説明

リンク作動装置

【課題】 可動部が自由度機構として構成され、可動部の可動範囲が広く、可動部が軽量で、可動部の位置決め精度が高いリンク作動装置を提供する。
【解決手段】 入力部材104に対し出力部材105を、3組以上のリンク機構101を介して姿勢を変更可能に連結する。リンク機構101は、入力側および出力側の端部リンク部材101a,101cと中央リンク部材101bとでなる。リンク機構101は、各リンク部材101a,101b,101cを直線で表現した幾何学モデルが、中央リンク部材101bの中央部に対する入力側部分と出力側部分とが対称を成す形状である。リンク機構用駆動源121により2組以上のリンク機構101を動作させて、出力部材105の姿勢を制御する。各リンク機構101の配置の内側に通して、可撓性を有し入力部材104および出力部材105の並び方向に回転力を伝達する可撓性ワイヤ4Aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、三次元空間における複雑な加工や物品の取り回し等の作業を高速かつ精密に実行するパラレルリンク機構やロボット関節等のリンク機構に利用されるリンク作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パラレルリンク機構を用いた加工機の一例が、特許文献1に開示されている。この加工機は、パラレルリンク機構により可動部の移動および可動部の姿勢変更を行うものであり、前記可動部に、エンドエフェクタとしての工具、この工具を作動させるための電力を発電する発電機、この発電機に動力を供給するサーボモータ等を搭載したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−231083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記例のように、パラレルリンク機構の可動部にサーボモータ等の駆動源を配置すると、可動部の重量が重くなり、パラレルリンク機構に作用する慣性モーメントが大きくなる。そのため、パラレルリンク機構の剛性を高くしなければならない。また、パラレルリンク機構の駆動源も大型のものを使用する必要がある。その結果、装置全体が大きくなってしまう。装置が大きいと取扱い難く、高速かつ精密な操作が困難である。したがって、例えば医療用機器に用いるのには不適である。
【0005】
この発明は、可動部が直交2軸方向に移動自在な2自由度機構として構成され、可動部の可動範囲が広く、可動部が軽量で、可動部の位置決め精度が高いリンク作動装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかるリンク作動装置は、入力部材に対し出力部材を、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記入力部材および出力部材に一端が回転可能に連結された入力側および出力側の端部リンク部材と、これら入力側および出力側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、前記各リンク部材を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する入力側部分と出力側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構における2組以上のリンク機構に、これら2組以上の各リンク機構を動作させて前記出力部材の姿勢を制御するリンク機構用駆動源を設け、前記3組以上のリンク機構の配置の内側に通して、可撓性を有し前記入力部材および出力部材の並び方向に回転力を伝達する可撓性ワイヤを設けたことを特徴とする。前記出力部材には、例えば、前記可撓性ワイヤから伝達される回転力により駆動する駆動装置が設けられる。駆動装置の駆動機構は、回転機構であってもよく、あるいは直動機構であってもよい。
【0007】
また、この発明にかかるリンク作動装置は、次のように言い換えることができる。すなわち、入力側および出力側のそれぞれに設けた入力部材および出力部材に対して回転可能に端部リンク部材を連結し、入力側と出力側のそれぞれの端部リンク部材を中央リンク部材に対して回転可能に連結したリンク機構を3組以上有し、各リンク機構の中央部における横断面に関して入力側と出力側を幾何学的に同一とし、前記入力部材に連結された各リンク機構の回転対偶のうち、2組以上のリンク機構について、前記出力部材の姿勢を任意に制御するリンク機構用駆動源を設け、可撓性を有し入力側から出力側へ回転力を伝達可能な可撓性ワイヤを、前記各リンク機構の内側に通して設けたものである。
【0008】
この構成によれば、前記3組以上のリンク機構と、2組以上のリンク機構に設けた前記リンク機構用駆動源とで、出力部材等からなる可動部が直交2軸方向に移動自在な2自由度機構が構成される。この2自由度機構は、可動部の可動範囲を広くとれる。例えば、入力部材の中心軸と出力部材の中心軸の最大折れ角は約±90°であり、入力部材に対する出力部材の旋回角を0°〜360°の範囲に設定できる。入力部材と連結された各リンク機構の回転対偶のうち、2組以上のリンク機構について、出力部材の姿勢を任意に制御するリンク機構用駆動源を設けたことにより、出力部材を任意の姿勢に容易に決められる。リンク機構用駆動源を設けるリンク機構の回転対偶を2組以上としたのは、入力部材に対する出力部材の姿勢を確定するのに必要なためである。
【0009】
各リンク機構の内側を通して可撓性を有する可撓性ワイヤを設け、この可撓性ワイヤにより入力側から出力側へ回転力を伝達することで、可動部に駆動源を設けずに、可動部に設けた駆動装置を駆動できる。そのため、可動部の重量を軽くできる。その結果、リンク作動装置に作用する慣性モーメントが小さくなり、リンク作動機構を駆動する駆動源の小型化が可能になる。また、可動部が軽量であれば、取扱い易く、可動部の位置決め精度が向上する。さらに、可動部に駆動装置を設けた場合、この駆動装置と、駆動装置用の駆動源とを遠く離して配置することができるため、駆動装置を清浄な状態に維持しやすい。
【0010】
可撓性ワイヤは可撓性を有するため、可動部を位置制御するために各リンク機構の姿勢を変化させても、回転力を入力側から出力側へ確実に伝達することができる。また、各リンク機構の入力側および出力側の端部リンク部材は球面リンク構造であり、各リンク機構における球面リンク中心は一致しており、その中心からの距離も同じである。よって、各リンク機構の姿勢が変化しても、入力側と出力側の球面リンク中心間の距離が変化しないため、可撓性ワイヤに大きなアキシアル力(引張り力)が作用することがなく、確実に回転力を伝達することができる。
【0011】
この発明において、前記入力部材および出力部材にそれぞれ貫通孔を設け、各貫通孔に前記可撓性ワイヤを挿通するのが良い。
入力部材および出力部材の各貫通孔に可撓性ワイヤが挿通されていれば、各リンク機構がどのような姿勢になっても、可撓性ワイヤが常に各リンク機構の内側を通る。それにより、可撓性ワイヤが他の部材に接触することを防げる。
【0012】
この発明において、前記可撓性ワイヤは、前記中央リンク部材に固定され各リンク機構の内側に位置するワイヤ案内部材により案内するのが良い。
各リンク機構がどのような姿勢になっても、3つ以上のリンク機構のうち少なくとも2つのリンク機構の中央リンク部材は、1つの軌道円上を通る。そのため、中央リンク部材に固定され各リンク機構の内側に位置するワイヤ案内部材により可撓性ワイヤを案内すれば、可撓性ワイヤと他の部材、例えば中央リンク部材や端部リンク部材との干渉を防止できる。
【0013】
前記ワイヤ案内部材は、その中心が前記中央リンク部材の軌道円の中心と合致する位置となるように設けるのが良い。
中央リンク部材の軌道円の中心は、常に入力側と出力側の球面リンク中心を結ぶ直線上に位置し、球面リンク中心間距離は、各リンク機構の姿勢が変化しても一定であるため、ワイヤ案内部材を上記のように設ければ、可撓性ワイヤを最短距離で距離変動のない位置に配置することができる。
【0014】
この発明において、前記可撓性ワイヤは、可撓性を有するアウタチューブの内部に、両端がそれぞれ回転の入力端および出力端となる可撓性のインナワイヤを複数の転がり軸受によって回転自在に支持し、隣合う転がり軸受間に、これら転がり軸受に対して予圧を与えるばね要素を設けた構造とするのが良い。
可撓性ワイヤの回転軸となるインナワイヤをアウタチューブの内部に設けることで、インナワイヤを保護することができる。インナワイヤを複数の転がり軸受によって回転自在に支持し、隣合う転がり軸受間にばね要素を設けることにより、インナワイヤの固有振動数が低くなることを抑えられ、インナワイヤを高速回転させることが可能である。
【0015】
