説明

ミシンの制御装置

【課題】 偏差角度を考慮して、各アクチュエータの駆動制御を綿密に行なうことができ、しかも、複数のミシンの機種に汎用可能なミシンの制御装置を提供すること。
【解決手段】
モータ軸基準角度の信号と、エンコーダ信号とにより、ミシンモータの回転軸の回転角度を検出するモータ角度検出手段と、ミシンの複数の機種に対応させて、マーカ一致刻印角度と、制御角度とを角度情報として記憶している記憶手段と、モータ角度検出手段により検出されたミシンモータの回転軸の角度をマーカ一致回転軸角度として記憶手段に入力する入力手段と、ミシンの複数の機種から該ミシンの機種を特定認識する特定手段と、機種が特定された該ミシンのマーカ一致刻印角度とマーカ一致回転軸角度とに基づいて偏差角度(ズレ位相角)を求め、この偏差角度を考慮して制御角度を補正してミシンモータおよびアクチュエータを駆動する駆動制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン主軸の回転角度に基づいて、付随する各アクチュエータの駆動制御を行なう、ダイレクトドライブタイプのミシンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミシンモータによる駆動系を簡単化且つ小型化するべく、ミシンモータを脚柱部の上端部、つまりアーム部の基端部に設け、ミシンの針棒を上下動させるミシン主軸を前記ミシンモータで直接に駆動する、所謂、ダイレクトドライブタイプのミシンが採用されてきている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のミシンは、ミシンのベッド部に立設された脚柱部と、この脚柱部から水平方向に延びるアーム部とからなるミシン本体を備え、前記脚柱部の上端部にミシンモータを配設し、ミシンモータの回転軸(出力軸)とミシン主軸とをカップリング等により連結し、ミシンモータによりミシン主軸を直接に駆動するようにしてある。
【0004】
このようなダイレクトドライブタイプのミシンにおいては、ミシン主軸の原点位置(例えば、針上位置や針下位置を用いる)やミシンモータの基準位置(所定角度)を検出し、前記原点位置からのミシン主軸の回転角度、前記基準位置からのミシンモータの回転軸の回転角度を管理することで、前記ミシンモータの駆動の他、例えば、縫い始めや縫い終わりに重ね縫いを行なうためのバックタックソレノイド、縫製動作の終了後に上糸を切断するための糸切りソレノイド、切断された上糸を払うワイパーソレノイド、糸押えの皿を浮かす皿浮かしソレノイド等、多数のソレノイドからなるアクチュエータの駆動を制御している。
【0005】
よって、ダイレクトドライブタイプのミシンにおいては、ミシン主軸の原点位置とミシンモータの基準位置とが精度よく同位相となるように、ミシンモータと主軸とを連結させることが望ましいが、現実には、ミシンの組み込み精度等の原因により、極めて困難である。
【0006】
【特許文献1】特開平9−276580号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そして、ダイレクトドライブタイプのミシンにおけるミシン主軸やミシンモータの回転軸の角度検出を、例えば、特許文献1に記載されたようにして、ミシンモータに配設されたエンコーダを利用して行なう場合において、ミシンのミシンモータや該ミシンに配設された各アクチュエータの駆動をより綿密に制御するためには、縫製前にミシン主軸の原点位置とミシンモータの基準位置とのズレ角度である偏差角度を考慮した制御を行なう必要がある。
【0008】
また、従来、前述のような各アクチュエータの駆動を制御する制御装置は、ミシンの機種(ミシン頭部)別に異ならせて用意され、それぞれ対応するミシンに搭載されてそれぞれのミシンにおける角度制御を行なうように構成されていたため、異なるミシンの機種間における汎用性の点で改良の余地があった。
【0009】
