説明

マーク位置特定方法及び装置、並びにバランス修正方法及び装置

【課題】 回転体の外周面の傷や汚れにセンサが反応してもマークの位置を正しく特定するマーク位置特定方法及び装置を提供する。
【解決手段】 回転体の外周面に等間隔で配置されているマークの位置を特定するマーク位置特定方法であって、少なくともマークに反応するセンサで回転体の外周面をセンシングし、回転体の一回転中にセンサが反応した反応位置を記憶する(S105〜110)。次に、反応位置がマークの位置であると仮定した場合に理論的に特定される他のマークの位置について、それぞれ直近の反応位置との角度差を求め、求めた角度差を合計する。これを各反応位置について行う(S115〜S130)。次に各反応位置のうち、合計値が最も小さい反応位置をマークの位置として特定する(S135)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周に等間隔でマークが配置されている回転体のアンバランスを修正するバランス修正方法及び装置、並びにそれに用いるマーク位置特定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転体のアンバランスを測定してアンバランス修正位置及びアンバランス修正量を特定し、特定したアンバランス修正位置を特定したアンバランス修正量に応じて加工することにより、回転体のアンバランスを修正するバランス修正装置が知られている。アンバランスの修正は、例えばドリルやカッタ等の切削工具によって加工することによって修正する方法と錘を付けることによって修正する方法とがあり、アンバランス修正位置は修正する方法に応じて特定される。
バランス修正装置の修正対象となる回転体には、外周の任意の位置を修正可能なものもあるが、修正可能な位置が限定されるものもある。例えば、外周に金属部分と樹脂部分とが交互に配置されており、修正できるのは金属部分のみに限定されている回転体もある。樹脂部分と金属部分とが交互に配置されている場合、樹脂部分が一つでも判ればそれを基準にして外周上の任意の位置についてその位置が樹脂部分であるか金属部分であるかを特定できるので、従来のバランス修正装置は、特定したアンバランス修正位置の近傍の樹脂部分(マーク)をセンサで検出し、アンバランス修正位置が金属部分であるか否かを、検出した樹脂部分を基準として判定していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のバランス修正装置によると、回転体の外周面の傷や汚れにセンサが誤反応する場合があった。センサが誤反応するとアンバランス修正位置が金属部分であるか否かを判定するための基準がずれてしまうため、アンバランス修正位置が金属部分であるか否かを誤判定してしまうという問題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みて創作されたものであって、回転体の外周面の傷や汚れにセンサが反応してもマークの位置を正しく特定するマーク位置特定方法及び装置を提供することを目的とする。
【0004】
また、本発明の別の目的は、回転体の外周面の傷や汚れにセンサが反応しても正しい修正位置を修正するバランス修正方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1、2及び4に記載の発明によると、センサが回転体の外周面の傷や汚れに反応した反応位置の場合は、その反応位置がマークの位置であると仮定した場合に理論的に特定される他のマークの位置の近傍には他の反応位置がない可能性が高いので、その反応位置がマークの位置であると仮定した場合に理論的に特定される他のマークの位置とその直近の反応位置との角度差は大きくなる。従って理論的に特定される他のマークの位置についてそれぞれ求めた角度差を合計すると大きな値となる。逆に、マークに反応した反応位置の場合は、その反応位置がマークの位置であると仮定した場合に理論的に特定される他のマークの位置の近傍に他の反応位置があるため、理論的に特定される他のマークの位置とその直近の反応位置との角度差は小さくなる。従って、理論的に特定される他のマークの位置についてそれぞれ求めた角度差を合計すると小さな値となる。従って、反応位置を合計値で昇順に並べた場合の順位を表す数値がマークの個数を表す数値以下である反応位置は、いずれもマークの位置である可能性が高い。よってこのマーク位置特定方法によると、回転体の外周面の傷や汚れにセンサが反応してもマークの位置を正しく特定できる。
【0006】
