説明

モータ

【課題】振動や騒音が少なく、低コストで、且つ、コンパクトなモータを得る。
【解決手段】軸受部11の内周面11a(ラジアル軸受面)及び内底面11b(スラスト軸受面)のうちの少なくとも一方と、ステータコア部12とを、焼結金属で一体成形する。これにより、ラジアル軸受面あるいはスラスト軸受面に対するステータコア部12の相対的な位置が高精度に設定され、ステータコイル20とマグネット6との間の吸引力を均一化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関し、特に、流体動圧軸受でロータを回転自在に支持するモータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、流体動圧軸受によりロータを回転自在に支持するスピンドルモータが示されている。具体的には、図6に示すように、ロータ101に設けられたシャフト102の外周面と、軸受部材103の内周面(ラジアル軸受面103a)との間のラジアル軸受隙間に生じる流体の動圧で、ロータ101が回転自在にラジアル方向に支持される。また、軸受部材103に固定されたスラストプレート104の上側端面(スラスト軸受面104a)とシャフト102の下端面との間のスラスト軸受隙間に生じる流体の動圧で、ロータ101が回転自在にスラスト方向に支持される。動圧軸受は優れた回転精度および静粛性を有するため、例えば転がり軸受で支持する場合と比べて、ロータ101の回転時の振動や騒音を低減することができる。
【0003】
上記のスピンドルモータでは、軸受部材103の外周面にベース105が固定され、さらにベース105の外周面にステータコイル110が固定される。ステータコイル110は、積層鋼板で形成されたステータコア120と、ステータコア120の外周面に捲回されたコイル130とからなる。ステータコア120は、図7に示すように、ベース105の外周面に固定された円筒部121と、円筒部121から外径方向に放射状に延びた複数の突出部122とを有する。ステータコア120の外径面120a(突出部122の先端面)は、ロータ101の内周に固定された環状のマグネット106の内周面106aと半径方向隙間を介して対向する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−109793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなモータでは、軸受部材103に設けられた軸受面(ラジアル軸受面103a又はスラスト軸受面104a)に対するステータコイル110の位置精度が非常に重要となる。例えば、図8に示すように、ラジアル軸受面103aの中心O1に対してステータコア120の外径面120a(鎖線で示す)の中心O2がずれると、ステータコア120の外径面120aとマグネット106の内周面106aとの間の半径方向隙間G’が円周方向で不均一となる。このため、ステータコイル110とマグネット106との間の吸引力のバランスが崩れ、ロータ101の回転時に振動や騒音が生じる恐れがある。
【0006】
また、スラスト軸受面104aに対するステータコイル110の軸方向位置が所望の位置からずれると、ステータコイル110とマグネット106との間に望まない軸方向の吸引力が生じ、スラスト軸受面に過剰な負荷が加わってトルクの増大を招く恐れがある。特に、ステータコイルとマグネットとを軸方向にずらして配置し、両者の吸引力によりロータの抜け止めを行う場合(図1参照)、両者の軸方向方向位置が精度良く設定されていないと、軸方向の吸引力が不足してロータの抜け止めが行われなかったり、軸方向の吸引力が過剰となってスラスト軸受面に過剰な負荷が加わったりする恐れがある。
【0007】
しかし、上記のモータでは、ラジアル軸受面103aを有する軸受部材103やスラスト軸受面104aを有するスラストプレート104と、ステータコイル110のステータコア120とが別部材で構成され、さらにこれらの間にベース105が介在している。従って、ラジアル軸受面103aやスラスト軸受面104aに対するステータコイル110の位置精度を高めるためには、各部材の寸法精度や組付精度を高める必要があり、コスト高や生産性の低下を招くことになる。
