説明

リパーゼ阻害活性および抗酸化性を有する組成物

【課題】脂肪過多に起因する肥満、脂漏性の皮膚障害、生体内の過酸化障害を軽減する組成物を提供する。
【解決手段】ベニバナより抽出された黄ないし赤色素およびこれら色素を包接するシクロデキストリンからなり、さらに、抗酸化性、抗変異原生性を有する天然物抽出物、を含む少なくとも1種類以上の天然物素材の抽出物を有効成分とした脂肪過多防止、更にその成分が抗酸化活性を保持する脂肪過多抑制食品、脂肪過多抑制食品添加物及び化粧品、抗肥満剤、リパーゼ阻害剤、抗炎症剤、抗酸化剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベニバナ抽出色素のもつリパーゼ阻害活性を有効に活用する脂肪過多防止、更に抗酸化活性を保持する脂肪過多抑制食品、脂肪過多抑制食品添加物及び化粧品、抗肥満剤、リパーゼ阻害剤、抗炎症剤、抗酸化剤等に利用できる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食生活の変化により、動物性の脂肪摂取の多くなる機会が増加し、また、これに伴う高脂血症、生活習慣病のリスクが増えている。高脂血症その他の動脈硬化を伴う疾病、肝臓機能障害等においては、直接その危険因子を取り除く方法や、治療する薬剤は知られているが、薬物療法で下がるコレステロール値は、一般に20%程度であり、長く薬物療法を行っていると薬物の効き方が減ってくる傾向が懸念されている。また、年齢に伴ってさらにコレステロール値が上昇することも考えられ、肥満による影響も無視できないものがある。
近年、脂肪の摂取過多の予防として上記のような薬剤によらない消化酵素に対する阻害剤が注目されている。そして、安全性の観点から種々の天然物由来の成分で、強い脂質の過剰蓄積を阻害する天然成分が求められている。
脂肪は食品成分の中で最も高カロリーであり、脂質の蓄積量の提言が肥満の予防に効果的と考えられている。リパーゼは摂取された脂質の分解に関与する消化酵素であり中性脂肪 、すなわちトリグリセリドの加水分解を促進する。脂質の過剰摂取は、肥満や高脂血症を誘発する。そのため、リパーゼを阻害または抑制し、体内への脂質の蓄積を抑えることは、肥満の抑制および予防に大きく寄与すると考えられている。
これらの改善のために食生活など生活習慣の改善により予防する方法は、一部の健康食品等にて用いられているものの広く知られている状況ではない。
健康食品素材として市販されているEPA、DHAなどは血液中の中性脂肪、LDLコレステロールの低下作用やHDLコレステロール増加作用があるといわれている。
しかしながら、これらは、高カロリーの油脂との混合状態での摂取になりカロリー過多の問題や油脂の酸化状態の危険性も混在している。
紅麹菌から得られるモナコリンも中性脂肪、コレステロール低下作用があるが、純度をあげるための精製方法が難しい。
一方、植物のアントシアニンもコレステロール低下、HDLコレステロール増加作用があるといわれているが、純度をあげるための精製方法が難しい上に多量に摂取しなければならないという欠点がある。また、高血圧症や肝機能障害を改善する食品はキノコ類やウコンなどで見受けられるが成分の抽出および精製が困難である。
【0003】
このような天然物の抽出成分を用いる方法としては、フラボノイド(特許文献1)、カワラケツメイ等からのタンニン類(特許文献2)、リパーゼ阻害物質として、ヒノチオール、オレアノール酸、ウルソン酸、フラボノイドが、また、POV上昇抑制として、フスマ、胚芽、穀粉が併用された化粧品(特許文献3)、リパーゼ阻害およびα―アミラーゼ阻害として、ブドウ種子、カキ葉、プーアル茶、オトギリソウ、リンゴ、タラ、ウラジロガシ、バナバ葉、アカメガシワ、サンシュユ、訶子、トチュウ葉の抽出物等が例示(特許文献4)、Garcinic cambogiaからのベンゾフェノン誘導体(特許文献5)がある。これらには、ベニバナの効能についての記載はない。
また、ベニバナのカルタミンを用いるもの(特許文献6および7)、イタドリ、インゲンマメ、オオゴチョウ、オオフトモモ、ガジュマル、カンキチク、キンミズヒキ、ゲットウ、サキシマスオウノキ、サンシキアカリファ、セイロンベンケイ、タカサゴギク、ナンテン、ベニバナ 、モクセンナ、モクマオウ、モモタマナ、リュウキュウハギおよびリュウキュウマツからなる群から選ばれた少なくとも1種類以上の生物素材の抽出物を有効成分とすることを特徴とするリパーゼ阻害活性且つ抗酸化性を有する抗肥満剤(特許文献8)が示されている。
