説明

マイクロ構造体の製造方法

【課題】加工過程で要するグリスを飛散させないようにしたマイクロ構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】主基板11の裏面11Rに、その裏面11Rの一部領域を囲い込む初期溝FVが形成された後、この初期溝FVを除く裏面11Rに、グリス12が塗られる。さらに、このグリス12の塗られた裏面11Rを支持基板13が支える状態で、主基板11の表面11Fに対してドライエッチングが行われ、初期溝FVを介して裏面11Rと表面11Fとの間が貫通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体デバイス等に用いられるマイクロ構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および2のようなマイクロ流体デバイスが、昨今、種々開発されている。マイクロ流体デバイスは、2枚の挟持基板でシリコン等の主基板を挟み込み、その主基板内の毛細管状の流路に試料を流す。そのため、主基板でもあるマイクロ構造体には、溝で流路が形成される。このような流路の形成は、エッチングで行われることが多い。
【0003】
一例を挙げると、図11A〜図11Gに示すような工程を経て、マイクロ構造体111に、流路は形成される。なお、通常、流路は試料の分析等に応じて異なった深さを要する。そのため、図11A〜図11Gで説明される主基板111は、図11Fおよび図11Gに示すように、2種類の流路121・122を含む(なお、主基板111はマイクロ構造体111になるので、便宜上、同符号を付す)。
【0004】
まず、図11Aに示すように、主基板111の一方面である裏面111Rに、最初の溝(初期溝)fvが形成される[初期溝形成工程]。その後、図11Bに示すように、グリス112が、初期溝fv内および裏面111Rに塗布される[塗布工程]。
【0005】
次に、図11Cに示すように、主基板111はグリス112の塗られた裏面111Rを介して、支持基板113に支えられる[支持工程]。そして、主基板111の表面111F(裏面111Rの反対面)には、図11Dに示すように、フォトリソグラフィー法でマスク115が形成される[加工溝用マスク形成工程]。
【0006】
この後、マスク115を用いたドライエッチングで、図11Eに示すように、主基板111の表面111Fに加工溝pv(加工溝pv1・加工溝pv2)が形成される[貫通工程]。第1加工溝PV1は、図11Fに示すように、侵食によって初期溝fvにつながって主基板111を貫通させ、比較的深い流路121を形成させる。一方、第2加工溝pv2は、主基板111を貫通させないようにして、比較的浅い流路122を形成させる[貫通工程の完了]。
【0007】
なお、流路121・122が完成すると、図11Gに示すように、マスク115が主基板111から除去されるとともに、支持基板113が主基板111から乖離される[乖離工程]。
【特許文献1】特開2005−274405号公報
【特許文献2】特開2007−218838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような工程では、汚れという問題が生じる。詳説すると、図11Fに示すように、ドライエッチングで主基板111が貫通した場合、その貫通箇所からグリス112が表面111Fに向かって噴出する。そして、その噴出したグリス112は、第2加工溝pv2等に入り込み、汚れとなる。
【0009】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものである。加工過程で要するグリス(放熱性粘着剤)を飛散させないようにしたマイクロ構造体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
マイクロ構造体の製造方法では、囲み溝形成工程、塗布工程、支持工程、および貫通工程を含む。
【0011】
囲み溝形成工程では、主基板にて対向する第1面および第2面の一方である第1面に、その第1面の一部領域を囲い込む囲み溝が形成される。
【0012】
塗布工程では、囲み溝を除いた第1面の領域である第1残存領域に放熱性粘着剤が塗布される。または、塗布工程では、主基板の第2面にて、囲み溝の形成予定位置に重なる部分を除いた領域である第2残存領域に、放熱性粘着剤が塗布される。
【0013】
支持工程では、支持基板が、放熱性粘着剤の塗布された面を介して主基板を支える。
【0014】
貫通工程では、囲み溝を介して主基板における第1面と第2面との間が貫通する。
【0015】
以上の工程を含むマイクロ構造体の製造方法では、主基板における第1面と第2面との間が囲み溝を介して貫通する場合に、第1面または第2面に生じる貫通箇所に、放熱性粘着剤は位置しない。そのため、放熱性粘着剤が主基板の貫通箇所を通じて移動しない。したがって、マイクロ構造体への加工過程で、放熱性粘着剤の飛散による汚れは生じない。
【0016】
なお、塗布工程にて、第1残存領域に放熱性粘着剤が塗布されるならば、貫通工程では、囲み溝に重畳する第2面の重畳部分から第1加工溝が形成されることで、その第1加工溝と囲み溝とがつながると望ましい。