【0008】
また、上記のようにラジアル軸受面103aとステータコイル110との間に複数の部材が介在する場合、各部材にある程度の肉厚が必要となるため、モータ全体の径方向寸法が嵩み、モータの大型化を招くことになる。
【0009】
尚、以上では、ステータコイル110とマグネット106とが半径方向隙間を介して対向する、いわゆるラジアルギャップ型のモータについて説明したが、両者が軸方向隙間を介して対向する、いわゆるアキシャルギャップ型のモータについても、上記と同様の問題が生じる。
【0010】
本発明が解決すべき課題は、振動や騒音が少なく、低コストで、且つ、コンパクトなモータを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するためになされた本発明は、軸部材と、ラジアル軸受面と、スラスト軸受面と、ラジアル軸受面と軸部材の外周面との間のラジアル軸受隙間に生じる流体の動圧で軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部と、スラスト軸受面により軸部材をスラスト方向に支持するスラスト軸受部と、ステータコア部、及び、ステータコア部の外周に捲回されたコイルからなるステータコイルと、軸部材から外径に突出して設けられたロータと、ロータに取り付けられ、ステータコア部と隙間を介して対向するマグネットとを備えたモータであって、ラジアル軸受面及びスラスト軸受面のうちの少なくとも一方と、ステータコア部とが、焼結金属で一体成形されたことを特徴とするものである。
【0012】
尚、スラスト軸受部は、スラスト軸受面により軸部材をスラスト方向に接触支持するもの(例えばピボット軸受)に限らず、スラスト軸受面により軸部材をスラスト方向に非接触支持するもの(例えば流体動圧軸受)を含む。
【0013】
このように、軸受面とステータコア部とを、成形性に優れた焼結金属で一体成形することで、軸受面に対するステータコア部の位置精度が高められる。例えばラジアル軸受面とステータコア部とを一体成形すれば、ラジアル軸受面に対するステータコア部の位置(例えば同軸度)を高精度に設定することができる。これにより、ステータコア部がマグネットに対して高精度に配置され、両者の間の隙間が円周方向で均一化されるため、ロータの回転精度が高められ、モータの振動や騒音の発生を防止することができる。また、スラスト軸受面とステータコア部とを一体成形すれば、スラスト軸受面に対するステータコア部の軸方向位置を高精度に設定できるため、ステータコア部のマグネットに対する軸方向位置が高精度に設定され、過剰な吸引力によるトルクの増大を防止できる。
【0014】
また、軸受面とステータコア部とを一体成形することで、部品点数及び組付工数減により低コスト化が図られる。特に、ラジアル軸受面とステータコア部とを一体成形すれば、これらを複数の部材で構成する場合と比べてラジアル軸受面とステータコア部の外径面との間の径方向寸法を縮小することができ、モータの小型化を図ることができる。
【0015】
軸受面とステータコア部とを焼結金属で一体成形する場合、ラジアル軸受隙間に介在する潤滑流体が焼結金属の内部気孔を介して外部に漏れだす恐れがあるが、潤滑流体として空気を用いれば、流体の漏れ出しを防止する措置を講じることなくモータを構成することができる。また、流体が空気であることで、流体の劣化や耐熱性の問題がない。さらに、流体が空気であることで、軸部材の回転トルクが小さくなり、省エネルギーに寄与することができる。ただし、流体として空気を使用した場合、例えば油を使用した場合と比べて流体動圧軸受の軸受剛性は低いため、ラジアル軸受部に加わる負荷をなるべく小さくする必要がある。そこで、ラジアル軸受面とステータコア部とを焼結金属で一体成形すれば、上記のようにモータの回転精度が高められ、ラジアル軸受部への負荷を軽減できるため、流体として空気を使用することができる。もちろん、流体漏れを防止する措置(例えば封孔処理やシール空間の形成)を講じれば、油や磁性流体等の液体を潤滑流体として使用することもできる。
