ミシン
【課題】縫製可能領域よりも広い範囲に複数の模様を縫製する場合、複数の模様間の位置合わせのための基準を、ユーザが柔軟に設定したり変更したりすることが可能なミシンを提供する。
【解決手段】第一模様と第二模様の相対的な配置を決定するための、第一模様に関する第一基準が、ユーザの指定により設定される。ユーザが設定された第一基準を変更したい場合には、ユーザの指定により変更後の第一基準が設定される(S312)。第二模様に関する第二基準が、ユーザの指定により設定される(S303)。変更後の第一基準と第二基準とに基づき、第一模様と第二模様の相対的な配置が決定される(S304)。第一保持位置と第二保持位置とで縫製対象物に配置された標識を撮影した画像データに基づき、標識の配置が特定される(S333)。第一模様と第二模様の相対的配置と標識の配置とに基づき、第二模様の配置が設定される(S334)。
【解決手段】第一模様と第二模様の相対的な配置を決定するための、第一模様に関する第一基準が、ユーザの指定により設定される。ユーザが設定された第一基準を変更したい場合には、ユーザの指定により変更後の第一基準が設定される(S312)。第二模様に関する第二基準が、ユーザの指定により設定される(S303)。変更後の第一基準と第二基準とに基づき、第一模様と第二模様の相対的な配置が決定される(S304)。第一保持位置と第二保持位置とで縫製対象物に配置された標識を撮影した画像データに基づき、標識の配置が特定される(S333)。第一模様と第二模様の相対的配置と標識の配置とに基づき、第二模様の配置が設定される(S334)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍枠に保持された縫製対象物を撮影可能な撮影手段を備えたミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
刺繍縫製が可能なミシンは、通常、縫製対象物を保持する刺繍枠を用い、刺繍枠の種類に応じて刺繍枠の内側に設定される縫製可能領域に刺繍縫製を行う。縫製可能領域よりも大きな刺繍模様を縫製することができるミシンも知られている。例えば、特許文献1には、縫製可能領域よりも大きな刺繍模様を縫製可能領域よりも小さい複数の模様に分割し、複数の模様に対応する縫製データを記憶したミシンが開示されている。このミシンは、縫製データに従って、分割された複数の模様を順次縫製することで、縫製可能領域よりも大きな刺繍模様を縫製する。ユーザは、分割された複数の模様のうち一つが縫製される度に、縫製対象物である加工布を刺繍枠に対して張り替える。上記ミシンは、分割された複数の模様間の位置合わせを、加工布の表面に配置された標識に基づいて自動的に行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−246885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のミシンでは、分割された複数の模様は、先に縫製される模様に関する基準に対して次に縫製される模様に関する基準を位置合わせすることで、複数の模様間の配置関係が決定される。複数の模様の位置合わせの基準は、複数の模様がずれなく隣接するように縫製されるように予め設定されている。従って、ユーザは、複数の模様を希望する配置関係となるようにこれらの基準を柔軟に設定したり変更したりすることができない。
【0005】
本発明は、刺繍枠の内側に設定される縫製可能領域よりも広い範囲に複数の模様を縫製する場合、複数の模様間の位置合わせのための基準を、ユーザが柔軟に設定したり変更したりすることが可能なミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るミシンは、撮影手段と、第一基準設定手段と、第一画像データ取得手段と、第一配置特定手段と、第一基準変更手段と、第二配置特定手段と、第二基準設定手段と、配置決定手段と、第二画像データ取得手段と、第三配置特定手段と、設定手段とを備えている。前記撮影手段は、刺繍枠に保持された縫製対象物の表面を撮影可能である。前記第一基準設定手段は、前記刺繍枠による前記縫製対象物の保持位置が第一保持位置である状態で縫製される模様を第一模様、前記保持位置が前記第一保持位置とは異なる第二保持位置である状態で縫製される模様を第二模様とした場合に、入力された指示に従って、前記第一模様の位置および角度の少なくとも一方に対する前記第二模様の位置および角度の少なくとも一方を前記第二模様の相対的配置として決定するために使用される、前記第一模様に関する基準を、第一基準として設定する。前記第一画像データ取得手段は、前記保持位置が前記第一保持位置である状態で前記撮影手段によって撮影された、前記縫製対象物の前記表面に配置された標識を含む画像の画像データを、第一画像データとして取得する。前記第一配置特定手段は、前記第一基準および前記第一画像データに基づき、前記第一保持位置における前記第一基準に対する前記標識の位置および角度のうち少なくとも一方を、第一標識配置として特定する。前記第一基準変更手段は、前記第一配置特定手段によって前記第一標識配置が特定された後に前記第一基準を変更する指示である変更指示が入力された場合、前記変更指示に従って前記第一基準を変更し、変更後第一基準として設定する。前記第二配置特定手段は、前記第一基準変更手段によって前記変更後第一基準が設定された場合、前記変更後第一基準および前記第一標識配置に基づき、前記第一保持位置における前記変更後第一基準に対する前記標識の位置および角度のうち少なくとも一方を、第二標識配置として特定する。前記第二基準設定手段は、入力された指示に従って、第二模様の前記相対的配置を決定するために使用される前記第二模様に関する基準を、第二基準として設定する。前記配置決定手段は、前記第一基準または前記変更後第一基準と、前記第二基準とに基づいて、前記第二模様の前記相対的配置を決定する。前記第二画像データ取得手段は、前記保持位置が前記第二保持位置である状態で前記撮影手段によって撮影された、前記縫製対象物の前記表面に配置された前記標識を含む画像の画像データを、第二画像データとして取得する。前記第三配置特定手段は、前記第一標識配置または前記第二標識配置と、前記第二画像データとに基づき、前記第二保持位置における前記第一基準または前記変更後第一基準に対する前記標識の位置および角度のうち少なくとも一方を、第三標識配置として特定する。前記設定手段は、前記第二模様の前記相対的配置および前記第三標識配置に基づいて、前記第二保持位置における前記縫製対象物に対する前記第二模様の位置および角度の少なくとも一方を設定する。
【0007】
本発明のミシンによれば、第一模様に対する第二模様の相対的配置は、入力された指示に従って設定された第一基準と第二基準に基づいて決定される。つまり、ユーザは、所望の第一模様と第二模様の配置関係を、第一基準や第二基準を設定することで、容易に設定することができる。また、ユーザは、第一基準を設定後に変更したい場合には、変更指示を入力すれば、第一基準が変更されて変更後第一基準が設定され、第一模様に対する第二模様の相対的配置は、変更後第一基準と第二基準に基づいて決定される。このように、刺繍枠による縫製対象物の保持位置を第一保持位置から第二保持位置に変更して、ミシンで第一模様と第二模様を縫製する場合、ユーザは、第一模様と第二模様の位置合わせのための基準である第一基準および第二基準を、柔軟に設定したり変更したりすることができる。
【0008】
本発明のミシンでは、刺繍枠による縫製対象物の保持位置が第一保持位置から第二保持位置に変更されても、夫々の保持位置で標識が配置された縫製対象物を撮影して得られた第一画像データおよび第二画像データに基づき、第二保持位置における縫製対象物上の第二模様の配置が設定される。従って、ミシンは、第一模様と第二模様とを、ユーザの希望する配置関係に位置合わせして、縫製することができる。
【0009】
本発明のミシンは、表示手段と、表示制御手段と、配置終了受付手段と、第三画像データ取得手段と、記憶手段と、更新手段とを更に備えていてもよい。前記表示手段は、情報を表示する。前記表示制御手段は、前記第二配置特定手段によって前記第二標識配置が特定された場合、前記変更後第一基準に応じて定められた前記縫製対象物の前記表面における位置である配置予定位置を、前記表示手段に表示させる。前記配置終了受付手段は、前記標識が前記配置予定位置に配置されたことを示す情報である配置終了情報の入力を受け付ける。前記第三画像データ取得手段は、前記配置終了受付手段によって前記配置終了情報が受け付けられた後に前記撮影手段によって撮影された、前記縫製対象物の前記表面に配置された前記標識を含む画像の画像データを、第三画像データとして取得する。前記記憶手段は、前記第二配置特定手段によって特定された前記第二標識配置を記憶する。前記更新手段は、前記記憶手段に記憶された前記第二標識配置および前記第三画像データに基づき、前記配置予定位置に配置された前記標識の前記変更後第一基準に対する位置および角度のうち少なくとも一方を特定し、特定された前記位置および前記角度のうち少なくとも一方で、前記記憶手段に記憶された前記第二標識配置を更新する。この場合、前記第三配置特定手段は、前記第一標識配置または前記記憶手段に記憶された前記第二標識配置と、前記第二画像データとに基づき、前記第三標識配置を特定してもよい。
【0010】
この場合、ユーザは、変更後第一基準が設定され、第二標識配置が特定された後、表示手段に表示される配置予定位置に従って、変更後第一基準に応じた適切な位置に、標識を配置しなおすことができる。そして、ミシンは、配置予定位置に配置された標識を含む第三画像データに基づき、配置変更後の標識の変更後第一基準に対する位置および角度のうち少なくとも一方で、記憶手段に記憶されている第二標識配置を更新し、更に、更新後の第二標識配置に基づいて第三標識配置を特定する。従って、ミシンは、第一基準が変更されても、配置予定位置を表示することで、ユーザに標識を適切な位置に配置するよう促し、第二保持位置における縫製対象物上の第二模様の配置を正しく設定することができる。
【0011】
前記第一基準は、前記第一模様が縫製される範囲に含まれる線分および点のうち少なくとも一方であり、前記第二基準は、前記第二模様が縫製される範囲に含まれる線分および点のうち少なくとも一方であってもよい。そして、前記第一基準変更手段は、前記第一基準を、前記第一模様が縫製される前記範囲に含まれる他の線分および他の点のうち少なくとも一方に変更することで、前記変更後第一基準を設定してもよい。この場合、ユーザは、第一模様または第二模様が縫製される範囲に含まれる線分および点の少なくとも一方というわかりやすい対象を指示することで、第一基準、第二基準および変更後第一基準を設定させることができる。
【0012】
前記第一基準設定手段は、前記第一模様が縫製される前記範囲に含まれる前記線分および前記点の組合せに対応する複数の第一指定キーのうち、入力操作が行われた第一指定キーに基づいて前記第一基準を設定し、前記第二基準設定手段は、前記第二模様が縫製される前記範囲に含まれる前記線分および前記点の組合せに対応する複数の第二指定キーのうち、入力操作が行われた第二指定キーに基づいて前記第二基準を設定してもよい。そして、前記配置決定手段は、前記第二模様の前記相対的配置を、前記第一指定キーに対応する前記線分の延伸方向が、前記第二指定キーに対応する前記線分と重なり、且つ、前記第一指定キーに対応する前記点が、前記第二指定キーに対応する前記点と重なる配置としてもよい。この場合、ミシンは、ユーザが第一指定キーと第二指定キーを指定するという簡単な操作だけで、第一模様に対する第二模様の相対的配置を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】多針ミシン1の斜視図である。
【図2】刺繍枠84を保持する刺繍枠移動機構11の平面図である。
【図3】多針ミシン1の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】標識110の平面図である。
【図5】メイン処理のフローチャートである。
【図6】画面200の説明図である。
【図7】画面210の説明図である。
【図8】第一基準設定画面220の説明図である。
【図9】メイン処理で実行される第一標識検出処理のフローチャートである。
【図10】第一標識検出処理で実行される配置予定位置検出処理のフローチャートである。
【図11】矩形206の配置に対する、標識110の配置予定位置の説明図である。
【図12】画面240の説明図である。
【図13】縫製対象物39の保持位置と標識110の配置との遷移状態の説明図である。
【図14】第一実施形態の配置設定処理のフローチャートである。
【図15】第二基準設定画面250の説明図である。
【図16】配置設定処理で実行される第一基準変更処理のフローチャートである。
【図17】第一基準変更時の第一基準設定画面220の説明図である。
【図18】配置設定処理で実行される第二標識検出処理のフローチャートである。
【図19】配置設定処理及び第二標識検出処理で実行される全領域検出処理のフローチャートである。
【図20】縫製対象物39の保持位置と標識110の配置との遷移状態の別の説明図である。
【図21】第二実施形態に係る配置設定処理のフローチャートである。
【図22】第二実施形態に係る第一基準変更処理のフローチャートである。
【図23】第二実施形態の第二基準設定画面300の説明図である。
【図24】縫製対象物39の保持位置と標識110の配置との遷移状態の更に別の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、図1から図3を参照して、実施形態に係る多針ミシン(以下、単にミシンという)1の構成について説明する。以下の説明では、図1の上側、下側、左斜め下側、右斜め上側、左斜め上側、右斜め下側をそれぞれ、ミシン1の上側、下側、正面側、背面側、左側、右側とする。
【0015】
図1に示すように、ミシン1の本体20は、支持部2と、脚柱部3と、アーム部4とを備える。支持部2は、平面視逆U字形に形成され、ミシン1全体を支持する。支持部2の上面には、前後方向に伸びる左右一対のガイド溝25がある。脚柱部3は、支持部2の後端部から上方へ立設されている。アーム部4は、脚柱部3の上端部から前方に延びる。アーム部4の先端には、針棒ケース21が左右方向に移動可能に装着されている。針棒ケース21の内部には、上下方向に伸びる10本の針棒31(図3参照)が左右方向に等間隔で配置されている。10本の針棒31のうち、縫製位置にある1本の針棒が、針棒ケース21の内部に設けられた針棒駆動機構32(図3参照)によって上下方向に摺動される。針棒31の下端には、縫針35(図3参照)が着脱可能である。
【0016】
針棒ケース21の右側面下部には、カバー38が設けられている。カバー38の内側には、イメージセンサ保持機構(図示せず)が取り付けられている。イメージセンサ保持機構は、イメージセンサ50(図3参照)を備える。イメージセンサ50は、周知のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。イメージセンサ50のレンズ(図示せず)は、ミシン1の下方に向けられている。
【0017】
アーム部4の前後方向中央部の右側には、操作部6が設けられている。操作部6は、液晶ディスプレイ(以下、LCDという)7と、タッチパネル8と、スタート/ストップスイッチ41とを備える。LCD7には、例えば、ユーザが指示を入力するための操作画像といった各種情報が表示される。タッチパネル8は、ユーザからの指示を受け付けるために用いられる。LCD7に表示された入力キー等の位置に対応したタッチパネル8の箇所を、ユーザが、指又はタッチペンを用いて押圧操作すること(以下、この操作を「パネル操作」という)によって、縫製される模様及び縫製条件といった各種条件を選択又は設定できる。スタート/ストップスイッチ41は、縫製の開始又は停止を指示するためのスイッチである。
【0018】
アーム部4の下方には、脚柱部3の下端部から前方へ延びる筒状のシリンダベッド10が設けられている。シリンダベッド10の先端部の内部には、釜(図示せず)が設けられている。釜は、下糸(図示せず)が巻回されたボビン(図示せず)を収納する。シリンダベッド10の内部には、釜駆動機構(図示せず)がある。釜駆動機構(図示せず)は、釜を回転駆動する。シリンダベッド10の上面には、平面視矩形の針板16がある。針板16には、縫針35(図3参照)が挿通される針穴36が設けられている。
【0019】
アーム部4の上面の背面側には、左右一対の糸駒台12が設けられている。一対の糸駒台12には、針棒31の数と同じ10個の糸駒13を設置可能である。上糸15は、糸駒台12に設置された糸駒13から供給される。上糸15は、糸案内17と、糸調子器18と、天秤19等を経由して、針棒31の下端に装着された各縫針35の針孔(図示せず)に供給される。
【0020】
アーム部4の下方には、刺繍枠移動機構11(図2参照)のYキャリッジ23が設けられている。刺繍枠移動機構11は、刺繍枠84(図2参照)を着脱可能に支持する。刺繍枠84は、縫製対象物(加工布など)39を保持する。刺繍枠移動機構11は、X軸モータ132(図3参照)及びY軸モータ134(図3参照)を駆動源として、刺繍枠84を前後左右に移動させる。
【0021】
図2を参照して、刺繍枠84と刺繍枠移動機構11とについて説明する。刺繍枠84は、外枠81と、内枠82と、左右1対の連結部89とを備える。刺繍枠84は、外枠81と内枠82とで縫製対象物39を挟持する。ユーザは、外枠81と内枠82とで挟持される縫製対象物39の部分を変えることで、刺繍枠84による縫製対象物39の保持位置を変更することができる。連結部89は、平面視矩形の中央部が矩形に切り抜かれた形状の板部材である。一方の連結部89は、内枠82の右部に螺子95によって固定され、他方の連結部89は、内枠82の左部に螺子94によって固定されている。ミシン1には、図2に例示された刺繍枠84の他、大きさ及び形状が異なる複数種類の他の刺繍枠84を装着可能である。図2に例示された刺繍枠84は、ミシン1で使用可能な刺繍枠84のうち、左右方向の幅(左右の連結部89間の距離)が一番大きな刺繍枠84である。縫製可能領域86は、図示しない公知の検出器(例えば、特開2004−254987号公報参照)の出力信号に基づき、刺繍枠84の種類に応じて、ミシン1のCPU61(図3参照)により、内枠82の内側に自動的に設定される。
【0022】
刺繍枠移動機構11は、ホルダ24と、Xキャリッジ22と、X軸駆動機構(図示せず)と、Yキャリッジ23と、Y軸移動機構(図示せず)とを備える。ホルダ24は、刺繍枠84を着脱可能に支持する。ホルダ24は、取付部91と、右腕部92と、左腕部93とを備える。取付部91は、左右方向に長い平面視矩形の板部材である。右腕部92は、前後方向に伸びる板部材であり、取付部91の右端に固定されている。左腕部93は、前後方向に伸びる板部材である。左腕部93は、取付部91の左部において、取付部91に対する左右方向の位置を調整可能に固定される。右腕部92は、刺繍枠84の一方の連結部89と係合し、左腕部93は、他方の連結部89と係合する。
【0023】
Xキャリッジ22は、左右方向に長い板部材であり、一部分がYキャリッジ23の正面から前方に突出している。Xキャリッジ22には、ホルダ24の取付部91が取り付けられる。X軸駆動機構(図示せず)は、直線移動機構(図示せず)を備える。直線移動機構は、タイミングプーリ(図示せず)と、タイミングベルト(図示せず)とを備え、X軸モータ132を駆動源として、Xキャリッジ22を左右方向(X軸方向)に移動させる。
【0024】
Yキャリッジ23は、左右方向に長い箱状である。Yキャリッジ23は、Xキャリッジ22を左右方向に移動可能に支持する。Y軸移動機構(図示せず)は、左右一対の移動体(図示せず)と、直線移動機構(図示せず)とを備える。移動体は、Yキャリッジ23の左右両端の下部に連結され、ガイド溝25(図1参照)を上下方向に貫通している。直線移動機構は、タイミングプーリ(図示せず)と、タイミングベルト(図示せず)とを備え、Y軸モータ134を駆動源として、移動体をガイド溝25に沿って前後方向(Y軸方向)に移動させる。移動体に連結されたYキャリッジ23と、Yキャリッジ23に支持されたXキャリッジ22とは、これに伴って前後方向(Y軸方向)に移動する。縫製対象物39を保持する刺繍枠84をXキャリッジ22に装着した状態では、縫製対象物39は、針棒31と、針板16(図1参照)との間に配置される。
【0025】
図3を参照して、ミシン1の電気的構成について説明する。図3に示すように、ミシン1は、縫針駆動部120と、縫製対象駆動部130と、操作部6と、制御部60と、イメージセンサ50とを備える。以下、縫針駆動部120と、縫製対象駆動部130と、操作部6と、制御部60について順に詳述する。
【0026】
縫針駆動部120は、主軸モータ122と、駆動回路121と、針棒ケース用モータ45と、駆動回路123とを備える。主軸モータ122は、針棒31を上下方向に往復移動させる。駆動回路121は、制御部60からの制御信号に従って主軸モータ122を駆動する。針棒ケース用モータ45は、針棒ケース21を左右方向に移動させる。駆動回路123は、制御部60からの制御信号に従って針棒ケース用モータ45を駆動する。
【0027】
縫製対象駆動部130は、X軸モータ132と、駆動回路131と、Y軸モータ134と、駆動回路133とを備える。X軸モータ132は、刺繍枠移動機構11を駆動させて刺繍枠84(図2参照)を左右方向に移動させる。駆動回路131は、制御部60からの制御信号に従ってX軸モータ132を駆動する。Y軸モータ134は、刺繍枠移動機構11を駆動させて刺繍枠84を前後方向に移動させる。駆動回路133は、制御部60からの制御信号に従ってY軸モータ134を駆動する。
【0028】
操作部6は、タッチパネル8と、駆動回路135と、LCD7と、スタート/ストップスイッチ41とを備える。駆動回路135は、制御部60からの制御信号に従ってLCD7を駆動する。
【0029】
制御部60は、CPU61と、ROM62と、RAM63と、EEPROM64と、入出力インターフェイス(I/O)66とを備え、これらは信号線65によって相互に接続されている。I/O66には、縫針駆動部120と、縫製対象駆動部130と、操作部6と、イメージセンサ50とがそれぞれ接続されている。以下、CPU61と、ROM62と、RAM63と、EEPROM64とについて詳述する。
【0030】
CPU61は、ミシン1の主制御を司り、ROM62のプログラム記憶エリア(図示せず)に記憶された各種プログラムに従って、縫製に関わる各種演算及び処理を実行する。ROM62は、図示しないが、プログラム記憶エリアと、模様記憶エリアとを含む複数の記憶エリアを備える。プログラム記憶エリアには、メインプログラムを含む、ミシン1を動作させるための各種プログラムが記憶されている。メインプログラムは、後述するメイン処理を実行するためのプログラムである。模様記憶エリアには、模様(以下、「刺繍模様」ともいう)を縫製するためのデータである縫製データが記憶されている。RAM63には、CPU61が演算処理した演算結果等を収容する記憶エリアが必要に応じて設けられる。EEPROM64には、ミシン1が各種処理を実行するための各種パラメータが記憶されている。EEPROM64には、さらに、各針棒31と、各針棒31の下端に装着される縫針35の針孔(図示せず)に供給される上糸15の色とが対応付けて記憶されている。縫製データは、EEPROM64に記憶されていてもよい。
【0031】
図1から図3を参照して、刺繍枠84に保持された縫製対象物39に縫目を形成するミシン1の動作について説明する。縫製対象物39を保持する刺繍枠84は、刺繍枠移動機構11に支持される。針棒ケース21が左右に移動することで、10本の針棒31のうち1本が選択される。刺繍枠移動機構11によって、刺繍枠84が所定の位置に移動される。主軸モータ122によって主軸(図示せず)が回転駆動されると、針棒駆動機構32及び天秤駆動機構(図示せず)が駆動され、選択された針棒31及びそれに対応する天秤19が上下駆動される。また、主軸モータ122の回転によって釜駆動機構が駆動され、釜が回転駆動される。このように、縫針35と天秤19と釜とが同期して駆動され、縫製対象物39に縫目が形成される。
【0032】
