説明

ラフト剤を使用するポリマー生成物および界面重合方法

本発明は、モノマーを重合して固体粒状材料の表面でポリマーを形成する方法であって、
連続親水性液相中に前記固体粒状材料の分散体を提供する工程であって、前記分散体が前記固体粒状材料の安定剤として親水性ラフト(RAFT)剤を含み、前記連続親水性液相が1種または複数のエチレン型不飽和モノマーを含む工程;および
前記親水性ラフト剤の制御下で前記の1種または複数のエチレン型不飽和モノマーを重合し、前記固体粒状材料の表面でポリマーを形成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーカプセル化固体粒状材料、モノマーを重合して固体粒状材料の表面でポリマーを形成する方法、および前記ポリマーカプセル化固体粒状材料を含む生成物に関する。ポリマーカプセル化粒状材料はコーティング配合物における使用に特に好適であるので、この用途を強調して本発明を説明するのが好都合であろう。しかし、ポリマーカプセル化固体粒状材料が種々の他の用途に使用可能であることを理解されたい。
【背景技術】
【0002】
粒状材料の表面におけるポリマーの堆積により、種々の用途に使用可能なポリマー/粒状材料複合体を与えることができる。例えば、ポリマーを堆積して、粒状材料をコーティングおよびカプセル化することができる。この場合、ポリマーコーティングを使用すれば、粒状材料を外部環境から保護し、粒状材料の外部環境への徐放をもたらし、かつ/または粒状材料が外部環境に示す表面特性を変えることができるであろう。適例として、ポリマーカプセル化された農薬、除草剤または薬剤粒状材料を使用して、制御される徐放性製品を与えることができる。あるいは、ポリマーカプセル化顔料粒状材料を使用して、塗料配合物の特定の特性を向上させることができる。
【0003】
そのようなポリマー/固体粒状材料複合体を含む生成物の効率および信頼性のため、ポリマーが、比較的制御可能で、一様かつ再現可能な方法で粒状材料の表面に堆積するのが一般的に望ましい。粒状材料がバルクのポリマーマトリックスにカプセル化され、その中で分散する場合、粒状材料がそのマトリックス中で均一に分散することも一般的に望ましいであろう。
【特許文献1】国際公開番号WO98/01478
【非特許文献1】Moad and Solomon、「the Chemistry of Free Radical Polymerization」、Pergamon、London、1995、53-95ページ
【非特許文献2】Greenlee, R. Z.、Polymer Hndbook 第3版(Brandup,J. およびImmergut. E. H. 編)Wiley: New York、1989、II/53ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日まで、ポリマーにより固体粒状材料をカプセル化する一般的な手法は、事前に形成されたポリマーを含む液体媒体中へ粒状材料を分散するものであった。液体媒体は、ポリマーを溶媒中に溶解させるか、単にポリマーを溶かすかにより形成してよい。別法として、粒状材料をモノマー中に分散し、次いでそれを重合してポリマーを形成することもできる。しかし、そのような方法論を首尾よく適用する能力は、しばしばポリマーおよび/または粒状材料によるところが大きい。さらに、分散剤(すなわち、界面活性剤など界面活性を有する薬剤)を使用して、コーティング媒体中への粒状材料の分散を促進することも必要なことが多い。便利な分散剤をこのように使用すると、ポリマー/粒状材料複合体が使用される最終製品にとって有害なことがある。特に、便利な分散剤は、移動および局在化しやすく、それにより望ましくないことに製品の濡れ特性を変える。
【0005】
ポリマーを堆積させて固体粒状材料をコーティングおよびカプセル化する従来技術に伴うさらなる問題は、種々の厚さの比較的均一なポリマー層で粒状材料を再現可能にコーティングする能力に対する制御がほとんど何もないことである。
【0006】
事前に形成したポリマーにより固体粒子をコーティングする代替法として、従来のフリーラジカル重合プロセスを利用して、粒子の表面でポリマーを形成する試みがなされてきた。しかし、そのような試みは一般的に不成功であった。特に、従来のフリーラジカル重合技術を利用して粒状材料の表面でモノマーを重合するプロセスは一般的にあまり制御が不可能であり、均一なポリマーコーティングよりもむしろ粒子表面にポリマーのふくれ傷または不均一なポリマーを製造する傾向がある。
【0007】
固体粒状材料の表面にポリマーを堆積させる数多くの他の方法が報告されている。しかし、そのような方法は一般的に、ポリマー堆積に対する向上した制御という点で生み出すものがほとんどなく、かつ/または商業的に実現が不可能である。
【0008】
したがって、固体粒状材料の表面に制御可能な方法でポリマーを堆積させる商業的に実現可能な方法に対する必要性がある。そのような方法は、好ましくは、頑丈で、効率的で、ある範囲のポリマーならびに粒子の種類およびサイズに適用可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、モノマーを重合して固体粒状材料の表面でポリマーを形成する方法であって、
連続親水性液相中に前記固体粒状材料の分散体を提供する工程であって、前記分散体が前記固体粒状材料の安定剤として親水性ラフト(RAFT)剤を含み、前記連続親水性液相が1種または複数のエチレン型不飽和モノマーを含む工程;および
前記親水性ラフト剤の制御下で前記の1種または複数のエチレン型不飽和モノマーを重合し、前記固体粒状材料の表面でポリマーを形成する工程
を含む。
【0010】
ラフト剤および連続液相の間で同様の極性が与えられるとき(すなわち、両方とも親水性)、これらの条件下で、分散粒状材料から分離したバルクの液相中に、ポリマーがより容易に形成されることが期待された。驚いたことに、親水性液相中の親水性ラフト剤が、バルクの親水性液相中でモノマーの重合を促進するよりも、分散固体粒状材料の表面におけるモノマーの重合を制御することができることが発見された。
【0011】
本質的に、本発明の方法は、実質的に制御可能で再現性のある方法で固体粒状材料の表面でポリマーが形成することを可能にする、独特な界面重合技術を提供する。固体粒状材料が連続親水性液相に分散可能であるならば、粒子はどのような形状でも大きさでもよい。
【0012】
前記方法により与えられる制御により、ポリマーは実質的に一様に固体粒状材料の表面に形成でき、調整された厚さで提供可能である。そのような制御は、好都合にも粒状材料を所望の厚さのポリマーでカプセル化し、親水性液体中のポリマーカプセル化粒状材料の分散体を供給する。あるいは、そのような重合が継続され十分なポリマーの塊が形成される場合、粒状材料をカプセル化しているポリマーを融合させ、実質的に均一に粒状材料が分散しているポリマーの塊を供給できる。
【0013】
1態様において、本発明は、大きさが100ミクロン以下のポリマーカプセル化固体粒状材料を提供するが、前記固体粒状材料は、少なくとも一部親水性ラフト剤の制御下で形成されたポリマーの実質的に均一で連続的なコーティング中にカプセル化されている。
【0014】
本発明は、大きさが100ミクロン以下のポリマーカプセル化固体粒状材料を提供するが、前記カプセル化ポリマーは、少なくとも一部親水性ラフト剤の制御下で形成され、前記固体粒状材料は、カプセル化ポリマー中に実質的に均一に分散している。
【0015】
本発明のさらなる態様を、以下の発明の詳細な説明に表す。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明の特定の態様の特徴は、1種または複数のエチレン型不飽和モノマーが親水性ラフト剤の制御下で重合することである。親水性ラフト剤の「制御下で」重合するとは、モノマーが可逆的付加−開裂連鎖移動(ラフト)機構により重合してポリマーを形成することを意味する。
【0017】
エチレン型不飽和モノマーのラフト重合は、国際公開番号WO98/01478に記載されており、実際に、明確な分子構築および低い多分散性を有するポリマーを調製することができるラジカル重合技術である。前記技術は、一般式(1)
【化1】

のラフト剤を利用するが、
これがスキーム1
【化2】

による成長ラジカル(Pn)と反応すると示唆されている。
【0018】
ラフト剤(1)の効力は、複雑な組み合わせの反応速度に依存すると考えられている。特に、スキーム1によるポリマーの形成は、成長の速度定数に対して、前記薬剤(1)への成長ラジカルの付加、ならびに中間ラジカル(2)および(3)の開裂の高い速度定数を要求する平衡に依存すると考えられている。
【0019】
ラフト重合に関連する速度定数は、基質、ラジカルおよび形成される生成物中の安定性、立体効果および極性効果の間の複雑な相互作用により影響されると考えられている。特定のモノマーおよびモノマーの組み合わせの重合は、異なる因子および構造的な選択を前記薬剤(1)に導入するであろう。特定の系の因子の相互作用は、得られる結果を元に大部分は説明されてきた。特定の系の重合に影響する全ての因子の明確な定義は、未だ完全に理解されていない。
【0020】
本発明の方法によれば、固体粒状材料は、連続親水性液相中に分散され、結果生じる分散物は、親水性ラフト剤を含む。当業者であれば、「親水性」および「疎水性」の語は、他の基質に対するある基質の好都合な相互作用または不都合な相互作用(すなわち誘引相互作用または反発相互作用)の指標とし典型的に使用され、ある特定の基質の絶対的な質を規定するものではないことを理解するであろう。言い換えれば、「親水性」および「疎水性」という用語は、好きなものが好きなものを引き寄せ、嫌いなものが嫌いなものを拒絶するような特性を定義する一次指標として本願で使用される。
【0021】
便利な評価基準としてのみ、「親水性」基質は、25℃で水に対して少なくとも5 g/Lの溶解度を有し、「疎水性」基質は、25℃で水に対して5 g/L未満の溶解度を有すると、当業者は考えるであろう。水に不溶性である固体に関して、「親水性」および「疎水性」という用語が、それぞれ親水性および疎水性液体により濡れることができる(すなわちはじかない)固体の言及として当業者は考えることがある。
【0022】
それゆえ、本発明の文脈において、「連続親水性液相」は本質的に、特徴において親水性である連続液相である。連続液相として使用されてよい適切な親水性液の例は、水、エチレンおよびプロピレングリコールのような水混和性極性溶媒、ならびにC1-C3アルコール、ならびにそれらの混合物を含むが、それに限定されない。本発明の好ましい実施態様において、連続親水性液相は連続水相である。
【0023】
疎水性液体の例は、トルエン、ホワイトスピリット、および他の任意置換芳香族または任意置換脂肪族液体を含むが、それに限定されない。
【0024】
同様に、ここで「親水性ラフト剤」の語は、親水性の特徴を有するラフト剤を規定することが意図される。本発明の文脈において、そのような薬剤は典型的には、連続親水性液相中でミセルを形成する(または凝集する)ことができない。親水性ラフト剤の性質に関する、より詳細な議論は、以下で与えられる。
【0025】
本発明のある特性によると、親水性ラフト剤は分散固体粒状材料に対して安定剤として機能する。「安定剤」として機能することにより、親水性ラフト剤は、分散固体粒状材料の融合または凝集を、防止する、または少なくとも最小化するためにはたらく。安定剤として、親水性ラフト剤は、立体および/または静電反発のような既知の経路を介して固体粒状材料の融合または凝集を、防止、または少なくとも最小化してよい。安定剤として機能する能力を供与するために、親水性ラフト剤は、必要な立体および/または静電反発を供与することができる構成成分を含む。
【0026】
本発明の方法において、モノマーは重合して、固体粒状材料の表面でポリマーを形成する。ポリマーが「表面で」形成されるとは、粒状材料の最も外側の表面上に、またはそれに直に隣接して(すなわち、連続親水性液相の方向)ポリマーが形成することを意味する。言い換えると、粒状材料をコーティングできるように粒状材料と連続液相との間で界面にポリマーが形成する。ポリマーは、一般的に、粒状材料を完全にコーティングまたはカプセル化するように形成されるであろう。
【0027】
ここで「固体粒状材料」という句は、連続親水性液相中に分散可能な固体材料のいずれかを含むことが意図される。それゆえ粒状材料は、連続液相中に実質的に不溶性であり、本発明の方法が実施される温度で固体状態であろう。
【0028】
粒状材料が連続液相中に「分散する」ことにより、それは実際に連続液相内に不連続相を形成する。連続液相中に分散可能であるならば、粒状材料はどのような形状でも大きさでもよい。しかし、高アスペクト比を有する粒状材料、例えば平らなラメラまたは針状の形状を有するものは、低アスペクト比を有する粒状材料よりも、均一にポリマーによりコーティングされるのがより困難であることが認識される。
【0029】
分散した固体粒状材料は、一次粒子の形態でも、一次粒子の凝集体の形態でもよい。本発明の方法は、一次粒子の表面でポリマーを形成するのに特に有効であることが有利にも見いだされた。
【0030】
固体粒状材料の大きさが小さくなるにつれ、材料の表面で制御可能にポリマーを堆積させる能力の難易度が増すことを当業者は理解するであろう。本発明の方法により与えられる独特な界面重合は、有利なことに、一次粒子であれその凝集体であれ、小粒子および大粒子のどちらでも同様に、その表面で比較的容易に制御可能な方法でポリマーを形成させることが可能である。
【0031】
したがって、固体粒状材料は、連続親水性液相中に分散可能であれば、どのような種類、形状、または大きさでもよい。好ましくは、粒状材料の最大寸法は、10ミクロン以下、より好ましくは2ミクロン以下である。本発明の方法は、例えば0.5ミクロン未満、0.25ミクロン未満、0.1ミクロン未満、0.01ミクロン未満、さらには0.005ミクロン未満、のサブミクロン粒子の表面にポリマーを形成するのに特に有効であることが見いだされた。
【0032】
粒状材料から形成される好適な物質には、一般的な顔料、ならびに二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化鉄、二酸化ケイ素、硫酸バリウムなどの無機材料、ならびにγ-酸化鉄などの磁気材料、およびこれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。ワックスなどのより疎水性の有機材料、ならびに農薬、除草剤、殺菌剤および医薬品などの対生物作用剤、ならびにフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンおよびジブロムアナンスロン(dibromananthrone)などの有機顔料は、親水性ラフト剤に分散することがより困難であることが明らかにされる可能性がある。
【0033】
好ましくは、固体粒状材料は特徴において親水性である(すなわち、親水性液体でぬらすことができる)。そのような材料の例には、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化鉄、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、およびγ-酸化鉄などの磁気材料があるが、これらに限定されない。
【0034】
ポリマーによりカプセル化されるべき固体粒状材料が、ラフト重合プロセスが実施される反応条件下で実質的に不活性であることが一般的に好ましい。
【0035】
実際的な面では、連続親水性液相は、事実上、1種または複数のエチレン型不飽和モノマーが重合して固体粒状材料の表面でポリマーを形成する反応媒体として機能する。モノマーは別な液相として連続液相中に存在してよく、連続液相に可溶性であってよく、あるいは連続液相自体が、モノマーからなる、あるいは本質的にモノマーからなっていてもよい。
【0036】
連続親水性液相が1種または複数のエチレン型不飽和モノマーからならない、あるいは本質的にならない場合、本発明の方法を簡便に利用し、親水性液体中にポリマーカプセル化固体粒子の分散体を調製することができる。例えば、連続液相が水を含んでおり、粒状材料が二酸化チタンである場合、本発明の方法を利用して、ポリマーカプセル化二酸化チタン粒子の水性分散体を調製してよい。
【0037】
連続親水性液相中で固体粒状材料を安定化させる作用をする親水性ラフト剤の部分は、好都合にも、本発明の方法により形成される液体に分散したポリマーカプセル化固体粒状材料を安定化させる機能も有することができる。したがって、液体中のポリマーカプセル化粒状材料を分散させるための追加の分散剤は全く必要ない。
【0038】
「カプセル化」されているとは、ポリマーが固体粒状材料全体を実質的に包囲していることを意味する。しかし、ポリマーがある程度の多孔性(すなわち、その中にいくらか空孔または空隙を有する)を示してもよい。
【0039】
好ましい実施形態において、本発明は、親水性液体中にポリマーカプセル化固体粒状材料の分散体を調製する方法を提供し、前記方法は、
連続親水性液相中に固体粒状材料の分散体を提供する工程であって、前記分散体が前記固体粒状材料の安定剤として親水性ラフト剤を含み、前記連続親水性液相が1種または複数のエチレン型不飽和モノマーを含む工程;および
前記親水性ラフト剤の制御下で前記の1種または複数のエチレン型不飽和モノマーを重合し、前記固体粒状材料の表面でポリマーを形成し、親水性液体中にポリマーカプセル化固体粒状材料の前記分散体を提供する工程
を含む。
【0040】
好ましくは、前記連続親水性液相は水であり、前記方法はポリマーカプセル化固体粒状材料の水性分散体を製造する。
【0041】
好ましい実施形態により、ポリマーによりカプセル化される固体粒状材料は、一次粒子でもその凝集体でもよい。粒子をカプセル化するポリマーコーティングは、一般的に、粒子全体の周囲に実質的に均一であろう。ポリマーカプセル化粒状材料が分散したままでいられるとすれば、どのような大きさのカプセル化粒子もこの方法論を利用して調製可能である。前記方法論を利用して、粒状材料がポリマーの実質的に均一で連続的なコーティング中にカプセル化されている、大きさが100ミクロン以下の上述のポリマーカプセル化粒状材料を調製することができる。そのような新規ポリマーカプセル化粒状材料は、70ミクロン以下、40ミクロン以下、あるいは5ミクロン以下の大きさであってよい。ポリマーカプセル化粒状材料の大きさは、サブミクロン範囲でもよく、例えば0.01ミクロンから1ミクロンである。疑義を避けるため、この場合のポリマーカプセル化粒状材料の「大きさ」という言及は、ポリマーコーティングと固体粒状材料の組み合わせにより与えられる最大寸法の大きさである。
【0042】
