説明

マルチビームを生じるための、共用給電部を備えるアンテナ、および共用給電部を備えるアンテナの製造方法

【課題】マルチビームを生じるための、共用給電部を備えるアンテナ、および共用給電部を備えるアンテナの製造方法を提供する。
【解決手段】マルチビームを生じるための、共用給電部を備えるアンテナは、一定のピッチだけ離間した複数の同一の個別給電部を含み、−個別給電部1〜10が、中心の個別給電部7、5の周りの同一のサブネットワーク1〜7、4〜10に関連し、各サブネットワーク1〜7、4〜10が、ビームを合成することを目的とし、各サブネットワークの個別給電部が、電磁結合によって位相結合されていること、および−2つの連続的なサブネットワーク1〜7、4〜10が、少なくとも1つの個別給電部4、5、6、7を共通にして含み、かつ1以上の予め定められた数のピッチに対応する距離だけオフセットされている。衛星通信の分野に特に適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビームを生じるための、共用給電部を備えるアンテナ、および共用給電部を備えるアンテナの製造方法に関する。これは特に衛星通信の分野に適用される。
【背景技術】
【0002】
衛星通信という背景において、オペレータのニーズは、ローミングユーザに情報を届けるための、A4またはA5サイズのより小型の端子、またはPDA(携帯情報端末)タイプの端末もしくは電話端末へと向いている。
【0003】
多数の適用技術がまた、インターネットまたは高ビットレートを適用するための既存のシステムにおけるトレンドにも関連している。
【0004】
これらのミッションを達成するために、アンテナのアーキテクチャはますます複雑になり、多数の増幅器に関連した多数の給電部を備えて、約100または数百のますます狭くなるビームを確実に発生させ、かつ全米または世界中を網羅している。ビームは、衛星に搭載されたネットワークBFNを形成するデジタルビームによって、あるいはGBBF装置を形成する地上ビームを介してのいずれかによって形成される。
【0005】
狭帯域適用すなわち10GHz未満の低周波帯域、例えばLまたはS帯域の場合、一般的に展開反射器用として、直径9〜15mの、または20mもの大きなサイズのアンテナの数を増やすことは困難である。この場合、アナログまたはデジタル式に搭載されたあるいは地上の装置によって生成されているビーム形成反射器の前に1つまたは2つのアクティブなアンテナを配置して使用することが知られている。
【0006】
広帯域適用すなわち10GHz超の高周波帯域の場合、デジタル化の技術は、搭載された帯域処理能力、ビーム形成ネットワークBFNの複雑性および技術的実現可能性、とりわけペイロードレベルにおける過剰なエネルギー消費において限界がある。一般的に、ペイロードは、給電部が特定のビームに対応する構造によって受動的に構成される。ビーム間分離の制約という理由および利得性能の理由は、スポットからスポットへ周波数を再使用することによって衛星のアンテナの数を増やすことを意味する。このシナリオは3色コードまたは4色コードと呼ばれ、一般に、使用される各周波数の副帯域またはカラー用のアンテナを必要とする。
【0007】
特にEP0340429号明細書およびEP0333166号明細書に記載されているように、放物面反射器の焦点に配置された個々の給電部のネットワークにより、かつスポットからスポットへ給電部を再使用することによってビーム合成を使用することが知られている。これらのアーキテクチャにより、F/D比の小さい(Fは焦点距離であり、Dは反射器の直径である)小型アンテナの使用が可能となり、かつビームを合わせることを可能とするが、焦点の合わない動作の場合には収差が大きくなる。
【0008】
特にEP0899814号明細書およびEP0617480号明細書に記載されているように、電磁放射線によって結合して一緒にされる個々の給電部のセットを備え、かつ同相の波を放射することを可能とする、放射構造体を作製することも知られている。これらの構造体は、衛星のペイロードのチャネルから生じる無線周波数タイプの励起信号によって給電される個別給電部によって励起される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、公知のビーム形成システムの問題を解決し、かつ給電部を共用し、複雑なビーム形成回路を使用せずに単に多数の狭ビームを発生可能とするアンテナを提案することにある。このビームにより、カバレージの漏れのないスポットの位置決めを確実にする。スポットは効率的なC/I比を表し、C/I比は所望の信号Cと干渉信号Iとの間の比である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このために、本発明の主題は、マルチビームを生じるための、共用給電部を備えるアンテナであって、一定のピッチだけ離間された複数の同一の個別給電部を備えるアンテナにおいて、
