明によれば、1のマイクロプレートが、ノズルヘッドに設けられた全ノズルを受け入れることができる2以上のウェル部分行列を有しているので、前述した効果を奏する他、1のマイクロプレート内において、2種類以上の試薬等を収容して処理を行うことができるので、マイクロプレートごとに試薬を収容して処理を行う場合に比較して、作業面積を増大させることなく、より多くの種類の試薬等を扱うことができる。特に、1のマイクロプレートに対して、処理に必要な工程数または使用する試薬の種類数に応じて全ウェルを該当する複数のウェル部分行列に分割可能であるならば、各ウェル部分行列を前記ノズルヘッドを用いて一斉に処理可能とすることで、一のマイクロプレートを用いて処理を完了することができる。
【0059】
また、前記マイクロプレートに複数存在するウェル部分行列によって、1のノズルが2以上のウェルに対応することができるので、各工程において1のウェルが扱う容量の2倍以上の容量の液体を1のノズルが1のマイクロプレートに対して扱うことができる。
【0060】
前記マイクロプレートに複数存在するウェル部分行列への前記ノズルによる一斉の挿入、吸引、吐出、抜出を繰り返すことで、1のマイクロプレートにおいても、複数種類の溶液等を用いた複数の工程に対応することができることになる。したがって、作業領域を拡大することなく複数の工程を実行することができる。
【0061】
さらに、2以上のウェル部分行列は、1のマイクロプレート内にその一部として設けられ、相互に該マイクロプレートの行間隔または列間隔を隔てた距離しか離れていないので、ウェル部分行列ごとに、それに等しい行数および列数のウェルをもつ別個の独立したマイクロプレートとして配列するよりも安定性が高く、相互に密接しているので、空間的に効率良く配列することができる。
【0062】
また、1のノズルヘッドが一度に扱うことができるウェルが1のマイクロプレート内に属する相互に重複することのない各ウェル部分行列であり、かつ、各ウェル部分行列間の距離は、マイクロプレートの隣接するウェル間の距離に相当するだけしか離れていないので、各ウェル部分行列ごとに、1の処理に必要な溶液等を各々収容することで、1の処理を完結するまでのノズルヘッドの移動距離が短くて済み、迅速かつ効率的に処理を行うことができる。
【0063】
第3の発明または第14の発明によれば、前記ノズル内に磁場を及ぼすことができるので、前記マイクロプレートのウェル内に磁性粒子を懸濁させたものを用いて、該ノズルの内壁に磁性粒子を吸着させて分離、攪拌、洗浄、移送等の処理を行うことができるので、液体の吸引または吐出のみならず多様な処理を行なうことができる。また磁石をノズルに対して接離可能に設けることによって、強力な磁場をノズルに及ぼすことができるとともに、強力な磁石をノズルから遠ざけることによって、電磁石を消磁したとしても残るおそれがある残留磁気を完全に除去し、信頼性の高い処理を行うことができる。
【0064】
また、磁石は、前記各ノズルと交差せずにその周辺を通過する直線または曲線、例えば各ノズルに対してねじれの位置にある直線または曲線に沿って移動するものである。したがって、磁石の移動がノズルの存在によって妨害されないので、磁場を及ぼしかつ除去することを可能とするため、磁石が持つ磁場の有効距離に基づく磁石の移動距離を考慮したノズル間の間隔を確保する必要がなく、磁石が通過することができる磁石の大きさに基づく隙間をノズル間に確保するだけで足りる。したがって、磁力を内部に及ぼすことができるノズルを高密度に集積化することができる。
【0065】
第4の発明または第15の発明によれば、第3の発明または第14の発明が奏する効果の他に、磁石が前記ノズルの行間隔または列間隔で配置された櫛歯部材を前記ノズルに対して相対的に移動させることによって、行列状に配列された各ノズルに対し、磁石を一斉に接近しまたは離間することで、機構的に簡単な構造、かつ単純な動作で、容易かつ確実に各ノズルに一斉に磁場を及ぼしかつ除去することができる。
【0066】
第5の発明または第16の発明によれば、1のマイクロプレートに属する複数の部分行列に対して前記ノズルヘッドの全ノズルの先端の挿入および抜出の動作を繰り返すことで、1のマイクロプレートを用いて、複数の処理工程からなる一連の処理を、1のノズルヘッドを用いて連続的に一貫して実行することができるので、作業面積あたりの処理の効率性が高く、または作業効率を高めるとともに、信頼性が高く、また管理しやすい。
【0067】
第6の発明によれば、処理の各工程で必要とする溶液または懸濁液が、ノズルヘッドの移動経路に沿って、各工程の順序に応じて収容されている。したがって、ノズルヘッドの移動距離が、1のマイクロプレート内に限られるので作業効率が高い。また、1のノズルヘッドを用いて連続的に一貫して1のマイクロプレート内で実行することができるので、信頼性が高くまた管理しやすい。
【0068】
第7の発明または第17の発明によれば、ノズルヘッドに対して、手動ではなく自動的に、マイクロプレートに配列されたウェルの個数、または、試薬槽等の容器の大きさに応じた必要な本数の分注チップを装着および/または脱着することができるので汎用性または多様性があり、また、クロスコンタミネーションを確実に防止しながら、各種処理を一貫して自動化することができる。特に、使用する試薬の容量が小さい場合には、試薬槽の開口部の面積を小さくして、分注チップの挿入本数を制限し、液の深さを確保することによって吸引および吐出を容易にすることができる。
【0069】
第8の発明または第18の発明によれば、光検出部を各ノズルに個々に設けるのではなく、ノズルと交差しない直線または曲線に沿って順次接近させて、各ノズル内部の個々の液体の状態を検出することができる。したがって、各ノズル周辺に個々に光検出部を設けることなく、かつ、光の影響が及ばない距離をノズル間に確保する必要がないのでノズル間に光検出部が移動可能な空隙を確保するだけで、ノズルの集積化に影響を与えることなく安価に、かつ、高い定量性をもって信頼性の高い処理を行うことができる。
【0070】
第9の発明によれば、第8の発明または第18の発明が奏する効果の他に、光検出部が設けられた前記櫛歯部材を前記ノズルに対して相対的に移動させることで、行列状に配置された各ノズルに対し、光検出部を順次接近しかつ離間させることで、機構的に簡単な構造、かつ単純な動作で、容易かつ確実に各ノズル内部を順次測定することができる。
【0071】
第10の発明によれば、個々にノズルを設ける場合に比較して、ノズルを集積することによって、ノズル間を1枚の隔壁のみを介して相互に仕切ることができるので、ノズル自体の肉厚およびノズル間の間隙を必要とせず、ノズルを高密度に隙間なく配置することになり、各ノズルに貯溜することができる単位作業面積当りの有効容積を拡大することになる。したがって、ノズルの軸方向の長さを短くすることができ、ノズルの容積を同一とした場合に、全体としてノズルをコンパクトに形成することができる。また、2以上のノズルを定められた位置に確実に配置することができることになり、信頼性の高い処理を行うことができる。
【0072】
