説明

モータ及び電動パワーステアリング装置

【課題】ロータの冷却効率の向上を図ることのできるモータ及び電動パワーステアリング装置を提供する
【解決手段】ハウジング21の軸方向両端部に第1及び第2ハウジング孔71,72をそれぞれ形成するとともに、ロータ23を構成するロータコア42に第1及び第2ハウジング孔71,72のいずれか一方から吸入された空気をいずれか他方側に排出可能なロータ孔73を形成した。そして、ロータ孔73をロータ23の回転軸41に対して傾斜するように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ及び電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のパワーステアリング装置には、モータを駆動源とした電動パワーステアリング装置(EPS)がある(例えば特許文献1参照)。そして、このようなEPSには、エネルギー効率に優れ、且つ高い制御性及びレイアウト自由度を有する等といった数多くの利点があることから、近年、その採用が広く進められるようになっている。
【0003】
ところで、モータでは、その通電に伴ってコイル等が発熱することにより、ハウジング内に設けられた各部材(ステータやロータ等)が高温になる虞がある。そのため、例えば耐熱性を考慮して部品を選定する必要があり、コストが増大する等の問題があった。また、マグネットには、その温度上昇に伴う減磁を考慮して高保磁力のものを採用する必要があるが、一般に高保磁力のマグネットは磁束密度が低いため、モータ出力を確保すべく大型のマグネットを用いることでモータが大型化するという問題があった。
【0004】
そこで、従来では、ハウジングやロータ等に空気の通路となる孔を形成するとともに、空気流を強制的に発生させるためのファン等を設けることで、モータの作動時に各部材が空冷されるようにしたモータが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−120739号公報
【特許文献2】特許4003228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2のモータでは、ロータの回転軸(モータ軸)に形成された空気の通路であるロータ孔(貫通孔)が、回転軸の軸方向に沿った形状となっている(特許文献2、第1図参照)。そのため、図8(a),(b)に示すように、ロータ91の回転によりロータ孔92の内周面に衝突した空気は、軸方向のいずれにも流れるため、全体として空気の流れる方向が定まらず、同ロータ91の回転のみではロータ孔92内に空気流がほとんど発生しない。なお、図8において、空気の流れを白抜き矢印で模式的に示す。
【0007】
従って、ロータ孔92内では、上記ファン等の作用により発生した空気流の勢いで流れるのみであるため、同ロータ孔92内において空気流の流速が遅くなり易く、ロータ孔92内を流れる空気の流量が減少する虞がある。その結果、ロータ91の冷却効率が低下することでロータ91に設けられたマグネット(図示略)が高温になり易く、この点においてなお改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ロータの冷却効率の向上を図ることのできるモータ及び電動パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、筒状のハウジングと、前記ハウジング内に収容され、ステータコアのティースにモータコイルが巻回されてなるステータと、回転軸に外嵌されたロータコアにマグネットが設けられてなるロータと、を備え、前記ハウジングの軸方向両端部には、空気を吸入・排出可能なハウジング孔がそれぞれ形成されるとともに、前記ロータには、前記各ハウジング孔のいずれか一方から吸入された空気をいずれか他方側に排出可能なロータ孔が形成されたモータであって、前記ロータ孔は、前記ロータの回転軸に対して傾斜するように形成されたことを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、ロータ孔が回転軸に対して傾斜しているため、ロータの回転によりロータ孔の内周面に衝突した空気は、同回転軸の軸方向におけるいずれか一方側に向かって流れるようになる。つまり、ロータの回転によりロータ孔内で空気流が発生するようになるため、ロータ孔内で空気流の流速が遅くなることを防いで流量を増大させることが可能になる。また、回転軸の軸方向に沿ってロータ孔を形成する場合に比べ、ロータ孔の全長が長くなるため、ロータ孔の内周面の面積を増大させることが可能になる。このように上記構成では、ロータ孔内を流れる空気の流量、及び空気の接触面であるロータ孔の内周面の面積を増大することができ、ロータの冷却効率を向上させることができる。