説明

ラジエータコアサポート

【課題】 ラジエータコアサポートロアの剛性を向上できると同時に、車両軽衝突時におけるラジエータコアサポートの破損を回避できるラジエータコアサポートの提供。
【解決手段】 自動車のラジエータコアサポート1のラジエータコアサポートロア5及びラジエータコアサポートサイド6のサイドメンバ取付部9付近が樹脂で一体的に形成されるラジエータコアサポート1において、ラジエータコアサポートロア5とラジエータコアサポートサイド6のサイドメンバ取付部9付近に亘って金属製の補強部材20を配置し、補強部材20の端部21をサイドメンバ取付部9付近に車幅方向へ相対移動可能に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のラジエータコアサポートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のラジエータコアサポートは軽量化を主な目的として樹脂製で形成したものがあるが、薄肉で補強が要求される部位には金属製の補強部材を組み合わせて用いている(特許文献1、2参照)。
また、ラジエータコアサポートの車体との固定部位であるサイドメンバ取付部は、自動車の軽衝突時において車幅方向外側へ変形することで応力を分散・吸収してラジエータコアサポートの破損を回避するようにしている。
【特許文献1】特開2002−166848号公報
【特許文献2】特開2007−126020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、金属製の補強部材を樹脂製のラジエータコアサポートロアとサイドメンバ取付部付近に亘って配置した場合には、車両軽衝突時に補強部材がサイドメンバ取付部の変形を阻害して前述した応力の分散・吸収の妨げになる虞があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、ラジエータコアサポートロアの剛性を向上できると同時に、車両軽衝突時におけるラジエータコアサポートの破損を回避できるラジエータコアサポートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明では、自動車のラジエータコアサポートの少なくともラジエータコアサポートロア及びラジエータコアサポートサイドのサイドメンバ取付部付近が樹脂で一体的に形成されるラジエータコアサポートにおいて、上記ラジエータコアサポートロアとラジエータコアサポートサイドのサイドメンバ取付部付近に亘って金属製の補強部材を配置し、上記補強部材の端部をサイドメンバ取付部付近に車幅方向へ相対移動可能に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明では、ラジエータコアサポートロアとラジエータコアサポートサイドのサイドメンバ取付部付近に亘って金属製の補強部材を配置し、上記補強部材の端部をサイドメンバ取付部付近に車幅方向へ相対移動可能に固定している。
これにより、車両軽衝突時に補強部材がサイドメンバ取付部の変形を阻害する虞がなく、ラジエータコアサポートロアの剛性を向上できると同時に、車両軽衝突時におけるラジエータコアサポートの破損を回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
なお、車両前後方向及び車幅方向を前後方向及び左右方向と称して説明する。
図1は実施例1のラジエータコアサポートを示す正面図、図2は同背面図、図3は同前方斜視図、図4は同後方斜視図、図5は実施例1の補強部材の後方斜視図、図6〜9は作用を説明する簡略図である。
【0009】
先ず、全体構成を説明する。
図1〜4に示すように、実施例1のラジエータコアサポート1は、樹脂製部分のラジエータコアサポート本体2と金属製部分のフードロックステイ部材3(請求項のフードロックステイに相当)及び補強部材20とから構成されている。
【0010】
ラジエータコアサポート本体2は、左右に延設されたラジエータコアサポートアッパ4と、ラジエータコアサポートアッパ4の下方に並行するラジエータコアサポートロア5と、ラジエータコアサポートアッパ4とラジエータコアサポートロア5の両端部同士を結合するラジエータコアサポートサイド6,6と、これらラジエータコアサポートアッパ4、ラジエータコアサポートロア5、ラジエータコアサポートサイド6,6から内側に張り出して円形状の開口部7a,7aを形成するシュラウド部7等が備えられている。
【0011】
各ラジエータコアサポートサイド6の中途部には、図示しないヘッドランプを固定するためのヘッドランプステイ8がそれぞれ外側に突設されている。
さらに、各ラジエータコアサポートサイド6の中途部には、前後方向に開口された4箇所の固定孔9aを有するサイドメンバ取付部9が設けられている。
【0012】
ラジエータコアサポートロア5の左右上面には、図示しない公知の熱交換器(特許文献2参照)の左右下端を固定するための固定孔5a(図4参照)が上下方向に開口された状態でそれぞれ形成される共に、この熱交換器の後方には、開口部7a,7aを臨んだ状態で図示しない2連のファンが設けられる。
【0013】
フードロックステイ部材3は、全体が略T字状に形成される他、上下方向に略柱状に延設されたフードロックセンタ10の下端は、後述する補強部材20の中央部に図示しない締結部材で固定されている。
