説明

レシピ最適化方法及び基板処理システム

【課題】ユーザの作業負担を増加させることなく、レシピの最適化を自動的に行い、基板の処理品質の低下やばらつきを防止できるレシピ最適化方法及び基板処理システムを提供する。
【解決手段】複数の候補レシピをデータベース部31に記憶させ、各候補レシピを順次に使用して、基板Wの処理および検査を行う。レシピ最適化装置30は、基板検査装置20から送信された品質パラメータQPに基づいて、複数の候補レシピの中から仮最良レシピを選択する。また、レシピ最適化装置30は、仮最良レシピに基づいて新たに複数の候補レシピを作成する。このような候補レシピの作成と、基板Wの処理及び検査とを、品質パラメータが所定の基準値以上となるまで繰り返し、最良レシピを得る。これにより、ユーザの作業負担を増加させることなくレシピを自動的に最適化でき、基板の処理品質の低下やばらつきを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板、マイクロデバイス用基板等の基板の処理及び検査を行いつつ、基板の処理条件を示すレシピを最適化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の製造工程では、基板に対して種々の処理を行う基板処理装置が使用されている。基板処理装置は、処理の種類、処理の順序、処理時間、処理液の供給量などの種々の処理条件を示すレシピを読み込み、レシピにより指定される処理条件に従って基板の処理を行う。このようなレシピは、処理対象となる基板の種類ごとに用意される。従来では、ユーザが、リモートレシピエディタ等のツールを利用してレシピを作成し、作成されたレシピを基板処理装置に提供していた。
【0003】
レシピに基づいて基板の処理を行う従来の基板処理装置については、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−157973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ユーザは、予め実施される条件出しにより最適化されたレシピを基板処理装置に提供する。しかしながら、長期の使用により基板処理装置の各部が老朽化したり、基板処理装置の設置環境において気圧などの外的要因が変化したりすると、基板に対する最適な処理条件が変化する場合がある。このため、長期間に亘り一定のレシピに基づいて基板の処理を行うと、基板の処理品質の低下やばらつきが発生してしまう場合がある。
【0006】
このような基板の処理品質の低下やばらつきを防止するためには、例えば、ユーザが定期的にレシピを見直し、新たなレシピの作成して基板処理装置に提供することが考えられる。しかしながら、ユーザによる新たなレシピの作成や、それに付随する種々の作業は、ユーザの作業負担を増加させることとなるため、望ましくない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、ユーザの作業負担を増加させることなく、レシピの最適化を自動的に行い、基板の処理品質の低下やばらつきを防止できるレシピ最適化方法及び基板処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、基板の処理及び検査を行いつつ、基板の処理条件を示すレシピを最適化するレシピ最適化方法であって、複数の候補レシピを所定の記憶部に記憶させるレシピ記憶工程と、前記複数の候補レシピを順次に使用して、複数の基板を順次に処理する基板処理工程と、前記基板処理工程において処理された基板を順次に検査する基板検査工程と、所定の情報処理装置が、前記基板検査工程において取得された検査結果に基づいて、前記複数の候補レシピの中から最良レシピを選択する選択工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のレシピ最適化方法であって、前記情報処理装置が、前記選択工程において選択された最良レシピに基づいて、新たに複数の候補レシピを作成するレシピ作成工程を更に備え、前記レシピ作成工程において作成された候補レシピを使用して、前記基板処理工程、前記基板検査工程、及び前記選択工程を更に実行することを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のレシピ最適化方法であって、前記基板検査工程において取得される検査結果が所定の基準を満たすまで、前記レシピ作成工程と、前記基板処理工程と、前記基板検査工程と、前記選択工程とを繰り返すことを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項2または請求項3に記載のレシピ最適化方法であって、前記レシピ作成工程においては、最良レシピについて得られた検査結果と理想的な検査結果との差分に基づいて、新たな候補レシピを作成することを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項2から請求項4までのいずれかに記載のレシピ最適化方法であって、前記レシピ作成工程においては、新たに作成された複数の候補レシピに含まれる条件値を、部分的に増加または減少させることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、基板の処理及び検査を行いつつ、基板の処理条件を示すレシピを最適化する基板処理システムであって、基板に対して所定の処理を行う基板処理装置と、処理後の基板に対して所定の検査を行う基板検査装置と、前記基板処理装置および前記基板検査装置と通信可能に接続されたレシピ最適化装置と、を備え、前記レシピ最適化装置は、複数の候補レシピを記憶するレシピ記憶手段と、前記複数の候補レシピを順次に前記基板処理装置に送信する送信手段と、を有し、前記基板処理装置は、前記レシピ最適化装置から順次に受信した候補レシピを使用して複数の基板を順次に処理し、前記基板検査装置は、前記基板処理装置により処理された基板を順次に検査するとともに、検査結果を前記レシピ最適化装置に送信し、前記レシピ最適化装置は、前記基板検査装置から受信した検査結果に基づいて、前記複数の候補レシピの中から最良レシピを選択する選択手段を更に有することを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の基板処理システムであって、前記レシピ最適化装置は、前記選択手段により選択された最良レシピに基づいて、新たに複数の候補レシピを作成するレシピ作成手段を更に備え、前記レシピ作成手段により作成された複数の候補レシピを使用して、前記送信手段による候補レシピの送信と、前記基板処理装置による基板の処理と、前記基板検査装置による基板の検査と、前記選択手段による最良レシピの選択とを、更に実行させることを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の基板処理システムであって、前記基板検査装置により取得される検査結果が所定の基準を満たすまで、前記レシピ作成手段による新たな候補レシピの作成と、前記送信手段による候補レシピの送信と、前記基板処理装置による基板の処理と、前記基板検査装置による基板の検査と、前記選択手段による最良レシピの選択とを、繰り返すことを特徴とする。
【0016】
請求項9に係る発明は、請求項7または請求項8に記載の基板処理システムであって、前記レシピ作成手段は、最良レシピについて得られた検査結果と理想的な検査結果との差分に基づいて、新たな候補レシピを作成することを特徴とする。
【0017】
請求項10に係る発明は、請求項7から請求項9までのいずれかに記載の基板処理システムであって、前記レシピ作成手段は、新たに作成された複数の候補レシピに含まれる条件値を、部分的に増加または減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜5に係る発明によれば、レシピ最適化方法は、複数の候補レシピを所定の記憶部に記憶させるレシピ記憶工程と、複数の候補レシピを順次に使用して、複数の基板を順次に処理する基板処理工程と、基板処理工程において処理された基板を順次に検査する基板検査工程と、所定の情報処理装置が、基板検査工程において取得された検査結果に基づいて、複数の候補レシピの中から最良レシピを選択する選択工程と、を備える。このため、ユーザの作業負担を増加させることなく、レシピを自動的に最適化でき、基板の処理品質の低下やばらつきを防止できる。
【0019】
特に、請求項2に係る発明によれば、レシピ最適化方法は、情報処理装置が、選択工程において選択された最良レシピに基づいて、新たに複数の候補レシピを作成するレシピ作成工程を更に備え、レシピ作成工程において作成された候補レシピを使用して、基板処理工程、基板検査工程、及び選択工程を更に実行する。このため、よりよい候補レシピの中から最良レシピを選択できる。
【0020】
特に、請求項3に係る発明によれば、レシピ最適化方法は、基板検査工程において取得される検査結果が所定の基準を満たすまで、レシピ作成工程と、基板処理工程と、基板検査工程と、選択工程とを繰り返す。このため、所定の処理品質が得られるまで、レシピを自動的に改善できる。
【0021】
特に、請求項4に係る発明によれば、レシピ作成工程においては、最良レシピについて得られた検査結果と理想的な検査結果との差分に基づいて、新たな候補レシピを作成する。このため、より高い処理品質が得られる候補レシピを適切に作成できる。
【0022】