請求項3に記載の発明によると、合計値が最も小さい反応位置はマークの位置である可能性が最も高いので、マークの位置をより正しく特定できる。
請求項5及び6に記載の発明では、請求項1〜4に記載の発明によりマークの位置を特定し、アンバランス修正位置にマークが配置されているか否かを特定したマークの位置に基づいて判定する。このため、例えばマーク部分は修正禁止である場合、誤ってマーク部分を修正してしまうことを防止できる。よってこの発明によると、回転体の外周面の傷や汚れにセンサが反応しても正しい修正位置を修正できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係る回転体の模式図である。本実施例の回転体10はフューエルポンプのアーマチャである。なお、回転体はフューエルポンプのアーマチャに限定されるものではない。回転体10は円柱状に形成されており、その中心軸線に沿って延びるシャフト11を備えている。シャフト11は回転体10本体に相対回転不能に固定されている。樹脂製の回転体10本体の外周には、金属製のコア部12が6個はめ込まれている。6個のコア部12は全て同形状であり、樹脂部を間に挟んで等間隔に配列されている。回転体10本体のうちコア部12とコア部12とに挟まれている部分13は、特許請求の範囲に記載のマークに相当する。以下、樹脂部13という場合は回転体10本体の部分13のことを指すものとする。なお、マークは何等かのセンサで検出可能であればどのように形成してもよく、例えば外周に形成した凹凸でもよいし、外周面に塗布した塗料でもよいし、外周面に貼り付けたシールでもよい。コア部12は等間隔に配列されているため、結果として樹脂部13は回転体10の外周に等間隔に配置されている。
【0008】
図9は、フューエルポンプの断面図である。回転体10はフューエルポンプ30に図示するように収容される。
図10は、回転体10の分解斜視図である。図10に示すように、回転体10は、電機子50、整流子70、およびカバー80を有している。電機子50の一方の軸方向側に整流子70が組み付けられ、電機子50の整流子70と反対側の他方の軸方向側をカバー80が覆っている。電機子50は、回転中央部にセンターコア52を有している。シャフト11はセンターコア52に圧入されている。6個の磁極コイル部54はセンターコア52の外周に回転方向に設置され、センターコア52と結合している。各磁極コイル部54は、コア部12、樹脂製のボビン60、およびボビン60毎に巻線を集中巻きして形成されているコイル62を有している。6個の磁極コイル部54は同一構成である。図10において同一構成部分の符号を一部省略している。前述した樹脂部13は、ボビン60のうち回転体10の外周面に露出している部分に相当する。
【0009】
図9に示すように、各コイル62の整流子70側の端部は端子64と電気的に接続している。端子64は整流子70の端子74に嵌合し電気的に接続している。コイル62の整流子70と反対側であるカバー80側の端部は端子66と電気的に接続している。回転方向に連続して隣接している3個の端子66は、端子68により電気的に接続されている。
整流子70は一体に形成されたカセット式である。整流子70は回転方向に設置された6個のセグメント72を有している。セグメント72は例えばカーボンで形成されており、回転方向に隣接しているセグメント72同士は電気的に絶縁されている。セグメント72は端子74と電気的に接続している。整流子70が電機子50とともに回転することにより、セグメント72は順次図示しないブラシと接触する。
【0010】
外周の任意の位置を修正可能であれば特定したアンバランス修正位置を修正すればよいが、本実施例の回転体10は修正可能な位置がコア部12に限定されている。従って、アンバランスの修正に際しては、修正しようとしているアンバランス修正位置がコア部12であることを確認した上で行う必要がある。樹脂部13の位置が一つ判ればそれを基準にして他の樹脂部13の位置やコア部12の位置を特定できるので、修正しようとしているアンバランス修正位置がコア部12であることを確認するには、いずれか一つの樹脂部13の位置を特定できればよい。ただし、誤って特定するとコア部12以外を修正してしまうことになるため、特定には高い信頼性が要求される。
【0011】
図3は、本発明の一実施形態に係るバランス修正装置の模式図である。バランス修正装置1は、アンバランス測定部20、位置特定部30、及びアンバランス修正部40を備えている。
