説明

ムスカリン受容体アンタゴニストとして有用な第4級アンモニウム化合物

本発明は、塩もしくは両性イオンの形の式:(I)


[式中、R1〜6、a、ZおよびQは、本明細書に定義のとおりである]の化合物またはその製薬上許容される塩を提供する。これらの化合物は、ムスカリン受容体アンタゴニストである。本発明はまた、このような化合物を含有する薬学的組成物、このような化合物を調製する方法および例えば、慢性閉塞性肺疾患および喘息などの肺障害を治療するために、このような化合物を用いる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、ムスカリン受容体アンタゴニストまたは抗コリン活性を有する第4級アンモニウム化合物に関する。本発明はまた、これらの化合物を含んでなる薬学的組成物、それらを調製する方法および肺障害を治療するために使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
技術水準
肺障害または呼吸器障害、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および喘息は、世界中で何百万という人々を苦しめ、このような障害は、罹患率および死亡率の主要原因である。ムスカリン受容体アンタゴニストは、気管支保護的効果を提供することがわかっており、従って、このような化合物は、COPDおよび喘息などの呼吸器障害を治療するのに有用である。ムスカリン受容体アンタゴニストは、このような障害を治療するために用いられる場合は、通常、吸入によって投与される。しかし、吸入によって投与される場合でさえ、相当な量のムスカリン受容体アンタゴニストが、全身循環に吸収されることが多く、これが、口渇、瞳孔散大および心血管の副作用などの全身の副作用をもたらす。さらに、多くの吸入されたムスカリン受容体アンタゴニストは、比較的短期間の作用を有し、1日当たり数回投与されることが必要である。このような複数回の毎日の投与計画は、都合が悪いだけでなく、必要とされる頻繁な投与スケジュールのための患者のノンコンプライアンスによる不適当な治療という重大な危険も引き起こす。
【0003】
したがって、新規ムスカリン受容体アンタゴニストの必要性が存在する。特に、高い効力を有し、吸入によって投与された場合に全身の副作用が減少した、長期の作用期間を有し、それによって1日1回または1週間に1回の投薬さえも可能になるムスカリン受容体アンタゴニストの必要性が存在する。さらに、受容体に対する高い親和性および長い受容体半減期を有するムスカリン受容体アンタゴニストの必要性が存在する。このような化合物は、COPDおよび喘息などの肺障害を治療するために特に有効であり、一方で口渇および便秘などの副作用を低減または排除することが期待される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、ムスカリン受容体アンタゴニストまたは抗コリン活性を有する新規第4級アンモニウム化合物を提供する。本発明の化合物は、関連化合物と比較して、その他の特性の中でも、hMおよびhMムスカリン受容体サブタイプに対して改善された結合親和性を有し、より長い受容体半減期を有し、より大きな治療域を有し、またはより大きな効力を有することがわかっている。したがって、本発明の化合物は、肺障害を治療するための治療薬として有用であり、有利であることが期待される。
【0005】
本発明の一態様は、塩または両性イオンの形の、式I:
【0006】
【化1】

[式中、
は、−C1〜6アルキル、−C2〜6アルケニル、−C2〜6アルキニル、−C1〜3アルキレン−SCH、−C3〜9シクロアルキルおよびヘテロアリールから選択され;Rは、アリールまたはヘテロアリール基であり;Rは、Hおよび−C0〜1アルキレン−OHから選択されるか;またはRが−C3〜9シクロアルキルである場合には、Rは、−C3〜9シクロアルキル基上の炭素原子と二重結合を形成し得るか;または−CRは一緒になって、次式
【0007】
【化2】

の基を形成し:
aは、0または1〜3の整数であり;各Rは、フルオロおよび−C1〜4アルキルから独立に選択され;
は、−C1〜5アルキルおよび−C0〜1アルキレンC3〜5シクロアルキルから選択され;
は、−C1−3アルキル、−C1〜2アルキレンC3〜7シクロアルキル、−C0〜4アルキレン−OH、−C1〜2アルキレン−C(O)O−C1〜4アルキルおよび−C1〜2アルキレン−C(O)NR6a6bから選択され;ここで、R6aおよびR6bは、独立に、Hおよび−C1〜4アルキルから選択されるか;またはRは、Rと一緒になって−C3〜5アルキレン−を形成し;
Zは、結合、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SO−NRZ1−、−NRZ1−SO−、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)O−、−NRZ1C(O)−、−C(O)NRZ1−、−NRZ2−C(O)−NRZ3−、−NRZ2−C(S)−NRZ3−、−CH(OH)−および−C(=N−O−RZ4)−から選択され;ここで、RZ1は、Hおよび−C1〜4アルキルから選択され;RZ2およびRZ3は、独立に、H、−C1〜4アルキルおよび−C3〜6シクロアルキルから選択されるか、またはRZ2およびRZ3は、一緒になって、−C2〜4アルキレン−または−C2〜3アルケニレン−を形成し;RZ4は、−C1−4アルキルおよびベンジルから選択され;
Qは、アリールまたはヘテロアリール基であり;
ここで、R中の−C3〜9シクロアルキルおよびR中のアリールは、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、−C3〜6シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR、−SR、−S(O)R、−S(O)および−NRから独立に選択される1〜5個のR基で、場合により置換されていてもよく、;各Rは、独立に、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニルおよび−C3〜6シクロアルキルから選択され;RおよびRは各々独立に、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニルおよび−C3〜6シクロアルキルから選択され;Q中のアリールは、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、シアノ、−C0〜2アルキレン−COOH、−C(O)O−C1〜4アルキル、−O−C1〜4アルキル、−S−C1〜4アルキル、−NH−C(O)−C1〜4アルキル、−N−ジ−C1〜4アルキルおよび−N(O)Oから独立に選択される1〜5個のR基で場合により置換されていてもよく;R、R3〜6、Z、QおよびR中の、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アルキニルおよびシクロアルキル基は各々、1〜5個のフルオロ原子で場合により置換されていてもよく;−(CH1〜4中の−CH−基は各々、−C1〜2アルキル、−OH、フルオロおよびフェニルから独立に選択される、1または2個の置換基で場合により置換されていてもよい]
で示される化合物およびその製薬上許容される塩に関する。
【0008】
本発明の別の態様は、次式II:
【0009】
【化3】

[式中、Xは、製薬上許容される酸のアニオンであり;R1〜6、a、ZおよびQは、式Iについて定義のとおりである]
を有する第4級アンモニウム化合物およびその製薬上許容される塩に関する。
【0010】
式Iの化合物の中でも、特に注目される化合物は、100nM以下の、M受容体サブタイプとの結合に対する阻害解離定数(K)を有するもの、特に、50nM以下のKを有するもの、より特には、10nM以下のKを有するもの、さらにより特には、1.0nM以下のKを有するもの有するものである。
【0011】
本発明の別の態様は、製薬上許容される担体と、本発明の化合物とを含んでなる薬学的組成物に関する。このような組成物は、ステロイド性抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド)、βアドレナリン受容体アゴニスト、ホスホジエステラーゼ−4阻害剤およびそれらの組み合わせなどのその他の治療薬を場合により含んでいてもよい。したがって、本発明のさらなる別の態様では、薬学的組成物は、本発明の化合物と、第2の活性薬剤と、製薬上許容される担体とを含んでなる。本発明の別の態様は、本発明の化合物と、第2の活性薬剤とを含んでなる活性薬剤の組み合わせに関する。本発明の化合物は、さらなる薬剤(複数可)とともに、または別個に製剤され得る。別個に製剤される場合には、製薬上許容される担体は、さらなる薬剤(複数可)とともに含まれ得る。したがって、本発明のさらに別の態様は、薬学的組成物の組み合わせ、本発明の化合物と、第1の製薬上許容される担体とを含んでなる第1の薬学的組成物;および第2の活性薬剤と、第2の製薬上許容される担体とを含んでなる第2の薬学的組成物を含んでなる組み合わせに関する。この発明はまた、例えば、第1および第2の薬学的組成物が別個の薬学的組成物であるような薬学的組成物を含有するキットに関する。
【0012】
本発明の化合物は、ムスカリン受容体アンタゴニスト活性を有し、従って、ムスカリン受容体を遮断することによって治療される疾患または障害を患っている患者を治療するための治療薬として有用であることが期待される。したがって、本発明の一態様は、患者に、気管支拡張をもたらす量の本発明の化合物を投与することを含んでなる、患者において気管支拡張をもたらす方法を対象とする。本発明はまた、患者に、治療上有効な量の本発明の化合物を投与することを含んでなる、慢性閉塞性肺疾患または喘息などの肺障害を治療する方法を対象とする。本発明の別の態様は、哺乳類に、ムスカリン受容体を拮抗する量の本発明の化合物を投与することを含んでなる、哺乳類においてムスカリン受容体を拮抗する方法に関する。
【0013】
本発明の化合物は、ムスカリン受容体アンタゴニスト活性を有するので、このような化合物はまた、研究ツールとしても有用である。したがって、本発明の一態様は、研究ツールとして本発明の化合物を使用する方法に関し、この方法は、本発明の化合物を用いて生物学的アッセイを実施することを含んでなる。また、本発明の化合物を使用して、新規化合物を評価できる。したがって、本発明の別の態様は、(a)試験化合物を用いて生物学的アッセイを実施して第1のアッセイ値を提供するステップと、(b)本発明の化合物を用いて生物学的アッセイを実施して第2のアッセイ値を提供するステップ(ステップ(a)は、ステップ(b)の前、後または同時のいずれかで実施される)と、(c)ステップ(a)から得た第1のアッセイ値を、ステップ(b)から得た第2のアッセイ値と比較するステップとを含んでなる、生物学的アッセイにおいて試験化合物を評価する方法に関する。例示的生物学的アッセイとして、哺乳類における、ムスカリン受容体結合アッセイおよび気管支保護アッセイが挙げられる。本発明のさらに別の態様は、ムスカリン受容体を含んでなる生物系またはサンプルを調べる方法を対象とし、この方法は、(a)生物系またはサンプルを、本発明の化合物と接触させるステップと、(b)生物系またはサンプルに対する本化合物によって引き起こされる効果を調べるステップとを含んでなる。
【0014】
本発明はまた、本発明の化合物を調製するために有用な方法および中間体を対象とする。したがって、本発明の別の態様は、(a)式1の化合物を式2の化合物と反応させるステップまたは式1’の化合物を式2’の化合物と反応させて、式3の化合物を作製するステップおよび式3の化合物を、R基を含有する有機基質と反応させるステップ、または(b)式4の化合物を式2の化合物を反応させるステップ、または(c)式4の化合物を式5の化合物と反応させて、式6の化合物を作製するステップおよび式6の化合物を式7の化合物と反応させるステップおよび塩または両性イオンの形の生成物を回収して式Iの化合物を提供するステップを含んでなり、式1,1’、2,2’および3〜7の化合物が、本明細書に定義されるとおりである、本発明の化合物を調製する方法に関する。その他の態様では、本発明は、本明細書に記載される方法のいずれかによって調製される生成物を対象とする。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、医薬、特に、肺障害(慢性閉塞性肺疾患および喘息など)を治療するために、気管支拡張をもたらすために、哺乳類においてムスカリン受容体を拮抗するために有用である医薬の製造のための本発明の化合物の使用を対象とする。本発明のさらに別の態様は、研究ツールとしての本発明の化合物の使用に関する。本発明のその他の態様および実施形態は、本明細書に開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、塩または両性イオンの形の次式I:
【0017】
【化4】

を有する化合物またはその製薬上許容される塩を対象とする。より具体的には、本発明は、次式II:
【0018】
【化5】

[式中、Xは、製薬上許容される酸のアニオンである]
を有する第4級アンモニウム化合物またはその製薬上許容される塩を対象とする。用語「第4級アンモニウム化合物」とは、NHイオンの4個の水素原子のすべてが、有機基によって置換されている、水酸化アンモニウムまたはアンモニウム塩から誘導される化合物を指す。
【0019】
本明細書で用いる場合、用語「本発明の化合物」とは、式Iの化合物ならびにII、IIa、IIb、IIc、IId、IIeおよびIIfなどの式で例示される種を含むものとする。本発明の化合物は、第4級アンモニウム塩であり、最先端の方法論、例えば、イオン交換クロマトグラフィーを用いて種々の塩の形の間で変換できる。また、本化合物は、溶媒和物の形で得ることができ、このような溶媒和物は、本発明の範囲内に含まれる。したがって、当業者ならば、本明細書における化合物への言及、例えば、「本発明の化合物」への言及は、特に断りのない限り、式Iの化合物への、ならびにその化合物の任意の製薬上許容される塩の形および製薬上許容される溶媒和物への言及を含むと認識するであろう。
【0020】
本発明の化合物は、1以上のキラル中心を含む場合があり、そのためいくつかの立体異性体の形で存在し得る。このようなキラル中心が存在する場合には、本発明は、特に断りのない限り、ラセミ混合物、純粋な立体異性体(すなわち、鏡像異性体またはジアステレオマー)、立体異性体が豊富な混合物などを対象とする。化学構造が、任意の立体化学を用いずに表される場合は、このような構造によって、すべてのあり得る立体異性体が包含されると理解される。したがって、例えば、用語「式Iの化合物」は、化合物のすべてのあり得る立体異性体を含むものとする。同様に、本明細書において特定の立体異性体が示される、または名づけられている場合には、特に断りのない限り、当業者によって、本発明の組成物中に少量のその他の立体異性体が、全体として組成物の有用性が、このようなその他の異性体の存在によって消されない限りは、存在し得ると理解されるであろう。個々の鏡像異性体は、例えば、適したキラル固定相または支持体を用いるキラルクロマトグラフィーを含む当技術分野で周知の多数の方法によって得る、または、それらをジアステレオマーに化学的に変換し、クロマトグラフィーまたは再結晶化などの従来手段によりジアステロマー(diasteromer)を分離し、次いで、元の鏡像異性体を再生することによって得ることができる。さらに、適用可能な場合には、特に断りのない限り、本発明の化合物のすべてのシス−トランスまたはE/Z異性体(幾何異性体)、互変異性体の形およびトポイソマーの形が、本発明の範囲内に含まれる。
【0021】
特に、式Iの化合物は、以下の部分式(明確にするために、任意の置換基は含まずに示されている):
【0022】
【化6】

中、記号によって示される炭素原子にキラル中心を含む。
【0023】
本発明の一実施形態では、記号によって同定される炭素原子は、(R)立体配置を有する。この実施形態では、式Iの化合物は、記号によって同定される炭素原子で(R)立体配置を有するか、またはこの炭素原子で(R)立体配置を有する立体異性体の形が豊富である。別の実施形態では、記号によって同定される炭素原子は、(S)立体配置を有する。この実施形態では、式Iの化合物は、記号によって同定される炭素原子で(S)立体配置を有するか、または、この炭素原子で(S)立体配置を有する立体異性体の形が豊富である。
【0024】
本発明の化合物ならびにそれらの合成において使用される化合物はまた、同位体標識された、すなわち、1個以上の原子が、天然において主に見られる原子質量とは異なる原子質量を有する原子が豊富である化合物を含み得る。式Iの化合物に組み込んでもよい同位体の例として、例えば、それだけには限らないが、H、H、13C、14C、15N、18Oおよび17Oが挙げられる。
【0025】
本発明の化合物は、ムスカリン受容体アンタゴニスト活性を有することがわかっている。本発明の化合物は、関連化合物と比較して、それらの特性の中でも、hMおよびhMムスカリン受容体サブタイプに対して改善された結合親和性を有し、より長い受容体半減期を有し、より大きな効力をすることがわかっているおり、肺障害を治療するための治療薬として有用であることが期待される。
【0026】
本発明の化合物を名づけるために本明細書において使用される命名法は、本明細書において実施例に示されている。この命名法は、市販のAutoNomソフトウェア(MDL、San Leandro、California)を使用して導かれている。
【0027】
代表的な実施形態
以下の置換基および値は、本発明の種々の態様および実施形態の代表的な例を提供するものとする。これらの代表的な値は、このような態様および実施形態をさらに定義および例示するものとし、その他の実施形態を排除するものでもなく、本発明の範囲を制限するものでもない。この関連で、特定の値または置換基が好ましいと表すことは、特に断りのない限り、決して、本発明からその他の値または置換基を排除するものではない。
【0028】
は、−C1〜6アルキル、−C2〜6アルケニル、−C2〜6アルキニル、−C1−3アルキレン−SCH、−C3〜9シクロアルキルおよびヘテロアリールから選択される。一実施形態では、Rは、−CHCH(CHなどの−C1〜6アルキルである。別の実施形態では、Rは、−CHCH=CHなどの−C2〜6アルケニルである。さらに別の実施形態では、Rは、−C≡CHなどの−C2〜6アルキニルである。さらに別の実施形態では、Rは、−(CHSCHなどの−C1〜3アルキレン−SCHである。さらに別の実施形態では、Rは、シクロプロピルおよびシクロペンチルなどの−C3〜9シクロアルキルである。−C3〜9シクロアルキル基は、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、−C3〜6シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR、−SR、−S(O)R、−S(O)および−NRから独立に選択される1〜5個のR基で場合により置換されていてもよく;ここで、各Rは、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニルおよび−C3〜6シクロアルキルから独立に選択され;各RおよびRは独立に、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニルおよび−C3〜6シクロアルキルから選択される。一実施形態では、−C3〜9シクロアルキル基は、非置換である。各R基は、存在する場合には、結合されている−C3〜9シクロアルキル環の任意の位置であり得る。2個以上のR置換基が存在する、すなわち、aが、2、3、4または5である場合には、置換基は、同一炭素原子上にあっても、異なる炭素原子上にあってもよい。一実施形態では、Rは、−C1〜4アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル)、ハロ(例えば、フルオロまたはクロロ)および−ORla(例えば、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ)から独立に選択される。前記のR中のアルキル、アルケニル、アルキニルおよびシクロアルキル基の各々は、1〜5個のフルオロ原子で置換されていてもよい。R中のこれらの基に言及する場合には、R、RおよびR部分中に存在し得るこのような基はいずれも言及されるということは理解されよう。例えば、Rは、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよび2,2,2−トリフルオロエチルまたは−OR(式中、Rは、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルである)などの−C1〜4アルキルであり得る。
【0029】
別の実施形態では、Rは、チオフェン(例えば、2−チオフェンおよび3−チオフェン)などのヘテロアリールである。
【0030】
は、アリールまたはヘテロアリール基である。特定の一実施形態では、Rは、フェニルまたはナフタレニルなどのアリール基であり;別の実施形態では、Arはフェニルである。特定の一実施形態では、Rは、チオフェン(例えば、2−チオフェンおよび3−チオフェン)などのヘテロアリール基である。R中のアリールは、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、−C3〜6シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR、−SR、−S(O)R、−S(O)および−NRから独立に選択される1〜5個のR基で置換されていてもよい。各Rは、H、−C1〜4アルキル、-C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニルおよび−C3〜6シクロアルキルから独立に選択される。各RおよびRは、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニルおよび−C3〜6シクロアルキルから独立に選択される。前記のR中のアルキル、アルケニル、アルキニルおよびシクロアルキル基の各々は、1〜5個のフルオロ原子で置換されていてもよい。R中のこれらの基に言及する場合には、R、RおよびR部分中に存在し得るこのような基はいずれも言及されるということは理解されよう。特定の一実施形態では、Rはフェニルであり、非置換である。別の実施形態では、Rはフェニルであり、−C1〜4アルキル、(例えば、−CH)、ハロ(例えば、フルオロ)および−OR(式中、RはHまたは−CHなどの−C1〜4アルキルである)から独立に選択される1または2個のR基で置換されている。特定の一実施形態では、Rはフェニルであり、1個のフルオロ原子で置換されている。
【0031】
は、Hおよび−C0〜1アルキレン−OHから選択され、ここで、アルキレン基は、1〜5個のフルオロ原子で場合により置換されていてもよい。一実施形態では、Rは、Hおよび−OHから選択される。別の実施形態では、Rは−OHである。さらに別の実施形態では、Rは−CHOHである。あるいは、Rが−C3〜9シクロアルキルである場合は、Rは、−C3〜9シクロアルキル基上の炭素原子と二重結合を形成し、実施形態は以下として表され得る:
【0032】
【化7】

特定の一実施形態では、Rはシクロペンチルであり、Rは、シクロペンチル基上の炭素原子と二重結合を形成する。
【0033】
さらに別の実施形態では、−CRは一緒になって次式:
【0034】
【化8】

の基を形成する。このような一実施形態では、RはHである。
【0035】
窒素含有環は、環中に3〜6個の炭素原子を有してもよく、したがって、以下のように表される:
【0036】
【化9】

この描写は、以下の窒素含有環:
【0037】
【化10】

を含むものとする。特定の一実施形態では、窒素含有環は以下である:
【0038】
【化11】

aの値は、0、1、2または3であり、さらにより詳しくは、0または1である。一実施形態では、aは0である。
【0039】
各Rは、存在する場合には、フルオロおよび−C1〜4アルキルから独立に選択される。2個以上のR置換基が存在する、すなわち、aが2または3である場合には、置換基は、同一炭素原子上にあっても、異なる炭素原子上にあってもよい。例示的R 基として、それだけには限らないが、メチル、エチルおよびフルオロが挙げられる。R中のアルキル基は、1〜5個のフルオロ原子で置換されていてもよい。例えば、Rは、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルであり得る。
【0040】
は、−C1〜5アルキルおよび−C0〜1アルキレンC3〜5シクロアルキルから選択される。前記のR中のアルキル、アルキレンおよびシクロアルキル基の各々は、1〜5個のフルオロ原子で置換されていてもよい。一実施形態では、Rは、−CHなどの−C1〜5アルキルである。
【0041】
は、−C1〜3アルキル、−C1〜2アルキレンC3〜7シクロアルキル、−C0〜4アルキレン−OH、−C1〜2アルキレン−C(O)O−C1〜4アルキルおよび−C1〜2アルキレン−C(O)NR6a6bから選択される。R6aおよびR6bは、Hおよび−C1〜4アルキルから独立に選択される。例示的−C1〜3アルキル基として、−CH、−CHCHおよび−(CHCHが挙げられる。例示的−C1〜2アルキレンC3〜7シクロアルキル基として、−CH−シクロプロピルが挙げられる。例示的−C0〜4アルキレン−OH基として、−(CHOHが挙げられる。例示的−C1〜2アルキレン−C(O)O−C1〜4アルキル基として、−CH−C(O)OCHが挙げられる。例示的−C1〜2アルキレン−C(O)NR6a6b基として、−CH−C(O)NHが挙げられる。あるいは、Rは、Rと一緒になって、−C3〜5アルキレン−を形成する。前記のR中のアルキル、アルキレンおよびシクロアルキル基の各々は、1〜5個のフルオロ原子で置換されていてもよい。R中のこれらの基に言及する場合には、R6aおよびR6b部分中に存在し得るこのような基はいずれも言及されるということは理解されよう。
【0042】
Zは、結合、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SO−NRZ1−、−NRZ1−SO−、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)O−、−NRZ1C(O)−、−C(O)NRZ1−、−NRZ2−C(O)−NRZ3−、−NRZ2−C(S)−NRZ3−、−CH(OH)−および−C(=N−O−RZ4)−から選択される。一実施形態では、Zは、結合、−O−および−C(O)−から選択される。RZ1は、Hおよび−C1〜4アルキルから選択される。特定の一実施形態では、RZ1は、水素である。RZ2およびRZ3は、H、−C1〜4アルキルおよび−C3〜6シクロアルキルから独立に選択される。あるいは、RZ2およびRZ3は、一緒になって、−C2〜4アルキレン−または−C2−3アルケニレン−を形成する。特定の一実施形態では、RZ2およびRZ3は、両方とも水素である。RZ4は、−C1〜4アルキルおよびベンジルから選択される。一実施形態では、RZ4は、−CHなどの−C1〜4アルキルである。別の実施形態では、RZ4はベンジルである。前記のZ中のアルキル、アルキレン、アルケニレンおよびシクロアルキル基の各々は、1〜5個のフルオロ原子で置換されていてもよい。Z中のこれらの基に言及する場合には、RZ1、RZ2,およびRZ3部分中に存在するこのような基も言及されるということは理解されよう。
【0043】
窒素含有環を第4級窒素と接続するリンカーは、結合(0個の炭素原子)であってもよく、1個の炭素原子を有していてもよく、したがって、−(CH0〜1−または−C0〜1アルキレン−として命名できる。特定の一実施形態では、このリンカーは、結合である。別の実施形態では、このリンカーは、1個の炭素原子を含む。
【0044】
第4級窒素とZ部分を接続するリンカーは、1〜4個の炭素原子を含み、したがって、−(CH1〜4−または−C1〜4アルキレン−として命名できる。−(CH1−4−中の各−CH−基は、−C1〜2アルキル、−OH、フルオロおよびフェニルから独立に選択される1または2個の置換基で場合により置換されていてもよい。一実施形態では、−(CH1〜4−中の1個の−CH−基は、−OHまたはフェニルで場合により置換されていてもよい。
【0045】
第4級窒素およびZ部分と組み合わせたこれら2種のリンカーは、−(CH0〜1−N(R)−(CH1〜4−Z−として表すことができ、窒素含有環およびQ部分間の連結部分を形成する。具体的な実施形態では、−(CH0〜1−N(R)−(CH1〜4−Z−は、以下のうちの1種から選択される:−N(CH−CH−、−N(CH(CH−、−N(CH(CHCH)−(CH、−N(CH−(CH−、−N(CH−(CH−、−N(CH−CH−CH(フェニル)−、−N(CH−CH−CH(OH)−、−N(CH−CH−C(O)−、−N(CH−(CH−O−、−N(CH−(CH−O−、−N(CH−(CH−O−、−CH−N(CH−CH−、−CH−N(CH−(CH−、−CH−N(CH−(CH−、−N(CH)(CHCH)−(CH−、−N(CH)−[(CHCH]−(CH−、−N(CH)(CH−シクロプロピル)−(CH−、−N(CH)(CHCHOH)−(CH−、−N(CH)[CHC(O)OCH]−(CH−および−N(CH)[CHC(O)NH]−(CH−。
【0046】
Qは、アリールまたはヘテロアリール基であり、これらの用語は本明細書に定義されるとおりである。一実施形態では、Qは、フェニルなどのアリール基である。別の実施形態では、Qは、チエニル(例えば、チオフェン−2−イルまたはチオフェン−3−イル)、フラニル、ピロリル(例えば、ピロール−1−イル)、ピラゾリル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、インドリル(例えば、1H−インドール−3−イル)およびテトラゾリル(例えば、1H−テトラゾール−5−イル)およびピペリジニル(例えば、ピペリジン−4−イル)から選択されるヘテロアリール基である。
【0047】
Qがアリール基である場合には、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、シアノ、−C0〜2アルキレン−COOH、−C(O)O−C1〜4アルキル、−O−C1〜4アルキル、−S−C1〜4アルキル、−NH−C(O)−C1〜4アルキル、−N−ジ−C1〜4アルキルおよび−N(O)Oから独立に選択される1〜5個のR基で置換されていてもよい。別の実施形態では、各Rは、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、シアノ、−C0〜2アルキレン−COOH、−C(O)O−C1〜4アルキルおよび−O−C1〜4アルキルから独立に選択される。例示的ハロ基として、フルオロ、クロロおよびブロモが挙げられる。例示的−C1〜4アルキル基として、−CHおよび−C(CHならびに−CFなどのフルオロ置換アルキル基が挙げられる。例示的−C0〜4アルキレン−OH基として、−OHおよび−(CH−OHが挙げられる。例示的−C0〜2アルキレン−COOH基として、−COOH(カルボキシ)および−CHCOOH(カルボキシメチル)が挙げられる。例示的−C(O)O−C1〜4アルキル基として、−C(O)OCH(メトキシカルボニル)が挙げられる。例示的−O−C1〜4アルキル基として、−OCHならびに−OCHF(ジフルオロメトキシ)などのフルオロ置換アルコキシ基が挙げられる。例示的−S−C1〜4アルキル基として、−S−CHが挙げられる。例示的−NH−C(O)−C1〜4アルキル基として、−NH−C(O)−CHが挙げられる。例示的−N−ジ−C1〜4アルキル基として、−N(CHが挙げられる。
【0048】
2個以上のR置換基が存在する場合には、置換基は、同一環原子上にあっても、異なる環原子上にあってもよい。前記のQ中のアルキルおよびアルキレン基の各々は、1〜5個のフルオロ原子で置換されていてもよい。Q中のこれらの基に言及する場合には、R部分中に存在するこのような基も言及されるということは理解されよう。一実施形態では、Qは非置換である。別の実施形態では、Qは、1個のR基で置換されており;別の実施形態では、Rは、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、シアノ、−C0〜2アルキレン−COOH、−C(O)O−C1〜4アルキルおよび−O−C1〜4アルキルおよび−N(O)Oから選択される。別の実施形態では、Qは、2個のR基で置換されており;別の実施形態では、各Rは、ハロ、−C1〜4アルキル、C0〜4アルキレン−OH、−C(O)O−C1〜4アルキルおよび−O−C1〜4アルキルから独立に選択される。
【0049】
は、製薬上許容される酸のアニオンである。用語「製薬上許容される酸のアニオン」とは、製薬上許容される酸のアニオン性対イオンを指すよう使用される。製薬上許容される無機酸の例として、例示として、限定するものではないが、ホウ酸、炭酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸またはヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸および硫酸および水酸化物が挙げられる。製薬上許容される有機酸の例として、例示として、限定するものではないが、脂肪族ヒドロキシル酸(例えば、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸および酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸およびトリフルオロ酢酸)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、p−クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチシン酸、馬尿酸およびトリフェニル酢酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えば、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸および3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸およびコハク酸)、グルコロン酸(glucoronic)、マンデル酸、ムチン酸、ニコチン酸、オロト酸、パモン酸、パントテン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、エジシル酸(edisylic acid)、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸)、キシナホン酸(xinafoic acid)などが挙げられる。一実施形態では、製薬上許容される酸は、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、酪酸、p−クロロ安息香酸、クエン酸、ジフェニル酢酸、ギ酸、臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸、ヨウ化水素酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、硝酸、リン酸、プロピオン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、トリフルオロ酢酸およびトリフェニル酢酸から選択される。別の実施形態では、製薬上許容される酸は、臭化水素酸、ヨウ化水素酸およびトリフルオロ酢酸から選択される。一実施形態では、アニオンは、アセテート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート、ブロミド、ブチレート、クロリド、p−クロロベンゾエート、シトレート、ジフェニルアセテート、ホルメート、フルオリド、o−ヒドロキシベンゾエート、p−ヒドロキシベンゾエート、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボキシレート、3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボキシレート、ヨーダイド、ラクテート、マレート、マレエート、メタンスルホネート、ニトレート、ホスフェート、プロピオネート、スクシネート、スルフェート、タートレート、トリフルオロアセテート、ビ−およびトリフェニルアセテートから選択される。さらに別の実施形態では、アニオンは、ブロミド、ヨーダイドおよびトリフルオロアセテートから選択される。
【0050】
一実施形態では、本発明の化合物は、式IまたはIIを有し:Rは、−C1〜6アルキル、−C2〜6アルケニル、−C2〜6アルキニル、−C1〜3アルキレン−SCH、−C3〜9シクロアルキルおよびヘテロアリールから選択され;Rは、アリールまたはヘテロアリール基であり;Rは、Hおよび−C0〜1アルキレン−OHから選択されるか;またはRが−C3〜9シクロアルキルである場合には、Rは、−C3〜9シクロアルキル基上の炭素原子と二重結合を形成し得るか;または−CRは一緒になって、次式:
【0051】
【化12】

の基を形成し;aは0であり;Rは−C1〜5アルキルであり;Rは、−C1〜3アルキル、−C1〜2アルキレンC3〜7シクロアルキル、−C0〜4アルキレン−OH、−C1〜2アルキレン−C(O)O−C1〜4アルキルおよび−C1〜2アルキレン−C(O)NHから選択され;Zは、結合、−O−および−C(O)−から選択され;Qは、アリールまたはヘテロアリール基であり;ここで、R中のアリールは、−C1〜4アルキル、ハロおよび−ORから独立に選択される1〜2個のR基で場合により置換されていてもよく;各Rは、Hおよび−C1〜4アルキルから独立に選択され;Q中のアリールは、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、シアノ、−C0〜2アルキレン−COOH、−C(O)O−C1〜4アルキル、−O−C1〜4アルキルおよび−N(O)Oから独立に選択される1〜2個のR基で場合により置換されていてもよく;R中の各アルキルは、1〜5個のフルオロ原子で場合により置換されていてもよく;−(CH1〜4中の1個の−CH−基は、−OHおよびフェニルから選択される基で場合により置換されていてもよい。
【0052】
別の実施形態では、本発明の化合物は、式IまたはIIを有し:Rがフェニルであり、Rが−OHである場合は、Rは、−CHCH(CH、−CHCH=CH、シクロプロピルおよびシクロペンチルから選択され;またはRがフェニルであり、RがHである場合は、Rは−シクロプロピルであり;またはRがフェニルであり、Rが、シクロペンチル基上の炭素原子と二重結合を形成する場合は、Rはシクロペンチルであり;またはRがチオフェニルであり、Rが−OHである場合は、Rはシクロペンチルまたはチオフェニルであり;または−CRは一緒になって次式:
【0053】
【化13】

の基を形成し;aは0であり;リンカー−(CH0〜1−N(R)−(CH1〜4−Z−は、−N(CH−(CH−、−N(CH(CHCH)−(CH−および−N(CH−CH−C(O)−から選択され;Qは、フェニル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イルおよびベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルから選択され;ここで、R中のフェニルは、−CH、フルオロ、−OHおよび−OCHから独立に選択される1〜2個のR基で場合により置換されていてもよく;Q中のフェニルは、フルオロ、ブロモ、−CHおよび−OHから独立に選択される1〜2個のR基で場合により置換されていてもよい。
【0054】
本発明の別の実施形態では、式IIの第4級アンモニウム化合物は、次式IIa:
【0055】
【化14】

[式中、R1〜6、a、Z、QおよびXは、式Iについて定義のとおりである]
で具体化される種およびその製薬上許容される塩である。特定の一実施形態では、Rは、−CHCH(CH、−CHCH=CH、−C≡CH、−(CHSCH、シクロプロピル、シクロペンチルおよびチオフェニルから選択され;Rは、フェニルおよびチオフェニルから選択され;Rは、Hおよび−C0〜1アルキレン−OHから選択されるか;またはRがシクロペンチルである場合には、Rは、シクロペンチル基上の炭素原子と二重結合を形成し得;または−CRは一緒になって次式:
【0056】
【化15】

の基を形成し;aは0であり;Rは−CHであり;Rは、−CH、−CHCH、−(CHCH、−CH−シクロプロピル、−(CHOH、−CH−C(O)OCH,および−CH−C(O)NHから選択され;Zは、結合、−O−および−C(O)−から選択され;Qは、フェニル、1H−インドール−3−イル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イル、ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル、ピロール−1−イル、1H−テトラゾール−5−イルおよびピペリジン−4−イルから選択され;ここで、R中のフェニルは、−CH、フルオロ、−OHおよび−OCHから独立に選択される1〜2個のR基で場合により置換されていてもよく;Q中のフェニルは、フルオロ、クロロ、ブロモ、−CH、−CF、−C(CH、−OH、−(CH−OH、シアノ、−COOH、−CHCOOH、C(O)OCH、−OCH、−OCHFおよび−N(O)Oから独立に選択される1〜2個のR基で場合により置換されていてもよく;−(CH1〜4中の1個の−CH−基は、−OHおよびフェニルから選択される1または2個の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0057】
本発明の別の実施形態では、式IIの第4級アンモニウム化合物は、次式IIb:
【0058】
【化16】

[式中、R、R、R、R、R、Z、QおよびXは、式Iについて定義のとおりである]
で具体化される種およびその製薬上許容される塩である。特定の一実施形態では、Rは、−CHCH(CH、−CHCH=CH、−C≡CH、−(CHSCH、シクロプロピルおよびシクロペンチルから選択され;Rは、H−C0〜1アルキレン−OHから選択されるか;またはRがシクロペンチルである場合は、Rは、シクロペンチル基上の炭素原子と二重結合を形成し得;Rは−CHであり;Rは、−CH、−CHCH、−(CHCH、−CH−シクロプロピル、−(CHOH、−CH−C(O)OCHおよび−CH−C(O)NHから選択され;Zは、結合、−O−および−C(O)−から選択され;Qは、フェニル、1H−インドール−3−イル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イル、ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル、ピロール−1−イル、1H−テトラゾール−5−イルおよびピペリジン−4−イルから選択され;ここで、Rは、−CH、フルオロ、−OH,および−OCHから独立に選択され;Q中のフェニルは、フルオロ、クロロ、ブロモ、−CH、−CF、−C(CH、−OH、−(CH−OH、シアノ、−COOH、−CHCOOH、C(O)OCH、−OCH、−OCHFおよび−N(O)Oから独立に選択される1〜2個のR基で場合により置換されていてもよく;−(CH1〜4中の1個の−CH−基は、−C1〜2アルキル、−OHおよびフェニルから選択される1個の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0059】
本発明の別の実施形態では、式IIの第4級アンモニウム化合物は、次式IIc:
【0060】
【化17】

[式中、R、R、R、R、R、Z、RおよびXは、式Iについて定義されるとおりである]
に具体化される種およびその製薬上許容される塩である。特定の一実施形態では、Rは、−CHCH(CH、−CHCH=CH、−C≡CH、−(CHSCH、シクロプロピルおよびシクロペンチルから選択され;Rは、Hおよび−C0〜1アルキレン−OHから選択され;またはRがシクロペンチルである場合には、Rは、シクロペンチル基上の炭素原子と二重結合を形成し得;Rは−CHであり;Rは、−CH、−CHCH、−(CHCH、−CH−シクロプロピル、−(CHOH、−CH−C(O)OCHおよび−CH−C(O)NHから選択され;Zは、結合、−O−および−C(O)−から選択され;ここで、Rは、−CH、フルオロ、−OHおよび−OCHから独立に選択され;Rは、フルオロ、クロロ、ブロモ、−CH、−CF、−C(CH、−OH、−(CH−OH、シアノ、−COOH、−CHCOOH、C(O)OCH、−OCH、−OCHFおよび−N(O)Oから独立に選択され;−(CH1〜4中の1個の−CH−基は、−C1〜2アルキル、−OHおよびフェニルから選択される1個の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0061】
本発明の別の実施形態では、式IIの第4級アンモニウム化合物は、次式IId:
【0062】
【化18】

[式中、R、Z、RおよびXは、式Iについて定義されるとおりである]
に具体化される種およびその製薬上許容される塩である。特定の一実施形態では、Rは−OHであり;Zは結合であり;Rは、フルオロおよび−OHから独立に選択される。
【0063】
本発明の別の実施形態では、式IIの第4級アンモニウム化合物は、次式IIe:
【0064】
【化19】

[式中、R、Z、QおよびXは、式Iに定義されるとおりである]
に具体化される種およびその製薬上許容される塩である。特定の一実施形態では、Rは−OHであり;Zは結合であり;Qは、フェニルまたはベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルであり;Q中のフェニルは、フルオロおよび−CHから選択される1個のR基で場合により置換されていてもよい。
【0065】
本発明の別の実施形態では、式IIの第4級アンモニウム化合物は、次式IIf:
【0066】
【化20】

[式中、Z、QおよびXは、式Iについて定義されるとおりである]
で具体化される種およびその製薬上許容される塩である。特定の一実施形態では、RはHであり;Zは結合であり;Qは、フェニル、チオフェン−2−イルまたはチオフェン−3−イルであり;Q中のフェニルは、フルオロおよび−OHから選択される1個のR基で場合により置換されていてもよい。
【0067】
式Iの化合物の個々の基は、2007年4月24日に出願された、米国仮出願第60/925,951号に開示されているものである。この基は、塩または両性イオンの形の次式(I’):
【0068】
【化21】