【0017】
また、マイクロ構造体には、第1加工溝と囲み溝とがつながることで、主基板を貫通する部分以外に、例えば、主基板を貫通しない程度の加工部分が必要な場合もある。このような加工部分を第2加工溝とすると、貫通工程では、第2面に、第1加工溝とは異なる第2加工溝が、第1加工溝の形成と同時に形成されると望ましい。
【0018】
このような場合、第1加工溝と第2加工溝とを別途に形成する場合に比べて、製造時間が短くなる。
【0019】
また、主基板に対する第1加工溝の加工速度と第2加工溝の加工速度とが、同速度であると望ましい。
【0020】
このようになっていると、例えば予め第2加工溝の深さが決められているような場合に、その深さまで第2加工溝を形成していくと、同速度で加工される第1加工溝の深さも第2加工溝の深さと同じになる。すると、第1加工溝につながる初期溝の要する深さが決められる。そのため、マイクロ構造体の加工設計が容易になる。
【0021】
なお、第1加工溝の加工速度と第2加工溝の加工速度とが同速度になるための、一方策としては、第1加工溝の溝幅と第2加工溝の溝幅とが同じ長さになればよい。
【0022】
また、第1加工溝の溝幅と第2加工溝の溝幅とが、100μm以上500μm以下であれば、比較的加工速度が速いために、マイクロ構造体への加工時間が短くなる。
【0023】
ところで、第1加工溝の溝幅が、囲み溝に重なる第2面の重畳部分を含めつつ、囲み溝に囲まれる第1面の一部領域の幅よりも長くなってもよい。
【0024】
このようになっていても、初期溝と第1加工溝とがつながって、初期基板を貫通させれるためである。
【0025】
なお、このような幅広な第1加工溝であっても、溝幅が100μm以上500μm以下になっていれば、マイクロ構造体への加工時間は短くなる。
【0026】
また、このような幅広な第1加工溝の場合、その第1加工溝の溝幅と第2加工溝の溝幅との差が、400μm以下であると望ましい。
【0027】
このような範囲内であれば、第1加工溝の加工速度と第2加工溝の加工速度とが同速度になりやすいためである。
【0028】
なお、マイクロ構造体の製造方法では、種々の貫通工程が考えられる。例えば、塗布工程にて、第2残存領域に放熱性粘着剤が塗布されるならば、貫通工程では、主基板の第1面に形成される囲み溝が第2面にまで延長することで、第1面と第2面との間が貫通すると望ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、マイクロ構造体への加工過程で、放熱性粘着剤の飛散による汚れは生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
[実施の形態1]
実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、便宜上、部材符号・ハッチングを省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、平面図であっても、便宜上、ハッチングを施す場合もある。
【0031】
マイクロ流体デバイスは、通常、内部の毛細管状に流路に試料を流す過程で、その試料の分析等を行う。そして、流路を形成される基板(主基板)はマイクロ構造体と呼ばれ、一例として、図4に示すような板状のマイクロ構造体11が挙げられる。
【0032】
マイクロ構造体11は、対向する表面11Fおよび裏面11Rを有しており、この表面11Fおよび裏面11Rが別基板(不図示)で覆われることで、マイクロ流体デバイスは完成する。なお、表面11Fの平面図は図3Aに示され、裏面11Rは図3Bに示される。
【0033】
図4および図3A・図3Bに示されるようなマイクロ構造体11は、例えばシリコン製の主基板11で形成される(なお、主基板はマイクロ構造体11の主材のため同符号を付す)。そして、このマイクロ構造体11は、導入流路群IRG、合流流路群JRG、および接続流路群CRGを含む。
【0034】
導入流路群IRGは、試薬および検体等の試料を流すための流路の群であり、3本の導入流路IR(第1導入流路IR1〜第3導入流路IR3)を含む。これら導入流路IR1〜IR3は、試料を受け入れる入口E1〜E3を有する蛇腹状の流路であり、主基板11の表面(第2面)11Fから掘り込まれることで生じる溝で形成される。
【0035】
ただし、これら導入流路IR1〜IR3となる溝は、試料を流すことを主目的とするので、板状のマイクロ構造体11を貫通するほどの深さ(250μm程度)を有しなくてよい。そこで、図3Aでは、マイクロ構造体11を貫通していないことを明確にすべく、導入流路IR1〜IR3となる溝に網線を付す。
【0036】
合流流路群JRGは、試料同士を混合させるための流路の群であり、3本の合流流路JR(第1合流流路JR1〜第3合流流路JR3)を含む。具体的には、第1導入流路IR1〜第3導入流路IR3の合流する第1合流流路JR1と、この第1合流流路JR1に隣り合う第2合流流路JR2と、その第2合流流路JR2に隣り合う第3合流流路JR3を含む。
【0037】
