説明

マスクブランクおよびマスクブランクの製造方法

【課題】マスクブランクのレジスト膜の感度を適切に評価する。
【解決手段】基板12上面に転写パターンを形成するための薄膜14を成膜し、薄膜14の上面に化学増幅型レジストのレジスト膜16を塗布したレジスト膜付マスクブランク10であって、レジスト膜16は、紫外線光の露光によって透過率が変化する化学増幅型レジストからなり、薄膜14の転写パターンを形成するための領域以外の領域に塗布されているレジスト膜16に対し、複数箇所で紫外線光を露光して紫外線光に対する反射率を変化させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクブランクおよびマスクブランクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化学増幅型レジストのレジスト膜が塗布されたマスクブランク(CARマスクブランク)は、先端マスク加工に必要不可欠になっている。また、先端マスク加工時に要求される加工精度は、年々厳しくなっている。
【0003】
ここで、先端マスク加工においては、化学増幅型レジストの感度(CAR感度)がマスクの加工精度を決める重要なファクターとなる。また、数nmオーダーで精度が管理される先端マスク加工においては、化学増幅型レジストの感度に対して、高い感度安定性(MTT:Mean To Target)と面内均一性(CDU:Critical Dimension Uniformity)が求められる。尚、化学増幅型レジストの特性については、例えば非特許文献1に詳しく記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況の下、本願の発明者は、化学増幅型レジストのレジスト膜が塗布されたマスクブランクについて、マスクブランクの出荷前にレジスト膜の感度を定量化して評価することを検討した。また、この評価により、マスクブランクのレジスト膜の感度保証を行うことを検討した。
【0005】
レジスト膜の感度を定量化する方法としては、例えばレジスト膜のパターニング後の線幅(CD:Critical Dimension)精度や残膜感度を評価する方法が考えられる。しかし、これらの方法で得られる結果は、プロセス条件に依存するため、プロセス条件が異なるとレジスト膜の感度に対して相関を取ることが困難になる。また、これらの方法は、EB露光、露光後ベーク処理(PEB)、現像等のプロセスを要するため、破壊検査となる。また測定終了までに、例えば最低1日以上等の長い時間がかかる。そのため、従来、より適切な方法でレジスト膜の感度を定量評価することが求められていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できるマスクブランクおよびマスクブランクの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
尚、レジスト膜の性能を評価する方法としては、例えば、露光処理を施すことなく行う方法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法においても、現像処理等は必要であり、上記と同様の問題が生じる。
【非特許文献1】最新レジスト材料ハンドブック、情報機構、ISBN 4−901677−45−4
【特許文献1】特開2005−326581号公報
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者は、高精度、かつ、出荷前の保証検査として有効な新しい感度評価手法について、鋭意研究を行った。そして、レジスト膜に対する紫外線光の露光により生じる紫外線光に対する反射率の変化を測定することで、レジスト膜の感度を評価し得ることを見出した。上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
【0008】
(構成1)基板上面に転写パターンを形成するための薄膜を成膜し、該薄膜の上面に化学増幅型レジストのレジスト膜を塗布したマスクブランクであって、レジスト膜は、紫外線光の露光によって透過率が変化する化学増幅型レジストからなり、薄膜の転写パターンを形成するための領域以外の領域に塗布されているレジスト膜に対し、複数箇所で紫外線光を露光して紫外線光に対する反射率を変化させている。
【0009】
このように構成すれば、例えば、紫外線光を露光した箇所の反射率を測定することにより、レジスト膜の感度の定量化が可能となる。また、これにより、例えば、レジスト膜の感度を適切に評価できる。