図2を参照して、本実施形態の縫製データについて説明する。本実施形態の縫製データは、図2に示す刺繍座標系100の座標データを含む。刺繍座標系100は、Xキャリッジ22を移動させるX軸モータ132及びY軸モータ134の座標系である。刺繍座標系100の座標データは、基準(例えば、Xキャリッジ22)に対する刺繍模様の位置及び角度を表す。Xキャリッジ22には、縫製対象物39を保持する刺繍枠84が装着される。従って、刺繍座標系100の座標データは、刺繍枠84に保持された縫製対象物39に対する刺繍模様の位置及び角度を表す。本実施形態では、刺繍座標系100とワールド座標系とを予め対応させている。ワールド座標系は、空間全体を示す座標系である。ワールド座標系は、撮影対象物の重心等の影響を受けることのない座標系である。
【0033】
図2に示すように、刺繍座標系100は、ミシン1の左から右に向かう方向がX軸プラス方向であり、ミシン1の前から後に向かう方向がY軸プラス方向である。本実施形態では、刺繍枠84の初期位置を刺繍座標系100の原点(X、Y、Z)=(0、0、0)としている。刺繍枠84の初期位置は、刺繍枠84に対応する縫製可能領域86の中心点が、針落ち点と一致する位置である。針落ち点とは、針穴36(図1参照)の鉛直上方に配置された縫針35(図3参照)が、縫製対象物39の上にある状態から針棒31を下方向に移動させた際に、縫針35が縫製対象物39に刺さる点である。本実施形態の刺繍枠移動機構11は、刺繍枠84をZ方向(ミシン1の上下方向)には移動させないので、縫製対象物39の厚みが無視できる範囲であれば、縫製対象物39の上面をZ=0としている。
【0034】
ROM62に記憶されている縫製データの座標データは、刺繍模様の初期配置を規定する。刺繍模様の初期配置は、刺繍模様の中心点が縫製可能領域86の中心点と一致するように設定されている。縫製データの座標データは、縫製対象物39に対する刺繍模様の配置が変更された場合に適宜補正される。本実施形態では、縫製対象物39に対する刺繍模様の配置は、後述するメイン処理に従って設定される。以下の説明では、刺繍模様(刺繍模様の中心点)の位置及び刺繍模様の角度は、刺繍座標系100で表されるデータを用いて、刺繍枠84に保持された縫製対象物39に対して設定される。
【0035】
図2を参照して、イメージセンサ50(図3参照)の撮影範囲について説明する。イメージセンサ50が撮影位置に配置された場合、イメージセンサ50の刺繍座標系100のXY平面における撮影範囲は、イメージセンサ50のレンズ中心の真下となる点を中心とする、左右方向の長さが約80mmであり前後方向の長さが約60mmの矩形範囲である。本実施形態の撮影位置は、イメージセンサ50のレンズ中心が、針穴36の直上に配置される位置である。図2に示すように、イメージセンサ50が撮影位置に配置され、且つ、刺繍枠84が初期位置に配置された場合の撮影範囲180は、刺繍座標系100の原点を中心とする矩形範囲となる。
【0036】
図4を参照して、標識110について説明する。図4の上側、下側、左側、右側をそれぞれ、標識110に描かれた模様の上側、下側、左側、右側として説明する。標識110は、白色で薄板状の基材シート108の上面に模様が描かれたものである。基材シート108は、例えば、縦が約2.5cm、横が約2.5cmの正方形状である。基材シート108の上面には、第一円101と、第二円102と、第一中心点111と、第二中心点112とが描かれている。第二円102は、第一円101の上方に配置される。第二円102の直径は、第一円101の直径よりも小さい。第一中心点111は、第一円101の中心である。第二中心点112は、第二円102の中心である。基材シート108の上面には、さらに、線分103から106が描かれている。線分103と、線分104とは、第一中心点111と第二中心点112とを通る仮想的な直線(図示せず)と重なる。線分105と、線分106とは、第一円101の第一中心点111を通り、線分103に直交する仮想的な直線(図示せず)と重なる。線分103から106は、それぞれ、基材シート108の外縁端まで描かれている。
【0037】
基材シート108の裏面には透明の粘着剤が塗着されている。従って、基材シート108を縫製対象物39上に貼付することが可能である。通常、基材シート108は剥離紙(図示せず)に貼着された状態になっている。ユーザは、剥離紙から基材シート108を剥がして使用する。
【0038】
図5から図18を参照して、ミシン1において実行されるメイン処理について説明する。本実施形態のメイン処理では、刺繍枠84(図2参照)の内側に設定される縫製可能領域86よりも広い範囲に複数の模様を縫製する場合に、ユーザの指示に従って、模様間の配置が調整される。以下では、具体例として、図6に示す模様205が、ユーザによって入力された指示に従って複数配置され、縫製される場合について説明する。模様205の大きさは、X軸方向の長さが186.8mmであり、Y軸方向の長さが133.0mmである。縫製可能領域86の大きさが、X軸方向の長さが360mmであり、Y軸方向の長さが200mmである場合、1つの模様205は縫製可能領域86に収まる。しかし、X軸方向またはY軸方向に、2個の模様205を重ねずに、2個の模様205が接するように、または所定の間隔を空けて配置された場合、2個の模様205は、縫製可能領域86には収まらない。
【0039】
図5に示すメイン処理は、ユーザがメイン処理を開始する指示を入力した場合に実行される。メイン処理を開始する指示は、例えば、パネル操作によって入力される。メイン処理を実行するためのプログラムは、ROM62(図3参照)に記憶されており、CPU61によって実行される。以下の説明において、イメージセンサ50が生成した画像データによって表される画像を、撮影画像と言う。例示する各種画面及びメッセージは、駆動回路135に制御信号が出力されることによってLCD7に表示される。例示する各種画面において、各図の左右方向及び上下方向を、それぞれ画面の左右方向及び上下方向と言う。
【0040】
図5に示すように、メイン処理ではまず、変数Nに1が設定され、設定された変数NはRAM63に記憶される(S10)。変数Nは、ユーザによって選択された模様の数をカウントするための変数である。変数Nは、選択された模様の縫製順序に対応する。CPU61は、N番目の模様が選択されるまで待機する(S20:NO)。S20では、まず、図6に例示する画面200が表示される。図6に示すように、画面200には、模様表示欄201と、模様情報欄202と、模様選択欄203と、SETキー204とが表示されている。
【0041】
模様表示欄201には、現在選択されている模様が縫製される範囲を表す図形が表示される。模様表示欄201の大きさは、ミシン1に設定される縫製可能領域86の最大の大きさを表す。つまり、模様表示欄201の大きさは、図2に例示する刺繍枠84が装着された場合に設定される縫製可能領域86の大きさに対応している。模様表示欄201の左右方向は、刺繍座標系100のX軸方向に対応する。模様表示欄201の上下方向は、刺繍座標系100のY軸方向に対応する。本実施形態では、模様が縫製される範囲を表す図形を矩形で表す。模様205の配置を変更する前の状態では、模様205が縫製される範囲を表す矩形206は、模様表示欄201の左右方向に平行な辺と、模様表示欄201の上下方向に垂直な方向に平行な辺とを備える。模様情報欄202には、現在選択されている模様に関する情報として、上記矩形の大きさと、模様の初期配置に対する移動距離及び回転角度と、縫製に必要な糸の色数とが表示される。
【0042】
模様選択欄203には、ROM62又はEEPROM64に記憶されている縫製データに基づき、模様の候補が表示される。ユーザは、模様選択欄203に表示されている模様の中から、所望の模様をパネル操作によって選択する。SETキー204は、模様の選択が終了した場合に選択される。S20では、パネル操作によって、模様選択欄203の中から1つの模様が選択された後、SETキー204が選択された場合に、N番目の模様が選択されたと判断される(S20:YES)。この場合、ROM62又はEEPROM64から、選択されたN番目の模様に対応する縫製データが取得され、RAM63に記憶される(S30)。
【0043】
図6の画面200において、1番目の模様として模様205が選択された後、SETキー204が選択された場合(S20:YES、S30、S40:YES)、1番目の模様の配置が設定される(S50)。具体的には、S30で取得された1番目の模様の縫製データが、ユーザにより指示された模様の編集内容に従って、公知の方法により補正されることで、1番目の模様の配置が設定される。
【0044】
S50では、図7に例示する画面210が表示される。図7に示すように、画面210には、模様表示欄211と、模様情報欄212と、模様編集欄213と、EDIT ENDキー214とが表示されている。模様表示欄211は、模様表示欄201と同様であり、模様情報欄212は、模様情報欄202と同様である。模様編集欄213には、模様の編集を指示する各種キーが表示される。ユーザは、模様編集欄213に表示されたキーをパネル操作によって選択することによって、模様の編集を指示することができる。模様の編集は、例えば、模様の大きさの変更と、初期配置に対する模様の回転と、模様の反転と、初期配置に対する模様の移動とを含む。模様の初期配置は、上述のように、縫製データによって規定されている。模様の編集が行われた場合、模様が縫製される範囲を表す矩形は、編集内容に応じた位置及び角度で模様表示欄201に表示される。EDIT ENDキー214は、模様の編集が終了した場合に選択される。EDIT ENDキー214が選択されると、指示された編集内容が確定され、縫製データが補正され、RAM63に記憶される。
【0045】
図7では、模様205に対応する矩形206が、初期配置に対してY軸方向に+33.2mm移動された場合の画面210が図示されている。よって、模様表示欄211の矩形206は、図6に示す初期位置の矩形206よりも33.2mm画面210の上方にある。このように、模様の編集が行われた後、EDIT ENDキー214が選択された場合、図示しないが、縫製開始キーと、模様つなぎキーとを備える画面がLCD7に表示される。縫製開始キーは、模様の縫製を開始することを指示する場合に選択される。模様つなぎキーは、S20で選択されたN番目の模様に加え、N+1番目の模様が縫製される場合であって、N番目の模様およびN+1番目の模様全体が縫製可能領域86よりも広い範囲に縫製される場合に選択される。
【0046】
模様つなぎキーが選択されたかが判断される(S95)。模様つなぎキーが選択された場合(S95:YES)、第一基準を設定するための処理が行われる。第一基準とは、第一保持位置で縫製されるN番目(またはN−1番目)の模様を第一模様、第二保持位置で縫製されるN+1番目(またはN番目)の模様を第二模様とした場合に、第一模様の配置に対する第二模様の配置を決定する際に使用される、第一模様に関する基準である。第一保持位置および第二保持位置は、刺繍枠84による縫製対象物39の保持位置のうち、ユーザによって設定される互いに異なる保持位置である。
【0047】
まず、図8に例示する第一基準設定画面220が表示される(S100)。図8に示すように、第一基準設定画面220には、模様表示欄221と、模様情報欄222と、指示キー表示欄223とが表示されている。模様表示欄221は、模様表示欄201と同様であり、模様情報欄222は、模様情報欄202と同様である。指示キー表示欄223には、第一指定キー群224と、CLOSEキー226とが表示されている。第一指定キー群224に含まれる各第一指定キーは、第一基準を指定するキーである。
【0048】
第一基準は、例えば、ユーザによって指定された、第一図形に含まれる第一線分227及び第一点228の少なくともいずれかを含む基準である。本実施形態の第一基準は、第一線分227及び第一点228を含む。第一図形は、第一模様(N番目の模様)が縫製される範囲を表す図形であり、本実施形態では、第一模様が収まる最小矩形である。第一線分227は、この最小矩形を構成する四辺のいずれかから選択される。第一点228は、第一線分227の両端の点及び第一線分227の中点のいずれかから選択される。本実施形態では、第一指定キー群224に含まれる、12個の第一指定キーの中から、第一線分227と第一点228との組み合わせが第一基準として選択される。CLOSEキー226は、第一基準の指定が終了した場合に選択される。
【0049】
第一指定キー群224のうちのいずれかの第一指定キーが選択されたかが判断される(S110)。図8に示す第一基準設定画面220において、第一指定キー群224からいずれかの第一指定キーが選択された場合(S110:YES)、第一指定キーによって指定された第一基準が設定され、RAM63に記憶される(S120)。第一模様に対応する矩形における第一基準(第一線分227及び第一点228)の配置は、その模様の縫製データ(図5に示すメイン処理のS50で模様が編集され、縫製データが補正された場合は、補正後の縫製データ)に基づき、特定可能である。刺繍座標系の座標で特定された第一保持位置における第一線分227及び第一点228の配置は、RAM63に記憶される。
【0050】
また、S120では、第一模様に対応する矩形に設定された第一基準、すなわち、第一線分227及び第一点228が付加されて、模様表示欄221に表示される。図8に例示された第一線分227及び第一点228は、矩形206の右辺とその上端の点の組み合わせを指定する第一指定キー225に対応している。本実施形態のミシン1は、ユーザが矩形206に対する第一基準を視認しやすいように、矩形206を黒色で、第一線分227を青色で、第一点228を赤色で、それぞれ表示する。矩形206の配置は、刺繍座標系で表される縫製データによって特定される。
【0051】
第一指定キー群224のうちのいずれの第一指定キーも選択されない場合(S110:NO)、又は、S120で第一基準が設定された後、CLOSEキー226が選択されたかが判断される(S130)。CLOSEキー226が選択されていない場合(S130:NO)、処理はS110に戻る。CLOSEキー226が選択された場合(S130:YES)、図8に示す第一基準設定画面220に代えて、縫製開始キーを備える画面(図示せず)がLCD7に表示される。
【0052】
縫製開始指示が行われたか否かが判断される(S140)。ユーザは、縫製開始の指示を入力する場合、画面に表示された縫製開始キーを選択する。CPU61は、縫製開始キーが選択されるまで待機する(S140:NO)。縫製開始キーが選択された場合(S140:YES)、N番目の模様の縫製が実行される(S150)。具体的には、N番目の模様の縫製データに従って、駆動回路131と、駆動回路133とに制御信号が出力され、刺繍枠84が移動される。駆動回路121に制御信号が出力され、主軸モータ122が駆動される。
【0053】
次に、図示しないが、メッセージ「次の模様を縫製しますか?」と、OKキーとがLCD7に表示される(S160)。メッセージは、次の模様(N+1番目の模様)を縫製するための処理を実行するか否かをユーザに確認するために表示される。OKキーは、次の模様を縫製するための処理を実行する場合に選択される。所定時間内(例えば、5分間)にOKキーが選択されない場合(S170:NO)、メイン処理は終了する。OKキーが選択された場合(S170:YES)、変数Nは1だけインクリメントされ、インクリメントされた変数NはRAM63に記憶される(S180)。
【0054】
次に、第一標識検出処理が実行される(S190、図9)。第一標識検出処理は、第一保持位置における標識110の配置と、第一基準とを対応付ける処理である。S180(図5参照)において、Nはインクリメントされているので、N−1番目の模様が、第一模様に対応し、N番目の模様が、第二模様に対応する。標識110の配置は、標識110の位置及び角度の少なくともいずれかを含む。本実施形態のミシン1は、標識110の配置として、2つの標識110の第一中心点111の刺繍座標系の座標に基づき、標識110の位置及び角度を検出する。
【0055】
標識110の位置は、例えば、2つの標識110のうちの一方の第一中心点111の刺繍座標系100の座標で表される。標識110の角度は、2つの標識110のうちの一方の標識110の第一中心点111から他方の標識110の第一中心点111に向かうベクトルと刺繍座標系のX軸とのなす角で表される。2つの標識110の区別は、例えば、各標識110における第一中心点111に対する、第二中心点112の相対位置に基づき判断される。具体的には、図11に示すように、標識110の位置は、一方の標識110(図11では、上側)の第一中心点111の刺繍座標系の座標で表される。また、標識110の角度は、一方の標識110(図11では、上側)の第一中心点111からもう一方の標識110(図11では、下側)の第一中心点111に向かうベクトル113とX軸とのなす角θで表される。
【0056】
図9及び図10を参照して第一標識検出処理の詳細について説明する。図9に示すように、イメージセンサ50が撮影位置に移動され、イメージセンサ50による針穴36(図1参照)付近の撮影が開始される(S191)。続いて、配置予定位置検出処理が行われる(S192、図10)。配置予定位置検出処理は、ユーザによって2つの配置予定位置に配置された標識110を検出する処理である。配置予定位置とは、縫製対象物39上の標識110が配置されるべき位置である。本実施形態では、図11に示すように、縫製対象物39(図2参照)上の第一線分227の両端付近に対応する位置が、配置予定位置とされる。図10に示すように、配置予定位置検出処理では、まず、刺繍枠84が、配置予定位置がイメージセンサ50の撮影範囲内に収まる位置に移動され、LCD7に配置予定位置が表示される(S201)。具体的には、図12に例示する画面240がLCD7に表示される。図12に示すように、画面240には、模様表示欄241と、配置予定位置表示欄242とが表示されている。模様表示欄241は、模様表示欄201と同様である。配置予定位置表示欄242には、メッセージ243と、合成画像244と、OKキー246とが表示されている。
【0057】
合成画像244は、イメージセンサ50から出力される針穴36付近の画像に、赤色の矩形245が付与された画像である。赤色の矩形245は、配置予定位置を示す。前述のように、本実施形態では、第一線分227の両端付近に対応する位置が配置予定位置とされている。よって、1個目の標識110を検出する処理では、赤色の矩形245は、針穴36付近の画像における、矩形206内の第一線分227の一方の端の付近に表示される。矩形245の大きさは、標識110の大きさの約1.5倍である。メッセージ243は、標識110を矩形245の内側の領域に配置した後、OKキー246を選択することをユーザに促すために表示される。ユーザは、画面240を確認しながら、配置予定位置表示欄242に表示されているように、矩形245の内側に標識110を貼り付けた後、OKキー246を選択する。
【0058】
CPU61は、OKキー246が選択されるまで待機する(S202:NO)。OKキー246が選択された場合(S202:YES)、イメージセンサ50から出力される画像データが取得され、取得された画像データがRAM63に記憶される(S203)。次に、矩形245の内側となる部分の画像から標識110を検出する処理が実行される(S204)。S204では、矩形245の内側となる部分の画像から標識110が検出された場合、標識110に含まれる第一中心点111及び第二中心点112の刺繍座標系の座標が特定される。
【0059】
標識110の検出及び座標の特定は、公知の方法(例えば、特開2010−246885号公報参照)を用いて実行される。具体的には、標識110の第一中心点111及び第二中心点112について、例えばハフ変換処理を用いて、イメージセンサによって撮像された画像の座標系である画像座標系における二次元座標が算出される。その後、画像座標系の二次元座標がワールド座標系の三次元座標に変換される。前述のように、本実施形態では、刺繍座標系と、ワールド座標系とは対応付けられているので、画像処理によって算出されたワールド座標系の三次元座標に基づき、刺繍座標系の座標が算出される。
【0060】
S204で標識110が検出されていない場合(S205:NO)、標識110を矩形245内に配置することをユーザに促すメッセージがLCD7に表示される(S206)。次に、処理はS202に戻る。標識110が検出された場合(S205:YES)、検出された標識110が、2個目の標識110であるかが判断される(S207)。前述のように、本実施形態のミシン1は、縫製対象物39上の第一線分227の両端付近に対応する位置にそれぞれ配置された2個の標識110を検出して、標識110の配置と、第一保持位置における第一基準の配置とを対応付ける。よって、検出された標識110が、1個目の標識110である場合(S207:NO)、駆動回路131と、駆動回路133とに制御信号が出力され、2個目の標識110を検出するための位置に刺繍枠84が移動される(S208)。具体的には、1個目の標識110の処理で使用されたのとは反対側の第一線分227の端の付近に設定される配置予定位置がイメージセンサ50の撮影範囲に収まる位置に、刺繍枠84が移動される。
【0061】
次に、処理はS201に戻り、2個目の標識110を検出するための処理が実行される(S201〜S206)。なお、2個目の標識110の処理のS201では、赤色の矩形245は、第一模様が縫製される範囲を示す矩形内の、1個目の標識110の処理で表示されたとは反対側の第一線分227の端の付近に表示される。検出された標識110が、2個目の標識110である場合(S207:YES)、CPU61は、図10に示す配置予定位置検出処理を終了し、図9に示す第一標識検出処理に戻る。配置予定位置検出処理(S192)で検出された標識110の座標と第一基準の座標とから、第一保持位置での第一基準に対する標識110の配置が特定され、第一標識配置として、RAM63に記憶される(S193)。具体的には、第一保持位置における標識110の第一中心点111(図11参照)の座標と、メイン処理(図5参照)のS120で特定された第一保持位置における第一基準(第一線分227及び第一点228)の座標とを対応付けることによって、第一保持位置での第一基準に対する標識110の配置(位置及び角度)が特定される。この後、CPU61は第一標識検出処理を終了し、図5に示すメイン処理に戻る。
【0062】
図5に示すように、第一標識検出処理(S190)の次に、CPU61は、刺繍枠84に対する縫製対象物39(図2参照)の保持位置を変更することをユーザに促すメッセージとOKキー(図示せず)をLCD7に表示させる(S210)。このメッセージの表示後、ユーザによって、縫製対象物39の表面に標識110が貼り付けられた状態で、刺繍枠84に対する縫製対象物39の保持位置が変更される。すなわち、保持位置が変更されても、縫製対象物39に対する標識110の配置は変更されない。変更後の保持位置と、第一保持位置とは、刺繍枠84に対する縫製対象物39の相対的な保持位置が異なる。
【0063】
このときの変更後の保持位置は、少なくとも、縫製対象物39に貼り付けられた2個の標識110のそれぞれが、刺繍枠84の内側、特に、変更後の保持位置における縫製可能領域86内に配置されるという条件を満たす必要がある。この条件に加え、ユーザの指示に応じて配置される次の模様が、変更後の保持位置における縫製可能領域86内に収まる場合には、変更後の保持位置は、第二保持位置である。この場合は、保持位置が第二保持位置とされたまま、縫製対象物39に対する次の模様(第二模様)の配置が設定された後、縫製が行なわれる。一方、変更後の保持位置では、配置される次の模様が、変更後の保持位置における縫製可能領域86に収まらず、そのままでは縫製できない場合には、この変更後の保持位置は仮保持位置とされ、仮保持位置における第一基準に対する標識110の配置が特定された後、保持位置が第二保持位置に変更されることになる。
【0064】
例えば、図13に示すように、第一保持位置における縫製可能領域86内に配置された矩形206内に、第一模様である模様205が縫製される。その後、第一線分227として指定された矩形206の右辺の両端付近に貼り付けられた2つの標識110の配置が特定される。保持位置変更を促すメッセージに従い、ユーザは、縫製対象物39を刺繍枠84から一旦外し、例えば、変更後の保持位置で設定される縫製可能領域86A内に2つの標識110が配置されるように、縫製対象物39を刺繍枠84にセットする。ユーザが、矩形206A内に第二模様を配置することを希望する場合には、第二模様は縫製可能領域86Aに収まるので、変更後の保持位置は第二保持位置である。一方、矩形206B内に次の模様を配置することを希望する場合には、次の模様は縫製可能領域86Aに収まらないので、変更後の保持位置は仮保持位置である。第二保持位置および仮保持位置に保持位置が変更された後の処理の詳細については後述する。
