説明

リニアアクチュエータ

【課題】ブレーキ装置を別途設けないで、シャフトの正逆回転を抑制することができ、軽量、小型および低コストのリニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】減速機装置200を備えるリニアアクチュエータ1において、減速機装置200は、第1の太陽歯車203と、モータ出力軸に結合された公転部材204と、公転部材204に軸支され、第1の太陽歯車203に噛合する第1の遊星歯車207、208と、第1の遊星歯車207、208のそれぞれに同心状に連結されている第2の遊星歯車211、212と、第1の太陽歯車203と同心状に、かつ、第2の遊星歯車211、212に噛合する位置にて減速装置200内に回転自在に配置されている第2の太陽歯車213とを有し、減速装置200の減速出力軸219は、第2の太陽歯車212に一体的に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療または介護ベッドにおいては患者の寝食の負担を軽減するために、リニアアクチュエータによってベッドの寝床を上下させたり、背部や膝部の寝床を傾斜させたりすることが実施されている。
【0003】
従来、この種のリニアアクチュエータとして、モータ出力軸を有する電動モータと、減速出力軸を有し、この減速出力軸の一端が電動モータのモータ出力軸に連結され、モータ出力軸の回転を減速し、減速された回転を減速出力軸により出力する減速装置と、減速装置の減速出力軸の他端に連結され、外周に雄ねじ部が形成されている長尺状のシャフトと、シャフトの雄ねじ部に螺合してシャフトの正逆回転により進退する雌ねじ部材(送り用ナット)を有しており、さらに、雌ねじ部材に取り付けられ、雌ねじ部材とともに進退する直動筒とを備えているものがある。そして、前記した直動筒がベッドに備えられているリンク機構に連係され、このリンク機構を経由し、直動筒の進退運動によりベッドの寝床を上下させたり、背部や膝部の寝床を傾斜させたりするように構成されているものがある。
【0004】
このようなリニアアクチュエータが使用された医療または介護ベッドにおいては、ベッドの寝床に加わる患者の体重によりベッドの寝床が降下したり、患者の姿勢確保のため患者の体重によりベッドの背部や膝部の寝床が倒れたりしないことが求められる。そのため、直動筒が取り付けられている雌ねじ部材(送り用ナット)の進退運動を抑制してベッドの寝床が降下したり、背部や膝部の寝床が倒れたりしないようにする必要がある。そのため、雄ねじ部が形成されているシャフトの正逆回転を抑制すべくリニアアクチュエータには、ブレーキ装置が別途設けられている(例えば、特許文献1乃至8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2007/037214号公報
【特許文献2】特開2005−188535号公報
【特許文献3】特開2005−188536号公報
【特許文献4】特開2005−188561号公報
【特許文献5】特開2005−188574号公報
【特許文献6】特開2007−154954号公報
【特許文献7】特開2007−187279号公報
【特許文献8】特開2008−249051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リニアアクチュエータの軽量、小型化および低コスト化の観点からブレーキ装置を別途設けないで、シャフトの正逆回転を抑制したいという課題がある。
【0007】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ブレーキ装置を別途設けないで、シャフトの正逆回転を抑制することができ、軽量、小型および低コストのリニアアクチュエータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のリニアアクチュエータは、モータ出力軸を有する電動モータと、減速出力軸を有し、前記電動モータのモータ出力軸に連結され、前記モータ出力軸の回転を減速し、減速された回転を前記減速出力軸から出力する減速装置と、前記減速装置の前記減速出力軸に連結され、外周に雄ねじが形成されている長尺状のシャフトと、前記シャフトの前記雄ねじに螺合して前記シャフトの正逆回転により進退する雌ねじ部材と、前記雌ねじ部材に取り付けられ、前記雌ねじ部材とともに進退する直動筒とを備えるリニアアクチュエータにおいて、前記減速機装置は、円盤形状に形成されるとともに複数の歯が形成され、前記減速装置内に固定配置される第1の太陽歯車と、板状に形成され、前記電動モータのモータ出力軸と結合された公転部材と、円盤形状に形成されるとともに複数の歯が形成され、前記公転部材に回転自在に軸支され前記第1の太陽歯車に噛合する少なくとも2つ以上の第1の遊星歯車と、円盤形状に形成されるとともに複数の歯が形成され、前記第1の遊星歯車に対し前記公転部材を挟んで反対側に配置され、前記第1の遊星歯車のそれぞれに同心状に連結されている第2の遊星歯車と、円盤形状に形成されるとともに複数の歯が形成され、前記第1の太陽歯車と同心状に、かつ、前記第2の遊星歯車に噛合する位置にて前記減速装置内に回転自在に配置されている第2の太陽歯車とを有し、前記減速装置の前記減速出力軸は、前記第2の太陽歯車に一体的に取り付けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のリニアアクチュエータは、モータ出力軸により公転とともに自転する第1および第2の遊星歯車と、それらの回転速度を制御する第1および第2の太陽歯車を有する、いわゆる差動歯車式減速装置を備えている。