説明

モーター制御装置、ロボットハンド、ロボット及びモーター制御方法

【課題】回転軸の速度制御をしながらトルク限定値を超えないトルクで回転させるモーターの制御装置を提供する。
【解決手段】モーター5の回転軸5aの回転状況を検出する回転検出器19が出力する角度データ信号24及び回転速度信号29を用いてモーター5を制御する。回転軸5aの速度指令27と回転速度信号29とを用いて回転軸5aの回転速度と速度指令27との差に対応するトルク指令信号37を出力する速度制御部31と、回転軸5aに加えるトルクの最大値を示すトルク限定値を設定する限定値設定部46と、トルク指令信号37により駆動される回転軸5aのトルクをトルク限定値以下に制限するトルク限定制御部38と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モーター制御装置、ロボットハンド、ロボット及びモーター制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロボットや工作機械にサーボモーターを用いて可動部の停止位置を制御する方法が広く活用されている。そして、ロボットハンドが把持対象物を把持するときや、穴に部材を挿入するときには可動部が予定の位置に到達するまえに可動部が移動できなくなることがある。このとき、モーターにトルクリミットを設定して、可動部を制御する方式が特許文献1に開示されている。それによると、この制御方式は複数のトルクリミット値を記憶する記憶手段を備え、駆動するモーターや可動部が行う作業内容毎にトルクリミット値を切り換えていた。
【0003】
また、モーターの回転中にトルクを急変させずに回転速度の制御性能を向上させる方法が特許文献2に開示されている。それによると、モーターの速度制御は、速度指令値と速度検出値との偏差を比例・積分調節器からなる速度調節器により増幅してトルク指令値を演算する。そして、実際のトルクがトルク指令値に一致するようにモーターの電流を制御する方法をとっていた。ここで、速度調節器の最適調整は、慣性モーメントの値に基づいて実施されている。さらに、トルクフィードフォワード補償器が慣性モーメントの値と速度指令値とを用いてトルクフィードフォワード補償値を演算する。そして、加算器が速度調節器の出力とトルクフィードフォワード補償値とを加算してトルク指令値を演算していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−6210号公報
【特許文献2】特開2011−147268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロボットハンドが把持対象物を把持するとき、まず、制御装置はロボットハンドの可動部を把持対象物に接近させた後、接触させる。続いて、可動部を把持対象物に押圧する状態を維持する。可動部を把持対象物に接近させるとき制御装置はモーターを速度制御する。そして、可動部が把持対象物に接触した後、制御装置はモーターの制御をトルク制御に切り換える。そして、把持対象物を把持可能な力で可動部が把持対象物を押圧できるようにモーターのトルクを制御する。このとき、制御装置はモーターを制御しながら、状況に応じてモーターのトルクを自在に制御することにより把持することが可能となる。
【0006】
モーターの制御を速度制御からトルク制御に切り換えるとき、これまでは速度制御を行う制御回路からトルク制御を行う制御回路に切り換える方法をとっていた。このとき、制御系統を切り換えるために、可動部の動作を一旦停止させる必要があった。そこで、一旦停止せずに、ロボットハンドが把持対象物を把持する方法が望まれていた。つまり、回転軸が回転しているときにも停止しているときにも速度制御しながら設定されたトルク限定値を超えないトルクで回転軸が動作するモーターの制御装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例にかかるモーター制御装置は、モーターの回転軸の回転状況を検出する回転検出器が出力する回転検出信号を用いて前記モーターを制御するモーター制御装置であって、前記回転軸の目標回転速度と前記回転検出信号とを用いて前記回転軸の回転速度と前記目標回転速度との差に対応するトルク指令信号を出力する速度制御部と、前記回転軸に加えるトルクの最大値を示すトルク限定値を設定する限定値設定部と、前記トルク指令信号により駆動される前記回転軸のトルクを前記トルク限定値以下に制限するトルク限定制御部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、モーターには回転検出器が設置され、回転検出器がモーターの回転軸の回転状況を検出し回転検出信号を出力する。速度制御部は回転検出信号を入力し、回転軸の目標回転速度と回転検出信号が示す回転速度とを比較する。そして、速度制御部は、目標回転速度と回転検出信号が示す回転速度とを比較してトルク指令信号を出力する速度制御を行う。目標回転速度と回転検出信号が示す回転速度との差が大きい程大きなトルクを回転軸に加えるように速度制御部はトルク指令信号を出力する。
【0010】
限定値設定部は回転軸に加えるトルクの最大値であるトルク限定値を設定し、トルク限定制御部に出力する。トルク限定制御部はトルク指令信号により駆動される回転軸のトルクとトルク限定値とを比較する。そして、トルク指令信号により駆動される回転軸のトルクがトルク限定値を超えるとき、トルク指令信号により駆動される回転軸のトルクがトルク限定値を超えないようにトルク限定制御部はトルク指令信号を変更する。
【0011】
従って、回転軸が回転しているときにも停止しているときにも速度制御を行いつつ限定値設定部が設定したトルク限定値を超えないトルクで回転軸が動作する。その結果、モーターに要求されるトルクに応じたトルクで回転軸の速度を制御することができる。
【0012】
[適用例2]
上記適用例にかかるモーター制御装置において、前記トルク限定制御部は、前記トルク指令信号により前記回転軸に加わるトルクが前記トルク限定値を超える量のトルクを示す信号である超過トルク信号を前記トルク指令信号から減算することを特徴とする。
【0013】
本適用例によれば、トルク指令信号により回転軸に加わるトルクがトルク限定値を超えるとき、トルク限定制御部がトルク指令信号から超過トルク信号を減算してトルク指令信号を変更する。超過トルク信号はトルク指令信号により回転軸に加わるトルクがトルク限定値を超える量のトルクを示す信号である。従って、減算されたトルク指令信号により駆動される回転軸のトルクがトルク限定値を超えないように回転軸を制御することができる。
【0014】
[適用例3]
上記適用例にかかるモーター制御装置において、前記限定値設定部には前記トルク限定値を変更する判断をするための速度判定値が設定され、前記限定値設定部は前記回転検出信号を用いて前記回転軸の回転速度を検出し、前記限定値設定部は、前記回転軸の回転速度が前記速度判定値より低いときに前記トルク限定値を変更することを特徴とする。
【0015】
本適用例によれば、限定値設定部は回転検出信号を入力する。そして、回転軸の回転速度が速度判定値より低下するときにトルク限定値を変更する。従って、モーター制御装置は、回転軸が低速または停止した状態で回転軸をトルク限定値に相当するトルクで駆動することができる。
【0016】
[適用例4]
上記適用例にかかるモーター制御装置において、前記限定値設定部には前記トルク限定値を変更する判断をするための速度判定値が設定され、前記限定値設定部は前記トルク指令信号を入力し、前記目標回転速度が前記速度判定値より小さく且つ前記トルク指令信号がトルク判定値を超えるときに前記限定値設定部は前記トルク限定値を変更することを特徴とする。
【0017】
本適用例によれば、限定値設定部はトルク指令信号を入力する。回転軸の回転速度が目標回転速度より遅くなり差が大きくなる程、トルク指令信号は回転軸のトルクを大きくする信号を出力する。つまり、限定値設定部はトルク指令信号を用いて回転軸が低速または停止した状態であることを検出することができる。そして、限定値設定部は速度判定値より低下するときにトルク限定値を変更する。従って、モーター制御装置は、回転軸が低速または停止した状態で回転軸をトルク限定値に相当するトルクで駆動することができる。
【0018】
[適用例5]
上記適用例にかかるモーター制御装置において、前記限定値設定部は、前記回転軸の回転速度が前記目標回転速度に達した後に、トルク限定値を下げることを特徴とする。
【0019】