接続流路群CRGは、第1合流流路JR1〜第3合流流路JR3を一連状にするための流路の群であり、2本の接続流路CR(第1接続流路CR1・第2接続流路CR2)を含む。詳説すると、第1接続流路CR1が第1合流流路JR1と第2合流流路JR2との間をつなぎ、第2接続流路CR2が第2合流流路JR2と第3合流流路JR3との間をつなぐ。その結果、第1導入流路IR1〜第3導入流路IR3からの試料が混合して、第1合流流路JR1〜第3合流流路JR3に流れることになる。
【0038】
なお、合流流路群JRGは試料を混合させることを主目的とするため、極力、深い溝(500μm程度)が望ましい。そこで、合流流路群JRGは、導入流路群IRGと異なり、マイクロ構造体11を貫通する溝で形成される(図3Aおよび図3B参照)。また、接続流路群CRGは、第1合流流路JR1で生成された混合試料を第2合流流路JR2、第3合流流路JR3に導くことを主目的とする。そのため、合流流路群JRG同様、接続流路群CRGも、マイクロ構造体11を貫通する溝で形成される。
【0039】
ここで、以上のようなマイクロ構造体11の製造方法について、図1A〜図1Gと、図2Aおよび図2Bと、を用いて説明する。なお、図1Gは、図3Aおよび図3Bに示されるマイクロ構造体11のA−A’線矢視断面図であり、図1A〜図1Fは、図1Gの断面方向と同方向で、マイクロ構造体11の主体となる主基板11等を示す断面図である。
【0040】
また、図2Aは図1Aでの主基板11を裏面11R側からみた平面図であり、図2Bは図1Fでのマスク15(後述)で覆われる主基板11を表面11F側からみた平面図である。なお、図2Aおよび図2Bでは、図3A同様、加工されているものの主基板11を貫通していない部分に網線を付す。
【0041】
まず、図1Aに示すように、対向する2面を有する主基板11の一方面である裏面(第1面)11Rに、最初の溝である初期溝FVが形成される[初期溝形成工程]。この初期溝FVは、図2Aに示すように、3つの環状部分FV1〜FV3、および、環状部分FV1から環状部分FV2までをつなげる線状部分FV4と環状部分FV2から環状部分FV3までをつなげる線状部分FV5とを含む。そのため、初期溝(囲み溝)FVの環状部分FV1〜FV3は、主基板11の裏面11Rの一部領域を囲むことになる。
【0042】
なお、この初期溝FVの形成方法は特に限定されない。例えば、主基板11の裏面11R上に、フォトリソグラフィー法で不図示のマスク(パターン化された酸化シリコン膜等)が形成され、そのマスクを用いたドライエッチング等が行われることで、初期溝FVが形成されてもよい。なお、図1Aに示される初期溝FVはドライエッチングで形成されている。
【0043】
次に、図1Bに示すように、初期溝FV以外の裏面11R(第1残存領域)に、グリス12が塗られる[塗布工程]。そして、放熱性かつ導電性を有するグリス(放熱性粘着剤)12の塗られた主基板11は、図1Cに示すように、60℃程度に加熱された支持基板13に置かれる。詳説すると、主基板11はグリス12の塗られた裏面11Rを介して、支持基板13に支えられる[支持工程]。
【0044】
このような支持基板13とグリス12とは、主基板11の表面11Fに対するドライエッチングに要する。通常、ドライエッチングの場合、エッチング速度の制御のために温度管理が必要になる。そのため、冷却用のヘリウムガスが主基板11に吹きつけられるが、主基板11がドライエッチングで貫通するような場合、ドライエッチング装置内部にヘリウムガスが広がり、これが問題となる。
【0045】
かかる事態を防止すべく、支持基板13がグリス12を介して主基板11を支える。このようになっていると、ヘリウムガスは支持基板13でドライエッチング装置内部への広がらず、さらに、支持基板13およびグリス12を介して、ヘリウムガスは主基板11の温度を下げる。
【0046】
以上のように、主基板11の表面11Fに対するドライエッチングの準備が整ったところで、図1Dに示すように、主基板11の表面11F上に、フォトリソグラフィー法でマスク15が形成される[加工溝用マスク形成工程]。このマスク15におけるスリットSTは、合流流路群JRGおよび接続流路群CRGを形成するために要する部分(第1スリットST1)と、導入流路群IRGを形成するために要する部分(第2スリットST2)とを含む。
【0047】
詳説すると、第1スリットST1は、初期溝FVの重なる主基板11の表面11Fの一部分(重畳部分)に、プラズマ化したエッチングガスのラジカルを導く。一方、第2スリットST2は、主基板11の表面11Fにおいて導入流路群IRGを形成したい部分に、プラズマ化したエッチングガスのラジカルを導く。
【0048】
そして、このようなマスク15の下で、ドライエッチング[貫通工程]が行われると、図1Eに示すように、スリットSTを通じて移動してくるラジカルと主基板11の表面11Fとが反応し、加工溝PVが生じる(なお、第1スリットST1に対応する加工溝PVを第1加工溝PV1、第2スリットST2に対応する加工溝PVを第2加工溝PV2と称する)。
【0049】
この加工溝PVが徐々に深まっていくと、図1Fおよび図2Bに示すように、初期溝FVと、この初期溝FVに対応して形成される第1加工溝PV1とはつながる[貫通工程の完了]。つまり、主基板11の裏面11Rと表面11Fとの間が、初期溝FVと第1加工溝PV1とで貫通される。
