説明

レジスト組成物

【課題】優れた形状、DOF及びMEFを有するパターンを形成するレジスト組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】式(AA)で表される塩と、式(II)で表される化合物に由来する繰り返し単位を有する樹脂とを含むレジスト組成物。


[式中、Q及びQはF又はペルフルオロアルキル基;Xは単結合又は2価の飽和炭化水素基;Tは脂環式炭化水素基、該基に含まれるHは、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、グリシジルオキシ基又はアシル基で置換されていてもよく、該基に含まれる−CH−は、少なくとも1つの−SO−で置き換わり、さらに−CO−、−O−、−S−等で置き換わっていてもよい;Zは有機カチオン;Rは、H、ハロゲン原子又はハロゲン原子含有アルキル基;Xは、−CH−、−O−又は−S−を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の微細加工においては、高い解像度でパターンを形成することが望ましい。
特許文献1には、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、メタクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル及びα−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンを、50:25:25のモル比で仕込み、重合させてなる樹脂と、トリフェニルスルホニウム1−((3−ヒドロキシアダマンチル)メトキシカルボニル)ジフルオロメタンスルホナートからなる酸発生剤と、2,6−ジイソプロピルアニリンからなるクエンチャーと、溶剤とからなる化学増幅型フォトレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−257078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のレジスト組成物では、得られるパターンの形状、フォーカスマージン(DOF)及びマスクエラーファクター(MEF)が必ずしも満足できるものではない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]式(AA)で表される塩と、式(II)で表される化合物に由来する繰り返し単位を有する樹脂とを含むレジスト組成物。

[式(AA)中、
及びQは、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
は、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜17の2価の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
Tは、炭素数4〜36の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシジルオキシ基又は炭素数2〜4のアシル基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、少なくとも1つの−SO−で置き換わっており、さらに、−CO−、−O−、−S−、−SO−又は−N(R)−で置き換わっていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表す。
は、有機カチオンを表す。]

[式(II)中、
は、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
Xは、−CH−、−O−又は−S−を表す。]
【0006】
[2]Tが、式(T1)で表される基である[1]記載のレジスト組成物。

[式(T1)中、
環に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシジルオキシ基又は炭素数2〜4のアシル基で置換されていてもよく、環に含まれる−CH−は、少なくとも1つの−SO−で置き換わっており、さらに、−CO−、−O−、−S−、−SO−又は−N(R)−で置き換わっていてもよい。Rは、上記と同じ意味を表す。
*は、Xとの結合手を表す。
は、酸素原子又はメチレン基を表す。]
【0007】
[3]Tが、式(T2)で表される基である[1]又は[2]記載のレジスト組成物。

[式(T2)中、
環に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシドキシ基又は炭素数2〜4のアシル基で置換されていてもよく、環に含まれる−CH−は、−CO−、−O−、−S−、−SO−又は−N(R)−で置き換わっていてもよい。R及び*は、上記と同じ意味を表す。]
【0008】
[4]Xが、式(x−1)で表される基である[1]〜[3]のいずれか記載のレジスト組成物。

[式(x−1)中、
は、炭素数1〜16の2価の飽和炭化水素基を表す。
は、単結合又は炭素数1〜16の2価の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−又は−N(R)−で置き換わっていてもよく、該飽和炭化水素基に含まれる水素原子はフッ素原子、ヒドロキシル基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。Rは、水素原子あるいは炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表す。
mは0〜2の整数を表す。]
【0009】
[5]Xが、*−CO−O−(*は、−C(Q)(Q)−との結合手を表す)である[1]〜[4]のいずれか記載のレジスト組成物。
【0010】
[6]Zが、アリールスルホニウムカチオンである[1]〜[5]のいずれか記載のレジスト組成物。
【0011】
[7]樹脂は、さらに酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸の作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂である[1]〜[6]のいずれか記載のレジスト組成物。
【0012】
[8]さらに塩基性化合物を含有する[1]〜[7]のいずれか記載のレジスト組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明のレジスト組成物によれば、優れた形状、DOF及びMEFを有するパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では、特に断りのない限り、同様の置換基を有するいずれの化学構造式も、炭素数を適宜選択しながら、後述する具体的な各置換基を適用することができる。直鎖状、分岐状又は環状いずれかをとることができるものは、特記ない限りそのいずれをも含み、また、同一の基において、直鎖状、分岐状及び/又は環状の部分構造が混在していてもよい。立体異性体が存在する場合は、それらの立体異性体の全てを包含する。
さらに、「(メタ)アクリル系モノマー」とは、「CH2=CH−CO−」又は「CH2=C(CH3)−CO−」の構造を有するモノマーの少なくとも1種を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」とは、それぞれ「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種」並びに「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0015】
本発明のレジスト組成物は、式(AA)で表される塩と、式(II)で表される化合物に由来する繰り返し単位を有する樹脂とを含む。
【0016】
<式(AA)で表される塩(以下、塩(AA)と記載することがある)>

