説明

リニアソレノイドバルブ制御装置

【課題】油撃音を低減すると共に、低消費電力化が可能なリニアソレノイドバルブ制御装置を提供する。
【解決手段】流体が流通する流路と、リニアソレノイド1aと、該流路を開閉するバルブ1と、励磁電流をリニアソレノイド1aに印加することにより所定のバルブ制御量に従ってバルブ1の開度を制御するバルブ制御部2とを備えたリニアソレノイドバルブ制御装置100は、流路とバルブ1との間に流体中の異物が噛み込んだことを検出する噛み込み検出部28と、噛み込み検出部28にて異物の噛み込みが検出された場合に、噛み込んだ異物のサイズを推定するサイズ推定部29とを備え、バルブ制御部2は、サイズ推定部29により推定された異物のサイズに対応した開度にバルブ1を制御する励磁電流をリニアソレノイド1aに印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を流通させる流路を連通・遮断するためにリニアソレノイドに励磁電流を通電して制御するバルブを備えたリニアソレノイドバルブ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、リニアソレノイドに励磁電流を通電してリニアバルブを駆動制御し、当該リニアバルブによって被制御対象を制御する制御装置が知られている。その用途の一つとして、車両のブレーキ液圧制御装置にリニアバルブが配設された例がある。このようなブレーキ液圧制御装置では、リニアバルブのリニアソレノイドに制御装置から制御信号として所定の電流が供給されることにより制御用バルブを作動させて油路を開閉し、油の流量や油圧の調整を行っている。この種のリニアバルブの使用においては、制御用バルブの周囲で異物が発生し、当該異物を制御用バルブが噛み込むことにより所望の制御が行えなくなる虞があるため、噛み込まれた異物の除去を行うことが可能なリニアソレノイドバルブ制御装置がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に係るリニアソレノイドバルブ制御装置では、リニアバルブにより油圧の制御を行っている場合であっても異物の除去が可能な技術が開示されている。特許文献1に係る技術では、ソレノイドに予め設定された最大値と最小値とを交互に繰り返す矩形波の電流を印加して駆動することにより異物を除去している。しかしながら、印加電流を最大値まで上げるため、リニアバルブを開弁した際に油を流通させるライン内の油撃音が大きくなってしまうといった問題があった。また、ソレノイドに印加する電流を最大値まで上げることにより開弁量が大きくなるため、消費電力も大きくなってしまうといった問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2005−054970号公報(段落番号0036、図6等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記問題を鑑み、油撃音を低減すると共に、低消費電力化が可能なリニアソレノイドバルブ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係るリニアソレノイドバルブ制御装置の特徴は、流体が流通する流路と、リニアソレノイドと、該流路を開閉するバルブと、励磁電流を前記リニアソレノイドに印加することにより所定のバルブ制御量に従って前記バルブの開度を制御するバルブ制御手段とを備えると共に、前記流路と前記バルブとの間に前記流体中の異物が噛み込んだことを検出する噛み込み検出手段と、前記噛み込み検出手段にて異物の噛み込みが検出された場合に、噛み込んだ異物のサイズを推定するサイズ推定手段とを備え、前記バルブ制御手段は、前記サイズ推定手段により推定された異物のサイズに対応した開度に前記バルブを制御する励磁電流を前記リニアソレノイドに印加する点にある。
【0007】
このような構成とすれば、噛み込み検出手段が、バルブに流通する流体に混入している異物の流路とバルブとの間への噛み込みを検出した場合に、サイズ推定手段によって推定された異物のサイズに応じて、バルブ制御手段がバルブを開弁状態にするため、噛み込んだ異物の除去に際してバルブを全開状態にする必要がなくなる。したがって、最小限の励磁電流でバルブに噛み込まれた異物を除去することが可能となる。また、バルブを最小限の開弁状態とするため、開弁する際に発生する油撃音を抑えることができる。また、バルブに流体を流通させるポンプの吐出量を抑えることができるため、ポンプの寿命を長くすることができる。更には、バルブの開閉制御に伴う消費電力を抑えることができる。
【0008】
また、前記リニアソレノイドバルブ制御装置は、前記サイズ推定手段は、前記噛み込み検出手段にて異物の噛み込みが検出された場合、当該異物の噛み込みが検出された直前の前記バルブ制御手段の制御における前記バルブ制御量に基づいて前記異物のサイズを推定する構成とすれば好適である。
【0009】
このように異物を噛み込む直前のバルブのバルブ制御量に応じて異物サイズを推定するようにすれば、容易に異物のサイズを推定することが可能となる。
【0010】
また、前記リニアソレノイドバルブ制御装置は、前記バルブが前記流体より受ける圧力を検出する圧力検出手段を有し、前記サイズ推定手段は、前記圧力検出手段によって検出された前記バルブが前記流体により受ける圧力に基づいて前記異物のサイズを推定する構成とすれば好適である。
【0011】
このような構成とすれば、バルブが流体により受ける圧力を、例えば圧力センサ等の圧力検出手段の出力に基づいてバルブに噛み込まれた異物のサイズを推定することができるため、異物サイズを推定するための別の判定手段を設ける必要がなくなる。したがって、容易に異物のサイズを推定することができると共に、安価にリニアソレノイドバルブ制御装置を構成することが可能となる。