特に、請求項5に係る発明によれば、レシピ作成工程においては、新たに作成された複数の候補レシピに含まれる条件値を、部分的に増加または減少させる。このため、条件値が特定の値に固定されてしまうことを防止し、より多くの条件値を候補とすることができる。
【0023】
また、請求項6〜10に係る発明によれば、レシピ最適化装置は、複数の候補レシピを記憶するレシピ記憶手段と、複数の候補レシピを順次に基板処理装置に送信する送信手段と、を有し、基板処理装置は、レシピ最適化装置から順次に受信した候補レシピを使用して複数の基板を順次に処理し、基板検査装置は、基板処理装置により処理された基板を順次に検査するとともに、検査結果をレシピ最適化装置に送信し、レシピ最適化装置は、基板検査装置から受信した検査結果に基づいて、複数の候補レシピの中から最良レシピを選択する選択手段を更に有する。このため、ユーザの作業負担を増加させることなく、レシピを自動的に最適化でき、基板の処理品質の低下やばらつきを防止できる。
【0024】
特に、請求項7に係る発明によれば、レシピ最適化装置は、選択手段により選択された最良レシピに基づいて、新たに複数の候補レシピを作成するレシピ作成手段を更に備え、レシピ作成手段により作成された複数の候補レシピを使用して、送信手段による候補レシピの送信と、基板処理装置による基板の処理と、基板検査装置による基板の検査と、選択手段による最良レシピの選択とを、更に実行させる。このため、よりよい候補レシピの中から最良レシピを選択できる。
【0025】
特に、請求項8に係る発明によれば、基板処理システムは、基板検査装置により取得される検査結果が所定の基準を満たすまで、レシピ作成手段による新たな候補レシピの作成と、送信手段による候補レシピの送信と、基板処理装置による基板の処理と、基板検査装置による基板の検査と、選択手段による最良レシピの選択とを、繰り返す。このため、所定の処理品質が得られるまで、レシピを自動的に改善できる。
【0026】
特に、請求項9に係る発明によれば、レシピ作成手段は、最良レシピについて得られた検査結果と理想的な検査結果との差分に基づいて、新たな候補レシピを作成する。このため、より高い処理品質が得られる候補レシピを適切に作成できる。
【0027】
特に、請求項10に係る発明によれば、レシピ作成手段は、新たに作成された複数の候補レシピに含まれる条件値を、部分的に増加または減少させる。このため、条件値が特定の値に固定されてしまうことを防止し、より多くの条件値を候補とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
<1.基板処理システムの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理システム1の構成を示した図である。この基板処理システム1は、半導体ウェハである基板Wの製造工程において、基板Wの処理及び検査を行いつつ、基板Wの処理条件を示すレシピを最適化するためのシステムである。図1に示したように、基板処理システム1は、基板処理装置10と、基板検査装置20と、レシピ最適化装置30と、を備える。
【0030】
図2は、基板処理装置10の概略構成を示した図である。基板処理装置10は、複数枚の基板Wを一括して搬送しつつ処理する、いわゆるバッチ式の処理装置である。図2に示したように、基板処理装置10は、搬入出部11と、薬液処理部12と、多機能処理部13と、乾燥処理部14と、搬送ロボット15と、制御部16とを有する。
【0031】
薬液処理部12は、硫酸、アンモニア水、塩酸、フッ酸、過酸化水素水や、これらの混合液などの薬液を貯留する薬液槽12aと、複数枚の基板Wを保持しつつ昇降移動させるリフタ12bとを備える。薬液処理部12は、リフタ12bを下降させて、薬液槽12aに貯留された薬液中に複数枚の基板Wを浸漬させることにより、基板Wに対して薬液による洗浄処理を行う。
【0032】
多機能処理部13は、薬液や純水を順次に置換しつつ貯留する多機能槽13aと、複数枚の基板Wを保持しつつ昇降移動させるリフタ13bとを備える。多機能処理部13は、リフタ13bを下降させて多機能槽13aに貯留された液体中に複数枚の基板Wを浸漬させ、多機能槽13aに薬液や純水を順次に供給することにより、基板Wに対する洗浄処理を行う。
【0033】
乾燥処理部14は、純水を貯留する純水槽14aと、複数枚の基板Wを保持しつつ昇降移動させるリフタ14bとを備える。乾燥処理部14は、純水槽14aに貯留された純水中に複数枚の基板Wを浸漬させ、乾燥処理部14の内部空間を減圧した後、リフタ14bを上昇させて複数枚の基板Wを純水から引き上げることにより、基板Wに付着した水滴を除去する。
【0034】
搬送ロボット15は、一対のハンドにより複数枚の基板Wを一括して把持しつつ、搬入出部11と各処理部12,13,14との間で基板Wを搬送するための機構である。