[式中、a’は0または1〜5の整数であり;各R1’は、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、−C3〜6シクロアルキル、シアノ、ハロ、−ORla、−SRla、−S(O)Rla、−S(O)laおよび−NRlblcから独立に選択され;ここで、Rlaは各々独立に、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニルおよび−C3〜6シクロアルキルから選択され;RlbおよびRlcは各々独立に、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニルおよび−C3〜6シクロアルキルから選択され;Ar’はアリール基であり;R3’は、Hおよび−C0〜1アルキレン−OHから選択され;またはRは、−C5〜9シクロアルキル基上の炭素原子と二重結合を形成し;b’は、0または1〜3の整数であり;R4’は各々独立に、フルオロおよび−C1〜4アルキルから選択され;R5’は、−C1〜5アルキルおよび−C0〜1アルキレンC3−5シクロアルキルから選択され;R6’は、−C1〜3アルキル、−C1〜2アルキレンC3〜7シクロアルキル、−C0〜4アルキレン−OH、−C1〜2アルキレン−C(O)O−C1〜4アルキルおよび−C1〜2アルキレン−C(O)NR6a6bから選択され;ここで、R6aおよびR6bは独立に、Hおよび−C1〜4アルキルから選択されるか;またはRは、Rと一緒になって−C3〜5アルキレン−を形成し;Z’は、結合、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SO−NRZ1−、−NRZ1−SO−、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)O−、−NRZ1C(O)−、−C(O)NRZ1−、−NRZ2−C(O)−NRZ3−、−NRZ2−C(S)−NRZ3−、−CH(OH)−および−C(=N−O−RZ4)−から選択され;ここで、RZ1は、Hおよび−C1〜4アルキルから選択され;RZ2およびRZ3は独立に、H、−C1〜4アルキルおよび−C3〜6シクロアルキルから選択されるか、またはRZ2およびRZ3は一緒になって、−C2〜4アルキレン−または−C2〜3アルケニレン−を形成し;RZ4は、−C1〜4アルキルおよびベンジルから選択され;Q’は、アリールまたはヘテロアリール基であり;Ar’は、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、−C3〜6シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR2a、−SR2a、−S(O)R2a、−S(O)Z3および−NR2b2cから独立に選択される1〜5個のR2’基で場合により置換されていてもよく;R2aは各々独立に、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニルおよび−C3〜6シクロアルキルから選択され;R2bおよびR2cは各々独立に、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニルおよび−C3〜6シクロアルキルから選択され;Qは、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、シアノ、−C0〜2アルキレン−COOH、−C(O)O−C1〜4アルキル、−O−C1〜4アルキル、−S−−C1〜4アルキル、−NH−C(O)−C1〜4アルキル、−N−ジ−C1〜4アルキルおよび−N(O)Oから独立に選択される1〜5個のR基で場合により置換されていてもよく;R1’〜6’、Z’およびQ中のアルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アルキニルおよびシクロアルキル基は各々、1〜5個のフルオロ原子で場合により置換されていてもよく;−(CH1〜4中の−CH−基は各々、−C1〜2アルキル、−OH、フルオロおよびフェニルから独立に選択される1または2個の置換基で場合により置換されていてもよい]で具体化される種およびその製薬上許容される塩である。
【0069】
さらに、注目される式Iの特定の化合物として、以下の実施例に示されるものならびにその製薬上許容される塩が挙げられる。
【0070】
定義
本発明の化合物、組成物、方法およびプロセスを記載する場合には、特に断りのない限り、以下の用語は以下の意味を有する。さらに、本明細書で用いる場合、単数形の「冠詞」および「不定冠詞」は、文脈が明確に他を示すのでない限り、対応する複数形を含む。用語「含んでなる」、「含有する」および「有する」は、包括的なものであり、列挙される要素以外のさらなる要素があり得るということを意味する。
【0071】
用語「アルキル」は、直鎖であっても分岐であってもよい一価の飽和炭化水素基を意味する。別に定義されない限り、このようなアルキル基は、通常、1〜10個の炭素原子を含み、例えば、−C1〜2アルキル、−C1〜3アルキル、−C1〜4アルキル、−C1〜5アルキルおよび−C1〜6アルキルが挙げられる。代表的なアルキル基として、例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが挙げられる。
【0072】
本明細書において用いられる特定の用語に特定の数の炭素原子が意図される場合には、炭素原子の数は、下付き文字として用語の前に示されている。例えば、用語「−C1〜4アルキル」とは、炭素原子が任意の許容される立体配置にある、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0073】
用語「アルキレン」とは、直鎖であっても分岐であってもよい、二価の飽和炭化水素基を意味する。別に定義されない限り、このようなアルキレン基は、通常、1〜10個の炭素原子を含み、例えば、−C0〜1アルキレン−、−C0〜2アルキレン−、−C0〜4アルキレン−、−C0〜5アルキレン−、−C1〜2アルキレン−、−C1〜4アルキレン−、−C2〜4アルキレン−、−C2〜5アルキレン−、−C3〜5アルキレン−および−C3〜6アルキレン−が挙げられる。代表的なアルキレン基として、例として、メチレン、エタン−1,2−ジイル(「エチレン」)、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイルなどが挙げられる。−C0〜1アルキレン−または−C0〜5アルキレン−などの、アルキレン用語が0個の炭素を含む場合は、このような用語は、単結合を含むよう意図されるということは理解されよう。
【0074】
用語「アルケニル」とは、直鎖であっても分岐であってもよく、少なくとも1つ、通常、1、2または3つの炭素−炭素二重結合を有する、一価の不飽和炭化水素基を意味する。別に定義されない限り、このようなアルケニル基は、通常、2〜10個の炭素原子を含み、例えば、−C2〜4アルケニルおよび−C2〜6アルケニルが挙げられる。代表的なアルケニル基として、例として、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブタ−2−エニル、n−ヘキサ−3−エニルなどが挙げられる。用語「アルケニレン」とは、二価のアルケニル基を意味し、例示的アルケニレン基として、−C2〜3アルケニレン−が挙げられる。
【0075】
用語「アルキニル」は、直鎖であっても分岐であってもよく、少なくとも1つ、通常、1、2または3つの炭素−炭素三重結合を有する、一価の不飽和炭化水素基を意味する。別に定義されない限り、このようなアルキニル基は、通常、2〜10個の炭素原子を含み、例えば、−C2〜4アルキニルおよび−C2〜6アルキニルが挙げられる。代表的なアルキニル基として、例として、エチニル、n−プロピニル、n−ブタ−2−イニル、n−ヘキサ−3−イニルなどが挙げられる。
【0076】
用語「アミノ保護基」とは、アミノ基での望ましくない反応を防ぐのに適した保護基を意味する。代表的なアミノ保護基として、それだけには限らないが、t−ブトキシカルボニル(BOC)、トリチル(Tr)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、ホルミル、トリメチルシリル(TMS)、t−ブチルジメチルシリル(TBS)などが挙げられる。
【0077】
用語「アリール」とは、単環(すなわち、フェニル)または縮合環(すなわち、ナフタレン)を有する、一価の芳香族炭化水素を意味する。別に定義されない限り、このようなアリール基は、通常、6〜10個の炭素環原子を含み、例えば、−C6〜10アリールが挙げられる。代表的なアリール基として、例として、フェニルおよびナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イルなどが挙げられる。
【0078】
用語「シクロアルキル」は、一価の飽和炭素環式炭化水素基を意味する。別に定義されない限り、このようなシクロアルキル基は、通常、3〜10個の炭素原子を含み、例えば、−C3〜5シクロアルキル、−C3〜6シクロアルキル、−C3〜7シクロアルキルおよび−C5〜9シクロアルキルが挙げられる。代表的なシクロアルキル基として、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0079】
用語「二価の炭化水素基」とは、主に炭素および水素原子からなり、1個以上のヘテロ原子を場合により含んでもよい、二価の炭化水素基を意味する。このような二価の炭化水素基は、分岐であっても非分岐であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、非環式であっても環式であってもよく、脂肪族であっても芳香族であってもよく、またはそれらの組み合わせであってもよい。二価の炭化水素基は、炭化水素鎖に組み込まれた、または炭化水素鎖に結合された置換基としてヘテロ原子を場合により含んでいてもよい。
【0080】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0081】
用語「ヘテロアリール」とは、単環または2つの縮合環を有し、環中に、窒素、酸素または硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(通常、1〜3個のヘテロ原子)を含有する、一価の芳香族基を意味する。別に定義されない限り、このようなヘテロアリール基は、通常、5〜10個の全環原子を含み、例えば、−C2〜9ヘテロアリールが挙げられる。代表的なヘテロアリール基として、例として、一価の種のピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フラン、チオフェン、トリアゾール、ピラゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンなどが挙げられ、ここでは、結合点は、任意の利用可能な炭素または窒素環原子である。
【0082】
用語「脱離基」とは、求核置換反応などの置換反応において、別の官能基または原子によって置換され得る官能基または原子を意味する。例として、代表的な脱離基として、それだけには限らないが、クロロ、ブロモおよびヨード基;メシレート、トシレート、ブロシレート、ノシレートなどといったスルホン酸エステル基;およびアセトキシ、トリフルオロアセトキシなどといったアシルオキシ基が挙げられる。
【0083】
用語「製薬上許容される」とは、生物学的でなく、さもなければ、望ましくないものである材料を指す。例えば、用語「製薬上許容される担体」とは、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、または組成物のその他の成分と有害な方法で相互作用せずに、組成物に組み込み、患者に投与することができる材料を指す。このような製薬上許容される材料は、通常、必要な、毒物学的試験および製造試験の標準を満たしており、米国食品医薬品局によって適した不活性成分として同定された材料が挙げられる。
【0084】
用語「溶媒和物」とは、1以上の溶質の分子、例えば、式Iの化合物またはその製薬上許容される塩と、1以上の溶媒の分子とによって形成される複合体または凝集体を意味する。このような溶媒和物は、通常、実質的に固定された、溶質および溶媒のモル比を有する結晶性固体である。代表的な溶媒として、例として、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸などが挙げられる。溶媒が水である場合は、形成される溶媒和物は水和物である。
【0085】
用語「治療上有効な量」とは、治療の必要な患者に投与された場合に治療を達成するのに十分な量を意味する。特に、「有効な」量とは、所望の結果を得るために必要とされる量であり、「治療上有効な量」とは、所望の治療効果を得るために必要とされる量である。例えば、ムスカリン受容体を拮抗するために、「有効な量」とは、ムスカリン受容体を拮抗する量である。同様に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を治療するための治療上有効な量とは、所望の治療結果を達成する量であり、所望の治療結果とは疾患予防、寛解、抑制または軽減であり得る。
【0086】
本明細書で用いる場合、用語「治療すること」または「治療」とは、(a)疾患または医学的状態が生じるのを予防すること、すなわち、患者の予防的治療と、(b)疾患または医学的状態を寛解させること、すなわち、患者において疾患または医学的状態を排除またはその退縮を引き起こすことと、(c)疾患または医学的状態を抑制すること、すなわち、患者において疾患または医学的状態の発生を減速または停止することと、または(d)患者において疾患または医学的状態の症状を軽減することとを含む、哺乳類(特に、ヒト)などの患者において、疾患または医学的状態(COPDまたは喘息など)を治療することまたは治療を意味する。例えば、用語「COPDを治療すること」とは、COPDが発生するのを防ぐことと、COPDを寛解させることと、COPDを抑制することと、COPDの症状を軽減することとを含む。用語「患者」とは、治療または疾患予防を必要とする、特定の疾患または医学的状態の疾患予防または治療のために現在治療されている、ヒトなどの動物、ならびにアッセイにおいて本発明の化合物が評価されているか、使用されている試験被検体、例えば、動物モデルを含むものとする。
【0087】
本明細書において使用されるすべてのその他の用語は、それらが関係する技術分野における当業者によって理解される、その通常の意味を有するものとする。
【0088】
一般合成手順
本発明の化合物は、容易に入手可能な出発材料から、以下の一般法、実施例において示される手順を使用して、または当業者に公知のその他の方法、試薬および出発材料を使用することによって、調製してよい。以下の手順は、本発明の特定の実施形態を例示し得るが、同一または同様の方法を使用することによって、または当業者に公知のその他の方法、試薬および出発材料を使用することによって、本発明のその他の実施形態も同様に調製され得るということは理解される。当然のことながら、通常の、または好ましい工程条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が示される場合、特に断りのない限り、その他の工程条件も使用してもよい。最適反応条件は、通常、特定の反応物、溶媒および使用される量などの種々の反応パラメータに応じて変わるが、当業者ならば、通常の最適化手順を使用して適した反応条件を容易に決定できる。
【0089】
さらに、当業者には明らかであるように、従来の保護基は、特定の官能基が望ましくない反応を受けるのを防ぐために必要とされるか、または望ましいものであり得る。個々の反応基に適した保護基ならびにこのような官能基を保護および脱保護するのに適した条件および試薬の選択は、当技術分野で周知である。望ましくない反応を防ぐよう保護され得る官能基として、例として、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボニル基などが挙げられる。代表的なカルボキシ保護基として、それだけには限らないが、メチル、エチル、t−ブチル、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルロエニル(fluroenyl)メチル(Fm)、トリメチルシリル(TMS)、t−ブチルジメチルシリル(TBS)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)などといったエステル;アミドおよびヒドラジドが挙げられる。アミノ基の代表的な保護基として、カルバメート(t−ブトキシカルボニルなど)およびアミドが挙げられる。代表的なヒドロキシル保護基として、それだけには限らないが、トリC1〜6アルキルシリル基をはじめとするシリル基、例えば、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、t−ブチルジメチルシリル(TBS)など;C1〜6アルカノイル基、例えば、ホルミル、アセチルなどをはじめとするエステル(アシル基);アリールメチル基、例えば、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)など;およびエーテルが挙げられる。チオール基の代表的な保護基として、チオエーテルおよびチオエステルが挙げられる。カルボニル基の代表的な保護基として、アセタールおよびケタールが挙げられる。必要に応じて、本明細書に記載されたもの以外の保護基も使用してよい。例えば、多数の保護基、ならびにその導入および除去は、T.W.GreeneおよびG.M.Wuts、Protecting Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley、New York、1999年およびそれに引用される参考文献に記載されている。
【0090】
例示として、式Iの化合物は、1以上の以下の例示的プロセスによって調製してもよい:(a)式1の化合物を式2の化合物:
【0091】
【化22】

と反応させるか、または式1’の化合物を式2’の化合物:
【0092】
【化23】

[式中、Lは、脱離基を表す]
と反応させて、式3の化合物:
【0093】
【化24】

を作製し、式3の化合物を、R基を含有する有機基質と反応させるステップまたは(b)式4の化合物:
【0094】
【化25】

を式2の化合物と反応させるステップ;または(c)式4の化合物を式5の化合物:
【0095】
【化26】

[式中、Lは、脱離基を表し、Aは以下に定義される]
と反応させて、式6の化合物:
【0096】
【化27】

を作製するステップと、式6の化合物を式7の化合物:
B−Q (7)
と反応させるステップと、
[ここで、Z、AおよびBは、以下の表中に示されるとおりに定義され、Lは脱離基を表す]:
【0097】
【表1−1】

【0098】
【表1−2】

塩または両性イオンの形の生成物を回収するステップ。
【0099】
得られた反応生成物、式Iの化合物は、第4級アンモニウム化合物である。この化合物は、まず、化合物を適当な対イオンの形に変換し、次いで、化合物を適した溶媒中で結晶化することによって結晶化してもよい。このような結晶は、第4級アンモニウム塩である。
【0100】
これらの反応では、存在する特定の置換基に応じて、1種以上の保護基を使用してもよい。このような保護基を使用する場合には、それらは、従来手順を用いて除去して、式Iの化合物を提供する。
【0101】
プロセス(a)
プロセス(a)、化合物(1)および(2)間の反応では、Lによって表される脱離基は、例えば、クロロ、ブロモまたはヨードなどのハロ、またはメシレートもしくはトシレートなどのスルホン酸エステル基であり得る。一実施形態では、Lは、ブロモである。反応は、塩基、例えば、ジイソプロピルエチルアミンなどの第三アミンの存在下で実施されることが好都合である。好都合な溶媒として、アセトニトリルなどのニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルアセトアミド(DMA)が挙げられる。この反応は、0℃〜100℃の範囲の温度で実施されることが好都合である。次いで、反応生成物を、抽出、再結晶化、クロマトグラフィーなどといった従来手順を用いて単離する。
【0102】
化合物(3)、所望の生成物の遊離塩基の形を、適した溶媒に溶解し、次いで、有機基質と接触させる。例示的溶媒として、トルエン、DMAおよびCHCNが挙げられる。有機基質は、通常、有機ハライドなどの製薬上許容される酸である。基質は、R基、例えば、1〜5個のフルオロ原子および脱離基で置換されていてもよい−C1〜6アルキルを含み、その例として、ヨーダイドまたはブロミドなどのハライドが挙げられる。例示的基質として、メチルヨーダイド、メチルブロミド、エチルヨーダイド、プロピルヨーダイド、ベンジルブロミドおよびベンジルヨーダイドが挙げられる。
【0103】
いくつかの状況では、プロセス(a)に第2の反応を続けて、異なる式Iの化合物を得てもよい。例えば、Zが−S(O)−または−SO−である化合物は、Zが−S−である式Iの化合物を形成することと、このような化合物を酸化反応に付すこととによって作製できる。さらに、Zが−C(=N−O−RZ4)−である化合物は、Zが−C(O)−である式Iの化合物を形成することと、このような化合物を、HN−O−RZ4を用いるイミン形成反応に付すこととによって作製できる。
【0104】
化合物(1)は、当技術分野において一般に知られており、市販の出発材料および試薬から、周知の手順を用いて調製できる。例えば、化合物(1)は、以下の反応によって調製できる:
【0105】
【化28】

[式中、Pは、ベンジル基などのアミノ保護基を表す]。ベンジル基は、例えば、水素またはアンモニウムホルメートおよびパラジウムなどの第VIII族金属触媒を用いる還元によって除去されることが好都合である。場合により、この反応は、ギ酸、酢酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸などといった酸の存在下で実施される。化合物(1’)の例として、(R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸、9H−キサンテン−9−カルボン酸およびα−シクロペンチルフェニル酢酸が挙げられる。これらの化合物は、市販されているか、または容易に調製でき、例示的調製技術は、実施例の項に記載されている。
【0106】
化合物(2)は、一般に知られており、また、市販されており、または容易に入手可能な出発材料から周知の合成法を用いて調製できる。化合物(2)の例として、1−ブロモ−2−フェニルエタン、3−(2−ブロモエチル)フェノール、4−(2−ブロモエチル)フェノールおよび1−(2−ブロモエチル)−2−フルオロベンゼンが挙げられる。
【0107】
あるいは、化合物(3)は、従来のアミド結合形成条件下で、化合物(1’)および(2’)をカップリングすることによって製造できる。化合物(2’)は、当技術分野で一般に知られているか、または市販の出発材料および試薬から周知の手順を用いて調製できる。例えば、化合物(2’)は、以下の反応によって調製してもよい:
【0108】
【化29】

[式中、Pは、アミノ保護基を表し、Lは、脱離基を表す]。
【0109】
プロセス(b)
プロセス(b)では、化合物(4)および(2)間の反応は、ピロリジンをハロゲン化化合物と反応させるための公知の手順を用いて実施してよい。この反応は、通常、約20〜120℃の範囲の、より通常は、約20〜80℃の範囲の温度で、有機溶媒中で実施する。適した有機溶媒として、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、エーテルおよびアセトンが挙げられる。
【0110】
化合物(4)の例として、(R)−2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタノン;2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2−チオフェン−2−イルエタノン;1−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−4−メチル−2−フェニルペンタン−1−オン;(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)(9H−キサンテン−9−イル)−メタノン;1−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2,2−ジ−チオフェン−2−イルエタノン;2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−フェニルエタノン;および2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2−p−トリルエタノンが挙げられる。
【0111】
化合物(4)は、従来のアミド結合形成条件下での化合物(1’)および(4a)のカップリング反応によって形成してもよい:
【0112】
【化30】

適したカルボン酸/アミンカップリング試薬として、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールヒドレート(HOBt)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(EDCI)、カルボニルジイミダゾール(CDI)などが挙げられる。カップリング反応は、1種以上のカップリング試薬およびDIPEAなどの塩基の存在下、DCMなどの不活性溶媒中で実施し、従来のアミド結合形成条件下で行う。カップリング試薬は必要でない場合もあるということは注記する。例えば、化合物(1’)および(4a)は、溶媒としてDMFおよび塩基としてDIPEAを用いてカップリングできる。
【0113】
あるいは、Rが−OHである化合物(4)は、従来のアミド結合形成条件下での化合物(4a)および(4b)のカップリング反応と、それに続くR−MgBrを用いる反応:
【0114】
【化31】