固体粒状材料が「実質的に均一で連続的なコーティング」にカプセル化されているとは、粒状材料の周囲にコーティングが不規則には存在せず、コーティングが実質的に穴または空隙を持たないことを意味する。これらの性質を得るため、粒状材料を包囲するポリマーの厚さは、一般的に、比較的一定であろう。しかし、カプセル化ポリマーの厚さは、粒状材料の周辺で徐々に変化することもある。例えば、粒状材料は、球状のポリマーコーティングの正確な中心に位置しないこともある。コーティングの均一性および連続性の評価は、一般的に、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により目視で行うことができる。
【0043】
固体粒状材料をカプセル化するポリマーコーティングの厚さは、好ましくは少なくとも2 nm、より好ましくは少なくとも5 nm、最も好ましくは少なくとも10 nm、さらにより好ましくは少なくとも20 nmである。粒状材料をカプセル化することができるポリマーの厚さには特に限界はないが、最大の厚さはカプセル化された粒子の目的とする用途により一般的に規定される。
【0044】
連続親水性液相が1種または複数のエチレン型不飽和モノマーからなる、または本質的になる場合、モノマーの重合により、分散している固体粒子の全ての周りにポリマーマトリックスを最終的に形成する連続液相が生じ、それによりその中に粒子が分散しているポリマーの塊を形成する。粒子が最初に基本的にモノマーの中に分散し、分散した粒状材料の表面でモノマーが重合することにより、本発明の方法は、この場合、好都合にも粒状材料がその中に実質的に均一に分散しているポリマーを提供することができる。
【0045】
他の好ましい実施形態において、本発明は、固体粒状材料がその中に分散しているポリマーを調製する方法を提供し、前記方法は
連続親水性液相中に前記固体粒状材料の分散体を提供する工程であって、前記分散体が前記固体粒状材料の安定剤として親水性ラフト剤を含み、前記連続親水性液相が1種または複数のエチレン型不飽和モノマーから本質的になる工程;および
前記親水性ラフト剤の制御下で前記の1種または複数のエチレン型不飽和モノマーを重合し、前記固体粒状材料の表面でポリマーを形成し、それにより固体粒状材料がその中に分散しているポリマーを提供する工程
を含む。
【0046】
1種または複数のエチレン型不飽和モノマー「から本質的になる」という表現は、追加成分が前記方法の基本的で新規な特徴を著しく変えない場合にのみ、連続親水性液相が追加成分を含んでよいことを意味する。例示のためのみであるが、1種または複数のエチレン型不飽和モノマーから本質的になる連続親水性液相は、少なくとも90重量%のモノマー、または少なくとも95重量%のモノマーに基づくものでよい。本発明のこの態様において、1種または複数のエチレン型不飽和モノマーがそれ自体疎水性であろうことが理解されるであろう。
【0047】
連続親水性液相が1種または複数のエチレン型不飽和モノマーから本質的になる場合、全てがポリマーに変換される前にモノマーの重合を停止することが望ましい場合もある。この場合、そのような方法を行えば、残存する重合していない1種または複数のエチレン型不飽和モノマー中のポリマーカプセル化固体粒状材料の分散体を提供することができるであろう。
【0048】
連続親水性液相が1種または複数のエチレン型不飽和モノマーから本質的になる本発明の方法の変形版として、それ自体その中に固体粒状材料を分散しているこの連続親水性液相を、さらなるまたは第2の連続液相に分散させ、ダブルエマルションと呼ばれるものを提供することが望ましい場合がある。例えば、粒状材料を本質的に親水性モノマーからなる連続親水性液相中に分散させ、次いで、この連続親水性液相を疎水性液相に分散させることができる。したがって、この状況で、最初に言及された連続液相(すなわち、本質的にモノマーからなるもの)は、その中に分散している粒状材料に対して連続的であると考えられ、第2の言及された連続相は、その中に分散している第1の連続液相に対して連続であると考えられる。このように前記方法を実施すると、モノマーが重合して、実質的に均一にその中に分散している粒状材料を好都合に含むポリマー粒子の分散体を形成することができる。そのようなポリマー粒子の大きさは、当業界に公知の技術を利用して、分散している粒状材料を含む分散している連続液相の液滴の大きさを変化させて簡便に制御可能である。
【0049】
上述の「ダブルエマルション」法において、親水性ラフト剤は、本質的にモノマーからなる連続親水性液相に分散している粒状材料の融合または凝集を防止または少なくとも最小限にする、固体粒状材料の安定剤として機能する。したがって、得られたポリマーカプセル化粒状材料は、好都合にも粒状材料のための追加の分散剤を実質的に含まないでよい。第2の連続液相中に分散している上記の第1の連続液相の融合または凝集を防止または少なくとも最小限にするために、典型的には、界面活性安定剤も必要であろうことが当業者には理解されるであろう。この場合、第1の連続液相が、コロイド安定剤により第2の連続液相中で安定化されることが好ましい。好適なコロイド安定化剤には、ポリ12ヒドロキシステアリン酸に基づくコロイド、ソルビタンモノオレイエート(Span80)などの市販材料、ポリイソブチレンコハク酸無水物(PIBSA)ベースの安定化剤があるが、これらに限定されない。
【0050】
上述の「ダブルエマルション」法によると、得られたポリマー粒子中に分散している粒状材料は、一次粒子でもその凝集体でもよい。粒状材料がポリマー粒子中に実質的に均一に分散していることが好都合である。ポリマーカプセル化粒状材料が分散したままでいられるならば、この方法論を利用してどのような大きさのカプセル化粒子も調製することができる。前記方法論を利用して、粒状材料がポリマー中に実質的に均一に分散している、大きさが100ミクロン以下の上述のポリマーカプセル化粒状材料を調製することもできる。そのような新規ポリマーカプセル化粒状材料は、大きさが70ミクロン以下、40ミクロン以下、または5ミクロン以下であってよい。ポリマーカプセル化材料の大きさはサブミクロン範囲でもよく、例えば、0.01ミクロンから1ミクロンである。疑義を避けるため、この場合のポリマーカプセル化粒状材料の「大きさ」という言及は、ポリマーおよびその中に分散している固体粒状材料の組み合わせにより与えられる最大寸法の大きさである。
【0051】
本質的にモノマーからなる連続親水性液相中への固体粒状材料の分散を促進し、したがって得られるカプセル化ポリマー中の分散を促進する親水性ラフト剤により、ポリマーカプセル化粒状材料は、追加の分散剤を実質的に使用しないでも形成可能である。
【0052】
「追加の分散剤を実質的に含まない」で形成されるとは、ポリマーカプセル化固体粒状材料が、存在する分散剤の全量(すなわち、安定剤として作用する親水性ラフト剤を含める)に対して、連続親水性液相中の粒状材料を分散するのに使用される他の親水性ラフト剤を、30重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満を含むことを意味する。言い換えれば、親水性ラフト剤の他に、カプセル化ポリマーが実質的に分散剤を含まなくてよい。最も好ましくは、親水性ラフト剤のみが安定剤として存在する。
【0053】
固体粒状材料がポリマー中に「実質的に均一に」分散しているとは、粒状材料がカプセル化ポリマー内で局在化も凝集もしていないことを意味する。例えば、粒状材料は、カプセル化ポリマーの中心にも周辺にも集中していてはいけない。粒状材料の分散状態の評価は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)により、目視で行うことができる。
【0054】
上記のように、連続親水性液相中に分散している固体粒状材料を、従来の界面活性剤または他の界面活性剤などの他の安定剤により安定化してもよい。当業者は、この目的に好適な界面活性剤の範囲を理解するであろう。しかしながら、従来の界面活性剤を利用する特定の不利益を避けるため、粒状材料が親水性ラフト剤のみにより安定化されることが好ましい。特に、従来の界面活性剤は、得られたポリマー/粒子複合体への固定が一般的に不可能であるので、その安定化部位から移動しがちである。したがって、従来の界面活性剤を含むポリマー/粒子複合体を使用して形成された製品は、界面活性剤が移動し窪みに局在化する結果として悪影響を受けることがある。例えば、製品の撥水性が損なわれることがある。
【0055】
本発明により使用される親水性ラフト剤は安定化剤として機能するだけでなく、固体粒状材料の表面におけるポリマーの形成に積極的な役割も果たす。この重合の役割のおかげで、親水性ラフト剤は、形成されるポリマーに本質的に共有結合し、そのため移動が防止される。従来の界面活性剤が本発明の方法で使用される場合、親水性ラフト剤の安定化機能が、必要とされる従来の界面活性剤の量を効果的に減少させ、それによりそのような界面活性剤を使用する負の効果を少なくとも最小限にする手段を与える。
【0056】
ここで「ポリマー/粒状材料複合体」および「ポリマー/粒子複合体」という表現は、固体粒状材料の表面におけるポリマーの堆積により形成される生成物を意味する。
【0057】
安定剤として機能するために、本発明により使用される親水性ラフト剤は、一般的に、固体粒状材料の最も外側の表面と、ある意味で物理的に会合するであろう。好ましくは、親水性ラフト剤と粒状材料との間の物理的会合は、親水性ラフト剤が粒状材料の最も外側の表面上に吸着することによるであろう。粒状材料の最も外側の表面上への吸着能力を有することにより、親水性ラフト剤が界面活性を示すこと、言い換えればそれが界面活性であることが認識されるであろう。吸着された親水性ラフト剤は、ある程度の不安性を示すことがあり、したがって粒子の表面に形成されるポリマーにより覆われる傾向はより低くなる。言い換えれば、吸着された親水性ラフト剤は、形成されつつあるポリマーとともに、粒状材料の表面から自由に移動する能力を有することができる。
【0058】
本発明により使用される親水性ラフト剤は、(a)固体粒状材料の最も外側の表面上に吸着し、(b)固体粒状材料の安定化剤として機能し、(c)1種または複数のエチレン型不飽和モノマーの重合を制御することを可能とする構造を典型的には有するであろう。驚くべきことに、親水性ラフト剤は連続親水性液相中に可溶性であることができ、さらに、バルクの液相中におけるモノマーの重合を制御するよりも、粒状材料の表面でモノマーの重合を制御するように、粒状材料の表面に吸着する。親水性ラフト剤の構造的な特徴のさらなる詳細は以下で議論する。
【0059】
本発明による使用に好適な親水性ラフト剤には、一般式(4)
【化3】

[前記式中、各Xは、独立に、親水性エチレン型不飽和モノマーの重合した残基であり、nは、0から100の整数、好ましくは0から60、最も好ましくは0から30の整数であり、R1は任意に1つまたは複数の親水基により置換されている有機基であり、Zは、許容できないほど重合を減速する程度まで開裂の速度を遅くせずに、ラジカル付加に対するチオカルボニル基の十分な反応性を促進することができる基である]
のものがある。好ましいR1基には、C1-C6アルキル、C1-C6アルキルアリール、C1-C6アルコキシアリールまたはヘテロアリールがあり、これらのそれぞれが、-CO2H、-CO2RN、-SO3H、-OSO3H、-SORN、-SO2RN、-OP(OH)2、-P(OH)2、-PO(OH)2、-OH、-ORN、-(OCH2-CHR)w-OH、-CONH2、CONHR'、CONR'R''、-NR'R''、-N+R'R''R'''から選択される1つまたは複数の親水基により任意に置換されており、前式において、RはC1-C6アルキルから選択され、wは1から10であり、R'、R''およびR'''は独立に、-CO2H、-SO3H、-OSO3H、-OH、-(COCH2CHR)w-OH、-CONH2、-SORおよびSO2Rおよびその塩から選択される1つまたは複数の親水置換基により任意に置換されているアルキルおよびアリールから選択され、Rおよびwは上記で定義のとおりである。特に好ましいR1基には、-CH(CH3)CO2H、-CH(CO2H)CH2CO2H、-C(CH3)2CO2H、または-CH2(C6H5)があるが、これらに限定されない。好ましいZ基には、任意に置換されているアルコキシ、任意に置換されているアリールオキシ、任意に置換されているアルキル、任意に置換されているアリール、任意に置換されているヘテロシクリル、任意に置換されているアリールアルキル、任意に置換されているアルキルチオ、任意に置換されているアリールアルキルチオ、ジアルコキシ-またはジアリールオキシ-ホスフィニル[-P(=O)OR22]、ジアルキル-またはジアリール-ホスフィニル[-P(=O)R22]、任意に置換されているアシルアミノ、任意に置換されているアシルイミノ、任意に置換されているアミノ、R1-(X)n-S-およびどのような機構によって形成されてもよいポリマー鎖、例えば水溶性ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキシドポリマーならびにそれらのアルキル末端キャップ誘導体があり、前式において、R1、Xおよびnは上記の定義のとおりであり、R2は、任意に置換されているC1-C8アルキル、任意に置換されているC2-C8アルケニル、任意に置換されているアリール、任意に置換されているヘテロシクリル、任意に置換されているアラルキル、任意に置換されているアルカリールからなる群から選択される。特に好ましいZ基には、-CH2(C6H5)、任意置換C1-C8アルキル、
【化4】

(ここで、eは2〜4である)
および-SR3があるが、これらに限定されず、前式において、R3は任意置換C1-C8アルキルから選択される。
【0060】
R2およびZ基の好ましい任意の置換基には、エポキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ(および塩)、スルホン酸(および塩)、アルコキシ-またはアリールオキシ-カルボニル、イソシアナト、シアノ、シリル、ハロおよびジアルキルアミノがある。
【0061】
式(4)の親水性ラフト剤のR1およびZ基の両方を選択する際に、好ましいまたは特に好ましいR1およびZ基の組み合わせから生じるこれらの親水性ラフト剤もやはり特に好ましい。
【0062】
親水基が-N+R'R''R'''である場合、関連する対アニオンがあるであろう。
【0063】
他の好適な親水性ラフト剤には、R1が任意に1つまたは複数の疎水基により置換されている有機基である、式(4)のものがある。この場合、Zは、任意に1つまたは複数の親水基により置換されている有機基であることが好ましい。
【0064】
R1、-(X)n-、およびZ基を選択する際に、それらの組み合わせは、式(4)のラフト剤に全体的な親水性の特徴を与えなければならないことが理解されるであろう。典型的には、そのようなラフト剤は連続親水性液相中でミセルを形成することができないであろう。
本発明のある態様において、上記で定義される範囲の式(4)のnの下限は、整数1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10から選択されることが好ましい。
【0065】
ここで「アリール」および「ヘテロアリール」という用語は、それぞれ1つまたは複数の芳香環または複素芳香環を含む、または1つまたは複数の芳香環または複素芳香環からなる置換基であり、環の原子に結合している置換基のいずれかを意味する。環は、単環または二環系五員または六員環が好ましいが、環は単環でも、多環式でもよい。好適な環の例には、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、クォーターフェニル、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン、1-ベンジルナフタレン、アントラセン、ジヒドロアントラセン、ベンズアントラセン、ジベンゾアントラセン、フェナントラセン(phenanthracene)、ペリレン、ピリジン、4-フェニルピリジン、3-フェニルピリジン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ナフトチオフェン、チアントレン、フラン、ベンゾフラン、ピレン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、インドリジン、イソインドール、プリン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、イソチアゾール、イソオキサゾール、フェノキサジンなどがあり、これらはそれぞれ任意に置換されていてよいが、これらに限定されない。
【0066】
ここで「任意に置換されている」とは、さらなる1つまたは複数の基により、基が置換されているか、置換されていないことを意味する。そのような置換またはさらなる基は特定されないが、それはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、ベンジルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、アセチレノ(acetyleno)、カルボキシミジル、ハロアリールオキシ、イソシアノ、シアノ、ホルミル、カルボキシル、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロアリール、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ベンジルアミノ、イミノ、アルキルイミン、アルケニルイミン、アルキニルイミノ、アリールイミノ、ベンジルイミノ、ジベンジルアミノ、アシル、アルケニルアシル、アルキニルアシル、アリールアシル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、アリールスルフェニルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロキシ、ヘテロサイクルアミノ、ハロヘテロシクリル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、カルボアルコキシ、アルキルチオ、ベンジルチオ、アシルチオ、スルホンアミド、スルファニル、スルホおよびリン含有基、アルコキシシリル、シリル、アルキルシリル、アルキルアルコキシシリル、フェノキシシリル、アルキルフェノキシシリル、アルコキシフェノキシシリル、アリールフェノキシシリル、アロファニル、グアニジノ、ヒダントイル、ウレイドおよびウレイレンから選択されてよいがこれらに限定されない。
【0067】
特に断りのない限り、本願で使用する「ハロゲン」および「ハロ」は、I、Br、ClおよびFを意味する。
【0068】
