説明

モノベンズオキサジンに基づく樹脂系液体

本発明は、液体モノベンズオキサジンモノマー及び非−グリシジルエポキシ化合物を含み、ここでモノベンズオキサジンモノマー対非−グリシジルエポキシ化合物の重量比が約25:75〜約60:40の範囲内である液体樹脂系を提供する。液体樹脂系は、低い粘度及び長時間に及ぶ例外的な安定性を示し、多様な複合材料製造方法におけるその使用を高度に有利にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、2009年5月14日に申請された米国特許出願番号第61/178,188号明細書への優先権を請求し、その明細書は引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる。
【0002】
合衆国後援研究又は開発に関する声明
本発明は、米国エネルギー省により裁定された契約番号DE−FG36−07G017012の下に米国政府の支持を得てなされた。かくして米国政府は本発明においてある権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、液体モノベンズオキサジン樹脂及び少なくとも1種の非グリシジルエポキシ化合物を含んでなる高度に安定な低粘度の樹脂系に関する。この樹脂系は、単独で又は他の成分と組み合わせて用いられると、樹脂トランスファー成形樹脂、真空補助樹脂トランスファー成形樹脂、引抜成形樹脂、接着剤、プレプレグ樹脂として、又は他の複合材料製造型用途において有用であることができる。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
繊維強化高分子マトリックス複合材料は、航空機、宇宙、自動車のような多くの構造用途ならびにスポーツ用品用途において用いられている。一般にこれらの高性能複合材料は、マトリックス樹脂中で硬化させた延伸連続炭素繊維を含有する。これらの用途においてガラス繊維又はKevlar(登録商標)繊維を用いることもできる。複合材料用途に用途を見出す多くの型のマトリックスがあるが、エポキシ樹脂は、使用の容易さ、優れた性質及び比較的低いコストのゆえに、市場で優位を占めてきた。
【0005】
もっと最近には、ポリベンズオキサジン樹脂がそれらの優れた物理的及び機械的性質ならびに高い熱安定性の故に、高性能複合材料の製造において用いられてきた。そのようなポリベンズオキサジン樹脂は、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載されている通り、多価フェノール、ホルムアルデヒド及びアミンの反応から得られ得る。そのようなポリベンズオキサジン樹脂の1つの欠点は、それらが室温で固体であり、複合材料製造において、例えば樹脂トランスファー成形(RTM)及び真空補助樹脂トランスファー成形(VaRTM)製造プロセスにおいて用いる時には溶融させなければならないことである。
【0006】
RTM及びVaRTMにおいて、繊維予備成形物は、完成複合製品の形に二次加工され、次いでキャビティー密閉金型(closed cavity mold)中に入れられる。次いで樹脂が金型中に注入され、最初は予備成形物を濡らし、結局それに含浸する。RTMにおいて、樹脂は圧力下で金型中に注入され、次いで硬化して複合材料を与える。VaRTMにおいて、予備成形物は柔軟性シート又はライナーにより覆われ、それは金型上につながれて(clamped)予備成形物を囲いの中に密閉する。次いで樹脂が囲いの中に導入されて予備形成物を濡らし、そして真空ラインを介して囲いの内部に真空が適用されて柔軟性シートを予備成形物に向けて押しつぶし、予備成形物を介して樹脂を引く(draw)。次いで樹脂を真空に供しながら硬化させる。
【0007】
かくしてRTM及びVaRTMシステムの両方において、用いられる樹脂は、予備成形
物の完全な湿潤及び含浸を可能にするために非常に低い注入粘度を有していなければならない。さらに樹脂は、完全に金型を満たし且つ繊維予備成形物に含浸するために十分な時間、そのような低粘度を保持しなければならない。最後に、樹脂は硬化の前に均一でなければならない。これらの要件はRTM及びVaRTMシステムにおけるポリベンズオキサジン樹脂の使用を制限しており、それは、それらが溶融すると所望の粘度より高い粘度を与え、粒子状形態における固体を含有し、且つ約100℃より低い温度で急速に固体形態に戻るからである。
【0008】