【0050】
このようになっていると、初期溝FVと第1加工溝PV1とのつながる貫通部分の一部は環状になる。そのため、図2Bに示すように、この環状の貫通部分で囲まれた主基板11の一部分FW(FW1〜FW3)は、主基板11にて浮島のようになり、その主基板11から抜き取り可能になる。
【0051】
一方、初期溝FVと第1加工溝PV1とがつながった段階で、第2スリットST2に対応する第2加工溝PV2は、裏面11Rにまで到達しない。そこで、この段階でドライエッチングが完了すると、主基板11を貫通しない第2加工溝PV2で形成される導入流路群IRGが完成する。
【0052】
その後、図1Gに示すように、マスク15が主基板11から除去される。さらに、支持基板13が主基板11から乖離されると、主基板11にて囲まれる部分FW1〜FW3も主基板11から乖離する[乖離工程]。そして、このような主基板11が洗浄されると、導入流路群IRG、合流流路群JRG、および接続流路群CRGの形成されたマイクロ構造体11が完成する(図3A・図3Bおよび図4参照)。
【0053】
すなわち、主基板11の表面11Fにて貫通しない第2加工溝PV2が導入流路群IRGになる。また、第1加工溝PV1と初期溝FVとがつながって主基板11を貫通することになり、その貫通部分で囲まれる部分FW1〜FW3が主基板11から乖離し、その乖離により生じる間隙部分が合流流路群JRGになる。また、主基板11を貫通する線状の第1加工溝PV1と初期溝FVとで形成される貫通部分が接続流路群CRGになる。
【0054】
このようなマイクロ構造体11が完成するまでには、主基板11の裏面11Rに、その裏面11Rの一部領域を囲い込む初期溝FVが形成された後、この初期溝FVを除く裏面11Rに、グリス12が塗られる。さらに、このグリス12の塗られた裏面11Rを支持基板13が支える状態で、主基板11の表面11Fに対してドライエッチングが行われ、初期溝FVを介して裏面11Rと表面11Fとの間が貫通する。
【0055】
このように初期溝FVを介して裏面11Rと表面11Fとの間が貫通する場合、詳説すると、表面11Fからドライエッチングで侵食(進行)してくる第1加工溝PV1が初期溝FVの底に到達する場合、初期溝FVの内部にはグリス12は充填されていない。そのため、グリス12は、初期溝FVおよび第1加工溝PV1を通じて、裏面11Rから表面11Fに噴出しない。つまり、主基板11がグリス12で汚れにくい。
【0056】
また、図1Eに示すように、貫通工程では、合流流路群JRGおよび接続流路群CRGを形成するための第1加工溝PV1、および導入流路群IRGを形成するための第2加工溝PV2が、同時のドライエッチングにより発生する。そのため、この貫通工程は、例えば、第1加工溝PV1および第2加工溝PV2を別々に形成させるような工程の総時間に比べて短い。
【0057】
また、通常、ドライエッチングの場合、エッチング速度(加工速度)の制御は、温度以外に溝幅も影響する。例えば、溝幅の異なる2種類溝の形成では、互いのエッチング速度が変わってくる。そこで、第1加工溝PV1の溝幅と第2加工溝PV2の溝幅とは、同程度になっている。このようになっていると、あるエッチング時間で、第1加工溝PV1の深さ(溝深長)と第2加工溝PV2の深さとが同程度になり、マイクロ構造体11の加工設計が容易になる。
【0058】
なお、過剰に狭い溝幅であると、その溝幅に対応する主基板11とプラズマ化したエッチングガスのラジカルとが反応しにくくなり、エッチング速度は遅くなりやすい。また、過剰に広い溝幅(過剰に広い面積も含む)であると、その溝幅に対応する主基板11を反応させるためのラジカルが不足し、エッチング速度は遅くなりやすい。
【0059】
これは、溝幅に応じて要するエッチング時間が示される図5のグラフ(縦軸:加工溝の深さ、横軸:エッチング時間)から明らかである(なお、グラフ中の“□”は、主基板11上の過剰に広い面積をエッチングする場合を意味する)。つまり、過剰に狭い溝幅(100μm未満)および過剰に広い溝幅で要するエッチング時間に比べて、100μm以上500μm以下程度の溝幅で要するエッチング時間のほうが短くてすむ。
【0060】
そこで、第1加工溝PV1の溝幅と第2加工溝PV2の溝幅とは、100μm以上500μm以下程度になっている。このような溝幅になっていると、第1加工溝PV1および第2加工溝PV2の形成時間は、過剰に狭い溝幅を有する溝および過剰に広い溝幅を有する溝の形成時間に比べて短くなる。つまり、マイクロ構造体11に対する加工時間が比較的短くなる。
【0061】
また、第1加工溝PV1の溝幅と第2加工溝PV2の溝幅とが、100μm以上500μm以下程度になっている場合、図5のグラフに示すように、エッチング時間(エッチング速度)の溝幅の依存性は低い。つまり、第1加工溝PV1の溝幅と第2加工溝PV2の溝幅との最大差が400μm以下だと、両加工溝PV1・PV2のエッチング速度に大きな差がでないといえる。
【0062】