ここで、単独でも、「アルケニルオキシアルキル」、「アルキルチオ」、「アルキルアミノ」および「ジアルキルアミノ」などの複合語に使用されても、「アルキル」という用語は、直鎖、分岐鎖または環状アルキルを意味し、好ましくはC1-20アルキルまたはシクロアルキルである。直鎖および分岐鎖アルキルの例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、アミル、イソアミル、sec-アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチル-プロピル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、ヘプチル、5-メトキシヘキシル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、オクチル、6-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、ノニル、1-、2-、3-、4-、5-、6-または7-メチルオクチル、1-、2-、3-、4-または5-エチルヘプチル、1-、2-または3-プロピルヘキシル、デシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-および8-メチルノニル、1-、2-、3-、4-、5-または6-エチルオクチル、1-、2-、3-または4-プロピルヘプチル、ウンデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-または9-メチルデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-または7-エチルノニル、1-、2-、3-、4-または5-プロピルオクチル、1-、2-または3-ブチルヘプチル、1-ペンチルヘキシル、ドデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-または10-メチルウンデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-または8-エチルデシル、1-、2-、3-、4-、5-または6-プロピルノニル、1-、2-、3-または4-ブチルオクチル、1-2-ペンチルヘプチルなどがある。環状アルキルの例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなどの単環または多環式アルキル基がある。
【0069】
ここで「塩」という用語は、電離形態での種を意味し、酸付加塩および塩基付加塩の両方を含む。本発明の文脈で、好適な塩は、ラフト化学作用を干渉しないものである。
【0070】
ここで「対アニオン」という用語は、対応するカチオンの電荷とつり合う負の電荷を提供することができる種を意味する。対アニオンの例には、Cl-、I-、Br-、F-、NO3-、CN-およびPO3-がある。
【0071】
ここで「アルコキシ」という用語は、直鎖または分岐鎖アルコキシを意味し、好ましくはC1-20アルコキシである。アルコキシの例には、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシおよび異なるブトキシ異性体がある。
【0072】
ここで「アルケニル」という用語は、すでに定義したとおりのエチレン型モノ-、ジ-またはポリ-不飽和アルキルまたはシクロアルキル基を含む直鎖、分岐鎖または環状アルケンから形成される基を意味し、好ましくは、C2-20アルケニルである。アルケニルの例には、ビニル、アリル、1-メチルビニル、ブテニル、イソブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、シクロペンテニル、1-メチル-シクロペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、シクロヘキセニル、1-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、シクロオクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、3-デセニル、1,3-ブタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1,3-シクロペンタジエニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,3-シクロヘキサジエニル、1,4-シクロヘキサジエニル、1,3-シクロヘプタジエニル、1,3,5-シクロヘプタトリエニルおよび1,3,5,7-シクロオクタテトラエニルがある。
【0073】
ここで「アルキニル」という用語は、すでに定義したとおりのアルキルおよびシクロアルキル基に構造的に類似なものを含む直鎖、分岐鎖または環状アルキンから形成される基を意味し、好ましくはC2-20アルキニルである。アルキニルの例にはエチニル、2-プロピニルあるいは2-または3-ブチニルがある。
【0074】
ここで単独でも、「アシルオキシ」、「アシルチオ」、「アシルアミノ」および「ジアシルアミノ」などの複合語に使用されても、「アシル」という用語は、カルバモイル、脂肪族アシル基および芳香族アシルと呼ばれる芳香環を含むアシル基または複素環アシルと呼ばれる複素環を含むアシル基を意味し、好ましくはC1-20アシルである。アシルの例には、カルバモイル;ホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2-メチルプロパノイル、ペンタノイル、2,2-ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、へプタデカノイル、オクタデカノイル、ノナデカノイルおよびイコサノイルなどの直鎖または分岐鎖アルカノイル;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、t-ペンチルオキシカルボニルおよびヘプチルオキシカルボニルなどのアルコキシカルボニル;シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニルおよびシクロヘキシルカルボニルなどのシクロアルキルカルボニル;メチルスルホニルおよびエチルスルホニルなどのアルキルスルホニル;メトキシスルホニルおよびエトキシスルホニルなどのアルコキシスルホニル;ベンゾイル、トルオイルおよびナフトイルなどのアロイル;フェニルアルカノイル(例えば、フェニルアセチル、フェニルプロパノイル、フェニルブタノイル、フェニルイソブチリル、フェニルペンタノイルおよびフェニルヘキサノイル)およびナフチルアルカノイル(例えば、ナフチルアセチル、ナフチルプロパノイルおよびナフチルブタノイル)などのアラルカノイル;フェニルアルケノイル(例えば、フェニルプロペノイル、フェニルブテノイル、フェニルメタクリロイル、フェニルペンテノイルおよびフェニルヘキセノイル)およびナフチルアルケノイル(例えば、ナフチルプロペノイル、ナフチルブテノイルおよびナフチルペンテノイル)などのアラルケノイル;フェニルアルコキシカルボニル(例えば、ベンジルオキシカルボニル)などのアラルコキシカルボニル;フェノキシカルボニルおよびナフチルオキシカルボニルなどのアリールオキシカルボニル;フェノキシアセチルおよびフェノキシプロピオニルなどのアリールオキシアルカノイル;フェニルカルバモイルなどのアリールカルバモイル;フェニルチオカルバモイルなどのアリールチオカルバモイル;フェニルグリオキシロイルおよびナフチルグリオキシロイルなどのアリールグリオキシロイル;フェニルスルホニルおよびナフチルスルホニルなどのアリールスルホニル;ヘテロサイクリックカルボニル;チエニルアセチル、チエニルプロパノイル、チエニルブタノイル、チエニルペンタノイル、チエニルヘキサノイル、チアゾリルアセチル、チアジアゾリルアセチルおよびテトラゾリルアセチルなどのヘテロサイクリックアルカノイル;ヘテロサイクリックプロペノイル、ヘテロサイクリックブテノイル、ヘテロサイクリックペンテノイルおよびヘテロサイクリックヘキセノイルなどのヘテロサイクリックアルケノイル;ならびにチアゾリルグリオキシロイルおよびチエニルグリオキシロイルなどのヘテロサイクリックグリオキシロイルがある。
【0075】
ここで単独または「ヘテロサイクリックアルケノイル」、「ヘテロシクロキシ」または「ハロヘテロシクリル」などの用語の一部として使われる「ヘテロサイクリック」、「ヘテロシクリル」および「ヘテロサイクル」という用語は、N、SおよびOから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含み、任意に置換されていてよい芳香族、擬似芳香族および非芳香族の環または環系を意味する。好ましくは、環または環系は3から20の炭素原子を有する。環または環系は、「ヘテロアリール」の定義に関連して上述のものから選択できる。
【0076】
最も好ましい親水性ラフト剤には、以下の一般式5から14
【化5】

[前記式中、R3、Xおよびnはすでに定義のとおりである]
により表される薬剤があるが、これらに限定されない。
【0077】
親水性ラフト剤が水性環境(例えば、連続水相)で本発明の方法により使用されるべき場合、加水分解安定性を示すことが好ましい。トリチオカルボニル親水性ラフト剤は、そのような環境での使用に特に好ましい。
【0078】
式(4)の親水性ラフト剤は、イオン性および非イオン性極性相互作用の混合による粒状材料との物理的会合を可能にする構造的な特徴を一般に有するであろう。
【0079】
本発明により使用されるラフト剤の親水性の特徴は、式(4)のR1、Z、および-(X)n-のような異なった置換の選択を通して変化することができる。この親水性の特徴における変化は、ラフト剤および連続親水性液相および固体粒状材料の間における所望の相互作用を調整する際に有用であることができる。
【0080】
式(4)のラフト剤の親水性の特徴を調整する好ましい方法は、-(X)n-基の特性を変化させることによる。Xは、独立に、親水性エチレン型不飽和モノマーの重合した残基である。-(X)n-基は、ブロックコポリマーまたはランダムコポリマーのような、ホモポリマーまたはコポリマーであってよい。使用される親水性モノマーの型(すなわち、官能基、イオン性および非イオン性、ほかの型)、および/またはそれらが重合される(すなわち、ホモポリマーまたはコポリマーを形成する)方法の変化を通じて、ラフト剤の親水性の特徴における相当の変化を取得することができる。-(X)n-基を形成するために使用されてよい親水性モノマーの型に関する議論が、以下で与えられる。
【0081】
本発明による使用のための特定の親水性ラフト剤の選択は、連続親水性液相および固体粒状材料の両方の極性により大部分決まるであろう。例えば、親水性連続液相内に分散した親水性粒状材料に関連して使用される親水性ラフト剤の界面活性特性は、親水性連続液相内に分散した疎水性粒状材料に関連して使用される親水性ラフト剤のものとは異なる可能性がある。
【0082】
本発明による使用のための特定の親水性ラフト剤の選択は、固体粒状材料の表面における親水性ラフト剤が吸着する効率、およびその表面で形成されるべきポリマーの量の因子の組み合わせにより決まることがある。親水性ラフト剤によるポリマー/粒子複合体を安定に維持することは、ポリマーにコーティングされた粒子の分散体が調製されつつある場合、特に重要である。
【0083】
本発明による使用のための適切な親水性ラフト剤を考慮すると、式(4)のR1により示される基が、特徴において親水性または疎水性であるように選択されてよい。しかし、ラフト剤が特徴において全体で親水性であることを妨げないならば、前に議論したように、R1基は疎水性であることのみが可能である。好ましくは、R1は特徴において親水性であるように選択される。チオカルボニルチオ基より多少除かれるR1によると、nが増加するにつれ、親水性ラフト剤の反応性を変性する際におけるその役割は制限されるようになる。しかし、式(4)の-(X)n-R1基は、重合を再開することが可能な基を残しているフリーラジカルである。
【0084】
重合に対する制御を取得する能力を親水性ラフト剤に供与する点に関して、Zの選択は典型的にはより重要である。式(4)の化合物に対するZ基を選択する際、式(4)の-(X)n-R1基と比較してよりよい離脱基であるような離脱基を基が供与しないことが重要である。この制限により、-(X)n-R1と、それに最も近い硫黄原子の間に、モノマー挿入があることが好ましい。もちろん、Z基もまた-(X)n-R1基である場合、これは関係ないであろう。
【0085】
本発明による使用に親水性ラフト剤を選択する場合、数多くの変数を考察する必要があることが理解されるであろう。この点をさらに説明するため、前記方法を実施する多くの異なる手法を、以下でより詳細に説明する。親水性連続液相と、分散している固体粒状材料との間の相互作用を説明する際に、そのような存在の極性または親水性/疎水性に言及することが好都合でもあろう。
【0086】
本発明による方法は、親水性固体粒状材料および親水性連続液相を利用して実施してよい。この場合、式(4)の親水性ラフト剤は、ある量の重合した親水性電離モノマーを含む-(X)n-基とともに供与されてよい。前記方法を実施するために、親水性ラフト剤および固体粒状材料は、粒状材料の表面におけるイオン電荷、および親水性ラフト剤の-(X)n-基における反対のイオン電荷の形成を促進するpHで連続液相に導入される。この場合、親水性ラフト剤中の、ある量の重合した電離モノマーは、粒状材料の表面および親水性ラフト剤の-(X)n-基で液相のpHをそのような電荷を発生させるのに好適にするのに十分である。
【0087】
反対の電荷の種を形成すると、親水性ラフト剤は、少なくとも-(X)n-基の領域がイオン機構により固体粒状材料の表面に結合するように固体粒状材料の表面に吸着することができ、一方親水性ラフト剤の他の領域は連続液相と会合し粒状材料が融合しないように安定化させることができる。親水性ラフト剤と粒状材料の間に生じるイオン結合の程度により、親水性ラフト剤が、ポリマーが形成されるにつれ、ポリマーを有する粒状材料の表面から自由に動けない場合もある。そのような状況下で、親水性ラフト剤がもはや安定剤として機能することができないように、粒状材料の表面で形成されるポリマーの量が親水性ラフト剤を包み込まないことが一般的に好ましいであろう。
【0088】
あるいは、固体粒状材料の表面におけるより厚いポリマーの堆積を可能にするため、親水性ラフト剤の親水性特性を好適に調節してイオン結合効率を低下させてもよい。
【0089】
ポリマーコーティングの厚さが増すにつれ、分散したカプセル化粒子が不安定になることが見いだされたら、ある量の電離モノマーをモノマーのフィードに混ぜることにより安定が維持できることが多い。したがって、安定化電荷を含む元々の部分はコーティングの中に埋もれ無効になるものの、コーティングされた粒子上の表面電荷は、電離モノマーを後に添加することにより維持できる。好ましくはモノマーフィード中の1%から5%の量の電離モノマーがこの目的に使用されるであろう。このために好適な電離モノマーには、アクリル酸、メタクリル酸およびナトリウムスチレンスルホナートがあるが、これらに限定されない。
【0090】
エチレン型不飽和モノマーまたはそのようなモノマーを使用して形成される親水性ラフト剤の基または領域に関連して使用される「電離」という用語は、モノマー、基または領域が電離可能でカチオン基またはアニオン基を形成することができる官能基を有することを意味する。そのような官能基は、プロトンの喪失または受容により酸性または塩基性条件下で一般的に電離できるであろう。一般的に、電離官能基は酸性基または塩基性基である。例えば、カルボン酸官能基は塩基性条件下でカルボキシレートアニオンを形成し、アミン官能基は酸性条件下で四級アンモニウムカチオンを形成する。官能基は、イオン交換法によっても電離可能である。
【0091】
エチレン型不飽和モノマーまたはそのようなモノマーを使用して形成される親水性ラフト剤の基または領域に関連して使用される「非電離」という用語は、モノマー、基または領域が電離官能基を有さないことを意味する。詳細には、そのようなモノマー、基または領域は、酸性または塩基性条件下でプロトンを喪失または受容できる酸性基または塩基性基を有さない。
【0092】
固体粒状材料、連続親水性液相および親水性ラフト剤の性質により、粒状材料の表面においてポリマーを形成する前に、親水性ラフト剤が、安定剤として作用しているものの、ある程度の不安定性を示すことがある。親水性ラフト剤がある程度の「不安定性」を示すとは、前記薬剤が、連続液相中の溶媒和と粒状材料の表面における会合との間で平衡して存在することができことを意味する。簡便のため、粒状材料と会合していない親水性ラフト剤を、以下で「遊離」親水性ラフト剤と称する。
【0093】
連続親水性液相中の遊離親水性ラフト剤の存在は、独立ポリマー粒子(すなわち、固体粒状材料の表面で形成されないポリマー)の形成に、驚くべきことにほとんどまたはまったくつながらない。理論に束縛されることを望まないが、これは、連続親水性液相中でミセルを形成する傾向をまったくではないがほとんど有しない、本発明に従い使用される親水性ラフト剤に由来すると信じられる。対照的に、粒状材料の表面から離れて、ミセルまたは他の凝集を形成することができるラフト剤は、独立ポリマー粒子の形成を導いてよい利用可能なモノマーに対して有効に競合する能力が一般に増大している。不安定な親水性ラフト剤が粒状材料の表面における重合の制御を得るとすれば、この重合プロセス自体が必然的に前記薬剤を安定にするであろうことが認識されるであろう。
【0094】
本発明の方法が、1種または複数のエチレン型不飽和モノマーから本質的になっていない連続親水性液相を使用して実施される場合、固体粒状材料、およびいずれかの親水性ラフト剤が相互作用し安定な分散体を提供した後で、1種または複数のモノマーを連続液相に導入することが好ましい。この手法をとることにより、親水性ラフト剤が連続液相中のモノマー液滴にとっての安定剤としても作用する可能性が低下する。連続液相中に導入されるモノマーもモノマー液滴の形成を避けるようにされるのもまた好ましい。言い換えると、重合は、「飢餓フィード(starved feed)」状態で実施される。そのような状態は、安定化されたモノマー液滴が連続液相中で形成される可能性も低下させ、同様に粒状材料から独立したポリマーが形成する可能性も低下させる。
【0095】
粒状材料から独立であるポリマーが形成する可能性を最小限にするのが望ましい場合、存在する不安定な親水性ラフト剤が実質的に全て安定になった時点まで重合を実施してよい。この時点で、「軽く」ポリマーカプセル化された固体粒子は、形成されたかもしれない独立ポリマー粒子および残存遊離親水性ラフト剤から、遠心分離などの分離法により分離してよい。次いで、「軽く」ポリマーカプセル化された粒子をモノマーと共に連続親水性液相に再分散させ、重合を継続して粒状材料上のより厚いポリマーコーティングを形成することができる。
【0096】
