説明

マイクロ流体チップ装置およびその使用

磁性マイクロビーズ(MM)上での小型の結合アッセイを実施するためのマイクロ流体チップ装置(MCD)およびその使用を記載する。MCDは、PCRを含み、小型のアフィニティー捕捉による転写分析(TRAC)アッセイを行うのに特に有用である。MCDは、シール可能な液体接続部を備えた少なくとも1つの反応チャンバーを含み、各チャンバーに少なくとも1つの流体ピラーフィルタを含む。流体ピラーフィルタはロッドからなり、MMが通過できる空間を有する。シール可能な液体接続部は、反応チャンバーに液体を供給し、そこで気泡が除かれる。液体流は、磁気ロッドを用いて操作されるMMと接触する。液体接続部は、液体を交換する間、ピラーフィルタの後方にまたはチャンバー内にMMをトラップすることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術)
本発明は、マイクロ流体に関し、特に磁性マイクロビーズ上での複数の吸着および脱着工程を用いた1つまたは複数の結合パートナーによるPCR反応を含む結合アッセイを実施するためのマイクロ流体チップ装置に関する。開示するものとしてはまた、上記マイクロ流体チップ装置内で磁性マイクロビーズを操作する方法、ならびに上記マイクロ流体チップ装置の使用および磁性マイクロビーズ上で行われるマイクロスケールでの結合アッセイの感度および効果を増強するための磁性マイクロビーズの操作方法がある。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体工学は、マイクロチップ上に配置されたマクロチャネルを通じて供給される微量の流動性の液体を取り扱う技術である。当該技術は、強力なオリゴマー・チップ技術の代替となる新規で高感度の技術として急速に台頭している。
【0003】
マイクロ流体システムは、精製、分離または配列決定に用いられ、マイクロキャピラリー電気泳動法、充填層免疫−または酵素−反応器(米国出願公開第20020023841号、米国出願公開第20040094419号、国際公開第200509481号、国際公開第03099438号、および国際公開第2007035498号)などの方法が挙げられる。ピラーフィルタを備えたマイクロ流体装置は、国際公開第2008024070号、国際公開第0185341号、国際公開第2007098027号、国際公開第9909042号、および国際公開第02093125号に記載されており、またLiu et al., Electrophoresis, Nov. 2007, vol. 28, 4173-4722に記載されており、結合アッセイの自動化および小型化もまた示唆されている。従来の結合アッセイは、通常、溶液中で行われ、一緒になって結合ペアを形成する結合パートナーとその対応物との反応を含む。結合ペアの例としては、抗体と抗原、または相補的なプローブと標的配列がある。典型的な結合アッセイでは、結合ペアの結合パートナーは、マイクロビーズ上で実施される媒介物の精製段階および抽出段階に付随して固相と液相とを交互に行き来する。
【0004】
特許文献では、従来の結合アッセイを小型化する際に直面する問題がほとんど議論されておらず、このことは、従来のマイクロスケールでの結合アッセイに非常に好都合な磁性粒子をマイクロ流体に応用する場合に、操作することがあまり容易でないことの証拠である。これはおそらく、磁性マイクロビーズがそのマイクロビーズの直径よりも小さい直径のマイクロチャネルの特定の領域内に保持され、主としてそれらを濃縮および単離することに用いてきたことが理由であろう。マイクロ流体ピラーもまたマイクロビーズの機械的なストッパーとして、マイクロ流体チャネルシステムで用いられてきた。結合ペアのパートナー間の吸着および脱着反応ならびに精製段階は、試料中の標的結合パートナーとマイクロビーズ表面上のその対応物との十分な接触またはこれと逆の場合の十分な接触を可能にするための完全なおよび効率的な混合システムの適用を要求する。したがって、先行技術では、一般的に吸着/脱着工程および精製工程が行われ、その後に、処理された標的結合パートナーを含む液体流を、次の分離および検出のためのマイクロ流体チャネルシステムに供給する。マイクロ流体システムでの適切な混合を得るために、物理的な力、例えば音響力(acoustic force)の適用が示唆されているが、マイクロ流体チャネル内で磁性マイクロビーズの操作を具体的に目指した方法は示唆されていない。
【0005】
水溶液中で電場により生じる気泡生成は、米国出願公開第2006/0228749号において議論されており、この問題を取り扱うために様々な物理的な力が提案されているが、たとえ供給される液体の容積と比較して非常にその容積が大きいマイクロスケールの系での気泡でもマイクロ流体法を用いて得られるすべての結果を著しく歪めることとなり得るという問題があるが、気泡形成がマイクロ流体チャネルシステムに液体流を供給する場合にたびたび直面する困難な問題であるという事実は議論されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国出願公開第20020023841号
【特許文献2】米国出願公開第20040094419号
【特許文献3】国際公開第200509481号
【特許文献4】国際公開第03099438号
【特許文献5】国際公開第2007035498号
【特許文献6】国際公開第2008024070号
【特許文献7】国際公開第0185341号
【特許文献8】国際公開第2007098027号
【特許文献9】国際公開第9909042号
【特許文献10】国際公開第02093125号
【特許文献11】米国出願公開第2006/0228749号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Liu et al., Electrophoresis, Nov. 2007, vol. 28, 4173-4722
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(発明の要約)
本発明の目的は、マイクロ流体チップ装置内で磁性マイクロビーズを操作することによりアッセイの性能および効果を改善することである。改善された効果および感度は、本発明のマイクロ流体マイクロチップ装置により達成され、当該チップ装置では、液体流中の気泡形成および磁性マイクロビーズのクラスター化は、液体流をまずマイクロ流体チャネルシステムの反応チャンバー内のマイクロ流体ピラーフィルタに通じさせ、その後に、チャネルシステム内で磁性マイクロビーズと接触させる液体流を別のマイクロ流体ピラーシステムを通じて運搬し、それにより、クラスター化磁性マイクロビーズを解離させるかまたは脱会合させることによって、防止される。マイクロ流体チップ装置の適用性は、いわゆるステアリングプレート上にステアリングロッドのための穴を設けた装置を提供することによってさらに高まり、そのステアリングロッドは、例えば液体接続部および電気ニードルと一緒になって、測定インターフェース上でのマイクロ流体チップ装置と外部装置との間でのさらなる電気的接触および液体接触の正確な嵌込みを容易にするものである。ステアリングプレートを有するマイクロ流体チップ装置および測定インターフェースはすべて、安定化底面、いわゆるドッキング・ステーション上に配置される。ステアリングプレート上のステアリングロッドとマイクロチップ装置上の穴は、外部装置とマイクロ流体チップ装置との間での電気的および/または流体的な連結の正確な嵌込みを容易にする。これは、マイクロ流体チップ装置が結合アッセイ、単離、濃縮、分離、検出、ならびにPCRおよび分析されるべき試料中に存在する余剰の検出可能な標識に起因するバックグラウンドの低減ならびに標的結合パートナーもしくは結合ペアを形成するその対応物の検出を行うための手段が完全に組み込まれて提供されない場合に、特に有用である。
【0009】
本マイクロチップ装置は、液体接続部または分岐点を有しており、温度などの条件を調節するための電場、結合アッセイからの処理された反応産物をキャピラリー電気泳動法により分離するための伝導度による液体流の監視、磁性粒子を動かすための磁気ロッド、および反応産物を記録するために光学機器を含むか、またはそれらに連結される。マイクロ流体チャネルシステムは、注入口もしくは排水口の両方として機能し得るし、シールされて備えつけられる当該液体接続部または分岐点での開閉を可能にするポートまたは液体接続部を有する1以上のシール可能な管状のチャネルまたは通路を含む。マイクロチャネルシステムは、さらに、当該システムの管状のチャネルよりも広くまたは深い拡大された反応チャンバーまたはキャビティを1つ以上、好ましくは2つ含む。磁性マイクロビーズがチャネルのあるチャネル部分から別の部分に運搬される間に、気泡を除去し、および標的分析物および更なる分析物または試薬が付着するまたは反応が生じる間に付着し得る磁性マイクロビーズクラスターを分離すための、1以上のマイクロ流体ピラーフィルタが反応チャンバーに備えつけられる。運搬により完全に混合した後、溶液を除去し別の溶液に置換する間に、捕捉された試薬を有する磁性マイクロビーズ、磁性マイクロビーズ上に捕捉された分析物または反応物は、マイクロ流体ピラーフィルタ上もしくはその後方にトラップされる。このトラップにより、磁性マイクロビーズが試料、試薬または洗浄液の連続もしくは不連続の供給の間に排水流と共に抜け出すことが防止がれる。マイクロ流体チップ装置全体は、センチメーター、ミリメーター、またはナノメータースケールで提供されてよい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、マイクロ流体チャネルシステムにおいて磁性マイクロビーズを操作するためのマイクロ流体チップ装置に特に関する。マイクロ流体チップ装置は、典型的な結合アッセイに要求される全ての作業を実施するのに必要とされる装置を全て備えた一体型のマイクロ流体チップ装置であるか、または前記作業を実施するために必要とされる装置に測定インターフェースを通じて外部から接続されるマイクロ流体チップ装置である。装置には磁気機器、電気機器および光学機器があり、作業には単離、濃縮、吸着反応および脱着反応を伴う結合アッセイ、分離および検出が含まれ、さらに自動または半自動の記録および最終的な結果を計算するためのソフトウェア・アプリケーションが含まれる。
【0011】
管状のチャネルに加えて、マイクロ流体チャネルシステムは、2つの反応チャンバー(101および102)を含むが、反応チャンバーが1つだけ含まれていてもよく、この場合のマイクロ流体チャネルは、幾つかの反応工程、例えばPCR反応および濃縮に用いることができる。マイクロ流体チャネルシステムは、1以上のシール可能な流体接続部(201、202および/または203)を備えており、それらは共に注入口および排水口として用いることができ、さらに流れの方向を逆転させることができる。液体流は、システムに供給される試料溶液、試薬溶液、洗浄液または溶出液を含む。本発明の1つの好ましい実施形態を表す図2において図示されるように、接続部(201)は注入口であり、接続部(202)は排水口であり、接続部(203)は処理した液体溶液を除去するために用いられるか、または分離および検出(600および700)のための手段にその溶液を導く前にその溶液を濃縮するために用いられる。処理後に回収された標的結合パートナーを分離および検出に用いられるキャピラリーに導入する前に、それらを増幅しおよび/または濃縮することができる。液体接続部は、マイクロ流体チップ装置の配置、およびマイクロ流体チップ装置上に提供された組込み型の流体装置、電気機器および光学機器の位置、ならびにマイクロ流体チップ装置の最終的な適用に応じて、逆の順序で用いることができる。
【0012】
図2で示される本発明の好ましい実施形態において、マイクロ流体チャネルシステムは、2つの反応チャンバー(101および102)を有し、その各々に少なくとも1つのマイクロ流体ピラーフィルタ(301および302)が備えつけられる。マイクロ流体ピラーフィルタは、図3で示されるように、小型の足場または四角形もしくは円形のロッド(303)のアレイである。これらの足場は、そのロッド間の隙間または空間(304)が磁性マイクロビーズの直径よりも大きくなるように配置される。典型的には、マイクロ流体ピラーの隙間は、約20μm〜約30μmのスケール、好ましくは約25μmであるが、そのサイズは、当然ながらマイクロ流体チップ装置のサイズに応じて変化してもよい。
【発明の効果】
【0013】
図1で示されるようにクラスター(402)を形成する傾向のある磁性マイクロビーズ(401)を操作するのに好ましい磁気機器は、外部の磁気ロッド(403)を含むが、他の電磁気力も含んでいてよい。磁気ロッドをマイクロ流体チップ装置およびそのマイクロ流体ピラーを跨いで動かすことにより、磁性マイクロビーズをマイクロ流体チャネルシステム内で移動させ、クラスター化を防止させる。
【0014】
好ましい電気機器は、電気ニードルおよび/または電気薄膜(electric thin film)素子または薄膜パッド(501)を含み、それは、加熱素子(502)、温度測定素子(503)、高電圧素子(504)、または伝導度測定素子(505)として機能する。シール可能な流体接続部(201、202および/または203)は、シール(204)を有するものが好ましい流体接続部であるが、注入用ニードルであってもよい。
【0015】
