説明

ラインヘッド及び画像形成装置

【課題】長寿命化が可能なラインヘッド及びこれを備える画像形成装置を提供すること。
【解決手段】複数の有機EL素子12と、複数の有機EL素子12が積層された導光基板11と、導光基板11の側面から光を照射するLED素子14とを備え、感光ドラム62に光を照射してこれを露光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラインヘッド及びこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光ドラムの表面にトナーを電気的に吸着させる電子写真方式を採用した光プリンタは、出力端末として広く使用されている。このような光プリンタとしては、ヘッド用の発光素子としてレーザを用いたレーザプリンタが実用化されている。しかし、レーザを発光素子として用いたプリンタヘッドは、印刷する用紙サイズを大きくするにしたがって光学系を大きくする必要があるため、小型化が困難であると共に、高コストとなってしまう。そこで、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を発光素子として用い、複雑な光学系を不要とすることによって小型化を図るプリンタヘッドが提供されている。
【0003】
ところが、LEDを発光素子として用いたプリンタヘッドは、1本のライン状に配列した形状で製造することが困難であり、また各LED間の輝度のバラツキが大きいため輝度補正を行う必要がある。そのため、高コストとなってしまうという問題がある。
そこで、有機EL(Electroluminescence)素子を発光素子として用いることにより、大面積の基板に一括して多数形成することを可能とし、小型化及び低コスト化を図るプリンタヘッドが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、光源と感光ドラムとの間に液晶素子からなるシャッタ部材を設け、光源から感光ドラムに向かう照射光の光量を調節するラインヘッドが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−19177号公報
【特許文献2】特開2002−275644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のラインヘッドにおいても、以下の課題が残されている。すなわち、上記従来のラインヘッドでは、例えば高速印刷を行うために有機EL素子から出射する光量を増大させると、有機EL素子への電気的な負担が大きくなるので、長寿命化が困難となる。また、シャッタ部材によって照射光の光量を調節するときにおいても、光源として有機EL素子を用いた場合には高速印刷を行うときに有機EL素子への電気的な負担が大きくなるので、長寿命化が困難となる。
【0005】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、長寿命化が可能なラインヘッド及びこれを備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明にかかるラインヘッドは、感光体に光を照射して露光するラインヘッドであって、複数の発光素子と、該複数の発光素子が積層された導光基板と、該導光基板の側面から光を照射して該基板のうち前記感光体と近接する出射面から出射させる補助発光部材とを特徴とする。
【0007】
この発明では、補助発光部材が感光体に光を照射することで、発光素子の光量が小さくても感光体を露光させることができるため、発光素子に対する電気的な負担を低減して長寿命化が図れる。
すなわち、発光素子が光を照射すると、感光体には発光素子からの光量に応じた光が照射される。また、補助発光部材が導光基板の側面から光を照射して導光基板の出射面から出射させると、感光体には補助発光部材からの光量に応じた光が照射される。そして、感光体のうち駆動された発光素子に対応する領域では、照射された光量が露光するための閾値となる光量を超えることで露光される。このように、発光素子のみによって感光体を露光させるために閾値を超える光量の光を照射する必要がないため、発光素子のみによって感光体を露光することと比較して、発光素子から照射する光量を小さくできる。したがって、発光素子の長寿命化が図れる。
【0008】
また、本発明にかかるラインヘッドは、前記複数の発光素子が、前記導光基板の一面に設けられ、光を該導光基板の出射面から出射させることとしてもよい。
この発明では、導光基板の一面に発光素子を設けて発光素子から導光基板の出射面から光を出射させることで、上述と同様に、発光素子に対する電気的な負担を低減して長寿命化を図る。
