マルチX線発生装置及びX線撮影装置
【課題】X線源における線質と照射位置の選択の自由度を増すことで、低線量で高コントラストのX線画像を高速に得ることを可能とする。
【解決手段】2次元に配置された複数の電子源と、それらに対向する位置に配置されたターゲットとを備えたマルチX線発生装置は、複数の電子源を含み、供給された駆動信号に応じて、複数の電子源を選択的に駆動して駆動された電子源から電子を出力するマルチ電子源と、マルチ電子源から出力された電子の照射に応じてX線を発生する複数のターゲットを含み、X線の発生個所に応じて異なる線質のX線を出力するターゲット部とを有し、マルチ電子源における電子源の選択的な駆動により、ターゲット部からのX線の発生個所と線質が制御される。
【解決手段】2次元に配置された複数の電子源と、それらに対向する位置に配置されたターゲットとを備えたマルチX線発生装置は、複数の電子源を含み、供給された駆動信号に応じて、複数の電子源を選択的に駆動して駆動された電子源から電子を出力するマルチ電子源と、マルチ電子源から出力された電子の照射に応じてX線を発生する複数のターゲットを含み、X線の発生個所に応じて異なる線質のX線を出力するターゲット部とを有し、マルチ電子源における電子源の選択的な駆動により、ターゲット部からのX線の発生個所と線質が制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線源を用いた医療機器や産業機器分野の非破壊X線撮影、診断応用等に使用するマルチX線発生装置と該装置を用いたX線撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、X線管球は電子源に熱電子源を用いたものであり、高温度に加熱したフィラメントから放出される熱電子をウエネルト電極、引出電極、加速電極、及びレンズ電極を通して、電子ビームを高エネルギに加速する。そして、所望の形状に電子ビームを成形した後に、金属から成るX線ターゲットに照射してX線を発生させている。
【0003】
近年、この熱電子源に代る電子源として冷陰極型電子源が開発され、フラットパネルディテクタ(FPD)との組み合わせへの応用として広く研究されている。冷陰極の代表的なものとして、数10nmの針の先端に高電界を掛けて電子を取り出すスピント(Spindt)型タイプの電子源が知られている。更に、カーボンナノチューブ(CNT)を材料とした電子放出エミッタや、ガラス基板の表面に名のメーター(nm)オーダの微細構造を形成して、電子を放出する表面伝導型電子源などがある。
【0004】
これらの電子源への応用として、スピント型電子源やカーボンナノチューブ型電子源を用いて単一の電子ビームを形成してX線を取り出すことが、特許文献1、2に提案されている。そして、これらの冷陰極電子源を複数用いてマルチ電子源からの電子ビームをX線ターゲット上に照射してX線を発生させることも、特許文献3、非特許文献1に記載されている。
【0005】
そして更に、マルチX線源から相互干渉の無い特性の優れたマルチX線ビームを形成するX線装置が、特許文献4に記載されている。
【0006】
一方、従来から用いられている単焦点のX線源として、回転ターゲット型のX線源があるが、このX線源を用いて異なるX線の線質を発生する方法が提案されている。その具体的な方法として、図13に示されるように、一つの回転ターゲットに2種類のターゲット材料(102,102a)を配置してそれぞれに電子ビームを照射する方法が、特許文献5、特許文献6に記載されている。また、特許文献7には、一つの回転ターゲットの両面に異なるターゲット材料を配置して線質の異なるX線を発生する方法と、その応用方法が記載されている。
【特許文献1】特開平09−180894号公報
【特許文献2】特開2004−329784号公報
【特許文献3】特開平08−264139号公報
【特許文献4】特開2007−265981号公報
【特許文献5】特開平05−028939号公報
【特許文献6】特開平05−036368号公報
【特許文献7】特開平01−204649号公報
【非特許文献1】Applied Physics Letters 86,184104(2005),J.Zhang 「Stationaryscanningx-ray source based on carbonnanotube field emitters」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
単焦点のX線源として代表的な回転ターゲット型のX線源においては、電子源やターゲット構造等の形状による制約のために、一つの管球から得られる線質の種類は2種類程度が限界であった。また、X線源の焦点の数も2焦点程度に限られるため、被写体の部位と形状に合わせて線質と線量の条件を調整することが困難であり、質の高いX線画像を得ることが難しかった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、X線源における線質と照射位置の選択の自由度を増すことで、低線量で高コントラストのX線画像を高速に得ることを可能としたX線発生装置及びX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の一態様によるマルチX線発生装置は、以下の構成を有する。即ち、
2次元に配置された複数の電子源を有し、供給された駆動信号に応じて前記複数の電子源を選択的に駆動することにより、駆動された電子源から電子を出力するマルチ電子源と、
前記複数の電子源に対向して2次元に配置された複数のターゲットを有し、前記マルチ電子源から出力された電子の照射に応じてX線を発生し、X線の発生個所に応じて異なる線質のX線を出力するターゲット部とを備え、
前記マルチ電子源における電子源の選択的な駆動により、前記ターゲット部からのX線の発生個所と線質が制御され。
【0010】
また、上記の目的を達成するための本発明の他の態様によるX線撮影装置は、以下の構成を備える。すなわち、
上記のマルチX線発生装置と、
前記マルチX線発生装置から出力され、検出面に到達したX線の線量に応じた電気信号を生成する2次元X線検出器と、
駆動条件に従って駆動信号を生成し、前記マルチ電子源に供給することにより、各電子源を駆動する駆動手段とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、X線源における線質と照射位置の選択の自由度を増すことができ、低線量で高コントラストのX線画像を高速に得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1はマルチX線源としての、マルチX線発生装置10の構成例を示す図である。図1において、真空室11内には、マルチ電子源としてのマルチ電子ビーム発生部12、マルチX線源としての透過型ターゲット13が配置されている。マルチ電子ビーム発生部12は、素子基板14と、その上に複数個の電子放出素子15が配列された素子アレイ16により構成される。電子放出素子15は電子源として機能するものであり、駆動部17により駆動が制御されるようになっている。電子放出素子15から発生する電子ビームeを制御するために絶縁体18に固定されたレンズ電極19とアノード電極20が設けられる。これらのレンズ電極19、アノード電極20には、高電圧導入部21、22を介して高電圧が供給されている。
【0014】
発生した電子ビームeが衝突する透過型ターゲット13は、電子ビームeに対応して離散的に配置されている。更に、透過型ターゲット13に重金属から成る真空内X線遮蔽板47が設けられ、この真空内X線遮蔽板47にX線取出部24が設けられている。そして、X線取出部24と対向する真空室11の壁部25には、X線透過膜26を備えたX線取出窓27が設けられている。
【0015】