【0012】
また、前記リニアソレノイドバルブ制御装置は、前記流体の温度を取得する温度取得手段を有し、前記バルブ制御手段は、前記温度取得手段にて取得された流体の温度が低い程前記励磁電流の印加時間を長く設定すると好適である。
【0013】
このように温度取得手段を設けて流体の温度を測定可能な構成とすれば、流体の温度変化に伴って流体の粘度が変化した場合であっても、バルブ制御手段がリニアソレノイドに印加する励磁電流の印加時間を調整することができるため、バルブ制御に必要な開度を維持することが可能となる。特に、流体の温度が低い場合には、励磁電流の印加時間を長く設定するように制御を行うと好適である。
【0014】
また、ブレーキシステムとして、ブレーキペダルの作動に応じて各車輪のブレーキ操作力をアシストするために該ブレーキ操作力を伝達する流体を昇圧するポンプと、該ポンプを駆動するモータと、該昇圧した流体を各車輪に配設されるホイールシリンダーに伝達する液圧回路と、当該ポンプによって昇圧された前記流体を貯留するアキュムレータとを備える液圧制御装置と、前記アキュムレータに貯留された液体の流出側流路に接続され、該流体が流通する流路と、リニアソレノイドと、該流路を開閉するバルブと、励磁電流を前記リニアソレノイドに印加することにより所定のバルブ制御量に従って前記バルブの開度を制御するバルブ制御手段とを備えると共に、前記ブレーキペダルの作動とは無関係に前記バルブの開動作に応じた圧力を液圧回路を介して前記ホイールシリンダーに伝達するリニアソレノイドバルブ制御装置とを備え、更に、前記リニアソレノイドバルブ制御装置の流路と前記バルブとの間に前記流体中の異物が噛み込んだことを検出する噛み込み検出手段と、前記バルブへの異物の噛み込みが検出された場合に噛み込んだ異物のサイズを推定するサイズ推定手段とを備えた上で、前記バルブ制御手段が、前記サイズ推定手段により推定された異物のサイズに対応した開度に前記バルブを制御する励磁電流を前記リニアソレノイドに印加するように構成しておくと好適である。
【0015】
このように、本発明に係るリニアソレノイドバルブ制御装置と、リニアソレノイドと、液圧制御装置と、で車両のブレーキシステムを構成すると、噛み込み検出手段が、バルブに流通する流体に混入している異物の流路とバルブとの間への噛み込みを検出した場合に、サイズ推定手段によって推定された異物のサイズに応じて、バルブ制御手段がバルブを開弁状態にするため、噛み込んだ異物の除去に際してバルブを全開状態にする必要がなくなる。したがって、最小限の励磁電流で噛み込まれた異物を除去することが可能となる。また、バルブを最小限の開弁状態とするため、開弁する際に発生する油撃音を抑えることができる。また、バルブに流体を流通させるポンプの吐出量を抑えることができるため、ポンプの寿命を長くすることができる。更には、バルブの開閉制御に伴う消費電力を抑えることができる。したがって、バルブに流通する流体の流量を容易に制御することが可能となると共に、低消費電力化が図られ、燃費改善に効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のリニアソレノイドバルブ制御装置100を制御する制御ブロックを模式的に示した図である。本リニアソレノイドバルブ制御装置100は、例えばブレーキペダルの作動に応じて各車輪のブレーキ液の流出量を制御してブレーキ操作力をアシストする車両のブレーキシステム(ハイドロブースターブレーキシステム)200に、モータを動力源としてブレーキ液を昇圧するポンプ、及び当該ポンプによって昇圧されたブレーキ液を貯留するアキュムレータを有する液圧制御装置としてのハイドロブースター300と共に配設される。当該リニアソレノイドバルブ制御装置100は、バルブ1を有している(詳細は後述する)。当該車両には、車両の状態を検出する車輪速センサ11やステアリングセンサ12やレーダーセンサ13やヨーレートセンサ14やGセンサ15が配設されている。なお、本実施形態に記載のブレーキ液は、本願請求項に記載の流体に相当するものである。
【0017】
車輪速センサ11は車輪のロック状態を監視すると共に、車両の速度の検出を行うものであり、車両が備える左フロント、右フロント、左リア、右リア(以下、夫々FL、FR、RL、RR)の各ホイールに配設される。そして、ステアリングセンサ12は、ステアリングの中立位置に対して回転した際の転舵角の検出を行う。また、レーダーセンサ13は例えば、高速自動車道路における車両の安全性向上のために、自車両と前走する車両との車間距離や相対速度の測定を行う。レーダーセンサ13が測定した結果は、車間ECU16に伝達され、当該測定結果に基づいて自車両を減速させるための目標減速度の算出を行う。ヨーレートセンサ14は車両が回転する際の車両速度(角速度)の検出を行い、Gセンサ15は車両が受ける加速度の検出を行う。この加速度の検出は、水平方向の加速度はもちろん、垂直方向の加速度の検出も可能である。
【0018】