−個別給電部が、中心の個別給電部の周りの同一のサブネットワークに関連していて、各サブネットワークが、ビームを合成することを目的とし、各サブネットワークの個別給電部が、電磁結合によって位相結合されていること、および
−2つの連続的なサブネットワークが、少なくとも1つの個別給電部を共通にして含み、かつ1以上の予め定められた数のピッチに対応する距離だけオフセットされることを特徴とする。
【0011】
各サブネットワークが単一の励起給電部を含むことが有利である。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、励起給電部は、各サブネットワークの中心の個別給電部である。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、個別給電部は、第1の面に平行な第2の対向面を含みかつ接地面を形成する金属面が取り付けられている誘電体基板の第1の面に配置された金属パッチであり、および励起給電部が、各サブネットワークの中心の個別給電部と一列にして誘電体の第2の面に取り付けられている。励起給電部は、各サブネットワークの中心の個別給電部と一列にして接地面にエッチングされた励起スロットを含み得る。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、個別給電部は誘電体アンテナである。
【0015】
本発明はまた、上述の、マルチビームを生じるための、共用給電部を備え、かつ、一定のピッチだけ離間された複数の同一の個別給電部を含むアンテナの製造方法において、
−放物面反射器の直径Dを選択するステップ、
−個別給電部のタイプを選択するステップ、
−中心給電部の周りの数個の個別給電部のサブネットワークを寸法決定しかつそのサブネットワークを作るステップであって、サブネットワークは、予め定められた開口角を有するビームを合成することを目的とし、サブネットワークの給電部が電磁結合によって位相結合されているステップ、
−2つの連続的なサブネットワーク間のオフセットピッチ数を選択することであって、そのピッチ数が1以上であり、かつ2つの連続的なサブネットワークが少なくとも1つの個別給電部を共通に有するようにするステップ、
−放物面反射器に対する焦点距離Fを決定するステップ、
−先のステップでなされた選択に対応するビームの開口角を計算し、およびアンテナの理論的性能と所望の性能とを比較するステップを含むことを特徴とする方法に関する。
【0016】
有利には、理論的性能が所望の性能に対応しない場合、この方法はまた、反射器の寸法を、比F/Dよりも大きい値に修正すること、サブネットワークの寸法を大きくし、それゆえ反射器の焦点距離に比例してその指向性を増大させること、およびこれらの新しい寸法を使用してアンテナの新しい理論的性能を再計算することも含む。
【0017】
本発明の他の特定の特徴および利点は、以下、添付の図面を参照し、単に例示としてかつ非限定的な例として与える説明において明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による、約50のスポットの構成によって得られたカバレージの例を示す図である。
【図2a】本発明による、六角形メッシュの給電部構成の例を示す図である。
【図2b】本発明による、六角形メッシュの給電部構成の例を示す図である。
【図2c】本発明による、六角形メッシュの給電部構成の例を示す図である。
【図3a】本発明による、矩形メッシュの給電部構成の例を示す図である。
【図3b】本発明による、矩形メッシュの給電部構成の例を示す図である。
【図4】本発明による、六角形メッシュに分配された7つの給電部を含むサブネットワークによって得られる理論的な放射パターンの例を示す図である。
【図5】本発明による、43個のスポットに対応する43のビームによるフォーカルネットワーク構成による、ヨーロッパのカバレージの例を示す図である。
【図6】本発明による、多数のパッチタイプ個別給電部を含むサブネットワークの励起の第1の例を示す図である。
【図7a】本発明による、誘電体アンテナタイプの多数の個別給電部を備えるサブネットワークの例を示す概略的な斜視図である。
【図7b】本発明による、誘電体アンテナタイプの多数の個別給電部を備えるサブネットワークの例を示す概略的な正面図である。
【図8a】本発明による、誘電体アンテナの多数のサブネットワークを含むフォーカルネットワークの例を示す概略的な横断面図である。
【図8b】本発明による、誘電体アンテナの多数のサブネットワークを含むフォーカルネットワークの例を示す概略的な平面図である。