この差動歯車式減速装置は、出力側である第2の太陽歯車を外部から回転トルクを付加した場合に、モータ出力軸に直接的に連結されている第1および第2の遊星歯車による自転および公転運動が抑制されるという性質を有する。
【0010】
そのため、第2の遊星歯車が一体的に形成されるとともにシャフトに連結される減速出力軸が、シャフトの回転により回されようとしたときでも、減速出力軸が回されることがないように設定できる。従って、本発明のリニアアクチュエータは、シャフトと減速装置の減速出力軸との間にブレーキ装置を設ける必要がなく、ブレーキ装置を別途設けないで、シャフトの正逆回転を抑制することができ、軽量、小型および低コストのリニアアクチュエータとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるリニアアクチュエータの正面図である。
【図2】図1にて破線Bで囲まれた部分のA−A断面図である。
【図3】図1にて破線Cで囲まれた部分のA−A断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における減速装置の斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態におけるリニアアクチュエータのモータ装置および減速装置を示す断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態におけるリニアアクチュエータのモータ装置および減速装置を示す断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態におけるリニアアクチュエータのモータ装置および減速装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明の第1の実施形態を図1から図3に基づいて説明する。図1は、リニアアクチュエータ1の正面図である。また、図2は、図1にて破線Bで囲まれた部分におけるリニアアクチュエータ1のA−A断面図であり、図3は、図1にて破線Cで囲まれた部分
におけるリニアアクチュエータ1のA−A断面図である。
【0013】
図1から図3に示すように、リニアアクチュエータ1は、モータ装置100、減速装置200および直動装置300を備えている。モータ装置100は、有底円筒形状のモータケース103と、モータケース100に内包される電動モータ101とを有する。そして、電動モータ101は、電動モータ101に供給される電力により回転するモータ出力軸102を有している。
【0014】
減速装置200にはモータ装置100が取り付けられ、減速装置200は、電動モータ100のモータ出力軸102に連結されるとともに、外壁に軸方向に伸びるセレーション溝が外周に形成されている減速出力軸219を有し、モータ出力軸102の回転を減速し、減速された回転を減速出力軸219から出力する。なお、減速装置200の構成の詳細については、後述する。
【0015】
直動装置300は、ジョイントケース部302と補強筒ケース部303とを有するケース301と、ジョイント機構304と、補強筒309と、直動機構310とを備えている。ジョイントケース部302は有底円筒形状に形成され、ジョイントケース部302の内側にはジョイント機構304が内包されている。また、ジョイントケース部302の有底部302aの中央には挿通孔302bが設けられ、減速出力軸219は挿通孔302bを挿通し、ジョイントケース部302の内部に突出している。
【0016】
補強筒ケース部303は、ジョイントケース部302よりも縮径にて円筒形状形成され、内壁に長尺円筒形状の補強筒309が取り付けられている。なお、ケース301は、縦割り形状の2部品を最中状に接合されることにより形成される。
【0017】
ジョイント機構304は、軸受305、ジョイント部材306、スリーブ307および軸受ハウジング308を備えている。また、直動機構310は、シャフト311、雌ねじ部材312、直動筒313および連結部材314を備えている。
【0018】
ジョイント機構304の軸受ハウジング308は、略円筒形状に形成されており、外壁がジョイントケース部302の内壁に当接した状態にて配置されている。また、軸受305は、外輪305aが軸受ハウジング308に挿入され、軸受ハウジング308に取り付けられ、内輪305bの内壁にスリーブ307が挿入されている。そして、シャフト311の連結部311bがスリーブ307を介して軸受305の内輪305bに軸支されることにより、シャフト311は、ジョイントケース部302に対し回転自在に支持されている。