マイクロ流体チャネルシステムには、等速電気泳動による予備分離工程を行うかまたは行わないキャピラリー電気泳動を用いたクロマトグラフィ分離のための、組込み型の分離装置または外部接続型の分離装置、例えば直線状のキャピラリーまたはループ状のキャピラリーが備えつけられる。
【0016】
検出のために、マイクロ流体チップ装置には、蛍光、UV/VIS吸収、IR、伝導度または屈折率を測定するための装置ならびに質量分析計を含む光学的または電気的検出器を含む、組込み型の装置または外部接続型の検出装置が備えつけられる。
【0017】
外部接続型のマイクロ流体チップ装置は、好ましくは2つの層(801および/または802)からなり、この2つの層の間に配置されるマイクロ流体チャネルシステムを支えるものであり、貫通穴(804)を用いることで、ステアリングロッド(903)を含むステアリングプレート(902)を有する測定インターフェース(901)を含む外部装置に容易に接続可能である。マイクロ流体チップ装置には、好ましくは外部装置、電気ニードル(501)、電気パッド(501)、流体接続部(201、202および/または203)およびマイクロ流体チップ装置との間の容易で正確な接触を可能にする、貫通穴(804)が備えつけられる。
【0018】
2チャンバーのマイクロ流体ピラーフィルタでは、一方の反応チャンバー(101)内のマイクロ流体ピラーフィルタ(301)はマイクロ流体チャネルシステムに供給される液流中での気泡形成を防止し、他方の反応チャンバー(102)内の別のマイクロ流体ピラーフィルタ(302)は磁性マイクロビーズ(401)クラスター(403)の分離機として機能する。単一チャンバーのマイクロ流体チャネルシステムを用いる場合、そこに備えつけられた少なくとも1つのマイクロ流体ピラーフィルタは、気泡形成を防止することと、マイクロビーズのクラスターを分離することの両方に機能し得る。あるいは、単一チャンバーのマイクロ流体チャネルシステムは、1つを超えるマイクロ流体ピラーフィルタを含むことがあってもよく、1つのマイクロ流体ピラーフィルタが気泡形成を防止し、もう1つのマイクロ流体ピラーフィルタがマイクロビーズのクラスターを分離する。
【0019】
マイクロ流体チップ装置はシール可能な流体連結部を有しており、それらはこの目的のために構成された流体接続部または注入用ニードルであり、漏出防止シール(204)が提供されていることが好ましい。
【0020】
本発明は、マイクロ流体チャネルシステムにおいて磁性マイクロビーズを操作するのにより効果的な方法に関する上記のすべてのものである。本方法は、磁性マイクロビーズのクラスター形成を防止し、それによって、マイクロビーズ表面にフリーの反応性の表面を増加させる。本発明方法では、液体流は最初の反応チャンバー(101)に供給され、そこでマイクロ流体ピラーフィルタ(301)により気泡が取り除かれ、続いてその液体流を磁性マイクロビーズ(401)と接触させ、磁気ロッド(403)のスイッチが入っている場合には、磁性マイクロビーズをマイクロ流体ピラーフィルタ(302)に通じさせることができ、マイクロ流体ピラーフィルタ(301および302)中のロッド(303)間の隙間よりも小さい直径を有する磁性マイクロビーズにより形成されるクラスターは分離する。
【0021】
本発明はまた、磁性マイクロビーズを操作する当該方法を用いた結合アッセイを実施するための方法に関する。この結合アッセイは、磁性マイクロビーズ上の結合パートナーまたは結合部分との少なくとも1つの結合反応を含むものであり、ゲノム配列、mRNAまたはリボソームRNAの有無を決定するための小型の免疫アッセイまたはハイブリダイゼーション反応を実施するのに有用である。結合アッセイは、1つの結合ペアのみを検出または測定することに限定されるものではなく、複数の結合ペアの同時決定、いわゆる多重化に用いることができる。
【0022】
1以上のポリヌクレオチド配列を定量し決定する方法であって、マイクロ流体チップ装置に適用できる方法は、米国出願公開第20040053300号、米国特許第7,361,46号、米国出願公開第2003129589号、米国出願公開第2003082530号、米国出願公開第2006035228号、米国出願公開第5514543号、米国出願公開第2005214825号、米国出願公開第2004121342号、国際公開第0233126号、国際公開第2004063700号に記載され、ならびに刊行物、Kataja et al, J Microbiol Methods, Oct 2006, vol. 67, 102-113およびPirrung et al., Bioorg Med Chem Lett Sept. 2001, vol.11, 2437-2440に記載されている。マイクロ流体システムに適用されたまたは用いることができる従来のさらなる結合アッセイは、特許文献(米国特許公開第2002/0076825号、特許出願公開第2002/0123134号、特許出願公開第2004/0005582号、特許出願公開第2004/00969960号、特許出願公開第2006/0228749号)に記載されている。
【0023】
本方法はまた、米国特許出願第20090011944号に記載されるように、標的配列の量および単一オリゴヌクレオチド多型(SNP)を含む遺伝的変動(variation)の検出および決定を可能にする。本方法は、具体的には、米国特許出願第20040053300号および米国特許第7,361,961号に記載されるようなアフィニティー捕捉による転写解析(TRAC)アッセイを行うために、また抗体および抗原ならびにそれらの断片を決定するために適応される。
【0024】
本願の全体を通じて、様々な特許および文献が引用される。それらの特許および文献の開示内容は、出典明示により、本願発明が属する技術常識をより完全に記載するために、その全体が本明細書の一部とされる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、流体接続部および電気接続部ならびにマイクロビーズクラスターを操作するための外部に設置された磁気ロッドを有するマイクロ流体チップ装置の断面の略図である。
【図2】図2は、2つの反応チャンバーを有するマイクロ流体チャネルシステムの上面図の略図である。
【図3】図3は、ミニチュアロッドを含むマイクロ流体ピラーフィルタの構成を示す、マイクロ流体の反応チャンバーの1つの縦横断面(latitudinal and longitudinal cross-section)の三次元斜視図を表す。
【図4】図4は、測定インターフェースを有するステアリングプレート上に配置され、さらにドッキング・ステーションにより支えられたマイクロ流体チップ装置の断面の略図である。
【図5A】図5Aは、2つの反応チャンバーを有する四角形のマイクロ流体チップ装置の上面図を示す。
【図5B】図5Bは、図5Aで示される四角形のマイクロ流体チップ装置の底面図を示す。
【図5C】図5Cは、典型的な電気接触パッドのアレイ、PCR装置およびキャピラリー電気泳動のための直線状のチャネルを有する長方形のマイクロ流体チップ装置のシリコン層の上面図である。
【図5D】図5Dは、図5Cで示されるものと異なる電気接触パッドのアレイ、PCR装置およびキャピラリー電気泳動の直線状のチャネルを有する長方形のマイクロ流体チップ装置のガラス層の上面図である。
【図5E】図5Eは、図5Cおよび5Dで示されるものとは異なる電気接触パッドのアレイ、PCR装置およびキャピラリー電気泳動の直線状のチャネルを有する長方形のマイクロ流体チップ装置の上面図である。
【図5F】図5Fは、底面から見られる電気接触パッドアレイおよびPCR装置およびキャピラリー電気泳動の直線状のチャネルを有する、図5C〜5Eで示されるものに相当するマイクロ流体チップ装置の底面図である。
【図5G】図5Gは、CEのための直線状のチャネルを有する長方形のマイクロ流体チップ装置の上面の概略図である。
【図5H】図5Hは、ループ状のCEキャピラリーを有する四角形のマイクロ流体チップ装置の上面の略図である。
【図6】図6は、液体ニードル(liquid needle)の断面の略図である。
【図7】図7は、補助装置を有するマイクロ流体チップ装置設計の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(発明の詳しい記載)
磁性マイクロビーズと関連する生体学的固相支援結合アッセイ(biological solid phase assisted binding assay)を実施するためのマイクロ流体のオンチップ・システムを用いた場合、磁性マイクロビーズはクラスター化する傾向を示す。クラスター化は、試料中に存在する標的結合パートナーが磁性マイクロビーズ上に効率よく付着することを妨げ、また洗浄工程での効率的な洗浄も妨げる。本発明の1つの態様によれば、磁性マイクロビーズクラスターをマイクロ流体ピラーフィルタに通じさせることにより、磁性マイクロビーズクラスターを分離または脱会合させることができた。磁性マイクロビーズを操作することにより、その表面は開放され、マイクロ流体チャネルシステムの全体を通じて全方向から周囲溶液が接触でき、それによって、標的結合パートナーとその対応物との間の反応性が改善されて、固定化された結合ペアの形成が増加した。結合アッセイの感度が向上した。本発明の他の態様によれば、磁性マイクロビーズ上に固定化された結合ペアの向上した精製度および向上した未結合の反応物や溶液の除去もまた達成された。したがって、反応速度が加速され得ることで、結合アッセイの効率が改善され、より信頼性のある精度の高い結果を導くことができた。本発明の他の形態によれば、液体をマイクロ流体ピラーに通じて輸送した場合、気泡が壊された。これにより、気泡形成により結果が歪められるという問題は解決された。
【0027】
本発明の別の態様は、マイクロ流体チップ装置の組み込みの際に、およびマイクロ流体装置への小型の液体分岐点、マイクロチップ電極の正確な嵌込みの際に直面し得る課題を解決する。この課題は、本願発明のマイクロ流体チップ装置に、分岐点の嵌込みを確実にするステアリングロッドのための貫通穴を測定インターフェースに設けることで解決でき、装置に設けられた穴に注入用ニードルおよび電気ニードルを貫き通るように、ステアリングプレートのステアリングロッド上に貫通穴を配置することにより穴を調節した。
【0028】
マイクロ流体チップ装置は、小型の微細加工装置であり、マイクロリッターまたはナノリッター容量の試料、試薬を含有する液体流、洗浄液および溶出液が、プラットフォームまたはマイクロチップ上のマイクロチャネルにおいて操作される。流量は、機械的な力、例えばマイクロポンプ、注入器からの圧力またはキャピラリー電気泳動による圧力により達成される。マイクロスケールの流体の挙動は、マクロスケールの挙動とは異なっているため、そのマイクロスケールの挙動が、特に分離、捕捉、単離、集束、増強、濃縮、物理的破壊、混合、配列決定、増幅および/または結合アッセイならびに余剰の検出用標識に起因するバックグラウンドの低減を含むいわゆるマイクロ・トータルアナライズシステム(μ−TAS)にマイクロ流体チップ装置を応用できるものとする。
【0029】
組込み型のマイクロ流体チップ装置は、連続的な固液相の結合工程および放出工程を実施するのに必要とされる全ての要素をマイクロスケールの構造体に含んでおり、それらは、マイクロ流体チップ装置内で組み立てられるかまたはそれに密着して取り付けられるものであり、チャネル、反応チャンバー、電極素子、電磁気素子、足場、分離装置、光学素子が挙げられる。組込み型のマイクロ流体チップ装置は、物理学的、生物物理学的、生物学的、生化学的もしくは化学的反応、例えば結合反応、吸着、洗浄、脱着、増殖、濃縮、分離、検出などを容易にする。マイクロ流体チップ装置は、流体のマイクロスケールの構造体を支えるプラットフォームである。マイクロ流体チップ装置は、様々な形状または構成であってよく、長さ、幅ならびに高さまたは深さは可変であり得る。それは、正方形でも、長方形でも、円形でも、楕円形でもよく、別の有用な変則的な形状であってもよい。マイクロ流体チップ装置の主要な表面サイズは、大きく変化してもよく、例えば、約0.5cmから約10cm、特徴的な面積としては約1cmから5cmであり得る。マイクロ流体チップ装置は、それらの層表面の間に組み立てられるチャネルまたは反応チャンバーを含んでもよい。
【0030】
外部接続型のマイクロ流体チップ装置は、補助的な外部装置に連結されたステアリング内にまたはその上に配置されてもよく、マイクロ流体チップ装置を、ドッキング・ステーション(800)により支えられる測定インターフェースを通じてマイクロ流体チップ装置の機能を制御する外付の磁気機器、電気機器または光学機器に連結する。測定インターフェースとマイクロ流体チップ装置は共に、マイクロリッタースケールでの総分析を可能にする。
【0031】
マイクロ流体チップ装置は1以上の層を含み、好ましくは下層と上層の2つの層を含む。下層は、非浸透性の成形可能な固体または半固体の多孔性もしくは非多孔性のチップ素材、例えばシリコン、ゴム、ガラス、セラミック、プラスチック、ポリマーまたは共重合体で作製されていてよい。上層は好ましくは透過であり、ガラス、石英、パイレックス(登録商標)またはホウ珪酸塩で作製されたものであってよいが、窓に供されるシリコンもまた用いることができる。ポリマー微細加工、複製技術(replication technique)、一体成型または鋳造を用いた直接的な製造法を用いることができる。イメージ・マスキングの使用を含むオプティカル・リソグラフィ・パターニングおよび熱エンボス加工は、微細加工に適用できる系の幾つかの例である。
