説明

リニアモータを内蔵したスライド装置

【課題】 このスライド装置は,XテーブルとZテーブルとをリニアモータでそれぞれ駆動し,装置自体の厚み即ち嵩高さを抑えて装置自体をコンパクトに構成する。
【解決手段】このスライド装置は,Zテーブル5がXテーブル4に対してベッド1と同一の面に配設され,ベッド1とXテーブル4との間にリニアモータ49を配置し,Xテーブル4とZテーブル5との間にリニアモータ46を配置する。Xテーブル4は,リニアモータ46,49のヨークをそれぞれ構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,半導体製造装置,各種組立装置などの各種装置に使用されるリニアモータを内蔵したスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,半導体製造装置,各種組立装置などに小型リニアモータを内蔵したスライド装置が多く使用されるようになり,スライド装置に対して種々の応用分野が求められるようになっている。小型リニアモータを内蔵したスライド装置は,半導体製造装置,各種組立装置などの各種装置の小形化の要求と共に,高速性,高加減速性,高応答性,高精度な位置決めなどが要求されるようになっている。
【0003】
従来,スライド装置として可動マグネット型リニアモータを内蔵したものが知られている。該スライド装置は,可動マグネット型リニアモータを内蔵しており,嵩高を抑えてコンパクトに構成されており,界磁マグネットのN極とされた一方の磁極の外側に補助マグネットを配設して磁束のパターンを矯正して磁気検知素子でもって正確に位置検出を可能にしている。上記スライド装置は,詳細には,相対的に移動可能な一方の部材に取り付けられるベッド,他方の部材に取り付けられ且つベッドの長手方向に直動案内ユニットを介してスライド自在に設けられたテーブル,テーブルのベッドに対する対向面にテーブルのスライド方向に極性が交互に異なり且つ両端の極性が異なる態様で並設された磁極から成る界磁マグネット,界磁マグネットに対向してベッドのテーブルに対する対向面に配置された電機子コイルを有し且つ界磁マグネットが生じさせる磁束と電機子コイルに流れる電流との電磁相互作用により前記界磁マグネットに推力を与えてテーブルをスライド自在に位置決め駆動する電機子組立体,及びベッドに界磁マグネットに対向して配設され磁束の強さと方向を検知する磁気検知素子を具備している(例えば,特許文献1参照)。
【0004】
また,XYテーブル装置として,X方向及びY方向に高加減速位置決め可能な出力テーブルを設けたものが知られている。該XYテーブル装置は,X軸テーブルとY軸テーブルとを垂直方向に重ねることなく水平方向にずらして配置すると共に,上記両テーブルと連繋してXY方向に移動し所定位置に位置決めされる出力テーブルをX軸テーブル上に備えたものであり,X軸テーブルとY軸テーブルのそれぞれにリニアモータからなる走行駆動装置と,リニアモータの固定部と移動部とのギャップを支持すると共に各テーブルの直線移動を案内する直動案内装置とを設け,出力テーブルとY軸テーブルとを直動案内装置を介して連繋し,該直動案内装置の案内レールはY軸テーブル側に,スライダは出力テーブル側に固定されている。即ち,上記XYテーブル装置は,出力テーブルがリニアモータの走行駆動装置で駆動されるX軸テーブル及びY軸テーブルにリニアガイド装置でなるX軸カップリング及びリニアガイド装置でなるY軸カップリングを介して連動するものになっている(例えば,特許文献2参照)。
【0005】
また,スライドガイドとスライダーを備えたスライダーユニットを用いたピックアンドプレース装置が知られている。スライダーユニットでは,復帰用スプリングが圧縮されてもガイドロッドなど他のものと接触しないようにしたものである。復帰用スプリングを必要とするスライダーユニットのスプリングを短く分割し,ガイドロッド又はスライダーそのものに嵌挿するスプリング受けで結合する。このようなスライダーユニットをピックアンドプレース装置のX方向のスライド機構に用いたものであり,トップブロックがカム機構によりピックアンドプレース運動を行うものになっている(例えば,特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−10617号公報
【特許文献2】特開平9−123034号公報
【特許文献3】特開2000−193060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,従来の上記のXYテーブル装置では,大掛かりなものになっていた。また,上記のピックアンドプレース装置では,半導体製造装置(マウンター装置)などにおいて,スライダユニットを多数に並べて使用する場合などは,全体の装置が大きくなってしまい,好ましくないものになっていた。