上記の車輪速センサ11やステアリングセンサ12やヨーレートセンサ14やGセンサ15によって取得されたセンサ出力や車間ECU16によって算出された目標減速度は、ブレーキECU4に伝達され、車両の走行状態に応じてブレーキECU4が備える目標油圧演算部3が車両を減速或いは停止させるために車両のブレーキシステム200が必要な目標油圧の演算を行う。具体的には、例えば車両がカーブを走行中に遠心力によりカーブの外に飛び出してしまう場合、ステアリングの切り具合と速度とから決定されたヨーレートより、実際のヨーレートは小さく検出される。このような場合には、エンジンの出力を抑えてブレーキをかけ、コースからのズレを低減するように制御を行う。また、車両がスピンしてしまうような場合においては、遠心力と速度とから決定されるヨーレートより大きいヨーレートが検出される。このような場合は、外側前輪に強めのブレーキをかけることでスピンを抑制することが可能となる。このような車両の安定性を確保するために、これらのセンサが配設されている。また、このような安定性の確保は、上記のようなカーブ走行時に限らず、障害物を回避するために急激なステアリング操作を行った場合や、滑りやすい路面のカーブに進入したとき等に発生する横滑りを抑制する場合にも利用される。尚、前述の目標油圧演算部3と共に、バルブ制御部2(詳細は後述する)もブレーキECU4を構成する。
【0019】
図2は、本リニアソレノイドバルブ制御装置100を車両が備えるブレーキシステム200に使用した場合における一部構成を示す概略図である。リザーバ21に蓄えられるブレーキ液は、モータ22により駆動されるポンプ23によって加圧される。ポンプ23の出力段には、加圧されたブレーキ液を貯留するアキュムレータ24が配設される。アキュムレータ24に貯留されたブレーキ液は、一定圧力として出力されることにより、車両の各車輪に配設されるホイールシリンダーに液圧回路を介して必要な油圧が伝達される。
【0020】
アキュムレータ24に貯留されたブレーキ液は、第1流路31を介してバルブ1に流通する。当該バルブ1は図3に示されるようにブレーキ液を流通させる流路を連通・遮断するために閉弁状態から開弁状態となるように制御するノーマルクローズ型であり、リニアソレノイド1aに励磁電流を通電することにより、弁体1bの開閉制御が行われる。この弁体1bを開弁状態にすることにより、バルブ1の後段に対してブレーキ液圧を伝達することが可能となる。リニアソレノイド1aに対する励磁電流の通電は、図1に示されるバルブ指示電流としてバルブ制御部2により行われる。なお、当該バルブ制御部2は、本願請求項におけるバルブ制御手段に相当する。
【0021】
図2に戻り、バルブ1が開弁状態となった場合には、ブレーキ液は第2流路32を介してマスターシリンダー25に流通することとなる。第2流路32には、開弁状態から閉弁状態となるように制御するノーマルオープン型のSREC弁26が配設されている。更に、SREC弁26と並列に、一方向からの流れを圧力に応じて自由に流通させ、逆方向からの流れを閉止するチェック弁27も配設されている。
【0022】
第1流路31には、第1流路31に流通するブレーキ液の圧力を測定するためにアキュムレータ圧センサ33が配設されている。また、第2流路32には、第2流路32に流通するブレーキ液の圧力を測定するために制御圧センサ34が配設されている。これらアキュムレータ圧センサ33及び制御圧センサ34は、本願請求項における圧力検出手段に相当し、バルブ1がブレーキ液により受ける圧力の検出を行う。アキュムレータ圧センサ33及び制御圧センサ34から出力されるセンサ信号は、噛み込み検出手段としての噛み込み検出部28に伝達される。したがって、噛み込み検出部28は、特に、アキュムレータ圧センサ33からのセンサ信号と、バルブ制御部2が行うバルブ1の制御量とに基づいて、図4に示されるような弁体1bと第1流路31との間に異物10の噛み込みがあるか否かの検出を行うことが可能である。なお、この異物10の噛み込みは、ブレーキ液に混入している異物10がバルブ1の開弁制御に応じて噛み込まれたことによるものである。
【0023】
アキュムレータ24が一定のブレーキ液圧を供給していると、バルブ1のリニアソレノイド1aがバルブ制御部2から励磁電流が通電されない場合にはバルブ1は上述のようなノーマルクローズ型であることからアキュムレータ圧センサ33ではアキュムレータ24から出力されるブレーキ液による一定の圧力に応じたセンサ信号を出力する。しかしながら、弁体1bと第1流路31との間に異物10の噛み込みがある場合には、バルブ制御部2からリニアソレノイド1aに対して励磁電流が通電されていなくとも、図4に示されるように、異物10によりバルブ1が開弁状態となってしまうため、ブレーキ液圧が低下することとなる。したがって、噛み込み検出部28は、バルブ1が閉弁状態にある場合のアキュムレータ圧センサ33のセンサ信号と比較することにより弁体1bと第1流路31との間に異物10の噛み込みがあるか否かを検出することが可能となる。この検出は、ブレーキシステム200の稼動中、常時行っても良いし、所定のタイミングを予め決定しておき、そのタイミングに応じて行っても良い。
【0024】
上述のように、弁体1bと第1流路31との間に異物10が噛み込まれた状態であると、バルブ制御部2が励磁電流の通電を行っていない、即ちバルブ1が閉弁状態となるように制御している場合であっても、ブレーキ液圧の漏れにより所望のブレーキ制御ができなくなる虞がある。したがって、弁体1bと第1流路31との間から異物10を取り除く必要がある。本発明に係るリニアソレノイドバルブ制御装置100は、このような異物を取り除く動作(以後、異物除去動作)を行う機能を備えている。
【0025】
リニアソレノイドバルブ制御装置100が行う異物除去動作は、(1)式で示されるように弁体1bをバネ付勢に抗して開弁状態とするために必要な開弁電流(Iopen)と、異物10を除去するために弁体1bをストロークさせるのに必要なストローク電流(Istroke)との和であるリフレッシュ電流(Iref)をリニアソレノイド1aに印加することにより行われる。
【0026】
【数1】

【0027】
噛み込み検出部28が、バルブ1に異物10の噛み込みを検出した場合には、サイズ推定手段としてのサイズ推定部29が異物サイズの推定を行う。この推定は、バルブ1にかかる圧力から異物サイズを推定する方法と、噛み込み検出部28が異物10の噛み込み検出を行った場合における直前のバルブ制御部により行われたバルブ1の操作に伴うバルブ制御量から異物サイズを推定する方法と、がある。