【0032】
本発明の1つの態様によれば、マイクロ流体チップ装置の1以上の層の上面および下面に、へこみ、溝、凹部およびニッチを含む窪みが設けられ得る。液体を送るための管状チャネルは、下層の上側の窪みに都合よく嵌込むことができる。下層の下側で、電気回路および電極を、マイクロチップ装置を接続する分岐点に嵌込めるように、都合よく半田付けおよび配置することができる。別のエッチング方式が、チャネル形状のための窪みを作り出すために用いられる。これらの形状は、発破用火薬またはレーザー切断によって作り出される。しかしながら、これらの方法が広く用いられていないのは、シリコン層のエッチングが非常に容易なためであり、望ましい下層は通常シリコンで作られたものである。好ましくは、シリコン層はウエハーまたは半導体、例えばシリコン結晶の薄切りであり、そこでの超小型回路はさまざまな金属のドーピング、拡散、イオン注入、ケミカル・エッチングまたは沈着によって構築される。ウエハーは、集積回線のような半導体の製作に鍵となる重要なものであるが、マイクロ流体チップ装置を作製するのにも便利でもある。
【0033】
マイクロ流体チップ装置の2枚の層は、好ましくはしっかりと閉じられるか密閉される。本発明の1つの態様によれば、層の間からの漏出は許されない。ポリジメチルシロキサン(PDMS]が、いずれのチャネルシステムを閉じるのにも特に有用な物質である。層を一緒に溶接するか、圧着または接着する。好ましい方法は、接着、熱接合または溶剤結合の使用である。層を一緒に連結する前後に、層を穿孔する。貫通穴は、好ましくは全てがドッキング・ステーションにより支えられた電気、流体および/または磁気の制御装置ならびに視覚の検出コンタクトを測定インターフェースにおけるマイクロ流体チップ・ステアリングプレートに嵌込むために配置される。
【0034】
マイクロ流体チップ装置は、マイクロ流体チャネルシステムをマイクロチャネルと反応チャンバーで支えるプラットフォームである。マイクロ流体チャネルシステムは、小型化されたチャネルシステムであり、細長い管状のチャネルおよび反応チャンバーを含み、そこで、吸着および脱着を含む物理的処理、化学的処理、生物物理学的処理または生化学的処理などの処理が行われる。このマイクロ流体チャネルシステムは、流体流が外付けの供給源から導入されるか、注入されるか、ポンプで汲み込むこと、および当該マイクロ流体チャネルシステムで処理されることを可能にし、それは、注入口および/または排水口として働き、反応チャンバーに導く、少なくとも1つの、好ましくはより多くの流体もしくは液体接続部またはポートを含む。
【0035】
マイクロ流体チャネルシステムは、液体がそれを通過できるようにするいずれかの物質を含んでもよい。好ましくは、チャネルは、ゴム、テフロン(登録商標)(ポリ四フッ化エチレン)または別の有用な材料で作られたチューブである。好ましくは、それは、生体適合性の物質または生体適合性にされ得る物質で作られたものであるべきである。マイクロ流体チャネルシステムは、チップ装置のサイズに応じた任意の大きさであってよいが、一般的には、内径で10ミクロンから最大1ミリメートルの範囲にあるマイクロスケールである。
【0036】
チャネルは、下面とそのチャネルの下面から上方に伸びた少なくとも2個の壁を有するチップ内の構造物であり、2個の対壁の長さはその2個の対壁の間の距離よりも長い。従って、チャネルはその内部の長さに沿った液体の流れを可能にする。チャネルは、好ましくは覆いのあるトンネルである。
【0037】
反応チャンバーは、液体または流体試料を含めることができるマイクロ流体チップ装置表面上の窪みまたは小さいキャビティまたはウェルである。反応チャンバーは、チャネルの下面から延びる1以上の壁により、少なくとも2つの面で囲まれた下面を有する。壁はいずれの形態であってもよいが、一般的には、それらはS字に曲がった様式でまたはマルチ角の様式で上方に広がる。反応チャンバーおよびチューブの下面は、チップの上面と同じ高さであってもよいし、チップの上面より高くてもよく、チップの上面より低くてもよい。反応チャンバーまたはチャネルの側面または壁は、チップの下層を構成するもの以外の材料で作られていてよい。このように、チップの下面は、電気力、電磁気力を伝え得る薄い材料を含んでいてよく、1以上の反応チャンバーまたはチャネルの壁は、電気力の伝導を妨げる絶縁材を含んでいてよい。反応チャンバーおよびチャネルの壁は、シリコン、ガラス、ゴムおよび/または1以上のポリマー、プラスチック、セラミックまたは金属を含むいずれかの材料で作られていてよい。好ましくは、チャネルおよび反応チャンバーは、生体適合性の材料または生体適合性にされ得る材料で作られ、そこで、標的結合パートナーおよび他の反応物が磁性マイクロビーズ上で操作される。
【0038】
排水口または注入口の両方として機能し得る流体接続部または液体接続部は、流体試料がチャンバーに出入りできる管状のチャネルおよび1個または2個の反応チャンバーを含むマイクロ流体チャネルシステムへの隙間またはポートである。シールは、好ましくは、電気力もしくは磁気力またはその組み合わせにより制御される。ポートは、任意の大きさであってよいが、試料を、物理的な力によってポートを通じて輸送することを可能にするか、またはピペット、注入器、注入用ニードルもしくは試料を付与する別の方法によりポートを通じて分配することを可能にする形状およびサイズであることが好ましい。シール可能な流体接続部は、液体流の注入口および/または排水口として働くポートである。それらは、機械的に閉じること、またはマイクロ流体システムのために具体的に構成された注入用ニードルもしくは流体接続部により閉じることができる(米国特許第6,319,476号)。本願発明に有用な典型的なシリンジを図6に示す。
【0039】
マイクロ流体ピラーフィルタは、マイクロ流体チャネルシステムにおいて作り出された複数の非常に小さいロッドを含む小型の足場である。そのような小型のロッドは、以前ではマイクロビーズ保持のための機械的なバリアとしてマイクロ流体システムで用いられていた。本発明においては、マイクロ流体ピラーフィルタは、ただ単に磁性マイクロビーズの保持のために用いられるのではなく、それらはとりわけ磁性マイクロビーズクラスターの分離のために、さらにチャネルシステム内に供給される溶液中での気泡形成を防止するために用いられる。ロッドは、四極子でも、円形、楕円形または卵形の断面を有していてもよく、マクロサイズ、マイクロサイズまたはナノサイズで作製されてよく、約1ミリメーター〜約5ミリメーターの高さを有していてもよく、円形であっても四角形(quadratic)であってもよい断面の直径は、約20マイクロメーター〜約1ミリメーターである。当然のことながら、そのサイズはマイクロ流体チップ装置のサイズに依存し、同様にそのサイズはマイクロメーターの大きさであってよい。本発明の1つの態様によれば、本発明のマイクロ流体ピラーフィルタは、好ましくは、磁性マイクロビーズの直径より大きく磁性マイクロビーズのバリア通過を可能にする隙間を有する。
【0040】
磁性マイクロビーズは、いずれかの適切な磁気機器により及ぼされる磁気力を用いて操作することができる。磁気力は、磁場によって磁性マイクロビーズに働く力であり、例えば磁気ロッドによりもたらすことができる。本発明の1つの態様によれば、磁性マイクロビーズを操作するのに好ましい磁気機器は、外部の磁気ロッドであり得る。本発明において、磁性マイクロビーズの操作は、混合するためのいずれかの機械的手段または音響的手段による混合に置き換える。チャネルシステム内での分離した磁性マイクロビーズおよび溶液の十分な動きは、試料、試薬または他のいずれかの溶液を、マイクロビーズ表面またはその表面に固定されたいずれかの物質にあらゆる方向から接触できるようにすることで達成される。磁気ロッドを用いることで、磁性マイクロビーズを反応チャンバー内のピラーフィルタを通過させ、試料、試薬および他の溶液中の成分と磁性マイクロビーズの表面とが十分に散らばるようになる。
【0041】
磁気力は、磁場の適用により磁性マイクロビーズに作用する力を意味する。粒子は、その粒子の操作に十分な磁気力が与えるために、磁性または常磁性でなければならない。典型的な磁気粒子は、超常磁性材料で作製されたものである。粒子が磁場にあれば、磁気双極子が磁性マイクロビーズまたは粒子中に誘導される。十分に大きな磁気操作力を達成するために、磁性マイクロビーズの容積磁化率を最大にすべきであり、磁界の強度を最大にして磁界の強度勾配を最大にすべきである。
【0042】
本発明において、常磁性マイクロビーズが好ましいのは、磁気双極子を外部からの印加磁場によって誘導することができるし、また外部からの場を切ればゼロにすることができるからである。市販の常磁性マイクロビーズまたは他の磁性マイクロビーズを用いることができる。これらの市販の磁性マイクロビーズは、0.5μ〜10μ、またはそれ以上の大きさを有する。それらは、異なる構造および組成を有していてもよい。磁性マイクロビーズは、薄いラテックスまたはポリスチレン・シェルにカプセル化された強磁性物質を有してもよい。別のタイプの磁気粒子は、ラテックスまたはポリスチレン周囲に拡散された強磁性ナノ粒子を有する。これら両方の粒子表面は、実際にはポリスチレンであり、修飾されて様々なタイプの分子に連結されていてもよい。それらは、例えば、アビジンもしくはストレプトアビジン、またはいくつかの他のアフィニティー標識試薬で標識または覆われた類似のものであってよい。
【0043】
磁性マイクロビーズの操作は、顕微鏡スケールを超えて生成される磁場分布を要求する。そのような磁場を生成するための1つの方策は、マイクロ電磁ユニットの使用である。当該ユニットは、電流を適用した場合に、磁場を誘導することまたは作り出すことができる。スイッチのオン/オフ状態およびこれらのユニットに適用される電流の大きさが、磁場分布を決定し得る。マイクロ磁場ユニットの構造および大きさは、磁場分布の要求によって設計することができる。磁性マイクロビーズの操作には、磁性マイクロビーズの直接的な運動、集束およびトラップが含まれる。磁場における磁性マイクロビーズの運動に関する理論および実践ならびにその応用は、教科書を含む文献で見つけることができる。
【0044】
本明細書中に記載の説明から明らかなように、本発明の目的は、磁性マイクロビーズを操作することに関する新規かつ独創的な方法を提供することであるが、本発明の目的はマイクロ流体チップ装置における電気機器の使用を排除しない。
【0045】
本発明の1つの態様によれば、電気機器は、電気接続部、特に電気ニードルまたは電気薄膜素子または電気パッドを含み得る。電気薄膜素子は、発熱素子、温度測定素子、高電圧素子または伝導度測定素子として機能し得る。薄膜パッドは、一般には円形であるが、他のいずれの形状であってもよい。電極はまた、ドープ半導体を含んでいてもよく、半導体物質は少量の他の導電物質が混合される。
【0046】
本発明において、電気力は、例えばキャピラリー電気泳動での分離のために用いられてもよい。電気力は、PCR反応を実施する場合に用いられる加熱および温度測定のために用いることができるが、温度調節および温度制御はまた、すべての種類のバイオアッセイに重要である。これは、反応チャンバーまたは管状チャネルの電気接点パッドの両側に電気接続部を接続し、それによって、試料を加熱し、温度を測定できるようにすることで達成される。特に、電気接続部がチャネルの両側に接続される場合、定電場は、試料と磁性マイクロビーズの両方が移動されることで達成される。一対の電気パッドまたは電極はまた、キャピラリー電気泳動の前に標的パートナーの濃縮のために用いることができる。
【0047】
誘電泳動は、抗原と抗体、および互いに対して親和性を有する化学物質(群)を用いた結合アッセイを実施するために用いることができる。誘導泳動力は、不均一電場での分極粒子に作用する力である。通常の誘電泳動は、不均一電場で分極したマイクロビーズの移動である。一般に、誘電泳動には、正の誘電泳動および負の誘電泳動の2つのタイプがある。正の誘電泳動においては、粒子は誘電泳動によって強電場領域(strong filed region)へ移動する。負の誘電泳動においては、粒子は誘電泳動によって弱電場領域(weak filed region)へ移動する。固定された標的パートナーを有するマイクロビーズが正のまたは負の誘電泳動を示すかどうかは、その磁性マイクロビーズが周囲の媒質よりも分極性が強いか弱いかに依存する。
【0048】
マイクロ流体チャネルシステムの分離装置には、予備分離工程としての等速電気泳動を伴うまたは伴わない電気泳動を実施する直線状のまたはループ状のチャネルを含む、組込み型または外部接続型のクロマトグラフィ装置が備えつけられる。キャピラリー電気泳動は、本発明で特に便利である。等速電気泳動は、荷電粒子を分離するために分析化学で用いられる技術である。それは、電気泳動のさらなる発展形である。試料構成物質間に急激な境界を生成するための不連続な電場を用いる強力な分離技術である。等速電気泳動では、試料は速いリーディング電解質と遅いターミネイティング電解質の間に導入される。電位の印加後、低電場がリーディング電解質に生成され、高電場がターミネイティング電解質に生成される。試料レベルのpHは、逆方向に移動するリーディング電解液の対イオンによって決定される。第一段階で、試料構成物質は異なる速度で移動し、互いから分離し始める。より速い構成物質は、試料ゾーンのリーディング部分により低い電場を生成するであろうし、逆の場合も同様であろう。最終的に、構成物質は、互いから完全に分離され、急激な電場の差異で取り囲まれた平衡濃度に濃縮される。特異的なスペーサまたはマーカー分子が、物理的に目的の試料構成物質を分離するために、試料に加えられる。等速電気泳動は、最大解像度が後者で達成されるとき、従来の分離技術に対して優位性を示す。実験パラメータの選択は複雑なままであるが、適切なパラメータの選択は当業者には既知の標準物質を調べることにより為すことができる。