【0007】
この発明の目的は,上記の課題を解決することであり,一方向,例えば,X方向に移動して位置決めする第1テーブルと,上記方向に交差する他方向,例えば,Z方向に移動して位置決めする第2テーブルを備え,第1テーブルの一方の面に対してベッドと第2テーブルとを重なることなく配設し,装置自体の厚み即ち嵩高さを抑えて装置自体をコンパクトに構成し,装置自体を多数順次配設して使用できるように構成でき,しかも第1テーブルと第2テーブルとをリニアモータでそれぞれ駆動するように構成されているスライド装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は,平板状でなるベッド,前記ベッドに対向して一方向に摺動自在に配設された第1テーブル,前記第1テーブルに対向して前記一方向に交差する他方向に摺動自在に配設された第2テーブル,前記ベッドと前記第1テーブルとを前記一方向に相対移動可能に位置決め駆動する第1リニアモータ,及び前記第1テーブルと前記第2テーブルとを前記他方向に相対移動可能に位置決め駆動する第2リニアモータを有するスライド装置において,前記第2テーブルは,前記ベッドが配設された前記第1テーブルの面と同一の面側に,前記第1テーブルに対向して配設されていることを特徴とするリニアモータを内蔵したスライド装置に関する。
【0009】
このスライド装置において,前記第1テーブルは前記ベッドより突出した突出部を備えており,前記第2テーブルは前記突出部に対向して配設されている。
【0010】
このスライド装置において,前記第1テーブルの前記面には前記第1リニアモータを構成する第1界磁マグネット及び第1電機子コイル組立体の何れか一方と前記第2リニアモータを構成する第2電機子コイル組立体及び第2界磁マグネットの何れか一方とが配設され,前記ベッドには前記第1リニアモータの前記一方に対向した他方が配設され,前記第2テーブルには前記第2リニアモータの前記一方に対向した他方が配設されている。
【0011】
このスライド装置において,前記ベッド,前記第1テーブル,及び前記第2テーブルは,鋼製でなり,前記第1テーブルは前記第1リニアモータを構成する前記第1界磁マグネット及び前記第1電機子コイル組立体の何れか一方のヨークと前記第2リニアモータを構成する前記第2電機子コイル組立体及び前記第2界磁マグネットの何れか一方のヨークとして機能し,前記ベッドは前記第1リニアモータの前記一方に対向した他方のヨークとして機能し,前記第2テーブルは前記第2リニアモータの前記一方に対向した他方のヨークとして機能するものである。
【0012】
このスライド装置は,前記第1テーブルの移動方向の前記一方向はX方向であり,前記第2テーブルの移動方向の前記他方向はZ方向であり,ピックアンドプレース装置として適用される。
【発明の効果】
【0013】
このスライド装置は,上記のように構成されているので,特に,第1テーブルでX方向に,第2テーブルでZ方向に移動自在に位置決め駆動することができ,第1テーブルの一方の面側にベッドと第2テーブルとが配設されているので,スライド装置自体の厚みを可及的に小さくコンパクトに構成でき,リニアモータを内蔵したXZスライド装置でありながら,従来に無いスライド装置の厚みを実現したものになっており,半導体製造装置,各種組立装置など,特に,ピックアンドプレース装置として適用する場合に,多数の数を設置しても適正な厚みにとどめることができ,装置自体をコンパクトに設置して使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下,図面を参照して,この発明によるリニアモータを内蔵したスライド装置の実施例を説明する。この発明によるリニアモータを内蔵したスライド装置は,クリーンルーム,試験実験室等のエリアで稼働される半導体製造装置,各種組立装置などの各種装置に組み込んで使用できるものである。このスライド装置は,互いに交差する2方向,具体的には,X方向とZ方向とに移動可能であり,位置決め可能な装置であって,従来に無い,厚み即ち嵩高さを抑えた最もコンパクトな構造に構成されており,特に,複数個を併置して用いるピックアンドプレース装置として利用して好ましいものである。この発明によるスライド装置は,例えば,本出願人に係る特開2002−10617号公報に開示された可動マグネット型リニアモータを内蔵したスライド装置を基礎にしており,これらのスライド装置の応用装置に構成されており,スライド装置の直動案内の構成,リニアモータの構成及びリニアエンコーダの構成は概して同様に構成されているので,ここでは,それらについての詳細な説明は省略することとする。