また、フードロックセンタ10の上端は、略L字型に屈折した平板状のセンタアッパ部11に固定されている。
センタアッパ部11の上端部は、ラジエータコアサポートアッパ4の中央部前面に固定されている。
さらに、センタアッパ部11の両端部には、左右方向に略平板状に延設されたフードロックステイサイド12,12の基端部がそれぞれ固定されている。
各フードロックステイサイド12の先端部は、それぞれ対応するラジエータコアサポートサイド6の上端部に固定されている。
また、センタアッパ部11には、図示しないフードロックのセカンダリラッチが設けられる一方、各フードロックステイサイド12には、図示しないフードロックのメインラッチがそれぞれ設けられている。
【0014】
図5に示すように、補強部材20は、金属製で車幅方向に延設された板状に形成される他、それぞれ上方に屈折された両端部21には螺子孔22がそれぞれ形成されている。
また、補強部材20の上縁部には後方に屈折されたフランジ部23が形成されると共に、該フランジ部23には長手方向に沿って複数の固定孔24が形成されている。
さらに、補強部材20の中央部には固定孔25が形成されている。
【0015】
そして、図2、4に示すように、ラジエータコアサポートロア5とラジエータコアサポートサイド6のサイドメンバ取付部9付近に亘って薄肉の壁部26が形成され、この後面に補強部材20が重ねられた状態で配置されている。
具体的には、図6に示すように、壁部26の各サイドメンバ取付部9付近には左右方向に長い長孔27がそれぞれ形成され、ここに螺子28(請求項の係止部材)が前方から長孔27の左右方向外側位置を貫通した状態で補強部材20の螺子孔22に螺合されている。
【0016】
なお、各螺子28は補強部材20の端部21を壁部26に固定するためのものであるが、締め付けトルクの調整により壁部26とは強干渉していない。
また、補強部材20の固定孔24には図示しない締結部材が挿入されてラジエータコアサポートロア5に固定されている。
さらに、補強部材20の固定孔25には図示しない締結部材が挿入されてフードロックステイセンタ10の下端に固定されている。
【0017】
従って、補強部材20は側壁26との前後方向の厚みを最小限としつつ、ラジエータコアサポートロア5とサイドメンバ取付部9付近の剛性を向上する補強部材として機能するようになっている。
また、補強部材20の中央部はフードロックステイセンタ10の下端に固定されているため、主にフードロックのセカンダリラッチを介した荷重を受ける補強部材として機能するようになっている。
【0018】
次に、作用を説明する。
このように構成されたラジエータコアサポート1では、図8に示すように、各サイドメンバ取付部9の固定孔9aに挿入される図示しない締結部材により、その前面にバンパアーマチュア29の斜め後方へ屈折した両端部後面に結合されるバンパステイ30が締結される一方、その後面に車体側であるサイドメンバ31が締結される。
【0019】
そして、図8、9に示すように、自動車が低速で正面から障害物に衝突した場合には、バンパアーマチュア29の中央部が衝撃力F1により後方に屈曲して変形すると同時に両端部が外側へ開くように変形し、この結果、ラジエータコアサポート1の車体側との固定部位である各サイドメンバ取付部9が車幅方向外側に引張されるような応力F2を受ける。
【0020】
これに対し、実施例1では、図6、7に示すように、各サイドメンバ取付部9付近が応力F2により左右方向外側へ変形して、各螺子28がそれぞれ対応する長孔27に摺動しつつ、その位置がそれぞれ対応する長孔27の長手方向外側位置から内側位置に相対移動する。
【0021】
従って、螺子28がサイドメンバ取付部9付近の変形を妨げる虞がなく、サイドメンバ取付部9付近で応力F2を分散・吸収させてラジエータコアサポート1の破損を回避でき、これによって軽衝突時における修理コストを低く抑えることができる。
なお、実施例1では、螺子28が長孔27の内側位置まで相対移動しているが、この限りではなく、長孔27の長さ、即ち、螺子28の相対移動量はサイドメンバ取付部9の変形量に応じて適宜設定する。
【0022】
一方、車両整備点検時のエンジンフードの開閉動作または車両走行中の走行風によりフードロックを介してフードロックステイセンタ10には、上下方向の応力F3が発生し、該フードロックステイセンタ10の下端と固定された補強部材20(ラジエータコアサポートロア5を含む)の中央部は上下方向に撓むような応力が伝達される。
これに対し、実施例1では、各螺子28の位置がそれぞれ対応する長孔27の長手方向外側位置に配置しているため、補強部材20(ラジエータコアサポートロア5を含む)が上下方向に撓むような力を抑えることができ、この結果、フードロック(フードロックステイセンタ10)の耐荷重を向上できる。
【0023】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、実施例1の発明では、自動車のラジエータコアサポート1のラジエータコアサポートロア5及びラジエータコアサポートサイド6のサイドメンバ取付部9付近が樹脂で一体的に形成されるラジエータコアサポート1において、ラジエータコアサポートロア5とラジエータコアサポートサイド6のサイドメンバ取付部9付近に亘って金属製の補強部材20を配置し、補強部材20の端部21をサイドメンバ取付部9付近に車幅方向へ相対移動可能に固定したため、ラジエータコアサポートロア5の剛性を向上できると同時に、車両軽衝突時におけるラジエータコアサポート1の破損を回避できる。