【0028】
また、ブレーキ液は、温度が高くなればブレーキ液の粘度が低下して油圧制御に対する応答速度が速くなり、逆にブレーキ液の温度が低くなればブレーキ液の粘度が上がって油圧制御に対する応答速度が鈍くなるという特性を有している。このような特性を有しているブレーキ液を流通させるために、ブレーキ液の温度に応じてバルブ制御部2がバルブ1のリニアソレノイド1aに対する励磁電流の印加時間(出力時間)を変更して、開弁間隔を変更することにより効果的に異物除去制御が可能となる。図5は、励磁電流の印加時間とブレーキ液の温度との関係の一例を示した図である。ブレーキ液の温度が低い場合には、励磁電流の印加時間を長く設定するように制御をおこなうと好適である。なお、このブレーキ液の温度測定は、温度取得手段としての温度取得部30が、直接ブレーキ液の温度を測定しても良いし、リニアソレノイドバルブ制御装置100を構成する何れかのユニットの温度を測定して、補正することにより求めることも可能である。なお、図5において、T1はブレーキ液の粘性の温度依存性が小さくなる温度である。また、tminはバルブ1が開弁するmin時間であり、tmaxはホイールシリンダーが加圧されても車両の挙動が不安定にならないmax時間である。
【0029】
図2においてバルブ1の流入側(A部)に接続される管の直径が0.635mm、SREC弁26の流入側(B点)に接続される管の直径が0.66mmであり、サイズ推定部29が異物サイズを直径0.045mmの球体と推定した場合を例として考える。まず、異物10を噛み込んで開口部が形成されている状態におけるブレーキ液が流通可能な管のサイズを算出する。推定された異物10の直径が0.045mmであるため、リニアソレノイド1aに通電されていない状態であればバルブ1はノーマルクローズ型であるため、弁体1bが0.045mmストロークして開弁状態となった位置と同様の位置に保たれていることとなる。そのため、異物10を除去するには、この位置から、更に弁体1をストロークさせる必要があることから、異物10を除去するのに要するストローク(除去ストローク)は、0.045mmとなる。
【0030】
異物10の推定されたサイズが直径0.045mmであれば、当該異物10を含めた開口は、直径0.314mm相当の管と同じになる。したがって、この管に直径0.045mmの異物10が噛み込んでいる場合におけるブレーキ液が流通可能な面積は、除去ストロークとバルブ1の流入側(A部)に接続される管の直径とに基づいて求められ、直径0.310mm相当の管と同じとなる。
【0031】
次に、異物10が噛み込んでいる状態におけるA点の圧力とB点の圧力との関係を求める。この関係は、アキュムレータ圧センサ33と制御圧センサ34とにより求めることも可能であるし、下記の(2)式のように求めることも可能である。
【0032】
【数2】

ここで、PACC:バルブ1の流入側の圧力、PMC2:SREC弁26の流入側の圧力とする。
【0033】
次に、バルブ1の開弁電流を求める。この開弁電流は、バルブ1が開弁するのに必要なリニアソレノイド1aに通電する電流とバルブ1の流入側と流出側とにかかるブレーキ液圧の差(差圧)とで決まる電流対差圧特性を利用して求められる。この電流対差圧特性は、バルブ制御部2に記憶されている。尚、この記憶は、別途、特性格納部のような格納部を設けることにより記憶するように構成することも当然に可能である。電流対差圧特性の一例を図6に示す。尚、電流対差圧特性は、バルブ1を設計する際に決まる設計値であり、同様に設計した場合であっても、その作製過程により個体差を持ち、その特性は図6の「nom」のラインで示される特性を中心に「min」から「max」の範囲でばらつきを持つ(実線の波形)。ここで、この電流対差圧特性は以下の(3)式で表すことができる。
【0034】
【数3】

ここで、a:傾き、b:切片である。
【0035】
また、ΔPは(4)式であるから、開弁電流は(2)〜(4)式により(5)式のように求めることができる。
【0036】
【数4】

【数5】

【0037】
次に、ストローク電流を求める。ここで、本実施形態で使用した弁体1bのストロークと、弁体1bがストロークした際に流通するブレーキ液の流量との間には、(6)式の関係がある(ただし、St≠0の場合における近似式である)。
【0038】
【数6】

ここで、Q:MAX流量(cm3/s)、St:ストローク(μm)である。前述のように本説明における例では、除去ストロークは0.045mmであるため、この場合におけるブレーキ液の流量は、9.16cm3となる。また、バルブ1のストローク電流は、バルブ1に流通するブレーキ液の流量とバルブ1をストロークさせるのに必要なリニアソレノイド1aに通電する電流との関係を示す電流対流量特性から求めることができる。この電流対流量特性の一例を図7に示す。図7は、バルブ1の流入側の圧力が18MPaにした場合の特性であり、この特性は設計線図として定まる。しかしながら、図7に示されるように個体差を持ち、その特性は「nom」のラインで示される特性を中心に「min」から「max」の範囲でばらつきを持つ。したがって、流通させたい流量がわかっている場合には、「max」値の電流を通電すれば、個体差があっても必ず異物10の除去が可能となる。また、図7では、バルブ1の流入側の圧力が18MPaの例を示しているが、アキュムレータ圧に応じて電流対流量特性は変化するため、算出時のアキュムレータ圧を読み取り、電流を求める。本実施形態においては、上述の通り、0.045mmの除去ストロークに対するブレーキ液の流量は、9.16cm3であるため、ストローク電流は0.254Aと求めることができる。尚、この電流対流量特性は、バルブ制御部2に記憶されている。