【0065】
保持位置が変更され、OKキーが選択されると、図5に示すように、処理はS20に戻る。図13に示すように、第一模様である1番目の模様205が縫製された後、2番目の模様として、同じ模様205が選択されたものとする(S20:YES)。この場合、2番目の模様205の縫製データが取得された後(S30)、変数Nは1ではないと判断される(S40:NO)。変数Nが2以上の場合には、変数Nが1である場合とは異なり、配置設定処理が実行される(S60、図14)。配置設定処理では、第二保持位置における縫製対象物39に対するN番目の模様(第二模様)の配置を設定する処理が実行される。前述したように、配置設定処理が行われる時点では、第一模様は既に縫製対象物39に縫製されており、縫製対象物39に対する配置が確定している。
【0066】
図14〜図20を参照して、配置設定処理の詳細について説明する。図14に示すように、配置設定処理では、まず、図15に示す第二基準設定画面250が表示される(S301)。図15に示すように、第二基準設定画面250には、模様表示欄251と、模様情報欄252と、指示キー表示欄253とが表示されている。模様表示欄251は、模様表示欄201と同様であり、模様情報欄252は、模様情報欄202と同様である。指示キー表示欄253には、第二指定キー群254、前の模様の基準変更キー(以下、基準変更キーという)256、標識検出キー257、キャンセルキー258、およびOKキー259が表示されている。第二指定キー群254に含まれる各第二指定キーは、第二基準を指定するキーである。第二基準とは、第一模様(N−1番目の模様)の配置に対する第二模様(N番目の模様)の配置を決定する際に使用される、第二模様に関する基準である。
【0067】
第二基準は、例えば、ユーザによって指定された、第二図形に含まれる第二線分208及び第二点209の少なくともいずれかを含む基準である。本実施形態の第二基準は、第二線分208及び第二点209を含む。第二図形は、次に縫製される第二模様が縫製される範囲を表す図形であり、本実施形態では第一図形と同様に、第二模様が収まる最小矩形である。第二線分208は、第一線分227(図8参照)と同様に、この最小矩形を構成する四辺のいずれかから選択される。第二点209は、第一点228(図8参照)と同様に、第二線分208の両端の点及び第二線分208の中点のいずれかから選択される。本実施形態では、第二指定キー群254に含まれる、12個の第二指定キーの中から、第二線分208と第二点209との組み合わせが第二基準として選択される。
【0068】
基準変更キー256は、第二基準を指定する時点又は指定した後で、ユーザが第一基準を誤って設定してしまったことに気づいた場合等、ユーザが、既に設定されている第一基準を変更したい場合に選択されるキーである。第一基準を変更する処理については後述する。標識検出キー257は、現在の保持位置が前述した仮保持位置である場合、仮保持位置において、第一基準に対する標識110の配置を特定する際に選択されるキーである。仮保持位置における標識110の配置の特定処理については後述する。キャンセルキー258は、第二基準の指定が終了される前に、指定を取り消すためのキーである。OKキー259は、第二基準の指定が終了した場合に選択される。
【0069】
第二指定キー群254のうちのいずれかの第二指定キーが選択されたかが判断される(S302)。いずれかの第二指定キーが選択された場合(S302:YES)、第二指定キーによって指定された第二基準が設定され、RAM63に記憶される(S303)。より詳細には、第二基準(第二線分及び第二点)の配置が、縫製データに基づき、刺繍座標系の座標で特定され、RAM63に記憶される。第一基準および第二基準に基づいて、第一模様の配置に対する第二模様の相対的な配置が決定され、RAM63に記憶される(S304)。決定された第一模様に対する第二模様の配置は、LCD7に表示される(S305)。
【0070】
本実施形態では、模様の配置は、初期配置に対する模様の位置及び角度を含む。第一模様(N−1番目の模様)の配置に対する第二模様(N番目の模様)の相対的な配置は、第一基準及び第二基準に基づき以下のように決定される。すなわち、第一模様の配置に対する第二模様の相対的な配置は、第一線分227の延伸方向が第二線分208と重なり、且つ、第一点228が、第二点209と重なる配置に決定される。上記の条件を満たす、第一模様の配置に対する第二模様の相対的な配置は、第一模様と次第二模様とが重なる場合と、第一模様と第二模様とが互いに重ならない場合の2パターン考えられる。本実施形態では、2パターンの配置のうち、第一模様と第二模様とが互いに重ならない方が採用される。
【0071】
例えば、図8に示すように1番目の模様205(図6参照)の第一基準(第一線分227および第一点228)が設定された状態で、図15に示す第二基準設定画面250において、2番目の模様205の範囲を表す矩形207の左辺とその上端の点の組み合わせを指定する第二指定キー255が選択されたとする。この場合、1番目の模様205の配置に対する2番目の模様205の相対的な配置は次のように決定され、模様表示欄251に表示される。1番目の模様205の範囲を表す矩形206の右辺(第一線分227)の延伸方向と、矩形207の左辺(第二線分208)とが重なり、且つ、矩形206の右辺の上端の点(第一点228)と、矩形207の左辺の上側の端点(第二点209)とが重なる配置に決定される。ユーザは、LCD7に表示された画面を見ることによって、第一模様(N−1番目の模様)の配置に対する第二模様(N番目の模様)の相対的な配置を確認することができる。そして、その配置関係が、ユーザの希望通りであれば、ユーザはOKキー259を選択する(S331:YES)。この場合、処理は後述するS332に進む。
【0072】
一方、S305で表示された第一模様と第二模様の配置関係を確認した結果、ユーザが、第一模様の第一基準を誤って設定したことに気づく場合がありうる。このような場合、ユーザは、OKキー259や、第二指定キーを選択せず(S331:NO、S302:NO)、基準変更キー256を選択して、既に設定されている第一基準の変更を指示する(S311:YES)。または、第二基準を設定する前の段階で、ユーザが、第一模様の第一基準を変更したい場合もありうる。このような場合、ユーザは、最初から第二指定キーは選択せず、基準変更キー256を選択する(S301、S302:NO、S311:YES)。基準変更キー256が選択されると(S311:YES)、第一基準変更処理が行われる(S312、図16)。第一基準変更処理は、既に設定されている第一基準を変更し、第一保持位置における変更後の第一基準に対する標識110の配置を特定する処理である。
【0073】
図16および図17を参照し、図13に示すように1番目の模様205の第一基準(第一線分227および第一点228)が設定されている場合を具体例として、第一基準変更処理について説明する。図16に示すように、まず、LCD7に現在の第一基準が表示される(S401)。具体的には、第一基準設定画面220(図8参照)が再表示される。前述したように、第一基準(第一線分227及び第一点228)の配置は、図5に示すメイン処理のS120で設定され、RAM63に記憶されている。よって、模様表示欄221には、RAM63に記憶されている第一基準の配置に基づき、設定されている第一線分227と第一点228とが付加された矩形206が表示され、指示キー表示欄223には、設定されている第一線分227と第一点228の組合せに対応する第一指定キーが認識可能に表示される。
【0074】
第一指定キー群224からいずれかの第一指定キーが選択された場合(S402:YES)、RAM63に記憶されていた第一基準が、新たに選択された第一指定キーに対応する第一基準に変更され、変更後の第一基準がRAM63に記憶される(S403)。具体的には、第一模様に対応する矩形における変更後の第一基準(第一線分227及び第一点228)の配置が、その模様の縫製データに基づき、刺繍座標系の座標で特定され、RAM63に記憶される。また、S403では、変更後の第一基準が付加された矩形206が、模様表示欄221に表示される。
【0075】
図13に示すように、ユーザが第二模様を矩形206A内に配置したい場合、変更前の第一点228には、第二模様を希望するように接続できない。よって、ユーザは、例えば、第一点228を、矩形206の右辺の中点228Aの位置に変更する必要がある。この場合、ユーザは、図17に示すように、矩形206の右辺とその中点の組合せに対応する第一指定キー229を選択する。すると、RAM63に記憶されていた矩形206の右辺とその上端の点を特定する座標が、矩形206の右辺とその中点を特定する座標に変更される。また、矩形206の右辺に第一線分227、右辺の中点に第一点228が付加されて、模様表示欄221に表示される。
【0076】
第一指定キー群224のうちのいずれの第一指定キーも選択されない場合(S402:NO)、又は、S403で第一基準が変更された後、CLOSEキー226が選択されたかが判断される(S404)。CLOSEキー226が選択されていない場合(S404:NO)、処理はS402に戻る。CLOSEキー226が選択された場合(S404:YES)、第一保持位置での変更後の第一基準に対する標識110の配置が第二標識配置として特定され、RAM63に記憶されていた第一標識配置が第二標識配置で更新される(S405)。具体的には、第一保持位置における変更後の第一線分227および第一点228の刺繍座標系の座標は、矩形206に対応する模様205の縫製データ(図5に示すメイン処理のS50で模様が編集され、縫製データが補正された場合は、補正後の縫製データ)から特定できる。特定された変更後の第一線分227および第一点228の座標と、RAM63に記憶されている第一保持位置における標識110の座標とから、第一保持位置での変更後の第一基準に対する標識110の配置が特定される。
【0077】
CPU61は、LCD7に、第一基準の変更が完了したことを報知するメッセージを含む画面(図示せず)を表示させる(S406)。続いて、第二基準が既に設定されているか否かが判断される(S407)。第二基準が既に設定されている場合(S407:YES)、前述したように、変更前の第一基準と第二基準とに基づき、第一模様に対する第二模様の相対的な配置が決定されている(図14のS304)。よって、変更後の第一基準と第二基準とに基づき、第一模様に対する第二模様の相対的な配置が決定し直される(S408)。配置の決定方法は、図14のS304と同様である。
【0078】
その後、CPU61は、図15に示す第二基準設定画面250を再びLCD7に表示させる(S409)。このとき、模様表示欄251には、決定し直された配置関係で、第一模様と第二模様に対応する2つの矩形が表示される。一方、第一基準の変更完了時点で第二基準がまだ設定されていない場合(S407:NO)、模様表示欄251には、第二模様に対応する矩形のみが表示された状態で、第二基準設定画面250が表示される(S409)。S409の後、CPU61は第一基準変更処理を終了し、図14に示す配置設定処理に戻る。なお、ユーザがまだ第二基準を設定していなければ、続けていずれかの第二指定キーが選択され、第二基準が設定される(S302:YES、S303)。この場合は、続くS304では、変更後の第一基準と第二基準とに基づき、第一模様に対する第二模様の相対的な配置が決定されることになる。
【0079】
第二基準設定画面250において、第二指定キーも基準変更キー256も選択されない場合(S302:NO、S311:NO)、標識検出キー257が選択され、第二標識検出処理の実行が指示されたかが判断される(S321)。標識検出キー257が選択されていない場合(S321:NO)、処理はS331に進む。一方、例えば、図13に示すように、ユーザが第二模様を矩形206Bの位置に配置したい場合、この時点の保持位置で設定される縫製可能領域86Aにはその第二模様は収まらない。このような場合、ユーザは標識検出キー257を選択する(S321:YES)。この場合、第二標識検出処理が行われる(S322、図18)。
【0080】
図18〜図20を参照して、第二標識検出処理について説明する。なお、以下の説明では、図20に示すように、まず、刺繍枠84(図2参照)による縫製対象物39の保持位置が、縫製可能領域86に対応する第一保持位置にある状態で、右辺が第一線分227、右辺の上端の点が第一点228として指定された矩形206内に第一模様が縫製された後、保持位置が縫製可能領域86Aに対応する仮保持位置に変更され、第二標識検出処理が行われる場合を例とする。第二標識検出処理では、標識110の貼り替え前後で標識110の検出処理が2回行われ、第一基準に対する標識110の配置が更新されていく。
【0081】
図18に示すように、第二標識検出処理では、まず標識110の検出回数を表す変数Mが1に設定され、設定された変数MはRAM63に記憶される(S451)。続いて、1回目の検出処理である全領域検出処理が行われる(S452、図19)。全領域検出処理では、配置予定位置のみを撮影対象とする配置予定位置検出処理(図10参照)とは異なり、標識110が検出されるまで、刺繍枠84(図2参照)の内側の領域全体が撮影対象とされる。図19に示すように、イメージセンサ50から出力された画像データが取得され(S501)、取得された画像データによって表される画像全体を検出対象として、標識110の検出処理が実行される(S502)。標識110の検出は、図10に示す配置予定位置検出処理のS204と同様に、公知の方法を用いて実行される。標識110が検出された場合には、例えば、標識110の第一中心点111及び第二中心点112の刺繍座標系の座標が算出される。
【0082】
標識110が検出されない場合(S503:NO)、刺繍枠84の内側の全領域が検出対象範囲として設定され、処理が完了したかが判断される(S504)。検出対象範囲として設定されていない領域がある場合(S504:NO)、駆動回路131及び駆動回路133に制御信号が出力され、検出対象範囲として設定されていない領域が、イメージセンサ50の撮影範囲に収まる位置に、刺繍枠84が移動される(S505)。処理はS501に戻り、画像から標識110を検出する処理が行われる。このようにして刺繍枠84の内側の領域が順に処理され、標識110が検出されないまま全領域の処理が完了した場合(S504:YES)、2個の標識110が検出できないことを報知するエラーメッセージがLCD7に表示される(S506)。この場合、ユーザは、2個の標識110が刺繍枠84の内側の領域にあるか否かを確認する。処理はS501に戻り、画像から標識110を検出する処理が行われる。
【0083】
標識110が検出された場合には(S503:YES)、それが2個目の標識110か否かが判断される(S507)。検出されたのが2個目の標識110ではない場合(S507:NO)には、処理はS504に進み、前述のように、標識110が検出されるまで、刺繍枠84を移動させて刺繍枠84の内側の領域内で画像を取得し、2個目の標識110を検出する処理が行われる。処理が繰り返され、2個目の標識が検出された場合(S507:YES)、CPU61は、図19に示す全領域検出処理を終了し、図18に示す第二標識検出処理に戻る。図18に示すように、仮保持位置での第一基準に対する標識110の配置が特定され、仮標識配置としてRAM63に記憶される(S453)。なお、S453では、既にRAM63に記憶されていた第一標識配置もしくは第二標識配置、又は、過去に行われた第二標識検出処理で記憶された仮標識配置が、新たに特定された仮標識配置で更新される。
【0084】
例えば、図20に示す縫製可能領域86に対応する第一保持位置での第一基準に対する標識110の配置は既に特定されている。また、縫製対象物39が、縫製可能領域86Aに対応する仮保持位置に張り替えられると、仮保持位置での刺繍座標系が設定され、原点は既知となる。全領域検出処理で、仮保持位置での標識110の座標が特定される。第一保持位置における第一基準(第一線分227及び第一点228)の刺繍座標を仮保持位置における刺繍座標系の座標に座標変換すれば、仮保持位置における第一基準の座標と標識110との対応ができる。つまり、縫製可能領域86Aに対応する仮保持位置での第一基準に対する標識110の位置及び角度を含む配置が特定される。
【0085】
次に、変数Mの値が2であるか、つまり、既に検出処理が2回行われたかが判断される(S454)。Mの値が2でない場合(S454:NO)、変数Mが1インクリメントされ(S455)、2回目の標識110の検出処理である配置予定位置検出処理が行われる(S456)。S456で行われる配置予定位置検出処理の内容は、図10を参照して説明した、第一標識検出処理(図9参照)中に行われる配置予定位置検出処理の内容とほぼ同じである。よって、ここでは、第一標識検出処理で行われるのとは異なる処理の内容についてのみ説明する。
【0086】
図10に示すように、まず、標識110のうち1つの配置予定位置を示す赤色の矩形245が画面240(図12参照)に表示されるが(S201)、この場合の配置予定位置は、例えば、第一基準に応じて定められるとよい。例えば、図20に示すように、第一基準の第一線分227が矩形206の右辺であり、第一点228が右辺の上端の点である場合、ユーザは、第二模様を第一模様の右斜め上方の領域に配置したい可能性が高い。従って、配置予定位置は、例えば、縫製可能領域86A内の第一点228のすぐ右側が第一配置予定位置110Aとされ、矩形206の上辺に沿って第一配置予定位置110Aから右方向に離間した位置が、第二配置予定位置110Bとされる。また、第一基準だけでなく第二基準も既に設定され、第一模様に対する第二模様の相対的な配置が決定されている場合は、決定された配置に基づき、配置予定位置が定められてもよい。その後のS202〜S208の処理の内容は、第一標識検出処理(図9参照)中で行われる場合と同じであるため、説明は省略する。
【0087】
このようにして、2個目の標識110の検出も終了すると(S207:YES)、CPU61は、図10の配置予定位置検出処理を終了して、図18の第二標識検出処理に戻る。続いて、仮保持位置における第一基準に対する貼り替え後の標識110の配置が特定され、RAM63に既に記憶されている仮標識配置が、特定された配置で更新される(S457)。例えば、図20に示す縫製可能領域86Aに対応する仮保持位置での第一基準に対する貼り替え前の標識110の配置と、貼り替え前の標識110の刺繍座標とは既に特定されている。よって、これらの情報と、第一配置予定位置110Aと第二配置予定位置110Bに貼り替えられた標識110の刺繍座標とから、仮保持位置での第一基準に対する貼り替え後の標識110の位置及び角度を含む配置が特定できる。
【0088】
仮標識配置が更新された後、処理はS454に戻る。2回目の検出処理が終わり、変数Mは2とされているので(S454:YES)、第一基準に対する標識110の配置が更新された旨を示すメッセージと、OKキー(図示せず)がLCD7に表示される(S458)。OKキーが選択されると、縫製対象物39の保持位置の変更を促すメッセージとOKキー(図示せず)がLCD7に表示される(S459)。メッセージの表示後、ユーザは、縫製対象物39の刺繍枠84(図2参照)に対する保持位置を、例えば、図20に示す縫製可能領域86Aに対応する仮保持位置から、第二保持位置に変更する。第二保持位置は、例えば、第一配置予定位置110Aと第二配置予定位置110Bにある標識110と、第二模様に対応する矩形206Bとが収まる縫製可能領域86Bに対応する保持位置である。保持位置の変更は、第一配置予定位置110Aと第二配置予定位置110Bに標識110が貼り付けられた状態で実行される。すなわち、刺繍枠84による縫製対象物39の保持位置が変更されても、縫製対象物39に対する標識110の配置は変更されない。
【0089】
保持位置が変更され、OKキー(図示せず)が選択されると、CPU61は、LCD7に第二基準設定画面250(図15参照)を表示して(S460)、図14に示す配置設定処理に戻り、S331の処理に進む。S331では、OKキー259が選択されたかが判断される。OKキー259が選択されていない場合(S331:NO)、処理はS302に戻り、前述したように、選択されたキーに応じた処理が行われる。OKキー259が選択された場合(S331:YES)、標識110の配置に基づき、第二保持位置における第一模様(N−1番目の模様)の配置を特定するための処理が実行される。
【0090】
まず、全領域検出処理が行われる(S332)。S332で行われる全領域検出処理の内容は、図19を参照して説明した、第二標識検出処理(図18参照)中に行われる全領域検出処理の内容と同じであるため、ここでの説明は省略する。全領域検出処理によって、2個の標識110が検出されると(S332)、検出された第二保持位置における標識110の刺繍座標系の座標と、RAM63に記憶されている第一標識配置、第二標識配置、または仮標識配置とから、第二持位置での第一基準に対する標識110の配置が特定され、第三標識配置としてRAM63に記憶される(S333)。
【0091】
例えば、図13に示すように、保持位置が、縫製可能領域86に対応する第一保持位置から、仮保持位置を経ることなく、縫製可能領域86Aに対応する第二保持位置に変更され、第一基準が変更されないまま、第二模様の配置が矩形206Dの位置に決定された場合、RAM63には第一標識配置が記憶されている。また、保持位置が同様に第二保持位置に変更されたが、第一基準が変更された後、第二模様の配置が矩形206Aの位置に決定された場合には、RAM63には第二標識配置が記憶されている。すなわち、これらの場合は、縫製可能領域86に対応する第一保持位置における変更前または変更後の第一基準と、標識110との対応関係が特定されている。また、保持位置が縫製可能領域86Aに対応する第二保持位置に変更された時点で、第二保持位置での刺繍座標系が設定され、S332の全領域検出処理で、第二保持位置での標識110の座標が特定されている。従って、第一保持位置における変更前または変更後の第一基準(第一線分227及び第一点228)の座標を第二保持位置における座標に座標変換すれば、第二保持位置における第一基準の座標と標識110との対応ができる。つまり、縫製可能領域86Aに対応する第二保持位置での変更前または変更後の第一基準に対する標識110の配置が第三標識配置として特定できる。
【0092】
一方、例えば、図20に示すように、保持位置が、縫製可能領域86に対応する第一保持位置から、縫製可能領域86Aに対応する仮保持位置を経て、縫製可能領域86Bに対応する第二保持位置に変更された場合には、RAM63には、仮標識配置、つまり、仮保持位置における変更前または変更後の第一基準と、第一配置予定位置110Aおよび第二配置予定位置110Bに貼り替えられた標識110との対応関係が記憶されている。この場合も同様に、S332の全領域検出処理で、第二保持位置における第一配置予定位置110Aおよび第二配置予定位置110Bにある標識110の座標が特定されるので、仮保持位置における変更前または変更後の第一基準(第一線分227及び第一点228)の座標を第二保持位置における座標に座標変換すれば、第二保持位置における第一基準の座標と標識110との対応ができる。つまり、縫製可能領域86Bに対応する第二保持位置での変更前または変更後の第一基準に対する第一配置予定位置110Aおよび第二配置予定位置110Bにある標識110の配置が第三標識配置として特定できる。
【0093】