によって形成してもよい。化合物(4b)の例として、2−チオフェングリオキシル酸、ベンゾイルギ酸および4−メチルフェニル)(オキソ)酢酸が挙げられる。R−MgBrの例として、シクロペンチルマグネシウムブロミド、チオフェン−2−イルマグネシウムブロミドおよびイソブチルマグネシウムブロミドが挙げられる。
【0115】
プロセス(c)
プロセス(c)では、化合物(4)、(5)および(6)間の反応条件は、それぞれのAおよびB基に応じて変わる。Lによって表される脱離基は、例えば、ハロ、通常、ブロモであり得る。化合物(5)および(6)は、一般に知られているか、または容易に入手可能な出発材料から周知の合成法を用いて調製できる。
【0116】
プロセス(c)中のいくつかの反応は、例えば、ZがNRZ1C(O)−である場合は、カップリング反応である。それらの反応では、酸性部分を含有する化合物は、反応性誘導体の形であり得る。例えば、カルボン酸は、例えば、無水物またはカルボン酸クロリドなどのカルボン酸ハライドを形成することによって活性化され得る。したがって、カルボン酸クロリドは、カルボン酸の反応性誘導体である。あるいは、カルボン酸は、カルボジイミド、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)などのような従来のカルボン酸/アミンカップリング試薬を用いて活性化してもよい。スルホン酸およびチオ酸部分は同様に誘導体化できる。これらの反応は、カルボニルジイミダゾールなどの適したカップリング剤を用いて従来の条件下で実施する。反応は、通常、トリフルオロ酢酸およびジクロロメタンなどの溶媒の存在下で実施され、−10℃〜100℃の範囲の温度で実施されることが好都合である。
【0117】
プロセス(c)中の残りの反応は、例えば、Zが−O−である場合は、アルキル化反応である。これらの反応は、従来の条件下、DMFまたはDMAなどの適した溶媒を用いて実施され、室温〜100℃の範囲の温度で実施されることが好都合である。さらに、プロセス(c)は、RZ2および/またはRZ3部分が水素である式Iの化合物を形成することを示す。このような化合物は、RZ2および/またはRZ3が、−C]〜4アルキルまたは−C3〜6シクロアルキルであるか、または一緒になって、−C2〜4アルキレン−または−C2〜3アルケニレン−結合を形成する化合物(1)に容易に変換される。
【0118】
代表的な本発明の化合物またはその中間体を調製するための、特定の反応条件およびその他の手順に関するさらなる詳細は、以下に示される実施例に記載されている。
【0119】
薬学的組成物および製剤
本発明の化合物は、通常、患者に薬学的組成物または製剤の形で投与される。このような薬学的組成物は、任意の許容される投与経路、例えば、それだけには限らないが、吸入、経口、経鼻、局所(例えば、経皮)および非経口投与様式によって患者に投与され得る。さらに、本発明の化合物は、例えば、1日あたり複数回の用量で、単回1日用量または単回週用量で、経口的に投与され得る。特定の投与様式に適している、本発明の化合物の任意の形(すなわち、遊離塩基、製薬上許容される塩、溶媒和物など)を、本明細書に論じられる薬学的組成物に使用してよいということは理解されよう。
【0120】
したがって、一実施形態では、本発明は、製薬上許容される担体と、本発明の化合物とを含んでなる薬学的組成物を対象とする。組成物は、必要に応じて、その他の治療薬および/または製薬剤を含み得る。「本発明の化合物」はまた、本明細書において、「活性薬剤」と呼ばれる場合もある。
【0121】
本発明の薬学的組成物は、通常、治療上有効な量の本発明の化合物を含む。しかし、当業者ならば、薬学的組成物は、治療上有効な量を超えて、すなわち、バルク組成物を、または治療上有効な量より少なく、すなわち、治療上有効な量を達成するための複数回投与のために設計された個々の単位用量を含み得るということを認識するであろう。一実施形態では、組成物は、約0.01〜95重量%の活性薬剤、例えば、約0.01〜30重量%、例えば、約0.01〜10重量%を含み、実際の量は、製剤自体、投与経路、投与頻度などに応じて変わる。別の実施形態では、吸入に適した組成物は、例えば、約0.01〜30重量%の活性薬剤を含んでなり、さらに別の実施形態は、約0.01〜10重量%の活性薬剤を含んでなる。
【0122】
任意の従来の担体または賦形剤を、本発明の薬学的組成物に使用してもよい。特定の担体もしくは賦形剤、または担体もしくは賦形剤の組み合わせの選択は、個々の患者または医学的状態もしくは病状の種類を治療するために使用されている投与様式に応じて変わる。この関連で、特定の投与様式に適した組成物の調製は、十分に、製薬の技術分野の当業者の範囲内である。さらに、このような組成物に使用される担体または賦形剤は、市販されている。さらなる例示として、従来の製剤技術が、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(2000年);およびH.C.Anselら、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、第7版、Lippincott Williams & White、Baltimore、Maryland(1999年)に記載されている。
【0123】
製薬上許容される担体として役立ち得る材料の代表的な例として、それだけには限らないが、以下が挙げられる:ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;微晶質セルロースなどのセルロースならびにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツオイル、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブオイル、コーンオイルおよびダイズオイルなどのオイル;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質不含水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール;リン酸塩バッファー溶液;クロロフルオロ炭素およびヒドロフルオロ炭素などの圧縮推進剤ガス;および薬学的組成物中に使用されるその他の非毒性適合物質。
【0124】
薬学的組成物は、通常、活性薬剤を、製薬上許容される担体および1種以上の任意選択の成分とともに、完全におよび密に混合することまたはブレンドすることによって調製される。次いで、得られた均一にブレンドされた混合物を成形してもよいし、または従来の手順および設備を用いて、錠剤、カプセル剤、丸剤、キャニスター、カートリッジ、ディスペンサーなどに添加してもよい。
【0125】
一実施形態では、薬学的組成物は、吸入投与に適している。吸入投与に適した組成物は、通常、エアゾールまたは粉末の形である。このような組成物は、通常、周知の送達装置、例えば、ネブライザー吸入器、ドライパウダー吸入器または定量吸入器を用いて投与され、その例が以下に記載されている。
【0126】
本発明の特定の実施形態では、活性薬剤を含んでなる組成物は、ネブライザー吸入器を用いて吸入によって投与される。このようなネブライザー装置は、通常、高速の気流を発生し、これが組成物を霧として噴霧させ、霧が患者の気道に運ばれる。したがって、ネブライザー吸入器において使用するために製剤される場合には、活性薬剤は、通常、適した担体に溶解されて溶液を形成する。あるいは、活性薬剤は、微粉化し、適した担体と組み合わせて、呼吸用の大きさの微粉化した粒子の懸濁液を形成してもよく、ここで、微粉化されるとは、通常、粒子の少なくとも約90パーセントが、約10μm未満の質量中央径を有する粒子を有すると定義される。用語「質量中央径」とは、粒子の質量の半分が、より長い直径の粒子中に含まれ、半分が、より小さい直径の粒子中に含まれるような直径を意味する。
【0127】
適したネブライザー装置として、Respimat(登録商標)Soft Mist(商標)Inhaler(Boehringer Ingelheim)、AERx(登録商標)Plumonary Delivery System(Aradigm Corp.)およびPARILC Plus Reusable Nebulizer(Pari GmbH)が挙げられる。ネブライザー吸入器において使用するための例示的組成物は、約0.05μg/mL〜約10mg/mLの本発明の化合物を含んでなる等張水溶液を含んでなる。一実施形態では、このような溶液は約4〜6のpHを有する。
【0128】
本発明の別の特定の実施形態では、活性薬剤を含んでなる組成物は、ドライパウダー吸入器(DPI)を用いて吸入によって投与される。このようなDPIは、通常、活性薬剤を、吸息の間に患者の気流中に分散される自由流動性粉末として投与する。自由流動性粉末を得るために、活性薬剤は、通常、ラクトース、デンプン、マンニトール、デキストロース、ポリ乳酸、ポリラクチド−コ−グリコリドおよびそれらの組み合わせなどの適した賦形剤とともに製剤される。通常、活性薬剤は、微粉化され、賦形剤と組み合わせて、吸入に適したブレンドが形成される。したがって、本発明の一実施形態では、活性薬剤は、微粉化された形である。例えば、DPIにおいて使用するための代表的な組成物は、約1μm〜約100μmの間の粒径を有する乾燥ラクトース(例えば、乾式粉砕ラクトース)および活性薬剤の微粉化粒子を含んでなる。このような乾燥粉末製剤は、例えば、ラクトースを活性薬剤と組み合わせ、次いで、成分を乾燥ブレンドすることによって製造できる。あるいは、必要に応じて、活性薬剤は、賦形剤を用いずに製剤してもよい。次いで、通常、組成物をDPIに、または吸入カートリッジまたはDPIとともに使用するためのカプセル剤に充填する。DPIは当業者にはよく知られており、多数のこのような装置が市販されており、代表的な装置として、Aerolizer(登録商標)(Novartis)、airmax(商標)(IVAX)、ClickHaler(登録商標)(Innovata Biomed)、Diskhaler(登録商標)(GlaxoSmithKline)、Diskus(登録商標)またはAccuhaler(GlaxoSmithKline)、Easyhaler(登録商標)(Orion Pharma)、Eclipse(商標)(Aventis)、FlowCaps(登録商標)(Hovione)、Handihaler(登録商標)(Boehringer Ingelheim)、Pulvinal(登録商標)(Chiesi)、Rotahaler(登録商標)(GlaxoSmithKline)、SkyeHaler(商標)またはCertihaler(商標)(SkyePharma)、Twisthaler(Schering−Plough)、Turbuhaler(登録商標)(AstraZeneca)、Ultrahaler(登録商標)(Aventis)などが挙げられる。
【0129】
本発明のさらに別の特定の実施形態では、活性薬剤を含んでなる組成物は、定量吸入器(MDI)を用いて吸入によって投与される。このようなMDIは、通常、圧縮推進剤ガスを用いて一定量の活性薬剤を放出する。したがって、定用量製剤は、通常、液化された推進剤、例えば、クロロフルオロ炭素、例えば、CClFまたはヒドロフルオロアルカン(HFA)、例えば、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA134a)および1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロ−n−プロパン(HFA227)中の活性薬剤の溶液または懸濁液を含んでなるが、クロロフルオロ炭素がオゾン層に影響を及ぼすことについての懸念のために、一般に、HFAが好ましい。HFA製剤のさらなる任意選択の成分として、エタノールまたはペンタンなどの共溶媒およびトリオレイン酸ソルビタン、オレイン酸、レシチンおよびグリセリンなどの界面活性剤が挙げられる。例えば、Purewalらの米国特許第5,225,183号、EP0717987 A2(Minnesota Mining and Manufacturing Company)およびWO92/22286(Minnesota Mining and Manufacturing Company)参照のこと。MDIにおいて使用するための代表的な組成物は、約0.01〜5重量%の活性薬剤;約0〜20重量%のエタノール;および約0〜5重量%の界面活性剤を含んでなり、残りはHFA推進剤である。このような組成物は、通常、活性薬剤、エタノール(存在する場合には)および界面活性剤(存在する場合には)を含有する適した容器に、冷却された、または加圧されたヒドロフルオロアルカンを加えることによって調製される。懸濁液を調製するには、活性薬剤を微粉化し、次いで、推進剤と組み合わせる。次いで、製剤を、MDIの一部を形成するエアゾールキャニスターに充填する。MDIは、当業者にはよく知られており、多数のこのような装置が市販されており、代表的な装置として、AeroBid Inhaler System(Forest Pharmaceuticals)、Atrovent Inhaler Aerosol(Boehringer Ingelheim)、Flovent(登録商標)(GlaxoSmithKline)、Maxair Inhaler(3M)、Proventil(登録商標)Inhaler(Schering)、Serevent(登録商標)Inhalation Aerosol(GlaxoSmithKline)などが挙げられる。あるいは、懸濁液製剤は、活性薬剤の微粉化粒子上に界面活性剤の被膜を噴霧乾燥させることによって調製できる。例えば、WO99/53901(Glaxo Group Ltd.)およびWO00/61108(Glaxo Group Ltd.)参照のこと。呼吸用粒子を調製する方法ならびに吸入投薬に適した製剤および装置のさらなる例は、Briggnerらの米国特許第5,874,063号;Trofastの同5,983,956号;Jakupovicらの同6,221,398号;Gaoらの同6,268,533号;Bisratらの同6,475,524号;およびCooperの同6,613,307号に記載されている。
【0130】
別の実施形態では、薬学的組成物は、経口投与に適している。経口投与に適した組成物は、各々、所定量の活性薬剤を含有する、カプセル剤、錠剤、丸剤、ロゼンジ剤、カシェ剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤;水性または非水性液体中の溶液または懸濁液;水中油型または油中水型液体エマルジョン;エリキシル剤またはシロップ剤などの形であり得る。
【0131】
本組成物は、固体投与形(すなわち、カプセル剤、錠剤、丸剤などのような)での経口投与用に意図される場合には、通常、活性薬剤および1種以上の製薬上許容される担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムを含んでなる。固体投与形はまた、デンプン、微晶質セルロース、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸などの充填剤または増量剤;カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアラビアゴムなどの結合剤;グリセロールなどの保湿剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩および/または炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;パラフィンなどの溶液遅延剤(solution retarding agent);第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;セチルアルコールおよび/またはモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;カオリンおよび/またはベントナイト粘土などの吸収剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムおよび/またはそれらの混合物などの滑沢剤;着色剤;および緩衝剤を含んでなり得る。
【0132】
放出剤、湿潤剤、被覆剤、甘味料、矯味剤および芳香剤、保存料および抗酸化剤も薬学的組成物中に存在し得る。錠剤、カプセル剤、丸剤などのための例示的被覆剤として、腸溶コーティングに用いられるもの、例えば、酢酸フタル酸セルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体、トリメリット酸酢酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。製薬上許容される抗酸化剤の例として、以下が挙げられる:水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、二硫酸ナトリウム、メタ二硫酸ナトリウム 亜硫酸ナトリウムなど;油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなど;および金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
【0133】
組成物はまた、例として、種々の割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはその他のポリマーマトリックス、リポソームおよび/またはミクロスフェアを用いて活性薬剤の持続放出または制御放出を提供するよう製剤してもよい。さらに、本発明の薬学的組成物は、乳白剤を含んでもよく、また、それらが活性薬剤のみを、または胃腸管の特定の部分において優先的に、場合により、遅延方法で放出するよう製剤してもよい。使用できる埋め込み組成物の例として、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。活性薬剤はまた、必要に応じて、1種以上の上記の賦形剤とともにマイクロカプセル化された形であってもよい。
【0134】
経口投与に適した液体投与形として、例示として、製薬上許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。液体投与形は、通常、活性薬剤と、例えば、水またはその他の溶媒などの不活性希釈剤と、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、オイル(例えば、綿実油、ラッカセイ油、コーンオイル、胚芽油、オリーブオイル、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルおよびそれらの混合物などの可溶化剤および乳化剤を含んでなる。懸濁液は、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微晶質セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカントおよびそれらの混合物などの懸濁剤を含み得る。
【0135】
本発明の薬学的組成物は、経口投与用に意図される場合は、単位投与形にパッケージングされてもよい。用語「単位投与形」とは、患者に投薬するのに適した物理的に別個の単位、すなわち、所望の治療効果を単独または1以上のさらなる単位と組み合わせてのいずれかで引き起こすよう算出された所定量の活性薬剤を含有する各単位を指す。例えば、このような単位投与形は、カプセル剤、錠剤、丸剤などであり得る。
【0136】
本発明の化合物は、非経口的に(例えば、皮下、静脈内、筋肉内または腹腔内注射によって)投与できる。このような投与のためには、活性薬剤は、滅菌溶液、懸濁液またはエマルジョン中で提供される。このような製剤を調製するための例示的溶媒として、水、生理食塩水、プロピレングリコールなどの低分子量アルコール、ポリエチレングリコール、オイル、ゼラチン、オレイン酸エチルなどの脂肪酸エステルなどが挙げられる。通常の非経口製剤は、活性薬剤の滅菌pH4〜7水溶液である。非経口製剤はまた、1種以上の可溶化剤、安定化剤、保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含み得る。これらの製剤は、滅菌注射用培地、滅菌剤、濾過、照射または熱の使用によって滅菌され得る。
【0137】
本発明の化合物はまた、公知の経皮送達系および賦形剤を用いて経皮的に投与できる。例えば、化合物を透過促進剤、例えば、プロピレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、アザシクロアルカン−2−オンなどと混合し、パッチまたは類似の送達系に組み込んでもよい。ゲル化剤、乳化剤およびバッファーをはじめとするさらなる賦形剤を、必要に応じて、このような経皮組成物において使用してもよい。
【0138】
必要に応じて、本発明の化合物を、1種以上のその他の治療薬と組み合わせて投与してもよい。したがって、一実施形態では、本発明の組成物は、本発明の化合物と同時投与されるその他の薬物を場合により含んでもよい。例えば、本組成物は、その他の気管支拡張剤(例えば、PDE阻害剤、アデノシン2bモジュレーターおよびβアドレナリン受容体アゴニスト);抗炎症剤(例えば、コルチコステロイドおよびグルココルチコイドなどのステロイド性抗炎症薬;非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);およびPDE阻害剤);その他のムスカリン受容体アンタゴニスト(すなわち、抗コリン剤);抗感染症薬(例えば、グラム陽性およびグラム陰性抗生物質および抗ウイルス剤);抗ヒスタミン;プロテアーゼ阻害剤;求心性遮断剤(例えば、Dアゴニストおよびニューロキニンモジュレーター);およびそれらの組み合わせの群から選択される1種以上の薬物(また、「第2の薬剤(複数可)」とも呼ばれる)をさらに含んでなる場合もある。このような治療薬の多数の例が当技術分野で周知であり、例が以下に記載されている。本発明の化合物を、第2の薬剤と組み合わせることによって、2剤併用、すなわち、いくつかの場合には、2種の組成物を投与することによる、いくつかの場合には、活性薬剤および第2の薬剤を含有する単一の組成物を投与することによる、ムスカリン受容体アンタゴニスト活性および第2の薬剤(例えば、βアドレナリン受容体アゴニスト)と関連している活性が達成され得る。したがって、本発明のさらに別の態様では、薬学的組成物は、本発明の化合物と、第2の活性薬剤と、製薬上許容される担体とを含んでなる。第3、第4などの活性薬剤もまた、組成物中に含まれ得る。例えば、組成物は、本発明の化合物と、コルチコステロイド、βアドレナリン受容体アゴニスト、ホスホジエステラーゼ−4阻害剤およびそれらの組み合わせから選択される第2の薬剤と、製薬上許容される担体とを含んでなり得る。特定の実施形態では、組成物は、本発明の化合物と、βアドレナリン受容体アゴニストと、ステロイド性抗炎症薬とを含んでなり得る。併用療法では、投与される本発明の化合物の量ならびに第2の薬剤の量は、単剤療法において通常投与される量よりも少ない場合がある。
【0139】
本発明の化合物は、第2の活性薬剤と物理的に混合して、両薬剤を含有する含有する組成物を形成もよいし、または各薬剤が分離した、別個の組成物中に存在し、これを患者に同時に、または逐次投与してもよい。例えば、本発明の化合物は、従来手順および設備を用いて第2の活性薬剤と組み合わせ、本発明の化合物と第2の活性薬剤とを含んでなる活性薬剤の組み合わせを形成してもよい。さらに、活性薬剤を製薬上許容される担体と組み合わせて、本発明の化合物と、第2の活性薬剤と、製薬上許容される担体とを含んでなる薬学的組成物を形成してもよい。この実施形態では、組成物の成分を、通常、混合またはブレンドして物理的混合物を作製する。次いで、この物理的混合物を、本明細書に記載される任意の経路を用いて治療上有効な量で投与する。
【0140】
あるいは、活性薬剤は、患者への投与前は、分離した、別個のままである場合もある。この実施形態では、薬剤は、投与前には物理的に一緒に混合されていないが、同時に投与されるか、または分離した組成物として分離した時点で投与される。このような組成物は、別々にパッケージングすることもでき、キット中に一緒にパッケージングしてもよい。分離した時点で投与される場合には、第2の薬剤は、通常、本発明の化合物の投与後24時間未満に投与される。その他の実施形態では、この時限関係は、本発明の化合物の投与後12時間未満、8時間未満、6時間未満、4時間未満、3時間未満、1時間未満、30分未満、10分未満、1分未満または直後である。これはまた、逐次投与とも呼ばれる。したがって、本発明の化合物は、各活性薬剤に対して分離したコンパートメント(例えば、ブリスターパック)を使用する吸入送達装置を用いて、吸入によって、別の活性薬剤と同時にまたは逐次投与してもよく、ここで、逐次は、本発明の化合物の投与の直後に、またはいくらかの所定の時間の後に(例えば、1時間後または3時間後)投与されることを意味し得る。あるいは、組み合わせは、分離した送達装置、すなわち、各薬剤に1つの送達装置を用いて投与してもよい。さらに、薬剤は、異なる投与経路、すなわち、吸入による一方のものおよび経口投与による他方のものによって送達することができる。
【0141】
一実施形態では、キットは、本発明の方法を実施するのに十分な量の、本発明の化合物を含んでなる第1の投与形および本明細書に示される1種以上の第2の薬剤を含んでなる少なくとも1種のさらなる投与形を含んでなる。第1の投与形および第2の(または第3などの)投与形は、一緒になって、患者において疾患または医学的状態を治療または予防するための治療上有効な量の活性薬剤を含んでなる。
【0142】
第2の薬剤(複数可)は、含まれる場合には、治療上有効な量で存在し、すなわち、通常、本発明の化合物と同時投与された場合に治療上有益な効果を引き起こす量で投与される。第2の薬剤は、製薬上許容される塩、溶媒和物、光学的に純粋な立体異性体などの形であり得る。したがって、以下に列挙される第2の薬剤は、すべてのこのような形を含むものとし、市販されているか、または従来手順および試薬を用いて調製できる。第2の薬剤の適した用量は、通常、約0.05μg/日〜約500mg/日の範囲である。
【0143】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、βアドレナリン受容体アゴニストとの組み合わせで投与される。代表的なβアドレナリン受容体アゴニストとして、それだけには限らないが、アルブテロール、ビトルテロール、フェノテロール、ホルモテロール、インダカテロール、イソエタリン、レバルブテロール、メタプロテレノール、ピルブテロール、サルブタモール、サルメファモール、サルメテロール、テルブタリンなどが挙げられる。本発明の化合物と組み合わせて使用できるその他のβアドレナリン受容体アゴニストとして、それだけには限らないが、WO02/066422(Glaxo Group Ltd.)中に開示される3−(4−{[6−({(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミドおよび3−(−3−{[7−((2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−フェニル]エチル}アミノ)ヘプチル]オキシ}プロピル)ベンゼンスルホンアミドおよび関連化合物;WO02/070490(Glaxo Group Ltd.)に開示される3−[3−(4−{[6−([(2R)−2−ヒドロキシ−2−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−フェニル]イミダゾリジン−2,4−ジオンおよび関連化合物;WO02/076933(Glaxo Group Ltd.)に開示される3−(4−{[6−({(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}−ブチル)ベンゼンスルホンアミド、3−(4−{[6−({(2S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、3−(4−{[6−({(2R/S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(t−ブチル)−3−(4−{[6−({(2R)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]−オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(t−ブチル)−3−(4−{[6−({(2S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]オキシ}ブチル)−ベンゼンスルホンアミド、N−(t−ブチル)−3−(4−{[6−({(2R/S)−2−[3−(ホルミルアミノ)−4−ヒドロキシフェニル]−2−ヒドロキシエチル}アミノ)ヘキシル]−オキシ}ブチル)ベンゼンスルホンアミドおよび関連化合物;WO03/024439(Glaxo Group Ltd.)に開示される4−{(1R)−2−[(6−{2−[(2,6−ジクロロベンジル)−オキシ]エトキシ}ヘキシル)アミノ]−1−ヒドロキシエチル}−2−(ヒドロキシメチル)フェノールおよび関連化合物;Moranらの米国特許第6,576,793号に開示されるN−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)−エチルアミンおよび関連化合物;Moranらの米国特許第6,653,323号に開示される N−{2−[4−(3−フェニル−4−メトキシフェニル)アミノフェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(8−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン−5−イル)エチルアミンおよび関連化合物が挙げられる。特定の実施形態では、β−アドレノ受容体アゴニストは、N−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)−フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)エチルアミンの結晶性一塩酸塩である。通常、β−アドレノ受容体アゴニストは、用量あたり約0.05〜500μgを提供するのに十分な量で投与される。
【0144】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、ステロイド性抗炎症薬と組み合わせて投与される。代表的なステロイド性抗炎症薬として、それだけには限らないが、二プロピオン酸ベクロメタゾン;ブデソニド;プロピオン酸ブチキソコート(butixocort propionate);20R−16α,17α−[ブチリデンビス(オキシ)]−6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−17β−(メチルチオ)アンドロスタ−4−エン−3−オン(RPR−106541);シクレソニド;デキサメタゾン;6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸S−フルオロメチルエステル;6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−17α −[(4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボニル)オキシ]−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸S−フルオロメチルエステル;6α,9α−ジフルオロ−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−17α−プロピオニルオキシアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸(S)−(2−オキソテトラ−ヒドロフラン−3S−イル)エステル;フルニソリド;プロピオン酸フルチカゾン;メチルプレドニゾロン;フロ酸モメタゾン;プレドニゾロン;プレドニゾン;ロフレポニド;ST−126;トリアムシノロンアセトニドなどが挙げられる。通常、ステロイド性抗炎症薬は、用量あたり約0.05〜500μgを提供するのに十分な量で投与される。
【0145】
例示的組み合わせとして、βアドレナリン受容体アゴニストとしてのサルメテロールおよびステロイド性抗炎症薬としてのプロピオン酸フルチカゾンと同時投与される本発明の化合物がある。別の例示的組み合わせとして、β−アドレノ受容体アゴニストとしてのN−{2−[4−((R)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエチルアミノ)フェニル]エチル}−(R)−2−ヒドロキシ−2−(3−ホルムアミド−4−ヒドロキシフェニル)−エチルアミンの結晶性一塩酸塩およびステロイド性抗炎症薬としての6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボニル)−オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−チオカルボン酸S−フルオロメチルエステルと同時投与される本発明の化合物がある。
【0146】
その他の適した組み合わせとして、例えば、その他の抗炎症剤、例えば、NSAID(例えば、クロモグリク酸ナトリウム;ネドクロミルナトリウム;ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤(例えば、テオフィリン、PDE4阻害剤または混合PDE3/PDE4阻害剤);ロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、モンテローカスト(monteleukast));ロイコトリエン合成の阻害剤;iNOS阻害剤;プロテアーゼ阻害剤、例えば、トリプターゼおよびエラスターゼ阻害剤;β−2インテグリンアンタゴニストおよびアデノシン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト(例えば、アデノシン2aアゴニスト);サイトカインアンタゴニスト(例えば、インターロイキン抗体(αIL抗体)などのケモカインアンタゴニスト、具体的には、αIL−4治療、αIL−13治療またはそれらの組み合わせ);またはサイトカイン合成の阻害剤が挙げられる。
【0147】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、ホスホジエステラーゼ−4 (PDE4)阻害剤または混合PDE3/PDE4阻害剤と組み合わせて投与される。代表的なPDE4または混合PDE3/PDE4阻害剤として、それだけには限らないが、シス4−シアノ−4−(3−シクロペンチルオキシ−4−メトキシフェニル)シクロヘキサン−1−カルボン酸、2−カルボメトキシ−4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)−シクロヘキサン−1−オン;シス−[4−シアノ−4−(3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシフェニル)−シクロヘキサン−1−オル];シス−4−シアノ−4−[3−(シクロペンチルオキシ)−4−メトキシフェニル]シクロヘキサン−1−カルボン酸などまたはそれらの製薬上許容される塩が挙げられる。その他の代表的なPDE4または混合PDE4/PDE3阻害剤として、AWD−12−281(elbion);NCS−613(INSERM);D−4418(Chiroscience and Schering−Plough);CI−1018またはPD−168787(Pfizer);WO99/16766(Kyowa Hakko)に開示されるベンゾジオキソール化合物;K−34(Kyowa Hakko);V−11294A(Napp);ロフルミラスト(Byk−Gulden);WO99/47505(Byk−Gulden)に開示されるプサラジノン(pthalazinone)化合物;プマフェントリン(Byk−Gulden、now Altana);アロフィリン(Almirall−Prodesfarma);VM554/UM565(Vernalis);T−440(Tanabe Seiyaku);およびT2585(Tanabe Seiyaku)が挙げられる。
【0148】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、ムスカリンアンタゴニスト(すなわち、抗コリン剤)と組み合わせて投与される。代表的なムスカリンアンタゴニストとして、それだけには限らないが、アトロピン、硫酸アトロピン、酸化アトロピン、硝酸メチルアトロピン、臭化水素酸ホマトロピン、臭化水素酸ヒヨスチアミン(d、l)、臭化水素酸スコポラミン、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、臭化チオトロピウム、メタンテリン、臭化プロパンテリン、臭化メチルアニソトロピン、臭化クリジニウム、コピロレート(copyrrolate)(Robinul)、ヨウ化イソプロパミド、臭化メペンゾラート、塩化トリジヘキセチル(Pathilone)、メチル硫酸ヘキソサイクリウム、塩酸シクロペントレート、トロピカミド、塩酸トリヘキシフェニジル、ピレンゼピン、テレンゼピン、AF−DX116およびメトクトラミンなどが挙げられる。
【0149】
特定の一実施形態では、本発明の化合物は、抗ヒスタミン(すなわち、H−受容体アンタゴニスト)と組み合わせて投与される。代表的な抗ヒスタミンとして、それだけには限らないが、エタノールアミン、例えば、マレイン酸カルビノキサミン、フマル酸クレマスチン、塩酸ジフェニルヒドラミンおよびジメンヒドリナート;エチレンジアミン、例えば、マレイン酸ピリラミン(pyrilamine amleate)、塩酸トリペレナミンおよびクエン酸トリペレナミン;アルキルアミン、例えば、クロルフェニラミンおよびアクリバスチン;ピペラジン、例えば、塩酸ヒドロキシジン、パモ酸ヒドロキシジン、塩酸シクリジン、乳酸シクリジン、塩酸メクリジンおよび塩酸セチリジン;ピペリジン、例えば、アステミゾール、塩酸レボカバスチン、ロラタジンまたはそのデスカルボエトキシ類似体、テルフェナジンおよび塩酸フェキソフェナジン;塩酸アゼラスチンなどが挙げられる。
【0150】
以下の製剤は、本発明の代表的な薬学的組成物を例示する。
【0151】
DPIによる投与のための例示的組成物
本発明の化合物(0.2mg)を微粉化し、次いで、ラクトース(25mg)とブレンドする。このブレンドされた混合物を、次いで、ゼラチン吸入カートリッジ充填する。カートリッジの内容物は、例えば、DPIを用いて投与される。
【0152】
微粉化された本発明の化合物(100mg)を、粉砕されたラクトース(25g)(例えば、粒子の約85%以下が約60μm〜約90μmのMMDを有し、粒子の少なくとも15%が15μm未満のMMDを有するラクトース)とブレンドする。このブレンドされた混合物を、次いで、ピーラブルブリスターパックの個々のブリスターに、用量あたり約10μg〜約500μgの本発明の化合物を提供するのに十分な量で充填する。ブリスターの内容物は、DPIを用いて投与される。
【0153】
微粉化された本発明の化合物(1g)を、粉砕されたラクトース(200g)とブレンドして、化合物対粉砕ラクトースの重量比が1:200であるバルク組成物を形成する。ブレンドされた組成物を、用量あたり約10μg〜約500μgの間の本発明の化合物を送達可能なDPIに詰める。
【0154】
微粉化された本発明の化合物(100mg)および微粉化されたβアドレナリン受容体アゴニスト(500mg)を、粉砕されたラクトース(30g)とブレンドする。ブレンドされた混合物を、次いで、ピーラブルブリスターパックの個々のブリスターに、用量あたり約10μg〜約500μgの本発明の化合物を提供するのに十分な量で充填する。ブリスターの内容物は、DPIを用いて投与される。
【0155】
MDI中で使用するための例示的組成物
微粉化された本発明の化合物(10g)を、脱塩水(200mL)にレシチン(0.2g)を溶解することによって調製した溶液に分散させる。得られた懸濁液を噴霧乾燥し、次いで、微粉化して、平均直径約1.5μm未満の粒子を含んでなる微粉化された組成物を形成する。次いで、微粉化された組成物を、MDIによって投与される場合に用量あたり約10μg〜約500μgの本発明の化合物を提供するのに十分な量で、加圧された1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含有するMDIカートリッジに充填する。
【0156】
5重量%の本発明の化合物、0.5重量%のレシチンおよび0.5重量%のトレハロースを含有する懸濁液を、5gの本発明の化合物を、10μm未満の平均の大きさを有する微粉化された粒子として、100mLの脱塩水に溶解された0.5gのトレハロースおよび0.5gのレシチンから形成されたコロイド溶液に分散させることによって調製する。懸濁液を噴霧乾燥し、得られた材料を、1.5μm未満の平均直径を有する粒子に微粉化する。粒子を、加圧された1,1,1,2−テトラフルオロエタンを含むキャニスターに充填する。
【0157】
ネブライザー吸入器において使用するための例示的組成物
本発明の化合物(25mg)を、クエン酸緩衝(pH5)等張食塩水(125mL)に溶解する。この混合物を撹拌し、化合物が溶解するまで超音波処理する。溶液のpHを調べ、必要に応じて、1NのNaOH水溶液をゆっくりと加えることによってpH5に調整する。溶液は、用量あたり約10μg〜約500μgの本発明の化合物を提供するネブライザー装置を用いて投与される。
【0158】
経口投与のための例示的ハードゼラチンカプセル剤
本発明の化合物(50g)、噴霧乾燥ラクトース(440g)およびステアリン酸マグネシウム(10g)を、完全にブレンドする。次いで、得られた組成物をハードゼラチンカプセル(カプセルあたり500mgの組成物)に充填する。
【0159】
経口投与のための例示的懸濁液
以下の成分を混合して、懸濁液10mLあたり100mgの化合物を含有する懸濁液を形成する。
【0160】
【表2】