電子放出素子15から発生した電子ビームeは、レンズ電極19によるレンズ作用を受け、アノード電極20の透過型ターゲット13の部分で最終電位の高さに加速される。透過型ターゲット13で発生したX線ビームxはX線取出部24を通り、更にX線取出窓27から大気中に取り出される。
【0016】
電子放出素子15は図2に示すように素子アレイ16上に二次元的に配列されている。近年のナノテクノロジの進歩に伴って、決められた位置にナノメータ(nm)サイズの微細な構造体をデバイスプロセスによって形成することが可能であり、電子放出素子15はこのナノテクノロジを使って製作され得る。また、これらの電子放出素子15のそれぞれは、駆動部17を介して供給される、後述する駆動信号S1、S2によって個別に電子放出量の制御が行われる。即ち、駆動信号S1、S2のマトリックス信号により素子アレイ16の電子放出量を個別に制御することで、各X線ビームのオン/オフを制御できることになる。
【0017】
図3に、電子放出素子15として採用可能な素子構造の例のいくつかを示す。図3の(A)はスピント型の電子源として代表されるようなコーン状のニードルを持つ電子放出素子15の構成を示す図である。Siを材料とした素子基板31上に絶縁体32と引出電極33が設けられ、その中心のμmサイズの溝に金属や半導体材料から成る先端径が数10nmの円錐状のエミッタ34がデバイス製作のプロセスを用いて形成されている。
【0018】
図3の(B)は、カーボンナノチューブ型の電子放出素子15の構成を示す図である。エミッタ35の材料として、数10nmの微細な構造体から成るカーボンナノチューブを用いたものであり、エミッタ35が、素子基板31上の、引出電極36の中心に形成されている。
【0019】
これらのスピント型素子とカーボンナノチューブ型素子は、引出電極33、36に数10〜数100Vの電圧を印加することで、エミッタ34、35の先端に高電界が印加され、電界放出現象によって電子ビームeが放出される。
【0020】
更に、図3の(C)は表面伝導型の電子放出素子15の構成を示す図である。ガラス素子基板39の上に形成した薄膜電極37の隙間に、ナノ粒子から成る微細な構造体がエミッタ38として形成されている。この表面伝導型素子は電極間に10数Vの電圧を印加することで、電極間の微粒子で形成された微細なギャップに高電界が印加され、それによって伝導電子が発生する。同時に、真空中に電子ビームeが放出され、比較的低電圧で電子放出を制御することができる。
【0021】
図4は、図3により上述したスピント型素子、カーボンナノチューブ型素子、表面伝導型素子の何れかの素子を用いた時の素子間の電圧電流特性の違いの例を示している。複数の電子放出素子でそれぞれが一定の放射電流を得るためには、平均の駆動電圧Voに対して補正電圧ΔVを補正した電圧を、駆動電圧として電子放出素子15に供給することで、電子放出素子15のエミッション電流のばらつきを補正することができる。
【0022】
なお、電子放出素子の構成は上述したものに限られるものではない。例えば、上述の電子放出素子以外のマルチX線ビーム発生用の電子源として、MIM(Metal Insulator Metal)型素子、MIS(Metal Insulator Semiconductor)型素子を適用できる。更に、半導体のPN接合、ショットキー接合型、ナノ炭素繊維からなるカーボン系薄膜の電子源等、あらゆるタイプの冷陰極型電子源を、マルチX線ビーム発生用の電子源として適用することが可能である。
【0023】
上述のような冷陰極型電子放出素子を電子源としたX線発生装置は、カソードを加熱せずに室温で、しかも電子放出素子に電圧を供給することで電子が放出するので、X線発生のための待ち時間を必要としない。また、カソード加熱のための電力を必要としないため、マルチX線源を構成しても低消費電力型のX線源を製作することができる。そして、これら電子放出素子は駆動電圧の高速駆動で電流のオン/オフ制御が可能であることから、電子放出素子を選択的に駆動することが可能で、かつ高速応答するマルチアレイ状のX線線源を製作することができる。
【0024】
本実施形態の透過型ターゲット13は、マルチ電子源としてのマルチ電子ビーム発生部12から出力された電子の照射に応じてX線を発生する複数のターゲットを含み、X線の発生個所に応じて異なる線質のX線を出力するターゲット部として機能する。図5、図7は、上述したマルチX線発生装置10において、発生するX線の線質を選択可能とするマルチX線源(ターゲット部)の構成を具体的に説明する図である。
【0025】
図5は、第1実施形態による透過型ターゲット13の構成を説明する図であり、マルチターゲットの一例を示した図である。図5の(A)に示されるように、マルチターゲットを適用した透過型ターゲット13においては、図1の電子放出素子15に対向する位置に、複数のターゲットがそれぞれ配置されている。そして、これらのターゲットは、ターゲットA41,ターゲットB42と異なる材料で構成されている。図5の(B)は、図5の(A)に示した透過型ターゲット13の断面図である。それぞれのターゲットA41、ターゲットB42は基板45の上にあり、X線・反射電子線遮蔽板46と真空内X線遮蔽板47の間に挟まれた構造となっている。透過型ターゲット13をX線・反射電子線遮蔽板46と真空内X線遮蔽板47とが密着性良く挟んだ構造とすることで、ターゲットで発生する熱を効率良く放散される。
【0026】
以上の構成によれば、複数の電子放出素子15から放出する電子ビームeの位置を指定することで異なる種類のターゲットからX線を取り出すことができる。即ち、透過型ターゲット13は、X線の発生個所に応じて異なる線質のX線を出力する。このため、本実施形態のマルチX線発生装置10によれば、一つのX線管球の中でいろいろなエネルギ特性を持ったX線を発生させることが出来る。図6は、本実施形態のマルチターゲットを用いたマルチX線発生方法により発生するX線スペクトルをエネルギと線量の特性で示した図であり、それぞれターゲットA41とターゲットB42とから発生するX線スペクトルを示している。ターゲット材料の原子番号の違いにより、特性X線Aと特性X線Bとのエネルギが異なるため、電子ビームの加速電圧(最大エネルギEo)が同じでも実効エネルギの異なるX線の線質を得ることが出来る。ターゲット材料の組み合わせとしては、代表的なCu,Mo,Rh,Pd,Sn,Ta,W,Pt、Au等の金属元素から組み合わせを選択することが挙げられる。なお、その他の元素または合金の組み合わせでも良いことは言うまでもない。
【0027】
以上のような第1実施形態によるマルチX線発生装置によれば、従来のX線管球を用いる方法と較べて容易に線質が選べることから、高画質のX線画像を簡便に得ることが出来る。
【0028】
[第2実施形態]
第1実施形態では、X線の発生個所に応じて異なる線質のX線を出力する透過型ターゲット13をマルチターゲットにより実現した。第2実施形態では、そのような透過型ターゲットを、X線に対して異なるX線吸収特性を有する複数のフィルタが配置されたマルチフィルタにより実現する例を説明する。
【0029】
図7は、第2実施形態による透過型ターゲット13の構成例を示す図であり、X線吸収板としてのマルチフィルタを用いた例を示したものである。図7の(A)に示されるように、透過型ターゲット13において、電子放出素子15に対向するターゲット位置に、それぞれフィルタが独立に配置されている。そして、これらのフィルタA43、フィルタB44は、異なる材料からなっている。図7の(B)は、この透過型ターゲット13の断面図である。フィルタA43,フィルタB44からなるマルチフィルタは、基板45の電子ビームが照射されるターゲット基板48と反対側の面に配置され、真空内X線遮蔽板47と基板45で直接挟まれる構造となっている。このような構造によれば、電子放出素子15から放出する電子ビームeの位置を指定することで異なるフィルタ位置からのX線を取り出すとこが出来る。従って、同じ種類のターゲットから発生したX線においても、フィルタA43とフィルタB44を透過したX線スペクトルはそれぞれのX線吸収特性の違いにより異なったスペクトルを一つのX線管球で得ることが出来る。