本適用例によれば、回転軸が加速されて回転速度が上昇する。そして回転軸の回転速度が目標回転速度に達した後に、限定値設定部はトルク限定値を下げている。回転速度が目標回転速度に達した後では回転速度を維持するのに必要なトルクを加えるので加速するときに比べて低いトルクとなる。従って、トルク限定値を下げても回転速度を維持することができる。その結果、回転軸を停止させる外力が加わるとき、モーター制御装置は外力に対抗して回転軸を駆動することなく外力に応じた動作をすることができる。
【0020】
[適用例6]
上記適用例にかかるモーター制御装置において、前記速度制御部は、前記回転速度に比例する第1トルク指令信号を出力する速度比例制御部と、前記回転速度の積分値に比例する第2トルク指令信号を出力する速度積分制御部と、前記第1トルク指令信号の値と前記第2トルク指令信号の値とを加算して前記トルク指令信号を出力する加算器と、を有し、前記トルク指令信号の値が前記トルク限定値に達した後に、前記トルク限定制御部は前記速度積分制御部に積分演算を停止させ前記第2トルク指令信号の値を保持させることを特徴とする。
【0021】
本適用例によれば、速度制御部は速度比例制御部と速度積分制御部と加算器とを備えている。速度比例制御部は回転速度に比例する第1トルク指令信号を出力し、速度積分制御部は回転速度の積分値に比例する第2トルク指令信号を出力する。加算器は第1トルク指令信号と第2トルク指令信号とを加算してトルク指令信号を出力する。つまり、速度制御部はPI(Proportional Integral)制御を行っているので精度良くモーターを制御できる。そして、トルク指令信号がトルク限定値になるとき、トルク限定制御部は速度積分制御部に積分演算を停止させている。従って、第2トルク指令信号が大きくなるのを防止することができる。その結果、トルク指令信号がトルク限定値より小さくなるとき、回転速度に追従した制御を行うことができる。
【0022】
[適用例7]
上記適用例にかかるモーター制御装置において、前記回転検出器が検出する前記回転軸の前記回転状況は回転速度であることを特徴とする。
【0023】
本適用例によれば、回転検出器は回転速度を検出する。従って、回転軸の回転速度に応じたトルク制御を容易に行うことができる。
【0024】
[適用例8]
本適用例にかかるロボットハンドは、可動部と、前記可動部を駆動するモーターと、前記モーターを制御する制御部と、を備え、前記制御部は前記モーターを制御するモーター制御部を有し、前記モーター制御部は上記のいずれか一項に記載のモーター制御装置を有することを特徴とする。
【0025】
本適用例によれば、ロボットハンドは可動部及びモーターを備えている。そして、モーターの回転軸を回転させることにより可動部を移動させている。さらに、ロボットハンドは制御部を備えている。制御部はモーター制御部を有し、モーター制御部はモーターの回転角度や回転速度を制御する。そして、制御部が駆動部を制御することにより可動部の動作を制御している。
【0026】
モーター制御部は上記に記載のモーター制御装置を有している。従って、回転軸が回転しているときにも停止しているときにもモーターに要求されるトルクに応じたトルクで回転軸を駆動することができる。その結果、可動部が移動して停止するときにも所定の力を維持して可動部を駆動することができる。
【0027】
[適用例9]
上記適用例にかかるロボットハンドにおいて、前記可動部は把持対象物を挟む第1可動部と第2可動部とを有し、前記第1可動部と前記第2可動部との間隔が前記把持対象物の幅より狭い間隔となるように前記制御部が前記第1可動部と前記第2可動部とを移動させる制御動作を実行することを特徴とする。
【0028】
本適用例によれば、ロボットハンドは第1可動部と第2可動部との可動部を有しており、可動部は把持対象物を挟むことができる。そして、制御部は第1可動部と第2可動部との幅が把持対象物の幅より狭くなるように動作する。従って、第1可動部と第2可動部との間に把持対象物があるときには第1可動部と第2可動部とが把持対象物を挟む。可動部が把持対象物を挟んだ後、回転軸のトルクは下がることなく上昇させることができる。従って、可動部を移動させる動作から把持対象物を挟む動作に続けて移行することができる。可動部が移動対象に接近するためにモーター制御部は回転軸のトルクをトルク限定値まで上昇させる。このとき、回転軸のトルクは徐々に上昇させることができるので、把持対象物に急激に力を加えて損傷を与えるのを防止することができる。さらに、把持対象物が第1可動部と第2可動部との間から外れるとき、第1可動部と第2可動部との間隔が把持対象物の幅より狭い間隔となる場所で停止する。従って、第1可動部と第2可動部とが衝突することを防止することができる。
【0029】
[適用例10]
本適用例にかかるロボットは、ロボットハンドを備えたロボットであって、前記ロボットハンドに上記のいずれか一項に記載のロボットハンドが用いられていることを特徴とする。
【0030】
本適用例によれば、ロボットは上記に記載のロボットハンドを備えている。従って、ロボットが備えるロボットハンドは可動部が移動して停止するときにも所定の力を維持して可動部を駆動することができる。
【0031】
[適用例11]
本適用例にかかるモーター制御方法は、モーターの回転軸の回転を制御するモーター制御方法であって、前記回転軸を回転させる回転速度の目標値である目標回転速度と前記回転軸に加えるトルクの最大値を示すトルク限定値とを設定し、前記回転速度を検出して前記回転速度と前記目標回転速度との差に対応するトルク指令信号を出力し、前記トルク指令信号により前記回転軸に加わるトルクが前記トルク限定値を超える量のトルクを示す信号である超過トルク信号を前記トルク指令信号から減算し、減算した後の前記トルク指令信号のトルクで前記モーターを駆動することを特徴とする。
【0032】
本適用例によれば、目標回転速度とトルク限定値とを設定している。そして、回転速度を検出して回転速度と目標回転速度との差に対応するトルク指令信号を出力する。つまり、回転速度と目標回転速度との差が大きい程高いトルクを出力するトルク指令信号を出力している。これにより、回転速度が目標回転速度に到達するように制御される。
【0033】
そして、超過トルク信号をトルク指令信号から減算している。これにより、トルク指令信号により駆動される回転軸のトルクがトルク限定値を超えないようにトルク指令信号が変更される。従って、回転軸が回転しているときにも停止しているときにも速度制御を行いつつトルク限定値を超えないトルクで回転軸が動作するように制御される。その結果、トルク限定値を超えないトルクで回転軸の速度を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】第1の実施形態にかかわり、(a)は、ロボットハンドの構成を示す模式平面図、(b)は、ロボットハンドの構成を示す模式側面図、(c)はロボットハンドの指部を示す要部模式拡大図。
【図2】制御装置の構成を示すブロック図。
【図3】ロボットハンドの把持作業を示すフローチャート。
【図4】把持作業における把持方法を説明するためのタイムチャート。
【図5】積分制御部の出力を説明するためのタイムチャート。
【図6】把持作業における把持方法を説明するためのタイムチャート。
【図7】第2の実施形態にかかわる制御装置の構成を示すブロック図。
【図8】第3の実施形態にかかわり、(a)は、ロボットハンドの構成を示す模式平面図、(b)は、ロボットハンドの指部を示す要部模式拡大図。
【図9】ロボットハンドを備えたロボットの構成を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(第1の実施形態)
本実施形態では、モーター制御装置と、このモーター制御装置を用いたロボットハンドの特徴的な例について、図1〜図6に従って説明する。
(ロボットハンド)
図1(a)は、ロボットハンドの構成を示す模式平面図であり、図1(b)は、ロボットハンドの構成を示す模式側面図である。図1(c)はロボットハンドの指部を示す要部模式拡大図である。図1(a)及び図1(b)に示すように、ロボットハンド1は直方体状のハンド本体2を備えている。ハンド本体2の長手方向をY方向とし、Y方向と直交する方向をX方向とする。そして、X方向及びY方向と直交するハンド本体2の厚み方向をZ方向とする。
【0036】