アンバランス測定部20は、一定の回転速度で回転するモータ21、モータ21の回転動力を回転体10に伝達するベルト22、プーリ23〜25、振動センサ26、及び図示しない計測制御部を備えている。プーリ24及び25は図示しないコイルばねなどの弾性体に支持されており、回転体10はベルト22、プーリ23〜25によってフローティング状態で支持されている。振動センサ26は回転体10のシャフト11の外周に接触する接触子27の振動を計測することで回転体10の振動を計測する。計測制御部はCPUやメモリなどを備え、モータ21を制御して回転体10を回転させ、回転中に振動センサ26で計測された振動に基づいて回転体10のアンバランス修正位置及びアンバランス修正量を特定する。
【0012】
位置特定部30は、センサ31、及び図示しない位置特定制御部を備えている。センサ31は具体的には例えば渦電流式のギャップセンサである。ギャップセンサ31は金属に反応するセンサであり、本実施例ではコア部12に反応する。ギャップセンサ31は回転体10の外周面の近傍に設けられ、外周面をセンシングする。ギャップセンサ31の出力信号はコア部12に反応している間はONになり、コア部12に反応していない間はOFFになる。換言すると、ギャップセンサ31は出力信号がOFFの間は樹脂部13に反応している。従ってギャップセンサ31は樹脂部13に反応するセンサであるともいえる。ただし、ギャップセンサ31は外周面に傷や汚れがあると出力信号がOFFになる可能性があるので、ギャップセンサ31の出力信号がOFFであってもその位置に樹脂部13があるとは限らない。ギャップセンサ31が樹脂部13に反応する感度を弱めに設定することで傷や汚れに反応し難いように調節することも可能であるが、その場合は樹脂部13にも反応しない畏れがある。本発明のマーク位置特定方法ではギャップセンサ31は少なくとも樹脂部13には反応する必要があるので、ギャップセンサ31が樹脂部13に反応する感度は強めに設定しておく必要がある。位置特定制御部はCPUやメモリなどを備え、ギャップセンサ31の出力信号がON(コア部12)からOFF(コア部12以外)へ変化した位置(以下「反応位置」という)に基づいて樹脂部13の位置を特定する。また、位置特定制御部は、回転体10の回転直後に回転体10の外周上の基準位置を設定する処理も行う。特許請求の範囲に記載のマーク位置特定装置は、位置特定部30及びアンバランス測定部20の回転体10を回転させる機能に相当する。なお、センサ31は、光学センサなどでもよい。
【0013】
アンバランス修正部40は、修正ドリル41及び図示しない修正制御部を備えている。修正制御部はCPUやメモリなどを備え、モータ21を制御して修正ドリル41の位置までアンバランス修正位置を移動させ、修正ドリル41を制御してアンバランス修正量に応じた穴を形成する。これにより回転体10のアンバランスを修正する。なお、アンバランス修正部40は切削加工によってアンバランスを修正してもよい。この修正において、アンバランス修正部40は、アンバランス修正位置に樹脂部13が存在するか否かを、位置特定部30で特定された樹脂部13を基準にして判定する。アンバランス修正部40は、樹脂部13が存在しない場合のみ、すなわちアンバランス修正位置がコア部12である場合のみ修正を行う。
【0014】
次に、バランス修正装置1の作動について説明する。
図1は、バランス修正装置1の作動の流れを示すフローチャートである。本処理は、ベルト22上に回転体10を設置した後、図示しないスタートスイッチをONにすると開始される。
S105では、アンバランス測定部20により回転体10を回転させ、位置特定部30により回転体10の外周上に基準位置を設定する。基準位置は回転体10の外周上の位置を特定する際の基準となる位置であり、以降の処理において回転体10の外周上の位置は基準位置を0°としたときの周方向の角度によって表される。本実施例では回転を開始して最初にギャップセンサ31が反応した反応位置を基準位置とする。すなわち最初に見つかった樹脂部13の回転方向先端を基準位置とする。ただしギャップセンサ31が傷や汚れに反応する場合もあるので、その場合は傷や汚れの回転方向先端が基準位置となる。なお、例えば検出開始前の任意の位置を基準位置としてもよい。
【0015】
S110では、アンバランス測定部20により、修正ドリル41でアンバランスを修正する場合のアンバランス修正位置とアンバランス修正量とを特定する。これと並行して位置特定部30により回転体10の1回転中の反応位置をメモリに記憶する。位置特定部30は、例えば50°の位置で出力信号がONからOFFへ変化したとすると、反応位置として「50°」を記憶する。位置特定部30は反応位置を全て記憶する。このため、コア部12上の傷や汚れにギャップセンサ31が誤反応した場合であっても反応位置として記憶されることになる。
