説明

リニアモータ及びこのリニアモータを用いたステージ装置

【課題】 本発明はリニアモータのコイル部を効率良く冷却することを課題とする。
【解決手段】 リニアモータ20のコイル部60は、冷却パネル53と放熱部55とにより構成されたコイル冷却部を有する。コイル部60では、コイル66の側面に取り付けられたヒートパイプ構造とされた冷却パネル53により冷却され、冷却パネル53からの熱を放熱部55により放熱する。これにより、各コイル66の温度上昇が抑制されるため、発熱に伴う各コイル66の抵抗が増大することが抑制され、リニアモータ20の熱による推力の低下を防止できると共に、発熱による影響を受けずに高推力化を図り、安定したトルクを得ることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイルからの発熱を効率良く冷却するよう構成されたリニアモータ及びこのリニアモータを用いたステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造装置や液晶製造装置等に用いられる精密位置決め装置では、基板などの被加工物が載置されたステージを駆動する駆動手段としてリニアモータを用いており、ステージの両端を一対のリニアモータにより並進駆動制御している。
【0003】
この種のリニアモータでは、複数のコイルが一列に配設されたコイル部と、コイル列に対向するように配置された複数の永久磁石が一列に配設されたマグネットヨーク部とから構成されている。そして、コイル部に通電されて電磁力が発生することにより、永久磁石に対して推力(駆動力)が発生する。
【0004】
また、リニアモータの構成としては、マグネットヨーク部が固定側でコイル部が可動側となるムービングコイル方式と、コイル部が固定側でマグネットヨーク部が可動側となるムービングマグネット方式とがある。
【0005】
上記2方式の何れの方式においてもコイルからの発熱による温度上昇が発生すると、コイル自体の抵抗値が上昇するため、駆動電流が低下することになる。リニアモータでは、推力が駆動電流に比例することから、駆動電流が低下すると、推力も低下する。
【0006】
また、コイルから発生した熱が外環境に影響を与える。そのため、リニアモータでは、コイルからの発熱による影響を減らすため、コイル部を冷却する冷却手段を設けている。この冷却手段としては、例えば、コイル部の内部にパネル状のヒートパイプを設ける構成のものがある。この冷却方式では、コイルからの熱をヒートパイプによりコイル部を保持するホルダ側へ伝導させており、効率良くコイルの熱を逃がすことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
さらに、この特許文献1のリニアモータでは、コイル部の両側面に2列のコイルが背中合わせで配設されているため、2列のコイル背面間の隙間にヒートパイプが挿入されており、コンパクトな構成になっている。
【0008】
また、リニアモータにおいては、2列のコイル列と、2列のマグネット列とが対向するように配置されている。そして、各コイル形状が平面的でなく、矩形状に巻回されたコイルの両側を90度曲げたコ字状に形成されている。さらに、コイル列の隣接するコイル同士のコ字状の向きが180度異なるように配置され、各コイルの両側の曲げ部分が移動方向で重なり合うように配置してトルク変動を抑制するように構成されたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−327152号公報
【特許文献2】特開2002−10616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1のリニアモータでは、移動方向に延在する各コイル列において、矩形状に巻回された各コイルが同一平面に所定間隔で配置されるため、各コイル間で電磁力が低下してトルク不足が生じるという問題がある。
【0010】
そのため、上記特許文献1のリニアモータでは、ヒートパイプによりコイルの熱を効率良く放熱部分に逃がすことができる反面、リニアモータの効率低下を解消することが困難である。
【0011】
また、上記特許文献2のリニアモータでは、両側を90度曲げてコ字状に形成されたコイルを隣接するコイル同士で180度異なるように配置され、各コイルの両側の曲げ部分が重なり合うように構成しているため、トルク不足を解消して精密な移動制御を実現できるものの、クランク状に曲がった各コイル列の隙間にパネル状のヒートパイプを挿入することができなかった。
