説明

モータ駆動スイッチ

【課題】本発明は、モータ駆動スイッチの接点が焼付きを起こした場合でもモータの固定子巻き線が損傷しないようにすることを目的とする。
【解決手段】本発明に係るモータ駆動スイッチは、モータの起動操作において、第1接点21が電源P側端子(3)に切替わるタイミングは、第2接点22がアーマチュアP側端子(6)に切替わるタイミングよりも早くなるように設定されており、前記モータの起動解除操作で、第2接点22がアーマチュアN側端子(4)に切替わるタイミングは、第1接点22がアーマチュアP側端子(1)に切替わるタイミングより早くなるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御回路で使用されるモータ駆動スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連するモータ駆動スイッチが特許文献1に記載されている。
このモータ駆動スイッチ100は、図8(A)に示すように、第1接点101と第2接点102とからなる二極スイッチであり、モータを駆動させる際に第1接点101と第2接点102と連動するように構成されている。
モータ駆動スイッチ100の第1接点101は、モータの固定子巻き線112の一端(2)に接続されており、電源EのP側に接続されている電源P側端子(3)、あるいはアーマチュア104のP側に接続されているアーマチュアP側端子(1)に切替え可能に構成されている。第2接点102は、モータの固定子巻き線112の他端(5)に接続されており、アーマチュアP側端子(6)、あるいはアーマチュア104のN側に接続されているアーマチュアN側端子(4)に切替え可能に構成されている。
そして、モータ駆動スイッチ100がモータの起動方向に操作されると、図8(A)に示すように、第1接点101が電源P側端子(3)、第2接点102がアーマチュアP側端子(6)に切替わる。これにより、固定子巻き線112とアーマチュア114とが電源EのP端子とN端子間で直列に接続されて前記モータが起動される。
また、モータ駆動スイッチ100がモータの起動解除方向に操作されると、図8(B)に示すように、第1接点101がアーマチュアP側端子(1)、第2接点102がアーマチュアN側端子(4)に切替わり、固定子巻き線112とアーマチュア114とが閉ループを作って前記モータが発電機のように動作し、ブレーキが掛かるようになる。
ここで、第2接点102におけるアーマチュアN側端子(4)とアーマチュア114のN端子間には、ブレーキ電流を制限するための抵抗116が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−184279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記モータ駆動スイッチ100では、第1接点101と第2接点102とほぼ同時に切替わる。このため、仮に第1接点101と第2接点102とが老朽化等により焼付きが発生する場合に、いずれの位置(1)(3)(4)(6)で、焼付きが発生するかは特定できない。
例えば、図8(C)に示すように、モータの起動操作時に第1接点101において電源P側端子(3)で焼付きが発生すると、モータ駆動スイッチ100を起動解除操作して第2接点102がアーマチュアN側端子(4)に切替わったときに、固定子巻き線112に大電流Imが流れ、固定子巻き線112が焼損することがある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、モータ駆動スイッチの接点が焼付きを起こした場合でもモータの固定子巻き線が損傷しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、モータの固定子巻き線の一端に接続されており、電源のP側に接続されている電源P側端子、あるいはアーマチュアのP側に接続されているアーマチュアP側端子に切替え可能な第1接点と、前記固定子巻き線の他端に接続されており、前記アーマチュアP側端子、あるいはそのアーマチュアのN側に接続されているアーマチュアN側端子に切替え可能な第2接点とを備え、前記モータの起動操作で、前記第1接点が電源P側端子、前記第2接点が前記アーマチュアP側端子に切替わり、これにより前記固定子巻き線と前記アーマチュアとが電源のP側とN側間で直列に接続されて前記モータが起動され、前記モータの起動解除操作で、前記第1接点が前記アーマチュアP側端子、前記第2接点が前記アーマチュアN側端子に切替わり、前記固定子巻き線と前記アーマチュアとが閉ループを作って前記モータにブレーキが掛かるように構成されたモータ制御回路において使用されるモータ駆動スイッチであって、 