ハンド本体2の−X側の面においてハンド本体2は腕部3と接続し、腕部3は図示しないロボット本体と接続されている。ハンド本体2のX方向且つY方向の角にはX方向に延在する固定指部4が設置されている。固定指部4は角柱状であり、中央にて折れ曲がった形状となっている。固定指部4の先端部4aはXY平面視で円弧状となっている。
【0037】
ハンド本体2のX方向且つ−Y方向の角にはモーター5が設置されている。モーター5の回転軸5aはモーター5のZ方向及び−Z方向に突出している。モーター5の−Z方向にはエンコーダー6が設置され、エンコーダー6は回転軸5aの回転角度に応じた信号を出力する。
【0038】
モーター5のZ方向には減速装置7が設置されている。回転軸5aの一端は減速装置7に挿入されている。そして、減速装置7のZ方向には出力軸7aが設置され、減速装置7は回転軸5aの回転速度を減速した回転速度にて出力軸7aを回転させる。この出力軸7aは可動部及び第1可動部としての可動指8と接続されている。
【0039】
可動指8は凹部8aを備え、凹部8aにモーター5、エンコーダー6及び減速装置7が位置している。凹部8aには出力軸7aの中心軸を同じく中心軸とする回転軸8bが設置されている。そして、エンコーダー6の−Z方向には回転軸8bを受ける軸受け9が設置されている。これにより、可動指8はハンド本体2と回転可能に設置されている。そして、モーター5が回転するとき可動指8は出力軸7a及び回転軸8bを中心として回転する。
【0040】
可動指8は固定指部4と同様に角柱状であり、中央にて折れ曲がった形状となっている。可動指8の先端部8cは先端部4aと同様にXY平面視で円弧状となっている。そして、モーター5が可動指8を回転させるとき、先端部8cは先端部4aと接触するようになっている。先端部4aと先端部8cとの間に把持対象物10をおいて先端部8cが先端部4aに接触させるように回転軸5aを回転させる。このとき、ロボットハンド1は先端部4aと先端部8cを把持対象物10に押圧することにより把持対象物10を把持することができる。
【0041】
ロボットハンド1は制御装置11を備え、制御装置11にはモーター5の回転と停止を制御するモーター制御装置12が配線13により接続されている。そして、制御装置11はモーター制御装置12にモーター5を駆動させて可動指8を開閉するようになっている。
【0042】
図1(c)に示すように、ロボットハンド1は把持対象物10を固定指部4と可動指8とで挟んで把持する。固定指部4と可動指8とが把持対象物10と接触する場所を通る方向の把持対象物10の幅を把持対象物幅10aとする。そして、可動指8の移動目標場所14を図中2点鎖線にて示す。制御装置11は可動指8が移動目標場所14に移動するようにモーター制御装置12にモーター5を駆動させる。
【0043】
固定指部4と移動目標場所14との間隔を目標間隔15とする。このとき、目標間隔15は把持対象物幅10aより狭い間隔となっている。これにより、可動指8は移動目標場所14に到達するまえに把持対象物10と接触する。従って、制御装置11がモーター制御装置12にモーター5を駆動する指示を変更するまで固定指部4と可動指8とで把持対象物10を押圧して把持することができる。
【0044】
(モーター制御装置)
図2は制御装置の構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置11はモーター制御装置12の他に統合制御部16、速度検出部17、角度検出部18を有している。統合制御部16はロボットハンド1のモーター5に加えて他のモーターも制御する機能を備えている。そして、各モーターが駆動する可動部を統合して管理する。速度検出部17はエンコーダー6が出力する信号を入力して回転軸5aの回転速度を検出する機能を備えている。エンコーダー6からは回転軸5aの回転角度に応じたパルス信号が出力される。エンコーダー6の分解能は特に限定されないが、例えば本実施形態では、回転軸5aが0.1度回転する毎の1つのパルス信号が出力される。速度検出部17はパルス信号の間隔の時間を計測することにより回転軸5aの回転速度を検出する。
【0045】
角度検出部18はエンコーダー6が出力する信号を入力して回転軸5aの回転角度を検出する機能を備えている。角度検出部18はパルス信号の入力数を積算することにより回転軸5aの回転角度を検出する。尚、エンコーダー6、速度検出部17及び角度検出部18等により回転検出器19が構成されている。
【0046】
モーター制御装置12は第1加算器22を備えている。統合制御部16は第1加算器22に目標とするモーター5の回転角度を示す角度指令23を出力する。この角度指令23は可動指8が移動目標場所14に到着したときの回転軸5aの回転角度を示している。さらに、角度検出部18は回転軸5aの角度を示す角度データ信号24を第1加算器22に出力する。第1加算器22は角度指令23から角度データ信号24を減算した動作角度信号25を演算する。そして、可動指8が移動目標場所14に到着するまでに回転軸5aを回転させる角度である動作角度信号25を出力する。
【0047】
第1加算器22と接続して位置制御部26が配置され、位置制御部26には動作角度信号25が入力される。位置制御部26は動作角度信号25を用いて速度指令27を演算して出力する。速度指令27は動作角度信号25が示す回転軸5aの回転角度を判定角度と比較する。そして、回転角度が判定角度より大きいとき速度指令27を最大速度に設定して出力する。回転角度が判定角度より小さいときには速度指令27を回転角度に応じた速度に設定して出力する。つまり、回転角度が大きいときには高速回転させる速度指令27を出力し、回転角度が小さいときには低速回転させる速度指令27を出力する。この速度指令27は回転軸5aの目標回転速度を示している。
【0048】
位置制御部26と接続して第2加算器28が配置され、第2加算器28には速度指令27が入力される。さらに、第2加算器28には速度検出部17が接続され、速度検出部17が出力する回転検出信号としての回転速度信号29が第2加算器28に入力される。回転速度信号29は、エンコーダー6と速度検出部17とが検出した回転軸5aの回転速度のデータである。
【0049】
第2加算器28は速度指令27から回転速度信号29が示す回転速度を減算して速度差信号30を出力する。速度差信号30は速度指令27に対する回転軸5aの回転速度の差である。速度指令27が示す回転方向に回転軸5aが回転しているとき、回転軸5aの回転速度より速度指令27が大きいときには速度差信号30は正の値を示す。回転軸5aの回転速度より速度指令27が小さいときには速度差信号30は負の値を示す。
【0050】
第2加算器28と接続して、速度制御部31が配置されている。速度制御部31は比例制御部32、積分制御部33及び第3加算器34を備えている。比例制御部32及び積分制御部33は第2加算器28と接続され、さらに、第3加算器34と接続されている。比例制御部32には第2加算器28から速度差信号30が入力される。比例制御部32は速度差信号30に所定の定数を乗算した第1トルク信号35を演算して第3加算器34に出力する。積分制御部33にも第2加算器28から速度差信号30が入力される。積分制御部33は速度差信号30を時間軸にて積分した値に所定の定数を乗算した第2トルク指令信号としての第2トルク信号36を演算して第3加算器34に出力する。
【0051】
第3加算器34は第1トルク信号35と第2トルク信号36とを加算してトルク指令信号37を出力する。第2加算器28及び速度制御部31は回転速度信号29が速度指令27に近づくようにPI(Proportional Integral)制御を行う構成となっている。つまり、比例制御部32は速度差信号30に比例した第1トルク信号35を出力することにより回転速度信号29を速度指令27に近づけている。そして、積分制御部33は第1トルク信号35によって回転軸5aが駆動されるときに生じるオフセットを解消するようにモーター5を制御する。
【0052】
第3加算器34と接続してトルク限定制御部38が配置され、トルク限定制御部38にはトルク指令信号37が入力される。トルク限定制御部38はトルク限定値を記憶しており、トルク限定制御部38はトルク限定値とトルク指令信号37とを比較する。そして、トルク指令信号37がトルク限定値を超えるとき、トルク限定制御部38はトルク指令信号37からトルク限定値を減算した量に相当する超過トルク信号としての帰還トルク信号39を第3加算器34に出力する。第3加算器34は第1トルク信号35と第2トルク信号36とを加算し帰還トルク信号39を減算してトルク指令信号37とする。従って、トルク指令信号37はトルク限定値を超えないようになっている。