【図9】放物面反射器の焦点面に配置されたマルチ給電ネットワークを含むアンテナの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によるアンテナのアーキテクチャにより、非常に小型の端末へ情報を送信可能となる必要がある。標的となる端末のサイズは、アンテナパラメータが、性能指数と呼ばれる利得対雑音温度の比G/T、および等価等方放射電力EIRPなどを有する必要がある値を、決める。所与の地理的カバレージおよび所与の周波数の場合、G/Tパラメータは、生成されるビーム数に直接依存する。従って、固定された周波数帯域およびG/T値は、所与のカバレージを生じるために必要な、対応する数のビームおよびビームのサイズを有する。図1に、43個のスポット30の構成によって得られたカバレージの例を示す。スポット30は、0.5°に等しいビーム角θに対応する。最適なカバレージを生じるために、全てのスポットは接触しているか、または混在している(interlaced)必要があり、アンテナの利得を、三角形または六角形メッシュの場合、3個のスポット間の交差点に対応する各メッシュの中空部に対して最適にする必要がある。
【0020】
スポットに必要なサイズは、エネルギーを集中させるために使用される放物面反射器90の直径を最小寸法にすることが必要とされる。これは、反射器の焦点領域Fに配置されかつマルチスポット構成においてこの反射器を照射する必要のある給電部または個別給電部のネットワークを依然として画定している。図9に、放物面反射器の焦点面に配置されたマルチ給電ネットワーク91を備えるアンテナの例を示す。
【0021】
給電部は、放物面反射器によって引き起こされた焦点を、その焦点面の近傍に合成する必要がある。しかしながら、従来の給電部の大半は、給電部がビームに対応するアンテナに使用されているもののように、スポットが接触しないようにそれらを位置決めするようにしている。スポットを接触させるためには、給電部のサイズを、ビームを合わせるために小さくする必要があるが、アンテナの全体効率に損失をもたらす。なぜならこの場合、給電部は、最大に対して−3dB付近のまたはそれ以下のレベルにおいて反射器の縁を照射するためである。そのため、得られる効率はほぼ25%または30%程度であり、これは許容できない。
【0022】
衛星のアンテナ数を増やさないようにするために、本発明は、給電部に新しい構成を使用してスポットからスポットへ個別給電部を再使用可能とし、それゆえビームを合わせることを可能にすることにある。図2a、図2b、図2cに、本発明による六角形メッシュの給電部構成の3つの例の平面図を示す。
【0023】
これらの図は、多数のパッチタイプの個別給電部を示す。個別給電部は全て同一であり、一定のピッチPだけ離間しており、かつ2つのサブネットワーク間に一部が共用されて、7つの個別給電部の2つのサブネットワークに一緒にグループ化される。図2aでは、第1のサブネットワークは給電部1〜7で構成され、第2のサブネットワークは給電部4〜10で構成され、4つの個別給電部4〜7が2つのサブネットワーク間で共用され、他の個別給電部1〜3および8〜10は独立している。図2bでは、1つの給電部11が共用されている;図2cでは、2つの給電部12、13が共用されている。これらの例では、各サブネットワークは、6つの周辺の個別給電部によって囲まれた中心の個別給電部で構成され、六角形メッシュを形成している。2つのサブネットワークは、選択した数のピッチPに対応する並進移動によって互いにオフセットしており、例えばオフセットを、図2aに示すように1ピッチまたは図2bおよび図2cに示すように2ピッチに等しくなるように選択することができる。各サブネットワークは、地上のスポットに対応するビームを合成することを目的としている。それゆえ、例えば図2aの場合、各スポットは、3つの独立した個別給電部および4つの共用の個別給電部によって形成され、同一のサブネットワークの個別給電部は全て同相および同じ振幅で給電される。サブネットワークからサブネットワークへの共用の個別給電部の再使用により、ビームを合わせ、かつ接触しているスポットを得ることが可能となる。図2aに示す例では、スポットを形成するのに使用されている7つのうち、共用の個別給電部が4つであるため、合成されるビームが最良の状態で合わせられる。
【0024】
ビームを合成するために使用される個別給電部の構成および数は、図2a、図2b、図2cに示す例に限定されない。例えば、7個以外の数の個別給電部および1個、2個または4個以外の数の共用の個別給電部を備える、図3aおよび図3bに示すような四角形のメッシュまたは矩形のメッシュを選択することも可能である。それゆえ、図3aでは、各サブネットワークは、9個の個別給電部を備え、そのうち6個の個別給電部14〜19が共用されており、および図3bでは、各サブネットワークは9個の個別給電部を備え、そのうち3個の個別給電部20〜22が共用されている。
