説明

マザー基板の切断方法

【課題】簡便に、きれいな切断面を得ることができるマザー基板の切断方法を提供すること。
【解決手段】本発明にかかるマザー基板の切断方法は、切断線4に沿ってレーザー光を照射して、マザー基板を切断する方法である。まず、切断線4以外のマザー基板1上に透明性導電膜3、及びメタル2のパターンを形成して、レーザー光のスポット通過領域5において、透明性導電膜3、及びメタル2のパターンを切断線4を中心として左右対称に配設する。そして、レーザー光を照射して切断線4に沿ってマザー基板1を切断する。また、透明性導電膜3、及びメタル2のパターンを配設する工程では、メタル2の切断線側のパターン端から切断線4までの距離が変化することによってメタル2のパターンに凹部が設けられ、メタル2のパターンの凹部に透明性導電膜3が配設されているマザー基板の切断方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マザー基板の切断方法に関し、特に切断線に沿ってレーザー光を照射して、マザー基板を切断するマザー基板の切断方法である。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、携帯情報端末機器等の各種モニタ用の表示装置として、フラットパネルディスプレイが用いられている。ここで、フラットパネルディスプレイは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の平面型表示装置のことである。このようなフラットパネルディスプレイは、基板として、透明性、絶縁性、耐水性を持つガラスを用いることが多い。
【0003】
上記のようなフラットパネルディスプレイは、ガラスからなるマザー基板上に多数個の素子をマトリックス状に形成して、マザー基板を各素子単位に切断分離する工程を経て製造される。このような切断方法としては、ホイールカッター、レーザー光等が用いられる。ホイールカッターによる切断方法としては、ガラス表面にダイアモンド等の硬い刃でスクライブ線を入れ、後に加圧し破断していく方法が一般的である。この方法は、生産効率が良いが、切断面に欠けやクラックが多発するという欠点がある。これにより、ガラスが割れやすくなってしまう。また、分断時にスクライブ線に沿って分割されず、スクライブ線から外れて分割されるという問題も生じる。
【0004】
また、レーザー光による切断方法は、集光レンズを用いて高エネルギーのレーザービームをガラス等に照射することにより、切断を行う方法である(特許文献1)。これにより、切断面に欠けやクラックが生じ難く、割れ強度が向上する等の利点がある。また、切断を精密に制御し易いところから、各種の産業分野において汎用されている。このようなレーザー光は、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム等の金属材、或いはガラス、ダイアモンド、セラミックス、合成樹脂等の非金属材等に対して、用いられている。上記材料の中で純銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等はレーザー光を反射する材料として知られている。また、ガラス、ダイアモンド等はレーザー光を透過する材料として知られている。
【0005】
ここで、上述のようなフラットパネルディスプレイのマザー基板を各素子単位に切断分離する際に、切断線周辺に配線材料のメタルが存在する場合がある。また、切断線周辺、特にレーザー光のスポット通過領域に、メタルが存在するとレーザー光が反射する。これにより、本来切断したい部分である切断線から外れて切断される等の問題点がある。ここで、レーザー光のスポット通過領域とは、切断線を中心線としてレーザー光のスポット径と同じ幅を有する帯状の領域である。
【0006】
このため、従来は切断線を中心に、左右対称にメタルを配置し、切断を行っていた。これにより、レーザー光のスポット通過領域に、メタルが存在しても、切断線を中心に左右で、同等にレーザー光が反射されるため、切断線に沿って切断できる。
【0007】
しかし、アライメントや接続状態の確認などが必要な場合、観察することができない等の理由により、切断線周辺でメタルを配設できないことがある。つまり、レーザー光のスポット通過領域において、切断線を中心にメタルが左右対称に配設されているが、メタルの有無が混在する場合がある。
【0008】
メタルの有無が混在するマザー基板の一例を図4を用いて、具体的に説明する。図4は、切断されるマザー基板の構成を示す図である。