【0049】
本発明において、光学機器は、標的パートナーの動きを調査するための手段、および結合アッセイが実施され完了した後に標的パートナーを測定または検出するための手段を含む。検出のために、マイクロ流体チャネルシステムは、蛍光検出器、レーザー誘起蛍光検出器、質量分析器およびUV/VIS吸光、IR、伝導度または屈折率を測定するための機器を含む組込み型または外部接続型の装置を備えていてよい。
【0050】
本発明のマイクロ流体チップ装置は、自動システムであることが好ましく、これは、このシステムが実質的に手作業の手順を要しないこと、例えば、実施者による試料または試薬のピペット操作または移動、チューブの反転または激しい攪拌、遠心分離機またはインキュベーターに試料を設置することを要しないことを意味する。しかしながら、自動化したシステムは、試料を分注すること又は注入することによってシステムに試料を手作業で付与すること、あるいはシステムにより完全に処理され、反応流体から回収された試料成分をチューブから取り出すことの手作業による回収を要してもよい。自動システムは、組込み型のチップシステムの操作の間に、流量の駆動系を制御する実施者、処理および分析作業の実行のための物理的な力を作り出すための駆動系を制御する実施者、試料成分の移動のための物理的な力を作り出すための駆動系などを制御する実施者を要しても要しなくてもよいが、これらの統括方法はコンピュータ化され得る。自動システム、例えば本発明の自動化集積型バイオチップシステムは、好ましくはコンピュータ制御である。
【0051】
本発明において、磁場、特に磁気ロッドは、磁性粒子および磁性粒子上に固定化された標的パートナーまたは結合ペアにのみ力を及ぼす。本発明は、非磁性粒子、例えばポリスチレン粒子またはビーズの使用に適用可能ではない。したがって、本発明は、磁性マイクロビーズを利用するマイクロ流体チップ装置に関するものである。
【0052】
本発明の1つの態様によれば、マイクロ流体ピラーフィルタは好ましくは1以上の磁気ロッドによって制御され、磁気ロッドは、ある1つの反応チャンバーから別の反応チャンバーへの磁性マイクロビーズの移動を可能にし、それによってマイクロビーズが新しい試料、試薬および洗浄液と接触できるようにする。試料、試薬および洗浄液を供給する間に分析物および試薬が随意に付着しおよび放出される磁性マイクロビーズは、古い試料、試薬、洗浄液および他の溶液を除去するのと同時に、溶液の流れと一緒に漏出することが防止される。
【0053】
マイクロ流体チップ装置、その構造およびその製作は、図面を参酌することによりさらに詳細に説明される。
【実施例1】
【0054】
図1は、本発明のマイクロ流体チップ装置の断面を概略的に図示したものである。マイクロ流体チャネルシステム(100)は、1個または2個の反応チャンバー(図1では区別されない)を含み、そこで磁性マイクロビーズ(401)が形成するクラスター(402)が操作される。マイクロ流体チャネルシステム(100)には、1以上のマイクロ流体の接続部またはマイクロ流体ニードル(200)を備え、それらは好ましくは漏出防止シール(204)によりシール可能である。マイクロ流体チャネルシステム(100)には、1個または2個のマイクロ流体ピラーフィルタが備えつけられる。ピラー(303)およびそれらの隙間(304)を有する当該マイクロ流体ピラーフィルタ(300)を概略的に図1で示す。磁性マイクロビーズ(401)が形成するクラスター(402)および磁性マイクロビーズ(401)を操作するための磁気ロッド(403)を示す。マイクロ流体チップ装置は、2本の電気ニードル(501)および別の電気薄膜素子またはパッド(501)を包含する電気機器(500)も含む。これらの素子は、加熱素子(502)、温度測定素子(503)、高電圧素子(504)および伝導度測定素子(505)を含む。本発明の好ましい実施形態において、マイクロ流体チップ装置(800)は、2つの層(801、802)を含む。下層(801)は好ましくはシリコン層であり、そこにマイクロ流体チャネルシステムが埋め込まれ、上層は透明層、例えばガラスの蓋(802)であり、それはマイクロ流体チャネルシステム(100)で実施される結合アッセイからの成分の流れをモニタすることを可能にするものである。このチップ装置の下層は、ステアリングプレート(図1では示されていない)から突き出した、ステアリングニードル(903)、電気ニードル(501)および液体接続部(200)のための穴(図1では示されていない)が備えつけられる。このチップ装置の上層(802)は、分離を実施するための直線状のまたはループ状のチャネル(600)(図1では示されていない)および検出のための手段(700)(図1では示されていない)を、好ましくは含む。
【0055】
図2は、上から見たマイクロ流体チャネルシステムの好ましい実施形態を概略的に図示したものである。マイクロ流体チャネルシステムは、1以上の、好ましくは2つの反応チャンバー(101および/または102)を3つのシール可能な液体接続部(201、202および/または203)と共に含み、それらはシール可能であり、液体流のための注入口および/または排水口として働く。換言すれば、液体供給は、液体接続部(201、202および/または203)のいずれかから実施することができ、選択された流れの向きおよび方向を逆転させることも可能である。反応チャンバー(101および/または102)はそれぞれ、少なくとも1つの流体ピラーフィルタ(301、302)を備えている。マイクロ流体ピラーフィルタのピラーは、ピラーまたはロッド、例えばピラーロッド(303)と、磁性マイクロビーズが少なくとも1個ずつ通過できるサイズの空間または隙間(304)とで構成される。液体は、反応チャンバー(101)またはいわゆる気泡チャンバーに導く主要な供給チャネルとして働き得る接続部(201)を通じて供給されてよく、そこで、気泡はマイクロ流体ピラーフィルタ(301)によって、ろ過される。その後、液体流は、外部に配置された磁気ロッド(図2では示されていない)を用いて操作され得る磁性マイクロビーズクラスターと接触する。磁性マイクロビーズを、反応チャンバー(102)内のマイクロ流体ピラーフィルタ(302)を通じて、または反応チャンバー(101)内のマイクロ流体ピラーフィルタ(301)を通じて前後に、あるいは2つのマイクロ流体フィラー(301)および(302)の両方を通じて前後に動かすことが可能であり、それによって両方の反応チャンバーが用いられる。3箇所の液体接続部の存在が、いずれかのピラーフィルタ(301および/または302)の後方の反応チャンバー(101または102)のいずれかのチャンバー内に磁性マイクロビーズをトラップすることを可能にし、例えば液体接続部(202)を通じてシステム内の液体が交換または充填されるか、またはシステムから除去される場合、ピラーフィルタ(302)またはピラーフィルタ(301)後方のチャネル(103)内に磁性マイクロビーズをトラップすることを可能にする。
【0056】
試薬、緩衝液または溶出液を含む新しい交換用液体の導入または注入後に、磁気ロッドで切り替えることによって、いずれかの反応チャンバー内に存在する磁気マイクロビーズを新たに導入された溶液(試薬、洗浄液または溶出液)中に戻すまたは移動させることが可能である。磁性マイクロビーズは、クラスターを形成する傾向があり、磁性マイクロビーズクラスターは、外部の磁気ロッド(図2では示されていない)を反応チャンバー(101および/または102)のピラーフィルタ(301および/または302)を越えて動かすことによって、外付けの磁気ロッドによって壊すことができる。反応チャンバー(102)内のマイクロ流体ピラーフィルタ(302)が、反応および精製または洗浄中の磁性マイクロビーズのクラスター化を防止するために用いられる。マイクロ流体チップ装置の電気機器(500)は、反応チャンバー(102)を横切って配置される加熱素子(502)および温度測定素子(503)ならびに高電圧接点(504)を含む電気薄膜素子(501)を含み、それらは、反応チャンバー(102)の両側面に又はマイクロ流体チャネル(103)の両側面に配置される。これらの電気機器または電気薄膜素子(500)は、例えば、相補的なポリ−またはオリゴ−ヌクレオチド間の結合アッセイの完了後にPCR反応を実施するために、あるいは所望の結合反応後の所望の成分または標的パートナーもしくはそれらの対応物のいずれかであって、いずれも結合ペアを決定するのに望ましいものを含有する処理後の反応物の濃縮のために用いることができ、その後に処理された反応物を有する液体を、標的パートナーまたはその対応物を分離するためのキャピラリー電気泳動(CE)(600)によるキャピラリー・システムに入れ、適当な装置を用いて当該標的パートナーまたは反応物を記録および検出(700)することを可能にする。
【0057】
流体流が分画および決定のためのシステムに入る位置の直前に、さらなる反応チャンバーが配置されてよい。このさらなる反応チャンバーは、PCRサイクルのために、および標的ポリ−もしくはオリゴ−ヌクレオチド配列またはその相補的なプローブに検出可能な標識を提供するために、あるいは増幅されるべき各配列に2つのユニバーサルプライマーが付与される2連続のPCRサイクルを実施することによって余剰の検出可能な標識に起因するバックグラウンドを低減または低下させるために用いることができる。この低下は、第一のPCRサイクルをユニバーサルプライマーの一方と相補的な検出可能な標識が与えられた配列を用いて開始し、第二のPCRを他方のユニバーサルプライマーと相補的な配列を備えた別の配列を用いて開始することによって、達成される。次いで、検出可能な標識およびアフィニティー標識が与えられるこの場合の二本鎖プローブ配列は、磁性マイクロビーズ上に捕捉または固定化される。二本鎖プローブまたはハイブリッドが形成され、そのハイブリッドを磁性マイクロビーズと接触させることによってハイブリッドにアフィニティータグおよび検出可能な標識を付与し、そのマイクロビーズをマイクロ流体ピラーフィルタに通じさせる。余剰の液体、試薬などをいずれかの排水口を通じて除去する間、磁性マイクロビーズをマイクロ流体ピラーフィルタのいずれかの後方で維持する。この工程は、その後、洗浄溶液を用いて繰返される。この精製の後、検出可能な標識を備えたプローブまたは標的は、磁性マイクロビーズ上のハイブリッドから少量の溶出液中に溶出される。決定されるべき精製された標的またはプローブを含有する濃縮溶液を、分離システムに導入し記録する。
【0058】
図3は、マイクロ流体ピラーフィルタ(302)の構築を実際に示すマイクロ流体の反応チャンバー(102)の1つの縦横断面の三次元斜視図を表す。反応チャンバーを有するマイクロ流体チャネルシステムは、マイクロ流体チップ装置の下層(801)に埋め込まれている。本発明の好ましい実施形態において、ピラーロッド(303)は、例えば、マイクロスケールで約350μmの高さを有する。それらは形状が長方形、卵形または円形である。ピラーロッドが長方形の場合、側面は約50μm〜100μmであり、ピラーロッドが円形の場合、直径が約50μm〜100μmである。ロッドは、好ましくは約25μmの空間または隙間が設けられて配置され、それは例えば約10μm〜20μmまでの直径を有する磁性マイクロビーズがそのマイクロ流体ピラーフィルタを通過することを可能にする。本明細書で提供される全ての寸法は、単なるおおよその寸法である。したがって、その寸法はマイクロ流体チップ装置のサイズおよび大きさに応じて変化してよく、数センチメートルからミリメートルまでの間で変化してもよい。したがって、それらはマイクロサイズまたはマクロサイズであってもよい。
【0059】
図4はマイクロ流体チップ装置(800)の略図であり、補助装置(900)に配置され、得られた結果はさらなる計算と処理のために集められ、蓄積されるソフトウェア関連の自動装置または半自動装置のような補助装置に接続されてもよい。マイクロ流体チップ装置(800)は、測定インターフェース(901)に連結された突出したステアリングロッド(903)を有するステアリングプレート上に配置され、システム全体がドッキング・ステーション(904)により支えられている。マイクロ流体チップ装置は、2つの層(801)と(802)との間に埋め込まれたマイクロ流体チャネルシステムを含む。マイクロ流体チャネルシステム(100)は、流体接続部または連結部(200)、磁性マイクロビーズ(401)、電気ニードルおよび電気パッドを含む電気接続部または連結部(500)を含む。上層は透明であり、蛍光測定用のウィンドウ(701)、溶液中の成分のPCR反応または濃縮を実施するための手段(702)およびキャピラリー電気泳動(703)を実施するための装置を含んでいてよい。図4で、液体接続部(200)、ステアリングニードル(903)ならびに加熱用の、温度測定用の、高電圧集積(concetration)用の、および伝導度測定用の電気ニードル(501)または電気薄膜素子を含む電気機器(500)を直立状態の長方形の箱として概略的に示す。マイクロ流体チップ装置は、チップステアリングニードルまたはステアリングロッド(903)をチップ装置上の穴(図4では示されていない)に嵌込むことによって、チップ・ステアリングプレート(902)上に配置される。磁気ロッドは図4には示されていない。任意の空冷ノズル(905)は図4に示す。マイクロ流体チップ装置の下層は、好ましくはそこでの窪みでマイクロ流体チャネルシステム(100)を支えるシリコン層(801)であり、その上層(802)は好ましくは透明層、例えば加熱、温度測定、高電圧集積および伝導度測定用の電気機器(500)を含むガラスカバーである。上層の透明層はまたキャピラリー電気泳動を実施するための手段および検出のための手段を含む。
