説明

モータ駆動回路

【課題】起動時のモータの脱調や逆回転を抑制する。
【解決手段】モータの駆動コイルに駆動電流を供給する出力トランジスタと、駆動コイルの各相の電圧と中性点の電圧とを比較する第1のコンパレータ回路と、第1のコンパレータ回路の比較結果に基づいてモータの回転子の位置を検出する位置検出回路と、回転子の位置に応じてパルス振幅変調されたスイッチング信号を生成し、出力トランジスタに供給するスイッチング制御回路と、回転子の位置に基づいてモータが目標回転速度以下の基準回転速度以上で回転しているか否かを判定し、モータが基準回転速度以上で回転していると判定した場合には、モータが目標回転速度で回転するように駆動電流を第1の電流値に制限し、モータが基準回転速度以上で回転していないと判定した場合には、駆動電流を第1の電流値より小さい第2の電流値に制限する電流制限回路と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
複数相(例えば3相)の駆動コイルを備えたブラシレス直流モータの駆動方式として、ホール素子などの位置検出素子を必要としない、センサレス方式が知られている。当該センサレス方式は、駆動コイルに発生する逆起電圧を利用しており、各相の駆動コイルの電圧を中性点の電圧と比較することによって、ロータ(回転子)の位置を検出することができる。
【0003】
また、駆動コイルに駆動電流を供給する出力トランジスタの制御方式としては、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)方式のほか、例えば特許文献1ないし特許文献3に開示されているPAM(Pulse Amplitude Modulation:パルス振幅変調)方式が知られている。当該PAM方式では、パルス振幅変調されたスイッチング信号が出力トランジスタに供給される。
【0004】
ここで、センサレス方式の3相モータをPAM方式で駆動する、一般的なモータ駆動回路の構成の一例を図4に示す。
【0005】
図4に示されているモータ駆動回路1bにおいて、コンパレータ回路21は、駆動コイル61ないし63の各相の電圧U、V、Wと中性点の電圧COMとを比較する。また、位置検出回路11は、比較結果信号CMPに基づいてモータ6のロータの位置を検出する。さらに、スイッチング制御回路12は、ロータ位置信号RPに応じてパルス振幅変調されたスイッチング信号S41ないしS43、およびS51ないしS53を生成し、それぞれ出力トランジスタ41ないし43、51ないし53に供給する。そして、各出力トランジスタは、駆動コイル61ないし63に駆動電流を供給し、当該駆動電流の電流値は、電圧RFとして検出される。
【0006】
モータ駆動回路1bにおいて、コンパレータ回路14は、電圧RFと電圧V1とを比較し、電流制限信号LMTを出力する。また、スイッチング制御回路12は、電流制限信号LMTに応じて各スイッチング信号の振幅を制限し、駆動電流を所定の電流値に制限する。したがって、コンパレータ回路14は、駆動電流を制限する電流制限回路として機能し、モータ駆動回路1bは、モータ6を目標回転速度で回転させることができる。
【0007】
このようにして、センサレス方式の3相モータをPAM方式で駆動し、目標回転速度で回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−350490号公報
【特許文献2】特開2002−142484号公報
【特許文献3】特開2008−259340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、センサレス方式のモータ駆動回路は、起動時にロータの位置を検出することができないため、スイッチング制御回路は、駆動電流として所定の起動電流が供給されるように、予め定められたスイッチング信号を生成する。そして、当該起動電流によってモータが回転を開始すると、ロータの位置を検出することができるようになるため、スイッチング制御回路は、当該ロータの位置に応じてスイッチング信号を生成する。
【0010】