【0019】
ジョイント部材306の内壁およびシャフト311の連結部311aの外壁にも、減速出力軸219と同様にセレーション溝が形成され、減速出力軸219と同様にシャフト311の連結部311aは、ジョイント部材306に挿入され、シャフト311の連結部311aおよび減速出力軸219は、ジョイント部材306に対しともにセレーション結合されている。そして、減速出力軸219の回転は、ともにセレーション結合されているジョイント部材306によりシャフト311に伝達される。
【0020】
また、シャフト311の連結部311aおよび減速出力軸219は、それぞれジョイント部材306に対しセレーション結合されているため、シャフト311が減速出力軸219に向けて軸方向に移動した場合にも、シャフト311の軸方向の移動により、減速出力軸219に軸力が作用することはない。
【0021】
直動機構310のシャフト311は、長尺円柱形状(棒状)に形成され、本体部311
aの外壁に雄ねじが形成されている。雌ねじ部材312は、補強筒309に対する回転を抑制する回り止めが形成されている案内部312aと、直動筒313が取り付けられている連結部312bとを備えるとともに、シャフト311の雄ねじと螺合する雌ねじが内壁に形成されている。そして、補強筒309に案内(回り止め)されている雌ねじ部材312は、シャフト311の正逆回転により、雌ねじ部材312は進退運動を行う。そして、雌ねじ部材312の外壁に取り付けられた直動筒313は、雌ねじ部材312と同様に雌ねじ部材312の進退運動とともに進退運動を行う。また、直動筒313の先端部313aには、ベッドの寝床の上下運動を実施するリンク機構に連結される連結部材314が取り付けられている。
【0022】
次に、図2および図4に基づき減速装置200について説明する。なお、図4は、減速装置200の内部構造を示す斜視図である。なお、減速装置200は、いわゆる差動歯車式減速装置と称されるものである。減速装置200は、第1および第2の減速装置ケース201、202、第1の太陽歯車203、公転部材204、第1の遊星歯車207、208、連結軸209、210、第2の遊星歯車211、212、第2の太陽歯車213および保持部材216を備え、第2の太陽歯車213には、保持軸部214および減速出力軸219が一体形成されている。
【0023】
第1の太陽歯車203は、円盤形状に形成されるとともに外壁に複数の外歯が形成され、第1の減速ケース201に一体的に取り付けられ減速装置200内にて固定配置されている。また、第1の太陽歯車203には、円心に貫通孔203aが形成されている。そして、電動モータ101は、電動モータ101のモータ出力軸102と減速装置200の減速出力軸219が同軸の位置となるように配置され、電動モータ101のモータ出力軸102は、第1の太陽歯車203に形成された貫通孔203aを挿通し、減速装置200内に突出している。
【0024】
公転部材204は棒形の板状に形成され、公転部材204の中央と電動モータ101のモータ出力軸102とは互いに一体的に結合されている。そして、公転部材204は、モータ出力軸102の回転とともに回転する。また、公転部材204の両端には円筒形状の摺動部材205、206が埋設されている。
【0025】
第1の遊星歯車207、208は、円盤形状に形成されるとともに外壁に複数の外歯が形成され、第1の遊星歯車207、208の円心に棒形状の連結部材209、210の端部が一体的に取り付けられている。そして、第1の遊星歯車207、208の外歯と、第1の太陽歯車203の外歯とは互いに噛合するとともに、第1の遊星歯車207、208は、公転部材204に取り付けられた摺動部材205、206に挿入され軸支される連結部材209、210により、公転部材204に対し回転自在に軸支される。
【0026】
第2の遊星歯車211、212は、円盤形状に形成されるとともに外壁に複数の外歯が形成され、第1の遊星歯車207、208に対し公転部材204を挟んで反対側に配置され、連結部材209、210に一体的に連結されることにより第1の遊星歯車のそれぞれに同心状に連結されている。また、第2の遊星歯車211、212の外歯の歯数は、第1の遊星歯車207、208の外歯の歯数に対し、異なる歯数に設定されている。
【0027】
第2の太陽歯車213は、円盤形状に形成されるとともに外壁に複数の外歯が形成され、第1の太陽歯車203と同心状に、かつ、第2の遊星歯車211、212に噛合する位置にて減速装置200内に回転自在に配置されている。また、第2の太陽歯車213の外歯の歯数は、第1の太陽歯車203の外歯の歯数に対し、異なる歯数に設定されている。なお、第1および第2の太陽歯車203、213、ならびに第1および第2の遊星歯車(207、208、211、212)は、すべて金属材料より形成されている。なお、金属材