【0053】
さらに、トルク限定制御部38は積分制御部33に積分停止信号43を出力する。積分制御部33は積分停止信号43を入力すると速度差信号30を積分する演算を停止する。そして、第2トルク信号36を増加させずに維持する。速度差信号30が出力されているのに回転軸5aが回転できないとき、第2トルク信号36を維持する。これにより、回転軸5aが再回転するときに統合制御部16はモーター制御装置12にPI制御を正常に動作させることができる。
【0054】
トルク限定制御部38と接続してモーター駆動部44が接続されている。そして、モーター駆動部44はトルク限定制御部38からトルク指令信号37を入力しモーター5に駆動信号45を出力する。モーター駆動部44はパワートランジスター等を備えており、モーター駆動部44が出力する駆動信号45はモーター5を駆動するのに充分な電力となっている。
【0055】
統合制御部16、速度検出部17及びトルク限定制御部38と接続して限定値設定部46が配置されている。統合制御部16は限定値設定部46に回転軸5aの状態に応じたトルク限定値等を含むトルク限定信号47を出力する。限定値設定部46はメモリー等の記憶部を有し、回転軸5aの状態に応じたトルク限定値のデータを記憶する。回転軸5aの状態は、例えば、加速回転時、高速での一定速度回転時、減速回転時、停止時の状態が含まれている。
【0056】
限定値設定部46は速度検出部17から回転速度信号29を入力する。そして、回転軸5aの回転状態を判断して回転軸5aの各回転状態に応じた限定トルク設定信号48をトルク限定制御部38に出力する。トルク限定制御部38は限定トルク設定信号48を入力してトルク限定値を設定する。
【0057】
位置制御部26は速度指令27を演算するとき、加速回転、減速回転のどのモードに該当するかを認識する。そして、モードが切り替わるとき位置制御部26は加速回転、減速回転のどのモードに切り替わるかを伝達するモード信号49を限定値設定部46に出力する。そして、限定値設定部46は位置制御部26が切り換えるモードに対応してトルク限定値を設定することが可能になっている。
【0058】
統合制御部16は角度データ信号24、回転速度信号29及び積分停止信号43を入力している。これにより、統合制御部16は回転軸5aが回転中か停止しているかを認識する。さらに、回転軸5aが回転しているときには回転軸5aの回転角度や回転速度を認識することができる。統合制御部16はトルク限定制御部38から積分停止信号43を入力する。統合制御部16は積分停止信号43を用いてトルク指令信号37がトルク限定値に達しているかを認識することができる。
【0059】
次に、上述したロボットハンド1を用いて、把持対象物10を把持する方法について図3〜図6にて説明する。図3は、ロボットハンドの把持作業を示すフローチャートである。図4〜図6は、把持作業における把持方法を説明するためのタイムチャートである。
【0060】
(モーターの駆動方法)
図3に示すフローチャートにおいて、ステップS1は、初期設定工程に相当する。この工程は、モーターの設定を初期値に設定する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は、接近移動工程に相当する。この工程は、可動指を移動させて把持対象物に接近させる工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は接触判定工程に相当する。この工程は、可動指が把持対象物に接触したか否かを判定する工程である。可動指が把持対象物に接触していないと判定したときにはステップS2に移行する。可動指が把持対象物に接触したと判定したときにはステップS4に移行する。ステップS4は加圧工程に相当する。この工程は、可動指に把持対象物を押圧させる工程である。次にステップS5に移行する。
【0061】
ステップS5は、トルク判定工程に相当する。この工程は、トルク指令信号がトルク限定値に達したかを判断する工程である。トルク指令信号がトルク限定値に達しないときステップS4に移行する。トルク指令信号がトルク限定値に達したときステップS6に移行する。ステップS6は、積分停止指示工程に相当する。この工程は、積分制御部が積分の演算を停止するようにトルク限定制御部が積分制御部に積分停止信号を出力する工程である。次に、ステップS7に移行する。ステップS7は、把持工程に相当する。この工程は、可動指が把持対象物を押圧する状態を維持する工程である。次にステップS8に移行する。ステップS8は、離反移動工程に相当する。この工程は、可動指が把持対象物から離れる方向に移動する工程である。以上の工程によりロボットハンドの把持作業が終了する。
【0062】
次に、図4〜図6を用いて、図3に示したステップと対応させて、ロボットハンドの把持作業におけるモーターの制御を詳細に説明する。図4に示すタイムチャートは図4(a)〜図4(e)の5つのタイムチャートにより構成されている。各段のタイムチャートにおいて横軸は時間の推移を示しており、ステップS1〜ステップS8の順に推移する。
【0063】
図4(a)におけるタイムチャートの縦軸は指部の位置を示し、図中上側は把持対象物に接近する方向を示している。そして、指部推移線51は可動指8の先端部8cの位置を示している。可動指8の回転軸8bは減速装置7を介してモーター5の回転軸5aと接続されているので、指部推移線51は回転軸5aの回転角度と略同じ推移となっている。指部目標推移線52は統合制御部16が指示する先端部8cの移動目標位置である。従って、指部推移線51は指部目標推移線52の示す位置に向かって移動するように制御される。
【0064】
図4(b)におけるタイムチャートの縦軸はモーターの回転軸を駆動する速度指令を示している。図中速度が0となる線の上側は可動指8が把持対象物10に接近するように移動させるために回転軸5aが回転するときの速度を示し、上側は下側より高い速度を示す。そして、図中速度が0となる線の下側は可動指8が把持対象物10から離れるように回転軸5aが回転するときの速度を示し、下側は上側より高い速度を示す。そして、速度指令推移線53は位置制御部26が出力する速度指令27の推移を示している。尚、速度指令27は回転軸5aの目標回転速度を示す信号となっている。
【0065】
図4(c)におけるタイムチャートの縦軸は回転軸を駆動するトルク指令を示している。図中トルクが0となる線の上側は可動指8が把持対象物10に接近するように移動させるために回転軸5aを回転させるときのトルクを示し、上側は下側より高いトルクを示す。そして、図中トルクが0となる線の下側は可動指8が把持対象物10から離れるように回転軸5aを回転させるときのトルクを示し、下側は上側より高いトルクを示す。そして、トルク指令推移線54はトルク限定制御部38がモーター駆動部44に出力するトルク指令信号37の推移を示している。
【0066】
図4(d)におけるタイムチャートの縦軸は回転軸を駆動するトルクのトルク限定値を示している。図中上側は下側より高いトルクを示す。そして、トルク限定値推移線55は限定値設定部46がトルク限定制御部38に出力する限定トルク設定信号48の推移を示している。
【0067】
図4(e)におけるタイムチャートの縦軸は回転軸の回転速度を示している。図中速度が0となる線の上側は可動指8が把持対象物10に接近するように移動させるために回転軸5aが回転するときの速度を示し、上側は下側より高い速度を示す。そして、図中速度が0となる線の下側は可動指8が把持対象物10から離れるように回転軸5aを回転するときの速度を示し、下側は上側より高い速度を示す。そして、回転速度推移線56は回転軸5aが回転する速度の推移を示している。速度判定値としての接触判定速度57は、可動指8が把持対象物10に接触したか否かを判定するときに用いる速度を示している。
【0068】
図4においてステップS1の初期設定工程では統合制御部16が制御に用いるパラメーターを初期値に設定する。つまり、可動指8を動作させるための準備を行う。例えば、統合制御部16が角度指令23やトルク限定値を出力するための準備をする。
【0069】
ステップS2の接近移動工程では、統合制御部16が可動指8を移動目標場所14に移動するようにモーター制御装置12に指示を出力する。これにより、指部目標推移線52は把持対象物10の方に移動する。具体的には統合制御部16が第1加算器22に角度指令23を出力する。これにより、角度検出部18が出力する角度データ信号24と角度指令23とに差が生じるので第1加算器22は指部目標推移線52の変化に対応する動作角度信号25を位置制御部26に出力する。