なお、第1加工溝PV1のエッチング速度と第2加工溝PV2のエッチング速度とが同程度ゆえに、マイクロ構造体11の加工設計が容易な例としては、以下のような場合が挙げられる。
【0063】
例えば、厚み500μmの主基板11に、深さ250μmの導入流路群IRGが形成されることが決まっており、さらに、合流流路群JRGおよび接続流路群CRGの形成のために、主基板11の表面11Fから裏面11Rまでを貫通させなくてはならないとする。
【0064】
深さ250μmの導入流路群IRGの形成のためには、第2加工溝PV2は、主基板11の表面11Fから250μmより深くドライエッチングできない。これは、第2加工溝PV2と同時に形成される第1加工溝PV1も表面11Fから250μmより深くドライエッチングできないことを意味する。
【0065】
ただし、加工溝PV(第1加工溝PV1・第2加工溝PV2)の溝幅が100μm以上500μm以下程度の場合、250μmの深さに要する時間は、グラフから明らかなように決まっている。そのため、正確に、250μmの深さの第2加工溝PV2が形成され、導入流路群IRGが完成する。
【0066】
また、導入流路群IRGが完成するまでに、第1加工溝PV1も250μmの深さを有することになる。そこで、第1加工溝PV1とつながる初期溝FVは、500μmの主基板11の厚みから250μmを差し引いた値(250μm)だけの深さを要すればいい。つまり、初期溝FVの深さが予め決定されることになる。そのため、マイクロ構造体11の加工設計が容易といえる。
【0067】
その上、第1加工溝PV1と初期溝FVとが確実に通ずるために、あえて初期溝FVの深さが250μmを超える深さにならなくてもよい。したがって、初期溝FVの形成時間が短くなり、ひいては、マイクロ構造体11の加工時間も短くなる。
【0068】
[実施の形態2]
実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1で用いた部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0069】
実施の形態1では、合流流路群JRGを形成する初期溝FVおよび第1加工溝PV1の溝幅が同程度であり、両溝FV・PV1は互いの内壁を一致させつつつながっていた。そのため、第1合流流路JR1〜第3合流流路JR3における内壁には段差は無かった。
【0070】
しかし、試料の混合の都合上、第1合流流路JR1〜第3合流流路JR3における内壁に、段差が存在すると望ましいこともある。そこで、この実施の形態2では、段差を含む第1合流流路JR1〜第3合流流路JR3を備えるマイクロ構造体11の製造方法について、図6Aおよび図6Bと、図7A〜図7Gと、図8Aおよび図8Bと、を用いて説明する。
【0071】
図6Aおよび図6Bは、図3Aおよび図3Bと同様に、マイクロ構造体11の表面11Fおよび裏面11Rを示す平面図である。また、図7Gは、図6Aおよび図6Bに示されるマイクロ構造体11のB−B’線矢視断面図であり、図7A〜図7Fは、図7Gの断面方向と同方向で、マイクロ構造体11の主体となる主基板11等を示す断面図である。また、図8Aは図7Aでの主基板11を裏面11R側からみた平面図であり、図8Bは図7Fでのマスク15で覆われる主基板11を表面11F側からみた平面図である。
【0072】
なお、図6Aおよび図6Bと、図8Aおよび図8Bとでは、図2Aおよび図2B同様、加工されているもののマイクロ構造体11を貫通していない部分に網線を付す。なお、図6Aに示される合流流路群JRGにおいて、網線を付されている部分が段差DGである。
【0073】
まず、図7Aに示すように、主基板11の裏面11Rに、初期溝FVが形成される[初期溝形成工程]。この初期溝FVは、図8Aに示すように、実施の形態1同様、3つの環状部分FV1〜FV3と2つの線状部分FV4・FV5とを含む。
【0074】
次に、図7Bに示すように、初期溝FV以外の裏面11Rに、グリス12が裏面11Rに塗られ [塗布工程]、その後、このグリス12の塗られた主基板11は、図7Cに示すように、グリス12を塗られた裏面11Rを介して、加熱された支持基板13に置かれる[支持工程]。
【0075】
続いて、図7Dに示すように、主基板11の表面11F上に、フォトリソグラフィー法で第1スリットST1および第2スリットST2を含むマスク15が形成される[加工溝用マスク形成工程]。なお、第1スリットST1は、実施の形態1とは異なり、初期溝FVの重なる主基板11の表面11Fの重畳部分を含めつつ、環状の初期溝FVに囲まれる領域(裏面11Rの一部領域)の幅よりも長い。すなわち、第1スリットST1は、環状の初期溝FV(FV1〜FV3)に囲まれる領域を包含可能な面積を有する。
【0076】
そして、このようなマスク15の下で、ドライエッチング[貫通工程]が行われると、図7Eに示すように、マスク15の第1スリットST1および第2スリットST2に対応する主基板11の表面11Fに、徐々に加工溝PV(第1加工溝PV1・第2加工溝PV2)が生じてくる。そして、この加工溝PVが徐々に深まっていくと、図7Fおよび図8Bに示すように、初期溝FVと、この初期溝FVに対応して形成される第1加工溝PV1とはつながる[貫通工程の完了]。