【0060】
図5A−5Hは、異なる形状の、直線状のまたはループ状のチャネルを備えたマイクロ流体チップ装置であって、そのチップ装置上の様々な位置に配置された補助的な電気機器および光学機器を含むチップ装置を図示する。
【0061】
図5Aは、反応チャンバー(101および102)、流体接続部(201および202)およびマイクロ流体ピラーフィルタ(301および302)を有するマイクロ流体チップ装置の上面図を示す。接触パッドまたは薄膜素子(501)および電線(506)を含む電気接続部を図5Aで示す。マイクロ流体チップ装置には、液体接続部または液体ニードルのための穴(201および202)およびステアリングニードルのための穴(803)が設けられている。
【0062】
図5Bは、図5Aで上面が示されたマイクロ流体チップ装置の底面を図示する。図5Bで示されるマイクロ流体チップ装置の底面は、シリコン層の下面に置かれた加熱素子のための接触パッド(501)および電線(506)を実際に示す。液体接続部のための穴をマークする(201、202)。穴(505)は電気ニードルのためのものである。
【0063】
図5Cは、直線状のCEチャネル(600)によるポリメラーゼ連鎖反応−等速電気泳動−キャピラリー電気泳動(PCR−ITP−CE)を実施するためのマイクロ流体チップ装置におけるマイクロ流体チャネルシステム(100)の構図を示す。図5Cは、シリコン層の上側の外観を図示する。気泡フィルタとして機能する反応チャンバー(101)およびマイクロビーズクラスターの分離機として機能する反応チャンバー(102)ならびに加熱および温度測定素子のための電気パッド(501)の構造は、すべてのチップタイプと同じである。加熱および温度測定素子のための電気接触パッドの位置は変更可能である。PCR−ITP−CEチップは、高電圧および伝導度検出用の薄膜素子(501)もまた有する。伝導度検出電極は、20μmの間隔で2つの平行した20μmの電極を有する。直線状のCEチャネル7(600)の長さは約33mmである。流体接続部(201、202および/または203)およびピラーフィルタ(301および/または302)をマークする。ハンドル(steering wheel)のための穴をマークする(803)。
【0064】
図5Dは、ガラス層の上面の外観である。ガラス層は、ステアリングニードルおよび電気接触パッド(501)のための穴または電気ニードル(501)および電線(506)のための穴、ならびに図5Cで示されるような流体接続部(201、202、203)、電線(506)およびゲル電気泳動、PCRおおよびITP−チャネル(600)を有するマイクロ流体チャネルシステム(100)を有する。
【0065】
図5Eは、わずかな変更が加えられたガラス層越しに見られるガラス層およびシリコン層における装置を表す、チップの上側からの外観である。
【0066】
図5Fは、図5Eで示されるマイクロ流体チップ装置の底面図である。PCR−ITP−CEチップは、流体接続部または連結部のための7個の穴、電気接続部のための14個の穴(805)、およびステアリングニードルのための3個の穴(803)を有する。接続部およびパッドの位置は変更可能である。
【0067】
図5G〜5Hは、CE/ITPマイクロ流体チップ装置の試料注入システムを示す。
図5Gは、直線状のCEチャネルおよびマイクロ流体チャネルシステムを有するシリコン層の上側の外観を図示するものであって、そこでの試料注入は圧力注入により行われるが、圧力注入と同時に電気的注入を用いることも可能である。反応チャンバー(202)から試料ループ(600)への圧力注入は、試料ループへの電気的注入と同時に行われてもよい。伝導度検出のための電気接触パッドまたは電極(505)ならびに薄膜電線(506)を示す。伝導度測定電極は、試料注入またはCEチャネルでの濃縮をモニタするために用いることができる。それは、圧力および/または電気的注入を同時に適用することで2本の平行な電極対間の試料濃縮を止めることが可能である。図中の試料注入ループ装置は、それぞれ4.1mm(23nl)および:6.3mm(35nl)であるが、マイクロ流体チップ装置のサイズに応じて変更可能である。ITP出力からCEチャネルの終わりまでの距離は、22.5mmである。試料注入ループは、中心間から100μmの位置でのダブルT分岐点に配置される。ダブルTからIPTまでの距離は好ましくは9.8mmであり、ITP出力からCEチャネルの終わりまでの距離は22.5mmであってよい。曲がりくねった形状のCEチャネルを有する試料注入ループは、その試料注入ループが4.1mmであっても、9.6mmであってもよい。ITP出力からCEチャネルの終わりまでの距離は例えば58mmであってよい。
【0068】
図5Hは、ループ状に形成されたCEチャネルを有するシリコン層の上側の外観を図示し、試料注入は圧力注入により行われる、ガラス層の下側の外観である。ガラス層は、ステアリングニードルのための穴(803)またはキャビティを有する。
【0069】
図6は、液体ニードルの略図であり、当該ニードルは、電気ニードルと同じもの(図示していない)であり、例えば3mm×3mmのマトリクスに配置される。マイクロ流体チップ装置の断面を、シリコン層(801)およびガラス層(802)として図6の上側部分に示す。液体ニードルおよびステアリングニードルの構造は、好ましくは鋼管で作製されたものである。プラスチックパイプ・カバーは液体ニードル(200)をマイクロ流体チップ装置上の連結部の穴に導く。このプラスチックパイプ・ステアリングは、ステアリングプレート上の先細のボルトに基づく。液体ニードルは、液体ニードルの頭にゴムのシールを有する。
【0070】
図7は、温度制御および蛍光/伝導度検出を含むマイクロ流体チップ測定装置または測定システムの設計を示す。温度データおよび蛍光データは同期されている。温度測定装置は、PCのAD/DAドライバーカードにより制御される。このドライバーカードは、サーミスタ温度を測定し、加熱素子の加熱の力を制御する。蛍光測定装置は、市販のプログラム(Hamamatsu、Wasabi)およびLabViewソフトウェア・チップ測定装置により制御される。
【0071】
上記のように、マイクロ流体チップ装置は層間でマイクロ流体チャネルシステムを支える下層および上層を含んでいてもよいプラットフォームである。上層は好ましくは透明のガラス層であるが、石英またはホウ素ケイ酸塩が用いられ得る。上層は約200μm〜1000μmであってよく、好ましくは400μm〜700μm、最も好ましくは約500μmのウエハーであり得る。その上層の下面表面には溝が設けられてよい。液体溶液を送るための管状チャネルは、下層の下の側に配置された溝に都合よく嵌込むことができる。管状チャネルは、ガラスまたは不活性なプラスチックまたは他の物質で作製されたものであり、好ましくは約10μmの直径を有する。管状チャネルは下層の毛管様の溝に付随していてよいが、毛管様の溝は上層の下面の表面に配置されていてもよい。管状チャネルは、ガラスまたは不活性なプラスチックまたは他の物質、例えば金属(例えば鋼)で作製されたものであり、約10μm〜1000μm、好ましくは200μm〜450μm、最も好ましくは約350μmの直径を有しており、好ましくは生体適合性であるか又は生体適合性に作られるものであってよい。
【0072】
下層は、好ましくはシリコンまたはポリマーで作製されたものであるが、他の物質のものを用いることができる。下層は約200μm〜1000μm、好ましくは400μm〜700μm、最も好ましくは約500μmの厚みを有する。マイクロ流体チップ装置の上のおよび下の表面には、マイクロ流体チャネルシステムを支える、形作られた窪みまたは溝が設けられていてよい。管状チャネルは、さらに液体溶液を送るための反応チャンバーを含んでいてよく、それは下層の上側にある窪みまたは溝に都合よく嵌込まれてよい。下層の下側に電気回路および電極を都合よく半田付けし、マイクロチップ装置ならびに液体、電気および磁気の力の外部の流れを適用し、分離器および光学検出機器に導く装置を転結する分岐点に嵌込めるように配置する。
【0073】
上の層または上層および下の層または下層はチップ・レベルで一緒に連結されるか、あるいはそれらはいわゆるウエハー・レベルで結合された融合物である。ウエハー・レベルでの陽極接合およびチップ・レベルでのレーザー接合(laser bonding)は、層の連結に関する代替方式である。接着剤による接合がスクリーン印刷(screen printing)により行われてもよく、それにより、接着剤はスクリーンを通じて、好ましくはシリコンで作られた下層表面に印刷される。スクリーン印刷後に、好ましくはガラス層である上層を、そのシリコン下層に連結することができる。接着剤または接着性物質は、加熱炉または別の適切な除去装置(curing apparatus)において取り除くことができる。融合接合においては、アルゴンガスがウエハーの活性化のために用いられる。表面の活性化後に、例えばそれぞれシリコンおよびガラスウエハーであり得る上層および下層が一緒に連結される。融合接合は、約100℃〜約400℃の温度を示す加熱炉において加熱することにより強化される。
【0074】
本発明の好ましい実施態様において、マイクロチップは、実質的に下記するように製造できるが、他のいずれかの適当な製造方法を本発明の接合部に用いることができる。本発明のマイクロチップ装置の製造は、空のシリコンおよびシリコン・ウエハーから出発し、その直径は好ましくは約100mmであり、その厚みは好ましくは約525μmである。シリコン・ウエハーの前側を、熱酸化、フォトリソグラフィー、酸化膜エッチング(oxide etching)、プラズマ化学気相成長(Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition(PECVD))窒化ケイ素沈着(silicon nitride deposition)、フォトリソグラフィー、PECVD酸化膜沈着、フォトリソグラフィー、酸化膜エッチングおよび最後のフォトリソグラフィーにかける。これらの処理工程の間、三準位(three-level)プラズマエッチングを行い、それぞれ75μmおよび375μの深さにし、また525μmのシリコン・ウエハーにする。最後に、フィードスルー・ホールを有するシリコン・ウエハーを熱酸化させ、電気絶縁性にする。
【0075】
シリコン層(801)は、チャネルおよび反応チャンバー(100)を含むマイクロ流体構造を支え、その反応チャンバーにおいて、磁性マイクロビーズ(401)が操作され、結合アッセイが行われる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、濃縮および/またはキャピラリー電気泳動(CE)が、接続部で性能をさらに向上させるために結合アッセイと一緒の行われてもよい。PCRおよびCEに関し、マイクロ流体チップ装置は加熱するための薄膜素子(501)により供給される。これらは、モリブデンにより作製されたものであってよく、プラズマ化学気相成長(PECVD)のカバー層およびアルミニウムの接触パッドが提供されてよい。シリコン層もまた、熱酸化電気装置、電気接触ニードル(501)、液体ニードル(201および/または202など)およびステアリングニードルまたはロッド(903)のための穴が備えつけられる。ガラス上層(802)は、温度測定のための電気素子、高電圧および伝導度検出を提供するための電気素子(501)を含む。ガラス上層(802)上の薄膜素子(501)は、好ましくはプラチナで作製されたものであり、PECVD酸化膜のカバー層を備えたものである。PECVD酸化膜は、接触点でまたは測定点(ウィンドウ)で開けることができる。
【0076】
下層またはシリコン・ウエハーの後ろ側を、まずモリブデンでコートし、フォトリソグラフィー後のプラズマエッチングにより模り、接触パッドと共に加熱器を形成する。酸化膜のカバーは(PECVD)を用いて形成され、続いてその酸化膜カバーを部分的にエッチングして接触パッドをむき出する。
【0077】
下層またはシリカ層は、好ましくは後のプラチナのリフトオフ(lift-off)手順を可能にするパターンのあるフォトレジスタンス(photoresistance)が与えられたシリコン・ウエハーである。リフトオフ後に、サーミスタおよび伝導度検出回路が形成される。その後、カバー酸化膜はPECVDを用いて形成され、次いで、それをエッチングし、ニードルの接触のためにシリコン・ウエハーから部分的に接触パッドをむき出しにし、および伝導度検出チップをむき出しにする。最終工程として、整列したへこみを、ステアリングニードルに対するマイクロチップの各シリコンカバーにエッチングする。次いで、シリカおよびシリコン・ウエハーを切り出し、マイクロチップとし、続いて接着性物質で接合させる。
