説明

マイクロ流体デバイス及びその製造方法

【課題】マイクロ流体デバイス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
マイクロ流体チャネルを有する基板と、プライマ層及び前記プライマ層上に設けられマイクロ流体チャネルに関連して配置された導電層を含む導電性機構とを具備するマイクロ流体デバイスが提供される。前記プライマ層は、(i)有機ポリマーと、(ii)前記有機ポリマーを分散させた多孔性微粒子材料とを含む。前記有機ポリマーは、(a)ビニルラクタム反復単位を含むホモポリマーまたはコポリマー、(b)セルロースエーテル、(c)ポリビニルアルコール、及び(d)未変性ゼラチンまたは変性ゼラチンからなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の機構を有するマイクロ流体デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスは、化学流体や生物流体を含む種々の流体の解析をするのに有用なツールである。このようなデバイスは主に流体輸送チャネル、例えば入力チャネルや出力チャネル、及びサンプル診断のための構造化された領域から構成される。このデバイスによる流体の処理が効果的になされるため、流体は制御可能にこれらのチャネルを通過する。
【0003】
様々な種類のマイクロ流体デバイスが知られている。マイクロ流体デバイスのチャネルの断面の寸法は多様であるが、ミリメートルスケールからナノメートルスケールまで何でもあり得る。本文中に示すマイクロ流体デバイスには、マイクロメートルスケールのデバイスに限らず、この技術における通常のように、より大きいもの(ミリメートルスケール)や小さいもの(マイクロメートルスケール)も含まれる。
【0004】
マイクロ流体デバイスの基本形態は、チャネルを通る当該流体の連続的な流れに基づく。
【0005】
この基本形態が発達したものは、機能上不活性なキャリア液に懸濁された液滴中のチャネルを通して輸送される活性流体を有する。多くの場合、ここで説明されるデバイスの大部分は、デジタルの、すなわち液滴ベースのマイクロ流体デバイスである。そのようなデバイスでは、液滴液である第1の液体が、キャリア液である第2の液体中に混和されることなく懸濁され、液滴を形成している。液滴液とキャリア液とは、マイクロ流体デバイスが良好に機能するための、通過時間、保存時間及びデバイス内での反応時間といった要素で決まる関連の時間スケールを経ても互いに混和されないように選択される。多くの場合液滴は球状であるが、液滴の使用において力で変形されたり、チャネルまたは微細構造となっているデバイスの部分との境界で制約されたりするので、他の形態でもありうる。したがって、デジタルマイクロ流体デバイスに関連する液滴は、キャリア液中に保持され隣接したある程度の量の流体であり、その流体とキャリア液とは混和されない。
【0006】
マイクロ流体デバイスは各種の基材、例えば熱可塑性物質、ガラスまたは水晶などから形成されうる。マイクロ流体デバイスにおいて、チャネルは各種の手段、例えば射出成形などで形成されうる。
【0007】
既知のマイクロ流体デバイスの機能の多くは、流路に設けられまたは隣接した電極を通じて電気的に制御される。これらの電極は必要に応じて交流(AC)または直流(DC)に駆動される。
【0008】
電極は正圧注入またはインクジェット印刷などの既知の方法で形成されうる。その技術は、溶媒に分散された導電性の粒子を含む導電インクを用いたパターン印刷、続いて溶媒を蒸発させ導電性の粒子を溶融定着させることにより非破壊的な金属性の導通路を形成する焼結または硬化の工程を含む。
【0009】
国際公開第2007/081385号(以下、特許文献1という)には、流体に電気的な作用を施す電極が流路に隣接したチャネルに位置する、種々の液滴ベースのマイクロ流体デバイスが開示されている。電極の形成のため、チャネルに溶融された金属合金が充填される。この充填は溶融された金属合金をチャネルに注入するシリンジを用いた正圧注入によって行うことができる。その後金属合金は冷却されて固化する。また、微細はんだ球または紫外線(UV)硬化型の導電インクを用いて流路と電極チャネルとの間に壁を形成することによって金属合金成分の配置を決めることも、開示されている。この先行技術文献ではさらに、電極を酸化インジウムスズ(ITO)または白金などの金属を用いたリソグラフィによるパターニングで形成することも想定している。このマイクロ流体デバイスは、金属合金成分とパターニングされた導電層との組み合わせを含むことができる。例えば、一対の電極が、パターニングされた導電性を有する物からなる第1の電極、及び電極チャネルに金属合金が充填されてなる第2の電極であることが開示されている。
【0010】
熱可塑性物質へのインクジェット印刷が知られており、例えば、米国特許出願公開第2009/0078915号、国際公開第2004/068389号、米国特許出願公開第2006/0065897号そして国際公開第2008/069565号に記載されている。
【0011】
既知のインクの組成は、不揮発性の溶媒、特に高沸点のポリオールの、例えばグリオールなどを含む。このようなポリオールの沸点は、典型的には80〜300℃であり、ある実施例では100〜200℃である。これらの成分が、噴射ノズル内のインクが早期に乾いてしまうのを防ぐ保湿剤の役目をすることにより、噴射工程(インクジェット)の信頼性を確保する。焼結は、標準的には、導電インクの溶媒を蒸発させ金属ナノ粒子を溶融定着させて導通の経路を形成するための加熱工程である。しかしながら、残存する有機成分が、より導通性が低く導通性が変化しやすい物質を生じることにより、導通路を妨げるので、高沸点の液体の存在は焼結の温度に影響してしまう。つまり、焼結温度をより高くすることになるので、より大きなエネルギーが必要になるし、熱可塑性物質を損傷するおそれがある。
【0012】
作動電極及び検出電極を正確かつ精密に配置することは、デバイスの動作に重要である。例えば、流路からの制御された距離の終点となるタイプの電極は、電極から流路のチャネルの分離距離を正確性及び精度の両方の観点から再現性よく規定できることが重要である。分離距離は、例えば10〜100μmの範囲となりうる。この分離は、特定の距離に合わせられるように極めて良好に制御されることが望ましい。さらに、電極を流路に非常に近い位置に配置できるように、電極から流路のチャネルの分離は非常に小さい大きさでなされることが望ましい。活性電極、つまり印加された電圧による駆動のための電極においては、一般に、電極の末端と流路とが近ければ近いほど、流路に同じ電場勾配を作るのに必要な電圧を小さくすることができ、すなわち、より低い電圧で同じ作用効果を得ることができる。さらに、電極の末端の配置される位置の仕様との違いは、電極の末端と流路との距離の違いにつながり、それが印加された電圧による電場の大きさの違いにつながる。さらに、そのような電極が正しく製造されず流路まで広がると、熱可塑性物質、ガラスまたは他の基板材料による望ましい絶縁状態より電気的な短絡の回路ができてしまい、デバイスが動作しなくなるおそれがある。誘導液滴センサなどの受動デバイスを構成するよう設けられた電極の正確さと感度についても、同様の点があてはまる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2007/081385号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
正確かつ精密に流路に対する電極の位置を規定することの必要性が、特許文献1で提案されたように電極をそれ自体のチャネルに配置することの魅力の理由である。しかしながら、この手法でも、電極材料の閉じ込めが十分でないこと、また、これに続く熱可塑性物質の基板を損傷または変色させない処理工程を用いること(UV硬化性の導電インクが用いられる場合の例においては特に)、といった改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る一の態様によると、マイクロ流体チャネルを有する基板と、プライマ層及び前記プライマ層上に設けられ前記マイクロ流体チャネルに関連して配置された導電層を含む導電性機構とを具備するマイクロ流体デバイスが提供される。前記プライマ層は、(i)有機ポリマーと、(ii)前記有機ポリマーを分散させた多孔性微粒子材料とを含む。前記有機ポリマーは、(a)ビニルラクタム反復単位を含むホモポリマーまたはコポリマー、(b)セルロースエーテル、(c)ポリビニルアルコール、及び(d)未変性ゼラチンまたは変性ゼラチンからなる群から選択される。
【0016】
本発明に係るある形態によると、マイクロ流体チャネルを有する基板と、プライマ層及び前記プライマ層上に設けられ前記マイクロ流体チャネルに関連して配置された導電層を含む導電性機構とを具備するマイクロ流体デバイスが提供される。プライマ層は、(i)有機ポリマーと、(ii)前記有機ポリマーを分散させた多孔性微粒子材料とを含む。前記有機ポリマーは、(a)ビニルラクタム反復単位を含むホモポリマーまたはコポリマー、(b)セルロースエーテル、及び(c)ポリビニルアルコールからなる群から選択される。
【0017】
本発明に係る他の態様によると、(A)マイクロ流体チャネルを有する基板を準備し、(B)プライマ層を前記基板に塗布し、(C)導電インクの層を前記プライマ層上における前記マイクロ流体チャネルと関係づけられた位置に塗布するマイクロ流体デバイスの製造方法が提供される。前記プライマ層は、(i)有機ポリマーと、(ii)前記有機ポリマーを分散させた多孔性微粒子材料とを含む。前記有機ポリマーは、(a)ビニルラクタム反復単位を含むホモポリマーまたはコポリマー、(b)セルロースエーテル、及び(c)ポリビニルアルコールからなる群から選択される。前記導電インクは、保湿性有機溶媒及び前記保湿性有機溶媒内に分散した導電性の粒子を含む。
【0018】
本発明に係るさらなる態様によると、上述の方法により得られるまたは得ることが可能とされるマイクロ流体デバイスが提供される。
【0019】
基板に導電層を塗布する前にプライマ層を塗布することによって、導電層の物理的特性及び電気的特性の制御に改善がもたらされる。特に、以下のような改善の結果が見られる。導電層の抵抗率は、より一様になる。マイクロ流体デバイス毎の導電層の抵抗率の再現性は向上する。導電層の抵抗率がより小さくなり、すなわち、導電層の導電性をより高くすることができる。導電層の、導電インクを設けた後の乾燥特性が向上する。とりわけ、導電層の空間的な範囲がより明確に規定され、より明確に規定された境界を有し、内部における空隙が少なくなるか存在しなくなる。
【0020】
また、プライマ層は導電インクの導電性材料を分散させた保湿性有機溶媒の不揮発性成分を吸収するので、不揮発性成分はプライマ層の内部へと吸収されたことにより導電インク中にはもはや存在しなくなる。ここに説明されたように、プライマ層の構成は導電インク中の好ましくない含有物を吸収することによりふるいの役目をする。これにより最終的な焼結工程を、従来可能であった温度よりも低温のもとで行うことができる。このことは、基板が熱可塑性物質、とりわけシクロオレフィンコポリマーといったポリオレフィンにより形成される場合に、特に望まれる。
【0021】
本発明について、例示のため以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1Aから図1Fは、本発明の一実施形態に係る、チャネル内に電極を製造する工程を順に示す、基板の概略断面図である。
【図2】図2Aは、図1Fに示される製造された一対の電極を含むマイクロ流体デバイスの部分の平面図である。 図2Bは、図2AのA−A線による断面図である。 図2Cは、図2AのB−B線による断面図であって図1Fと同じ図である。
【図3】図3は、は、図2Aとは別の配置形を有する一対の電極を含むマイクロ流体デバイスの部分の平面図である。
【図4】図4は、は、図2Aとは別の配置形を有する一対の電極を含むマイクロ流体デバイスの部分の平面図である。
【図5】図5は、要求に応じて液滴を生成するマイクロ流体デバイスの構成要素の概略平面図である。
【図6】図6は、第1及び第2のチャネルから受け取られる液滴の対を融合させるマイクロ流体デバイスの構成要素の概略平面図である。
