説明

マルチビーム発生器、光走査装置及び画像形成装置

【課題】この発明は、光源からの光を高効率で利用でき、微小面積でマルチビーム化が可能となるマルチビーム発生器、光走査装置及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【解決手段】この発明は、1つ以上の光源と、前記光源からの複数の光を導く複数の光ファイバ101と、光ファイバ101からの光を導く光導波素子102とを有し、光導波素子102は、光ファイバ101からの光を結合する光結合部103と、複数の光導波路の間隔を変化させる光導波路間隔変換部105と、光結合部103により導かれた光を光導波路間隔変換部105に入力する光入力部104と、光導波路間隔変換部105からの光を光導波素子102から出力する光出力部106とを備え、光結合部103が光導波路構造を有し、光結合部103の比屈折率差が光ファイバ101の比屈折率差より大きく、光結合部103のコアの断面積が光ファイバ101のコアの断面積より小さいものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビーム発生器、光走査装置及び複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプリンタ等のマルチビーム走査型画像形成装置においては、高速化、高解像度化が求められている。レーザプリンタの高速化を図る方式としては、光ビームを走査するためのポリゴンミラーの回転数を増加させる方式が挙げられる。しかしながら、この方式では、ポリゴンミラーの回転数が5万回転/min程度に近づくと、遠心力によってポリゴンミラー面に歪が生じ、それ以上の高速化は困難である。非特許文献1によると、例えば600dot/in.の解像度、541mm/secのプリントスピードを実現するためには、ポリゴンミラーの回転速度は7万回転/min以上が要求され、光ビームを走査するためのポリゴンミラーの回転数が限界に達している。
【0003】
この問題を解決する手段としては、複数の光ビームによって感光体等の被走査面上に複数の走査線を同時に形成させるマルチビーム走査光学系が必須となっている。特許文献1においては、複数の発光点を有する半導体レーザアレイを用いる方式が提案されており、また、特許文献1においては、マルチビーム走査光学系用の光源として、独立した複数の半導体レーザからの出射光ビームを複数の光ファイバにそれぞれ導き、この複数の光ファイバにおいて出射側の先端を互いに近接させて一列に配列させる光ファイバアレイ方式が提案されている。
【0004】
光ファイバアレイ方式は、市販の汎用半導体レーザを用いることができるため、半導体レーザアレイに比べて光源が安価で入手し易く、さらに光ビーム本数の増加も容易である。ただし、この方式では、光ファイバアレイを構成する個々の光ファイバから出射される光ビームの配列の精度がそのまま感光体上に形成する走査線の間隔誤差に対応するため、光ファイバアレイ部を製作する際には厳しい精度が要求される。具体的には、それぞれの光ファイバの位置ずれを0.5μm以下に抑える必要がある。
【0005】
また、感光体上にマルチビームにより形成された光スポットは、光スポット直径の数10倍程度の間隔で並んでいるのが普通である。具体的には光ファイバのコア直径が4〜5μm、光ファイバアレイの光ファイバピッチが150μm程度とすると、光ビームスポット径と光ファイバアレイの光ファイバピッチの比は30程度になる。したがって、通常はマルチビームを同時に走査するため、各光ビームスポットの端が重なるような適切な角度で光ビームアレイを傾けるが、その傾き角度の誤差が走査線の間隔ずれに大きく影響する。さらに、光ファイバアレイの光ファイバピッチが大きい場合、マルチビームの本数を多くすると、両端の光ビームが光学系の光軸から離れるために収差特性の劣化が問題となる。したがって、光ビーム本数の増加に限界があった。
【0006】
上記の問題を解決するため、光ファイバアレイで導いた光ビームをさらに複数の光導波路アレイを設けた光導波素子に結合し、光導波素子において光ファイバアレイの光ファイバピッチを狭める方式が特許文献1で提案されている。光導波素子においては、同一基板上に複数の光導波路が並んでおり、縦方向すなわち膜厚方向の位置ずれはマルチビームのピッチが0.1μm以下になるように製作することが可能であるため、光導波素子からの出射光ビームの位置ずれも同様に0.1μm以下に抑えることができる。したがって、光ファイバアレイの光ビーム配列精度のトレランスを拡大できる。さらに、各光ファイバからそれぞれ対応する光導波路内に光ビームを入力し、それらの光導波路を曲げて互いに近接させることにより、光導波素子から出力される複数の光ビームであるマルチビームのピッチを狭めることができ、マルチビームを走査する際の傾き角の誤差が画質へ与える影響を低減できる。また、マルチビームの本数を多くした場合であっても、両端の光ビームが光学系の光軸側に近づくために収差特性の劣化を低減できる。
【0007】
さらに、特許文献1においては、光導波素子の出力部において、光導波路のコア幅を狭めることにより出射光ビームのフィールド分布を広げる走査方式を提案している。これにより、光導波素子から出力される各光ビームの両端が互いに重なり合い、マルチビームを走査する際の傾き角を設ける必要がなくなる。この走査方式により、マルチビーム全てが同じ記録タイミングで記録を行うことになり、マルチビームの斜め走査に必要な光ビーム間の記録タイミングの調整が不要となる。
【0008】
光導波素子を備えた、光ファイバアレイによるマルチビーム走査光学系の一例を図23に示す。図23において、1は半導体レーザモジュール部であり、この半導体レーザモジュール部1は複数の半導体レーザからの出力光を複数の光ファイバ2にそれぞれ導く。光ファイバ2の出射側先端は互いに近接させ、一列に配置した光ファイバアレイ3を形成する。光ファイバアレイ3において、複数の光ファイバ2はV溝等が設けられた基板上に密着して並べられて保持される。この場合、光ファイバアレイ3の光ファイバピッチは、光ファイバ2の直径より若干大きく、150μm程度である。光ファイバアレイ3内の各光ファイバ2は、光導波素子4上に設けられた複数の光導波路の入力ポート5にそれぞれバットジョイントで結合され、すなわち、直接に突き合わせて結合され、光ファイバ2の伝搬光をそれぞれの光導波路中に導く。光導波素子4内の各光導波路は曲がって光出力ポート6に達する。光出力ポート6は、出射するマルチビームが等間隔で且つ光ビーム間隔が狭くなるように光導波路間隔を狭めている。光導波素子4から出力されたマルチビームは、結合レンズ7でそれぞれ平行光に変換され、回転するポリゴンミラー8で一括して感光体ドラム10上を走査レンズ9を介して走査する。光検知器11は、光ビームの走査位置を検出するために設けてあり、走査レンズ9からの光ビームを検知する。