【0016】
上記のモータでは、軸部材の外周面又はラジアル軸受面に、ラジアル軸受隙間の流体膜に動圧作用を発生させるラジアル動圧発生部を形成することができる。
【0017】
ラジアル軸受面とステータコア部とが焼結金属で一体成形し、この一体成形品(以下、焼結金属部品)の内周面にラジアル動圧発生部を形成する場合、例えば焼結金属部品の型成形(圧縮成形やサイジング)と同時に、焼結金属部品の内周面にラジアル動圧発生部を成形することができる。ただし、上記の焼結金属部品は、ステータコア部における径方向の肉厚が大きくなるため、この部分を外径から圧迫したときに内周面に圧力が加わりにくく、ラジアル動圧発生部を精度良く成形できない恐れがある。また、焼結金属部品の径方向の肉厚が大きいことで、成形後のスプリングバック量も小さくなるため、ラジアル動圧発生部を成形するための成形型を焼結金属部品の内周から引き抜く際に、ラジアル動圧発生部と成形型とが干渉する恐れがある。従って、焼結金属部品のラジアル軸受面は円筒面として、軸部材の外周面にラジアル動圧発生部を形成することが好ましい。
【0018】
また、焼結金属部品を成形した後、焼結金属部品の内周面に後加工でラジアル動圧発生部を形成すれば、焼結金属部品の肉厚に関わらず、ラジアル軸受面にラジアル動圧発生部を精度良く形成することができる。特に、転造加工でラジアル動圧発生部を形成すれば、転造型の圧迫による塑性流動を焼結金属部品の内部気孔で吸収することができるため、ラジアル動圧発生部を精度良く形成することができる。
【0019】
上記の焼結金属の原料となる金属粉に絶縁層をコーティングすれば、ステータコイルの鉄損を全方位において低減することができる。
【0020】
上記の焼結金属は、例えば鉄系金属粉を原料とすることができる。
【0021】
上記のモータは、例えばロータにファンが設けられたファンモータとして使用することができる。上記のように、モータのラジアル軸受面とステータコア部を一体成形することで、これらの間の半径方向寸法を縮小することができるため、その分だけファンの面積を拡大すれば、単位回転数あたりの風量を増大することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、軸受面とステータコア部を焼結金属で一体成形することにより、振動や騒音が少なく、低コストで、且つ、コンパクトなモータを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るモータの断面図である。
【図2】図1の拡大図である。
【図3】図1のX−X線における断面図である。
【図4】他の実施形態に係るモータの断面図である。
【図5】他の実施形態に係るモータの断面図である。
【図6】従来のモータの断面図である。
【図7】図6のモータのY−Y線における断面図である。
【図8】ラジアル軸受面とステータコア部の外径面とが偏心した様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1に、本発明の一実施形態に係るモータ(ファンモータ1)を示す。このファンモータ1は、軸部材2と、軸部材2に固定され、外周にフィン3を有するロータ4と、ロータ4の内周にヨーク5を介して取り付けられたマグネット6と、内周に軸部材2が挿入された焼結金属部品10と、焼結金属部品10が固定されたケーシング7とを有する。
【0026】
軸部材2は、金属材料(例えばステンレス鋼)で形成される。軸部材2の外周面2aには、ラジアル動圧発生部が形成される。本実施形態では、図2に示すように、軸部材2の外周面2aの軸方向に離隔した2箇所の領域に、ラジアル動圧発生部としてヘリングボーン形状の動圧溝2a1,2a2が形成される(網掛部は丘部)。軸部材2の下端には、下に凸の球面部2bが設けられる。尚、軸部材2の外周面2aには、潤滑性を付与するためにコーティングを施しても良い。コーティング材としては、例えばDLC(ダイヤモンドライクカーボン)、TiN、Ni、MoS2、フッ素樹脂などを使用することができる。
【0027】
