説明

リフトピン機構、部材処理装置

【課題】回転自在な複数の回転ロッドの両端の可動ピンで処理対象部材を支持する構造でありながら、櫛歯状の対象支持部材で処理対象部材を外部待機位置と内部処理位置とに円滑に支障なく移動させることができるリフトピン機構を提供する。
【解決手段】リフトピン機構100は、回転ロッド111,121の回動により処理対象部材GBを支持する可動ピン110,120の位置が適宜変位するので、可動ピン110,120の支持に起因した処理不良を良好に防止できる。部材移動機構142が処理対象部材GBを外部待機位置と内部処理位置とに前後移動させるときには、その複数の対象支持アーム141の間隙に位置する複数の回転ロッド111,121を前後方向に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相違するタイミングで上下方向に往復移動する複数グループの可動ピンにより平板状の処理対象部材を複数箇所で支持するリフトピン機構、このリフトピン機構を利用した部材処理装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部材処理装置である加熱処理装置などで処理対象部材であるガラス基板などを加熱処理するとき、ガラス基板をリフトピン機構の不動ピンと可動ピンとで支持している。このリフトピン機構には、可動ピンが上下方向だけでなく、水平方向に移動するものがある。
【0003】
そこで、上昇した可動ピンで処理対象部材を支持して水平方向に移動させ、可動ピンを下降させて不動ピンで支持させる。この動作を繰り返すことにより、可動ピンと不動ピンとが処理対象部材に接触する位置が常時変化するので、ピン接触に起因した処理対象部材の温度ムラなどを抑制することができる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−76211号公報
【特許文献2】特開2006−61755号公報
【特許文献3】WO2008/029943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のリフトピン機構では、可動ピンと不動ピンとで交互に処理対象部材を支持するため、処理基板を水平方向に常時移動させる必要がある。しかし、処理基板の移動範囲には限界がある。しかも、従来のリフトピン機構では、可動ピンをソレノイドなどにより水平方向に線形移動させている。
【0006】
このため、可動ピンや不動ピンが同一箇所に接触しないように、処理基板を何度も移動させることは困難である。従って、処理基板を何度か移動させると結果的に可動ピンや不動ピンが同一箇所に接触してピン跡が発生する可能性が高い。
【0007】
さらに、上述のようなリフトピン機構では、可動ピンを上下方向と水平方向とに移動させるため、各々にソレノイドなどの専用機構を必要としている。このため、構造が複雑である。
【0008】
また、上述のようなリフトピン機構では、一般的に櫛歯状の対象支持部材で処理対象部材を支持して外部待機位置と内部処理位置とに移動させる。しかし、内部処理位置で処理対象部材を支持する可動ピンを移動させるために複雑な機構を採用すると、その機構が対象支持部材と干渉して円滑な出し入れが困難となることがある。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、回転自在な複数の回転ロッドの両端の可動ピンで処理対象部材を支持する構造でありながら、櫛歯状の対象支持部材で処理対象部材を外部待機位置と内部処理位置とに円滑に支障なく移動させることができるリフトピン機構、このリフトピン機構を利用した部材処理装置、を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のリフトピン機構は、相違するタイミングで上下方向に往復移動する複数グループの可動ピンにより平板状の処理対象部材を複数箇所で支持するリフトピン機構であって、水平方向に細長形状で少なくとも両端近傍に可動ピンが個々に形成されていて前後左右に配列されている複数の回転ロッドと、前後左右に配列されている複数の回転ロッドを複数グループに区分して上下方向に往復移動させて上昇した可動ピンで処理対象部材を支持させる上下往復機構と、下降した複数の回転ロッドを水平方向に回動させて処理対象部材から離間した可動ピンの位置を水平方向に変位させる水平変位機構と、前後方向に細長い対象支持アームが左右方向に配列された櫛歯状に形成されていて処理対象部材を少なくとも可動ピンで支持されない外部待機位置で支持する対象支持部材と、処理対象部材を支持した対象支持部材を外部待機位置と可動ピンで支持される内部処理位置とに前後移動させる部材移動機構と、部材移動機構が対象支持部材を前後移動させるときに少なくとも複数の対象支持アームの間隙の下方に回転中心が位置する複数の回転ロッドを長手方向が前後方向となる回転角度に保持する回転制御機構と、を有する。