しかしながら、モータの目標回転速度が高速に設定されている場合には、大きな起動電流が駆動コイルに供給され、スイッチング信号の切り替えのタイミングより速くモータが回転してしまう場合がある。そのため、起動時にモータが脱調したり、逆回転したりする場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を解決する主たる本発明は、モータの複数相の駆動コイルに駆動電流を供給する複数の出力トランジスタと、前記複数相の駆動コイルの各相の電圧と前記複数相の駆動コイルの中性点の電圧とを比較する第1のコンパレータ回路と、前記第1のコンパレータ回路の比較結果に基づいて前記モータの回転子の位置を検出する位置検出回路と、前記回転子の位置に応じてパルス振幅変調されたスイッチング信号を生成し、前記複数の出力トランジスタに供給するスイッチング制御回路と、前記回転子の位置に基づいて前記モータが目標回転速度以下の所定の基準回転速度以上で回転しているか否かを判定し、前記モータが前記所定の基準回転速度以上で回転していると判定した場合には、前記モータが前記目標回転速度で回転するように前記駆動電流を第1の電流値に制限し、前記モータが前記所定の基準回転速度以上で回転していないと判定した場合には、前記駆動電流を前記第1の電流値より小さい第2の電流値に制限する電流制限回路と、を有することを特徴とするモータ駆動回路である。
【0012】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、起動時のモータの脱調や逆回転を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態におけるモータ駆動回路全体の構成を示す回路ブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態における電流制限回路の構成を示す回路ブロック図である。
【図3】本発明の第2実施形態における電流制限回路の構成を示す回路ブロック図である。
【図4】電流制限回路を備えた一般的なモータ駆動回路全体の構成の一例を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0016】
<第1実施形態>
===モータ駆動回路全体の構成===
以下、図1を参照して、本発明の第1の実施形態におけるモータ駆動回路全体の構成について説明する。
【0017】
図1に示されているモータ駆動回路1aは、3相の駆動コイル61ないし63を備えたセンサレス方式のモータ6をPAM方式で駆動するための回路であり、端子31ないし38を備えた集積回路として構成されている。また、モータ駆動回路1aは、位置検出回路11、スイッチング制御回路12、電流制限回路13、コンパレータ回路21、選択回路22、および出力トランジスタ41ないし43、51ないし53を含んで構成されている。さらに、モータ駆動回路1aには、モータ6のほか、抵抗7、およびコンデンサ8が接続されている。
【0018】
なお、以下においては、出力トランジスタの一例として、それぞれダイオードが逆並列に接続されたNPNトランジスタを用いる場合について説明する。また、駆動コイル61ないし63の各相を、それぞれU相、V相、およびW相とする。
【0019】
ハイサイドの出力トランジスタ41ないし43のコレクタは、いずれも端子35を介して電源電位VCCに接続されている。また、ローサイドの出力トランジスタ51ないし53のエミッタは、いずれも端子36に外部接続される抵抗7を介してグランド電位に接続されている。さらに、出力トランジスタ41ないし43は、それぞれ出力トランジスタ51ないし53と直列に接続され、各接続点は、端子31ないし33に接続されている。そして、端子31ないし33には、それぞれ駆動コイル61ないし63が接続され、駆動コイル61ないし63の中性点は、端子34に接続されている。
【0020】
選択回路22には、端子31ないし34のそれぞれの電圧U、V、W、およびCOMが入力されている。また、選択回路22から(第1の)コンパレータ回路21には、入力電圧Vinおよび基準電圧Vrefが入力されている。さらに、入力電圧Vinおよび基準電圧Vrefの信号線間には、端子37および38を介して、コンデンサ8が外部接続されている。そして、コンパレータ回路21からは、比較結果信号CMPが出力されている。
【0021】
位置検出回路11には、比較結果信号CMPが入力され、位置検出回路11からは、ロータ位置信号RPが出力されている。また、電流制限回路13には、ロータ位置信号RPおよび端子36の電圧RFが入力され、電流制限回路13からは、電流制限信号LMTが出力されている。なお、電流制限回路13の構成についての詳細な説明は後述する。
【0022】
