説明

メモリ素子

【課題】陽極層、陰極層、スイッチング層のみからなり、スイッチング層を湿式法により簡便かつ歩留りの高い工程で製造でき、書き換え可能で高速動作可能な、新規の不揮発性のメモリ素子を提供する。
【解決手段】陽極層3と陰極層5との間に単層のスイッチング層4を形成し、陽極層3とスイッチング層4を直接接合し、陰極層5とスイッチング層4を直接接合した。スイッチング層4は酸化還元活性部位を有する有機高分子から形成した。酸化還元活性部位は、オキソアンモニウムカチオン塩、N−オキシルアニオン塩、フェノラートアニオン塩、アミニウムカチオン塩のいずれかとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印加された電圧に応じてオン/オフ状態が切り替わってその状態を維持するスイッチング素子、特に不揮発性であって書き換え可能なメモリ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン基板を用いたメモリ素子が汎用されてきたが、その製造にはフォトリソグラフィーなどの煩雑かつ製造コストが高い工程が必要であるため、最終製品としてのメモリ素子が非常に高価となる問題があった。また、揮発性のメモリ素子では、DRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)は製造コストが高く、フラッシュメモリやHDD(ハードディスクドライブ)は書き込み速度と読み込み速度が遅いという問題があった。
【0003】
このようなメモリ素子に代わるものとして、種々の書き換え可能で高速動作可能な新規の不揮発性メモリ素子が検討されている。有機材料を用いたメモリ素子もその一つである。
【0004】
有機材料を用いたメモリ素子としては、有機低分子材料をスイッチング層として用いた素子が主流であり、ペンタセン(非特許文献1)やトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(非特許文献2)のような有機半導体を用いた素子がWORM(write once read many)型のメモリ素子として提案されている。
【0005】
しかし、こうした有機低分子材料をスイッチング層として用いたメモリ素子は、電子ビーム法やスパッタ法のような真空蒸着装置を用いた歩留りの低い成膜工程が必須となるという問題があった。
【0006】
この問題に対しては、陽極層と陰極層との間に電気絶縁性のラジカルポリマーからなるスイッチング層を有し、このスイッチング層と陽極層との間にホール輸送層、スイッチング層と陰極層との間に電子注入輸送層を有するメモリ素子が開示されている(特許文献1)。このメモリ素子は、スイッチング層、ホール注入輸送層、電子注入輸送層を、湿式法により積層形成することができるため、各層の膜質の均一性を維持することができ、簡便かつ歩留りの高い工程で、メモリ素子を製造することができる。
【非特許文献1】D.Tondelier,K.Lmimouni,D.Vuillaume,C.Fery,G.Haas,Appl.Phys.Lett. 2004,85,5763.
【非特許文献2】A.K.Mahapatro,R.Agrawal,S.Ghosh,J.Appl.Phys.2004,96,3583.