特許文献5は、一価フェノール、アルデヒド及びアミンからの液体ベンズオキサジン樹脂の製造ならびに室温で液体としてベンズオキサジン樹脂を適用することが必要である用途におけるその使用を記載している。しかしながら、この液体ベンズオキサジン樹脂はまだ室温で望ましい粘度より高い粘度及び短い可使時間を示し、RTM及びVaRTMシステムにおけるその使用を挑戦的なものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,607,091号明細書
【特許文献2】米国特許第5,152,993号明細書
【特許文献3】米国特許第5,266,695号明細書
【特許文献4】米国特許第5,543,516号明細書
【特許文献5】国際公開第2000/61650号パンフレット
【発明の概要】
【0010】
発明の概略
本発明は:
(a)式(I)
【0011】
【化1】

【0012】
[式中、Rは脂肪族又は芳香族基である]
の液体モノベンズオキサジンモノマー;及び
(b)少なくとも1種の非−グリシジルエポキシ化合物
を含有し、ここで成分(a)対成分(b)の重量比が約25:75〜約60:40の範囲内である液体樹脂系を提供する。
【0013】
液体樹脂系は、室温で500cpsより低い粘度及び長時間に及ぶ例外的な安定性を示し、かくしてRTM及びVaRTMならびに他の複合材料製造法におけるその使用を高度に有利にしている。
【0014】
他の態様に従い、本発明は樹脂トランスファー成形システムにおける複合製品の製造方法に関する。その方法は:a)金型中に繊維予備成形物を与え;b)金型中に本発明の液体樹脂系を注入し、c)液体樹脂系を繊維予備成形物に含浸させ;そしてd)樹脂含浸予備成形物を少なくとも約90℃の温度で少なくとも部分的に硬化した固体製品を形成するのに十分な時間加熱する段階を含む。次いで部分的に硬化した固体製品を後硬化操作に供して最終的な複合製品を形成することができる。
【0015】
別の態様において、本発明は、真空補助樹脂トランスファー成形システムにおける複合製品の製造方法に関する。その方法は、a)金型中に繊維予備成形物を与え;b)金型中に本発明の液体樹脂系を注入し;c)金型内の圧力を下げ;d)大体その減圧に金型を保持し;e)マトリックス樹脂を繊維予備成形物に含浸させ;そしてf)樹脂含浸予備成形物を少なくとも約90℃に温度で少なくとも部分的に硬化した固体製品を生ずるのに十分な時間加熱する段階を含む。次いで部分的に硬化した固体製品を後硬化操作に供して最終的な複合製品を生ずることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な記述
一般的に本発明は:(a)液体モノベンズオキサジンモノマー;及び(b)少なくとも1種の非グリシジルエポキシ化合物を含有し、ここで液体モノベンズオキサジンモノマー(a)対非グリシジルエポキシ樹脂(b)の重量比が約25:75〜約60:40の範囲内である液体樹脂系を提供する。驚くべきことに液体樹脂系は、そのような方法で調製されると、室温で500cpsより低い粘度を示し、かくしてそれを、RTM、VaRTM、引抜成形及びフィラメント加工を含む種々の複合材料製造法における高性能複合材料の製造における使用に高度に適したものとすることが見出された。「室温」により、約20℃〜25℃の温度を意味する。さらに予期に反して、液体樹脂系は長時間に及ぶ保存の間、例外的な安定性を示すことが見出された。最後に、液体樹脂系は硬化すると、例えば高いガラス転移温度(T)、分解温度(T)、高い引張強さ、低い熱膨張率及び優れた柔軟性を含む機械的及び化学的性質の優れたバランスを有する硬化生成物を与える。
【0017】
モノベンズオキサジンモノマー
本発明の液体樹脂系は、液体モノベンズオキサジンモノマーを含む。本明細書で用いられる場合、「モノベンズオキサジンモノマー」という用語は、分子当たりに1個のベンズオキサジン基を有するモノマーを指す。さらに、「液体モノベンズオキサジンモノマー」という用語が用いられる場合、1種もしくはそれより多い液体モノベンズオキサジンモノマーを一緒に使用できることが理解されるべきである。
【0018】
液体モノベンズオキサジンモノマーを一般式(I)
【0019】
【化2】

【0020】
[式中、Rは脂肪族又は芳香族基である]
により示すことができる。1つの態様に従うと、Rはアリル、非置換もしくは置換フェニル、非置換もしくは置換C−Cアルキル基又は非置換もしくは置換C−Cシクロアルキル基である。R−基上の適した置換基には、アミノ、C−Cアルキル及びアリルが含まれる。典型的には、1〜4個の置換基が置換R−基中に存在することができる。好ましくは、Rはフェニルである。
【0021】