注射による投与のための例示的注射用製剤
本発明の化合物(0.2g)を、0.4Mの酢酸ナトリウムバッファー溶液(2.0mL)とブレンドする。次いで、pHを、必要に応じて、0.5Nの塩酸水溶液または0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4に調整し、次いで、20mLの総容積を提供するのに十分な注射用水を加える。次いで、この混合物を、滅菌フィルター(0.22ミクロン)を通して濾過し、注射による投与に適した滅菌溶液を提供する。
【0161】
有用性
本発明の化合物は、ムスカリン受容体アンタゴニスト活性を、一実施形態ではナノモルの効力で有する。一実施形態では、本発明の化合物は、Mムスカリン受容体サブタイプ活性の阻害に対して、Mムスカリン受容体サブタイプ活性を上回って選択的である。別の実施形態では、本発明の化合物は、MおよびMムスカリン受容体サブタイプ活性の阻害に対して、M、MおよびMムスカリン受容体サブタイプ活性を上回って選択的である。さらに、本発明の化合物は、望ましい作用期間を有すると思われる。したがって、別の特定の実施形態では、本発明は、約24時間を超える作用期間を有する化合物を対象とする。さらに、本発明の化合物はまた、吸入によって投与された既知ムスカリン受容体アンタゴニスト(例えば、チオトロピウム)と比較して、吸入によって投与された場合に有効な用量で、低減した副作用、例えば、口渇しか有さないと思われる。
【0162】
化合物の、M受容体サブタイプに対する親和性の1つの尺度として、受容体の結合の阻害解離定数(K)がある。本発明の化合物は、例えば、in vitro放射性リガンド置換アッセイによって測定されるように、100nM以下の、M受容体サブタイプに対するKを有すると思われる。特に注目される化合物として、50nM以下のKを有するものがあり、別の実施形態では、化合物は、10nM以下のKを有し、さらに別の実施形態では、化合物は1.0nM以下のKを有する。さらにより特に注目される化合物として、500pM以下のKを有するものが挙げられ、別の実施形態では、化合物は、200pM以下のKを有する。いくつかの場合には、本発明の化合物は、弱いムスカリン受容体アンタゴニスト活性を有する場合もあるということは注記する。このような場合には、当業者ならば、これらの化合物は、研究ツールとして有用性を依然として有するということを認識するであろう。
【0163】
また、特に注目されるものとして、投薬後24時間で100μg/mL以下のID5Oを有する化合物、より特には、投薬後24時間で30μg/mL以下のID5Oを有する化合物がある。
【0164】
ムスカリン受容体を拮抗する活性などの本発明の化合物の特性を調べるための例示的アッセイは、実施例に記載されており、例示として、限定するものではないが、hM、hM、hM、hMおよびhMムスカリン受容体結合(例えば、アッセイ1において記載されるような)を測定するアッセイが挙げられる。本発明の化合物のムスカリン受容体を拮抗する活性を調べるための有用な機能的アッセイとして、例示として、限定するものではないが、細胞内サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)におけるリガンド媒介性変化、酵素アデニリルシクラーゼ(cAMPを合成する)の活性におけるリガンド媒介性変化、[35S]GTPySのグアノシン二リン酸との、受容体に触媒される交換による、グアノシン5’−O−(γ−チオ)三リン酸([35S]GTPγS)の単離膜への組み込みにおけるリガンド媒介性変化、遊離細胞内カルシウムイオン(例えば、蛍光結合イメージングプレートリーダーまたはMolecular Devices,Inc.製のFLIPR(登録商標)を用いて測定された)におけるリガンド媒介性変化などを測定するアッセイが挙げられる。例示的アッセイは、アッセイ2に記載されている。本発明の化合物は、上記で列挙されたアッセイまたは同様の性質のアッセイのいずれかにおいて、ムスカリン受容体の活性化を拮抗するか、または低減すると思われ、これらの研究では、通常、約0.1〜100ナノモルの範囲の濃度で使用される。したがって、上記のアッセイは、本発明の化合物の治療的有用性、例えば、気管支拡張性活性を調べることにおいて有用である。
【0165】
本発明の化合物のその他の特性および有用性は、当業者に周知の種々のin vitroおよびin vivoアッセイを用いて実証され得る。例えば、本発明の化合物のin vivo効力は、Einthovenモデルなどの動物モデルで測定できる。手短には、化合物の気管支拡張剤活性を、麻酔した動物(Einthovenモデル)において評価し、これは、気道抵抗の代替的測定値として人工呼吸圧を用いる。例えば、Einthoven(1892年)Pfugers Arch.51:367〜445頁;およびMohammedら(2000年)PuIm Pharmacol Ther.13(6):287〜92頁、ならびにラットEinthovenモデルを記載するアッセイ3を参照のこと。一実施形態では、ラットEinthovenモデルにおいて100μg/mlの用量で投与された本発明の化合物は、24時間で気管支収縮剤応答の35%以上の阻害を示し、別の実施形態では、24時間で70%以上の阻害を示す。別の有用なin vivoアッセイとして、ラット抗唾液分泌促進薬アッセイ(例えば、アッセイ4において記載されるような)がある。
【0166】
本発明の第4級化合物はまた、例えば、改善されたin vivo効力において示されるように、対応する非第4級化合物を上回る、驚くべき利点を提供する。例えば、以下の第2級および第3級化合物:
【0167】
【化32】

は、アッセイ1に記載されるものなどの結合アッセイにおいて測定される0.42および0.38nMのhM値をそれぞれ示す(6時間で測定された)。アッセイ3に記載されるもの(100μg用量;24時間で測定された)などのラットEinthovenアッセイにおいて評価される場合には、第2級および第3級化合物は、対照動物と比較して、MCh応答の−6%および−18%の阻害をそれぞれ示した。他方、本発明の第4級化合物、例えば、[1−(2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセチル)ピペリジン−4−イル][2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ジメチルアンモニウム(実施例3−3):
【0168】
【化33】