【特許文献1】国際公開WO/2006/049261パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このメモリ素子は、陽極層、陰極層のほかに、スイッチング層、ホール注入輸送層、電子注入輸送層を有する多層構造のため、製造に要する工程数が多くなってしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、陽極層、陰極層、スイッチング層のみからなり、スイッチング層を湿式法により簡便かつ歩留りの高い工程で製造でき、書き換え可能で高速動作可能な、新規の不揮発性のメモリ素子、及びそのスイッチング層を構成する新規の化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のメモリ素子は、陽極層と陰極層との間に単層のスイッチング層を備え、前記陽極層と前記スイッチング層が直接接合され、前記陰極層と前記スイッチング層が直接接合されるとともに、前記スイッチング層は酸化還元活性部位を有する有機高分子からなることを特徴とする。
【0010】
前記酸化還元活性部位は、オキソアンモニウムカチオン塩であることを特徴とする。
【0011】
前記酸化還元活性部位は、N−オキシルアニオン塩であることを特徴とする。
【0012】
前記酸化還元活性部位は、フェノラートアニオン塩であることを特徴とする。
【0013】
前記酸化還元活性部位は、アミニウムカチオン塩であることを特徴とする。
【0014】
本発明の化合物は、
下記の構造式(a)〜(i)(X、Aは対イオン)のいずれかで表される。
【0015】
【化1】

【発明の効果】
【0016】
本発明のメモリ素子によれば、スイッチング層を湿式法により簡便かつ歩留りの高い工程で製造でき、書き換え可能で高速動作可能な、新規の不揮発性のメモリ素子を提供することができる。
【0017】
本発明の化合物によれば、本発明のメモリ素子のスイッチング層を構成する新規の化合物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明のメモリ素子の一実施例について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
本発明のメモリ素子を模式的に示す図1において、1はメモリ素子であって、基板2の上に、陽極層3、スイッチング層4、陰極層5が順に積層された積層構造を有している。また、スイッチング層4は単層であり、陽極層3とスイッチング層4、陰極層5とスイッチング層4は、それぞれ直接接合されており、陽極層3、スイッチング層4、陰極層5は、1〜1000nmの膜厚を有している。
【0020】
なお、基板2の材質は、特定のものに限定されず、ガラス基板、石英基板などを基板2として用いることができる。陽極層3は導電性を有する材料からなり、基板2上に公知の方法で形成されている。また、陰極層5も導電性を有する材料からなり、スイッチング層4上に公知の方法で形成されている。
【0021】
スイッチング層4は有機高分子からなり、この有機高分子は、酸化還元活性部位を有している。なお、酸化還元活性部位とは、電圧の印加によって酸化又は還元を受けやすく、電圧の印加による酸化又は還元により中性ラジカルとなるものをいう。この酸化還元活性部位は、低電圧印加で迅速、可逆的な酸化還元が可能であり、対応する中性ラジカルとの間の酸化還元挙動において、ホール及び/又は電子の注入及び/又は輸送が可能であるものが好ましい。
【0022】
また、スイッチング層4を構成する有機高分子の電気伝導度は、絶縁体(10−8S/cm未満)と半導体(10−8S/cm〜10−5S/cm)のほぼ中間の値の10−8S/cm〜10−7S/cmであることが望ましい。この値を有することにより、メモリ素子のオン/オフ状態の判別を容易かつ正確に行うことができる。また、この電気伝導度の値は、長期にわたって帯電状態を維持するために好都合である。
【0023】
このような酸化還元活性部位と電気伝導度を有している有機高分子としては、例えば、オキソアンモニウムカチオン塩、N−オキシルアニオン塩、フェノラートアニオン塩、アミニウムカチオン塩のいずれかを構造中に有している有機高分子が挙げられる。これらの有機高分子を用いてスイッチング層4を形成することにより、スイッチング層4には、オキソアンモニウムカチオンと対になって塩を形成する対イオン、N−オキシルアニオンと対になって塩を形成する対イオン、フェノラートアニオンと対になって塩を形成する対イオン、アミニウムカチオンと対になって塩を形成する対イオンのいずれかが予め存在することになり、これらの対イオンが電荷を補償するためメモリ素子の動作が安定する。
【0024】
これらの中では、オキソアンモニウムカチオン塩を側鎖に有している有機高分子であるオキソアンモニウム塩ポリマーが特に好適に用いられる。それは、オキソアンモニウムカチオンは、化2に示すように、一電子還元によりニトロキシドラジカルに変換されることによる高い電子輸送能を有するためである。