【0010】
また、この場合、現像等のプロセスを行うことなくレジスト膜の感度を評価できるため、プロセス条件と独立に、レジスト膜の感度を評価できる。更には、EB露光、現像等のプロセスを行う場合と比べ、反射率の測定は、短時間で行うことができる。そのため、評価に要する時間を大幅に短縮できる。従って、このように構成すれば、例えば、マスクブランクの出荷前にレジスト膜の感度を適切に評価できる。また、これにより、例えば、レジスト膜の感度保証を適切に行うことが可能になる。
【0011】
また、この構成において、レジスト膜の反射率は、電子ビーム(EB)露光ではなく、紫外線光の露光により変化させている。そのため、このように構成すれば、例えば電子ビーム露光により反射率を変化させる場合と比べ、レジスト膜における露光箇所の反射率を高いスループットで変化させることができる。また、これにより、例えばレジスト膜の感度の評価を製造される全てのマスクブランクに対する枚葉検査により行う場合にも、十分なスループットで評価を行うことが可能となる。
【0012】
(構成2)レジスト膜は、深紫外線光の露光で透過率が変化する化学増幅型レジストからなる。このように構成すれば、例えば、紫外線光を照射した箇所の反射率をより適切に変化させることができる。また、これにより、レジスト膜の感度の評価をより適切に行うことができる。
【0013】
(構成3)基板上面に転写パターンを形成するための薄膜を成膜し、該薄膜の上面に化学増幅型レジストのレジスト膜を塗布したマスクブランクの製造方法であって、レジスト膜は、紫外線光の露光によって透過率が変化する化学増幅型レジストからなり、紫外線光をレジスト膜の表面に露光し、レジスト膜から反射される紫外線光の反射光量を測定する露光測定工程と、測定された反射光量からレジスト膜の感度を評価する感度評価工程とを有する。
【0014】
このようにすれば、例えば、レジスト膜の感度の評価を適切に行うことができる。また、構成1と同様の効果を得ることができる。レジスト膜の感度の評価は、製造される全てのマスクブランクに対する枚葉検査により行ってもよく、一部のマスクブランクに対する抜き取り検査により行ってもよい。
【0015】
(構成4)露光測定工程は、薄膜の転写パターンを形成する領域以外の領域にあるレジスト膜の表面に対して紫外線光の露光および反射光量の測定を行う。
【0016】
このようにすれば、例えば、転写パターンを形成する領域への影響を避けつつ、レジスト膜の感度を適切に評価できる。また、これにより、例えば枚葉検査を行う場合にも、マスクブランクの品質への影響を避けつつ、レジスト膜の感度を適切に評価できる。
【0017】
(構成5)露光測定工程は、薄膜の転写パターンを形成する領域のレジスト膜表面全体を所定の間隔で複数箇所、紫外線光の露光および反射光量の測定を行い、感度評価工程は、転写パターンを形成する領域のレジスト膜の感度分布を評価する。露光測定工程および感度評価工程によるレジスト膜の感度の評価は、一部のマスクブランクに対する抜き取り検査により行うことが好ましい。
【0018】
このようにすれば、例えば、転写パターンの形成に直接関係する領域について、レジスト感度を適切に評価できる。また、マスクブランクの主表面上におけるレジスト膜の感度の面内分布を適切に評価できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、例えば、マスクブランクのレジスト膜の感度を適切に評価できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るレジスト膜付マスクブランク10の一例を示す。図1(a)は、レジスト膜付マスクブランク10の構成の一例を示す。レジスト膜付マスクブランク10は、フォトリソグラフィ用のマスクの製造に使用されるマスクブランクであり、基板12、薄膜14、およびレジスト膜16を備える。
【0021】
基板12は、例えばガラス基板等の透光性の基板である。薄膜14は、マスクの製造工程において転写パターンを形成するための薄膜であり、基板12の上面に成膜される。本例において、薄膜14は、例えば遮光膜または半透光膜等である。薄膜14は、複数種類の膜の積層膜であってもよい。
【0022】
レジスト膜16は、薄膜14の上面に塗布された化学増幅型レジストのレジスト膜である。マスクの製造工程において、レジスト膜16は、パターニングされ、例えば、薄膜14の加工時のエッチングマスクとして使用される。レジスト膜16のパターニングは、例えば、電子ビーム(EB)露光および現像等のプロセスにより行われる。