【0015】
この発明によるスライド装置は,図1及び図2に示すように,特に,ピックアンドプレース装置として利用できる態様のものに構成されている。このスライド装置は,長手状の矩形板状でなるベッド1の一方よりの側面(図1,2では下面)には取付用ねじ孔38(図4)が形成されており,取付用ねじ孔38にねじによって別部品になる支柱8が固設され,スライド装置自体が立設した状態で示されており,ベッド1に対して一方向であるX方向に摺動自在に配設されたXテーブル4(第1テーブル),及びX方向に交差するZ方向に摺動自在に配設されたZテーブル5(第2テーブル)を備えたものになっている。即ち,Zテーブル5は,ベッド1に対して,X方向及びZ方向に摺動自在なXZスライド装置に構成されており,ピックアンドプレース運動(p.p.m)が可能になっている。このスライド装置は,ピックアンドプレース装置に適用した場合には,Zテーブル5に各種チャックやグリップ(図示せず)を取り付けて利用されるものである。また,ベッド1に設けた支柱8は,取付孔22を備えており,取付孔22にねじなどを挿通して所定の機台,ベースなどに固定させて配設できるように構成されている。この実施例では,支柱8をベッド1と別部品に構成したが,支柱8をベッド1と一体構造に構成して専用のものに構成してもよいことは勿論である。
【0016】
図2に示すように,Xテーブル4は,支柱8が固設されたベッド1の他方よりにベッド1よりも下側の一方に突出した突出部25を一体に形成しており,全体的にL字状の板状に構成されており,ベッド1に対してX方向にスライド可能に構成されている。また,図1に示すように,Zテーブル5は,Xテーブル4の突出部25にあってベッド1側の面である裏面45に配設され,Zテーブル5は,Xテーブル4に対してX方向と直交するZ方向にスライドするように構成されている。Zテーブル5がベッド1側の面である裏面45に配設されたことにより,スライド装置の嵩高さである嵩幅は,ベッド1のおもて面30からXテーブル4のおもて面53までの幅B(図6)になり,2方向でなるスライド装置でありながら極めて厚みの薄いコンパクトな構成に形成されている。
【0017】
図3〜図7において,このスライド装置は,図1に示す支柱8をベッド1から取り外して,同様の方向に,竪型に配設した状態で示されている。このスライド装置は,X方向及びZ方向に摺動即ちスライドするXZスライド装置になっており,Zテーブル5がベッド1に対してX方向及びZ方向にスライドしてピックアンドプレース運動(p.p.m)ができるものになっており,図示していないが,実際には,Zテーブル5に各種チャックやグリップを取り付けて利用されるものになっている。ベッド1は,平板状になり,ここでは,支柱8をベッド1と別体にしているので,支柱8をベッド1から外した態様が長手状に矩形板状になっている。ベッド1の一方の面である裏面59には,長手方向に沿って一対の直動案内ユニット40でなる軌道レール2がねじによって固着され,各軌道レール2には2つのスライダ39が軌道レール2に沿って摺動自在に跨架し,スライダ39にXテーブル4が固着されている。Xテーブル4は,図7に示すように,ベッド1よりも一方側に突出した突出部25が形成されたL字状の板状で構成されている。Xテーブル4は,その裏面45に4つのスライダ39がねじ55で固着して直動案内ユニット40によって,ベッド1の長手方向である一方向,即ちX方向に摺動自在になっている。
【0018】
Xテーブル4の突出部25の裏面45には,X方向と直交するZ方向に沿って一対の直動案内ユニット42でなる軌道レール3がねじによって固着され,各軌道レール3には2つのスライダ41が軌道レール3に沿って摺動自在に跨架し,スライダ41にZテーブル5がスライダ固定ねじ35によって固着されている。Zテーブル5は,図3に示すように,ベッド1よりも一方側,図では下側に突出した態様で配設され,具体的には,Xテーブル4の突出部25の裏面45に対向して配設されている。Zテーブル5は,裏面60に4つのスライダ41がねじ35で固着されており,スライダ41はXテーブル4の突出部25に固定された軌道レール3と共働して直動案内ユニット42を構成している。Zテーブル5は,直動案内ユニット42を介してXテーブル4に対してZ方向に摺動自在になっている。このスライド装置は,ベッド1,Xテーブル4及びZテーブル5が鋼製で作製されており,ベッド1の裏面59とXテーブル4の裏面45との互いに対向する面間にXテーブル用のリニアモータ49が配置され,また,Xテーブル4の裏面45とZテーブル5の裏面60との互いに対向する面間にZテーブル用のリニアモータ46が配置されており,このスライド装置では,ベッド1,Xテーブル4及びZテーブル5がヨーク即ち磁路を形成する機能を果たすように構成されている。このスライド装置は,具体的には,リニアモータ49を構成するため,電機子コイル61が配設されたベッド1がコイルヨークを構成し,界磁マグネット50が配設されたXテーブル4がマグネットヨークを構成しており,また,リニアモータ46を構成するため,電機子コイル62が配設されたXテーブル4がコイルヨークを構成し,界磁マグネット47が配設されたZテーブル5がマグネットヨークを構成している。言い換えれば,Xテーブル4は,リニアモータ49に対してはマグネットヨークとして機能し,また,リニアモータ46に対してはコイルヨークとして機能している。