【0025】
【化2】

【0026】
また、このオキソアンモニウムカチオンとニトロキシドラジカルとの間の酸化還元反応は迅速で、化学的、電気化学的に極めて安定である。さらに、オキソアンモニウム塩ポリマーと、これに対応するニトロキシドラジカルポリマーは、大気下において250℃まで安定な取り扱いが可能であるという熱的安定性も併せ持っている。なお、オキソアンモニウム塩ポリマーの電気伝導度は、10−8S/cmである。
【0027】
オキソアンモニウム塩ポリマーの合成方法としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)を化学酸化、電気化学的酸化することによりオキソアンモニウム塩へと誘導する。その合成方法の一例を化3に示す
【0028】
【化3】

【0029】
なお、ここで、Xは対イオンであり、Xとしては、オキソアンモニウムカチオンと1対1で対応するハロゲンイオン、BF、PF、COO、ClO、SOのような1価のもののほか、2対1で対応するSO2−のような2価のものも含まれる。
【0030】
オキソアンモニウム塩ポリマーは、上記に限らず、種々の経路により合成することができる。例えば、N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの水酸基を化学酸化することによっても得ることができる。
【0031】
また、オキソアンモニウムカチオン塩の前駆体であるTEMPOに反応性基を導入してモノマーと共有結合によりカップリングし、このモノマーを単独重合又はほかのモノマーと共重合した後に酸化して、オキソアンモニウムカチオン塩へと誘導することもできる。又は、オキソアンモニウムカチオン塩に反応性基を導入してモノマーと共有結合によりカップリングし、このモノマーを単独重合又はほかのモノマーと共重合してもよい。或いは、ニトロキシド誘導体モノマーを化学酸化、電気化学酸化することによりオキソアンモニウムカチオン塩モノマーへと誘導し、これを単独重合又はほかのモノマーと共重合してもよい。
【0032】
さらに、上記のオキソアンモニウム塩ポリマーのほか、オキソアンモニウムカチオン塩をほかの有機高分子中にブレンドして作成した分散体も、スイッチング層4を構成する有機高分子として用いることができる。
【0033】
また、スイッチング層4を構成する有機高分子として、フェノラートアニオン塩を側鎖に有している有機高分子であるフェノラートアニオン塩ポリマーも好適に用いられる。その合成方法の一例を化4に示す。
【0034】
【化4】

【0035】
なお、ここで、Aは対イオンであり、Aとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、遷移金属イオン、有機アンモニウムなどが含まれる。
【0036】
フェノラートアニオン塩ポリマーは、上記に限らず、種々の経路により合成することができる。例えば、フェノール誘導体の水酸基を化学還元することによっても得ることができる。
【0037】
また、フェノール誘導体に反応性基を導入してモノマーと共有結合によりカップリングし、このモノマーを単独重合又はほかのモノマーと共重合した後に還元して、フェノラートアニオン塩へと誘導することもできる。又は、フェノラートアニオン塩に反応性基を導入してモノマーと共有結合によりカップリングし、このモノマーを単独重合又はほかのモノマーと共重合してもよい。或いは、フェノール誘導体モノマーを化学還元、電気化学還元することによりフェノラートアニオン塩モノマーへと誘導し、これを単独重合又はほかのモノマーと共重合してもよい。
【0038】
さらに、上記のフェノラートアニオン塩ポリマーのほか、フェノラートアニオン塩をほかの有機高分子中にブレンドして作成した分散体も、スイッチング層4を構成する有機高分子として用いることができる。
【0039】
化5に、スイッチング層4を構成する有機高分子として用いることができるオキソアンモニウムカチオン塩ポリマーとフェノラートアニオン塩ポリマーの例を示す。これらの構造式(a)〜(i)(X、Aは対イオン)のいずれかで表される化合物は、本発明の化合物である。
【0040】
【化5】

【0041】