【0030】
図8は、このマルチフィルタを用いた時に得られるX線スペクトルを示したもので、フィルタAを透過したX線とフィルタBを通過したX線のスペクトルを示している。低エネルギ側のスペクトルをフィルタAとフィルタBでカットした場合の例であり、透過X線の実効エネルギは図8に示すように異なったものを得ることが出来る。代表的な組み合わせとしては、Moターゲットを用いてフィルタAにMo、フィルタBにCuをセットした場合、フィルタAでは、特性X線と近接した低エネルギ側の線量がカットされるのに対し、フィルタBではやや離れた位置からカットされる。これらのフィルタの材料と材質の厚さは、望ましいスペクトルに合わせて自由に選択することが出来るこのことから、このマルチフィルタを使うことで実効エネルギの異なるX線スペクトルを自由に形成することが出来る。
【0031】
上で述べたマルチターゲットとマルチフィルタの材料とその組み合わせは自由であり、X線の撮影条件の応じて組み合わせることが望ましい。また、第1実施形態のマルチターゲットと第2実施形態のマルチフィルタを組み合わせて、より多様なX線スペクトルのX線を発生できるようにすることも可能である。
【0032】
以上のような第2実施形態によるマルチX線発生装置によれば、従来のX線管球を用いる方法と較べて容易に異なる実効エネルギのX線(異なる線質のX線)を選べることから、高画質のX線画像を簡便に得ることが出来る。
【0033】
[第3実施形態]
次に、このマルチ線質の特徴を持つX線源を応用した例について、図9から図11を用いて説明する。図9は、第3実施形態による透過型ターゲット13を示した図である。本実施形態では、第2実施形態で説明したマルチターゲットと第3実施形態で説明したマルチフィルタを組み合わせて透過型ターゲット13を構成した例が示されている。
【0034】
第3実施形態の透過型ターゲット13は、被写体の照射条件に適合するように、マルチターゲットとマルチフィルタを組み合わせたものである。本例では、X線の線質が硬い順(実効エネルギの高い順)に(3)、(2)、(1)とフィルタが配列されている。そして、ターゲット群A,B,Cのそれぞれにおいては、線質の硬い順に下から上に(cからaへ)ターゲットが配列されている。即ち、図9に示される透過型ターゲット13においては、複数種類の異なるターゲットが周期的に配置されている。なお、異なる特性のフィルタを周期的に配置するようにしてもよい。例えば、図9において、(1)、(2)、(3)をターゲット群として、線質の硬い順に(3)→(2)→(1)となるようにターゲットを配置する。そして、線質の硬い順に異なるフィルタがc→b→aと並ぶようにしてもよい。この様にターゲット群の中に周期的に異なるX線を発生する個所が配列していることで、個々のX線発生源の線質を被写体へのX線照射条件に合わせて切り替えて照射することが可能となる。
【0035】
このように構成されたマルチX線発生装置10は、例えば図10に示すようなマンモグラフィーのX線撮影装置に適用できる。このX線撮影装置は、図9に示すような透過型ターゲット13を備えたマルチX線発生装置10、2次元のX線センサ54、被写体55を圧迫する圧迫板56が支持台57に装着されている。2次元のX線センサ54は、マルチX線発生装置10から出力され、被写体55を介して検出面に到達したX線の線量に応じた電気信号を生成する2次元X線検出器である。被写体55のX線透過度は、図10において右から左に行くに従って高くなることから、この方向に従ってX線の実効エネルギーを低くしていくようにフィルタを配列する((3)→(1))ことで照射全領域に対して最適なX線線質で撮影することができる。このように照射全領域に対して最適なX線線質で撮影することは、被爆量を低減することと、高コントラストなX線画像を得るためには極めて有効である言える。
【0036】
図11は、図10のX線撮影装置を別の角度から示した図で、マルチX線発生装置の特徴を活かしてターゲット群Bとターゲット群Cの角度の異なったX線を用いて断層撮影を行う様子を示す図である。この場合のターゲット群B,Cにおける照射条件は、被写体に対して斜め照射となるため、ターゲット群Aで選択したX線線質とは異なったものを適用することが望ましが、本実施形態のマルチX線発生装置によれば、そのようなX線照射を容易に実現できる。
【0037】
[第4実施形態]
図12はマルチ線質の機能を備えたマルチX線発生装置10を備えたマルチX線撮影装置の構成例を示す図である。この撮影装置は図1で示すマルチX線発生装置10の前方には、マルチX線強度測定部71を備えた透過型X線検出器72が配置されている。そして、マルチX線発生装置10から出力され、不図示の被検体を介して検出面に到達したX線の線量に応じた電気信号を生成する2次元X線検出器73が配置されている。マルチX線強度測定部71は、X線取出窓27毎に設けられる。透過型X線検出器72、2次元X線検出器73はそれぞれX線検出信号処理部74、75を介して制御部76に接続されている。また、制御部76の出力は電子放出素子駆動回路77を介して駆動部17に接続されている。更に制御部76の出力は高電圧制御部78、79を介してそれぞれレンズ電極19、アノード電極20の高電圧導入部21、22に接続されている。
【0038】
透過型ターゲット13から発生したX線ビームxは、壁部25に設けられたX線取出窓27を通してマルチX線ビームxとして大気中に取り出され、マルチX線強度測定部71に向かう。X線ビームxは、透過型X線検出器72のマルチX線強度測定部71を透過した後に被検体に照射される。そして、被検体を透過したX線ビームxは2次元X線検出器73で検出され被検体の画像が得られる。
【0039】
しかし、X線線量を低減して高コントラスト画像を得るためには、被写体情報に基づいて、X線の線質と線量を最適化して行くことが必要である。制御部76は、図4に示したような電子放出素子15の電圧電流特性データ、被検体の部位、厚さを基に低線量で最適なコントラストを得るための、マルチ電子ビーム発生部12の駆動情報を保持する。そして、制御部76は、不図示の入力装置からユーザによる撮影部位の指定や撮影部位の厚みなどの情報を受け付けると、駆動情報を参照して、マルチ電子ビーム発生部12の各電子放出素子15の駆動条件(駆動の要否、印加電圧など)を決定する。そして、決定された駆動条件に従って、電子放出素子駆動回路77を制御する。電子放出素子駆動回路77は、制御部76の制御下で、駆動信号S1、S2を発生し、これらを駆動部17に供給する。更に、制御部76は、実際に発生したX線の強度を、マルチX線強度測定部71及びX線検出信号処理部74により測定し、各電子放出素子の駆動電圧を補正する。これにより、被検体の各部位に対して、最適なX線照射条件に沿った設定でX線画像の撮影を行うことが出来る。
【0040】
また、制御部76は、マルチX線強度測定部71の計測結果であるところのX線の強度に基づいて、2次元X線検出器73からの各信号を補正する。即ち、制御部76は、マルチX線強度測定部71の測定結果に基づいて、異なる線質からなる複数のX線の線量に応じた電気信号を数値処理してX線画像を形成する。ここで、同質検体を異なる線質で撮影した場合、得られるX線画像は照射するX線の実効エネルギーが違うためにコントラストの異なった像として観測される。そこで異なる線質においてもコントラストが同一の画像として得られるように取得画像ごとにコントラストの範囲を補正(圧縮、拡大)する処理を行っている。これにより、X線の線質が異なることによるX線画像への影響を排除することができる。なお、透過型X線検出器72を設けない場合には、制御部76は、自身が指示した電子放出素子の駆動状態と、各電子放出素子の電圧電流特性、ターゲットやフィルタの種類に基づいて2次元X線検出器73からの各信号を補正するようにしてもよい。即ち、制御部76は、マルチ電子源における各電子源の駆動条件に基づいて、異なる線質からなる複数のX線の線量に応じた電気信号を数値処理してX線画像を形成する。