液体モノベンズオキサジンモノマーは、水の除去下における一価フェノール化合物、アルデヒド及び第1級アミンの反応により得られ得る。一価フェノール化合物対アルデヒドのモル比は、約1:2〜約1:2.4、好ましくは約1:2.2〜約1:2.35であることができ、フェノール化合物対第1級アミン反応物のモル比は約1:1からであることができる。
【0022】
一価フェノール化合物は、6〜12個の炭素原子、最も好ましくは6個の炭素原子を有することができ、置換されているかもしくは非置換であることができる。好ましくは、置換基は、もし存在するなら、メタ位にある。一価フェノール化合物の例には、フェノール、m−及びp−クレゾール、m−及びp−エチルフェノール、m−及びp−イソプロピルフェノール、m−及びp−メトキシフェノール、m−及びp−エトキシフェノール、m−及びp−イソプロピルオキシフェノール、m−及びp−クロロフェノール、1−及び2−ナフトールならびにそれらの混合物が含まれる。
【0023】
アルデヒドは1〜6個の炭素原子を有することができる。好ましくは、アルデヒドは、水中の溶液としてあるいはホルムアルデヒドに分解されるパラホルムアルデヒドとして入手可能なホルムアルデヒドである。
【0024】
第1級アミンの例には:芳香族モノ−もしくはジ−アミン、脂肪族アミン、環状脂肪族アミン及び複素環式モノアミン;例えばアニリン、o−、m−及びp−フェニレンジアミン、ベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、シクロヘキシルアミン、ブチルアミン、メチルアミン、ヘキシルアミン、アリルアミン、フルフリルアミン、エチレンジアミン及びプロピレンジアミンが含まれる。アミンは、それらのそれぞれの炭素部分においてC−Cアルキル又はアリルにより置換されていることができる。好ましい第1級アミンは一般式RNHに従い、式中、Rはアリル、非置換もしくは置換フェニル、非置換もしくは置換C−Cアルキル又は非置換もしくは置換C−Cシクロアルキルである。R基上の適した置換基にはアミノ、C−Cアルキル及びアリルが含まれる。典型的には、1〜4個の置換基が置換R基上に存在することができる。好ましくは、Rはフェニルである。反応時間は、反応物の濃度、反応性及び温度と共に広く変わり得る。例えば反応時間は、無溶媒反応の場合の数分から希釈された反応の場合の数時間、例えば2〜10時間まで変わり得る。アルデヒドとして水に基づくホルムアルデヒドの溶液が用いられる場合、水混和性有機溶媒を用いることができる。1つもしくはそれより多い反応物が液体である場合、他の反応物を溶解するためにそれを用いることができる。反
応物のすべてが固体である場合、それらを最初に予備混合し、次いで溶融させるか、あるいは最初に溶融させて、次いで予備混合することができる。モノベンズオキサジン及びあまり望ましくない生成物の生成に注目し、次いで望ましい生成物のために温度及び時間を最適化することによる、慣例的な実験により反応の温度を決定することができる。1つの態様に従うと、反応温度は約0℃〜250℃、好ましくは約50℃〜150℃、そしてより好ましくは約80℃〜120℃の範囲であることができる。大気圧又は約100psiまでの圧力においてモノベンズオキサジン合成反応を行うことができる。他の態様に従うと、反応は有機溶媒の存在下で行われる。有機溶媒は芳香族溶媒、例えばトルエン又はキシレン、ジオキサン、ケトン、例えばメチル−イソブチルケトンあるいはアルコール、例えばイソプロパノール、sec−ブタノール又はアミルアルコールであることができる。有機溶媒は、有機溶媒の混合物であることもできる。
【0025】
非グリシジルエポキシ化合物
本発明の液体樹脂系は、少なくとも1種の非グリシジルエポキシ化合物も含む。非グリシジルエポキシ化合物は、構造において直鎖状、分枝鎖状又は環状であることができる。例えばエポキシド基が脂環式もしくは複素環式環系の一部を形成する1種もしくはそれより多いエポキシ化合物が含まれることができる。他のものには、少なくとも1個のケイ素原子を含有する基に直接又は間接的に結合する少なくとも1個のエポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ−含有化合物が含まれる。例は、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる米国特許第5,639,413号明細書に開示されている。さらに他のものには、1個もしくはそれより多いシクロヘキセンオキシド基を含有するエポキシ化合物及び1個もしくはそれより多いシクロペンテンオキシド基を含有するエポキシ化合物が含まれる。
【0026】