第11の発明によれば、個々に分注チップを装着用ノズルに装着する場合に比較して、分注チップを集積することによって、分注チップ間を1枚の隔壁のみを介して相互に仕切ることができるので、分注チップ自体の肉厚および分注チップ間の間隙を必要とせず、分注チップを高密度に隙間なく配置することになり、各分注チップに貯溜することができる単位作業面積当りの有効容積を拡大することになる。したがって、分注チップの軸方向の長さを短くすることができ、分注チップの容積を同一とした場合に、全体として分注チップをコンパクトに形成することができる。例えば、96ウェルの標準規格マイクロプレートに対応する単独の分注チップの液体の貯溜部の内径を約6mmとした場合、貯溜部の長さが88.5mmを要するが、集積化を行うと無駄なチップ間の空隙がないので、例えば、丸孔で形成された区域の内壁の径を約8mmとした場合、貯溜部の長さは49.8mmで済むことになる。また、分注チップ間の間隔を一定にし、分注チップの軸心を相互に平行に確実に配列することができることになり、信頼性の高いノズルヘッドを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
続いて、図面に基づいて、本発明の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置およびマイクロプレート分割処理方法について説明する。
【0074】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置10のノズルヘッド12の部分を模式的に示す斜視図である。該マイクロプレート分割処理装置10は、複数のウェルが行列状に配列された12行×8列で、9mmの行間隔(=列間隔)、すなわち、標準規格行間隔(=標準規格列間隔)をもつ96ウェルの標準規格マイクロプレート(図示せず)に等しい行間隔および列間隔をもつ、行列状、ここでは4行×4列に配列された16本のノズルとしての、装着用ノズル(図示せず)および該装着用ノズルに装着された分注チップ14が配列されたノズルヘッド12と、前記ノズルヘッド12に設けられ該ノズルを介して気体の吸引吐出を行う吸引吐出機構(16,18,28,30,32,34,36)と、前記標準規格マイクロプレートと前記ノズルヘッド12との間を相対的に移動可能とする移動手段(一部のみ図示)とを有するものである。
【0075】
さらに、前記ノズルヘッド12の周辺には、前記分注チップ14の内部に磁場を及ぼすための磁力手段としての櫛歯状磁石20と、前記分注チップ14の内部の液体の状態を検出する光検出手段としての櫛歯状光検出部22と、前記分注チップ14とその下方のマイクロプレートとの間に挿入されて、前記分注チップ14からの液垂れを防止するトレイ24とを有している。
【0076】
前記吸引吐出機構(16,18,28,30,32,34,36)は、前記装着用ノズル(図示せず)および装着された前記分注チップ14と各々連通し、ノズル配列用プレート26から下方向に突出するように前記行列状に配列された16本のシリンダ16、該シリンダ16内に摺動可能に挿入されたプランジャ18と、該16本のプランジャ18と連結したプランジャ駆動用プレート28と、該プランジャ駆動用プレート28と接続して、該プランジャ駆動用プレート28を、したがって各プランジャ18を一斉に上下方向(Z軸方向)に沿って駆動する2本の柱状のアクチュエータ30と、該アクチュエータ30と連結し、該アクチュエータ30を上下方向に駆動するためにボール螺子34と螺合し、ボール螺子34の回転によって上下方向に並進移動するナット部32と、吸引吐出用モータ36によって回転駆動する前記ボール螺子34とを有する。これらの吸引吐出機構を覆うように設けられ、前記吸引吐出用モータ36、および前記ノズル配列用プレート26を支持し、かつ前記アクチュエータ30を上下動可能に支持するのは、略箱状に形成されたノズルヘッド支持枠37である。
【0077】
該ノズルヘッド支持枠37は、上端に設けられた天板38と、図面上、左右の側面を覆う上下方向に縦長状の側板39,40と、後側面を覆う上下方向に縦長状の後板41と、下側のノズルヘッド12の通過経路に面するように取り付けられた左右方向に横長状の下側板43とを有する。また、前記側板40には、縦孔42が設けられ、該縦孔42を貫通するように前記ノズルヘッド12を前記ノズルヘッド支持枠37に対して、上下方向に移動させるZ軸移動機構と連結する連結部材(図示せず)が設けられている。
【0078】
図2は、図1に示した前記マイクロプレート分割処理装置10のノズルヘッド12が位置する部分を詳細に示すものである。前記連結部材は、前記Z軸移動機構として、前記ノズルヘッド支持枠37に設けられたプレート80に回転可能に取り付けられたボール螺子78および該ボール螺子78に螺合するナット部(図示せず)と連結している。
【0079】
該ノズルヘッド支持枠37は、ノズルヘッド12と連結するZ軸移動機構を支持するが、それ自体はZ軸方向には移動せず、X軸移動機構(X軸は前記ノズルヘッド12のノズルの行方向に相当)としてのX軸方向に沿った軸心をもつように設けられたボール螺子74およびこれに螺合するナット部76と連結している。さらに、これらのノズルヘッド支持枠37、前記Z軸移動機構および前記X軸移動機構は、Y軸方向に沿った軸心を持つように設けられた図示しないY軸移動機構(Y軸は前記ノズルヘッド12のノズルの列方向に相当)に取り付けられ、これらZ軸移動機構、X軸移動機構およびY軸移動機構は、前記移動手段に相当する。
【0080】
図2に示すように、前記分注チップ14は、前記装着用ノズル(図示せず)に装着しまたは装着可能な装着用開口部を有する太径部44、先端に設けた前記気体の吸引吐出によって液体の入出が可能な口部48を有する細径部46と、略漏斗状の移行部50とを有する。
【0081】
図2および図3に示すように、前記磁力手段は、櫛歯状磁石20であって、前記ノズルとしての分注チップ14に対して相対的に移動可能となるように設けられるとともに、前記X軸方向(または行方向に相当)に沿って伸びる1または2の分注チップ(ノズル)行と隣接可能であって列方向に沿って配列された3本の棒状の櫛歯部材84と、行方向に沿って移動可能であって3本の櫛歯部材84の一端で連結した支持部材52と、隣接する1または2の前記分注チップ列に属する各分注チップ14に対応する位置において前記各櫛歯部材84に設けた複数(この例では4)個の永久磁石58が、前記装着用ノズル(図示せず)に装着された分注チップ14間に対応する行間隔で非磁性部材82を挟みながら、3本の櫛歯部材84に各々配列されている。
【0082】
これによって、前記各永久磁石58は、前記各分注チップ14に対して接離可能に設けられていることになり、前記櫛歯部材84は、前記各分注チップ14と交差しない直線に沿って移動可能ということになる。前記櫛歯部材84を前記分注チップ14に接近させて磁力を及ぼす場合には、その3本の内の両端の2本は、4つの前記分注チップ行の外側に隣接して行方向に沿って位置し、中央の1本は、前記ノズルヘッド12の分注チップ14行の中央の隙間に挿入されて行方向に沿って位置する。したがって、磁場を分注チップに及ぼす場合、すなわち、分注チップ14に接近した状態では、2つの分注チップ行ごとに前記櫛歯部材84によって挟まれることになる。
【0083】