【0041】
図14は、制御部76によるX線撮影処理の手順を説明するフローチャートである。ステップS1401において、制御部76は不図示の操作部を介してユーザが指示した撮影部位を受け付ける。ステップS1402において、制御部76は、マルチ電子ビーム発生部12の駆動情報を参照して、マルチ電子ビーム発生部12の駆動条件(駆動パターン)を設定する。駆動情報テーブル1400には、撮影部位と駆動条件(バターン情報)とが対となって登録されており、撮影部位を特定することで対応する駆動条件を得ることができる。駆動条件には、マルチ電子ビーム発生部12における複数の電子放出素子の各々の駆動のON/OFFや、印加する電圧(電流)、X線の線質を決めるターゲットやフィルター情報等が含まれている。
【0042】
ステップS1403において、制御部76は、ステップS1402で取得した駆動条件でマルチ電子ビーム発生部12を駆動するよう電子放出素子駆動回路77を制御する。ステップS1404において、制御部76は、上記駆動に応じたマルチX線強度測定部71の測定結果として、X線強度の分布を取得する。また、ステップS1405において、制御部76は上記駆動に応じた2次元X線検出器73の検出結果として、X線検出信号処理部75よりX線検出信号を取得する。そして、ステップS1406において、制御部76は、X線強度の分布を用いてX線検出信号を補正し、補正されたX線検出信号を用いてX線画像データを生成する。また、ステップS1407において、X線強度の分布に基づいて、駆動情報テーブル1400の駆動条件を、必要に応じて修正する。例えば、測定されたX線の強度分布と、指定された撮影部位に対して要求されるX線強度分布とにずれがある場合に、そのずれを解消するように駆動条件を修正する。
【0043】
以上のように、第4実施形態のマルチX線発生装置10を用いたX線撮影装置は、被検体とその部位の条件に応じて、最適なX線スペクトルを発生するように電子放出素子駆動回路77の駆動条件や駆動する素子領域が設定される。即ち、被検体とその部位の条件に応じて電子放出素子の駆動条件を指定できる、線質可変型の平面型X線源を備えたX線撮影装置を実現することが出来る。
【0044】
以上のように、第3、第4実施形態によれば、被写体の形状と部位情報ごとにX線の吸収条件と照射角度に応じて、最適な線質のX線を選択して被写体に照射することができる。このため、低線量で高コントラストのX線画像を形成するX線撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1実施形態によるマルチX線発生装置の構成例を示す図である。
【図2】素子基板の平面図である。
【図3】電子放出素子の構成例を示す図であって、(A)はスピント型素子の構成図、(B)はカーボンナノチューブ型素子の構成図、(C)は表面伝導型素子の構成図である。
【図4】マルチ電子放出素子の電圧電流特性のグラフ図である。
【図5】マルチターゲットによる透過型ターゲットの構成例を示す図であって、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【図6】マルチターゲット方式におけるX線スペクトルの例を示す図である。
【図7】マルチフィルタによる透過型ターゲットの構成例を示す図であって、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【図8】マルチフィルタによる透過型ターゲットのX線スペクトルの例を示す図である。
【図9】第3実施形態による透過型ターゲットの構成例を示す図である。
【図10】第3実施形態によるX線撮影装置の構成例を示す図である。
【図11】第3実施形態によるX線撮影装置の照射部を説明する図である。
【図12】第4実施形態によるマルチX線撮影装置の全体構成の例を示す図である。
【図13】異なる線質のX線を発生可能なX線発生装置の従来例を示す図である。
【図14】第4実施形態の制御部によるX線撮影処理を説明するフローチャートである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線源を用いた医療機器や産業機器分野の非破壊X線撮影、診断応用等に使用するマルチX線発生装置と該装置を用いたX線撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、X線管球は電子源に熱電子源を用いたものであり、高温度に加熱したフィラメントから放出される熱電子をウエネルト電極、引出電極、加速電極、及びレンズ電極を通して、電子ビームを高エネルギに加速する。そして、所望の形状に電子ビームを成形した後に、金属から成るX線ターゲットに照射してX線を発生させている。
【0003】
近年、この熱電子源に代る電子源として冷陰極型電子源が開発され、フラットパネルディテクタ(FPD)との組み合わせへの応用として広く研究されている。冷陰極の代表的なものとして、数10nmの針の先端に高電界を掛けて電子を取り出すスピント(Spindt)型タイプの電子源が知られている。更に、カーボンナノチューブ(CNT)を材料とした電子放出エミッタや、ガラス基板の表面に名のメーター(nm)オーダの微細構造を形成して、電子を放出する表面伝導型電子源などがある。
【0004】
これらの電子源への応用として、スピント型電子源やカーボンナノチューブ型電子源を用いて単一の電子ビームを形成してX線を取り出すことが、特許文献1、2に提案されている。そして、これらの冷陰極電子源を複数用いてマルチ電子源からの電子ビームをX線ターゲット上に照射してX線を発生させることも、特許文献3、非特許文献1に記載されている。
【0005】
そして更に、マルチX線源から相互干渉の無い特性の優れたマルチX線ビームを形成するX線装置が、特許文献4に記載されている。
【0006】
一方、従来から用いられている単焦点のX線源として、回転ターゲット型のX線源があるが、このX線源を用いて異なるX線の線質を発生する方法が提案されている。その具体的な方法として、図13に示されるように、一つの回転ターゲットに2種類のターゲット材料(102,102a)を配置してそれぞれに電子ビームを照射する方法が、特許文献5、特許文献6に記載されている。また、特許文献7には、一つの回転ターゲットの両面に異なるターゲット材料を配置して線質の異なるX線を発生する方法と、その応用方法が記載されている。
【特許文献1】特開平09−180894号公報
【特許文献2】特開2004−329784号公報
【特許文献3】特開平08−264139号公報
【特許文献4】特開2007−265981号公報
【特許文献5】特開平05−028939号公報
【特許文献6】特開平05−036368号公報
【特許文献7】特開平01−204649号公報
【非特許文献1】Applied Physics Letters 86,184104(2005),J.Zhang 「Stationaryscanningx-ray source based on carbonnanotube field emitters」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