これにより、ロータコアに設けられたマグネットが高温になることを好適に抑制できるため、マグネットに磁束密度の高いものを採用できるようになり、モータの小型化が可能になる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータにおいて、前記ロータコアは、貫通孔を有する鋼板が複数枚積層されてなるものであって、前記ロータ孔は、隣接する前記鋼板に形成された貫通孔が所定角度ずつ回転した位置に配置されることにより形成されたことを要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、ロータ孔は、回転軸を中心とした螺旋状に形成される。そして、このように隣接する鋼板に形成された貫通孔の位相をずらして各鋼板を積層することにより、容易に回転軸に対して傾斜したロータ孔を形成することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のモータにおいて、前記ロータ孔の内周面には、突起が形成されたことを要旨とする。
上記構成によれば、ロータ孔の内周面の面積が増大するため、ロータの冷却効率をより向上させることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータにおいて、前記ハウジングの一端部に設けられ、前記モータコイルへの駆動電力の供給を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記ハウジングの一端部に固定されるヒートシンクと、前記ヒートシンク上に配置される回路基板と、前記回路基板を収容するケースとを備え、前記ケースには、空気を吸入・排出可能なケース孔が形成され、前記ヒートシンク及び前記回路基板には、前記ハウジングの一端部に形成されたハウジング孔及び前記ケース孔のいずれか一方から吸入された空気をいずれか他方側に排出可能なシンク孔及び基板孔がそれぞれ形成されたことを要旨とする。
【0015】
上記構成によれば、制御装置がモータと一体的に設けられるため、モータと制御装置とを離れた位置に配置するとともにこれらをケーブルで接続する場合に比べ、同ケーブルを短縮又は廃止することができ、その軽量化や電流損失の低減等を図ることができる。そして、上記構成では、モータで生じる空気流により、制御装置のケース内の回路基板及びヒートシンクが冷却される。そのため、回路基板(各種の回路素子)が高温になることを好適に抑制でき、ヒートシンクを小型化することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータを備えた電動パワーステアリング装置であることを要旨とする。
上記構成によれば、モータの小型化が可能になるため、容易にモータを搭載することができ、組み付け性に優れた電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ロータの冷却効率の向上を図ることのできるモータ及び電動パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。
【図2】モータの断面図。
【図3】図2におけるA−A断面図。
【図4】図2におけるB−B断面図。
【図5】ロータコアに形成されたロータ孔を示す模式的な斜視図。
【図6】ロータコアを構成する磁性鋼板の積層状態を示す説明図。
【図7】(a),(b)本実施形態のロータ孔内でのロータの回転に伴う空気の流れを示す模式図。
【図8】(a),(b)従来のロータ孔内でのロータの回転に伴う空気の流れを示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置(EPS)1において、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック軸5と連結されている。これにより、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック軸5の往復直線運動に変換される。なお、ステアリングシャフト3は、コラム軸8、中間軸9、及びピニオン軸10を連結してなる。そして、このステアリングシャフト3の回転に伴うラック軸5の往復直線運動が、同ラック軸5の両端に連結されたタイロッド11を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪12の舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0020】