【0009】
また、本発明にかかるラインヘッドは、前記補助発光部材による前記感光体への照射光の光量が、該感光体が露光される光量未満であってその近傍であることが好ましい。
この発明では、補助発光部材から感光体に照射される光によって感光体が露光されることを防止すると共に、発光素子が照射する光量をより小さくすることができる。
【0010】
また、本発明にかかるラインヘッドは、前記発光素子の発光波長と前記補助発光部材の発光波長とが、同等であることが好ましい。
この発明では、発光素子による発光波長と補助発光部材による発光波長とをそろえることで、感光体に照射される光のスペクトルが急峻になる。ここで、発光波長を感光体の露光波長帯に合わせることにより、より少ない光量で感光体を露光できる。これにより、感光体への照射光のスポット形状を小さくすることができる。したがって、発光素子をより長寿命化することができると共に、印刷品質の向上が図られる。
【0011】
また、本発明にかかるラインヘッドは、前記補助発光部材が、前記発光素子の駆動と連動して光を照射することが好ましい。
この発明では、発光素子の駆動時に補助発光部材を駆動させて発光素子の非駆動時に駆動させない構成とすることで、感光体が露光させることを確実に防止すると共に、省電力化が図れる。
【0012】
また、本発明にかかるラインヘッドは、前記基板よりも前記感光体に近接して設けられ、該感光体への照射光の光量を調節するシャッタ部材を備えることが好ましい。
この発明では、補助発光部材が感光体に対して感光体が露光する光量の閾値を超える光量で光を照射した場合であっても、シャッタ部材によって光量を調節することで感光体が露光されることを回避できる。したがって、補助発光部材による照射光の光量を大きくし、発光素子による照射光の光量を小さくして発光素子のさらなる長寿命化が可能となる。
また、シャッタ部材によって感光体に照射される光量を調節することで、照射光の階調をより精密に制御することができ、例えば光量を小さくして印刷品質を向上させることや光量を大きくして印刷速度を向上させることなどが容易に行える。
【0013】
また、本発明にかかるラインヘッドは、前記シャッタ部材が、液晶素子であることとしてもよい。
この発明では、液晶素子に電圧を印加することによってその透過率を調節することにより、発光素子による照射光及び補助発光部材による照射光の感光体に対する光量を調整する。
【0014】
また、本発明にかかるラインヘッドは、前記補助発光部材が、発光ダイオードであることとしてもよい。
この発明では、LED素子を用いることで補助発光部材の長寿命化及び小型化が図れる。また、LED素子は、上述したようにラインヘッドを構成する発光素子として用いることが容易ではないが、要求される光の照射位置の精度が発光素子と比較して緩和された補助発光部材であれば容易に適用することができる。
【0015】
また、本発明にかかる画像形成装置は、上述したラインヘッドを備えることを特徴とする。
この発明では、上述したラインヘッドを備えているため、発光素子に対する電気的な負担を低減して長寿命化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明によるラインヘッド及びこれを備える画像形成装置の第1の実施形態を、図面に基づいて説明する。ここで、図1はラインヘッドを備える露光ヘッドを示す概略斜視図、図2は露光ヘッドを示す概略断面図、図3はラインヘッドを示す概略平面図、図4はラインヘッドを示す概略断面図である。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
〔露光ヘッド〕
本実施形態におけるラインヘッド1は、図1及び図2に示すような露光ヘッド2に設けられている。この露光ヘッド2は、筐体3と、筐体3に支持固定されて筐体3及び後述する感光ドラム(感光体)62の間に配置された光学部材4と、ラインヘッド1とを備えている。そして、筐体3には、感光ドラム62側に開口部が形成されており、この開口部に向けて光が出射するようにラインヘッド1を固定している。
【0018】
ラインヘッド1は、図2及び図3に示すように、導光基板11の一面上に一列に設けられた複数(図3では10)の有機EL素子(発光素子)12と、導光基板11の他面(出射面)上に設けられた液晶素子(シャッタ部材)13と、導光基板11の側面から光を入射させるLED素子(補助発光部材)14とを備えている。
【0019】
導光基板11は、図4に示すように、基板本体21と、基板本体21の上面に形成された回路素子部22とを備えている。