特に適した非グリシジルエポキシ化合物には、エポキシド基が脂環式又は複素環式環系の一部を形成する以下の二官能基性非グリシジルエポキシド化合物が含まれる:ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、1,2−ビス(2,3−エポキシシクロペンチルオキシ)エタン、3’,4’−エポキシシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ヘキサンジオエート、ジ(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ヘキサンジオエート、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エタンジオール ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエン ジエポキシド又は2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−1,3−ジオキサン及び2,2’−ビス−(3,4−エポキシ−シクロヘキシル)−プロパン。
【0027】
他の態様に従うと、非グリシジルエポキシ化合物は、3’,4’−エポキシシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、2−(3’,4’−エポキシシクロヘキシル)−5,1”−スピロ−3”,4”−エポキシシクロヘキサン−1,3−ジオキサン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート メチルエステル及びビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートから選ばれる環状脂肪族エポキシ化合物である。
【0028】
本発明の液体樹脂系は既知の方法で、例えば撹拌された容器、撹拌棒、ボールミル、サンプルミキサー(sample mixer)、静置ミキサー又はリボンブレンダー(ribbon blender)のような通常装置を用いて成分を一緒に混合することにより、調製され得る。1つの態様において、液体樹脂系は、液体モノベンズオキサジンモノ
マー対非グリシジルエポキシ樹脂の重量比が約25:75〜約60:40であるようなやり方で調製される。他の態様において、液体樹脂系は、液体モノベンズオキサジンモノマー対非グリシジルエポキシ樹脂の重量比が約35:65〜約57:43であるように調製される。他の態様において、液体樹脂系は、液体モノベンズオキサジンモノマー対非グリシジルエポキシ樹脂の重量比が約45:55〜約55:45であるように調製される。さらに別の態様において、液体樹脂系は、液体モノベンズオキサジンモノマー対非グリシジルエポキシ樹脂の重量比が約50:50であるように調製される。調製されたら、スチール、錫、アルミニウム、プラスチック、ガラス又は板紙容器のような多様な容器中に液体樹脂系を包装することができる。
【0029】
本発明の液体樹脂系を90℃より高い温度で、好ましくは約90℃〜約200℃の温度で熱的に硬化させることにより、易燃性(inflammable)高分子樹脂を得ることができる。かくして他の態様に従い、本発明の液体樹脂系をそれのみで、又は熱硬化性樹脂マトリックスの一部として、難燃化注型品(flame retarded castings)、プレプレグ、積層品又は注入システム(infusion systems)の製造において用いることができる。本明細書で用いられる場合、「難燃化」は、UL 94標準基準V0を満たすことを意味する。
【0030】
1つの態様において、本発明の液体樹脂系は熱硬化性樹脂マトリックスの一部として用いられる。熱硬化性樹脂マトリックスは、熱硬化性樹脂マトリックスの合計重量に基づいて少なくとも約30重量%の本発明の液体樹脂系を含有することができる。他の態様において、熱硬化性樹脂マトリックスは、熱硬化性樹脂マトリックスの合計重量に基づいて少なくとも約50重量%の本発明の液体樹脂系を含有することができる。さらに別の態様において、熱硬化性樹脂マトリックスは、熱硬化性樹脂マトリックスの合計重量に基づいて少なくとも約70重量%の本発明の液体樹脂系を含有することができる。さらに、熱硬化性樹脂マトリックスは、溶媒、触媒、難燃剤及び/又は充填剤の少なくとも1つを含有することができる。
【0031】