【図7】図7は、チャネル分岐点で液滴の経路指定をするか仕分けするマイクロ流体デバイスの構成要素の概略平面図である。
【図8】図8は、電極が基板の下部に形成された別の実施形態の概略断面図である。
【図9】図9Aは、例示のプライマによる前処理を基板に行わずにチャネルに電極をプリントした結果を示す写真である。 図9Bは、例示のプライマによる前処理を基板に行わずに非構造表面に電極をプリントした結果を示す写真である。 図9Cは、図9Aとの比較で例示のプライマによる前処理を基板に行ってからチャネルに電極をプリントした結果を示す写真である。 図9Dは、図9Bとの比較で例示のプライマによる前処理を基板に行ってから非構造表面に電極をプリントした結果を示す写真である。
【図10】図10は、3バッチのサンプルに基づく導電層の平均抵抗値を示す棒グラフである。
【図11】図11は、シクロオレフィンポリマーに成形されたチップにおける電極試験チャネルの概要である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(定義)
この明細書において、"アルキル"は直鎖または分岐鎖の、脂肪族飽和炭化水素基をいう。好ましくは、上記"アルキル"は1〜12の、典型的には1〜8の、好適には1〜6の炭素原子からなる。C1-6アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、2−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどを含む。ここでいうアルキル基は置換されてもよい。
【0024】
"シクロアルキル"は環状の、脂肪族飽和炭化水素基をいう。シクロアルキル基は3〜10の、好ましくは3〜8の炭素原子を有する部分であり、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロオクチル基を含む。ここでいうシクロアルキル基は置換されてもよい。
【0025】
"アルコキシ"は"アルキル−O−"基を意味し、そのうちの"アルキル"は上記に定義されたものであって、その最も広義の態様でもよいし、好ましいとされた態様でもよい。
【0026】
"フェニル"は"−C"基を意味する。ここでいうフェニル基は置換されてもよい。
【0027】
"ヒドロキシ"は"−OH"基を意味する。
【0028】
"ハロ"はフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードから選択された基を意味する。
【0029】
"ニトロ"は"−NO"基を意味する。
【0030】
本発明に係るデバイスにおいて、導電パターンが、流体チャネルを有する不活性の基板に形成される。
【0031】
本発明で、基板は不浸透性でプライマ層及び導電インクに対する活性を有さないものであれば何でも構わない。好適な基板の例としては、ガラスや熱可塑性有機ポリマーが挙げられる。
【0032】
一実施形態において、基板は熱可塑性有機ポリマーである。基板を提供するのに用いられる好適な熱可塑性有機ポリマーの非限定的な例としては、エチレン系不飽和モノマーからなるポリマーが挙げられ、特にポリアルケン(ポリオレフィン)、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド及びこれらの混合物を含む。
【0033】
基板を提供するのに用いられる好適なエチレン系不飽和モノマーからなるポリマーの例としては、以下に例示するがそれらに限定されない、ポリオレフィンが挙げられる。ポリオレフィンの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリメチルペンテンなどである。エチレン系不飽和モノマーからなるポリマーの他の例としては、ポリビニルクロライド、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン(登録商標))、ポリビニルアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、エチレンアセテートビニルコポリマー、エチレンメチルアクリレートコポリマー、スチレンアクリロニトリルコポリマー、シクロオレフィンポリマーまたはコポリマー、及びこれらの混合物及び派生物が挙げられる。
【0034】
好適なポリアミドの例としては、6-6ナイロン、6-12ナイロン及び6ナイロンが挙げられる。好適なポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンアジペート、ポリカプロラクトン及びポリ乳酸が挙げられる。
【0035】
ある実施形態において、熱可塑性有機ポリマーはポリオレフィン、特に、シクロオレフィンホモポリマーまたはコポリマーである。この明細書において、"シクロオレフィンホモポリマー"なる語は、全体がシクロアルケン(シクロオレフィン)モノマーから構成されるポリマーを意味する。典型的には、シクロオレフィンホモポリマーを構成するシクロアルケンモノマーは、3〜14の、好適には4〜12の、実施形態によっては5〜8の、環状炭素原子を有する。典型的には、シクロオレフィンホモポリマーを構成するシクロアルケンモノマーは、1〜5の、例えば1〜3の、好適には1つまたは2つの、実施形態によっては1つの炭素二重結合を有する。典型的には、シクロオレフィンホモポリマーを構成するシクロアルケンモノマーは、1〜5の、例えば1〜3の、好適には1つまたは2つの、実施形態によっては1つの炭素環を有する。この炭素環は、1つ以上の、典型的には1〜3の、好適には1つまたは2つの、実施形態によっては1つの、置換基で置換されていてもよく、置換基はそれぞれ独立に、C1-6アルキル(典型的にはC1-4アルキル、特にメチルまたはエチル)、C3-8シクロアルキル(典型的にはC5-7シクロアルキル、特にシクロペンチルまたはシクロヘキシル)、フェニル(C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロ及びニトロから選択される1〜5の置換基で随意に置換されうる)、及びハロゲンからなる群から選択されたものである。
【0036】
"シクロオレフィンコポリマー"なる語は、シクロアルケン及び非環状アルケン(オレフィン)の両方から構成されるポリマーを意味する。モノマーはエチレン系不飽和(C=C)結合を含むものであれば、炭化水素でもよく、官能基が付加されたものでもよい
【0037】
典型的には、シクロオレフィンホモポリマーを構成するシクロアルケンモノマーは、3〜14の、好適には4〜12の、実施形態によっては5〜8の、環状炭素原子を有する。典型的には、シクロオレフィンホモポリマーを構成するシクロアルケンモノマーは、1〜5の、例えば1〜3の、好適には1つまたは2つの、実施形態によっては1つの炭素二重結合を有する。典型的には、シクロオレフィンホモポリマーを構成するシクロアルケンモノマーは、1〜5の、例えば1〜3の、好適には1つまたは2つの、実施形態によっては1つの炭素環を有する。この炭素環は、1つ以上の、典型的には1〜3の、好適には1つまたは2つの、実施形態によっては1つの、置換基で置換されていてもよく、置換基はそれぞれ独立に、C1-6アルキル(典型的にはC1-4アルキル、特にメチルまたはエチル)、C3-8シクロアルキル(典型的にはC5-7シクロアルキル、特にシクロペンチルまたはシクロヘキシル)、フェニル(C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ハロ及びニトロから選択される1〜5の置換基で随意に置換されうる)、及びハロゲンからなる群から選択されたものである。シクロオレフィンと共重合される非環状アルケンの例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-メチルペンテン、ビニルクロライド、アクリロニトリル、テトラフルオロエチレン、ビニルアセテート、スチレン、メチルメタクリレート及びメチルアクリレートが挙げられ、実施形態によってはエチレンまたはプロピレン、特にエチレンである。
【0038】
本発明で利用することができる市販のシクロオレフィンホモポリマー及びコポリマーの例は、モノマーとして8,8,10-トリノルボルン-2-エン(ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン)または1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1-4,5,8-ジメタノナフタレン(テトラシクロドデセン)に基づくものである。Shin et al.著、Pure Appl. Chem., 2005-77(5), 801-814項に記載されるように、これらのモノマーのホモポリマーは、開環複分解重合(開環メタセシス重合)により形成することができ、コポリマーは、前述したモノマーのエチレンとの連鎖重合により形成することができる。
【0039】
したがって、ある実施形態において、シクロオレフィンポリマーは、次の一般化学式(化1)のシクロオレフィンホモポリマーである。
【0040】
【化1】

【0041】
但し、上記mはポリマーの平均分子量(M)が25,000〜250,000の範囲となるような値であり、R及びRはそれぞれ独立に、以下からなる群から選択される:
水素、
1-6アルキル(アルキル基であり次のうち独立に選択される1〜3の置換基で随意に置換され、その置換基がC3-8シクロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、−NH、−NH(C1-6アルキル)、−N(C1-6アルキル)2、−C(=O)OH、または−C(=O)OC1-6アルキルであるもの)、
3-8シクロアルキル(シクロアルキル基であり次のうち独立に選択される1〜3の置換基で随意に置換され、その置換基がC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、−NH、−NH(C1-6アルキル)、−N(C1-6アルキル)2、−C(=O)OH、または−C(=O)OC1-6アルキルであるもの)、
フェニル(次のうち独立に選択される1〜5の置換基で随意に置換され、その置換基がC3-8シクロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、−NH、−NH(C1-6アルキル)、−N(C1-6アルキル)2、−C(=O)OH、−C(=O)OC1-6アルキル、またはニトロであるもの)、
1-6アルコキシ、
ヒドロキシ、
ハロ、
−NH
−NH(C1-6アルキル)、
−N(C1-6アルキル)2
−C(=O)OH、及び
−C(=O)OC1-6アルキル;
または、R及びRがともに、それらが結合された炭素原子とともに、4〜10の、好適には5〜8の炭素原子を有する炭素環を構成し、環炭素原子のうちの1〜3、好適には1つまたは2つがそれぞれ、以下からなる群から選択される置換基で随意に置換されているもの:
1-6アルキル(アルキル基であり次のうち独立に選択される1〜3の置換基で随意に置換され、その置換基がC3-8シクロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、−NH、−NH(C1-6アルキル)、−N(C1-6アルキル)2、−C(=O)OH、または−C(=O)OC1-6アルキルであるもの)、
3-8シクロアルキル(シクロアルキル基であり次のうち独立に選択される1〜3の置換基で随意に置換され、その置換基がC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、−NH、−NH(C1-6アルキル)、−N(C1-6アルキル)2、−C(=O)OH、または−C(=O)OC1-6アルキルであるもの)、
フェニル(次のうち独立に選択される1〜5の置換基で随意に置換され、その置換基がC3-8シクロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、−NH、−NH(C1-6アルキル)、−N(C1-6アルキル)2、−C(=O)OH、−C(=O)OC1-6アルキル、またはニトロであるもの)、
1-6アルコキシ、
ヒドロキシ、
ハロ、
−NH
−NH(C1-6アルキル)、
−N(C1-6アルキル)2
−C(=O)OH、及び
−C(=O)OC1-6アルキル。
【0042】