前記ばね要素は、前記転がり軸受の内輪に予圧を与える内輪用ばね要素と、外輪に予圧を与える外輪用ばね要素とを有し、これら内輪用ばね要素と外輪用ばね要素を前記インナワイヤの長さ方向にわたり交互に配置するのが良い。
内輪用ばね要素と外輪用ばね要素をインナワイヤの長さ方向にわたり交互に配置することで、アウタチューブの径を大きくせずに、ばね要素を設けることができる。
【0016】
前記可撓性ワイヤの入力端側に、前記インナワイヤを回転させる回転駆動源を、前記インナワイヤの前記入力端と連結して設けてもよい。
回転駆動源を設ければ、インナワイヤにトルクを効率良く与えることができる。
【0017】
前記可撓性ワイヤの出力端側に、前記インナワイヤの回転を減速する減速機を、前記インナワイヤの前記出力端と連結して設けてもよい。
可撓性ワイヤの出力端側に減速機を設ければ、インナワイヤで伝達するトルクが小さくても、大きなトルクを発生できる。そのため、減速機の出力側に回転機構を有する駆動装置を設置した場合は大きな回転トルクが得られ、減速機の出力側に直動機構を有する駆動装置を設けた場合は大きな推力が得られる。回転機構や直動機構に生じる摩擦に対して、その摩擦に打ち勝つ力を発生できるため、インナワイヤの捩れ剛性が低くても、スティックスリップが起こりにくい。また、減速機を設ければ、細いインナワイヤを使用ことが可能になり、コンパクトな構造で、より可撓性の高い可撓性ワイヤを実現できる。さらに、可撓性ワイヤの入力側に設置する回転駆動源として、小型で安価なモータを用いることができる。
加えて、駆動装置の回転機構や直動機構等の駆動機構の動作位置をフィードバック制御する場合、次のような作用・効果が得られる。すなわち、減速機によって出力側に減速して出力されるため、減速機の出力軸に現れるインナワイヤの捩れの影響が小さく、駆動機構の動作位置の位置決め分解能が高く、高精度のフィードバック制御をできる。
【0018】
このリンク作動装置は、上記の作用および効果を有するため、医療用機器に使用するのに好適である。
【0019】
リンク作動装置の出力部材に駆動装置を設けることで、この駆動装置を遠隔操作することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明のリンク作動装置は、入力部材に対し出力部材を、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記入力部材および出力部材に一端が回転可能に連結された入力側および出力側の端部リンク部材と、これら入力側および出力側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、前記各リンク部材を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する入力側部分と出力側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構における2組以上のリンク機構に、これら2組以上の各リンク機構を動作させて前記出力部材の姿勢を制御するリンク機構用駆動源を設け、前記3組以上のリンク機構の配置の内側に通して、可撓性を有し前記入力部材および出力部材の並び方向に回転力を伝達する可撓性ワイヤを設けたため、可動部が直交2軸方向に移動自在な2自由度機構として構成され、可動部の可動範囲が広く、可動部が軽量で、可動部の位置決め精度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態にかかるリンク作動装置の一部を省略した正面図である。
【図2】同リンク作動装置の異なる状態を示す一部を省略した正面図である。
【図3】同リンク作動装置の斜視図である。
【図4】同リンク作動装置の入力部材、入力側の端部リンク部材、および中央リンク部材の断面図である。
【図5】(A)は同リンク作動装置の可撓性ワイヤの断面図、(B)はVB部拡大図、(C)はVC部拡大図である。
【図6】(A)はカップリングの分離状態の断面図、(B)はVIB矢視図、(C)はVIC矢視図である。
【図7】同カップリングの連結状態の断面図である。
【図8】同リンク作動装置を備えた遠隔操作型ロボットの概略構成を示す図である。
【図9】この発明の異なる実施形態にかかるリンク作動装置の一部を省略した正面図である。
【図10】図9のX−X断面図である。
【図11】この発明の異なる実施形態にかかるリンク作動装置の一部を省略した正面図である。
【図12】同リンク作動装置の斜視図である。
【図13】同リンク作動装置の入力部材と入力側の端部リンク部材との回転対偶部を示す断面図である。
【図14】同リンク作動装置の変形例の斜視図である。
【図15】異なるリンク作動装置の斜視図である。
【図16】さらに異なるリンク作動装置の斜視図である。
【図17】さらに異なるリンク作動装置の斜視図である。
【図18】(A)は異なる可撓性ワイヤの断面図、(B)はXVIIIB矢視図、(C)はXVIIIC矢視図である。
【図19】同可撓性ワイヤに回転駆動源および駆動装置を連結する状態を示す図である。
【図20】同可撓性ワイヤに回転駆動源および異なる駆動装置を連結する状態を示す図である。
【図21】(A)はさらに異なる可撓性ワイヤの断面図、(B)はXXIB矢視図、(C)はXXIC矢視図である。
【図22】さらに異なる可撓性ワイヤの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の一実施形態を図1〜図5と共に説明する。図1および図2に示すように、このリンク作動装置1Aは、装置の基部となる駆動部2と、この駆動部2に入力側が支持されたリンク機構部3と、このリンク機構部3の内側に通して設けられた回転力伝達用の可撓性ワイヤ4Aとを備える。リンク機構部3の出力側に加工機器等の駆動装置(図示せず)が装着され、この駆動機構が、駆動部2に対し可動な可動部となる。この実施形態では、可撓性ワイヤ4Aの本数は2本とされているが、1本以上であれば本数は問わない。なお、図1および図2は、同じリンク作動装置1Aの互いに異なる状態を示す。
【0023】
駆動部2は、基台本体5aとその上下両端に設けた上下のフランジ部5b,5cとを有する基台5を備える。上フランジ部5bには、後記リンク機構用駆動源121が垂下状態で設けられ、下フランジ部5cには、可撓性ワイヤ4Aが伝達する回転力を発生させる回転駆動源6が起立状態で設けられている。
【0024】
図3に示すように、リンク機構部3は、3組のリンク機構101,102,103(以下、「101〜103」と表記する)を具備する。なお、図1および図2では、1組のリンク機構101のみを表示している。これら3組のリンク機構101〜103のそれぞれは幾何学的に同一形状をなす。すなわち、各リンク機構101〜103は、後述の各リンク部材101a〜103a,101b〜103b,101c〜103cを直線で表現した幾何学モデルが、中央リンク部材101b〜103bの中央部に対する入力側部分と出力側部分が対称を成す形状である。リンク機構101〜103の入力側は、基台5の上フランジ部5bに装着される。
【0025】
各リンク機構101,102,103は、入力側の端部リンク部材101a,102a,103a(以下、「101a〜103a」と表記する)、中央リンク部材101b,102b,103b(以下、「101b〜103b」と表記する)、および出力側の端部リンク部材101c,102c,103c(以下、「101c〜103c」と表記する)で構成され、4つの回転対偶からなる3節連鎖のリンク機構をなす。端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cは球面リンク構造で、3組のリンク機構101〜103における球面リンク中心PA,PCは一致しており、また、その中心PA,PCからの距離も同じである。端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cと中央リンク部材101b〜103bとの連結部となる回転対偶軸は、ある交差角をもっていてもよいし、平行であってもよい。但し、3組のリンク機構101〜103における中央リンク部材101b〜103bの形状は幾何学的に同一である。
【0026】
1組のリンク機構101〜103は、入力側に配置され前記基台5の上フランジ部5bに装着された入力部材104と、出力側に配置された出力部材105と、これら入力部材104および出力部材105のそれぞれに回転可能に連結させた2つの端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cと、両端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cのそれぞれに回転可能に連結されて両端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cを互いに連結する1つの中央リンク部材101b〜103bとを具備する。