熱硬化性樹脂マトリックスにおいて有用な溶媒の例には、メチルエチルケトン、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ペンタノール、ブタノール、ジオキソラン、イソプロパノール、メトキシプロパノール、メトキシプロパノールアセテート、ジメチルホルムアミド、グリコール、グリコールアセテート、トルエン及びキシレンならびにそれらの混合物が含まれる。熱硬化性樹脂マトリックスは、熱硬化性樹脂マトリックスの合計重量に基づいて約5重量%〜30重量%の溶媒を含むことができる。
【0032】
熱硬化性樹脂マトリックスにおいて有用な触媒の例には、チオジプロピオン酸、フェノール、チオジフェノールベンズオキサジン、スルホニルベンズオキサジン、スルホニル及びジフェノールが含まれる。熱硬化性樹脂マトリックスは、熱硬化性樹脂マトリックスの合計重量に基づいて約0.001重量%〜2重量%の触媒を含むことができる。
【0033】
熱硬化性樹脂マトリックスにおいて有用な難燃剤の例にはリン難燃剤、例えばDOPO(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−ホスファフェナントレン−10−オキシド)、Fyroflex(登録商標) PMP難燃剤(その鎖末端においてヒドロキシ基で修飾された反応性有機リン添加物)、CN2645A(Great Lakes Chemical Corp.から入手可能な、ホスフィンオキシドに基づき、フェノール性官能基を含有する材料)、Exolit難燃剤(Clariantから入手可能)、臭素化ポリフェニレンオキシド及びフェロセンが含まれる。熱硬化性樹脂マトリックスは、熱硬化性樹脂マトリックスの合計重量に基づいて約0.1重量%〜50重量%の難燃剤を含むことができる。
【0034】
熱硬化性樹脂マトリックスにおいて有用な充填剤の例には、ポリリン酸アンモニウム、可塑剤、無機及び有機リン含有化合物、中空微小球(micro hollow spheres)及び金属粉が含まれる。熱硬化性樹脂マトリックスは、熱硬化性樹脂マトリックスの合計重量に基づいて約0.001重量%〜10重量%の充填剤を含むことができる。
【0035】
既知の方法で、例えば個々の成分を予備混合し、次いでこれらの予備混合物を混合するか、あるいは通常の装置を用いて成分のすべてを一緒に混合することにより、熱硬化性樹脂マトリックスを調製することができる。
【0036】
上記の通り、液体樹脂系又は熱硬化性樹脂マトリックスを、調製したら基質に適用し、少なくとも90℃の温度で硬化させて難燃化複合製品を形成することができる。RTM及びVaRTMシステムの他に、プレプレグの熱圧、シートモールディングコンパウンド、成形、注型、引抜成形及びフィラメントワインディングを含む難燃化複合製品の製造のための他の方法及びシステムにおいて、液体樹脂系及び熱硬化性樹脂マトリックスを用いることができる。
【0037】
強化繊維の添加により、難燃化複合製品の性質をある用途用に適合させる(tailored)ことができる。強化繊維の例にはガラス、石英、炭素、アルミナ、セラミック、金属、アラミド、天然繊維(例えば亜麻、ジュート、サイザル麻、大麻)、紙、アクリル及びポリエチレン繊維ならびにそれらの混合物が含まれる。強化繊維は種々の型のいずれにあることもでき、例えば連続繊維又は不連続繊維(短繊維)を一方向に平行させることにより形成されるストランド又はロービング、布帛又はマットのような布、ブレード(braids)、一方向性、二方向性、ランダム、擬似等方性もしくは三次元的に分散されたマット様材料、不均質格子(heterogeneous lattice)もしくはメッシュ材料ならびに三軸的織布のような三次元材料として存在することができる。
【0038】
かくして他の態様に従い、樹脂トランスファー成形システムにおける難燃化複合製品の製造方法を提供する。その方法は:a)強化繊維を含んでなる繊維予備成形物を金型中に導入し;b)金型中に本発明の液体樹脂系を注入し、c)液体樹脂系を繊維予備成形物に含浸させ;そしてd)樹脂含浸予備成形物を少なくとも約90℃、好ましくは少なくとも約90℃〜約200℃の温度で少なくとも部分的に硬化した固体製品を生ずるのに十分な時間加熱し;そしてe)場合により、部分的に硬化した固体製品を後硬化操作に供して難燃化複合製品を生ずる段階を含む。
【0039】
他の態様において、樹脂トランスファー成形システムにおける難燃化複合製品の製造方法を提供する。その方法は:a)強化繊維を含んでなる繊維予備成形物を金型中に導入し;b)金型中に本発明の液体樹脂系を含んでなる熱硬化性樹脂マトリックスを注入し、c)熱硬化性樹脂マトリックスを繊維予備成形物に含浸させ;そしてd)樹脂含浸予備成形物を少なくとも約90℃、好ましくは少なくとも約90℃〜約200℃の温度で少なくとも部分的に硬化した固体製品を生ずるのに十分な時間加熱し;そしてe)場合により、部分的に硬化した固体製品を後硬化操作に供して難燃化複合製品を生ずる段階を含む。