【0012】
そのため、特許文献2のリニアモータでは、コイル部に冷媒を循環させるための冷却流路を設け、その流路に冷媒を供給するためのポンプ等を設けており、さらに冷媒の流出を防止するシール構造も必要になるため、構成が大型化、及び複雑化し、コストアップの要因になっている。
【0013】
そこで、本発明は上記課題を解決したリニアモータ及びこのリニアモータを用いたステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の発明は、複数のコイルが並設されたコイル部と、複数の永久磁石が前記コイル列に対向するように並設されたマグネットヨーク部と、前記コイル部を冷却するコイル冷却部とを有するリニアモータにおいて、前記コイル冷却部は、前記コイル部の熱を外部に逃がすように形成された熱伝導素子を有する冷却パネルと、該冷却パネルに接続され、前記熱伝導素子からの熱を外部に放熱する放熱部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明は、前記冷却パネルが、前記コイル部の熱が前記熱伝導素子に伝導するように前記コイル部の側面に取り付けられたことを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明は、前記放熱部材が、前記冷却パネルの放熱側端部に当接するように前記コイル部の端部に設けられたことを特徴とする。
【0017】
請求項4記載の発明は、前記コイル冷却部が、複数の前記冷却パネルと、複数の放熱部とを有し、前記複数の前記冷却パネルの入熱側が前記コイル部の中央に接するように配置したことを特徴とする。
【0018】
請求項5記載の発明は、前記冷却パネルが、前記熱伝導素子が前記コイル部の側面及び前記コイル部を保持するホルダ部に接するように形成されたことを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の発明は、前記熱伝導素子が、前記冷却パネルの内部空間に形成されたヒートパイプからなることを特徴とする。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6の何れかに記載のリニアモータを駆動手段に用いたことを特徴とするステージ装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、コイル部の熱を外部に逃がすように形成された熱伝導素子を有する冷却パネルと、冷却パネルに接続され、熱伝導素子からの熱を外部に放熱する放熱部と、を備えたため、コンパクトな構成でコイル部の熱を外部に効率良く逃がしてコイル部の温度上昇を抑制することにより、駆動力の低下を防止できると共に、且つ隣接するコイルを互い違いに重ね合わせるように配置した場合でもコイル部を十分に冷却することが可能になる。
【0022】
そのため、ステージ装置においては、トルク不足を解消する構成とするためにコイル形状が複雑である場合でも、コイル部の周囲から効率良く冷却することが可能になり、トルク増大により精密な高速移動制御の実現と、コイル部の冷却による推力低下の防止という2つの課題を同時に解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面と共に本発明の一実施例について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は本発明になるリニアモータの一実施例が適用されたステージ装置を示す平面図である。
図1に示されるように、ステージ装置10は、XYステージであり、コンクリート製の基礎上に固定されたベース14と、ベース14上を移動する可動部16と、可動部16の両端部をY方向に駆動する一対のリニアモータ20とを有する。
【0025】
可動部16は、リニアモータ20により駆動されるスライダ18と、スライダ18間を連結するように移動方向と直交するX方向に横架されたYスライダ24と、Yスライダ24上をX方向に移動するXスライダ26とを有する。
【0026】
スライダ18は、Y方向に延在するガイド部30のガイドレール50にガイドされてY方向に摺動可能に支持されており、リニアモータ20のコイル部60が取り付けられている。
【0027】
可動部16は、左右両端に設けられたスライダ18がガイド部30によりガイドされながらリニアモータ20の駆動力によりY方向に駆動される。よって、可動部16は、両端に配置されたスライダ18がリニアモータ20の駆動力により同時に駆動されることにより、左右のスライダ18が並進する。