前記支持部材52は、ガイド部材54と連結し、該ガイド部材54は、前記ノズルヘッド支持枠37の前記下側板43に、X軸方向(行方向)に沿って敷設されたガイドレール56と係合して、該ガイドレール56に沿って行方向に移動可能に設けられている。
【0084】
図2または図3には、前記櫛歯状光検出部22を設ける。該櫛歯状光検出部22は、前記ノズルに対して相対的に移動可能となるように前記X軸方向(行方向)に沿って伸び1または2の分注チップ14行と隣接可能であってY軸方向(列方向)に沿って配列された5本の棒状の前記櫛歯部材62と、前記5本の該櫛歯部材62の一端で連結した支持部材67と、隣接する1の前記分注チップ行に属する各分注チップ14内を光学的に順次検出するために前記各櫛歯部材62の他端近傍にある孔60に光検出部としての光ファイバ64の先端部を設けたものとを有する。1の分注チップ14行を挟むように設けられた両側の櫛歯部材62の内の一方の櫛歯部材62の孔60には、発光部としての光ファイバ64の先端が設けられ、他方の櫛歯部材の孔60には、受光部としての光ファイバ64の先端が設けられ、発光部としての光ファイバ64から照射された光が前記分注チップ14を透過する光量を検出する。
【0085】
前記光ファイバ64は、前記孔60から受光した光を光電子増倍管(図示せず)等の光電素子を有する解析部にまで伝達するものである。
【0086】
該櫛歯状光検出部22は、ガイド部材66と連結し、該ガイド部材66は、前記ノズルヘッド支持枠37の前記下側板43に、X軸方向(行方向)に沿って敷設されたガイドレール68と係合して、該ガイドレール68に沿って行方向に移動可能に設けられている。
【0087】
前記トレイ24は、ガイド部材70と連結し、該ガイド部材70は、前記ノズルヘッド支持枠37の前記下側板43に、X軸方向に沿って敷設されたガイドレール72と係合して、該ガイドレール72に沿ってX軸方向に移動可能に設けられて、前記分注チップ14の先端の前記口部48の下方に移動することによって、前記口部48からの液垂れを受けることによって液垂れを防止することができる。
【0088】
図4は、前記マイクロプレート分割処理装置10の全体を示す平面図である。
ここで、前記ノズルヘッド12が、種々の容器群が設けられたステージ85上に設置された状態を示す。該ステージ85には、前記ノズルヘッド12に配列された各分注チップ14の先端が一斉に挿入可能で内部に液体を収容可能な4行×4列の行列状であって、行間隔および列間隔が前記標準規格行間隔および標準規格列間隔の9mmをもつ16個の区画に仕切られた容器であって、ペルチェ素子等の冷却手段および加熱手段を各々有する恒温インキュベーション用の冷却機86および加熱機88を有する。該冷却機86および加熱機88は、前記部分的標準規格マイクロプレートに相当する。また、該ステージ85には、前記ノズルヘッド12に配列された全分注チップ14が一斉に挿入可能な前記行間隔および列間隔をもって4行×4列の行列状に配置されたホールを有するPCRの増幅用のサーマルサイキュラー90を有する。
【0089】
さらに、前記ステージ85には、16人の検体を収容する4行×4列で9mmの行間隔および列間隔をもつ状列状の検体収容容器92と、蒸留水A,磁性粒子懸濁液B、および処理に必要な試薬Cから試薬Hまでを各々貯留した試薬槽を収容した試薬槽収容ラック94と、本実施の形態に係る分割処理が行われる12行×8列で、行間隔および列間隔(=標準規格行間隔および標準規格列間隔に相当)が9mmの96個の約2000μリットルの容量をもつディープ・ウェル97を有する標準規格マイクロプレート96と、12行×8列の96本の分注チップ14を収容可能な行間隔および列間隔が9mmの標準規格のチップ収容部98と、前記ノズルヘッド12から脱着させた使用済みの分注チップ14を外部に排出して除去する廃棄チップシュート102と、分注チップ14から吐出された廃液を集める廃棄用ロート104とを有する。前記検体収容容器92は、前記部分的標準規格マイクロプレートに相当する。前記標準規格マイクロプレート96は、前記ノズルヘッド12に設けられた全分注チップ14の先端が一斉に挿入可能な4行×4列の相互に重複しないウェルからなる6つのウェル部分行列96a〜96fを有している。
【0090】
なお、図示していないが、本実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置10には、前記吸引吐出機構、移動手段、磁力手段、または光検出手段の動作を制御する制御部を有しており、該制御部は、例えば、CPUおよび指示に応じた動作を行うためのプログラムやデータが格納されたメモリを有する情報処理装置、動作状態、指示命令データ、入力データまたは処理結果データを表示するディスプレイ等による表示部、指示命令またはデータの入力を行うキーボード、マウス等からなる入力手段、および、処理結果データを出力するプリンタ、外部メモリまたは通信手段等の出力手段を有している。
【0091】
続いて、図4に基づいて、該第1の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置10の動作について、前記検体収容容器92に収容された16人の被験者から採取した血液等の16検体からDNA、mRNA、rRNA等の核酸を抽出する処理を例に挙げて説明する。
【0092】
前記チップ収容部98の所定位置に、前記ノズルヘッド12の装着用ノズルを移動させ、下降することで一斉に装着用ノズルに新しい所定数の分注チップ14を装着させた後、該ノズルヘッド12を前記試薬槽収容ラック94に移動させて、該試薬槽収容ラック94の所定の試薬槽から前記ノズルヘッド12に装着した分注チップ14を用いて、前記試薬C〜試薬Hを吸引して、各ウェル部分行列96a〜96fに属する16個のウェル内に所定量を予め分注しておく。ここで、前記「所定数」とは、前記ノズルヘッド12に装着される分注チップ14の個数であって、前記試薬槽収容ラック94に収容されている試薬槽の大きさに基づき、試薬Bないし試薬Hについては、ノズルヘッド12の1行分のノズル、すなわち4個であり、試薬Aおよび試薬Bについては、ノズルヘッド12の全ノズル、すなわち、4行×4列の16個である。
【0093】
前記標準規格マイクロプレート96の各ウェル部分行列96aには、細胞溶解を行うためのプロテナーゼK(1-40mg/ml)(試薬C) を、ウェル部分行列96bには、細胞溶解を行うためのグアニジンHCl(4-8M)およびDetergentsの溶解液(試薬D)を、ウェル部分行列96cおよびウェル部分行列96dには、アルコール(例えば、isopropyl アルコール、エタノール20-60%)(試薬E)、塩(例えば、0.5-2.5M CH3COONH4, 0.5-2.5M)(試薬F)、および水溶性ポリマー(例えば、PVA, PEG; 1-10wt %)(試薬G)の混合液を、ウェル部分行列96eには、1-10Mm Tris-HCl (pH 7-8)の解離液(試薬H)を収容し、ウェル部分行列96fは空にしておく。なお、試薬Aは、Nuclease-free水であり、試薬Bは、水酸基またはカルボキシル基等の官能基を表面に有する磁性粒子の懸濁液である。
【0094】