【0011】
従って、本発明のリフトピン機構では、水平方向に細長形状で少なくとも両端近傍に可動ピンが個々に形成されている複数の回転ロッドが前後左右に配列されている。この前後左右に配列されている複数の回転ロッドを上下往復機構が複数グループに区分して上下方向に往復移動させて上昇した可動ピンで処理対象部材を支持させる。このとき、下降した複数の回転ロッドを水平変位機構が水平方向に回動させて処理対象部材から離間した可動ピンの位置を水平方向に変位させる。前後方向に細長い対象支持アームが左右方向に配列された櫛歯状に形成されている対象支持部材が処理対象部材を少なくとも可動ピンで支持されない外部待機位置で支持する。この処理対象部材を支持した対象支持部材を外部待機位置と可動ピンで支持される内部処理位置とに部材移動機構が前後移動させる。このように部材移動機構が対象支持部材を前後移動させるときに少なくとも複数の対象支持アームの間隙の下方に回転中心が位置する複数の回転ロッドを長手方向が前後方向となる回転角度に回転制御機構が保持する。このため、処理対象部材を支持する可動ピンの位置が適宜変位するので、可動ピンの支持に起因した処理対象部材の加熱などの処理不良が良好に防止される。可動ピンの変位は細長形状の回転ロッドの回動により実行されるが、部材移動機構が処理対象部材を外部待機位置と内部処理位置とに前後移動させるときには、その複数の対象支持アームの間隙に位置する複数の回転ロッドを回転制御機構が前後方向に位置させる。このため、対象支持部材に支持されている処理対象部材が外部待機位置から内部処理位置まで移動されて可動ピンで支持されるときや、可動ピンで支持されていた処理対象部材が対象支持部材に支持されて内部処理位置から外部待機位置まで移動するときに、複数の回転ロッドや複数の可動ピンに複数の対象支持アームが衝突することがない。
【0012】
また、上述のようなリフトピン機構において、回転ロッドの両端近傍で回転中心から距離が相違する位置に少なくとも一対の可動ピンが配置されていてもよい。
【0013】
また、上述のようなリフトピン機構において、水平変位機構は、回転ロッドを軸支している駆動軸を磁力により非接触に回転させる磁力回転機構を有してもよい。
【0014】
本発明の部材処理装置は、平板状の処理対象部材に所定の処理を実行する部材処理装置であって、処理対象部材を支持する本発明のリフトピン機構と、リフトピン機構で支持された処理対象部材に所定の処理を実行する部材処理部と、を有する。
【0015】
また、上述のような部材処理装置において、部材処理部は、リフトピン機構で実施された処理対象部材を密閉チャンバに密閉する本体ハウジングと、少なくとも密閉チャンバを減圧するチャンバ減圧機構と、を有してもよい。
【0016】
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0017】
さらに、本発明では前後左右上下の方向を規定しているが、これは本発明の構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定したものであり、本発明を実施する場合の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【発明の効果】
【0018】
本発明のリフトピン機構では、処理対象部材を支持する可動ピンの位置が適宜変位するので、可動ピンの支持に起因した処理対象部材の加熱などの処理不良を良好に防止することができる。その可動ピンの変位は細長形状の回転ロッドの回動により実行されるが、部材移動機構が処理対象部材を外部待機位置と内部処理位置とに前後移動させるときには、その複数の対象支持アームの間隙に位置する複数の回転ロッドを回転制御機構が前後方向に位置させる。このため、対象支持部材に支持されている処理対象部材が外部待機位置から内部処理位置まで移動されて可動ピンで支持されるときや、可動ピンで支持されていた処理対象部材が対象支持部材に支持されて内部処理位置から外部待機位置まで移動するときに、複数の回転ロッドや複数の可動ピンに複数の対象支持アームが衝突することを良好に防止できる。従って、複数の回転ロッドの可動ピンで処理対象部材を支持する構造でありながら、櫛歯状の対象支持部材で円滑に処理対象部材を外部待機位置と内部処理位置とに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態のリフトピン機構の対象支持部材の動作を示す模式的な平面図である。