料により形成されなくてもよいことは言うまでもなく、樹脂、セラミックスその他の材料であってよい。
【0028】
第2の太陽歯車213の側端面213aには、円柱形状の保持軸部214が一体形成されており、保持軸部214の外壁には、円環形状の摺動部材215が勘合配置されている。
【0029】
保持部材216は、棒形の板状に形成され、中央に挿通孔216aが形成されるとともに、両端に挿通孔216b、216cが形成され、挿通孔216b、216cには、円環形状の摺動部材217、218がそれぞれ埋設されている。そして、保持部材216の挿通孔216aの内壁と、摺動部材215の外壁とが互いに勘合され、保持部材216は、摺動部材215を介して、保持軸部214に回転自在に軸支されに、減速装置200内に回転自在に配置される。
【0030】
また、連結軸209、210の一端は、摺動部材217、218に挿入され、摺動部材217、218に軸支されているとともに、連結軸209、210の他端は、第1の遊星歯車208、209に固定されている。このように、連結軸209、210の両端がそれぞれ支持されることにより、連結軸209、210のがたつきは抑えられる。
【0031】
上記に示す、第1の太陽歯車203、公転部材204、第1の遊星歯車207、208、連結軸209、210、第2の遊星歯車211、212、第2の太陽歯車213および保持部材216は、第2の減速装置ケース202に内包され、第2の太陽歯車213に一体形成されている減速出力軸219は、第2の減速装置ケース202から外側に向けて突出している。
【0032】
次に、減速装置200の動作について説明する。電動モータ101のモータ出力軸102が回転すると、モータ出力軸102に結合されている公転部材204もモータ出力軸102とともに回転する。公転部材204が回転すると、公転部材204の両端に軸支されている第1の遊星歯車208、209は第1の太陽歯車203の周りを公転運動する。また、第1の遊星歯車208、209は減速装置200内に固定されている第1の太陽歯車203に噛合されており、このモータ出力軸102の回転による公転運動とともに、第1の太陽歯車203との噛み合による自転運動を行う。
【0033】
第2の遊星歯車211、212は、第1の遊星歯車207、208に連結軸209、210により連結されており、第1の遊星歯車207、208と同じ回転速度で公転および自転運動を行う。このとき、上記に示すように第2の遊星歯車211、212と、減速出力軸219が一体形成されている第2の太陽歯車213とは互いに噛合されており、第2の遊星歯車211、212の公転および自転運動により、第2の太陽歯車213は回転する。
【0034】
第1および第2の遊星歯車207(208)、211(212)の歯数、ならびに第1および第2の太陽歯車203、213の歯数は、それぞれ異なる歯数に設定されており、電動モータ101のモータ出力軸102の回転は、減速装置200により減速され、減速された回転が減速出力軸219から出力される。
【0035】
本実施形態の減速装置200では、第1および第2の遊星歯車207(208)、211(212)、ならびに第1および第2の太陽歯車203、213の歯数の設定のより、減速比を大きくとることが可能である。また、第1の遊星歯車207、208と第1の太陽歯車203との間、ならびに第2の遊星歯車211、212と第2の太陽歯車213との間に噛み合いによる摩擦力が生じる。従って、減速比を高く設定した場合には、減速出
力軸219が一体形成されている第2の太陽歯車213を外部から回転しても、上記の噛み合いによる摩擦力により、第2の太陽歯車213を回転することができない。
【0036】
そのため、ジョイント機構304により直動機構310のシャフト311に連結される減速出力軸219が、シャフト311の回転により回されようとしたときでも、減速比の設定等により減速出力軸219が回されることがないように設定できる。従って、本実施の形態のリニアアクチュエータ1は、直動装置300のシャフト311と減速装置200の減速出力軸219との間にブレーキ装置を設ける必要がない。すなわち、リニアアクチュエータ1は、ブレーキ装置を別途設けないで、シャフト311の正逆回転を抑制することができる。
【0037】
本実施の形態のリニアアクチュエータ1は、モータ装置100のモータ出力軸102、減速装置200の減速出力軸219、および直動装置300のシャフト311が同軸上に配置され、モータ装置100、減速装置200、および直動装置300は、略直線上に長手方向に配置されている。そのため、長手方向に直行する方向である幅方向の長さが短く、幅方向にスペースがない箇所にも本実施の形態のリニアアクチュエータ1は設定されることができ、レイアウト性が高い。
【0038】