【0009】
マザー基板1上のレーザー光のスポット通過領域5において、切断線4から所定の距離を隔てて、切断線4を中心として左右対称にメタル2のパターンが配設されている。また、メタル2の切断線4側のパターン端から切断線4までの距離が変化し、メタル2のパターンに凹部(以下、メタル非被覆領域7とする)が形成されている。つまり、一部の領域では、マザー基板1が露出している。
【特許文献1】特開平6−155063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図4のように構成されている場合、レーザー光のスポット通過領域5内のメタル2のパターンが形成されている領域(以下、メタル被覆領域6とする)と、メタル非被覆領域7、つまりマザー基板1が露出している領域とは、切断に必要なレーザー光の出力が異なる。具体的には、メタル被覆領域6では、レーザー光が反射されるため、出力を高くする必要がある。一方、メタル非被覆領域7では、レーザー光が反射されないため、出力を高くする必要はない。このように、切断に好適なレーザー光の出力が異なる。つまり、メタル被覆領域6を切断できるような高出力にレーザー光を設定して切断する場合、メタル非被覆領域7では、ガラスが割れる等の問題が生じる。これは、ガラスを切断するのに必要な出力以上の出力で切断を行ったためである。また、レーザー光の出力をメタル被覆領域6とメタル非被覆領域7とで変化させて切断させることは可能と考えられるが、実際には装置上の制約が多く困難であり、出力を変化させる位置を合わせるのも難しい。
【0011】
本発明に係るマザー基板の切断方法は、上記の問題を鑑みるためになされたものであり、簡便に、きれいな切断面を得ることができるマザー基板の切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかるマザー基板の切断方法は、切断線に沿ってレーザー光を照射して、マザー基板を切断するマザー基板の切断方法であって、前記切断線以外の前記マザー基板上に透明性導電膜、及びメタルのパターンを形成して、前記レーザー光のスポット通過領域において、前記透明性導電膜、及び前記メタルのパターンを前記切断線を中心として左右対称に配設する工程と、前記透明性導電膜、及び前記メタルのパターンが形成された前記マザー基板に対してレーザー光を照射して前記切断線に沿って前記マザー基板を切断する工程とを備え、前記透明性導電膜、及び前記メタルのパターンを形成する工程では、前記メタルの前記切断線側のパターン端から前記切断線までの距離が変化することによって前記メタルのパターンに凹部が設けられ、前記メタルのパターンの凹部に前記透明性導電膜が配設されている方法である。これにより、簡便に、きれいな切断面を得ることができる。
【0013】
また、前記透明性導電膜が前記メタルの下層にも形成されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡便に、きれいな切断面を得ることが可能な切断方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本実施の形態にかかるマザー基板の切断方法は、例えばフラットパネルディスプレイ等の表示装置のマザー基板に用いられる。ここで、表示装置とは、液晶表示装置、有機EL表示装置等である。表示装置は、入力される表示信号に基づいて画像表示を行う。このような表示装置は、マザー基板上に多数個の素子をマトリックス状に形成して、マザー基板を各素子単位で切断分離する工程を経て製造される。
【0016】
ここでは、表示装置の一例として、有機EL表示装置について図1、図2を用いて説明する。有機EL表示装置には、パッシブマトリクス駆動方式がよく用いられる。図1は、マザー基板から切断された後の有機EL素子の構成を示す断面図である。図2は、有機EL表示装置の有機EL素子が形成されている素子基板を示す平面図である。図1及び図2において、同一の要素には同一の符号を付している。
【0017】
図1及び図2に示すように、有機EL表示パネル100は、素子基板101、陽極102、絶縁層103、有機層104、陰極105、封止基板106、陽極補助配線107、陽極接続端子108、陰極補助配線109、陰極接続端子110、隔壁111、捕水材112、接着材113、開口部114、有機EL素子115、表示領域116、TCP117、ACF118を有している。なお、図1における断面図は、図2の素子基板101に封止基板106を貼り合わせた後のA−A断面図である。
【0018】