は、同一または同様の条件下で評価された場合に、0.74nMおよび76%阻害というhM値を示した。
【0169】
本発明の化合物は、ムスカリン受容体によって媒介される医学的状態を治療するための治療薬として有用であると思われる。したがって、ムスカリン受容体を遮断することによって治療される疾患または障害に苦しんでいる患者は、本発明の治療上有効な量のムスカリン受容体アンタゴニストを投与することによって治療できると思われる。このような医学的状態として、例として、可逆性気道閉塞と関連するもの、例えば、慢性閉塞性肺疾患(例えば、慢性気管支炎および喘鳴する気管支炎および肺気腫)、喘息、肺線維症、アレルギー性鼻炎、鼻漏などをはじめとする肺の障害または疾患が挙げられる。ムスカリン受容体アンタゴニストで治療できるその他の医学的状態として、泌尿生殖器障害、例えば、過活動膀胱または排尿筋運動亢進およびそれらの症状;胃腸管障害、例えば、過敏性腸症候群、憩室性疾患、アカラシア、消化管過剰運動障害および下痢症;心不整脈、例えば、洞性徐脈;パーキンソン病;認知障害、例えば、アルツハイマー病;月経困難症などがある。
【0170】
用量あたりの投与される活性薬剤の量または1日あたりに投与される総量は所定量である場合もあり、または患者の状態の性質および重症度、治療されている状態、患者の年齢、体重および全体的な健康状態、活性薬剤に対する患者の許容度、投与経路、投与されている活性薬剤および任意の第2の薬剤の活性、効力、薬物動態および毒性学プロフィールなどといった薬理学的考慮をはじめとする多数の因子を考慮することによって個々の患者に基づいて決定する場合もある。疾患または医学的状態(例えば、COPD)に苦しんでいる患者の治療は、所定の投与形または治療中の医師によって決定された投与形で始めてよく、疾患または医学的状態の症状を予防、寛解、抑制または軽減するのに必要な期間続く。このような治療を受けている患者は、通常、治療の有効性を調べるために日常的にモニターされる。例えば、COPDの治療では、強制呼気量(1秒で測定される)の有意な改善を用いて、治療の有効性を調べることができる。本明細書に記載されるその他の疾患および状態についての同様の指標は、当業者には周知であり、治療中の医師には容易に入手可能である。医師による持続的なモニタリングによって、活性薬剤の最適量が任意の所定の時間に投与されること、ならびに治療期間の決定が容易になることが確実になる。このことは、第2の薬剤もまた投与される場合に、その選択、投与形および治療期間も調整を必要とし得るので、特に価値がある。このようにして、治療計画および投与スケジュールは、治療過程にわたって調整することができ、その結果、所望の有効性を示す最小量の活性薬剤が投与され、さらに、疾患または医学的状態を上手く治療するために必要であるだけ、投与が継続される。
【0171】
したがって、一実施形態では、本発明の化合物は、ヒトおよびコンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコなど)を含めた哺乳類において平滑筋障害を治療するのに有用である。このような平滑筋障害として、例示として、過活動膀胱、慢性閉塞性肺疾患および過敏性腸症候群が挙げられる。通常、ムスカリン受容体によって媒介される平滑筋障害またはその他の障害を治療するための適した用量は、約0.14μg/kg/日〜約7mg/kg/日の活性薬剤、例えば、約0.15μg/kg/日〜約5mg/kg/日の範囲であろう。平均70kgのヒトに対しては、これは、1日あたり約10μg〜1日あたり約500mgの活性薬剤を意味する。
【0172】
特定の実施形態では、本発明の化合物は、患者に治療上有効な量の化合物を投与することによって、ヒトをはじめとする哺乳類において、肺または呼吸器の障害、例えば、COPDまたは喘息を治療するために有用である。概して、肺障害を治療するための用量は、約10〜1500μg/日の範囲である。用語「COPD」は、Barnes(2000年)N.Engl.J.Med.343:269〜78頁およびそれに引用される参考文献の教示によって示されるように、種々の呼吸状態、例えば、慢性閉塞性気管支炎および肺気腫を含むと当業者には理解される。本発明の化合物は、肺障害を治療するために用いられる場合は、その他の治療薬、例えば、β−アドレノ受容体アゴニスト;コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬またはそれらの組み合わせと場合により組み合わせて投与されてもよい。
【0173】
本発明の化合物は、吸入によって投与される場合には、通常、気管支拡張を引き起こす効果を有する。したがって、別のその方法態様では、本発明は、患者に気管支拡張を引き起こす量の本発明の化合物を投与することを含んでなる、患者において気管支拡張を引き起こす方法を対象とする。概して、気管支拡張を引き起こすための治療上有効な用量は、約10〜1500μg/日の範囲である。
【0174】
別の実施形態では、本発明の化合物は、過活動膀胱を治療するために用いられる。過活動膀胱を治療するために用いられる場合は、通常用量は、約1.0〜500mg/日の範囲である。さらに別の実施形態では、本発明の化合物は、過敏性腸症候群を治療するために用いられる。本発明の化合物は、過敏性腸症候群を治療するために用いられる場合は、通常、経口的に、または経直腸的に投与され、通常用量は、約1.0〜500mg/日の範囲である。
【0175】
本発明の化合物は、ムスカリン受容体アンタゴニスト活性を有するので、このような化合物はまた、ムスカリン受容体を有する生物系またはサンプルを調査または研究するための研究ツールとしても有用である。in vitroまたはin vivoのいずれで実施してもよいこのような研究には、M、M、M、Mおよび/またはMムスカリン受容体を有する任意の適した生物系またはサンプルを使用すればよい。このような研究に適した代表的な生物系またはサンプルとして、それだけには限らないが、細胞、細胞抽出物、原形質膜、組織サンプル、単離された臓器、哺乳類(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒトなど)などが挙げられ、哺乳類は、特に注目される。本発明の特定の一実施形態では、ムスカリン受容体を拮抗する量の本発明の化合物を投与することによって、哺乳類においてムスカリン受容体が拮抗される。本発明の化合物はまた、このような化合物を用いて生物学的アッセイを実施することによって研究ツールとして使用できる。
【0176】
研究ツールとして使用される場合には、ムスカリン受容体を含んでなる生物系またはサンプルを、通常、ムスカリン受容体を拮抗する量の本発明の化合物と接触させる。生物系またはサンプルが化合物に曝露された後、従来の手順および設備を用いて、例えば、放射性リガンド結合アッセイにおいて結合を、もしくは機能アッセイにおいてリガンド媒介性変化を測定することによって、または哺乳類における気管支保護アッセイにおいて化合物によって提供される気管支保護の量を調べることによってムスカリン受容体を拮抗する効果を調べる。曝露は、細胞または組織を化合物と接触させること、哺乳類に化合物を、例えば、腹腔内もしくは静脈内投与によって投与することなどを包含する。この決定ステップは、応答を測定すること、すなわち、量的分析を含んでなる場合もあり、または観察、すなわち、質的分析を含んでなる場合もある。応答を測定することは、例えば、従来の手順および設備、例えば、放射性リガンド結合アッセイを用いて生物系またはサンプルに対する化合物の効果を調べること、および機能アッセイにおいてリガンド媒介性変化を測定することに関与する。アッセイ結果を用いて、活性レベルならびに所望の結果を達成するのに必要な化合物の量、すなわち、ムスカリン性拮抗量を調べることができる。通常、決定ステップは、ムスカリン受容体リガンド媒介性効果を調べることに関与する。
【0177】
さらに、本発明の化合物は、その他の化学物質を評価するための研究ツールとして使用でき、したがって、例えば、ムスカリン受容体結合活性を有する新規化合物を発見するためのスクリーニングアッセイにおいても有用である。このように、本発明の化合物は、アッセイにおいて標準として用いられ、試験化合物を用いて得られた結果を、本発明の化合物と比較して、もしあれば、ほぼ同等または優れた結合を有する試験化合物を同定することが可能となる。例えば、試験化合物または試験化合物の群のムスカリン受容体結合データ(例えば、in vitro放射性リガンド置換アッセイによって調べられるような)を、本発明の化合物のムスカリン受容体結合データと比較して、もしあれば、所望の特性を有する試験化合物、例えば、本発明の化合物とほぼ同等または優れた結合を有する試験化合物を同定する。あるいは、例えば、哺乳類における気管支保護アッセイにおいて試験化合物および本発明の化合物の気管支保護的効果を調べることができ、このデータを比較して、ほぼ同等または優れた気管支保護的効果を提供する試験化合物を同定する。本発明のこの態様は、別々の実施形態として、比較データ(適当なアッセイを用いる)の作成および注目する試験化合物を同定するための試験データの分析の両方を含む。したがって、試験化合物は、(a)試験化合物を用いて生物学的アッセイを実施して第1のアッセイ値を提供するステップと、(b)本発明の化合物を用いて生物学的アッセイを実施して、第2のアッセイ値を提供するステップ(ステップ(a)は、ステップ(b)の前、後または同時のいずれかで実施される)と、(c)ステップ(a)から得た第1のアッセイ値を、ステップ(b)から得た第2のアッセイ値と比較するステップとを含んでなる方法によって生物学的アッセイにおいて評価され得る。例示的生物学的アッセイとして、ムスカリン受容体結合アッセイが挙げられる。
【実施例】
【0178】
以下の調製および実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するよう提供される。しかし、これらの特定の実施形態は、特に断りのない限り、決して本発明の範囲を制限しようとするものではない。
【0179】
以下の略語は、特に断りのない限り、以下の意味を有し、本明細書において用いられ、定義されない任意のその他の略語は、その標準の意味を有する:
BSA ウシ血清アルブミン
cAMP 3’−5’サイクリックアデノシン一リン酸
CM クローン化されたチンパンジーM受容体
DCM ジクロロメタン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMA N,N−ジメチルアセトアミド
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
dPBS ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水
EDCI 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミドヒドロクロリド
EDTA エチレンジアミン四酢酸
EtOAc 酢酸エチル
HBSS ハンクス緩衝塩溶液
HEPES 4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
hMi クローン化されたヒトM受容体
hM クローン化されたヒトM受容体
hM クローン化されたヒトM受容体
hM クローン化されたヒトM受容体
hM クローン化されたヒトM受容体
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾールヒドレート
MeOH メタノール
THF テトラヒドロフラン。
【0180】
本明細書において用いられるが、定義されない任意のその他の略語は、その標準の一般に許容される意味を有する。特に断りのない限り、すべての材料、例えば、試薬、出発材料および溶媒は、商業的供給業者(例えば、Sigma−Aldrich、Fluka Riedel−de Haenなど)から購入し、さらなる精製を行わずに使用した。反応は、特に断りのない限り、窒素雰囲気下で実施した。反応混合物の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、分析用高速液体クロマトグラフィー(anal.HPLC)および質量分析によってモニターし、その詳細は、以下に、特定の反応例において別個に示されている。反応混合物は、各反応においてに具体的に記載されるように後処理し、通常は、抽出ならびに温度および溶媒依存性結晶化および沈殿などのその他の精製法によって精製した。さらに、反応混合物は、普通、分取HPLCによって精製した。
【0181】
調製1
(R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸
【0182】
【化34】

(2R,5R)−2−t−ブチル−5−フェニル−1,3−ジオキソラン−4−オン(Ia):無水ペンタン(200mL、1.7mol)に(R)−マンデル酸(20g、130mmol)を溶解した。ピバルデヒド(13.6g、153mmol)、続いて、トリフルオロメタンスルホン酸(488μL、5.4mmol)を加えた。混合物を、窒素下、36℃で還流させた。5.5時間後、混合物を、放冷して室温にし、その後、200mLの8重量%のNaHCO溶液とともに10分間撹拌した。過剰のペンタンを、ロータリーエバポレーションによって除去した。固体を濾過によって回収し、真空濾過しながらすすいだ(100mLの水)。固体を高真空下で一晩乾燥させると、23.8グラムの中間体(1a)が、白色固体(純度88%)として得られた。
【0183】
(2R、5S)−2−t−ブチル−5−(1−ヒドロキシシクロペンチル)−5−フェニル−1,3−ジオキソラン−4−オン(1b):−78℃で、無水THF(5.3mL、65mmol)にリチウムヘキサメチルジシラジド(0.8g、4.7mmol;ヘキサン中1.0Mの4.7mL)を加えた。この溶液に、5.3mLの無水THF中の中間体(1a)(800mg、3.6mmol)を15分かけて滴下した。30分後、シクロペンタノン(451μL、5.1mmol)を1分未満かけて滴下した。2時間後、0.8mLの飽和NaHPO水溶液を加え、混合物を室温で5分間撹拌した。8mLの飽和塩化アンモニウム水溶液に、この混合物を加えた。水層を洗浄し(2×80mLのEtOAc)、有機層を合わせ、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物(780mg)をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサンを含む、30分かけて5〜15% EtOAc勾配)によって精製すると、中間体(1b)が得られた。
【0184】
(2R、5S)−2−t−ブチル−5−シクロペンタ−1−エニル−5−フェニル−1,3−ジオキソラン−4−オン(1c):6.8mLの無水THFに、中間体(1b)(650mg、2.1mmol)を溶解し、この溶液を0℃に冷却した。塩化チオニル(436μL、6mmol)を滴下し、続いて、ピリジン(777μL、9.6mmol)を加えた。この混合物を0℃で1時間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液(14mL)を加え、混合物を室温に加温しながら5分間撹拌した。層を分離し、水層を洗浄した(2×100mLのEtOAc)。有機層を合わせ、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮すると、中間体(1c)が淡黄色のオイル(540mg)として得られ、これをさらなる精製を行わずに次のステップにおいて使用した。
【0185】
(S)−シクロペンタ−1−エニル−ヒドロキシフェニル酢酸(1d):MeOH(927μL、22.9mmol)に、中間体(1c)(540mg、1.9mmol)を溶解した。水(1.84mL、102mmol)を加え、続いて、KOH(1.1g、18.8mmol)を加えた。混合物を130℃で3時間還流し、続いて、飽和塩化アンモニウムを用いて250mLに希釈し、次いで、洗浄した(2×100mLのヘキサン)。残っている水性エマルジョンを洗浄した(2×250mLのEtOAc)。EtOAc層を合わせ、50mLの飽和NaCl水溶液で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮すると、中間体(1d)が褐色を帯びた黄色の固体(290mg)として得られた。
【0186】
MeOH(2.50mL、61.7mmol)に、中間体(1d)(280mg、1.3mmol)を溶解し、反応フラスコを窒素でフラッシュし、その後、28mgの10% Pd/Cを加えた。この混合物を、1atmの水素下、室温で撹拌し、反応を、出発材料が消費されるまでHPLCによってモニターした(約24時間)。反応容器を窒素でフラッシュし、次いで、混合物をセライト(登録商標)のパッドを通して濾過し、MeOHですすいだ。濾液を真空下で濃縮すると、標題化合物がわずかに黄色の固体(284mg)として得られた。
【0187】
調製2
(R)−2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ2−フェニルエタノン
【0188】
【化35】

DCM(200mL、3mol)中、(R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸(5.00g、22.7mmol)の撹拌溶液に、ジメチルピペリジン−4−イルアミン(2.91g、22.7mmol)を加えた。DIPEA(11.9mL、68.1mmol)およびHOBt(5.21g、34mmol)、続いて、EDCI(5.22g、27.2mmol)を加えた。この混合物を12時間撹拌し、次いで、水(300mL)、飽和NaCl水溶液(300mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、次いで、濾過した。溶媒を減圧下で除去した。粗物質をシリカゲルクロマトグラフィー(10% MeOH/DCM w/1% NH(水溶液))によって精製すると、4.5gの標題化合物が得られた。
【0189】
実施例1
[l−((R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ2−フェニルアセチル)ピペリジン−4−イル]ジメチルフェネチルアンモニウム
【0190】
【化36−1】

DMF(1mL、10mmol)中、(R)−2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタノン(50mg、0.2mmol)の撹拌溶液に、1−ブロモ−2−フェニルエタン(83mg、0.5mmol)を加えた。この混合物を80℃で24時間加熱した。溶媒を減圧下で除去し、粗物質を分取HPLCによって精製すると、26.1mgの標題化合物が、TFA塩として得られた。MS m/z:[M]C2839の計算値、435.30;実測値435.2。
【0191】
【化36−2】

調製3
3−(2−ブロモエチル)フェノール
【0192】
【化37】

CHCl(50mL、0.6mol)中、1−(2−ブロモエチル)−3−メトキシベンゼン(1.00g、4.7mmol)の溶液を、0℃に冷却した。DCM(27.9mL)中、1.0MのBBrを0℃に冷却し、この溶液に加えた。溶液を30分間かけて30℃に加温させ、次いで、氷および30% NHOHの溶液に注ぎ入れ、これを0℃で、30分間撹拌した。有機層を取り、減圧せずに濃縮した。
【0193】
実施例2
[1−(R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセチル)ピペリジン−4−イル][2−(3−ヒドロキシフェニル)エチル]ジメチルアンモニウム
【0194】
【化38−1】

DMA(10mL、0.1mol)中、(R)−2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタノン(0.8g、2.4mmol)の撹拌溶液に、3−(2−ブロモエチル)フェノール(1.5g、7.3mmol)を加えた。この混合物を80℃で24時間加熱した。次いで、溶媒を減圧下で除去した。粗物質を分取HPLCによって精製すると、180mgの標題化合物が、TFA塩として得られた。MS m/z:[M]C2839の計算値、451.30;実測値451.5。
【0195】
【化38−2】

実施例3
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物3−1〜3−24も調製した:
【0196】
【化39】

【0197】
【表3−1】

【0198】
【表3−2】

【0199】
【表3−3】

実施例4
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物4−1〜4−8も調製した:
【0200】
【化40】

【0201】
【表4】

実施例5
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物5−1〜5−3も調製した:
【0202】
【化41】

【0203】
【表5】

実施例6
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物6−1〜6−14も調製した:
【0204】
【化42】

【0205】
【表6−1】

【0206】
【表6−2】

実施例7
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物7−1〜7−11も調製した:
【0207】
【化43】

【0208】
【表7】

実施例8
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物8−1〜8−4も調製した:
【0209】
【化44】

【0210】
【表8】

実施例9
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物9−1〜9−10も調製した:
【0211】
【化45】

【0212】
【表9】

実施例10
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物10−1〜10−6も調製した:
【0213】
【化46】

【0214】
【表10】

実施例11
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物11−1〜11−3も調製した:
【0215】
【化47】

【0216】
【表11】

実施例12
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の化合物も調製した:
【0217】
【化48】

[l−(2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−フェニルアセチル)ピペリジン−4−イル]ジメチル(2−ピラゾール−l−イルエチル)アンモニウム。MS m/z: [M]C2537の計算値、425.29;実測値425.6。
【0218】
実施例13
[1−((R)−2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ2−フェニルアセチル)ピペリジン−4−イル][2−(2−フルオロフェニル)エチル]ジメチルアンモニウム(13−1)および[1−(2−シクロペンチリデン−2−フェニルアセチル)ピペリジン−4−イル]−[2−(2−フルオロフェニル)エチル]ジメチルアンモニウム(13−2)
【0219】
【化49】

DMF(1mL、10mmol)中、(R)−2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタノン(50mg、0.2mmol)の撹拌溶液に、1−(2−ブロモエチル)−2−フルオロベンゼン(91mg、0.5mmol)を加えた。混合物を80℃で24時間加熱した。溶媒を減圧下で除去し、粗物質を、分取HPLCによって精製すると、12.2mgの化合物(13−1)がTFA塩として得られた。さらに、分取HPLCの際に除かれた化合物が得られ、18.6mgの化合物(13−2)が得られた。
(13−1) MS m/z:[M] C2838FNの計算値、453.29;実測値453.2。
(13−2) MS m/z:[M] C2836FNOの計算値、435.28;実測値435.4。
【0220】
調製4
2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ2−チオフェン−2−イルエタノン
【0221】
【化50】

1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−チオフェン−2−イル−エタン−1,2−ジオン(4a):2−チオフェングリオキシル酸(300mg、1.9mmol)を、10mLの塩化メチレンに溶解した。塩化メチレン(1.1mL、2.1mmol)中、塩化オキサリルの2.0M溶液、続いて、10μLのDMFを加えた。得られた溶液を室温で1時間撹拌し、次いで、2mLの塩化メチレン中、ジメチルピペリジン−4−イルアミン(271mg、2.1mmol)およびDIPEA(1.0mL、5.8mmol)の溶液を加えた。次いで、4−ジメチルアミノピリジン(12mg、96μmol)を加え、得られた混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、混合物を飽和重炭酸ナトリウム溶液で抽出し、有機層をNaSO上で乾燥させ、濃縮すると、粗中間体(4a)(498mg)が得られ、これをさらなる精製を行わずに次のステップに用いた。
【0222】
中間体(4a)(498mg、1.87mmol)を、10mLのTHFに溶解し、この溶液を0℃に冷却した。エーテル(1.12mL、2.24mmol)中、シクロペンチルマグネシウムブロミドの2.0M溶液をゆっくりと加え、混合物を0℃で4時間撹拌した。次いで、この混合物を飽和塩化アンモニウム溶液を加えることによってクエンチした。得られた混合物をEtOAcで抽出し、次いで、有機層をNaSO上で乾燥させ、濃縮すると、粗標題化合物(406mg)が得られ、これをさらなる精製を行わずに次のステップに用いた。
【0223】
実施例14
[1−(2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ2−チオフェン−2−イル−アセチル)ピペリジン−4−イル]−[2−(4−ヒドロキシ−フェニル)エチル]ジメチルアンモニウム
【0224】
【化51】

1mLのDMFに、(2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2−チオフェン−2−イルエタノン(75mg、220μmol)を溶解した。次いで、DIPEA(104μL、594μmol)および4−(2−ブロモエチル)フェノール(89.6mg、446μmol)を加え、混合物を60℃で8時間撹拌した。次いで、混合物を濃縮し、その後、残渣を水およびアセトニトリルの1:1混合物に溶解し、液体クロマトグラフィーによって精製した。1.6mgの標題化合物のトリフルオロ酢酸塩が、白色粉末として単離された。MS m/z:[M]C2637Sの計算値、457.25実測値457.2。
【0225】
実施例15
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物15−1〜15−3も調製した:
【0226】
【化52】

【0227】
【表12】

調製5
1−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−4−メチル−2−フェニルペンタン−1−オン
【0228】
【化53】

1−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−2−フェニルエタン−1,2−ジオン(5a):20mLの塩化メチレンに、ベンゾイルギ酸(1.0g、6.7mmol)、ジメチルピペリジン−4−イルアミン(854mg、6.7mmol)、DIPEA(3.5mL、20.0mmol)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.4g、10mmol)を溶解し、次いで、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(1.53g、7.99mmol)を加え、混合物を室温で16時間撹拌した。この混合物を1.0NのNaOH溶液で抽出し、次いで、有機層をNaSO上で乾燥させ、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン中、10〜30% MeOH勾配)によって精製すると、中間体(5a)(501mg)が得られた。
【0229】
2mLのTHFに中間体(16a)(75.0mg、288μmol)を溶解し、この溶液を0℃に冷却した。エーテル(158μL、317μmol)中、イソブチルマグネシウムブロミドの2.0M溶液をゆっくりと加え、混合物を0℃で4時間撹拌した。次いで、この混合物を、飽和重炭酸ナトリウム溶液を加えることによってクエンチした。得られた混合物をEtOAcで抽出し、次いで、有機層をNaSO上で乾燥させ、濃縮すると、粗標題化合物が得られ、これをさらなる精製を行わずに次のステップに用いた。
【0230】
実施例16
[1−(2−ヒドロキシ4−メチル−2−フェニルペンタノイル)ピペリジン−4−イル]ジメチルフェネチルアンモニウム
【0231】
【化54】

1mLのDMFに、1−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−4−メチル−2−フェニルペンタン−1−オンを溶解し、1−ブロモ−2−フェニルエタン(43.3μL、317μmol)を加えた。次いで、混合物をマイクロ波処理し(140℃、300ワット、7分)、その後、混合物を濃縮した。次いで、残渣を、水およびアセトニトリルの1:1混合物に溶解し、液体クロマトグラフィーによって精製した。4.7mgの標題化合物のトリフルオロ酢酸塩が、白色粉末として単離された。MS m/z:[M] C2739の計算値、423.30;実測値423.2。
【0232】
実施例17
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物17−1〜17−2も調製した:
【0233】
【化55】