【図2】リフトピン機構の要部を示す平面図である。
【図3】可動ピンのグループ構成を示す模式図である。
【図4】図2および図3のCC断面を示す縦断側面図である。
【図5】リフトピン機構の対象支持部材の動作を示す模式的な側面図である。
【図6】リフトピン機構の回転ロッドの動作を示す工程図である。
【図7】図6に対応した可動ピンの支持位置を示す模式図である。
【図8】一の変形例のリフトピン機構の要部を示す平面図である。
【図9】リフトピン機構の要部を示す側面図である。
【図10】他の変形例のリフトピン機構の要部を示す側面図である。
【図11】図10のDD断面を示す横断平面図である。
【図12】さらに他の変形例のリフトピン機構の要部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の一形態を図1ないし図7を参照して以下に説明する。なお、本実施の形態では図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0021】
本実施の形態のリフトピン機構100は、詳細には後述するが、図6および図7に示すように、相違するタイミングで上下方向に往復移動する複数グループの可動ピン110,120により平板状の処理対象部材であるガラス基板GBを複数箇所で支持する。
【0022】
このため、本実施の形態のリフトピン機構100は、図1ないし図5に示すように、水平方向に細長形状で少なくとも両端近傍に可動ピン110,120が個々に形成されていて前後左右に配列されている複数の回転ロッド111,121と、前後左右に配列されている複数の回転ロッド111,121を複数グループに区分して上下方向に往復移動させて上昇した可動ピン110,120でガラス基板GBを支持させる上下往復機構130と、下降した複数の回転ロッド111,121を水平方向に回動させてガラス基板GBから離間した可動ピン110,120の位置を水平方向に変位させる水平変位機構131と、前後方向に細長い対象支持アーム141が左右方向に配列された櫛歯状に形成されていてガラス基板GBを少なくとも可動ピン110,120で支持されない外部待機位置で支持する対象支持部材140と、ガラス基板GBを支持した対象支持部材140を外部待機位置と可動ピン110,120で支持される内部処理位置とに前後移動させる部材移動機構142と、部材移動機構142が対象支持部材140を前後移動させるときに少なくとも複数の対象支持アーム141の間隙の下方に回転中心が位置する複数の回転ロッド111,121を長手方向が前後方向となる回転角度に保持する回転制御機構(図示せず)と、を有する。
【0023】
より具体的には、本実施の形態のリフトピン機構100は、例えば、加熱処理装置(図示せず)の一部として形成されている。この加熱処理装置は、上述のガラス基板GBを支持するリフトピン機構100と、リフトピン機構100で支持されたガラス基板GBを加熱処理する対象加熱部であるヒータボード101と、を有する。
【0024】
本実施の形態のリフトピン機構100は、図1ないし図3に示すように、ガラス基板GBを外周近傍で支持する位置に複数の固定ピン150が矩形に配列されている。回転ロッド111,121で支持されている可動ピン110,120は、上下往復機構130により固定ピン150より上方の位置と下方の位置とに往復移動する。
【0025】
図1および図2に示すように、可動ピン110,120が両端近傍に立設されている回転ロッド111,121は、前後左右に行列形態に配列されている。そして、このように配列されている可動ピン110,120および回転ロッド111,121が、図3に示すように、千鳥配列でAグループとBグループとに区分されている。
【0026】
そこで、上下往復機構130は、Aグループの回転ロッド111を上下移動させる第一上下機構160と、Bグループの回転ロッド121を上下移動させる第二上下機構170と、からなる。
【0027】
なお、本実施の形態のリフトピン機構100では、ガラス基板GBをヒータボード101に近接させるため、上下往復機構130は、固定ピン150を上下移動させる第三上下機構180も有する。
【0028】
図4に示すように、第三上下機構180は、本体ベース102の四隅近傍に個々に設置されている四個のサーボモータ181、これら四個のサーボモータ181で個々に回転駆動される四本のスクリューシャフト182、これら四本のスクリューシャフト182が個々に螺合している四個のボールナット183、これら四個のボールナット183が四隅近傍に固定されている第三ベース184、を有する。この第三ベース184の外周近傍に固定ピン150が固定されており、これらの固定ピン150が上下方向にスライド自在にヒータボード101を貫通している。