【0040】
別の態様において、本発明は、真空補助樹脂トランスファー成形システムにおける難燃化複合製品の製造方法を提供する。その方法は、a)金型中に強化繊維を含んでなる繊維予備成形物を導入し;b)金型中に本発明の液体樹脂系を注入し;c)金型内の圧力を下げ;d)大体その減圧に金型を保持し;e)液体樹脂系を繊維予備成形物に含浸させ;そしてf)樹脂含浸予備成形物を少なくとも約90℃、好ましくは少なくとも約90℃〜約200℃の温度で少なくとも部分的に硬化した固体製品を生ずるのに十分な時間加熱し;
そしてe)場合により、部分的に硬化した固体製品を後硬化操作に供して難燃化複合製品を生ずる段階を含む。
【0041】
さらに別の態様において、本発明は、真空補助樹脂トランスファー成形システムにおける難燃化複合製品の製造方法を提供する。その方法は、a)金型中に強化繊維を含んでなる繊維予備成形物を導入し;b)金型中に本発明の液体樹脂系を含んでなる熱硬化性樹脂マトリックスを注入し;c)金型内の圧力を下げ;d)大体その減圧に金型を保持し;e)熱硬化性樹脂マトリックスを繊維予備成形物に含浸させ;そしてf)樹脂含浸予備成形物を少なくとも約90℃、好ましくは少なくとも約90℃〜約200℃の温度で少なくとも部分的に硬化した固体製品を生ずるのに十分な時間加熱し;そしてe)場合により、部分的に硬化した固体製品を後硬化操作に供して難燃化複合製品を生ずる段階を含む。
【0042】
本発明の液体樹脂系又は熱硬化性樹脂マトリックスは、高い熱安定性が必要である用途において、例えば:通常の自動車、ハイブリッドカー、小ボート(small boats)における電力供給;小規模局地的発電;家庭発電;キャンプ地のような隔離された施設のための単純な電力供給;ならびに衛星、宇宙開発及びコンピューター用の電力供給のために用いられる燃料電池として使用するための複合製品の製造において用いるために特に適している。
【0043】
かくして特別な態様において、液体樹脂系又は熱硬化性樹脂マトリックスをグラファイトに適用し、成形して燃料電池を製造することができる。グラファイト、液体樹脂系又は熱硬化性樹脂マトリックスならびに場合により離型剤、例えばカルナバ蝋、脂肪酸エステル、ステアリン酸又はモンタン酸の金属塩をミキサー中で配合し、混練し、射出成形するか、トランスファー成形するか、又は圧縮成形して燃料電池を製造する。
【0044】
さらに別の態様において、液体樹脂系又は熱硬化性樹脂マトリックスは、硬化すると、120℃より高い、好ましくは160℃より高い、最も好ましくは200℃より高い、そして特別に好ましくは230℃より高いガラス転移温度を有する硬化複合製品を与える。
【実施例】
【0045】
フェノール、ホルムアルデヒド及びアニリンの反応から液体モノベンズオキサジンを製造した。次いで液体モノベンズオキサジンを環状脂肪族エポキシ樹脂と、約45:55〜約55:45の重量比で混合することにより、本発明に従う樹脂系1を調製した。次いで、液体モノベンズオキサジンのみを含有する比較樹脂系2と共に、樹脂系1を室温で長時間保存した。次いで各樹脂系に関する粘度、200℃におけるゲル化時間及び開始温度(onset temperature)を初期及び1ヶ月において測定し、結果を下記の表1に示す:
【0046】
【表1】

【0047】
樹脂系1を注型もし、200℃で2時間硬化させた。硬化した生成物はDSCを介して164℃及びTMAを介して171℃のガラス転移温度を示した。
【0048】
本発明の種々の態様の製造及び使用を上記で詳細に記載してきたが、本発明が多様な特定の状況において具体化され得る多くの適用可能な発明的概念を与えることが認められなければならない。本明細書で議論された特定の態様は、単に本発明の製造及び使用のための特定の方法の例であり、本発明の範囲の限界を定めない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I)
【化1】

[式中、Rはアリル、非置換もしくは置換フェニル、非置換もしくは置換C−Cアルキル基又は非置換もしくは置換C−Cシクロアルキル基である]
の液体モノベンズオキサジンモノマー;及び
(b)少なくとも1種の非グリシジルエポキシ化合物
を含んでなり、ここで成分(a)対成分(b)の重量比が約25:75〜約60:40の範囲内である液体樹脂系。
【請求項2】
Rがフェニルである請求項1に従う液体樹脂系。
【請求項3】
非グリシジルエポキシ化合物が環状脂肪族エポキシ化合物である請求項1に従う液体樹脂系。
【請求項4】