一の実施形態において、R及びRはそれぞれ独立に、水素、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル及びフェニルからなる群から選択される。一の実施形態において、R及びRはそれぞれ独立に、水素及びC1-6アルキルからなる群から選択される。一の実施形態において、R及びRはともに水素である。
【0043】
別の実施形態において、R及びRがともに、それらが結合された炭素原子とともに、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンまたはビシクロ[2.2.1]オクタンのうちいずれかの炭素環を形成し、環炭素原子がそれぞれ随意に1つ以上の、C1-6アルキル(アルキル基であり次のうち独立に選択される1〜3の置換基で随意に置換され、その置換基がC3-8シクロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、−NH、−NH(C1-6アルキル)、−N(C1-6アルキル)2、−C(=O)OH、または−C(=O)OC1-6アルキルであるもの)、C3-8シクロアルキル(シクロアルキル基であり次のうち独立に選択される1〜3の置換基で随意に置換され、その置換基がC1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、−NH、−NH(C1-6アルキル)、−N(C1-6アルキル)2、−C(=O)OH、または−C(=O)OC1-6アルキルであるもの)、フェニル(次のうち独立に選択される1〜5の置換基で随意に置換され、その置換基がC3-8シクロアルキル、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、−NH、−NH(C1-6アルキル)、−N(C1-6アルキル)2、−C(=O)OH、−C(=O)OC1-6アルキル、またはニトロであるもの)、C1-6アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、−NH、−NH(C1-6アルキル)、−N(C1-6アルキル)2、−C(=O)OH、及び−C(=O)OC1-6アルキルからなる群から選択される置換基に置換されている。この実施形態においては、好適には、R及びRがともに、それらが結合された炭素原子とともに、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンまたはビシクロ[2.2.1]オクタンのうちいずれかの炭素環を形成し、環炭素原子がそれぞれ随意に1つ以上の、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル及びフェニルからなる群から選択される。
【0044】
ある実施形態において、上記mはポリマーの平均分子量(M)が50,000〜150,000の範囲となるような値である。
【0045】
また他の実施形態において、シクロオレフィンポリマーは、次の化学式(化2)のシクロオレフィンポリマーである。
【0046】
【化2】

【0047】
但し、上記n及びlはポリマーの平均分子量(M)が25,000〜250,000の範囲となるような値であり、
nはシクロオレフィン反復単位のモル分率が0.2〜0.7の範囲となるような値であり、
lはエチレン反復単位のモル分率が0.8〜0.3の範囲となるような値であり、そして
及びRは上記で示した化学式(化1)について定義されたものと同様であって、その最も広義の態様でもよいし、好ましいとされた態様でもよい。
【0048】
本発明において有益ないくつかの特定のシクロオレフィンホモポリマーの化学構造を以下(化3)に示す。
【0049】
【化3】

【0050】
例として、ノルボルネンの派生物についての開環複分解重合の図解、及びそれらのエテンとの共重合の図解を以下(化4)に示す。
【0051】
【化4】

【0052】
上記の反応図において、l、m、n、R及びRは上記で定義されたものと同様であって、その最も広義の態様でもよいし、好ましいとされた態様でもよい。
【0053】
ある実施形態において、上記mはポリマーの平均分子量(M)が50,000〜150,000の範囲となるような値である。
ある実施形態において、nはシクロオレフィン反復単位のモル分率が0.3〜0.6の範囲となるような値であり、lはエチレン反復単位のモル分率が0.7〜0.4の範囲となるような値である。
【0054】
マイクロ流体デバイスの基板として好適な他の材料の種類としては、シリコンポリマーのポリジメチルシロキサン(PDMS)といった種類が知られている。これらのポリマーは次の一般化学式、
CH-[Si(CH)-O]-Si(CH)
を有し、そのうちnは、単位モノマー[Si(CH)]の繰り返された数である。
上記の化学式において、nは、ポリマーの平均分子量(M)が100〜100,000の範囲、実施形態によっては100〜50,000の範囲となるような値である。
【0055】
マイクロ流体デバイスを提供するのに用いることができるガラスとしては、シリカガラス、特にフォスフォシリケートグラス化合物やボロシリケートガラス化合物が挙げられる。
【0056】
結晶基板、特に例えばシリコン基板などの半導体基板も、用いることができる。基板として好適な他の結晶基板としては、ニオブ酸リチウムが挙げられる。
【0057】
マイクロ流体デバイスは基板に塗布されたプライマの層(プライマ層)を有する。プライマ層は、導電インクの金属粒子が溶存した保湿性有機溶媒を吸収することができる(特に、保湿性有機溶媒の成分の沸点がより高い場合であるが、その場合に限られない)。これにより、続く焼結工程を従来可能であった温度よりもはるかに低い温度で行うことができる。これは特に、熱可塑性物質の基板である場合において、基板の過剰な加熱や損傷を回避することができることから有利となる。
【0058】
プライマ層は、有機ポリマーに分散した多孔性微粒子材料を有する。有機ポリマーは多孔性微粒子材料の結合剤として機能し、高い結合力を有する。有機ポリマーは親水基(例えば、ヒドロキシル、アミノ、カルボニル、カルボキシル、カルボン酸エステル、スルホン、スルホン酸エステル)を含み、それら親水基は有機溶媒の親水基(特にヒドロキシル基)に結合可能となっている。したがって、これらの基によってポリマーが保湿性有機溶媒の分子と結合することができる。実施形態によっては、ポリマーは少なくとも導電インクの保湿性有機溶媒への部分溶解性を有する。これはさらに、導電インクに存在する、より蒸発しにくい成分を吸収することによって、プリント後のプライマ層の表面により純度の高い導電層を残すようにすることができる。
【0059】
ある実施形態では、プライマ層は有機ポリマーに対して30%まで、ある実施形態では25%まで、ある実施形態では20%まで、ある実施形態では15%まで、そしてある実施形態では10%まで含まれる(一または複数の溶媒に溶解される前の、濃縮状態のプライマの重量パーセントとして)。
【0060】
一の実施形態では、有機ポリマーはビニルラクタム反復単位を含むポリマー("ビニルラクタムポリマー"ともいう)、すなわち、次の一般化学式(化5)の反復単位を含むポリマーである。
【0061】
【化5】

【0062】
但し、上記nは0〜6である。
ある実施形態ではnは1、2または3であり、ある実施形態では1または3であり、ある実施形態では1である。nが1の場合、反復単位はビニルピロリドン反復単位である。nが3の場合、反復単位はビニルカプロラクタム反復単位である。
【0063】
ビニルラクタムポリマーは、ホモポリマー(つまり、ビニルラクタムのみを反復単位とするもの)であっても、ビニルラクタム反復単位に加えて他のビニル反復単位も含むコポリマーであってもよい。ビニルラクタムポリマーがコポリマーの場合、他の反復単位としては既知のビニル反復単位のうち何でもよく、例としてはエチレン、プロピレン、1-ブテン、2-メチルペンテン、アクリロニトリル、ビミルアセテート、スチレン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、アルキルアミノメタクリレート、アルキルアミノメタクリルアミド、及びこれらの混合物を含む。ビニル反復単位はいずれも単量体型のとき炭素-炭素二重結合を有しており、反復単位の炭素原子間で単結合により結合してポリマーを形成するように二重結合が切られる。
【0064】
有機ポリマーがビニルラクタム反復単位を含むコポリマーである場合、このコポリマーは典型的には少なくとも30%の、また、実施形態によっては少なくとも40%の、ビニルラクタム反復単位を含んでいる(コポリマーの全ての反復単位の全数に対しての割合として)。
【0065】
コポリマーの種類の例には以下が含まれる。交互コポリマー(反復単位A及びBが交互に繰り返される、A-B-A-B-A-B)、2またはそれ以上のホモポリマーのサブユニットが共有結合によりつながったブロックコポリマー(AAAAAA-BBBBBB-AAAAAA-BBBBBB)、及び反復単位A及びBがランダムに分布したランダムコポリマーが例示される。本発明に係るある実施形態において、用いられるコポリマーはランダムコポリマーである。
【0066】
ある実施形態において、用いられる有機ポリマーはビニルピロリドンのホモポリマーまたはコポリマーである。一の実施形態において、有機ポリマーはポリビニルピロリドン(つまり、ビニルピロリドンのみを反復単位とするホモポリマー)である。また他の実施形態において、有機ポリマーは他のビニル反復単位を含むコポリマーであって、他のビニル反復単位の例としてはエチレン、プロピレン、1-ブテン、2-メチルペンテン、アクリロニトリル、ビミルアセテート、スチレン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、アルキルアミノメタクリレート、アルキルアミノメタクリルアミド、及びこれらの混合物が含まれる。
【0067】
有機ポリマーがビニルピロリドン反復単位を含むコポリマーである場合、このコポリマーは典型的には少なくとも30%の、また、実施形態によっては少なくとも40%の、ビニルピロリドン反復単位を含んでいる(コポリマーの全ての反復単位の全数に対しての割合として)。
【0068】
一の実施形態において、有機ポリマーはアクリルまたはメタクリル反復単位を、ビニルラクタム(実施形態によってはビニルピロリドン)反復単位に加えて含むコポリマーである。
【0069】
この明細書において"アクリル反復単位"または"メタクリル反復単位"なる語は、次の一般化学式(化6)の反復単位を意味する。
【0070】
【化6】

【0071】
上記のうちRはH(水素)またはメチルであり、YはORまたはNR、但し、それぞれのRがH(水素)またはC1-6アルキル(ハロゲン、OR'またはNR'R'から選択される1つ以上で随意に置換され、R'がそれぞれ独立で水素またはC1-6アルキルであるもの)である。
RがHの場合、反復単位はアクリル反復単位である。Rがメチルの場合、反復単位はメタクリル反復単位である。
【0072】
ある実施形態において、アクリルまたはメタクリル反復単位はアルキルアミノメタクリレートまたはアルキルアミノメタクリルアミド反復単位である。これらの反復単位は次の一般化学式(化7)を有する。
【0073】
【化7】

【0074】
上記のうちRは水素またはメチルであり、XはOまたはNR''、但しR''は水素またはC1-6アルキルであり、nは1〜10であり、Rはそれぞれ独立でH(水素)またはC1-6アルキルである。
【0075】
XがOである場合、反復単位はアルキルアミノメタクリレート反復単位である。XがNR''である場合、反復単位はアルキルアミノメタクリルアミド反復単位である。
【0076】
本実施形態では、Rはメチルである。
本実施形態では、nは1〜4、特に2、3でありうる。
本実施形態では、実施形態によっては1つまたは両方のR基が水素またはメチル基であり、特に、メチル基である。
【0077】
特に好ましい実施形態によると、有機ポリマーはビニルピロリドンとジメチルアミノエチルメタクリレートとのコポリマーである。そのようなコポリマーとして、ISP社(ISP Corporation, New Jersey, USA)による市販のコポリマー958がある。典型的には、コポリマー958は40〜60%のビニルピロリドン反復単位と60〜40%のジメチルアミノエチルメタクリレート反復単位が含まれている。
【0078】