【0028】
ここで、リニアモータ20及びガイド部30の構成について図2及び図3を参照して説明する。
図2及び図3に示されるように、リニアモータ20は、コイル部60と、モータ支持部34の上端に支持されたコ字状からなるヨーク44の内側面に固着された永久磁石46を等間隔に配列した磁石ユニット56とから構成されている。コイル部60のコイル片66(図9参照)は、永久磁石46に対向するように配置されており、駆動電圧の印加により永久磁石46に対するY方向の推力(駆動力)を発生させる。
【0029】
従って、リニアモータ20は、永久磁石46に対するローレンツ力をコイル部60から発生させることでY方向の駆動力をスライダ18に付与するように構成されており、コイル部60のコイル片66に印加される電圧を制御されることによりスライダ18をY方向に一定速度で走行させるように駆動力を発生させることができる。
【0030】
可動部16は、Y方向に延在するガイドレール50と、ガイドレール50の4辺を囲むように形成されたスライダ18と、スライダ18とガイドレール50の上面50-1との間に圧縮空気を噴射してスライダ18を上方にフローティング状態に支持する第1の静圧空気軸受52と、スライダ18とガイドレール50の右側面50-2との間に圧縮空気を噴射して可動部16を側方にフローティング状態に支持する第2の静圧空気軸受54とを有する。
【0031】
スライダ18は、ガイドレール50の各面に微小な隙間を介して対向するガイド面を有する。従って、上記静圧空気軸受54から上記隙間に噴射された圧縮空気は、スライダ18のガイド面を所定圧力で押圧する。これにより、スライダ18は、ガイドレール50に対して微小な隙間を介してフローティング支持されているので、殆ど摩擦の無い非接触状態でY方向に移動することが可能である。
【0032】
スライダ18の移動位置を検出するリニアスケール22は、ガイドレール50の右側面50-2にY方向に延在形成して設けられた被位置検出板22aと、被位置検出板22aのスリット数を検出するセンサ22bとから構成されている。センサ22bは、スライダ18に取り付けられているため、移動量を所定間隔で一列に配置されたスリット数に応じたパルス数を検出信号として出力する。
【0033】
図4はリニアモータ20の構成を示す縦断面図である。図5はリニアモータ20の構成を示す斜視図である。
【0034】
図4及び図5に示されるように、コイル部60は、2列のコイル66をモールド63により一体化したものであり、進行方向(Y方向)に延在形成されている。また、コイル部60は、左右側面に冷却パネル53が取り付けられ、さらに上部を保持するコイルホルダ64が取り付けられる。尚、コイル66及び冷却パネル53の表面は、モールド63に覆われているため、冷却パネル53は外観上隠れて見えない。
【0035】
また、磁石ユニット56は、ベースヨーク58、サイドヨーク59をU字状に組み合わせた構成であり、このサイドヨーク59の内壁に上記磁石46が取り付けられている。従って、ベースヨーク58の両側に起立するサイドヨーク59の内側に固着された磁石46は、モールド63内部に収納されたコイル66の両側に対向するように配置される。また、冷却パネル53は、薄い板状に形成されているため、コイル部60の移動を妨げないようにコイル部60の両側面に取り付けられている。
【0036】
ここで、リニアモータ20のコイル部60の構成について説明する。
【0037】
図6はコイル部60の外観を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。図7はコイル部60の外観を示す斜視図である。
【0038】
図6(A)(B)及び図7に示されるように、コイル部60は、モールド63の内側に冷却パネル53(図6(B)、図7中、破線で示す)が取り付けられ、コイル部60の端部には放熱部55が取り付けられている。これら冷却パネル53と放熱部55とは、コイル冷却部57を構成している。冷却パネル53は、コイル部60の左右側面に配置され、モールド63の内部に収納されている。
【0039】
冷却パネル53は、コイル66に対する面積をできるだけ大きくとることができるので、その分冷却能力を高めることが可能になる。また、冷却パネル53は、コイル66の発熱量に応じてコイル部60の片側のみに設けても良いし、あるいはコイル部60の両側に設ける構成としても良い。
【0040】