【0009】
【特許文献1】特許第3663614号公報(特開平11-271652号公報)
【非特許文献1】K.Kataoka, et. al., "Laser printer optics with use of slant scanning of multiple beams," APPLIED OPTICS, Vol.36, No.25, 6294-6317 (1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
半導体レーザモジュール部1の半導体レーザの波長は、感光体ドラム10の感度特性に応じて選択され、例えば635nmの波長はAsSeにより構成された感光体ドラム10に適する。さらに、高耐久性、長寿命の特徴を持つセレン−テルルにより構成された感光体ドラムには波長が405nmであるブルー半導体レーザが使用されている。このように半導体レーザの波長が短くなった場合、その出射光を導く光ファイバ2の比屈折率差Δは0.2%以下と非常に小さくなる。なぜなら、光軸の位置合せのために光ファイバ2のコア直径は4μm程度の大きさが必要であり、このコア径において光ファイバ2が単一モード条件を満たすためには光ファイバ2のコアとクラッドとの屈折率差を極めて小さくする必要があるためである。
【0011】
光ファイバ2と光導波素子4とを低損失で結合させるためには、光ファイバ2を伝搬する光の電磁界分布と光導波素子4上に設けられた光導波路の伝搬光の電磁界分布とを近づける必要がある。これは理論的には光導波路の比屈折率差とコアサイズとを光ファイバ2の比屈折率差およびコア径とがほぼ等しくなるようにすることで達成できる。すなわち、前述の通り、光導波路に要求される比屈折率差は0.2%以下となる。
【0012】
ここで、比屈折率差Δとは、コアの屈折率をn1、クラッドの屈折率をnとしたときにΔ=(n−n)/(2n)で定義される。典型的な光導波路素子4における比屈折率差は0.75%や1.5%であるが、Δ<0.2%を満たすためには、例えばクラッドの屈折率を1.480と仮定した場合、コアの屈折率を1.483以下にする必要がある。すなわち、光導波素子4の全領域において、0.003以下の非常に高精度なコアおよびクラッドの屈折率制御が要求される。
【0013】
実際に光導波素子4を製作した場合は、光導波素子4全面に均一な屈折率を与えることは困難であり、光導波素子4のコアとクラッドとの屈折率差を完全に一定にすることはできない。光導波素子4内の一部分において、光導波路中にコアの屈折率がクラッドの屈折率よりも小さい領域が存在すると、全反射によるコア中への光閉じ込めが不可能となり、その箇所から伝搬光が放出され、光導波素子4における光パワーの損失が著しくなる。逆に、コアの屈折率がクラッドの屈折率と比較して大きすぎると、光導波路において本来伝搬させるべき基本モードの他に高次の伝搬モードが励振される。この高次の伝搬モードは、曲げに弱く、狭ピッチ化の際に光パワー損失の原因となる。
【0014】
さらに、仮に高精度な屈折率制御によりΔ<0.2%の光導波路が形成できたとしても、このような超低Δの光導波路は曲げに非常に弱い。すなわち、曲がり光導波路を構成した場合、光導波路のコアへの光閉じ込めが非常に弱いために光導波路の曲がり部分でコア内に光を閉じ込めることができずに放射してしまう。この曲がり光導波路による光放射損失を抑えるために、マルチビームの狭ピッチ化の際には極めて大きな曲率半径によって光導波路を曲げる必要がある。具体的な曲率半径は数mmから数cm以上になる。これにより、光導波素子4全体のデバイスサイズが大きなものになってしまう。
【0015】
本発明は、これらの問題点を解決するためのものであり、光源からの光を高効率で利用でき、微小面積でマルチビーム化が可能となるマルチビーム発生器、光走査装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
より詳細には、本発明は、光ファイバから導かれる光を高効率で光導波素子に結合することが可能なマルチビーム発生器、光走査装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【0016】
本発明の他の目的は、光導波素子においてマルチビームの狭ピッチによる過剰損失の少ないコンパクトなマルチビーム発生器、光走査装置及び画像形成装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、製作が容易であり、かつ、光ファイバと光導波素子との高効率な光結合が可能でコンパクトなマルチビーム発生器、光走査装置及び画像形成装置を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、光ファイバと光導波素子との光結合の際やマルチビーム狭ピッチ化の際に生じた迷光が光導波素子からの出射光に影響を与えないマルチビーム発生器、光走査装置及び画像形成装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、隣接する光ビームスポット同士が互いに接するように出力させることができるマルチビーム発生器、光走査装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、1つ以上の光源と、前記光源からの複数の光を導く複数の光ファイバと、前記複数の光ファイバからの光を導く複数の光導波路を同一基板上に集積した光導波素子とを有するマルチビーム発生器において、前記光導波素子は、前記複数の光ファイバからの光を結合する光結合部と、前記複数の光導波路の間隔を変化させる光導波路間隔変換部と、前記光結合部により導かれた光を前記光導波路間隔変換部に入力する光入力部と、前記光導波路間隔変換部からの光を該光導波素子から出力する光出力部とを備え、前記光結合部が光導波路構造を有し、前記光結合部の比屈折率差が前記光ファイバの比屈折率差より大きく、かつ、前記光結合部のコアの断面積が前記光ファイバのコアの断面積より小さいものである。
【0019】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のマルチビーム発生器において、前記光結合部のコアの断面積が前記光入力部のコアの断面積より小さいものである。