しかしながら、これらの文献には、ベニバナの効能が示されているもののベニバナ抽出物は、組成物での退色が非常に生じ易いものであり、安定してベニバナ抽出物をえる組成にはなっていない。したがって、十分なベニバナのもつ特性を長期にわたり維持することは困難であった。
【特許文献1】特開平07−061927号公報
【特許文献2】特開平08−259557号公報
【特許文献3】特開平9-118611号公報
【特許文献4】特開平09−227398号公報
【特許文献5】特開2000−044468号公報
【特許文献6】特開2003−040780号公報
【特許文献7】特開2003−125733号公報
【特許文献8】特開2005−060334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、生体内に食事により取り込まれた過剰な外因性脂質の消化吸収に関わる膵リパーゼに対して阻害作用を示し、この膵リパーゼ阻害作用により体内への脂質の蓄積を抑え、その結果肥満の抑制および予防を目的とする組成物およびその用途を提供するものである。また、脂質過多に起因するような種々の皮膚障害にも対応するものである。
また、ベニバナの有するリパーゼ阻害作用を安定に保持し、その効能を有効に且つ、さらに、抗酸化性等の役割もあわせて発揮する組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、ベニバナ抽出色素およびシクロデキストリンを1:99〜99:1の重量比にて混合分散して色素の包接体としたリパーゼ阻害活性および抗酸化性を有する組成物に関する。
【0006】
また、本発明は、ベニバナ抽出色素が、ベニバナを1〜15℃の水で抽出したものである上記組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、ベニバナ抽出色素が、ベニバナ中のカルタミンを主成分とするものである上記組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、カルタミンが、ベニバナの花の水抽出液を発酵若しくは酵素処理後、水にて黄色素を除去することにより得られたものである上記組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、シクロデキストリンが、α、β、γ及び水不溶性変性タイプの中の少なくとも2種を用いたものである上記組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、更に、ベニバナ抽出色素に、ベニバナ以外の天然物素材からの抽出物を加えた後、シクロデキストリンにて包接した上記組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、ベニバナ以外の天然物素材からの抽出物は、天然物素材を、水、無水或いは含水アルコールで抽出したものである上記組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、ベニバナ以外の天然物素材からの抽出物が、リジン、クエルセチン、ササ抽出物、竹抽出物、リオフラボン類、きのこ抽出物、蓬抽出物、緑茶ポリフェノール類、桑の実・葉抽出物、イバラノリ抽出物、ブドウ抽出物からの1種以上である上記組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、上記組成物を含んでなるリパーゼ阻害活性および抗酸化性を有する脂質吸収阻害剤に関する。
【0014】
また、本発明は、上記組成物を含んでなるリパーゼ阻害活性および抗酸化性を有する化粧品に関する。
【0015】
また、本発明は、上記組成物を含んでなる経口摂取材料に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、膵リパーゼは生体内での脂質の消化吸収に関与するため、本発明のベニバナ抽出色素と、シクロデキストリン、必要に応じて天然物素材からの抽出物を併用する組成物を用いて膵リパーゼを阻害することにより、体内での脂質の蓄積が抑えられ、高脂血症や肥満を抑制および予防することができる組成物を提供できた。