別の実施形態においては、有機ポリマーは下記のポリマーの混合物により構成されてもよい:
(1)上記により定義され例示されたような、ビニルラクタム反復単位(その最も広義の態様でもよいし、好ましいとされた態様でもよい)、そして
(2)アクリルポリマー。本文中で"アクリルポリマー"なる語は、アクリルまたはメタクリル反復単位(上記により定義され例示されたものであって、その最も広義の態様でもよいし、好ましいとされた態様でもよい)を含むポリマーを意味する。アクリルポリマーは、ホモポリマー(つまり、アクリルまたはメタクリル反復単位を一種類のみ含むもの)であっても、コポリマー(つまり、アクリルまたはメタクリル反復単位に加えて他の1つまたはそれ以上の反復単位も含むもの。加えられた反復単位は、上記により定義され例示されたようなビニル反復単位のいずれでもよい。)好適には、アクリルポリマーはアクリルホモポリマーであり、特に、メチルメタクリレートである。
【0079】
一の実施形態において、有機ポリマーはセルロースエーテルである。この明細書において、"セルロース"は、約100〜約100,000(実施形態によっては500〜50,000)のD-グルコース単位がβ1→4結合されたものの直鎖を含む多糖類を意味する。セルロースエーテルは、セルロース分子の1つまたはそれ以上のヒドロキシル基がアルキル基(上記により定義され例示されたものであって、実施形態によってはC1-6アルキル、また実施形態によってはC1-4アルキルである)でアルキル化されたセルロース派生物である。なお、それらのアルキル基はC1-6アルコキシ、ヒドロキシ、及び、−C(=O)OHまたは−C(=O)OC1-6アルキル、から選択されるいずれかにより随意に置換されていてもよい。それらアルキル基は同じであっても異なっていてもよく、セルロースエーテルは1つまたはそれ以上の異なるアルキル基を同一分子中に含んでいてもよい。典型例としてはメチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は特に好ましい。
【0080】
一の実施形態において、有機ポリマーはポリビニルアルコールである。この技術においてよく知られているように、ポリビニルアルコールは、まずポリビニルアセテートなどのポリビニルエステルを準備し、次にポリビニルエステルのエステル結合が部分加水分解または完全加水分解されることで、ヒドロキシル基による置換がなされたポリマーを残すようにして調製される。加水分解度は、30モル%から、100モル%(つまり、ポリマーにヒドロキシル基のみがあるようにする完全加水分解)までの、様々な値となりうる。ポリビニルアルコールの加水分解度(モル%)は、次の試験方法の一つにより求められてもいい。国際規格ISO 15023-1:2001, ISO 15023-2:2003そして日本工業規格(JIS)K6726が挙げられる。
【0081】
本発明に係るある実施形態において、用いられるポリビニルアルコールの加水分解度は30〜99モル%であり、ある実施形態においては35〜95モル%である。
【0082】
一の実施形態において、用いられるポリビニルアルコールの加水分解度は40〜80モル%であり、ある実施形態においては50〜70モル%である。このような加水分解度のポリビニルアルコールは、導電インク中の保湿性有機溶媒を最も効果的に吸収し、かつ、プライマ層の微細塗布に用いられるものとして好ましい有機溶媒に最も溶解しやすいことがわかった。
【0083】
本発明に係る一の実施形態において、用いられるポリビニルアルコールの加水分解度は75〜95モル%であり、ある実施形態においては80〜90モル%である。このような加水分解度のポリビニルアルコールは、導電インクのプリントに最適な印刷適性をもたらすが、プライマ層の微細塗布に用いられるものとして好ましい有機溶媒への溶解性が制限されてしまうことがわかった。したがって、本発明において用いられるポリビニルアルコールの好ましい加水分解度は70〜90モル%である。
【0084】
この技術において知られているように、加水分解度によってポリビニルアルコールのポリマーの結晶化度が決まる。結晶化度はまた、立体規則性、枝分かれ度及び結晶融点/ガラス転移点の温度といった数々の要因にも依存する。現在の理論に束縛されるものではないが、加水分解度を一定とした場合にポリビニルアルコールの結晶化度が可変であり、本発明において含まれている有機溶媒へのポリマーの溶解性の向上に寄与することが示される。導電インクの最適な印刷適性を示しながらも、微細塗布に用いられる有機溶媒への溶解性も改善できるような好ましいポリマーとして、日本合成化学による市販のNichigo G-Polymer(商標名)、具体的にはNichigo G-Polymer OKS 8041がある。
【0085】
一の実施形態において、プライマ層に用いられる有機ポリマーは未変性ゼラチンまたは変性ゼラチンである。当業者においてよく知られているように、ゼラチンはポリペプチドやタンパク質の混合物を含んでいる。A. G. Ward, A. Courts編、"The Science and Technology of gelatin" (Food Science & Technology Monographs) (1977年6月13日出版)に示されているとおり、ポリペプチドやタンパク質の分子量は30,000〜300,000g/molの様々な値となりうる。
【0086】
ゼラチンは、典型的にはコラーゲンの分解によって生成する。コラーゲンは、家畜種のウシ、ニワトリ及びブタといった動物の、骨、皮膚、結合組織、臓器及び腸などの素材から抽出されうるタンパク質である。ゼラチンを生成するためのコラーゲンの分解は、当業者によく知られた考えられるいくつかの試薬、例えば酸、塩基及び酵素などであるがこれに限定されないもの、を用いて行うことができる。
【0087】
当業者においてよく知られているように、ゼラチンはフリーのヒドロキシル基及びアミノ基と適切な試薬との反応によって修飾可能である。例えば、ヒドロキシル基は水素のアルキル基への置換によってエーテル化されたり、水素のアシル基への置換によってエステル化されたり、カルボニル含有化合物と2つのヒドロキシル基の縮合によってアセタール化されることがありうる。その場合の適切な試薬の例としては、ハロゲン化アルキルやアルキルスルホネートなどのアルキル化試薬、酸塩化物や酸無水物などのアシル化試薬、そしてアルデヒドやケトンなどのカルボニル化合物が含まれる。ゼラチンのアルデヒドとの反応は、ポリマーを硬化する架橋を生じうる。酸無水物などのアシル化試薬との反応は、ゼラチンにおける化学的または熱的な安定性などの特性に変化を生じさせうる。
【0088】
ある実施形態において、変性ゼラチンはアシル化ゼラチン、特にサクシニル化ゼラチン、詳細にはアルキルサクシニル化ゼラチンである。好適な変性ゼラチンの例として、ドイツ特許第19721238号や米国特許第5439791号に記載されたものがある。特に好適な例は、GELITA社(GELITA(登録商標))による市販の写真用ゼラチンである。
【0089】
ある実施形態において、プライマ層に用いられる有機ポリマーは架橋されている。電極パターンの形成後にプライマを架橋することによって、最終的なマイクロ流体デバイス上の電極パターンについて寸法安定性及び環境安定性が向上する。好適な硬化剤の例は、ポリアミノアミドエピクロロヒドリン樹脂、またメラミン及びベンゾグアナミン派生物、次の一般化学式(化8)によるものである。
【0090】
【化8】

【0091】
有機ポリマーは、典型的には、濃縮された溶液として供給されまたは調製され、ある実施形態において、その溶媒は親水性である。好適な親水性の溶媒の例としては、水及び酸素化溶媒、例えばアルコール、エーテル、ケトン及びエステルが含まれる。好ましい溶媒の例として、C1-6アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタン-1-オール、ブタン-2-オール、ペンタン-1-オール及びヘキサン-1-オールが挙げられ、中でも特にエタノールが好ましい。
【0092】
本発明に係るプライマ層は、多孔性微粒子材料も含む。多孔性微粒子材料はフィルタをして機能し、導電インクに含まれた保湿性有機溶媒(特に不揮発性成分)の吸収(プライマ層による吸収)におけるさらなる補助の役目を持つ。また、多孔性微粒子材料はマイクロ流体チャネルにプライマ層が塗布される際のプライマ層の流れを調整するようにも作用する。マイクロ流体デバイスの近接する部位にプライマがあふれ出るといった望ましくない現象は、多孔性微粒子材料の適切な選択及び濃度によって制御することができる。
【0093】
ある実施形態において、多孔性微粒子材料は分子ふるいを含む。この明細書において"分子ふるい"なる語は、正確かつ均一な大きさの細孔を有し気体及び液体の吸着剤として機能することができる材料を意味する。細孔を通過するのに十分に小さい分子は吸着されるが、一方、より大きな分子、具体的には導電インク中に存在する金属微粒子は、吸着されない。典型的には、細孔の容積は0.20〜1.20ml/gの範囲であり、好適には0.40〜0.60ml/gの範囲である。
【0094】
好適な微粒子材料の例としては、金属及び半金属の酸化物、例えばシリカ(特にアモルファスシリカ)、アルミナ(例えばベーマイト(一水和アルミニウム酸化物)及びバイヤライト(三水和アルミニウム酸化物))、チタニア、ゼオライト(多孔質アルミノケイ酸塩材料)、硫酸バリウム、及びシリカアルミナ水和物及び酸化物が含まれる。
【0095】
ある実施形態において、多孔性微粒子材料はアルミナベーマイトである。特に好適なアルミナベーマイトとしては、Sasol社によるDISPERAL(登録商標)及びDISPAL(登録商標)として入手可能な、水分散性のアルミナベーマイトの範囲が含まれる。
【0096】
別の実施形態においては、多孔性微粒子材料はシリカ、特にヒュームドシリカである。
【0097】
また別の実施形態においては、多孔性微粒子材料はゼオライトである。ゼオライトは多孔質アルミノケイ酸塩材料であり分子ふるいとして機能することができる。ゼオライトは種々の多様なカチオン(陽イオン)、例えばNa+、K+、Ca2+、及びMg2+などのカチオンを収容できる多孔性の構造を有する。これらの陽イオンは、接している溶液中の他の陽イオンと容易に交換されうる。好適なゼオライトの例としては、アミサイト、方沸石、バラー沸石、ベルベルヒ沸石、ビキタ沸石、ボッグス沸石、ブリューステライト、チャバサイト、クリノプチロライト、コウルス沸石、ダチアルダイト、エジングトナイト、剥沸石、エリオナイト、フォージャサイト、フェリエライト、ガロナイト、ギスモンド沸石、グメリン沸石、ゴビンス沸石、ゴンナルダイト、グースクリーク沸石、重十字沸石、ハーシェル沸石、ヒューランダイト、濁沸石、レビナイト、マリコパ石、マッシィ沸石、メルリノ石、中沸石、モンテソンマ沸石、モルデナイト、ナトロライト、オフレタイト、パラナトロライト、ポーリンジャイト、ペンタシル(ZSM-5としても知られる)、パーリアル沸石、フィリプサイト、ポルサイト、スコレス沸石、ソーダダキアルディ沸石、ステラ沸石、束沸石、テトラナトロライト、トムソン沸石、ツァーニック沸石、ワイラカイト、灰重十字沸石、ウィルヘンダーソン沸石及び湯河原石が含まれる。
【0098】
多孔性微粒子材料は、典型的には溶媒中に分散体として存在する。典型的には、その溶媒は水または親水性の有機溶媒、例えばアルコール、エーテル(特に、後に述べて例示するようなグリコールエーテル)、ケトンまたはエステルである。ある実施形態において、多孔性微粒子材料を分散させる溶媒は水である。
【0099】
ある実施形態において、プライマ層にはその重量の少なくとも70%、ある実施形態では少なくとも80%、ある実施形態では少なくとも85%、ある実施形態では少なくとも90%の、多孔性微粒子材料が含まれている(溶媒に溶解される前の、濃縮状態のプライマに対する割合として)。
【0100】
プライマ層は、一般的には溶媒で薄められて基板に塗布され、ある実施形態では溶媒は親水性/疎水性溶媒である。実施形態によってはプライマ層の希釈に用いられる溶媒はマイクロ流体基板の表面エネルギーよりも低い表面張力を示すものとなる。溶媒の界面活性のような特性を、低い表面張力及び遅い蒸発速度とすることにより、調製されたプライマ層を、基板の塗布すべき領域にのみ流すようにすることができる。好適な溶媒の例としては、酸素化溶媒、例えばアルコール、エーテル(特に、後に述べて例示するようなグリコールエーテル)、ケトン及びエステルが含まれる。