【0023】
また、本例において、レジスト膜16は、紫外線光の露光で透過率が変化する化学増幅型レジストからなる。この紫外線光は、例えば深紫外線(DUV)光である。そして、薄膜14において転写パターンを形成するための領域以外の領域上のレジスト膜16に対し、複数箇所で、紫外線光を露光している。また、これにより、レジスト膜16におけるこれらの複数箇所において、紫外線光に対する反射率を変化させている。
【0024】
レジスト膜16に使用する化学増幅型レジストは、例えばアセタール保護基を有するPHS(ポリヒドロキシスチレン)、PAG(酸発生剤)、およびクエンチャを含むレジストである。このような組成は、例えばKrF(波長248nm)レーザ露光用の化学増幅型レジストと共通しており、深紫外線光(特に248nm付近)に対して反応する。
【0025】
ここで、レジスト膜16のパターニング時におけるパターン形成の原理は、電子ビームまたは深紫外線光の露光による照射エネルギーを受けてPAGから発生する酸によるアセタール保護基の分解反応(脱保護反応)である。例えば、レジスト膜16がポジレジストである場合、分解した保護基が水酸基に置き換わり、照射部分がアルカリ可溶性となる。そして、その後の現像によりこの部分が除去され、レジスト膜16はパターニングされる。
【0026】
アセタール保護基の分解反応の基本反応は、公知の反応と同一または同様である。また、少量の照射エネルギーで反応を促進するため、通常のプロセスでは、露光に引き続き、露光後ベーク処理(PEB:Post−Exposure Bake)が行われる。
【0027】
また、露光による発生酸濃度は、FTIR(フーリエ変換型赤外分光)による解析の結果、下記式で定義することができる。
[Hpag]=1−EXP(−C*E) (式1)
【0028】
この式において、[Hpag]は規格化発生酸濃度、Cは酸発生反応定数(cm/mJ)、Eは露光エネルギー(mJ/cm)である。この式の詳細は、例えば、非特許文献1に記載されている。
【0029】
図1(b)は、紫外線光の照射によるレジスト膜16の光学特性の変化の一例を示すグラフである。上記の組成の化学増幅型レジストにおいては、エネルギー照射によるPAG分解および脱保護反応により、光学特性が変化する。このグラフは、上記の組成の化学増幅型レジストである富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製の化学増幅型ポジレジスト(型番:FEP171)をガラス基板上の塗布し、重水素ランプが発生する紫外線光(波長190〜400nm)を照射した場合における、照射前後の透過率スペクトルの一例を示す。
【0030】
尚、レジスト膜付マスクブランク10においては、遮光層となる薄膜14があるため、レジスト膜16の透過率が変化しても、レジスト膜付マスクブランク10全体での透過率は実質的に変化しない。しかし、レジスト膜16の透過率が変化すると、その変化に応じて、反射率も変化する。そのため、反射率を測定することにより、例えばレジスト膜16における酸の発生濃度を定量化し、レジスト膜16の感度を評価することが可能となる。
【0031】
図2は、レジスト膜16の感度の評価に用いる感度評価装置100の構成の一例を示す。感度評価装置100は、レジスト膜付マスクブランク10の製造工程における露光測定工程で使用される装置である。露光測定工程は、レジスト膜16の塗布後に行われる工程であり、紫外線光をレジスト膜16の表面に露光し、レジスト膜16から反射される紫外線光の反射光量を測定する。また、レジスト膜付マスクブランク10の製造工程において、露光測定工程の後には、感度評価工程が行われる。感度評価工程は、露光測定工程で測定された反射光量に基づき、レジスト膜16の感度を評価する。
【0032】
本例において、感度評価装置100は、ステージ102、UV光源部104、UV光照射部106、受光部108、分光器110、ステージコントローラ112、および制御部114を備える。ステージ102は、レジスト膜付マスクブランク10を上面に保持する台である。UV光源部104は、紫外線光を発生する光源である。UV光源部104は、深紫外線光を発生することが好ましい。本例において、UV光源部104は、重水素ランプであり、例えば制御部114の指示に応じて、190〜400nmの波長の紫外線光を発生する。
【0033】