【0070】
位置制御部26は動作角度信号25に対応する速度指令27を演算して第2加算器28に出力する。これにより速度指令推移線53が示すように速度指令27は高い速度に設定される。第2加算器28は速度指令27と回転速度信号29との差に相当する速度差信号30を速度制御部31に出力する。速度制御部31は速度差信号30が大きい速度差を示す信号となっているのでトルク指令推移線54が示すような高いトルク指令信号37をトルク限定制御部38に出力する。
【0071】
位置制御部26は加速回転の状態を示すモード信号49を限定値設定部46に出力する。限定値設定部46はモード信号49を入力してトルク限定制御部38に限定トルク設定信号48を出力する。そして、トルク限定値推移線55が示すようにトルク限定制御部38はトルク限定値を加速時限定値55aまで上昇する。加速時は加速が要求されるのでトルク限定値は高く設定される。これにより、トルク指令推移線54が示すように高いトルクのトルク指令信号37がモーター駆動部44に出力される。モーター駆動部44はトルク指令信号37に対応してモーター5を駆動する。その結果、回転速度推移線56が示すように回転軸5aの回転速度が上昇する。
【0072】
回転軸5aの回転速度が上昇すると速度指令27と回転速度信号29との差が小さくなるので、速度差信号30が小さくなる。これにより、トルク指令推移線54が示すように速度制御部31はトルク指令信号37を減少させる。そして、回転速度推移線56が示すように回転軸8bは加速回転から定速回転に移行する。そして、統合制御部16は定速回転に移行したことを判定し、定速回転モードに移行したことを伝達するトルク限定信号47を限定値設定部46に出力する。限定値設定部46はトルク限定信号47を入力し定速回転になったことを認識する。そして、トルク限定値推移線55に示すように限定値設定部46はトルク限定値を定速時限定値55bまで下げる。定速回転モードでは惰性にて可動指8が移動するのでトルクが小さくても回転する。これにより、回転軸5aは回転速度が変動するときにも低トルクで駆動される。そして、可動指8が予定外の物体と接触するときにもモーター5は加速しないので、可動指8に大きなトルクが作用しない。このため可動指8が受ける外力に従って移動するので、可動指8が損傷を受けることを抑制することができる。
【0073】
可動指8が移動目標場所14に接近したとき、速度指令推移線53が示すように位置制御部26は速度指令27を低速に切り換える。これにより、速度指令27は回転速度信号29より低い回転速度となるので、速度差信号30は負の値となる。速度制御部31は速度差信号30に応じた演算を行い、トルク指令推移線54に示すように速度制御部31は減速させるトルク指令信号37を出力する。つまり、回転軸8bが回転している方向と逆の回転方向にトルクを作用させるトルク指令信号37を出力する。
【0074】
位置制御部26は減速回転に移行したことを伝達するモード信号49を限定値設定部46に出力する。限定値設定部46はモード信号49を入力し減速回転になったことを認識する。そして、トルク限定値推移線55に示すように限定値設定部46はトルク限定値を減速時限定値55cまで上げる。これにより、トルク限定制御部38はトルク指令推移線54に示されるトルク指令信号37に切り換えてモーター駆動部44に出力する。その結果、回転速度推移線56に示されるように回転軸5aが減速する。
【0075】
回転軸5aが減速回転するときステップS3の接触判定工程が行われる。可動指8が把持対象物10に接触すると回転軸5aが回転できなくなり、回転速度推移線56が示すように回転速度が0となる。限定値設定部46は回転速度信号29と接触判定速度57とを比較する。そして、回転速度信号29が接触判定速度57より低下したとき限定値設定部46は可動指8が把持対象物10と接触したものと判定する。そして、限定値設定部46はトルク限定制御部38に限定トルク設定信号48を出力し、トルク限定値を把持時限定値55dまで上げる。
【0076】
続いて、ステップS4の加圧工程が行われる。指部推移線51及び指部目標推移線52が示すように可動指8は移動目標場所14に到達していないので、速度指令推移線53が示すように位置制御部26は低速回転の速度指令27を出力する。速度制御部31は、回転軸5aの回転速度を0から目標回転速度まで上げるためにトルク指令推移線54に示されるようにトルクを上げるトルク指令信号37をトルク限定制御部38に出力する。これにより、トルク指令信号37は把持時限定値55dまで上昇する。そして、把持対象物10は把持時限定値55dに対応する圧力で加圧される。
【0077】
ステップS4と並行してステップS5のトルク判定工程が行われる。トルク限定制御部38はトルク指令信号37と把持時限定値55dとを比較する。そして、トルク指令信号37が把持時限定値55dに達するとき次のステップS6が行われる。
【0078】
ステップS6の積分停止指示工程ではトルク限定制御部38が積分制御部33に積分停止信号43を出力する。そして、積分制御部33は積分停止信号43を入力して速度差信号30を積分する演算を停止する。トルク限定制御部38は統合制御部16にも積分停止信号43を出力する。統合制御部16は積分停止信号43を入力してロボットハンド1が把持対象物10に所定の圧力を加えて把持していることを認識する。
【0079】
ステップS7の把持工程ではトルク指令推移線54に示されるようにトルク限定制御部38が把持時限定値55dに相当するトルク指令信号37をモーター駆動部44に出力する。その結果、モーター5は高いトルクを出力し可動指8を把持対象物10に押圧する。そして、ロボットハンド1は把持対象物10を把持した状態を維持する。次に、統合制御部16は腕部3を駆動してロボットハンド1と共に把持対象物10を移動する。そして、把持対象物10が移動予定の場所に到着した後、ステップS8に移行する。
【0080】
ステップS8の離反移動工程ではステップS2の接近移動工程と同様な手順を行い、可動指8と固定指部4との距離を離して把持対象物10に圧力が加わらない状態にする。まず、可動指8の新たな移動位置に対応する回転軸5aの角度を示す角度指令23を統合制御部16が第1加算器22に出力する。例えば、指部目標推移線52に示すように目標とする回転軸5aの角度はステップS1における角度である0度とする。
【0081】
第1加算器22は角度指令23から角度データ信号24を減算した動作角度信号25を位置制御部26に出力する。位置制御部26は動作角度信号25に対応する速度指令27を演算して第2加算器28に出力する。速度指令推移線53に示すように速度指令27は可動指8が把持対象物10から離反する方向に高速で移動する速度が設定される。
【0082】
さらに、位置制御部26は加速回転のモードであることを伝達するモード信号49を限定値設定部46に出力する。限定値設定部46は加速回転のモードにおけるトルク限定値である加速時限定値55aを積分制御部33に設定する。これにより、トルク限定値推移線55が示すように積分制御部33のトルク限定値は把持時限定値55dから加速時限定値55aに変更される。
【0083】
第2加算器28は速度指令27から回転速度信号29が示す速度を減算した速度差信号30を速度制御部31に出力する。速度制御部31はPI制御を行い速度差信号30に応じたトルク指令信号37を出力する。トルク指令推移線54に示すように速度制御部31はトルク指令信号37を加速時限定値55aまで増加する。そして、トルク指令信号37は加速時限定値55aのまま維持される。
【0084】
これにより、トルク指令推移線54が示すように高いトルクのトルク指令信号37がモーター駆動部44に出力される。モーター駆動部44はトルク指令信号37に対応してモーター5を駆動する。その結果、回転速度推移線56が示すように可動指8が把持対象物10から離反する方向に回転軸5aが回転し、回転速度が上昇する。
【0085】
統合制御部16は回転速度信号29を入力し、加速回転か定速回転かの判定を行う。そして、定速回転になったとき統合制御部16は限定値設定部46にトルク限定信号47を出力する。限定値設定部46はトルク限定信号47を入力してトルク限定値推移線55に示すようにトルク限定制御部38のトルク限定値を定速時限定値55bに設定する。
【0086】