【0020】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のマルチビーム発生器において、前記光結合部及び前記光入力部の各コアが互いに等しい厚さを有し、前記光結合部のコア幅が前記光入力部のコア幅より狭いものである。
【0021】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載のマルチビーム発生器において、前記光結合部のコアの幅が前記光入力部に向かってテーパー状に広がるものである。
【0022】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載のマルチビーム発生器において、前記光結合部のクラッドの屈折率と、前記光入力部のクラッドの屈折率とが異なるものである。
【0023】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか1つに記載のマルチビーム発生器において、前記光結合部を構成する光導波路束の中心線と、前記光出力部を構成する光導波路束の中心線とがずれた位置に配置されるものである。
【0024】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか1つに記載のマルチビーム発生器において、前記光導波素子が前記複数の光導波路の各間に迷光防止部を有するものである。
【0025】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至7のいずれか1つに記載のマルチビーム発生器において、前記光導波路素子の前記光出力部において光導波路のコア幅がテーパー状に狭くなるものである。
【0026】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至8のいずれか1つに記載のマルチビーム発生器を備えたことを特徴とする光走査装置である。
【0027】
請求項10に係る発明は、請求項9に記載の光走査装置を備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、光源からの光を高効率で利用でき、微小面積でマルチビーム化が可能となる。
より詳細には、本発明によれば、光ファイバから導かれる光を高効率で光導波素子に結合することが可能となる。
本発明によれば、光導波素子においてマルチビームの狭ピッチによる過剰損失を少なくできる。
【0029】
本発明によれば、製作が容易であり、かつ、光ファイバと光導波素子との高効率な光結合が可能になる。
本発明によれば、光ファイバと光導波素子との光結合の際やマルチビーム狭ピッチ化の際に生じた迷光が光導波素子からの出射光に影響を与えない。
本発明によれば、隣接する光ビームスポット同士が互いに接するように出力させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態であるマルチビーム発生器の一部を抜粋したものである。この実施形態においては、1つの光源からの複数の光ビーム(または複数の光源からの複数の光ビーム)をそれぞれ導く複数の光ファイバ101と、この複数の光ファイバ101からの光をそれぞれ導く光導波素子102を有する。光導波素子102は、複数の光ファイバ101からの光を導く複数の光導波路を同一基板上に集積したもので、光結合部103、光入力部104、光導波路間隔変換部105、光出力部106によって構成される。光結合部103、光入力部104、光導波路間隔変換部105、光出力部106は、いずれも複数の光導波路からなり、互いに結合されている。
【0031】
光ファイバ101の端面は光結合部103とバットジョイントで結合され、光ファイバ101内を伝搬してきた複数の光ビームからなるマルチビームは光結合部103を介して光導波素子102内に導かれる。光導波素子102内に導かれたマルチビームは、光入力部104を介して光導波路間隔変換部105に入力され、ここで間隔が狭められている光導波路により導かれて光出力部106から自由空間へ出力される。
【0032】
具体的には、光入力部104においては、光導波路間隔が光ファイバ101の配列間隔にほぼ等しく、150μm程度であるが、光出力部106での光導波路間隔は20μm程度以下に狭められる。光導波路間隔変換部105では、図1に示すように曲がり光導波路によって互いの光導波路を接近させる。光ファイバ101のみでマルチビームを形成した場合、各々の光ビームは光ファイバ101の直径程度までしか近づけることができず、したがって光ビーム間隔は150μm程度までしか接近できない。そこで、光ファイバ101を伝搬するマルチビームを光導波素子102に導いて狭ピッチ化を施すことにより、光ビーム間隔を20μm程度以下に狭めることができる。
【0033】
図2は図1における光ファイバ101と光導波素子102との結合部103を抽出して示したものである。光ファイバ101は光導波路素子102とバットジョイントによって結合されている。図2において、111は光ファイバ101のコアであり、113および114はそれぞれ光導波素子102における光結合部103のコアおよびクラッドである。また、図3は図2を上面および側面から見た図である。
【0034】
レーザプリンタ等の画像形成装置の光書き込み用途では、感光体の感度によって光源の波長が決定され、具体的には650nmや405nmといった波長のレーザ光源が使用される。これは、通常の光ファイバ通信用途で用いられる光源の波長1300nmや1550nmの1/2乃至1/3の波長であり、したがって光ファイバ101のコア径も必然的に小さくなる。光ファイバ101と光導波路との位置合せを考えると、それぞれの伝搬光の伝搬フィールド幅が広い方がトレランスを広くできる。従って、できる限り光ファイバ101のコア径を大きくして伝搬フィールドも広くするのが好ましいが、光ファイバ101はコア径を大きくしすぎるとシングルモードで動作しなくなる。さらに、光ファイバ101のコア径が大きい場合にシングルモード動作を可能にするために、光ファイバ101のコアとクラッドとの屈折率差を極めて小さくする必要がある。具体的には、波長405nmの光源を使用する場合、シングルモード条件を満たすために、光ファイバ101の比屈折率Δは0.2%以下、光ファイバ101のコア直径は4μm程度である。
【0035】