【0016】
図4は、記憶した反応位置の一例を示す模式図である。表の1行目は反応した順に割り当てた番号であり、2行目は反応位置である。図示する例では樹脂部13を含め12箇所の反応位置が検出されたことを示している。
S115では、位置特定部30により、各反応位置を基準(0°)としたときの他の反応位置の角度を算出する。
【0017】
図5は、図4に示す各反応位置を基準として、他の反応位置の角度を算出した結果を示す図である。例えば反応位置2の場合、反応位置2を0°とすると反応位置1(図4において0.0°)の角度は−93.3°であり、反応位置3(95.1°)の角度は1.8°である。同様にして反応位置2を0°としたときの他の反応位置の角度を算出することにより、表の3列目に示すように反応位置2を0°としたときの他の反応位置の角度の一覧が得られる。反応位置2以外の反応位置についても同様に他の反応位置の角度を算出する。これにより、図5に示す表が得られる。
【0018】
S120では、位置特定部30により、各反応位置についてその反応位置が樹脂部13の位置であると仮定して樹脂部13の候補を抽出する。その反応位置が樹脂部13の位置であると仮定すると、他の樹脂部13は理論的には当該反応位置を基準(0°)に60°、120°、180°、240°及び300°の位置に存在するはずである。このため、60°、120°、180°、240°、300°にそれぞれ最も近い反応位置を樹脂部13の候補(以下「樹脂部候補」という)として抽出する。例えば図5に示す反応位置2の場合、理論上の各位置にそれぞれ最も近い反応位置は、63.3°、120.5°、180.0°、240.3°、及び−57.9(302.1)°である。従ってこれらの反応位置が樹脂部候補となる。反応位置3の場合は、61.5°、120.4°、178.2°、241.4°、及び−59.7°が樹脂部候補となる。
【0019】
図6は、図5に示す結果から樹脂部候補を抽出した結果を示す図である。反応位置2や反応位置3以外の反応位置についても同様にして樹脂部候補を抽出することにより、図6に示す表が得られる。
S125では、位置特定部30により、各反応位置の樹脂部候補について、理論上の位置との角度の差の絶対値(角度差)を算出する。例えば反応位置2の場合、理論上の位置の一つである120°を例にすると、それに最も近い樹脂部候補は120.5°である。従って、その角度差は0.5°である。同様に180°は、最も近い樹脂部候補である178.2°との角度差は1.8°である。他の理論上の位置についても同様に直近の樹脂部候補との角度差を求める。これを全ての反応位置について行う。
【0020】
図7は、図6に示す結果から角度差を算出した結果を示す図である。
S130では、位置特定部30により、反応位置毎に角度差を合計する。
図8は、図7に示す結果について角度差を合計した結果を示す図である。
S135では、位置特定部30により、角度差の合計が最も小さい反応位置を樹脂部13の位置として特定する。より具体的にいうと樹脂部13の回転方向先端の位置として特定する。反応位置が樹脂部13であれば、その反応位置での合計値は0°に近いはずである。このため、合計値が最も小さい反応位置は、樹脂部13である可能性が最も高いといえる。よって、合計値が最も小さい反応位置を樹脂部13の位置として特定する。図8に示す例の場合であれば、反応位置7と反応位置12が最も信頼性が高い。合計値が最も小さい反応位置が複数ある場合はそのいずれを樹脂部13としてもよい。
【0021】
S140では、アンバランス修正部40により、アンバランス修正位置に樹脂部13が配置されているか否かを判定する。反応位置7を樹脂部13として特定したとすると、反応位置7を基準(0°)として抽出した樹脂部候補である−120.4°、−58.9°、57.8°、121.0°、−180.1°が他の樹脂部13の位置であると特定される。例えば樹脂部13の幅は20°であるとする。ここで樹脂部13の幅とは、回転軸方向から見て樹脂部13の回転方向先端と回転軸と樹脂部13の回転方向後端とがなす角度のことをいう。樹脂部13の幅が20°であるとした場合、樹脂部13は、−120.4°〜−100.4°、−58.9°〜−38.9°、0.0°〜20.0°、57.8°〜77.8°、121.0°〜141.0°、−180.1°〜−160.1°に配置されていることになる。従って、アンバランス修正位置をS105で設定した基準位置からの角度ではなく反応位置7からの角度で表したとき、上述したいずれかの範囲内にあれば、アンバランス修正位置に樹脂部13が配置されていると判定する。