【0027】
この実施形態のリンク機構101〜103は回転対称タイプで、入力部材104および端部リンク部材101a〜103aと、出力部材105および端部リンク部材101c〜103cとの位置関係が、中央リンク部材101b〜103bの中心線Aに対して回転対称となる位置構成になっている。図1は、入力部材104の中心軸Bと出力部材105の中心軸Cとが同一線上にある状態を示し、図2は、入力部材104の中心軸Bに対して出力部材105の中心軸Cが所定の作動角をとった状態を示す。各リンク機構101〜103の姿勢が変化しても、入力側と出力側の球面リンク中心PA,PC間の距離Lは変化しない。
【0028】
図4に示すように、入力部材104は、その中心部に可撓性ワイヤ挿通用の貫通孔106が軸方向に沿って形成され、また、大きな角度がとれるように外形を球面状としたドーナツ形状をなし、さらに、半径方向に軸部材嵌挿用の貫通孔108を円周方向等間隔で形成し、その貫通孔108に軸受109を介して軸部材110を嵌挿させた構造を具備する。出力部材105も同じ構造で、その中心部に可撓性ワイヤ挿通用の貫通孔106(図3)が軸方向に沿って形成されている。
【0029】
軸受109は、入力部材104の貫通孔108に内嵌された軸受外輪と、軸部材110に外嵌された軸受内輪と、軸受外輪と軸受内輪間に回転自在に介挿されたボール等の転動体とからなる。軸部材110の外側端部は、入力部材104から突出し、その突出部に端部リンク部材101a,102a,103aおよびギア部材111が結合され、ナット113による締付けでもって軸受109に所定の予圧量を付与して固定されている。ギア部材111は、後述するリンク機構101〜103の角度制御機構120の一部を構成する。入力部材104に対して軸部材110を回転自在に支承する軸受109は、止め輪112により入力部材104から抜け止めされている。
【0030】
なお、軸部材110と、端部リンク部材101a〜103aおよびギア部材111とは、加締め等により結合される。キーあるいはセレーションにより結合することが可能である。その場合、結合構造の緩みを防止でき、伝達トルクの増加を図ることができる。
【0031】
上記ギア部材111を軸部材110の外側端部に設けたことで、この入力部材104の可撓性ワイヤ挿通用の貫通孔106とリンク機構101〜103の内側に広い内側空間Sが形成されている。この内側空間Sには、可撓性ワイヤ4Aが通して設けられる。
【0032】
軸受109としては、図示のように2個の玉軸受を配設する以外に、アンギュラ玉軸受、ローラ軸受、あるいは滑り軸受を使用することも可能である。なお、出力部材105は、軸部材110の外側端部にギア部材111が設けられていない点を除いて、入力部材104と同一構造である。軸部材110の円周方向位置は等間隔でなくてもよいが、入力部材104および出力部材105は同じ円周方向の位置関係とする必要がある。これら入力部材104および出力部材105は、3組のリンク機構101〜103で共有され、各軸部材110に端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cが連結される。
【0033】
端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cはL字状をなし、一辺を入力部材104および出力部材105から突出する軸部材110に結合し、他辺を中央リンク部材101b〜103bに連結する。端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cは、大きな角度がとれるようにリンク中心側に位置する軸部115の屈曲基端内側が大きくカットされた形状を有する。
【0034】
中央リンク部材101b〜103bはほぼL字状をなし、両辺に貫通孔114を有する。この中央リンク部材101b〜103bは、大きな角度がとれるようにその周方向側面がカットされた形状を有する。端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cの他辺から一体的に屈曲成形された軸部115を、軸受116を介して中央リンク部材101b〜103bの両辺の貫通孔114に挿通する。
【0035】
この軸受116は、中央リンク部材101b〜103bの貫通孔114に内嵌された軸受外輪と、端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cの軸部115に外嵌された軸受内輪と、軸受外輪と軸受内輪間に回転自在に介挿されたボール等の転動体とからなる。端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cに対して中央リンク部材101b〜103bを回転自在に支承する軸受116は、止め輪117により中央リンク部材101b〜103bから抜け止めされている。
【0036】
前記リンク機構101〜103において、入力部材104および出力部材105の軸部材110の角度、長さ、および端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cの幾何学的形状が入力側と出力側で等しく、また、中央リンク部材101b〜103bについても入力側と出力側で形状が等しいとき、中央リンク部材101b〜103bの対称面に対して中央リンク部材101b〜103bと、入出力部材104,105と連結される端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cとの角度位置関係を入力側と出力側で同じにすれば、幾何学的対称性から入力部材104および端部リンク部材101a〜103aと、出力部材105および端部リンク部材101c〜103cとは同じに動き、入力側と出力側は同じ回転角になって等速で回転することになる。この等速回転するときの中央リンク部材101b〜103bの対称面を等速二等分面という。
【0037】
このため、入出力部材104,105を共有する同じ幾何学形状のリンク機構101〜103を円周上に複数配置させることにより、複数のリンク機構101〜103が矛盾なく動ける位置として中央リンク部材101b〜103bが等速二等分面上のみの動きに限定され、これにより入力側と出力側は任意の作動角をとっても等速回転が得られる。
【0038】
各リンク機構101〜103における4つの回転対偶の回転部、つまり、端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cと入出力部材104,105の2つの連結部分、および端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cと中央リンク部材101b〜103bの2つの連結部分を軸受構造とすることにより、その連結部分での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0039】
この軸受構造では予圧を付与することにより、ラジアル隙間とスラスト隙間をなくし、連結部でのがたつきを抑えることができ、入出力間の回転位相差がなくなり等速性を維持できると共に振動や異音の発生を抑制できる。特に、前記軸受構造において、軸受隙間を負すきまとすることにより、入出力間に生じるバックラッシュを少なくすることができる。
【0040】
このリンク作動装置1Aのリンク機構部3は、リンク機構101〜103の2つ以上のリンク機構について、入力部材104に対して入力側の端部リンク部材101a〜103aの角度を制御することにより、出力部材105の2自由度の姿勢を制御する。図1〜図4の例では、全リンク機構101〜103の端部リンク部材101a〜103aの角度を制御する。端部リンク部材101a〜103aの角度制御機構120は、図3に示すように、基台5の上フランジ部5bにリンク機構用駆動源121を下向きに設け、このリンク機構用駆動源121の上フランジ部5b上に突出する出力軸122に傘歯車123を取付け、この傘歯車123に、入力部材104の軸部材110に取付けた前記ギア部材111のギア部を噛み合わせてある。リンク機構用駆動源121は、例えば電動モータである。リンク機構用駆動源121を回転させることにより、その回転が傘歯車123およびギア部材111を介して軸部材110に伝えられ、入力部材104に対して端部リンク部材101a〜103aが角度変更する。
【0041】
このリンク機構部3の構成によれば、入力部材104に対する出力部材105の可動範囲を広くとれる。例えば、入力部材104の中心軸Bと出力部材105の中心軸Cの最大折れ角を約±90°とすることができる。また、入力部材104に対する出力部材105の旋回角を0°〜360°の範囲で設定できる。入力部材104と連結された各リンク機構101〜103の回転対偶に、出力部材105の姿勢を任意に制御するリンク機構用駆動源121を設けたことにより、出力部材105を任意の姿勢に容易に決められる。入力部材104から出力部材105へ等速で力が伝達されるため、出力部材105の動作がスムーズである。この実施形態では、入力部材104とリンク機構101〜103の各組の回転対偶にリンク機構用駆動源121を設けてあるが、2組以上にリンク機構用駆動源121を設ければ、入力部材104に対する出力部材105の姿勢を確定することができる。