光ファイバ101と光導波路とをバットジョイントによって高効率で結合するためには、光導波路の比屈折率差およびコア寸法を光ファイバ101の比屈折率差およびコア寸法と一致させるのが理想である。しかしながら、光導波路素子102において0.2%以下の比屈折率差を実現することは屈折率制御の精度の面から極めて困難である。石英系光導波路による平面光回路(Planer Lightwave Circuit:PLC)において、典型的な比屈折率差は0.75%程度である。したがって、光導波素子102を構成する光導波路も、通常の石英系導波路と同じ程度の比屈折率差を持たせることが製作の容易さから好ましい。
【0036】
図17は光ファイバ101及び光導波路素子102の光導波路内を伝搬する光のフィールド分布を示す。この場合、光源の光の波長は405nmとし、光ファイバ101のΔを0.15%、光導波路のΔを0.75%とした。光ファイバ101及び光導波路のコア径は、それぞれシングルモード条件を満たす範囲で最大にした。具体的には光ファイバ101のコア直径が3.7μm、光導波路のコアサイズ(コア断面積)が1.5μm×1.5μmである。
【0037】
図17(a)は光ファイバ101の伝搬フィールド分布を示し、図17(b)は光導波路素子102内の光導波路の伝搬フィールド分布を示す。光ファイバ101及び光導波路の伝搬フィールド分布を比較して分かるように、両者の伝搬フィールの大きさにはかなりの差がある。光ファイバ101と光導波路をバットジョイントで結合した際の結合効率ηを以下の数式1により計算すると、Δ=0.15%の光ファイバ101とΔ=0.75%の光導波路の結合効率は60%程度である。
【0038】
【数1】

【0039】
ここに、E(F)およびE(W)はそれぞれ光ファイバ101及び光導波路内の電界フィールドである。図18は比屈折率の異なる光導波路と光ファイバ101との結合効率を示している。この場合、光ファイバ101及び光導波路内の比屈折率差において、光導波路のコア形状を正方形とし、光ファイバ101及び光導波路のコア寸法はシングルモード条件を満たす範囲で最大の値を仮定した。仮に理想的な比屈折率差で光導波路が作成できた場合は光ファイバ101とほぼ100%の結合効率が達成できるが、0.75%の比屈折率差をもつ光導波路と光ファイバ101を結合させた場合、上述のように結合効率は60%程度まで低減する。更に比屈折率を高くした光導波路と光ファイバ101とを結合させた場合、結合効率は著しく悪化することが分かる。
【0040】
この問題を解決し、光ファイバ101と比屈折率の高い光導波路とを高効率で結合するために、本実施形態では、光導波路のコア寸法を光ファイバ101のコアより小さくする。一般に、光導波路の比屈折率差が一定の場合、シングルモード領域で光導波路のコア寸法をある限界以下に小さくすると、コア内への光閉じ込めが弱くなり、伝搬フィールド分布が大きく光がクラッドに浸み出す。このとき、光導波路の伝搬フィールド分布はガウス関数に近い形状をもつ光ファイバ101の伝搬フィールド分布とは異なり、裾がexp関数で広がった形になる。しかしながら、ガウス関数との重なり積分はそれほど小さくならず、光導波路の伝搬フィールド幅を適切に設計すれば結合効率は90%以上にできる。
【0041】
本実施形態において、光導波路のコア寸法を小さくすることによって光ファイバ101との高効率結合を得ることは、光導波路のコア幅のみを狭めることによって容易に実現できる。図4は本実施形態において、光導波路のコア寸法を小さくした例を模式的に示している。この例では、光導波素子102における光導波路のコアの厚さは光結合部103のコア113の厚さと光入力部104のコア303の厚さで等しくし、光結合部103のコア幅のみを狭めている。図19は光結合部103における光導波路のコア寸法を、単一モード条件を満たす1.5μm×1.5μmから、コア幅のみを0.3μmにまで狭めた場合の伝搬フィールド分布である。この伝搬フィールド分布は、図17に示した光導波路の伝搬フィールドと比較して、クラッド113中に広く電界が浸み出している。
【0042】
図20は光結合部103における光導波路のコア幅を変化させた場合の光ファイバ101と光導波路との結合効率を上記数式1により計算した結果を示す。この場合、光ファイバ101のコア111のΔは0.15%、光結合部103のコア113のΔは0.75%であり、導波路のコア厚はすべて1.5μmである。図20より光導波路のコア幅を0.3μmまで狭めることで95%程度の結合効率が得られることが分かる。また、コア幅が0.35±0.14μm以内(0.35+0.14μm〜0.35−0.14μmの範囲内)のとき、光ファイバ101と光導波路とを80%以上の結合効率で結合できる。PLCの加工技術を用いれば、±100nm程度の精度でのコア幅加工は可能であり、製作上の寸法誤差を考慮しても高効率な光結合が可能である。
【0043】
図21は本実施形態において光ファイバ101と光導波素子102内の光導波路との位置ずれΔxに対するトレランスを計算した結果を示す。この場合、光結合部103における光導波路のコアサイズは1.5μm×0.3μmとした。全く光ファイバ101と光導波路との位置ずれがない場合、光ファイバ101と光導波路との結合効率は95%程度である。この状態から、水平方向および垂直方向に光導波路のコアの位置をずらして、光ファイバ101と光導波路との結合効率の変化量を計算した。図21より光ファイバ101と光導波路との位置精度が水平方向および垂直方向のいずれについても0.8μmの位置精度であれば、80%以上の結合効率が得られることがわかった。この0.8μmという値は光ファイバ101のコア径の1/4程度に対応しており、位置ずれに対するトレランスが大きいことを示している。
【0044】
このように、本実施形態では、光結合部103の比屈折率差が光ファイバ101の比屈折率差より大きく、かつ、光結合部103のコアの断面積が光ファイバ101のコアの断面積より小さいことにより、光源からの光を高効率で利用でき、つまり、光ファイバから導かれる光を高効率で光導波素子に結合することが可能となる。
また、本実施形態では、光結合部103のコアの断面積が光入力部104のコアの断面積より小さいことにより、光導波素子102において狭ピッチによる過剰損失を少なくでき、コンパクトにできる。
【0045】
本実施形態のもう1つの特徴は、光導波素子102における光結合部103のみコア幅を狭めることにある。光ファイバ101から光結合部103を介して光導波素子102内に導かれた光は、その後、光導波路間隔を狭める等の光制御を受ける。そのような箇所において伝搬光は光導波路のコアに強く閉じ込められている方が好ましい。もし、伝搬光がクラッド中に大きく浸み出したまま光制御を行うと、複数の光導波路が互いに影響を与えないようにするために導波路間隔を広くする必要があり、また、各々の光導波路は非常に光閉じ込めが弱いから曲がり部分における放射損失が増大する。この問題を解決するために本実施形態では、光結合部103のみコア幅を狭くし、光入力部104より後ではコア幅を広げている。これにより、光導波素子102の光入力部104以降は、コア中に光が強く閉じ込められる。本実施形態では、光導波路のコア幅のみを変化させて導波光のフィールド分布を制御しているが、これは光導波素子製作時に導波路形状のパターニングを行うのみで実現でき、製作を容易にする構成である。