前記ノズルヘッド12を移動手段によって移動させて、前記検体収容容器92の4行×4列の各ウェルに一斉に挿入可能な位置におき、一斉に全分注チップ14を挿入して、前記16検体を一斉に吸引する。次に前記移動手段によってノズルヘッド12を移動させて前記標準規格マイクロプレート96のウェル部分行列96aの4行×4列の各ウェルに一斉に挿入可能な位置におき、一斉に全分注チップ14をウェル内に挿入させて検体を吐出させる。吸引吐出を繰り返すことで攪拌し、攪拌した懸濁液を前記分注チップ14内に吸引した後、ウェル部分行列96aから各分注チップ14を一斉に抜出する。
【0095】
次に、移動手段を用いて前記ノズルヘッド12をウェル部分行列96bの各ウェルに前記分注チップ14が挿入可能な状態に位置させ、一斉に全分注チップ14を該ウェル部分行列96bのウェル内に挿入させて、前記分注チップ14内に収容した前記懸濁液を吐出した後、吸引吐出を繰り返して攪拌し、検体に含まれる細胞の細胞壁を溶解させてDNA等を細胞内から液体中に抽出させる。
【0096】
次に、前記DNA等が含まれる懸濁液を前記分注チップ14内に吸引した状態で、ウェル部分行列96bから各分注チップ14を一斉に抜出し、移動手段を用いて前記ノズルヘッド12をウェル部分行列96cの各ウェルに前記分注チップ14が挿入可能な状態に位置させ、一斉に全分注チップ14を該ウェル部分行列96cのウェル内に挿入させて、前記分注チップ14内に収容された前記懸濁液を吐出し、前記混合液とDNA等とを攪拌した後、分注チップ14内に懸濁液を吸引することなく該ウェル部分行列96cから抜出し、該使用した分注チップ14を装着用ノズルから脱着させて前記チップ収容部98の所定位置に収容し、新たな分注チップ14を該装着用ノズルに装着した後、移動手段を用いて、前記試薬槽収容ラック94の試薬Bが収容されている試薬槽に移動し、前記分注チップ14を一斉に挿入させて、磁性粒子懸濁液を吸引する。該ノズルヘッド12は、前記ウェル部分行列96cにまで移動して、前記分注チップ14を一斉に各ウェルに挿入し、磁性粒子懸濁液を吐出した後、吸引吐出を繰り返すことで攪拌して、液中に含まれるDNA等を該磁性粒子に結合させる。
【0097】
前記分注チップ14が前記ウェル部分行列96cに挿入されて吸引吐出を行う際に、前記ノズルヘッド12のZ軸方向(上下方向)の位置は、前記分注チップ14の細径部46が、前記下側板43に設けられた前記櫛歯状磁石20の3本の前記櫛歯部材84と隣接する高さとなっている。そこで、前記櫛歯部材84を行方向(X軸方向)に沿って前進させて、前記櫛歯部材84に設けられた各永久磁石58を各分注チップ14に接近させることによって各分注チップ14内に磁場を及ぼす。
【0098】
すると、DNA等が結合した磁性粒子が、懸濁液の吸引吐出の際に前記分注チップ14の細径部46の内壁に磁場によって吸着して分離されることになる。次に、磁性粒子を吸着させた状態で、分注チップ14を前記ウェル部分行列96cから抜出し、前記移動手段によって、前記櫛歯状磁石20とともに、該ノズルヘッド12を前記ウェル部分行列96dにまで移動させ、前記分注チップ14を一斉に該ウェルに挿入し、該ウェル部分行列96dの各ウェル内に収容されている洗浄液の吸引吐出を繰り返す.その際、前記磁性粒子は、前記磁力手段による磁場によって前記分注チップ14の内壁に吸着させたままである。これによって、DNA等が結合している磁性粒子を洗浄し、磁性粒子に結合しているDNA等以外の夾雑物をウェル部分行列96dの各ウェル内に残留させる。
【0099】
次に、分注チップ14をその内壁に磁性粒子を吸着させたまま、該ウェル部分行列96dからウェル内に残留物を残したまま抜出し、ノズルヘッド12を前記磁力手段20とともに前記移動手段によって、ウェル部分行列96eにまで移動させ、前記分注チップ14を一斉に該ウェルに挿入し、前記磁力手段20による磁場を及ぼしたまま、該ウェル部分行列96eの各ウェルに収容されている解離液について、吸引吐出を繰り返し、磁性粒子に結合したDNAを磁性粒子から解離させて解離液中に含有させる。
【0100】
磁性粒子を吸着した分注チップ14が装着されたノズルヘッド12を移動させて、該分注チップ14をノズルヘッド12から脱着させた後、前記チップ収容部98にノズルヘッドを移動させ、新たな分注チップ14を装着する。該ノズルヘッド12を前記ウェル部分行列96eにまで移動して、一斉に前記分注チップ14を前記各ウェル内に挿入して前記DNAが含有する液を吸引し、例えば、PCRによる増幅のためにサーマルサイキュラー90に移動させて増幅等を行うことになる。または、冷却機86や加熱機88にまで移動させて、種々の処理が行われる。このようにして得られた生成物をウェル部分行列96fに収容する。したがって、1枚の前記標準規格マイクロプレート96によって、一連の処理を完結することができる。前記ノズルヘッド12の、この処理に対する移動経路は、ウェル部分行列96aからアルファベット順に順次ウェル部分行列96fまで辿る経路である。
【0101】
図5には、第2の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置100の容器群を示す。該マイクロプレート分割処理装置100は、ノズルヘッドとしては、前述した第1の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置10の4行×4列のノズルが配列されたノズルヘッド12を用いる。
【0102】
第2の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置100に係るステージ106には、前記ノズルヘッド12に配列された全分注チップ14の先端がその一部に一斉に挿入可能で内部に液体を収容可能であって、本実施の形態に係る分割処理が行われる12行×8列で、行間隔および列間隔(=標準規格行間隔および標準規格列間隔に相当)が9mmの96個の約2000μリットルの容量をもつディープ・ウェル109を有する反応用の6枚の標準規格マイクロプレート108と、12行×8列の96本の反応用の分注チップ14を収容可能な行間隔および列間隔が9mmの3枚の標準規格のチップ収容部110と、12行×8列の96本の試薬分注用の分注チップ14を収容可能な行間隔および列間隔が9mmの標準規格のチップ収容部111とを有する。
【0103】
さらに、該ステージ106には、前記ノズルヘッド12に配列された全分注チップ14の先端が一斉に挿入可能で内部に液体を収容可能な12行×8列の行列状であって、行間隔および列間隔が前記標準規格行間隔および標準規格列間隔の9mmを持つ96個のディープ・ウェルに仕切られた標準規格マイクロプレートであって、ペルチェ素子等を有する加熱機112と、前記ノズルヘッド12に配列された全分注チップ14の先端が一斉に挿入可能な前記行間隔および列間隔をもつ12行×8列の行列状に配列されたホールを有するサーマルサーキュラーからなる冷却機113と、試薬槽を収容する試薬槽ラック114と、検体を収容した96ウェルの標準規格マイクロプレート115と、廃棄した分注チップを外部に排出して除去する廃棄チップシュート116と、分注チップ14から吐出された廃液を集める排液用ロート118とを有する。
【0104】