【0022】
本実施例では樹脂部13は修正禁止であるため、アンバランス修正位置に樹脂部13が配置されていると判定した場合は修正不可と判定し、例えば警告を発して処理を終了する。コア部12が配置されていれば修正可と判定し、S145に進む。
S145では、アンバランス修正部40により、アンバランスを修正する。具体的には、アンバランス測定部20で特定されたアンバランス修正位置にアンバランス測定部20で特定されたアンバランス修正量に応じた穴を形成する。
【0023】
以上説明した本発明の一実施形態に係るマーク位置特定装置によると、回転体10の外周面の傷や汚れに反応した反応位置の場合は、その反応位置が樹脂部13の位置であると仮定した場合に理論的に特定される他の樹脂部13の位置の近傍には反応位置がない可能性が高いので、理論的に特定される他の樹脂部13の位置とその直近の反応位置との角度差は大きくなる。従って理論的に特定される他の樹脂部13についてそれぞれ求めた角度差を合計すると大きな値となる。逆に、樹脂部13に反応した反応位置の場合は、理論的に特定される他の樹脂部13の位置の近くに反応位置があるため、理論的に特定される他の樹脂部13の位置とその直近の反応位置との角度差は小さくなる。従って理論的に特定される他の樹脂部13についてそれぞれ求めた角度差を合計すると小さな値となる。合計値が最も小さい反応位置は、樹脂部13の位置である可能性が最も高い。よってこのマーク位置特定装置によると、回転体10の外周面の傷や汚れにセンサが反応しても樹脂部13の位置を正しく特定できる。
【0024】
また、本発明の一実施形態に係るバランス修正装置1は、本発明の一実施形態に係るマーク位置特定装置により樹脂部13の位置を特定し、アンバランス修正位置に樹脂部13が配置されているか否かを特定した樹脂部13の位置に基づいて判定する。これにより、誤って樹脂部13を修正してしまうことを防止できる。よってバランス修正装置1によると、回転体の外周面の傷や汚れにセンサが反応しても正しい修正位置を修正できる。
【0025】
なお、本実施例では合計値が最も小さい反応位置を樹脂部13として特定しているが、樹脂部13の数が6個である場合、合計値が小さい順(昇順)に上位6番以内の反応位置はいずれも樹脂部13の位置である可能性が高いので、上位6番以内の反応位置のいずれかを任意に樹脂部13の位置として特定してもよい。但し、合計値が小さいほど樹脂部13である可能性は高いので、より上位の反応位置を樹脂部13の位置として特定することが望ましい。
【0026】
また、本実施形態では修正ドリル41で穴を形成することによってアンバランスを修正する場合を例に説明したが、アンバランス修正位置に錘を付けることによってアンバランスを修正してもよい。
また、本実施形態ではコア部12の任意の位置でアンバランスを修正可能な場合を例に説明したが、コア部12の特定の場所のみが修正可能な場合にも適用できる。例えばコア部12の中央部のみが修正可能であり、中央部以外を修正するとコア部12の強度が確保できなくなるような場合がこれに該当する。前述の例で反応位置7を樹脂部13として特定したとすると、反応位置7を基準(0°)として抽出した樹脂部候補である−120.4°、−58.9°、57.8°、121.0°、−180.1°が他の樹脂部13の位置であると特定される。例えば樹脂部13の幅が20°、コア部12の幅が40°であるとした場合、コア部12の中央部は、−80.4°、−18.9°、40.0°、97.8°、161.0°、−140.1°に配置されていることになる。従って、アンバランス修正位置をS105で設定した基準位置からの角度ではなく反応位置7からの角度で表したとき、上述したいずれかの位置近傍でのみ修正可能であると判定する。この場合、上記修正可能なコア部12の中央部の2箇所もしくは3箇所を修正し、その修正量をベクトル計算したときに、その合成量が修正すべきアンバンラスの量と角度になるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るバランス修正装置の作動を示すフローチャート。
【図2】本発明の一実施形態に係る回転体の斜視図。
【図3】本発明の一実施形態に係るバランス修正装置の模式図。
【図4】本発明の一実施形態に係る反応位置の一例を示す模式図。
【図5】図4に示す各反応位置について角度を算出した結果を示す模式図。