ロータ4は、軸部材2の上端から外径に突出して設けられる。本実施形態のロータ4は、図1に示すように、軸部材2の外周面2aに固定された円盤部4aと、円盤部の外径端から下方に延びた円筒部4bと、円筒部4bの外周面から外径に延びた複数のフィン3とを一体に有する。ヨーク5は、金属材料で形成され、マグネット6を外周から覆うように設けられる。図示例では、軸部材2の外周面2aに固定されると共に、ロータ4の円盤部4aの下側端面に圧入等により固定された円盤部5aと、円盤部5aの外径端から下方に延び、ロータ4の円筒部4bの内周面に固定された円筒部5bとを有する。ロータ4は、例えば軸部材2及びヨーク5をインサート部品として樹脂で射出成形される。ヨーク5の円筒部5bの内周面には、マグネット6が固定される。本実施形態では、マグネット6は全周で連続した円筒状を成している(図3参照)。
【0028】
焼結金属部品10は、図2及び図3に示すように、内周に軸部材2が挿入された軸受部11と、軸受部11から外径に突出した複数のステータコア部12と、軸受部11から下方に突出した円柱状の固定部13とを一体に有する。各ステータコア部12の外周にはコイル21が捲回され、これによりステータコイル20が構成される。ステータコイル20に通電すると、ステータコイル20とマグネット6との吸引力によりロータ4が回転する。また、ステータコイル20はマグネット6に対して下方にずらして配置されている。これにより、ステータコイル20とマグネット6との吸引力の軸方向成分で、マグネット6を含む回転側の部材を下向きに付勢し、ロータ3の抜け止めが行われる。
【0029】
軸受部11の内周面11aはラジアル軸受面として機能し、本実施形態では平滑な円筒面状に形成される。軸受部11の内底面11bはスラスト軸受面として機能し、本実施形態では平坦に形成される。固定部13の外周面は、ケーシング7に設けられた内孔に、圧入や接着等の適宜の手段で固定される。あるいは、焼結金属部品10をインサート部品としてケーシング7を樹脂で射出成形することにより、ケーシング7と焼結金属部品10の固定部13とを固定することもできる。
【0030】
ステータコア部12は、円周方向等間隔の複数箇所に設けられ、本実施形態では、図3に示すように9箇所に設けられる。ステータコア部12は、軸受部11の外周面から外径に向けて放射状に突出している。ステータコア部12の先端面12aは円筒面状を成し、環状のマグネット6の内周面6aと半径方向隙間Gを介して対向する。ステータコア部12の上端面及び下端面には凹部12bが設けられ(図2参照)、ステータコア部12の円周方向両側の側面には凹部12cが設けられる(図3参照)。このように凹部12b,12cを設けることにより、ステータコア部12の外周に捲回されるコイル21を半径方向(ステータコア部12の延在方向)で位置決めしやすくなる。また、ステータコア部12の上端面及び下端面に設けた凹部12bにより、コイル21が焼結金属部品10から上方及び下方に突出しないようにする(あるいは突出量を低減する)ことができるため、ステータコイル20の軸方向寸法、ひいてはファンモータ1の軸方向寸法を縮小できる。
【0031】
焼結金属部品10は、焼結金属で一体成形される。焼結金属の原料には、例えば鉄系金属粉末、特に純鉄粉末あるいは珪素―鉄合金粉末を用いることができる。特に、金属粉末に絶縁コーティングを施したものを使用すれば、全方位において、ステータコイル20の通電時の鉄損を低減することができる。絶縁コーティングの材料としては、樹脂(例えばシリコン樹脂)やガラス状化合物(例えばリン酸塩系化合物)等を使用することができる。
【0032】
焼結金属部品10は、金属粉末を金型で圧縮成形することにより所定形状の圧粉体を形成した後、圧粉体を焼結することにより形成される。焼結金属部品10は、流体(空気)が焼結金属の内部気孔に抜けることによる圧力低下を防止するために、なるべく高密度に形成することが好ましく、例えば7.2g/cm3以上に設定される。尚、必要であれば、焼結した後、焼結金属部品10をサイジング金型で整形してもよい。また、焼結金属部品10を成形した後、表面を樹脂等の耐腐食性膜で被覆してもよい。
【0033】