また、EPS1は、減速機構13を介して駆動源であるモータ14をコラム軸8に連結することにより、同コラム軸8を回転駆動する所謂コラム型のEPSとして構成されている。すなわち、EPS1は、減速機構13により減速されたモータ14の回転をステアリングシャフト3に伝達することにより、そのモータトルクをアシスト力として操舵系に付与する構成となっている。
【0021】
次に、本実施形態のEPS1の駆動源であるモータ14の構成について説明する。
図2に示すように、モータ14は、筒状のハウジング21と、ハウジング21内に収容されたステータ22と、ステータ22の径方向内側において回転自在に支承されたロータ23とを備えたブラシレスモータとして構成されている。また、ハウジング21の一端側(図2における上側)には、駆動電力の供給を通じてモータ14の作動を制御する制御装置24が一体的に設けられている。
【0022】
詳述すると、ハウジング21は、一端側が開口した有底筒状のハウジング本体31と、ハウジング本体31の開口端を閉塞するように設けられる円環状のカバー部材32とを備えている。
【0023】
図2及び図3に示すように、ステータ22は、ハウジング本体31における筒状部31aの内周に固定される円環部34、及び同円環部34から径方向内側に向って延びる複数のティース35からなるステータコア36を備えている。また、ステータ22は、各ティース35にインシュレータ37を介して巻回されるモータコイル38を備えている。なお、ステータ22からは、複数の接続端子39が延びており、各接続端子39は制御装置24に電気的に接続されている。
【0024】
一方、ロータ23は、減速機構13(図2では図示略)に連結される回転軸41と、回転軸41に外嵌されて同回転軸41と一体回転するロータコア42と、ロータコア42の外周に固定される複数のマグネット43とを備えている。また、ロータコア42の一端には、円板状のエンドカバー44が固定されるとともに、その外周にはマグネット43が脱落することを防止する円筒状のプロテクトチューブ45が装着されている。そして、図2に示すように、ロータ23は、その回転軸41が上記カバー部材32及びハウジング本体31の底部31bに設けられた軸受46a,46bに軸支されることにより、上記ステータ22の内側において回転自在に支承されている。
【0025】
また、回転軸41におけるロータコア42の一端側には、ロータ23の回転角を検出するレゾルバ47が上記ロータコア42と同軸に併置されている。レゾルバ47は、カバー部材32に形成された収容凹部32a内に収容される円環状のセンサステータ48と、回転軸41に固定されるセンサロータ49とを備えている。
【0026】
具体的には、センサステータ48は、磁性鋼板を複数枚積層してなるセンサコア51と、センサコア51にインシュレータ52を介して巻回されるセンサコイル53とを備えている。センサステータ48からは、複数の接続端子54が延びており、これらの接続端子54は制御装置24に電気的に接続されている。一方、センサロータ49は、磁性鋼板を複数枚積層してなるとともに、その外周面は、センサステータ48の内周とのギャップパーミアンスが該センサロータ49の回転角度に応じて変化するような形状に形成されている。そして、センサロータ49は、回転軸41の端部に螺着されたナット55により同回転軸41に固定されている。
【0027】
制御装置24は、ハウジング21の一端部を構成するカバー部材32に固定されるヒートシンク61と、ヒートシンク61上に配置される複数(本実施形態では2枚)の回路基板62a,62bと、各回路基板62a,62bを収容するケース63とを備えている。
【0028】
ヒートシンク61は、回路基板62aが載置される平板状の本体部61a、及び本体部61aからカバー部材32側(図2における下側)に延出されて同カバー部材32に取着される取付部61bを有している。なお、ヒートシンク61は、アルミ合金等の熱伝導性に優れた材料により構成されている。
【0029】
回路基板62aは、モータコイル38に三相の駆動電力を供給するためのインバータ回路を構成するスイッチング素子等の回路素子が実装されており、ヒートシンク61の本体部61a上に固定されている。一方、回路基板62bは、上記インバータ回路にスイッチング素子のオン/オフ状態を切り替えるための制御信号等を出力するCPU(中央演算処理装置)等が実装されており、回路基板62a上に立設されたピン66を介して支持されている。また、ケース63は、有底筒状に形成されており、その内部に各回路基板62a,62bが収容されるようにヒートシンク61に固定されている。
【0030】