【0024】
また、サイドメンバ取付部9付近に車幅方向へ長い長孔27を設ける一方、補強部材20に該長孔27に摺動可能に係止された螺子28を設けて、これら両者を固定したため、簡便な構造でもって補強部材20の端部21をサイドメンバ取付部9付近に車幅方向へ相対移動可能に固定できる。
【0025】
また、ラジエータコアサポート1とラジエータコアサポートロア5の中央部同士を結合する金属製のフードロックステイセンタ10を備え、フードロックステイセンタ10の下端と補強部材20の中央部を固定し、サイドメンバ取付部9付近に車幅方向へ長い長孔27を設ける一方、補強部材20に該長孔27の車幅方向外側に係止された螺子28を設けて、これら両者を固定したため、フードロックステイセンタ10に掛かる上下方向の応力によって補強部材20及びラジエータコアサポートロア5が上下方向に撓むのを防止でき、この結果、フードロックの耐荷重を向上させることができる。
【0026】
以上、実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、実施例1では長孔27を樹脂側としているため、図10(a)、(b)に示すように、長孔27の中途部に突部40,40を設けて、車両の軽衝突時に螺子28が突部40の変形で乗り越えて位置が移動する構成にすることも容易にできる。
【0027】
また、補強部材の端部とサイドメンバ取付部付近との固定構造は適宜設定でき、例えば、補強部材20にスタットボルトを前方に突出させて形成し、長孔27を介して前方からナットで締結する構成にすることもでき、要は補強部材の端部をサイドメンバ取付部付近に車幅方向へ相対移動可能に固定すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1のラジエータコアサポートを示す正面図である。
【図2】実施例1のラジエータコアサポートを示す背面図である。
【図3】実施例1のラジエータコアサポートを示す前方斜視図である。
【図4】実施例1のラジエータコアサポートを示す後方斜視図である。
【図5】実施例1の補強部材の後方斜視図である。
【図6】実施例1の作用を説明する簡略図である。
【図7】実施例1の作用を説明する簡略図である。
【図8】実施例1の作用を説明する簡略図である。
【図9】実施例1の作用を説明する簡略図である。
【図10】その他の実施例の長孔と係止部材を説明する図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ラジエータコアサポート
2 ラジエータコアサポート本体
3 フードロックステイ部材
4 ラジエータコアサポートアッパ
5 ラジエータコアサポートロア
5a、9a 固定孔
6 ラジエータコアサポートサイド
7 シュラウド部
7a 開口部
8 ヘッドランプステイ
9 サイドメンバ取付部
10 フードロックステイセンタ
11 センタアッパ部
11a 開口部
12 フードロックステイサイド
20 補強部材
21 端部
22 螺子孔
23 フランジ部
24、25 固定孔
26 壁部
27 長孔
28 螺子
29 バンパアーマチュア
30 バンパステイ
31 サイドメンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のラジエータコアサポートの少なくともラジエータコアサポートロア及びラジエータコアサポートサイドのサイドメンバ取付部付近が樹脂で一体的に形成されるラジエータコアサポートにおいて、
前記ラジエータコアサポートロアとラジエータコアサポートサイドのサイドメンバ取付部付近に亘って金属製の補強部材を配置し、
前記補強部材の端部をサイドメンバ取付部付近に車幅方向へ相対移動可能に固定したことを特徴とするラジエータコアサポート。
【請求項2】
請求項1記載のラジエータコアサポートにおいて、
前記サイドメンバ取付部付近または補強部材の一方に車幅方向へ長い長孔を設ける一方、他方に該長孔に摺動可能に係止された係止部材を設けて、これら両者を固定したことを特徴とするラジエータコアサポート。
【請求項3】
請求項2記載のラジエータコアサポートにおいて、
前記ラジエータコアサポートとラジエータコアサポートロアの中央部同士を結合する金属製のフードロックステイを備え、
前記フードロックステイの下端と補強部材の中央部を固定し、
前記サイドメンバ取付部または補強部材のうちの一方に車幅方向に長い長孔を設ける一方、他方に該長孔の車幅方向外側に係止された係止部材を設けて、これら両者を固定したことを特徴とするラジエータコアサポート。

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−234303(P2009−234303A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−79537(P2008−79537)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】