UV光照射部106および受光部108は、レジスト膜付マスクブランク10におけるレジスト膜16の表面と対向する光学系である。UV光照射部106は、例えば光ファイバによりUV光源部104と接続されており、UV光源部104が発生する紫外線光をレジスト膜16の表面へ照射する。受光部108は、レジスト膜16からの反射光を受光する。
【0034】
分光器110は、例えばファイバー分光器であり、光ファイバ等を介して受光部108が受光した反射光を受け取り、分光する。また、分光器110は、分光結果を、制御部114へ通知する。ステージコントローラ112は、UV光照射部106および受光部108に対して相対的にステージ102を動かすコントローラであり、例えば制御部114の指示に応じて、ステージ102を移動させる。これにより、ステージコントローラ112は、レジスト膜16においてUV光照射部106から紫外線光が照射される位置を変更する。
【0035】
制御部114は、例えばPC等の制御装置であり、感度評価装置100の各部の動作を制御する。例えば、本例において、制御部114は、分光器110から受け取る分光結果に基づき、例えば、特定の波長における反射率をモニタする。また、露光測定工程後の感度評価工程において、制御部114は、このモニタ結果に基づき、紫外線光の照射量に対する反射率変化を算出する。更には、この結果に基づき、制御部114は、例えば、UV光照射部106からの紫外線光の照射により生じたレジスト膜16における酸の発生濃度を定量化する。また、これにより、制御部114は、レジスト膜16の感度を評価する。
【0036】
本例によれば、例えば、レジスト膜16の感度を適切に定量化できる。また、これにより、レジスト膜16の感度を適切に評価できる。また、本例によれば、レジスト膜16の感度の評価において、現像等のプロセスを行う必要がない。そのため、プロセス条件と独立に、レジスト膜16の感度を適切に評価できる。また、評価時の露光を、電子ビーム(EB)露光ではなく、紫外線光の露光により行うことにより、高いスループットで感度の評価を行うことができる。
【0037】
図3は、感度評価装置100において紫外線光の露光を行う露光箇所の一例を示す。図3(a)は、露光箇所の第1の例を示す。本例において、露光測定工程は、薄膜14(図1参照)の転写パターンを形成する領域以外の領域にあるレジスト膜16の表面に対して紫外線光の露光および反射光量の測定を行う。この場合、感度評価装置100は、例えば、図3(a)に示したように、レジスト膜付マスクブランク10の主表面における周縁部に並ぶ複数の照射スポット202に対して紫外線光の露光を行い、照射した紫外線光に応じた反射光の測定を行う。また、感度評価工程において、感度評価装置100は、反射光の測定結果に基づき、レジスト膜16の感度分布を評価する。このようにすれば、例えば、転写パターンを形成する領域への影響を避けつつ、レジスト膜16の感度を適切に評価できる。また、これにより、例えば、レジスト膜16の感度の評価を枚葉検査で適切に行うことができる。
【0038】
図3(b)は、露光箇所の第2の例を示す。本例において、露光測定工程は、薄膜14の転写パターンを形成する領域のレジスト膜16表面全体を所定の問隔で複数箇所、紫外線光の露光および反射光量の測定を行う。この場合、感度評価装置100は、例えば、図3(b)に示したように、レジスト膜付マスクブランク10の主表面の全体に縦横方向へ並ぶ複数の照射スポット202に対して紫外線光の露光を行い、照射した紫外線光に応じた反射光の測定を行う。
【0039】
また、感度評価工程において、感度評価装置100は、これらの照射スポット202に対応する反射光の測定結果に基づき、転写パターンを形成する領域のレジスト膜16の感度分布を評価する。このようにすれば、例えば、転写パターンの形成に直接関係する領域について、レジスト膜16を適切に評価できる。また、レジスト膜付マスクブランク10の主表面におけるレジスト膜16の感度の面内分布を適切に評価できる。尚、この方法によるレジスト膜16の感度の評価は、一部のマスクブランクに対する抜き取り検査により行うことが好ましい。
【0040】
続いて、実施例により、本発明を更に詳しく説明する。実施例1〜3に係るレジスト膜付マスクブランク10として、以下の構成のマスクブランクを作製した。また、実施例1〜3に係るレジスト膜付マスクブランク10に対し、紫外線光の照射と反射光の測定を行う評価を行った。
【0041】
(実施例1)