【0035】
この基板処理装置10において基板Wの処理を行うときには、まず、複数枚の基板Wを収納したカセットCが搬入出部11にセットされる。搬送ロボット15は、カセットCから取り出された複数枚の基板Wを、薬液処理部12、多機能処理部13、及び乾燥処理部14に順次に搬送する。薬液処理部12、多機能処理部13、及び乾燥処理部14においては、基板Wに対してそれぞれ所定の処理が行われる。そして、処理後の基板Wは、搬送ロボット15により搬入出部11に搬送され、再びカセットCに収納される。
【0036】
制御部16は、基板処理装置10の各部(リフタ12b,13b,14b、搬送ロボット15や、給排液機構、減圧機構など)の動作を制御するための処理部である。制御部16は、例えば、CPUやメモリを有するコンピュータにより実現される。制御部16は、基板処理装置10の各部と通信可能に接続されている。また、制御部16は、レシピ最適化装置30とも通信可能に接続されている。制御部16は、レシピ最適化装置30からレシピが格納されたファイルを受信し、レシピにより指定された処理条件に従って各部の動作を制御することにより、基板Wの処理を進行させる。
【0037】
図1に戻る。基板検査装置20は、基板処理装置10から搬出された基板Wの検査を行うための装置である。基板検査装置20は、例えば、基板Wの主面におけるムラの検出、異物の検出、ウォーターマークの観察、膜圧の測定等の検査を、公知の検査方法により行う。なお、基板検査装置20において実施される検査項目は、上記のうちの一部であってもよく、また、上記以外の検査項目を含んでいてもよい。
【0038】
基板検査装置20は、各項目の検査結果を取得すると、これらの検査結果に基づき、検査した基板Wの品質パラメータQPを算出する。ここで、品質パラメータQPは、全ての検査項目において検査結果が理想値である場合には1となり、検査結果が理想値から外れるほど小さくなるような、0以上かつ1以下の値として算出される。すなわち、品質パラメータQPは、基板の処理品質を総合的に数値化したものである。
【0039】
基板検査装置20は、レシピ最適化装置30と通信可能に接続されている。基板検査装置20において算出された品質パラメータQPは、基板検査装置20からレシピ最適化装置30に送信される。
【0040】
レシピ最適化装置30は、基板処理装置10にレシピが格納されたファイルを送信するとともに、基板検査装置20から受信する品質パラメータQPに基づいてレシピを最適化するための装置である。レシピ最適化装置30は、例えば、CPUやメモリを有するコンピュータ(情報処理装置)により構成され、コンピュータが所定のプログラム32に従って動作することにより、レシピが格納されたファイルの送信や、レシピの最適化の処理を実現する。
【0041】
レシピ最適化装置30には、後述する複数の候補レシピR1,R2,…を記憶するデータベース部31が接続されている。データベース部31は、ハードディスク装置等の記憶装置により構成される。
【0042】
<2.レシピ最適化の手順について>
続いて、基板処理システム1において、基板Wの処理及び検査を行いつつレシピを最適化する手順について、図3のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0043】
まず、ユーザは、複数の候補レシピを作成し、作成された複数の候補レシピを、レシピ最適化装置30のデータベース部31に記憶させる(ステップS1)。本実施形態では、製品としての基板Wを処理しつつレシピの最適化を行うため、いずれの候補レシピも、経験上ある程度の品質が得られることが分かっているレシピ(つまり、必ずしも最良ではないものの製品に適用可能なレシピ)であることが望ましい。
【0044】
図4は、データベース部31に記憶された複数の候補レシピの例を示した図である。図4の例では、データベース部31に、5つの候補レシピR1〜R5が記憶されている。図4に示したように、複数の候補レシピR1〜R5は、テーブルTBの形式でデータベース部31に記憶され、候補レシピごとに条件値t1,t2,t3が規定されている。また、テーブルTBには、候補レシピごとに品質パラメータQPを記憶する領域が用意されている。
【0045】
本実施形態では、候補レシピの条件値t1,t2,t3は、薬液処理部12、多機能処理部13、及び乾燥処理部14の各処理部における処理時間を示す。例えば、候補レシピR1では、薬液処理部12において100秒間の浸漬処理を行い、多機能処理部13において50秒間の浸漬処理を行い、乾燥処理部14において150秒間の乾燥処理を行うこととなる。
【0046】
レシピ最適化装置30は、データベース部31に記憶された複数の候補レシピR1〜R5の中から1つの候補レシピRn(図4の例では、n=1,2,3,4,5のいずれか)を選択し、選択された候補レシピRnを基板処理装置10の制御部16へ送信する(ステップS2)。