次に、特定された第三標識配置と、第一模様の配置に対する第二模様の相対的な配置とに基づき、第二保持位置における縫製対象物39に対する第二模様(N番目の模様)の配置が設定される(S334)。具体的には、第二保持位置に設定される刺繍座標系の第一基準(第一線分227及び第一点228)の座標と標識110の座標との対応と、第二基準(第二線分208及び第二点209)の座標とから設定される。S334では、設定結果に基づき、N番目の模様の縫製データが補正される。また、N番目の模様の配置の設定結果(図示せず)は、LCD7に表示される。設定結果は、例えば、第二模様に対応する矩形の位置及び角度によって表される。その後、「標識をはがしてください。」とのメッセージ(図示せず)がLCD7に表示される(S335)。次に、図示しないが、縫製開始キーと、模様つなぎキーとを備える画面がLCD7に表示される。配置設定処理は以上で終了し、処理は図5のメイン処理に戻る。
【0094】
図5に示すように、メイン処理では、配置設定処理(S60)の後、CPU61は、模様つなぎキー又は縫製開始キーが選択されるまで待機する(S95:NO、S220:NO)。模様つなぎキーが選択された場合(S95:YES)、処理はS100に進み、N番目の模様を第一模様として、前述のように第一基準と標識110の配置を対応付ける処理が実行される(S100〜S210)。模様つなぎキーではなく、縫製開始キーが選択された場合(S95:NO、S220:YES)、S150の処理と同様にN番目の模様の縫製が実行される(S230)。メイン処理は以上で終了する。
【0095】
以上に説明したように、第一実施形態のミシン1によれば、第一模様に対する第二模様の相対的配置は、ユーザによって入力された指示に従って設定された第一基準と第二基準に基づいて決定される。つまり、ユーザは、第一基準設定画面220(図8参照)や第二基準設定画面250(図15参照)に表示される第一指定キーや第二指定キーを選択して第一基準や第二基準を設定することで、所望の第一模様と第二模様の配置関係を容易に設定することができる。また、ユーザは、第一基準を一旦設定した後、再度、第一基準設定画面220に表示された第一指定キーにより指示を入力することで、第一基準を容易に変更することができる。この場合、第一模様に対する第二模様の相対的配置は、変更後の第一基準と第二基準に基づいて決定される。このように、刺繍枠84(図2参照)による縫製対象物39の保持位置を第一保持位置から第二保持位置に変更して、ミシンで第一模様と第二模様を縫製する場合、ユーザは、第一模様と第二模様の位置合わせのための基準である第一基準および第二基準を、柔軟に設定したり変更したりすることができる。
【0096】
また、ミシン1によれば、刺繍枠84による縫製対象物39の保持位置が第一保持位置から第二保持位置に変更されても、夫々の保持位置で標識110(図4参照)が配置された縫製対象物39を撮影して得られた画像データに基づき、第二保持位置における第一基準または変更後の第一基準に対する標識110の配置が特定される。そして、特定された標識110の配置と、第一模様に対する第二模様の相対的配置とに基づき、第二保持位置における縫製対象物39上の第二模様の配置が設定される。従って、ミシンは、第一模様と第二模様とを、ユーザの希望する配置関係に位置合わせして、縫製することができる。
【0097】
第一実施形態において、イメージセンサ50は、本発明の「撮影手段」に相当する。LCD7は、「表示手段」に相当する。図5に示すメイン処理のS120で第一基準を設定するCPU61は、「第一基準設定手段」に相当する。図10に示す配置予定位置検出処理のS203で画像データを取得するCPU61は、「第一画像データ取得手段」に相当する。図9に示すS193で第一標識配置を特定するCPU61は、「第一配置特定手段」に相当する。図16に示す第一基準変更処理のS403で第一基準を変更するCPU61は、「第一基準変更手段」に相当し、S405で第二標識配置を特定するCPU61は、「第二配置特定手段」に相当する。図14に示す配置設定処理のS303で第二基準を設定するCPU61は、「第二基準設定手段」に相当し、S304で第一模様に対する第二模様の相対的配置を決定するCPU61は、「配置決定手段」に相当する。S332で行われる全領域検出処理(図19)のS501で画像データを取得するCPU61は、「第二画像データ取得手段」に相当する。S333で第三標識配置を特定するCPU61は、「第三配置特定手段」に相当する。S334で第二模様の配置を設定するCPU61は、「設定手段」に相当する。
【0098】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態のミシン1の構成は、第一実施形態と同じであるため、説明は省略する。第二の実施形態のメイン処理は、図5に示す第一実施形態のメイン処理と、S60の配置設定処理において異なり、他の処理は同じである。具体的には、第二実施形態の配置設定処理では、ユーザは、第一基準に対する第二基準の刺繍座標系の相対位置を、第一線分227の延伸方向が第二線分208と重なり、且つ、第一点228が、第二点209と重なる位置から、距離を指定して変更できる。また、第二実施形態では、配置設定処理中に行われる第一基準変更処理(S312)の内容が、第一実施形態の処理(図16参照)とは異なっている。以下、第二実施形態の配置設定処理について、図21〜図23を参照して、第一実施形態と異なる点を主として説明する。図21において、図14の第一実施形態の配置設定処理と同じ処理が行われるステップには、同じステップ番号が付与されている。また、図22において、図16の第一実施形態の第一基準変更処理と同じ処理が行われるステップには、同じステップ番号が付与されている。
【0099】
まず、図21に示すS301では、図23に示す第二基準設定画面300が表示される。第二基準設定画面300は、図15に示す第一実施形態の第二基準設定画面250の指示キー表示欄253において、指示キー群254等に、Y軸方向距離設定キー306と、X軸方向距離設定キー307が加えられたものである。Y軸方向距離設定キー306は、第一基準に対する第二基準の刺繍座標系のY軸方向の相対位置をmm単位の数値で指定するためのキーである。X軸方向距離設定キー307は、第一基準に対する第二基準の刺繍座標系のX軸方向の相対位置をmm単位の数値で指定するためのキーである。第二基準設定画面300において第二指定キーが選択された場合(S302:YES)のS303〜S305の処理は、第一実施形態と同じである。第二指定キーが選択されない場合(S302:NO)、Y軸方向距離設定キー306とX軸方向距離設定キー307のいずれかが選択されたかが判断される(S307)。
【0100】
Y軸方向距離設定キー306又はX軸方向距離設定キー307が選択された場合(S307:YES)、処理はS304に進み、次のように第一模様(N−1番目の模様)の配置に対する第二模様(N番目の模様)の相対的な配置が決定される。第一模様の配置に対する第二模様の相対的な配置は、第一基準に対する第二基準の初期位置から、距離設定キーで指定された距離だけ移動させた位置に基づき決定される。第一基準に対する第二基準の初期位置は、第一実施形態において、第二指定キー群304に含まれるいずれかの第二指定キーが選択された場合に設定される位置、つまり、第一線分227の延伸方向が第二線分208と重なり、且つ、第一点228が、第二点209と重なる位置である。
【0101】
決定された配置は、模様表示欄251に表示される(S305)。図23に示す例では、模様表示欄251に、第二指定キー255が選択された後、距離設定キー306及び307が選択された場合の、1番目の模様205を表す矩形206に対する2番目の模様205を表す矩形207の相対的な配置が表示されている。具体的には、Y軸方向距離設定キー306及びX軸方向距離設定キー307で指定された数値に従って、第二基準が上記初期位置からX軸方向に+10.0(mm)、Y軸方向に−6.0mmに相対的に移動された場合の矩形206に対する矩形207の相対的な配置が表示されている。
【0102】
Y軸方向距離設定キー306とX軸方向距離設定キー307のいずれも選択されない場合(S307:NO)、基準変更キー256が選択されたか否かが判断される(S311)。基準変更キー256が選択された場合、第一基準変更処理が行われる(S312、図22)。図22に示すように、本実施形態の第一基準変更処理は、第一基準が変更され、第二標識配置が特定されるまでの処理(S401〜S405)は、第一実施形態の処理(図16参照)と同じである。第一実施形態では、その後、第二基準設定画面250(図15参照)が表示され、配置設定処理に戻るが、第二実施形態では、仮保持位置で行われる第二標識検出処理と同様の処理が行われる(S551〜S559)。
【0103】
例えば、図24に示すように、縫製可能領域86に対応する第一保持位置において、1番目の模様205に対応する矩形206の右辺が第一線分227とされ、右辺の中点が第一点228として設定された後、模様205が縫製されたとする。この場合、矩形206の右辺の両端付近に2個の標識110がそれぞれ配置されて第一標識検出処理(図9参照)が行われ、保持位置が、例えば、縫製可能領域86Aに対応する保持位置に変更される。ユーザが、実際には矩形206C内に2番目の模様を配置したい場合、第一基準の設定が誤っていたことに気づき、例えば、第一線分227を矩形206の下辺227B、第一点228を下辺の中点228Bに変更する。この場合、縫製可能領域86Aに対応する保持位置では2番目の模様は縫製できないので、ユーザは、例えば、縫製可能領域86Cに対応する保持位置に、保持位置を変更する必要がある。
【0104】
つまり、第一保持位置で第一模様が縫製された後、第一基準が変更されると、第二模様を第二保持位置で縫製するためには、一旦、別の保持位置を経由しなければならない可能性がある。従って、第二実施形態の第一基準変更処理では、第二標識検出処理と同様、第一基準変更処理が開始された時点の保持位置を仮保持位置として、貼り替え前と貼り替え後の2回、標識110の配置を検出して、変更後の第一基準に対する標識110の配置を更新して記憶し、確実に第二保持位置での処理が行えるようにする。図22に示す第一基準変更処理のS551〜S559の各ステップの処理は、図18に示す第二標識処理のS451〜S459の各ステップの処理とほぼ同じであるため、以下では、図24に示す例を参照して、簡単に説明する。
【0105】
図24に示す例では、まず、縫製可能領域86Aに対応する保持位置を仮保持位置として、1回目の検出が行われる(S551、S552)。検出で特定された仮保持位置における標識110の座標と、第一保持位置での変更後の第一基準(矩形206の下辺227Bとその中点228B)に対する標識110の配置とから、仮保持位置における変更後の第一基準に対する貼り替え前の標識110の配置が特定される。S405で特定され、RAM63に記憶されていた第二標識配置が、新たに特定された配置で更新される(S553)。続いて、2回目の検出処理が行われる(S554:NO、S555、S556)。S556の配置予定位置検出処理では、図10に示すように、まず、配置予定位置が赤色の矩形245(図12参照)で表示される(S201)。
【0106】
この場合の配置予定位置は、変更後の第一基準に応じて定められるとよい。例えば、図24に示すように、第一線分227が矩形206の下辺227Bに変更され、第一点228が下辺の中点228Bに変更された場合、ユーザは、2番目の模様を1番目の模様205の下方に配置したい可能性が高い。従って、配置予定位置110C、110Dは、例えば、変更後の第一線分である下辺227Bの両端付近の縫製可能領域86A内の2箇所に設定される。図24に示すように、下辺227Bの左端は、縫製可能領域86A内にないので、縫製可能領域86Aの左端が配置予定位置110Dとされる。また、第一基準だけでなく第二基準も既に設定され、第一模様に対する第二模様の相対的な配置が決定されている場合は、決定された配置に基づき、配置予定位置が定められてもよい。
【0107】
このようにして定められ、指定された配置予定位置に基づき、S556の配置予定処理が行われた後、仮保持位置における変更後の第一基準に対する貼り替え後の標識110の配置が特定され、RAM63に既に記憶されている第二標識配置が、特定された配置で更新される(S557)。その後、配置の更新が完了したことを示すメッセージが表示され(S558)、保持位置の変更を促すメッセージが表示されると(S559)、ユーザは、図24に示す縫製可能領域86Cに対応する第二保持位置に、保持位置を変更する。その後のS561〜S563の処理は、図16に示す第一実施形態のS407〜S409の処理と同じである。図22の第一基準変更処理が終了すると、処理は図21の配置設定処理に戻る。S321〜S335の処理は、図14に示す第一実施形態の処理と同じであるため、説明は省略する。その後、図21に示す配置設定処理でS331以降の処理が行われると、図24に示す縫製可能領域86Cに対応する第二保持位置での縫製対象物39に対する第二模様の配置が設定され、矩形206C内に第二模様を縫製することができる。
【0108】
以上に説明したように、第二実施形態のミシン1によれば、第一基準が変更された場合、第二標識配置が特定された後、ユーザは、LCD7に表示される配置予定位置に従って、変更後の第一基準に応じた適切な位置に、標識110を配置しなおすことができる。そして、配置予定位置に配置された標識110を含む画像データに基づき、変更後の第一基準に対する貼り替え後の標識110の配置が特定され、RAM63に記憶されている第二標識配置が更新される。更に、更新後の第二標識配置に基づいて、第二保持位置における変更後の第一基準に対する標識110の配置が特定される。従って、第二実施形態のミシン1は、第一基準が変更されても、配置予定位置を表示することで、ユーザに標識を適切な位置に配置するよう促し、第二保持位置における縫製対象物39上の第二模様の配置を正しく設定することができる。
【0109】
第二実施形態では、図22の第一基準変更処理のS556で行われる配置予定位置検出処理(図10)のS201で配置予定位置をLCD7に表示させるCPU61は、「表示制御手段」に相当する。S202でOKキーが選択された場合にその入力を受け付けるCPU61は、「配置終了受付手段」に相当し、続くS203で画像データを取得するCPU61は、「第三画像データ取得手段」に相当する。図22のS553、S557で、「記憶手段」であるRAM63に記憶された第二標識配置を更新するCPU61は、「更新手段」に相当する。
【0110】
本発明のミシンは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の(A)から(E)までの変形が適宜加えられてもよい。
【0111】
(A)ミシン1の構成は必要に応じて適宜変更されてもよい。例えば、本発明は、工業用ミシン及び家庭用ミシンに適用されてもよい。他の例では、イメージセンサ50の種類と、配置とは適宜変更してもよい。例えば、イメージセンサ50は、CCDカメラ等、CMOSイメージセンサ以外の撮影素子であってもよい。
【0112】
(B)第一模様の配置は、第一模様の位置及び角度の少なくともいずれかを含んでいればよい。同様に、第二模様の配置は、第二模様の位置及び角度の少なくともいずれかを含んでいればよい。
【0113】
(C)第一基準は、ユーザが指定した基準であって、第一模様が縫製される範囲を表す第一図形に含まれる第一線分及び第一点のいずれかを含む基準であればよい。同様に、第二基準は、ユーザが指定した基準であって、第二模様が縫製される範囲を表す第二図形に含まれる第二線分及び第二点のいずれかを含む基準であればよい。第一図形は、第一模様が縫製される範囲を表す図形であればよく、例えば、第一模様が収まる最小矩形の他、第一模様が収まる、円と、楕円と、多角形とのいずれかであってもよいし、第一模様の輪郭線であってもよい。第二図形は、第一図形と同様に、第二模様が収まる最小矩形以外の図形であってもよい。第一点は、第一図形に含まれる点であればよく、第一線分上の任意の点であってもよいし、第一線分上ではない点であってもよい。第二点は、第一点と同様に、第二図形に含まれる点であればよい。
【0114】
(D)メイン処理で用いる標識110の数は、適宜変更可能である。つまり、標識110は、1つでも3以上の複数でもよい。複数の標識110に基づき第一模様の配置が特定される場合、1つの標識110に基づき第一模様の配置が特定される場合に比べ、第一模様の配置、特に第一模様の角度を精度よく特定することができる。画像データに基づき検出される標識110の配置は、標識110の位置及び角度の少なくともいずれかであればよい。標識110の構成は適宜変更されてよい。標識110の構成には、例えば、標識の大きさと、材質と、デザインと、色とが含まれる。標識110の配置を特定するための基準(上記実施形態では、標識110の第一中心点111)及び算出方法は、標識110の構成等を考慮して、適宜変更されてよい。
【0115】
(E)メイン処理は適宜変更されてよい。例えば、以下のような変更が加えられてもよい。
(E−1)第一模様の配置に対する第二模様の相対的な配置の決定方法は適宜変更されてもよい。例えば、上記実施形態では、第一基準は第一指定キーを用いて指定され、第二基準は第二指定キーを用いて指定されていたがこれに限定されない。より具体的には、第一基準(第二基準)は、第一図形(第二図形)に含まれる線分及び点の中からユーザが任意に指定してもよい。他の例では、第一基準に対する第二基準の配置は、上記実施形態の場合に限定されず、適宜変更されてもよい。他の例では、第一基準に含まれる第一線分に対する、第二基準に含まれる第二線分の角度が数値によって指定されてもよい。このようにすれば、第一模様の配置に対して、第二模様の相対的な配置を所望の角度傾けることができる。他の例では、第一基準及び第二基準に相当する基準が自動で設定され、ユーザは設定された基準間の位置及び角度の少なくともいずれかの関係を数値で設定してもよい。第一基準及び第二基準に相当する基準には、例えば、第一図形(第二図形)の代表点と、第一図形(第二図形)の代表線分とが挙げられる。第一図形(第二図形)の代表点は、例えば、図形の中心点及び端点が挙げられる。第一図形(第二図形)の代表線分には、図形の対角線と、図形を構成するいずれかの辺とが挙げられる。
【0116】
(E−2)第一模様の配置に対する第二模様の相対的な配置を決定するための処理を行うタイミングは適宜変更されてよい。例えば、第一基準及び第二基準が取得されるタイミングは適宜変更されてもよい。より具体的には、第一模様を縫製した後に、第一基準を取得するための処理が実行されてもよい。
【0117】
(E−3)配置予定位置は、第一保持位置及び第二保持位置において、上記実施形態で例示された位置に限定されず、刺繍枠84の内側且つイメージセンサ50の撮影範囲内に収まる位置であればよい。配置予定位置は、例えば、ユーザによって設定されてもよい。配置予定位置の表示方法は適宜変更されてもよい。具体的には、標識110の中心の予定位置が星印等の模様で表示されてもよいし、標識110全体が収まる予定の範囲が円、楕円、または多角形といった図形で表示されてもよい。
【0118】
(E−4)図5のメイン処理のS40とS60との間に、N番目の模様を編集する処理が実行されてもよい。N番目の模様を編集する処理としては、例えば、模様の大きさの変更と、回転と、反転とが挙げられる。また、N番目の模様を編集する処理において、模様が回転される場合に、回転後の模様の範囲を表す図形が再設定されてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 ミシン
7 液晶ディスプレイ
39 縫製対象物
50 イメージセンサ
61 CPU
63 RAM
84 刺繍枠
110 標識
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍枠に保持された縫製対象物を撮影可能な撮影手段を備えたミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
刺繍縫製が可能なミシンは、通常、縫製対象物を保持する刺繍枠を用い、刺繍枠の種類に応じて刺繍枠の内側に設定される縫製可能領域に刺繍縫製を行う。縫製可能領域よりも大きな刺繍模様を縫製することができるミシンも知られている。例えば、特許文献1には、縫製可能領域よりも大きな刺繍模様を縫製可能領域よりも小さい複数の模様に分割し、複数の模様に対応する縫製データを記憶したミシンが開示されている。このミシンは、縫製データに従って、分割された複数の模様を順次縫製することで、縫製可能領域よりも大きな刺繍模様を縫製する。ユーザは、分割された複数の模様のうち一つが縫製される度に、縫製対象物である加工布を刺繍枠に対して張り替える。上記ミシンは、分割された複数の模様間の位置合わせを、加工布の表面に配置された標識に基づいて自動的に行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−246885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のミシンでは、分割された複数の模様は、先に縫製される模様に関する基準に対して次に縫製される模様に関する基準を位置合わせすることで、複数の模様間の配置関係が決定される。複数の模様の位置合わせの基準は、複数の模様がずれなく隣接するように縫製されるように予め設定されている。従って、ユーザは、複数の模様を希望する配置関係となるようにこれらの基準を柔軟に設定したり変更したりすることができない。
【0005】
本発明は、刺繍枠の内側に設定される縫製可能領域よりも広い範囲に複数の模様を縫製する場合、複数の模様間の位置合わせのための基準を、ユーザが柔軟に設定したり変更したりすることが可能なミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るミシンは、撮影手段と、第一基準設定手段と、第一画像データ取得手段と、第一配置特定手段と、第一基準変更手段と、第二配置特定手段と、第二基準設定手段と、配置決定手段と、第二画像データ取得手段と、第三配置特定手段と、設定手段とを備えている。前記撮影手段は、刺繍枠に保持された縫製対象物の表面を撮影可能である。前記第一基準設定手段は、前記刺繍枠による前記縫製対象物の保持位置が第一保持位置である状態で縫製される模様を第一模様、前記保持位置が前記第一保持位置とは異なる第二保持位置である状態で縫製される模様を第二模様とした場合に、入力された指示に従って、前記第一模様の位置および角度の少なくとも一方に対する前記第二模様の位置および角度の少なくとも一方を前記第二模様の相対的配置として決定するために使用される、前記第一模様に関する基準を、第一基準として設定する。前記第一画像データ取得手段は、前記保持位置が前記第一保持位置である状態で前記撮影手段によって撮影された、前記縫製対象物の前記表面に配置された標識を含む画像の画像データを、第一画像データとして取得する。前記第一配置特定手段は、前記第一基準および前記第一画像データに基づき、前記第一保持位置における前記第一基準に対する前記標識の位置および角度のうち少なくとも一方を、第一標識配置として特定する。前記第一基準変更手段は、前記第一配置特定手段によって前記第一標識配置が特定された後に前記第一基準を変更する指示である変更指示が入力された場合、前記変更指示に従って前記第一基準を変更し、変更後第一基準として設定する。前記第二配置特定手段は、前記第一基準変更手段によって前記変更後第一基準が設定された場合、前記変更後第一基準および前記第一標識配置に基づき、前記第一保持位置における前記変更後第一基準に対する前記標識の位置および角度のうち少なくとも一方を、第二標識配置として特定する。前記第二基準設定手段は、入力された指示に従って、第二模様の前記相対的配置を決定するために使用される前記第二模様に関する基準を、第二基準として設定する。前記配置決定手段は、前記第一基準または前記変更後第一基準と、前記第二基準とに基づいて、前記第二模様の前記相対的配置を決定する。前記第二画像データ取得手段は、前記保持位置が前記第二保持位置である状態で前記撮影手段によって撮影された、前記縫製対象物の前記表面に配置された前記標識を含む画像の画像データを、第二画像データとして取得する。前記第三配置特定手段は、前記第一標識配置または前記第二標識配置と、前記第二画像データとに基づき、前記第二保持位置における前記第一基準または前記変更後第一基準に対する前記標識の位置および角度のうち少なくとも一方を、第三標識配置として特定する。前記設定手段は、前記第二模様の前記相対的配置および前記第三標識配置に基づいて、前記第二保持位置における前記縫製対象物に対する前記第二模様の位置および角度の少なくとも一方を設定する。
【0007】