本発明の方法に従い、エチレン型不飽和モノマーを親水性ラフト剤の制御下で重合し、固体粒状材料の表面でポリマーを形成する。重合は、通常、フリーラジカル源からの開始を必要とする。開始ラジカルの源は、熱が引き起こす好適な化合物の均等分裂(ペルオキシド、ペルオキシエステルまたはアゾ化合物などの熱開始剤)、モノマー(例えば、スチレン)からの自然発生、レドックス開始系、光化学開始系あるいは電子線、X線またはγ線などの高エネルギー放射など、フリーラジカルを発生させるどのような好適な方法によっても提供することができる。開始系は、反応条件下で、開始剤または開始ラジカルと親水性ラフト剤の間に、反応の条件下で実質的に有害な相互作用がないように選択される。
【0097】
熱開始剤は、重合温度で適切な半減期を有するように選択される。これらの開始剤は以下の化合物の1種または複数を含んでよい:
2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-シアノブタン)、ジメチル2,2'-アゾビス(イソブチレート)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2-(t-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-エチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2,2'-アゾビス(2,2,4-トリメチルペンタン)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロパン)、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシイソブチラート、t-アミルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ペルオキシ二硫酸カリウム、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、次亜硝酸ジ-t-ブチル、次亜硝酸ジクミル。このリストは網羅的ではない。
【0098】
光化学開始剤系は、反応媒体中への必要な溶解度を有し、重合の条件下でラジカル生成のための適切な量子収率を有するように選択される。例には、ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、アシルホスフィンオキシドおよび光レドックス系がある。
【0099】
レドックス開始剤系は、反応媒体への必要な溶解度を有し、重合の条件下で適切なラジカル生成速度を有するように選択される。これらの開始系には、以下の酸化体および還元体の組み合わせがあるが、これらに限定されない:
酸化体:カリウム、ペルオキシ二硫酸塩、過酸化水素、t-ブチルヒドロペルオキシド
還元体:鉄(II)、チタン(III)、チオ亜硫酸カリウム、重硫酸カリウム。
【0100】
他の好適な開始系は、最近のテキストに記載されている。例えば、Moad and Solomon、「the Chemistry of Free Radical Polymerization」、Pergamon、London、1995、53-95ページを参照されたい。
【0101】
水などの親水性反応媒体にかなりの溶解度を有する好適な開始剤には、4,4-アゾビス(シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-エチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(イソブチルアミド)二水和物およびこれらに誘導体があるが、これらに限定されない。
【0102】
ある重合プロセス中の連続親水性液相は、例えばpHを制御する添加剤などの他の添加剤を含んでもよい。
【0103】
本発明の方法の進行の間に起こる重合プロセスに関連して、固体粒状材料の表面にポリマーを形成し、この重合が親水性ラフト剤の制御下で進行することが重要である。理論に束縛されることを望まないが、方法の間に作用する重合プロセスが成長モノマーラジカルの形成により始まり、それが連続親水性液相中を拡散し、粒状材料の表面に自らの位置を決めると考えられている。親水性ラフト剤も(安定剤として)粒状材料の表面に位置するので、それらは、モノマーの重合がラフト媒介フリーラジカルプロセスで進行するように、重合の制御を容易に得られる。このプロセスを促進するために、粒状材料の表面に存在する親水性ラフト種の数が、重合反応の進行中にその表面に到達する開始ラジカルの合計数よりも多いことが好ましい。
【0104】
モノマーの重合が、重合全体にわたり親水性ラフト剤の制御下に維持されていることが好ましい。しかし、固体粒状材料の表面のポリマーが少なくとも部分的に親水性ラフト剤の制御下で形成されているならば、モノマーが他のフリーラジカル経路で重合してもよい。こう言ったので、親水性ラフト剤の制御下で重合したモノマーの量が減るにつれ、不規則成長の傾向および1つの反応部位のみでのポリマーの形成が増すことが認識されるであろう。ある反応連鎖において他のフリーラジカル経路で重合するモノマーの量は、ポリマーカプセル化粒状材料の目的とする用途に大いに依存するであろう。
【0105】
本発明の方法による重合反応が、少なくとも部分的に親水性ラフト剤の制御下で進行したかどうかの証拠は、ポリマーカプセル化固体粒状材料のポリマーコーティングの簡単な目視評価(例えば、透過型電子顕微鏡による)により得てよい。「ラフト制御」の著しい喪失は不規則で不均一なポリマーコーティングにより特徴づけられるが、親水性ラフト剤の制御下での重合は規則的で均一なポリマーコーティングを与える。
【0106】
「ラフト制御」の証拠は、重合反応の間にポリマー/粒状材料複合体をサンプリングし、得られたポリマーをゲル濾過クロマトグラフィ(GPC)などの好適な技術により分析しても容易に得られる。理想的には、「ラフト制御」が確立されると、ポリマーは従来のフリーラジカル媒介経路により調製されたポリマーに比べ低い多分散性を有するであろう。GPCデータにより示される「ラフト制御」の他の特徴は、ポリマーの分子量が、転化率と共に直線的に増加することである。これは、本発明の方法の実施において重要な特徴であると考えられる。本発明により形成されたポリマーは、一般的に、重合プロセスの進行の間にポリマーの多分散性が広がることがあるが、転化率と共に直線的な分子量の増加を示すであろう。
【0107】
固体粒状材料の表面で形成されるポリマーの組成および構造は、モノマーの選択および制御された添加により調整できる。広範囲のエチレン型不飽和モノマーが前記方法に従い使用されてよい。好適なモノマーは、フリーラジカルプロセスで重合可能なものである。
モノマーは、他のモノマーと共に重合できなくてはならない。種々のモノマーの共重合性を決める因子は、当分野に十分に記録されている。例えば、Greenlee, R. Z.、Polymer Hndbook 第3版(Brandup,J. およびImmergut. E. H. 編)Wiley: New York、1989、II/53ページを参照されたい。そのようなモノマーには一般式(15)
【化6】

[前記式中、UおよびWは、-CO2H、-CO2R2、-COR2、-CSR2、-CSOR2、-COSR2、-CONH2、-CONHR2、-CONR22、水素、ハロゲンおよび任意に置換されているC1-C4アルキルからなる群から独立に選択されるが、前記置換基は、ヒドロキシ、-CO2H、-CO2R1、-COR2、-CSR2、-CSOR2、-COSR2、-CN、-CONH2、-CONHR2、-CONR22、-OR2、-SR2、-O2CR2、-SCOR2および-OCSR2からなる群から独立に選択され;
Vは、水素、R2、-CO2H、-CO2R2、-COR2、-CSR2、-CSOR2、-COSR2、-CONH2、-CONHR2、-CONR22、-OR2、-SR2、-O2CR2、-SCOR2および-OCSR2からなる群から選択され;
{R2は、任意に置換されているC1-C18アルキル、任意に置換されているC2-C18アルケニル、任意に置換されているアリール、任意に置換されているヘテロアリール、任意に置換されているカルボシクリル、任意に置換されているヘテロシクリル、任意に置換されているアラルキル、任意に置換されているヘテロアリールアルキル、任意に置換されているアルカリル、任意に置換されているアルキルヘテロアリールおよびポリマー鎖からなる群から選択されるが、前式において、置換基は、塩および誘導体を含むアルキレンオキシジル(エポキシ)、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、ホルミル、アルキルカルボニル、カルボキシ、スルホン酸、アルコキシ-またはアリールオキシ-カルボニル、イソシアナト、シアノ、シリル、ハロ、アミノからなる群から独立に選択される}]
のものがある。好ましいポリマー鎖には、ポリアルキレンオキシド、ポリアリーレンエーテルおよびポリアルキレンエーテルがあるが、これらに限定されない
【0108】
モノマーの例には、マレイン酸無水物、N-アルキルマレイミド、N-アリールマレイミド、ジアルキルフマレートおよび環化重合性モノマー、アクリレートおよびメタクリレートエステル、アクリル酸およびメタクリル酸、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびメタクリロニトリル、これらのモノマーの混合物ならびにこれらのモノマーと他のモノマーとの混合物があるが、これらに限定されない。当業者ならば認識するであろうとおり、コモノマーの選択は、立体的性質および電子的性質により決まる。種々のモノマーの共重合性を決める因子は当分野に十分に記録されている。例えば、Greenlee, R. Z.、Polymer Hndbook 第3版(Brandup,J. およびImmergut. E. H. 編)Wiley: New York、1989、II/53ページを参照されたい。
【0109】
有用なエチレン型不飽和モノマーの具体例には、以下のものがある:メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート(全異性体)、ブチルメタクリレート(全異性体)、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メタクリル酸、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、メタクリロニトリル、α-メチルスチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート(全異性体)、ブチルアクリレート(全異性体)、2-エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アクリル酸、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、アクリロニトリル、スチレン、以下から選択される官能性メタクリレート、アクリレートおよびスチレン:グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(全異性体)、ヒドロキシブチルメタクリレート(全異性体)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、イタコン酸無水物、イタコン酸、グリシジルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート(全異性体)、ヒドロキシブチルアクリレート(全異性体)、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、トリエチレングリコールアクリレート、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-エチロールメタクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-エチロールメタクリルアミド、ビニル安息香酸(全異性体)、ジエチルアミノスチレン(全異性体)、α-メチルビニル安息香酸(全異性体)、ジエチルアミノα-メチルスチレン(全異性体)、p-ビニルベンゼンスルホン酸、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート、トリブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルメタクリレ
ート、ジブトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、トリエトキシシリルプロピルアクリレート、トリブトキシシリルプロピルアクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジメトキシシリルプロピルアクリレート、ジエトキシシリルプロピルアクリレート、ジブトキシシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルアクリレート、酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、マレイン酸無水物、N-フェニルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、ブタジエン、エチレンおよびクロロプレン。このリストは網羅的ではない。
【0110】
状況しだいで、親水性エチレン型不飽和モノマーを使用することが望ましくてよい。この型の適切なモノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、N-メチルアクリルアミド、またはジメチルアミノエチルメタクリレートがあるが、これらに限定されない。他の親水性エチレン型不飽和モノマーは、以下にリストされる。
【0111】
カプセル化ポリマーを形成するように選択されるモノマーが、そのガラス転移温度(Tg)に強く影響を与えることを当業者は認識するであろう。「Tg」は、アモルファスポリマー(または部分的に結晶性のポリマー中のアモルファス領域)が比較的堅く脆い状態から比較的粘性がありゴム状の状態に変わる狭い範囲の温度である。カプセル化ポリマーのTgを簡便に調整して、ポリマーカプセル化固体粒状材料の目的とする用途に合わせることができる。例えば、重合してカプセル化ポリマーを形成するモノマーを、ポリマーカプセル化粒状材料の水性分散体(塗料配合物のような)が融合し膜を形成することが可能なTgを与えるように選択することができる。
【0112】
本願で言及するTg値は計算されており、コポリマーに関するものはFoxの式(1/Tg=Σ1nWn/Tg(n)) により計算されている。特に断りのない限り、異なるTgを有するポリマーまたはコポリマーの混合物をカプセル化ポリマーが含む場合、ポリマー組成物全体のTgは、重量平均値として計算される。例えば、計算されたFoxTgが-10℃のコポリマー(50重量%)と、計算されたFoxTgが50℃のコポリマー(50重量%)を含むポリマー混合物は20℃の全体的なTgを与えるであろう。
【0113】
当業者は、モノマーを選択して、ポリマーカプセル化粒状材料の目的とする用途に適したTgを有するカプセル化ポリマーを与えることができるであろう。
【0114】
固体粒状材料の表面におけるポリマーの形成を容易にするために、エチレン型不飽和モノマーが重合する際に、連続親水性液相中で実質的に不溶性であるポリマーを形成するように、1種または複数のエチレン型不飽和モノマーを好ましくは選択する。
【0115】
ある状況下で、カプセル化ポリマー中にある程度の架橋を導入することが望ましいことがある。例えば、形成されるカプセル化ポリマーは連続親水性液相中である程度の溶解度を有してよく、あるいは得られるポリマー/微粒子複合材を、カプセル化ポリマーがある程度の溶解度を有する溶媒と接触させて使用してよい。そのような架橋ポリマー構造は公知の手段のいずれかにより誘導することができるが、重合したエチレン型不飽和モノマーの使用により誘導されるのが好ましい。架橋ポリマー構造が、重合したエチレン型不飽和モノマーの使用により数多くの方法で誘導可能なことを、当業者は認識するであろう。例えば、マルチエチレン型(multi-ethylenically)不飽和モノマーは、少なくとも2種の不飽和基の重合により架橋ポリマー構造を生みだし、架橋を与えることができる。この場合、架橋構造は、典型的には重合の間に誘導され、フリーラジカル反応機構により提供される。
【0116】
あるいは、架橋ポリマー構造を、フリーラジカル反応への関与に感受性のない反応性官能基も含むエチレン型不飽和モノマー(すなわち、「官能化」エチレン型不飽和モノマー)から誘導してもよい。この場合、不飽和基の重合によりモノマーがポリマー骨格に取り入れられ、得られた垂れ下がった官能基が架橋の起こる手段を提供する。反応性官能基の相補的なペア(すなわち、互いに反応する基)を提供するモノマーを利用して、反応性官能基のペアは非ラジカル反応機構で反応し架橋を与えることができる。そのような架橋の形成は、一般に、モノマーの重合の間にもまた起こるであろう。
【0117】
反応性官能基の相補的なペアを使用する変形版は、モノマーが非相補的反応性官能基を備えている場合である。この場合、官能基は互いに反応せず、その代わりにその後に架橋剤と反応し架橋を形成する部位を提供する。そのような架橋剤は、非相補的反応性官能基の実質的に全てと反応する量で使用されることが認識されるであろう。これらの状況下での架橋の形成は、一般的に、モノマーの重合の後に起こされるであろう。
【0118】
架橋ポリマー構造を形成するこれらの方法の組み合わせもまた利用してもよい。
【0119】
上述の「マルチエチレン型不飽和モノマー」および「官能化エチレン型不飽和モノマー」という用語は、本願において、簡便かつ集合的に「架橋エチレン型不飽和モノマー」または「架橋モノマー」とも称する。「架橋エチレン型不飽和モノマー」または「架橋モノマー」という一般的表現は、架橋が誘導されている、またはされるであろうエチレン型不飽和モノマーを意味する。したがって、マルチエチレン型不飽和モノマーは、典型的には、重合の間に架橋を提供することができるが、官能化エチレン型不飽和モノマーは、重合の間またはその後に架橋を誘導することができる手段を提供することができる。
【0120】
官能基を含むエチレン型不飽和モノマーが全て、架橋モノマーとして機能する目的で本発明により使用されるのではないことが認識されるであろう。例えば、アクリル酸は、架橋を誘導すべき部位を提供するために使用されない限り、架橋モノマーと考えるべきではない。
【0121】