単焦点のX線源として代表的な回転ターゲット型のX線源においては、電子源やターゲット構造等の形状による制約のために、一つの管球から得られる線質の種類は2種類程度が限界であった。また、X線源の焦点の数も2焦点程度に限られるため、被写体の部位と形状に合わせて線質と線量の条件を調整することが困難であり、質の高いX線画像を得ることが難しかった。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、X線源における線質と照射位置の選択の自由度を増すことで、低線量で高コントラストのX線画像を高速に得ることを可能としたX線発生装置及びX線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の一態様によるマルチX線発生装置は、以下の構成を有する。即ち、
2次元に配置された複数の電子源を有し、供給された駆動信号に応じて前記複数の電子源を選択的に駆動することにより、駆動された電子源から電子を出力するマルチ電子源と、
前記複数の電子源に対向して2次元に配置された複数のターゲットを有し、前記マルチ電子源から出力された電子の照射に応じてX線を発生し、X線の発生個所に応じて異なる線質のX線を出力するターゲット部とを備え、
前記マルチ電子源における電子源の選択的な駆動により、前記ターゲット部からのX線の発生個所と線質が制御され。
【0010】
また、上記の目的を達成するための本発明の他の態様によるX線撮影装置は、以下の構成を備える。すなわち、
上記のマルチX線発生装置と、
前記マルチX線発生装置から出力され、検出面に到達したX線の線量に応じた電気信号を生成する2次元X線検出器と、
駆動条件に従って駆動信号を生成し、前記マルチ電子源に供給することにより、各電子源を駆動する駆動手段とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、X線源における線質と照射位置の選択の自由度を増すことができ、低線量で高コントラストのX線画像を高速に得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1はマルチX線源としての、マルチX線発生装置10の構成例を示す図である。図1において、真空室11内には、マルチ電子源としてのマルチ電子ビーム発生部12、マルチX線源としての透過型ターゲット13が配置されている。マルチ電子ビーム発生部12は、素子基板14と、その上に複数個の電子放出素子15が配列された素子アレイ16により構成される。電子放出素子15は電子源として機能するものであり、駆動部17により駆動が制御されるようになっている。電子放出素子15から発生する電子ビームeを制御するために絶縁体18に固定されたレンズ電極19とアノード電極20が設けられる。これらのレンズ電極19、アノード電極20には、高電圧導入部21、22を介して高電圧が供給されている。
【0014】
発生した電子ビームeが衝突する透過型ターゲット13は、電子ビームeに対応して離散的に配置されている。更に、透過型ターゲット13に重金属から成る真空内X線遮蔽板47が設けられ、この真空内X線遮蔽板47にX線取出部24が設けられている。そして、X線取出部24と対向する真空室11の壁部25には、X線透過膜26を備えたX線取出窓27が設けられている。
【0015】
電子放出素子15から発生した電子ビームeは、レンズ電極19によるレンズ作用を受け、アノード電極20の透過型ターゲット13の部分で最終電位の高さに加速される。透過型ターゲット13で発生したX線ビームxはX線取出部24を通り、更にX線取出窓27から大気中に取り出される。
【0016】
電子放出素子15は図2に示すように素子アレイ16上に二次元的に配列されている。近年のナノテクノロジの進歩に伴って、決められた位置にナノメータ(nm)サイズの微細な構造体をデバイスプロセスによって形成することが可能であり、電子放出素子15はこのナノテクノロジを使って製作され得る。また、これらの電子放出素子15のそれぞれは、駆動部17を介して供給される、後述する駆動信号S1、S2によって個別に電子放出量の制御が行われる。即ち、駆動信号S1、S2のマトリックス信号により素子アレイ16の電子放出量を個別に制御することで、各X線ビームのオン/オフを制御できることになる。
【0017】
図3に、電子放出素子15として採用可能な素子構造の例のいくつかを示す。図3の(A)はスピント型の電子源として代表されるようなコーン状のニードルを持つ電子放出素子15の構成を示す図である。Siを材料とした素子基板31上に絶縁体32と引出電極33が設けられ、その中心のμmサイズの溝に金属や半導体材料から成る先端径が数10nmの円錐状のエミッタ34がデバイス製作のプロセスを用いて形成されている。
【0018】
図3の(B)は、カーボンナノチューブ型の電子放出素子15の構成を示す図である。エミッタ35の材料として、数10nmの微細な構造体から成るカーボンナノチューブを用いたものであり、エミッタ35が、素子基板31上の、引出電極36の中心に形成されている。
【0019】
これらのスピント型素子とカーボンナノチューブ型素子は、引出電極33、36に数10〜数100Vの電圧を印加することで、エミッタ34、35の先端に高電界が印加され、電界放出現象によって電子ビームeが放出される。
【0020】
更に、図3の(C)は表面伝導型の電子放出素子15の構成を示す図である。ガラス素子基板39の上に形成した薄膜電極37の隙間に、ナノ粒子から成る微細な構造体がエミッタ38として形成されている。この表面伝導型素子は電極間に10数Vの電圧を印加することで、電極間の微粒子で形成された微細なギャップに高電界が印加され、それによって伝導電子が発生する。同時に、真空中に電子ビームeが放出され、比較的低電圧で電子放出を制御することができる。
【0021】
図4は、図3により上述したスピント型素子、カーボンナノチューブ型素子、表面伝導型素子の何れかの素子を用いた時の素子間の電圧電流特性の違いの例を示している。複数の電子放出素子でそれぞれが一定の放射電流を得るためには、平均の駆動電圧Voに対して補正電圧ΔVを補正した電圧を、駆動電圧として電子放出素子15に供給することで、電子放出素子15のエミッション電流のばらつきを補正することができる。
【0022】
なお、電子放出素子の構成は上述したものに限られるものではない。例えば、上述の電子放出素子以外のマルチX線ビーム発生用の電子源として、MIM(Metal Insulator Metal)型素子、MIS(Metal Insulator Semiconductor)型素子を適用できる。更に、半導体のPN接合、ショットキー接合型、ナノ炭素繊維からなるカーボン系薄膜の電子源等、あらゆるタイプの冷陰極型電子源を、マルチX線ビーム発生用の電子源として適用することが可能である。
【0023】
上述のような冷陰極型電子放出素子を電子源としたX線発生装置は、カソードを加熱せずに室温で、しかも電子放出素子に電圧を供給することで電子が放出するので、X線発生のための待ち時間を必要としない。また、カソード加熱のための電力を必要としないため、マルチX線源を構成しても低消費電力型のX線源を製作することができる。そして、これら電子放出素子は駆動電圧の高速駆動で電流のオン/オフ制御が可能であることから、電子放出素子を選択的に駆動することが可能で、かつ高速応答するマルチアレイ状のX線線源を製作することができる。
【0024】
本実施形態の透過型ターゲット13は、マルチ電子源としてのマルチ電子ビーム発生部12から出力された電子の照射に応じてX線を発生する複数のターゲットを含み、X線の発生個所に応じて異なる線質のX線を出力するターゲット部として機能する。図5、図7は、上述したマルチX線発生装置10において、発生するX線の線質を選択可能とするマルチX線源(ターゲット部)の構成を具体的に説明する図である。
【0025】