基板本体21は、例えばガラスなどの透光性材料で構成されており、平面視でほぼ矩形状となっている。また、基板本体21は、LED素子14から照射された光を導光する導光板として機能する。なお、基板本体21は、有機EL素子12やLED素子14から照射される光を透過する材料であれば、他の材料を用いてもよい。
回路素子部22には、有機EL素子12を駆動させるための駆動素子であるTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)素子及び有機EL素子12に電力を供給するための電源線などの各種配線(図示略)や層間絶縁膜及び平坦化膜(図示略)が形成されている。また、回路素子部22には、上記TFT素子の駆動を制御する駆動制御回路(図示略)が形成されている。なお、上記駆動制御回路は、ラインヘッド1の外部から上記TFT素子の駆動を行う構成としてもよい。
【0020】
有機EL素子12は、導光基板11の一面に設けられており、導光基板11上から順に、陽極層31、発光機能層32及び陰極層33を積層した構成となっている。
陽極層31は、平面視でほぼ円形を有しており、例えばITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)などの透光性の導電材料で構成されている。そして、陽極層31は、上記電源線を介して上記TFT素子に接続されており、この電源線から駆動電流が供給される。
また、陽極層31の外側には、例えばSiOなどの絶縁材料で構成されて隣接する他の有機EL素子12の陽極層31との絶縁性を確保する絶縁層34が形成されている。これにより、各陽極層31間における十分な絶縁性が確保され、隣接する有機EL素子12の間でクロストークが発生することが抑制される。
【0021】
発光機能層32は、陽極層31上から順に、正孔注入層35及び発光層36を積層した構成となっている。
正孔注入層35は、例えば3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などのポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)などの混合物(PEDOT/PSS)などの正孔注入材料によって構成されており、陽極層31から注入した正孔を発光層36に輸送する。ここで、正孔注入層35は、正孔注入材料の分散液を例えばスピンコーティング法によって塗布することで形成されている。
なお、正孔注入材料としては、PEDOT/PSSのほか、ポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン、トリス(8−ヒドロキシキノリノール)アルミニウム、ポリスチレンスルホン酸を用いてもよい。
【0022】
発光層36は、例えば下記の[化1]など発光材料によって構成されており、その層厚が例えば100nmとなっている。ここで、[化1]の溶媒(テトラヒドロフラン)に対する溶液状態における蛍光スペクトルのピーク波長は、656nmとなっている。ここで、発光層36は、発光材料の溶液を上述と同様にスピンコーティング法などによって塗布することで形成されている。
【0023】
【化1】

【0024】
なお、発光材料としては後述する感光ドラム62の露光波長帯に応じて適宜変更してもよく、ポリフルオレン(PF)誘導体やポリパラフェニレンビニレン(PPV)誘導体、ポリパラフェニレン(PPP)誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVK)誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)誘導体などのポリシラン系などの他の高分子有機材料が挙げられる。
また、上述した発光材料に、ペニレン系色素やクマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子有機材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドンなどの低分子有機材料を発光ドーパントとしてドープしてもよい。
【0025】
陰極層33は、発光機能層32の全面を覆うように形成されており、発光機能層32の表面から順に、LiF層、Ca層及びAl層を積層した構成となっている。すなわち、陰極層33は、発光機能層32で発生して陰極層33に向けて進行する光を陽極層31に向けてそれぞれ反射させるように構成されており、反射電極層として機能している。したがって、有機EL素子12は、ボトムエミッション構造となっている。
【0026】