架橋ポリマー構造を与えるように選択できる好適なマルチエチレン型不飽和モノマーの例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールアリルオキシジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタンジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタントリ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパンジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン、メチロール(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、オレイルマレエート、グリセリルプロポキシトリアクリレート、アリルメタクリレート、メタクリル酸無水物およびメチレンビス(メタ)アクリルアミドがあるが、これらに限定されない。
【0122】
フリーラジカル反応への関与に感受性のない反応性官能基を含む好適なエチレン型不飽和モノマーの例には、アセトアセトキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、N-メチロールアクリルアミド、(イソブトキシメチル)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、t-ブチル-カルボジイミドエチルメタクリレート、アクリル酸、γ-メタクリルオキシプロピルトリイソプロポキシシラン、2-イソシアノエチルメタクリレートおよびジアセトンアクリルアミドがあるが、これらに限定されない。
【0123】
相補的な反応性官能基を与える、すぐ上で言及された好適なモノマーのペアの例には、N-メチロールアクリルアミドとそれ自体、(イソブトキシメチル)アクリルアミドとそれ自体、γ-メタクリルオキシプロピルトリイソプロポキシシランとそれ自体、2-イソシアノエチルメタクリレートとヒドロキシエチルアクリレートならびにt-ブチル-カルボジイミドエチルメタクリレートとアクリル酸がある。
【0124】
上述の1種または複数の官能化エチレン型不飽和モノマーの反応性官能基と反応できる好適な架橋剤の例には、ヘキサメチレンジアミン、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、Jeffamines(登録商標)およびジエチレントリアミンなどのアミン類、メラミン、トリメチロールプロパントリス(2-メチル-1-アジリジンプロピオネート)およびアジピン酸ビスヒドラジドがあるが、これらに限定されない。相補的な反応性基を提供する架橋剤と官能化エチレン型不飽和モノマーのペアの例には、ヘキサメチレンジアミンとアセトアセトキシエチルメタクリレート、ヘキサメチレンジアミン、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、Jeffamines(登録商標)およびジエチレントリアミンなどのアミン類とグリシジルメタクリレート、メラミンとヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパントリス(2-メチル-1-アジリジンプロピオネート)とアクリル酸、アジピン酸ビスヒドラジドとジアセトンアクリルアミドがある。
【0125】
従来の乳化重合、ミニエマルション重合および懸濁重合の実施に利用される一般技術は、本発明の方法を実施する際に好都合に利用することができる。しかし、そのような技術を利用するのに好適な試薬を選択する際、本発明の方法が、実際には、連続親水性液相中に分散している固体粒状材料の表面でポリマーが形成される界面重合プロセスであることを認識されたい。
【0126】
本発明の方法は、バッチモードでも、半連続モードでも、連続モードでも操作してよい。連続親水性液相が、重合してポリマーを形成する1種または複数のエチレン型不飽和モノマーから本質的になる場合、前記方法はバッチモードで操作されるのが好ましく、連続親水性液相が、重合してポリマーを形成する1種または複数のエチレン型不飽和モノマーから本質的にならない場合、前記方法は、半連続または連続モードで操作されるのが好ましい。
【0127】
操作の半連続および連続モードは、ポリマーの多分散性の制御と共にポリマー構築の優れた制御を与える。これらの操作モードによると、モノマーを徐々にまたは段階的に加え、重合反応の進行の間に、異なるモノマーおよび他の添加剤を導入することができる。分散体の固形分が増すにつれて、得られたポリマー/粒状材料複合体は十分に安定化されないかもしれない。この場合、粒子表面を安定化部分で満たすために、さらなる親水性ラフト剤をモノマーと共に反応に加えられてよい。
【0128】
「半連続」とは、前記方法がバッチ的に実施され、モノマーが重合の間徐々にまたは段階的に加えられることを意味する。「連続」とは、全ての試薬が、重合を通じて徐々にまたは段階的に連続して加えられ、生成物が反応系から連続的に除去されるループタイプの反応器で実施されることを意味する。好ましくは、前記方法は半連続モードで実施される。
【0129】
重合の半連続モードを実施する好ましい方法は、選択された固体粒状材料と親水性ラフト剤を反応容器中で好適な連続親水性液相に加え、連続液相中の粒状材料の安定な分散体を提供する。必要であれば、例えば、pHを制御する緩衝液など他の試薬と共に熱開始剤を加えてもよい。典型的には、使用される全試薬は、本質的に溶存酸素を含まず、反応溶液は重合開始前に窒素などの不活性ガスでパージされる。次いで、分散体温度を上昇させ、開始剤が熱により引き起こされる均等分裂を起こすようにする。次いで、モノマーを加え、親水性ラフト剤の制御下で重合が進行することができる。この段階でのモノマーの添加は、貯留(reservoir)モノマー液滴が形成しないような速度に維持でき、十分なモノマーが親水性ラフト剤の制御下で重合して、まだそうでないならば、固体粒状材料の表面から本質的に不安定でなくなるまでそのような速度で継続することができる。次いで、望ましい程度の重合が起こるまで、同じでも異なっていてもよい、さらなるモノマーを、連続的でも段階的でも、より高速で加えることができる。例えば、重合を継続して、望ましい固形分を有するポリマー/粒状材料複合体粒子の分散体を供給してよい。
【0130】
このように本発明の方法を利用する具体例は、ポリマーによる二酸化チタン粒子のコーティングであろう。この場合、親水性二酸化チタン粒状材料を、水などの親水性連続液相に、適切な親水性ラフト剤を利用して分散することができる。安定な分散体を形成したら、ブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートなどの疎水性モノマーを分散体に導入して、二酸化チタン粒子の表面でポリマーを形成してよい。ポリマーが形成され、二酸化チタン粒子をコーティングおよびカプセル化し、さらに継続して、所望の固形分を有するラテックスを提供することができる。したがって、得られたラテックスは、好都合には、ポリマーカプセル化二酸化チタン粒子の水性分散体を含み、塗料配合物に不透明バインダーとして直接使用することができるであろう。
【0131】
本発明の方法により使用される連続親水性液相が、重合してポリマーを形成する1種または複数のエチレン型不飽和モノマーから本質的になる場合、前記方法は典型的にはバッチプロセスで実施されるだろうが、実際にバルク重合プロセスとして考えられてもよい。そのような連続液相が、前述のようにさらなる連続液相中に分散する場合、前記方法は、実際には、ミニエマルションまたは懸濁重合プロセスとして見られる。これらの場合では、親水性ラフト剤は、一般的に、重合の進行の間には連続親水性液相に導入されないので、重合反応の開始前に十分な親水性ラフト剤を使用して連続親水性液相中の固体粒状材料を安定化することが好ましい。
【0132】
バルクモードで本発明の方法を実施する1手法は、反応容器中で、固体粒状材料、親水性ラフト剤および熱開始剤を1種または複数の親水性エチレン型不飽和モノマーに加えるものを含んでよい。他の試薬も、必要であれば加えてよい。典型的には、使用される全ての試薬は、本質的に溶存酸素を含まず、反応溶液は重合開始前に窒素などの不活性ガスによりパージされる。当業者に公知の手段を利用して、1種または複数の親水性エチレン型不飽和モノマーに十分に固体粒状材料を分散させると、分散体温度が上昇し、開始剤が熱により引き起こされる均等分裂を起こすようにする。この場合の連続親水性液相が本質的にモノマーからなるとすると、成長モノマーラジカルは直ちに形成される。次いで、成長モノマーラジカルは固体粒状材料の表面に拡散し、粒子を安定化している親水性ラフト剤が重合を制御することができるようにする。実質的に全てのモノマーが消費され、固体粒状材料が実質的に均一にその中に分散したポリマーマトリックスを提供するまで、重合は継続する。
【0133】
すぐ上に概説した手法は、ポリマーマトリックス内に高濃度のナノ粒子をカプセル化するのが望ましい場合に特別な利点を有する。従来技術を利用すると、モノマー相中にナノ粒子を安定化させるのに必要な分散剤の量は、モノマーの重合の間分散剤が安定した分散体を維持できたとしても、マトリックスポリマーの性質を根本的に変えてしまうと思われる。本発明により使用される親水性ラフト剤が粒状材料の安定剤として作用し、重合プロセスにも関与して、最後にはカプセル化ポリマーの一部を形成するとしたら、ポリマーマトリックス中の分散剤の存在に関連した典型的な問題は、好都合にも回避される。
【0134】
前述のバルクモードでの前記方法の実施は、連続親水性液相がさらなる連続液相に分散し、固体粒状材料がその中に実質的に均一に分散しているポリマー粒子を調製するように、当業者により容易に修正変更可能であろう。
【0135】
当業者は、連続、半連続またはバルクモードで本発明の方法を実施する際、数多くのパラメーターを変更することが可能であることを認識するであろう。
【0136】
粒状材料を連続親水性液相中に分散することができ、固体粒状材料の表面においてポリマーを形成するために不利な影響を与えないなら、本発明により使用することができる連続親水性液相の性質に特に制限はない。簡便のため、重合してポリマーを形成する1種または複数のエチレン型不飽和モノマーから本質的になる連続液相を、以下で「反応性」連続親水性液相と称する。逆に、重合してポリマーを形成する1種または複数のエチレン型不飽和モノマーから本質的にならない連続液相を、以下で「非反応性」連続親水性液相と称する。
【0137】
好適な非反応性連続親水性液相には、水、ならびにエチレンおよびプロピレングリコール、およびC1-C3アルコールなどの水混和性極性溶媒があるが、これらに限定されない。
【0138】
反応性連続親水性液相の提供に使用することができる好適なモノマーには、前記規定された親水性モノマーがあるが、それらに限定されない。
【0139】
本発明の方法は、固体粒状材料の表面の表面で形成されるポリマーの組成を調節する手段を好都合にも提供する。特に、前記方法は、カプセル化ポリマー中の有利な位置で特定のまたは特殊なモノマーを重合する手段を提供する。重合に対するそのような制御は、塗料などのコーティング組成物中に使用されるべきポリマーカプセル化粒状材料の調製に特に有用である。
【0140】
固体粒状材料の表面で形成される、得られたポリマー組成物に関連する本発明の特徴は、水性塗料配合物中で着色バインダー(pigmented binder)としての使用に好適なポリマーカプセル化顔料粒子の水性分散体を特に参照して以下で議論される。しかし、以下に概説される一般原則は、前記方法により形成されるポリマー/粒状材料複合体を使用することができるフィラー、接着剤、プライマーおよびシーラントなどの他の用途にも適用可能であることを理解されたい。
【0141】
カプセル化ポリマー組成物の修飾は、特定のまたは特殊なモノマーの選択重合により達成可能である。例えば、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(TFEM)などの疎水性の高いモノマーを、前記方法の間ある段階で重合し、ポリマーの高疎水性表面領域を提供することができる。このようにポリマー組成物にTFEMを導入すると、そのような粒子が塗料配合物に取り入れられた際、塗料膜に耐汚染性を促進させることができる。あるいは、アクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレートまたはウレイドモノマーなどのより極性の高いモノマーを重合して、ポリマーの高親水性表面領域を提供してよい。この場合、重合に使用される親水性ラフト剤はそのようなモノマー残基も含んでよく、それにより親水性の高いポリマー表面を呈することができる。ポリマー組成物の表面におけるそのような極性モノマーの取り込みは、コーティング用途に使用される際、困難な表面への接着を助けることができる。特に、親水性ラフト剤の一部として、ポリマーの表面におけるこれらのモノマーの位置は、膜形成の間基材と自由に相互作用できるそれらの能力のため、接着促進剤としての性質を最大限にする。典型的には、そのような特定のまたは特殊なモノマーは比較的低濃度、好ましくは全モノマー含量の10重量%未満、より好ましくは全モノマー含量の5重量%未満で重合し、重合して固体粒状材料の表面でポリマーを形成する。
【0142】
本発明の方法により操作する重合のモードは、固体粒状材料の表面で形成されるポリマーの内部組成も制御することができる。特に、ポリマーの内部領域の組成を表面組成と変えて、内部領域と外殻が提供することができる。最も単純な場合、プロセスのある段階で特定のモノマーを重合し、後の段階で異なるポリマーを重合し、ブロックコポリマーを形成することにより、ポリマーを形成することができる。このようにして、固体粒状材料を、柔らかい皮膜形成外面を有する固いポリマーでカプセル化することができ、あるいは、固い非皮膜形成スキンを有する柔らかい弾性ポリマーでカプセル化することができる。「固い」および「柔らかい」ポリマーという用語は、ホモポリマーのTgがそれぞれ室温(すなわち25℃)より上または下である、モノマーから形成されたポリマーを意味する。好適な固いモノマーには、メチルメタクリレート、t-ブチルアクリレートおよびメタクリレートならびにスチレンがあるがこれらに限定されない。好適な柔らかいモノマーには、エチル、ブチルおよび2-エチルヘキシルアクリレートなどのアクリル酸エステルがあるが、これらに限定されない。
【0143】
本発明は、生体医学用途、例えば磁気ナノ粒子を含む生体適合性ポリマー微粒子を使用する用途にも適用可能である。そのような微粒子は血管中に送達され、種々の医学関連機能を発揮することができる。これらの用途は、MRI造影剤および細胞標的および分離などの診断機能からガンの治療用の磁気薬物標的および標的を決めた温熱療法(targeted hyperthermia)などの治療技術にわたる。これらの技術は、ポリマー複合体微粒子のある好都合な磁気特性に依存している。例えば、標的を決めた温熱療法は、微粒子が高周波磁界に曝されたとき熱を発生するように最適化された磁気特性に依存している。
【0144】
そのようなin vivo用途の繊細な性質を考慮して、最終的な微粒子の大きさおよびポリマーマトリックス内に取り込まれている構成磁気ナノ粒子の空間的配置に対する高レベルな制御を与える必要性は非常に重要である。特に、高体積分率の磁気ナノ粒子をポリマーマトリックス中に均一に分布させる能力が非常に望ましい。本発明の方法は、磁気ナノ粒子がその中に均一に分布したポリマー微粒子の調製に好適であることが見いだされた。
【0145】
本発明は、塗料、フィラー、接着剤、トナー、液体インク、プライマー、シーラント、診断製品または治療製品を調製する方法でもあって、本発明によるポリマーカプセル化固体粒状材料の分散体および/または固体粒状材料がその中に分散しているポリマーの調製ならびに前記分散体および/またはポリマーと1種または複数の配合物成分との混合を含む方法も与える。
【0146】
当業者は、塗料、フィラー、接着剤、トナー、液体インク、プライマー、シーラント、診断製品または治療製品に含まれる好適な配合物成分を理解するであろう。そのような配合物成分の例には、増粘剤、抗真菌剤、UV吸収剤、増量剤、対生物作用剤および着色剤があるが、これらに限定されない。
【0147】
本発明は、本発明により調製されたポリマーカプセル化固体粒子の分散体および/またはその中に固体粒状材料が分散しているポリマーを含む塗料、フィラー、接着剤、トナー、液体インク、プライマー、シーラント、診断製品または治療製品をさらに提供する。
【0148】
ポリマー粒子の水性分散体は、塗料、接着剤、フィラー、プライマー、液体インクおよびシーラントなどの水性製品に広く使用されている。そのような製品は、典型的には、全て異なる濃度かつ異なる組み合わせで存在する顔料、増量剤、皮膜形成助剤および他の添加剤など他の配合物成分も含む。そのような製品における顔料の使用は、製品に「隠蔽」力を与える点で重要なだけでなく、製品を種々の色で提供することができる。
【0149】
事前に形成したポリマー粒子の水性分散体に顔料を加え、それを分散剤の助けにより分散して、顔料は慣例的に水性製品に取り入れられてきた。あるいは、顔料を分散剤の助けにより最初の段階で分散させ、練り顔料と呼ばれるものを形成し、次いでこの練り顔料が、事前に形成したポリマー粒子の水性分散体と混合される。分散段階では、顔料粒子に剪断力を与えるために高速攪拌が必要とされる。ポリマー粒子の従来の水性分散体では、顔料分散の間に働く剪断力のレベルが常に安定ではないので、この分散工程が問題になることがある。
【0150】
そのような顔料製品が使用される多くの用途で、製品自体の中および製品の硬化中の顔料粒子の凝塊が、製品の光沢、耐洗浄性/耐汚染性、流動、機械的性質、不透明度、色および/または色強度のような特性に悪影響を与えることがある。特に望ましいことであるが、そのような製品中の顔料粒子の有害な凝塊を低減または回避することは、今まで従来技術を利用して達成することが困難であった。
【0151】
カプセル化ポリマーの少なくとも一部が親水性ラフト剤の制御下で形成されたポリマーカプセル化固体粒状材料が、多くの有利な性質を呈することができることが見いだされた。例えば、ポリマーカプセル化粒状材料は、塗料、フィラー、接着剤、プライマー、トナー、液体インクまたはシーラント配合物において、バインダーおよび粒状材料の源(例えば、顔料の形態で、「着色バインダー」)として機能することができる。そのような「埋め込まれた」形態での粒状材料の提供は、そのような製品中の顔料凝塊などの問題を、除去はできないとしても最小限にすることが見いだされた。親水性ラフト剤の制御下でカプセル化ポリマーの少なくとも一部を形成することにより、粒状材料を、また実質的に均一で連続的なポリマーのコーティング中にカプセル化することもでき、またはカプセル化ポリマー中に実質的に均一に分散することもできる。
【0152】
簡便のみのため、ポリマーカプセル化固体粒状材料を以下で「着色バインダー」と称する。しかし、顔料を、他の好適な粒状材料の代わりに容易に使用することができることを理解されたい。