【0029】
第二上下機構170は、第三ベース184の四隅近傍に個々に設置されている四個のサーボモータ171、これら四個のサーボモータ171で個々に回転駆動される四本のスクリューシャフト172、これら四本のスクリューシャフト172が個々に螺合している四個のボールナット173、これら四個のボールナット173が四隅近傍に固定されている第二ベース174、を有する。
【0030】
この第二ベース174の上面に水平変位機構131となるサーボモータ175が千鳥配列で固定されており、そのサーボモータ175の各々の駆動軸176で、Bグループの回転ロッド121が個々に回転自在に軸支されている。
【0031】
第一上下機構160は、第三ベース184の四隅近傍に個々に設置されている四個のサーボモータ161、これら四個のサーボモータ161で個々に回転駆動される四本のスクリューシャフト162、これら四本のスクリューシャフト162が個々に螺合している四個のボールナット163、これら四個のボールナット163が四隅近傍に固定されている第一ベース164、を有する。
【0032】
この第一ベース164の上面に水平変位機構131となるサーボモータ165が千鳥配列で固定されており、そのサーボモータ165の各々の駆動軸166で、Aグループの回転ロッド121が個々に回転自在に軸支されている。
【0033】
上述のような構成において、本実施の形態の加熱処理装置でガラス基板GBを加熱処理するときは、図5に示すように、まず、第三上下機構180により固定ピン150が最上位まで移動されるとともに、第一上下機構160および第二上下機構170により全部の可動ピン110,120が固定ピン150と同一位置に配置される。
【0034】
このような状態で、ヒータボード101の上方より外側の外部待機位置でガラス基板GBを支持した対象支持部材140が、部材移動機構142により固定ピン150および可動ピン110,120より上方に配置される。
【0035】
このとき、水平変位機構131のサーボモータ165,175が動作制御されることにより、図1に示すように、全部の回転ロッド111,121が前後方向と平行な状態に配置される。
【0036】
このような状態で、図5に示すように、部材移動機構142によりガラス基板GBを支持した対象支持部材140が外部待機位置からヒータボード101の上方となる内部処理位置まで前進される。
【0037】
そして、部材移動機構142が対象支持部材140を下降させることにより、ガラス基板GBが固定ピン150および可動ピン110,120で支持される。このとき、図1に示すように、前後方向と平行な全部の回転ロッド111,121は対象支持部材140の対象支持アーム141の間隙に位置する。
【0038】
このような状態で部材移動機構142が対象支持部材140を後退させることにより、ガラス基板GBは固定ピン150および可動ピン110,120で支持されてヒータボード101に対向した状態となる。
【0039】
本実施の形態の加熱処理装置では、上述のような状態で内部処理位置が加熱チャンバとして密閉される(図示せず)。そして、ガラス基板GBを支持している固定ピン150および可動ピン110,120が第三上下機構180により下降されてヒータボード101に近接される。
【0040】
このような状態でヒータボード101が発熱してガラス基板GBを加熱処理する。このとき、図6および図7に示すように、第一上下機構160によりAグループの回転ロッド111が上昇されて可動ピン110でガラス基板GBが支持された状態と、第二上下機構170によりBグループの回転ロッド121が上昇されて可動ピン120でガラス基板GBが支持された状態とが、交互に実行される。
【0041】
そして、上述のような支持状態が交互に実行されるとき、下降してガラス基板GBから離間した可動ピン110,120の回転ロッド111,121が、図6に示すように、例えば、15°ずつ水平変位機構131のサーボモータ165,175により回動される。
【0042】
このため、図7に示すように、ガラス基板GBを支持する可動ピン110,120の位置が微少に変位することになる。なお、図6および図7では、可動ピン110,120で固定ピン150とともにガラス基板GBを支持する方式を例示しているが、固定ピン150を使用せずに可動ピン110,120のみでガラス基板GBを支持することもできる。
【0043】