図5は、第1実施形態による透過型ターゲット13の構成を説明する図であり、マルチターゲットの一例を示した図である。図5の(A)に示されるように、マルチターゲットを適用した透過型ターゲット13においては、図1の電子放出素子15に対向する位置に、複数のターゲットがそれぞれ配置されている。そして、これらのターゲットは、ターゲットA41,ターゲットB42と異なる材料で構成されている。図5の(B)は、図5の(A)に示した透過型ターゲット13の断面図である。それぞれのターゲットA41、ターゲットB42は基板45の上にあり、X線・反射電子線遮蔽板46と真空内X線遮蔽板47の間に挟まれた構造となっている。透過型ターゲット13をX線・反射電子線遮蔽板46と真空内X線遮蔽板47とが密着性良く挟んだ構造とすることで、ターゲットで発生する熱を効率良く放散される。
【0026】
以上の構成によれば、複数の電子放出素子15から放出する電子ビームeの位置を指定することで異なる種類のターゲットからX線を取り出すことができる。即ち、透過型ターゲット13は、X線の発生個所に応じて異なる線質のX線を出力する。このため、本実施形態のマルチX線発生装置10によれば、一つのX線管球の中でいろいろなエネルギ特性を持ったX線を発生させることが出来る。図6は、本実施形態のマルチターゲットを用いたマルチX線発生方法により発生するX線スペクトルをエネルギと線量の特性で示した図であり、それぞれターゲットA41とターゲットB42とから発生するX線スペクトルを示している。ターゲット材料の原子番号の違いにより、特性X線Aと特性X線Bとのエネルギが異なるため、電子ビームの加速電圧(最大エネルギEo)が同じでも実効エネルギの異なるX線の線質を得ることが出来る。ターゲット材料の組み合わせとしては、代表的なCu,Mo,Rh,Pd,Sn,Ta,W,Pt、Au等の金属元素から組み合わせを選択することが挙げられる。なお、その他の元素または合金の組み合わせでも良いことは言うまでもない。
【0027】
以上のような第1実施形態によるマルチX線発生装置によれば、従来のX線管球を用いる方法と較べて容易に線質が選べることから、高画質のX線画像を簡便に得ることが出来る。
【0028】
[第2実施形態]
第1実施形態では、X線の発生個所に応じて異なる線質のX線を出力する透過型ターゲット13をマルチターゲットにより実現した。第2実施形態では、そのような透過型ターゲットを、X線に対して異なるX線吸収特性を有する複数のフィルタが配置されたマルチフィルタにより実現する例を説明する。
【0029】
図7は、第2実施形態による透過型ターゲット13の構成例を示す図であり、X線吸収板としてのマルチフィルタを用いた例を示したものである。図7の(A)に示されるように、透過型ターゲット13において、電子放出素子15に対向するターゲット位置に、それぞれフィルタが独立に配置されている。そして、これらのフィルタA43、フィルタB44は、異なる材料からなっている。図7の(B)は、この透過型ターゲット13の断面図である。フィルタA43,フィルタB44からなるマルチフィルタは、基板45の電子ビームが照射されるターゲット基板48と反対側の面に配置され、真空内X線遮蔽板47と基板45で直接挟まれる構造となっている。このような構造によれば、電子放出素子15から放出する電子ビームeの位置を指定することで異なるフィルタ位置からのX線を取り出すとこが出来る。従って、同じ種類のターゲットから発生したX線においても、フィルタA43とフィルタB44を透過したX線スペクトルはそれぞれのX線吸収特性の違いにより異なったスペクトルを一つのX線管球で得ることが出来る。
【0030】
図8は、このマルチフィルタを用いた時に得られるX線スペクトルを示したもので、フィルタAを透過したX線とフィルタBを通過したX線のスペクトルを示している。低エネルギ側のスペクトルをフィルタAとフィルタBでカットした場合の例であり、透過X線の実効エネルギは図8に示すように異なったものを得ることが出来る。代表的な組み合わせとしては、Moターゲットを用いてフィルタAにMo、フィルタBにCuをセットした場合、フィルタAでは、特性X線と近接した低エネルギ側の線量がカットされるのに対し、フィルタBではやや離れた位置からカットされる。これらのフィルタの材料と材質の厚さは、望ましいスペクトルに合わせて自由に選択することが出来るこのことから、このマルチフィルタを使うことで実効エネルギの異なるX線スペクトルを自由に形成することが出来る。
【0031】
上で述べたマルチターゲットとマルチフィルタの材料とその組み合わせは自由であり、X線の撮影条件の応じて組み合わせることが望ましい。また、第1実施形態のマルチターゲットと第2実施形態のマルチフィルタを組み合わせて、より多様なX線スペクトルのX線を発生できるようにすることも可能である。
【0032】
以上のような第2実施形態によるマルチX線発生装置によれば、従来のX線管球を用いる方法と較べて容易に異なる実効エネルギのX線(異なる線質のX線)を選べることから、高画質のX線画像を簡便に得ることが出来る。
【0033】
[第3実施形態]
次に、このマルチ線質の特徴を持つX線源を応用した例について、図9から図11を用いて説明する。図9は、第3実施形態による透過型ターゲット13を示した図である。本実施形態では、第2実施形態で説明したマルチターゲットと第3実施形態で説明したマルチフィルタを組み合わせて透過型ターゲット13を構成した例が示されている。
【0034】
第3実施形態の透過型ターゲット13は、被写体の照射条件に適合するように、マルチターゲットとマルチフィルタを組み合わせたものである。本例では、X線の線質が硬い順(実効エネルギの高い順)に(3)、(2)、(1)とフィルタが配列されている。そして、ターゲット群A,B,Cのそれぞれにおいては、線質の硬い順に下から上に(cからaへ)ターゲットが配列されている。即ち、図9に示される透過型ターゲット13においては、複数種類の異なるターゲットが周期的に配置されている。なお、異なる特性のフィルタを周期的に配置するようにしてもよい。例えば、図9において、(1)、(2)、(3)をターゲット群として、線質の硬い順に(3)→(2)→(1)となるようにターゲットを配置する。そして、線質の硬い順に異なるフィルタがc→b→aと並ぶようにしてもよい。この様にターゲット群の中に周期的に異なるX線を発生する個所が配列していることで、個々のX線発生源の線質を被写体へのX線照射条件に合わせて切り替えて照射することが可能となる。
【0035】
このように構成されたマルチX線発生装置10は、例えば図10に示すようなマンモグラフィーのX線撮影装置に適用できる。このX線撮影装置は、図9に示すような透過型ターゲット13を備えたマルチX線発生装置10、2次元のX線センサ54、被写体55を圧迫する圧迫板56が支持台57に装着されている。2次元のX線センサ54は、マルチX線発生装置10から出力され、被写体55を介して検出面に到達したX線の線量に応じた電気信号を生成する2次元X線検出器である。被写体55のX線透過度は、図10において右から左に行くに従って高くなることから、この方向に従ってX線の実効エネルギーを低くしていくようにフィルタを配列する((3)→(1))ことで照射全領域に対して最適なX線線質で撮影することができる。このように照射全領域に対して最適なX線線質で撮影することは、被爆量を低減することと、高コントラストなX線画像を得るためには極めて有効である言える。
【0036】
図11は、図10のX線撮影装置を別の角度から示した図で、マルチX線発生装置の特徴を活かしてターゲット群Bとターゲット群Cの角度の異なったX線を用いて断層撮影を行う様子を示す図である。この場合のターゲット群B,Cにおける照射条件は、被写体に対して斜め照射となるため、ターゲット群Aで選択したX線線質とは異なったものを適用することが望ましが、本実施形態のマルチX線発生装置によれば、そのようなX線照射を容易に実現できる。