【0153】
したがって、本発明は、ポリマーカプセル化固体粒状材料の個別な粒子を含む、またはそれらからなる組成物であって、少なくとも部分的に親水性ラフト剤の制御下で形成されたポリマーの実質的に均一で連続的なコーティング中に、前記固体粒状材料がカプセル化されている組成物をさらに提供する。
【0154】
本発明は、ポリマーカプセル化固体粒状材料の個別な粒子を含む、またはそれらからなる組成物であって、前記の個別な粒子が、固体粒状材料をカプセル化ポリマー中に実質的に均一に分散して有し、前記カプセル化ポリマーが少なくとも部分的に親水性ラフト剤の制御下で形成され、親水性ラフト剤の他に、カプセル化ポリマーが実質的に分散剤を含まない組成物も提供する。
【0155】
「実質的に分散剤を含まない」カプセル化ポリマーとは、上記のことから、親水性ラフト剤以外の分散剤に言及すると認識されるであろう。言い換えれば、親水性ラフト剤以外に、カプセル化ポリマーはそのポリマーマトリックス中に実質的に分散剤を含まない。
【0156】
「個別な粒子」とは、組成物内のポリマーカプセル化固体粒状材料が個別な粒子に分離できることを意味する。しかし、特定の状況下で、例えばカプセル化ポリマーが低いTgを有する場合、粒子は互いに付着する傾向があることが認識されるであろう。それにもかかわらず、個別な粒子として粒子を認識すべきである。
【0157】
組成物は、流動可能なパウダー、スラリーまたはペーストの形態であっても、分散体の形態であってもよい。流動可能なパウダー、スラリーまたはペーストの場合、組成物は液体で希釈され、個別な粒子の分散体を形成することができることが好ましい。このタイプの水性分散体は、例えば水性塗料、フィラー、接着剤、プライマー、液体インクおよびシーラント中で着色バインダーとしての使用に好適である。
【0158】
本発明の組成物は、比較的薄い(例えば10 nm未満)カプセル化ポリマーコーティングを有する顔料粒子を含んでも、またはそれからなってもよく、それを従来の水性バインダーと組み合わせて高塗布固形分の塗料配合物を与えてもよい。前記組成物を、主着色バインダー(primary pigmented bunder)として使用することもでき、または単独の着色バインダーとしてすら使用することができる。
【0159】
「主」着色バインダーとして、バインダーが、その配合物に使用される全てのバインダーの総量に対して50重量%を超える量で、ある配合物中に存在することを理解されたい。
【0160】
配合物によっては、着色バインダーを、配合物に使用される全てのバインダーの総量に対して、約60重量%を超える量で、より好ましくは約80重量%を超え、最も好ましくは約95重量%を超え、さらにより好ましくは単独の着色バインダー(すなわち100重量%)で使用するのが望ましい。
【0161】
本発明の組成物中におけるポリマーカプセル化固体粒状材料のカプセル化ポリマーの少なくとも一部は、親水性ラフト剤の制御下で形成される。そのようなラフト剤は、好都合にも、液体分散体中のポリマーカプセル化粒状材料の安定剤として機能することができる、かつ/またはカプセル化ポリマー中の固体粒状材料の実質的に均一な分布を促進することができる。
【0162】
液体分散体の形態で、ポリマーカプセル化固体粒状材料の組成物は、塗料、フィラー、接着剤、プライマー、液体インクまたはシーラント配合物中の着色バインダーとしての使用に特に好適である。
【0163】
したがって、本発明は、ポリマーカプセル化固体粒状材料の液体分散体をさらに提供し、前記固体粒状材料は、少なくとも部分的に親水性ラフト剤の制御下で形成されたポリマーの実質的に均一で連続的なコーティング中にカプセル化されている。
【0164】
この場合、親水性ラフト剤は、好都合にも、分散したポリマーカプセル化粒状材料の安定剤として機能することができる。好ましくは、液体分散体は水性分散体のように親水性である。
【0165】
本発明は、ポリマーカプセル化固体粒状材料の液体分散体も提供し、前記ポリマーカプセル化粒状材料は、固体粒状材料をカプセル化ポリマー中に実質的に均一に分散して有し、ここで前記カプセル化ポリマーは、少なくとも部分的に親水性ラフト剤の制御下で形成され、カプセル化ポリマーは親水性ラフト剤以外に実質的に分散剤を含まない。
【0166】
本発明は、ポリマーカプセル化固体粒状材料の液体分散体を含む塗料、フィラー、接着剤、プライマー、液体インクまたはシーラント配合物をさらに提供し、前記固体粒状材料は、少なくとも部分的に親水性ラフト剤の制御下で形成されたポリマーの実質的に均一で連続的なコーティング中にカプセル化されている。
【0167】
本発明は、固体粒状材料がカプセル化ポリマー中に実質的に均一に分散しているポリマーカプセル化固体粒状材料の液体分散体を含む塗料、フィラー、接着剤、プライマー、液体インクまたはシーラント配合物も提供し、ここで前記カプセル化ポリマーは、少なくとも部分的に親水性ラフト剤の制御下で形成され、親水性ラフト剤以外に、カプセル化ポリマーは実質的に分散剤を含まない。
【0168】
好ましくは、これらの液体分散体は水性分散体のように親水性である。
【0169】
本発明の方法は、ポリマーカプセル化固体粒状材料を含む組成物の調製に、簡便に使用することができる。
【0170】
本発明の組成物は、水性装飾塗料配合物における着色バインダーとしての使用に好適である。装飾塗料は典型的には、建築的な構成などに塗布され、家庭内で使用され、室内外の表面に塗布されることが最も多い。したがって、ここで「装飾塗料」という用語は、塗布の後に高温に曝される必要がなく、その目的とする用途に必須な物理的および機械的性質を有するポリマー膜を与える塗料を分類するものとする。したがって、そのような塗料は、塗布された塗料が、必須の物理的および機械的性質を有するポリマー膜を形成するのに高温を必要とする、工業的コーティングなどの塗料とは区別されるべきである。
【0171】
本発明の組成物を含む塗料配合物は、向上した光沢、光沢の保持、不透明度、流動、耐洗浄性/耐汚染性、色および/または色強度などの向上した性質を有する膜を与えることが期待される。
【0172】
従来の着色水性塗料の乏しい光沢および流動は、膜形成の間に顔料が早期に沈殿することに関連することが多い。バインダーおよび顔料の両方が別の粒子として存在するので、膜形成の間、顔料粒子は、バインダー粒子の間の領域に押し込められ、次に膜形成プロセスの間におけるそれらの移動度が制限される。この密集効果または凝集は、しばしば膜中の顔料粒子の均一性の低い分布を起こし、光沢性の低下を起こす。対照的に、溶媒からキャストされたバインダーから形成される着色膜は、顔料粒子が膜形成プロセスのはるかに後までより自由に動くことを可能にし、向上した光沢およびよりなめらかな表面外観を有する最終膜を与える。
【0173】
本発明によるポリマーカプセル化固体粒状材料を含む、またはそれらからなる組成物は、水性コーティングを調製するために好都合にも使用することができ、そのようなコーティングは溶媒系相当物に匹敵する表面外観を提供するであろうと期待される。そのようなコーティングの向上した表面の性質は、膜形成の間の顔料凝集の問題が、除かれていないとしても最小限にされることから生じると考えられている。
【0174】
塗料膜光沢は、一般的に、垂直とは異なる角度でとられた反射率の装置の指示値を利用して測定される。角度20°で測定された光沢指示値は、「光沢の深さ」を表し、低い顔料の体積濃度(PVC)または光沢塗料を特徴づけるためにしばしば使用される。本発明によるポリマーカプセル化粒状材料の組成物を利用して配合される低PVC塗料は、相当するPVCの従来の水性塗料で測定する値より優れた20°光沢指示値を与えることが期待される。本発明の組成物を利用して配合される低PVC塗料の60°および85°の光沢指示値も、相当するPVCの従来の水性塗料の測定値より一般的に優れていると期待される。
【0175】
理論に束縛されることを望むわけでないが、本発明による塗料から誘導される塗料膜の向上した光沢性は、膜形成の間カプセル化ポリマーに埋め込まれた結果として、顔料粒子が塗料膜全体により均一に分布していることから生じると考えられている。
【0176】
不透明度および隠蔽力の性質は、コーティング膜中の粒子の光吸収、光屈折および光反射による。顔料とポリマーの界面だけが、臨界顔料体積濃度(CPVC、すなわち全ての顔料と増量剤粒子の間の隙間を満たすのにちょうど十分のバインダーが存在するPVC)未満でこれらの性質に貢献すると考えられている。本発明による塗料から誘導される塗料膜は、優れた光散乱性を示すことも期待される。したがって、より高い不透明度が、比較的少ない顔料を使用して、好都合にも得られる。
【0177】
理論に束縛されることを望むわけでないが、ポリマーカプセル化固体粒状材料は、塗料膜中でより均一な顔料の分布を提供し、それにより膜の全不透明度および隠蔽力に各顔料粒子が最大の貢献をすることが可能になると考えられている。
【0178】
艶なし(またはマット)水性塗料は、通常、高い顔料充填量で、しばしばCPVCを超えて配合されている。そのような高顔料充填量では、加えられた増量剤粒子および空気のボイドが膜の隠蔽力に貢献して、不透明度などの性質が最大になる傾向がある。しかし、機械的強度、光沢および耐汚染性などの性質は、得られた塗料膜の多孔性により悪影響をうける傾向がある。本発明による塗料から誘導された塗料膜は、比較的高いPVC(例えば72)で配合された際、PVC、顔料の対バインダー比および固形分など等価なパラメーターで配合された従来の水性塗料に比べ、優れた光沢、機械的強度および耐汚染性を示すことも期待される。
【0179】
理論に束縛されることを望むわけではないが、本発明による塗料から誘導される塗料膜のそのような向上した性質は、PVC、顔料の対バインダー比および固形分の等価なパラメーターで配合される従来の水性塗料に比べ、塗料膜の多孔性が低いことから生じると考えられている。
【0180】
多孔性の低い塗料膜の構造的特徴が、屋外の風化の間に塗料膜の光沢の保持を促進することが期待される。風雨に曝された後の塗料膜の「光沢度」の低下は、主に、膜のバインダーが光触媒的に劣化するにつれ膜表面近くの顔料濃度が増加する効果による。塗料の光沢は、典型的には、表面におけるPVC増加と共に減少する。そのような光沢の低下は、PVCがCPVCを超えると特に深刻になる。塗料膜中における顔料の不十分な分布は、この問題を悪化させる。暴露時間の関数としての光沢保持を測定することができ、本発明による塗料から誘導される塗料膜は、促進耐候実験において相当な暴露時間の後、(PVC、顔料の対バインダー比および固形分の等価なパラメーターで配合される従来の水性塗料に比べ、)特に目に見える光沢の深さの点で、光沢低下に対する優れた耐性を示すことが期待される。そのような有利な性質は、どのようなPVCで配合される本発明による塗料から誘導される塗料膜にも付与されると考えられる。
【0181】
本発明の組成物は、好都合にも、固体粒状材料が着色顔料である、ポリマーカプセル化固体粒状材料を含んでいても、それからなっていてもよい。水性分散体の形態で、そのようなポリマーカプセル化着色顔料粒子は、着色顔料粒子が従来の方法で分散したポリマー粒子の水性分散体に比べ、向上した着色特性を示すことが期待される。ポリマーカプセル化着色顔料粒子を含む、またはそれらからなる組成物は、従来の塗料、フィラー、接着剤、プライマー、液体インク、トナーおよびシーラントの着色剤(tinter)としても使用することができる。この場合、組成物は、さらさらした粉体、スラリーまたはペースト(すなわちコンセントレート)の形態にあってよい。
【0182】
乾燥した塗料膜の表面からの着色顔料のはがれは、コーティング産業でしばしば遭遇する問題である。この現象は、一般的に、系中の顔料の浮き色(flooding)または色むら(floating)のいずれか結果であり、着色水性ラテックス系塗料の塗布時に起こる。浮き色および色むらに影響することが知られている多くの因子があり、例えば、顔料およびエマルション分散体の不安定性および/または顔料/顔料ペーストと使用されるエマルションの不相溶性がある。ポリマーカプセル化着色顔料粒子とともに配合される本発明による塗料から誘導される塗料膜は、はがれがほとんどないことが期待される。そのような有利な性質が、どのようなPVCで配合される、本発明による塗料から誘導される塗料膜にも付与されると考えられている。
【0183】
さらさらした粉体の形態の場合、本発明による組成物を、熱溶融粉体塗料および新規「ドライ」コーティング配合物に好都合にも使用することができる。
【0184】
固体粒状材料がポリマーの実質的に均一で連続的なコーティング中にカプセル化されている、ポリマーカプセル化固体粒状材料を含む、またはそれらからなる組成物は、「ドライ」コーティング組成物における使用に特に適している。ドライコーティング組成物は、建設・建築産業で長年使用されてきた。そのような組成物は、一般的に、水を加えて組成物を使用可能にするポリマー材料を含むセメント組成物の形態であった。しかし、塗料などのコーティング組成物中の最適な顔料分散を維持する必要のため、従来のドライコーティング技術は、今日まで、塗料などのコーティング組成物に応用するには比較的不出来であった。本発明による組成物のさらさらした粉体形態に液体を加え、ポリマーカプセル化固体粒状材料の液体分散体を提供することが期待される。ポリマー中にカプセル化されていることにより、固体粒状材料は液体分散体中だけでなく、液体分散体が硬化して例えば塗料膜を形成するにつれても、良好に分散したままでいることが期待される。したがって、そのようなさらさらした粉体組成物を、簡便のため、再構成可能な組成物(reconstitutable composition)(例えば、再構成可能な塗料)と称するが、それに水などの液体を加え、組成物を使用可能にすることができ。この種の再構成可能な塗料を、簡便に、例えばボール箱に包装でき、後の使用のために貯蔵することができる。
【0185】
希釈して水などの液体の添加により分散体を形成することができる本発明による組成物は、当業者に公知の他の配合物成分を含んでもよい。例えば、組成物は、液体中のポリマーカプセル化粒状材料の分散を促進する分散剤を含んでよい。しかし、親水性ラフト剤が、カプセル化ポリマーの少なくとも一部の形成に使用され、液体中のポリマーカプセル化固体粒状材料の安定剤としても機能する結果として、さらなる分散剤の添加なしで本発明による組成物を、好都合にも使用することができる。希釈液体中のポリマーカプセル化固体粒状材料の分散を促進するために、液体がアルカリ性であることが好ましいことがある。したがって、この目的のために、組成物または希釈液体中に塩基を含むことが望ましいこともある。好適な塩基には、水酸化ナトリウムまたはカリウムおよびアンモニア(水酸化アンモニウム)があるが、これらに限定されない。当業者であれば、他の好適な塩基を知っているであろう。
【0186】
さらさらした粉体の形態で本発明の組成物を提供するために、組成物は一般的に、約85重量%以上の固形分、好ましくは90重量%を超える固形分を有さなければならないことが期待される。
【0187】
さらさらした粉体組成物を、本発明の方法を利用して簡便に調製することができる。この場合、得られるポリマーカプセル化固体粒状材料は、当分野に公知の技術を利用して単離してよい。ポリマーカプセル化粒状材料の単離は、濾過、遠心分離および/または凍結乾燥によるであろう。上記に示したとおり、さらさらした粉体を得るために、一般的に、全ての液体(例えば水)をポリマーカプセル化粒状材料から除去することが必要ではないであろう。
【0188】
さらさらした粉体組成物に使用されるポリマーカプセル化固体粒状材料は、一般的に、ポリマー/粒子複合体が単離・乾燥されるときに遭遇する圧縮力に耐えられるよう十分に固いカプセル化ポリマーを含むであろう。この文脈での「固い」とは、カプセル化ポリマーのTgが十分高く、複合体粒子の制御不可能な集塊または凝集を防止または少なくとも最小限にすることができことを意味する。一般的に、カプセル化ポリマーのTgは、0℃を超え、より好ましくは10℃を超え、より好ましくは15℃を超えるであろう。
【0189】
本発明の生成物中のポリマーカプセル化固体粒状材料のカプセル化ポリマーのポリマーマトリックスは、上述のとおり簡便に調節することができる。例えば、カプセル化ポリマーのポリマーマトリックスは、コア/鞘(シェル)タイプの構造のように勾配および/または層状構造を有してもよい。ここで「コア」という用語は、カプセル化ポリマーの内部領域またはセクションを意味し、「鞘」または「シェル」という用語は、カプセル化ポリマーの外部領域またはセクションを意味する。コア/鞘という用語は、カプセル化ポリマーが2つの別な構造ポリマー成分から構成されることを暗示してよい一方、カプセル化ポリマーがまさにこのような構造を持たなくてもよく、コアと鞘の区別は、この用語が示唆するほど精密でなくてもよいことを理解されたい。
【0190】
さらさらした粉体組成物が再構成可能なコーティングまたは接着剤製品として使用されるべき場合、カプセル化ポリマーのTgは、膜形成または硬化プロセスの間のポリマーカプセル化固体粒状材料の融合を可能にするほど十分低い必要があると認識されるであろう。一般的に、この場合のカプセル化ポリマーのTgは約70℃未満であろう。これを言ったので、望ましくない程度の、複合体粒子の集塊または凝集を、防止または少なくとも最小限にするために十分高いTgを有することとは別に、カプセル化ポリマーのTgは、最終産物の意図される適用により典型的には記述されるであろう。
【0191】
本発明は、塗料、フィラー、接着剤、液体インク、プライマー、シーラント、診断製品または治療製品の調製方法であって、本発明による組成物に液体を加えて、ポリマーカプセル化固体粒状材料の分散体を形成する工程を含む方法も提供する。
【0192】
本発明は、本発明による組成物を含む塗料、フィラー、接着剤、プライマー、トナー、液体インク、シーラント、診断製品または治療製品をさらに提供する。
【0193】
式(4)の親水性ラフト剤を多くの方法で調製してよい。好ましくはそれらを、以下の一般式(16)
【化7】

[前記式中、ZおよびR1はすでに定義されたとおりである]
を有するラフト剤の制御下で親水性エチレン型不飽和モノマーを重合して調製する。
【0194】
一般式(16)のラフト剤から一般式(4)の親水性ラフト剤を調製する際、本発明の方法を実施する際に前記薬剤が連続親水性液相中の固体粒状材料も安定化しなければならないことに留意することが重要である。式(16)の化合物はある程度界面活性を提示することがあるが、連続液相中の固体粒状材料を安定化することは一般的にできないであろう。適切な安定化の性質を達成するため、式(4)の化合物の文脈で、式(16)の化合物は、適当な親水性エチレン型不飽和モノマーとその後反応する。これを言ったので、式(4)に関してn = 0の時、そのような化合物は本質的に十分な界面活性を有し、連続液相中の固体粒状材料を安定化できることを理解されたい。この場合、式(4)は式(16)と等価であり、R1およびZは適当な親水性を与え、それ自体、好適な親水性ラフト剤を与える。