【0025】
サブネットワークの形状を選択するとき、2つの連続するサブネットワーク間のオフセット距離により、これらの2つのサブネットワークによって放射される2つのスポットの中心の相対位置を決定し、かつそれから、公知の方法で、使用される放物面反射器90の焦点距離Fを推定することが可能となる。スポットが接触するように、ビーム角θが0.5°に等しい角度に選択される場合、2つのスポットの中心間の距離が、0.5°の角距離に対応することが重要である。これらの条件により、公知の方法で、おそらく多数の繰り返し後に、反射器90に特定の値のF/D比が生成される。
【0026】
非限定的な例としてヨーロッパを見本として示す。ここでは、50くらいのビームが、0.5°に等しいビーム角θを有し、パッチタイプの7つの個別給電部を備える六角形メッシュが選択され、2つの連続するパッチの中心が、0.85λ(λは動作波長である)に等しいピッチだけ離間しており、パッチが、9dBi(等方性アンテナに関連して9dB)に等しい指向性を有し、2つの連続するサブネットワーク間のオフセットが2ピッチに等しく、および周波数は6GHzに等しく、焦点距離9260mmのまたはF/D比が1.42に等しい反射器が必要である。この場合、2つの連続するパッチの中心を分離するピッチは42.7mmに等しく、かつ2つのサブネットワーク間のオフセットは85.4mmに等しく、第2のビームのポインティングが第1のビームから0.5°に対応している。幾何学的なパラメータが上述の例に対応し、かつ図4に示すサブネットワークによって得られる理論的な放射パターンは、サブネットワークが、約38°の角度にわたる最大に関して−7dBに等しい振幅で反射器を照らし出すことを示す。それゆえ、このようにして生じたサブネットワークは、反射器に対して十分に適合される。それゆえ、この例でこのように規定された様々な寸法パラメータにより、図5に示すように、43個のスポットに対応する43のビームのフォーカルなネットワーク構成であるヨーロッパのカバレージを生じることが可能となる。各ビームは、六角形メッシュに分配される7つの個別給電部の一群からなるサブネットワークによって生じ、かつ2つの連続するサブネットワークは、2つの個別給電部だけオフセットされるため、43ビームを合成するために必要な個別給電部の数は、209個の個別給電部である。比較のため、2つの連続するビーム間に共用給電部がない場合には301個の個別給電部を使用することが必要であった。301個の給電部は、ビーム数と、ビームを合成するために必要な個別給電部数との単純な積に対応する(43×7=301)。それゆえ、個別給電部の共用により、アンテナおよびビーム形成回路の複雑性を低減することが可能となる。
【0027】
給電部の共用を、例えば、1つ以上の共用給電部を有する第1のビームと第2のビームとの間の偏波の変化による直交性のBFNによって、または第2のビームを生成するときの共用給電部への給電障害によって、異なる方法で行うこともできる。共用給電部への給電障害の場合、第1のビームは、7つの個別給電部によって生じ、第1のビームに隣接する第2のビームは6個の個別給電部によって生じる。
【0028】
単純な方法で給電部の共用を達成するために、本発明は、同一のサブネットワークに個別給電部を電磁結合によって結合して一緒にすることにある。
【0029】
この手法によって、非常に効果的に、同一のサブネットワークに結合された個別給電部は、反射器に向かう放射に好適な指向性を備える、複合給電部と呼ばれる1つの給電部を形成する一方、カバレージエリアにわたって、ビームの位置決めに関連した物理的および幾何学的な制約を受ける、すなわち、所望の指向性によって推奨されるものよりも少ないピッチに対応する。
【0030】
例えば図6に示すように、給電部を結合して一緒にするために、各サブネットワークの個別給電部を、励起信号によって給電される励起給電部によって励起し得る。この図では、励起給電部60は、誘電体基板62の第1の面61に配置されたパッチであり、サブネットワークの個別給電部は、誘電体基板62の第1の面61に平行な第2の対向面66に配置されたパッチ63、64、65である。パッチ63、64、65は全て同一であり、励起給電部60は、サブネットワークの中心の個別給電部64と一列に配置される。これは、2つのパッチ60、64の中心が、誘電体基板62の各平行面の平面に対する同じ法線上にあることを意味する。結合によって励起される給電部を支持する構造体の高さHは、ほぼλ/2に等しい距離にある(λはボイド中の励起波長である)。励起給電部60は、接地面を形成する導電面67からの距離が短い。この例では、励起給電部60は金属パッチであるが、励起は、接地面67に形成されたスロットによってもまたは誘電体共振器によっても生じ得る。誘電体基板62とパッチ60、63、64、65とからなる組立体は、特定の波長周波数λで動作する導波路を構成する。例えば誘電体基板に埋め込まれた絞り(図示せず)によって、構造体全体のインピーダンスを正確に管理することができ、それを適合可能とする。励起給電部60用の電気出力信号を、例えば同軸伝送線路またはマイクロストリップ伝送線路またはトリプレート伝送(図示せず)を介して送り得る。