前記モータの起動操作において、前記第1接点が電源P側端子に切替わるタイミングは、前記第2接点が前記アーマチュアP側端子に切替わるタイミングよりも早くなるように設定されており、前記モータの起動解除操作で、前記第2接点が前記アーマチュアN側端子に切替わるタイミングは、前記第1接点が前記アーマチュアP側端子に切替わるタイミングより早くなるように設定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、モータの起動操作において、第1接点が電源P側端子に切替わるタイミングは、第2接点がアーマチュアP側端子に切替わるタイミングよりも早くなるように設定されている。このため、モータの固定子巻き線とアーマチュアには、第2接点がアーマチュアP側端子に切替わったタイミングで電流が流れるようになる。したがって、経時的な接点の焼付きは第2接点とアーマチュアP側端子間で発生するようになる。
仮に、第2接点がアーマチュアP側端子で焼付いた場合に、モータ駆動スイッチを起動解除操作すると、第1接点は前記アーマチュアP側端子に切替わるため、モータの固定子巻き線には電流が流れなくなる。即ち、接点の焼付きによりモータの固定子巻き線に異常電流が流れることがない。
また、モータの起動解除操作では、第2接点がアーマチュアN側端子に切替わるタイミングは、前記第1接点が前記アーマチュアP側端子に切替わるタイミングより早くなるように設定されている。このため、モータの固定子巻き線とアーマチュアには、第1接点がアーマチュアP側端子に切替わったタイミングで電流が流れるようになる。したがって、経時的な接点の焼付きは第1接点とアーマチュアP側端子間で発生するようになる。
仮に、第1接点がアーマチュアP側端子で焼付いた場合に、モータ駆動スイッチを起動操作すると、第2接点は前記アーマチュアP側端子に切替わるため、モータは起動せずに、モータの固定子巻き線には電流が流れなくなる。即ち、接点の焼付きでモータの固定子巻き線に異常電流が流れることがない。
【0008】
請求項2の発明によると、停止位置から起動位置までスライドすることでモータの起動操作を行い、前記起動位置から停止位置まで戻ることで前記モータの起動解除操作を行なうトリガを備えており、前記トリガには、スライド過程で前記第1接点と第2接点とをそれぞれ押圧する第1突起と第2突起とが形成されており、前記前記第1接点と前記第2接点とは、中央が支点により支持された略円弧形の天秤状に構成されて、前記第1突起、前記第2突起に押圧される位置が変わることで前記支点を中心に回動し、接続が切替わる構成であり、前記第1突起と前記第2突起とがスライド方向ずれて配置されることで、前記第1接点と前記第2接点との切替えタイミングがずれるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明によると、停止位置から起動位置までスライドすることでモータの起動操作を行い、前記起動位置から停止位置まで戻ることで前記モータの起動解除操作を行なうトリガを備えており、前記トリガには、スライド過程で前記第1接点と第2接点とをそれぞれ押圧する第1突起と第2突起とが形成されており、前記前記第1接点と前記第2接点とは、中央が支点により支持された略円弧形の天秤状に構成されて、前記第1突起、前記第2突起に押圧される位置が変わることで前記支点を中心に回動し、接続が切替わる構成であり、前記第1接点と前記第2接点との曲げ位置をスライド方向にずらすことで、前記第1接点と前記第2接点との切替えタイミングがずれるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明によると、停止位置から起動位置までスライドすることでモータの起動操作を行い、前記起動位置から停止位置まで戻ることで前記モータの起動解除操作を行なうトリガを備えており、前記第1接点及び第2接点はケース内に収納されて、そのケースから突出している動作ピンを押圧、あるいは押圧解除することで接続が切替わる構成であり、前記トリガには、前記第1接点の動作ピンと第2接点の動作ピンとを押圧するための第1押圧面と第2押圧面とがスライド方向にずれた状態で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、モータ駆動スイッチが焼き付きを起こしたとしてもモータの固定子巻き線に異常電流が流れることはない。