説明

ラミネート物の製造方法及び装置

【課題】基材にラミネートされた(貼り合わされた)樹脂膜表面にクレータの発生が少なく表面外観に優れたラミネート物を製造することができる。
【解決手段】走行する帯状の基材24の面に、押出ダイ14から溶融状態で吐出した熱可塑性樹脂の樹脂膜12を被覆させながらニップローラ18と冷却ローラ16とで基材24と樹脂膜12とをニップして貼り合わせてラミネート物28を製造する際に、製造されたラミネート物28のうちの樹脂膜12の膜厚が、基材24に貼り合わされるニップ位置における樹脂膜12の膜厚の20〜85%の範囲になるようにニップを行い、該ニップ位置Mを通過する樹脂膜12の通過量を絞るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート物の製造方法及び装置に係り、特に、ラミネート物の樹脂膜表面に生じるクレータの発生を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
写真印画紙用基材等のラミネート物の製造には、走行する基材に、押出ダイから吐出したポリオレフィン等の熱可塑性樹脂の樹脂膜を、ニップローラと冷却ローラとの間のニップ位置で被覆させると共にニップして圧着することにより、樹脂膜を基材にラミネートする押出ラミネート方法(押出コーティング方法とも称す)が広く採用されている。
【0003】
このラミネート物の製造において、基材にラミネートされた樹脂膜の表面に微細な細孔(以下、「クレータ」と称す)が生じることがある。そして、このクレータの数が多いと製品の外観が損なわれるだけでなく、ラミネート物を例えば写真印画紙用支持体として使用する場合には光沢感も低下するので、製品の価値が著しく低下する。
【0004】
クレータの発生は、ライン速度や樹脂膜厚、ダイから吐出する樹脂の吐出温度、ニップするニップ圧等の条件と関係があるといわれているが、その原因については未だ明らかにはされていない。
【0005】
クレータ発生の防止対策を開示した先行技術としては例えば、樹脂に着目して、ポリエステル樹脂とポリエチレン樹脂を混合した樹脂組成物を使用する対応策(特許文献1)、基材に着目して、基材を金属ロールや合成ロールでカレンダー処理した直後に樹脂膜をラミネートする対応策(特許文献2)、工程に着目して、冷却ロールの表面粗さを規定すると共にニップする雰囲気を減圧及び遮風するようにした対応策(特許文献3)がある。
【特許文献1】特開平8−286319号公報
【特許文献2】特開平4−81836号公報
【特許文献3】特開平8−254789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1〜3のクレーター発生防止対策は、それなりに効果はあるものの、その効果を発揮して製造できるラミネート物の種類が限られており、様々な種類のラミネート物には適用できないという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、基材にラミネートされた(貼り合わされた)樹脂膜表面にクレータの発生が少なく表面外観に優れたラミネート物を製造することができ、しかも製造するラミネート物の種類に関係なく適用できるラミネート物の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、走行する帯状の基材の面に、ダイから溶融状態で吐出した熱可塑性樹脂の樹脂膜を被覆させながらニップローラと冷却ローラとで基材と樹脂膜とをニップして貼り合わせるラミネート物の製造方法において、前記製造方法で製造されたラミネート物のうちの樹脂膜の膜厚が、前記基材に貼り合わされるニップ位置における樹脂膜の膜厚の20〜85%の範囲になるように前記ニップを行い、該ニップ位置を通過する前記樹脂膜の通過量を絞ることを特徴とするラミネート物の製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、製造されたラミネート物のうちの樹脂膜の膜厚が、基材に貼り合わされるニップ位置における樹脂膜の膜厚の20〜85%の範囲になるようにニップを行い、該ニップ位置を通過する樹脂膜の通過量を絞ることにより、ニップ位置の上流側に樹脂膜の適切な溜まり部を形成するようにしたので、樹脂膜表面のクレータ発生が少なく表面外観に優れたラミネート物を製造することができる。しかも本発明は製造するラミネート物の種類に関係なく適用できる。
【0010】
請求項2は請求項1において、前記基材の表面粗さを該基材表面に存在する凹凸の平均周期長さで表したときに、該平均周期長さが50μm以下、又は100μm以上であることを特徴とする。
【0011】