【0037】
[第4実施形態]
図12はマルチ線質の機能を備えたマルチX線発生装置10を備えたマルチX線撮影装置の構成例を示す図である。この撮影装置は図1で示すマルチX線発生装置10の前方には、マルチX線強度測定部71を備えた透過型X線検出器72が配置されている。そして、マルチX線発生装置10から出力され、不図示の被検体を介して検出面に到達したX線の線量に応じた電気信号を生成する2次元X線検出器73が配置されている。マルチX線強度測定部71は、X線取出窓27毎に設けられる。透過型X線検出器72、2次元X線検出器73はそれぞれX線検出信号処理部74、75を介して制御部76に接続されている。また、制御部76の出力は電子放出素子駆動回路77を介して駆動部17に接続されている。更に制御部76の出力は高電圧制御部78、79を介してそれぞれレンズ電極19、アノード電極20の高電圧導入部21、22に接続されている。
【0038】
透過型ターゲット13から発生したX線ビームxは、壁部25に設けられたX線取出窓27を通してマルチX線ビームxとして大気中に取り出され、マルチX線強度測定部71に向かう。X線ビームxは、透過型X線検出器72のマルチX線強度測定部71を透過した後に被検体に照射される。そして、被検体を透過したX線ビームxは2次元X線検出器73で検出され被検体の画像が得られる。
【0039】
しかし、X線線量を低減して高コントラスト画像を得るためには、被写体情報に基づいて、X線の線質と線量を最適化して行くことが必要である。制御部76は、図4に示したような電子放出素子15の電圧電流特性データ、被検体の部位、厚さを基に低線量で最適なコントラストを得るための、マルチ電子ビーム発生部12の駆動情報を保持する。そして、制御部76は、不図示の入力装置からユーザによる撮影部位の指定や撮影部位の厚みなどの情報を受け付けると、駆動情報を参照して、マルチ電子ビーム発生部12の各電子放出素子15の駆動条件(駆動の要否、印加電圧など)を決定する。そして、決定された駆動条件に従って、電子放出素子駆動回路77を制御する。電子放出素子駆動回路77は、制御部76の制御下で、駆動信号S1、S2を発生し、これらを駆動部17に供給する。更に、制御部76は、実際に発生したX線の強度を、マルチX線強度測定部71及びX線検出信号処理部74により測定し、各電子放出素子の駆動電圧を補正する。これにより、被検体の各部位に対して、最適なX線照射条件に沿った設定でX線画像の撮影を行うことが出来る。
【0040】
また、制御部76は、マルチX線強度測定部71の計測結果であるところのX線の強度に基づいて、2次元X線検出器73からの各信号を補正する。即ち、制御部76は、マルチX線強度測定部71の測定結果に基づいて、異なる線質からなる複数のX線の線量に応じた電気信号を数値処理してX線画像を形成する。ここで、同質検体を異なる線質で撮影した場合、得られるX線画像は照射するX線の実効エネルギーが違うためにコントラストの異なった像として観測される。そこで異なる線質においてもコントラストが同一の画像として得られるように取得画像ごとにコントラストの範囲を補正(圧縮、拡大)する処理を行っている。これにより、X線の線質が異なることによるX線画像への影響を排除することができる。なお、透過型X線検出器72を設けない場合には、制御部76は、自身が指示した電子放出素子の駆動状態と、各電子放出素子の電圧電流特性、ターゲットやフィルタの種類に基づいて2次元X線検出器73からの各信号を補正するようにしてもよい。即ち、制御部76は、マルチ電子源における各電子源の駆動条件に基づいて、異なる線質からなる複数のX線の線量に応じた電気信号を数値処理してX線画像を形成する。
【0041】
図14は、制御部76によるX線撮影処理の手順を説明するフローチャートである。ステップS1401において、制御部76は不図示の操作部を介してユーザが指示した撮影部位を受け付ける。ステップS1402において、制御部76は、マルチ電子ビーム発生部12の駆動情報を参照して、マルチ電子ビーム発生部12の駆動条件(駆動パターン)を設定する。駆動情報テーブル1400には、撮影部位と駆動条件(バターン情報)とが対となって登録されており、撮影部位を特定することで対応する駆動条件を得ることができる。駆動条件には、マルチ電子ビーム発生部12における複数の電子放出素子の各々の駆動のON/OFFや、印加する電圧(電流)、X線の線質を決めるターゲットやフィルター情報等が含まれている。
【0042】
ステップS1403において、制御部76は、ステップS1402で取得した駆動条件でマルチ電子ビーム発生部12を駆動するよう電子放出素子駆動回路77を制御する。ステップS1404において、制御部76は、上記駆動に応じたマルチX線強度測定部71の測定結果として、X線強度の分布を取得する。また、ステップS1405において、制御部76は上記駆動に応じた2次元X線検出器73の検出結果として、X線検出信号処理部75よりX線検出信号を取得する。そして、ステップS1406において、制御部76は、X線強度の分布を用いてX線検出信号を補正し、補正されたX線検出信号を用いてX線画像データを生成する。また、ステップS1407において、X線強度の分布に基づいて、駆動情報テーブル1400の駆動条件を、必要に応じて修正する。例えば、測定されたX線の強度分布と、指定された撮影部位に対して要求されるX線強度分布とにずれがある場合に、そのずれを解消するように駆動条件を修正する。
【0043】
以上のように、第4実施形態のマルチX線発生装置10を用いたX線撮影装置は、被検体とその部位の条件に応じて、最適なX線スペクトルを発生するように電子放出素子駆動回路77の駆動条件や駆動する素子領域が設定される。即ち、被検体とその部位の条件に応じて電子放出素子の駆動条件を指定できる、線質可変型の平面型X線源を備えたX線撮影装置を実現することが出来る。
【0044】
以上のように、第3、第4実施形態によれば、被写体の形状と部位情報ごとにX線の吸収条件と照射角度に応じて、最適な線質のX線を選択して被写体に照射することができる。このため、低線量で高コントラストのX線画像を形成するX線撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1実施形態によるマルチX線発生装置の構成例を示す図である。
【図2】素子基板の平面図である。
【図3】電子放出素子の構成例を示す図であって、(A)はスピント型素子の構成図、(B)はカーボンナノチューブ型素子の構成図、(C)は表面伝導型素子の構成図である。
【図4】マルチ電子放出素子の電圧電流特性のグラフ図である。
【図5】マルチターゲットによる透過型ターゲットの構成例を示す図であって、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【図6】マルチターゲット方式におけるX線スペクトルの例を示す図である。
【図7】マルチフィルタによる透過型ターゲットの構成例を示す図であって、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【図8】マルチフィルタによる透過型ターゲットのX線スペクトルの例を示す図である。
【図9】第3実施形態による透過型ターゲットの構成例を示す図である。
【図10】第3実施形態によるX線撮影装置の構成例を示す図である。
【図11】第3実施形態によるX線撮影装置の照射部を説明する図である。
【図12】第4実施形態によるマルチX線撮影装置の全体構成の例を示す図である。
【図13】異なる線質のX線を発生可能なX線発生装置の従来例を示す図である。