【0019】
ベッド1とXテーブル4との間には,相対移動可能に位置決め駆動するリニアモータ49が内蔵されている。リニアモータ49は,例えば,前掲特開2002−10617号公報に開示されたものと同様のもので構成することができ,扁平に略矩形に巻かれたコアレスコイルでなる複数の電機子コイル61がスライド方向に並設された電機子コイル組立体51,及び電機子コイル組立体51に対向して矩形板状に形成された複数の永久磁石が磁性を交互に異ならせて並設された界磁マグネット50で構成され,界磁マグネット50が生じさせる磁束と電機子コイル61に流れる電流との電磁相互作用によって相対移動可能に位置決め駆動するものになっている。この実施例では,Xテーブル4用の電機子組立体6は,コイルヨークを構成するベッド1と,ベッド1上にスライド方向に並んで平坦な薄板であるコイル基板に接着剤等で固着された扁平な都合6個の電機子コイル61とから構成されている。また,この実施例では,前掲特開2002−10617号公報に開示されたものと同様に,電機子コイル組立体51は,3相でなる3つずつの電機子コイル61を1組とする3相のコアレスコイルから構成されている。リニアモータ49は,図6に示すように,ベッド1とXテーブル4との間で,一対の直動案内ユニット40間に配設され,電機子コイル組立体51がX方向に沿ってベッド1の裏面59に固設され,及び界磁マグネット50がX方向に沿ってXテーブル4の裏面45に固設されている。リニアモータ49は,6個の電機子コイル61と,10極のマグネットでなる界磁マグネット50から構成されている。なお,このスライド装置では,電源装置,及び制御装置であるドライバ装置とコントロール装置は,スライド装置の外部に設けられている。
【0020】
このスライド装置において,ベッド1及びXテーブル4は,鋼製でなる磁性材料から作られており,図示の実施例では,ベッド1はコイルヨークを兼ね,及びXテーブル4はマグネットヨークを兼ねている。ベッド1及びXテーブル4には,ベッド1に対するXテーブル4のスライド方向の位置を検出するエンコーダが具備され,エンコーダは,光学式リニアエンコーダ9で構成され,ベッド1より僅かに突出したXテーブル4の張出部52の裏面にスライド方向であるX方向に沿って貼り付けられたリニアスケール12,及びリニアスケール12に対向してベッド1から張り出した取付ブラケット15に固設されたXテーブル4用のセンサ11を備えており,センサ11にはセンサコード17が接続されている。ベッド1は,図1又は図3に示すように,装置自体の軽量化を図るため,おもて面30に中央部を横切るように伸びている肉ぬすみ23が設けられている。また,ベッド1の肉ぬすみ23には,Xテーブル4用の電機子コイル61をそれぞれベッド1に固定できるように,電機子コイル固定ねじ孔32が形成されている。また,ベッド1のおもて面30の肉ぬすみ23に隣接した両側には,直動案内ユニット40における軌道レール2を取り付けるため,ベッド1を貫通して軌道レール固定ねじ31が挿通している。
【0021】
ベッド1の一端側には,コネクタブロック26が取り付けられ,コネクタブロック26には,電機子コイル組立体51用の電源及び信号コード19が支持されていると共に,Zテーブル5用の電源及び信号コード20及びセンサコード18が支持されている。Xテーブル4の他端側には,コード固定具28が取り付けられ,コード固定具28には,Zテーブル5用の電源及び信号コード20及びセンサコード18が支持されている。ベッド1及びXテーブル4には,可動テーブルであるXテーブル4が所定ストローク距離から逸脱しないようにストッパが設けられている。ストッパは,一方がXテーブル4の端面が突き当ってストップするベッド端部に固設されたコネクタブロック26の端面でなり,他方がXテーブル4の端部から張り出したストッパ部54とストッパ部54と対向するベッド1に固設されたストッパ腕16とでストップするものになっており,コネクタブロック端面の中央とストッパ腕16には,衝突を緩和する弾性体でなるストッパパッド27が取り付けられている。
【0022】