本発明はこのような点に鑑み、ミシンモータに配設されたエンコーダを利用してミシン主軸の原点位置とミシンモータの基準位置とのズレ角度である偏差角度を把握し、その偏差角度を考慮して、各アクチュエータの駆動制御を綿密に行なうことができ、しかも、複数のミシンの機種に汎用可能なミシンの制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、特許請求の範囲の請求項1に係る本発明のミシンの制御装置の特徴は、ミシンの針棒を上下動するミシン主軸と同一軸心で連結される回転軸を有するミシンモータの回転軸が所定の基準角度で出力されるモータ軸基準角度信号と、前記ミシンモータの1回転毎に複数個出力されるエンコーダ信号とにより、前記ミシンモータの回転軸の回転角度を検出するモータ角度検出手段と、ミシンの複数の機種に対応させて、前記ミシン主軸に連結されたプーリの外周に形成されたマーカと前記プーリの外周に近接するミシン機枠に形成されたマーカとを符合させた際のミシン主軸の角度であるマーカ一致刻印角度と、前記ミシンモータおよび該ミシンに配設されたアクチュエータを駆動する際に基準とするミシン主軸の角度である制御角度とを角度情報として記憶する記憶手段と、前記モータ軸の基準角度から、前記プーリおよびミシン機枠に形成された双方のマーカが符合する角度まで前記ミシンモータの回転軸を回転させたときの前記モータ角度検出手段により検出されたマーカ一致回転軸角度を前記記憶手段に入力する入力手段と、前記ミシンの複数の機種から、該ミシンの機種を特定認識する特定手段と、機種が特定された該ミシンの前記マーカ一致刻印角度とマーカ一致回転軸角度とに基づいて偏差角度(ズレ位相角)を求め、この偏差角度を考慮して前記制御角度を補正して前記ミシンモータおよび前記アクチュエータを駆動する駆動制御手段とを備えた点にある。
【0011】
すなわち、本発明のミシンの制御装置の搭載が予定されるダイレクトドライブタイプのミシンには、ミシン主軸に連結されたプーリの外周に一方のマーカが形成され、前記プーリの外周に近接するミシン機枠には、前記プーリに形成されたマーカと符合させる他方のマーカが形成されている。
【0012】
また、この双方のマーカが符合した際のミシン主軸の角度であるマーカ一致刻印角度と、ミシンモータおよび該ミシンに配設されたアクチュエータを駆動する際に基準とするミシン主軸の角度である制御角度と、からなる角度情報は、該ミシンの制御装置の搭載が予定される複数のミシンの機種毎に設定され、前記記憶手段に記憶されている。
【0013】
そして、ミシンの針棒を上下動するミシン主軸と同一軸心で連結される回転軸を有するミシンモータに配設されたモータ軸基準角度センサは、回転軸が所定角度に位置する毎にモータ軸基準角度信号を出力し、また、該ミシンモータに配設されたエンコーダは前記ミシンモータの1回転毎に複数個のエンコーダ信号を出力するように構成されている。
【0014】
作業者は、作業前に、前記プーリおよびミシン機枠に形成された双方のマーカが符合した際の前記モータ角度検出手段により検出された前記ミシンモータの回転軸の回転角度をマーカ一致回転軸角度として前記入力手段により記録手段に記憶させる。
【0015】
そして、この状態において、前記特定手段は、該制御装置に記憶されている複数のミシンの機種の中から該ミシンの機種を特定し、前記駆動制御手段は、機種が特定された該ミシンの前記マーカ一致刻印角度と、前記マーカ一致回転軸角度とに基づいて、ミシン主軸の原点位置とミシンモータの基準位置とのズレ角度である偏差角度を求め、この偏差角度を考慮して前記制御角度を補正し、前記モータ角度検出手段により前記ミシンモータの回転軸の回転角度を検出しつつ、前記ミシンモータおよび前記アクチュエータの駆動を制御する。
【0016】
このように、本発明のミシンの制御装置は、複数のミシンの機種に対応し、各機種のミシンのミシンモータに配設されたエンコーダを利用してミシン主軸の原点位置とミシンモータの基準角度位置とのズレ角度である偏差角度を把握し、その偏差角度を考慮して、各アクチュエータの駆動制御を簡単かつ綿密に行なうことができる。
【0017】
そして、本発明のミシンの制御装置によれば、前述のように、複数の機種に汎用される点、および、綿密な駆動制御のために他の位置検出器等を配設する必要がなく装置点数を最小限に抑えることができる点で、コストの削減に貢献し、また、ダイレクトドライブタイプのミシンにおいて、ミシンモータと主軸とを連結させる際に、ミシン主軸の原点位置とミシンモータの基準角度位置との精度に従来ほどの厳密さが求められないので、組み付け作業も簡単になる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明のミシンの制御装置によれば、複数のミシンの機種に汎用可能であり、ミシンモータに配設されたエンコーダを利用してミシン主軸の原点位置とミシンモータの基準角度位置とのズレ角度である偏差角度を把握し、その偏差角度を考慮することで、各アクチュエータの駆動制御を綿密に行なうことができる。また、コストも低廉で、組み付け作業も簡単になるなどの効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のミシンの制御装置の実施形態を図1乃至図5に基づいて説明する。