このように構成されたモータ14では、レゾルバ47により検出される回転角に応じた三相(U,V,W)の駆動電力が各モータコイル38に供給されることにより回転磁界が発生し、ロータ23は、当該回転磁界と各マグネット43が形成する界磁磁束との関係に基づき回転する。そして、回転軸41に連結された減速機構13を介してステアリングシャフト3に、ロータ23の回転により生ずるモータトルクが伝達されることが構成となっている。
【0031】
(冷却構造)
次に、本実施形態のモータを構成する各部材を空気により冷却するための冷却構造について説明する。
【0032】
本実施形態のモータ14では、その通電に伴ってモータコイル38や回路基板62a,62b等が発熱するため、外部から空気(外気)を取り込んで同モータ14を構成する各部材(ステータ22や制御装置24等)を空冷する構成となっている。
【0033】
詳述すると、ハウジング21(ハウジング本体31)の他端側(図2における下側)には、径方向に貫通した複数の第1ハウジング孔71が形成されている。一方、カバー部材32には、回転軸41の軸方向に貫通した複数の第2ハウジング孔72が形成されている。なお、本実施形態では、第2ハウジング孔72は、カバー部材32の収容凹部32a、及び同収容凹部32aの周縁部32bにそれぞれ形成されている。また、ロータコア42には、軸方向両端面に開口した複数のロータ孔73が形成され、エンドカバー44には、各ロータ孔73に連続する複数のプレート孔74が形成されている。これにより、第1及び第2ハウジング孔71,72間でロータ孔73及びプレート孔74を介して空気が流通可能となっている。
【0034】
ヒートシンク61の本体部61aには、回転軸41の軸方向に貫通した複数のシンク孔75が形成されており、各シンク孔75は取付部61bに囲まれた空間を介して第2ハウジング孔72と連通している。また、回路基板62aには、各シンク孔75と同軸に複数の基板孔76が形成されるとともに、回路基板62bには、回転軸41の軸方向に貫通した複数の基板孔77が形成されている。さらに、ケース63の上底部63aには、回転軸41の軸方向に貫通したケース孔78が形成されている。これにより、第1ハウジング孔71とケース孔78との間で、ロータ孔73、プレート孔74、第2ハウジング孔72、シンク孔75及び各基板孔76,77を介して空気が流通可能となっている。
【0035】
センサロータ49を固定するナット55には、ロータ23の回転に伴って空気流を発生させる送風羽根(ファン)79が設けられている。また、エンドカバー44には、ロータ23の回転に伴って空気流を発生させる複数の送風羽根80が各プレート孔74の開口部に設けられている。なお、本実施形態では、図4に示すように、送風羽根80は、エンドカバー44の一部を回転軸41に対して斜交するように切り起こすことにより形成されている。すなわち、本実施形態では、ナット55及びエンドカバー44が回転部材に相当する。そして、モータ14の作動時に、上記送風羽根79,80において空気流が発生し、第1ハウジング孔71とケース孔78との間で空気が流れることにより、モータ14を構成する各部材が冷却されるようになっている。
【0036】
ところで、上述のようにロータ孔73が回転軸41の軸方向に沿って形成されていると、ロータ23の回転のみではロータ孔73内に空気流がほとんど発生せず、同ロータ孔73内において空気流の流速が遅くなることで、ロータ23の冷却効率が低下する虞がある(図8参照)。
【0037】
この点を踏まえ、図5に示すように、本実施形態のロータ孔73は、回転軸41を中心とした螺旋状に形成されており、回転軸41に対して傾斜している。
詳述すると、ロータコア42は、磁性鋼板81を複数枚積層することにより構成されている。この磁性鋼板81は、円環状に形成されるとともに、複数の貫通孔82が周方向に等角度間隔で形成されている。そして、図6に示すように、隣接する磁性鋼板81の貫通孔82が所定角度ずつ回転した位置(周方向にずれた位置)に配置されるように各磁性鋼板81が積層されることにより、ロータ孔73が形成されている。なお、図6では、紙面奥側に配置される磁性鋼板81の貫通孔82を破線で示し、紙面手前側に配置される磁性鋼板81の貫通孔82を二点鎖線で示している。
【0038】
また、各貫通孔82の内周面には、複数の突起83が形成されている。すなわち、ロータ孔73の内周面には、複数の突起83が形成されている。なお、本実施形態では、各突起83は、四角形状に形成されるとともに、貫通孔82における周方向両側の側面からそれぞれ対向する方向に突出して形成されている。これにより、貫通孔82(ロータ孔73)の内周面の面積の増大が図られている。
【0039】
このように構成されたロータ23では、ロータ孔73が回転軸に対して傾斜しているため、その回転によりロータ孔73の内周面に衝突した空気は、図7(a),(b)に示すように、同ロータ23の回転方向に応じて回転軸41の軸方向におけるいずれか一方側に向かって流れるようになる。つまり、ロータ23の回転によりロータ孔73内で空気流が発生するようになっている。なお、図7において、空気の流れを白抜き矢印で模式的に示す。