【0077】
ただし、第1加工溝PV1は、第1スリットST1に対応して、環状の初期溝FVに囲まれる領域を包含可能な面積を有し、その面積にみあった溝幅を有する。そのため、初期溝FVの内壁と第1加工溝PV1の内壁とが一致せず、両方の内壁同士の間に間隔が生じる。この間隔が段差DGとなる。
【0078】
なお、実施の形態1同様、初期溝FVと第1加工溝PV1とがつながった段階で、両溝補FV・PV1から成る貫通部分に囲まれる部分FW1〜FW3は、主基板11から抜き取り可能になる。また、第2加工溝PV2は裏面11Rにまで到達せず、この段階でエッチングが完了すると、主基板11を貫通しない第2加工溝PV2で形成される導入流路群IRGが完成する。
【0079】
次に、図7Gに示すように、マスク15が主基板11から除去され、さらに、支持基板13が主基板11から乖離されると、主基板11にて囲まれる部分FW1〜FW3も主基板11から乖離する[乖離工程]。そして、このような主基板11が洗浄されると、導入流路群IRG、合流流路群JRG、および接続流路群CRGの形成されたマイクロ構造体11が完成する(図6A・図6B参照)。
【0080】
以上のような実施の形態2でのマイクロ構造体11の製造では、実施の形態1同様の作用効果が奏ずる。例えば、初期溝FVの内部にはグリス12が充填されていないので、グリス12が初期溝FVおよび第1加工溝PV1を通じて裏面11Rから表面11Fに噴出せず、主基板11がグリス12で汚れにくい。また、図7Eに示すように、貫通工程では、第1加工溝PV1および第2加工溝PV2が同時のドライエッチングにより発生するので、実施の形態1同様に、加工時間が短くなる。
【0081】
また、第1加工溝PV1の溝幅と第2加工溝PV2に溝幅とは差があるものの、400μm以下になっている(第1加工溝PV1の溝幅および第2加工溝PV2の溝幅は100μm以上500μm以下程度である)。そのため、マイクロ構造体11に対する加工時間が比較的短く、さらに、第1加工溝PV1のエッチング速度と第2加工溝PV2のエッチング速度が同じになり、マイクロ構造体11の加工設計も容易になる。
【0082】
[実施の形態3]
実施の形態3について説明する。なお、実施の形態1および2で用いた部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0083】
実施の形態1および2でのマイクロ構造体11の製造方法では、グリス12が主基板11に塗布される前に、初期溝FVが主基板11に形成されていた。しかし、初期溝FVが主基板11に形成される前に、グリス12が塗布され、その後に、初期溝PV等が形成されてもよい。実施の形態3では、このような製造方法を、図3Aおよび図3Bと、図4と、図9A〜図9Hと、図10Aおよび図10Bと、を用いて説明する。
【0084】
図3Aおよび図3Bと図4とが説明で用いられるのは、実施の形態3での製造方法で製造されたマイクロ構造体11は、実施の形態1での製造方法で製造されたマイクロ構造体11と同じなためである。したがって、図9Hは、図3Aおよび図3Bに示されるマイクロ構造体11のA−A’線矢視断面図であり、図9A〜図9Gは、図9Hの断面方向と同方向で、マイクロ構造体11の主体となる主基板11等を示す断面図である。
【0085】
また、図10Aは図9Aでのグリス12で覆われる主基板11を表面11F側からみた平面図であり、図10Bは図9Gでのマスク15で覆われる主基板11を表面11F側からみた平面図である。
【0086】
まず、図9Aおよび図10Aに示すように、加熱された主基板11の表面11Fに、グリス12を塗布する[塗布工程]。ただし、合流流路群JRGの外縁(輪郭)および接続流路群CRGの形成予定位置に重なる表面11Fの一部分には、グリス12は塗られない。(なお、この形成予定位置に重なる表面11Fの一部分には、後に初期溝FVが形成され、形成予定位置を除く表面11Fの領域は第2残存領域と称する)。そのため、図10Aに示すように、表面11Fにて、グリス12の非塗布部分は、3つの環状部分GP1〜GP3と、2つの線状部分GP4・GP5とを含む。
【0087】
詳説すると、3つの環状部分GP1〜GP3は合流流路群JRGの外縁に対応する。また、環状部分GP1から環状部分GP2までをつなげる線状部分GP4と環状部分GP2から環状部分GP3までをつなげる線状部分GP5とは、接続流路群CRGに対応する(なお、環状部分GP1〜GP3および線状部分GP4・GP5は、主基板11における環状部分FV1〜FV3および線状部部分FV4・FV5に対応する)。
【0088】
次に、図9Bに示すように、主基板11はグリス12の塗られた表面11Fを介して、支持基板13に支えられる[第1支持工程]。そして、主基板11の裏面11Rには、図9Cに示すように、フォトリソグラフィー法でマスク15が形成される[初期溝用マスク形成工程]。
【0089】
このマスク15は、主基板11の裏面11Rにて、表面11Fのグリス12の塗布領域に重なる領域を覆う。すなわち、マスク15は、裏面11Rにおける合流流路群JRGの外縁および接続流路群CRGの形成予定位置を覆わず、それ以外の領域を覆う(形成予定位置とマスク15の第1スリットST1とが重なる)。