【0046】
図4に示す例では、光結合部103と光入力部104の境界においてコア幅を不連続で変化させているため、この部分で光伝搬フィールドの不整合が発生し、結合損失の原因となる恐れがある。したがって、実際には、この境界で高効率な光結合を可能にするような構造を付加することが有効である。
このように、本実施形態では、光結合部103及び光入力部104の各コアが互いに等しい厚さを有し、光結合部103のコア幅が光入力部104のコア幅より狭いことにより、製作が容易であり、かつ、光ファイバと光導波素子との高効率な光結合が可能になる。
【0047】
図5は光結合部103と光入力部104との高効率結合のための具体的な構成例を示す。前述のように、光導波路幅の異なる光結合部103と光入力部104を直接に接続すると、それぞれの光導波路を伝搬する光の間にモード不整合が生じ、過剰損失の原因となる。そこで、この例では、光結合部103と光入力部104の間にモードの不整合を解消する光遷移部403を設ける。光遷移部403のコア404における両端は、一方が光結合部103のコア113と同じコア幅を有し、もう一方が光入力部104のコア405と同じコア幅を有する。そして、光遷移部403におけるコア404の幅はテーパー状に少しずつ変化させる。この場合、コア404の幅をゆっくりと断熱的に変化させると、光結合部103と光入力部104との間の光導波路内の光伝搬フィールド形状が少しずつ変化し、コア幅の異なる光結合部103と光入力部104との光導波路間のモード不整合を解消できる。すなわち、ほとんど結合損失なしでコアサイズの異なる光結合部103と光入力部104との間の光導波路同士を結合することが可能である。
【0048】
図22はコア404の幅がテーパー状に少しずつ変化する光遷移部403に対する結合損失を3D−BPMシミュレーションによって計算した結果を示す。この場合、光結合部103におけるコアサイズを1.5μm×0.3μm、光入力部104におけるコアサイズを1.5μm×1.5μmと仮定した。また、光結合部103における光導波路の比屈折率差は0.75%、光の波長を450nmとした。図22より、光遷移部403の長さ(テーパー長L)を長くするほど結合損失が低減することが分かる。コア幅がテーパー状に少しずつ変化する光遷移部403の長さを3000μm以上にすれば結合損失が0.1dB以下になり、ほぼ損失なしで光結合部103と光入力部104との結合が可能である。
【0049】
また、光遷移部403におけるコア幅の変化は、直線形状に限定されず、例えば図6に示すように光遷移部403のコア404をパラボリック状に変化させることも有効である。このような光遷移部403のコア幅の遷移形状によって、光遷移部403において光伝搬フィールド分布を変化させる際に光が光導波路を伝搬する基本モードが高次の伝搬モードに結合することを抑制することができる。
このように、本実施形態では、光結合部103のコアの幅が光入力部104に向かってテーパー状に広がることにより、製作が容易であり、かつ、光ファイバ101と光導波素子102との高効率な光結合が可能でコンパクトとなる。
【0050】
図7〜図9は、本実施形態において、光結合部103のコア幅を狭め、光導波路間隔変換部105のコア幅を広くした光導波素子102の各例を模式的に示す。図7に示す光導波素子102の例は、曲がり光導波路215によって光導波路間隔の狭ピッチ化を行う構成例であり、光入力部104から後はコア幅が広くなっている。したがって、曲がり光導波路215において、光はコア中に強く閉じ込められるから曲がり光導波路215の曲がりの曲率半径を小さくできる。
【0051】
図8は全反射ミラーによって光の伝搬方向を変化させることで光導波路間隔の狭ピッチ化を行った光導波素子102の例を示す。この例では、光導波路215の曲がり部分に設けた全反射ミラー825での光反射時に過剰損失を低減するためには、ミラー825の垂直性が重要となるが、光導波路215への光閉じ込めが弱いとその伝搬フィールドの広がり応じてミラー825の面積も広くする必要がある。したがって、ミラー825を形成するためのエッチング量も多くなり、側壁の垂直性の悪化が懸念される。本構成例では、ミラー825での光反射時において光はコア215内に強く閉じ込められているから、ミラー825は最小限の面積で構成できる。すなわち、ミラー825の光反射による過剰損失を低減できる。
【0052】
図8に示す光導波素子102の例ではミラー825の反射角度を90°にしているが、図9に示したように光導波路215の曲がり部分に設けた複数の全反射ミラー835により、より浅い角度の光反射を複数回繰り返すことで光導波路の狭ピッチ化を行うこともできる。もちろん、曲がり光導波路215と反射ミラーを組み合わせることも有効である。
【0053】
図10、図11は本実施形態における光導波素子102の他の例において光結合部103と光入力部104の付近を抜粋して上面から見た図である。この光導波素子102の例では、光結合部103は光ファイバ101との高効率結合のためにコア幅を狭めて光閉じ込めを弱くしている。これに対して、光入力部104ではコアへの光閉じ込めを強くすることが好ましい。この例では、光結合部103と光入力部104とでクラッド材料を互いに異ならせることで上記の要求を実現する。すなわち、光入力部104におけるクラッド507の屈折率を、光結合部103におけるクラッド114材料の屈折率より低くする。光入力部104のΔを光結合部103のΔより高くすることにより、光入力部104のコア303への光閉じ込めを強めることができる。この場合、光結合部103及び光入力部104それぞれのコア幅は同じであって構わないが、光入力部104のコア幅を若干光結合部103のコア幅より広げることも有効である。
このように、本実施形態では、光結合部103のクラッドの屈折率と、光入力部104のクラッドの屈折率とが異なることにより、製作が容易であり、かつ、光ファイバと光導波素子との高効率な光結合が可能でコンパクトにできる。
【0054】