可動指8が移動目標地点に接近したところで位置制御部26は速度指令推移線53に示すように速度指令27が指示する速度を減少する。さらに、位置制御部26は減速回転のモードに移行することを伝達するモード信号49を限定値設定部46に出力する。限定値設定部46はモード信号49を入力してトルク限定値推移線55に示すようにトルク限定制御部38のトルク限定値を減速時限定値55cに設定する。
【0087】
速度制御部31は回転速度信号29が示す回転軸5aの回転速度を減速させて速度指令27に近づけるためにトルク指令推移線54に示すようにトルク指令信号37のトルクを増加する。これにより、回転速度推移線56が示すように回転軸5aの回転速度が減速する。そして、可動指8が目標地点に到達したところで回転軸5aは停止される。
【0088】
統合制御部16は角度データ信号24を入力して回転軸5aが停止していることを検出する。そして、統合制御部16は限定値設定部46にトルク限定信号47を出力する。限定値設定部46はトルク限定制御部38に限定トルク設定信号48を出力しトルク限定値推移線55が示すようにトルク限定値を停止時限定値55eに変更する。以上の工程によりロボットハンドの把持作業が終了する。
【0089】
図5は積分制御部の出力を説明するためのタイムチャートである。図5の縦軸と横軸はトルク指令推移線54を示す図4(c)のタイムチャートと同じであり、説明を省略する。トルク指令推移線54のうち積分制御部33が出力する第2トルク信号36の推移をトルク指令積分推移線58とする。ステップS2の接近移動工程においてトルク指令積分推移線58はトルク指令推移線54が高い状態で推移するときには上昇している。そして、トルク指令推移線54が低い状態で推移するときには下降する。
【0090】
ステップS7の把持工程ではトルク指令推移線54が把持時限定値55dに到達するまでは上昇している。そして、トルク指令推移線54が把持時限定値55dに到達した後、トルク限定制御部38から積分制御部33へ積分停止信号43が出力される。これにより、トルク指令積分推移線58が示すように積分制御部33は積分の演算を停止し第2トルク信号36は出力する値を維持している。
【0091】
次に、ステップS8の離反移動工程に移行するとき、トルク指令積分推移線58は速度差信号30に対応して動作する。このとき、ステップS7において第2トルク信号36の値を維持することにより、速度制御部31は応答性良く速度差信号30に対応した第2トルク信号36を出力することができる。従って、トルク指令積分推移線58が示すように積分制御部33は精度良く第2トルク信号36を出力することができている。
【0092】
図6はトルク限定値を変更したときのトルク指令の変化を示すタイムチャートである。図6(a)の縦軸と横軸は図4(d)と同じであり、図6(b)の縦軸と横軸は図4(c)と同じであり説明を省略する。図6(a)のトルク限定値推移線61ではトルク限定値が第1トルク限定値61aから第2トルク限定値61bに上昇している。図6(b)に示すトルク指令推移線62はトルク限定値推移線61に対応するトルク指令信号37の推移を示している。
【0093】
トルク限定値推移線61が第1トルク限定値61aのときにトルク指令推移線62が第1トルク限定値61aとなっている。そして、トルク限定値推移線61が第1トルク限定値61aから第2トルク限定値61bになるとき、トルク指令推移線62は第1トルク限定値61aから経過時間62aを経て第2トルク限定値61bまで上昇する。このときの経過時間62aは帰還トルク信号39による影響が大きくなっている。
【0094】
トルク指令信号37は第1トルク信号35と第2トルク信号36とを加算し帰還トルク信号39を減算した信号となっている。そして、第1トルク信号35と第2トルク信号36とを加算したトルクが第1トルク限定値61aを超えているとき、超えたトルクに相当するトルクが帰還トルク信号39となる。従って、帰還トルク信号39が大きいときには経過時間62aが短い時間になる。そして、帰還トルク信号39が小さいときには経過時間62aが長い時間になる。つまり、帰還トルク信号39が小さいときにはトルク指令推移線62が示すように速度制御部31がPI制御を行うのでトルク指令信号37を徐々に上昇させることが可能となる。
【0095】
ステップS3の接触判定工程にて回転軸5aが回転しなくなったときステップS4の加圧工程にて限定値設定部46はトルク限定値を減速時限定値55cから把持時限定値55dに上げている。このときトルク指令信号37は徐々に上昇するので、把持対象物10は徐々に加圧される。これにより、把持対象物10が急激に加圧されて損傷を受けるのを防止することができる。
【0096】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、限定値設定部46は回転軸5aに加えるトルクの最大値であるトルク限定値を設定し、トルク限定制御部38に出力している。トルク限定制御部38はトルク指令信号37により駆動される回転軸5aのトルクとトルク限定値とを比較する。そして、トルク指令信号37により駆動される回転軸5aのトルクがトルク限定値を超えようとするとき、トルク指令信号37により駆動される回転軸5aのトルクがトルク限定値を超えないようにトルク限定制御部38はトルク指令信号37を変更している。
【0097】
従って、回転軸5aが回転しているときにも停止しているときにもモーター制御装置12は速度制御を行いつつ限定値設定部46が設定したトルク限定値を超えないトルクで回転軸5aが動作する。その結果、モーター5に要求されるトルクに応じたトルクで回転軸5aの回転速度を制御することができる。
【0098】
(2)本実施形態によれば、トルク指令信号37により回転軸5aに加わるトルクがトルク限定値を超えようとするとき、トルク限定制御部38がトルク指令信号37から帰還トルク信号39を減算してトルク指令信号37を変更する。帰還トルク信号39はトルク指令信号37により回転軸5aに加わるトルクがトルク限定値を超える量のトルクに対応するトルク信号である。従って、減算されたトルク指令信号37により駆動される回転軸5aのトルクがトルク限定値を超えないように回転軸5aを制御することができる。
【0099】
(3)本実施形態によれば、限定値設定部46は回転速度信号29を入力する。そして、回転軸5aの回転速度が接触判定速度57より低下するときにトルク限定値を変更する。従って、モーター制御装置12は、回転軸5aが低速または停止した状態で回転軸5aを把持時限定値55dに相当するトルクで駆動することができる。
【0100】
(4)本実施形態によれば、回転軸5aが加速されて回転速度が上昇する。そして回転軸5aの回転速度が速度指令27が示す目標回転速度に達した後に、限定値設定部46はトルク限定値を定速時限定値55bまで下げている。回転速度が目標回転速度に達した後では回転速度を維持するのに必要なトルクのみ加えるので、モーターは加速するときに比べて低いトルクで駆動される。そして、トルク限定値を下げても回転速度を維持することができる。回転軸5aを停止させる外力が加わるとき、モーター制御装置12は外力に対抗して回転軸5aを駆動することなく外力に応じた動作をすることができる。これにより、可動指8が物体と接触する等の事象により可動指8に外力が作用するときにも可動指8は外力を受け流すことができる。その結果、可動指8が外力により損傷を受けることを抑制することができる。
【0101】
(5)本実施形態によれば、トルク指令信号37がトルク限定値になるとき、トルク限定制御部38は積分制御部33に積分演算を停止させている。従って、第2トルク信号36が大きくなるのを防止することができる。その結果、トルク指令信号がトルク限定値より小さくなるとき、回転速度に追従した応答性の良い制御を行うことができる。
【0102】
(6)本実施形態によれば、モーター制御装置12は固定指部4と可動指8との幅が把持対象物10の幅より狭くなるように動作する。そして、固定指部4と可動指8とが把持対象物10を挟む。固定指部4及び可動指8が把持対象物10を挟んだ後、回転軸5aのトルクは下がることなく上昇する。従って、固定指部4及び可動指8を移動させる動作から把持対象物10を挟む動作に続けて移行することができる。
【0103】
可動指8が把持対象物10に接近するときモーター制御装置12は回転軸5aのトルクをトルク限定値まで上昇させる。このとき、回転軸5aのトルクは徐々に上昇するので、把持対象物10に急激に力を加えて損傷を与えるのを防止することができる。さらに、把持対象物10が固定指部4と可動指8との間から外れるとき、固定指部4及び可動指8は把持対象物10の幅より狭い場所で停止する。従って、固定指部4と可動指8とが衝突することを防止することができる。