本発明のミシンによれば、第一模様に対する第二模様の相対的配置は、入力された指示に従って設定された第一基準と第二基準に基づいて決定される。つまり、ユーザは、所望の第一模様と第二模様の配置関係を、第一基準や第二基準を設定することで、容易に設定することができる。また、ユーザは、第一基準を設定後に変更したい場合には、変更指示を入力すれば、第一基準が変更されて変更後第一基準が設定され、第一模様に対する第二模様の相対的配置は、変更後第一基準と第二基準に基づいて決定される。このように、刺繍枠による縫製対象物の保持位置を第一保持位置から第二保持位置に変更して、ミシンで第一模様と第二模様を縫製する場合、ユーザは、第一模様と第二模様の位置合わせのための基準である第一基準および第二基準を、柔軟に設定したり変更したりすることができる。
【0008】
本発明のミシンでは、刺繍枠による縫製対象物の保持位置が第一保持位置から第二保持位置に変更されても、夫々の保持位置で標識が配置された縫製対象物を撮影して得られた第一画像データおよび第二画像データに基づき、第二保持位置における縫製対象物上の第二模様の配置が設定される。従って、ミシンは、第一模様と第二模様とを、ユーザの希望する配置関係に位置合わせして、縫製することができる。
【0009】
本発明のミシンは、表示手段と、表示制御手段と、配置終了受付手段と、第三画像データ取得手段と、記憶手段と、更新手段とを更に備えていてもよい。前記表示手段は、情報を表示する。前記表示制御手段は、前記第二配置特定手段によって前記第二標識配置が特定された場合、前記変更後第一基準に応じて定められた前記縫製対象物の前記表面における位置である配置予定位置を、前記表示手段に表示させる。前記配置終了受付手段は、前記標識が前記配置予定位置に配置されたことを示す情報である配置終了情報の入力を受け付ける。前記第三画像データ取得手段は、前記配置終了受付手段によって前記配置終了情報が受け付けられた後に前記撮影手段によって撮影された、前記縫製対象物の前記表面に配置された前記標識を含む画像の画像データを、第三画像データとして取得する。前記記憶手段は、前記第二配置特定手段によって特定された前記第二標識配置を記憶する。前記更新手段は、前記記憶手段に記憶された前記第二標識配置および前記第三画像データに基づき、前記配置予定位置に配置された前記標識の前記変更後第一基準に対する位置および角度のうち少なくとも一方を特定し、特定された前記位置および前記角度のうち少なくとも一方で、前記記憶手段に記憶された前記第二標識配置を更新する。この場合、前記第三配置特定手段は、前記第一標識配置または前記記憶手段に記憶された前記第二標識配置と、前記第二画像データとに基づき、前記第三標識配置を特定してもよい。
【0010】
この場合、ユーザは、変更後第一基準が設定され、第二標識配置が特定された後、表示手段に表示される配置予定位置に従って、変更後第一基準に応じた適切な位置に、標識を配置しなおすことができる。そして、ミシンは、配置予定位置に配置された標識を含む第三画像データに基づき、配置変更後の標識の変更後第一基準に対する位置および角度のうち少なくとも一方で、記憶手段に記憶されている第二標識配置を更新し、更に、更新後の第二標識配置に基づいて第三標識配置を特定する。従って、ミシンは、第一基準が変更されても、配置予定位置を表示することで、ユーザに標識を適切な位置に配置するよう促し、第二保持位置における縫製対象物上の第二模様の配置を正しく設定することができる。
【0011】
前記第一基準は、前記第一模様が縫製される範囲に含まれる線分および点のうち少なくとも一方であり、前記第二基準は、前記第二模様が縫製される範囲に含まれる線分および点のうち少なくとも一方であってもよい。そして、前記第一基準変更手段は、前記第一基準を、前記第一模様が縫製される前記範囲に含まれる他の線分および他の点のうち少なくとも一方に変更することで、前記変更後第一基準を設定してもよい。この場合、ユーザは、第一模様または第二模様が縫製される範囲に含まれる線分および点の少なくとも一方というわかりやすい対象を指示することで、第一基準、第二基準および変更後第一基準を設定させることができる。
【0012】
前記第一基準設定手段は、前記第一模様が縫製される前記範囲に含まれる前記線分および前記点の組合せに対応する複数の第一指定キーのうち、入力操作が行われた第一指定キーに基づいて前記第一基準を設定し、前記第二基準設定手段は、前記第二模様が縫製される前記範囲に含まれる前記線分および前記点の組合せに対応する複数の第二指定キーのうち、入力操作が行われた第二指定キーに基づいて前記第二基準を設定してもよい。そして、前記配置決定手段は、前記第二模様の前記相対的配置を、前記第一指定キーに対応する前記線分の延伸方向が、前記第二指定キーに対応する前記線分と重なり、且つ、前記第一指定キーに対応する前記点が、前記第二指定キーに対応する前記点と重なる配置としてもよい。この場合、ミシンは、ユーザが第一指定キーと第二指定キーを指定するという簡単な操作だけで、第一模様に対する第二模様の相対的配置を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】多針ミシン1の斜視図である。
【図2】刺繍枠84を保持する刺繍枠移動機構11の平面図である。
【図3】多針ミシン1の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】標識110の平面図である。
【図5】メイン処理のフローチャートである。
【図6】画面200の説明図である。
【図7】画面210の説明図である。
【図8】第一基準設定画面220の説明図である。
【図9】メイン処理で実行される第一標識検出処理のフローチャートである。
【図10】第一標識検出処理で実行される配置予定位置検出処理のフローチャートである。
【図11】矩形206の配置に対する、標識110の配置予定位置の説明図である。
【図12】画面240の説明図である。
【図13】縫製対象物39の保持位置と標識110の配置との遷移状態の説明図である。
【図14】第一実施形態の配置設定処理のフローチャートである。
【図15】第二基準設定画面250の説明図である。
【図16】配置設定処理で実行される第一基準変更処理のフローチャートである。
【図17】第一基準変更時の第一基準設定画面220の説明図である。
【図18】配置設定処理で実行される第二標識検出処理のフローチャートである。
【図19】配置設定処理及び第二標識検出処理で実行される全領域検出処理のフローチャートである。
【図20】縫製対象物39の保持位置と標識110の配置との遷移状態の別の説明図である。
【図21】第二実施形態に係る配置設定処理のフローチャートである。
【図22】第二実施形態に係る第一基準変更処理のフローチャートである。
【図23】第二実施形態の第二基準設定画面300の説明図である。
【図24】縫製対象物39の保持位置と標識110の配置との遷移状態の更に別の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、図1から図3を参照して、実施形態に係る多針ミシン(以下、単にミシンという)1の構成について説明する。以下の説明では、図1の上側、下側、左斜め下側、右斜め上側、左斜め上側、右斜め下側をそれぞれ、ミシン1の上側、下側、正面側、背面側、左側、右側とする。
【0015】
図1に示すように、ミシン1の本体20は、支持部2と、脚柱部3と、アーム部4とを備える。支持部2は、平面視逆U字形に形成され、ミシン1全体を支持する。支持部2の上面には、前後方向に伸びる左右一対のガイド溝25がある。脚柱部3は、支持部2の後端部から上方へ立設されている。アーム部4は、脚柱部3の上端部から前方に延びる。アーム部4の先端には、針棒ケース21が左右方向に移動可能に装着されている。針棒ケース21の内部には、上下方向に伸びる10本の針棒31(図3参照)が左右方向に等間隔で配置されている。10本の針棒31のうち、縫製位置にある1本の針棒が、針棒ケース21の内部に設けられた針棒駆動機構32(図3参照)によって上下方向に摺動される。針棒31の下端には、縫針35(図3参照)が着脱可能である。
【0016】
針棒ケース21の右側面下部には、カバー38が設けられている。カバー38の内側には、イメージセンサ保持機構(図示せず)が取り付けられている。イメージセンサ保持機構は、イメージセンサ50(図3参照)を備える。イメージセンサ50は、周知のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。イメージセンサ50のレンズ(図示せず)は、ミシン1の下方に向けられている。
【0017】
アーム部4の前後方向中央部の右側には、操作部6が設けられている。操作部6は、液晶ディスプレイ(以下、LCDという)7と、タッチパネル8と、スタート/ストップスイッチ41とを備える。LCD7には、例えば、ユーザが指示を入力するための操作画像といった各種情報が表示される。タッチパネル8は、ユーザからの指示を受け付けるために用いられる。LCD7に表示された入力キー等の位置に対応したタッチパネル8の箇所を、ユーザが、指又はタッチペンを用いて押圧操作すること(以下、この操作を「パネル操作」という)によって、縫製される模様及び縫製条件といった各種条件を選択又は設定できる。スタート/ストップスイッチ41は、縫製の開始又は停止を指示するためのスイッチである。
【0018】
アーム部4の下方には、脚柱部3の下端部から前方へ延びる筒状のシリンダベッド10が設けられている。シリンダベッド10の先端部の内部には、釜(図示せず)が設けられている。釜は、下糸(図示せず)が巻回されたボビン(図示せず)を収納する。シリンダベッド10の内部には、釜駆動機構(図示せず)がある。釜駆動機構(図示せず)は、釜を回転駆動する。シリンダベッド10の上面には、平面視矩形の針板16がある。針板16には、縫針35(図3参照)が挿通される針穴36が設けられている。
【0019】
アーム部4の上面の背面側には、左右一対の糸駒台12が設けられている。一対の糸駒台12には、針棒31の数と同じ10個の糸駒13を設置可能である。上糸15は、糸駒台12に設置された糸駒13から供給される。上糸15は、糸案内17と、糸調子器18と、天秤19等を経由して、針棒31の下端に装着された各縫針35の針孔(図示せず)に供給される。
【0020】
アーム部4の下方には、刺繍枠移動機構11(図2参照)のYキャリッジ23が設けられている。刺繍枠移動機構11は、刺繍枠84(図2参照)を着脱可能に支持する。刺繍枠84は、縫製対象物(加工布など)39を保持する。刺繍枠移動機構11は、X軸モータ132(図3参照)及びY軸モータ134(図3参照)を駆動源として、刺繍枠84を前後左右に移動させる。
【0021】
図2を参照して、刺繍枠84と刺繍枠移動機構11とについて説明する。刺繍枠84は、外枠81と、内枠82と、左右1対の連結部89とを備える。刺繍枠84は、外枠81と内枠82とで縫製対象物39を挟持する。ユーザは、外枠81と内枠82とで挟持される縫製対象物39の部分を変えることで、刺繍枠84による縫製対象物39の保持位置を変更することができる。連結部89は、平面視矩形の中央部が矩形に切り抜かれた形状の板部材である。一方の連結部89は、内枠82の右部に螺子95によって固定され、他方の連結部89は、内枠82の左部に螺子94によって固定されている。ミシン1には、図2に例示された刺繍枠84の他、大きさ及び形状が異なる複数種類の他の刺繍枠84を装着可能である。図2に例示された刺繍枠84は、ミシン1で使用可能な刺繍枠84のうち、左右方向の幅(左右の連結部89間の距離)が一番大きな刺繍枠84である。縫製可能領域86は、図示しない公知の検出器(例えば、特開2004−254987号公報参照)の出力信号に基づき、刺繍枠84の種類に応じて、ミシン1のCPU61(図3参照)により、内枠82の内側に自動的に設定される。
【0022】
刺繍枠移動機構11は、ホルダ24と、Xキャリッジ22と、X軸駆動機構(図示せず)と、Yキャリッジ23と、Y軸移動機構(図示せず)とを備える。ホルダ24は、刺繍枠84を着脱可能に支持する。ホルダ24は、取付部91と、右腕部92と、左腕部93とを備える。取付部91は、左右方向に長い平面視矩形の板部材である。右腕部92は、前後方向に伸びる板部材であり、取付部91の右端に固定されている。左腕部93は、前後方向に伸びる板部材である。左腕部93は、取付部91の左部において、取付部91に対する左右方向の位置を調整可能に固定される。右腕部92は、刺繍枠84の一方の連結部89と係合し、左腕部93は、他方の連結部89と係合する。
【0023】
Xキャリッジ22は、左右方向に長い板部材であり、一部分がYキャリッジ23の正面から前方に突出している。Xキャリッジ22には、ホルダ24の取付部91が取り付けられる。X軸駆動機構(図示せず)は、直線移動機構(図示せず)を備える。直線移動機構は、タイミングプーリ(図示せず)と、タイミングベルト(図示せず)とを備え、X軸モータ132を駆動源として、Xキャリッジ22を左右方向(X軸方向)に移動させる。
【0024】
Yキャリッジ23は、左右方向に長い箱状である。Yキャリッジ23は、Xキャリッジ22を左右方向に移動可能に支持する。Y軸移動機構(図示せず)は、左右一対の移動体(図示せず)と、直線移動機構(図示せず)とを備える。移動体は、Yキャリッジ23の左右両端の下部に連結され、ガイド溝25(図1参照)を上下方向に貫通している。直線移動機構は、タイミングプーリ(図示せず)と、タイミングベルト(図示せず)とを備え、Y軸モータ134を駆動源として、移動体をガイド溝25に沿って前後方向(Y軸方向)に移動させる。移動体に連結されたYキャリッジ23と、Yキャリッジ23に支持されたXキャリッジ22とは、これに伴って前後方向(Y軸方向)に移動する。縫製対象物39を保持する刺繍枠84をXキャリッジ22に装着した状態では、縫製対象物39は、針棒31と、針板16(図1参照)との間に配置される。
【0025】
図3を参照して、ミシン1の電気的構成について説明する。図3に示すように、ミシン1は、縫針駆動部120と、縫製対象駆動部130と、操作部6と、制御部60と、イメージセンサ50とを備える。以下、縫針駆動部120と、縫製対象駆動部130と、操作部6と、制御部60について順に詳述する。
【0026】
縫針駆動部120は、主軸モータ122と、駆動回路121と、針棒ケース用モータ45と、駆動回路123とを備える。主軸モータ122は、針棒31を上下方向に往復移動させる。駆動回路121は、制御部60からの制御信号に従って主軸モータ122を駆動する。針棒ケース用モータ45は、針棒ケース21を左右方向に移動させる。駆動回路123は、制御部60からの制御信号に従って針棒ケース用モータ45を駆動する。
【0027】
縫製対象駆動部130は、X軸モータ132と、駆動回路131と、Y軸モータ134と、駆動回路133とを備える。X軸モータ132は、刺繍枠移動機構11を駆動させて刺繍枠84(図2参照)を左右方向に移動させる。駆動回路131は、制御部60からの制御信号に従ってX軸モータ132を駆動する。Y軸モータ134は、刺繍枠移動機構11を駆動させて刺繍枠84を前後方向に移動させる。駆動回路133は、制御部60からの制御信号に従ってY軸モータ134を駆動する。
【0028】
操作部6は、タッチパネル8と、駆動回路135と、LCD7と、スタート/ストップスイッチ41とを備える。駆動回路135は、制御部60からの制御信号に従ってLCD7を駆動する。
【0029】
制御部60は、CPU61と、ROM62と、RAM63と、EEPROM64と、入出力インターフェイス(I/O)66とを備え、これらは信号線65によって相互に接続されている。I/O66には、縫針駆動部120と、縫製対象駆動部130と、操作部6と、イメージセンサ50とがそれぞれ接続されている。以下、CPU61と、ROM62と、RAM63と、EEPROM64とについて詳述する。
【0030】
CPU61は、ミシン1の主制御を司り、ROM62のプログラム記憶エリア(図示せず)に記憶された各種プログラムに従って、縫製に関わる各種演算及び処理を実行する。ROM62は、図示しないが、プログラム記憶エリアと、模様記憶エリアとを含む複数の記憶エリアを備える。プログラム記憶エリアには、メインプログラムを含む、ミシン1を動作させるための各種プログラムが記憶されている。メインプログラムは、後述するメイン処理を実行するためのプログラムである。模様記憶エリアには、模様(以下、「刺繍模様」ともいう)を縫製するためのデータである縫製データが記憶されている。RAM63には、CPU61が演算処理した演算結果等を収容する記憶エリアが必要に応じて設けられる。EEPROM64には、ミシン1が各種処理を実行するための各種パラメータが記憶されている。EEPROM64には、さらに、各針棒31と、各針棒31の下端に装着される縫針35の針孔(図示せず)に供給される上糸15の色とが対応付けて記憶されている。縫製データは、EEPROM64に記憶されていてもよい。
【0031】
図1から図3を参照して、刺繍枠84に保持された縫製対象物39に縫目を形成するミシン1の動作について説明する。縫製対象物39を保持する刺繍枠84は、刺繍枠移動機構11に支持される。針棒ケース21が左右に移動することで、10本の針棒31のうち1本が選択される。刺繍枠移動機構11によって、刺繍枠84が所定の位置に移動される。主軸モータ122によって主軸(図示せず)が回転駆動されると、針棒駆動機構32及び天秤駆動機構(図示せず)が駆動され、選択された針棒31及びそれに対応する天秤19が上下駆動される。また、主軸モータ122の回転によって釜駆動機構が駆動され、釜が回転駆動される。このように、縫針35と天秤19と釜とが同期して駆動され、縫製対象物39に縫目が形成される。
【0032】
図2を参照して、本実施形態の縫製データについて説明する。本実施形態の縫製データは、図2に示す刺繍座標系100の座標データを含む。刺繍座標系100は、Xキャリッジ22を移動させるX軸モータ132及びY軸モータ134の座標系である。刺繍座標系100の座標データは、基準(例えば、Xキャリッジ22)に対する刺繍模様の位置及び角度を表す。Xキャリッジ22には、縫製対象物39を保持する刺繍枠84が装着される。従って、刺繍座標系100の座標データは、刺繍枠84に保持された縫製対象物39に対する刺繍模様の位置及び角度を表す。本実施形態では、刺繍座標系100とワールド座標系とを予め対応させている。ワールド座標系は、空間全体を示す座標系である。ワールド座標系は、撮影対象物の重心等の影響を受けることのない座標系である。
【0033】
図2に示すように、刺繍座標系100は、ミシン1の左から右に向かう方向がX軸プラス方向であり、ミシン1の前から後に向かう方向がY軸プラス方向である。本実施形態では、刺繍枠84の初期位置を刺繍座標系100の原点(X、Y、Z)=(0、0、0)としている。刺繍枠84の初期位置は、刺繍枠84に対応する縫製可能領域86の中心点が、針落ち点と一致する位置である。針落ち点とは、針穴36(図1参照)の鉛直上方に配置された縫針35(図3参照)が、縫製対象物39の上にある状態から針棒31を下方向に移動させた際に、縫針35が縫製対象物39に刺さる点である。本実施形態の刺繍枠移動機構11は、刺繍枠84をZ方向(ミシン1の上下方向)には移動させないので、縫製対象物39の厚みが無視できる範囲であれば、縫製対象物39の上面をZ=0としている。
【0034】
ROM62に記憶されている縫製データの座標データは、刺繍模様の初期配置を規定する。刺繍模様の初期配置は、刺繍模様の中心点が縫製可能領域86の中心点と一致するように設定されている。縫製データの座標データは、縫製対象物39に対する刺繍模様の配置が変更された場合に適宜補正される。本実施形態では、縫製対象物39に対する刺繍模様の配置は、後述するメイン処理に従って設定される。以下の説明では、刺繍模様(刺繍模様の中心点)の位置及び刺繍模様の角度は、刺繍座標系100で表されるデータを用いて、刺繍枠84に保持された縫製対象物39に対して設定される。
【0035】
図2を参照して、イメージセンサ50(図3参照)の撮影範囲について説明する。イメージセンサ50が撮影位置に配置された場合、イメージセンサ50の刺繍座標系100のXY平面における撮影範囲は、イメージセンサ50のレンズ中心の真下となる点を中心とする、左右方向の長さが約80mmであり前後方向の長さが約60mmの矩形範囲である。本実施形態の撮影位置は、イメージセンサ50のレンズ中心が、針穴36の直上に配置される位置である。図2に示すように、イメージセンサ50が撮影位置に配置され、且つ、刺繍枠84が初期位置に配置された場合の撮影範囲180は、刺繍座標系100の原点を中心とする矩形範囲となる。
【0036】
図4を参照して、標識110について説明する。図4の上側、下側、左側、右側をそれぞれ、標識110に描かれた模様の上側、下側、左側、右側として説明する。標識110は、白色で薄板状の基材シート108の上面に模様が描かれたものである。基材シート108は、例えば、縦が約2.5cm、横が約2.5cmの正方形状である。基材シート108の上面には、第一円101と、第二円102と、第一中心点111と、第二中心点112とが描かれている。第二円102は、第一円101の上方に配置される。第二円102の直径は、第一円101の直径よりも小さい。第一中心点111は、第一円101の中心である。第二中心点112は、第二円102の中心である。基材シート108の上面には、さらに、線分103から106が描かれている。線分103と、線分104とは、第一中心点111と第二中心点112とを通る仮想的な直線(図示せず)と重なる。線分105と、線分106とは、第一円101の第一中心点111を通り、線分103に直交する仮想的な直線(図示せず)と重なる。線分103から106は、それぞれ、基材シート108の外縁端まで描かれている。
【0037】
基材シート108の裏面には透明の粘着剤が塗着されている。従って、基材シート108を縫製対象物39上に貼付することが可能である。通常、基材シート108は剥離紙(図示せず)に貼着された状態になっている。ユーザは、剥離紙から基材シート108を剥がして使用する。
【0038】
図5から図18を参照して、ミシン1において実行されるメイン処理について説明する。本実施形態のメイン処理では、刺繍枠84(図2参照)の内側に設定される縫製可能領域86よりも広い範囲に複数の模様を縫製する場合に、ユーザの指示に従って、模様間の配置が調整される。以下では、具体例として、図6に示す模様205が、ユーザによって入力された指示に従って複数配置され、縫製される場合について説明する。模様205の大きさは、X軸方向の長さが186.8mmであり、Y軸方向の長さが133.0mmである。縫製可能領域86の大きさが、X軸方向の長さが360mmであり、Y軸方向の長さが200mmである場合、1つの模様205は縫製可能領域86に収まる。しかし、X軸方向またはY軸方向に、2個の模様205を重ねずに、2個の模様205が接するように、または所定の間隔を空けて配置された場合、2個の模様205は、縫製可能領域86には収まらない。
【0039】
図5に示すメイン処理は、ユーザがメイン処理を開始する指示を入力した場合に実行される。メイン処理を開始する指示は、例えば、パネル操作によって入力される。メイン処理を実行するためのプログラムは、ROM62(図3参照)に記憶されており、CPU61によって実行される。以下の説明において、イメージセンサ50が生成した画像データによって表される画像を、撮影画像と言う。例示する各種画面及びメッセージは、駆動回路135に制御信号が出力されることによってLCD7に表示される。例示する各種画面において、各図の左右方向及び上下方向を、それぞれ画面の左右方向及び上下方向と言う。
【0040】
図5に示すように、メイン処理ではまず、変数Nに1が設定され、設定された変数NはRAM63に記憶される(S10)。変数Nは、ユーザによって選択された模様の数をカウントするための変数である。変数Nは、選択された模様の縫製順序に対応する。CPU61は、N番目の模様が選択されるまで待機する(S20:NO)。S20では、まず、図6に例示する画面200が表示される。図6に示すように、画面200には、模様表示欄201と、模様情報欄202と、模様選択欄203と、SETキー204とが表示されている。
【0041】