【0101】
好ましくは、プライマ層を薄める溶媒がグリコールエーテルである。このような溶媒の特性として、例えば親水性及び疎水性での被膜となるポリマーの良好な溶解性、疎水性表面における良好な流れ具合、そして蒸発(乾燥)の制御性などの特性が良好な範囲で得られる。好適なグリコールエーテルの例としては、エチレングリコールモノC1-6アルキルエーテル(例えばエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(イソプロポキシエタノール)及びエチレングリコールモノブチルエーテル)、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノC1-6アルキルエーテル(例えばジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(CARBITOL(商標名))、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びジエチレングリコールモノヘキシルエーテル))、トリエチレングリコールモノC1-6アルキルエーテル(アルコキシトリグリコール、例えばトリエチレングリコールモノメチルエーテル(メトキシトリグリコール)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(エトキシトリグリコール)及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル(ブトキシトリグリコール))、プロピレングリコールC1-6アルキルエーテル(例えばプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル及びプロピレングリコールn−ブチルエーテル)、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールC1-6アルキルエーテル(例えばジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル及びジプロピレングリコールn−ブチルエーテル)及びトリプロピレングリコールC1-6アルキルエーテル(例えばトリプロピレングリコールメチルエーテル及びトリプロピレングリコールn−ブチルエーテル)、が含まれる。中でも特に好ましい例はエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(イソプロポキシエタノール)である。
【0102】
ある実施形態において、プライマ層は重量として50〜95%、ある実施形態では60〜90%、ある実施形態では65〜80%の濃縮状態のプライマ層を含む溶液として塗布され、溶液は重量として5〜50%、ある実施形態では10〜40%、ある実施形態では20〜35%の溶媒で薄められたものである。
【0103】
本発明のマイクロ流体デバイスはさらに、プライマ層上に導電パターンを有する。導電性材料(導電性機構)は、導電インクの塗布により形成され、導電インクは、プライマ層上で、導電性の粒子が保湿性有機溶媒に分散され、基板の焼結によって導電インク中の溶媒が蒸発させられたことにより導電性の粒子が導電パターンとして溶融定着したものである。幅広い種々の導電インクは多くの供給源から市販されている。好適な導電インクの例としては、例えばSun Chemical社による市販のもの、商標名U5603及びU5714が入手可能である。
【0104】
ある実施形態において、導電性材料として金属によって粒子が形成されている。また別の実施形態では、導電性材料は導電性を有する形態の炭素である。導電性を有する形態の炭素の例としては、グラファイトやカーボンナノチューブが含まれる。
【0105】
さらにまた別の実施形態では、導電性材料は導電性の金属酸化物である。そのような材料は、金属酸化物にその材料が導電性となるのに十分な量の金属がドープされたものである。導電性の金属酸化物の例としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンスズ、インジウムドープされた酸化カドミウム及びアルミニウムドープされた酸化亜鉛が含まれる。
【0106】
導電性材料が金属である場合、金属は溶媒と反応しないものである限り特に限定されない。好適な金属の例としては、アルカリ土類金属(例えばベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウム)、遷移金属(例えば亜鉛、モリブデン、カドミウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金及び金)、ランタノイド(例えばランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウム)及びpブロック金属(例えばアルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、タリウム、鉛及びビスマス)が含まれる。好ましい金属としてはニッケル、銅、パラジウム、タングステン、カドミウム、銀、白金及び金が挙げられる。中でも特に、金属が銀である場合が好ましい。
【0107】
当然ながら、上述の金属のうち2またはそれ以上による合金または混合物、及び他の導電性物質との混合物などが用いられてもよい。
【0108】
ある実施形態では、導電インク中に分散している金属または導電性粒子は、ナノ粒子である。但しナノ粒子の粒子サイズは、プライマ層に吸収されないようなサイズでなければならない。典型的には、ナノ粒子の粒子サイズの範囲は1〜800nm、ある実施形態では5〜200nm、またある実施形態では50〜150nmである。
【0109】
導電インクはさらに、任意であるが防錆剤を含んでいてもよい。このような防錆剤は、金属が非貴金属(すなわち、以下に挙げるもの以外の金属:ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金及び金)の場合に金属の酸化を防ぐために必要とされる。防錆剤の例としては、ヒドラジン、アミン(例えばヘキサミン、フェニレンジアミンまたはジメチルエタノールアミンまたは後に述べて例示するような立体障害アミン、四級化アミン、ポリアニリンなどのポリアミン)、アルデヒド(例えば桂皮アルデヒド)、イミン、及び無機の防錆剤(例えば亜硝酸塩(例えば亜硝酸塩ナトリウム)、クロム酸塩及びリン酸塩)、及び上記による任意の混合物、が含まれる。好ましい実施形態によっては、防錆剤は立体障害アミンである。そのうち好適な束縛アミンとしては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール派生物及びそれらのポリカルボン酸塩が挙げられる。特に好適な防錆剤としては、BASF社による市販のもの、商標名Corrosion Inhibitor Amine O(アミンO)、Irgacor L184及びIrgacor L190 Plus(イルガコア)がある。これらは特に、親水性とした場合の溶解性のため好適である。
【0110】
本発明において用いられる導電インクでは、金属粒子が保湿性有機溶媒に分散している。保湿性有機溶媒は水分を吸収しうる液体の溶媒で、典型的には水分子と水素結合を形成することによって水分を吸収できる。特定の有機溶媒が保湿性であるか否かは、典型的には溶媒を湿潤または水性の環境下に置き、水分の吸収による有機溶媒の重量の増加の有無を測定することによって調べることができる。
【0111】
ある実施形態において、保湿性有機溶媒は1〜100%の、典型的には2〜50%の、実施形態によっては5〜40%の重量の水分を吸収可能とする(最初の有機溶媒の重量に対する割合として)。
【0112】
典型的には、保湿性有機溶媒は1つまたはそれ以上の(ある実施形態では1つより多くの)親水基、例えばヒドロキシル、アミノ、カルボニル、カルボン酸及びカルボン酸エステルなどを含んでいる。好適な保湿性有機溶媒の種類としては、酸素化溶媒、例えばアルコール(特にポリオール、すなわち1つより多く―OH基を含むアルコール)、エーテル、ケトン及びエステルが挙げられる。具体的な保湿性有機溶媒の例としては、ポリオール溶媒、そのうち特に、2〜8の、実施形態によっては2〜4の、炭素原子を有するジオール(例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコール)、及び3〜8の炭素原子を有するトリオール、例えばグリセロールなどが含まれる。ある実施形態では、溶媒は少量の(典型的には重量の5%未満の)グリコールエーテル(上記により定義され例示されたようなもの)、例えばイソプロポキシエタノールなどを、含んでいてもよい。
【0113】
ある実施形態において、プライマ層及び導電インクは基板の電極が設けられるチャネル内(導電インクチャネル)に形成される。これは、電極または他の導電性機構の位置を、特に、機能上の関連がある流体の流路との関係において、簡便に規定することができる方法である。他の実施形態では、プライマ層及び導電インクは基板の非構造表面の部分に、それぞれの位置、広さ及び他の要素に対するレジストリ(必要に応じて配置のために用いられる技術、例えばプリントやフォトリソグラフィ等に規定される)で設けられてもよい。多くの場合、導電インクはプライマ上のみに塗布されることが好ましい。したがって、非構造表面に何かを設ける場合、計画された導電インク層の広さを越えてプライマ層が側方へ広がっていることが好ましく、そうすればインクの配置のレジストリの誤り(位置の誤差など)に対して余裕があるためプライマ層の設けられていない表面に導電インクが配置されてしまうのを回避することができるからである。極端な例では、導電インクの配置前に表面全部をプライマで覆うことを、例えば、基板をプライマ溶液に浸けること、基板にプライマ溶液を噴霧すること、プリントまたは他の方法で、行ってもよい。これは特に、導電性機構が基板の背面にも設けられるような場合に魅力的な方法となりうる。なお、背面とは、基板にチャネルなどを備えた前面があるのに対し、何ら機構が設けられていない、または少なくともチャネルの設けられていない、背面、ということである。
【0114】
いったんプライマ層に導電インクが設けられると、基板は溶媒を蒸発させるために焼結され、これによりインク内に存在する導電性の粒子を互いに溶融定着させて導通路を形成させることができる。典型的には、基板は60〜100℃で焼結され、ある実施形態では70〜90℃で焼結される。典型的には、基板は1分間〜1時間、ある実施形態では5〜20分かけて焼結される。
【0115】
任意であるが、上述した定常状態での焼結工程、すなわち焼くことに代えて、表面に短時間強く光を照射することで、見かけ上エネルギーが導電インク中に落とされるようにする過渡過程を用いてもよく、その場合の照射は例えばキセノンランプまたはUV、可視光または赤外光源、随意にレーザまたはLED(Light Emitting Diode)光源などによる。光の波長としては、導電インクの吸収波長であって導電インクの厚さとほぼ同等またはそれより小さい長さの波長が選択される。その結果、光のエネルギーが全部、または少なくともその大部分が、導電インクに吸収され、そのため導電インクの下の基板を実質的に熱することを避けることができる。この方法により、基板に熱による歪みその他の損傷を及ぼすことを回避することができる。
【0116】
(製造方法)
図1Aから図1Fは、本発明の一実施形態に係る、チャネル内に電極を製造する工程を順に示す、基板の概略断面図である。この工程は、典型的にはクリーンルームの条件下で行われる。任意には、基板は脱脂溶剤(典型的にはイソプロパノールと水との混合物)で洗浄される。基板は、ちりや不純物の除去のために、圧縮空気で洗浄されてもよい。
【0117】
図1Aは、上面12及び下面14を有する基板10を示す。基板10の上面12に断面半円形のチャネル20が、例えば成形、プレス加工、機械加工またはエッチングにより形成されている。チャネル20は電極の位置を規定するために設けられており、つまり、このチャネルは"電極"チャネルであり、後で説明する流路チャネルとは対照的なものである。
【0118】