【0042】
また、この構成のリンク機構部3は、入出力部材104,105に軸受外輪を内包すると共に軸受内輪を端部リンク部材101a〜103a,101c〜103cと結合させて、入出力部材104,105内に軸受構造を埋設したので、全体の外形を大きくすることなく、入出力部材104,105の外形を拡大することができる。そのため、入力部材104を基台5の上フランジ部5bに取付けるための取付スペース、並びに出力部材105に駆動装置(図示せず)を取付けるための取付スペースの確保が容易である。
【0043】
図5(A)〜(C)に、可撓性ワイヤ4Aの詳しい構造を示す。可撓性ワイヤ4Aは、可撓性のアウタチューブ11と、このアウタチューブ11の内部の中心位置に設けられた可撓性のインナワイヤ12と、このインナワイヤ12を前記アウタチューブ11に対して回転自在に支持する複数の転がり軸受13とを備える。インナワイヤ12の両端は、それぞれ回転の入力端12aおよび出力端12bとなる。インナワイヤ12の出力端12b側には、後述する減速機32が設けられている。アウタチューブ11は、例えば樹脂製である。インナワイヤ12としては、例えば金属、樹脂、グラスファイバー等のワイヤが用いられる。ワイヤは単線であっても、撚り線であってもよい。
【0044】
各転がり軸受13はアウタチューブ11の中心線に沿って一定の間隔を開けて配置されており、隣合う転がり軸受13間に、これら転がり軸受13に対して予圧を与えるばね要素14I,14Oが設けられている。ばね要素14I,14Oは、例えば圧縮コイルばねであり、インナワイヤ12の外周を巻線が囲むように設けられる。ばね要素は、転がり軸受13の内輪に予圧を発生させる内輪用ばね要素14Iと、外輪に予圧を発生させる外輪用ばね要素14Oとがあり、これらが交互に配置されている。
【0045】
前記アウタチューブ11の両端には、このアウタチューブ11を他の部材に結合する継手15が設けられている。継手15は、雄ねじ部材16と雌ねじ部材23とで構成される。
雄ねじ部材16は、内周に貫通孔17が形成された筒状の部材であって、軸方向中央部の外周に雄ねじ部18が形成されている。雄ねじ部材16の軸方向の一方端には、内径および外径が同一径で軸方向に延びる円筒部19が設けられている。この円筒部19の外径は、アウタチューブ11の内径部に嵌合する寸法とされている。また、軸方向の他方端には、外径側に拡がるフランジ部20が設けられている。このフランジ部20は他の部材に結合する結合手段であって、円周方向複数箇所に、ボルト等の固定具を挿入するための通孔21が形成されている。前記貫通孔17は、円筒部19側からフランジ部20側に向かって、小径部17a、中径部17b、大径部17cの順に段階的に内径が大きくなっている。中径部17bには、インナワイヤ12を回転自在に支持する転がり軸受22が嵌め込まれる。
【0046】
雌ねじ部材23は、円筒状部24と、この円筒状部24の一端から内径側へ延びるつば状部25とを有する筒状の部材であって、円筒状部24の内周先端側に、前記雄ねじ部材16の雄ねじ部18に螺合する雌ねじ部26が形成されている。つば状部25の内径は、アウタチューブ11が外周に嵌合する寸法とされている。
【0047】
アウタチューブ11を他の部材に結合する際には、まず、雄ねじ部材16の円筒部19をアウタチューブ11の内径部に嵌合させ、かつ雌ねじ部材23のつば状部25をアウタチューブ11の同一端の外径部に嵌合させた状態で、雄ねじ部材16の雄ねじ部18と雌ねじ部材23の雌ねじ部26とを螺合させる。これにより、雄ねじ部材16の円筒部19と雌ねじ部材23のつば状部25とで、アウタチューブ11の一端を内外から挟み込んで固定する。インナワイヤ12は、雄ねじ部材16の貫通孔17に挿通し、貫通孔17の中径部17bに嵌め込んだ転がり軸受22によって支持させる。次いで、雄ねじ部材16のフランジ部20を、回動駆動源6や駆動装置(図示せず)等の結合対象に結合する。この結合は、通孔21に挿通したボルト等の固定具(図示せず)によって行う。以上で、アウタチューブ11と他の部材との結合が完了し、図5の状態となる。
【0048】
この状態から、雄ねじ部18と雌ねじ部26の螺合を外すことで、雄ねじ部材16の円筒部19および雌ねじ部材23のつば状部25による拘束からアウタチューブ11が解放され、アウタチューブ11と結合対象部材との結合が解除される。これらアウタチューブ11と他の部材との結合操作およびその解除操作は容易である。
【0049】
また、アウタチューブ11と継手15を結合した状態で、雄ねじ部材16の結合手段(フランジ部20)により可撓性ワイヤ4Aと他の部材との結合操作および解除操作を行っても良い。これら可撓性ワイヤ4Aと他の部材との結合操作およびその解除操作はさらに容易となる。
【0050】
前記インナワイヤ12の入力端12aおよび出力端12bには、回転軸と連結するカップリング29が設けられている。インナワイヤ12の入力端12aに連結される回転軸は前記回転駆動源6の出力軸6aであり、インナワイヤ12の出力端12bに連結される回転軸は後記減速機32の入力軸32aである。以下の説明では、回転駆動源6の出力軸6aおよび減速機32の入力軸32aをまとめて回転軸28とする。
【0051】
図例のカップリング29は、軸方向に貫通する貫通孔29aを有し、この貫通孔29aと外周との間に軸方向に離れて2つのねじ孔29bを設けてある。前記貫通孔29aにインナワイヤ12および回転軸28を両側から挿入し、ねじ孔29bに螺着したボルト等のねじ部材(図示せず)の先端をインナワイヤ12および回転軸28に押し付けることで、これらインナワイヤ12および回転軸28をカップリング29に固定して、インナワイヤ12と回転軸28とを連結する。
【0052】
カップリング29は、インナワイヤ12と回転軸28とを回転伝達可能に連結できればよく、上記以外の構成であってもよい。例えば、図6および図7に示す構成とすることができる。このカップリング29は、インナワイヤ12と一体回転するワイヤ側部材30と、回転軸28と一体回転する軸側部材31とを有する。ワイヤ側部材30とインナワイヤ12、および軸側部材31と回転軸28は、それぞれ圧入により固定されるか、またはボルト等の固定具(図示せず)により固定される。これらワイヤ側部材30および軸側部材31の対向する端面には、互いに係合する径方向溝30aと、この径方向溝30aに係合する突起31aとがそれぞれ設けられている。この図例では、径方向溝30aおよび突起31aが、それぞれ円周方向の2箇所に設けられている。
【0053】
インナワイヤ12と回転軸28とを連結するには、図6(A)のように対向して設けたワイヤ側部材30および軸側部材31を互いに接近するように軸方向に相対移動させて、図7のように径方向溝30aと突起31aとを互いに係合させる。それにより、ワイヤ側部材30と軸側部材31とがトルクを伝達可能に連結される。インナワイヤ12と回転軸28との連結を外すには、上記と逆に、ワイヤ側部材30および軸側部材31を互いに離れるように軸方向に相対移動させて、径方向溝30aと突起31aとの係合を解除する。これらインナワイヤ12と回転軸28との連結操作およびその解除操作は容易である。
【0054】
図5(A)〜(C)に示すように、可撓性ワイヤ4Aの出力側には、インナワイヤ12の回転を減速する減速機32が設けられている。この減速機32は、減速機ハウジング32cの前後にそれぞれ突出する入力軸32aと出力軸32bを回転自在に支持し、減速機ハウジング32c内に、入力軸32aの回転を減速して出力軸32bに伝達する回転減速伝達系(図示せず)を設けたものである。図例では、入力軸32aと出力軸32bとが同一軸上に配置されている。減速機32の回転減速伝達系としては、遊星歯車機構、波動歯車(ハーモニックドライブ)等が採用される。減速機32の入力軸32aは、カップリング29を介してインナワイヤ12の出力端12bに連結される。減速機32の出力軸32bは、外部の駆動装置(図示せず)に連結される。
【0055】
この構成の可撓性ワイヤ4Aは、インナワイヤ12の出力側にこのインナワイヤ12の回転を減速して出力する減速機32を設けたため、インナワイヤ12で伝達するトルクが小さくても、大きなトルクを発生できる。インナワイヤ12で伝達するトルクが小さければ、細いインナワイヤ12を使用することができる。そのため、コンパクトな構造で、可撓性の高い可撓性ワイヤ4Aを実現できる。また、隣合う転がり軸受13間に、これら転がり軸受13に対して予圧を与えるばね要素14I,14Oを設けたことにより、インナワイヤ12の固有振動数が低くなることを抑えられ、インナワイヤ12を高速回転させることが可能である。内輪用ばね要素14Iおよび外輪用ばね要素14Oは、インナワイヤ12の長さ方向にわたり交互に配置されているため、アウタチューブ11の径を大きくせずに、ばね要素14I,14Oを設けることができる。