(第2の実施形態)次に、図5に基づき第2の実施形態のリニアアクチュエータ2について説明する。図5は、リニアアクチュエータ2のモータ装置100、減速装置200を示す断面図である。リニアアクチュエータ2は、リニアアクチュエータ1に対し、モータ出力軸102、連結軸209、210、第2の遊星歯車211、212、および第2の太陽歯車213の形状、ならびに第2の遊星歯車211、212および第2の太陽歯車213の材質のみ異なり、その他の部分の形状および材質は同一である。従って、以下、モータ出力軸102、連結軸209、210、第2の遊星歯車211、212について説明し、その他の部分の説明は省略する。
【0039】
第2の遊星歯車211、212および第2の太陽歯車213は、樹脂より形成されている。そのため、強度を確保するため第2の遊星歯車211、212および第2の太陽歯車213の歯厚は大きく設定されている。また、第2の遊星歯車211、212および第2の太陽歯車213の歯厚に合わせ、モータ出力軸102、連結軸209、210の軸方向の長さが長く設定されている。
上記のように、第2の遊星歯車211、212および第2の太陽歯車213を樹脂により形成することにより、リニアアクチュエータ2の軽量化を図ることができる。
【0040】
(第3の実施形態)次に、図6に基づき第3の実施形態のリニアアクチュエータ3について説明する。図6は、リニアアクチュエータ3のモータ装置100、減速装置200を示す断面図である。リニアアクチュエータ3は、リニアアクチュエータ1に対し、モータ装置100に伝達機構104が追加されるとともに、電動モータ101の取り付け位置が相違することのみが異なり、その他は同一である。従って、伝達機構104および電動モータ101の取り付け位置についてのみ説明し、その他の部分の説明は省略する。
【0041】
モータ装置100は、伝達機構104を備え、伝達機構104は、カバー105、駆動歯車106、遊び歯車107、従動歯車108および伝達出力軸109を有している。電動モータ101は、第1の減速機ケース201の端面201aに直動装置300に向けて取り付けられ、電動モータ101のモータ出力軸102は、第1の減速機ケース201を挿通して第1の減速機ケース201の端面201bから突出している。
【0042】
駆動歯車106は、円盤形状に形成されるとともに外壁に複数の外歯が形成され、モータ出力軸102に取り付けられている。そして、駆動歯車106は、モータ出力軸102
の回転とともに回転する。遊び歯車107は、円盤形状に形成されるとともに外壁に複数の外歯が形成され、駆動歯車106に噛合されている。そして、モータ出力軸102の回転とともに回転する駆動歯車106の回転により回転する。
【0043】
従動歯車108は、円盤形状に形成されるとともに外壁に複数の外歯が形成され、遊び歯車107に噛合される。そして、モータ出力軸102および駆動歯車106の回転とともに回転する遊び歯車107の回転により回転する。伝達出力軸109は、従動歯車108と連結されており、モータ出力軸102の回転により、駆動歯車106、遊び歯車107および従動歯車108を介して回転される。なお、駆動歯車106、遊び歯車107および従動歯車108は、カバー105により覆われている。
【0044】
本実施の形態では、伝達出力軸109が、減速装置200の公転部材204に連結されており、モータ出力軸102の回転が伝達機構104を介して公転部材204に伝達される。
【0045】
本実施の形態では、電動モータ101は、第1の減速機ケース201の端面201aに直動装置300に向けて取り付けられている。そのため、リニアアクチュエータ3の長手方向の長さが短くなり、長手方向にスペースがない箇所にも本実施の形態のリニアアクチュエータ3は設定されることができる。
【0046】
(第4の実施形態)次に、図7に基づき第4の実施形態のリニアアクチュエータ4について説明する。図7は、リニアアクチュエータ4のモータ装置100、減速装置200を示す断面図である。リニアアクチュエータ4は、リニアアクチュエータ1に対し、主に、第1および第2の太陽歯車の形状が異なり、その他の部分はリニアアクチュエータ1と略同様である。従って、以下、第1および第2の太陽歯車401、501について説明し、その他の部分の説明は省略する。
【0047】
第1の太陽歯車401は、円環状のいわゆるリングギヤの形状をしているとともに内壁に複数の内歯が形成されている。そして、外壁に複数の外歯が形成された第1の遊星歯車207、208を内包するとともに、第1の太陽歯車401の外歯と第1の遊星歯車207、208の内歯とが噛合する位置にて減速機ケース201に対して固定配置されている。
【0048】
第2の太陽歯車501も、第1の太陽歯車401と同様にいわゆるリングギヤの形状をしているとともに内壁に複数の内歯が形成されている。そして、外壁に複数の外歯が形成された第2の遊星歯車211、212を内包するとともに、第2の太陽歯車501の外歯と第2の遊星歯車211、212の内歯とが噛合する位置にて、減速機ケース201、202に対して回転自在に配置されている。さらに、第2の太陽歯車501の内側には円盤形状のプレート部502一体に形成され、このプレート部502の円心部に減速出力軸219が一体に形成されている。