図Bは、チャネル20に、溶媒を含むプライマ溶液22が部分的に充填された状態を示す。プライマ溶液はチャネルへの微細塗布によって、例えばシリンジ、マイクロピペットまたはインクジェットプリントヘッドのノズルを用いて塗布されてもよい。プライマ溶液の組成によってチャネルに毛細管現象により塗布することが可能であり、その結果、円滑かつ均一にチャネルを被覆することができる。ある実施形態ではこれに代えて、プライマをプリントまたはフォトリソグラフィによって配置してもよい。
【0119】
図Cは、溶媒が蒸発する乾燥フェーズの間のプライマ溶液を概略的に図示する。プライマ溶液の組成は、乾燥を室温で妥当な時間で行えるように選択されてもよく、それによって加熱を必要としなくなる。あるいは、基板は温度が上昇した状態に置かれることで乾燥可能となり、または少なくとも乾燥の速度を早めるようにしてもよい。
【0120】
図1Dは、プライマの乾燥フェーズが完了した後の成分を概略的に図示する。固形化したプライマ層16が、実質的にチャネルの内面全体を覆うように形成されている。概略的に示されるように、プライマ層はチャネルの底においてチャネルの側壁よりも厚くなっており、特に側壁の上端付近ではプライマ層が著しく薄くなっている。プライマ溶液の塗布方法によっては、チャネルの側壁の最上部の領域にはプライマが設けられない。
【0121】
図1Eは、続くプライマ層16上に導電インク18の層を設ける工程を行った後のチャネルの断面を概略的に図示する。導電インクの配置は、インクジェット印刷といった、当業者においてよく知られた技術によって行われてもよい。導電インク18が塗布されると、プライマ層は導電インク中の導電性の材料が分散されている保湿性有機溶剤の不揮発性成分を吸収するので、そのような成分は導電インク中にはもはや存在しなくなる。図示されているように、チャネルの側方の上までずっとプリントするようにはしないで、プリントされた層とチャネルの縁との間にギャップδを残す方が、有利となりうる。そのようなギャップを設けることで、チャネル側壁の急な傾斜によりチャネルの縁付近に過剰な濃さでインクが配置されるようなことを避けることも、できるようになる。
【0122】
図1Fは、インク内に存在する導電性の粒子を互いに溶融定着させる焼結工程を概略的に図示する。焼結工程ではまた、インク18に残ったいかなる溶媒も除去され、それによって、導電層20をプライマ層16上に有する基板を提供することができる。注目すべきは、保湿性有機溶剤の不揮発性成分がプライマ層に吸収されることによって、そうでない場合に比べると、焼結工程の温度をより低温として行うことが可能となる。
硬化剤がプライマ中に存在する場合、硬化剤が焼結工程中にプライマ層を硬化させることができる。硬化剤は、反応速度または自己架橋が遅いものであり、それにより、プリント工程中の組成の変化を回避することができ、結合される層間(つまりプライマ及び導電層)の硬化は、プリント後に行われるようになる。
硬化剤がポリアミノアミドエピクロロヒドリン硬化樹脂である場合、硬化は中性〜アルカリ性のpHで行われ、したがって、硬化は、アミン官能基、例えばビニルピロリドン-ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー(コポリマー958)を有する有機ポリマーによって加速される。
【0123】
導電層20は、典型的には能動または受動デバイスにおける電極層として用いられるが、他の要素も構成してよく、例えばアンテナの構造の一部分を構成してもよい。チャネルの形状は、図示したようなおよその断面が半円形状のものである必要はない。他の形であってもよい。例えば、チャネルの底及び/または側壁が平らであってもよく、または平らな部分があってもよい。他の例として、チャネルがV字状の溝に形成されてもよい。さらに、本発明は、マイクロ流体デバイスのチャネルにおける流れの制御または検出のための導電性の機構を形成することに関連するだけでなく、マイクロ流体デバイスの、反応室や試薬溜め等、他の部分に導電性の機構を形成することにも関連したものである。
【0124】
(デバイスの応用)
液滴ベースのマイクロ流体デバイスについて、以下の作用が知られている。
1.必要に応じて1つまたはそれより多くの液滴を、形成、生成または生産すること、
2.液滴を一連のものから仕分けすること、
3.分岐点で液滴の経路指定をすること、
4.2つの液滴を一体の液滴に合体または結合させることで、例えば反応を開始または終了させるようにすること、
5.液滴を分裂または分割させること、
6.液滴内の混合を誘導すること、
7.液滴の経路、またはチャネルを通っていく液滴のうちある種類のものを検出すること、
8.センサを通過するそれぞれの液滴について1つまたはそれより多くのパラメタを解析すること、
9.液滴に帯電させることで、例えばその後の操作を補助するようにすること、
10.液滴について電気的に中和(放電)させること。
【0125】
それらのうち全てとはいわないまでも多くの作用は電磁場の印加または検出によって制御されるものであって、特にそれは電場であるが、磁場についてもそうである。
【0126】
合体の作用は、典型的にはデバイスによって行われる主な動作のベースとなるため、重要である。例えば、サンプルと反応試薬といった互いに異なる流れから液滴を合体させ、化学的または生物学的な反応が中で起こるような一体化された液滴を形成することが典型的である。このような一体化された液滴を、この技術においてナノリアクタということがあり、それはナノメートルスケールの場合に限らず、マイクロメートルスケールの場合であってもそうである。
【0127】
作動電極及び検出電極は、流路に配置されるか流路まで延びていることで流体に接触するように設けられ、または流路の外であって流路に隣接するように設けられていてもよく、その場合に、電極と、液滴を含有しているキャリア液との間に、基板の材料や空気といった絶縁材が存在している。
【0128】
能動部品の電極について言及する場合に作動電極という語を用い、これに対し、受動部品における電極について言及する場合に検出電極という語を用いる。
【0129】
作動電極では、流路に生じる電場の大きさは典型的には10〜10V/mのオーダーとなる。
【0130】
電場に基づいて能動部品に誘導される作用として、以下に示すいくつかのものが知られている。
1.電圧源または電流源に接続された、隣接している電極によって、電場を印加して液滴を帯電させること、
2.電圧源または電流源に接続された隣接している電極によって、電場を印加し双極子モーメントを誘起させることで1つの液滴を2つの液滴に分裂させることであって、互いに逆の電荷を帯びたイオン同士が互いに反対方向に移動するようにして液滴が分裂するように誘導することによるもの、
3.電圧源または電流源に接続された隣接している電極によって、電場を印加し双極子モーメントを誘起させることで2つの液滴を1つに合体させることであって、2つの液滴を両方とも引きつけて、融合の開始点に一時的に架橋を形成させることによるもの、
4.チャネルの方向に印加された電場に誘起される電気力によって液滴を後押しするか液滴を移動させ、または少なくとも電場の成分にチャネルの方向の成分を含むこと。これは、液滴を分岐点で下流の特定の枝に案内するのに用いられ、例えば、2つまたはそれ以上の特異性によって液滴を仕分けするか、ある時間の間液滴を流しておくための経路指定に用いられる。
5.チャネルに密に隣接しているかチャネル内に設けられているグランド電極を通過するように液滴を移動させることで液滴の電荷を除去する(中和する)。
【0131】
受動部品は、液滴の通行によって電場または磁場が誘起される導電性パターニングにより作製されてもよい(誘導ループ型検出器)。通常の範囲で知られた部品、例えばラジオ周波数(radio frequency、RF)デバイス製造を用いることができ、誘電性、抵抗性及び容量性要素を用いてもよく、また、それらの組み合わせでもよい。
【0132】
簡単な受動部品として、チャネルの両側に対になって設けられた電極がチャネルを含む検出回路を形成するように繋がれており、液滴が電極対を通過したとき抵抗値が影響され、典型的には抵抗値が低下する、といったものがある。
【0133】
導電性パターニングはマイクロ流体デバイスに組み込まれる電磁センサ、例えばホールセンサなどの製造に用いられてもよく、これは例えば、液滴が電磁ビーズに付随している場合に有用となりうる。液滴の通行の検出に用いることのできる他のセンサの種類としては、アンテナ構造、例えばボウタイアンテナがある。
【0134】
電極は実質的に流路に対して直角に延び、流路の縁とわずかな距離だけ離れたところをその末端としてもよく、または流路の縁に、あるいは流路の中に、あるいは流路を突き抜けて延びたところで、その末端を有してもよい。例として、流路の両側に対になって設けられた電極がいずれも実質的に互いに直角に延び、流路の両側では互いに対向して末端を有していてもよい。
【0135】
他の電極対としては、流路に沿った方向に延び、流路内に位置しても流路に隣接して位置していてもよい。例として、対になって設けられた電極がチャネル(流路)の両側に配置され、互いに平行に延びてチャネルを区画していてもよく、それによって、区画された流路の流れ方向を横断するような電場が印加されうる。
【0136】
液滴の直径は幅広い範囲に想定され、例えばナノメートルの範囲、特に100〜1,000ナノメートル、または1〜1,000マイクロメートルであってもよく、特に1〜100マイクロメートルであってもよい。
【0137】
キャリア液は、油であってもよい。液滴液は水溶液、例えば酵素を含んだもの、またはアルコール溶液、または油剤であってもよい。
【0138】
図2Aは、図1Fに示される製造された一対の電極を含むマイクロ流体デバイスの部分の平面図である。
【0139】
マイクロ流体流路30の部分が、その中における流れ方向が図中左から右に向かうものであるとして、示される。流路30は使用時にキャリア液26によって充填され、活性液体としての、例えば検体の、連続した液滴24がその中に混和されることなく保持されている。第1の電極チャネル20Aは流路の一方の側に設けられ、流路を横断する方向に沿って延び、隣接する流路30の縁から距離Δだけ離れたところを末端とするように延びている。第2の電極チャネル20Bは流路の他方の側に第1の電極チャネル20Aと同一直線上に設けられて同様に、隣接する流路30の縁から距離Δだけ離れたところを末端とするように延びている。流路の両側に設けられた第1及び第2の電極チャネル20A及び20Bはいずれも、中に導電インク層(ここでは図示しない)であって、上記で詳述したような方法で形成されたものを有する。それによって、流路内の液体状の液滴の流れを制御するため外部から駆動されまたは検出に用いることができるような、対をなす電極を形成している。
【0140】
図2Bは、図2Aの一点鎖線A−Aによる断面図であって、流路と電極チャネルとがはっきりとわかる構造である。
【0141】
図2Bは、図2Aの点線B−Bによる断面図であって、図1Fと同じ図であり、つまり、プライマ層16及び導電インク層18を有する電極チャネルの構造を示している。
【0142】
図3は、は、図2Aとは別の配置形を有する一対の電極を含むマイクロ流体デバイスの部分の平面図である。電極チャネル20α及び20βが図2Aの例とは異なる形状を有している。いわば、各電極は、連続的にV字形状をなすチャネルの部分によって形成されており、そのV字でいう底の部分が流路30に隣接するようにして配置されている。
【0143】
図4は、は、図2Aとは別の配置形を有する一対の電極を含むマイクロ流体デバイスの部分の平面図である。電極チャネル20γ及び20δはそれぞれ、連続的にデジタルのU字形状(つまりU字の底が平らになった形状)をなすチャネルの部分によって形成されており、それによって、流路30に隣接する電極の一部が、流路に平行に延びている電極チャネルの一部分によって規定されている。
【0144】
他の連続的なチャネルの部分の形が採用されてもよい。流路に隣接する電極の部分を連続したチャネルの部分により形成すると、液体のプライマ及び導電インクにより均等な広がり方で毛細管流動が生じることとなり、製造上有利である。すなわち、製造が、プライマまたは導電インクまたはそれらの両方の、毛細管流動に依存する場合にも有利となる。
【0145】