【0017】
さらに本発明のリパーゼ阻害剤は肥満の治療・予防のほかPhycomyces nitensリパーゼに起因する、ニキビ、皮膚炎の治療・予防に有用であり。安全性の高い化粧料組成物を提供できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明で使用するベニバナ(紅花、Safflower:Carthamus tinctorius LINNE)は、エジプト原産のキク科の一年生または越年生で、草丈は0.4〜1.3mに育ち、上部で枝分かれし初夏になると各茎頂に黄橙色のアザミに似た花をつけるものである。この黄橙色は、日がたつと赤色に変化する。
本発明においてベニバナ抽出色素は、ベニバナを水にて溶解してくる成分をそのまま、あるいは、濃縮して用いてもよいが、このましくは、赤色の成分を用いる。この成分は、カルタミンであり、リパーゼ阻害剤としての役割を果たす。
赤色のカルタミンを抽出する方法としては、ベニバナより直接、または、醗酵ないし酵素処理し、その後、水にて黄色素を除去した後、室温時弱アルカリ性水溶液で抽出し、中和してえられる。
【0019】
ベニバナから直接カルタミンを抽出するには、例えば、乾燥ベニバナ花弁を水にて、一時間還流し、一夜放置後、脱水する。この操作を二回繰り返すことによりベニバナ黄色色素を取り除く。残渣を1.0%炭酸ナトリウム溶液にて、一時間還流して抽出操作を行う。ついで、抽出液に粉末セルロースを添加し、クエン酸等の有機酸にてpHを5.0〜6.0に調整する。加水およびデカンテーションによりセルロースに吸着した粗カルタミンをスクリューデカンターにより脱水し、再度1.0%炭酸ナトリウム溶液にてカルタミンを抽出し、抽出液をろ過する。ろ液にクエン酸等の有機酸を添加し、pHを5.0〜6.0に調整し、沈殿させる。2mmol/LのMcllvaine buffer(pH5.0)にてデカンテーションを繰り返し、沈殿物を遠心分離により回収し、乾燥・殺菌・粉砕後、カルタミンを得る。
発酵処理としては、古くからの方法として、ベニバナを摘んで数回水洗し、黄水を取り去り、軽く搗いて餅状にする方法がある。その餅状の上下を、ぬれむしろではさみ、水分を与えて一昼夜から2昼夜置き発酵させる。今日では過発酵をさけるようにして、黄水を取り去り、挽肉器のような機械でこれを練ると短時間のうちにカルタミンに変化させるもので、この方法は過発酵にならず品質も一定する利点がある。
酵素処理とは、グルコースオキシダーゼ100,000unit/gを約10ppm、パーオキシダーゼ150,000unit/gを約100ppm使用することでベニバナ黄色素のうちsaffloweryellowBをカルタミンに変換する。酵素の起源としては植物、動物、微生物の何れでも良い。
【0020】
本発明においては、ベニバナ抽出色素とともにシクロデキストリンを用いる。シクロデキストリンは、馬鈴薯澱粉やとうもろこし澱粉にCGTaseを作用させて得られる環状のオリゴ糖であり、グルコース単位が、6のα、7のβ、8のγ等がある。これらは、グルコース単位により水溶性が変化するため、水溶性を利用する際は、γタイプを、水溶性の低さを利用するときは、βタイプというように使い分ける。
また、2種以上のタイプを混合して調整しても用いられる。
シクロデキストリンを用いる方法としては、例えば、シクロデキストリンの20〜50重量%の懸濁液を調整し、ベニバナ抽出色素液を添加、ホモジナイズする方法がある。このホモジナイズは、3000〜10000rpmの回転にて10分から数時間のホモジナイズをおこなう。その後、必要に応じて、乳化液を噴霧乾燥、低温低圧乾燥、凍結乾燥等で包接粉体とする方法がある。
また、シクロデキストリンの飽和水溶液を作製後、ベニバナ抽出色素を混合し、攪拌混合を続け包接物として沈殿させる方法もある。
また、シクロデキストリンをペースト状とし、これにベニバナ抽出色素を加えて混練機にてよく練り、その後、混練物を乾燥して取り出す方法もある。
さらには、シクロデキストリンとベニバナ抽出色素の乾燥物とをミルにて乾式粉砕する方法も用いることが出来る。
【0021】
このようにしてベニバナ抽出色素の包接化をすることにより、ベニバナ抽出色素単独での性質から機能性の向上が発現する。