【0104】
(第2の実施形態)
次に、モーター制御装置と、このモーター制御装置を用いたロボットハンドの特徴的な例の一実施形態について図7の制御装置の構成を示すブロック図及び図4の把持作業における把持方法を説明するためのタイムチャートを用いて説明する。
本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、限定値設定部がトルク指令信号37を用いて可動指8が把持対象物10に接触したか否かを判定する点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0105】
すなわち、本実施形態では、図7に示したようにロボットハンド63は制御部としての制御装置64を備え、制御装置64はモーター制御装置65を有している。モーター制御装置65は第1の実施形態の限定値設定部46に相当する限定値設定部66を備えている。限定値設定部66は限定値設定部46と同様にモード信号49及びトルク限定信号47を入力してトルク限定制御部38に限定トルク設定信号48を出力する。
【0106】
さらに、限定値設定部66はトルク指令信号37を入力する。そして、限定値設定部66は減速回転のときにトルク指令信号37が接触判定トルクに達したか否かを判定する。そして、トルク指令信号37が接触判定トルクに達したとき、限定値設定部66はトルク限定制御部38に限定トルク設定信号48を出力してトルク限定値を変更する。
【0107】
図4の指部推移線51が示すようにステップS2の接近移動工程にて可動指8の位置が移動目標場所14に接近する。そして、速度指令推移線53が示すように速度指令27が低速に移行する。回転速度推移線56が示すようにこれに伴って回転軸5aの回転速度が減速する。次に、回転速度推移線56が示すように可動指8が把持対象物10と接触して回転軸5aの回転速度は0となる。一方、速度指令推移線53が示すように速度指令27は正の速度を維持する指令となっている。これにより、トルク指令推移線54に示すように速度制御部31は回転軸5aの回転速度を速度指令27に近づけるためにトルク指令信号37が示すトルク信号を上昇させる。
【0108】
限定値設定部66には予め接触指令速度67と接触判定トルク68とが設定されている。接触指令速度67は接触をするときのモードであるかを判定するための判定値である。接触判定トルク68は接触したか否かを判定するための判定値である。
【0109】
まず、速度指令27が接触指令速度67より低いか否かを検出する。そして、速度指令27が接触指令速度67より低いとき、回転軸5aを低速で回転させて可動指8を把持対象物10に接触させるモードであることを認識する。続いて、トルク指令信号37が示すトルクと接触判定トルク68とを比較する。そして、トルク指令信号37が示すトルクが上昇して接触判定トルク68に達したとき限定値設定部66は可動指8が把持対象物10に接触したと判定する。次に、トルク限定値推移線55に示すように限定値設定部66はトルク限定値を減速時限定値55cから把持時限定値55dに切り換える。
【0110】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、限定値設定部66はトルク指令信号37を入力する。回転軸5aの回転速度が速度指令27より遅くなり差が大きくなる程、トルク指令信号37は回転軸5aのトルクを大きくする信号を出力する。つまり、限定値設定部66はトルク指令信号37を用いて回転軸5aが低速または停止した状態であることを検出することができる。そして、限定値設定部66はトルク指令信号37が接触判定トルク68に達するときにトルク限定値を変更する。従って、モーター制御装置65は、回転軸5aが停止した状態を判定して回転軸5aを把持時限定値55dに相当するトルクで駆動することができる。
【0111】
(第3の実施形態)
次に、ロボットハンドとロボットハンドを備えたロボットの特徴的な例の一実施形態について図8及び図9を用いて説明する。図8(a)は、ロボットハンドの構成を示す模式平面図であり、図8(b)はロボットハンドの指部を示す要部模式拡大図である。図9は、ロボットハンドを備えたロボットの構成を示す模式平面図である。
本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、複数の可動指が把持対象物を挟んで把持する点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0112】
すなわち、本実施形態では、図8(a)に示すようにロボットハンド70は直方体状のハンド本体71を備えている。ハンド本体71の長手方向をY方向とし、Y方向と直交する方向をX方向とする。そして、X方向及びY方向と直交するハンド本体71の厚み方向をZ方向とする。
【0113】
ハンド本体71の−X側の面においてハンド本体71は腕部3と接続し、腕部3は図示しないロボット本体と接続されている。ハンド本体71のX方向且つ−Y方向の角には第1の実施形態と同様にモーター5、エンコーダー6、減速装置7、可動指8、軸受け9が設置され、可動指8はモーター5により回転させられるようになっている。ハンド本体71のX方向且つY方向の角には可動指8と同様にモーター5、エンコーダー6、減速装置7、可動部及び第2可動部としての可動指72、軸受け9が設置され、可動指72はモーター5により回転させられるようになっている。
【0114】
可動指8と可動指72とはXY平面視で対称形になっており、可動指8と可動指72とで把持対象物10を挟んで保持することが可能になっている。そして、ロボットハンド70は制御装置73を備え、制御装置73には可動指8を駆動するモーター5を制御するモーター制御装置12と可動指72を駆動するモーター5を制御するモーター制御装置74とが設置されている。モーター制御装置12及びモーター制御装置74は第1の実施形態におけるモーター制御装置12と同様の装置となっている。
【0115】
図8(b)に示すように、ロボットハンド70は把持対象物10を可動指8と可動指72とで挟んで把持する。可動指8と可動指72とが把持対象物10と接触する場所を通る方向の把持対象物10の幅を把持対象物幅10aとする。そして、ロボットハンド70が把持対象物10を把持するとき、可動指8を図中2点鎖線で示す移動目標場所14に移動させる。さらに、可動指72を図中2点鎖線で示す移動目標場所75に移動させる。制御装置73は可動指8が移動目標場所14に移動し、可動指72が移動目標場所75に移動するようにモーター制御装置12,74に各モーター5を駆動させる。
【0116】
可動指8の移動目標場所14と可動指72の移動目標場所75との間隔を目標間隔76とする。このとき、目標間隔76は把持対象物幅10aより狭い間隔となっている。これにより、可動指8が移動目標場所14に到達し可動指72が移動目標場所75に到達するまえに可動指8及び可動指72は把持対象物10と接触する。従って、制御装置73がモーター制御装置12及びモーター制御装置74にモーター5を駆動する指示を変更するまで可動指8と可動指72とで把持対象物10を押圧して把持することができる。
【0117】
そして、可動指8と可動指72とが把持対象物10を抑えているときに把持対象物10に外力が作用して把持対象物10が可動指8と可動指72との間から抜けることがある。このときにも、可動指8と可動指72とはそれぞれ移動目標場所14と移動目標場所75とに移動して停止するので可動指8と可動指72とが衝突して損傷することが防止できる。
【0118】
図9に示すように、ロボット77は本体78を備え、本体78には2つの腕部79が接続されている。そして、各腕部79にはロボットハンド70が設置されている。尚、腕部79には第1の実施形態に記載したロボットハンド1が設置されていても良い。そして、ロボット77にはロボットハンド70及び腕部79を制御する制御装置73を備えている。従って、制御装置73は可動指8及び可動指72を駆動するモーター5の速度制御を行いつつトルクを制御することが可能になっている。
【0119】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、可動指8を制御するモーター制御装置12と可動指72を制御するモーター制御装置74とは第1の実施形態と同様のモーター制御装置が設置されている。従って、回転軸5aが回転しているときにも停止しているときにもモーター5に要求されるトルクに応じたトルクで回転軸5aを駆動することができる。その結果、可動指8または可動指72が移動して停止するときにも所定の力を維持して可動指8及び可動指72を駆動することができる。