図5は、要求に応じて液滴を生成するマイクロ流体デバイスの構成要素の概略平面図である。流体溜め32はある量の活性液体(斜線で図示)を保持し、反応液からは液滴24が形成される。一対の電極20A及び20Bは、チャネルの狭窄している部分34に隣接して配置されている。チャネルの狭窄している部分34は、流体溜め32の外郭と流路30との間に配置されている。電極20A及び20Bが作動していないとき、活性液体はチャネルの狭窄している部分34に形成されるメニスカス35を伴い平衡状態にある。電極20A及び20Bに電圧パルスが印加されると、電気泳動力がチャネルの狭窄している部分34に加わり、その結果、連続的なある程度の量で流体溜め32にまとまっていた活性液体の一部の量が離れ落ち、流路30内に液滴24として発射される。このような方法によって、液滴は要求に応じて作製され、例えば、連続的に一連の液滴が並んだものは、電極に連続した電圧パルスを印加することによって得ることができる。
【0146】
図6は、第1及び第2のチャネルから受け取られる液滴の対を融合させるマイクロ流体デバイスの構成要素の概略平面図である。第1及び第2の流入路(インレットフローチャネル)30A及び30Bは、流れ方向で見るとY字接合点37で合流し、合流による1本の流路30Cを形成している。第1の活性液体(斜線で図示)の一連の液滴24が、第1の流入路30Aから受け取られる。第2の活性液体(点描で図示)の一連の液滴25が、第2の流入路30Bから受け取られる。液滴24及び25は、キャリア液26に運ばれる。2組の連続した一連の液滴は、流路30Cに到達する際に互いに対をなして接するように制御され、すなわち、図示のとおり、到達時間の差がごくわずかとなるように制御される。一対の電極20A及び20Bは、流路30Cの流れる位置に配置される。これらの電極は、液滴24及び25のペアが通過する時点で選択的に電圧パルスを印加されることにより、液滴の各ペアを合体させて一体化した液滴27(格子線で図示)となるように、作用する。第1の液体と第2の液体との混合物は、その適用に応じて、化学反応または生物学的過程を活性化または不活性化させるものであってもよい。
【0147】
図7は、チャネルのT字分岐点39で液滴の経路指定をするか仕分けするマイクロ流体デバイスの構成要素の概略平面図である。活性液体(斜線で図示)の一連の液滴24が、流路30Aを通り、流れが左の流路30Bと右の流路30Cとに分かれるT字分岐点39まで、キャリア液26によって運ばれてくる。左の電極ペア20A及び20Bは、左の流路30Bの流れ方向の途中に配置され、右の電極ペア20C及び20Dは、右の流路30Cの流れ方向の途中に配置されている。左右のそれぞれの電極ペアは、チャネル(流路)30Aから到達した液滴24を、左のチャネル(流路)30Bとまたは右のチャネル(流路)30C(つまり、図示されたもの)に経路指定するため、矢印31で示した方向またはその反対方向に電場を印加するよう直列で操作される。さらに、このような経路指定の機能を仕分けの機能に変更する場合、センサを、概略的に図示されたT字分岐点の上流に配置し、仕分けの基準とする個々の液滴の特性の測定を行うようにしてもよい。その後、個々の液滴を、それぞれについて測定された特性に応じて、下流の左右の流路30B及び30Cのいずれかに案内するようにしてもよい。センサは、本文中で述べられた方法により作製される導電インクの要素を含んで形成された電磁センサであってもよく、これに関連しない種類のセンサ、例えば画像ベースの測定を行うことができるセンサ(つまり、カメラまたは顕微鏡で画像処理を伴うもの)または分光器による測定を行うセンサであってもよい。
【0148】
図8は、電極が基板の下部に形成された別の実施形態の概略断面図である。この実施形態は、上述したような実施形態と同様の種類の基板を用いたものであり、つまり、平面構造の基板10であって断面半円形の流路30がその上面12に配置されたものである。この実施形態では、プライマ層16及び導電インクの電極18A及び18Bが基板の上面12のチャネルに形成されてはいない。その代わり、導電インクの電極18A及び18Bは基板10の、図2Aに示す平面図に対応した位置、但し下側つまり下面14に設けられている。図に示すように、プライマ層16は、基板の下面14全体を覆う被覆層として形成され、あるいは、少なくとも導電インクのパターンに密接に従うものではないような領域をも覆うように形成されている。さらに、プライマ層16を導電インクのパターンに従うように限定しても、実施形態によっては周辺領域(マージン)を設けることにより、プライマとインクとの配置におけるレジストリの誤差(位置のずれ、半導体用フォトリソグラフィなどの一般に普通に用いられる手法で生じるもの)による問題を回避することができる。
【0149】
当然ながら、さらなる実施形態として上述した実施形態が組み合わせられてもよく、導電インクのパターンが基板の両面に形成されたものを含んでもよい。例えば、いくつかの部品、例えばアンテナや表面RF(ラジオ周波数)要素、例えば無線リンク制御(RLC)要素などが、平面状の表面に補助的に作られていてもよく、つまり、典型的には基板の下面14に設けられてもよい。それらを下面14に形成するのは、流路へと延びて流路の液体を含んで導通路を形成するような電極が、基板のうち流路の存在する上面12に作られている必要があるからである。
【0150】
(例)
図9Aは、シクロオレフィンポリマー(COP)基板のチャネルに電極をプリントした結果を示す写真であって、プリントを行う前に例示のプライマによって基板への処理を行わなかった場合におけるものである。インクのカバレッジは不均等であることがわかる。また、インゲンマメ形をした広い範囲の、インクが残っていない領域が含まれる。
【0151】
図9Bは、例示のプライマによる前処理を基板に行わずにガラスの非構造表面に電極をプリントした結果を示す写真である。インクのカバレッジは不均等であることがわかる。また、多くの空洞が含まれ、円形に近い孔隙から、そのいくつかが融合してより大きい空洞の領域を形成しているものまである。
【0152】
図9Cは、図9Aと比較される写真であって、例示のプライマによる前処理を行ってからCOP基板のチャネルに電極をプリントした結果を示す。インクのカバレッジは比較的均等であり、空洞の領域は形成されなかったことがわかる。
【0153】
図9Dは、図9Bと比較される写真であって、例示のプライマによる前処理を行ってからガラスの非構造表面に電極をプリントした結果を示す。インクのカバレッジは比較的均等であり、空洞の領域は形成されなかったことがわかる。
【0154】
図10は、銀(Ag)による導電インク層の平均抵抗値を示す棒グラフである。プライマ層はシリンジによりチャネル内に塗布された。焼結は80℃で30分間行われた。25%、30%及び35%の3つの異なるプライマ濃度のサンプルのバッチについて、結果が示された。なお、濃度はグリコールエーテル溶媒中に対する濃縮プライマ(有機溶媒及び多孔質微細粒子)の濃度である。
【0155】
プライマ層がない場合、Agインク層の抵抗値の範囲は100〜500kΩであった。25%プライマ層の存在下では、Agインク層の平均抵抗値は200Ωであった。30%プライマ層の存在下では、Agインク層の平均抵抗値はおよそ45Ωであった。35%プライマ層の存在下では、Agインク層の平均抵抗値はおよそ35Ωであった。このように、プライマ層中の濃縮プライマについてのプライマ濃度の増加により、設けられたAgインク層の導電性を向上させるという結果が得られた。したがって、プライマ層における濃縮プライマの濃度により、重要な制御である導電インク層の抵抗率の制御をすることができる。特に、導電パターンが電子回路の部分として用いられる場合には、単なる接触電極である場合以上に、導電インク層の抵抗率は、制御されることが重要なパラメタとなっている。
【0156】
また、図示されないが重要なこととして、サンプルの3つのバッチのそれぞれについての、バッチ毎の抵抗値の範囲は、プライマを用いなかった対照実験のバッチのそれよりもはるかに小さい範囲となっていた。上で述べたとおり、プライマ層がない場合、Agインク層の抵抗値の範囲は100〜500kΩであり、つまり見かけ上の平均値は300kΩ±200kΩであった。濃度25%のバッチでは、抵抗値は200Ω±〜50Ωであった。濃度30%のバッチでは、抵抗値は45Ω±〜10Ωであった。濃度35%のバッチでは、抵抗値は35Ω±〜5Ωであった。図9A〜図9Dを参照すると、これらの結果は、プライマを用いたことで、導電性のインクをより均等に分布させることができ、金属層の導電性が向上することによるものといえる。
【0157】
[実験例1−ポリマーの比較]
【0158】
(方法)
いくつかのポリマーを選択し、マイクロ流体フロー試験を行った。試験に用いられたポリマーは、以下のとおりである。なお、ポリマー5及び6は本発明に関連するものであり、ポリマー1〜4は比較例である。
1.Induquat(商標名)ECR 956 L、カチオン性ポリアクリレート。透明インクとそれを受容するコーティングのために設計されたもの。Indulor Chemie社より市販。
2.CAP-482-0,5、セルロースアセテートプロピオネート。グリコールエーテルへの溶解性が大きい。Eastman Chemical社より市販。
3.CAB-553-0,4、セルロースアセテートブチレート。グリコールエーテルへの溶解性が大きい。Eastman Chemical社より市販。
4.ネオクリル(Neocryl、商標名)B890、変性メチルメタクリレートとブチルメタクリレートとのコポリマー。グリコールエーテルへの溶解性が大きい。DSM NeoResins社より市販。
5.PVP K90(商標名)、ポリビニルピロリドンホモポリマー。グリコールエーテルへの溶解性が大きい。ISP社より市販。
6.コポリマー958、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチルメタクリレートとのコポリマー。グリコールエーテルへの溶解性が大きい。ISP社より市販。
【0159】
最初に、ポリマーのエタノール溶液が10%の重量%濃度で調製される。これらのエタノールによる溶液はさらに、ポリマーの溶液と、イソプロポキシエタノールまたはジプロピレングリコールモノメチルエーテルとの比率が1:4及び2:3の比率となるように、それぞれの溶媒及び比率でさらに希釈された。希釈された各ポリマー溶液のうち体積2μlが、図11に示されるCOPにより成形された電極のテストパターンのパッド領域に塗布された。ポリマー溶液の流れを拡大観察して視認し、評価を記録した。結果は以下の表1に示す通りである。
【0160】
【表1】

【0161】
上記表1中、「OF」はチャネルからあふれ出た(望ましくない)ことを示す。
「IF」はチャネル内の流れが不十分であり、カバレッジが不均一であったことを示す。
「GF」はチャネル内の流れが良好であり、欠陥がなく、カバレッジが均一であったことを示す。
【0162】
マイクロ流体チャネル内の良好な流れは、検体のポリマーがネオクリルB890、PVP K90及びコポリマー958である場合にのみ見られた。全体では、コポリマー958が最も良い結果を示した。
【0163】
[実験例2−溶媒の比較]
【0164】
(方法)
本発明に関連するプライマ濃縮物が、以下の方法により調製された。
コポリマー958(ISP社)が、エタノールに50%の重量%濃度で供給され、エタノールを追加してかくはんすることにより10%まで希釈した。多孔性微粒子アルミナベーマイト(Dispal(登録商標)14N4-80、Sasol 社より市販)が粉末の形態で供給された。
【0165】
Dispal(登録商標)14N4-80の、水に対する重量の割合を10%とした分散体が、均一分散されるように低pHに調節された環境で、高速かくはん機によって調製された。(低pH環境の確保のために氷酢酸が用いられ、pHが3〜5に調節された。)上記2種類の調合液、いずれも重量%濃度として10%の状態で、Dispal(登録商標)14N4-80の分散体とコポリマー958の溶液とを重量として4対1の割合で混合した。この調製による結果物を"プライマ濃縮物1"とする。
【0166】
プライマ濃縮物1は、何種類かの溶媒にさらに薄められ、その重量比は同様に1:4(濃縮物:溶媒)とした。そのうちの体積2μlが、上述のCOPにより成形された電極のテストパターンのパッド領域に塗布された。ポリマー溶液の流れは、流量とチャネルごとの流れの総距離との観点から測定された。
【0167】
結果は以下の表2に示すとおりである。個々の場合において、濃縮物(プライマ濃縮物1)は、濃縮物と溶媒の比が1:4となるように希釈されている。