【0040】
以上記述したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)ハウジング21の軸方向両端部に第1及び第2ハウジング孔71,72をそれぞれ形成するとともに、ロータ23を構成するロータコア42に第1及び第2ハウジング孔71,72のいずれか一方から吸入された空気をいずれか他方側に排出可能なロータ孔73を形成した。そして、ロータ孔73をロータ23の回転軸41に対して傾斜するように形成した。
【0041】
上記構成によれば、ロータ孔73が回転軸41に対して傾斜して形成されることから、ロータ23の回転によりロータ孔73内で空気の流れが発生するようになるため、ロータ孔73内で空気流の流速が遅くなることを防いで流量を増大させることが可能になる。また、回転軸41の軸方向に沿ってロータ孔73を形成する場合に比べ、ロータ孔73の全長が長くなるため、ロータ孔73の内周面の面積を増大させることが可能になる。このように上記構成では、ロータ孔73内を流れる空気の流量、及び空気の接触面であるロータ孔73の内周面の面積を増大することができ、ロータ23の冷却効率を向上させることができる。これにより、ロータコア42に設けられたマグネット43が高温になることを好適に抑制できるため、マグネット43に磁束密度の高いものを採用することでモータ14の小型化が可能になり、組み付け性に優れたEPS1を提供することができる。
【0042】
(2)ロータコア42を、貫通孔82が形成された磁性鋼板81を複数枚積層することにより構成した。そして、隣接する磁性鋼板81に形成された貫通孔82を所定角度ずつ回転した位置に配置することにより、ロータ孔73を螺旋状に形成した。これにより、容易に回転軸41に対して傾斜したロータ孔73を形成することができる。
【0043】
(3)ロータ孔73の内周面に複数の突起83を形成したため、ロータ孔73の内周面の面積を増大させることができ、ロータ23の冷却効率をより向上させることができる。
(4)モータ14は、カバー部材32に設けられ、モータコイル38への駆動電力の供給を制御する制御装置24を備えた。そして、制御装置24のケース63に、空気を吸入・排出可能なケース孔78を形成するとともに、ヒートシンク61及び回路基板62a,62bに、第2ハウジング孔72及びケース孔78のいずれか一方から吸入された空気をいずれか他方側に排出可能なシンク孔75及び基板孔76,77をそれぞれ形成した。
【0044】
上記構成によれば、制御装置24がモータ14と一体的に設けられるため、モータ14と制御装置24とを離れた位置に配置するとともにこれらをケーブルで接続する場合に比べ、同ケーブルを短縮又は廃止することができ、その軽量化や電流損失の低減等を図ることができる。そして、上記構成では、モータ14で生じる空気流により、各回路基板62a,62b及びヒートシンク61が冷却される。そのため、回路基板62a,62b(各種の回路素子)が高温になることを好適に抑制でき、ヒートシンク61を小型化することができる。
【0045】
(5)センサロータ49を回転軸41に固定するためのナット55、及びロータコア42の一端に固定されるエンドカバー44に、ロータ23の回転により空気流を発生させる送風羽根79,80をそれぞれ設けた。上記構成によれば、送風羽根79,80により空気流が発生するため、モータ14内に流れる空気の流量を増大させることができ、より一層、冷却効率の向上を図ることができる。
【0046】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、センサロータ49を固定するナット55にそれぞれ送風羽根79,80を設けたが、これに限らず、例えばプロテクトチューブ45等、ロータ23とともに回転する他の部材に送風羽根を設けてもよい。また、ナット55及びエンドカバー44に送風羽根79,80を設けなくともよい。この場合であっても、ロータ孔73において発生する空気流により、モータ14を構成する各部材を冷却可能である。
【0047】
・上記実施形態では、ロータコア42にロータ孔73を形成したが、これに限らず、回転軸41の中央部分がその両端部分よりも大径となるように形成し、同回転軸41にロータ孔73を形成するようにしてもよい(特許文献2参照)。
【0048】
・上記実施形態では、ロータ孔73の内周面に突起83を形成したが、これに限らず、突起83を形成しなくてもよい。
・上記実施形態では、ロータ孔73を螺旋状に形成したが、これに限らず、回転軸41に対して傾斜していれば、ロータ孔73を直線状や曲線状に形成してもよい。