上述のように位置が微少に変位する可動ピン110,120で支持しながらガラス基板GBを加熱処理すると、可動ピン110,120の支持位置による温度偏差が最小限となり、ガラス基板GBを全体的に均質に加熱処理することができる。
【0044】
そこで、この加熱処理が完了すると、前述とは反対の手順により、部材移動機構142が駆動する対象支持部材140により、ガラス基板GBが内部処理位置から外部待機位置まで搬出される。
【0045】
本実施の形態のリフトピン機構100では、上述のようにガラス基板GBを支持する可動ピン110,120の位置が適宜変位するので、可動ピン110,120の支持に起因したガラス基板GBの加熱などの処理不良を良好に防止することができる。
【0046】
その可動ピン110,120の変位は細長形状の回転ロッド111,121の回動により実行されるが、部材移動機構142がガラス基板GBを外部待機位置と内部処理位置とに前後移動させるときには、その複数の対象支持アーム141の間隙に位置する複数の回転ロッド111,121を回転制御機構が前後方向に位置させる。
【0047】
このため、対象支持部材140に支持されているガラス基板GBが外部待機位置から内部処理位置まで移動されて可動ピン110,120で支持されるときや、可動ピン110,120で支持されていたガラス基板GBが対象支持部材140に支持されて内部処理位置から外部待機位置まで移動するときに、複数の回転ロッド111,121や複数の可動ピン110,120に複数の対象支持アーム141が衝突することを良好に防止できる。
【0048】
従って、複数の回転ロッド111,121の可動ピン110,120でガラス基板GBを支持する構造でありながら、櫛歯状の対象支持部材140で円滑にガラス基板GBを外部待機位置と内部処理位置とに移動させることができる。
【0049】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では処理対象部材がガラス基板GBからなることを例示した。しかし、この処理対象部材が半導体基板やセラミック基板からなってもよい(図示せず)。
【0050】
さらに、上記形態ではリフトピン機構100を加熱処理装置に利用することを例示した。しかし、このようなリフトピン機構100を減圧乾燥装置(図示せず)に利用してもよい。
【0051】
このような減圧乾燥装置は、ガラス基板GBを密閉チャンバに密閉する本体ハウジングと、密閉チャンバに密閉されたガラス基板GBを支持するリフトピン機構100と、密閉チャンバを減圧するチャンバ減圧機構と、を有する(図示せず)。
【0052】
また、上記形態では可動ピン110,120とともに固定ピン150を有し、この固定ピン150も利用してガラス基板GBを支持することを例示した。しかし、このような固定ピン150を有しない構造で可動ピン110,120のみでガラス基板GBを支持するリフトピン機構(図示せず)なども可能である。
【0053】
さらに、上記形態では回転ロッド111,121の両端近傍に可動ピン110,120が回転中心から同一の距離に位置することを想定した。しかし、これでは両端の可動ピン110,120がガラス基板GBを同一の位置で支持することになる。
【0054】
そこで、図8および図9に例示するリフトピン機構200のように、回転ロッド111,121の両端近傍で回転中心から距離が相違する位置に少なくとも一対の可動ピン110,120が配置されていてもよい。
【0055】
この場合、回転ロッド111,121が回転しても両端近傍に位置する一対の可動ピン110,120がガラス基板GBの同一位置を支持することがない。このため、ガラス基板GBの支持位置の個数が増大するので、より均質にガラス基板GBを処理することができる。
【0056】
さらに、上記形態では複数の回転ロッド111,121を個々に回転させるため、その各々をサーボモータ165,175の駆動軸166,176で軸支することを例示した。
【0057】
しかし、これでは多数のサーボモータ165,175が必要となるのでリフトピン機構100の生産性が低下する。そこで、図10および図11に例示するリフトピン機構210のように、水平変位機構131が、回転ロッド111,121を軸支している駆動軸166,176を磁力により非接触に回転させる磁力回転機構211を有してもよい。
【0058】
このような磁力回転機構211は、例えば、多極に着磁された一対の円筒体からなり、マグトラン(登録商標)なる製品として販売されている。このような磁力回転機構211は、非接触に回転を伝達するので、パーティクルが発生する問題がない。
【0059】