【0168】
【表2】

【0169】
流体チップのテストチャネルにおけるプライマの流れは、明らかに、濃縮物がグリコールエーテル系溶媒で希釈された場合に最も良好であった。さらに、グリコールエーテルを含むサンプルの場合、流体テストチャネルからあふれるような兆候は見られなかった。
【0170】
[実験例3−機能性プライマにおける多孔質粒子の比較]
【0171】
(方法及び結果)
図11に示されたようなマイクロ流体テストパターンであって、チャネルの両端に円状のパッドを有するもの、及び、実験例2で述べたプライマのジプロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈されたものを、多孔性粒子の種類によるプライマ層の性能への影響を比較する試験に用いた。銀ナノ粒子によるインクを乾燥後のプライマ層にインクジェット印刷した後、関連するプライマの性能を、結果として得られる完全に充填された電極パターンの電気抵抗を測定することによって評価した。なお、プリントされた銀のインクは、電気的特性の測定が行われる前に、80℃で30分間乾燥された。
【0172】
(実験例3a)
実験例2に従って調製されたプライマ濃縮物1は、重量比1:4(濃縮物:溶媒)の割合でジプロピレングリコールモノメチルエーテルによって希釈された。マイクロ流体テストチャネルに塗布されたプライマは80℃で2分間乾燥された。その後さらに上からSun Tronic(商標名)U5603銀インク(Sun Chemical社より市販)がプリントされた。この例で用いられたDispal(登録商標)14N4-80の細孔容積は0.50ml/gである。
【0173】
テストチャネルにインクをプリントし乾燥させた後の電気抵抗は、250〜300Ωの範囲であった。また、テストチャネルが、プライマによっても、その後からプリントされたインクによっても、完全にかつ均一に被覆されることがわかった。
【0174】
(実験例3b)
実験例2に従って調製されたプライマ濃縮物1は、重量比1:4(濃縮物:溶媒)の割合で、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルであって、Dispal(登録商標)14N4-80がそのまま、重量ベースで同量のアルミナ(Dispal(登録商標)18N4-80、細孔容積0.50ml/g)に置き換えられたものによって希釈された。マイクロ流体テストチャネルに塗布されたプライマは80℃で2分間乾燥された。その後さらに上からSun Tronic(商標名)U5603銀インク(Sun Chemical社より市販)がプリントされた。
【0175】
テストチャネルにインクをプリントし乾燥させた後の電気抵抗は、250〜300Ωの範囲であった。また、テストチャネルが、プライマによっても、その後からプリントされたインクによっても、完全にかつ均一に被覆されることがわかった。
【0176】
(実験例3c)
実験例2に従って調製されたプライマ濃縮物1は、重量比1:4(濃縮物:溶媒)の割合で、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルであって、Dispal(登録商標)14N4-80がそのまま、重量ベースで同量のシリカ(Syloid(商標名)C809、Grace Davidsonより市販、細孔容積2.0ml/g)に置き換えられたものによって希釈された。マイクロ流体テストチャネルに塗布されたプライマは80℃で2分間乾燥された。その後さらに上からSun Tronic(商標名)U5603銀インク(Sun Chemical社より市販)がプリントされた。
【0177】
テストチャネルにインクをプリントし乾燥させた後の電気抵抗は、800〜850Ωの範囲であった。また、テストチャネルが、プライマによっても、その後からプリントされたインクによっても、完全または均一には被覆されないことがわかった。
【0178】
(実験例3d)
実験例2に従って調製されたプライマ濃縮物1は、重量比1:4(濃縮物:溶媒)の割合で、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルであって、Dispal(登録商標)14N4-80がそのまま、乾燥状態の重量ベースで同量のSyloid(商標名)W300(細孔容積1.20ml/g)に置き換えられたものによって希釈された。マイクロ流体テストチャネルに塗布されたプライマは80℃で2分間乾燥された。その後さらに上からSun Tronic(商標名)U5603銀インク(Sun Chemical社より市販)がプリントされた。
【0179】
テストチャネルにインクをプリントし乾燥させた後の電気抵抗は、650〜700Ωの範囲であった。また、テストチャネルが、プライマによって完全または均一には被覆されず、インクのプリントにおいて孔隙を生じさせてしまうことがわかった。
【0180】
参考例として、多孔性粒子物質を含まず、ポリマーのみを含むものを用いて同様の実験を行った場合、1〜1.5kΩの電気抵抗を生じた。
【0181】
上述の明細に記載されている出版物および特許は、全て参照として本出願に編入されている。本発明の範囲および精神から逸脱する事なく、本発明の方法およびシステムを様々に調整および変更できることは、当業者には明白である。本発明は特定の望ましい実施例との関連で記載されてはいるが、請求されている発明はそれらの具体的な実施例により不当に制限されるべきではない。本発明の実施のために記載された方法のうち、化学、医学、分子生物学、あるいは当業者にとって明白な種々の変更は、以下の請求項の範囲内に含まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体チャネルを有する基板と、
(i)(a)ビニルラクタム反復単位を含むホモポリマーまたはコポリマー、(b)セルロースエーテル、(c)ポリビニルアルコール、及び(d)未変性ゼラチンまたは変性ゼラチンからなる群から選択される有機ポリマーと、(ii)前記有機ポリマーを分散させた多孔性微粒子材料と、を含むプライマ層と、
前記プライマ層上に設けられ前記マイクロ流体チャネルに関連して配置された導電層と
を含む導電性機構と、
を具備するマイクロ流体デバイス。
【請求項2】
(A)マイクロ流体チャネルを有する基板を準備し、
(B)(i)(a)ビニルラクタム反復単位を含むホモポリマーまたはコポリマー、(b)セルロースエーテル、(c)ポリビニルアルコール、及び(d)未変性ゼラチンまたは変性ゼラチンからなる群から選択される有機ポリマーと、(ii)前記有機ポリマーを分散させた多孔性微粒子材料と、を含むプライマ層を前記基板に塗布し、
(C)保湿性有機溶媒及び前記保湿性有機溶媒内に分散した導電性の粒子を含む導電インクの層を前記プライマ層上における前記マイクロ流体チャネルと関係づけられた位置に塗布する
マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法であって、
前記基板は導電インクチャネルを有し、
前記プライマ層及び/または前記導電インクの層を塗布する工程では、前記プライマ層及び/または前記導電インクの層は前記導電インクチャネルに塗布される
マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法であって、
前記プライマ層及び/または前記導電インクの層を塗布する工程では、前記プライマ層及び/または前記導電インクの層は前記導電インクチャネルに溶液として塗布され毛細管現象により前記導電インクチャネルを通じて分布する
マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項3に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法であって、
前記導電インクチャネルは前記基板の上面にその縁でつながっている側壁部を有し、
前記導電インクチャネルに前記導電インクの層を塗布する工程では、前記導電インクチャネルの前記縁と前記前記導電インクの層の端部との間が側方に分離するように前記導電インクの層を塗布する
マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法であって、
前記マイクロ流体チャネルと前記導電インクチャネルとが前記基板の上面に形成される
マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項2に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法であって、
前記マイクロ流体チャネルが前記基板の上面に形成され、
前記導電インクチャネルが前記基板の下面に形成される
マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項2に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法であって、
前記有機ポリマーは、ビニルピロリドンホモポリマーまたはビニルピロリドンのコポリマーである
マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法であって、
前記有機ポリマーは、ビニルピロリドンとジメチルアミノエチルメタクリレートとのコポリマーである
マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項2に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法であって、
前記多孔性微粒子材料は、シリカ、アルミナ、チタニア、ゼオライト及び硫酸バリウムからなる群から選択される
マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項11】
請求項2に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法であって、
前記基板に塗布される前記プライマ層は親水性溶媒によって希釈されている
マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法であって、
前記親水性溶媒はグリコールエーテルまたはそれを含む混合物によって希釈されている
マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項13】
請求項2に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法であって、
前記導電インク中の導電性の粒子は、ニッケル、銅、パラジウム、銀、白金及び金からなる群から選択される金属、またはそれらの混合物を含む
マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項14】
請求項2に記載のマイクロ流体デバイスの製造方法であって、
前記導電インクに含まれる前記保湿性有機溶媒は、ポリオールである
マイクロ流体デバイスの製造方法。
【請求項15】
(A)マイクロ流体チャネルを有する基板が準備され、
(B)(i)(a)ビニルラクタム反復単位を含むホモポリマーまたはコポリマー、(b)セルロースエーテル、(c)ポリビニルアルコール、及び(d)未変性ゼラチンまたは変性ゼラチンからなる群から選択される有機ポリマーと、(ii)前記有機ポリマーを分散させた多孔性微粒子材料と、を含むプライマ層が前記基板に塗布され、
(C)保湿性有機溶媒及び前記保湿性有機溶媒内に分散した導電性の粒子を含む導電インクの層が前記プライマ層上における前記マイクロ流体チャネルと関係づけられた位置に塗布されて製造された
マイクロ流体デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−171092(P2012−171092A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−32880(P2012−32880)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【出願人】(595044111)ソニー デーアーデーツェー オーストリア アクチェンゲゼルシャフト (21)
【氏名又は名称原語表記】Sony DADC Austria AG
【Fターム(参考)】