【図6】図5に示す結果からマークの候補を抽出した結果を示す模式図。
【図7】図6に示す結果から角度差を算出した結果を示す模式図。
【図8】図7に示す結果について角度差を合計した結果を示す模式図。
【図9】本発明の一実施形態に係るフューエルポンプの断面図。
【図10】本発明の一実施形態に係る回転体の分解斜視図。
【符号の説明】
【0028】
1 バランス修正装置、10 回転体、13 樹脂部(マーク)、20 アンバランス測定部(マーク位置特定装置、アンバランス測定手段)、30 位置特定部(マーク位置特定装置)、31 ギャップセンサ(センサ)、40 アンバランス修正部(第一の判定手段、第二の判定手段、修正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の外周面に等間隔で配置されているマークの位置を特定するマーク位置特定方法であって、
少なくとも前記マークに反応するセンサで前記回転体の外周面をセンシングし、前記回転体の一回転中に前記センサが反応した反応位置を記憶する段階と、
各反応位置において、その反応位置がマークの位置であると仮定した場合に理論的に特定される他のマークの位置について、それぞれ直近の反応位置との角度差を求め、求めた角度差を合計する段階と、
反応位置を合計値で昇順に並べた場合の順位を表す数値が前記マークの個数を表す数値以下である反応位置のいずれかをマークの位置として特定する段階と、
を含むことを特徴とするマーク位置特定方法。
【請求項2】
各反応位置において、その反応位置を基準として外周面を等間隔に区切る各位置を他のマークの理論的な位置として特定することを特徴とする請求項1に記載のマーク位置特定方法。
【請求項3】
各反応位置のうち、合計値が最も小さい反応位置をマークの位置として特定することを特徴とする請求項1又は2に記載のマーク位置特定方法。
【請求項4】
回転体の外周面に等間隔で配置されているマークの位置を特定するマーク位置特定装置であって、
少なくとも前記マークに反応するセンサと、
前記センサで前記回転体の外周面をセンシングして前記回転体の一回転中に前記センサが反応した反応位置を記憶する手段と、
各反応位置において、その反応位置がマークの位置であると仮定した場合に理論的に特定される他のマークの位置について、それぞれ直近の反応位置との角度差を求め、求めた角度差を合計する手段と、
反応位置を合計値で昇順に並べた場合の順位を表す数値が前記マークの個数を表す数値以下である反応位置のいずれかをマークの位置として特定する手段と、
を備えることを特徴とするマーク位置特定装置。
【請求項5】
外周に等間隔でマークが配置されている回転体のアンバランスを修正するバランス修正方法であって、
前記回転体のアンバランスを測定してアンバランス修正位置とアンバランス修正量とを特定するアンバランス測定段階と、
請求項1、2又は3に記載のマーク位置特定方法によりマークの位置を特定し、特定したマークの位置を基準に前記アンバランス修正位置にマークが配置されているか否かを判定する第一の判定段階と、
前記第一の判定段階の判定結果に基づいてアンバランスの修正可否を判定する第二の判定段階と、
前記第二の判定段階で修正可と判定されると、前記アンバランス修正位置を前記アンバランス修正量に基づいて修正する修正段階と、
を含むことを特徴とするバランス修正方法。
【請求項6】
外周に等間隔でマークが配置されている回転体のアンバランスを修正するバランス修正装置であって、
請求項4に記載のマーク位置特定装置と、
前記回転体のアンバランスを測定してアンバランス修正位置とアンバランス修正量とを特定するアンバランス測定手段と、
前記マーク位置特定装置により特定されたマークの位置を基準に前記アンバランス修正位置にマークが配置されているか否かを判定する第一の判定手段と、
前記第一の判定手段の判定結果に基づいてアンバランスの修正可否を判定する第二の判定手段と、
前記第二の判定手段で修正可と判定されると、前記アンバランス修正位置を前記アンバランス修正量に基づいて修正する修正手段と、
を備えることを特徴とするバランス修正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−153486(P2006−153486A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340484(P2004−340484)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】