合成石英ガラス基板を鏡面研磨し、所定の洗浄を施すことにより、152mm×152mm×6.35mmの基板12を得た。次に基板12の上面にCrを主成分とする薄膜14を1000オングストロームの膜厚でDCマグネトロンスパッタ装置により成膜し、マスクブランクを得た。具体的には、Crターゲットを用い、アルゴンガスと窒素ガスの混合ガス(Ar:N=80:20体積%)を装置内に導入し、CrN膜を150オングストロームの膜厚で成膜し、同じターゲットで、アルゴン、メタンおよびヘリウムの混合ガス(Ar:CH:He=30:10:60体積%)を装置内に導入し、CrC膜を600オングストロームの膜厚で成膜し、最後に同じターゲットで、アルゴンガスと一酸化窒素ガスの混合ガス(Ar:NO=80:20体積%)を装置内に導入し、CrON膜を250オングストロームの膜厚で成膜した。最後に、薄膜14の表面にレジスト膜16として、富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製の電子線描画用化学増幅型ポジレジスト(型番:FEP171)を塗布してレジスト膜付マスクブランク10を得た。レジスト膜16の膜厚は3000オングストロームとした。
【0042】
(実施例2)
実施例1と同様のプロセスで製造したマスクブランクを用い、薄膜14の表面にレジスト膜16として、富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製の他の電子線描画用化学増幅型ポジレジスト(型番:PRL009)を塗布してレジスト膜付マスクブランク10を得た。また、レジスト膜16の膜厚を2500オングストロームとした。
【0043】
(実施例3)
実施例1と同様のプロセスで製造したマスクブランクを用い、薄膜14の表面にレジスト膜16として、住友化学社製の他の電子線描画用化学増幅型ネガレジスト(型番:NEB22)を塗布してレジスト膜付マスクブランク10を得た。また、レジスト膜16の膜厚を3000オングストロームとした。
【0044】
(評価)
図2を用いて説明した感度評価装置100と同様の装置により、紫外線光の照射と反射光の測定を行う評価を行った。UV光源部104としては、重水素ランプを用いた。また、照射スポット202に対し、1秒間隔で紫外線光の照射と反射率の測定を繰り返し、そのポイントにおける反射率の変化をモニタした。更に、解析ソフトウェア(製品名:IGOR)により、測定値である反射率R%について、R%=A+B*EXP(−C’*T)のフィッティングを行った。Tは、紫外線光の照射時間である。
【0045】
このフィッティングの結果、実施例1においては、A=6.30、B=3.59、C’=0.13となった。実施例2においては、A=9.02、B=−1.26、C’=0.03となった。実施例3においては、A=13.51、B=1.87、C’=0.25となった。
【0046】
図4は、各実施例における反射率の測定結果と、測定結果に対してフィッティングした曲線とを示すグラフである。グラフに示したように、測定結果と、フィッティングした曲線(理論式)とは、よく一致している。
【0047】
ここで、フィッティングに用いられる定数A、Bは、レジスト膜16の下地膜となる薄膜14や基板12の影響で決まる反射率の成分(基板反射率)や、レジスト膜16の膜厚に依存する定数である。定数A、Bは、図1に関連して説明した式1のように、規格化することが可能であると考えられる。
【0048】
また、フィッティングした曲線と測定値との一致度が高いことから、EXP関数内で用いられる定数C’は、式1における酸発生定数に関連している定数であると考えられる。そのため、反射率の測定により定数C’を定量化することにより、レジスト膜16における酸発生定数を定量的に評価できることとなる。
【0049】
また、酸発生定数は、レジスト膜16に固有の反応スピードを規定する数値である。そのため、酸発生定数を評価することにより、レジスト膜16の感度を評価することが可能となる。以上のことから、紫外線光の照射および反射光の測定を行うことにより、レジスト膜16の感度を適切に評価できることがわかる。
【0050】
尚、定数C’の値については、マスクブランクの主表面上のレジスト膜16について面内分布の測定を更に行った。この測定では、132mm各のレジスト膜付マスクブランク10に対し、図3(b)に示したのと同様の25ポイントの照射スポット202について、C’の算出を行った。また、複数のロットのレジスト膜付マスクブランク10に対し、同様の測定を行った。その結果、C’は、レジスト膜16の膜厚分布やロットの違いに依存せず、同程度の値が得られることが確認できた。