また、有機EL素子12の上面は、封止部39によって被覆されている。この封止部39は、陰極層33を覆うように設けられており、陰極層33や発光層36に対する水や酸素の侵入を防止し、陰極層33及び発光層36の酸化を防止するものである。また、封止部39は、有機EL素子12上に配置された封止樹脂(図示略)と、この封止樹脂上に接合された封止基板(図示略)とで構成されている。
この封止樹脂は、例えば陰極層33上に塗布された熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂で構成される。ここで、封止樹脂としては、硬化時にガスや溶媒などが発生しないものが好ましい。また、上記封止基板は、上記封止樹脂を保護するものであって、例えばガラス板や金属板、樹脂板などで構成されている。
【0027】
液晶素子13は、導光基板11の他面に設けられており、素子基板41と、素子基板41と対向配置された対向基板42と、素子基板41及び対向基板42の間に配置された液晶層43とを備えている。液晶素子13は、有機EL素子12やLED素子14から図1及び図2に示す感光ドラム62へ照射される光量を調節する構成となっている。
液晶素子13は、図4に示すように、素子基板41と対向基板42とをシール材(図示略)で貼り合わせており、このシール材によって液晶層43が素子基板41と対向基板42との間で封止されている。また、液晶素子13は、素子基板41の外面(液晶層43から離間する側の面)に設けられた偏光板44と、対向基板42の外面に設けられた偏光板45とを備えている。
【0028】
素子基板41は、偏光板44を介して導光基板11の他面に設けられており、基板本体51と、基板本体51の上面に形成された回路素子部52とを備えている。そして、素子基板41の内面(液晶層43に近接する側の面)には、液晶層43を駆動する画素電極53が設けられている。
【0029】
基板本体51は、基板本体21と同様にガラスなどの透光性材料で構成されており、平面視でほぼ矩形状となっている。なお、基板本体51は、上述と同様に、有機EL素子12やLED素子14から照射される光を透過すれば、他の材料を用いてもよい。
回路素子部52には、液晶層43を駆動するための駆動素子であるTFT素子及び画素電極53に電力を供給するための電源線などの各種配線(図示略)や層間絶縁膜及び平坦化膜(図示略)が形成されている。また、回路素子部52には、上記TFT素子の駆動を制御する駆動制御回路(図示略)が形成されている。なお、上記駆動制御回路は、ラインヘッド1の外部から上記TFT素子の駆動を行う構成としてもよい。
また、素子基板41の内面には、画素電極53を覆うように液晶層43を構成する液晶分子の初期状態での配向方向を規制する配向膜(図示略)が形成されている。
【0030】
画素電極53は、有機EL素子12と対応して設けられており、陽極層31と同様に平面視で陽極層31と同形状のほぼ円形を有している。また、画素電極53は、陽極層31と同様に、例えばITOなどの透光性の導電材料で構成されている。そして、画素電極53は、回路素子部52に形成された上記電源線を介して上記TFT素子に接続されており、この電源線から駆動電流が供給される。
【0031】
対向基板42は、基板本体51と同様にガラスなどの透光性材料で構成されており、平面視でほぼ矩形状となっている。そして、対向基板42の内面には、液晶層43を駆動する対向電極54が設けられている。なお、対向基板42は、上述と同様に、有機EL素子12やLED素子14から照射される光を透過すれば、他の材料を用いてもよい。
また、対向基板42の内面には、素子基板41と同様に、対向電極54を覆うように配向膜(図示略)が形成されている。ここで、素子基板41と対向基板42とにそれぞれ形成された配向膜は、それぞれ光配向処理を用いた配向処理が施されている。このように、光配向処理を用いた配向処理を施すことにより、ラビング処理を用いて配向処理を施すことと比較して、配向不良の発生をより確実に抑制し、液晶層43による遮光性を向上させることが可能となる。
【0032】
対向電極54は、対向基板42の表面のうち上記シール材によって囲まれた領域内の全面を覆うように形成されており、画素電極53と同様に例えばITOなどの透光性の導電材料で構成されている。
【0033】
液晶層43は、液晶モードとして垂直配向型のECB(Electrically Controlled Birefringence)モードが採用されており、画素電極53及び対向電極54間に電圧を印加しないときに液晶分子が素子基板41及び対向基板42に対して垂直に配向している。このように、垂直配向型の液晶モードを採用することで、偏光板44、45による遮光性を高めることが可能となる。
【0034】