機能の向上としては、光、熱、酸化、加水分解に対しての安定性の向上。ベニバナ抽出色素に含まれる有効性成分の徐放性の向上。ベニバナ抽出色素の臭い、味の改善。溶解性、不溶解性の調整。粉末としての形態維持。吸湿性、潮解性の防止。液体品での液粘度の調整等の機能向上が果たせる。また、シキロデキストリンそのものにも血糖値上昇抑制、アレルギー症改善、アトピー性皮膚炎の抑制作用が期待される物質であり、このシクロデキストリン自体は、それ自身の持つ包接性から過剰の脂成分の取り込みもおこなうものであり、包接性を残存した部分においての過剰成分の取り込み性もまた、本発明におけるシクロデキストリンの機能である。
【0022】
本発明においては、シクロデキストリンは、水溶性に限らず、官能基を一部変性した非水溶性のシクロデキストリンも用いることが出来る。このような例としては、メチルシクロデキストリン、ヒドロキシメチルシクロデキストリンがある。また、官能基を有するデキストリンとしては、複分岐のシクロデキストリンがあり、二分岐のグルコシルーシクロデキストリンは、抗菌活性にすぐれた組成物となる。
さらには、α、β、γと非水溶性のシクロデキストリンとを混合し適度な溶解性のバランスを構成させ、リパーゼ阻害の調整および組成物自体の機能の発現程度の安定性、効能の強弱等を設計できる。
【0023】
本発明においてはベニバナ抽出色素とともに、ベニバナ以外の天然物素材からの抽出物も合わせて用いることができる。このような材料としては、例えば、市販されている、リジン、クエルセチン、ササ抽出物、竹抽出物、リオフラボン類、きのこ抽出物、蓬抽出物、緑茶ポリフェノール類、桑の実・葉抽出物、イバラノリ抽出物、ブドウ抽出物等からの1種以上が用いられる。これらは、ベニバナとシクロデキストリンの効果に、さらなる効果の付与が期待される。また、これらは、ベニバナとシクロデキストリンの効用を相殺しない範囲で適宜用いることができる。
これらは、安全性の高い天然物由来の抗酸化剤、抗変異原生材等として食品及び化粧品等に効能を有するもので、組成物のリパーゼ阻害作用と相俟った作用が期待できる。
【0024】
本発明の組成物の形態は、錠剤、丸剤、粉剤、シロップ剤、乳濁剤、液剤、懸濁剤、カプセル剤などの形態、軟膏、貼付剤などの形態、注射剤、スプレー剤などの形態を挙げることができる。
本発明の組成物は、固形、乳液、懸濁液の状態で、脂肪過多抑制食品、脂肪過多抑制食品添加物、ペット用飼料などの形態の、経口摂取材料として摂取できる。また、固形、乳液、懸濁液の状態で、皮膚を通じて摂取する化粧品として使用できる。これらは、公知の食品や化粧品ベースに共存する形態で使用されてもよい。

【実施例】
【0025】
参考例1(ベニバナ抽出物 カルタミンの調整)
乾燥ベニバナ花弁90kgを900Lの水にて、一時間還流し、一夜放置後、脱水した。この操作を二回繰り返すことによりベニバナ黄色色素を取り除いた。残渣を1.0%炭酸ナトリウム溶液900Lにて、一時間還流して抽出操作を行った。抽出液に粉末セルロースを25kg添加し、クエン酸15kgにてpHを5.0〜6.0に調整した。加水およびデカンテーションを三回繰り返した。セルロースに吸着した粗カルタミンをスクリューデカンターにより脱水し、再度1.0%炭酸ナトリウム溶液900Lにてカルタミンを抽出した。抽出液をろ過し、ろ液にクエン酸を添加し、pHを5.0〜6.0に調整した。2mmol/LのMcllvainebuffer(pH5.0)にてデカンテーションを三回繰り返した。沈殿物を遠心分離により回収し、Sephadex LH−20カラムクロマトグラフィーを2回繰り返し精製した。こうして得られたカルタミンは濃赤色〜濃緑色で、含水エタノール、水に一部溶解するが、油脂には溶解しなかった。純度はHPLCにて確認し、99%であった。
【0026】
<リパーゼ阻害率の測定>
ベニバナ赤色素のリパーゼ阻害率を測定した。リパーゼ阻害率は、リパーゼ(和光純薬工業株式会社製リパーゼPN:from Phycomyces nitens)および大日本製薬製の「リパーゼキットS」を用いて測定した。測定方法は、製造者の説明書に従った。
【0027】
測定方法を簡略に述べると、以下の通りである。
遮光した試験管に発光液0.5mLを入れ、20μg/mlのリパーゼ25μLを加え、更にカルタミン溶液5、10、20、30μLをそれぞれ加え、30℃5分反応させた。反応後基質液50μLをそれぞれに加え混和し、30℃30分反応後、反応停止液1mLを加えた。その後、吸光度(波長412nm,BECKMAN)を測定した。