このため、固定子巻き線が損傷することがなく、修理の負担が軽くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態1に係るモータ駆動スイッチが起動解除側に切替わった状態を表すモータの制御回路図(A図)、起動解除側から起動側に切替わる途中を表すモータの制御回路図(B図)、モータ駆動スイッチが起動側に切替わった状態を表すモータの制御回路図(C図)である。
【図2】モータ駆動スイッチが起動側に切替わった状態を表すモータの制御回路図(A図)、起動側から起動解除側に切替わる途中を表すモータの制御回路図(B図)、モータ駆動スイッチが起動解除側に切替わった状態を表すモータの制御回路図(C図)である。
【図3】モータ駆動スイッチの第2接点が焼付いたときの状態を表すモータの制御回路図(A図)(B図)である。
【図4】モータ駆動スイッチの第1接点が焼付いたときの状態を表すモータの制御回路図(A図)(B図)である。
【図5】モータ駆動スイッチの動作を表す模式縦断面図(A図)(B図)、模式横断面図(C図)、モータ駆動スイッチのトリガの下面図(D図)である。
【図6】変更例に係るモータ駆動スイッチの第1接点の側面図(A図)、第2接点の側面図(B図)、第1接点、第2接点の動作タイミングを表す縦断面図(C図)(D図)、モータ駆動スイッチのトリガの下面図(E図)である。
【図7】変更例に係るモータ駆動スイッチのトリガの側面図(A図)、トリガの下面図(B図)、切替え前のモータ駆動スイッチの側面図(C図)、C図の背面図(D図)、及び切替え後のモータ駆動スイッチの側面図(E図)である。
【図8】従来のモータ駆動スイッチが起動側に切替わった状態を表すモータの制御回路図(A図)、モータ駆動スイッチが起動解除側に切替わった状態を表すモータの制御回路図(B図)、第1接点、第2接点が焼付いた状態を表すモータの制御回路図(C図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、図1から図7に基づいて、本発明の実施形態1に係るモータ駆動スイッチの説明を行なう。
<モータ駆動スイッチの概要について>
先ず、図1(A)〜(C)に基づいて、モータ駆動スイッチ20の概要について説明する。
モータ駆動スイッチ20は、固定子巻き線と電機子(アーマチュア)巻き線とが直列に接続される直巻電動機(以下、モータという)の制御回路10において使用される2極双投スイッチである。
モータ駆動スイッチ20は、電動工具本体(図示省略)に取付けられており、トリガ30(図5参照 後記する)を引き操作することで電動工具本体のモータを起動させ、トリガ30を戻し操作することで前記モータにブレーキを掛けられるように構成されている。モータ駆動スイッチ20は、前記トリガ30の動作に連動する第1接点21と第2接点22とを備えている。そして、第1接点21の固定端がモータの固定子巻き線11の一端側端子(2)に接続されており、その第1接点21の可動端が電源EのP側に接続されている電源P側端子(3)、あるいはアーマチュア14のP側に接続されているアーマチュアP側端子(1)に切替え可能なように構成されている。また、第2接点22の固定端がモータの固定子巻き線11の他端側端子(5)に接続されており、その第2接点22の可動端がアーマチュアP側端子(6)、あるいはアーマチュア14のN側に接続されているアーマチュアN側端子(4)に切替え可能なように構成されている。
ここで、第1接点21が接続されるアーマチュアP側端子(1)と第2接点22が接続されるアーマチュアP側端子(6)とは、図1(A)等に示すように、導線によってアーマチュア14のブラシPに接続されている。また、アーマチュアN側端子(4)は、ブレーキ電流値を制限する抵抗16を介してアーマチュア14のブラシNに接続されている。さらに、電源EのN端子は、ヒューズ15を介してアーマチュア14のブラシNに接続されている。
【0014】
上記構成により、図1(A)に示すように、モータが停止している状態で、トリガ30を引き操作すると、図1(B)に示すように、最初に第1接点21の可動端(以下、第1接点21という)が電源P側端子(3)に切替わる。次に、図1(C)、図2(A)に示すように、第2接点22の可動端(以下、第2接点22という)がアーマチュアP側端子(6)に切替わる。これにより、モータの固定子巻き線11とアーマチュア14とが電源EのP端子とN端子間で直列に接続されて前記モータが起動されるようになる。