請求項1の発明に加えて、請求項2で規定した平均周期長さの表面粗さを有する基材を用いれば、更にクレータの発生を抑制することができる。
【0012】
請求項3は請求項1又は2において、前記基材の表面粗さを該基材表面に存在する凹凸の高低差で表したときに、該高低差の最大が5μm以下であることを特徴とする。
【0013】
請求項1又は請求項2の発明に加えて、請求項3で規定した表面粗さを有する基材を用いれば、クレータの発生を一層抑制することができる。
【0014】
請求項4は請求項1〜3のいずれかにおいて、前記ラミネート物は、写真印画紙用支持体であることを特徴とする。
【0015】
本発明のラミネート物の製造方法は、ラミネート物として写真印画紙用支持体を製造する際に特に有効である。
【0016】
本発明の請求項5は前記目的を達成するために、走行する帯状の基材の面に、ダイから溶融状態で吐出した熱可塑性樹脂の樹脂膜を被覆させながらニップローラと冷却ローラとで基材と樹脂膜とをニップして貼り合わせるラミネート物の製造装置において、前記基材に貼り合わされるニップ位置における樹脂膜の膜厚を測定する第1の膜厚測定手段と、前記ラミネート物のうちの樹脂膜の膜厚を測定する第2の膜厚測定手段と、前記第1及び第2の膜厚測定手段の測定結果に基づいて前記ニップローラと冷却ローラとのニップとのニップ圧を調整して該ニップ位置を通過する前記樹脂膜の通過量を制御するコントローラと、を備えたことを特徴とするラミネート物の製造装置を提供する。
【0017】
請求項5は、請求項1の方法発明を装置発明として構成したもので、第1の膜厚測定手段で測定した基材に貼り合わされるニップ位置における樹脂膜の膜厚と、第2の膜厚測定手段で測定したラミネート物のうちの樹脂膜の膜厚とに基づいて、ニップローラと冷却ローラとのニップとのニップ圧を調整して該ニップ位置を通過する樹脂膜の通過量を制御するコントローラとを設けた。これにより、樹脂膜表面のクレータ発生が少なく表面外観に優れたラミネート物を製造することができ、しかも本発明は製造するラミネート物の種類に関係なく適用できる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明に係るラミネート物の製造方法及び装置によれば、基材にラミネートされた(貼り合わされた)樹脂膜表面にクレータの発生が少なく表面外観に優れたラミネート物を製造することができ、しかも製造するラミネート物の種類に関係なく適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下添付図面に従って本発明に係るラミネート物の製造方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0020】
図1は、本発明におけるラミネート物の製造装置10の全体構成図である。
【0021】
図1に示すように、溶融状態の熱可塑性樹脂の樹脂膜12が押し出される押出ダイ14の下方には、冷却ローラ16とニップローラ18とが平行に隣接配置されると共に、冷却ローラ16を挟んでニップローラ18の反対側には、剥離ローラ20が冷却ローラ16に平行して隣接配置される。更に、ニップローラ18を挟んで冷却ローラ16の反対側には、バックアップローラ22が設けられる。そして、走行する帯状の基材24は、冷却ローラ16とニップローラ18とが接するニップ位置Mにおいて押出ダイ14から押し出された樹脂膜12が被覆されながらニップされ、基材24と樹脂膜12とが貼り合わされる。樹脂膜12が貼り合わされた基材24は、樹脂膜側を冷却ローラ16面に接しながら走行して冷却され、剥離ローラ20により冷却ローラ16から剥離される。これによりラミネート物28が製造される。
【0022】
また、ニップローラ18及びバックアップローラ22には、冷却ローラ16に対する押圧力を制御してニップ圧を調整する押圧力調整装置30、30がそれぞれ設けられ、後記するコントローラ32によって制御される。押圧力調整装置30としては、例えば油圧シリンダ等を使用できる。
【0023】
また、ラミネート物の製造装置10には、基材24に貼り合わされるニップ位置Mにおける樹脂膜12の膜厚を測定する第1の膜厚測定手段34が設けられる。この第1の膜厚測定手段34は、図2に示すように、主として、冷却ローラ16とニップローラ18のギャップ量Gを測定する測定装置38と、測定装置38で測定したギャップ量Gと予め求めておいた基材24の厚みとからニップ位置Mにおける樹脂膜12の厚みを演算するコンピュータ40とで構成される。
【0024】