【0028】
得られたリパーゼ活性値より検量線を求め、阻害率を以下の式から求めた。
(リパーゼ20μg/ml―残余リパーゼ濃度)/リパーゼ20μg/ml×100=阻害率)
【0029】
ベニバナ赤色素のリパーゼ阻害率を、表1に示す。リパーゼ活性阻害率とカルタミン濃度の関係を図にプロットし、リパーゼ活性阻害率50%(IC50)を阻害率から求めた結果、カルタミン17μgであった。
【0030】
カルタミンによるリパーゼ(20μg/mL)活性阻害効果
【表1】

【0031】
以上の結果より、ベニバナ赤色素が、リパーゼ阻害効果を有することが認められた。
<中性脂肪抑制効果>
高コレステロールラット(日本チャルス・リバー株式会社:VAFラット(SPF)(ZUC)-fa/fa 8週令 雄)を用いて、ベニバナ赤色素(低濃度品:固形重量0.1パーセント水懸濁液、高濃度品:固形重量1パーセント水懸濁液)を28日間ラット用ゾンデを用いて連続経口投与し、血清中の脂質系の変化を検討した。エーテル麻酔下で腹大動脈から採決し、血清を得、総コレステロール、HDLコレステロール、中世脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸、血糖を酵素法にて測定した。採決後、各臓器を肉眼的に観察し、肝臓を摘出し重量を測定した。
被験物質投与後の生化学的検査の総コレステロール、HDLコレステロール、中世脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸、血糖の結果および肝臓重量を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
この結果よりベニバナ色素の中性脂肪の低下効果がみとめられた。
(抗酸化性の測定)
抗酸化性は1.5mMのDPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)をエタノールに溶解し、蒸留水で2倍に希釈して0.75mM DPPH溶液と調製した溶液50μlを、適度な希釈倍率とした被検液100μlに添加し、混合して20分後の515nmの吸光度を測定した。被検液の代わりに50%エタノールを添加した場合の吸光度を100%として、吸光度50%に相当する希釈倍率を求めIC50とする。ベニバナ色素は、50の値で抗酸化を有していた。緑茶ポリフェノールは、100以上の値をしめした。
【0034】
実施例1〜7および比較例1〜2
下記表3の化粧用乳液を作製し、リパーゼ阻害効果のあるベニバナ抽出物の安定性を確認した。安定性は、調整直後に対し、40℃2週間後の吸光度が、8割以下の低下があった場合を、安定性が低下したと判定した。
【0035】
【表3】

【0036】
実施例1〜7は、比較例1,2に比べ、ベニバナ抽出物の安定性が向上した。
また、実施例1,3〜7は、抗酸化作用も併せ持つ乳液となった。
ベニバナ抽出物の定量は、可視光部分での吸光度測定法により測定した。
【0037】
実施例8
カルタミン結晶をハンマーミルで微粉末とし、α―シクロデキストリン、β―シクロデキストリンおよびソルビトールとの1:1:1混合物と混合し、25%カルタミン 倍散末とする。25%カルタミン 倍散末、ソルビトール、クエン酸、香料、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ショ糖脂肪酸エステル、二酸化ケイ素、ピーチ果汁をV型混合機で混合した後、直接粉末圧縮法により錠剤を調整し、1錠150mgに打錠し、この錠剤1錠中にカルタミン 2mgを含有した補助食品用の錠剤とした。この錠剤は、カルタミンの含有量を製造時の状態で安定して維持し、カルタミンのもつ効能を低下させなかった。
また、シクロデキストリンとの混合より、ベニバナ抽出物およびシクロデキストリン双方のもつ機能性が向上し、リパーゼ阻害効果の向上が発揮された。
【0038】
比較例3
実施例8でシクロデキストリンを使用しないときは、錠剤化の調整におけるベニバナ抽出物の安定性が低下し、カルタミンの含量の低下を招いた。
【0039】
実施例9