図6は、第3の実施の形態に係る3種類のノズル120,144,150を示すものである。
図6(a)は、12行×8列で、行間隔および列間隔が9mm(標準規格行間隔および標準規格列間隔に相当)に等しい96個のウェルを有する標準規格マイクロプレートに対応するノズル120であって、そのノズルヘッドの装着用ノズル122に装着された場合の分注チップ124間の行間隔および列間隔も、9mmである。
【0105】
前記装着用ノズル122は、内部にプランジャ128が摺動可能に設けられたシリンダ126と、該シリンダ126の周囲に該シリンダ126の外径よりもやや大きな内径をもって嵌合するように設けられたパイプ132と、前記分注チップ124が装着される先端装着部130とを有する。
【0106】
前記分注チップ124は、前記装着用ノズル122の前記先端装着部130に装着しまたは装着可能な装着用開口部142を有する太径部134、先端に設けた前記気体の吸引吐出によって液体の入出が可能な口部138を有する細径部136、および略漏斗状の移行部140とを有する。また、太径部134の後端の外周面には、複数本の軸方向に沿った突条143が設けられている。
【0107】
前記パイプ132は、軸方向に沿って移動可能に設けられるとともに、該パイプ132の内径を、前記シリンダ126の外径よりも大きいが、前記分注チップ124の太径部134の外径または前記突条143の稜線までの差渡しよりも小さく形成することによって、前記分注チップ124を前記装着用ノズル122から脱着させるチップ脱着部として用いることができる。
【0108】
なお、図6(b)は、24行×16列で、行間隔および列間隔が4.5mm(標準規格行間隔および標準規格列間隔に相当)の384ウェルの標準規格マイクロプレート用のノズル144であって、装着用ノズル146および分注チップ148からなり、ノズルヘッドの装着用ノズル146に装着された分注チップ148間の行間隔および列間隔も4.5mmである。
【0109】
同様にして、図6(c)は、48行×32列で、行間隔および列間隔が2.25mm(標準規格行間隔および標準規格列間隔に相当)の1536ウェルの標準規格マイクロプレート用のノズル150であって、装着用ノズル152と、分注チップ154とからなり、ノズルヘッドの装着用ノズル152に分注チップ154を装着した場合の分注チップ154間の行間隔および列間隔も2.25mmである。
【0110】
図7は、12行×8列の行列状に配列された96個のウェルを有する標準規格マイクロプレートを分割処理するための4行×4列で、9mmの前記標準規格行間隔および列間隔をもって前記装着用ノズル122を配列したノズルヘッド156に装着されるべき分注チップ124、該分注チップ124に磁場を及ぼすための磁力手段としての櫛歯状磁石158、および、前記標準規格マイクロプレートの部分的標準規格マイクロプレート(すなわち、行間隔および列間隔が96個のウェルに対応する前記標準規格行間隔および標準規格列間隔に等しい)に相当する4行×4列の16個のウェル168を有するマイクロプレート166を示すものである。
【0111】
前記櫛歯状磁石158は、行方向に延び2つの分注チップ行と隣接可能であって列方向に沿って配列された2本の棒状の櫛歯部材160と、該櫛歯部材160をその一端で連結し、前記分注チップ124に対して前記行方向に相対的に移動可能に設けた支持部材162と、隣接する2の前記分注チップ行に属する各分注チップ124に対応する位置において前記各櫛歯部材160に設けた磁石164とを有する。したがって、図7(b)に示すように、前記分注チップ124に接近して磁場を及ぼす場合には、前記櫛歯部材160は、前記第1の分注チップ行と第2の分注チップ行との間の空隙と、第3の分注チップ行と第4の分注チップ行との間に挿入される。
【0112】
図8は、24行×16列で、行間隔および列間隔が4.5mm(前記個数に応じた標準規格行間隔および標準規格列間隔に相当)の384個のウェルの標準規格マイクロプレートに対し、12行×8列の前記装着用ノズル146を配列したノズルヘッド170に装着されるべき分注チップ148、該分注チップ148に磁場を及ぼすための磁力手段としての櫛歯状磁石172、および、前記標準規格マイクロプレートの部分的標準規格マイクロプレート(行間隔および列間隔は前記4.5mmの標準規格行間隔および標準規格列間隔に相当)に相当する12行×8列の96個のウェル182を有するマイクロプレート180を示すものである。
【0113】
前記櫛歯状磁石172は、行方向に伸びその両側で2本の分注チップ行と隣接することが可能となるように列方向に沿って配列した6本の棒状の櫛歯部材174と、6本の該櫛歯部材174をその一端で連結し、前記分注チップ148に対して前記行方向に相対的に移動可能に設けた支持部材178と、隣接する2本の前記分注チップ行に属する各分注チップ148に対応する位置において前記各櫛歯部材174に設けた磁石176とを有する。したがって、図8(b)に示すように、前記分注チップ148に接近して磁場を及ぼす場合には、前記櫛歯部材174は、前記第1の分注チップ行と第2の分注チップ行との間の空隙、第3の分注チップ行と第4の分注チップ行との間、…第11の分注チップ行と第12の分注チップ行との間の空隙に挿入される。
【0114】
図9には、第2の実施の形態に係る分注チップ124の脱着方式について説明する。チップ脱着部として、前記パイプ132を用いて、前記ノズルヘッド156の16本の装着用ノズル122に、装着された分注チップ124を脱着する動作を示している。
【0115】
図9(a)は、前記装着用ノズル122に分注チップ124が装着されている状態を示す。図9(b)において、前記パイプ132を下降させて、該パイプ132の下端が前記分注チップ124の上端の装着用開口部142の縁部と当接した状態でさらに下降させることによって、図9(c)に示すように、16本の前記分注チップ124を前記装着用ノズル122から一斉に脱着させる。
【0116】
図10には、第2の実施の形態に係る分注チップ124の他の脱着方式について説明する。
図10(a)に示すように、該方式を採用したノズルヘッド184では、4行×4列に配列した装着用ノズル123と、前記チップ脱着部としての該装着用ノズル123の先端装着部130の外径よりも大きく前記分注チップ124の装着用開口部の縁部の外径よりも小さい内径をもつ貫通孔187を4行×4列の行列状に配列した脱着用プレート186と、該脱着用プレート186を上方から該脱着用プレート186の4隅で支持するとともに前記分注チップ124の軸方向に沿って移動可能な4本の支柱188とを有し、前記装着用ノズル123は、前記脱着用プレート185の上方から前記貫通孔187に前記装着用ノズル123の前記先端装着部130を挿入させて貫通した状態で設け、前記貫通孔187を貫通した前記先端装着部130の先端に前記分注チップ124の装着用開口部142を嵌合させることで装着する。該装着用ノズル123には、シリンダ127には、移動可能なパイプ132は設けられていない。
【0117】