素子基板101は、ガラスなどからなる透明な矩形状の平板部材である。陽極102は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明性導電材料からなり、素子基板101上に形成されている。図2に示すように、複数の陽極102は、一定間隔を隔ててそれぞれ平行に形成されている。また、素子基板101上には、それぞれの陽極102に延設された陽極補助配線107及び陽極補助配線107の端部に配置される陽極接続端子108が設けられる。なお、陽極102、陽極補助配線107、陽極接続端子108は、同一の材料、つまり透明性導電材料からなる。透明導電材料は、一般的に配線材料として用いられる金属導電材料(例えば、アルミニウム)よりも高い電気抵抗を示す。このため、透明性導電材料の上に、メタルを配置し、電気抵抗を下げている。つまり、陽極補助配線107は、透明性導電材料からなる透明性導電膜、メタルの2層構造となっている。
【0019】
陽極102が形成された素子基板101上には、絶縁層103が形成される。絶縁層103は、陽極102と後述する陰極105との絶縁を確保するために設けられる。絶縁層103は、ポリイミドなどの絶縁材料からなる。絶縁層103には、陽極102と後述する陰極105との交差位置、すなわち画素となる位置に対応して開口部114が設けられている。つまり、絶縁層103は、有機層104と陽極102とが接触する開口部114を画定する役割を果たしている。この開口部114に対応する位置が画素となる。
【0020】
絶縁層103上には、隔壁111が形成される。隔壁111は、分離された陰極105を形成するため、陰極105を蒸着などにより形成する前に所望のパターンに形成される。また、隔壁111は、陽極102に対し垂直に、陰極105に対して平行に設けられる。陰極105の分離をより確実なものとするため、隔壁111は逆テーパ構造を有している。すなわち、素子基板101から離れるにつれて、断面が広がるように形成される。
【0021】
有機層104は、一般的な、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを順次積層した構成を有している。有機層104は、前述した陽極102、絶縁層103、隔壁111の上に、所定の大きさで配置される。
【0022】
陰極105は、光反射性を有するアルミニウムなどの導電性材料からなり、有機層104上に設けられる。陰極105は、隔壁111によって分離されるため、隔壁111の間に配設される。したがって、陰極105は陽極102に対して垂直に設けられる。陽極102と陰極105とが交差する位置が画素となる。また、素子基板101上には、それぞれの陰極105に延設された陰極補助配線109及び陰極補助配線109の端部に配置される陰極接続端子110が設けられる。なお、陰極105、陰極補助配線109、陰極接続端子110は、同一の材料、つまり導電性材料からなる。
【0023】
有機EL素子115は、素子基板101上に順次積層された陽極102、有機層104、陰極105を備える。複数の画素から構成される領域が、表示領域116となる。
【0024】
また、陽極102と視認側の素子基板101との間にカラーフィルタ層(不図示)を形成してもよい。カラーフィルタ層は、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色に着色された着色層と、着色層の間に配置される遮光層とを有している。各画素は、順次積層されたカラーフィルタ層、陽極102、有機層104及び陰極105を備えている。
【0025】
封止基板106は、パネル中に水分や酸素が入らないように設けられる。封止基板106としては、ステンレス鋼、アルミニウム又はその合金などの金属類のほか、ガラス、アクリル系樹脂などの1種類又は、2種類以上からなるものを使用することができる。封止基板106の画素に対向する面上には、捕水材112を配置するための凹部が形成されている。
【0026】
封止基板106と素子基板101とは、光硬化型の接着材113を介して固着されている。接着材113としては、水分などの透過性の低い紫外線硬化型のエポキシ系接着材などを用いることができる。接着材113は、表示領域116を囲むように形成されている。すなわち、接着材113は、封止基板106に形成されている凹部を囲む凸部に配置される。接着材113は、封止基板106と素子基板101とを固着し、表示領域116を含む空間を封止する。すなわち、有機EL素子115は、素子基板101、封止基板106、接着材113とで形成される気密空間に配置される。