【0056】
このリンク作動装置1Aは上記構成であり、例えば図8のように、出力部材105に駆動装置取付部材80を介して駆動装置81が取付けられて、例えば医療用等の遠隔操作型ロボットとして使用される。駆動装置81はドリル等の加工ツール(図示せず)、または他の機器を作動させる装置であり、その駆動機構(図示せず)は、回転機構であってもよく、あるいは直動機構であってもよい。可撓性ワイヤ4Aの入力側が回転駆動源6に連結され、出力側が減速機32(図示せず)を介して駆動装置81の駆動機構に連結される。出力部材105と駆動装置取付部材80と駆動装置81とが、駆動部2に対して可動な可動部82となる。コントローラ83により前記回転駆動源6およびリンク機構用駆動源121の出力を制御することで、可動部82(正確には加工ツールまたは機器)の位置決めと姿勢変更、ならびに駆動装置81の駆動機構の制御を遠隔操作で行う。
【0057】
この遠隔操作型ロボットは、3組のリンク機構101〜103と、これらリンク機構101〜103にそれぞれ設けたリンク機構用駆動源121とで、可動部82を直交2軸方向に移動自在な2自由度機構が構成されている。この2自由度機構は、可動部82の可動範囲が広い。そのため、可動部82の位置決めを精度良く行える。
【0058】
各リンク機構101〜103の内側空間Sを通して可撓性ワイヤ4Aを設け、この可撓性ワイヤ4Aにより入力側から出力側へ回転力を伝達するため、可動部82の駆動装置81を、駆動部2に設けた回転駆動源6で駆動できる。そのため、可動部82の重量を軽くできる。その結果、リンク機構101〜103に作用する慣性モーメントが小さくなり、リンク機構用駆動源121の小型化が可能になる。また、可動部82が軽量であれば、取扱い易く、駆動装置81の位置決め精度が向上する。さらに、駆動装置82と、回転駆動源82およびリンク機構用駆動源121とを遠く離して配置することができるため、駆動装置82を清浄な状態に維持しやすい。可撓性ワイヤ4Aは、リンク機構101〜103の内側空間Sに通して設けられているため、可撓性ワイヤ4Aの取り回しが容易となり、可撓性ワイヤ4Aが邪魔にならないようにできる。
【0059】
可撓性ワイヤ4Aは可撓性を有するため、可動部82を位置制御するために各リンク機構101〜103の姿勢を変化させても、回転力を入力側から出力側へ確実に伝達することができる。また、各リンク機構101〜103の姿勢が変化しても、入力側と出力側の球面リンク中心間の距離Lが変化しないため、可撓性ワイヤ4Aに大きなアキシアル力(引張り力)が作用することがなく、確実に回転力を伝達することができる。
【0060】
図9および図10は異なる実施形態を示す。このリンク作動装置1Bは、1つのリンク機構101の中央リンク部材101bにワイヤ案内部材41を固定して設け、このワイヤ案内部材41により可撓性ワイヤ4Aを案内するようにしたものである。ワイヤ案内部材41は、基端が中央リンク部材101bに固定された支持部41aと、この支持部41aの先端に一体に設けたC字状の案内部41bとでなる。案内部41bの切れ目41baは可撓性ワイヤ4Aが通らない寸法であり、中央に可撓性ワイヤ4Aを通す円形の開口41cが形成されている。この開口41cの中心は、中央リンク部材101bの軌道円43の中心Oと合致する位置とされている。
【0061】
各リンク機構101〜103がどのような姿勢になっても、3つ以上のリンク機構のうち少なくとも2つのリンク機構の中央リンク部材は、1つの軌道円C上を通る。そのため、中央リンク部材101bに固定したワイヤ案内部材41により可撓性ワイヤ4Aを案内すれば、可撓性ワイヤ4Aと他の部材、例えば他の中央リンク部材102b,103bや端部リンク部材102a,102c,103a,103cとの干渉を防止できる。また、中央リンク部材101bの軌道円43の中心Oは、常に入力側と出力側の球面リンク中心を結ぶ直線上に位置し、球面リンク中心間の距離Lは、各リンク機構101〜103の姿勢が変化しても一定であるため、上記のようにワイヤ案内部材41の案内部41bの中心を中央リンク部材101bの軌道円43の中心Oと合致する位置としたことで、可撓性ワイヤ4Aを最短距離で距離変動のない位置に配置することができる。
【0062】
図11〜図13はさらに異なる実施形態を示す。このリンク作動装置1Cは、前記実施形態と比べてリンク機構部3の構成が異なる。図12に示すように、このリンク作動装置1Cのリンク機構部3も、3組のリンク機構201,202,203(以下、「201〜203」と表記する)を具備する。なお、図11は1組のリンク機構201のみを表示している。これら3組のリンク装置201〜203のそれぞれは幾何学的に同一形状をなす。リンク機構201〜203の入力側は、基台5のフランジ部5aに装着される。
【0063】
各リンク機構201,202,203は、円板状の入力部材204に回動自在に連結された入力側の端部リンク部材201a,202a,203a(以下、「201a〜203a」と表記する)と、円板状の出力部材205に回動自在に連結された出力側の端部リンク部材201c,202c,203c(以下、「201c〜203c」と表記する)と、両端部リンク部材201a〜203a,201c〜203cのそれぞれに回動自在に連結されて両端部リンク部材201a〜203a,201c〜203cを互いに連結する中央リンク部材201b,202b,203b(以下、「201b〜203b」と表記する)とで構成され、4つの回転対偶部206a,207a,208a(以下、「206a〜208a」と表記する),206b,207b,208b(以下、「206b〜208b」と表記する),206b,207b,208b(以下、「206b〜208b」と表記する),206c,207c,208c(以下、「206c〜208c」と表記する)からなる3節連鎖構造をなす。なお、図12には、回転対偶部208a,208cは隠れていて図示されていない。回転対偶部208aは、図13に図示されている。回転対偶部208cは、どの図にも図示されていないが、説明の都合上、明細書中では符号を付けてある。
【0064】
端部リンク部材201a〜203a,201c〜203cは球面リンク構造で、3組のリンク機構201〜203における球面リンク中心は一致しており、また、その中心からの距離も同じである。端部リンク部材201a〜203a,201c〜203cと中央リンク部材201b〜203bとの回転対偶部206b〜208b,206b〜208bの連結軸は、ある交差角をもっていてもよいし、平行であってもよい。但し、3組のリンク機構201〜203における中央リンク部材201b〜203bの形状は幾何学的に同一である。
【0065】
この実施形態のリンク機構201〜203は鏡像対称タイプで、入力側部材204および入力側の端部リンク部材201a〜203aと、出力部材205および出力側の端部リンク部材201c〜203cとの位置関係が、中央リンク部材201b〜203bの中心線に対して鏡像対称となる位置構成になっている。図12では、入力部材204に対して出力部材205が所定の作動角をとった状態を示す。
【0066】
図13は、入力部材204と入力側の端部リンク部材201a〜203aの回動対偶部206a〜208aを示す。円板状をなす入力部材204の上面には、各リンク機構201〜203について一対の支持部材211a,212a,213a(以下、「211a〜213a」と表記する)が設置されている。支持部材211a〜213aは、入力部材204に対してねじ等により着脱自在な構造となっているが、入力部材204と一体的に形成することも可能である。一対の支持部材211a〜213aにはそれぞれ軸受217a,218a,219a(以下、「217a〜219a」と表記する)が取付けられており、この一対の軸受217a〜219a間に回転自在に支承された支持棒214a,215a,216a(以下、「214a〜216a」と表記する)に、L字状をなす端部リンク部材201a〜203aの一方のアーム端部が一対の支持部材211a〜213a間に挿入配置されて連結されている。また、支持棒214a〜216aにおける一対の支持部材211a〜213aの外側に、後述する角度制御機構230の一部を構成するギア部材234が結合されている。これら端部リンク部材201a〜203aのアーム端部およびギア部材234は、例えば止めねじにより支持棒214a〜216aに固定されている。
【0067】