偏光板44、45は、その透過軸が互いに直交するクロスニコル配置となっている。したがって、液晶素子13は、画素電極53及び対向電極54への電圧非印加時において透過率が最小となるノーマリブラックモードの液晶素子となっている。
また、液晶素子13の外面(有機EL素子12から離間する側の面)には、有機EL素子12を構成する陽極層31と同様の開口形状を有する遮光マスク55が設けられている。
【0035】
LED素子14は、基板本体21の側面に沿って複数配列されており、その発光スペクトルのピーク波長が有機EL素子12を構成する発光層36の蛍光スペクトルのピーク波長と同等となっている。そして、LED素子14は、基板本体21の側面に向けて光を出射し、基板本体21内に出射光を導光させる。
また、LED素子14は、駆動制御回路(図示略)に接続されており、複数の有機EL素子12の駆動時に連動して駆動する構成となっている。すなわち、LED素子14は、有機EL素子12の駆動時にのみ光を照射し、非駆動時に光の照射を行わないように制御されている。
そして、LED素子14と基板本体21との間には、LED素子14からの出射光を拡散させる拡散板(図示略)が設けられている。これにより、基板本体21内にLED素子14からの出射光を均一に導光させることが可能となる。
【0036】
光学部材4は、図2に示すように、ラインヘッド1と後述する感光ドラム62との間に配置されており、ラインヘッド1を構成する有機EL素子12と対応して設けられた複数のレンズ59を備えている。このレンズ59は、有機EL素子12及びLED素子14からの出射光を感光ドラム62の表面に集光する構成となっている。
【0037】
〔光プリンタ〕
このようにして製造された露光ヘッド2は、図5に示すような光プリンタ(画像形成装置)60に設けられる。ここで、図5は、光プリンタ60の概略構成図である。
この光プリンタ60は、フルカラー表示が可能なタンデム方式の光プリンタであって、光書き込みヘッド及び発光部ユニットとしてのブラック用露光ヘッド2Aと、シアン用露光ヘッド2Bと、マゼンタ用露光ヘッド2Cと、イエロー用露光ヘッド2Dとを備えている
また、光プリンタ60は、各露光ヘッド2A〜2Dの下方に設けられたブラック用感光ドラム62A、シアン用感光ドラム62B、マゼンタ用感光ドラム62C及びイエロー用感光ドラム62Dを備えている。
【0038】
そして、光プリンタ60は、駆動ローラ63と、従動ローラ64と、テンションローラ65と、テンションローラ65によってテンションが加えられて張架されながら図5に示す反時計方向へ循環駆動される中間転写ベルト66とを備えている。そして、各感光ドラム62A〜62Dは、中間転写ベルト66に対して所定間隔に配置されている。
各感光ドラム62A〜62Dは、中間転写ベルト66の駆動と同期して図5に示す時計回り方向へ回転駆動されるように構成されている。そして、各露光ヘッド2A〜2Dは、各感光ドラム62A〜62Dの外周面を各感光ドラム62A〜62Dの回転に同期して順次ライン走査することで、描画データに応じた静電潜像を対応する各感光ドラム62A〜62D上に形成する。
また、各感光ドラム62A〜62Dの周囲には、各感光ドラム62A〜62Dの外周面を一様に帯電させるコロナ帯電器67A〜67Dが設けられている。
【0039】
また、光プリンタ60は、ブラック用感光ドラム62Aの周囲に設けられたブラック用現像装置68A、シアン用感光ドラム62Bの周囲に設けられたシアン用現像装置68B、マゼンタ用感光ドラム62Cの周囲に設けられたマゼンタ用現像装置68C及びイエロー用感光ドラム62Dの周囲に設けられたイエロー用現像装置68Dを備えている。各現像装置68A〜68Dは、対応する各露光ヘッド2A〜2Dによって各感光ドラム62A〜62D上に形成された静電潜像に対応する色の現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)を形成する構成となっている。例えば、ブラック用現像装置68Aは、ブラック用露光ヘッド2Aによってブラック用感光ドラム62A上に形成された静電潜像に黒色のトナーを付与して可視像を形成する。
すなわち、各現像装置68A〜68Dは、例えばトナーとして非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を例えば供給ローラで現像ローラへ搬送し、この現像ローラ表面に付着したトナーの膜厚を規制ブレードで規制する。この規制により、現像ローラを各感光ドラム62A〜62Dに接触あるいは押圧させることにより、各感光ドラム62A〜62D上に形成された静電潜像の電位レベルに応じて現像剤を付着させて可視像として現像する。
【0040】