このように、ラジアル軸受面(軸受部11の内周面11a)、スラスト軸受面(軸受部11の内底面11b)、及びステータコア部12(特に先端面12a)を、成形性に優れた焼結金属で一体成形することで、これらの相対的な寸法精度を高めることができる。具体的には、ラジアル軸受面に対するステータコア部12の先端面12aの位置精度(例えば同軸度)が高精度に設定されることにより、ステータコア部12の先端面12aとマグネット6の内周面との間の半径方向隙間Gを円周方向で均一に形成することができる。これにより、ステータコイル20とマグネット6との間の吸引力が円周方向で均一化されるため、ロータ3を安定して回転させることができ、回転時の振動や騒音を低減することができる。
【0034】
また、スラスト軸受面に対するステータコア部12の先端面12aの位置精度が高精度に設定されるため、マグネット6に対するステータコイル20の軸方向位置が高精度に設定される。これにより、両者の間の軸方向の吸引力を適正範囲内に調整することができるため、スラスト軸受面に過剰な負荷が加わることを防止できると共に、ロータ3の抜け止めを確実に行うことができる。
【0035】
ステータコイル20に通電し、ロータ4が軸受部11に対して回転すると、軸受部11の内周面11a(ラジアル軸受面)と軸部材2の外周面2aとの間にラジアル軸受隙間が形成される。このラジアル軸受隙間の流体(本実施形態では空気)の圧力が、軸部材2の外周面2aに形成された動圧溝2a1,2a2により高められ、この動圧により軸部材2をラジアル方向に支持するラジアル軸受部R1,R2が構成される。また、軸受部11の内底面11b(スラスト軸受面)は、軸部材2の下端の球面部2bと接触摺動し、これにより軸部材2をスラスト方向に支持するスラスト軸受部T(ピボット軸受)が構成される。
【0036】
このように、本実施形態では、ラジアル軸受部R1,R2が流体動圧軸受で構成され、且つ、流体として空気を使用している。このため、焼結金属部品10の内部気孔を介した流体漏れの懸念がない。また、流体が空気であることで、流体の劣化や耐熱性の問題がなく、かつ、軸部材2の回転トルクが小さくなる。尚、流体として空気を使用すると、流体動圧軸受による軸受剛性が低下するが、上記のようにラジアル軸受面(軸受部11の内周面11a)とステータコア部12とを焼結金属で一体成形することで、モータの回転精度が高められるため、空気を使用することが可能となる。
【0037】
本発明の実施形態は上記に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付して、重複説明を省略する。
【0038】
上記の実施形態では、焼結金属部品10にラジアル軸受面及びスラスト軸受面の双方が形成される場合を示しているが、これに限られない。例えば、図4に示すように、軸受部11の内底面にスラストプレート30を配し、このスラストプレート30の上側端面30aと軸部材2の球面部2bとでスラスト軸受部Tを構成してもよい。この場合、ラジアル軸受面(軸受部11の内周面11a)とステータコア部12とが焼結金属で一体成形される。あるいは、図5に示すように、軸受部11の内周に円筒部材40を配し、この円筒部材40の内周面40aと軸部材2の外周面とでラジアル軸受隙間(ラジアル軸受部R1,R2)を構成してもよい。この場合、スラスト軸受面(軸受部11の内底面11b)とステータコア部12とが焼結金属で一体成形される。
【0039】
また、上記の実施形態では、軸部材2の外周面2aにラジアル動圧発生部としての動圧溝2a1,2a2を形成する場合を示したが、これに限らず、軸部材2の外周面2aを平滑な円筒面とすると共に、軸受部11の内周面11aにラジアル動圧発生部を形成してもよい。ただし、焼結金属部品10の内周面にラジアル動圧発生部を設ける場合は、後加工でラジアル動圧発生部を形成することが望ましい。中でも転造加工は、転造型の圧迫による塑性流動を焼結金属部品10の内部気孔で吸収することができるため、ラジアル動圧発生部を精度良く形成することができる。
【0040】