【0039】
この求められたストローク電流と(1)式と(5)式とにより、直径0.045mmの異物10を除去するために必要なリフレッシュ電流は、PACC=18MPaの場合には、(7)式のように求めることができる。
【数7】

【0040】
例えば、図6において破線で示された電流対差圧特性を有するバルブ1であれば、a:−0.035、b:1となるため、直径0.045mmの異物10を噛み込んだ場合におけるリフレッシュ電流は、(8)式にて求めることができる。
【数8】

このように(8)式で求められるリフレッシュ電流をリニアソレノイド1aに通電することにより、弁体1bを無駄に大きく動作させることがないため、油撃音を低減することが可能となると共に、低消費電力化が可能となる。したがって、弁体1bと第1流路31との間に噛み込んだ異物10を効率良く、除去することができる。
【0041】
本リニアソレノイドバルブ装置100を車両が備えるブレーキシステム200に使用した場合の例を説明する。図8は、特にハイドロブースター300を備えるハイドロブースターブレーキシステム200に使用した場合における全体構成を示す概略図である。アキュムレータ24に貯留されたブレーキ液は、運転者によりブレーキペダル42が踏まれるとレギュレータ43に導入され、後輪系統を昇圧する。同時にレギュレータ43を介してマスターシリンダー25の背面に導入されて助勢力を発生し、前輪系統へ油圧が伝達される。
【0042】
この油圧は、車両のホイール(FL、FR、RL、RR)毎に油圧弁(SF*H弁44、SF*R弁45、SR*H弁46、SR*R弁47)が配設され、その後段に備えられたホイールシリンダー(夫々、WFL、WFR、WRL、WRR)に伝達されてブレーキ制御が行われる。マスターシリンダー25で加圧されたブレーキ液やポンプ23により加圧されてアキュムレータ24に貯留されたブレーキ液は、車両のブレーキ制御に応じてブレーキペダル42の作動がない場合でも(無関係に)、各制御弁を制御してこれらの油圧弁に伝達可能になっている。ハイドロブースターブレーキシステムが有する弁は、ノーマルクローズ型のSTR弁1及びSREA弁50のリニア弁と、ノーマルオープン型のSMCF弁48及びSREC弁26の制御弁であり、本発明に係る請求項に記載のバルブ1は、前記STR弁1を示すものである。
【0043】
上述の車両のブレーキ制御には、急ブレーキ或いは低摩擦路でのブレーキ操作においてタイヤがロックして滑るのを防止するABS(Antilock Brake System)、フロントエンジン・リヤドライブ型の車両の駆動力をタイヤのすべり具合を見ながら調節するFR−TRC(Front Engine Rear Drive-Traction Control)、4輪駆動型の車両の駆動力をタイヤのすべり具合を見ながら調節する4駆−TRC、急勾配の下りでブレーキの自動制御を行なうDAC(Downhill Assist Control)、運転者が十分にブレーキペダルを踏み込めない時であっても非常事態においてブレーキをかけることが可能なBA(Brake Assist)、急なハンドル操作時や滑りやすい路面を走行中に車両の横滑りを感知した場合に自動的に車両の進行方向を保つように車両を制御するESC(Electronic Stability Control)、先行する車両との適切な車間距離を保ちながら追従走行するACC(Adaptive Cruise Control)等がある。図8に示されたハイドロブースターブレーキシステム200は、これらのブレーキ制御を行うことが可能である。
【0044】
図9は、夫々のブレーキ制御における各リニア弁や制御弁や油圧弁の開閉状態を示す図である。通常のブレーキ動作時は、図9に示されるように、全ての弁はOFF状態で行われるが、ABSモードの場合には、図9に示されるようにSTR弁1及びSREC弁26はOFF状態、SMCF弁48及びSREA弁50はON状態にされることから、夫々、STR弁1は閉弁、SMCF弁48は閉弁、SREC弁26は開弁、SREA弁50は開弁となる。したがって、運転者がブレーキペダル42を踏むことにより、マスターシリンダー25で加圧されたブレーキ液は、レギュレータ43を介してSF*H弁44、SF*R弁45、SR*H弁46、SR*R弁47が開弁されて、ホイールシリンダー(WFL、WFR、WRL、WRR)に伝達されることとなる。
【0045】
また、FR−TRCモードの場合には、STR弁1及びSREC弁26はON状態、SMCF弁48及びSREA弁50はOFF状態にされることから、STR弁1は開弁、SMCF弁48は開弁、SREC弁26は閉弁、SREA弁50は閉弁となる。したがって、SF*H弁44及びSF*R弁45には、SMCF弁48を介してマスターシリンダー42からの油圧が伝達され、SR*H弁46及びSR*R弁47にはアキュムレータ24からの油圧が伝達されることとなる。
【0046】
そして、4駆−TRCモードやDACモードやBAモードの場合には、STR弁1、SREC弁26、SMCF弁48及びSREA弁50はON状態にされることから、STR弁1は開弁、SMCF弁48は閉弁、SREC弁26は閉弁、SREA弁50は開弁となる。したがって、SF*H弁44、SF*R弁45、SR*H弁46、SR*R弁47にはアキュムレータ24からの油圧が伝達されることとなる。また、ESCモードも上記と同様に油圧が伝達される。
【0047】