さらに、支持棒214a〜216aの外端部にはナット220a,221a,222a(以下、「220a〜222a」と表記する)が螺着され、このナット220a〜222aの締付けでもって間座等を介在させることにより前記軸受217a〜219aに所定の予圧量を付与して調整可能となっている。
【0068】
支持部材211a〜213aの円周方向位置は等間隔でなくてもよいが、入力部材204と出力部材205では同じ円周方向の位置関係とする必要がある。この入力部材204と出力部材205は、3組のリンク機構201〜203で共有され、各支持部材211a〜213a,211c〜213cに端部リンク部材211a〜213a,211c〜213cが連結される。支持部材211a〜213a,211c〜213cが取付けられる入力部材204および出力部材205は、図では円板状の部材を示しているが、支持部材211a〜213a,211c〜213cの取付けスペースを確保することができるのであれば、どのような形状であってもよい。この実施形態では、入力部材204および出力部材205共に、中心部に貫通孔204a(出力部材205の貫通孔は図示せず)を有する孔開きの円板状とされ、入力部材204および出力部材205の貫通孔204aおよびリンク機構201〜203の内側空間Sを通して、可撓性ワイヤ4A(図11)が設けられている。
【0069】
出力部材205と出力側の端部リンク部材201c〜203cとの連結部分である回転対偶部206c〜208cは、前述の入力部材204と入力側の端部リンク部材201a〜203aとの連結部分である回転対偶部206a〜208aと同一構造であるため、重複説明は省略する。
【0070】
入力側の端部リンク部材201a〜203aと中央リンク部材201b〜203bの一方の端部との回転対偶部206b〜208bでは、入力側の端部リンク部材201a〜203aの他方のアーム端部は、ほぼL字状をなす中央リンク部材201b〜203bの一方の端部に連結されている。この中央リンク部材201b〜203bの一方の端部には、一対の支持部材211b〜213bが設けられている。この一対の支持部材211b〜213bには軸受(図示せず)が取付けられており、この一対の軸受間に回転自在に支承された支持棒214b,215b,216b(以下、「214b〜216b」と表記する)に、L字状をなす端部リンク部材201a〜203aの他方のアーム端部が一対の支持部材211b〜213b間に挿入配置されて連結されている。この支持部材211b〜213bは、中央リンク部材201b〜203bに対してねじ等により着脱自在な構造、あるいは一体構造のいずれであってもよい。
【0071】
なお、端部リンク部材201a〜203aのアーム端部は、止めねじにより支持棒214b〜216bに固定されている。その固定方法は、止めねじ以外にもキーやDカット等でもよい。また、支持棒214b〜216bの端部は、ナットによる締付けでもって間座等を介在させることにより軸受に所定の予圧量を付与して調整可能となっている。
【0072】
出力側の端部リンク部材201c〜203cの他方のアーム端部と中央リンク部材201b〜203bの他方の端部との連結部分である回転対偶部206b〜208bは、前述の端部リンク部材201a〜203aの他方のアーム端部と中央リンク部材201b〜203bの一方の端部との回転対偶部206b〜208bと同一構造であるため、重複説明は省略する。
【0073】
前記リンク機構201〜203において、入力部材204および出力部材205の支持棒214a〜216a,214c〜216cの角度、長さ、および端部リンク部材201a〜203aの幾何学的形状が入力側と出力側で等しく、また、中央リンク部材201b〜203bについても入力側と出力側で形状が等しいとき、中央リンク部材201b〜203bの対称面に対して中央リンク部材201b〜203bと入力部材204および出力部材205と連結される端部リンク部材201a〜203a,201c〜203cとの角度位置関係を入力側と出力側とで同じにすれば、幾何学的対称性から入力部材204および入力側の端部リンク部材201a〜203aと、出力部材205および出力側の端部リンク部材201c〜203cとは同じに動き、入力側と出力側は同じ回転角になって等速回転することになる。この等速回転するときの中央リンク部材201b〜203bの対称面を等速二等分面という。
【0074】
このため、入力部材204および出力部材205を共有する同じ幾何学形状のリンク機構201〜203を円周上の複数配置させることより、複数のリンク機構201〜203が矛盾無く動ける位置として中央リンク部材201b〜203bが等速二等分面上のみの動きに限定され、これにより入力側と出力側は任意の作動角をとっても等速回転が得られる。
【0075】
このリンク作動装置1Cのリンク機構部3は、リンク機構201〜203の2つ以上のリンク機構について、入力部材204に対して入力側の端部リンク部材201a〜203aの角度を制御することにより、出力部材205の2自由度の姿勢を制御する。図11〜図13の例では、全リンク機構201〜203の端部リンク部材201a〜203aの角度を制御する。端部リンク部材201a〜203aの角度制御機構230は、図11に示すように、基台5の上フランジ部5bにリンク機構用駆動源231を下向きに設け、このリンク機構用駆動源231の上フランジ部5b上に突出する出力軸232に傘歯車233を取付け、この傘歯車233に、入力部材204の支持棒214a〜216aに取付けた前記ギア部材234のギア部を噛み合わせてある。リンク機構用駆動源231は、例えば電動モータである。リンク機構用駆動源231を回転させることにより、その回転が傘歯車233およびギア部材234を介して支持棒214a〜216aに伝えられ、入力部材204に対して端部リンク部材201a〜203aが角度変更する。
【0076】
このリンク機構部3の構成によれば、入力部材204に対する出力部材205の可動範囲を広くとれる。例えば、入力部材204の中心軸Bと出力部材205の中心軸Cの最大折れ角を約±90°とすることができる。また、入力部材204に対する出力部材205の旋回角を0°〜360°の範囲で設定できる。入力部材204と各リンク機構201〜203の回転対偶部206a〜208aに、出力部材205の姿勢を任意に制御するリンク機構用駆動源231を設けたことにより、出力部材205を任意の姿勢に容易に決められる。入力部材204から出力部材205へ等速で力が伝達されるため、出力部材205の動作がスムーズである。この実施形態では、入力部材204とリンク機構201〜203の回転対偶部206a〜208aにリンク機構用駆動源231を設けてあるが、2組以上にリンク機構用駆動源231を設ければ、入力部材204に対する出力部材205の姿勢を確定することができる。
【0077】
各リンク機構201〜203における4つの回転対偶部206a〜208a,206b〜208b,206b〜208b,206c〜208c、つまり、入力部材204と入力側の端部リンク部材201a〜203aとの連結部分、入力側の端部リンク部材201a〜203aと中央リンク部材201b〜203bとの連結部分、中央リンク部材201b〜203bと出力側の端部リンク部材201c〜203cとの連結部分、および出力側の端部リンク部材201c〜203cと出力部材205との連結部分を軸受構造とすることにより、その連結部分での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0078】
さらに、リンク機構201〜203の各回転対偶部206a〜208a,206b〜208b,206b〜208b,206c〜208cを両端支持するように前記各回転対偶部206a〜208a,206b〜208b,206b〜208b,206c〜208cに軸受を配置していることから、軸受剛性の向上が図れる。また、回転対偶部以外の部分で部品同士の着脱が可能となるので、組立性の向上が図れる。この組立性の向上により、リンク機構201〜203の小型化も実現容易となる。
【0079】
可撓性ワイヤ4Aとしては、前記実施形態のリンク作動装置1Aと同様にものが用いられる。このリンク作動装置1Cも、前記実施形態と同様に、出力部材205に駆動装置(図示せず)を取付けて、医療用等の遠隔操作型ロボットとして使用される。その場合、前記同様の作用および効果が得られる。
【0080】
図12の実施形態のリンク機構部3は、リンク機構201〜203が鏡像対称タイプであるが、図14のリンク機構部3のように、リンク機構201〜203を回転対称タイプとしてもよい。回転対称タイプのリンク機構201〜203は、入力部材204および端部リンク部材201a〜203aと、出力部材205および端部リンク部材201c〜203cとの位置関係が、中央リンク部材201b〜203bの中心線に対して互いに回転対称となる位置構成になっている。図14では、入力部材204に対して出力部材205が所定の作動角をとった状態を示す。なお、図14は、入力部材204に支持された支持棒214a〜216aにギア部材234が設けられていないリンク機構部3を示している。