ベニバナ赤色素(カルタミン50%含有)およびシクロデキストリン(α、β、γの1:1:1混合物)をハンマーミルで微粉末とする。このカルタミン 末、中鎖脂肪酸トリグリセライド、抽出トコフェロールを混合機で混合した後、ゼラチン・グリセリン・精製水にてゼラチン皮膜液を調整し、ゼラチン皮膜カプセルに充填したベニバナ抽出物カプセルの成型を行った。食品用の軟カプセルとし、1カプセル中にカルタミン 25mgを含有した。
【0040】
比較例4
実施例4でシクロデキストリンを使用しないときは、カプセル化の液調整におけるベニバナ抽出液の安定性が低下し、カルタミンの含量の低下を招いた。
【0041】
実施例10
ベニバナ赤色素(カルタミン 50%含有)およびシクロデキストリン(α、β、γの1:1:1混合物)ハンマーミルで微粉末とする。このカルタミン 末、小麦粉、トレハロース、シートニング、鶏卵、卵白、マーガリン、アーモンドペースト、食塩、アスコルビン酸、塩化マグネシウム、卵殻カルシウム、乳化剤、膨張剤、ビタミン類をミキサーで混合した後、加熱してクッキーを調整した。このクッキー4個(81g)中にカルタミン 405mgを含有し、1回当たり約2個、1日1〜2回の補助食として使用した。
【0042】
比較例5
実施例10にてシクロデキストリンを使用しないときは、クッキーペーストの作製において色素の安定性が低下し、変色が問題となった。
【0043】
実施例11
ベニバナ赤色素(カルタミン 50%含有)およびシクロデキストリン(α、β、γの1:1:1混合物)をハンマーミルで微粉末とする。カルタミン 末、25%エタノール、酵素分解レシチンをホモミキサーで混合した後、濾過し、補助食品用の酒精剤を調整した。この酒精剤1ml中にカルタミン 25mgを含有し、1回当たり約1ml、1日1〜2回の服用に用いられた。
【0044】
比較例6
実施例11にてシクロデキストリンを使用しないときは、酒精剤の作製において色素の安定性が低下し、変色が問題となった。酒精剤中のカルタミンの安定性も低下し、製造時の含有量の経時による低下が生じた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベニバナ抽出色素およびシクロデキストリンを1:99〜99:1の重量比にて混合分散して色素の包接体としたリパーゼ阻害活性および抗酸化性を有する組成物。
【請求項2】
ベニバナ抽出色素が、ベニバナを1〜15℃の水で抽出したものである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ベニバナ抽出色素が、ベニバナ中のカルタミンを主成分とするものである請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
カルタミンが、ベニバナの花の水抽出液を発酵若しくは酵素処理後、水にて黄色素を除去することにより得られたものである請求項3記載の組成物。
【請求項5】
シクロデキストリンが、α、β、γ及び水不溶性変性タイプの中の少なくとも2種を用いたものである請求項1〜4いずれか記載の組成物。
【請求項6】
更に、ベニバナ抽出色素に、ベニバナ以外の天然物素材からの抽出物を加えた後、シクロデキストリンにて包接した請求項1〜5いずれか記載の組成物。
【請求項7】
ベニバナ以外の天然物素材からの抽出物は、天然物素材を、水、無水或いは含水アルコールで抽出したものである請求項6記載の組成物。
【請求項8】
ベニバナ以外の天然物素材からの抽出物が、リジン、クエルセチン、ササ抽出物、竹抽出物、リオフラボン類、きのこ抽出物、蓬抽出物、緑茶ポリフェノール類、桑の実・葉抽出物、イバラノリ抽出物、ブドウ抽出物からの1種以上である請求項6または7記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか記載の組成物を含んでなるリパーゼ阻害活性および抗酸化性を有する脂質吸収阻害剤。
【請求項10】
請求項1〜8いずれか記載の組成物を含んでなるリパーゼ阻害活性および抗酸化性を有する化粧品。
【請求項11】
請求項1〜8いずれか記載の組成物を含んでなる経口摂取材料。


【公開番号】特開2006−290807(P2006−290807A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−114480(P2005−114480)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】