Δの異なる光導波路同士を直接に結合すると、それらの光伝搬フィールドのミスマッチにより過剰損失が生じる。そこで、図10及び図11に示す例では、光結合部103と光入力部104とを低損失で結合するための光遷移部403を両者103、104の間に挿入している。光遷移部403では光結合部103のクラッド114幅と光入力部104のクラッド507幅をテーパー状に変化させる。例えば図10に示す例では、光結合部103のクラッド114の幅を光入力部104に向かってテーパー状に狭めており、図11に示す例では、逆に光入力部104のクラッド507の幅を光結合部103に向かってテーパー状に広げている。このように光結合部103及び光入力部104のクラッド114、507の幅を徐々に変化させることにより、光結合部103及び光入力部104の間の光伝搬フィールド分布を光遷移部403で徐々に変化させることができ、光結合部103及び光入力部104の比屈折率差の異なる光導波路同士をほぼ損失なしで結合することが可能である。
【0055】
図12及び図13は図10、図11に示す例の光導波素子102全体を上面から見た図である。光結合部103では、光ファイバ101と高効率で結合するために、コア113の幅を狭め、光伝搬フィールドを広げている。その後、光遷移部403によって光導波路の光伝搬フィールドを狭め、光入力部104ではコア507内に光が強く閉じ込められている。光導波路幅変換部105においては、マルチビームの狭ピッチ化が施される。具体的には、光導波路変換部105は、複数の曲がり光導波路で構成されるが、コアへの光閉じ込めを強くしているため、曲がり光導波路の曲げ半径を小さくできる。狭ピッチ化されたマルチビームは光出力部106より出力される。
【0056】
図14は本実施形態における光導波素子102を上面から見た図である。光ファイバ101から光結合部103を介して光入力部104に入力された光は、光導波路間隔変換部105により狭ピッチ化されて光出力部106より出射するが、このとき、光出力部106は光結合部103と対面しないように配置される。
光導波素子102内に外部からの光を結合させる際に位置ずれ等が発生し、光導波路に結合しない光が発生する可能性がある。このような光は、迷光となり、光導波素子102の性能を悪化させる。例えば、光導波素子102内に光変調部が設けられていた場合、その光変調器を構成する導波路内に迷光が入り込むことによって、マルチビーム変調時の消光比が悪くなる。また、光出力部106における強度変調されたマルチビームに迷光が混入することによって、出射光強度に揺らぎが生じ、変調光の消光比が悪化する等の問題が起こる。
【0057】
光結合部103において発生する迷光は回折によって光導波素子102内部を放射状に広がると考えられる。したがって、図14に示すように光出力部106を光入力部104と対面しないように光結合部103を構成する導波路束の中心線と、光出力部106を構成する導波路束の中心線とをずらして配置すれば、迷光の回折光が伝搬する方向と光出力部106における光の伝搬方向が異なるので、迷光の影響を低減することができる。
このように、本実施形態では、光結合部103を構成する導波路束の中心線と、光出力部106を構成する導波路束の中心線とがずれた位置に配置されることにより、光ファイバと光導波素子との光結合の際やマルチビーム狭ピッチ化の際に生じた迷光が光導波素子からの出射光に影響を与えないようにできる。
【0058】
図15は本実施形態における光導波素子102を上面から見た図である。光ファイバ101から光結合部103を介して光入力部104に入力された光は、光導波路間隔変換部105により狭ピッチ化されて光出力部106より出射する。ここで、複数の光導波路それぞれの間に迷光防止部としての迷光遮断部707を挿入する。
外部からの光を光導波素子102内に導く際や、光導波路間隔を狭める際において、各々の光導波路の伝搬モードに結合しない光成分が放射されて光導波素子102内を伝搬する可能性がある。ある光導波路から発生した放射光がその他の光導波路のいずれかに達するとそれがノイズとなり、光導波素子102の特性を劣化させる。
【0059】
この問題を解決するために、図15に示す例では、各々の光導波路の間に迷光の伝搬を防止するような迷光遮断部707を設けている。具体的には、光を吸収するような金属を各導波路の間に埋め込んで迷光遮断部707を形成することによって、ノイズの原因となるような迷光を吸収、除去できる。また、光導波路のコア材料と比べて屈折率の高い材料を導波路間に埋め込んで迷光遮断部707を形成することも有効である。光導波路からの放射光を迷光遮断部707に閉じ込め、その中を伝搬させることによって迷光成分を減衰させることができる。このような迷光遮断部707は図14に示すような光出力位置をずらした構成に適用することも有効である。
このように、本実施形態では、迷光遮断部707は、各光導波路の間で迷光を遮断することにより、光ファイバ101と光導波素子102との光結合の際やマルチビーム狭ピッチ化の際に生じた迷光が光導波素子102からの出射光に影響を与えなくなる。
【0060】
図16は本実施形態における光導波素子102他の例の光出力部106を上面から見た図である。この例では、光出力部104における光導波路のコア802出射端の幅をコア802の他の部分の幅より狭める。この場合、光導波素子102の出射端では、光導波路への光閉じ込めが弱くなり、伝搬フィールドが大きくクラッドに広げられる。これにより、複数の隣接する光導波路において伝搬光のフィールドの裾部分がわずかに重なり合う。
【0061】
一般にマルチビームを構成する各々の光ビームのスポットの間に隙間がある場合、互いの光ビームの隙間を埋めて密接した走査線を形成するために、光スポット列の配列方向を斜めにして走査する。しかしながら、マルチビームの光スポット間の隙間が広い場合、その光スポット列の傾斜角を高精度に制御する必要があり、わずかな傾斜角の誤差が走査線の間隔ずれに大きく影響する。
【0062】
この問題を解決するため、上述のようにマルチビームを構成する光スポットを密接させれば、光スポット配列を垂直に走査しても走査線に隙間が生じることがない。したがって、高精度な光スポット配列の角度制御が不要になり、かつ、マルチビームがすべて同じタイミングで記録を行うから、マルチビームを斜めに走査する際に必要な記録タイミングの調整も不要になる。
【0063】
各光ビームスポットの重なり量は、光出力部106のコア幅によって決定され、所望の重なり量を持つようにコア幅を設計することによって、記録に最適な光スポット配列を形成することが可能である。また、図16に示すように、光出力部106における光導波路幅(光導波路のコア802の幅)をテーパー状に断熱的に変化させることにより、ほとんど損失なくビームスポット形状を変化させることができる。なお、図16において、803は光出力部106から出射された光の電界強度分布を示す。