図10(b)に示すように、前記分注チップ124を前記装着用ノズル123から脱着する場合には、前記脱着用プレート186を前記分注チップ124の軸方向に沿って前記支柱188とともに下降させる。すると、前記貫通孔187の下面の縁部が前記分注チップ124の上端の装着用開口部142の縁部と当接した状態でさらに下降させることによって、図10(c)に示すように、16本の前記分注チップ124を前記装着用ノズル123から一斉に脱着させる。
【0118】
図11は、第4の実施の形態に係るノズルヘッド190を示す。図6(a)または図7に示した符号と同一の符号は同一のものを示すので説明を省略する。該ノズルヘッド190は、4行×4列の装着用ノズル129が行列状に配列され、該装着用ノズル129には、分注チップ124がその先端に装着されている。該装着用ノズル129は、内部にプランジャ128が摺動可能に設けられたシリンダ192の下側においてシリンダ192内部と連通するように管路194を設けて該装着用ノズル129の上部のプレート196に4行×4列の行列状に配置した対応する位置にある圧力センサ198と接続させている。これによって、前記分注チップ124、およびシリンダ192内の圧力の変化を検出することができる。これによって、液量不足、液の有無、吸引、吐出動作の正常、異常を判断することができ、信頼性の高い処理を行うことができる。
【0119】
図12は、本実施の形態に係るマイクロプレート分割処理の例を示す。
図12(a)は、12行×8列で、9mmの標準規格行間隔および標準規格列間隔をもつ96個のウェル202の標準規格マイクロプレート200、および、3行×3列で前記行間隔および列間隔をもつ9本のノズル205を行列状に配列したノズルヘッド204を有するものである。該標準規格マイクロプレート200は、3行×3列の9個のウェル202からなる6個のウェル部分行列206を有するとともに、3行×2列の6個のウェル202からなる3個のウェル群を有する。
【0120】
図12(b)は、前記標準規格マイクロプレート200、および、3行×4列の12本のノズル205を行列状に配列したノズルヘッド208を有するものである。該標準規格マイクロプレート200は、3行×4列の12個のウェル202からなる6個のウェル部分行列209によって前記標準規格マイクロプレート200の全ウェル202が分割される。
【0121】
図12(c)は、前記標準規格マイクロプレート200、および、4行×4列の16本のノズル205を行列状に配列したノズルヘッド210を有するものである。該標準規格マイクロプレート200は、4行×4列の16個のウェル202からなる6個のウェル部分行列211によって前記標準規格マイクロプレート200の全ウェル202が分割される。
【0122】
図12(d)は、前記標準規格マイクロプレート200,および、5行×5列の25本のノズル205を行列状に配列したノズルヘッド212を有するものである。該標準規格マイクロプレート200は、5行×5列の25個のウェル202からなる2個のウェル部分行列213を有するとともに、2行×5列の10個のウェル202からなるウェル群、2行×3列の6個のウェル202からなるウェル群、5行×3列の15個のウェル202からなる2個のウェル群を有する。
【0123】
図12(e)は、前記標準規格マイクロプレート200、および、6行×4列の24本のノズル205を行列状に配列したノズルヘッド215を有するものである。該標準規格マイクロプレート200は、4行×6列の24個のウェル202からなる4個のウェル部分行列216によって前記標準規格マイクロプレート200の全ウェル202が分割される。
【0124】
図12(f)は、前記標準規格マイクロプレート200、および、6行×8列の48本のノズル205を行列状に配列したノズルヘッド218を有するものである。該標準規格マイクロプレート200は、6行×8列の48個のウェル202からなる2個のウェル部分行列220によって前記標準規格マイクロプレート200の全ウェル202が分割される。
【0125】
図13は、第5の実施の形態に係るノズルヘッド223を示すものである。該ノズルヘッド223は、12行×8列で、9mmの標準規格行間隔および標準規格列間隔を持つ96ウェルの標準規格マイクロプレートに対応するものである。該ノズルヘッド223は4行×4列で9mmの行間隔および列間隔をもつ行列状に配列された16本の分注チップが一体として集積した分注チップ集積体226と、4行×4列で前記行間隔および列間隔を持って行列状に配列された16本の装着用ノズルが一体に集積した装着用ノズル集積体、および該装着用ノズル集積体の各装着用ノズルと連通する16本の吸引吐出要素231が4行×4列で前記行間隔および列間隔をもって行列状に配列され一体に集積された吸引吐出要素集積体が合体した吸引吐出機構付装着用ノズル集積体224とを有する。
【0126】
前記分注チップ集積体226は、その後端開口面227において前記吸引吐出要素231と各々接続し4行×4列で9mmの前記行間隔および列間隔をもった前記行列状に配列された16個の貯留区域244に格子状に壁板245によって仕切られ、内部に液体を貯溜可能な貯溜集積体236と、該貯溜集積体236の各貯溜区域244と略漏斗状の移行部242を介して連通し、前記行列状に配列された液体の吸引吐出が行われる16個の口部240をその先端に有する4行×4列で9mmの前記行間隔および列間隔を持った行列状に下方に突出するように配列され前記貯溜区域244よりも細く形成された16本の細管238を有する。前記貯溜集積体236の向い合った2つの外側面の上側には、水平方向に沿って伸びかつ外方向に突出した突条246が各々設けられている。前記後端開口面227は、前記各分注チップの貯溜区域244の後端開口部が行列状に配列されている。
【0127】
前記吸引吐出機構付装着用ノズル集積体224は、その先端開口面229において、前記分注チップ集積体226の後端開口面227と接続する。該吸引吐出機構付装着用ノズル集積体224は、略直方体のブロック228に穿設された4行×4列に配列された円筒状の内壁面を有する16個の縦孔230と、該各縦孔230内に摺動可能に設けられた4行×4列に配列された16本のプランジャ232と、16本の前記プランジャ232の上端で連結して上下動可能に設けられたプレート233とを有し、1の前記縦孔230および1の前記プランジャ232は前記吸引吐出要素231に相当する。前記ブロック228の向い合った2つの外側面の下側には、前記分注チップ集積体226を該吸引吐出機構付装着用ノズル集積体224に装着するために、前記突条246と係合して連結する断面L字状の連結具234が軸支されている。
【0128】
図13(b)は、前記吸引吐出機構付装着用ノズル集積体224を先端開口面229側から見た図である。該図に示すように前記装着用ノズル250が設けられ、前記プランジャ232が摺動可能に設けられている縦孔230の内径よりも小さい内径をもつ。該先端開口面229には、前記格子状に配列された前記壁板245が挿入可能な格子状に形成された溝248が設けられている。
【0129】
図14は、前記吸引吐出機構付装着用ノズル集積体224および前記分注チップ集積体226の断面および装着する場合の動作を示すものである。
【0130】