【0090】
続いて、図9Dに示すように、このマスク15を用いたドライエッチングで、主基板11の裏面11Rに初期溝FVが形成される[初期溝形成工程]。ただし、この初期溝FVは、図9Dに示すように、裏面11Rから侵食していき表面11Fにまで到達する[初期溝形成工程が貫通工程にもなる]。
【0091】
次に、図9Eに示すように、マスク15が主基板11から除去されるとともに、支持基板13が主基板11から乖離される[第1乖離工程]。すると、裏面11Rから表面11Fまでを貫通する初期溝FVにて囲まれる部分は抜き取られ、その間隙部分が合流流路群JRGとなる。また、主基板11を貫通する線状の初期溝FVが接続流路群CRGとなる。
【0092】
そして、このような主基板11は洗浄されると、図9Fに示すように、裏面11Rにグリス12が塗布され、そのグリス12の塗布面を介して、支持基板13が主基板11を支える[第2支持工程]。
【0093】
この後、図9Gおよび図10Bに示すように、主基板11の表面11Fに対して、フォトリソグラフィー法でマスク15が形成される[加工溝用マスク形成工程]。このマスク15は、導入流路群IRGとなる第2加工溝PV2の形成に要する第2スリットST2を含む。つまり、このマスク15を用いてドライエッチング[加工溝形成工程]が行われることで、主基板11を貫通しない第2加工溝PV2が生じ、その第2加工溝PV2が導入流路群IRGとなる。
【0094】
その後、図9Hに示すように、マスク15が主基板11から除去され、さらに、支持基板13が主基板11から乖離される[第2乖離工程]。そして、このような主基板11が洗浄されると、導入流路群IRG、合流流路群JRG、および接続流路群CRGの形成されたマイクロ構造体11が完成する(図3A・図3Bおよび図4参照)。
【0095】
このようなマイクロ構造体11が完成するまでには、主基板11の表面11Fにて、初期溝FV(合流流路群JRG・接続流路群CRG)の形成予定位置に重なる部分を除いた領域に、グリス12が塗られる。その後、このグリス12の塗られた表面11Fを支持基板13が支える状態で、主基板11の裏面11Rに対してドライエッチングが行われ、主基板11を貫通する初期溝FVが形成される。
【0096】
このように初期溝FVを介して裏面11Rと表面11Fとの間が貫通する場合、詳説すると、裏面11Rからドライエッチングで侵食してくる初期溝FVが表面11Fに到達する場合、その到達予想位置(すなわち、裏面11Rの初期溝FVの形成予定位置に重なる表面11Fの位置)には、グリス12は塗られていない。そのため、グリス12が、初期溝FVを通じて、表面11Fから裏面11Rに噴出しない。つまり、主基板11がグリス12で汚れにくい。
【0097】
なお、初期溝FVの溝幅は、100μm以上500μm以下程度になっていると望ましい。このような溝幅になっていると、初期溝FVの形成時間が比較的短くなるためである。
【0098】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0099】
例えば、図1Eおよび図7Eに示すように、主基板11に対する第1加工溝PV1のエッチング速度と第2加工溝PV2のエッチング速度とは同じである。そして、このようにエッチング速度を一致させるために、実施の形態1では第1加工溝PV1の溝幅と第2加工溝PV2溝幅とが一致し、実施の形態2では両加工溝PV1・PV2の溝幅の差が400μm以下になっていた。
【0100】
しかし、エッチング速度は、溝幅のみに依存するわけではない。例えば、主基板11における加工溝PVの位置、加工溝形状、または主基板11における加工面の面状態(粗さ)がエッチング速度に影響を及ぼす。そのため、マイクロ構造体11の製造方法では、溝幅だけに限らす、その他の要因で、第1加工溝PV1のエッチング速度と第2加工溝PV2のエッチング速度とが同じになるようにしてもよい。
【0101】
ところで、以上では、マイクロ構造体11が用いられる装置として、マイクロ流体デバイスが挙げられた。しかし、これに限定されることなく、他の装置にマイクロ構造体11は採用可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】は、実施の形態1でのマイクロ構造体の製造工程を示す断面図であり、(A)は初期溝形成工程を示し、(B)は塗布工程を示し、(C)は支持工程を示し、(D)は加工溝用マスク形成工程を示し、(E)は貫通工程を示し、(F)は貫通工程の完了後を示し、(G)は乖離工程を示す。
【図2】では、(A)は図1Aでの主基板を裏面側からみた平面図であり、(B)は図1Fでのマスクで覆われる主基板を表面側からみた平面図である。
【図3】では、(A)はマイクロ構造体の表面を示す平面図であり、(B)はマイクロ構造体の裏面を示す平面図である。
【図4】は、マイクロ構造体の斜視図である。
【図5】は、溝幅に応じて要するエッチング時間を示す特性図である。
【図6】では、(A)は図3Aとは異なるマイクロ構造体の表面を示す平面図であり、(B)は図3Bとは異なるマイクロ構造体の裏面を示す平面図である。