ここで、(a)は、ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキソアンモニウム−4−ビニルエーテル)、(b)は、ポリ(4−メタクリロイロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキソアンモニウム)、(c)は、ポリ(4−アクリロイロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキソアンモニウム)、(d)は、ポリ(4−N−t−ブチル−N−オキソアンモニウムスチレン)、(e)は、ポリ(4−アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキソアンモニウム)、(f)は、ポリ(4−メタクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキソアンモニウム)、(g)は、ポリ(4−(2,6−ジ−t−ブチル−α−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキソ−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン)−p−ガルビノレート)、(h)は、ポリ(2−(4,4,5,5−テトラメチルイミダゾリン−1−オキソアンモニウム)スチレン)、(i)は、ポリ(2−(4,4,5,5−テトラメチルイミダゾリン−1−アミノキシ)スチレン)である。X、Aは、化3、化4と同様の対イオンである。
【0042】
なお、これらの有機高分子をスイッチング層4に用いて、メモリ素子を機能させるためには、モノマーの10%以上がカチオン塩又はアニオン塩の状態になっている必要があり、モノマーの70%〜100%がカチオン塩又はアニオン塩の状態になっていることが望ましい。
【0043】
また、高分子量の有機高分子を用いることにより、スイッチング層4を湿式法により簡便に成膜することが可能となる。この分子量としては、数千以上が望ましく、1万〜数十万が好適である。なお、湿式法とは、有機高分子の薄膜を形成するための公知の技術であって、一般に、スピンコート法、インクジェットなどの印刷法、ラングミュア・ブロジェット法、自己組織化法などが知られている。また、この湿式法によれば、スイッチング層4の膜質の均一性及びアモルファス安定性、さらには高次構造秩序の安定性が維持され、歩留りが高く量産性に適し、かつ低コストでの製造が可能となる。
【0044】
つぎに、動作について説明する。
【0045】
陽極層3、陰極層5の間に電圧を印加すると、スイッチング層4が低抵抗状態から高抵抗状態へ変化する。すなわち、陽極層3と陰極層5との間に印加する電圧が閾値以下のときに高抵抗状態であって、電圧が閾値以上になると低抵抗状態へ変化し、電圧が再び閾値以下になっても低抵抗状態が維持される。なお、スイッチング層4を薄膜化することにより、駆動電圧となるこの閾値を低下させることができる。
【0046】
以上のように、本実施例のメモリ素子1は、陽極層2と陰極層4との間に単層のスイッチング層3を備え、前記陽極層2と前記スイッチング層3が直接接合され、前記陰極層4と前記スイッチング層3が直接接合されるとともに、前記スイッチング層3は酸化還元活性部位を有する有機高分子からなるものであり、スイッチング層3を湿式法により簡便かつ歩留りの高い工程で製造でき、書き換え可能で高速動作可能な、新規の不揮発性のメモリ素子を提供することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
【0048】
以下の具体的実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0049】
<メモリ素子1の作製>
ガラス基板上にITO層(150nm)が予め形成されている基板(25×25×1mm、旭硝子社製)をスピンコーターに設置した。基板上にポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキソアンモニウム−4−ビニルエーテル)のアセトニトリル溶液を回転数1000回転/秒にて10秒、つづけて6000回転/秒にて60秒スピンコートした後、真空下80℃で2時間乾燥させることで、基板上にポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキソアンモニウム−4−ビニルエーテル)薄膜100nmを作製した。上述のようにITO/ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキソアンモニウム−4−ビニルエーテル)構造が形成された基板を真空蒸着器のチャンバ内の基板ホルダに設置した。チャンバ内の電極に、Alを巻き付けたフィラメントを取り付けた。つぎに、チャンバ内を減圧し、真空度1〜3×10−5Paの範囲にて、蒸着速度5〜7Å/秒、陰極となるアルミニウムを膜厚150nm基板に蒸着させた。蒸着終了後、チャンバ内を大気圧に戻し、基板を取り出した。以上のようにして、ガラス基板上に、ITO(150nm)/ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキソアンモニウム−4−ビニルエーテル)(100nm)/Al(150nm)の構造を有するメモリ素子1が作製された。
【0050】
<電流−電圧特性>