図14(a)に示すように、前記溝248内には、該溝248内に挿入された前記壁板245との間の水密性および気密性を保つためのゴム製のパッキン249が前記溝248内に埋め込まれている。符号252は、前記縦孔230の内壁面に沿って摺動するプランジャ232の先端部である。
【0131】
図14(b)、図14(c)に示すように、前記吸引吐出機構付装着用ノズル集積体224に、前記分注チップ集積体226を装着するには、前記分注チップ集積体226の格子状に配列された前記壁板245の上端を、やはり格子状に配列された前記溝248に挿入させ、前記パッキン249に上端を当接させる。次に、前記連結具234を軸235の周りに四分の1回転させて、該連結具234の先端部を前記突条246と係合させることによって前記分注チップ集積体226を前記吸引吐出機構付装着用ノズル集積体224に装着させる。
【0132】
以上説明した各実施の形態は、本発明をより良く理解するために具体的に説明したものであって、別形態を制限するものではない。したがって、発明の主旨を変更しない範囲で変更可能である。例えば、ノズルとして、ノズルに装着された分注チップの場合についてのみ説明したが、これに限られることなく、分注チップが装着されないノズルを用いても良く、また、吸引吐出機構としてシリンダを用いた場合についてのみ説明したが、壁面で囲まれた内部に液体および気体を収容可能であって、その壁面の全内表面積を実質的に変えることなく所定の変形が可能な変形壁面を前記壁面の一部に有する収容部および該収容部と連通し該変形壁面の変形による前記内部の膨張および収縮によって吸引吐出される液体が流入流出可能な口部を有するようなべローズ式分注チップを用いるようにして、該分注チップを変形させる機構とともに用いるようにしても良い。
【0133】
また、以上の説明では、1台のノズルヘッドのみを用いて処理を行う場合について説明したが、該場合に限られず、複数台ノズルヘッドを並行して用いることもできる。さらに、以上の説明においては、96ウェルの標準規格マイクロプレートを用いた場合について主として説明したが、該マイクロプレートの場合に限られるわけではなく、種々の規格をもつマイクロプレートに対応することができる。また、処理例として、核酸抽出の処理について簡単に説明したが、該処理に限定されるわけではなく、例えば、mRNAを抽出、精製した後に逆転写によりcDNAを合成し、精製した後にcRNAを合成して蛍光標識化するような処理等、種々の処理に用いることができる。なお、「行」と「列」とは便宜的なものであって、取り替えて適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明に係るマイクロプレート分割処理装置およびマイクロプレート分割処理方法は、種々の溶液の処理が要求される分野、例えば、工業分野、食品、農産、水産加工等の農業分野、製薬分野、衛生、保険、免疫、疾病、遺伝等を扱う医療分野、化学若しくは生物学等の分野等、あらゆる分野に関係するものである。本発明は、特に、多数の対象に対して、並行して多数の試薬や物質を用いた一連の処理を所定の順序で連続的に実行する場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置のノズルヘッドおよびその周辺を示す斜視図である。
【図2】図1に示したマイクロプレート分割処理装置の一部拡大斜視図である。
【図3】図2に示したマイクロプレート分割処理装置の動作説明図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置の全体平面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置の容器群を示す平面図である。
【図6】本発明の第3、第4および第5の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置に用いるノズルを示す斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置のノズルヘッド部分を示す斜視図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置のノズルヘッド部分を示す斜視図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置の脱着方式を示す斜視図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置の脱着方式を示す斜視図である。
【図11】本発明の第7の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置のノズルヘッド部分を示す斜視図である。
【図12】本発明の種々のマイクロプレート分割処理装置のウェル部分行列およびノズルヘッドを示す平面図である。
【図13】本発明の第8の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置のノズルヘッドを示す斜視図である。
【図14】本発明の第8の実施の形態に係るマイクロプレート分割処理装置のノルヘッドを示す断面図である。
【符号の説明】
【0136】
10,100 マイクロプレート分割処理装置
12,156,170,184,190,223 ノズルヘッド
14,124,148,154 分注チップ
16 シリンダ
20 櫛歯状磁石(磁力手段)
22 櫛歯状光検出(光検出手段)
96,108 標準規格マイクロプレート(ディープ・ウェル)
96aから96f ウェル部分行列
97 ディープ・ウェル
200 標準規格マイクロプレート
120,144,150 ノズル
122,123,129,146,152 装着用ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウェルが行列状に配列された所定マイクロプレートと、複数のノズルが行列状に配列された1または2以上のノズルヘッドと、該ノズルを介して気体の吸引吐出を行う吸引吐出機構と、前記マイクロプレートとノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動手段と、を有するとともに、
前記各ノズルヘッドに設けられた全ノズルの先端は、前記マイクロプレートの一部のウェルに一斉に挿入可能に設けられ、配列された前記ノズルの行間隔および列間隔は、配列された前記ウェルの行間隔および列間隔に各々等しく設けられたマイクロプレート分割処理装置。
【請求項2】
前記マイクロプレートは、前記ノズルヘッドに設けられた全ノズルの先端が一斉に挿入可能でかつ相互にウェルが重複しない複数のウェル部分行列を含有する請求項1に記載のマイクロプレート分割処理装置。
【請求項3】
前記ノズルヘッドに設けられた各ノズルの内部に一斉に磁場を及ぼしかつ除去することが可能となるように、前記各ノズル近傍を通り該各ノズルと交差しない直線または曲線に沿って各ノズルに対し相対的に接離可能となるように設けた磁石を有する磁力手段が設けられた請求項1または請求項2のいずれかに記載のマイクロプレート分割処理装置。
【請求項4】