【0195】
式(4)の化合物の調製に使用するのに好適な親水性エチレン型不飽和モノマーは、フリーラジカルプロセスにより重合できるどのようなモノマーでもよい。好適な親水性エチレン型不飽和モノマーの例は上述のものと同じである。
【0196】
親水性モノマーは、それらの電離または非電離性で選択してもよい。酸性基を有する好適な親水性電離エチレン型不飽和モノマーの例には、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、p-スチレンカルボン酸、p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、エタクリル酸、α-クロロアクリル酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸およびマレイン酸があるが、これらに限定されない。塩基性基を有する好適な親水性電離エチレン型不飽和モノマーの例には、2-(ジメチルアミノ)エチルおよびプロピルアクリレートおよびメタクリレートおよび対応する3-(ジメチルアミノ)エチルおよびプロピルアクリレートおよびメタクリレートがあるが、これらに限定されない。好適な非電離親水性エチレン型不飽和モノマーの例には、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびヒドロキシエチルアクリレートがあるが、これらに限定されない。
【0197】
親水性エチレン型不飽和モノマーの重合による式(4)の化合物の形成は、有機溶媒中で一般に実施され、その選択は、重合すべきモノマーの性質により主に決まる。重合はモノマー自体の中で実施してもよい。
【0198】
親水性エチレン型不飽和モノマーの重合による式(4)の親水性ラフト剤の形成は、通常、ラジカルの源からの開始を必要とするであろう。すでに記載した開始系は、この目的にも好適である。
【0199】
親水性ラフト剤を調製する方法は、最初に好適なラフト剤の選択を含む。次いで、選択されるラフト剤を、反応容器中で熱開始剤、溶媒および親水性モノマーと合わせる。典型的には、使用する全ての試薬は溶存酸素を本質的に含まず、反応溶液は重合前に窒素などの不活性ガスにより残存酸素がパージされる。その後、開始剤の熱により引き起こされる均等分裂が起こるよう溶液の温度を上昇させて反応を開始する。次いで、重合反応がラフト剤の制御下で進行する。第一の親水性モノマーの消耗時に、1種または複数のさらなる親水性モノマーを順次直ちに溶液に加えても、中間生成物が単離される場合に後の段階で加えてもよく、重合がラフト制御下で継続し、ブロックコポリマー構造を有する式(4)の-(X)n-基を与える。
【0200】
一般的に、式(16)のラフト剤は、それ自体、本発明の方法による安定剤として機能する十分な性質を持たないであろう。したがって、すぐ上に記載した方法による場合など、式(4)の親水性ラフト剤を調製する際には、十分な親水性モノマーが一般的にラフト剤上に重合し、必要な性質を与える。親水性モノマーが重合する間のある時点で、ラフト剤は十分な界面活性を発現するであろう。重合のこの段階で、新しい界面活性親水性ラフト剤を単離および/または後の使用のために貯蔵することができる。あるいは、界面活性親水性ラフト剤が調製された媒体が好適であるとして、固体粒状材料を単に反応媒体に加えて安定化をはかり、連続親水性液相中の粒状材料の分散体を供給することができる。次いで、本発明の方法を実施するために、追加のモノマーを連続液相に導入することができる。
【0201】
親水性ラフト剤を連続液相中(すなわちin situ)で最初に形成することにより本発明の方法を実施する方法が多くあることが当業者には明らかであろう。この態様をさらに説明するために、そのような1手法をすぐ下により詳細に記載する。
【0202】
本発明の方法は、塗料配合物のバインダー材料として使用するポリマーカプセル化二酸化チタン粒子の水性分散体を調製するプロセスに使用することができる。このプロセスは、式(16)の親水性溶媒可溶性ラフト剤の選択を含む。次いで、選択されたラフト剤を、反応容器中で、熱開始剤、溶媒および親水性モノマーと合わせる。典型的には、使用する全ての試薬は溶存酸素を基本的に含まず、反応溶液は重合前に窒素などの不活性ガスにより残存酸素がパージされる。熱により引き起こされる開始剤の均等分裂が起こるように、溶液の温度を上昇させて反応を開始する。次いで、重合反応がラフト剤の制御下で進行し、それにより、親水性モノマーの挿入によりラフト剤にさらに親水性を与える。
【0203】
親水性モノマーの消耗時に、1種または複数の他の親水性モノマーを溶液に順次潜在的に加え、重合をラフト制御下で継続し、一般式(4)の親水性ラフト剤に与えることができる。所望の親水性ラフト剤を得たので、水および粒状二酸化チタンを反応媒体に導入し、それにより親水性ラフト剤が粒子を安定化するように機能し、連続液相中の二酸化チタンの分散体を供給できる。
【0204】
いま連続液相中の二酸化チタン粒子の安定な分散体を提供したので、ブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートなどの疎水性モノマーを反応媒体に加え、親水性ラフト剤の制御下でさらに重合し、それにより二酸化チタン粒子の表面でポリマーを形成する。重合中の好適な安定性を保持するために、少量の親水性電離モノマーが疎水性モノマート共に含まれる。重合を継続して、所望の固形分を供給することができ、得られたポリマーカプセル化二酸化チタン粒子の水性分散体は、塗料配合物の不透明バインダー材料としての使用に好適である。
【0205】
すぐ上に記載した方法の代わりとして、式(16)の水溶性ラフト剤を使用して、あまり明確でないブロック様構造を有する親水性ラフト剤を調製してもよい。この場合、親水性モノマーを、共重合または連続的に重合するよりも、親水性モノマーを選択される比で同時に加え、一般式(4)の親水性ラフト剤中に-(X)n-成分のランダムコポリマーを与えることができる。必要な界面活性を有する親水性ラフト剤を形成し、前記方法を、上記に概説したとおり継続してよい。
【0206】
ラフト剤として式(16)により包含される特定の化合物の効力は移動定数により、移動定数はR1およびZの性質、親水性モノマーおよび一般的な反応条件により決まるであろう。これらの考察は、式(4)の親水性ラフト剤に関して上記で議論されている。式(16)のラフト剤に関してそのような考察は本質的に同じである。特に、R1およびZの基が式(4)の親水性ラフト剤に残ると、その選択は類似の考察を条件とする。しかし、チオカルボニルチオ基により近いので、R1はラフト剤としての特定の化合物の効力に顕著な役割を果たしている。
【0207】
式(16)のラフト剤のR1およびZ基の両方を選択する際、特に好ましいR1およびZ基の組み合わせから生じる前記薬剤も特に好ましい。
【0208】
最も好ましい式(16)のラフト剤には、以下の式17から26
【化8】

[前記式中、R3はすでに定義したとおりである]
により表される前記薬剤があるが、これらに限定されない。
【0209】
水性環境で使用する式(16)のラフト剤を選択する際、加水分解安定性を示すことが好ましい。水性環境中での使用にトリチオカルボニルラフト剤は特に好ましい。
【0210】
ジチオカルボニル化合物が式(16)のラフト剤として使用される場合、ジチオエステルでも、ジチオカーボネートでも、トリチオカーボネートでも、ジチオカルバメートでもよい。
【0211】
本発明の好ましい実施形態を表す、以下の実施例を参照して本発明を説明する。しかし、以下の記載の特殊性が、前述の本発明の一般性に取って代わるものでないと理解されたい。
【0212】
実施例1:
a)2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロパン酸を使用するそれぞれの重合度m ≒ 5, n ≒ 30を有するポリ(アクリル酸)m-ブロック-ポリ(アクリルアミド)マクロラフト剤の調製
ジオキサン (17.9 g) および水 (15.5 g) 中の2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロパン酸 (1.32 g, 5.5 mmol)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸) (0.08 g, 0.3 mmol)、アクリルアミド (12.12 g, 170.5 mmol) の溶液を、100 mL丸底フラスコ中に調製した。これを15分間、マグネティックスターラーで撹拌し、窒素で噴霧した。そしてフラスコを70℃で4時間加熱した。この時間の最後に、アクリル酸 (2.04 g, 28.3 mmol) および4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸) (0.07 g, 0.3 mmol)をフラスコに添加した。混合物を脱酸素化し、70℃でさらに3時間継続して過熱した。コポリマー溶液の固形分は44.5%であった。
【0213】
b)実施例1a)からのマクロラフトを安定剤として使用する、TiO2顔料(Tranox CR828 (Kerr-McGee顔料))のポリ(メチルメタクリレート-コ-ブチルアクリレート)コーティング
a)からのマクロラフト(2.49 g, 0.3 mmol)、水(50.2 g)を含む溶液を、100 mlビーカー中に調製した。濃縮アンモニア(28 %)の添加により、溶液のpHを5.13に上昇させた。このマクロラフト溶液に、TiO2顔料(9.98 g)を加え、混合し、Vibra-Cell超音波破砕プロセッサー (Sonics and Materials, Inc.)標準プローブを30%強度で5分間使用して、さらに完全に分散させた。超音波破砕プロセスの間、分散物をマグネティックスターラーで撹拌し、水浴中で冷却した。白色分散物を2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(0.03 g, 0.1 mmol)を含む100 ml丸底フラスコに移し、窒素噴霧により脱酸素化した。70℃の温度設定の油浴中にフラスコ全体を浸し、一方でブチルアクリレート(1.39 g, 10.9 mmol)、メチルメタクリレート(3.25 g, 32.4 mmol)の脱酸素化混合物を、5時間にわたり0.93 g/hrの速度でフラスコに加えた。モノマー添加が完了した後、過熱をさらに1時間継続し、その後の時間に重合が完了したことが見出された。濾過後、ラテックスは白色で安定であり、直径約456 nmの粒子を含んでいた。ラテックスの固形分は23.3 %であり、乾燥後白色で光沢のある膜を形成した。透過型電子顕微鏡により、ラテックスがカプセル化TiO2粒子を含むことが示された。
【0214】
c)実施例1a)からのマクロラフトを安定剤として使用する、TiO2顔料(CR828)のポリ(メチルメタクリレート-コ-ブチルアクリレート-コ-メタクリル酸)コーティング
a)からのマクロラフト(2.50 g, 0.3 mmol)、水(50.6 g)を含む溶液を、100 mlビーカー中に調製した。濃縮アンモニア(28 %)の添加により、溶液のpHを5.27に上昇させた。このマクロラフト溶液に、TiO2顔料(10.16 g)を加え、混合し、Vibra-Cell超音波破砕プロセッサー (Sonics and Materials, Inc.)標準プローブを30 %強度で5分間使用して、さらに完全に分散させた。超音波破砕プロセスの間、分散物をマグネティックスターラーで撹拌し、水浴中で冷却した。白色分散物を2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(0.03 g, 0.1 mmol)を含む100 ml丸底フラスコに移し、窒素噴霧により脱酸素化した。70℃の温度設定の油浴中にフラスコ全体を浸し、一方でブチルアクリレート(1.27 g, 9.9 mmol)、メチルメタクリレート(2.97 g, 29.7 mmol)、およびメタクリル酸(0.42 g, 4.9 mmol)の脱酸素化混合物を、5時間にわたり0.93 g/hrの速度でフラスコに加えた。モノマー添加が完了した後、過熱をさらに12時間継続し、その後の時間に重合が完了したことが見出された。ラテックスは白色で安定であり、直径約455 nmの粒子を含んでいた(HPPS, Malvern Instruments Ltd)。ラテックスの固形分は23.5 %であり、乾燥後白色で光沢のある膜を形成した。透過型電子顕微鏡により、ラテックスがカプセル化TiO2粒子を含むことが示された。ブチルアクリレート(1.27 g, 9.9 mmol)およびメチルメタクリレート(2.97 g, 29.7 mmol)、およびメタクリル酸(0.42 g, 4.9 mmol)の脱酸素化した混合物を、2.3 g/hrの速度で、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(0.03 g, 0.1 mmol)の存在下で上記のラテックス(54.15 g)に70℃で2時間にわたり加え、TiO2粒子の周りのカプセル化ポリマー層をさらに増加させた。モノマー添加が完了した後、完全な重合を効率化するために、温度をさらに5時間維持しせた。透過型電子顕微鏡による観察により、ポリマーカプセル化TiO2粒子が示された(図1)。動的レーザー光散乱(HPPS, Malvern Instruments Ltd)により平均粒径 491 nmを測定した。ラテックスの固形分は29.4 %であった。
【0215】
実施例2:実施例1a)からのマクロラフトを安定剤として使用する、Bayferrox Red 110 M酸化鉄顔料(Bayer)のポリ(メチルメタクリレート-コ-ブチルアクリレート-コ-メタクリル酸)コーティング
実施例1a)からのマクロラフト(3.04 g, 0.3 mmol)、水(51.3 g)を含む溶液を、100 mlビーカー中に調製した。濃縮アンモニア(28 %)の添加により、溶液のpHを6.67に上昇させた。このマクロラフト溶液に、赤色酸化鉄顔料(5.00 g)を加え、混合し、Vibra-Cell超音波破砕プロセッサー (Sonics and Materials, Inc.)標準プローブを30 %強度で10分間使用して、さらに完全に分散させた。超音波破砕プロセスの間、分散物をマグネティックスターラーで撹拌し、水浴中で冷却した。赤色分散物を2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(0.03 g, 0.1 mmol)を含む100 ml丸底フラスコに移し、窒素噴霧により脱酸素化した。70℃の温度設定の油浴中にフラスコ全体を浸し、一方でブチルアクリレート(1.27 g, 9.9 mmol)、メチルメタクリレート(2.97 g, 29.7 mmol)、およびメタクリル酸(0.42 g, 4.9 mmol)の脱酸素化混合物を、5時間にわたり0.93 g/hrの速度でフラスコに加えた。モノマー添加が完了した後、過熱をさらに12時間継続し、その後の時間に重合が完了したことが見出された。ラテックスは安定であり、直径約909 nmの粒子を含んでいた(HPPS, Malvern Instruments Ltd)。ラテックスの固形分は17.3 %であり、乾燥後赤茶色で光沢のある膜を形成した。透過型電子顕微鏡により、ラテックスがポリマーカプセル化顔料粒子を含むことが示された。
【0216】
実施例3:
a)2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロピオン酸あたり平均15モノマー単位を含むポリ(アクリル酸)マクロラフト剤の調製
2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロピオン酸(0.91 g, 3.8 mmol)、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(0.03 g, 0.2 mmol)、アクリル酸(4.14 g, 57.4 mmol)の溶液を、50 mL丸底フラスコ中で、ジオキサン(10.01 g)中に調製した。これを10分間、マグネティックスターラーで攪拌しながら、窒素を噴霧した。次いで、フラスコを常に攪拌しながら70℃で2時間加熱した。最終的なコポリマー溶液は固形分43.1 %であった。
【0217】
b)実施例3a)からのマクロラフトを安定剤として使用する、TiO2顔料(TR92, Huntsman Corporation)のポリ(メチルメタクリレート-コ-ブチルアクリル酸)コーティング
実施例3a)からのマクロラフト剤(1.05 g, 0.3 mmol)、水(54.34 g) を含む溶液を、100 mlビーカーに調製した。この溶液に、TiO2顔料(11.65 g) を加え、混合し、Vibra-Cell超音波破砕プロセッサー (Sonics and Materials, Inc.)標準プローブを30%強度で10分間使用して、さらに完全に分散させた。超音波破砕プロセスの間、分散物をマグネティックスターラーで撹拌し、水浴中で冷却した。白色分散物(67.05 g)を4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.027 g, 0.1 mmol)を含む100 ml丸底フラスコに移し、窒素噴霧により脱酸素化した。70℃の温度設定の油浴中にフラスコ全体を浸し、一方でブチルアクリレート(0.30 g, 2.3 mmol)、メチルメタクリレート(0.67 g, 6.9 mmol)、およびアクリル酸(0.98 g, 13.7 mmol)の脱酸素化混合物を、2時間にわたり1 g/hrの速度でフラスコに加えた。モノマー添加が完了した後、過熱をさらに14時間継続し、その後の時間に重合が完了したことが見出された。濾過後、ラテックスは白色で安定であり、直径約478 nmの粒子を含んでいた(HPPS, Malvern Instruments Ltd)。ラテックスの固形分は21.5 %であった。透過型電子顕微鏡により、ラテックスがポリマーカプセル化TiO2粒子を含むことが示された。
【0218】
実施例4:
a)2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロパン酸を使用する、それぞれ重合度m ≒ 5, n ≒ 30を有する{(アクリル酸)m-コ-(アクリルアミド)n}マクロラフト剤の調製