また、上記の実施形態では、ラジアル軸受隙間に介在する流体が空気である場合を示したが、これに限らず、例えば油や磁性流体などの液体を使用することもできる。この場合、ラジアル軸受隙間の上端部からの流体漏れや、焼結金属部品10の内部気孔を介した流体漏れを防止する措置を講じる必要がある。例えば、ラジアル軸受隙間の上端にシール空間を設けたり、焼結金属部品10の表面に封孔処理を施したりする方法がある。
【0041】
また、上記の実施形態では、軸部材2の球面部2bと軸受部11の内底面11bとを接触摺動させることによりスラスト軸受部Tを構成しているが、これに限らず、例えばスラスト軸受部Tにも流体動圧軸受を採用してもよい。
【0042】
また、上記の実施形態では、ラジアル動圧発生部がヘリングボーン形状の動圧溝2a1,2a2で構成されているが、これに限らず、スパイラル形状の動圧溝や、多円弧軸受、あるいはステップ軸受をラジアル動圧発生部として採用することもできる。
【0043】
また、上記の実施形態では、ステータコイル20とマグネット6とが半径方向隙間を介して対向させたラジアルギャップ型のモータを示しているが、本発明は、ステータコイルとマグネットとを軸方向隙間を介して対向させたアキシャルギャップ型のモータに適用することもできる。
【0044】
また、上記の実施形態では、本発明をファンモータに適用した場合を示したが、これに限らず、他の用途のモータに使用することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 ファンモータ
2 軸部材
2a 外周面
2a1,2a2 動圧溝(ラジアル動圧発生部)
2b 球面部
3 フィン
4 ロータ
5 ヨーク
6 マグネット
7 ケーシング
10 焼結金属部品
11 軸受部
11a 内周面(ラジアル軸受面)
11b 内底面(スラスト軸受面)
12 ステータコア部
12a 先端面
13 固定部
20 ステータコイル
21 コイル
G 半径方向隙間
R1,R2 ラジアル軸受部
T スラスト軸受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材と、ラジアル軸受面と、スラスト軸受面と、ラジアル軸受面と軸部材の外周面との間のラジアル軸受隙間に生じる流体の動圧で軸部材をラジアル方向に支持するラジアル軸受部と、スラスト軸受面により軸部材をスラスト方向に支持するスラスト軸受部と、ステータコア部、及び、ステータコア部の外周に捲回されたコイルからなるステータコイルと、軸部材から外径に突出して設けられたロータと、ロータに取り付けられ、ステータコア部と隙間を介して対向するマグネットとを備えたモータであって、
ラジアル軸受面及びスラスト軸受面のうちの少なくとも一方と、ステータコア部とが、焼結金属で一体成形されたことを特徴とするモータ。
【請求項2】
ラジアル軸受隙間の流体が空気である請求項1のモータ。
【請求項3】
軸部材の外周面に、ラジアル軸受隙間の流体膜に動圧作用を発生させるラジアル動圧発生部が形成された請求項1又は2のモータ。
【請求項4】
前記焼結金属で形成されたラジアル軸受面を円筒面とした請求項3のモータ。
【請求項5】
ラジアル軸受面に、ラジアル軸受隙間の流体膜に動圧作用を発生させるラジアル動圧発生部が形成された請求項1又は2のモータ。
【請求項6】
前記焼結金属で形成されたラジアル軸受面に、ラジアル動圧発生部が転造加工で形成された請求項5のモータ。
【請求項7】
前記焼結金属が、絶縁層がコーティングされた金属粉を原料としたものである請求項1〜6何れかのモータ。
【請求項8】
前記焼結金属が、鉄系金属粉を原料としたものである請求項1〜7何れかのモータ。
【請求項9】
ロータにファンが設けられた請求項1〜8何れかのモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−151971(P2012−151971A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7988(P2011−7988)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】