【0031】
この構造により、中心の個別給電部下に配置されている、各サブネットワーク用の単一の励起給電部に給電することによって、サブネットワークの個別給電部、例えば六角形メッシュの個別給電部のうちの7つを位相結合する、従って、複雑なBFN回路を使用することなく指向性が増大したビームを生成することが可能となる。このBFN回路は、例えば図1の中心スポットの場合などのように、多数のビーム間の給電部の共用度が高くなる場合、そのトポロジーはすぐには解決できないものである。次いで、関連するサブネットワークの個別給電部間の電磁結合によって自然に給電部の共用を行う。
【0032】
各サブネットワークの中心の個別給電部を給電することによっても、給電部を結合して一緒にし得る。次いで、中心の個別給電部を取り囲むサブネットワークの他の個別給電部を、中心の個別給電部から周辺の個別給電部への電磁放射線によって給電する。この電磁放射線は、周辺の個別給電部に電流を誘起し、それにより、個別給電部が結合して一緒にされる。給電部が同相である場合、サブネットワークの全個別給電部の全体的な放射は、BFN回路を使用することなく指向性が増大したビームを合成する。
【0033】
本発明は、パッチアンテナに限定されない。ホーンアンテナ、または誘電体ロッドアンテナとも呼ばれる誘電体アンテナに使用することも可能である。図7aおよび図7bに、誘電体アンテナタイプの多数の個別給電部80、81を含むサブネットワークの例のそれぞれ斜視図および正面図の2つの概略図を示し、かつ図8aおよび図8bに、六角形メッシュに配置された誘電体アンテナタイプの7つの個別給電部の多数のサブネットワークを含む共用給電部を備えるフォーカルネットワークの例のそれぞれ横断面図および平面図の2つの概略図を示す。パッチと同じように、本発明は、下端部83において、例えば六角形メッシュである中心の誘電体アンテナ81を給電することにあり、およびこの同じ六角形メッシュに属する周辺の誘電体アンテナ80、82は、電磁結合によって必然的に一緒におよび中心の誘電体アンテナ81に結合される。例えば、各個別の誘電体アンテナの内径Lは7.4mmまたは10mmに等しく、2つの連続する誘電体ロッドアンテナの中心間のピッチPは、16mmに等しい。誘電体ロッドアンテナに関連して、中心の誘電体ロッドアンテナ81に電力供給することによって発生する波は、直径7.4mmまたは10mmの、誘電体で埋められた導波路内に含まれていることによって誘電体アンテナの軸zに沿って伝播し、かつ誘電体ロッドを固定する金属壁84によって境界が定められる。誘電体ロッド間の電磁結合を、金属壁84がなくなる誘電体ロッドの出力コーンの箇所である上端部85に位置する非拘束(decontainment)領域内に波を拘束しないことによって得る。非拘束領域では、中心の励起誘電体アンテナ81から派生する磁界は、必然的に横モードに広がり、周辺の誘電体アンテナ80、82に結合され、かつメッシュのアンテナ全体の最終的な放射に貢献する相互結合を引き起こす。誘発された誘電体アンテナ80、82の閉鎖インピーダンスを、全体的な挙動において、指向性を望むだけ増大させるように決定する。そのため、全体が、励起給電部を形成する1つの中心バー81と、結合された給電部を形成する6つの周辺バー80、82とを含む7つの誘電体バーのサブネットワークとして振舞い、そのインピーダンス条件は、適切に得られた結合されたサブネットワークの所望の目的に従って誘電体アンテナの結合係数および再放射係数を制御するように決定される。図8aおよび図8bに示すネットワークの例では、六角形メッシュに配置された7つの給電部の各サブネットワークは、隣接するサブネットワークを共用する2つの周辺給電部82を含む。
【0034】
特定の実施形態に関連して本発明を説明したが、決してそれに限定されず、記載の手段の技術的な等価物およびそれらの組み合わせを、本発明の範囲内にそれらが入ることを条件として、全て包含することは明白である。特に、アンテナの性能をさらに改良するために、サブネットワークは、電磁結合によって給電される、中心給電部の周りの周辺給電部の、多数のリングを含み得る。
【符号の説明】
【0035】
1〜22 個別給電部
30 ビーム