【0020】
本発明のミシンは、前述のように、いわゆるダイレクトドライブタイプのミシンであり、ベッド部の上に、ミシンのベッド部に立設された脚柱部と、この脚柱部から水平方向に延びるアーム部とからなるミシン本体が載置され、前記脚柱部の上端部にミシンモータが配設され、ミシンモータの回転軸(出力軸)とミシン主軸とがカップリング等により連結され、ミシンモータによりミシン主軸を直接駆動するように構成されている。
【0021】
そして、ミシン主軸に連結されたプーリの外周には一方のマーカが形成され、前記プーリの外周に近接するミシン機枠には、前記プーリに形成されたマーカと符合させる他方のマーカが形成されている。
【0022】
前記ベッド部の下には制御装置としてのコントローラが配置されており、このコントローラには、ベッド部の下方に配設されたミシンペダルの踏み込み量がペダルセンサによって検出され、入力されるように構成されている。
【0023】
また、ミシン本体内には、布押え上げ、糸切りカッター、ワイパー、バックタック等を駆動する各アクチュエータとして、押え上げソレノイド、糸切りソレノイド、ワイパーソレノイド、バックタックソレノイド等が設けられており、それぞれ駆動回路を介して制御手段としてのコントローラに接続され、所定のタイミングで駆動制御されるように構成されている。
【0024】
そして、ミシン本体のコントロールパネルには、液晶表示装置などの表示器を備えた表示装置が設けられており、この表示装置は、駆動回路を介して制御手段としてのコントローラに接続され、所定の表示を行なうように構成されている。前記コントロールパネルには、ミシンの機種、主軸角度設定モードのON・OFF、主軸角度設定等を入力可能とされた入力手段としての操作スイッチが配設されている。本実施形態においては、前記表示装置の表示器としてタッチパネル式の液晶パネルを用い、前記操作スイッチは、その液晶パネルの表示領域の一部に領域表示されたスイッチボタンとされ、該スイッチボタンの領域をタッチ操作することで入力操作可能に構成されている。例えば、ミシンの機種を複数の中から選択するような場合は、該スイッチボタンも複数配設して、所望のスイッチボタンを選択入力するように構成されている。
【0025】
また、ミシンモータは、駆動回路を介して制御手段としてのコントローラに接続され、回転が制御されるように構成されている。そして、ミシンモータには、モータ軸基準角度センサが配設されており、ミシンモータの回転軸が所定角度に位置する毎にモータ軸基準角度信号を出力するようになっている。また、ミシンモータの回転軸には、モータエンコーダが設けられており、モータエンコーダは、ミシンモータによるミシン主軸の回転角度に応じた回転信号としてのエンコーダパルスを出力するようになっている。つまり、前記ミシンモータの1回転毎に1乃至複数個のエンコーダ信号を出力するようになっている。
【0026】
そして、前記コントローラは、ペダルセンサ、モータ軸基準角度センサ、モータエンコーダ、操作スイッチ等からのデータあるいは検出信号をもとに、ミシンモータの回転や、前記各ソレノイドの駆動、または表示装置の表示等を制御している。
【0027】
図1は、このミシンの制御系を前記コントローラの内部構成と共に示すブロック図である。
【0028】
ミシンの各アクチュエータやミシンモータ等の駆動を制御する制御装置としてのコントローラは、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、イーイーピーロム(EEPROM)等の外部の記憶手段を接続させるとともに、制御手段としてのCPUを備えたマイクロコンピュータによって構成されている。
【0029】