また、トリガ30を戻し操作することで、図2(B)に示すように、最初に第2接点がアーマチュアN側端子(4)に切替わり、次に、図2(C)、図1(A)に示すように、第1接点21がアーマチュアP側端子(1)に切替わるようになる。これにより、固定子巻き線11とアーマチュア14と抵抗16とが閉ループを作り、固定子巻き線11にブレーキ電流が流れてモータにブレーキが掛かるようになる。そして、ブレーキにより前記モータが停止する。
【0015】
上記したように、トリガ30を引き操作するときには、図1に示すように、最初に第1接点21、次に第2接点22が切替わるため、第2接点22がアーマチュアP側端子(6)に接続されたタイミングで固定子巻き線11には電流が流れるようになる。これに対し、第1接点21が電源P側端子(3)に接続されたタイミングでは固定子巻き線11に電流は流れない。このため、経時的に接点の焼付きが発生するとしたら、第2接点22とアーマチュアP側端子(6)との間で発生するようになる。図3(A)に示すように、トリガ30の引き操作中に、第2接点22とアーマチュアP側端子(6)との間で焼付きが発生した場合には、固定子巻き線11にはモータの駆動用電流が流れるだけであり、異常電流が流れることはない。
次に、この状態で、トリガ30を戻し操作すると、図3(B)に示すように、第1接点21がアーマチュアP側端子(1)に切替わるようになる。図3(B)に示す状態では、固定子巻き線11に電圧が加わらないため、その固定子巻き線11に異常電流が流れることはない。なお、トリガ30を戻し操作しても、モータにブレーキが掛からないため、異常が発生したことは把握できる。
【0016】
モータ駆動スイッチ20が正常な状態でトリガ30を戻し操作するときは、図2に示すように、最初に第2接点22、次に第1接点21が切替わるため、第1接点21がアーマチュアP側端子(1)に接続されたタイミングで固定子巻き線11には電流が流れるようになる。これに対し、第2接点22がアーマチュアN側端子(4)に接続されたタイミングでは固定子巻き線11に電流が流れない。このため、トリガ30の戻し操作により、経時的に接点の焼付きが発生するとしたら、第1接点21とアーマチュアP側端子(1)との間で発生するようになる。図4(A)に示すように、トリガ30の戻し操作中に、第1接点21とアーマチュアP側端子(1)との間で焼付きが発生した場合には、モータが停止するまで固定子巻き線11にブレーキ電流が流れるだけであり、その固定子巻き線11に異常電流が流れることはない。
次に、この状態で、トリガ30を引き操作すると、図4(B)に示すように、第2接点22がアーマチュアP側端子(6)に切替わる。図4(B)に示す状態では、固定子巻き線11に電圧が加わらないため、その固定子巻き線11に異常電流が流れることはない。なお、トリガ30を引き操作しても、モータが回転しないため、異常が発生したことは把握できる。
【0017】
<モータ駆動スイッチ20の構成について>
モータ駆動スイッチ20は、図5(A)〜(D)に示すように、トリガ30と、スイッチケース35と、第1接点21と、第2接点22とから構成されている。スイッチケース35には、トリガ30の操作部32が前後(図5(A)において左右)にスライド可能なように収納されている。ここで、スイッチケース35内には、トリガ30の操作部32を前方(スイッチケース35から突出させる方向)に付勢されたコイルバネ(図示省略)が収納されている。
また、スイッチケース35の下部には、図5(C)に示すように、左側位置に第1接点21が接続される端子(1)(2)(3)がトリガ30のスライド方向(図5(A)参照)に沿って並べて配置されており、右側位置に第2接点22が接続される端子(4)(5)(6)がトリガ30のスライド方向に沿って並べられている。
ここで、第1接点21の端子(1)はアーマチュアP側端子(1)、端子(2)は固定子巻き線11の一端側端子(2)、端子(3)は電源P側端子(3)に相当する。また、第2接点22の端子(4)はアーマチュアN側端子(4)、端子(5)は固定子巻き線11の他端側端子(5)、端子(6)はアーマチュアP側端子(6)に相当する。
【0018】