【0027】
気密空間内には、画素のほか、画素への水分や酸素の影響を抑制し、安定した発光特性を維持するための捕水材112が設けられている。捕水材112は、封止基板106上の、有機EL素子115と対向する面に形成された凹部に設けられている。また、捕水材112は、封止基板106に形成された凹部の内部側面と接触しないように、一定の間隔を設けて配設されている。
【0028】
捕水材112としては、無機系の乾燥剤や、水分と反応性の高い有機金属化合物を膜状にしたもの、さらに、フッ素系オイルからなる不活性液体中に固体の吸湿剤を混合したものなどを用いることができる。
【0029】
また、封止基板106は、陽極補助配線107の一部と陽極接続端子108、及び陰極補助配線109の一部と陰極接続端子110からなる引き出し部を素子基板101、封止基板106、接着材113とで形成される気密空間から露出するために、素子基板101よりも大きさが小さくなっている。すなわち、陽極接続端子108及び陰極接続端子110は、接着材113の外側に配置される。
【0030】
図1に示すように、駆動回路は、陰極接続端子110、陰極補助配線109を介して陰極105と電気的に接続されている。駆動回路が設けられたTCP(Tape Carrier Package)117と陽極接続端子108又は陰極接続端子110とは、ACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電膜)118を介して接続される。図1に示すように、陰極接続端子110とTCP117との間にACF118が配置される。ACF118が、陰極接続端子110とTCP117とを物理的に固定し、さらに、ACF118に含まれる導電粒子により陰極接続端子110とTCP117の接続配線を電気的に接続する。なお、陽極102も同様に駆動回路が接続される。以上のように、有機EL表示装置が構成されている。
【0031】
そして、有機EL表示装置の画素の陽極102と陰極105との間に電流を供給することによって、陽極102からは正孔が、陰極105からは電子がそれぞれ有機層104に注入されて再結合する。その際に生ずるエネルギーにより有機層104内の有機発光性化合物の分子が励起される。励起された分子は基底状態に失活し、その過程において有機層104が発光する。また、カラーフィルタ層は、有機層104からの光を選択的に透過し、所望の色の透過光が視認側に出射する。各画素が駆動回路からの信号に従って有機発光層の発光量を制御することによって、表示領域は画像表示を行う。
【0032】
次に、本実施の形態にかかるマザー基板の切断方法を図3を用いて説明する。ここでは、一例として、上記の有機EL表示パネル100のマザー基板の切断方法、特に陽極補助配線107周辺の切断方法を説明する。図3は、本実施の形態にかかるマザー基板の切断方法を示す工程断面図である。
【0033】
マザー基板1の上には、配線等が配置されている。なお、ここではマザー基板1として、ガラスを用いている。例えば、上説のような有機EL表示パネル100の場合、陽極補助配線107は、透明性導電膜3、メタル2の2層構造となっている。透明性導電膜3としては、ITO、SnO、InZnO等を用いることができる。また、ITO、SnO、InZnO等の積層、あるいは混合層からなる透明導電層でもよい。本実施の形態では、透明性導電膜3としてITOを用いている。そして、ITOの上には、アルミニウム等のメタル2が形成されている。つまり、ガラスの上に、ITO、メタル2が順次積層された構成となっている。
【0034】
マザー基板1の切断線4に沿って、レーザー光を走査させる。すなわち、切断線4はレーザー光のスポット中心が移動する直線となる。従って、レーザー光のスポット通過領域5とは、切断線4を中心線としてレーザー光のスポット径と同じ幅を有する帯状の領域である。これがレーザー光の照射領域となる。なお、切断線4から所定の距離の範囲内には、透明性導電膜3、メタル2のパターンが配設されていない。つまり、切断線4から所定の距離の範囲内では、マザー基板1が露出している。本実施の形態では、所定の距離を0.5mmとしている。
【0035】