スイッチング制御回路12には、ロータ位置信号RPおよび電流制限信号LMTが入力されている。そして、スイッチング制御回路12から出力されるスイッチング信号S41ないしS43、およびS51ないしS53は、それぞれ出力トランジスタ41ないし43、および51ないし53のベースに入力されている。
【0023】
===モータ駆動回路全体の動作===
次に、本実施形態におけるモータ駆動回路全体の動作について説明する。
出力トランジスタ41ないし43、51ないし53は、スイッチング信号S41ないしS43、およびS51ないしS53に応じてスイッチング制御され、モータ6の駆動コイル61ないし63に駆動電流を供給する。
【0024】
例えば、出力トランジスタ41および52がオンとなっている場合、電源電位VCCから、出力トランジスタ41、駆動コイル61、62、出力トランジスタ52、および抵抗7を介して、グランド電位へと駆動電流が流れる。したがって、この場合には、U相からV相へと駆動電流が流れることとなる。また、例えば、出力トランジスタ43および52がオンとなっている場合には、W相からV相へと駆動電流が流れることとなる。なお、駆動電流の電流値は、電圧RFとして検出される。
【0025】
選択回路22は、端子31ないし33(U相、V相、およびW相)のそれぞれの電圧U、V、およびWのうちの何れか1つを順次選択し、入力電圧Vinとしてコンパレータ回路21に入力する。また、選択回路22は、端子34(駆動コイル61ないし63の中性点)の電圧COMを、基準電圧Vrefとしてコンパレータ回路21に入力する。さらに、コンデンサ8は、入力電圧Vinおよび基準電圧Vrefの信号線間に接続されることによって、コンパレータ回路21の入力信号のノイズを除去するフィルタとして機能する。そして、コンパレータ回路21は、入力電圧Vinと基準電圧Vrefとを比較し、当該比較結果を2値信号である比較結果信号CMPとして出力する。
【0026】
位置検出回路11は、比較結果信号CMPに基づいてモータ6のロータの位置を検出し、ロータが1回転する間の1つ以上の所定の位置を示すロータ位置信号RPを出力する。また、電流制限回路13は、ロータ位置信号RPから求められるモータ6の回転速度、および電圧RFが示す駆動電流の電流値に応じて電流制限信号LMTを出力する。なお、電流制限回路13の動作についての詳細な説明は後述する。
【0027】
スイッチング制御回路12は、ロータ位置信号RPに応じてパルス振幅変調されたスイッチング信号S41ないしS43、およびS51ないしS53を生成し、それぞれ出力トランジスタ41ないし43、51ないし53に供給する。また、スイッチング制御回路12は、電流制限信号LMTに応じて各スイッチング信号の振幅を制限し、駆動電流を制限する。
【0028】
このようにして、モータ駆動回路1aは、各スイッチング信号の振幅を制限することによって、駆動電流を制限し、モータ6を目標回転速度で回転させることができる。
【0029】
===電流制限回路の構成===
以下、図2を参照して、本実施形態における電流制限回路の構成について説明する。
図2に示されている電流制限回路13aは、回転判定回路131、コンパレータ回路132、およびスイッチ回路133、134を含んで構成されている。なお、本実施形態では、スイッチ回路133および134が、電圧出力回路に相当する。
【0030】
回転判定回路131には、ロータ位置信号RPが入力されている。また、回転判定回路131から出力される起動モード信号STRおよびその反転信号は、それぞれスイッチ回路133および134をオン・オフ制御するための制御信号となっている。さらに、スイッチ回路133および134の一端は、いずれも(第2の)コンパレータ回路132の反転入力に接続され、他端には、それぞれ(第1の)電圧V1および(第2の)電圧V2が印加されている。そして、コンパレータ回路132の非反転入力には、電圧RFが印加され、コンパレータ回路132からは、電流制限信号LMTが出力されている。
【0031】
===電流制限回路の動作===
次に、本実施形態における電流制限回路の動作について説明する。
回転判定回路131は、ロータ位置信号RPから求められるモータ6の回転速度に基づいて、モータ6が所定の基準回転速度以上で回転しているか否かを判定する。ここで、基準回転速度は、モータ6の目標回転速度以下の範囲で設定され、モータ6が正常に回転しているか否かの判定基準となる。
【0032】