しかも、ヒータボード101や冷却ボード(図示せず)の膨張,収縮などのために、回転ロッド111の穴位置にズレなどが生じても、支障なく円滑に回転を伝達することができる。
【0060】
また、上記形態では複数の可動ピン110,120がAグループとBグループの二つに区分されていることを例示した。しかし、このような複数の可動ピンが三つ以上のグループに区分されており、例えば、一つずつ下降するグループの可動ピンが変位されてもよい。
【0061】
例えば、図12に例示するリフトピン機構220のように、ヒータボード201上にAグループとBグループとCグループとの三グループの回転ロッド221〜223が三角形状の密集配置に配列されていてもよい。この場合でも、図示するように、対象支持部材140の対象支持アーム141は問題なく移動することができる。
【0062】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0063】
100 リフトピン機構
101 ヒータボード
102 本体ベース
110 可動ピン
111 回転ロッド
120 可動ピン
121 回転ロッド
130 上下往復機構
131 水平変位機構
140 対象支持部材
141 対象支持アーム
142 部材移動機構
150 固定ピン
160 第一上下機構
161 サーボモータ
162 スクリューシャフト
163 ボールナット
164 第一ベース
165 サーボモータ
166 駆動軸
170 第二上下機構
171 サーボモータ
172 スクリューシャフト
173 ボールナット
174 第二ベース
175 サーボモータ
176 駆動軸
180 第三上下機構
181 サーボモータ
182 スクリューシャフト
183 ボールナット
184 第三ベース
200 リフトピン機構
201 ヒータボード
210 リフトピン機構
211 磁力回転機構
220 リフトピン機構
221 回転ロッド
222 回転ロッド
223 回転ロッド
GB ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相違するタイミングで上下方向に往復移動する複数グループの可動ピンにより平板状の処理対象部材を複数箇所で支持するリフトピン機構であって、
水平方向に細長形状で少なくとも両端近傍に前記可動ピンが個々に形成されていて前後左右に配列されている複数の回転ロッドと、
前後左右に配列されている複数の前記回転ロッドを複数グループに区分して上下方向に往復移動させて上昇した前記可動ピンで前記処理対象部材を支持させる上下往復機構と、
下降した複数の前記回転ロッドを水平方向に回動させて前記処理対象部材から離間した前記可動ピンの位置を水平方向に変位させる水平変位機構と、
前後方向に細長い対象支持アームが左右方向に配列された櫛歯状に形成されていて前記処理対象部材を少なくとも前記可動ピンで支持されない外部待機位置で支持する対象支持部材と、
前記処理対象部材を支持した前記対象支持部材を前記外部待機位置と前記可動ピンで支持される内部処理位置とに前後移動させる部材移動機構と、
前記部材移動機構が前記対象支持部材を前後移動させるときに少なくとも複数の前記対象支持アームの間隙の下方に回転中心が位置する複数の前記回転ロッドを長手方向が前後方向となる回転角度に保持する回転制御機構と、
を有するリフトピン機構。
【請求項2】
前記回転ロッドの両端近傍で前記回転中心から距離が相違する位置に少なくとも一対の前記可動ピンが配置されている請求項1に記載のリフトピン機構。
【請求項3】
前記水平変位機構は、前記回転ロッドを軸支している駆動軸を磁力により非接触に回転させる磁力回転機構を有する請求項1または2に記載のリフトピン機構。
【請求項4】
平板状の処理対象部材に所定の処理を実行する部材処理装置であって、
前記処理対象部材を支持する請求項1ないし3の何れか一項に記載のリフトピン機構と、
前記リフトピン機構で支持された前記処理対象部材に所定の処理を実行する部材処理部と、
を有する部材処理装置。
【請求項5】
前記部材処理部は、
前記リフトピン機構で実施された前記処理対象部材を密閉チャンバに密閉する本体ハウジングと、
少なくとも前記密閉チャンバを減圧するチャンバ減圧機構と、
を有する請求項4に記載の部材処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−245205(P2010−245205A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90686(P2009−90686)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】