切断線4から所定の距離の範囲外では、メタル2のパターンが左右対称に配設されている。つまり、メタル2のパターンが切断線4に対して、線対称となっている。また、切断線4の位置に応じて、メタル2の切断線4側のパターン端から切断線4までの距離が変化している。これにより、メタル2のパターンに凹部が形成されている。本実施の形態では、メタル2の切断線4側のパターン端から切断線4までの距離が2段階に変化している。具体的には、0.5mmの距離と、レーザー光のスポット半径以上の距離である。従って、レーザー光のスポット通過領域5のうちの切断線4から所定の距離の範囲外では、メタル2の有無が混在している。ここで、レーザー光のスポット通過領域5において、メタル2のパターンが配設されている領域をメタル被覆領域6とする。また、レーザー光のスポット通過領域5において、メタル2のパターンの凹部をメタル非被覆領域7とする。
【0036】
メタル非被覆領域7では、メタル2の下層に形成された透明性導電膜3が露出している。すなわち、メタル非被覆領域7には、透明性導電膜3のみが配設されている。この透明性導電膜3も、切断線4を中心として左右対称に形成されている。また、本実施の形態では、透明性導電膜3から切断線4までの距離が、メタル被覆領域6におけるメタル2から切断線4までの距離と略同一となっている。これにより、メタル2あるいは透明性導電膜3が配設されている領域から切断線4までの距離は、一定となっている。このように、メタル非被覆領域7を設けることにより、切断線4周辺でも、視認することができる。そして、アライメントや接続の確認等のために、観察することができる。
【0037】
なお、メタル2と透明性導電膜3のパターンは、少なくとも切断を行うレーザー光のスポット通過領域5内で左右対称であればよい。つまり、マザー基板1上のレーザー光のスポット通過領域5において、メタル2、透明性導電膜3のパターンを左右対称に形成すればよい。また、レーザー光のスポット通過領域5で左右対称であれば、その他の部分では左右対称であってもよいし、左右対称でなくてもよい。さらには、その他の材料が形成されていてもよい。なお、本実施の形態では、メタル2の切断線4側のパターン端から切断線4までの距離を2段階とし、メタル2あるいは透明性導電膜3のパターンが形成されている領域から切断線4までの距離を一定としたが、これに限られるわけではない。
【0038】
また、ここで用いるレーザー光のスポット径は、約2mmである。つまり、切断線4を中心に、左右1mm以内の範囲では、レーザー光が照射される。メタル被覆領域6では、切断線4から0.5mmの間隔を隔ててメタル2が形成されている。このため、マザー基板1をレーザー光を照射することによって切断する際、メタル被覆領域6ではガラスだけでなく、メタル2にもレーザー光が照射される。一方、メタル非被覆領域7では、レーザー光のスポット通過領域5の外側にメタル2が形成されている。従って、メタル非被覆領域7では、メタル2にレーザー光が照射されない。しかしながら、メタル非被覆領域7には、透明性導電膜3が配設されている。そして、透明性導電膜3も切断線から0.5mmの間隔を隔てて配設されている。つまり、マザー基板1をレーザー光を照射することによって切断する際、メタル非被覆領域7ではガラスのみならず、透明性導電膜3にもレーザー光が照射される。レーザー光のスポット通過領域5において、メタル2、透明性導電膜3のパターンが配設されている領域では、レーザー光を反射するため、同程度の出力のレーザー光で切断を行う必要がある。つまり、レーザー光のスポット通過領域5において、メタル2、透明性導電膜3のパターンが配設されていない領域のマザー基板1を切断するよりも、高出力のレーザー光で切断する必要がある。これは、ガラスがレーザー光を反射せずに、透過するためである。
【0039】
本実施の形態では、レーザー光のスポット通過領域5において、左右対称にメタル2、あるいは透明性導電膜3のパターンが配設されている。また、レーザー光のスポット通過領域5において、切断線4を中心に0.5mm以上隔てた領域では、ガラスが露出している領域がない。レーザー光のスポット径内では、常にガラスが露出している面積が一定となる。すなわち、ガラスのみにレーザー光が照射される領域はない。このため、切断に好適なレーザー光の出力は一定である。つまり、一定の出力で、レーザー光を照射して切断を行った場合でも、切断面(端部)のきれいな基板が得られる。これにより、複雑な制御を行うことなく簡便に割れ強度の強い基板が得られる。また、切断線4を中心にして左右対称にメタル2、透明性導電膜3のパターンが配設されているため、左右での反射率は揃っている。これにより、切断線4から外れて切断されることを抑制することができる。
【0040】