ACCモードでも、上記と同様に油圧が伝達されるが、他のモードと異なるところは、SF*H弁44、SF*R弁45、SR*H弁46、SR*R弁47を作動させない点にある。また、FR−TRCモードや4駆−TRCモードやDACモードやBAモードやACCモードにおいては、STR弁1やSREC弁26は、リニア調圧を行うことにより通常の制御弁として機能させる。このように本発明に係るリニアソレノイドバルブ制御装置100は、ブレーキシステム200に利用することが可能である。
【0048】
次に、本リニアソレノイドバルブ制御装置100が異物10を除去する処理に関して図10のフローチャートを使用して説明する。まず、バルブ(STR弁)1からブレーキ液が漏れているか否かの確認を行う(ステップ#01)。バルブ1からブレーキ液が漏れていない、即ちバルブ漏れフラグがOFFであれば(ステップ#01:Yes)、バルブ1を使用したブレーキ制御中であるか否かの確認を行う(ステップ#02)。バルブ1を使用したブレーキ制御中であれば(ステップ#02:Yes)、バルブ1の開閉制御が初回であるか否かの確認を行う(ステップ#03)。
【0049】
開閉制御が初回であれば(ステップ#03:Yes)、前回のバルブ1の開閉制御にかかる目標油圧(n−1)やMAX流量Qや流量(n−1)等のパラメータがバルブ制御部2に記憶されていないため、これらのパラメータを0とする(ステップ#04)。一方、過去にバルブ1の開閉制御を行ったことがあれば(ステップ#03:No)、直前の開閉制御にかかるパラメータをバルブ制御部2から読み出す。
【0050】
そして、今回の異物除去にかかる目標油圧(n)と直前のバルブ1の開閉制御にかかる目標油圧(n−1)とから今回の目標油圧勾配(n)を算出する(ステップ#05)。算出された目標油圧勾配(n)と車両消費液量との積から流量(n)を決定する(ステップ#06)。ここで、目標油圧勾配(n)とは単位時間あたりの圧力で〔Pa/sec〕の次元をもち、車両消費液量とは単位圧力あたりの液量で〔cm3/Pa〕の次元をもつ。したがって、流量(n)は〔cm3/sec〕の次元となる。尚、車両消費液量とは、キャリパや配管等の消費液量であり、車両毎に固定される。
【0051】
上記のように算出された今回の流量(n)が前回のバルブ1の開閉制御に伴う流量(n−1)より大きい場合には(ステップ#07:Yes)、今回の流量(n)をMAX流量とする(ステップ#08)。一方、今回の流量(n)が前回の流量(n−1)より少ない場合には(ステップ#07:No)、前回の流量(n−1)をMAX流量とする(ステップ#09)。次に、MAX流量からストロークStを算出する(ステップ#09)。この算出は、例えば上述の(6)式のように一次関数となる設計線図から算出可能である。そして、今回求められた目標油圧(n)及び流量(n)は、次回の開閉制御における前回の目標油圧(n−1)及び流量(n−1)としてバルブ制御装置2に記憶され(ステップ#10)、処理を終了する。
【0052】
ステップ#02に戻り、バルブ1を使用したブレーキ制御中でなければ(ステップ#02:No)、再度、バルブ1の漏れ判定を行う(ステップ#11)。この漏れ判定は、アキュムレータ圧が所定時間内に所定値以上低下した場合に、ブレーキ液が漏れていると判定し、バルブ漏れフラグをONにするようにすると好適である。バルブ1からブレーキ液が漏れていない場合、即ちバルブ漏れフラグがOFFであれば(ステップ#12:No)、処理を終了する。
【0053】
ステップ#01及びステップ#12において、バルブ1からブレーキ液が漏れている場合、即ちバルブ漏れフラグがONであれば(ステップ#01:No又はステップ#12:Yes)、弁体1bに異物10が噛み込まれていると考えられることから異物除去のためにリフレッシュ電流を算出する(ステップ#13)。リフレッシュ電流は、前述のとおり、弁体1bを開弁するための開弁電流と弁体1bをストロークさせるためのストローク電流との和を算出することにより決定される電流である。この算出されたリフレッシュ電流が、バルブ指示電流値として用いられる(ステップ#14)。
【0054】
次に、ブレーキ液の温度を測定する(ステップ#15)。ブレーキ液は、温度が高くなればブレーキ液の粘度が低下して油圧制御に対する応答速度が速くなり、逆にブレーキ液の温度が低くなればブレーキ液の粘度が上がって油圧制御に対する応答速度が鈍くなるという特性を有している。このような特性を有しているため、温度によってバルブ1の開弁間隔を変更することにより効果的な異物除去制御が可能となるからである。尚、このブレーキ液の温度測定は、直接ブレーキ液の温度を測定しても良いし、リニアソレノイドバルブ制御装置100を構成する何れかのユニットの温度を測定して、補正することにより求めることも可能である。このようなブレーキ液の温度やバルブ1に流通させたブレーキ液の流量に基づいて、バルブ指示電流の出力時間が算出される(ステップ#16)。具体的には、この出力時間は「バルブ1が開弁するのに要する時間」から「ホイールシリンダーが加圧されても車両の挙動が不安定にならない時間」の間となるようにブレーキ液の粘度の温度依存性を考慮して決定される。
【0055】
ここで、ブレーキが作動していない状態であれば(ステップ#17:Yes)、上記により求められたパラメータに応じてリフレッシュ処置が施される(ステップ#18)。そして、バルブ漏れフラグをOFFにし(ステップ#19)、処理を終了する。一方、ステップ#17において、ブレーキ制御中であれば(ステップ#17:No)、ブレーキ制御中にバルブ1を開弁状態とするとブレーキ制御に影響をきたす虞があるため、リフレッシュ処置を施すことなく、処理を終了する。そして、このフローは、車両の運転中に常時検出するような構成としても良いし、所定のタイミングを予め決定しておき、そのタイミングに基づいて検出しても良い。このようなフローに沿って制御を行うことにより、本発明のリニアソレノイドバルブ制御装置100は、ブレーキ制御状態でなければいつでも異物除去(リフレッシュ処置)を行うことが可能となる。