前記磁力手段は、前記行方向または列方向に沿って伸び1若しくは2のノズル行またはノズル列と隣接可能であって各々列方向または行方向に沿って配列された1または2以上の棒状の櫛歯部材と、前記ノズルに対して相対的に移動可能に設けられ1または2以上の該櫛歯部材の一端で連結した支持部材と、隣接する1または2の前記ノズル行またはノズル列に属する各ノズルに対応する位置において前記各櫛歯部材に設けた磁石とを有する請求項3に記載のマイクロプレート分割処理装置。
【請求項5】
制御部をさらに有し、該制御部は、前記移動手段に対して、前記ノズルヘッドと前記マイクロプレートとの間で相対的に移動させることによって、前記ノズルヘッドに設けられた全ノズルの先端が前記マイクロプレートの1の前記ウェル部分行列に属するウェルに一斉に挿入可能に位置させた後に、前記ノズルの先端を前記ウェル内に一斉に挿入させて処理を行った後に抜出する動作を、他のウェル部分行列に属するウェルに対しても順次繰り返すように制御する請求項1または請求項4のいずれかに記載のマイクロプレート分割処理装置。
【請求項6】
前記ノズルヘッドの移動経路に沿った複数の前記ウェル部分行列の各々には、処理の各工程で必要とする溶液または懸濁液が各工程の順序に応じて収容された請求項5に記載のマイクロプレート分割処理装置。
【請求項7】
前記ノズルヘッドに設けられた前記ノズルは、装着用ノズルと、該装着用ノズルに着脱可能に装着された分注チップとを有し、前記ノズルヘッドは、前記装着用ノズルに装着された分注チップを脱着するチップ脱着部を有する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のマイクロプレート分割処理装置。
【請求項8】
前記ノズルヘッドに設けられた各ノズル内部の液体の状態を順次検出可能とするように、前記各ノズル近傍を通り該各ノズルと交差しない直線または曲線に沿って各ノズルに対して順次接近可能に設けた光検出部を有する光検出手段をさらに有する請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のマイクロプレート分割処理装置。
【請求項9】
前記光検出手段は、前記ノズルに対して相対的に移動可能となるように前記行方向または列方向に沿って伸び1若しくは2のノズル行またはノズル列と隣接可能であって各々列方向または行方向に沿って配列された1または2以上の棒状の櫛歯部材と、前記ノズルに対して相対的に移動可能に設けられ1または2以上の該櫛歯部材の一端で連結した支持部材と、隣接する1または2の前記ノズル行またはノズル列に属する各ノズル内を光学的に順次検出するために前記各櫛歯部材の他端近傍に設けた光検出部とを有する請求項8に記載のマイクロプレート分割処理装置。
【請求項10】
前記ノズルヘッドは、行列状に配列された2以上のノズルの一部の複数のノズルまたは全体のノズルが一体に集積したノズル集積体を有し、前記吸引吐出機構は、該ノズル集積体の各ノズルと連通する2以上の吸引吐出要素を有する請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のマイクロプレート分割処理装置。
【請求項11】
前記ノズル集積体は、2以上の装着用ノズルを行列状に配列され一体として集積した装着用ノズル集積体と、該装着用ノズル集積体の各装着用ノズルに装着される2以上の分注チップが行列状に配列され一体として集積した分注チップ集積体とを有し、前記装着用ノズル集積体の前記各装着用ノズルは、前記分注チップ集積体の対応する1の分注チップと連通する請求項10に記載のマイクロプレート分割処理装置。
【請求項12】
複数のウェルが行列状に配列された所定マイクロプレートと、複数のノズルが行列状に配列された1または2以上のノズルヘッドと、該ノズルを介して気体の吸引吐出を行う吸引吐出機構と、前記マイクロプレートとノズルヘッドとの間を相対的に移動可能とする移動手段とを有し、前記各ノズルヘッドに設けられた全ノズルの先端は、前記マイクロプレートの一部のウェルに一斉に挿入可能に設けられ、配列された前記ノズルの行間隔および列間隔は、配列された前記ウェルの行間隔および列間隔に各々等しく設けられ、前記ノズルヘッドを前記マイクロプレートに対して相対的に移動させて前記マイクロプレート内の一部のウェルに前記各ノズルヘッドに設けられた全ノズルを一斉に挿入可能に位置させる工程を有するマイクロプレート分割処理方法。
【請求項13】
前記工程は、前記マイクロプレートに含有され、前記ノズルヘッドに設けられた全ノズルの先端が一斉に挿入可能でかつ相互にウェルが重複しない複数のウェル部分行列に対して順次行われる請求項12に記載のマイクロプレート分割処理方法。
【請求項14】
前記各ノズル近傍を通り該各ノズルと交差しない直線または曲線に沿って、各ノズルに対して相対的に接近させることによって前記ノズル内部に磁場を及ぼす工程および相対的に離間させることによって磁場を除去する工程を有する請求項13に記載のマイクロプレート分割処理方法。
【請求項15】
前記ノズル内部に磁場を及ぼす工程および磁場を除去する工程は、前記行方向または列方向に沿って伸び1若しくは2のノズル行またはノズル列と隣接可能な1または2以上の棒状の櫛歯部材と、前記ノズルに対して相対的に移動可能に設けられ1または2以上の該櫛歯部材の一端で連結した支持部材と、隣接する1または2の前記ノズル行またはノズル列に属する各ノズルに対応する位置において前記各櫛歯部材に設けた磁石とを有する磁力手段を用いて、前記櫛歯部材を前記ノズルに対して接近させることによって磁場を各ノズルに及ぼし、該櫛歯部材を前記ノズルに対して離間させることによって磁場を各ノズルから除去する請求項14に記載のマイクロプレート分割処理方法。
【請求項16】
前記ノズルヘッドを前記マイクロプレートに対して相対的に移動させて前記ノズルヘッドに設けられた前記全ノズルを一斉に挿入可能に位置させた後、前記ノズルヘッドの前記全ノズルの先端を、前記マイクロプレートの前記ウェル内に一斉に挿入させて処理を行い、該ウェルから前記ノズルを一斉に抜出する工程を有する請求項12ないし請求項15に記載のマイクロプレート分割処理方法。
【請求項17】
前記ノズルヘッドに設けられた前記ノズルは、装着用ノズルと、装着用ノズルに着脱可能に装着された分注チップとを有し、前記分注チップを前記ノズルヘッドに設けられた前記装着用ノズルの全ておよびその一部に対して、装着させる工程または脱着させる工程を有する請求項12ないし請求項16のいずれかに記載のマイクロプレート分割処理方法。
【請求項18】
前記各ノズル近傍を通り該各ノズルと交差しない直線または曲線に沿って各ノズルに対して光検出部を相対的に順次接近させることによって、前記ノズル内部の液体の状態を順次検出する工程を有する請求項12ないし請求項17のいずれかに記載のマイクロプレート分割処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−58103(P2008−58103A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234444(P2006−234444)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(502338292)ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】