【0081】
図15および図16は、入力部材204の上にリンク機構用駆動源231を設置したリンク機構部3を示す。これらの例では、2つのリンク機構用駆動源231が設置され、これらリンク機構用駆動源231の出力軸を、入力側の2つの端部リンク部材201a,203aのアーム端部と連結された支持棒214a〜216aに、同軸的に連結させてある。リンク機構用駆動源231により、端部リンク部材201a〜203aの回転角位置を制御することで、出力部材205に取付けた駆動装置(図示せず)の姿勢を制御する。
【0082】
これらリンク機構部3のリンク機構201〜203は鏡像対称タイプであり、入力部材204と入力側の回転対偶部206a〜208a、出力部材205と出力側の回転対偶部206c〜208cを円周方向へ移動させ(幅方向に大きくし)、出力側の端部リンク部材201c〜203cと中央リンク部材201b〜203bの回転対偶部206b〜208b,206b〜208bの回転軸が入力部材204の中心軸に向いている。そのため、アーム角度(端部リンク部材のアーム両端部における両軸線がなす角度)が90°でなくても、入力側と出力側は幾何学的に同一形状となる。この結果、中央リンク部材201b〜203bと端部リンク部材201a〜203a,201c〜203cとの干渉を防ぐことができる。特に、図16の例は、リンク機構201〜203の内部空間Sが広く、リンク機構用駆動源231や回転角検出手段(図示せず)等の設置が容易となり、安定する重心の範囲が広くなるという利点がある。
【0083】
図17はさらに異なる実施形態を示し、このリンク機構部3は、リンク機構201,202,203,201´,202´,203´を6組としたことで、安定する重心の範囲を広くし、かつ剛性を高めることができる。
【0084】
また、他の実施形態として、入力側の端部リンク部材201a〜203aを支承する支持棒214a〜216aに回転角度センサ(図示せず)を設けるようにしてもよい。このようにすれば、リンク機構用駆動源231にサーボ機構を取付けなくてもよくなり,リンク機構用駆動源231のコンパクト化が図れ、また、電源投入時の原点出しも不要となる。
【0085】
前述の支持棒214a〜216aは軸受217a〜219aの回転軌道輪で支持され、その軸受217a〜219aの固定軌道輪は入力部材204の支持部材211a〜213aに固定されている。回転角度センサは、支持棒214a〜216aの内側一端部に設けた被検出部と、この被検出部に対向して入力部材204に取付けられた検出部とで構成されている。なお、被検出部を回転側、検出部を固定側に設置しているが、被検出部が±45°程度しか回転しないため、逆に、検出部を回転側、被検出部を固定側に設置してもよい。
【0086】
この被検出部はラジアル型で環状のものであり、例えば、環状のバックメタルと、その外周側に設けられ、磁極N,Sが交互に着磁された磁気発生部材とからなり、バックメタルを介して支持棒214a〜216aに固着されている。磁気発生部材は、例えばゴム磁石をバックメタルに加硫接着したものを用いればよく、また、この磁気発生部材は、プラスチック磁石や焼結磁石で形成されたものでもよく、その場合には、バックメタルは必ずしも必要ない。
【0087】
検出部は、磁束密度に対応した出力信号を発生させる片側磁界動作型あるいは交番磁界動作型の矩形出力の磁気センサからなる。この磁気センサは、磁気検出回路基板(図示せず)に搭載され、この磁気検出回路基板と共に樹脂ケース内に挿入した後に樹脂モールドされる。この樹脂ケースを入力部材204に固定することにより、磁気センサおよび磁気検出回路基板が入力部材204に取付けられる。磁気検出回路基板は、磁気センサへの電力供給及び磁気センサの出力信号を処理して外部に出力するための回路を実装した基板である。配線等は、リンク機構201〜203の内部空間Sを利用すればよい。
【0088】
したがって、支持棒214a〜216aの回転により被検出部が回転すると、検出部により磁気発生部材の磁束密度に対応した出力信号が発生し、支持棒214a〜216aの回転角度、つまり、端部リンク部材201a〜203aの回転角度を検出することが可能となる。なお、検出部を構成する磁気センサだけではA相あるいはZ相出力のエンコーダとして機能するが、磁気センサ以外に別の磁気センサを設ければ、AB相出力のエンコーダとすることが可能である。また、被検出部および検出部を絶対回転角度の検出ができる手段、例えば特開2003−148999号公報に開示された方法や、その他光学式やレゾルバ等の巻線型検出器とした方法を採用することができる。
【0089】
以下、可撓性ワイヤの異なる構成について説明する。
図18に示す可撓性ワイヤ4Bは、出力側の継手15と減速機32とを直接連結したものである。減速機32は減速機ハウジング32cと一体のフランジ部33を有し、このフランジ部33に、継手15の通孔21に対応する固定具挿通用の通孔34が複数設けられている。継手15の通孔21はねじ孔になっている。継手15のフランジ部20と減速機32のフランジ部33とを当接させ、減速機32側から通孔34に挿通したボルト35を、ねじ孔である通孔21に螺着させることで、継手15と減速機32とを連結する。
【0090】
また、この可撓性ワイヤ4Bは、インナワイヤ12の出力端12bが減速機32の入力軸32aに直接連結される。すなわち、インナワイヤ12の出力端12bには、前記カップリング19の代わりに歯車36が設けられ、この歯車36が入力軸32aに設けた歯車37と噛み合っている。この例では、歯車36は外歯歯車であり、歯車37は内歯歯車である。
【0091】
この構成の可撓性ワイヤ4Bは、減速機32を他の部材に固定して使用する。固定方法は限定しない。この構成によると、部品点数が少なくなるため、全体的にコンパクトにできる。それ以外は、前記実施形態と同じ構成である。なお、継手15の雄ねじ部材16と減速機32とを別部材とせずに、減速機32と雄ねじ部材16を一体化させてもよい。具体的には、減速機構ハウジング32cに、雄ねじ部18と円筒部19とを設ければよい。
【0092】
図19はこの発明の可撓性ワイヤの使用例を示す。この例は、図18の可撓性ワイヤ4Bにより、最終出力部が回転部である回転機構40を遠隔操作するようにしたものである。回転機構40は、駆動装置81(図8)に設けられる。回転機構40は、両端が軸受41で支持されたウォーム42と、このウォーム42と噛み合うウォームホイール43、このウォームホイール43を支持する最終出力部としての回転軸44と、ウォームホイール43の回転角を検出する位置検出手段であるロータリエンコーダ45とを備える。可撓性ワイヤ4Bにおける減速機32の出力軸32bが、カップリング46を介して、ウォーム42の一端と連結されている。回転軸44には、工具、計測具等の作業機器が直接または間接的に取付けられる。
【0093】
インナワイヤ12の入力端12aにカップリング29を介して回転駆動源6が連結され、この回転駆動源6によりインナワイヤ12が回転させられる。回転駆動源6は、コントローラ83(図8)により制御される。インナワイヤ12のトルクが、減速機32で減速されて回転機構40に伝達されて、回転軸44が回転する。減速機32を設けたことで大きなトルクを発生できるため、回転軸44を大きさトルクで回転させることができる。また、回転機構40に生じる摩擦に対しても、その摩擦に打ち勝つ力を発生できるため、インナワイヤ12の捩れ剛性が低くても、スティックスリップが起こりにくい。
【0094】
図20は可撓性ワイヤの異なる使用例を示す。この例は、図18の可撓性ワイヤ4Bにより、最終出力部が直動部である直動機構50を遠隔操作するようにしたものである。直動機構50は、駆動装置81(図8)に設けられる。直動機構50は、両端が軸受51で支持されたボールねじ52と、このボールねじ52に螺合するナット53とでなるボールねじ機構54を備え、前記ナット53に最終出力部としての直動部材55がボルト等(図示せず)で固定されている。ボールねじ機構54により、ボールねじ52の回転運動が直線運動に変換されて、直動部材55がボールねじ52の軸方向に直線移動する。直動部材55にはリニアスケール56が設置され、このリニアスケール56の目盛を位置検出手段であるリニアエンコーダ57により検出する。可撓性ワイヤ4Bにおける減速機32の出力軸32bが、カップリング46を介して、ボールねじ52の一端と連結されている。直動部材55には、工具、計測具等の作業機器が直接または間接的に取付けられる。
【0095】
インナワイヤ12の入力側にカップリング29を介して回転駆動源6が連結され、この回転駆動源6によりインナワイヤ12が回転させられる。回転駆動源6は、コントローラ83(図8)により制御される。インナワイヤ12のトルクが、減速機32で減速されて直動機構50に伝達されて、直動部材55が直線運動する。減速機32を設けたことで大きなトルクを発生できるため、直動部材55による大きさ推力が得られる。また、直動機構50に生じる摩擦に対しても、その摩擦に打ち勝つ力を発生できるため、インナワイヤ12の捩れ剛性が低くても、スティックスリップが起こりにくい。