本実施形態において、前記記憶手段(例えばEEPROM)は、ミシンの複数の機種毎の、前記ミシン主軸に連結されたプーリの外周に形成されたマーカと前記プーリの外周に近接するミシン機枠に形成されたマーカとを符合させた際のミシン主軸の角度であるマーカ一致刻印角度と、前記ミシンモータおよび該ミシンに配設されたアクチュエータを駆動する際に基準とするミシン主軸の角度である制御角度とを(、前記針棒の上死点を基準とする)角度情報として記憶しているとともに、前記プーリおよびミシン機枠に形成された双方のマーカが符合した際の前記モータ角度検出手段により検出された前記ミシンモータの回転軸の回転角度であるマーカ一致回転軸角度を記憶するようになっている。
【0030】
そして、本実施形態において、前記制御手段としてのCPUは、ミシンの針棒を上下動するミシン主軸と同一軸心で連結される回転軸を有するミシンモータの回転軸が所定角度に位置する毎にモータ軸基準角度センサから出力されるモータ軸基準角度信号と、前記ミシンモータの1回転毎にエンコーダから複数個出力されるエンコーダ信号とにより、前記ミシンモータの回転軸の回転角度を検出するモータ角度検出手段、前記ミシンの複数の機種から、該ミシンの機種を特定認識する特定手段、および、機種が特定された該ミシンの前記マーカ一致刻印角度とマーカ一致回転軸角度とに基づいて偏差角度を求め、この偏差角度を考慮して前記制御角度を補正して前記前記ミシンモータおよび前記アクチュエータを駆動する駆動制御手段として機能する。
【0031】
そして、コントローラの出力側には、駆動制御手段としてのCPUから送出される駆動制御信号によってミシンモータを回転駆動させるミシンモータ駆動回路、ミシン本体の正面に配設された表示器を駆動させる表示装置駆動回路、各アクチュエータを駆動させる駆動回路等が接続されている。
【0032】
一方、入力側には、前述した、ペダルセンサ、モータ軸基準角度センサ、モータエンコーダ、操作スイッチ等が接続されている。すなわち、ペダルセンサからのミシンペダルの踏み込み量のデータは、コントローラからミシンモータ駆動回路を介して、ミシン主軸を回転させるミシンモータの回転・停止及び回転速度を制御するのに用いられる。モータエンコーダは、ミシンモータの回転軸が一定角度(例えば1°)回転する毎にエンコーダパルスを発生するものであり、そのエンコーダパルスはミシンモータの回転速度検知や位相検知、及びミシン主軸角度の検知に用いられる。また、モータ軸基準角度センサから出力される検出信号は、前述のようにモータの回転軸の角度の原点検知に用いられる。
【0033】
次に、このような構成を備えたミシンにおける制御装置の制御について、図2および図3のフローチャート並びに図4のタイミングチャートに基づいて説明する。
【0034】
作業者は、まず、ミシンの電源の投入後、操作パネルに表示されるミシンの機種の選択画面から、該ミシン(ミシン頭部)を、操作スイッチの選択操作、すなわち、操作スイッチを選択したタッチ操作により選択入力する(ステップST1)。なお、以下の説明においては、便宜上、ミシン頭部をタイプAとするミシンが選択されたものとする。
【0035】
この選択動作により、制御装置の特定手段は、前記EEPROMに管理されている、図5に示すような、複数のミシンの機種に対応する前記角度情報等のテーブルの中から、選択されたミシンの機種に対応する角度情報等を読み出す(ステップST2)。
【0036】
なお、前記角度情報としては、本実施形態においては、前記マーカ一致刻印角度(主軸刻印角度)Aとするところの針上位置の主軸回転角度(上針停止角度)の他、針下位置の主軸回転角度(下針停止角度)、糸切りアクチュエータの駆動の開始の契機となる主軸の回転角度(糸切りON角度)、終了の契機となる主軸の回転角度(糸切りOFF角度)等が管理されている。
【0037】
次に、ミシンの制御装置においては、主軸角度設定モードの操作スイッチが選択操作されたか否かを判断する。すなわち、作業者は、ミシンの電源を投入した後、偏差角度を算出するための主軸角度を設定するか(主軸角度設定モードON状態)、あるいは、現在の設定状態のままでミシンの駆動操作を開始するか(主軸角度設定モードOFF状態)を、操作スイッチの選択操作により選択入力する(ステップST3)。
【0038】
主軸角度設定モードをON状態とする操作スイッチが選択操作された場合、表示装置の表示領域に、図6に示すような主軸角度設定モードにおける初期画面を表示する。この初期画面においては、モータの回転軸の軸角度を表示するが、現段階ではノーカウント状態となっている(ステップST4)。
【0039】