【0078】
有用性
本発明は、結合性物質、例えば核酸、タンパク質、抗体、抗原または酵素の効果および生物学的役割についての正確な評価を提供する。少量の多数の標的分析物を決定するための、および転写プロフィールを含むコンピュータで読み取り可能な定量的な結果を提供するための迅速かつ正確な方法は、医薬業界および製薬業界において有用である。ヒトおよび実験動物の遺伝子発現における既知の薬物および新規の薬物の効果は、容易に基準となり得るし、また医薬産業および診断産業ならびにホスピタルおよびヘルスセンターを含むヘルスケアにおける不可欠な知見を容易に提供する。主要な有用性は、ヘルスケア、処置モダリティー、医薬適応について有用な情報を、数値での正確な様式でコンピュータ処理され得るかまたは扱われ得る形式で提供することである。
【0079】
本発明は、小型の迅速かつ効果的なハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応または増幅アッセイおよび免疫アッセイを実施するためのより多目的なシステムを提供し、そのアッセイは全て液相および固相段階の組み合わせが用いられる。迅速かつ効果的な精製が、マイクロ流体チャネルシステムを用いることで、オンチップ装置内で達成される。マイクロ流体チャネルシステムの管状チャネルは、マイクロ流体フィルタまたは磁気ロッドにより制御されるグリッドを有する拡大された反応チャンバーまたはキャビティが与えられる。そのマイクロ流体フィルタは、磁性マイクロビーズをフィルタに通じさせることにより、磁性マイクロビーズのクラスターを分離または脱会合させることができる。同時に、本発明者らは、小規模の工程において測定される結果を甚大に歪める気泡が、当該ピラーフィルタを用いることにより避けることができたことを見い出した。
【0080】
本発明は、細胞溶解液および例えばコンビナトリアル・ケミストリーにより得られた産物の混合物を含む試料溶液中の1以上の結合物質の迅速かつ効果的な固相液相結合アッセイを実施するための、多チャンネルシステムを有する分析マイクロチップ装置に関する。
【0081】
マイクロ流体チップ装置は、結合アッセイ中の磁性マイクロビーズを操作する場合に、磁性マイクロビーズ上にフリーな反応性表面を増加させるのに有用である。操作とは、磁性マイクロビーズ上の標的パートナーおよびその対応物の移動または処理を意味する。本発明の方法により操作される標的結合パートナーは、それらの対応物と対になり、それらは一緒になって結合ペアを形成する。操作には、輸送または運動、捕捉、集束、増強、濃縮、凝集、分離、トラップ、分離または単離が含まれる。結合ペア複合体を形成する標的結合パートナーの有効な操作に関して、用いられる結合ペアと磁気力は相性がよくなければならない。
【0082】
連続操作工程は、混合、濃縮、希釈、洗浄ならびに結合工程および放出工程を含んでいてもよく、それらは、マイクロ流体チップ装置内での結合アッセイを容易にする。これらの工程は、反応、洗浄、放出(変性、溶出)、分離、および分析の作業を含む。当該工程の効率は、クラスター化磁性粒子の効果的な分離に依存する。この分離は、結合ペア複合体を形成する標的結合パートナーとその対応物を含む試料成分の分散および/または結合を容易にし、ならびにマイクロ流体ピラーフィルタにより隔てられた一方の反応チャンバー部分から他方の反応チャンバー部分への当該成分の同時の輸送を容易にする。
【0083】
マイクロ流体チャネルシステムは、互いに特異的な親和性を示し、対応物を有する結合パートナーとなり得る分析物、例えば抗体および抗原を用いたアッセイを実施するのに特に有用である。結合パートナーとその対応物は一緒になって結合ペアを形成し、例えば、抗体と抗原またはその断片、一本鎖標的ポリ−またはオリゴ−ヌクレオチド配列とその標的ポリ−またはオリゴ−ヌクレオチド配列と相補的な一本鎖プローブが、そのような複合体を形成し得る。結合パートナーおよびその対応物、すなわち結合ペアを形成し得る2つの結合パートナーは、それぞれ別個のものまたは単独のものであるか、あるいはアフィニティータグが与えられた複合体であり、それによって、対応するアフィニティータグに対して親和性を有する別のアフィニティー標識で覆われた磁性マイクロビーズ上に収集または固定され得る。このようにして、一方の結合パートナーを固定化した磁性マイクロビーズは、当該結合パートナーの検出可能な標識を有していても有していなくてもよいその対応物を収集することができ、それによって、固定化された結合ペア複合体を形成することができる。
【0084】
通常、標的結合パートナーは、試料由来の測定されるべき成分である。それは、アッセイにおける所望の成分または目的の成分である。成分は、処理されてよく、例えば単離された後にマイクロ流体チップ装置に導入されてもよいが、その成分が試料媒体、緩衝液または結合アッセイで用いられた溶出液中で可溶性であるか、または可溶化される場合には、それを直接導入することができる。
【0085】
標的結合パートナーは有機分子または無機分子のいずれであってもよいが、それらはその対応物である別の分子に対して特異的な親和性を有する。有用な標的結合パートナーは、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、グリコリポプロテイン、脂質、脂肪、ステロール、糖、炭水化物、核酸分子、小有機分子またはより複雑な有機分子であってもよい。標的パートナーはまた、分子複合体および無機分子またはイオンであってもよい。標的結合パートナーは、溶解された細胞、細胞質または細胞オルガネラのマトリックスから得られる細胞内標的パートナーであってよい。
【0086】
免疫測定、ハイブリダイゼーション反応などの反応条件は、教科書および研究室ハンドブックにおいて見出すことができる。複数の分析物および試薬を用いる場合には、異なる反応系の標準的な条件を用いることが最も便利である。
【0087】
結合アッセイは、試料処理により得られる結果物を記録し、アフィニティー捕捉を適用する吸着および脱着反応を含むいずれかのアッセイを含む。一般に、結合アッセイは、試料中の1種または複数の標的結合パートナーの存在、量またはその活性を決定する。吸着は結合、連結、または捕捉を含み、結合アッセイにおけるキャラクタライズ工程であり、精製および最終的な分離、ならびに試料からの1種のまたは複数の標的結合パートナーの検出を容易にする。
【0088】
本発明の結合アッセイは、吸着および媒介物の洗浄を含む脱着反応からなる連続工程を含み、それは、別の試薬を用いて繰り返すことができるし、または新しい試料を導入することによって繰り返すことができる。本発明の組込み型のマイクロ流体チップ装置において、異なる工程は、最終の結果物を連続して得るために実施される。2つの作業を連続的に実施する場合、第2の作業は、第1の作業の1種または複数の産物を用いる。本発明において、産物とは、磁性マイクロビーズ上に固定され精製された、または第1の工程で濃縮された、あるいは当該磁性マイクロビーズにも結合した試薬に結合されるようになった、試料中に存在する標的結合パートナーを意味する。
【0089】
標的結合パートナーを磁性マイクロビーズ上に固定化し、その後、その対応物と反応させて、結合ペア複合体を形成させるか、または磁性マイクロビーズに予め付着させたもしくは磁性ビーズに付着可能な対応物と反応させる。標的結合パートナーおよびその対応物ならびに適当なアフィニティータグおよび検出標識を磁性マイクロビーズに同時に接触させ、それによって、結合パートナー間の反応を溶液中で起させ、そして形成された結合パートナーを複合体として固定する。
【0090】
本発明の方法を適用しなければ、標的パートナーの約5%、10%、20%、30%、40%または50%が、磁性粒子上の結合ペアと共に固定される。磁性粒子を操作して、マイクロ流体ピラーフィルタに通じさせることで、固定された結合ペアの形成を、約60%、70%、80%、90%または100%にまで増加させることができる。
【0091】
本発明において、固定は、何かを固体支持体、磁性マイクロビーズにカップリング、捕捉または結合させることを意味する。標的結合パートナーおよびその対応物は、例えば、特異的な結合または非特異的な結合により磁性マイクロビーズにカップリングすることができる。結合は、共有結合または非共有結合であってよく、可逆的または不可逆的であってよく、好ましくはアフィニティーペア、例えばビオチン アビジンおよびビオチン ストレプトアビジンが、結合ペアと磁性マイクロビーズとの間の結合を容易にするために用いられる。
【0092】
固定とは対照的に、用語「トラップ」は、機械的なバリアを用いて、固定された標的および試薬を有する磁性マイクロビーズが移動することを妨げることを意味する。
【0093】
本発明において、分離は、試料中に存在する複数の標的パートナーまたはその結合ペアが、キャピラリー電気泳動、重力、質量流、誘電泳動力および電磁力を適用する分離のためのクロマトグラフィ機器を用いて、1以上の他の標的パートナーから空間的に分離される過程を意味する。
【0094】
標的結合パートナーは、分子表面の領域または分子の三次元構造におけるキャビティ領域を有する2つの異なる分子のうちの1つであり、そのキャビティが特異的に結合し、それによって他の分子の特定の空間の構成および極性構成と相補的であることが明らかにされる。特異的な標的パートナーは、免疫学的ペアメンバー、例えば抗原−抗体、ビオチン−アビジン、またはビオチン ストレプトアビジン、リガンド−受容体、核酸二本鎖、DNA−DNA、DNA−RNA、RNA−RNAなどであってよい。結合パートナーは、水ベースの溶液中で可溶なものであるが、互いに親和性を有するもの、および磁性マイクロビーズに対して親和性を有するものであるか、またはマイクロビーズもしくはマイクロビーズ上に付着されたアフィニティーペアのメンバーに親和性を有する基が与えられたものであってもよい。
【0095】
水ベースの溶液は、ハイブリダイゼーション溶液、変性溶液として用いられる、またはゲル電気泳動での溶出のために用いられる、生物学的試料溶液、生理学的緩衝液、生体適合性の液体である。研究室ハンドブックは、複数の有用な水ベースの溶液を提供する。当該溶液の温度、pH条件および成分を変更することにより、磁性マイクロビーズまたはビーズ上での吸着および脱着反応を改変することができる。
【0096】
核酸分子は、ポリヌクレオチド配列である。核酸分子は、DNA、RNA、またはその両方であってよい。核酸分子はまた、バックボーンに組み込まれるリボースおよびデオキシリボース以外の糖を含んでいてよい。バックボーンは、DNAまたはRNAのもの以外のものであってもよい。ロックド(locked)ヌクレオシドはLNAを形成し、ペプチドバックボーンはPNAを形成し、天然に存在するか、または天然には存在しないヌクレオチド塩基を含む。核酸配列は、ホスホジエステル結合以外の結合を有していてもよい。核酸配列は、ヌクレオチド塩基がペプチドバックボーンで連結されたペプチド核酸分子であってもよい。核酸配列は、いずれの長さであってもよく、一本鎖、二本鎖または三本鎖であってもよい。
【0097】
標準的な結合アッセイは、特定の核酸配列を検出するための核酸ハイブリダイゼーションに拠るもの、完全なものに対する抗体の結合性に拠るもの、および受容体へのリガンドの結合性に拠るものを含む。
【0098】
通常の結合アッセイにおいては、検出可能な標識は、一般的には、決定、測定または結果の記録を可能にするために必要とされる。検出可能な標識は、検出することができるかまたは測定可能なシグナルを生成することができる化合物または分子である。有用な標識は、蛍光、放射能、呈色または化学ルミネセンスである。好ましいものは、市販の蛍光標識であり、Cy−5、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、FITC、ローダミンまたはランタニドが挙げられ;および蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)である。これらおよび他の適切な標識のいずれも、本発明に関して用いることができる。試薬をあらかじめ標識化してもよいが、未標識の反応体を反応後に標識化し得る方法もある。ある場合には、標識による立体障害を避けることができるこの方法が好ましい方法である。
【0099】
マイクロ流体チャネルシステムを有するマイクロチップ装置は、アフィニティー捕捉(TRAC)の補助により転写分析を実施するために、ならびに標的ポリヌクレオチド配列の量およびそこでのヌクレオチド変動、例えば細胞溶解液による変動を決定するために用いることができる。
【0100】