【0120】
(2)本実施形態によれば、可動指8と可動指72とはそれぞれ移動目標場所14と移動目標場所75とに移動して停止するので可動指8と可動指72とが衝突して損傷することが防止できる。
【0121】
(3)本実施形態によれば、ロボット77はロボットハンド70を備えている。従って、ロボット77が備えるロボットハンド70は可動指8及び可動指72が移動して停止するときにも所定の力を維持して可動指8及び可動指72を駆動することができる。
【0122】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、速度検出部17及び角度検出部18は制御装置11に含まれていた。速度検出部17及び角度検出部18は制御装置11に含まれなくても良い。別の装置の形態でも良い。ロボットハンド1を製造し易い形態にすることができる。
【0123】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、エンコーダー6を用いて角度データ信号24及び回転速度信号29を形成した。エンコーダー6の代わりにレゾルバーやジャイロスコープを用いても良い。回転状況を検出するセンサーは製造し易い方式を採用することによりモーター制御装置12を生産し易くすることができる。
【0124】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、ステップS2の接近移動工程にて統合制御部16が定速回転に移行したことを判定し、定速回転モードに移行したことを伝達するトルク限定信号47を限定値設定部46に出力した。定速回転に移行したことを判定する機能は限定値設定部46が行っても良い。このときにも、第1の実施形態と同様にトルク限定値を下げることができる。そして、統合制御部16の負荷を減らすことができる。
【0125】
(変形例4)
前記第3の実施形態では、制御装置73は第1の実施形態におけるモーター制御装置12を備えたが、第2の実施形態におけるモーター制御装置65を備えても良い。この場合にも速度制御を行いながらトルク制御を行うことができる。
【0126】
(変形例5)
前記第3の実施形態では、ロボットハンド70には可動指8と可動指72との2つの可動指が設置されている。可動指の数は2つに限らず3つ以上でも良い。その場合にも、各可動指を駆動するモーターの制御に第1の実施形態または第2の実施形態の方法を用いることにより、品質良く把持対象物10を把持することができる。
【符号の説明】
【0127】
5…モーター、5a…回転軸、8…可動部及び第1可動部としての可動指、10…把持対象物、12…モーター制御装置、19…回転検出器、29…回転検出信号としての回転速度信号、31…速度制御部、36…第2トルク指令信号としての第2トルク信号、37…トルク指令信号、38…トルク限定制御部、39…超過トルク信号としての帰還トルク信号、46…限定値設定部、57…速度判定値としての接触判定速度、64…制御部としての制御装置、72…可動部及び第2可動部としての可動指。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターの回転軸の回転状況を検出する回転検出器が出力する回転検出信号を用いて前記モーターを制御するモーター制御装置であって、
前記回転軸の目標回転速度と前記回転検出信号とを用いて前記回転軸の回転速度と前記目標回転速度との差に対応するトルク指令信号を出力する速度制御部と、
前記回転軸に加えるトルクの最大値を示すトルク限定値を設定する限定値設定部と、
前記トルク指令信号により駆動される前記回転軸のトルクを前記トルク限定値以下に制限するトルク限定制御部と、を備えることを特徴とするモーター制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモーター制御装置であって、
前記トルク限定制御部は、前記トルク指令信号により前記回転軸に加わるトルクが前記トルク限定値を超える量のトルクを示す信号である超過トルク信号を前記トルク指令信号から減算することを特徴とするモーター制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のモーター制御装置であって、
前記限定値設定部には前記トルク限定値を変更する判断をするための速度判定値が設定され、
前記限定値設定部は前記回転検出信号を用いて前記回転軸の回転速度を検出し、
前記限定値設定部は、前記回転軸の回転速度が前記速度判定値より低いときに前記トルク限定値を変更することを特徴とするモーター制御装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のモーター制御装置であって、
前記限定値設定部には前記トルク限定値を変更する判断をするための速度判定値が設定され、
前記限定値設定部は前記トルク指令信号を入力し、
前記目標回転速度が前記速度判定値より小さく且つ前記トルク指令信号がトルク判定値を超えるときに前記限定値設定部は前記トルク限定値を変更することを特徴とするモーター制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のモーター制御装置であって、
前記限定値設定部は、前記回転軸の回転速度が前記目標回転速度に達した後に、トルク限定値を下げることを特徴とするモーター制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のモーター制御装置であって、
前記速度制御部は、前記回転速度に比例する第1トルク指令信号を出力する速度比例制御部と、前記回転速度の積分値に比例する第2トルク指令信号を出力する速度積分制御部と、前記第1トルク指令信号の値と前記第2トルク指令信号の値とを加算して前記トルク指令信号を出力する加算器と、を有し、
前記トルク指令信号の値が前記トルク限定値に達した後に、前記トルク限定制御部は前記速度積分制御部に積分演算を停止させ前記第2トルク指令信号の値を保持させることを特徴とするモーター制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のモーター制御装置であって、
前記回転検出器が検出する前記回転軸の前記回転状況は回転速度であることを特徴とするモーター制御装置。
【請求項8】
可動部と、前記可動部を駆動するモーターと、
前記モーターを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は前記モーターを制御するモーター制御部を有し、
前記モーター制御部は請求項1〜7のいずれか一項に記載のモーター制御装置を有することを特徴とするロボットハンド。
【請求項9】
請求項8に記載のロボットハンドであって、
前記可動部は把持対象物を挟む第1可動部と第2可動部とを有し、
前記第1可動部と前記第2可動部との間隔が前記把持対象物の幅より狭い間隔となるように前記制御部が前記第1可動部と前記第2可動部とを移動させる制御動作を実行することを特徴とするロボットハンド。
【請求項10】
ロボットハンドを備えたロボットであって、
前記ロボットハンドに請求項8または9に記載のロボットハンドが用いられていることを特徴とするロボット。
【請求項11】
モーターの回転軸の回転を制御するモーター制御方法であって、
前記回転軸を回転させる回転速度の目標値である目標回転速度と前記回転軸に加えるトルクの最大値を示すトルク限定値とを設定し、
前記回転速度を検出して前記回転速度と前記目標回転速度との差に対応するトルク指令信号を出力し、
前記トルク指令信号により前記回転軸に加わるトルクが前記トルク限定値を超える量のトルクを示す信号である超過トルク信号を前記トルク指令信号から減算し、減算した後の前記トルク指令信号のトルクで前記モーターを駆動することを特徴とするモーター制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−85378(P2013−85378A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223655(P2011−223655)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】