【0234】
【表13】

調製6
1−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2,2−ジ−チオフェン−2−イルエタノン
【0235】
【化56】

DCM(100mL、2mol)中、2−チオフェングリオキシル酸(1.0g、6.4mmol)の撹拌溶液に、塩化オキサリル(596μL、7mmol)および触媒量のDMFを加えた。この混合物を2時間撹拌し、次いで、氷浴中0℃で冷却した。ジメチルピペリジン−4−イルアミン(821mg、6.4mmol)、DEPEA(1.7mL、9.6mmol)およびDMAP(20mg、0.1mmol)を加え、混合物を2時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、次いで、粗混合物をDCM(60mL)に溶解し、飽和重炭酸溶液(50mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、次いで、粗物質をTHF(50mL、0.6mol)に溶解し、氷浴中0℃で冷却した。撹拌溶液に、THF(7.7mL、7.7mmol)中、1.0Mのチオフェン−2−イルマグネシウムブロミドを加えた。この混合物を30分間撹拌し、次いで、飽和重炭酸溶液(50mL)およびDCM(50mL)でクエンチした。有機物を取り、MgSO上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去すると、標題化合物(1.5g)が得られた。MS m/z:[M]C1722の計算値、350.50;実測値351.4。
【0236】
実施例18
2−(2−フルオロフェニル)エチル]−[1−(2−ヒドロキシ−2,2−ジ−チオフェン−2−イルアセチル)ピペリジン−4−イル]ジメチルアンモニウム
【0237】
【化57】

標題化合物を、実施例13に記載される手順を用い、(R)−2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタノンを、1−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2,2−ジ−チオフェン−2−イルエタノンと置換して調製した。MS m/z:[M] C2530FNの計算値、473.17;実測値473.2。
【0238】
実施例19
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物19−1〜19−4も調製した:
【0239】
【化58】

【0240】
【表14】

実施例20
1−(2−シクロペンチル−2−フェニルアセチル)ピペリジン−4−イル]ジメチルフェネチルアンモニウム
【0241】
【化59】

標題化合物を、実施例1に記載される手順を用い、(R)−2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタノンの代わりに、2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタノンを用いて合成した。2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−フェニルエタノンは、出発材料として、(R)−シクロペンチルヒドロキシフェニル酢酸の代わりに、α−シクロペンチルフェニル酢酸を用いて、調製2に記載されるとおりに調製した。MS m/z:[M]C2839Oの計算値、419.31;実測値419.2。
【0242】
調製7
2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ2−p−トリルエタノン
【0243】
【化60】

標題化合物を、調製6に記載される手順を用い、2−チオフェングリオキシル酸を、(4−メチルフェニル)(オキソ)酢酸と置換し、THF中、1.0Mのチオフェン−2−イルマグネシウムブロミドを、エーテル中、2.0Mのシクロペンチルマグネシウムブロミドと置換して合成した。
【0244】
実施例21
[1−(2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−2−p−トリルアセチル)ピペリジン−4−イル]ジメチルフェネチルアンモニウム
【0245】
【化61】

標題化合物を、実施例13に記載される手順を用い、(R)−2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエタノンを、2−シクロペンチル−1−(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)−2−ヒドロキシ−2−p−トリルエタノンと置換して合成した。MS m/z:[M]C2941の計算値、449.32;実測値449.2
実施例22
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物22−1〜22−5も調製した:
【0246】
【化62】

【0247】
【表15】

調製8
(4−ジメチルアミノピペリジン−1−イル)(9H−キサンテン−9−イル)メタノン
【0248】
【化63】

DCM(200mL、3mol)中、9H−キサンテン−9−カルボン酸(4.4g、19.4mmol)の撹拌溶液に、ジメチルピペリジン−4−イル−アミン(2.5g、19.4mmol)を加えた。この混合物に、DIPEA(6.8mL、38.9mmol)およびHOBt(4.6g、34mmol)、続いて、EDCI(4.5g、23.3mmol)を加えた。混合物を12時間撹拌し、次いで、水(300mL)、NaCl(飽和)(300mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、次いで、濾過した。溶媒を減圧下で除去し、粗物質をシリカゲルクロマトグラフィー(10%MeOH/DCM w/1% NH(水溶液))によって精製すると、標題化合物(5.9g)が得られた。
【0249】
実施例23
2−(2−フルオロフェニル)エチル]ジメチル−[1−(9H−キサンテン−9−カルボニル)ピペリジン−4−イル]アンモニウム
【0250】
【化64】

DMF(1mL、10mmol)中、(4−ジメチルアミノピペリジン−l−イル)(9H−キサンテン−9−イル)メタノン(50mg;0.2mmol)の撹拌溶液に、1−(2−ブロモエチル)−2−フルオロベンゼン(30mg、0.2mmol)を加えた。混合物を80℃で24時間加熱した。溶媒を減圧下で除去し、粗物質を分取HPLCによって精製すると、標題化合物がTFA塩として得られた(36.7mg)。MS m/z:[M]C2932FNの計算値、460.24;実測値459.2。
【0251】
実施例24
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物24−1〜24−4も調製した:
【0252】
【化65】

【0253】
【表16】

実施例25
上記の実施例に記載される手順に従い、適当な出発材料および試薬を置換して、以下の式を有する化合物25−1〜25−3も調製した:
【0254】
【化66】

【0255】
【表17】

アッセイ1
放射性リガンド結合アッセイ
hM、hM、hMおよびhMムスカリン受容体サブタイプを発現する細胞からの膜調製
クローン化されたヒトhM、hM、hMおよびhMムスカリン受容体サブタイプを、それぞれ安定に発現するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株を、10%胎児ウシ血清および250μg/mLのジェネテシンを補給したHAMのF−12からなる培地でコンフルエンシー近傍に増殖させた。細胞は、5% CO、37℃のインキュベーター中で増殖させ、dPBS中、2mMのEDTAで持ち上げた。650×gで5分間の遠心分離によって細胞を回収し、細胞ペレットを−80℃で凍結保存するか、または直ちに膜を調製した。膜の調製には、細胞ペレットを溶解バッファーに再懸濁し、Polytron PT−2100組織破壊器(Kinematica AG;20秒×2バースト)を用いてホモジナイズした。粗膜を、4℃で、40,000×gで15分間遠心分離した。次いで、この膜ペレットを、再懸濁バッファーを用いて再懸濁し、Polytron組織破壊器を用いて再度ホモジナイズした。膜懸濁液のタンパク質濃度は、Lowry,O.ら、Journal of Biochemistry193:265頁(1951年)に記載される方法によって調べた。すべての膜は、−80℃でアリコート中で凍結保存するか、直ちに使用した。調製されたhM受容体膜のアリコートは、Perkin Elmerから直接購入し、使用するまで−80℃で保存した。
【0256】
ムスカリン受容体サブタイプhM、hM、hM、hMおよびhMに対する放射性リガンド結合アッセイ
放射性リガンド結合アッセイを、1000μL総アッセイ容積で、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて実施した。hM、hM、hM、hMまたはhMムスカリンサブタイプのいずれかを安定に発現するCHO細胞膜を、アッセイバッファーで以下の指定の標的タンパク質濃度(μg/ウェル)に希釈した:hMに対しては10μg、hMに対しては10〜15μg、hMに対しては10〜20μg、hMに対しては10〜20μgおよびhMに対しては10〜12μg。膜は、Polytron組織破壊器を用いて短時間ホモジナイズし(10秒)、その後、アッセイプレートに添加した。放射性リガンドのK値を調べるための飽和結合研究を、L−[N−メチル−H]スコポラミンメチルクロリド([H]−NMS)(TRK666、84.0Ci/mmol、Amersham Pharmacia Biotech、Buckinghamshire、England)を、0.001nM〜20nM範囲の濃度で用いて実施した。試験化合物のK値を調べるための置換アッセイを、1nMの[H]−NMSおよび11種の異なる試験化合物濃度を用いて実施した。試験化合物を、まず、希釈バッファー中、40μMの濃度に溶解し、次いで、希釈バッファーを用いて、400fM〜4μMの範囲の最終濃度に5×段階希釈した。アッセイプレートへの添加順序および容積は、以下のとおりとした:0.1%BSAを含む825μLのアッセイバッファー、25μLの放射性リガンド、100μLの希釈試験化合物および50μLの膜。アッセイプレートを37℃で6時間インキュベートした。0.3%ポリエチレンイミン中で前処理したGF/Bガラス繊維フィルタープレート(Perkin Elmer Inc.、Wellesley、MA)上での迅速濾過によって、結合反応を終結させた。フィルタープレートは、洗浄バッファー(10mM HEPES)で3回すすいで、結合していない放射活性を除去した。次いで、プレートを風乾し、各ウェルに50μLのMicroscint−20液体シンチレーション液(PerkinElmer Inc.、Wellesley、MA)を加えた。次いで、このプレートを、PerkinElmer Topcount液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer Inc.、Wellesley、MA)でカウントした。結合データは、GraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)を用い、一部位競合モデルを用いて非直線回帰分析によって分析した。試験化合物のK値は、放射性リガンドの観察されたIC50値およびK値から、Cheng−Prusoff方程式(Cheng Y;Prusoff W.H. Biochemical Pharmacology22(231:3099〜108(1973年))を用いて算出した。K値を、pK値に変換して幾何平均および95%信頼区間を求めた。次いで、これらの要約統計値をデータ報告のためのK値に変換して戻した。
【0257】
このアッセイでは、K値が低いほど、試験化合物が、試験された受容体に対してより高い結合親和性を有することを示す。このアッセイにおいて試験された本発明の例示的化合物は、このアッセイではMムスカリン受容体サブタイプに対して約100nM未満のK値を有することがわかった。より一般的には、これらの化合物は、約50nM未満のK値を有し、いくつかの化合物は約10nM未満または約1.0nM未満のK値を有することがわかった。例えば、実施例1および実施例2の化合物は、このアッセイにおいてMムスカリン受容体サブタイプに対して約1.0nM未満のK値を示した。
【0258】
アッセイ2
ムスカリン受容体機能的能力アッセイ
cAMP蓄積のアゴニスト媒介性阻害の遮断
このアッセイでは、試験化合物の、hM受容体を発現するCHO−K1細胞におけるフォルスコリン媒介性cAMP蓄積のオキソトレモリン阻害を遮断する能力を測定することによって試験化合物の機能的能力を調べる。
【0259】
cAMPアッセイは、125I−cAMPを用いるフラッシュプレートアデニリルシクラーゼ活性化アッセイ系(NEN SMP004B、PerkinElmer Life Sciences Inc.、Boston、MA)を、製造業者の使用説明書に従って用いてラジオイムノアッセイ形式で実施する。
【0260】
アッセイ1に記載されるように、細胞をdPBSで1回すすぎ、トリプシン−EDTA溶液(0.05%トリプシン/0.53mM EDTA)で持ち上げる。剥離した細胞を、50mLのdPBS中での5分間の650×gの遠心分離によって2回洗浄する。次いで、細胞ペレットを10mLのdPBSに再懸濁し、Coulter Zl Dual Particle Counter(Beckman Coulter、Fulleiton、CA)を用いて細胞をカウントする。細胞を、650×gで5分間、再度遠心分離し、刺激バッファーで1.6×10〜2.8×10個細胞/mLのアッセイ濃度に再懸濁する。
【0261】
試験化合物を、まず、希釈バッファー(1mg/mLのBSA(0.1%)を補給したdPBS)で400μMの濃度に溶解し、次いで、希釈バッファーを用いて、100μM〜0.1nMの範囲の最終モル濃度に段階希釈する。オキソトレモリンを同様の方法で希釈する。
【0262】
アデニリルシクラーゼ(AC)活性のオキソトレモリン阻害を測定するために、25μLのフォルスコリン(dPBSで希釈した25μM最終濃度)、25μLの希釈したオキソトレモリンおよび50μLの細胞を、アゴニストアッセイウェルに加える。試験化合物の、オキソトレモリンによって阻害されるAC活性を遮断する能力を測定するために、25μLのフォルスコリンおよびオキソトレモリン(それぞれ、dPBSで希釈された、25μMおよび5μM最終濃度)、25μLの希釈された試験化合物および50μLの細胞を、残りのアッセイウェルに加える。
【0263】
反応液を37℃で10分間インキュベートし、100μLの氷冷検出バッファーを添加することによって停止する。プレートを密閉し、室温で一晩インキュベートし、翌朝、PerkinElmer TopCount液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer Inc.、Wellesley、MA)でカウントする。生じたcAMPの量(pmol/ウェル)を、製造業者のユーザーマニュアルに記載されるように、サンプルおよびcAMP標準について観察されたカウントに基づいて算出する。データは、GraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)を用い、非線形回帰、一部位競合方程式を用いて、非線形回帰分析によって分析する。Cheng−Prusoff方程式を用い、Kおよび[L]として、それぞれ、オキソトレモリン濃度反応曲線のEC50およびオキソトレモリンアッセイ濃度を用いてKを算出する。K値をpK値に変換して、幾何平均および95%信頼区間を求める。次いで、これらの要約統計値をデータ報告のためのK値に変換して戻す。
【0264】
このアッセイでは、K値が低いほど、試験化合物が、試験された受容体で高い機能的活性を有することを示す。本発明の例示的化合物は、hM受容体を発現するCHO−K1細胞におけるフォルスコリン媒介性cAMP蓄積のオキソトレモリン阻害の遮断について、約100nM未満のK値を有すると思われる。例えば、実施例2の化合物は、このアッセイにおいて約1.0nM未満のK値を示した。
【0265】
アゴニスト媒介性[35S]GTPγS結合の遮断
第2の機能的アッセイでは、化合物の、hM受容体を発現するCHO−K1細胞におけるオキソトレモリン刺激性[35S]GTPγS結合を遮断する能力を測定することによって試験化合物の機能的能力を調べることができる。
【0266】
使用時に、凍結膜を解凍し、次いで、アッセイバッファーで希釈し、ウェルあたり5〜10μgタンパク質の最終標的組織濃度とする。膜を、Polytron PT−2100組織破壊器を用いて短時間ホモジナイズし、次いで、アッセイプレートに添加する。
【0267】
各実験において、アゴニストオキソトレモリンによる[35S]GTPγS結合の刺激のEC90値(90%最大応答のための有効濃度)を求める。
【0268】
試験化合物の、オキソトレモリン刺激性[35S]GTPγS結合を阻害する能力を調べるために、96ウェルプレートの各ウェルに以下を加える:25μLの[35S]GTPγS(0.4nM)を含むアッセイバッファー、25μLのオキソトレモリン(EC90)およびグアノシン二リン酸(3μM)、25μLの希釈した試験化合物および25μLのhM受容体を発現するCHO細胞膜。次いで、アッセイプレートを37℃で60分間インキュベートする。アッセイプレートを、PerkinElmer 96ウェル回収機を用い、1%BSAで前処理したGF/Bフィルター上で濾過する。プレートを氷冷洗浄バッファーで3×3秒間すすぎ、次いで、風乾または真空乾燥する。各ウェルに、Microscint−20シンチレーション液(50μL)を加え、各プレートを密閉し、topcounter(PerkinElmer)で放射活性をカウントする。データは、非線形回帰、一部位競合方程式を用いてGraphPad Prismソフトウェアパッケージ(GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)を用い、非直線回帰分析によって分析する。Cheng−Prusoff方程式を用い、Kおよび[L]、リガンド濃度として、それぞれ、アッセイにおける試験化合物の濃度反応曲線のIC50値およびオキソトレモリン濃度を用いてKを算出する。
【0269】
このアッセイでは、K値が低いほど、試験化合物が、試験された受容体で高い機能的活性を有することを示す。本発明の例示的化合物は、hM受容体を発現するCHO−K1細胞におけるオキソトレモリン刺激性[35S]GTPγS結合の遮断について、約100nM未満のK値を有すると思われる。
【0270】
FLIPRアッセイによるアゴニスト媒介性カルシウム放出の遮断
タンパク質とカップリングする、ムスカリン受容体サブタイプ(M、MおよびM受容体)は、アゴニストが受容体と結合する際にホスホリパーゼC(PLC)経路を活性化する。結果として、活性化されたPLCが、ホスファチルイノシトール二リン酸(PIP)を、ジアシルグリセロール(DAG)とホスファチジル−1,4,5−三リン酸(IP)に加水分解し、順に、細胞内カルシウムストア、すなわち、小胞体および筋小胞体からの放出を起こす。FLIPR(登録商標)(Molecular Devices、Inc.)アッセイは、細胞内カルシウムにおけるこの増加を、遊離カルシウムが結合すると蛍光を発するカルシウム感受性色素(Fluo−4AM、Molecular Probes)を用いることによって利用するものである。この蛍光事象が、FLIPRによってリアルタイムで測定され、これによって、hM、hMおよびcM受容体を含むクローン化された単層の細胞からの蛍光の変化が検出される。アンタゴニスト効力は、アンタゴニストの、細胞内カルシウムのアゴニスト媒介性増大を阻害する能力によって調べることができる。
【0271】
FLIPRカルシウム刺激アッセイのために、hM、hMおよびcM受容体を安定に発現するCHO細胞を、96ウェルFLIPRプレートに播種し、その後、アッセイを行う。播種された細胞を、FLIPRバッファー(カルシウムおよびマグネシウム不含HBSS中、10mM HEPES、pH7.4、2mM塩化カルシウム、2.5mMプロベネシド)を用いCellwash (MTX Labsystems、Inc.)によって2回洗浄して増殖培地を除去し、50μL/ウェルのFLIPRバッファーを残す。次いで、細胞を、50μL/ウェルの4μM FLUO−4AM(2×溶液を作製した)とともに、37℃、5%二酸化炭素で40分間インキュベートする。色素インキュベーション期間後、細胞を、FLIPRバッファーを用いて2回洗浄し、50μL/ウェルの最終容積を残す。
【0272】
アンタゴニスト効力を調べるために、まず、オキソトレモリンの、細胞内Ca2+放出の用量依存性刺激を調べ、その結果、後に、EC90濃度のオキソトレモリン刺激に対するアンタゴニスト効力を測定できる。まず、細胞を、化合物希釈バッファーとともに20分間インキュベートし、続いて、アゴニストを添加し、これでFLIPRが実施される。オキソトレモリンのEC90値は、以下のFLIPR測定およびデータ整理の項に詳述される方法に従って、式EC=((F/100−F)^l/H)*EC50と併せて作製する。3×ECのオキソトレモリン濃度を、オキソトレモリンのEC90濃度が、アンタゴニスト阻害アッセイプレート中の各ウェルに加えられるように刺激プレートにおいて調製する。
【0273】
FLIPRに使用されるパラメータは以下のとおりとする:0.4秒の曝露長、0.5ワットのレーザー強度、488nmの励起波長および550nmの発光波長。ベースラインは、アゴニストの添加の10秒前の蛍光の変化を測定することによって求める。アゴニスト刺激後、FLIPRによって、蛍光の変化を0.5〜1秒毎に1.5分間継続的に測定して最大蛍光変化を捉える。
【0274】
蛍光の変化は、各ウェルについて、最大蛍光−ベースライン蛍光として表される。生データを、GraphPad Prism(GraphPad Software、Inc.、San Diego、CA)を用い、シグモイド用量反応の内臓モデルを用いて非線形回帰によって、薬物濃度の対数に対して分析する。アンタゴニストK値は、Cheng−Prusoff方程式(Cheng & Prusoff、1973年)に従って、KとしてのオキソトレモリンEC50値およびリガンド濃度に対してオキソトレモリンEC90を用いてPrismによって求める。
【0275】
このアッセイでは、K値が低いほど、試験化合物が、試験された受容体で高い機能的活性を有することを示す。本発明の例示的化合物は、hM受容体を安定に発現するCHO細胞におけるアゴニスト媒介性カルシウム放出の遮断について、約100nM未満のK値を有すると思われる。
【0276】
アッセイ3
ラットEinthovenアッセイ
このin vivoアッセイを用いて、ムスカリン受容体アンタゴニスト活性を示す試験化合物の気管支保護的効果を評価する。
【0277】
すべての試験化合物を、滅菌水で希釈し、吸入経路(IH)によって投薬する。ラット(スプラーグ−ドーリー、雄、250〜350g)を、LC Star Nebulizer Setから生成され、ガスの混合物(5% CO/95% 大気の空気)によって動かされるエアゾールに曝露させる。各試験化合物溶液を、6匹の動物を入れることができるパイ型の投薬チャンバー中に10分間にわたって噴霧する。化合物の吸入後、所定の時点で、Einthovenアッセイを行う。
【0278】
肺の評価を開始する30分前に、動物をイナクチン(チオブタバルビタール、120mg/kg IP)で麻酔する。頚静脈を、生理食塩水を詰めたポリエチレンカテーテル(PE−50)を用いてカテーテル処理し、気管支収縮剤メチルコリン(MCh)注入するために使用する。次いで、気管を切開し、14Gニードルを用いてカニューレ処置し、肺評価の間のラット人工呼吸のために用いる。外科処置が完了すると、ピストン式人工呼吸セットを、1ml/体重100g、2.5mlを超えない1回拍出量、および1分あたり90ストロークの速度で用いて動物を人工呼吸する。
【0279】
呼吸毎に生じる圧力の変化を測定する。少なくとも2.5分間の間、ベースライン値を集め、次いで、動物に、2倍の増分増加したMCh(5、10、20、40および80μg/ml)を用いて非累積的に投与する。MChは、シリンジポンプから2mL/Kg/分の速度で2.5分間注入する。動物は研究の完了時に安楽死させる。
【0280】
処置動物における人工呼吸圧力の変化(cm HO)は、対照動物に対するMCh反応の阻害%として表される。このアッセイでは、阻害%値が高いほど、試験化合物が、気管支保護的効果を有することを示す。100μg/mlの用量で、このアッセイにおいて試験される本発明の例示的化合物は、35%を超える阻害を示すと思われ、中には、70%を超える阻害を示すものもあると思われ、中には、90%を超える阻害を示すものもあると思われる。例えば、実施例1および実施例2の化合物は、このアッセイにおいて35%を超える阻害を示した。
【0281】
1.5時間ID50測定
投与後1.5時間のラットEinthovenアッセイにおいて、標準ムスカリンアンタゴニストを評価した。試験した5種の標準の効力(ID50)の順序が、以下であると決定した:イプラトロピウム(4.4μg/ml)>チオトロピウム(6μg/ml)>デス−メチル−チオトロピウム(12μg/ml)>グリコピロレート(15μg/ml)>LAS−34237(24μg/ml)。試験化合物の効力を、投与後1.5時間に同様に調べる。
【0282】
6および24時間ID50測定
標準チオトロピウムおよびイプラトロピウムをまた、ラットEinthovenアッセイにおいて投与後24時間および/または6時間に評価した。イプラトロピウム(10および30μg/ml)は、投与後6時間で、その1.5時間効力と比較して、約3倍強力でなかった。観察された、この時点(6時間)での活性の喪失は、臨床におけるその比較的に短い作用期間と一致する。チオトロピウムは効果の遅い発現を示し、ピーク気管支保護は投与後6時間に達成された。その6時間および24時間効力値は、互いに大きくは異ならず、その1.5時間効力と比較して約2倍より強力であった。試験化合物の作用の発現、ならびに6および24時間効力値を同様に調べる。
【0283】
アッセイ4
ラット抗唾液分泌促進薬アッセイ
ラット(スプラーグ−ドーリー、雄、250〜350g)に、アッセイ3について記載されるように、投与し、麻酔し、カニューレ処置する。外科処置後、所定の時点で、動物を、頭部を下にして20°の傾斜で背面を下に寝かせる。予め秤量しておいたガーゼを動物の口に入れ、ムスカリンアゴニスト、ピロカルピン(PILO)(3mg/kg、IV)を投与する。PILO後10分間の間に生じた唾液を、PILOの前後のガーゼの重量を調べることによって重量測定法で測定する。抗唾液分泌促進薬効果は、対照動物に対する唾液分泌の阻害%として表される。
【0284】
1、6および24時間ID50測定
試験化合物の全身曝露を評価し、肺選択指数(LSI)を算出するために、ラット抗唾液分泌促進薬アッセイを開発した。標準、チオトロピウムをこのモデルで投与後1、6および24時間に評価した。チオトロピウムは、投与後6時間のピロカルピン誘導性唾液分泌の阻害で最も強力であることがわかった。この知見は、Einthovenアッセイにおいて観察されたピーク効果と一致する。
【0285】
このモデルは、Rechter、「Estimation of anticholinergic drug effects in mice by antagonism against pilocarpine−induced salivation」Ata Pharmacol Toxicol24:243〜254頁(1996年)に記載される手順の改変型である。各処理前時点で、ビヒクル処理動物における唾液の平均重量を算出し、これを用いて、各用量での、対応する処理前時点での唾液分泌の阻害%を計算した。
【0286】
このアッセイにおいて試験される本発明の例示的化合物は、100μg/ml未満のID50値(24時間で測定される)を示すと思われ、中には、30μg/ml未満、中には、20μg/ml未満、中には、15μg/ml未満のID50を示す化合物もあると思われる。
【0287】
気管支保護的ID50に対する抗唾液分泌促進薬ID50の比を用いて、試験化合物の見かけの肺選択指数を計算する。一般に、約5を超える見かけの肺選択指数を有する化合物が好ましい。
【0288】
本発明を、その特定の態様または実施形態を参照して記載したが、当業者ならば、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、種々の変更を行ってよいか、または等価物を置き換えてもよいということは理解されよう。さらに、適用される特許法および規則によって許される限り、本明細書に引用される、すべての刊行物、特許および特許出願は、参照によりその全文が、各文書が参照により本明細書に個々に組み込まれるのと同程度に、本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩または両性イオンの形の、式I:
【化67】