【0047】
基板処理装置10は、レシピ最適化装置30から受信した候補レシピRnに従って基板Wの処理を行う(ステップS3)。すなわち、搬送ロボット15が、基板Wを薬液処理部12、多機能処理部13、及び乾燥処理部14へ順次に搬送し、各処理部12,13,14において基板Wに対してそれぞれ所定の処理が行われる。薬液処理部12、多機能処理部13、及び乾燥処理部14では、それぞれ、候補レシピRnにより指定された処理時間をかけて基板Wの処理が行われる。
【0048】
基板処理装置10における基板Wの処理が終了すると、ユーザまたは所定の搬送機構が、基板処理装置10の搬入出部11から基板Wを取り出し、処理後の基板Wを基板検査装置20へ搬送する(ステップS4)。
【0049】
続いて、基板検査装置20は、基板Wに対して所定の検査を行う(ステップS5)。基板検査装置20は、例えば、基板Wの主面におけるムラの検出、異物の検出、ウォーターマークの観察、膜圧の測定等の検査を、公知の検査方法により行う。基板Wの検査が終了すると、基板検査装置20は、取得した検査結果に基づき、0以上1以下の数値である品質パラメータQPを算出する。そして、基板検査装置20は、算出された品質パラメータQPをレシピ最適化装置30へ送信する(ステップS6)。
【0050】
レシピ最適化装置30は、基板検査装置20から品質パラメータQPを受信すると、受信した品質パラメータQPを候補レシピRnに対応させて記憶する(ステップS7)。具体的には、データベース部31のテーブルTBにおいて、候補レシピRnの品質パラメータの欄に、受信した品質パラメータQPを記録する。
【0051】
その後、レシピ最適化装置30は、全ての候補レシピR1〜R5に対応する品質パラメータQPを取得したかどうかを判断する(ステップS8)。未選択の候補レシピ、すなわち、当該候補レシピに基づく基板Wの処理および処理後の基板Wの検査が実施されておらず、当該候補レシピに対応する品質パラメータQPを取得していない候補レシピがある場合には(ステップS8においてNo)、ステップS2に戻り、未選択の候補レシピを1つ選択して、上記のステップS2〜S8の処理を繰り返す。
【0052】
ステップS2〜S8の処理を繰り返すことにより、やがて、レシピ最適化装置30は、全ての候補レシピR1〜R5に対応する品質パラメータQPを取得する。図5は、全ての候補レシピR1〜R5に対応する品質パラメータQPの取得が完了したテーブルTBの例を示している。レシピ最適化装置30は、このように全ての候補レシピR1〜R5に対応する品質パラメータQPを取得すると(ステップS8においてYes)、全ての品質パラメータQPが、予め設定された基準値以上となっているかどうかを判断する(ステップS9)。
【0053】
取得された品質パラメータQPの中に、基準値未満の品質パラメータQPがある場合には(ステップS9においてNo)、レシピ最適化装置30は、最も高い品質パラメータQPを得た候補レシピ(図5の例では、候補レシピR1)を、その時点における仮最良レシピRaとして指定する。そして、レシピ最適化装置30は、仮最良レシピRaに基づいて、新たに複数の候補レシピを作成する(ステップS10)。
【0054】
ここで、ステップS10における新たな候補レシピの作成手順について、図6のフローチャートを参照しつつ、以下に説明する。
【0055】
仮最良レシピRaから新たな候補レシピを作成するときには、まず、仮最良レシピRaについて得られた品質パラメータQPと、品質パラメータの理想値である1との差分dを算出する(ステップS101)。図5の例では、仮最良レシピRaについて得られた品質パラメータQPは0.9456であったので、差分dは、d=1−0.9456=0.0544≒0.05となる。差分dは、仮最良レシピRaを使用したときの基板Wの品質が、理想状態からどの程度の割合で離れているかを示す。
【0056】
次に、算出された差分dと、仮最良レシピRaの各条件値t1,t2,t3とを掛け合わせることにより、仮最良レシピRaの各条件値t1,t2,t3に対する調整値Δt1,Δt2,Δt3を算出する(ステップS102)。図5の例では、仮最良レシピRaの各条件値は、t1=100,t2=50,t3=150であったので、それぞれの調整値は、Δt1=d・t1=5,Δt2=d・t2=2.5≒3,Δt3=d・t3=7.5≒8となる。
【0057】
その後、仮最良レシピRaの各条件値t1,t2,t3に、調整値Δt1,Δt2,Δt3をそれぞれ加算および減算することにより、新たな条件値t1,t2,t3を算出する(ステップS103)。上記の例では、新たな条件値t1は、t1±Δt1=100±5=105,95となり、新たな条件値t2は、t2±Δt2=50±3=53,47となり、新たな条件値t3は、t3±Δt3=150±8=158,142となる。