本発明の1つの態様によれば、マイクロチップ装置は結合アッセイに用いることができ、そこでは、最初に、抗体または抗原などの結合物質の対応物、例えばそれぞれ既知の抗原または抗体の混合物で覆われた磁性マイクロビーズを含む緩衝液を、管状マイクロ流体チャネルシステム(100)に注入し、溶液の流れごとに、マイクロ流体ピラーフィルタまたはグリッド(301、302)を用いて反応チャンバー(101、102)に移す。結合パートナー、例えば各々の抗体または抗原の混合物を含む試料溶液を、管状マイクロ流体チャネルに注入し、磁性マイクロビーズ上に付着したその対応物と混合する。注入口を外部から制御される機械弁により閉じる。磁気ロッドの補助によりクラスター化磁性マイクロビーズを、マイクロ流体ピラーフィルタを通じて別の反応チャンバーに移すことにより、分離させることができる。この前後への輸送は1回以上繰り返されてもよい。それによって、試薬の完全な混合もまた達成される。結合物質とその対応物との間の完全な反応を保証するのに適切な時間の経過後に、その溶液を1つの排水口から除去し、その間、磁性マイクロビーズを、磁性ロッドを押し上げることにより磁気力またはロッドのスイッチを切ることで、フィルタの後ろ1つのチャンバー内に維持する。管状マイクロチャネルを、外付けの機械弁を用いて開け、洗浄液流を、管状マイクロ流体チャネルを通じて反応チャンバーに注入し、そこで、結合パートナーおよびその対応物の複合体により覆われたマイクロビーズをフィルタに通じさせて、それらを溶液の排水の間トラップすることにより、当該磁性マイクロビーズを洗浄して結合していない試料および試薬を洗い流す。この手順を1回以上繰り返し、最終的に結合している物質を、例えば、反応チャンバー内でその磁性マイクロビーズと一緒に維持される対応物から結合パートナーを放出させることができる緩衝液を用いて放出させる。この放出緩衝液は、好ましくは、結合物質を分離する後のキャピラリー電気泳動またはゲル電気泳動での溶出に用いることができ、次いでそれらの光学特性を記録することができる、溶液である。結合物質のうちの捕捉された対応物を有する磁性粒子を維持し、洗浄後に、同一の複数の分析を行うことができる別の試料を加えることにより再利用することができる。
【0101】
本発明のさらなる態様によれば、マイクロチップの使用は、発現された標的mRNAを定量する方法として実際に示される。本発明のさらなる例示的な態様において、本発明のマイクロチップ装置は、標的ポリヌクレオチド配列の量およびそのヌクレオチドの変動を決定するために使用される。
【0102】
試料は、成分が分離または分析されるべきいずれかの液体である。試料は、いずれの供給源、例えば生物、同種または別の種の生物群由来のもの、溶解されるか溶解されたその細胞由来のものであってよい。土壌、食物、建造物または他のいずれかの固体供給源などの環境からの抽出物であってよい。マイクロ流体システムにおいて、試料は、溶液のような液体型であるべきであり、あるいは土壌もしくは植物試料の液体抽出物、喉もしくは生殖器から綿棒などにより拭き取った標本の抽出物、または糞試料の抽出物などの抽出物であるべきである。血液試料は、好ましくは遠心分離され、溶解され、ろ過され、抽出され、または他の処理済の血液試料であり、例えば、抗凝結物質または安定剤などの1以上の試薬が加えられた血液試料である。試料は、未処理のものであってもよいし、または処理されたものであってもよい。
【0103】
試料の処理は試料調製から開始し、それは、決定されるべき標的パートナーまたは対応物を放出させるための細胞試料または組織試料の破壊を含み得る。試料調製は、ポリヌクレオチド配列およびタンパク質の分離を含む粗い分離または精製を含み得るが、細胞試料は、マイクロ流体チャネルシステムに直接導入することができ、そこで、細胞は溶解されるか、または外部での溶解後に導入されてもよい。試料処理は、通常、試料成分の分離を含むが、本発明においては、試料の標的パートナーまたは成分を一緒に処理し、標的パートナーの分離および同定は、吸着および脱着反応で行われる。破壊には、溶解、例えば二本鎖の核酸配列またはその断片を一本鎖にさせる変性、化学修飾、または試薬への成分の結合が含まれ得る。処理工程は、放出させること、暴露すること、モディファイすることにより、試料中の1つの標的パートナーに作用し得るか、あるいは別のタイプの成分、例えばさらなる処理または分析に用いることができる標的パートナーの結合ペアを創出し得る。作業は、測定および計算を含む。例えば、1以上の細胞または組織の溶解は、さらなる工程作業において分離することができ、次の分析工程で検出され得る核酸を放出させるための最初の処理工程を含んでいてもよい。結合またはカップリングは、処理作業中の工程であってよく、結合またはカップリング、特に試料中の標的パートナーのマイクロビーズ上に存在するその結合ペアに対するカップリングは、試料中の1つまたは複数の標的パートナーの分離、輸送、固定化、単離、集束、濃縮、増強、構造上の改変または少なくとも部分的な精製を容易にする。通常の先行技術の方法では、混合は試料中の1以上の標的パートナーの結合、分離、輸送、濃縮、構造上の改変または精製を容易にするのに必要な作業である。混合は、十分に効果的な力の導入が可能ではないマイクロ流体チャネルシステムにおける課題である。本発明においては、磁気ロッドのスイッチを入れたり切ったりすることによって磁性マイクロビーズをピラーフィルタに通じさせることで、十分な混合が与えられる。
【0104】
本発明は、磁性マイクロビーズを用いた結合アッセイを実施するための方法に関する。標的結合パートナーはある成分であり、原則としてそれは水ベースの液体試料中のいずれかの構成成分であってよく、それはその結合ペアと接触した場合に別の成分に特異的な親和性を有し、および結合するものである。
【0105】
本方法は、PCRサイクルに適用することができ、PCRサイクルは、流体チャネルまたは反応チャンバー内で行うことができ、ならびに標的ポリヌクレオチド配列またはプローブ配列に検出可能な標識を与えるために行うことができ、およびユニバーサルプライマーの一方と相補的な、検出可能な標識が与えられた配列を用いたPCRサイクルを開始し、そして他方のユニバーサルプライマーと相補的な配列が与えられた別の配列を用いた第2のPCRサイクルを開始することによって、2つのユニバーサルプライマーを有するプローブ配列を用いた2つの連続するPCRサイクルを実施することによりバックグラウンドノイズを低減するために行うことができる。形成されたハイブリッドを磁性マイクロビーズと接触させることにより、アフィニティータグおよび検出可能な標識が与えられたハイブリッドを捕捉すること、当該磁性マイクロビーズをマイクロ流体ピラーフィルタに通じさせること、および余剰の液体を取り除く間、マイクロ流体ピラーフィルタの後ろで当該マイクロビーズを維持すること、洗浄液を用いた工程を繰り返すこと、および少量の溶出液中のハイブリッドから検出可能な標識が与えられたプローブまたは標的を溶出すること、および当該溶液を分離システムに導入すること、および記録すること。
【0106】
本発明において、マイクロ流体チップ装置の少なくとも3つの主要なタイプを開示する。マイクロチップ装置の3つの異なるタイプは、結合アッセイ、ポリメラーゼ連鎖反応(PCRチップ)を伴う結合アッセイを実行する可能性のあるマイクロチップ装置;PCRおよび直線状のキャピラリー電気泳動(CE)チャネルまたは曲がりくねったCEチャネルによるキャピラリー電気泳動(CE)を両方とも伴う結合アッセイを実行する可能性のあるマイクロチップ装置を含む。共通する特徴として、3つのタイプのマイクロチップ装置はすべて、少なくとも2つの異なる流体接続部、限定するものではないが、側面の連結部および液体ニードルを有する。
【0107】
アフィニティー捕捉(TRAC)アッセイの補助による小型の転写分析を実施するためのマイクロ流体チップ装置の使用を、以下に記載する。通常のTRACアッセイは、欧州特許第1352097号および第1537238号に記載されている。TRACアッセイの目的の1つは、試料溶液から発現された複数のmRNAの相対的な量を決定することである。
【0108】
当該方法は、以下の工程を含む:
(a) 複数の試料である可溶性の標的mRNA、好ましくはビオチンタグのごときアフィニティータグを有するポリ(T)プローブ、および検出可能な標識、好ましくは蛍光色素分子で標識され、標的mRNAと相補的な配列を有する複数の安定な一本鎖プローブ配列を含有する試料溶液を含む液体流であって、その相対的な量は決定されており、およびその複数のプローブ配列の各々は特有のサイズの大きさまたは質量を有する液体流を、2つの反応チャンバー(101、102)を有するマイクロ流体チャネルシステム(100)内に、注入口として働く連結部(201)を通じて導入し、液体流から気泡を取り除くためのマイクロ流体ピラーフィルタ(301)を通じ、続いて流体接続部(201、202、および203)をシールすることによって、磁性マイクロビーズ(401)と接触させる工程;
(b) 磁性マイクロビーズを少なくとも1つのマイクロ流体ピラーフィルタ(301または302)を通じて戻しおよび通過させて移動させ、磁性マイクロビーズ上に固定された標的mRNA−プローブ複合体を提供するのに好ましい条件下で十分な時間、固定反応およびハイブリダイゼーション反応を行わせる工程;
(c) 磁気ロッド(402)のスイッチを切り、液体流を液体接続部(202)から除去し、接続部(202)を閉じることにより、マイクロ流体ピラーフィルタ(302)上に固定(捕捉)された標的mRNA−プローブ複合体(ハイブリッド)を有する磁性マイクロビーズをトラップする工程;
(d) 磁気ロッド(402)のスイッチを入れ、磁性マイクロビーズを少なくとも1つのマイクロ流体ピラーフィルタ(301または302)を通じて戻しおよび通過させることにより、ハイブリダイゼーションに好都合な洗浄液を含む新しい液体流を導入することで、固定された標的mRNA−プローブ複合体を有する磁性マイクロビーズを精製する工程;
(e) 磁気ロッド(402)のスイッチを切り、液体流を液体接続部(202)を通じて取り除き、接続部(202)を閉じることにより、マイクロ流体ピラーフィルタの前後で、固定された標的mRNA−プローブ複合体を有する磁性マイクロビーズをトラップする工程;
(f) 二本鎖複合体を一本鎖にさせる変性溶液を含む新しい液体流を導入することによって、および磁気ロッド(402)のスイッチを入れ、磁気マイクロビーズを少なくとも1つのマイクロ流体ピラーフィルタ(301または302)を通じて戻しおよび通過させることにより、プローブを放出させるのに十分な時間変性させることで、磁性マイクロビーズ上に固定された標的mRNA−プローブ複合体からプローブを放出させる工程;
(g) 磁気ロッド(402)のスイッチを切ることで、固定された標的mRNAを有する磁性マイクロビーズをマイクロ流体ピラーフィルタ(302)にトラップし、任意の増幅および/または濃縮のために、プローブを含有する液体流をマイクロ流体チャネルの排水口に導き、その後、プローブを分離機に入れ、複数のプローブを互いから分離および区別し、各プローブの検出可能な標識(蛍光)の強度を視覚的に記録すること、およびソフトウェア関連の自動もしくは半自動の機器を用いることによって、試料溶液中に存在する標的mRNAの相対量に相当する視覚的に記録されたピーク(202)からプローブの量を計算する工程。
【0109】
さらなる工程を上記方法に加えることにより、発現されるmRNAの相対的な量およびその核酸変動を決定することができる。その方法は、国際特許出願番号第2008/102057号(PCT/FI2008/050074)に記載された方法の小型化した形式のものである。
【0110】
さらなる工程において、工程(d)で固定され精製されたオリゴヌクレオチド・プローブを、鋳型としての標的mRNAの5’末端を用いて;工程(e)の後に、液体接続部(201)およびマイクロ流体ピラー(301)を通じて、酵素、例えば少なくとも1つのdTTP、dATP、dCTPもしくはdGTPなどのデオキシヌクレオチド、またはddTTP、ddATP、ddCTPもしくはddGTPなどの少なくとも1つのジデオキシヌクレオチドの存在下でプローブとしての標的mRNAを用いてプローブを伸長することができる、ポリメラーゼまたは逆転写酵素を含む緩衝液を導入することによって、その3’末端で伸長する。磁気ロッド(402)のスイッチを入れ、精製した固定化された標的mRNA−プローブ複合体を有する磁気マイクロビーズを、マイクロ流体ピラーフィルタ(302)に通じさせて、伸長反応に好適な条件下で十分な時間伸長反応を行わせる。磁性マイクロビーズをトラップおよび精製した後に、伸長したまたはしてないプローブを放出させ、分離して記録する。視覚的に記録された結果でのピークに基づき、適当な対照を用いることで、伸長したまたはしなかったプローブの相対的な量を計算することができ、元のプローブとハイブリダイズした当該mRNAにおける相補的な標的mRNAの量およびヌクレオチド変動を評価することができる。
【0111】
上述のように、放出されたプローブは、マイクロ流体チップ装置において増幅されてよく、その後に、それらは、例えばキャピラリー電気泳動により分離され、その標識の強度が記録される。
【0112】
本発明の別の態様によれば、本発明のマイクロ流体チップ装置は、PCR反応を実施するための方法に用いることができる。ポリヌクレオチドプローブが分析物配列にハイブリダイズし、固体支持体上で捕捉されている状態で精製されると、それによって試料中の未反応の配列から分離されるため、ポリヌクレオチドプローブを移動させる前に、このPCR反応を実行することができる。
【0113】