ジオキサン (16.7 g) および水 (15.5 g) 中の2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロパン酸 (1.32 g, 5.5 mmol)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸) (0.08 g, 0.3 mmol)、アクリルアミド (12.16 g, 171 mmol)、アクリル酸 (1.99 g, 27.6 mmol)の溶液を、100 mL丸底フラスコ中に調製した。これを15分間、マグネティックスターラーで撹拌し、窒素で噴霧した。そしてフラスコを70℃で4時間加熱した。コポリマー溶液の固形分は41.7 %であった。
【0219】
b)実施例4a)からのマクロラフトを安定剤として使用する、TiO2顔料(TR92, Huntsman Corporation)のポリ(メチルメタクリレート-コ-ブチルアクリレート-コ-メタクリル酸)コーティング
実施例4a)からのマクロラフト剤(2.54 g, 0.3 mmol)、水 (51.8 g) を含む溶液を、100 mlビーカーに調製した。濃縮アンモニア(28 %)の添加により、溶液のpHを5.03に上昇させた。このマクロラフト溶液に、TiO2顔料(10.21 g)を加え、混合し、Vibra-Cell超音波破砕プロセッサー (Sonics and Materials, Inc.)標準プローブを30 %強度で5分間使用して、さらに完全に分散させた。超音波破砕プロセスの間、分散物をマグネティックスターラーで撹拌し、水浴中で冷却した。白色分散物を2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(0.03 g, 0.1 mmol)を含む100 ml丸底フラスコに移し、窒素噴霧により脱酸素化した。70℃の温度設定の油浴中にフラスコ全体を浸し、一方でブチルアクリレート(1.27 g, 9.9 mmol)、メチルメタクリレート(2.97 g, 29.7 mmol)、およびメタクリル酸(0.42 g, 4.9 mmol)の脱酸素化混合物を、5時間にわたり0.93 g/hrの速度でフラスコに加えた。モノマー添加が完了した後、過熱をさらに1時間継続し、その後の時間に重合が完了したことが見出された。最終ラテックスは白色で安定であり、直径約364 nmの粒子を含んでいた(HPPS, Malvern Instruments Ltd)。ラテックスの固形分は23.3 %であり、乾燥後白色で光沢のある膜を形成した。透過型電子顕微鏡により、ラテックスがカプセル化TiO2粒子を含むことが示された。
【0220】
実施例5:
a)2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロパン酸を使用する、それぞれm ≒ 5, n ≒ 5および t ≒ 30の重合度を有するポリ(アクリル酸)m-ブロック-ポリ{(スチレンスルホン酸)n-コ-(アクリルアミド)t}マクロラフト剤の調製
ジオキサン (15.8 g) および水 (15.4 g) 中の2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロパン酸 (0.96 g, 4.0 mmol)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸) (0.08 g, 0.3 mmol)、アクリルアミド (8.86 g, 124.6 mmol) およびスチレンスルホン酸(水酸化ナトリウムで中和されている、4.18 g, 20.3 mmol)の溶液を、100 mL丸底フラスコ中に調製した。これを15分間、マグネティックスターラーで撹拌し、窒素で噴霧した。そしてフラスコを70℃で4時間加熱した。この時間の最後に、アクリル酸 (1.46 g, 20.2 mmol)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸) (0.04 g, 0.1 mmol)をフラスコに加えた。混合物を脱酸素化し、さらに3時間、加熱を継続した。コポリマー溶液の固形分は39.0 %であった。
【0221】
b)実施例5a)からのマクロラフトを安定剤として使用する、TiO2顔料(TR92, Huntsman Corporation)のポリ(メチルメタクリレート-コ-ブチルアクリレート-コ-メタクリル酸)コーティング
実施例5a)からのマクロラフト剤(3.33 g, 0.3 mmol)、水(50.9 g) を含む溶液を、100 mlビーカーに調製した。濃縮アンモニア(28 %)の添加により、溶液のpHを5.08に上昇させた。このマクロラフト溶液に、TiO2顔料(10.47 g)を加え、混合し、Vibra-Cell超音波破砕プロセッサー (Sonics and Materials, Inc.)標準プローブを30 %強度で10分間使用して、さらに完全に分散させた。超音波破砕プロセスの間、分散物をマグネティックスターラーで撹拌し、水浴中で冷却した。白色分散物を2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(0.03 g, 0.1 mmol)を含む100 ml丸底フラスコに移し、窒素噴霧により脱酸素化した。70℃の温度設定の油浴中にフラスコ全体を浸し、一方でブチルアクリレート(1.27 g, 9.9 mmol)、メチルメタクリレート(2.97 g, 29.7 mmol)、およびメタクリル酸(0.42 g, 4.9 mmol)の脱酸素化混合物を、5時間にわたり0.93 g/hrの速度でフラスコに加えた。モノマー添加が完了した後、過熱をさらに17時間継続し、その後の時間に重合が完了したことが見出された。最終ラテックスは白色で安定であり、直径約298 nmの粒子を含んでいた(HPPS, Malvern Instruments Ltd)。ラテックスの固形分は24.2 %であり、乾燥後白色で光沢のある膜を形成した。透過型電子顕微鏡により、ラテックスがポリマーカプセル化TiO2粒子を含むことが示された。
【0222】
実施例6:
a)2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロパン酸を使用する、それぞれ重合度m ≒ 10, n ≒ 5を有するポリ{(アクリル酸)m-コ-(スチレンスルホン酸)n}マクロラフト剤の調製
ジオキサン (11.13 g) および水 (11.44 g) 中の2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロパン酸 (1.20 g, 5.0 mmol)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸) (0.08 g, 0.3 mmol)、スチレンスルホン酸 (水酸化ナトリウムで中和されている、5.50 g, 26.7 mmol)、アクリル酸 (3.69 g, 51.2 mmol)の溶液を、100 mL丸底フラスコ中に調製した。これを15分間、マグネティックスターラーで撹拌し、窒素で噴霧した。そしてフラスコを70℃で4時間加熱した。コポリマー溶液の固形分は31.5 %であった。
【0223】
b)実施例6a)からのマクロラフトを安定剤として使用する、TiO2顔料(TR92, Huntsman Corporation)のポリ(メチルメタクリレート-コ-ブチルアクリレート-コ-メタクリル酸)コーティング
実施例6a)からのマクロラフト剤(1.84 g, 0.3 mmol)、水(51.9 g) を含む溶液を、100 mlビーカーに調製した。濃縮アンモニア(28 %)の添加により、溶液のpHを3.76に上昇させた。このマクロラフト溶液に、TiO2顔料(10.07 g)を加え、混合し、Vibra-Cell超音波破砕プロセッサー (Sonics and Materials, Inc.)標準プローブを30%強度で5分間使用して、さらに完全に分散させた。超音波破砕プロセスの間、分散物をマグネティックスターラーで撹拌し、水浴中で冷却した。白色分散物を2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(0.03 g, 0.1 mmol)を含む100 ml丸底フラスコに移し、窒素噴霧により脱酸素化した。70℃の温度設定の油浴中にフラスコ全体を浸し、一方でブチルアクリレート(1.27 g, 9.9 mmol)、メチルメタクリレート(2.97 g, 29.7 mmol)、およびメタクリル酸(0.42 g, 4.9 mmol)の脱酸素化混合物を、5時間にわたり0.93 g/hrの速度でフラスコに加えた。モノマー添加が完了した後、過熱をさらに12時間継続し、その後の時間に重合が完了したことが見出された。最終ラテックスは白色で安定であり、直径約515 nmの粒子を含んでいた(HPPS, Malvern Instruments Ltd)。ラテックスの固形分は22.2 %であり、乾燥後白色で光沢のある膜を形成した。透過型電子顕微鏡により、ラテックスがポリマーカプセル化TiO2粒子を含むことが示された。
【0224】
この明細書および請求の範囲において、文脈がそれ以外に必要としない限り、「含む(comprise)」の語、ならびにその派生語「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」は、記載される整数、あるいは段階、あるいは、整数または段階の群を含有することを示唆するが、他の整数、あるいは段階、あるいは、整数または段階の群のいずれかを排除するものではないことが理解されるであろう。
【0225】
本明細書における、先行文献のいずれか(またはそれに由来する情報)、あるいは既知の事項のいすれかに対する言及は、先行文献(またはそれに由来する情報)、あるいは既知の事項が、本発明が関係する努力の分野において、共通の一般知識を形成するという、認識または承認またはいずれかの形の提案として、受け取られず、また受け取られるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】透過型電子顕微鏡による観察により、ポリマーカプセル化TiO2粒子が示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーを重合して固体粒状材料の表面でポリマーを形成する方法であって、
連続親水性液相中に前記固体粒状材料の分散体を提供する工程であって、前記分散体が前記固体粒状材料の安定剤として親水性ラフト剤を含み、前記連続親水性液相が1種または複数のエチレン型不飽和モノマーを含む工程;および
前記の1種または複数のエチレン型不飽和モノマーを前記親水性ラフト剤の制御下で重合し、前記固体粒状材料の表面でポリマーを形成する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記固体粒状材料の分散体が、固体粒状材料、親水性ラフト剤、および連続親水性液相を含む組成物を形成することにより調製され、次いで1種または複数のエチレン型不飽和モノマーが組成物に加えられ、親水性ラフト剤の制御下で重合して固体粒状材料の表面でポリマーを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記連続親水性液相が連続水相である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記固体粒状材料の分散体が、固体粒状材料、親水性ラフト剤および連続親水性液相としての1種または複数のエチレン型不飽和モノマーを含む組成物を形成することにより調製され、前記組成物が第2の連続液相中に分散し、第1の前記連続親水性液相を形成する1種または複数のエチレン型不飽和モノマーが親水性ラフト剤の制御下で重合して固体粒状材料の表面でポリマーを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
親水性液体中のポリマーカプセル化固体粒状材料の分散体を調製する方法であって、
連続親水性液相中に固体粒状材料の分散体を提供する工程であって、前記分散体が前記固体粒状材料の安定剤として親水性ラフト剤を含み、前記連続親水性液相が1種または複数のエチレン型不飽和モノマーを含む工程;および
前記親水性ラフト剤の制御下で前記の1種または複数のエチレン型不飽和モノマーを重合し、固体粒状材料の表面でポリマーを形成し、親水性液体中にポリマーカプセル化固体粒状材料の前記分散体を提供する工程
を含む方法。
【請求項6】
前記連続親水性液相が連続水相であり、前記方法がポリマーカプセル化固体粒状材料の水性分散体を与える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
その中に固体粒状材料が分散しているポリマーを調製する方法であって、
連続親水性液相中に前記固体粒状材料の分散体を提供する工程であって、前記分散体が前記固体粒状材料の安定剤として親水性ラフト剤を含み、前記連続親水性液相が1種または複数のエチレン型不飽和モノマーから本質的になる工程;および
前記の1種または複数のエチレン型不飽和モノマーを前記親水性ラフト剤の制御下で重合して前記固体粒状材料の表面でポリマーを形成し、その中に固体粒状材料が分散しているポリマーを提供する工程
を含む方法。
【請求項8】
固体粒状材料および親水性ラフト剤を含む前記連続親水性液相が、第2の連続液相に分散しており、前記の1種または複数のエチレン型不飽和モノマーが親水性ラフト剤の制御下で重合して前記固体粒状材料の表面でポリマーを形成し、固体粒状材料がその中に分散しているポリマー粒子の第2の連続液相中に分散体を提供する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
塗料、フィラー、接着剤、トナー、液体インク、プライマー、シーラント、診断製品または治療製品を調製する方法であって、請求項5に記載のポリマーカプセル化固体粒状材料の分散体の調製、および/または請求項7に記載の固体粒状材料がその中に分散しているポリマーの調製、ならびに前記分散体および/またはポリマーと1種または複数の配合物成分との混合を含む方法。
【請求項10】
前記固体粒状材料が、無機顔料、有機顔料、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、酸化鉄、二酸化ケイ素、硫酸バリウム、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ジブロムアナンスロン、磁気材料、ワックス、対生物作用剤およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記固体粒状材料の最大寸法が10ミクロン以下である、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記固体粒状材料の最大寸法が1ミクロン以下である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項5に記載のとおり調製されたポリマーカプセル化固体粒状材料の分散体および/または請求項7に記載のとおり調製された固体粒状材料がその中に分散しているポリマーを含む、塗料、フィラー、接着剤、トナー、液体インク、プライマー、シーラント、診断製品または治療製品。
【請求項14】
大きさが100ミクロン以下のポリマーカプセル化固体粒状材料であって、前記固体粒状材料が、少なくとも部分的に親水性ラフト剤の制御下で形成されたポリマーの実質的に均一で連続的なコーティング中にカプセル化されている、ポリマーカプセル化固体粒状材料。
【請求項15】
大きさが100ミクロン以下のポリマーカプセル化固体粒状材料であって、前記カプセル化ポリマーが少なくとも部分的に親水性ラフト剤の制御下で形成されており、前記固体粒状材料が前記カプセル化ポリマー中に実質的に均一に分散している、ポリマーカプセル化固体粒状材料。
【請求項16】
ポリマーカプセル化固体粒状材料の個別な粒子を含む、またはそれらからなる組成物であって、前記固体粒状材料が、少なくとも部分的に親水性ラフト剤の制御下で形成されたポリマーの実質的に均一で連続的なコーティング中にカプセル化されている組成物。
【請求項17】
ポリマーカプセル化固体粒状材料の個別な粒子を含む、またはそれらからなる組成物であって、前記の個別の粒子が、カプセル化ポリマー中に実質的に均一に分散している固体粒状材料を有し、前記カプセル化ポリマーが少なくとも部分的に親水性ラフト剤の制御下で形成され、親水性ラフト剤以外に前記カプセル化ポリマーが分散剤を実質的に含まない組成物。
【請求項18】
さらさらしたパウダーの形態である、請求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項16または17に記載の組成物を含む、塗料、フィラー、接着剤、プライマー、トナー、液体インク、シーラント、診断製品または治療製品。
【請求項20】
ポリマーカプセル化固体粒状材料の液体分散体であって、前記固体粒状材料が、少なくとも部分的に親水性ラフト剤の制御下で形成されたポリマーの実質的に均一で連続的なコーティング中にカプセル化されている、液体分散体。
【請求項21】
ポリマーカプセル化固体粒状材料の液体分散体であって、前記ポリマーカプセル化固体粒状材料が、カプセル化ポリマー中に実質的に均一に分散している固体粒状材料を有し、前記カプセル化ポリマーが、少なくとも部分的に親水性ラフト剤の制御下で形成され、親水性ラフト剤以外に前記カプセル化ポリマーが分散剤を実質的に含まない、液体分散体。
【請求項22】
前記親水性ラフト剤が一般式(4)
【化1】

[前記式中、各Xが独立に、親水性エチレン型不飽和モノマーの重合した残基であり、nが、0から100の整数であり、R1が1つまたは複数の親水基により置換されているか又は非置換の有機基であり、Zが、許容できないほど重合を減速する程度まで開裂の速度を遅くせずに、ラジカル付加に対するチオカルボニル基の十分な反応性を促進することができる基のいずれかである]
である、請求項1、5、7または9に記載の方法、請求項14または15に記載のポリマーカプセル化粒状材料、請求項16または17に記載の組成物、請求項13または19に記載の塗料、フィラー、接着剤、プライマー、トナー、液体インク、シーラント、診断製品または治療製品、および請求項20または21に記載の液体分散体。

【図1】
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【公表番号】特表2009−532534(P2009−532534A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503372(P2009−503372)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000437
【国際公開番号】WO2007/112503
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(501305257)ザ・ユニバーシティ・オブ・シドニー (6)
【Fターム(参考)】