【0058】
そして、レシピ最適化装置30は、算出された新たな条件値t1,t2,t3を組み合わせることにより、新たに8つの候補レシピR1〜R8を作成する(ステップS104)。図7は、新たに作成された8つの候補レシピR1〜R8の例を示した図である。新たに作成された8つの候補レシピR1〜R8は、図7に示したように、データベース部31のテーブルTBに記憶される。
【0059】
更に、レシピ最適化装置30は、図8に示したように、新たな候補レシピR1〜R8の中の一部の条件値を僅かに変化させる(ステップS105)。図8の例では、新たな候補レシピR4の条件値t1と、新たな候補レシピR8の条件値t3とを、僅かに変化させているが、変化させる対象となる候補レシピや条件値は、ランダムに選択すればよい。条件値の変化率は、例えば1%程度とすればよく、また、増加と減少とは、例えばそれぞれ1/2の確率で発生させればよい。このように、一部の条件値を僅かに変化させると、作成される候補レシピの条件値が特定の値に固定されてしまう(局所解となる)ことが防止される。従って、より多くの条件値を候補として検討できる。
【0060】
図3に戻る。新たな候補レシピR1〜R8が作成されると、レシピ最適化装置30は、新たな候補レシピR1〜R8の中から1つの候補レシピRnを選択し、選択された候補レシピRnを基板処理装置10へ送信する(ステップS2)。その後、基板処理システム1は、ステップS2〜S8の処理を繰り返し、新たな候補レシピR1〜R8のそれぞれに対応する品質パラメータQPを取得する。図9は、新たな候補レシピR1〜R8のそれぞれに対応する品質パラメータQPの取得が完了したテーブルTBの例を示している。
【0061】
その後、レシピ最適化装置30は、全ての候補レシピR1〜R8に対応する品質パラメータQPが、予め設定された基準値以上となっているかどうかを判断する(ステップS9)。そして、基準値未満の品質パラメータQPがある場合には(ステップS9においてNo)、レシピ最適化装置30は、再び仮最良レシピRaの指定と、仮最良レシピRaに基づく新たな候補レシピR1〜R8の作成とを行う(ステップS10)。
【0062】
ステップS2〜S10の処理を繰り返すと、やがて、全ての候補レシピR1〜R8に対応する品質パラメータQPが、基準値以上となる。図10は、全ての候補レシピR1〜R8に対応する品質パラメータQPが基準値以上になったときの、テーブルTBの例を示している。このように、全ての候補レシピR1〜R8に対応する品質パラメータQPが基準値以上になると(ステップS9においてYes)、基板処理システム1は、最も高い品質パラメータQPを得た候補レシピ(図10の例では、候補レシピR2)を最良レシピRbとして指定する。そして、最良レシピRbを基板処理装置10に送信して、レシピの最適化を終了する。
【0063】
その後、基板処理装置10では、最良レシピRbに従って基板Wの処理を行うが、時間の経過や気圧の変化により基板Wの処理品質が低下してきたときには、レシピの最適化を再び行う。例えば、基板検査装置による検査結果や周囲の気圧を常時監視しておき、検査結果が所定の基準よりも悪化した場合や、周囲の気圧が所定の基準以上に変化した場合に、上記のようなレシピの最適化を自動的に再開させるようにすればよい。
【0064】
以上のように、本実施形態の基板処理システム1では、複数の候補レシピR1,R2,…をデータベース部31に記憶させ、複数の候補レシピR1,R2,…を順次に使用して、複数の基板Wを順次に処理する。そして、レシピ最適化装置30が、基板検査装置20から送信された品質パラメータQPに基づいて、複数の候補レシピR1,R2,…から最良レシピRb(又は仮最良レシピRa)を選択する。このため、ユーザの作業負担を増加させることなくレシピを自動的に最適化でき、基板の処理品質の低下やばらつきを防止できる。
【0065】
また、本実施形態の基板処理システム1は、仮最良レシピRaに基づいて、新たに複数の候補レシピR1〜R8を作成する。そして、新たに作成された複数の候補レシピR1〜R8を使用して、基板Wの処理、基板Wの検査、および最良レシピRb(又は仮最良レシピRa)の選択を更に実行する。このため、よりよい候補レシピの中から、最良レシピRb(又は仮最良レシピRa)を選択できる。
【0066】
また、本実施形態の基板処理システム1は、全ての候補レシピR1,R2,…に対応する品質パラメータQPが、予め設定された基準値以上となるまで、新たな候補レシピの作成、基板Wの処理、基板Wの検査、および仮最良レシピRaの選択を繰り返す。このため、所定の処理品質が得られるまで、レシピを自動的に改善できる。
【0067】