【0056】
次に、本リニアソレノイドバルブ制御装置100が異物10を除去する処理に関する別実施形態を図11のフローチャートを使用して説明する。まず、バルブ1からブレーキ液が漏れているか否かの確認を行う(ステップ#31)。バルブ1からブレーキ液が漏れていない、即ちバルブ漏れフラグがOFFであれば(ステップ#31:Yes)、バルブ1を使用したブレーキ制御中であるか否かの確認を行う(ステップ#32)。バルブ1を使用したブレーキ制御中であれば(ステップ#32:Yes)、バルブ1の開閉制御が初回であるか否かの確認を行う(ステップ#33)。
【0057】
バルブ1の開閉制御が初回であれば(ステップ#33:Yes)、前回の開閉制御にかかる電流がバルブ制御部2に記憶されていないため、リフレッシュ電流を0に設定する(ステップ#34)。一方、過去に開閉制御を行ったことがあれば(ステップ#33:No)、以下の処理を行う。前回の開閉制御にかかる電流をバルブ制御部2から読み出し、リフレッシュ電流に設定する。
【0058】
バルブ指示電流値が上記のステップにおいて設定されたリフレッシュ電流よりも小さい場合には(ステップ#35:No)、処理を終了する。ステップ#35において、バルブ指示電流値がリフレッシュ電流よりも大きく(ステップ#35:Yes)、バルブ指示電流値が第一所定値(例えばI1)よりも大きい場合には(ステップ#36:Yes)、リフレッシュ電流をI1よりも大きな電流(I0)に決定する(ただし、I0>I1)(ステップ#37)。
【0059】
ステップ#36において、バルブ指示電流値が第一所定値(I1)よりも小さく(ステップ#36:No)、第二所定値(例えばI2)よりも大きい場合には(ステップ#38:Yes)、リフレッシュ電流をI1に決定する(ステップ#39)。また、ステップ#38において、バルブ指示電流値が第一所定値(I2)よりも小さく(ステップ#38:No)、第三所定値(例えばI3)よりも大きい場合には(ステップ#40:Yes)、リフレッシュ電流をI2に決定する(ステップ#41)。更に、ステップ#40において、バルブ指示電流値が第三所定値(I3)よりも小さい場合には(ステップ#40:No)、リフレッシュ電流をI3に決定する(ステップ#42)。このようにバルブ駆動ブレーキの制御中であればリフレッシュ電流を決定し、処理を終了する。
【0060】
ステップ#32に戻り、バルブ1を使用したブレーキ制御中でなければ(ステップ#32:No)、再度、バルブ1の漏れ判定を行う(ステップ#43)。バルブ1からブレーキ液が漏れていない場合、即ちバルブ漏れフラグがOFFであれば(ステップ#44:No)、処理を終了する。
【0061】
ステップ#31及びステップ#44において、バルブ1からブレーキ液が漏れている場合、即ちバルブ漏れフラグがONであれば(ステップ#31:No又はステップ#44:Yes)、弁体1bに異物10が噛み込まれていることから異物除去のためにリフレッシュ電流を算出し、バルブ指示電流値として用いられる(ステップ#45)。
【0062】
次に、ブレーキ液の温度を測定する(ステップ#46)。そして、ブレーキ液の温度やバルブ1に流通させたブレーキ液の流量に基づいて、バルブ指示電流の出力時間が算出される(ステップ#47)。
【0063】
ここで、ブレーキが作動していない状態であれば(ステップ#48:Yes)、上記により求められたリフレッシュ電流に応じてリフレッシュ処置が施される(ステップ#49)。そして、バルブ漏れフラグをOFFにし(ステップ#50)、処理を終了する。一方、ステップ#48において、ブレーキ制御中であれば(ステップ#48:No)、リフレッシュ処置を施すことなく、処理を終了する。このようなフローに沿って制御を行うことにより、本発明のリニアソレノイドバルブ制御装置100は、ブレーキ制御状態でなければいつでも異物除去(リフレッシュ処置)を行うことが可能となる。
【0064】
このように本発明に係るリニアソレノイドバルブ制御装置100を使用すれば、弁体1bと第1流路31との間に噛み込まれた異物10の除去に際して、サイズ推定部29によって推定された異物10のサイズに応じてバルブ1を開弁状態にするため、バルブ1を全開状態にする必要がなくなる。したがって、最小限の励磁電流で弁体1bと第1流路31との間に噛み込まれた異物10を除去することが可能となる。また、バルブ1を最小限の開弁状態とするため、開弁する際に発生する油撃音を抑えることができると共に、バルブ1の開閉制御に伴う消費電力を抑えることができる。更に、リニアソレノイドブルブ制御装置100と、リニアソレノイド1aと、ハイドロブースター300と、で車両のブレーキシステム200を構成すると、リニアソレノイドブルブ制御装置100が有するバルブ制御部2が、バルブ1を開弁状態にした際の前回のバルブ制御量を記憶しているため、必要以上の流量を流通させることがなくなる。したがって、バルブ1に流通するブレーキ液の流量を容易に制御することが可能となると共に、低消費電力化が図られ、燃費改善に効果的である。
【0065】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態において、リニアソレノイドバルブ制御装置100は、車両のブレーキシステム200に用いられるとして説明したが、これに限らない。油圧制御を利用する装置であれば、本発明のリニアソレノイドバルブ制御装置100を用いることは当然に可能である。
【0066】
上記実施形態において、第二流路32に制御圧センサ34が配設されるとして説明したが、これに限らない。制御圧センサ34を配設しなくても良い。このような構成であれば、バルブ1の漏れ検出はアキュムレータ圧センサ33により行うことが可能であるし、また、(2)式によりバルブ1の流入側の圧力とSREC弁26の流入側の圧力との関係を求めることが可能である。