測定装置38は、主として冷却ローラ16とニップローラ18との回転軸16A、18Aにそれぞれ取り付けられた円板状のディスク42、44と、それぞれのディスク42、44の周縁部を撮像する2台のCCDカメラ46、48と、冷却ローラ16とニップローラ18とのそれぞれの振動を周波数解析する2台のFFTアナライザー50、52とで構成される。この場合、1台のCCDカメラで冷却ローラ16とニップローラ18のディスク42、44を撮像してもよいが、撮像視野が大きくなって撮像精度が下がるので、2台のCCDカメラ46、48を使用することが好ましい。また、それぞれのディスク42、44の径は冷却ローラ16とニップローラ18の径と一致するように形成される。
【0025】
そして、第1の膜厚測定手段34によりニップ位置Mにおける樹脂膜12の厚みを測定するには、ディスク42、44間の距離をCCDカメラ46、48で測定すると共に、FFTアナライザー50、52で冷却ローラ16とニップローラ18の回転時における振動を測定し、それぞれの測定データがコンピュータ40に入力される。コンピュータ40では、これらのデータをキャリブレーションした上で冷却ローラ16とニップローラ18の回転時におけるギャップ量Gを演算し、このギャップ量Gから予め測定した基材24の厚みを差し引くことにより、ニップ位置Mにおける樹脂膜12の厚みを算出する。尚、本実施の形態では、第1の膜厚測定手段34を上記のように構成したが、ニップ位置Mの前で樹脂膜厚みを精度良く直接測定できる膜厚測定センサーがあれば、それを使用するようにしてもよい。
【0026】
更に、剥離ローラ20で剥離されたラミネート物28の樹脂膜面側の近傍には、ラミネート物28のうちの樹脂膜12の膜厚を測定する非接触式の第2の膜厚測定手段36が設けられる。第2の膜厚測定手段36としては、樹脂膜12と基材24の界面からの反射光の光路差によって発生する干渉光データから膜厚を測定する干渉式等を好適に用いることができる。これら第1及び第2の膜厚測定手段34、36で測定された測定値は、コントローラ32に逐次入力される。コントローラ32には、第1の膜厚センサー34で測定された膜厚値(A)に対する第2の膜厚センサー36で測定された膜厚値(B)の膜厚比率[(B/A)×100%]を演算する演算部が設けられると共に、演算部には膜厚比率が20〜85%の範囲内で一定の膜厚比率(例えば80%)が設定値として設定されている。この設定値はコントローラ32の入力手段(図示せず)からの入力により変更可能である。そして、コントローラ32は第1及び第2の膜厚センサー34、36の測定値に基づいて演算部で演算された膜厚比率が80%になるように、ニップローラ18及びバックアップローラ22の押圧力調整装置30を制御する。
【0027】
次に、上記の如く構成された製造装置10を用いてラミネート物28を製造する製造方法を説明する。
【0028】
押出ダイ14から溶融状態で吐出した熱可塑性樹脂の樹脂膜12と、走行する基材24とがニップ位置Mにおいて合流し、ニップローラ18と冷却ローラ16とで樹脂膜12と基材24とをニップする。これにより、基材24に樹脂膜12が貼り合わされる。樹脂膜が貼り合わされた基材24は、樹脂膜面を冷却ローラ16に接触させながら剥離ローラ20に搬送される。これにより、樹脂膜12が冷却される。樹脂膜が冷却された基材24は、剥離ローラ20で剥離される。これにより、ラミネート物28が製造される。
【0029】
かかるラミネート物28の製造において、基材24に貼り合わされるニップ位置Mにおける樹脂膜12の膜厚(A)が第1の膜厚測定手段34で測定されると共に、ラミネート物28のうちの樹脂膜12の膜厚(B)が第2の膜厚測定手段36で測定される。そして、第1及び第2の膜厚測定手段34、36の測定値がコントローラ32に入力される。コントローラ32は、演算部で膜厚比率[(B/A)×100%]を演算し、演算した演算値と設定値(例えば80%)とを比較し、演算値と設定値が一致するようにニップローラ18及びバックアップローラ22の押圧力調整装置30の押圧力を調整するフィードバック制御により、ニップ位置Mを通過する樹脂膜12の通過量を適切に絞る。
【0030】
このように、押出ダイ14から溶融状態で吐出された樹脂膜12がニップ位置Mで通過量が絞られることにより、図3に示すように、ニップ位置Mの直ぐ上流側に樹脂膜12の溜まり部12A(樹脂膜12が膨らんだ部分)が形成される。この溜まり部12Aの作用により基材24表面(樹脂膜12と合わさる側の面)に凹凸があっても凹部が樹脂膜12表面(冷却ロール16に接触する側の面)に写ってクレータになることがない。これにより、樹脂膜表面にクレータの発生が少なく表面外観に優れたラミネート物28を製造することができる。しかも本発明のラミネート物の製造方法は製造するラミネート物28の種類に関係なく適用できる。
【0031】