Xテーブル4は,図7に示すように,可動テーブルとして軽量化が図られて,おもて面53の適正な各所に肉ぬすみ24が設けられている。Xテーブル4とZテーブル5との間には相対移動可能に位置決め駆動するリニアモータ46が内蔵されている。Xテーブル4のおもて面53には,Xテーブル4用の直動案内ユニット40におけるスライダ39を固定するため,固定ねじ55が挿通されている。また,Xテーブル4の突出部25には,Zテーブル5用の直動案内ユニット42における軌道レール3を固定するため,固定ねじ56が挿通されている。Xテーブル4は,上部にセンサ11の設置場所に対応して張出部52が伸びている。リニアモータ46は,リニアモータ49と同様に,扁平に略矩形に巻かれたコアレスコイルでなる複数の電機子コイル62がスライド方向に並設された電機子コイル組立体48,及び電機子コイル組立体48に対向して矩形板状に形成された複数の永久磁石が磁性を交互に異ならせて並設された界磁マグネット47で構成され,界磁マグネット47が生じさせる磁束と電機子コイル62に流れる電流との電磁相互作用によって相対移動可能に位置決め駆動するものになっている。この実施例では,Zテーブル5用の電機子組立体7は,コイルヨークを構成するXテーブル4と,Xテーブル4上にスライド方向に並んで平坦な薄板であるコイル基板に接着剤等で固着された扁平な都合3個の電機子コイル62とから構成されている。また,このスライド装置は,電源装置,及び制御装置であるドライバ装置とコントロール装置は,スライド装置の外部にそれぞれ設けられている。
【0023】
リニアモータ46は,3個の電機子コイル62と,5極の永久磁石でなる界磁マグネット47から構成されている。また,リニアモータ49と同様に,電機子コイル組立体48は,3相でなる3つずつの電機子コイル62を1組とする3相のコアレスコイルからなっている。リニアモータ46は,図5に示すように,一対の直動案内ユニット42間に配設され,電機子コイル組立体48がX方向に直交するZ方向に沿ってXテーブル4の突出部25の裏面45に固設され,及び界磁マグネット47が電機子コイル組立体48に対向してZ方向に沿ってZテーブル5の裏面60に固設されている。また,Xテーブル4である突出部25及びZテーブル5は,鋼製でなる磁性材料から作られており,図示の実施例では,Xテーブル4の突出部25はコイルヨークを兼ね,及びZテーブル5はマグネットヨークを兼ねている。従って,このスライド装置では,Xテーブル4が,ベッド1との間に設けたリニアモータ49のマグネットヨークとして機能し,Zテーブル5との間に設けたリニアモータ46のコイルヨークとして機能し,両者に対するヨークをそれぞれ構成するので,スライド装置をコンパクト化に構成できる要因になっている。
【0024】
また,Xテーブル4及びZテーブル6には,Xテーブル4に対するZテーブル5のスライド方向の位置を検出するエンコーダZが具備され,エンコーダZは,光学式リニアエンコーダ10でなり,側面に張り出したZテーブル5の張出部33の裏面にスライド方向であるZ方向に沿って貼り付けられたリニアスケール14,及びリニアスケール14に対向してXテーブル4の突出部25の側面から張り出した張出部43に固設されたセンサ13を備えている。また,可動テーブルであるZテーブル5が所定ストローク距離から逸脱しないようにストッパが設けられている。ストッパは,一方がZテーブル5の一方の端面が突き当ってストップするベッド1の側面でなり,他方が,図6に示すように,Xテーブル4の突出部25の端部に固定ねじ36で取り付けられたL字状金具でなるストッパ具34でなり,ストッパ具34にはストッパパット29が取り付けられ,ストッパパット29にZテーブル5の他方の端面が突き当ってストップするものになっている。ベッド1の側面のストッパ部には,衝突を緩和する弾性体でなるストッパパッド57が取り付けられている。また,Xテーブル4及びZテーブル5には,Zテーブル5の重量バランスをとるバランス用ばね37が取り付けられている。Zテーブル5のおもて面44には,図3に示すように,ワーク取付用ねじ孔21が設けられており,チャックやグリップなどが取り付けられるようになっている。
【0025】
このスライド装置は,上記の構成により,嵩高さである嵩幅B(図6参照)を,2方向でなるスライド装置でありながら従来に無いコンパクト化を実現したものであり,例えば,この実施例の嵩幅Bは,17mmになっている。従って,このスライド装置は,数十台に並べて使用する組立装置にあっても装置自体がコンパクト化できるものになっている。また.このスライド装置は,可能な限りコンパクト化し且つリニアモータ46,49を内蔵したので,近年に要求される,高速性,高加減速,高応答,高精度な位置決めなどを実現できるものになっている。更に,このスライド装置は,最良になる一例を示したものであり,他のリニアモータ構成,アルミ製でなるベッド及びテーブル構成,支柱構成,Xテーブル4の異形状構成などの各種態様は,その場に合わせて応用できるものであり,図示していないが,その他の実施例に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