また、本実施形態の基板処理システム1は、仮最良レシピRaについて得られた品質パラメータQPと、品質パラメータの理想値である1との差分dに基づいて、新たな候補レシピR1〜R8を作成する。このため、より高い処理品質が得られる候補レシピR1〜R8を適切に作成できる。
【0068】
<3.変形例>
以上、本発明の主たる実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0069】
上記の実施形態では、全ての候補レシピR1,R2,…に対応する品質パラメータQPが所定の基準値以上となるまでステップS2〜S10の処理を繰り返していたが、基準値以上となる品質パラメータQPが1つ得られた時点で、レシピの最適化を終了させてもよい。この場合には、基準値以上となる品質パラメータQPを得た1つの候補レシピを、最終的な最良レシピRbとして指定すればよい。
【0070】
また、上記の実施形態では、全ての候補レシピR1,R2,…に対応する品質パラメータQPが所定の基準値以上になると、レシピの最適化を終了させていたが、全ての候補レシピR1,R2,…に対応する品質パラメータQPが基準値以上になった後にも、引き続きステップS2〜S10の処理を繰り返してもよい。すなわち、基板処理装置10において基板Wの処理が行われている間には、レシピの最適化の処理を継続的に行うようにしもよい。
【0071】
また、上記の実施形態では、レシピは3つの条件値t1,t2,t3を有していたが、レシピが有する条件値の数は2つ以下であってもよく、あるいは、4つ以上であってもよい。また、レシピは、処理時間以外の、例えば、処理液の濃度、処理液の供給量、処理液の温度等を、条件値として有するものであってもよい。
【0072】
また、上記の実施形態では、基板処理装置10と基板検査装置20とが別体となっていたが、基板処理装置10および基板検査装置20は、一体化された装置となっていてもよい。また、基板処理装置10および基板検査装置20は、それぞれ複数の装置を組み合わせて構成されたものであってもよい。
【0073】
また、上記の実施形態では、基板処理装置10は、薬液処理部12、多機能処理部13、及び乾燥処理部14を有するものであったが、基板処理装置は、基板Wに対して他の処理を行う処理部を有するものであってもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、基板処理装置10は、複数枚の基板Wを一括して搬送しつつ処理するバッチ式の基板処理装置であったが、基板処理装置は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置であってもよい。
【0075】
また、上記の実施形態では、基板処理装置10は、半導体ウエハである基板Wを処理対象としていたが、基板処理装置は、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、光ディスク用基板、マイクロデバイス用基板等の他の基板を処理対象とするものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】基板処理システムの構成を示した図である。
【図2】基板処理装置の概略構成を示した図である。
【図3】基板の処理及び検査を行いつつレシピを最適化する手順を示したフローチャートである。
【図4】複数の候補レシピの例を示した図である。
【図5】品質パラメータの取得が完了したテーブルの例を示した図である。
【図6】新たな候補レシピの作成手順を示したフローチャートである。
【図7】新たに作成された8つの候補レシピの例を示した図である。
【図8】新たに作成された8つの候補レシピの中の一部の条件値を僅かに変化させた例を示した図である。
【図9】品質パラメータの取得が完了したテーブルの例を示した図である。
【図10】全ての候補レシピに対応する品質パラメータが基準値以上になったときのテーブルの例を示した図である。
【符号の説明】
【0077】
1 基板処理システム
10 基板処理装置
11 搬入出部
12 薬液処理部
13 多機能処理部
14 乾燥処理部
15 搬送ロボット
16 制御部
20 基板検査装置
30 レシピ最適化装置
31 データベース部
QP 品質パラメータ
R1〜R8,Rn 候補レシピ
Ra 仮最良レシピ
Rb 最良レシピ
TB テーブル
W 基板
d 差分
t1,t2,t3 条件値
Δt1,Δt2,Δt3 調整値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の処理及び検査を行いつつ、基板の処理条件を示すレシピを最適化するレシピ最適化方法であって、
複数の候補レシピを所定の記憶部に記憶させるレシピ記憶工程と、