この溜まり部12Aは大きすぎても小さすぎてもラミネート物28の表面外観に悪影響を及ぼし、溜まり部12Aが適切な大きさになるようにニップ位置Mを通過する樹脂膜12の通過量を絞ることが重要である。そして、本発明者は、かかる観点からニップ位置Mで絞る樹脂膜12の通過量を鋭意検討し、製造されたラミネート物28のうちの樹脂膜12の膜厚が、基材に貼り合わされるニップ位置における樹脂膜12の膜厚の20〜85%の範囲になるようにニップ位置Mを通過する樹脂膜12の通過量を絞るようにした。これは、膜厚比率が20%を下回るほどに大きな溜まり部12Aが形成されると、溜まり部12Aが不安定になり、製造されたラミネート物28の樹脂膜面の膜厚分布が大きくなるためである。膜厚比率の下限である20%は設備的な面での限界であると考えられる。一方、膜厚比率が85%を超えるほどに小さな溜まり部ではクレータの発生数を減少させる効果を十分に発揮できないためである。尚、膜厚比率20〜85%とは、冷却ロール16で樹脂膜12が冷却されることによる膜厚の薄膜化も含めた値である。また、図3には溜まり部12Aの大きさを誇張して描いているが、樹脂膜12自体がミクロンオーダーの厚みであり、膜厚比率を20〜85%にすることによる溜まり部12Aの膨らみの変化は肉眼では判別しにくい程度である。
【0032】
ラミネート物28の樹脂膜表面のクレータの発生を少なくするには、上記した膜厚比率に加えて、樹脂膜12に貼り合わされる基材24の表面粗さが所定の表面粗さを満足することが好ましい。即ち、基材24の表面粗さを該基材表面に存在する凹凸の平均周期長さで表したときに、該平均周期長さが50μm以下、又は100μm以上であることが好ましい。更には、基材24の表面粗さを該基材表面に存在する凹凸の高低差(H)で表したときに、該高低差の最大(Hmax )が5μm以下であることが好ましい。
【0033】
これは、図4に示すように、平均周期長さが50μm以下の凹凸のように凹部A〜凹部AまでのピッチP1、又は凸部B〜凸部BまでのピッチP2が短い細かな凹凸の繰り返しの場合や、或いは平均周期長さが100μm以上のように凹部A〜凹部AまでのピッチP1、又は凸部B〜凸部BまでのピッチP2が長いブロードな凹凸の繰り返しの場合には、基材の凹凸が貼り合わされた樹脂膜の表面(冷却ローラ側の面)に写りにくい傾向にある。逆に、平均周期長さが50μmを超えて100μm未満の場合には、基材24の凹凸が貼り合わされた樹脂膜の表面に写り易く、凹部の写りが樹脂膜表面にクレータとなって現れる。従って、平均周期長さが50μm以下、又は100μm以上である表面粗さを有する基材24を用いれば、それだけクレータの発生を抑制することができる。尚、基材表面の凹凸の平均高さに中心線を引き、中心線よりも突出した部分を凸部Bとし、中心線よりも窪んだ部分を凹部Aとした。
【0034】
更には、基材表面の凹凸の高低差の最大が5μm以下のように深さの浅い凹部Aは樹脂膜表面に写りにくく、樹脂膜表面にクレータとなって現れにくい。従って、高低差5μm以下の表面粗さを有する基材24を用いれば、それだけクレータの発生を抑制することができる。
【0035】
また、図1には示しなかったが、基材24と樹脂膜12とのニップ位置Mの近傍に、冷却ローラ16面に向けて、例えばCO2 ガス,O2 ガス,Heガス等の樹脂膜透過性のあるガスを噴出するガス噴出ノズルを設けることが好ましい。ガス噴出ノズルから樹脂膜12に対して透過性のあるガスを冷却ローラ16面に向けて吹付けてガスのカーテンを形成し、冷却ローラ16の回転に伴ってニップ位置Mに向けて流れる同伴エアを遮断し、透過性を有するガスに置換する。これにより、樹脂膜12と冷却ローラ16とで囲まれたエリアEにおいて、樹脂膜12の面にガスが同伴されても透過性を有するガスであれば、樹脂膜12にへこみを形成しにくくなるので、クレータの発生を更に効果的に抑制することができる。
【0036】
このように、本発明は、クレータの発生を抑制でき、表面外観に優れたラミネート物28を製造することができる。特に、ライン速度が300m/分を超すような高速度領域でも、クレータ数の発生を効果的に抑制できるので、生産性を向上させることができる。更にはクレータを顕著に減少できることから樹脂膜12の膜厚をも薄くすることができ、これにより原材料費を削減することができる。
【実施例】
【0037】
次に、本発明のラミネート物の製造装置10を使用してラミネート物28を製造した実施例を説明する。
【0038】
実施例は、厚み175μm、幅300mmの帯状の基材24(原紙)の表面に、厚み25μmの樹脂膜12(ポリエチレン)をラミネートしてラミネート物28を製造した。
【0039】
表1は、基材24の表面粗さを示す平均周期長さを100μmで一定にした場合において、膜厚比率[(B/A)×100%]とクレータ数との関係を示したものである。
【0040】