【0049】
・上記実施形態では、ロータコア42を複数枚の磁性鋼板81を積層することにより構成したが、これに限らず、例えば磁性粉体の焼結等によりロータコア42を構成し、各ロータ孔73を切削加工等により形成するようにしてもよい。
【0050】
・上記実施形態では、ハウジング21の一端部を構成するカバー部材32に制御装置24を一体的に設けたが、これに限らず、モータ14と制御装置24とを離間して配置し、これらの間をケーブルで接続するようにしてもよい。
【0051】
・上記実施形態では、本発明をEPS1に用いられるモータ14に具体化したが、その他、EPS以外の用途に用いられるモータに適用してもよい。また、EPSに適用する場合においても、本実施形態のEPS1のようなコラム型に限らず、所謂ラックアシスト型や所謂ピニオン型等、その他の形式のEPSに具体化してもよい。
【0052】
次に、上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータにおいて、前記ロータとともに回転する回転部材には、該ロータの回転により空気流を発生させる送風羽根が設けられたことを特徴とするモータ。上記構成によれば、送風羽根により空気流が発生するため、モータ内に流れる空気の流量を増大させることができ、より一層、冷却効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…電動パワーステアリング装置(EPS)、14…モータ、21…ハウジング、22…ステータ、23…ロータ、24…制御装置、31…ハウジング本体、31a…筒状部、31b…底部、32…カバー部材、32a…収容凹部、32b…周縁部、35…ティース、36…ステータコア、38…モータコイル、41…回転軸、42…ロータコア、43…マグネット、44…エンドカバー、45…プロテクトチューブ、47…レゾルバ、55…ナット、61…ヒートシンク、62a,62b…回路基板、63…ケース、71…第1ハウジング孔、72…第2ハウジング孔、73…ロータ孔、74…プレート孔、75…シンク孔、76,77…基板孔、78…ケース孔、79,80…送風羽根、82…貫通孔、83…突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングと、
前記ハウジング内に収容され、ステータコアのティースにモータコイルが巻回されてなるステータと、
回転軸に外嵌されたロータコアにマグネットが設けられてなるロータと、を備え、
前記ハウジングの軸方向両端部には、空気を吸入・排出可能なハウジング孔がそれぞれ形成されるとともに、前記ロータには、前記各ハウジング孔のいずれか一方から吸入された空気をいずれか他方側に排出可能なロータ孔が形成されたモータであって、
前記ロータ孔は、前記ロータの回転軸に対して傾斜するように形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記ロータコアは、貫通孔を有する鋼板が複数枚積層されてなるものであって、
前記ロータ孔は、隣接する前記鋼板に形成された貫通孔が所定角度ずつ回転した位置に配置されることにより形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータにおいて、
前記ロータ孔の内周面には、突起が形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のモータにおいて、
前記ハウジングの一端部に設けられ、前記モータコイルへの駆動電力の供給を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記ハウジングの一端部に固定されるヒートシンクと、前記ヒートシンク上に配置される回路基板と、前記回路基板を収容するケースとを備え、
前記ケースには、空気を吸入・排出可能なケース孔が形成され、
前記ヒートシンク及び前記回路基板には、前記ハウジングの一端部に形成されたハウジング孔及び前記ケース孔のいずれか一方から吸入された空気をいずれか他方側に排出可能なシンク孔及び基板孔がそれぞれ形成されたことを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータを備えたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−165600(P2012−165600A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25084(P2011−25084)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】