冷却パネル53は、薄板状に形成された平面型ヒートパイプからなり、内部空間にはヒートパイプの原理を用いた熱伝導素子が設けられており、冷媒を循環させるための管路や熱交換器などを設ける必要がないので、コンパクトな構成になっている。冷却パネル53は、図6(B)に示されるように、右端側が入熱側53aで左端側が放熱側53bである。そのため、コイル66の熱は、冷却パネル53の右端側から左端側に運ばれるため、コイル66内部の熱は右端側に移動して冷却パネル53の入熱側53aに伝導される。
【0041】
また、コイル部60の一端部には、冷却パネル53の放熱側に接する放熱部55が取り付けられている。この放熱部55は、コイル部60の端部に固着された第1のヒートシンク55aと、第1のヒートシンク55aの端面にねじ等の締結部材により取り外し可能に固定された第2のヒートシンク55bとからなる。第1、第2のヒートシンク55a,55bは、コイル部60の端部の形状に応じたT字状に形成されており、コイル部60の移動を妨げない形状に構成されている。また、ヒートシンク55a,55bは、放熱効果を得るため、熱伝導率が高く、且つ加工性の良い金属(例えば、銅やアルミニウム合金など)により形成されている。また、ヒートシンク55a,55bは、ブロック状でも良いし、あるいは放熱面積を拡大するため、複数の放熱フィンを設ける構成としても良い。
【0042】
図8は冷却パネル53の構成を示す図であり、(A)は正面図、(B)はA−A線に沿う縦断面図である。
図8(A)(B)に示されるように、冷却パネル53の内部は、真空に保たれており、例えば、純水などの液体が注入されている。この液体は、入熱側53aの熱により蒸気となって放熱側53bへ移動することで入熱側53aの気化熱を奪って放熱側53bに運ぶ。そして、放熱側53bがヒートシンク55a,55bによって冷却されるため、放熱側53bで蒸気が液体に戻されて熱を放熱する。そして、放熱側53bで凝集された液体は、毛細管現象により入熱側53aへ戻る。
【0043】
冷却パネル53は、熱伝導率の高い金属(例えば、銅)により平板状に形成されており、その内部空間は、一対の隔壁53cにより3つの通路に画成されている。これらの通路としては、入熱側53aから放熱側53bへ蒸気が移動するための一対の蒸気通路53dと、放熱側53bから入熱側53aへ液体が移動するための還流通路53eとが形成されている。一対の蒸気通路53dの間に還流通路53eが形成されており、夫々が水平方向に延在形成されている。また、還流通路53eと蒸気通路53dとの両端は、互いに連通されており、蒸気または液体が流通することができる。また、還流通路53eは、銅線を束ねた極細線ウィック(図示せず)が挿入されているため、液体の還流速度が毛細管現象により加速されるように構成されている。
【0044】
このように、冷却パネル53は、ヒートパイプの原理によってコイル66で生じた熱を効率良くヒートシンク55a,55bに逃がして冷却することができるので、コイル66の温度上昇を抑制することが可能になる。
【0045】
図9はコイル66の構成を示す斜視図である。図10は2列のコイルを組み合わせた状態を示す斜視図である。
図9及び図10に示されるように、コイル66は、両側が90度曲げられたコ字状に形成され、且つ進行方向(X方向)に並設された2つのコイル列60A,60Bの各コイル66が夫々180度異なる向きで対向配置されおり、第1コイル列60Aのコイル66と第2コイル列60Bのコイル66とが交互に嵌合するように組み合わされている。コイル66の直線部66Aには、前述した冷却パネル53が取り付けられ、側面から冷却される。
【0046】
コイル66は、銅線を矩形状に巻回し、且つ両側を90度曲げたいわゆる鞍型構造になっており、より具体的には、直線部66Aと、この直線部66Aの両端に屈曲形成される一対の屈曲部66Bと、両側の直線部66A間に形成された凹部66Cとを備えるように形成される。従って、図10に示されるように、第1コイル列60Aのコイル片66の直線部66Aが第2コイル列60Bのコイル66の凹部66Cに嵌合され、第2コイル列60Bのコイル66の直線部66Aが第1コイル列60Aのコイル66の凹部66Cに嵌合され、第1コイル列60Aのコイル66の直線部66Aと第2コイル列60Bのコイル66の直線部66Aとが重なり合うように交互に組み合わされている。
【0047】
このように、コイル部60では、鞍型構造のコイル66を180度の向きから立体的に組み合わせるため、前述した特許文献1のように平面状のコイルを同一平面に並設するよりも大きい駆動力が得られるが、コイル列間にヒートパイプを挿入するスペースが無い。