なお、モータ6の回転速度は、例えば、積分回路(低域通過フィルタ)などを用いて、ロータ位置信号RPを平滑化することによって、電圧として検出することができる。また、例えば、当該電圧によって制御されるVCO(Voltage-Controlled Oscillator:電圧制御発振回路)を用いて、周波数として検出することもできる。そして、回転判定回路131は、モータ6が正常に(基準回転速度以上で)回転している場合には、起動モード信号STRをロー・レベルとし、起動時など、モータ6が正常に回転していない場合には、起動モード信号STRをハイ・レベルとする。
【0033】
起動モード信号STRがロー・レベルの場合には、スイッチ回路133はオンとなり、スイッチ回路134はオフとなる。そのため、コンパレータ回路132は、電圧RFが電圧V1以上の間ハイ・レベルとなる電流制限信号LMTを出力する。そして、駆動コイル61ないし63に供給される駆動電流は、モータ6が目標回転速度で回転するように、電圧V1に対応する第1の電流値に制限される。
【0034】
一方、起動モード信号STRがハイ・レベルの場合には、図2に示されているように、スイッチ回路133はオフとなり、スイッチ回路134はオンとなる。そのため、コンパレータ回路132は、電圧RFが電圧V2以上の間ハイ・レベルとなる電流制限信号LMTを出力する。ここで、電圧V2は、電圧V1より低い電圧に設定される。したがって、駆動コイル61ないし63に供給される駆動電流は、電圧V2に対応する、第1の電流値より小さい第2の電流値に制限される。
【0035】
このようにして、本実施形態の電流制限回路13aは、起動時のようにモータ6が正常に回転していない場合には、正常に回転している場合より小さい電流値に駆動電流を制限する。そのため、起動時には、実質的にモータ6の目標回転速度が低速に抑えられ、脱調や逆回転を抑制することができる。
【0036】
<第2実施形態>
===電流制限回路の構成===
本発明の第2の実施形態におけるモータ駆動回路全体の構成および動作は、第1実施形態のモータ駆動回路全体の構成および動作と略同様である。しかしながら、本実施形態のモータ駆動回路では、さらに、スイッチング制御回路から電流制限回路にスイッチング周期信号CYCが入力されている。
【0037】
以下、図3を参照して、本実施形態における電流制限回路の構成について説明する。
図3に示されている電流制限回路13bは、回転判定回路131、コンパレータ回路132、スイッチ回路133、134、カウンタ回路135、選択回路136、および抵抗R0ないしR3を含んで構成されている。なお、本実施形態では、スイッチ回路133、134、カウンタ回路135、選択回路136、および抵抗R0ないしR3が、電圧出力回路に相当する。
【0038】
カウンタ回路135は、4進カウンタとして構成されており、CK入力(クロック入力)には、スイッチング周期信号CYCが入力され、CL入力(クリア入力)には、起動モード信号STRの反転信号が入力されている。また、カウンタ回路135からは、カウント値CNTが出力されている。
【0039】
抵抗R0ないしR3は、当該順序で直列に接続され、抵抗R0およびR3の一端が、それぞれグランド電位および電位V2に接続されている。ここで、抵抗R0ないしR3の抵抗値は等しく、各抵抗の接続点の電圧は、それぞれ電圧V2に対して25%、50%、75%の電圧であるものとする。
【0040】
選択回路136は、4入力1出力のマルチプレクサとして構成されており、選択制御入力には、カウンタ回路135のカウント値CNTが入力されている。また、CNT=0ないし2に対応するデータ入力は、上記の各抵抗の接続点に接続され、CNT=3に対応するデータ入力は、電位V2に接続されている。
【0041】
第1実施形態の電流制限回路13aと同様に、回転判定回路131には、ロータ位置信号RPが入力されている。また、回転判定回路131から出力される起動モード信号STRおよびその反転信号は、それぞれスイッチ回路133および134をオン・オフ制御するための制御信号となっている。さらに、スイッチ回路133および134の一端は、いずれも(第2の)コンパレータ回路132の反転入力に接続されている。
【0042】
スイッチ回路133の他端には、(第1の)電圧V1が印加されている。一方、スイッチ回路134の他端は、選択回路136の出力に接続されている。したがって、本実施形態では、選択回路136の出力電圧が第2の電圧に相当する。そして、コンパレータ回路132の非反転入力には、電圧RFが印加され、コンパレータ回路132からは、電流制限信号LMTが出力されている。