前記複数の候補レシピを順次に使用して、複数の基板を順次に処理する基板処理工程と、
前記基板処理工程において処理された基板を順次に検査する基板検査工程と、
所定の情報処理装置が、前記基板検査工程において取得された検査結果に基づいて、前記複数の候補レシピの中から最良レシピを選択する選択工程と、
を備えることを特徴とするレシピ最適化方法。
【請求項2】
請求項1に記載のレシピ最適化方法であって、
前記情報処理装置が、前記選択工程において選択された最良レシピに基づいて、新たに複数の候補レシピを作成するレシピ作成工程を更に備え、
前記レシピ作成工程において作成された候補レシピを使用して、前記基板処理工程、前記基板検査工程、及び前記選択工程を更に実行することを特徴とするレシピ最適化方法。
【請求項3】
請求項2に記載のレシピ最適化方法であって、
前記基板検査工程において取得される検査結果が所定の基準を満たすまで、前記レシピ作成工程と、前記基板処理工程と、前記基板検査工程と、前記選択工程とを繰り返すことを特徴とするレシピ最適化方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のレシピ最適化方法であって、
前記レシピ作成工程においては、最良レシピについて得られた検査結果と理想的な検査結果との差分に基づいて、新たな候補レシピを作成することを特徴とするレシピ最適化方法。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれかに記載のレシピ最適化方法であって、
前記レシピ作成工程においては、新たに作成された複数の候補レシピに含まれる条件値を、部分的に増加または減少させることを特徴とするレシピ最適化方法。
【請求項6】
基板の処理及び検査を行いつつ、基板の処理条件を示すレシピを最適化する基板処理システムであって、
基板に対して所定の処理を行う基板処理装置と、
処理後の基板に対して所定の検査を行う基板検査装置と、
前記基板処理装置および前記基板検査装置と通信可能に接続されたレシピ最適化装置と、
を備え、
前記レシピ最適化装置は、
複数の候補レシピを記憶するレシピ記憶手段と、
前記複数の候補レシピを順次に前記基板処理装置に送信する送信手段と、
を有し、
前記基板処理装置は、前記レシピ最適化装置から順次に受信した候補レシピを使用して複数の基板を順次に処理し、
前記基板検査装置は、前記基板処理装置により処理された基板を順次に検査するとともに、検査結果を前記レシピ最適化装置に送信し、
前記レシピ最適化装置は、
前記基板検査装置から受信した検査結果に基づいて、前記複数の候補レシピの中から最良レシピを選択する選択手段
を更に有することを特徴とする基板処理システム。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理システムであって、
前記レシピ最適化装置は、
前記選択手段により選択された最良レシピに基づいて、新たに複数の候補レシピを作成するレシピ作成手段
を更に備え、
前記レシピ作成手段により作成された複数の候補レシピを使用して、前記送信手段による候補レシピの送信と、前記基板処理装置による基板の処理と、前記基板検査装置による基板の検査と、前記選択手段による最良レシピの選択とを、更に実行させることを特徴とする基板処理システム。
【請求項8】
請求項7に記載の基板処理システムであって、
前記基板検査装置により取得される検査結果が所定の基準を満たすまで、前記レシピ作成手段による新たな候補レシピの作成と、前記送信手段による候補レシピの送信と、前記基板処理装置による基板の処理と、前記基板検査装置による基板の検査と、前記選択手段による最良レシピの選択とを、繰り返すことを特徴とする基板処理システム。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の基板処理システムであって、
前記レシピ作成手段は、最良レシピについて得られた検査結果と理想的な検査結果との差分に基づいて、新たな候補レシピを作成することを特徴とする基板処理システム。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれかに記載の基板処理システムであって、
前記レシピ作成手段は、新たに作成された複数の候補レシピに含まれる条件値を、部分的に増加または減少させることを特徴とする基板処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−67812(P2010−67812A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233038(P2008−233038)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】