【0048】
さらに、このままの状態では、各コイル66が互いに連結されておらず分解してしまうので、各コイル66は、冷却パネル53と共に樹脂モールド53の内部のコイル収納部62に収納される。
【0049】
コイル部60では、側面に取り付けられた冷却パネル53と、端部に取り付けられた放熱部55とにより各コイル66が効率良く冷却されて温度上昇が抑制されるため、コンパクトな構成で発熱に伴う各コイル66の抵抗が増大することが抑制され、リニアモータ20Bの熱による推力の低下を防止できると共に、発熱による影響を受けずに高推力化を図り、安定したトルクを得ることが可能になる。
【0050】
このように、冷却パネル53は、コイル部60の温度を直接奪って冷却するができるので、高トルクを発生させて可動ステージ18を高速で移動させるような場合でも、コイル66の発熱に対する十分な冷却性能を得ることができる。
【0051】
よって、リニアモータ20Bでは、トルク不足を解消する構成とするためにコイル形状が複雑である場合でも、コイル66の周囲から効率良く冷却することが可能になり、トルク増大により精密な高速移動制御の実現と、コイル66の冷却による推力低下の防止という2つの課題を同時に解決することができる。
【0052】
また、コイル66の側面に冷却パネル53を設けることにより、コイル66からの放射(輻射)を防ぐことができ、周囲への熱影響を低減できる。
【実施例2】
【0053】
図11は実施例2の側面図である。尚、図11において、前述した実施例1と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
図11に示されるように、実施例2のコイル部60は、側面に一対の冷却パネル53が左右対称に取り付けられている。従って、コイル部60の両側には、合計4枚の冷却パネル53が取り付けられている。
【0054】
4枚の各冷却パネル53は、入熱側53aがコイル部60側面の中央に位置するように取り付けられており、放熱側53bがコイル部60の端部に位置するように取り付けられている。そして、コイル部60の両端には、各冷却パネル53の放熱側53bに接続される放熱部55が取り付けられている。
【0055】
このように、コイル部60の両側には、4枚の冷却パネル53が設けられているため、コイル部60の最も温度上昇の大きい中央部を重点的に冷却することが可能になり、コイル66の温度上昇を効果的に抑制することにより、前述した実施例1のものよりも冷却効果を高めることができる。このように、複数(本実施例では、4枚)の冷却パネル53は、コイル66の印加電圧による発熱をコイル部60の中央部分から効率良く冷却することができるので、高トルクを発生させてスライダ18を高速で移動させるような場合でも、十分な冷却性能を得ることができる。
【実施例3】
【0056】
図12は実施例3の縦断面図である。尚、図12において、前述した実施例1と同一部分には同一符号を付してその説明は省略する。
図12に示されるように、実施例3のコイル部60は、冷却パネル70がコイル66の直線部66A及び上部の屈曲部66Bを冷却するように取り付けられている。冷却パネル70は、下部が入熱側70aで、上部が放熱側70bである。従って、冷却パネル70では、蒸気通路及び還流通路が上下方向に延在形成されており、内部通路に注入された液体は、下部の入熱側70aの熱により蒸気となって上部の放熱側70bへ移動することで入熱側70aの気化熱を奪うことになる。そして、上部の放熱側70bは、コイルホルダ64に接続されているため、コイルホルダ64がヒートシンクとして機能して冷却される。このため、放熱側70bで蒸気が液体に戻されて熱を放熱する。そして、放熱側70bで凝集された液体は、毛細管現象及び重力により入熱側70aに戻る。
【0057】
このように実施例3では、実施例1,2のようにヒートシンク55を設ける必要が無く部品手数を削減することができ、且つコイル部60の端部からヒートシンク55が突出しない構成とすることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
尚、上記実施例では、冷却パネル53,70がヒートパイプからなる場合について説明したが、これに限らず、パネル状の冷却手段であれば、ヒートパイプ以外の熱伝導素子を有するものでも良いのは勿論である。
【0059】
また、上記実施例では、ムービンコイル型のリニアモータについて説明したが、本発明は、ムービングマグネット型のリニアモータにも適用できるのは言うまでもない。