【0043】
===電流制限回路の動作===
次に、本実施形態における電流制限回路の動作について説明する。
第1実施形態の電流制限回路13aと同様に、回転判定回路131は、モータ6が正常に回転している場合には、起動モード信号STRをロー・レベルとし、モータ6が正常に回転していない場合には、起動モード信号STRをハイ・レベルとする。また、起動モード信号STRがロー・レベルの場合には、スイッチ回路133はオンとなり、スイッチ回路134はオフとなる。そのため、コンパレータ回路132は、電圧RFが電圧V1以上の間ハイ・レベルとなる電流制限信号LMTを出力する。そして、駆動コイル61ないし63に供給される駆動電流は、モータ6が目標回転速度で回転するように、電圧V1に対応する第1の電流値に制限される。
【0044】
一方、起動モード信号STRがハイ・レベルの場合には、図3に示されているように、スイッチ回路133はオフとなり、スイッチ回路134はオンとなる。また、カウンタ回路135は、スイッチング周期信号CYCでカウントを開始し、カウント値CNTは、0から3まで順次増加する。
【0045】
なお、スイッチング周期信号CYCは、各スイッチング信号の周期を示す信号であり、例えばモータ6のロータを1回転させるための6ステップの周期ごとのパルス信号である。この場合、カウンタ回路135のカウント値CNTは、当該6ステップの周期ごとに順次増加し、選択回路136の出力電圧は、当該カウント値CNTに応じて、電圧V2に対して25%から100%の電圧まで25%刻みで順次上昇する。
【0046】
そして、コンパレータ回路132は、電圧RFが、このようにスイッチング信号の周期に応じて徐々に上昇する選択回路136の出力電圧(第2の電圧)以上の間ハイ・レベルとなる電流制限信号LMTを出力する。したがって、駆動コイル61ないし63に供給される駆動電流は、当該第2の電圧の上昇に対応して徐々に大きくなる第2の電流値に制限される。
【0047】
前述したように、第1実施形態の電流制限回路13aは、起動時のようにモータ6が正常に回転していない場合に駆動電流を所定の電流値に制限することによって、モータ6の回転速度を低速に抑えている。そのため、起動時の負荷によっては、モータ6が十分に回転することができない場合もあり得る。また、重負荷での起動に対応するため、駆動電流を制限する電流値を大きくすると、軽負荷での起動時に脱調や逆回転を抑制することができなくなってしまう。
【0048】
一方、本実施形態の電流制限回路13bでは、モータ6が正常に回転していない場合に駆動電流を制限する電流値が徐々に大きくなる。そのため、軽負荷から重負荷までの広い範囲の負荷に対応することができ、重負荷での起動時にモータ6を確実に回転させつつ、軽負荷での起動時に脱調や逆回転を抑制することができる。
【0049】
前述したように、センサレス方式の3相モータ6をPAM方式で駆動するためのモータ駆動回路1aにおいて、起動時のようにモータ6が正常に回転していない場合には、正常に回転している場合より小さい第2の電流値に駆動電流を制限することによって、起動時には、実質的にモータ6の目標回転速度が低速に抑えられ、脱調や逆回転を抑制することができる。
【0050】
また、駆動電流の電流値を示す電圧RFが第1の電圧または第2の電圧に達したことを検出して各スイッチング信号の振幅を制限することによって、駆動電流を制限することができる。
【0051】
また、モータ6が所定の基準回転速度以上で回転しているか否かの判定結果に応じて電圧RFと第1の電圧または第2の電圧とを比較することによって、当該比較結果に応じて各スイッチング信号の振幅を制限することができる。
【0052】
また、第2の電圧を徐々に上昇させることによって、軽負荷から重負荷までの広い範囲の負荷に対応することができる。
【0053】
さらに、スイッチング信号の周期に応じて第2の電圧を徐々に上昇させることによって、起動時のスイッチング制御に対して十分にゆっくりと第2の電圧を上昇させることができる。
【0054】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0055】
例えば、コンデンサ8は、ノイズを除去するために設けられたものであるが、ノイズの発生状況によっては不要となる場合がある。
【0056】