第1接点21は、図5(A)等に示すように、下側が凸となるように略円弧状に湾曲した帯状の金属板により構成されており、中央が固定端21c、前端と後端とが可動端21f,21hとなっている。そして、第1接点21の中央の固定端21cが端子(2)によって下方から天秤状に支持されている。これにより、第1接点21が中央の固定端21c(端子(2))を中心にして前側が低くなるように傾斜すると、図5(A)に示すように、前側の可動端21fが端子(1)に接続され、後側の可動端21hが端子(3)から離れるようになる。即ち、第1接点21がアーマチュアP側端子(1)に切替わるようになる。
また、第1接点21が中央の固定端21c(端子(2))を中心にして後側が低くなるように傾斜すると、図5(B)に示すように、後側の可動端21hが端子(3)に接続され、前側の可動端21fが端子(1)から離れるようになる。即ち、第1接点21が電源P側端子(3)に切替わるようになる。
第2接点22は、同じく下側が凸となるように略円弧状に湾曲した帯状の金属板により構成されており、中央の固定端22cが端子(5)によって下方から天秤状に支持されている。そして、第1接点21と同様に動作して、第2接点22の前端と後端とに設けられた可動端22f,22hがそれぞれ端子(4)、端子(5)に接続可能なように構成されている。
【0019】
トリガ30の操作部32には、第1接点21に上面を押圧する第1突起36と第2接点22の上面を押圧する第2突起37とが嵌め込まれている。第1突起36、第2突起37は、等しい長さのピン状の部材であり、先端が半球状に面取りされた状態で形成されている。そして、第1突起36、第2突起37は、それぞれトリガ30の操作部32の下面に形成された縦孔に先端が突出した状態で収納されている。ここで、第1突起36は、図5(D)に示すように、第2突起37に対して寸法Xだけ後方に位置決めされている。
【0020】
<モータ駆動スイッチ20の動作について>
トリガ30が前端位置にある状態では、図5(A)に示すように、第1突起36が第1接点21の上面先端を押圧し、第2突起37が第2接点の上面先端を押圧しているため、第1接点21は端子(1)に接続されており、第2接点22が端子(4)に接続されている。即ち、モータの制御回路10は、図1(A)、図2(C)に示す状態になる。
この状態からトリガ30が引き操作されて第1突起36、第2突起37がそれぞれ第1接点21、第2接点22の上面を後方にスライドすると、前述のように、第1突起36が第2突起37に対して寸法Xだけ後方に位置決めされているため、第1突起36が最初に第1接点21を端子(3)に接続させ、次に第2突起37が第2接点22を端子(6)に接続させる。即ち、モータの制御回路10は、図1(B)に示す状態から図1(C)、図2(A)に示す状態になり、モータが起動されるようになる。
また、この状態でトリガ30が戻し操作されて第1突起36、第2突起37がそれぞれ第1接点21、第2接点22の上面を前方にスライドすると、第1突起36よりも前方に位置する第2突起37が最初に第2接点22を端子(4)に接続させ、次に第1突起36が第1接点21を端子(1)に接続させる。即ち、モータの制御回路10は、図2(B)に示す状態から図2(C)、図1(A)に示す状態になり、固定子巻き線11にブレーキ電流が流れてモータにブレーキが掛かるようになる。
【0021】
<本実施形態に係るモータ駆動スイッチ20の長所について>
本実施形態に係るモータ駆動スイッチ20によると、モータの起動操作において、第1接点21が電源P側端子(3)に切替わるタイミングは、図1(B)に示すように、第2接点22がアーマチュアP側端子(6)に切替わるタイミングよりも早くなるように設定されている。このため、モータの固定子巻き線11とアーマチュア14には、第2接点22がアーマチュアP側端子(6)に切替わったタイミングで電流が流れるようになる。したがって、経時的な接点の焼付きは第2接点22とアーマチュアP側端子(6)間で発生するようになる。
仮に、図3(A)に示すように、第2接点22がアーマチュアP側端子(6)で焼付いた場合に、モータ駆動スイッチ20を起動解除操作すると、図3(B)に示すように、第1接点21はアーマチュアP側端子(1)に切替わるため、モータの固定子巻き線11には電流が流れなくなる。即ち、接点の焼付きでモータの固定子巻き線11に異常電流が流れることがない。