模様表示欄201には、現在選択されている模様が縫製される範囲を表す図形が表示される。模様表示欄201の大きさは、ミシン1に設定される縫製可能領域86の最大の大きさを表す。つまり、模様表示欄201の大きさは、図2に例示する刺繍枠84が装着された場合に設定される縫製可能領域86の大きさに対応している。模様表示欄201の左右方向は、刺繍座標系100のX軸方向に対応する。模様表示欄201の上下方向は、刺繍座標系100のY軸方向に対応する。本実施形態では、模様が縫製される範囲を表す図形を矩形で表す。模様205の配置を変更する前の状態では、模様205が縫製される範囲を表す矩形206は、模様表示欄201の左右方向に平行な辺と、模様表示欄201の上下方向に垂直な方向に平行な辺とを備える。模様情報欄202には、現在選択されている模様に関する情報として、上記矩形の大きさと、模様の初期配置に対する移動距離及び回転角度と、縫製に必要な糸の色数とが表示される。
【0042】
模様選択欄203には、ROM62又はEEPROM64に記憶されている縫製データに基づき、模様の候補が表示される。ユーザは、模様選択欄203に表示されている模様の中から、所望の模様をパネル操作によって選択する。SETキー204は、模様の選択が終了した場合に選択される。S20では、パネル操作によって、模様選択欄203の中から1つの模様が選択された後、SETキー204が選択された場合に、N番目の模様が選択されたと判断される(S20:YES)。この場合、ROM62又はEEPROM64から、選択されたN番目の模様に対応する縫製データが取得され、RAM63に記憶される(S30)。
【0043】
図6の画面200において、1番目の模様として模様205が選択された後、SETキー204が選択された場合(S20:YES、S30、S40:YES)、1番目の模様の配置が設定される(S50)。具体的には、S30で取得された1番目の模様の縫製データが、ユーザにより指示された模様の編集内容に従って、公知の方法により補正されることで、1番目の模様の配置が設定される。
【0044】
S50では、図7に例示する画面210が表示される。図7に示すように、画面210には、模様表示欄211と、模様情報欄212と、模様編集欄213と、EDIT ENDキー214とが表示されている。模様表示欄211は、模様表示欄201と同様であり、模様情報欄212は、模様情報欄202と同様である。模様編集欄213には、模様の編集を指示する各種キーが表示される。ユーザは、模様編集欄213に表示されたキーをパネル操作によって選択することによって、模様の編集を指示することができる。模様の編集は、例えば、模様の大きさの変更と、初期配置に対する模様の回転と、模様の反転と、初期配置に対する模様の移動とを含む。模様の初期配置は、上述のように、縫製データによって規定されている。模様の編集が行われた場合、模様が縫製される範囲を表す矩形は、編集内容に応じた位置及び角度で模様表示欄201に表示される。EDIT ENDキー214は、模様の編集が終了した場合に選択される。EDIT ENDキー214が選択されると、指示された編集内容が確定され、縫製データが補正され、RAM63に記憶される。
【0045】
図7では、模様205に対応する矩形206が、初期配置に対してY軸方向に+33.2mm移動された場合の画面210が図示されている。よって、模様表示欄211の矩形206は、図6に示す初期位置の矩形206よりも33.2mm画面210の上方にある。このように、模様の編集が行われた後、EDIT ENDキー214が選択された場合、図示しないが、縫製開始キーと、模様つなぎキーとを備える画面がLCD7に表示される。縫製開始キーは、模様の縫製を開始することを指示する場合に選択される。模様つなぎキーは、S20で選択されたN番目の模様に加え、N+1番目の模様が縫製される場合であって、N番目の模様およびN+1番目の模様全体が縫製可能領域86よりも広い範囲に縫製される場合に選択される。
【0046】
模様つなぎキーが選択されたかが判断される(S95)。模様つなぎキーが選択された場合(S95:YES)、第一基準を設定するための処理が行われる。第一基準とは、第一保持位置で縫製されるN番目(またはN−1番目)の模様を第一模様、第二保持位置で縫製されるN+1番目(またはN番目)の模様を第二模様とした場合に、第一模様の配置に対する第二模様の配置を決定する際に使用される、第一模様に関する基準である。第一保持位置および第二保持位置は、刺繍枠84による縫製対象物39の保持位置のうち、ユーザによって設定される互いに異なる保持位置である。
【0047】
まず、図8に例示する第一基準設定画面220が表示される(S100)。図8に示すように、第一基準設定画面220には、模様表示欄221と、模様情報欄222と、指示キー表示欄223とが表示されている。模様表示欄221は、模様表示欄201と同様であり、模様情報欄222は、模様情報欄202と同様である。指示キー表示欄223には、第一指定キー群224と、CLOSEキー226とが表示されている。第一指定キー群224に含まれる各第一指定キーは、第一基準を指定するキーである。
【0048】
第一基準は、例えば、ユーザによって指定された、第一図形に含まれる第一線分227及び第一点228の少なくともいずれかを含む基準である。本実施形態の第一基準は、第一線分227及び第一点228を含む。第一図形は、第一模様(N番目の模様)が縫製される範囲を表す図形であり、本実施形態では、第一模様が収まる最小矩形である。第一線分227は、この最小矩形を構成する四辺のいずれかから選択される。第一点228は、第一線分227の両端の点及び第一線分227の中点のいずれかから選択される。本実施形態では、第一指定キー群224に含まれる、12個の第一指定キーの中から、第一線分227と第一点228との組み合わせが第一基準として選択される。CLOSEキー226は、第一基準の指定が終了した場合に選択される。
【0049】
第一指定キー群224のうちのいずれかの第一指定キーが選択されたかが判断される(S110)。図8に示す第一基準設定画面220において、第一指定キー群224からいずれかの第一指定キーが選択された場合(S110:YES)、第一指定キーによって指定された第一基準が設定され、RAM63に記憶される(S120)。第一模様に対応する矩形における第一基準(第一線分227及び第一点228)の配置は、その模様の縫製データ(図5に示すメイン処理のS50で模様が編集され、縫製データが補正された場合は、補正後の縫製データ)に基づき、特定可能である。刺繍座標系の座標で特定された第一保持位置における第一線分227及び第一点228の配置は、RAM63に記憶される。
【0050】
また、S120では、第一模様に対応する矩形に設定された第一基準、すなわち、第一線分227及び第一点228が付加されて、模様表示欄221に表示される。図8に例示された第一線分227及び第一点228は、矩形206の右辺とその上端の点の組み合わせを指定する第一指定キー225に対応している。本実施形態のミシン1は、ユーザが矩形206に対する第一基準を視認しやすいように、矩形206を黒色で、第一線分227を青色で、第一点228を赤色で、それぞれ表示する。矩形206の配置は、刺繍座標系で表される縫製データによって特定される。
【0051】
第一指定キー群224のうちのいずれの第一指定キーも選択されない場合(S110:NO)、又は、S120で第一基準が設定された後、CLOSEキー226が選択されたかが判断される(S130)。CLOSEキー226が選択されていない場合(S130:NO)、処理はS110に戻る。CLOSEキー226が選択された場合(S130:YES)、図8に示す第一基準設定画面220に代えて、縫製開始キーを備える画面(図示せず)がLCD7に表示される。
【0052】
縫製開始指示が行われたか否かが判断される(S140)。ユーザは、縫製開始の指示を入力する場合、画面に表示された縫製開始キーを選択する。CPU61は、縫製開始キーが選択されるまで待機する(S140:NO)。縫製開始キーが選択された場合(S140:YES)、N番目の模様の縫製が実行される(S150)。具体的には、N番目の模様の縫製データに従って、駆動回路131と、駆動回路133とに制御信号が出力され、刺繍枠84が移動される。駆動回路121に制御信号が出力され、主軸モータ122が駆動される。
【0053】
次に、図示しないが、メッセージ「次の模様を縫製しますか?」と、OKキーとがLCD7に表示される(S160)。メッセージは、次の模様(N+1番目の模様)を縫製するための処理を実行するか否かをユーザに確認するために表示される。OKキーは、次の模様を縫製するための処理を実行する場合に選択される。所定時間内(例えば、5分間)にOKキーが選択されない場合(S170:NO)、メイン処理は終了する。OKキーが選択された場合(S170:YES)、変数Nは1だけインクリメントされ、インクリメントされた変数NはRAM63に記憶される(S180)。
【0054】
次に、第一標識検出処理が実行される(S190、図9)。第一標識検出処理は、第一保持位置における標識110の配置と、第一基準とを対応付ける処理である。S180(図5参照)において、Nはインクリメントされているので、N−1番目の模様が、第一模様に対応し、N番目の模様が、第二模様に対応する。標識110の配置は、標識110の位置及び角度の少なくともいずれかを含む。本実施形態のミシン1は、標識110の配置として、2つの標識110の第一中心点111の刺繍座標系の座標に基づき、標識110の位置及び角度を検出する。
【0055】
標識110の位置は、例えば、2つの標識110のうちの一方の第一中心点111の刺繍座標系100の座標で表される。標識110の角度は、2つの標識110のうちの一方の標識110の第一中心点111から他方の標識110の第一中心点111に向かうベクトルと刺繍座標系のX軸とのなす角で表される。2つの標識110の区別は、例えば、各標識110における第一中心点111に対する、第二中心点112の相対位置に基づき判断される。具体的には、図11に示すように、標識110の位置は、一方の標識110(図11では、上側)の第一中心点111の刺繍座標系の座標で表される。また、標識110の角度は、一方の標識110(図11では、上側)の第一中心点111からもう一方の標識110(図11では、下側)の第一中心点111に向かうベクトル113とX軸とのなす角θで表される。
【0056】
図9及び図10を参照して第一標識検出処理の詳細について説明する。図9に示すように、イメージセンサ50が撮影位置に移動され、イメージセンサ50による針穴36(図1参照)付近の撮影が開始される(S191)。続いて、配置予定位置検出処理が行われる(S192、図10)。配置予定位置検出処理は、ユーザによって2つの配置予定位置に配置された標識110を検出する処理である。配置予定位置とは、縫製対象物39上の標識110が配置されるべき位置である。本実施形態では、図11に示すように、縫製対象物39(図2参照)上の第一線分227の両端付近に対応する位置が、配置予定位置とされる。図10に示すように、配置予定位置検出処理では、まず、刺繍枠84が、配置予定位置がイメージセンサ50の撮影範囲内に収まる位置に移動され、LCD7に配置予定位置が表示される(S201)。具体的には、図12に例示する画面240がLCD7に表示される。図12に示すように、画面240には、模様表示欄241と、配置予定位置表示欄242とが表示されている。模様表示欄241は、模様表示欄201と同様である。配置予定位置表示欄242には、メッセージ243と、合成画像244と、OKキー246とが表示されている。
【0057】
合成画像244は、イメージセンサ50から出力される針穴36付近の画像に、赤色の矩形245が付与された画像である。赤色の矩形245は、配置予定位置を示す。前述のように、本実施形態では、第一線分227の両端付近に対応する位置が配置予定位置とされている。よって、1個目の標識110を検出する処理では、赤色の矩形245は、針穴36付近の画像における、矩形206内の第一線分227の一方の端の付近に表示される。矩形245の大きさは、標識110の大きさの約1.5倍である。メッセージ243は、標識110を矩形245の内側の領域に配置した後、OKキー246を選択することをユーザに促すために表示される。ユーザは、画面240を確認しながら、配置予定位置表示欄242に表示されているように、矩形245の内側に標識110を貼り付けた後、OKキー246を選択する。
【0058】
CPU61は、OKキー246が選択されるまで待機する(S202:NO)。OKキー246が選択された場合(S202:YES)、イメージセンサ50から出力される画像データが取得され、取得された画像データがRAM63に記憶される(S203)。次に、矩形245の内側となる部分の画像から標識110を検出する処理が実行される(S204)。S204では、矩形245の内側となる部分の画像から標識110が検出された場合、標識110に含まれる第一中心点111及び第二中心点112の刺繍座標系の座標が特定される。
【0059】
標識110の検出及び座標の特定は、公知の方法(例えば、特開2010−246885号公報参照)を用いて実行される。具体的には、標識110の第一中心点111及び第二中心点112について、例えばハフ変換処理を用いて、イメージセンサによって撮像された画像の座標系である画像座標系における二次元座標が算出される。その後、画像座標系の二次元座標がワールド座標系の三次元座標に変換される。前述のように、本実施形態では、刺繍座標系と、ワールド座標系とは対応付けられているので、画像処理によって算出されたワールド座標系の三次元座標に基づき、刺繍座標系の座標が算出される。
【0060】
S204で標識110が検出されていない場合(S205:NO)、標識110を矩形245内に配置することをユーザに促すメッセージがLCD7に表示される(S206)。次に、処理はS202に戻る。標識110が検出された場合(S205:YES)、検出された標識110が、2個目の標識110であるかが判断される(S207)。前述のように、本実施形態のミシン1は、縫製対象物39上の第一線分227の両端付近に対応する位置にそれぞれ配置された2個の標識110を検出して、標識110の配置と、第一保持位置における第一基準の配置とを対応付ける。よって、検出された標識110が、1個目の標識110である場合(S207:NO)、駆動回路131と、駆動回路133とに制御信号が出力され、2個目の標識110を検出するための位置に刺繍枠84が移動される(S208)。具体的には、1個目の標識110の処理で使用されたのとは反対側の第一線分227の端の付近に設定される配置予定位置がイメージセンサ50の撮影範囲に収まる位置に、刺繍枠84が移動される。
【0061】
次に、処理はS201に戻り、2個目の標識110を検出するための処理が実行される(S201〜S206)。なお、2個目の標識110の処理のS201では、赤色の矩形245は、第一模様が縫製される範囲を示す矩形内の、1個目の標識110の処理で表示されたとは反対側の第一線分227の端の付近に表示される。検出された標識110が、2個目の標識110である場合(S207:YES)、CPU61は、図10に示す配置予定位置検出処理を終了し、図9に示す第一標識検出処理に戻る。配置予定位置検出処理(S192)で検出された標識110の座標と第一基準の座標とから、第一保持位置での第一基準に対する標識110の配置が特定され、第一標識配置として、RAM63に記憶される(S193)。具体的には、第一保持位置における標識110の第一中心点111(図11参照)の座標と、メイン処理(図5参照)のS120で特定された第一保持位置における第一基準(第一線分227及び第一点228)の座標とを対応付けることによって、第一保持位置での第一基準に対する標識110の配置(位置及び角度)が特定される。この後、CPU61は第一標識検出処理を終了し、図5に示すメイン処理に戻る。
【0062】
図5に示すように、第一標識検出処理(S190)の次に、CPU61は、刺繍枠84に対する縫製対象物39(図2参照)の保持位置を変更することをユーザに促すメッセージとOKキー(図示せず)をLCD7に表示させる(S210)。このメッセージの表示後、ユーザによって、縫製対象物39の表面に標識110が貼り付けられた状態で、刺繍枠84に対する縫製対象物39の保持位置が変更される。すなわち、保持位置が変更されても、縫製対象物39に対する標識110の配置は変更されない。変更後の保持位置と、第一保持位置とは、刺繍枠84に対する縫製対象物39の相対的な保持位置が異なる。
【0063】
このときの変更後の保持位置は、少なくとも、縫製対象物39に貼り付けられた2個の標識110のそれぞれが、刺繍枠84の内側、特に、変更後の保持位置における縫製可能領域86内に配置されるという条件を満たす必要がある。この条件に加え、ユーザの指示に応じて配置される次の模様が、変更後の保持位置における縫製可能領域86内に収まる場合には、変更後の保持位置は、第二保持位置である。この場合は、保持位置が第二保持位置とされたまま、縫製対象物39に対する次の模様(第二模様)の配置が設定された後、縫製が行なわれる。一方、変更後の保持位置では、配置される次の模様が、変更後の保持位置における縫製可能領域86に収まらず、そのままでは縫製できない場合には、この変更後の保持位置は仮保持位置とされ、仮保持位置における第一基準に対する標識110の配置が特定された後、保持位置が第二保持位置に変更されることになる。
【0064】
例えば、図13に示すように、第一保持位置における縫製可能領域86内に配置された矩形206内に、第一模様である模様205が縫製される。その後、第一線分227として指定された矩形206の右辺の両端付近に貼り付けられた2つの標識110の配置が特定される。保持位置変更を促すメッセージに従い、ユーザは、縫製対象物39を刺繍枠84から一旦外し、例えば、変更後の保持位置で設定される縫製可能領域86A内に2つの標識110が配置されるように、縫製対象物39を刺繍枠84にセットする。ユーザが、矩形206A内に第二模様を配置することを希望する場合には、第二模様は縫製可能領域86Aに収まるので、変更後の保持位置は第二保持位置である。一方、矩形206B内に次の模様を配置することを希望する場合には、次の模様は縫製可能領域86Aに収まらないので、変更後の保持位置は仮保持位置である。第二保持位置および仮保持位置に保持位置が変更された後の処理の詳細については後述する。
【0065】
保持位置が変更され、OKキーが選択されると、図5に示すように、処理はS20に戻る。図13に示すように、第一模様である1番目の模様205が縫製された後、2番目の模様として、同じ模様205が選択されたものとする(S20:YES)。この場合、2番目の模様205の縫製データが取得された後(S30)、変数Nは1ではないと判断される(S40:NO)。変数Nが2以上の場合には、変数Nが1である場合とは異なり、配置設定処理が実行される(S60、図14)。配置設定処理では、第二保持位置における縫製対象物39に対するN番目の模様(第二模様)の配置を設定する処理が実行される。前述したように、配置設定処理が行われる時点では、第一模様は既に縫製対象物39に縫製されており、縫製対象物39に対する配置が確定している。
【0066】
図14〜図20を参照して、配置設定処理の詳細について説明する。図14に示すように、配置設定処理では、まず、図15に示す第二基準設定画面250が表示される(S301)。図15に示すように、第二基準設定画面250には、模様表示欄251と、模様情報欄252と、指示キー表示欄253とが表示されている。模様表示欄251は、模様表示欄201と同様であり、模様情報欄252は、模様情報欄202と同様である。指示キー表示欄253には、第二指定キー群254、前の模様の基準変更キー(以下、基準変更キーという)256、標識検出キー257、キャンセルキー258、およびOKキー259が表示されている。第二指定キー群254に含まれる各第二指定キーは、第二基準を指定するキーである。第二基準とは、第一模様(N−1番目の模様)の配置に対する第二模様(N番目の模様)の配置を決定する際に使用される、第二模様に関する基準である。
【0067】
第二基準は、例えば、ユーザによって指定された、第二図形に含まれる第二線分208及び第二点209の少なくともいずれかを含む基準である。本実施形態の第二基準は、第二線分208及び第二点209を含む。第二図形は、次に縫製される第二模様が縫製される範囲を表す図形であり、本実施形態では第一図形と同様に、第二模様が収まる最小矩形である。第二線分208は、第一線分227(図8参照)と同様に、この最小矩形を構成する四辺のいずれかから選択される。第二点209は、第一点228(図8参照)と同様に、第二線分208の両端の点及び第二線分208の中点のいずれかから選択される。本実施形態では、第二指定キー群254に含まれる、12個の第二指定キーの中から、第二線分208と第二点209との組み合わせが第二基準として選択される。
【0068】
基準変更キー256は、第二基準を指定する時点又は指定した後で、ユーザが第一基準を誤って設定してしまったことに気づいた場合等、ユーザが、既に設定されている第一基準を変更したい場合に選択されるキーである。第一基準を変更する処理については後述する。標識検出キー257は、現在の保持位置が前述した仮保持位置である場合、仮保持位置において、第一基準に対する標識110の配置を特定する際に選択されるキーである。仮保持位置における標識110の配置の特定処理については後述する。キャンセルキー258は、第二基準の指定が終了される前に、指定を取り消すためのキーである。OKキー259は、第二基準の指定が終了した場合に選択される。
【0069】
第二指定キー群254のうちのいずれかの第二指定キーが選択されたかが判断される(S302)。いずれかの第二指定キーが選択された場合(S302:YES)、第二指定キーによって指定された第二基準が設定され、RAM63に記憶される(S303)。より詳細には、第二基準(第二線分及び第二点)の配置が、縫製データに基づき、刺繍座標系の座標で特定され、RAM63に記憶される。第一基準および第二基準に基づいて、第一模様の配置に対する第二模様の相対的な配置が決定され、RAM63に記憶される(S304)。決定された第一模様に対する第二模様の配置は、LCD7に表示される(S305)。
【0070】
本実施形態では、模様の配置は、初期配置に対する模様の位置及び角度を含む。第一模様(N−1番目の模様)の配置に対する第二模様(N番目の模様)の相対的な配置は、第一基準及び第二基準に基づき以下のように決定される。すなわち、第一模様の配置に対する第二模様の相対的な配置は、第一線分227の延伸方向が第二線分208と重なり、且つ、第一点228が、第二点209と重なる配置に決定される。上記の条件を満たす、第一模様の配置に対する第二模様の相対的な配置は、第一模様と次第二模様とが重なる場合と、第一模様と第二模様とが互いに重ならない場合の2パターン考えられる。本実施形態では、2パターンの配置のうち、第一模様と第二模様とが互いに重ならない方が採用される。
【0071】
例えば、図8に示すように1番目の模様205(図6参照)の第一基準(第一線分227および第一点228)が設定された状態で、図15に示す第二基準設定画面250において、2番目の模様205の範囲を表す矩形207の左辺とその上端の点の組み合わせを指定する第二指定キー255が選択されたとする。この場合、1番目の模様205の配置に対する2番目の模様205の相対的な配置は次のように決定され、模様表示欄251に表示される。1番目の模様205の範囲を表す矩形206の右辺(第一線分227)の延伸方向と、矩形207の左辺(第二線分208)とが重なり、且つ、矩形206の右辺の上端の点(第一点228)と、矩形207の左辺の上側の端点(第二点209)とが重なる配置に決定される。ユーザは、LCD7に表示された画面を見ることによって、第一模様(N−1番目の模様)の配置に対する第二模様(N番目の模様)の相対的な配置を確認することができる。そして、その配置関係が、ユーザの希望通りであれば、ユーザはOKキー259を選択する(S331:YES)。この場合、処理は後述するS332に進む。
【0072】