このリニアモータを内蔵したスライド装置は,クリーンルーム,クリーン環境等のエリアで稼働される半導体製造装置,各種組立装置などの各種装置に組み込んで使用され,例えば,ピックアンドプレース装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明によるスライド装置の一実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の反対側から見たスライド装置を示す斜視図である。
【図3】図1に示す支柱を取り外した状態のスライド装置の正面図である。
【図4】図1のスライド装置の下面図である。
【図5】図4のストッパ具を外した第2テーブル部分の下面図である。
【図6】図3のスライド装置の側面図である。
【図7】図3のスライド装置の背面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ベッド
4 Xテーブル(第1テーブル)
5 Zテーブル(第2テーブル)
25 突出部
46 リニアモータ(第2リニアモータ)
47 界磁マグネット(第2界磁マグネット)
48 電機子コイル組立体(第2電機子コイル組立体)
49 リニアモータ(第1リニアモータ)
50 界磁マグネット(第1界磁マグネット)
51 電機子コイル組立体(第1電機子コイル組立体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状でなるベッド,前記ベッドに対向して一方向に摺動自在に配設された第1テーブル,前記第1テーブルに対向して前記一方向に交差する他方向に摺動自在に配設された第2テーブル,前記ベッドと前記第1テーブルとを前記一方向に相対移動可能に位置決め駆動する第1リニアモータ,及び前記第1テーブルと前記第2テーブルとを前記他方向に相対移動可能に位置決め駆動する第2リニアモータを有するスライド装置において,
前記第2テーブルは,前記ベッドが配設された前記第1テーブルの面と同一の面側に,前記第1テーブルに対向して配設されていることを特徴とするリニアモータを内蔵したスライド装置。
【請求項2】
前記第1テーブルは前記ベッドより突出した突出部を備えており,前記第2テーブルは前記突出部に対向して配設されていることを特徴とする請求項1に記載のスライド装置。
【請求項3】
前記第1テーブルの前記面には前記第1リニアモータを構成する第1界磁マグネット及び第1電機子コイル組立体の何れか一方と前記第2リニアモータを構成する第2電機子コイル組立体及び第2界磁マグネットの何れか一方とが配設され,前記ベッドには前記第1リニアモータの前記一方に対向した他方が配設され,前記第2テーブルには前記第2リニアモータの前記一方に対向した他方が配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスライド装置。
【請求項4】
前記ベッド,前記第1テーブル,及び前記第2テーブルは,鋼製でなり,前記第1テーブルは前記第1リニアモータを構成する前記第1界磁マグネット及び前記第1電機子コイル組立体の何れか一方のヨークと前記第2リニアモータを構成する前記第2電機子コイル組立体及び前記第2界磁マグネットの何れか一方のヨークとして機能し,前記ベッドは前記第1リニアモータの前記一方に対向した他方のヨークとして機能し,前記第2テーブルは前記第2リニアモータの前記一方に対向した他方のヨークとして機能することを特徴とする請求項3に記載のスライド装置。
【請求項5】
前記第1テーブルの移動方向の前記一方向はX方向であり,前記第2テーブルの移動方向の前記他方向はZ方向であり,ピックアンドプレース装置として適用されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のスライド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−238540(P2006−238540A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46537(P2005−46537)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000229335)日本トムソン株式会社 (96)
【Fターム(参考)】