さらに、光プリンタ60は、各感光ドラム62A〜62Dの周囲に設けられた、各現像装置68A〜68Dで現像された可視像を一次転写対象である中間転写ベルト66に順次転写する一次転写ローラ69A〜69Dを備えている。
また、光プリンタ60は、各感光ドラム62A〜62Dの周囲に設けられたクリーニング装置71A〜71Dを備えている。このクリーニング装置71A〜71Dは、一次転写の後に、各感光ドラム62A〜62Dの表面に残留しているトナーを除去する構成となっている。
さらに、光プリンタ60は、中間転写ベルト66上の可視像を二次転写対象である用紙などの用紙72に転写する二次転写ローラ73と、二次転写された可視像を用紙72に定着させる一対の定着ローラ74とを備えている。
【0041】
このような各感光ドラム62A〜62D上に形成されたブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各可視像は、一次転写ローラ69A〜69Dによって中間転写ベルト66上に順次一次転写される。この一次転写により中間転写ベルト66上で順次重ね合わされてフルカラーとなった可視像は、二次転写ローラ73によって用紙などの用紙72上に二次転写され、一対の定着ローラ74を通ることで用紙72に定着される。そして、可視像が定着された用紙72は、排紙ローラ75によって案内されて光プリンタ60の上部に形成された排紙トレイ76上へ排出される。
【0042】
また、光プリンタ60は、多数枚の用紙72を保持する給紙カセット77と、この給紙カセット77から用紙72を一枚ずつ給送するピックアップローラ78とを備えている。そして、光プリンタ60は、二次転写ローラ73の二次転写部への用紙72の給紙タイミングを規定するゲートローラ79と、二次転写後に中間転写ベルト66の表面に残留しているトナーを除去するクリーニングブレード80とを備えている。
【0043】
ここで各露光ヘッド2A〜2Dでは、光プリンタ60の駆動時において、LED素子14が基板本体21に向けて光を出射する。基板本体21に入射したLED素子14からの光は、基板本体21内を導光し、基板本体21から液晶素子13に向けて出射する。また、有機EL素子12を構成する陽極層31及び陰極層33の間に電圧を印加して発光機能層32で発光を行う。そして、基板本体21から液晶素子13に向けて発光した光を出射する。その後、液晶素子13に入射した光は、偏光板44によってその透過軸に沿う偏光方向を有する直線偏光に変換された後、液晶層43に入射する。
【0044】
液晶素子13において画素電極53及び対向電極54の間における電圧非印加時では、偏光板44を透過して液晶層43に入射した直線偏光の偏光方向が、液晶層43によって変化しない。そして、液晶層43から出射した直線偏光は、偏光板45の透過軸と直交であるため、偏光板45によって遮光される。
一方、画素電極53及び対向電極54の間における電圧印加時では、偏光板44を透過して液晶層43に入射した直線偏光の偏光方向が、液晶層43によって90°回転する。そして、液晶層43から出射した直線偏光は、偏光板45の透過軸と平行であるため、偏光板45を透過する。
【0045】
このとき、LED素子14による照射光の光量は、画素電極53と対向電極54との間に電圧を印加して液晶素子13から光を透過させたときにおいて、感光ドラム62が露光される光量の閾値未満であってこの閾値近傍の値となっている。これにより、感光ドラム62のうち駆動した有機EL素子12に対応する領域のみが露光するための閾値を超える光量となることで露光される。以上より、感光ドラム62を露光させるために必要な有機EL素子12による照射光の光量は、LED素子14を用いずに露光させる場合と比較して小さくなる。
また、有機EL素子12による照射光とLED素子14による照射光とのピーク波長が互いに同等であるため、感光ドラム62に照射される光のスペクトルが急峻になる。そのため、少ない光量で感光ドラム62を露光できるので、照射光のスポット形状を小さくすることが可能となる。これにより、有機EL素子12にかかる電気的な負担が低減される。
なお、LED素子14は、有機EL素子12が駆動しているときにのみ光を照射する。これにより、有機EL素子12の非駆動時において感光ドラム62がLED素子14からの照射光によって露光されることが確実に防止される。
【0046】
ここで、例えば、印刷品質を向上させる場合には、LED素子14からの光の照射を停止すると共に、画素電極53と対向電極54との間に電圧を印加しないことで液晶素子13の透過率を最大とする。そして、有機EL素子12からの光の照射のみで感光ドラム62の露光を行う。このとき、ラインヘッド1による照射光の光量の調節は、有機EL素子12の陽極層31及び陰極層33間に印加する電圧を調節することによって行われる。このように、有機EL素子12による照射光のみで露光を行ってラインヘッド1による照射光の光量を小さくすることで、印刷品質が向上する。