【0060】
また、上記実施例では、コアレス型のコイル部について説明したが、これに限らず、コア付型を用いた構成にも本発明を適用できるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明になるリニアモータの一実施例が適用されたステージ装置を示す平面図である。
【図2】リニアモータ20及びガイド部30の構成を拡大して示す正面図である。
【図3】リニアモータ20及びガイド部30の構成を拡大して示す平面図である。
【図4】リニアモータ20の構成を示す縦断面図である。
【図5】リニアモータ20の構成を示す斜視図である。
【図6】コイル部60の外観を示す図であり、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図7】コイル部60の外観を示す斜視図である。
【図8】冷却パネル53の構成を示す図であり、(A)は正面図、(B)はA−A線に沿う縦断面図である。
【図9】コイル66の構成を示す斜視図である。
【図10】2列のコイルを組み合わせた状態を示す斜視図である。
【図11】リニアモータの実施例2の側面図である。
【図12】リニアモータの実施例3の側面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 ステージ装置
14 ベース
16 可動部
18 スライダ
20 リニアモータ
22 リニアスケール
24 Yスライダ
26 Xスライダ
30 ガイド部
34 モータ支持部
44 ヨーク
46 永久磁石
50 ガイドレール
52,54 静圧空気軸受
53,70 冷却パネル
53a 入熱側
53b 放熱側
53d 蒸気通路
53e 還流通路
55 放熱部
55a 第1のヒートシンク
55b 第2のヒートシンク
56 磁石ユニット
57 コイル冷却部
58 ベースヨーク
59 サイドヨーク
60 コイル部
63 モールド
64 コイルホルダ
66 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイルが並設されたコイル部と、複数の永久磁石が前記コイル列に対向するように並設されたマグネットヨーク部と、前記コイル部を冷却するコイル冷却部とを有するリニアモータにおいて、
前記コイル冷却部は、
前記コイル部の熱を外部に逃がすように形成された熱伝導素子を有する冷却パネルと、
該冷却パネルに接続され、前記熱伝導素子からの熱を外部に放熱する放熱部と、
を備えたことを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記冷却パネルは、前記コイル部の熱が前記熱伝導素子に伝導するように前記コイル部の側面に取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記放熱部材は、前記冷却パネルの放熱側端部に当接するように前記コイル部の端部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記コイル冷却部は、複数の前記冷却パネルと、複数の放熱部とを有し、前記複数の前記冷却パネルの入熱側が前記コイル部の中央に接するように配置したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記冷却パネルは、前記熱伝導素子が前記コイル部の側面及び前記コイル部を保持するホルダ部に接するように形成されたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のリニアモータ。
【請求項6】
前記熱伝導素子は、前記冷却パネルの内部空間に形成されたヒートパイプからなることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のリニアモータ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載のリニアモータを駆動手段に用いたことを特徴とするステージ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−33910(P2006−33910A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204744(P2004−204744)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】