環状脂肪族エポキシ化合物が3’,4’−エポキシシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、2−(3’,4’−エポキシシクロヘキシル)−5,1”−スピロ−3”,4”−エポキシシクロヘキサン−1,3−ジオキサン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート メチルエステル及びビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートから選ばれる請求項3に従う液体樹脂系。
【請求項5】
成分(a)対成分(b)の重量比が約50:50の範囲内である請求項1に従う液体樹脂系。
【請求項6】
液体樹脂系の粘度が室温で500cpsより低い請求項1に従う液体樹脂系。
【請求項7】
a)強化繊維を含んでなる繊維予備成形物を金型中に導入し;b)金型中に請求項1に従う液体樹脂系を含んでなる熱硬化性樹脂マトリックスを注入し、c)熱硬化性樹脂マトリックスを繊維予備成形物に含浸させ;そしてd)樹脂含浸予備成形物を少なくとも約90℃の温度で少なくとも部分的に硬化した固体製品を生ずるのに十分な時間加熱し;そしてe)場合により、部分的に硬化した固体製品を後硬化操作に供して難燃化複合製品を生ずる段階を含んでなる樹脂トランスファー成形システムにおける難燃化複合製品の製造方法。
【請求項8】
a)金型中に強化繊維を含んでなる繊維予備成形物を導入し;b)金型中に請求項1に従う液体樹脂系を含んでなる熱硬化性樹脂マトリックスを注入し;c)金型内の圧力を下げ;d)大体その減圧に金型を保持し;e)熱硬化性樹脂マトリックスを繊維予備成形物に含浸させ;そしてf)樹脂含浸予備成形物を少なくとも約90℃の温度で少なくとも部分的に硬化した固体製品を生ずるのに十分な時間加熱し;そしてe)場合により、部分的
に硬化した固体製品を後硬化操作に供して難燃化複合製品を生ずる段階を含んでなる真空補助樹脂トランスファー成形システムにおける難燃化複合製品の製造方法。
【請求項9】
請求項1に従う液体樹脂系を含んでなる熱硬化性樹脂混合物を約90℃より高い温度で熱的に硬化させることを含んでなる難燃化複合製品の製造方法。
【請求項10】
請求項9の方法に従って製造される難燃化複合製品。
【請求項11】
熱硬化性樹脂マトリックスの合計重量に基づいて少なくとも30重量%の請求項1に従う液体樹脂系ならびに溶媒、触媒、難燃剤及び/又は充填剤の少なくとも1つを含んでなる熱硬化性樹脂マトリックス。
【請求項12】
(a)一価フェノール化合物、アルデヒド及び第1級アミンの反応により得られ、ここで一価フェノール化合物対アルデヒドのモル比は約1:22〜約1:2.35であり、一価フェノール化合物対第1級アミンのモル比は約1:1からである液体モノベンズオキサジンモノマー;
(b)少なくとも1種の非グリシジルエポキシ化合物
を含んでなり、ここで成分(a)対成分(b)の重量比が約25:75〜約60:40の範囲内である液体樹脂系。
【請求項13】
一価フェノール化合物がフェノール、m−及びp−クレゾール、m−及びp−エチルフェノール、m−及びp−イソプロピルフェノール、m−及びp−メトキシフェノール、m−及びp−エトキシフェノール、m−及びp−イソプロピルオキシフェノール、m−及びp−クロロフェノール、1−及び2−ナフトール又はそれらの混合物である請求項12に従う液体樹脂系。
【請求項14】
第1級アミンが式RNHのアミンであり、式中、Rはアリル、非置換もしくは置換フェニル、非置換もしくは置換C−Cアルキル又は非置換もしくは置換C−Cシクロアルキルである請求項13に従う液体樹脂系。
【請求項15】
有機溶媒の存在下で反応を行う請求項12に従う液体樹脂系。
【請求項16】
有機溶媒がトルエン、キシレン、ジオキサン、メチル−イソブチルケトン、イソプロパノール、sec−ブタノール又はアミルアルコールである請求項15に従う液体樹脂系。

【公表番号】特表2012−526911(P2012−526911A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511042(P2012−511042)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/034900
【国際公開番号】WO2010/132772
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(509282365)ハンツマン・アドバンスド・マテリアルズ・アメリカズ・エルエルシー (7)
【Fターム(参考)】