このようにして製造されたメモリ素子1における陽極層と陰極層の間に電圧を印加・掃引すると、所定の閾値電圧において電気伝導率が急激に変化する。具体的には、0Vから負バイアスへ印加電圧を掃引した後に正バイアス印加すると、閾値電圧にて電流値が急激に(2−3桁)上昇する。すなわち、閾値電圧にて高抵抗状態から低抵抗状態に変化し、この低抵抗状態はさらなる負バイアスの電圧を印加するまで永続的に保持される。ここで、正バイアスとは、陰極層に対して陽極層が高電位にある電位状態であり、逆バイアスとは、陽極層に対して陰極層が高電位にある電位状態である。
【0051】
また、本実施例のメモリ素子1は、スイッチング特性を示す。ここで、スイッチング特性とは、低抵抗状態(オン状態)にある素子に負バイアスへ印加電圧を掃引することで、高抵抗状態(オフ状態)とした後、再度正バイアスへ印加電圧を掃引した際に、閾値電圧にて高抵抗状態から低抵抗状態への変化を示す特性である。
【0052】
作製されたメモリ素子1の電極層間に印加される電圧を−5〜5Vの範囲に設定して0.1Vずつ電流−電圧測定を行った結果を図2に示す。負バイアス印加電圧−1.4Vでは電流値は25mAであったが、−1.5V付近を閾値として電流値は緩やかに減少し高抵抗状態へと変化した。つづく正バイアス印加電圧2V付近において、電流値は10−4Aの高抵抗状態にあったが、閾値(2−2.5V)以上の正バイアス電圧において、電流値は10−2Aと10上昇し、低抵抗状態に変化した。またそれ以上の電圧印加では同様の低抵抗状態を維持した。つぎに再度負バイアス電圧を印加したところ、同様の閾値電圧までは低抵抗状態を維持したが、閾値以上の電圧印加により再び高抵抗状態へと変化した。さらなる正バイアス電圧印加では初回の電圧掃引と同様に閾値電圧以上の電圧印加により再び低抵抗状態へと変化した。このことからメモリ素子1は印加電圧を調整することによりオン/オフ状態を繰り返し切り替えることのできる、つまり書き換え可能なメモリ素子であると言える。
【0053】
また、このメモリ素子1は図3に示すように良好な状態保持力を示した。ここでは、消去電圧として設定した閾値(−1.5V)以上の負バイアス電圧を電極間にパルス電圧印加することにより、メモリ素子の状態を高抵抗状態、つまりオフ状態として、読み込み電圧として設定した閾値(2V)以下の正バイアス電圧を電極間にパルス電圧を繰り返し印加することにより永続的な高抵抗状態を評価した。続いて、書き込み電圧として設定した閾値(2V)以上の正バイアス電圧を電極間にパルス電圧印加することにより、メモリ素子の状態を低抵抗状態、つまりオン状態として、上述のように読み込み電圧として設定した正バイアス電圧を電極間にパルス電圧を繰り返し印加することにより永続的な低抵抗状態を評価した。なお、このメモリ素子1の読み込み電圧は1V、消去電圧を−5Vおよび書き込み電圧を5Vとして設定した。図3のように永続的な低抵抗状態および高抵抗状態はオン/オフ比を10桁程度維持したまま数万サイクル以上安定に動作した。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のメモリ素子の一実施例を示す模式図である。
【図2】実施例1において作製したメモリ素子の電流−電圧特性の測定結果を示すグラフである。
【図3】実施例1において作製したメモリ素子の状態保持力の評価結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0055】
3 陽極層
4 スイッチング層
5 陰極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極層と陰極層との間に単層のスイッチング層を備え、前記陽極層と前記スイッチング層が直接接合され、前記陰極層と前記スイッチング層が直接接合されるとともに、前記スイッチング層は酸化還元活性部位を有する有機高分子からなることを特徴とするメモリ素子。
【請求項2】
前記酸化還元活性部位は、オキソアンモニウムカチオン塩であることを特徴とする請求項1記載のメモリ素子。
【請求項3】
前記酸化還元活性部位は、N−オキシルアニオン塩であることを特徴とする請求項1記載のメモリ素子。
【請求項4】
前記酸化還元活性部位は、フェノラートアニオン塩であることを特徴とする請求項1記載のメモリ素子。
【請求項5】
前記酸化還元活性部位は、アミニウムカチオン塩であることを特徴とする請求項1記載のメモリ素子。
【請求項6】
下記の構造式(a)〜(i)(X、Aは対イオン)のいずれかで表される化合物。
【化1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−218283(P2009−218283A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58212(P2008−58212)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】