また、モータの起動解除操作では、第2接点22がアーマチュアN側端子(4)に切替わるタイミングは、図2(B)に示すように、第1接点21がアーマチュアP側端子(1)に切替わるタイミングより早くなるように設定されている。このため、モータの固定子巻き線11とアーマチュア14には、第1接点21がアーマチュアP側端子(1)に切替わったタイミングで電流が流れるようになる。したがって、経時的な接点の焼付きは第1接点21とアーマチュアP側端子(1)間で発生するようになる。
仮に、図4(A)に示すように、第1接点21がアーマチュアP側端子(1)で焼付いた場合に、モータ駆動スイッチ20を起動操作すると、図4(B)に示すように、第2接点22はアーマチュアP側端子(6)に切替わるため、モータは起動せずに、モータの固定子巻き線11には電流が流れなくなる。即ち、接点の焼付きでモータの固定子巻き線11に異常電流が流れることがない。
このため、モータの固定子巻き線が損傷することがなく、修理の負担が軽くなる。
【0022】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、第1突起36と第2突起37の取付け位置をトリガ30のスライド方向(前後方向)に寸法Xだけずらして第1接点21と第2接点22との動作タイミングをずらす例を示した。しかし、第1突起36と第2突起37の取付け位置をスライド方向に同位置とし(図6(E)参照)、第1接点21と第2接点22との曲げ位置を前後にずらすことで、第1接点21と第2接点22との動作タイミングをずらすことも可能である。
即ち、トリガ30を後方にスライドさせるときに、図6(C)に示すように、第1接点21が第2接点22に対して寸法Xだけ手前位置で(早く)オン動作するようにし、トリガ30を前方に戻すときに、図6(D)に示すように、第2接点22が第1接点21に対して寸法Xだけ後の位置で(早く)オン動作するように構成することも可能である。
【0023】
また、図7(C)〜(E)に示すように、第1接点21と端子(1)(2)(3)からなる第1スイッチ210と、第2接点22と端子(4)(5)(6)からなる第2スイッチ220とを設け、第1スイッチ210と第2スイッチ220とをトリガ30により動作させる構成でも可能である。
即ち、第1スイッチ210は、第1接点22と端子(1)(2)(3)とを収納するケース21cを備えており、そのケース21cに動作ピン21pが軸方向に変位可能な状態で装着されている。そして、動作ピン21pがバネ力に抗して押し込まれることで、図7(E)の下図に示すように、第1接点21が端子(2)を支点に左回動し、その第1接点21の可動端が端子(3)に接続される。また、図7(C)に示すように、バネ力で動作ピン21pがケース21cから所定位置まで突出し、第1接点21が端子(2)を支点に右回動した状態で、その第1接点21の可動端が端子(1)に接続される。
第2スイッチ220も、第1スイッチ210と等しい構造であり、動作ピン22pがバネ力に抗して押し込まれることで、図7(E)の上図に示すように、第2接点22の可動端が端子(6)に接続される。また、動作ピン22pがバネ力でケース21cから所定位置まで突出した状態で、第2接点22の可動端が端子(4)に接続される。
【0024】
トリガ30の操作部32には、スライドする過程で第1スイッチ210の動作ピン21pと第2スイッチ220の動作ピン22pとを押圧可能に構成された第1押圧面32aと第2押圧面32bとが形成されている。
第1押圧面32aと第2押圧面32bとは、等しい傾きの傾斜面であり、第1押圧面32aが第2押圧面32bよりも後方に寸法Xだけ突出した状態で形成されている。このため、トリガ30の引き操作により、最初に第1押圧面32aが第1スイッチ210の動作ピン21pを押圧し、第1接点21が端子(3)に接続される。そして、次に、第2押圧面32bが第2スイッチ220の動作ピン22pを押圧し、第2接点22が端子(6)に接続される。
また、トリガ30の戻し操作により、最初に第2押圧面32bが第2スイッチ220の動作ピン22pから離れて、第2接点22が端子(4)に接続される。次に、第1押圧面32aが第1スイッチ210の動作ピン21pから離れ、第1接点21が端子(1)に接続されるようになる。
【符号の説明】
【0025】
11・・・固定子巻き線
14・・・アーマチュア
20・・・モータ駆動スイッチ
21・・・第1接点
(1)端子・・アーマチュアP側端子
(2)端子・・固定子巻き線の一端側端子
(3)端子・・電源P側端子
22・・・第2接点
(4)端子・・アーマチュアN側端子