その状態から、作業者は主軸に連結されたプーリを所定の方向(正方向)に手回しし(ステップST5)、モータ軸基準角度センサが発生させるモータ軸基準角度位置の信号を検出する(ステップST6)。
【0040】
そして、モータ軸基準角度のONエッジを検出したら(ステップST6のYES)、ブザーで報知しつつ(ステップST7)、エンコーダのパルス信号のカウントを開始する((ステップST8)。このとき、表示画面には、エンコーダのパルス信号に基づいて求めたモータ軸角度を表示する(ステップST9)。モータ軸基準角度のONエッジを検出した段階においては、エンコーダのパルス信号のカウントは「0」とし、表示画面には、図7に示すように、モータ軸角度として「0」を表示する。
【0041】
図4に示すように、本実施形態においては、エンコーダパルスを1回転に360パルスが出力されるように構成する。よって、エンコーダパルスの1カウント毎に、モータ軸角度を1°ずつカウントアップさせる。
【0042】
その状態から、作業者は主軸プーリを手回しして(ステップST10)、ミシン主軸に連結されたプーリの外周に形成された一方のマーカと、前記プーリの外周に近接するミシン機枠に形成された他方のマーカとを符合させるようにする(ステップST11)。
【0043】
このとき、ミシン主軸に連結されたプーリの外周に形成された一方のマーカと、前記プーリの外周に近接するミシン機枠に形成された他方のマーカとが符合するまで、前記エンコーダのパルス信号のカウントアップと、そのカウントアップごとに表示画面に対応するモータ軸角度を表示することを繰り返す(ステップST11のNO)。
【0044】
そして、ミシン主軸に連結されたプーリの外周に形成された一方のマーカと、前記プーリの外周に近接するミシン機枠に形成された他方のマーカとが符合したら(ステップST11のYES)、作業者は表示領域に表示されている主軸角度設定のスイッチボタンをタッチ操作する(ステップST12)。
【0045】
本実施形態においては、図4に示すように、モータ軸角度が27°の段階で主軸角度設定のスイッチボタンがタッチ操作されたものとする。
【0046】
そして、現状態でのモータ軸回転角度B、すなわち、「27」を記録手段に記憶し(ステップST13)、続いて、偏差角度Cを以下の数式で算出する(ステップST14)。

偏差角度C=主軸刻印角度A−モータ軸回転角度B
【0047】
つまり、タイプAのミシン頭部が選択された本実施形態においては、図4に示すように、読み出した角度情報における主軸刻印角度である50°から軸に連結されたプーリの外周に形成された一方のマーカと、前記プーリの外周に近接するミシン機枠に形成された他方のマーカとが符合した際のモータ軸回転角度である27°を差し引いた23°を偏差角度Cとして算出する。
【0048】
そして、この偏差角度Cである「23°」を記憶手段に記憶するとともに、表示画面に表示し(ステップST15)、主軸角度設定モードを完了させ、電源を落とす。なお、図8は、この偏差角度Cの表示の一例を示す。
【0049】
そして、縫製作業を行うべく、再び電源を投入し、ミシンの頭部選択(ステップST1)とミシン頭部のタイプに対応する角度情報を読み出し(ステップST2)の工程を経て、現在の設定状態のままでミシンの駆動操作を開始する、主軸角度設定モードOFF状態を、操作スイッチの選択操作により選択入力する(ステップST3)。
【0050】
その後、図3のフローチャートに示すように、ミシンモータの回転軸が所定角度に位置する毎に、モータ軸基準角度の角度センサから出力されるモータ軸基準角度信号を検知する(ステップST16)。そして、主軸の上停止下位置、下停止位置の角度を前記偏差角度C、すなわち、本実施形態においては23°で設定する初期化を行い、その状態から主軸角度の管理を開始し(ステップST17)、該ミシン頭部に合わせた所定の上停止角度で停止させる上針停止制御を行なう(ステップST18)。
【0051】
続いて、ペダル操作によるミシン動作制御を行なう(ステップST19)。回転指令が無い場合(ステップST19のNO)は、ミシンを停止させて、回転指令のために待機する。回転指令があった場合(ステップST19のYES)、エンコーダパルス毎に主軸角度をカウントアップさせて更新しつつ、ミシンを回転させ(ステップST21)、糸切りなどのアクチュエータの角度制御を行う(ステップST22)。