また、コンパレータ21は、選択回路22を介さずにモータ6と接続されてもよい。この場合には、コンパレータは、各相に対応するように設けられる。
【0057】
また、上記第2実施形態では、第2の電圧を25%刻みで順次上昇させているが、これに限定されるものではない。例えば、コンデンサを一定の電流値で充電することによって、第2の電圧を一定の傾きで徐々に上昇させてもよい。なお、図3に示した電流制限回路13bの電圧出力回路の構成は、コンデンサを用いないため、回路面積を抑えつつ、起動時のスイッチング制御に対して十分にゆっくりと第2の電圧を上昇させることができる。
【符号の説明】
【0058】
1a、1b モータ駆動回路
6 モータ
7 抵抗
8 コンデンサ
11 位置検出回路
12 スイッチング制御回路
13(13a、13b) 電流制限回路
14 コンパレータ回路(電流制限回路)
21 コンパレータ回路
22 選択回路
31〜38 端子
41〜43 出力トランジスタ
51〜53 出力トランジスタ
61〜63 駆動コイル
131 回転判定回路
132 コンパレータ回路
133、134 スイッチ回路
135 カウンタ回路
136 選択回路
R0〜R3 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの複数相の駆動コイルに駆動電流を供給する複数の出力トランジスタと、
前記複数相の駆動コイルの各相の電圧と前記複数相の駆動コイルの中性点の電圧とを比較する第1のコンパレータ回路と、
前記第1のコンパレータ回路の比較結果に基づいて前記モータの回転子の位置を検出する位置検出回路と、
前記回転子の位置に応じてパルス振幅変調されたスイッチング信号を生成し、前記複数の出力トランジスタに供給するスイッチング制御回路と、
前記回転子の位置に基づいて前記モータが目標回転速度以下の所定の基準回転速度以上で回転しているか否かを判定し、前記モータが前記所定の基準回転速度以上で回転していると判定した場合には、前記モータが前記目標回転速度で回転するように前記駆動電流を第1の電流値に制限し、前記モータが前記所定の基準回転速度以上で回転していないと判定した場合には、前記駆動電流を前記第1の電流値より小さい第2の電流値に制限する電流制限回路と、
を有することを特徴とするモータ駆動回路。
【請求項2】
前記電流制限回路は、前記モータが前記所定の基準回転速度以上で回転していると判定した場合には、前記駆動電流の電流値を示す電圧が前記第1の電流値を示す第1の電圧に達したことを検出して電流制限信号を出力し、前記モータが前記所定の基準回転速度以上で回転していないと判定した場合には、前記駆動電流の電流値を示す電圧が前記第2の電流値を示す第2の電圧に達したことを検出して前記電流制限信号を出力し、
前記スイッチング制御回路は、前記電流制限信号に応じて前記スイッチング信号の振幅を制限することを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動回路。
【請求項3】
前記電流制限回路は、
前記モータが前記所定の基準回転速度以上で回転しているか否かを判定する回転判定回路と、
前記回転判定回路の判定結果に応じて前記第1の電圧または前記第2の電圧を出力する電圧出力回路と、
前記駆動電流の電流値を示す電圧と前記電圧出力回路の出力電圧とを比較する第2のコンパレータ回路と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載のモータ駆動回路。
【請求項4】
前記電圧出力回路は、前記第2の電圧を出力する場合に、当該第2の電圧を徐々に上昇させることを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動回路。
【請求項5】
前記電圧出力回路は、前記第2の電圧を出力する場合に、前記スイッチング信号の周期に応じて当該第2の電圧を徐々に上昇させることを特徴とする請求項4に記載のモータ駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−176918(P2011−176918A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37791(P2010−37791)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(311003743)オンセミコンダクター・トレーディング・リミテッド (166)
【Fターム(参考)】