【図7】は、実施の形態2でのマイクロ構造体の製造工程を示す断面図であり、(A)は初期溝形成工程を示し、(B)は塗布工程を示し、(C)は支持工程を示し、(D)は加工溝用マスク形成工程を示し、(E)は貫通工程を示し、(F)は貫通工程の完了後を示し、(G)は乖離工程を示す。
【図8】では、(A)は図7Aでの主基板を裏面側からみた平面図であり、(B)は図7Fでのマスクで覆われる主基板を表面側からみた平面図である。
【図9】では、実施の形態3でのマイクロ構造体の製造工程を示す断面図であり、(A)は塗布工程を示し、(B)は第1支持工程を示し、(C)は初期溝用マスク形成工程を示し、(D)は初期溝形成工程(貫通工程)を示し、(E)は第1乖離工程を示し、(F)は第2支持工程を示し、(G)は加工溝用マスク形成工程および加工溝形成工程を示し、(H)は第2乖離工程を示す。
【図10】では、(A)は図9Aでのグリスで覆われた主基板を表面側からみた平面図であり、(B)は図9Gでのマスクで覆われた主基板を表面側からみた平面図である。
【図11】は、従来のマイクロ構造体の製造工程を示す断面図であり、(A)は初期溝形成工程を示し、(B)は塗布工程を示し、(C)は支持工程を示し、(D)は加工溝用マスク形成工程を示し、(E)は貫通工程を示し、(F)は貫通工程の完了後を示し、(G)は乖離工程を示す。
【符号の説明】
【0103】
11 主基板、マイクロ構造体
11F 表面(第2面)
11R 裏面(第1面)
12 グリス(放熱性粘着剤)
13 支持基板
15 マスク
ST スリット
IRG 導入流路群
JRG 合流流路群
CRG 接続流路群
FV 初期溝(囲み溝)
PV 加工溝
PV1 第1加工溝
PV2 第2加工溝
FW 初期溝と第1加工溝とのつながる貫通部分で囲まれる領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主基板にて対向する第1面および第2面の一方である第1面に、その第1面の一部領域を囲い込む囲み溝を形成する囲み溝形成工程と、
上記囲み溝を除いた上記第1面の領域である第1残存領域に、または、上記第2面にて、上記囲み溝の形成予定位置に重なる部分を除いた領域である第2残存領域に、放熱性粘着剤を塗布する塗布工程と、
支持基板に、上記放熱性粘着剤の塗布された面を介して、上記主基板を支えさせる支持工程と、
上記囲み溝を介して上記第1面と上記第2面との間を貫通させる貫通工程と、
を含むマイクロ構造体の製造方法。
【請求項2】
上記塗布工程にて、上記第1残存領域に上記放熱性粘着剤を塗布させ、
上記貫通工程にて、上記囲み溝に重なる上記第2面の重畳部分から第1加工溝を形成することで、その第1加工溝と囲み溝とをつなげる請求項1に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項3】
上記貫通工程では、上記第2面に、上記第1加工溝とは異なる第2加工溝を、上記第1加工溝の形成と同時に形成させる請求項2に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項4】
上記主基板に対する上記第1加工溝の加工速度と上記第2加工溝の加工速度とを、同速度にする請求項3に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項5】
上記第1加工溝の溝幅と上記第2加工溝の溝幅とを同じ長さにする請求項3または4に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項6】
上記第1加工溝の溝幅と上記第2加工溝の溝幅とを、100μm以上500μm以下にする請求項5に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項7】
上記第1加工溝の溝幅を、上記囲み溝に重なる第2面の重畳部分を含めつつ、上記囲み溝に囲まれる第1面の一部領域の幅よりも長くする請求項3または4項に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項8】
上記第1加工溝の溝幅を、100μm以上500μm以下にする請求項7に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項9】
上記第1加工溝の溝幅と上記第2加工溝の溝幅との差を、400μm以下にする請求項8に記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項10】
上記塗布工程にて、上記第2残存領域に上記放熱性粘着剤を塗布させ、
上記貫通工程にて、上記囲み溝を上記第2面にまで延長させる請求項1に記載のマイクロ構造体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−281976(P2009−281976A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136792(P2008−136792)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】