[式中、
は、−C1〜6アルキル、−C2〜6アルケニル、−C2〜6アルキニル、−C1〜3アルキレン−SCH、−C3〜9シクロアルキルおよびヘテロアリールから選択され;Rは、アリールまたはヘテロアリール基であり;Rは、Hおよび−C0〜1アルキレン−OHから選択されるか;またはRが−C3〜9シクロアルキルである場合には、Rは、−C3〜9シクロアルキル基上の炭素原子と二重結合を形成し得るか;または−CRは一緒になって、次式
【化68】

の基を形成し:
aは、0または1〜3の整数であり;各Rは、フルオロおよび−C1〜4アルキルから独立に選択され;
は、−C1〜5アルキルおよび−C0〜1アルキレンC3〜5シクロアルキルから選択され;
は、−C1−3アルキル、−C1〜2アルキレンC3〜7シクロアルキル、−C0〜4アルキレン−OH、−C1〜2アルキレン−C(O)O−C1〜4アルキルおよび−C1〜2アルキレン−C(O)NR6a6bから選択され;ここで、R6aおよびR6bは、独立に、Hおよび−C1〜4アルキルから選択されるか;またはRは、Rと一緒になって−C3〜5アルキレン−を形成し;
Zは、結合、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−SO−NRZ1−、−NRZ1−SO−、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)O−、−NRZ1C(O)−、−C(O)NRZ1−、−NRZ2−C(O)−NRZ3−、−NRZ2−C(S)−NRZ3−、−CH(OH)−および−C(=N−O−RZ4)−から選択され;ここで、RZ1は、Hおよび−C1〜4アルキルから選択され;RZ2およびRZ3は、独立に、H、−C1〜4アルキルおよび−C3〜6シクロアルキルから選択されるか、またはRZ2およびRZ3は、一緒になって、−C2〜4アルキレン−または−C2〜3アルケニレン−を形成し;RZ4は、−C1−4アルキルおよびベンジルから選択され;
Qは、アリールまたはヘテロアリール基であり;
ここで、R中の−C3〜9シクロアルキルおよびR中のアリールは、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニル、−C3〜6シクロアルキル、シアノ、ハロ、−OR、−SR、−S(O)R、−S(O)および−NRから独立に選択される1〜5個のR基で、場合により置換されていてもよく、;各Rは、独立に、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニルおよび−C3〜6シクロアルキルから選択され;RおよびRは各々独立に、H、−C1〜4アルキル、−C2〜4アルケニル、−C2〜4アルキニルおよび−C3〜6シクロアルキルから選択され;Q中のアリールは、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、シアノ、−C0〜2アルキレン−COOH、−C(O)O−C1〜4アルキル、−O−C1〜4アルキル、−S−C1〜4アルキル、−NH−C(O)−C1〜4アルキル、−N−ジ−C1〜4アルキルおよび−N(O)Oから独立に選択される1〜5個のR基で場合により置換されていてもよく;R、R3〜6、Z、QおよびR中の、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルケニレン、アルキニルおよびシクロアルキル基は各々、1〜5個のフルオロ原子で場合により置換されていてもよく;−(CH1〜4中の−CH−基は各々、−C1〜2アルキル、−OH、フルオロおよびフェニルから独立に選択される、1または2個の置換基で場合により置換されていてもよい]
を有する化合物およびその製薬上許容される塩。
【請求項2】
が、−CHCH(CH、−CHCH=CH、シクロプロピル、シクロペンチルおよびチオフェンから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、フェニルまたはチオフェンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
フェニルが、非置換である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
フェニルが、−C1〜4アルキル、ハロおよび−OR(式中、Rは、Hまたは−C1〜4アルキルである)から選択される1個のR基で置換されている、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
が、Hおよび−OHから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
がシクロペンチルであり、Rがシクロペンチル基上の炭素原子と二重結合を形成する、請求項2に記載の化合物。
【請求項8】
aが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
窒素含有環が、以下:
【化69】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
が、−C1〜5アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
が、−C1〜3アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
Zが、結合、−O−および−C(O)−から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
Qがフェニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
Qが非置換である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
各Rが、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、シアノ、−C0〜2アルキレン−COOH、−C(O)O−C1〜4アルキル、−O−C1〜4アルキルおよび−N(O)Oから独立に選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
Qが、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、シアノ、−C0〜2アルキレン−COOH、−O−C1〜4アルキルおよび−N(O)Oから選択される1個のR基で置換されている、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
Qが、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、− C(O)O−C1〜4アルキルおよび−O−C1〜4アルキルから独立に選択される2個のR基で置換されている、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
Qが、チエニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、ベンゾ[l,3]ジオキソリル、インドリルおよびテトラゾリルから選択されるヘテロアリール基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
リンカー−(CH0〜1−N(R)−(CH1〜4−Z−が、−N(CH−CH−、−N(CH−(CH−、−N(CH(CHCH)−(CH−、−N(CH−(CH−、−N(CH−(CH−、−N(CH−CH−CH(フェニル)−、−N(CH−CH−CH(OH)−、−N(CH−CH−C(O)−、−N(CH−(CH−O−、−N(CH−(CH−O−、−N(CH−(CH−O−、−CH−N(CH−CH−、−CH−N(CH−(CH−、−CH−N(CH−(CH−、−N(CH)(CHCH)−(CH−、−N(CH)[(CHCH]−(CH−、−N(CH)(CH−シクロプロピル)−(CH−、−N(CH)−(CHCHOH)−(CH−、−N(CH)[CHC(O)OCH]−(CH−および−N(CH)−[CHC(O)NH]−(CH−から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
次式II:
【化70】

[式中、Xは、製薬上許容される酸のアニオンである]を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
Xが、アセテート、ベンゼンスルホネート、ベンゾエート、ブロミド、ブチレート、クロリド、p−クロロベンゾエート、シトレート、ジフェニルアセテート、ホルメート、フルオリド、o−ヒドロキシベンゾエート、p−ヒドロキシベンゾエート、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボキシレート、3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボキシレート、ヨーダイド、ラクテート、マレート、マレエート、メタンスルホネート、ニトレート、ホスフェート、プロピオネート、スクシネート、スルフェート、タートレート、トリフルオロアセテートおよびトリフェニルアセテートから選択される、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
Xが、ブロミド、ヨーダイドおよびトリフルオロアセテートから選択される、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
が、−C1〜6アルキル、−C2〜6アルケニル、−C2〜6アルキニル、−C1〜3アルキレン−SCH、−C3〜9シクロアルキルおよびヘテロアリールから選択され;Rが、アリールまたはヘテロアリール基であり;Rが、Hおよび−C0〜1アルキレン−OHから選択されるか;またはRが−C3〜9シクロアルキルである場合は、Rは、−C3〜9シクロアルキル基上の炭素原子と二重結合を形成し得るか;または−CRは一緒になって次式:
【化71】

の基を形成し;aが0であり;Rが、−C1〜5アルキルであり;Rが、−C1−3アルキル、−C1〜2アルキレンC3〜7シクロアルキル、−C0〜4アルキレン−OH、−C1〜2アルキレン−C(O)O−C1〜4アルキルおよび−C1〜2アルキレン−C(O)NHから選択され;Zが、結合、−O−および−C(O)−から選択され;Qが、アリールまたはヘテロアリール基であり;ここで、R中のアリールは、−C1〜4アルキル、ハロおよび−ORから独立に選択される、1〜2個のR基で場合により置換されていてもよく;各Rは、Hおよび−C1〜4アルキルから独立に選択され;Q中のアリールが、ハロ、−C1〜4アルキル、−C0〜4アルキレン−OH、シアノ、−C0〜2アルキレン−COOH、−C(O)O−C1〜4アルキル、−O−C1〜4アルキルおよび−N(O)Oから独立に選択される、1〜2個のR基で場合により置換されていてもよく;R中の各アルキルが、1〜5個のフルオロ原子で場合により置換されていてもよく;−(CH 1〜4−中の1個の−CH−基が、−OHおよびフェニルから選択される基で場合により置換されていてもよい、請求項20に記載の化合物。
【請求項24】
がフェニルであり、Rが−OHである場合は、Rが、−CHCH(CH、−CHCH=CH、シクロプロピルおよびシクロペンチルから選択され;またはRがフェニルであり、RがHである場合は、Rがシクロプロピルであり;またはRがフェニルであり、Rがシクロペンチル基上の炭素原子と二重結合を形成する場合は、Rがシクロペンチルであり;またはRがチオフェニルであり、Rが−OHである場合は、Rがシクロペンチルまたはチオフェニルであり;または−CRが一緒になって次式:
【化72】

の基を形成し;aが0であり;リンカー−(CH0〜1−N(R)−(CH1〜4−Z−が、−N(CH−(CH−、−N(CH(CHCH)−(CH−および−N(CH−CH−C(O)−から選択され;Qが、フェニル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イルおよびベンゾ[l,3]ジオキソール−5−イルから選択され;ここで、R中のフェニルが、−CH、フルオロ、−OHおよび−OCHから独立に選択される1〜2個のR基で場合により置換されていてもよく;Q中のフェニルが、フルオロ、ブロモ、−CHおよび−OHから独立に選択される1〜2個のR基で場合により置換されていてもよい、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
次式IIa:
【化73】

を有する、請求項20に記載の化合物。
【請求項26】
が、−CHCH(CH、−CHCH=CH、−C≡CH、−(CHSCH、シクロプロピル、シクロペンチルおよびチオフェニルから選択され;Rが、フェニルおよびチオフェニルから選択され;Rが、Hおよび−C0〜1アルキレン−OHから選択され;またはRがシクロペンチルである場合は、Rは、シクロペンチル基上の炭素原子と二重結合を形成し得るか;または−CRが一緒になって次式:
【化74】

の基を形成し;aが0であり;Rが−CHであり;Rが、−CH、−CHCH、−(CHCH、−CH−シクロプロピル、−(CHOH、−CH−C(O)OCHおよび−CH−C(O)NHから選択され;Zが、結合、−O−および−C(O)−から選択され;Qが、フェニル、1H−インドール−3−イル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イル、ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル、ピロール−1−イル、1H−テトラゾール−5−イルおよびピペリジン−4−イルから選択され;ここで、R中のフェニルが、−CH、フルオロ、−OHおよび−OCHから独立に選択される1〜2個のR基で場合により置換されていてもよく;Q中のフェニルが、フルオロ、クロロ、ブロモ、−CH、−CF、−C(CH、−OH、−(CH−OH、シアノ、−COOH、−CHCOOH、C(O)OCH、−OCH、−OCHFおよび−N(O)Oから独立にされる1〜2個のR基で場合により置換されていてもよく;−(CH1〜4中の1個の−CH−基が、−OHおよびフェニルから選択される1または2個の置換基で場合により置換されていてもよい、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
次式IIb:
【化75】

を有する、請求項20に記載の化合物。
【請求項28】
が、−CHCH(CH、−CHCH=CH、−C≡CH、−(CHSCH、シクロプロピルおよびシクロペンチルから選択され;Rが、Hおよび−C0〜1アルキレン−OHから選択されるか;またはRがシクロペンチルである場合には、Rがシクロペンチル基上の炭素原子と二重結合を形成し得;Rが、−CHであり;Rが、−CH、−CHCH、−(CHCH、−CH−シクロプロピル、−(CHOH、−CH−C(O)OCHおよび−CH−C(O)NHから選択され;Zが、結合、−O−および−C(O)−から選択され;Qがフェニル、1H−インドール−3−イル、チオフェン−2−イル、チオフェン−3−イル、ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル、ピロール−1−イル、1H−テトラゾール−5−イルおよびピペリジン−4−イルから選択され;ここで、Rは、−CH、フルオロ、−OH,および−OCHから独立に選択され;Q中のフェニルが、フルオロ、クロロ、ブロモ、−CH、−CF、−C(CH、−OH、−(CH−OH、シアノ、−COOH、−CHCOOH、C(O)OCH、−OCH、−OCHFおよび−N(O)Oから独立に選択される1〜2個のR基で場合により置換されていてもよく;−(CH1〜4中の1個の−CH−基が、−C1〜2アルキル、−OHおよびフェニルから選択される1個の置換基で場合により置換されていてもよい、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
次式IIc:
【化76】

を有する、請求項20に記載の化合物。
【請求項30】
が、−CHCH(CH、−CHCH=CH、−C≡CH、−(CHSCH、シクロプロピルおよびシクロペンチルから選択され;Rが、Hおよび−C0〜1アルキレン−OHから選択されるか;またはRがシクロペンチルである場合は、Rがシクロペンチル基上の炭素原子と二重結合を形成し得;Rが、−CHであり;Rが、−CH、−CHCH、−(CHCH、−CH−シクロプロピル、−(CHOH、−CH−C(O)OCHおよび−CH−C(O)NHから選択され;Zが、結合、−O−および−C(O)−から選択され;ここで、Rは、−CH、フルオロ、−OHおよび−OCHから独立に選択され;Rが、フルオロ、クロロ、ブロモ、−CH、−CF、−C(CH、−OH、−(CH−OH、シアノ、−COOH、−CHCOOH、C(O)OCH、−OCH、−OCHFおよび−N(O)Oから独立に選択され;−(CH1〜4中の1個の−CH−基が、−C1〜2アルキル、−OHおよびフェニルから選択される1個の置換基で場合により置換されていてもよい、請求項29に記載の化合物。
【請求項31】
次式IId:
【化77】

を有する、請求項20に記載の化合物。
【請求項32】
が−OHであり;Zが結合であり;Rが、フルオロおよび−OHから独立に選択される、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
次式IIe:
【化78】

を有する、請求項20に記載の化合物。
【請求項34】
が−OHであり;Zが結合であり;Qが、フェニルまたはベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イルであり;Q中のフェニルが、フルオロおよび−CHから選択される1個のR基で場合により置換されていてもよい、請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
次式IIf:
【化79】

を有する、請求項20に記載の化合物。
【請求項36】
がHであり;Zが結合であり;Qが、フェニル、チオフェン−2−イルまたはチオフェン−3−イルであり;Q中のフェニルが、フルオロおよび−OHから選択される1個のR基で場合により置換されていてもよい、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
請求項1に記載の化合物と、製薬上許容される担体とを含んでなる薬学的組成物。
【請求項38】
化合物が、微粉化された形である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
βアドレナリン受容体アゴニスト、ステロイド性抗炎症薬、ホスホジエステラーゼ−4阻害剤およびそれらの組み合わせから選択される第2の治療薬をさらに含んでなる、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
βアドレナリン受容体アゴニストおよびステロイド性抗炎症薬をさらに含んでなる、請求項37に記載の組成物。
【請求項41】
請求項1に記載の化合物を調製する方法であって、
(a)式1の化合物を式2の化合物:
【化80】

と反応させるか、または式1’の化合物を式2’の化合物:
【化81】

[式中、Lは、脱離基を表す]と反応させて、式3の化合物を作製するステップと:
【化82】

式3の化合物を、R基を含有する有機基質と反応させるステップ;
または
(b)式4の化合物:
【化83】

を式2の化合物と反応させるステップ;または
(c)式4の化合物を式5の化合物:
【化84】

[式中、Lは、脱離基を表し、Aは以下に定義のとおりである]
と反応させて、式6の化合物:
【化85】

を作製するステップと、式6の化合物を式7の化合物:
B−Q (7)
と反応させるステップと、
[ここで、Z、AおよびBは、以下の表中に示されるとおりに定義され、Lは脱離基を表す]:
【表18−1】

【表18−2】

塩または両性イオンの形の生成物を回収するステップとを含んでなる方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法によって調製される化合物。
【請求項43】
医薬の製造のための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項44】
慢性閉塞性肺疾患または喘息を治療するのに有用な、請求項1に記載の化合物。
【請求項45】
気管支拡張を引き起こすのに有用な、請求項1に記載の化合物。

【公表番号】特表2010−525058(P2010−525058A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506240(P2010−506240)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/005224
【国際公開番号】WO2008/133900
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】