【0049】
上記のように、第2の太陽歯車501がリングギヤの形状をしており、第1から第2の実施形態のリニアアクチュエータ1、2、3に比して、第2の太陽歯車501と第2の遊星歯車211、212とが噛合する位置が減速出力軸219の軸心から遠い位置に設定されている。そのため、減速出力軸219が外部から回転させられたときに第2の太陽歯車501の内歯と第2の遊星歯車211、212の外歯との間に作用する力が軽減される。このため、第2の太陽歯車501の内歯および第2の遊星歯車211、212の外歯を高強度に設定する必要がなく、第2の太陽歯車501および第2の遊星歯車211、212の薄型、軽量化が可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1〜4 リニアアクチュエータ
100 モータ装置
101 電動モータ
102 (第1の)モータ出力軸
103 モータケース
104 伝達機構
105 カバー
106 駆動歯車
107 遊び歯車
108 従動歯車
109 伝達出力軸
200 減速装置
201 第1の減速機ケース
202 第2の減速機ケース
203 第1の太陽歯車
204 公転部材
205 摺動部材
206 摺動部材
207、208 第1の遊星歯車
209 連結軸
210 連結軸
211、212 第2の遊星歯車
213 第2の太陽歯車
214 保持軸部
215 摺動部材
216 保持部材
217、218 摺動部材
219 減速出力軸
300 直動装置
301 ケース
302 ジョイントケース部
302a 有底部
303 補強筒ケース部
304 ジョイント機構
305 軸受
306 ジョイント部材
307 スリーブ
308 軸受ハウジング
309 補強筒
310 直動機構
311 シャフト
311a 本体部
311b 連結部
312 雌ねじ部材
312a 案内部
312b 連結部
313 直動筒
313a 先端部
314 連結部材
401 第1の太陽歯車
501 第2の太陽歯車
502 プレート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ出力軸を有する電動モータと、減速出力軸を有し、前記電動モータのモータ出力軸に連結され、前記モータ出力軸の回転を減速し、減速された回転を前記減速出力軸から出力する減速装置と、前記減速装置の前記減速出力軸に連結され、外周に雄ねじが形成されている長尺状のシャフトと、前記シャフトの前記雄ねじに螺合して前記シャフトの正逆回転により進退する雌ねじ部材と、前記雌ねじ部材に取り付けられ、前記雌ねじ部材とともに進退する直動筒とを備えるリニアアクチュエータにおいて、
前記減速機装置は、
円盤形状に形成されるとともに複数の歯が形成され、前記減速装置内に固定配置される第1の太陽歯車と、
板状に形成され、前記電動モータのモータ出力軸と結合された公転部材と、
円盤形状に形成されるとともに複数の歯が形成され、前記公転部材に回転自在に軸支され前記第1の太陽歯車に噛合する少なくとも2つ以上の第1の遊星歯車と、
円盤形状に形成されるとともに複数の歯が形成され、前記第1の遊星歯車に対し前記公転部材を挟んで反対側に配置され、前記第1の遊星歯車のそれぞれに同心状に連結されている第2の遊星歯車と、
円盤形状に形成されるとともに複数の歯が形成され、前記第1の太陽歯車と同心状に、かつ、前記第2の遊星歯車に噛合する位置にて前記減速装置内に回転自在に配置されている第2の太陽歯車とを有し、
前記減速装置の前記減速出力軸は、前記第2の太陽歯車に一体的に取り付けられていることを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項2】
前記減速装置において、
前記第1の太陽歯車には、円心に貫通孔が形成されており、
前記電動モータは、前記電動モータの前記モータ出力軸と前記減速装置の前記減速出力軸が同軸の位置となるように配置され、前記電動モータの前記モータ出力軸が前記第1の太陽歯車に形成された前記貫通孔を挿通することを特徴とする請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記減速装置は、
略円柱形状に形成され、前記第1および第2の遊星歯車を連結する連結部材と、
板状に形成され、前記連結部材を回転自在に保持するとともに、前記減速機装置内に回転自在に配置される保持部材とを備えることを特徴とする請求項2に記載のリニアアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−67771(P2012−67771A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210313(P2010−210313)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】