【図14】第4実施形態の制御部によるX線撮影処理を説明するフローチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元に配置された複数の電子源を有し、供給された駆動信号に応じて前記複数の電子源を選択的に駆動することにより、駆動された電子源から電子を出力するマルチ電子源と、
前記複数の電子源に対向して2次元に配置された複数のターゲットを有し、前記マルチ電子源から出力された電子の照射に応じてX線を発生し、X線の発生個所に応じて異なる線質のX線を出力するターゲット部とを備え、
前記マルチ電子源における電子源の選択的な駆動により、前記ターゲット部からのX線の発生個所と線質が制御されることを特徴とするマルチX線発生装置。
【請求項2】
前記複数のターゲットは異なる材料からなる少なくとも2種類のターゲットを含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチX線発生装置。
【請求項3】
前記ターゲット部において、異なる材料のターゲットが周期的に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のマルチX線発生装置。
【請求項4】
前記ターゲット部は、前記複数のターゲットに対応した複数のフィルタを有し、前記複数のフィルタは、X線に対して異なる特性を有する少なくとも2種類のフィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチX線発生装置。
【請求項5】
前記複数のフィルタは、異なる特性を有するフィルタが周期的に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のマルチX線発生装置。
【請求項6】
前記複数の電子源の各々は、冷陰極からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のマルチX線発生装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のマルチX線発生装置と、
前記マルチX線発生装置から出力され、検出面に到達したX線の線量に応じた電気信号を生成する2次元X線検出器と、
駆動条件に従って駆動信号を生成し、前記マルチ電子源に供給することにより、各電子源を駆動する駆動手段とを備えることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項8】
撮影する部位の情報に基づいて前記マルチ電子源における各電子源の駆動条件を設定する設定手段を更に備え、
前記駆動手段は、前記設定手段によって設定された駆動条件に従って、前記マルチ電子源の各電子源を駆動することを特徴とする請求項7に記載のX線撮影装置。
【請求項9】
前記マルチX線発生装置と被検体との間で、前記マルチX線発生装置から出力されたX線の強度を測定する測定手段を更に備え、
前記駆動手段は、前記測定手段による測定結果に基づいて、前記撮影する部位に対応した駆動条件を補正することを特徴とする請求項8に記載のX線撮影装置。
【請求項10】
前記2次元X線検出器で生成された電気信号からX線画像を生成する生成手段を更に備えることを特徴とする請求項7に記載のX線撮影装置。
【請求項11】
前記マルチX線発生装置と被検体との間で、前記マルチX線発生装置から出力されたX線の強度を測定する測定手段を更に備え、
前記生成手段は、異なる線質のX線の線量に応じた電気信号を、前記測定手段による測定結果に基づいて数値処理してX線画像を形成することを特徴とする請求項10に記載のX線撮影装置。
【請求項12】
前記生成手段は、異なる線質のX線の線量に応じた電気信号を、前記マルチ電子源における各電子源の駆動条件に基づいて数値処理してX線画像を形成することを特徴とする請求項10に記載のX線撮影装置。
【請求項1】
2次元に配置された複数の電子源を有し、供給された駆動信号に応じて前記複数の電子源を選択的に駆動することにより、駆動された電子源から電子を出力するマルチ電子源と、
前記複数の電子源に対向して2次元に配置された複数のターゲットを有し、前記マルチ電子源から出力された電子の照射に応じてX線を発生し、X線の発生個所に応じて異なる線質のX線を出力するターゲット部とを備え、
前記マルチ電子源における電子源の選択的な駆動により、前記ターゲット部からのX線の発生個所と線質が制御されることを特徴とするマルチX線発生装置。
【請求項2】
前記複数のターゲットは異なる材料からなる少なくとも2種類のターゲットを含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチX線発生装置。
【請求項3】
前記ターゲット部において、異なる材料のターゲットが周期的に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のマルチX線発生装置。
【請求項4】
前記ターゲット部は、前記複数のターゲットに対応した複数のフィルタを有し、前記複数のフィルタは、X線に対して異なる特性を有する少なくとも2種類のフィルタを含むことを特徴とする請求項1に記載のマルチX線発生装置。
【請求項5】
前記複数のフィルタは、異なる特性を有するフィルタが周期的に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のマルチX線発生装置。
【請求項6】
前記複数の電子源の各々は、冷陰極からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のマルチX線発生装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のマルチX線発生装置と、
前記マルチX線発生装置から出力され、検出面に到達したX線の線量に応じた電気信号を生成する2次元X線検出器と、
駆動条件に従って駆動信号を生成し、前記マルチ電子源に供給することにより、各電子源を駆動する駆動手段とを備えることを特徴とするX線撮影装置。
【請求項8】
撮影する部位の情報に基づいて前記マルチ電子源における各電子源の駆動条件を設定する設定手段を更に備え、
前記駆動手段は、前記設定手段によって設定された駆動条件に従って、前記マルチ電子源の各電子源を駆動することを特徴とする請求項7に記載のX線撮影装置。
【請求項9】
前記マルチX線発生装置と被検体との間で、前記マルチX線発生装置から出力されたX線の強度を測定する測定手段を更に備え、
前記駆動手段は、前記測定手段による測定結果に基づいて、前記撮影する部位に対応した駆動条件を補正することを特徴とする請求項8に記載のX線撮影装置。
【請求項10】
前記2次元X線検出器で生成された電気信号からX線画像を生成する生成手段を更に備えることを特徴とする請求項7に記載のX線撮影装置。
【請求項11】
前記マルチX線発生装置と被検体との間で、前記マルチX線発生装置から出力されたX線の強度を測定する測定手段を更に備え、
前記生成手段は、異なる線質のX線の線量に応じた電気信号を、前記測定手段による測定結果に基づいて数値処理してX線画像を形成することを特徴とする請求項10に記載のX線撮影装置。
【請求項12】
前記生成手段は、異なる線質のX線の線量に応じた電気信号を、前記マルチ電子源における各電子源の駆動条件に基づいて数値処理してX線画像を形成することを特徴とする請求項10に記載のX線撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−205992(P2009−205992A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48827(P2008−48827)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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