(5)端子・・固定子巻き線の他端側端子
(6)端子・・アーマチュアP側端子
30・・・トリガ
32・・・操作部
36・・・第1突起
37・・・第2突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの固定子巻き線の一端に接続されており、電源のP側に接続されている電源P側端子、あるいはアーマチュアのP側に接続されているアーマチュアP側端子に切替え可能な第1接点と、前記固定子巻き線の他端に接続されており、前記アーマチュアP側端子、あるいはそのアーマチュアのN側に接続されているアーマチュアN側端子に切替え可能な第2接点とを備え、
前記モータの起動操作で、前記第1接点が電源P側端子、前記第2接点が前記アーマチュアP側端子に切替わり、これにより前記固定子巻き線と前記アーマチュアとが電源のP側とN側間で直列に接続されて前記モータが起動され、
前記モータの起動解除操作で、前記第1接点が前記アーマチュアP側端子、前記第2接点が前記アーマチュアN側端子に切替わり、前記固定子巻き線と前記アーマチュアとが閉ループを作って前記モータにブレーキが掛かるように構成されたモータ制御回路において使用されるモータ駆動スイッチであって、
前記モータの起動操作において、前記第1接点が電源P側端子に切替わるタイミングは、前記第2接点が前記アーマチュアP側端子に切替わるタイミングよりも早くなるように設定されており、
前記モータの起動解除操作で、前記第2接点が前記アーマチュアN側端子に切替わるタイミングは、前記第1接点が前記アーマチュアP側端子に切替わるタイミングより早くなるように設定されていることを特徴とするモータ駆動スイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載されたモータ駆動スイッチであって、
停止位置から起動位置までスライドすることでモータの起動操作を行い、前記起動位置から停止位置まで戻ることで前記モータの起動解除操作を行なうトリガを備えており、
前記トリガには、スライド過程で前記第1接点と第2接点とをそれぞれ押圧する第1突起と第2突起とが形成されており、
前記前記第1接点と前記第2接点とは、中央が支点により支持された略円弧形の天秤状に構成されて、前記第1突起、前記第2突起に押圧される位置が変わることで前記支点を中心に回動し、接続が切替わる構成であり、
前記第1突起と前記第2突起とがスライド方向ずれて配置されることで、前記第1接点と前記第2接点との切替えタイミングがずれるように構成されていることを特徴とするモータ駆動スイッチ。
【請求項3】
請求項1に記載されたモータ駆動スイッチであって、
停止位置から起動位置までスライドすることでモータの起動操作を行い、前記起動位置から停止位置まで戻ることで前記モータの起動解除操作を行なうトリガを備えており、
前記トリガには、スライド過程で前記第1接点と第2接点とをそれぞれ押圧する第1突起と第2突起とが形成されており、
前記前記第1接点と前記第2接点とは、中央が支点により支持された略円弧形の天秤状に構成されて、前記第1突起、前記第2突起に押圧される位置が変わることで前記支点を中心に回動し、接続が切替わる構成であり、
前記第1接点と前記第2接点との曲げ位置をスライド方向にずらすことで、前記第1接点と前記第2接点との切替えタイミングがずれるように構成されていることを特徴とするモータ駆動スイッチ。
【請求項4】
請求項1に記載されたモータ駆動スイッチであって、
停止位置から起動位置までスライドすることでモータの起動操作を行い、前記起動位置から停止位置まで戻ることで前記モータの起動解除操作を行なうトリガを備えており、
前記第1接点及び第2接点はケース内に収納されて、そのケースから突出している動作ピンを押圧、あるいは押圧解除することで接続が切替わる構成であり、
前記トリガには、前記第1接点の動作ピンと第2接点の動作ピンとを押圧するための第1押圧面と第2押圧面とがスライド方向にずれた状態で形成されていることを特徴とするモータ駆動スイッチ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−50165(P2012−50165A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187048(P2010−187048)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】