このように、本実施形態では、光導波路素子102の光出力部106において光導波路のコア幅がテーパー状に狭められることにより、隣接する光ビームスポット同士が互いに接するように出力させることができる。
【0064】
以上のように、本実施形態は、光源からの複数の光ビームを導く光ファイバ101と、複数の光導波路を一括して集積した光導波素子102を有する。光導波素子102は光ファイバ101からの光を高効率で導く光結合部103と、光導波素子102に導かれた複数の光ビームを狭ピッチ化する光導波路間隔変換部105とを備える。光導波路間隔変換部105における光伝搬フィールド分布と光結合部103における光伝搬フィールド分布とを異ならせることにより、光源からの光を高効率で光導波素子102に導くことと、微小領域において狭ピッチ化することを両立できる。したがって、光源からの光を高効率で利用できるコンパクトなマルチビーム発生器を提供できる。
【0065】
本実施形態においては、
(1)光結合部103の比屈折率差が光ファイバ101の比屈折率差より大きく、かつ、光結合部103のコアの断面積が光ファイバ101のコアの断面積より小さいこと、
(2)光結合部103のコアの断面積が光入力部104のコアの断面積より小さいこと、
(3)光結合部103及び光入力部104の各コアが互いに等しい厚さを有し、光結合部のコア幅が前記光入力部のコア幅より狭いこと、
(4)光結合部103のコアの幅が光遷移部403で光入力部104に向かってテーパー状に広がること、
(5)光結合部103のクラッドの屈折率と、光入力部104のクラッドの屈折率とが異なること、
(6)光結合部103を構成する光導波路束の中心線と、光出力部106を構成する光導波路束の中心線とがずれた位置に配置されること、
(7)光導波素子102が複数の光導波路の各間に迷光防止部としての迷光遮断部707を有すること、
(8)光導波路素子102の光出力部106において光導波路のコア幅がテーパー状に狭くなること、
(9)光出力部106と光結合部103とが対面しないようにずらして配置されること、
を任意に組み合わせた構成例とすることが可能である。
【0066】
本発明の他の実施形態は、マルチビーム方式の光走査装置であり、図23に示す光走査装置としての前述したマルチビーム走査光学系において、半導体レーザモジュール部1、光ファイバアレイ3及び光導波素子4の代りに上記実施形態のマルチビーム発生器(上述した各構成例を含む)が用いられ、光源が変調器により画像信号に応じて変調駆動される。
この実施形態によれば、上記実施形態のマルチビーム発生器を有するので、上記実施形態と同様な効果を奏する。
【0067】
図24は本発明の別の実施形態としてのレーザプリンタを示す。このレーザプリンタ1000は、像担持体1110として、円筒状に形成された光導電性の感光体を有している。像担持体1110の周囲には、帯電手段としての帯電ローラ1121、現像手段としての現像装置1131、転写手段としての転写ローラ1141、クリーニング装置1151等が配備されている。さらに、光走査装置1171として上記実施形態の光走査装置が設けられ、帯電ローラ1121と現像装置1131との間で光書込による露光を行うようになっている。また、図24において、符号1161は定着手段としての定着装置、符号1181は給紙カセット、符号1191はレジストローラ対、符号1201は給紙コロ、符号1211は搬送路、符号1221は排紙ローラ対、符号1231は排紙トレイ、符号Pは記録媒体としての転写紙を示している。
【0068】
帯電手段としては帯電ローラの他、コロナチャージャ、帯電ブラシ等、種々のものを用いることができる。現像装置1131としては、現像剤としてトナーを用いる一成分現像方式の現像装置や、現像剤としてトナーとキャリアを用いる二成分現像方式の現像装置などがあるが、どの現像方式を用いてもよい。転写手段としては、転写ローラの他、転写チャージャ、転写ブラシ、転写ベルト等、種々のものを用いることができる。クリーニング装置1151としては、クリーニングブレード方式、クリーニングブラシ方式、クリーニングローラ方式、あるいはこれらを組み合わせたものなどがあるが、どの方式を用いてもよい。定着装置1161としては、加熱ローラと加圧ローラを用いる方式や、加熱ベルトと加圧ローラを用いる方式、加熱ベルトと加圧ベルトを用いる方式等、種々のものがあるが、どの方式を用いてもよい。
【0069】
画像形成を行うときには、光導電性の感光体である像担持体1110が図示しない駆動部により時計回りに等速で回転駆動され、その表面が帯電ローラ1121により均一帯電され、光走査装置1171の光ビームLBによる露光で光書込みを受けて静電潜像が形成される。像担持体1110上に形成された静電潜像は所謂ネガ潜像であり、像担持体1110は画像部が露光される。この像担持体1110上の静電潜像は現像装置1131により反転現像され、像担持体1110上にトナー画像が形成される。
【0070】
転写紙Pを収納した給紙カセット1181は、当該画像形成装置1000の本体に脱着可能であり、図示のごとく該本体に装着された状態において、給紙カセット1181に収納されている転写紙Pのうちの最上位の1枚が給紙コロ1201により給紙され、その先端部がレジストローラ対1191に突き当たって一旦停止する。レジストローラ対1191は、像担持体1110上のトナー画像が転写位置へ移動するのにタイミングを合わせて、転写紙Pを転写部へ送り込む。転写部へ送り込まれた転写紙Pは、転写部においてトナー画像と重ね合わせられて転写ローラ1141によりトナー画像が静電転写される。トナー画像が転写された転写紙Pは、定着装置1161へ送られ、定着装置1161においてトナー画像が定着され、搬送路1211を通り、排紙ローラ対1221により排紙トレイ1231上に排出される。一方、トナー画像が転写された後の像担持体1110の表面は、クリーニング装置1151によりクリーニングされ、残留トナーや紙粉等が除去される。
この実施形態によれば、上記実施形態の光走査装置を有するので、上記実施形態と同様な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態の一部を抜粋して示す断面図である。
【図2】同実施形態における光ファイバと光導波素子との結合部を抽出して示す透視図である。
【図3】図2を上面および側面から見た上面図及び側面図である。
【図4】上記実施形態において光導波路のコア寸法を小さくした例を模式的に示す上面図及び側面図である。