一方、従来のマザー基板の切断方法では、レーザー光のスポット通過領域5において、透明性導電膜3を露出させない、つまり透明性導電膜3がメタル2とともに除去されているため、マザー基板1を構成するガラスに割れが生じてしまう。具体的には、上記と同様に、マザー基板1の切断線4から0.5mmの間隔を隔ててアルミニウム等のメタル2のパターンを配設する。また、メタル非被覆領域7には、透明性導電膜3のパターンを配設しない。つまり、メタル非被覆領域7全体で、マザー基板1を構成するガラスが露出している。このマザー基板1を、メタル被覆領域6を切断する出力のレーザー光を用いて切断すると、メタル非被覆領域7にレーザー光を照射しようとした時点で割れが生じてしまう。逆に、メタル非被覆領域7を切断する出力のレーザー光、つまりガラスを切断する出力のレーザー光で切断を行った場合、メタル被覆領域6を切断することができない。従って、従来の方法は本実施の形態に係る方法と比べて、良好に切断することができない。
【0041】
また、本実施の形態に係るマザー基板の切断方法が用いられるのは、上記の場合に限られない。つまり、有機EL表示装置のマザー基板1の場合に限られるわけではない。例えば、有機EL表示装置以外のフラットパネルディスプレイのマザー基板を用いてもよい。また、入力装置のマザー基板を用いても良い。本実施の形態では、透明性導電膜3、メタル2の2層構造となっている配線を例に挙げて説明したが、この構造に限られるものではない。例えば、透明性導電膜3を有さない配線の場合でも、メタル非被覆領域7に別途透明性導電膜3等の透明性材料を形成すればよい。あるいは、配線の周辺を切断する場合に限らず、切断線の周辺にメタル被覆領域6とメタル非被覆領域7とが配置された場合にも応用することができる。本実施の形態に係るマザー基板の切断方法によれば、上記のマザー基板1を良好に切断することができる。なお、これらのマザー基板1に対しても、上述のような効果を得ることができる。なお、マザー基板1をレーザー光でもって切断する方法としては、レーザー光のみでマザー基板1の厚み分全てを切断してもよいし、マザー基板1にレーザー光で切り溝を形成し、該切り溝に沿って加圧して分断してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】有機EL素子の構成を示す断面図である。
【図2】有機EL素子が形成されている素子基板を示す平面図である。
【図3】実施の形態にかかるマザー基板の構成を示す図である。
【図4】従来のマザー基板の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 マザー基板、2 メタル、3 透明性導電膜、4 切断線、
5 レーザー光のスポット通過領域、6 メタル被覆領域、
7 メタル非被覆領域、
100 有機EL表示パネル、101 素子基板、102 陽極、
103 絶縁層、104 有機層、105 陰極、106 封止基板、
107 陽極補助配線、108 陽極接続端子、109 陰極補助配線、
110 陰極接続端子、111 隔壁、112 捕水材、113 接着材、
114 開口部、115 有機EL素子、116 表示領域、117 TCP、
118 ACF

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断線に沿ってレーザー光を照射して、マザー基板を切断するマザー基板の切断方法であって、
前記切断線以外の前記マザー基板上に透明性導電膜、及びメタルのパターンを形成して、前記レーザー光のスポット通過領域において、前記透明性導電膜、及び前記メタルのパターンを前記切断線を中心として左右対称に配設する工程と、
前記透明性導電膜、及び前記メタルのパターンが形成された前記マザー基板に対してレーザー光を照射して前記切断線に沿って前記マザー基板を切断する工程とを備え、
前記透明性導電膜、及び前記メタルのパターンを配設する工程では、
前記メタルの前記切断線側のパターン端から前記切断線までの距離が変化することによって前記メタルのパターンに凹部が設けられ、
前記メタルのパターンの凹部に前記透明性導電膜が配設されているマザー基板の切断方法。
【請求項2】
前記透明性導電膜が前記メタルの下層にも形成されている請求項1に記載のマザー基板の切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−33186(P2008−33186A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209190(P2006−209190)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】