60 励起給電部
61 第2の対向面
63、64、65 金属パッチ
66 第1の面
67 金属面
80、81、82 誘電体アンテナ
90 放物面反射器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定のピッチ(P)だけ離間された複数の同一の個別給電部を含む、マルチビームを生じるための共用給電部を備えるアンテナにおいて、
−前記個別給電部(1〜22、63、64、65、80、81、82)が、中心の個別給電部(7、5、64、81)の周りの同一のサブネットワーク(1〜7、4〜10)に関連していて、各サブネットワーク(1〜7、4〜10)が、ビーム(30)を合成することを目的とし、各サブネットワークの前記個別給電部が、電磁結合によって位相結合されていること、および
−2つの連続的なサブネットワーク(1〜7、4〜10)が、少なくとも1つの個別給電部(4、5、6、7)を共通にして含み、かつ1以上の予め定められた数のピッチ(P)に対応する距離だけオフセットされていることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
各サブネットワークが、単一の励起給電部(60、81)を含むことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記励起給電部が、各サブネットワークの前記中心の個別給電部(81)であることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記個別給電部が、第1の面(66)に平行な第2の対向面(61)を含みかつ接地面を形成する金属面(67)が取り付けられている誘電体基板の前記第1の面(66)に配置された金属パッチ(63、64、65)であることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記個別給電部が、第1の面(66)に平行な第2の対向面(61)を含みかつ接地面を形成する金属面(67)が取り付けられている誘電体基板の前記第1の面(66)に配置された金属パッチ(63、64、65)であること、および前記励起給電部(60)が、各サブネットワークの前記中心の個別給電部(64)と一列にして誘電体の前記第2の面(61)に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記個別給電部が誘電体アンテナ(80、81、82)であることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ。
【請求項7】
マルチビームを生じるための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の共用給電部を備えるアンテナの製造方法であって、前記アンテナが、一定のピッチ(P)だけ離間された複数の同一の個別給電部を含む方法において、
−前記放物面反射器(90)の直径Dを選択するステップ、
−個別給電部のタイプを選択するステップ、
−中心給電部(7)の周りの数個の個別給電部(1〜7)のサブネットワークを寸法決定しかつそのサブネットワークを作るステップであって、前記サブネットワークは、予め定められた開口角を有するビーム(30)を合成することを目的とし、前記サブネットワークの前記給電部が電磁結合によって位相結合されているステップ、
−2つの連続的なサブネットワーク間のオフセットピッチ(P)数を選択することであって、前記ピッチ数が1以上であり、かつ前記2つの連続的なサブネットワークが少なくとも1つの個別給電部(7、5)を共通に有するようにするステップ、
−前記放物面反射器(90)に対する焦点距離Fを決定するステップ、
−先のステップでなされた選択に対応する前記ビームの前記開口角を計算し、前記アンテナの理論的性能と所望の性能とを比較するステップ
を含むこと特徴とする方法。
【請求項8】
前記理論的性能が前記所望の性能に対応しない場合、前記反射器の寸法を、比F/Dよりも大きい値に修正すること、前記サブネットワークの寸法を大きくし、それゆえ、前記反射器の焦点距離に比例してその指向性を増大させること、およびこれらの新しい寸法を使用して前記アンテナの新しい理論的性能を再計算することも含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−136372(P2010−136372A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−274364(P2009−274364)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(505157485)テールズ (231)
【Fターム(参考)】