磁気ロッドを反応チャンバー(101)に降ろし、磁性マイクロビーズを含む溶液を液体接続部(201)から供給する。磁性マイクロビーズを洗浄し、DNA試料を液体接続部(201)から加える。磁気ロッドを動かすことによって、磁性マイクロビーズを一方のチャンバーから他方のチャンバーに、反応チャンバー(102)から気泡フィルタチャンバー(101)に移動させる。PCR増幅用混合液を液体接続部(201)から加え、磁性マイクロビーズを気泡フィルタチャンバー(101)から反応チャンバー(102)およびチャネルに動かし、そこで、PCR反応を行わせ、それらを気泡フィルタチャンバーに動かす。溶液を液体接続部(201)から供給しまたは加え、磁性マイクロビーズを、磁気ロッド(402)により気泡フィルタチャンバーから反応チャンバー(102)およびチャネル(103)に移動させる。その後、DNAを磁性マイクロビーズから溶出させ、磁性マイクロビーズを、磁気ロッドにより気泡フィルタチャンバー(101)に移動させる。任意の電気的な予備濃縮は高電圧電極(505)を用いて実施する。分離電解液をCE/ITPチャネルに送る(600)。試料を注入口(203)からCE/ITP:2(600)へ注入する。任意のITPによる予備濃縮を行い、DNA同定はCE分離を用いて行う。ITP/CEチャネルにおけるDNA同定は、ITP/CEチャネルにおいて少なくとも5つのDNA同定手順を用いて実施することができる。
【0114】
1.同定は、ITPによる試料の濃縮後のCE分離により行われる。ITPは主要なCEチャネルの側のチャネルで行われる。CE分離は、ITP濃縮後に行われる。
2.PCRキャビティからの同時の圧力注入/電気的注入。直線的なマイクロ流体チップ装置中にある注入ループまたは図5A〜5Iで示されるマイクロ流体チップ装置中のループ状のチャネルにおける平行の伝導度電極の間の濃縮試料。CE分離は試料注入後に行われる。
3.ゲル溶液インターフェースへの試料注入は、図5A〜5Iで示されるマイクロ流体チップ装置中の試料ループ(600)で行われる。CE分離は緩衝液中で行われる。
4.ゲル電気泳動はITP濃縮と共に行われる。CEチャネル全体はゲル溶液で充填する。CE分離はゲル溶液中で行われる。
5.試料注入は、図5E〜5Hで示されるダブルT注入マイクロ流体チップ装置において行われる。CE分離は、試料注入後に行われる。
【0115】
上記の説明が単なる例示として与えられることは、もちろんとして、本発明の範囲内にある細部における変更を行うことができることは、正しく把握されるであろう。
本発明では、形状および機能の面での多くの変更、改変が可能であり、および均等物が存在し、ならびに本開示の利益を享受する当業者であればそれらに想到するであろう。
本発明は、現段階で考えられる好ましい実施形態を記載するが、本発明はそのようなものに限定されない。対照的に、本発明は、上記の詳細な説明の精神および目的の範囲内に含まれる様々な変更および均等な改善に及ぶものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性マイクロビーズを操作するためのマイクロ流体チップ装置であって、
液体流の注入口および/または排水口として働く1以上のシール可能な液体接続部を有するチャネル中に少なくとも1つの反応チャンバーを有するマイクロ流体チャネルシステムを含み、
ここに、各々の反応チャンバーには、磁性マイクロビーズの直径よりも広い隙間を有する、ピラーロッドからなるマイクロ流体ピラーフィルタが少なくとも1つ備えつけられ、
前記の少なくとも1つのマイクロ流体ピラーフィルタが、液体流中に形成された気泡を壊すこと、および磁性マイクロビーズクラスターを分離することを特徴する、装置。
【請求項2】
マイクロ流体チャネルシステムが、磁気機器、電気機器、光学機器およびそれらの組み合わせからなる群より選択される機器をさらに含む、請求項1記載のマイクロ流体チップ装置。
【請求項3】
機器が組込み型または外部接続型のものである、請求項2記載のマイクロ流体チップ装置。
【請求項4】
機器が、単離、精製、濃縮、結合アッセイ、PCRおよびバックグラウンドの低減からなる群より選択される技術を実行するために用いられる、請求項3に記載のマイクロ流体チップ装置。
【請求項5】
機器が磁気機器であり、当該磁気機器が外部から操作可能な磁気ロッドを1つ以上含む、請求項2記載のマイクロ流体チップ装置。
【請求項6】
機器が電気機器であり、当該電気機器が電気ニードルおよび電気薄膜素子からなる群より選択される電気接続部を含む、請求項2記載のマイクロ流体チップ装置。
【請求項7】
電気薄膜素子が、加熱素子、温度測定素子、高電圧素子、伝導度測定素子およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるものである、請求項6記載のマイクロ流体チップ装置。
【請求項8】
マイクロ流体チャネルシステムが、組込み型または外部接続型の分画および分離機器をさらに含む、請求項1に記載のマイクロ流体チップ装置。
【請求項9】
分画および分離機器が、等速電気泳動の予備分離または質量分析を行うかまたは行わないキャピラリー電気泳動を実施するための直線状またはループ状のチャネルを含む、請求項8記載のマイクロ流体チップ装置。
【請求項10】
マイクロ流体チャネルシステムが、蛍光を測定するための機器、UV/VIS吸収を測定するための機器、IRを測定するための機器、伝導度を測定するための機器、屈折率を測定するための機器および質量分析機器からなる群より選択される、組込み型または外部接続型の検出機器をさらに含む、請求項1記載のマイクロ流体チップ装置。
【請求項11】
シール可能な流体接続部が、漏出防止シールを含む流体接続部である、請求項1記載のマイクロ流体チップ装置。
【請求項12】
マイクロ流体チップ装置が2つの層を含む、請求項1記載のマイクロ流体チップ装置。
【請求項13】
マイクロ流体チップ装置が、穴を有する、下層および上層を含む、請求項12記載のマイクロ流体チップ装置。
【請求項14】
マイクロ流体チップ装置が、測定インターフェースを通じて外付けの検出機器、およびマイクロ流体チップ装置上の穴に嵌込まれるステアリングロッドを有するステアリングプレートと接触している、請求項13記載のマイクロ流体チップ装置。
【請求項15】
マイクロ流体チップ装置および外部装置が、ドッキング・プラットフォーム上に配置されている、請求項2記載のマイクロ流体チップ装置。
【請求項16】
液体流についての注入口および/または排水口として働くシール可能な流体接続部を1以上有するチャネル中の少なくとも1つの反応チャンバーを有するマイクロ流体チャネルシステムを含み、当該少なくとも1つの反応チャンバーに磁性マイクロビーズの直径よりも大きい隙間を有するピラーロッドからなるマイクロ流体ピラーフィルタが少なくとも1つ提供されている、マイクロ流体チップ装置内の磁性マイクロビーズを操作することにより、磁性マイクロビーズの反応性表面を増加させる方法であって、
(a)液体流を、流体接続部から最初の反応チャンバー内に供給し、そこで、マイクロ流体ピラーフィルタが気泡を除去する工程;
(b)液体流を、液体流中または反応チャンバー内に存在する磁性マイクロビーズと接触させ、磁性ロッドのスイッチを入れることにより、当該磁性マイクロビーズを反応チャンバー内の別のマイクロ流体ピラーフィルタに通じさせ、それにより、マイクロ流体ピラーフィルタが磁性マイクロビーズにより形成されるクラスターを分離する工程;
(c)注入口を通じて別の液体流を入れる前の、試料溶液を排水口から除去する間に、磁性マイクロビーズを、チャネル中に移すかまたはいずれかのマイクロ流体ピラーフィルタの後方に移す工程;
(d)結合ペアを形成することができる標的またはその対応物が、少なくとも1つの処理工程にかけられるまで、新しい液体流を用いて工程(a)〜工程(c)を繰り返す工程;および
(e)標的またはその対応物のいずれかを1以上のさらなる処理工程にかける前に、標的またはその対応物を磁性マイクロビーズから放出させる工程を含む、方法。
【請求項17】
1以上のさらなる処理工程が、磁気機器、電気機器、光学機器およびそれらの組み合わせからなる群より選択される機器を用いて実施される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
機器が、組込み型または外部接続型のものである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの処理工程が、単離、精製、濃縮、結合アッセイ、PCRおよびバックグラウンドの低減からなる群より選択されるものである、請求項16記載の方法。
【請求項20】
標的またはその対応物に、検出可能な標識を付与する、請求項16記載の方法。
【請求項21】
標的またはその対応物に、アフィニティー標識を付与する、請求項16記載の方法。
【請求項22】
標的またはその対応物を、磁性マイクロビーズ上に固定する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
磁性マイクロビーズ上に固定された標的またはその対応物を有する磁性マイクロビーズが、マイクロ流体チャネルシステム内に存在する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
標的またはその対応物に、検出可能な標識を付与しないことを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項25】
結合ペア複合体を形成させ、磁性マイクロビーズから放出された後に、標的またはその対応物を標識する、請求項16記載の方法。
【請求項26】
標的およびその対応物が、抗体/抗原ペアである結合ペアを形成する、請求項16記載の方法。
【請求項27】
標的およびその対応物が、標的ポリヌクレオチド配列または標的オリゴヌクレオチド配列および当該標的配列と相補的なプローブ配列である結合ペアを形成する、請求項16記載の方法。
【請求項28】
標的ポリヌクレオチド配列または標的オリゴヌクレオチド配列または記録されるべきその相補的な対応物のいずれも標識されないが、その各々が両末端にユニバーサルプライマーを有する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
2つのユニバーサルプライマーが、1以上のPCRサイクルで検出または測定されるべき未標識配列を増幅するために用いられる、請求項28記載の方法。
【請求項30】
検出または測定されるべき配列が、増幅の間に標識される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
組込み型または外部接続型の機器が、蛍光を測定するための機器、UV/VIS吸収を測定するための機器、IRを測定するための機器、伝導度を測定するための機器、屈折率を測定するための機器、質量分析機器、ならびに分画および分離機器からなる群より選択されるものである、請求項16記載の方法。
【請求項32】
分画および分離機器が、等速電気泳動の予備分離または質量分析を行うかまたは行わないキャピラリー電気泳動を実施するための直線状またはループ状のチャネルを含む、請求項16記載の方法。
【請求項33】
液体流が、試料、試薬、洗浄液および溶出液からなる群より選択されるものである、請求項16記載の方法。
【請求項34】
請求項16記載の方法に従って、発現されたmRNAの相対的な量およびその核酸の変動を決定する方法であって、
標的mRNAおよびプローブおよび磁性マイクロビーズをハイブリダイズおよび捕捉する工程;
工程(a)〜工程(d)に従って洗浄する工程;
液体接続部およびマイクロ流体ピラーを通じて、少なくとも1種のデオキシヌクレオチドまたは少なくとも1種のジデオキシヌクレオチドの存在下で鋳型としてのmRNAを用いてプローブを伸長できる酵素を含む緩衝液を導入することにより、鋳型としての標的mRNAの5’末端を用いてその3’末端にあるプローブを伸長させる工程;
磁気ロッドのスイッチを入れ、それによって、精製された固定化標的mRNA−プローブ複合体を有する磁性マイクロビーズを、マイクロ流体ピラーフィルタに通じさせる工程:および
工程(a)〜工程(e)を用いて磁性マイクロビーズをトラップおよび精製した後に、伸長反応に好都合な条件下で、十分な時間、伸長反応を行わせる工程を含む、方法。
【請求項35】
未標識の標的または相補的なポリ−もしくはオリゴ−ヌクレオチド配列であるその対応物に、2つのPCRサイクルを実施することによって余剰の検出標識に起因するバックグラウンドを低減させるために用いられるユニバーサルプライマーが付与される、請求項16記載の方法であって、
ここに、第一のPCRサイクルは検出可能な標識を備えた一方のユニバーサルプライマーと相補的な配列を用いて開始され、第二のPCRサイクルはアフィニティー標識を備えた他方のユニバーサルプライマーと相補的な配列を用いて開始され、それにより、複数の検出用標識されたおよびアフィニティー標識された二本鎖の標的または対応物の配列が形成され、それらを磁性マイクロビーズと接触させて、工程(a)〜工程(e)にかけることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−522219(P2011−522219A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503465(P2011−503465)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050268
【国際公開番号】WO2009/125067
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(500020771)
【Fターム(参考)】