一方、S305で表示された第一模様と第二模様の配置関係を確認した結果、ユーザが、第一模様の第一基準を誤って設定したことに気づく場合がありうる。このような場合、ユーザは、OKキー259や、第二指定キーを選択せず(S331:NO、S302:NO)、基準変更キー256を選択して、既に設定されている第一基準の変更を指示する(S311:YES)。または、第二基準を設定する前の段階で、ユーザが、第一模様の第一基準を変更したい場合もありうる。このような場合、ユーザは、最初から第二指定キーは選択せず、基準変更キー256を選択する(S301、S302:NO、S311:YES)。基準変更キー256が選択されると(S311:YES)、第一基準変更処理が行われる(S312、図16)。第一基準変更処理は、既に設定されている第一基準を変更し、第一保持位置における変更後の第一基準に対する標識110の配置を特定する処理である。
【0073】
図16および図17を参照し、図13に示すように1番目の模様205の第一基準(第一線分227および第一点228)が設定されている場合を具体例として、第一基準変更処理について説明する。図16に示すように、まず、LCD7に現在の第一基準が表示される(S401)。具体的には、第一基準設定画面220(図8参照)が再表示される。前述したように、第一基準(第一線分227及び第一点228)の配置は、図5に示すメイン処理のS120で設定され、RAM63に記憶されている。よって、模様表示欄221には、RAM63に記憶されている第一基準の配置に基づき、設定されている第一線分227と第一点228とが付加された矩形206が表示され、指示キー表示欄223には、設定されている第一線分227と第一点228の組合せに対応する第一指定キーが認識可能に表示される。
【0074】
第一指定キー群224からいずれかの第一指定キーが選択された場合(S402:YES)、RAM63に記憶されていた第一基準が、新たに選択された第一指定キーに対応する第一基準に変更され、変更後の第一基準がRAM63に記憶される(S403)。具体的には、第一模様に対応する矩形における変更後の第一基準(第一線分227及び第一点228)の配置が、その模様の縫製データに基づき、刺繍座標系の座標で特定され、RAM63に記憶される。また、S403では、変更後の第一基準が付加された矩形206が、模様表示欄221に表示される。
【0075】
図13に示すように、ユーザが第二模様を矩形206A内に配置したい場合、変更前の第一点228には、第二模様を希望するように接続できない。よって、ユーザは、例えば、第一点228を、矩形206の右辺の中点228Aの位置に変更する必要がある。この場合、ユーザは、図17に示すように、矩形206の右辺とその中点の組合せに対応する第一指定キー229を選択する。すると、RAM63に記憶されていた矩形206の右辺とその上端の点を特定する座標が、矩形206の右辺とその中点を特定する座標に変更される。また、矩形206の右辺に第一線分227、右辺の中点に第一点228が付加されて、模様表示欄221に表示される。
【0076】
第一指定キー群224のうちのいずれの第一指定キーも選択されない場合(S402:NO)、又は、S403で第一基準が変更された後、CLOSEキー226が選択されたかが判断される(S404)。CLOSEキー226が選択されていない場合(S404:NO)、処理はS402に戻る。CLOSEキー226が選択された場合(S404:YES)、第一保持位置での変更後の第一基準に対する標識110の配置が第二標識配置として特定され、RAM63に記憶されていた第一標識配置が第二標識配置で更新される(S405)。具体的には、第一保持位置における変更後の第一線分227および第一点228の刺繍座標系の座標は、矩形206に対応する模様205の縫製データ(図5に示すメイン処理のS50で模様が編集され、縫製データが補正された場合は、補正後の縫製データ)から特定できる。特定された変更後の第一線分227および第一点228の座標と、RAM63に記憶されている第一保持位置における標識110の座標とから、第一保持位置での変更後の第一基準に対する標識110の配置が特定される。
【0077】
CPU61は、LCD7に、第一基準の変更が完了したことを報知するメッセージを含む画面(図示せず)を表示させる(S406)。続いて、第二基準が既に設定されているか否かが判断される(S407)。第二基準が既に設定されている場合(S407:YES)、前述したように、変更前の第一基準と第二基準とに基づき、第一模様に対する第二模様の相対的な配置が決定されている(図14のS304)。よって、変更後の第一基準と第二基準とに基づき、第一模様に対する第二模様の相対的な配置が決定し直される(S408)。配置の決定方法は、図14のS304と同様である。
【0078】
その後、CPU61は、図15に示す第二基準設定画面250を再びLCD7に表示させる(S409)。このとき、模様表示欄251には、決定し直された配置関係で、第一模様と第二模様に対応する2つの矩形が表示される。一方、第一基準の変更完了時点で第二基準がまだ設定されていない場合(S407:NO)、模様表示欄251には、第二模様に対応する矩形のみが表示された状態で、第二基準設定画面250が表示される(S409)。S409の後、CPU61は第一基準変更処理を終了し、図14に示す配置設定処理に戻る。なお、ユーザがまだ第二基準を設定していなければ、続けていずれかの第二指定キーが選択され、第二基準が設定される(S302:YES、S303)。この場合は、続くS304では、変更後の第一基準と第二基準とに基づき、第一模様に対する第二模様の相対的な配置が決定されることになる。
【0079】
第二基準設定画面250において、第二指定キーも基準変更キー256も選択されない場合(S302:NO、S311:NO)、標識検出キー257が選択され、第二標識検出処理の実行が指示されたかが判断される(S321)。標識検出キー257が選択されていない場合(S321:NO)、処理はS331に進む。一方、例えば、図13に示すように、ユーザが第二模様を矩形206Bの位置に配置したい場合、この時点の保持位置で設定される縫製可能領域86Aにはその第二模様は収まらない。このような場合、ユーザは標識検出キー257を選択する(S321:YES)。この場合、第二標識検出処理が行われる(S322、図18)。
【0080】
図18〜図20を参照して、第二標識検出処理について説明する。なお、以下の説明では、図20に示すように、まず、刺繍枠84(図2参照)による縫製対象物39の保持位置が、縫製可能領域86に対応する第一保持位置にある状態で、右辺が第一線分227、右辺の上端の点が第一点228として指定された矩形206内に第一模様が縫製された後、保持位置が縫製可能領域86Aに対応する仮保持位置に変更され、第二標識検出処理が行われる場合を例とする。第二標識検出処理では、標識110の貼り替え前後で標識110の検出処理が2回行われ、第一基準に対する標識110の配置が更新されていく。
【0081】
図18に示すように、第二標識検出処理では、まず標識110の検出回数を表す変数Mが1に設定され、設定された変数MはRAM63に記憶される(S451)。続いて、1回目の検出処理である全領域検出処理が行われる(S452、図19)。全領域検出処理では、配置予定位置のみを撮影対象とする配置予定位置検出処理(図10参照)とは異なり、標識110が検出されるまで、刺繍枠84(図2参照)の内側の領域全体が撮影対象とされる。図19に示すように、イメージセンサ50から出力された画像データが取得され(S501)、取得された画像データによって表される画像全体を検出対象として、標識110の検出処理が実行される(S502)。標識110の検出は、図10に示す配置予定位置検出処理のS204と同様に、公知の方法を用いて実行される。標識110が検出された場合には、例えば、標識110の第一中心点111及び第二中心点112の刺繍座標系の座標が算出される。
【0082】
標識110が検出されない場合(S503:NO)、刺繍枠84の内側の全領域が検出対象範囲として設定され、処理が完了したかが判断される(S504)。検出対象範囲として設定されていない領域がある場合(S504:NO)、駆動回路131及び駆動回路133に制御信号が出力され、検出対象範囲として設定されていない領域が、イメージセンサ50の撮影範囲に収まる位置に、刺繍枠84が移動される(S505)。処理はS501に戻り、画像から標識110を検出する処理が行われる。このようにして刺繍枠84の内側の領域が順に処理され、標識110が検出されないまま全領域の処理が完了した場合(S504:YES)、2個の標識110が検出できないことを報知するエラーメッセージがLCD7に表示される(S506)。この場合、ユーザは、2個の標識110が刺繍枠84の内側の領域にあるか否かを確認する。処理はS501に戻り、画像から標識110を検出する処理が行われる。
【0083】
標識110が検出された場合には(S503:YES)、それが2個目の標識110か否かが判断される(S507)。検出されたのが2個目の標識110ではない場合(S507:NO)には、処理はS504に進み、前述のように、標識110が検出されるまで、刺繍枠84を移動させて刺繍枠84の内側の領域内で画像を取得し、2個目の標識110を検出する処理が行われる。処理が繰り返され、2個目の標識が検出された場合(S507:YES)、CPU61は、図19に示す全領域検出処理を終了し、図18に示す第二標識検出処理に戻る。図18に示すように、仮保持位置での第一基準に対する標識110の配置が特定され、仮標識配置としてRAM63に記憶される(S453)。なお、S453では、既にRAM63に記憶されていた第一標識配置もしくは第二標識配置、又は、過去に行われた第二標識検出処理で記憶された仮標識配置が、新たに特定された仮標識配置で更新される。
【0084】
例えば、図20に示す縫製可能領域86に対応する第一保持位置での第一基準に対する標識110の配置は既に特定されている。また、縫製対象物39が、縫製可能領域86Aに対応する仮保持位置に張り替えられると、仮保持位置での刺繍座標系が設定され、原点は既知となる。全領域検出処理で、仮保持位置での標識110の座標が特定される。第一保持位置における第一基準(第一線分227及び第一点228)の刺繍座標を仮保持位置における刺繍座標系の座標に座標変換すれば、仮保持位置における第一基準の座標と標識110との対応ができる。つまり、縫製可能領域86Aに対応する仮保持位置での第一基準に対する標識110の位置及び角度を含む配置が特定される。
【0085】
次に、変数Mの値が2であるか、つまり、既に検出処理が2回行われたかが判断される(S454)。Mの値が2でない場合(S454:NO)、変数Mが1インクリメントされ(S455)、2回目の標識110の検出処理である配置予定位置検出処理が行われる(S456)。S456で行われる配置予定位置検出処理の内容は、図10を参照して説明した、第一標識検出処理(図9参照)中に行われる配置予定位置検出処理の内容とほぼ同じである。よって、ここでは、第一標識検出処理で行われるのとは異なる処理の内容についてのみ説明する。
【0086】
図10に示すように、まず、標識110のうち1つの配置予定位置を示す赤色の矩形245が画面240(図12参照)に表示されるが(S201)、この場合の配置予定位置は、例えば、第一基準に応じて定められるとよい。例えば、図20に示すように、第一基準の第一線分227が矩形206の右辺であり、第一点228が右辺の上端の点である場合、ユーザは、第二模様を第一模様の右斜め上方の領域に配置したい可能性が高い。従って、配置予定位置は、例えば、縫製可能領域86A内の第一点228のすぐ右側が第一配置予定位置110Aとされ、矩形206の上辺に沿って第一配置予定位置110Aから右方向に離間した位置が、第二配置予定位置110Bとされる。また、第一基準だけでなく第二基準も既に設定され、第一模様に対する第二模様の相対的な配置が決定されている場合は、決定された配置に基づき、配置予定位置が定められてもよい。その後のS202〜S208の処理の内容は、第一標識検出処理(図9参照)中で行われる場合と同じであるため、説明は省略する。
【0087】
このようにして、2個目の標識110の検出も終了すると(S207:YES)、CPU61は、図10の配置予定位置検出処理を終了して、図18の第二標識検出処理に戻る。続いて、仮保持位置における第一基準に対する貼り替え後の標識110の配置が特定され、RAM63に既に記憶されている仮標識配置が、特定された配置で更新される(S457)。例えば、図20に示す縫製可能領域86Aに対応する仮保持位置での第一基準に対する貼り替え前の標識110の配置と、貼り替え前の標識110の刺繍座標とは既に特定されている。よって、これらの情報と、第一配置予定位置110Aと第二配置予定位置110Bに貼り替えられた標識110の刺繍座標とから、仮保持位置での第一基準に対する貼り替え後の標識110の位置及び角度を含む配置が特定できる。
【0088】
仮標識配置が更新された後、処理はS454に戻る。2回目の検出処理が終わり、変数Mは2とされているので(S454:YES)、第一基準に対する標識110の配置が更新された旨を示すメッセージと、OKキー(図示せず)がLCD7に表示される(S458)。OKキーが選択されると、縫製対象物39の保持位置の変更を促すメッセージとOKキー(図示せず)がLCD7に表示される(S459)。メッセージの表示後、ユーザは、縫製対象物39の刺繍枠84(図2参照)に対する保持位置を、例えば、図20に示す縫製可能領域86Aに対応する仮保持位置から、第二保持位置に変更する。第二保持位置は、例えば、第一配置予定位置110Aと第二配置予定位置110Bにある標識110と、第二模様に対応する矩形206Bとが収まる縫製可能領域86Bに対応する保持位置である。保持位置の変更は、第一配置予定位置110Aと第二配置予定位置110Bに標識110が貼り付けられた状態で実行される。すなわち、刺繍枠84による縫製対象物39の保持位置が変更されても、縫製対象物39に対する標識110の配置は変更されない。
【0089】
保持位置が変更され、OKキー(図示せず)が選択されると、CPU61は、LCD7に第二基準設定画面250(図15参照)を表示して(S460)、図14に示す配置設定処理に戻り、S331の処理に進む。S331では、OKキー259が選択されたかが判断される。OKキー259が選択されていない場合(S331:NO)、処理はS302に戻り、前述したように、選択されたキーに応じた処理が行われる。OKキー259が選択された場合(S331:YES)、標識110の配置に基づき、第二保持位置における第一模様(N−1番目の模様)の配置を特定するための処理が実行される。
【0090】
まず、全領域検出処理が行われる(S332)。S332で行われる全領域検出処理の内容は、図19を参照して説明した、第二標識検出処理(図18参照)中に行われる全領域検出処理の内容と同じであるため、ここでの説明は省略する。全領域検出処理によって、2個の標識110が検出されると(S332)、検出された第二保持位置における標識110の刺繍座標系の座標と、RAM63に記憶されている第一標識配置、第二標識配置、または仮標識配置とから、第二持位置での第一基準に対する標識110の配置が特定され、第三標識配置としてRAM63に記憶される(S333)。
【0091】
例えば、図13に示すように、保持位置が、縫製可能領域86に対応する第一保持位置から、仮保持位置を経ることなく、縫製可能領域86Aに対応する第二保持位置に変更され、第一基準が変更されないまま、第二模様の配置が矩形206Dの位置に決定された場合、RAM63には第一標識配置が記憶されている。また、保持位置が同様に第二保持位置に変更されたが、第一基準が変更された後、第二模様の配置が矩形206Aの位置に決定された場合には、RAM63には第二標識配置が記憶されている。すなわち、これらの場合は、縫製可能領域86に対応する第一保持位置における変更前または変更後の第一基準と、標識110との対応関係が特定されている。また、保持位置が縫製可能領域86Aに対応する第二保持位置に変更された時点で、第二保持位置での刺繍座標系が設定され、S332の全領域検出処理で、第二保持位置での標識110の座標が特定されている。従って、第一保持位置における変更前または変更後の第一基準(第一線分227及び第一点228)の座標を第二保持位置における座標に座標変換すれば、第二保持位置における第一基準の座標と標識110との対応ができる。つまり、縫製可能領域86Aに対応する第二保持位置での変更前または変更後の第一基準に対する標識110の配置が第三標識配置として特定できる。
【0092】
一方、例えば、図20に示すように、保持位置が、縫製可能領域86に対応する第一保持位置から、縫製可能領域86Aに対応する仮保持位置を経て、縫製可能領域86Bに対応する第二保持位置に変更された場合には、RAM63には、仮標識配置、つまり、仮保持位置における変更前または変更後の第一基準と、第一配置予定位置110Aおよび第二配置予定位置110Bに貼り替えられた標識110との対応関係が記憶されている。この場合も同様に、S332の全領域検出処理で、第二保持位置における第一配置予定位置110Aおよび第二配置予定位置110Bにある標識110の座標が特定されるので、仮保持位置における変更前または変更後の第一基準(第一線分227及び第一点228)の座標を第二保持位置における座標に座標変換すれば、第二保持位置における第一基準の座標と標識110との対応ができる。つまり、縫製可能領域86Bに対応する第二保持位置での変更前または変更後の第一基準に対する第一配置予定位置110Aおよび第二配置予定位置110Bにある標識110の配置が第三標識配置として特定できる。
【0093】
次に、特定された第三標識配置と、第一模様の配置に対する第二模様の相対的な配置とに基づき、第二保持位置における縫製対象物39に対する第二模様(N番目の模様)の配置が設定される(S334)。具体的には、第二保持位置に設定される刺繍座標系の第一基準(第一線分227及び第一点228)の座標と標識110の座標との対応と、第二基準(第二線分208及び第二点209)の座標とから設定される。S334では、設定結果に基づき、N番目の模様の縫製データが補正される。また、N番目の模様の配置の設定結果(図示せず)は、LCD7に表示される。設定結果は、例えば、第二模様に対応する矩形の位置及び角度によって表される。その後、「標識をはがしてください。」とのメッセージ(図示せず)がLCD7に表示される(S335)。次に、図示しないが、縫製開始キーと、模様つなぎキーとを備える画面がLCD7に表示される。配置設定処理は以上で終了し、処理は図5のメイン処理に戻る。
【0094】
図5に示すように、メイン処理では、配置設定処理(S60)の後、CPU61は、模様つなぎキー又は縫製開始キーが選択されるまで待機する(S95:NO、S220:NO)。模様つなぎキーが選択された場合(S95:YES)、処理はS100に進み、N番目の模様を第一模様として、前述のように第一基準と標識110の配置を対応付ける処理が実行される(S100〜S210)。模様つなぎキーではなく、縫製開始キーが選択された場合(S95:NO、S220:YES)、S150の処理と同様にN番目の模様の縫製が実行される(S230)。メイン処理は以上で終了する。
【0095】
以上に説明したように、第一実施形態のミシン1によれば、第一模様に対する第二模様の相対的配置は、ユーザによって入力された指示に従って設定された第一基準と第二基準に基づいて決定される。つまり、ユーザは、第一基準設定画面220(図8参照)や第二基準設定画面250(図15参照)に表示される第一指定キーや第二指定キーを選択して第一基準や第二基準を設定することで、所望の第一模様と第二模様の配置関係を容易に設定することができる。また、ユーザは、第一基準を一旦設定した後、再度、第一基準設定画面220に表示された第一指定キーにより指示を入力することで、第一基準を容易に変更することができる。この場合、第一模様に対する第二模様の相対的配置は、変更後の第一基準と第二基準に基づいて決定される。このように、刺繍枠84(図2参照)による縫製対象物39の保持位置を第一保持位置から第二保持位置に変更して、ミシンで第一模様と第二模様を縫製する場合、ユーザは、第一模様と第二模様の位置合わせのための基準である第一基準および第二基準を、柔軟に設定したり変更したりすることができる。
【0096】
また、ミシン1によれば、刺繍枠84による縫製対象物39の保持位置が第一保持位置から第二保持位置に変更されても、夫々の保持位置で標識110(図4参照)が配置された縫製対象物39を撮影して得られた画像データに基づき、第二保持位置における第一基準または変更後の第一基準に対する標識110の配置が特定される。そして、特定された標識110の配置と、第一模様に対する第二模様の相対的配置とに基づき、第二保持位置における縫製対象物39上の第二模様の配置が設定される。従って、ミシンは、第一模様と第二模様とを、ユーザの希望する配置関係に位置合わせして、縫製することができる。
【0097】
第一実施形態において、イメージセンサ50は、本発明の「撮影手段」に相当する。LCD7は、「表示手段」に相当する。図5に示すメイン処理のS120で第一基準を設定するCPU61は、「第一基準設定手段」に相当する。図10に示す配置予定位置検出処理のS203で画像データを取得するCPU61は、「第一画像データ取得手段」に相当する。図9に示すS193で第一標識配置を特定するCPU61は、「第一配置特定手段」に相当する。図16に示す第一基準変更処理のS403で第一基準を変更するCPU61は、「第一基準変更手段」に相当し、S405で第二標識配置を特定するCPU61は、「第二配置特定手段」に相当する。図14に示す配置設定処理のS303で第二基準を設定するCPU61は、「第二基準設定手段」に相当し、S304で第一模様に対する第二模様の相対的配置を決定するCPU61は、「配置決定手段」に相当する。S332で行われる全領域検出処理(図19)のS501で画像データを取得するCPU61は、「第二画像データ取得手段」に相当する。S333で第三標識配置を特定するCPU61は、「第三配置特定手段」に相当する。S334で第二模様の配置を設定するCPU61は、「設定手段」に相当する。
【0098】
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態のミシン1の構成は、第一実施形態と同じであるため、説明は省略する。第二の実施形態のメイン処理は、図5に示す第一実施形態のメイン処理と、S60の配置設定処理において異なり、他の処理は同じである。具体的には、第二実施形態の配置設定処理では、ユーザは、第一基準に対する第二基準の刺繍座標系の相対位置を、第一線分227の延伸方向が第二線分208と重なり、且つ、第一点228が、第二点209と重なる位置から、距離を指定して変更できる。また、第二実施形態では、配置設定処理中に行われる第一基準変更処理(S312)の内容が、第一実施形態の処理(図16参照)とは異なっている。以下、第二実施形態の配置設定処理について、図21〜図23を参照して、第一実施形態と異なる点を主として説明する。図21において、図14の第一実施形態の配置設定処理と同じ処理が行われるステップには、同じステップ番号が付与されている。また、図22において、図16の第一実施形態の第一基準変更処理と同じ処理が行われるステップには、同じステップ番号が付与されている。
【0099】
まず、図21に示すS301では、図23に示す第二基準設定画面300が表示される。第二基準設定画面300は、図15に示す第一実施形態の第二基準設定画面250の指示キー表示欄253において、指示キー群254等に、Y軸方向距離設定キー306と、X軸方向距離設定キー307が加えられたものである。Y軸方向距離設定キー306は、第一基準に対する第二基準の刺繍座標系のY軸方向の相対位置をmm単位の数値で指定するためのキーである。X軸方向距離設定キー307は、第一基準に対する第二基準の刺繍座標系のX軸方向の相対位置をmm単位の数値で指定するためのキーである。第二基準設定画面300において第二指定キーが選択された場合(S302:YES)のS303〜S305の処理は、第一実施形態と同じである。第二指定キーが選択されない場合(S302:NO)、Y軸方向距離設定キー306とX軸方向距離設定キー307のいずれかが選択されたかが判断される(S307)。
【0100】
Y軸方向距離設定キー306又はX軸方向距離設定キー307が選択された場合(S307:YES)、処理はS304に進み、次のように第一模様(N−1番目の模様)の配置に対する第二模様(N番目の模様)の相対的な配置が決定される。第一模様の配置に対する第二模様の相対的な配置は、第一基準に対する第二基準の初期位置から、距離設定キーで指定された距離だけ移動させた位置に基づき決定される。第一基準に対する第二基準の初期位置は、第一実施形態において、第二指定キー群304に含まれるいずれかの第二指定キーが選択された場合に設定される位置、つまり、第一線分227の延伸方向が第二線分208と重なり、且つ、第一点228が、第二点209と重なる位置である。