【0067】
上記実施形態において、バルブ1の電流対差圧特性は、バルブ1を設計する際に決まる設計値として説明した。この電流対差圧特性は、バルブ制御部2に学習機能を設けることにより、書き換え可能であるように構成することは、当然に可能である。
【0068】
上記実施形態において、バルブ1はノーマルクローズ型のバルブであるとして説明したが、これに限らない。ノーマルオープン型のバルブであっても、本願発明の権利範囲であることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】リニアソレノイドバルブ制御装置を制御する制御ブロックを模式的に示した図
【図2】リニアソレノイドバルブ制御装置を車両が備えるブレーキシステムに使用した場合における一部構成を示す概略図
【図3】ノーマルクローズ型のバルブを模式的に示す図
【図4】ノーマルクローズ型のバルブに異物が噛み込んだ例を示す図
【図5】励磁電流の印加時間とブレーキ液の温度との関係の一例を示す図
【図6】バルブの電流対差圧特性の一例を示す図
【図7】バルブの電流対流量特性の一例を示す図
【図8】ハイドロブースターブレーキシステムの全体構成を示す概略図
【図9】ブレーキ制御時のバルブや制御弁や油圧弁の開閉状態を示す図
【図10】前回の油圧と流量とに基づいて異物除去を行う場合のフローチャート
【図11】リフレッシュ電流と所定値とに基づいて異物除去を行う場合のフローチャート
【符号の説明】
【0070】
1:バルブ(STR弁)
1a:リニアソレノイド
1b:弁体
2:バルブ制御部
21:リザーバ
22:モータ
23:ポンプ
24:アキュムレータ
25:マスターシリンダー
26:SREC弁
27:チェック弁
28:噛み込み検出部
29:サイズ推定部
30:温度取得部
31:第一流路
32:第二流路
33:アキュムレータ圧センサ
34:制御圧センサ
100:リニアソレノイドバルブ制御装置
300:ハイドロブースター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流通する流路と、リニアソレノイドと、該流路を開閉するバルブと、励磁電流を前記リニアソレノイドに印加することにより所定のバルブ制御量に従って前記バルブの開度を制御するバルブ制御手段とを備えたリニアソレノイドバルブ制御装置において、
前記流路と前記バルブとの間に前記流体中の異物が噛み込んだことを検出する噛み込み検出手段と、
前記噛み込み検出手段にて異物の噛み込みが検出された場合に、噛み込んだ異物のサイズを推定するサイズ推定手段とを備え、
前記バルブ制御手段は、前記サイズ推定手段により推定された異物のサイズに対応した開度に前記バルブを制御する励磁電流を前記リニアソレノイドに印加することを特徴とするリニアソレノイドバルブ制御装置。
【請求項2】
前記サイズ推定手段は、前記噛み込み検出手段にて異物の噛み込みが検出された場合、当該異物の噛み込みが検出された直前の前記バルブ制御手段の制御における前記バルブ制御量に基づいて前記異物のサイズを推定することを特徴とする請求項1に記載のリニアソレノイドバルブ制御装置。
【請求項3】
前記バルブが前記流体より受ける圧力を検出する圧力検出手段を有し、
前記サイズ推定手段は、前記圧力検出手段によって検出された前記バルブが前記流体により受ける圧力に基づいて前記異物のサイズを推定する請求項1に記載のリニアソレノイドバルブ制御装置。
【請求項4】
前記流体の温度を取得する温度取得手段を有し、
前記バルブ制御手段は、前記温度取得手段にて取得された流体の温度が低い程前記励磁電流の印加時間を長く設定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のリニアソレノイドバルブ制御装置。
【請求項5】
ブレーキペダルの作動に応じて各車輪のブレーキ操作力をアシストするために該ブレーキ操作力を伝達する流体を昇圧するポンプと、該ポンプを駆動するモータと、該昇圧した流体を各車輪に配設されるホイールシリンダーに伝達する液圧回路と、当該ポンプによって昇圧された前記流体を貯留するアキュムレータとを備える液圧制御装置と、
前記アキュムレータに貯留された液体の流出側流路に接続され、該流体が流通する流路と、リニアソレノイドと、該流路を開閉するバルブと、励磁電流を前記リニアソレノイドに印加することにより所定のバルブ制御量に従って前記バルブの開度を制御するバルブ制御手段とを備え、前記ブレーキペダルの作動とは無関係に前記バルブの開動作に応じた圧力を液圧回路を介して前記ホイールシリンダーに伝達するリニアソレノイドバルブ制御装置と、を備えるブレーキシステムであって、
前記リニアソレノイドバルブ制御装置の流路と前記バルブとの間に前記流体中の異物が噛み込んだことを検出する噛み込み検出手段と、
前記バルブへの異物の噛み込みが検出された場合に、噛み込んだ異物のサイズを推定するサイズ推定手段とを備え、
前記バルブ制御手段は、前記サイズ推定手段により推定された異物のサイズに対応した開度に前記バルブを制御する励磁電流を前記リニアソレノイドに印加することを特徴とする車両のブレーキシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−24724(P2009−24724A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185781(P2007−185781)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】