【0051】
また、各実施例において、複数のレジスト膜付マスクブランク10に対し、定数C’の算出後、レジスト膜16のパターニング後の線幅(CD)精度の測定を行った。その結果、定数C’とCD精度との間には相関があり、定数C’の評価によりCD精度の予測をし得ることを確認した。これにより、例えば、定数C’が所定の範囲内にあることを確認することにより、良好なCD精度を得られるレジスト膜付マスクブランク10を選別できることがわかる。
【0052】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、例えばレジスト膜が塗布されたレジスト膜付マスクブランクに好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係るレジスト膜付マスクブランク10の一例を示す図である。図1(a)は、レジスト膜付マスクブランク10の構成の一例を示す。図1(b)は、紫外線光の照射によるレジスト膜16の光学特性の変化の一例を示すグラフである。
【図2】レジスト膜16の感度の評価に用いる感度評価装置100の構成の一例を示す図である。
【図3】感度評価装置100において紫外線光の露光を行う露光箇所の一例を示す図である。図3(a)は、露光箇所の第1の例を示す。図3(b)は、露光箇所の第2の例を示す。
【図4】各実施例における反射率の測定結果と、測定結果に対してフィッティングした曲線とを示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
10・・・レジスト膜付マスクブランク、12・・・基板、14・・・薄膜、16・・・レジスト膜、100・・・感度評価装置、102・・・ステージ、104・・・UV光源部、106・・・UV光照射部、108・・・受光部、110・・・分光器、112・・・ステージコントローラ、114・・・制御部、202・・・照射スポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上面に転写パターンを形成するための薄膜を成膜し、該薄膜の上面に化学増幅型レジストのレジスト膜を塗布したマスクブランクであって、
前記レジスト膜は、紫外線光の露光によって透過率が変化する化学増幅型レジストからなり、
前記薄膜の転写パターンを形成するための領域以外の領域に塗布されているレジスト膜に対し、複数箇所で紫外線光を露光して紫外線光に対する反射率を変化させていることを特徴とするマスクブランク。
【請求項2】
前記レジスト膜は、深紫外線光の露光で透過率が変化する化学増幅型レジストからなることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク.
【請求項3】
基板上面に転写パターンを形成するための薄膜を成膜し、該薄膜の上面に化学増幅型レジストのレジスト膜を塗布したマスクブランクの製造方法であって、
前記レジスト膜は、紫外線光の露光によって透過率が変化する化学増幅型レジストからなり、
紫外線光をレジスト膜の表面に露光し、レジスト膜から反射される紫外線光の反射光量を測定する露光測定工程と、
測定された前記反射光量からレジスト膜の感度を評価する感度評価工程と
を有することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項4】
前記露光測定工程は、前記薄膜の転写パターンを形成する領域以外の領域にあるレジスト膜の表面に対して紫外線光の露光および反射光量の測定を行うことを特徴とする請求項3記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項5】
前記露光測定工程は、前記薄膜の転写パターンを形成する領域のレジスト膜表面全体を所定の間隔で複数箇所、紫外線光の露光および反射光量の測定を行い、
前記感度評価工程は、転写パターンを形成する領域のレジスト膜の感度分布を評価することを特徴とする請求項3記載のマスクブランクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−271473(P2009−271473A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124455(P2008−124455)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】