【0052】
図9は、アクチュエータの角度制御の一例として、糸切り制御を行なう主軸角度のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0053】
この図に示すように、ミシン頭部をタイプAとする該ミシンにおいては、図5に示すように、本来、糸切りのアクチュエータのONタイミングとなる主軸角度は210°で糸切りのアクチュエータのONタイミングとして駆動制御される。同様に、糸切りのアクチュエータのOFFタイミングである45°を糸切りのアクチュエータのOFFタイミングとして駆動制御される。
【0054】
なお、偏差角度Cが+値の場合は、前述のように、そのままの値を初期値として角度管理することとなるが、偏差角度Cが−値となる場合は、360°−Cで算出した値を初期値として代入し、角度管理を行えばよい。
【0055】
このようにして駆動制御の際の角度管理を行なう本実施形態のミシンの制御装置によれば、各アクチュエータの駆動制御を綿密に行なうことができ、しかも、予め記憶されている複数のミシンの機種(ミシン頭部)に対応した角度管理のデータの中から、該ミシンの機種を選択すればよいので、該制御装置としては、複数のミシンの機種に搭載可能なものとなる。
【0056】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々変更できるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態のミシンの制御装置とミシンの要部構成との関係を示すブロック図
【図2】本発明の実施形態のミシンの制御装置における角度制御のフローチャート(その1)
【図3】本発明の実施形態のミシンの制御装置における角度制御のフローチャート(その2)
【図4】本発明の実施形態のミシンの制御装置における角度制御の偏差角度の求め方を説明するタイミングチャート
【図5】本発明の実施形態のミシンの制御装置に記憶される角度情報の一例を示すテーブル
【図6】本発明の実施形態のミシンの制御装置における角度制御の主軸角度設定モードにおける初期画面の表示の一例
【図7】本発明の実施形態のミシンの制御装置における角度制御のモータ軸基準角度のONエッジを検出した段階においける画面の表示の一例
【図8】本発明の実施形態のミシンの制御装置における角度制御で求められたこの偏差角度Cの表示の一例
【図9】本発明の実施形態のミシンの制御装置における角度制御を説明するタイミングチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンの針棒を上下動するミシン主軸と同一軸心で連結される回転軸を有するミシンモータの回転軸が所定の基準角度で出力されるモータ軸基準角度信号と、前記ミシンモータの1回転毎に複数個出力されるエンコーダ信号とにより、前記ミシンモータの回転軸の回転角度を検出するモータ角度検出手段と、
ミシンの複数の機種に対応させて、前記ミシン主軸に連結されたプーリの外周に形成されたマーカと前記プーリの外周に近接するミシン機枠に形成されたマーカとを符合させた際のミシン主軸の角度であるマーカ一致刻印角度と、前記ミシンモータおよび該ミシンに配設されたアクチュエータを駆動する際に基準とするミシン主軸の角度である制御角度とを角度情報として記憶する記憶手段と、
前記モータ軸の基準角度から、前記プーリおよびミシン機枠に形成された双方のマーカが符合する角度まで前記ミシンモータの回転軸を回転させたときの前記モータ角度検出手段により検出されたマーカ一致回転軸角度を前記記憶手段に入力する入力手段と、
前記ミシンの複数の機種から、該ミシンの機種を特定認識する特定手段と、
機種が特定された該ミシンの前記マーカ一致刻印角度とマーカ一致回転軸角度とに基づいて偏差角度を求め、この偏差角度を考慮して前記制御角度を補正して前記ミシンモータおよび前記アクチュエータを駆動する駆動制御手段と、
を備えたミシンの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−226114(P2009−226114A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77674(P2008−77674)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】