【図5】上記実施形態において光結合部と光入力部との高効率結合のための具体的な構成例を示す上面図及び側面図である。
【図6】上記実施形態において光結合部と光入力部との高効率結合のための具体的な他の構成例を示す上面図及び側面図である。
【図7】上記実施形態において、光結合部のコア幅を狭め、光導波路間隔変換部のコア幅を広くした光導波素子の例を模式的に示す断面略図である。
【図8】上記実施形態において、光結合部のコア幅を狭め、光導波路間隔変換部のコア幅を広くした光導波素子の他の例を模式的に示す断面図である。
【図9】上記実施形態において、光結合部のコア幅を狭め、光導波路間隔変換部のコア幅を広くした光導波素子の別の例を模式的に示す断面略図である。
【図10】上記実施形態における光導波素子の更に他の例において光結合部と光入力部の付近を抜粋して上面から見た断面図である。
【図11】上記実施形態における光導波素子の更に別の例において光結合部と光入力部の付近を抜粋して上面から見た断面図である。
【図12】図10に示す例の光導波素子全体を上面から見た断面図である。
【図13】図11に示す例の光導波素子全体を上面から見た断面図である。
【図14】上記実施形態における光導波素子を上面から見た断面図である。
【図15】上記実施形態における光導波素子を上面から見た断面図である。
【図16】上記実施形態における光導波素子の他の例の光出力部を上面から見た断面図である。
【図17】上記実施形態における光ファイバ及び光導波路素子の光導波路内を伝搬する光のフィールド分布を示す図である。
【図18】上記実施形態における比屈折率の異なる光導波路と光ファイバとの結合効率を示す特性図である。
【図19】上記実施形態において光結合部における光導波路のコア寸法を、単一モード条件を満たす1.5μm×1.5μmから、コア幅のみを0.3μmにまで狭めた場合の光伝搬フィールド分布を示す図である。
【図20】上記実施形態の光ファイバ及び光導波路素子の光導波路を示す斜視図、光結合部における光導波路のコア幅を変化させた場合の光ファイバと光導波路との結合効率を計算した結果を示す特性図である。
【図21】上記実施形態において光ファイバと光導波素子内の光導波路との位置ずれに対するトレランスを計算した結果を示す特性図である。
【図22】上記実施形態における光導波路素子の光結合部、光遷移部及び光入力部を上から見た断面図、光遷移部に対する結合損失を計算した結果を示す特性図である。
【図23】マルチビーム走査光学系の一例を示す斜視図である。
【図24】本発明の別の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
101 光ファイバ
102 光導波素子
103 光結合部
104 光入力部
105 光導波路間隔変換部
106 光出力部
111 光ファイバのコア
113 光結合部のコア
114 光結合部のクラッド
215 曲がり光導波路
303 光入力部のコア
403 光遷移部
404 光遷移部のコア
507 光入力部のクラッド
707 迷光遮断部
803 光出力部のコア
825、835 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の光源と、
前記光源からの複数の光を導く複数の光ファイバと、
前記複数の光ファイバからの光を導く複数の光導波路を同一基板上に集積した光導波素子と
を有するマルチビーム発生器において、
前記光導波素子は、
前記複数の光ファイバからの光を結合する光結合部と、
前記複数の光導波路の間隔を変化させる光導波路間隔変換部と、
前記光結合部により導かれた光を前記光導波路間隔変換部に入力する光入力部と、
前記光導波路間隔変換部からの光を該光導波素子から出力する光出力部とを備え、
前記光結合部が光導波路構造を有し、
前記光結合部の比屈折率差が前記光ファイバの比屈折率差より大きく、
かつ、前記光結合部のコアの断面積が前記光ファイバのコアの断面積より小さい
ことを特徴とするマルチビーム発生器。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチビーム発生器において、
前記光結合部のコアの断面積が前記光入力部のコアの断面積より小さい
ことを特徴とするマルチビーム発生器。
【請求項3】
請求項1に記載のマルチビーム発生器において、
前記光結合部及び前記光入力部の各コアが互いに等しい厚さを有し、
前記光結合部のコア幅が前記光入力部のコア幅より狭い
ことを特徴とするマルチビーム発生器。
【請求項4】
請求項3に記載のマルチビーム発生器において、
前記光結合部のコアの幅が前記光入力部に向かってテーパー状に広がる
ことを特徴とするマルチビーム発生器。
【請求項5】
請求項1に記載のマルチビーム発生器において、
前記光結合部のクラッドの屈折率と、前記光入力部のクラッドの屈折率とが異なる
ことを特徴とするマルチビーム発生器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載のマルチビーム発生器において、
前記光結合部を構成する光導波路束の中心線と、前記光出力部を構成する光導波路束の中心線とがずれた位置に配置される
ことを特徴とするマルチビーム発生器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載のマルチビーム発生器において、
前記光導波素子が前記複数の光導波路の各間に迷光防止部を有する
ことを特徴とするマルチビーム発生器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載のマルチビーム発生器において、
前記光導波路素子の前記光出力部において光導波路のコア幅がテーパー状に狭くなる
ことを特徴とするマルチビーム発生器。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つに記載のマルチビーム発生器を備えたことを特徴とする光走査装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光走査装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−145734(P2008−145734A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332962(P2006−332962)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】