【0101】
決定された配置は、模様表示欄251に表示される(S305)。図23に示す例では、模様表示欄251に、第二指定キー255が選択された後、距離設定キー306及び307が選択された場合の、1番目の模様205を表す矩形206に対する2番目の模様205を表す矩形207の相対的な配置が表示されている。具体的には、Y軸方向距離設定キー306及びX軸方向距離設定キー307で指定された数値に従って、第二基準が上記初期位置からX軸方向に+10.0(mm)、Y軸方向に−6.0mmに相対的に移動された場合の矩形206に対する矩形207の相対的な配置が表示されている。
【0102】
Y軸方向距離設定キー306とX軸方向距離設定キー307のいずれも選択されない場合(S307:NO)、基準変更キー256が選択されたか否かが判断される(S311)。基準変更キー256が選択された場合、第一基準変更処理が行われる(S312、図22)。図22に示すように、本実施形態の第一基準変更処理は、第一基準が変更され、第二標識配置が特定されるまでの処理(S401〜S405)は、第一実施形態の処理(図16参照)と同じである。第一実施形態では、その後、第二基準設定画面250(図15参照)が表示され、配置設定処理に戻るが、第二実施形態では、仮保持位置で行われる第二標識検出処理と同様の処理が行われる(S551〜S559)。
【0103】
例えば、図24に示すように、縫製可能領域86に対応する第一保持位置において、1番目の模様205に対応する矩形206の右辺が第一線分227とされ、右辺の中点が第一点228として設定された後、模様205が縫製されたとする。この場合、矩形206の右辺の両端付近に2個の標識110がそれぞれ配置されて第一標識検出処理(図9参照)が行われ、保持位置が、例えば、縫製可能領域86Aに対応する保持位置に変更される。ユーザが、実際には矩形206C内に2番目の模様を配置したい場合、第一基準の設定が誤っていたことに気づき、例えば、第一線分227を矩形206の下辺227B、第一点228を下辺の中点228Bに変更する。この場合、縫製可能領域86Aに対応する保持位置では2番目の模様は縫製できないので、ユーザは、例えば、縫製可能領域86Cに対応する保持位置に、保持位置を変更する必要がある。
【0104】
つまり、第一保持位置で第一模様が縫製された後、第一基準が変更されると、第二模様を第二保持位置で縫製するためには、一旦、別の保持位置を経由しなければならない可能性がある。従って、第二実施形態の第一基準変更処理では、第二標識検出処理と同様、第一基準変更処理が開始された時点の保持位置を仮保持位置として、貼り替え前と貼り替え後の2回、標識110の配置を検出して、変更後の第一基準に対する標識110の配置を更新して記憶し、確実に第二保持位置での処理が行えるようにする。図22に示す第一基準変更処理のS551〜S559の各ステップの処理は、図18に示す第二標識処理のS451〜S459の各ステップの処理とほぼ同じであるため、以下では、図24に示す例を参照して、簡単に説明する。
【0105】
図24に示す例では、まず、縫製可能領域86Aに対応する保持位置を仮保持位置として、1回目の検出が行われる(S551、S552)。検出で特定された仮保持位置における標識110の座標と、第一保持位置での変更後の第一基準(矩形206の下辺227Bとその中点228B)に対する標識110の配置とから、仮保持位置における変更後の第一基準に対する貼り替え前の標識110の配置が特定される。S405で特定され、RAM63に記憶されていた第二標識配置が、新たに特定された配置で更新される(S553)。続いて、2回目の検出処理が行われる(S554:NO、S555、S556)。S556の配置予定位置検出処理では、図10に示すように、まず、配置予定位置が赤色の矩形245(図12参照)で表示される(S201)。
【0106】
この場合の配置予定位置は、変更後の第一基準に応じて定められるとよい。例えば、図24に示すように、第一線分227が矩形206の下辺227Bに変更され、第一点228が下辺の中点228Bに変更された場合、ユーザは、2番目の模様を1番目の模様205の下方に配置したい可能性が高い。従って、配置予定位置110C、110Dは、例えば、変更後の第一線分である下辺227Bの両端付近の縫製可能領域86A内の2箇所に設定される。図24に示すように、下辺227Bの左端は、縫製可能領域86A内にないので、縫製可能領域86Aの左端が配置予定位置110Dとされる。また、第一基準だけでなく第二基準も既に設定され、第一模様に対する第二模様の相対的な配置が決定されている場合は、決定された配置に基づき、配置予定位置が定められてもよい。
【0107】
このようにして定められ、指定された配置予定位置に基づき、S556の配置予定処理が行われた後、仮保持位置における変更後の第一基準に対する貼り替え後の標識110の配置が特定され、RAM63に既に記憶されている第二標識配置が、特定された配置で更新される(S557)。その後、配置の更新が完了したことを示すメッセージが表示され(S558)、保持位置の変更を促すメッセージが表示されると(S559)、ユーザは、図24に示す縫製可能領域86Cに対応する第二保持位置に、保持位置を変更する。その後のS561〜S563の処理は、図16に示す第一実施形態のS407〜S409の処理と同じである。図22の第一基準変更処理が終了すると、処理は図21の配置設定処理に戻る。S321〜S335の処理は、図14に示す第一実施形態の処理と同じであるため、説明は省略する。その後、図21に示す配置設定処理でS331以降の処理が行われると、図24に示す縫製可能領域86Cに対応する第二保持位置での縫製対象物39に対する第二模様の配置が設定され、矩形206C内に第二模様を縫製することができる。
【0108】
以上に説明したように、第二実施形態のミシン1によれば、第一基準が変更された場合、第二標識配置が特定された後、ユーザは、LCD7に表示される配置予定位置に従って、変更後の第一基準に応じた適切な位置に、標識110を配置しなおすことができる。そして、配置予定位置に配置された標識110を含む画像データに基づき、変更後の第一基準に対する貼り替え後の標識110の配置が特定され、RAM63に記憶されている第二標識配置が更新される。更に、更新後の第二標識配置に基づいて、第二保持位置における変更後の第一基準に対する標識110の配置が特定される。従って、第二実施形態のミシン1は、第一基準が変更されても、配置予定位置を表示することで、ユーザに標識を適切な位置に配置するよう促し、第二保持位置における縫製対象物39上の第二模様の配置を正しく設定することができる。
【0109】
第二実施形態では、図22の第一基準変更処理のS556で行われる配置予定位置検出処理(図10)のS201で配置予定位置をLCD7に表示させるCPU61は、「表示制御手段」に相当する。S202でOKキーが選択された場合にその入力を受け付けるCPU61は、「配置終了受付手段」に相当し、続くS203で画像データを取得するCPU61は、「第三画像データ取得手段」に相当する。図22のS553、S557で、「記憶手段」であるRAM63に記憶された第二標識配置を更新するCPU61は、「更新手段」に相当する。
【0110】
本発明のミシンは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の(A)から(E)までの変形が適宜加えられてもよい。
【0111】
(A)ミシン1の構成は必要に応じて適宜変更されてもよい。例えば、本発明は、工業用ミシン及び家庭用ミシンに適用されてもよい。他の例では、イメージセンサ50の種類と、配置とは適宜変更してもよい。例えば、イメージセンサ50は、CCDカメラ等、CMOSイメージセンサ以外の撮影素子であってもよい。
【0112】
(B)第一模様の配置は、第一模様の位置及び角度の少なくともいずれかを含んでいればよい。同様に、第二模様の配置は、第二模様の位置及び角度の少なくともいずれかを含んでいればよい。
【0113】
(C)第一基準は、ユーザが指定した基準であって、第一模様が縫製される範囲を表す第一図形に含まれる第一線分及び第一点のいずれかを含む基準であればよい。同様に、第二基準は、ユーザが指定した基準であって、第二模様が縫製される範囲を表す第二図形に含まれる第二線分及び第二点のいずれかを含む基準であればよい。第一図形は、第一模様が縫製される範囲を表す図形であればよく、例えば、第一模様が収まる最小矩形の他、第一模様が収まる、円と、楕円と、多角形とのいずれかであってもよいし、第一模様の輪郭線であってもよい。第二図形は、第一図形と同様に、第二模様が収まる最小矩形以外の図形であってもよい。第一点は、第一図形に含まれる点であればよく、第一線分上の任意の点であってもよいし、第一線分上ではない点であってもよい。第二点は、第一点と同様に、第二図形に含まれる点であればよい。
【0114】
(D)メイン処理で用いる標識110の数は、適宜変更可能である。つまり、標識110は、1つでも3以上の複数でもよい。複数の標識110に基づき第一模様の配置が特定される場合、1つの標識110に基づき第一模様の配置が特定される場合に比べ、第一模様の配置、特に第一模様の角度を精度よく特定することができる。画像データに基づき検出される標識110の配置は、標識110の位置及び角度の少なくともいずれかであればよい。標識110の構成は適宜変更されてよい。標識110の構成には、例えば、標識の大きさと、材質と、デザインと、色とが含まれる。標識110の配置を特定するための基準(上記実施形態では、標識110の第一中心点111)及び算出方法は、標識110の構成等を考慮して、適宜変更されてよい。
【0115】
(E)メイン処理は適宜変更されてよい。例えば、以下のような変更が加えられてもよい。
(E−1)第一模様の配置に対する第二模様の相対的な配置の決定方法は適宜変更されてもよい。例えば、上記実施形態では、第一基準は第一指定キーを用いて指定され、第二基準は第二指定キーを用いて指定されていたがこれに限定されない。より具体的には、第一基準(第二基準)は、第一図形(第二図形)に含まれる線分及び点の中からユーザが任意に指定してもよい。他の例では、第一基準に対する第二基準の配置は、上記実施形態の場合に限定されず、適宜変更されてもよい。他の例では、第一基準に含まれる第一線分に対する、第二基準に含まれる第二線分の角度が数値によって指定されてもよい。このようにすれば、第一模様の配置に対して、第二模様の相対的な配置を所望の角度傾けることができる。他の例では、第一基準及び第二基準に相当する基準が自動で設定され、ユーザは設定された基準間の位置及び角度の少なくともいずれかの関係を数値で設定してもよい。第一基準及び第二基準に相当する基準には、例えば、第一図形(第二図形)の代表点と、第一図形(第二図形)の代表線分とが挙げられる。第一図形(第二図形)の代表点は、例えば、図形の中心点及び端点が挙げられる。第一図形(第二図形)の代表線分には、図形の対角線と、図形を構成するいずれかの辺とが挙げられる。
【0116】
(E−2)第一模様の配置に対する第二模様の相対的な配置を決定するための処理を行うタイミングは適宜変更されてよい。例えば、第一基準及び第二基準が取得されるタイミングは適宜変更されてもよい。より具体的には、第一模様を縫製した後に、第一基準を取得するための処理が実行されてもよい。
【0117】
(E−3)配置予定位置は、第一保持位置及び第二保持位置において、上記実施形態で例示された位置に限定されず、刺繍枠84の内側且つイメージセンサ50の撮影範囲内に収まる位置であればよい。配置予定位置は、例えば、ユーザによって設定されてもよい。配置予定位置の表示方法は適宜変更されてもよい。具体的には、標識110の中心の予定位置が星印等の模様で表示されてもよいし、標識110全体が収まる予定の範囲が円、楕円、または多角形といった図形で表示されてもよい。
【0118】
(E−4)図5のメイン処理のS40とS60との間に、N番目の模様を編集する処理が実行されてもよい。N番目の模様を編集する処理としては、例えば、模様の大きさの変更と、回転と、反転とが挙げられる。また、N番目の模様を編集する処理において、模様が回転される場合に、回転後の模様の範囲を表す図形が再設定されてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 ミシン
7 液晶ディスプレイ
39 縫製対象物
50 イメージセンサ
61 CPU
63 RAM
84 刺繍枠
110 標識
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺繍枠に保持された縫製対象物の表面を撮影可能な撮影手段と、
前記刺繍枠による前記縫製対象物の保持位置が第一保持位置である状態で縫製される模様を第一模様、前記保持位置が前記第一保持位置とは異なる第二保持位置である状態で縫製される模様を第二模様とした場合に、
入力された指示に従って、前記第一模様の位置および角度の少なくとも一方に対する前記第二模様の位置および角度の少なくとも一方を前記第二模様の相対的配置として決定するために使用される、前記第一模様に関する基準を、第一基準として設定する第一基準設定手段と、
前記保持位置が前記第一保持位置である状態で前記撮影手段によって撮影された、前記縫製対象物の前記表面に配置された標識を含む画像の画像データを、第一画像データとして取得する第一画像データ取得手段と、
前記第一基準および前記第一画像データに基づき、前記第一保持位置における前記第一基準に対する前記標識の位置および角度のうち少なくとも一方を、第一標識配置として特定する第一配置特定手段と、
前記第一配置特定手段によって前記第一標識配置が特定された後に前記第一基準を変更する指示である変更指示が入力された場合、前記変更指示に従って前記第一基準を変更し、変更後第一基準として設定する第一基準変更手段と、
前記第一基準変更手段によって前記変更後第一基準が設定された場合、前記変更後第一基準および前記第一標識配置に基づき、前記第一保持位置における前記変更後第一基準に対する前記標識の位置および角度のうち少なくとも一方を、第二標識配置として特定する第二配置特定手段と、
入力された指示に従って、第二模様の前記相対的配置を決定するために使用される前記第二模様に関する基準を、第二基準として設定する第二基準設定手段と、
前記第一基準または前記変更後第一基準と、前記第二基準とに基づいて、前記第二模様の前記相対的配置を決定する配置決定手段と、
前記保持位置が前記第二保持位置である状態で前記撮影手段によって撮影された、前記縫製対象物の前記表面に配置された前記標識を含む画像の画像データを、第二画像データとして取得する第二画像データ取得手段と、
前記第一標識配置または前記第二標識配置と、前記第二画像データとに基づき、前記第二保持位置における前記第一基準または前記変更後第一基準に対する前記標識の位置および角度のうち少なくとも一方を、第三標識配置として特定する第三配置特定手段と、
前記第二模様の前記相対的配置および前記第三標識配置に基づいて、前記第二保持位置における前記縫製対象物に対する前記第二模様の位置および角度の少なくとも一方を設定する設定手段とを備えたミシン。
【請求項2】
情報を表示する表示手段と、
前記第二配置特定手段によって前記第二標識配置が特定された場合、前記変更後第一基準に応じて定められた前記縫製対象物の前記表面における位置である配置予定位置を、前記表示手段に表示させる表示制御手段と、
前記標識が前記配置予定位置に配置されたことを示す情報である配置終了情報の入力を受け付ける配置終了受付手段と、
前記配置終了受付手段によって前記配置終了情報が受け付けられた後に前記撮影手段によって撮影された、前記縫製対象物の前記表面に配置された前記標識を含む画像の画像データを、第三画像データとして取得する第三画像データ取得手段と、
前記第二配置特定手段によって特定された前記第二標識配置を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記第二標識配置および前記第三画像データに基づき、前記配置予定位置に配置された前記標識の前記変更後第一基準に対する位置および角度のうち少なくとも一方を特定し、特定された前記位置および前記角度のうち少なくとも一方で、前記記憶手段に記憶された前記第二標識配置を更新する更新手段とを更に備え、
前記第三配置特定手段は、前記第一標識配置または前記記憶手段に記憶された前記第二標識配置と、前記第二画像データとに基づき、前記第三標識配置を特定することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記第一基準は、前記第一模様が縫製される範囲に含まれる線分および点のうち少なくとも一方であり、
前記第二基準は、前記第二模様が縫製される範囲に含まれる線分および点のうち少なくとも一方であり、
前記第一基準変更手段は、前記第一基準を、前記第一模様が縫製される前記範囲に含まれる他の線分および他の点のうち少なくとも一方に変更することで、前記変更後第一基準を設定することを特徴とする請求項1または2に記載のミシン。
【請求項4】
前記第一基準設定手段は、前記第一模様が縫製される前記範囲に含まれる前記線分および前記点の組合せに対応する複数の第一指定キーのうち、入力操作が行われた第一指定キーに基づいて前記第一基準を設定し、
前記第二基準設定手段は、前記第二模様が縫製される前記範囲に含まれる前記線分および前記点の組合せに対応する複数の第二指定キーのうち、入力操作が行われた第二指定キーに基づいて前記第二基準を設定し、
前記配置決定手段は、前記第二模様の前記相対的配置を、前記第一指定キーに対応する前記線分の延伸方向が、前記第二指定キーに対応する前記線分と重なり、且つ、前記第一指定キーに対応する前記点が、前記第二指定キーに対応する前記点と重なる配置とすることを特徴とする請求項3に記載のミシン。
【請求項1】
刺繍枠に保持された縫製対象物の表面を撮影可能な撮影手段と、
前記刺繍枠による前記縫製対象物の保持位置が第一保持位置である状態で縫製される模様を第一模様、前記保持位置が前記第一保持位置とは異なる第二保持位置である状態で縫製される模様を第二模様とした場合に、
入力された指示に従って、前記第一模様の位置および角度の少なくとも一方に対する前記第二模様の位置および角度の少なくとも一方を前記第二模様の相対的配置として決定するために使用される、前記第一模様に関する基準を、第一基準として設定する第一基準設定手段と、
前記保持位置が前記第一保持位置である状態で前記撮影手段によって撮影された、前記縫製対象物の前記表面に配置された標識を含む画像の画像データを、第一画像データとして取得する第一画像データ取得手段と、
前記第一基準および前記第一画像データに基づき、前記第一保持位置における前記第一基準に対する前記標識の位置および角度のうち少なくとも一方を、第一標識配置として特定する第一配置特定手段と、
前記第一配置特定手段によって前記第一標識配置が特定された後に前記第一基準を変更する指示である変更指示が入力された場合、前記変更指示に従って前記第一基準を変更し、変更後第一基準として設定する第一基準変更手段と、
前記第一基準変更手段によって前記変更後第一基準が設定された場合、前記変更後第一基準および前記第一標識配置に基づき、前記第一保持位置における前記変更後第一基準に対する前記標識の位置および角度のうち少なくとも一方を、第二標識配置として特定する第二配置特定手段と、
入力された指示に従って、第二模様の前記相対的配置を決定するために使用される前記第二模様に関する基準を、第二基準として設定する第二基準設定手段と、
前記第一基準または前記変更後第一基準と、前記第二基準とに基づいて、前記第二模様の前記相対的配置を決定する配置決定手段と、
前記保持位置が前記第二保持位置である状態で前記撮影手段によって撮影された、前記縫製対象物の前記表面に配置された前記標識を含む画像の画像データを、第二画像データとして取得する第二画像データ取得手段と、
前記第一標識配置または前記第二標識配置と、前記第二画像データとに基づき、前記第二保持位置における前記第一基準または前記変更後第一基準に対する前記標識の位置および角度のうち少なくとも一方を、第三標識配置として特定する第三配置特定手段と、
前記第二模様の前記相対的配置および前記第三標識配置に基づいて、前記第二保持位置における前記縫製対象物に対する前記第二模様の位置および角度の少なくとも一方を設定する設定手段とを備えたミシン。
【請求項2】
情報を表示する表示手段と、
前記第二配置特定手段によって前記第二標識配置が特定された場合、前記変更後第一基準に応じて定められた前記縫製対象物の前記表面における位置である配置予定位置を、前記表示手段に表示させる表示制御手段と、
前記標識が前記配置予定位置に配置されたことを示す情報である配置終了情報の入力を受け付ける配置終了受付手段と、
前記配置終了受付手段によって前記配置終了情報が受け付けられた後に前記撮影手段によって撮影された、前記縫製対象物の前記表面に配置された前記標識を含む画像の画像データを、第三画像データとして取得する第三画像データ取得手段と、
前記第二配置特定手段によって特定された前記第二標識配置を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記第二標識配置および前記第三画像データに基づき、前記配置予定位置に配置された前記標識の前記変更後第一基準に対する位置および角度のうち少なくとも一方を特定し、特定された前記位置および前記角度のうち少なくとも一方で、前記記憶手段に記憶された前記第二標識配置を更新する更新手段とを更に備え、
前記第三配置特定手段は、前記第一標識配置または前記記憶手段に記憶された前記第二標識配置と、前記第二画像データとに基づき、前記第三標識配置を特定することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記第一基準は、前記第一模様が縫製される範囲に含まれる線分および点のうち少なくとも一方であり、
前記第二基準は、前記第二模様が縫製される範囲に含まれる線分および点のうち少なくとも一方であり、
前記第一基準変更手段は、前記第一基準を、前記第一模様が縫製される前記範囲に含まれる他の線分および他の点のうち少なくとも一方に変更することで、前記変更後第一基準を設定することを特徴とする請求項1または2に記載のミシン。
【請求項4】
前記第一基準設定手段は、前記第一模様が縫製される前記範囲に含まれる前記線分および前記点の組合せに対応する複数の第一指定キーのうち、入力操作が行われた第一指定キーに基づいて前記第一基準を設定し、
前記第二基準設定手段は、前記第二模様が縫製される前記範囲に含まれる前記線分および前記点の組合せに対応する複数の第二指定キーのうち、入力操作が行われた第二指定キーに基づいて前記第二基準を設定し、
前記配置決定手段は、前記第二模様の前記相対的配置を、前記第一指定キーに対応する前記線分の延伸方向が、前記第二指定キーに対応する前記線分と重なり、且つ、前記第一指定キーに対応する前記点が、前記第二指定キーに対応する前記点と重なる配置とすることを特徴とする請求項3に記載のミシン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図15】
【図17】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図9】
【図10】
【図13】
【図14】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図24】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図15】
【図17】
【図23】
【公開番号】特開2012−228472(P2012−228472A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100001(P2011−100001)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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