【0096】
上記回転機構40や直動機構50の遠隔操作にあたっては、前記制御装置83a(図8)に手動で制御指令を入力して回転駆動源6の出力量を制御してもよいが、ロータリエンコーダ45またはリニアエンコーダ57の出力値を制御装置83aにフィードバックして、回転駆動源6の出力量を自動で制御させれば、遠隔操作の制御対象である前記機器の位置決め精度を向上させることができる。また、インナワイヤ12の回転が減速機32によって減速されて、回転機構40または直動機構50に現れるインナワイヤ12の捩れの影響が小さくなるため、ロータリエンコーダ45またはリニアエンコーダ57の位置決め分解能を高く保つことができ、高精度なフィードバック制御をできる。そのため、回転機構40や直動機構50を精度良く遠隔操作することができる。
【0097】
図19および図20は可撓性ワイヤ4Bを用いた例を示すが、可撓性ワイヤ4Aを用いても、回転機構40や直動機構50を精度良く遠隔操作することができる。これらの可撓性ワイヤ4A,4Bは、医療、機械加工等の分野で作業機器を遠隔操作するための回転力伝達手段として用いるのに適する。これらの可撓性ワイヤ4A,4Bを用いることで、作業機器の正確な位置決めや正確な動作が可能になる。
【0098】
可撓性ワイヤ4A、4Bのアウタチューブ11内に、転がり軸受13の潤滑剤を封入しても良い。図21は、可撓性ワイヤ4Aに適用した例である。同図において、インナワイヤ12の入力端12aおよび出力端12bと継手15との間にシール部材60を設けて、アウタチューブ11内をシール構造とすることで、潤滑剤が外部に漏れることを防止する。図例では、インナワイヤ12の入力端12aおよび出力端12bの外周に嵌合する筒状部材61と、継手15における雄ねじ部材16との間に、シール部材60を介在させてある。シール部材60を設ける代わりに、インナワイヤ12の入力端12aおよび出力端12bと継手15との間に滑り軸受(図示せず)を設けて、アウタチューブ11内をシール構造としても良い。潤滑剤としては、流動性の無いグリースを使用するのが良い。このように、アウタチューブ11内に潤滑剤を封入すれば、転がり軸受13の転がり性能を良好な状態に維持できる。
【0099】
また、図22に示すように、アウタチューブ11内に転がり軸受13の潤滑剤を流通させるようにしても良い。前記同様に、インナワイヤ12の入力端12aおよび出力端12bと継手15との間にシール部材(図示せず)を設けて、アウタチューブ11内をシール構造とすると共に、アウタチューブ11の両端に潤滑剤の入口62および出口63をそれぞれ設けて、潤滑剤供給装置64から供給される潤滑剤が前記入口62からアウタチューブ11内に入り、前記出口63からアウタチューブ11外へ出るようにしてある。出口63から出た潤滑剤を潤滑剤供給装置64に回収して、潤滑剤を循環させるようにしても良い。潤滑剤としては、流動性の高い潤滑油を使用するのが良い。このように、アウタチューブ11内を潤滑剤が流れる流路とすることにより、別の潤滑経路を設けることなく、転がり軸受13の潤滑を行うことができる。この場合も、転がり軸受13の転がり性能を良好な状態に維持できる。
【符号の説明】
【0100】
1A,1B,1C…リンク作動装置
4A,4B…可撓性ワイヤ
6…回転駆動源
11…アウタチューブ
12…インナワイヤ
12a…入力端
12b…出力端
13…転がり軸受
14I…内輪用ばね要素
14O…外輪用ばね要素
32…減速機
32a…入力軸
32b…出力軸
41…ワイヤ案内部材
43…中央リンク部材の軌道円
81…駆動装置
101,102,103…リンク機構
101a,102a,103a…入力側の端部リンク部材
101b,102b,103b…中央リンク部材
101c,102c,103c…出力側の端部リンク部材
104…入力部材
105…出力部材
106…可撓性ワイヤ挿通用の貫通孔
121…リンク機構用駆動源
200…リンク作動装置
201,202,203…リンク機構
201a,202a,203a…入力側の端部リンク部材
201b,202b,203b…中央リンク部材
201c,202c,203c…出力側の端部リンク部材
201´,202´,203´…リンク機構
204…入力部材
205…出力部材
206a,207a,208a…回転対偶部
206b,207b,208b…回転対偶部
206b,207b,208b…回転対偶部
206c,207c,208c…回転対偶部
231…リンク機構用駆動源
O…軌道円の中心
L…球面中心間の距離
PA…入力側の端部リンク部材の球面中心
PC…出力側の端部リンク部材の球面中心
S…内側空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部材に対し出力部材を、3組以上のリンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各リンク機構は、それぞれ前記入力部材および出力部材に一端が回転可能に連結された入力側および出力側の端部リンク部材と、これら入力側および出力側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなり、前記各リンク機構は、前記各リンク部材を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する入力側部分と出力側部分とが対称を成す形状であり、前記3組以上のリンク機構における2組以上のリンク機構に、これら2組以上の各リンク機構を動作させて前記出力部材の姿勢を制御するリンク機構用駆動源を設けたリンク作動装置において、
前記3組以上のリンク機構の配置の内側に通して、可撓性を有し前記入力部材および出力部材の並び方向に回転力を伝達する可撓性ワイヤを設けたことを特徴とするリンク作動装置。
【請求項2】
請求項1において、前記入力部材および出力部材にそれぞれ貫通孔を設け、各貫通孔に前記可撓性ワイヤを挿通したリンク作動装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記可撓性ワイヤは、前記中央リンク部材に固定され各リンク機構の内側に位置するワイヤ案内部材により案内されるリンク作動装置。
【請求項4】
請求項3において、前記ワイヤ案内部材を、その中心が前記中央リンク部材の軌道円の中心と合致する位置に設けたリンク作動装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記可撓性ワイヤは、可撓性を有するアウタチューブの内部に、両端がそれぞれ回転の入力端および出力端となる可撓性のインナワイヤを複数の転がり軸受によって回転自在に支持し、隣合う転がり軸受間に、これら転がり軸受に対して予圧を与えるばね要素を設けた構造としたリンク作動装置。
【請求項6】
請求項5において、前記ばね要素は、前記転がり軸受の内輪に予圧を与える内輪用ばね要素と、外輪に予圧を与える外輪用ばね要素とを有し、これら内輪用ばね要素と外輪用ばね要素を前記インナワイヤの長さ方向にわたり交互に配置したリンク作動装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、前記可撓性ワイヤの入力端側に、前記インナワイヤを回転させる回転駆動源を、前記インナワイヤの前記入力端と連結して設けたリンク作動装置。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれか1項において、前記可撓性ワイヤの出力端側に、前記インナワイヤの回転を減速する減速機を、前記インナワイヤの前記出力端と連結して設けたリンク作動装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、医療用機器に使用されるリンク作動装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のリンク作動装置の前記出力部材に、前記可撓性ワイヤから伝達される回転力により駆動する駆動装置を設けた遠隔操作型ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−240440(P2011−240440A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115095(P2010−115095)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ハーモニックドライブ
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】