また、表2は、膜厚比率を85%に一定にした場合において、基材24の平均周期長さとクレータ数との関係を示したものである。ライン速度としては、高速な300m/分で行った。尚、ガス噴出ノズルからのガス噴射は行っていない。
【0041】
表1及び表2における「クレータ数」は、製造されたラミネート物28の樹脂膜面1cm2 当たりの個数である。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

表1の結果から分かるように、膜厚比率を小さくするに従って、クレータ数が減少する傾向にあり、試験2の膜厚比率90%から試験3の膜厚比率85%になったときにクレータ数が顕著に低減した。また、膜厚比率を小さくするに従って、クレータ数が減少する傾向にあるが、設備的な面から膜厚比率20%が限界である。
【0044】
このように、膜厚分布が20〜85%の範囲になるようにニップを行い、該ニップ位置Mを通過する樹脂膜12の通過量を絞ることで、樹脂膜表面にクレータの発生が少なく表面外観に優れたラミネート物28を製造することができた。しかも、樹脂膜の種類を変えて行ったが、同様の結果を得ることができ、製造するラミネート物の種類に関係なく適用できる。
【0045】
表2の結果から分かるように、平均周期長さが50μm以下の試験12〜14、及び100μm以上の試験7〜9は、50μmを超えて100μm未満の試験9〜11に比べてクレータ数が少なかった。このことから、表1の膜厚比率を20〜85%にするのに加えて、基材24の平均周期長さを50μm以下、或いは100μm以上にすることで、クレータ数を更に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明のラミネート物の製造装置の全体構成図
【図2】第1の膜厚測定手段の構成の一例を説明する説明図
【図3】本発明の作用を説明する説明図
【図4】基材の表面粗さを説明する説明図
【符号の説明】
【0047】
10…製造装置、12…樹脂膜、12A…溜まり部、14…押出ダイ、16…冷却ローラ、18…ニップローラ、20…剥離ローラ、22…バックアップローラ、24…基材、30…押圧力調整装置、32…コントローラ、34…第1の膜厚測定手段、36…第2の膜厚測定手段、38…測定装置、40…コンピュータ、42、44…ディスク、46、48…CCDカメラ、50、52…FFTアナライザー、M…ニップ位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する帯状の基材の面に、ダイから溶融状態で吐出した熱可塑性樹脂の樹脂膜を被覆させながらニップローラと冷却ローラとで基材と樹脂膜とをニップして貼り合わせるラミネート物の製造方法において、
前記製造方法で製造されたラミネート物のうちの樹脂膜の膜厚が、前記基材に貼り合わされるニップ位置における樹脂膜の膜厚の20〜85%の範囲になるように前記ニップを行い、該ニップ位置を通過する前記樹脂膜の通過量を絞ることを特徴とするラミネート物の製造方法。
【請求項2】
前記基材の表面粗さを該基材表面に存在する凹凸の平均周期長さで表したときに、該平均周期長さが50μm以下、又は100μm以上であることを特徴とする請求項1のラミネート物の製造方法。
【請求項3】
前記基材の表面粗さを該基材表面に存在する凹凸の高低差で表したときに、該高低差の最大が5μm以下であることを特徴とする請求項1又は2のラミネート物の製造方法。
【請求項4】
前記ラミネート物は、写真印画紙用支持体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1のラミネート物の製造方法。
【請求項5】
走行する帯状の基材の面に、ダイから溶融状態で吐出した熱可塑性樹脂の樹脂膜を被覆させながらニップローラと冷却ローラとで基材と樹脂膜とをニップして貼り合わせるラミネート物の製造装置において、
前記基材に貼り合わされるニップ位置における樹脂膜の膜厚を測定する第1の膜厚測定手段と、
前記ラミネート物のうちの樹脂膜の膜厚を測定する第2の膜厚測定手段と、
前記第1及び第2の膜厚測定手段の測定結果に基づいて前記ニップローラと冷却ローラとのニップとのニップ圧を調整して該ニップ位置を通過する前記樹脂膜の通過量を制御するコントローラと、を備えたことを特徴とするラミネート物の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−212915(P2006−212915A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27447(P2005−27447)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】