また、印刷速度を向上させる場合には、LED素子14から光を照射すると共に、有機EL素子12からも光の照射を行う。そして、画素電極53と対向電極54との間に電圧を印加して液晶素子13の透過率の調節を行いながら感光ドラム62の露光を行う。このように、有機EL素子12による照射光及びLED素子14による照射光を併用してラインヘッド1による照射光の光量を大きくすることで、感光ドラム62の露光時間を短縮して印刷速度が向上する。
【0047】
以上のように、本実施形態におけるラインヘッド1及びこれを備える光プリンタ60によれば、LED素子14が感光ドラム62に光の照射を行うことで、有機EL素子12による照射光の光量を小さくすることができる。これにより、有機EL素子12の電気的な負担を低減して長寿命化が図れる。ここで、LED素子14による感光ドラム62への照射光の光量を露光するための閾値未満であってその近傍とすることで、LED素子14のみによって感光ドラム62が露光されることを防止すると共に、有機EL素子12による照射光の光量をより確実に小さくでき、さらなる長寿命化が図れる。
【0048】
また、有機EL素子12とLED素子14とで発光波長を同等とすることで、感光ドラム62へのスポット形状を小さくでき、印刷品質を向上することが可能となる。
そして、液晶素子13によって感光ドラム62への照射光量を調節するので、LED素子14のみによって感光ドラム62が露光されることを確実に防止すると共に、感光ドラム62への照射光の階調をより精密に制御できる。
さらに、LED素子14が有機EL素子12の駆動と連動して有機EL素子12の駆動時にのみ光の照射を行うので、有機EL素子12の非駆動時において感光ドラム62がLED素子14からの照射光によって露光されることを確実に防止できると共に、省電力化が図れる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、印刷品質を向上させる場合において、画素電極及び対向電極間に印加する電圧を変更して液晶素子の透過率を調節しながら有機EL素子からの照射光による感光ドラムの露光を行ってもよい。
また、印刷品質を向上させるためにLED素子からの光の照射を停止して有機EL素子からの照射光のみによって感光ドラムの露光を行っているが、有機EL素子による光の照射を行わずにLED素子からの照射光のみによって感光ドラムの露光を行ってもよい。このとき、画素電極と対向電極との間に電圧を印加して液晶素子の透過率を適宜調節する。このようにしても、ラインヘッドによる照射光の光量を小さくして印刷品質を向上させることができる。そして、印刷速度を向上させる場合には、上述と同様に、有機EL素子からの照射光とLED素子による照射光とを併用することでラインヘッドによる照射光の光量を大きくする。
【0050】
また、導光基板の一面にボトムエミッション構造の有機EL素子を設けて導光基板の他面から有機EL素子からの照射光及びLED素子からの照射光を出射しているが、トップエミッション構造の有機EL素子を用いてもよい。この場合、導光基板とは異なる基板上にトップエミッション構造の有機EL素子を設け、有機EL素子上に導光基板を一面が有機EL素子と接触するように積層し、導光基板の他面に液晶素子を積層した構成などを採用することができる。
さらに、導光基板の出射面に有機EL素子を設け、有機EL素子上に液晶素子を積層した構成としてもよい。この場合、有機EL素子を構成する陽極層及び陰極層を発光機能層で発光した光及びLED素子からの照射光を透過可能な材料で形成し、導光基板の出射面と反対側の面に反射層を設ける構成などを採用することができる。
【0051】
また、有機EL素子が二列に千鳥状となるように配置されているが、他の配置状態であってもよい。
そして、補助発光部材であるLED素子から感光ドラムに照射される照射光の光量を感光ドラムが露光する光量よりも小さくしているが、液晶素子によって光量が調節されて感光ドラムが露光しない光量であればよい。
また、補助発光部材としてLED素子を用いているが、例えば蛍光管や有機EL素子など、他の発光部材を用いてもよい。
【0052】
また、液晶素子を構成する液晶層の液晶モードとしてECBモードを採用しているが、ECBモードに限らず、OCB(Optical Compensated Bend)モードなど他の垂直配向型の液晶モードを採用してもよく、液晶素子による遮光性が十分に確保できれば、TN(Twisted Nematic)モードやVAN(Vertical Aligned Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モードなどの水平配向型の液晶モードを採用してもよい。
そして、液晶素子には、電圧非印加時において透過率が最小となるノーマリブラックモードを採用しているが、ノーマリホワイトモードを採用してもよい。
さらに、液晶素子によって有機EL素子及びLED素子による感光ドラムへの照射光の光量を調節しているが、他のシャッタ部材を用いてもよい。
また、有機EL素子及びLED素子による感光ドラムへの照射光の光量を調節するシャッタ部材を設けているが、シャッタ部材を設けない構成としてもよい。
【0053】
また、発光機能層は、正孔注入層及び発光層を積層した構成となっているが、発光層のみで構成されてもよく、発光層と陰極層との間に電子注入層や電子輸送層、正孔阻止層を積層した構成としてもよい。ここで、この電子注入層や電子輸送層は、陰極層から電子を陽極層の方向へ進めて電子を通す機能を有している。また、正孔阻止層は、正孔が陰極層の方向へ進行することを防止する機能を有している。同様に、発光層と陽極層との間に電子阻止層を積層した構成としてもよい。ここで、この電子阻止層は、電子が陽極層の方向へ進行することを防止する機能を有している。
さらに、発光機能層が正孔注入層を有しているが、正孔注入層に代えて正孔注入輸送層または正孔輸送層が設けられた構成としてもよい。
【0054】
また、画像形成装置は、フルカラー表示が可能なタンデム方式の光プリンタに限らず、単色の光プリンタなど本発明におけるラインヘッドを有するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のラインヘッドを備える露光ヘッドを示す概略斜視図である。
【図2】図1の概略断面図である。
【図3】図1のラインヘッドを示す概略平面図である。
【図4】図3の概略断面図である。
【図5】本発明の光プリンタを示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ラインヘッド、11 導光基板、12 有機EL素子(発光素子)、13 液晶素子(シャッタ部材)、14 LED素子(補助発光部材)、60 光プリンタ(画像形成装置)、62,62A〜62D 感光ドラム(感光体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体に光を照射して露光するラインヘッドであって、
複数の発光素子と、
該複数の発光素子が積層された導光基板と、
該導光基板の側面から光を照射して該基板のうち前記感光体と近接する出射面から出射させる補助発光部材とを特徴とするラインヘッド。
【請求項2】
前記複数の発光素子が、前記導光基板の一面に設けられ、光を該導光基板の出射面から出射させることを特徴とする請求項1に記載のラインヘッド。
【請求項3】
前記補助発光部材による前記感光体への照射光の光量が、該感光体が露光される光量未満であってその近傍であることを特徴とする請求項1または2に記載のラインヘッド。
【請求項4】
前記発光素子の発光波長と前記補助発光部材の発光波長とが、同等であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のラインヘッド。
【請求項5】
前記補助発光部材が、前記発光素子の駆動と連動して光を照射することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のラインヘッド。
【請求項6】
前記導光基板よりも前記感光体に近接して設けられ、該感光体への照射光の光量を調節するシャッタ部材を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のラインヘッド。
【請求項7】
前記シャッタ部材が、液晶素子であることを特徴とする請求項6に記載のラインヘッド。
【請求項8】
前記補助発光部材が、発光ダイオードであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のラインヘッド。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のラインヘッドを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−80567(P2008−80567A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261142(P2006−261142)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】