[式(AA)中、
及びQは、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
は、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜17の2価の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
Tは、炭素数4〜36の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシジルオキシ基又は炭素数2〜4のアシル基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、少なくとも1つの−SO−で置き換わっており、さらに、−CO−、−O−、−S−、−SO−又は−N(R)−で置き換わっていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表す。
は、有機カチオンを表す。]
【0017】
ペルフルオロアルキル基としては、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロ−sec−ブチル基、ペルフルオロ−tert−ブチル基、ペルフルオロ−n−ペンチル基、ペルフルオロ−n−ヘキシル基などが挙げられる。なかでも、ペルフルオロメチル基が好ましい。
【0018】
2価の飽和炭化水素基としては、直鎖、分岐状又は環式飽和炭化水素が挙げられる。具体的には、アルキレン基、シクロアルキレン基を含む2価の基が挙げられる。
アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、sec−ブチレン基及びtert−ブチレン基などが挙げられる。
シクロアルキレン基を含む2価の基としては、式(X−A)〜式(X−C)で表される基が挙げられる。

[式(X−A)〜式(X−C)中、X1A及びX1Bは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表し、該アルキレン基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。ただし、式(X−A)〜式(X−C)で表される基の炭素数は1〜17である。]
【0019】
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、イソボルニル基などのシクロアルキル基が挙げられる。
【0020】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキトキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基、2−エチルヘキトキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。
【0021】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、p−メチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−アダマンチルフェニル基;トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−メチル−6−エチルフェニル等の芳香族炭化水素基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、トリチル、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
アシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブチリル等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などのアルキル基が挙げられる。
【0022】
式(AA)で表される塩のアニオンにおいて、Q1およびQ2は、それぞれ独立にフッ素原子または−CFであることが好ましく、両方ともフッ素原子がより好ましい。
【0023】
における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数7〜21のアラルキル基、グリシジルオキシ基あるいは炭素数2〜4のアシル基等が挙げられる。
【0024】
における飽和炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わった基としては、例えば、−X11−O−、−X11−CO−O−、−X11−O−CO−、−X11−O−X11−、−O−X11−、−CO−O−X11−等が挙げられる。
ここで、X11は、互いに独立に、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜15の飽和炭化水素基を表す。ただし、この飽和炭化水素基に含まれるメチレン基が置換された基において、上記の各基の主鎖を構成する原子数は、1〜17である。
【0025】
としては、好ましくは、式(X−1)で表される基が挙げられる。

[式(X−1)中、
a1は、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜15の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。*は、−C(Q)(Q)−との結合手を表す。]
【0026】
としては、式(x−1)で表される基であることが好ましい。

[式(x−1)中、
は、炭素数1〜16の飽和炭化水素基を表す。
は、単結合又は炭素数1〜16の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−又は−N(R)−で置き換わっていてもよく、該飽和炭化水素基に含まれる水素原子はフッ素原子、ヒドロキシル基、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表す。
mは0〜2の整数を表す。]
【0027】
式(x−1)で表される基は、X及びXが、アルキレン基であることが好ましい。
また、mは0であることが好ましい。
【0028】
としては、具体的には、下記の基が挙げられる。

【0029】
特に、式(x−1)で表される基としては、以下のものが挙げられる。

なかでも、Xは、好ましくは、*−CO−O−(*は、−C(Q)(Q)−との結合手を表す)である。
【0030】
Tは、置換基を有してもよい炭素数4〜36の脂環式炭化水素基が適している。
特に、Tは、式(T0)で表される基であることが適しており、なかでも、式(T0a)で表される基であることが好ましい。
また、Tが、式(T1)で表される基であることが好ましく、なかでも、式(T1a)で表される基であることがより好ましい。
さらに、Tが、式(T2)で表される基であることがより好ましく、なかでも、式(T2a)で表される基であることがさらに好ましい。


[式中、
環に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシジルオキシ基又は炭素数2〜4のアシル基で置換されていてもよい。
環に含まれるメチレン基は、T2及びT2aのように、少なくとも1つの−SO−で置換されており、さらに、カルボニル基、酸素原子、硫黄原子、−SO−又は−N(R)−で置換されていてもよい。
は、上記と同じ意味を表す。
*はXとの結合手を示す。
は、酸素原子又はメチレン基を表す。]
【0031】
Tとしては、例えば、下記のもの等が例示される。

【0032】

【0033】

【0034】

【0035】
式(AA)で表される塩のアニオンとしては、例えば、下記のもの等が例示される。

【0036】

【0037】

【0038】

【0039】

【0040】
式(AA)で表される塩におけるZとしては、例えば、式(IXz)、式(IXb)、式(IXc)又は式(IXd)などのカチオン等が挙げられる。
【0041】

[式(IXz)中、P、P及びPは、互いに独立に、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基あるいは炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。
、P及びPのいずれかがアルキル基である場合、該アルキル基は、水酸基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルコキシ基あるいは炭素数3〜12の環式炭化水素基で置換されていてもよく、
、P及びPのいずれかが脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素である場合には、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルコキシ基あるいは炭素数4〜36の脂環式炭化水素を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシジルオキシ基あるいは炭素数2〜4のアシル基で置換されていてもよい。
式(IXb)中、P及びPは、互いに独立に、水素原子、水酸基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基あるいは炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
【0042】
式(IXc)中、P及びPは、互いに独立に、直鎖状又は分岐状炭素数1〜12のアルキル基あるいは炭素数3〜12のシクロアルキル基を表すか、PとPとが一緒になって、炭素数3〜12の環を形成してもよい。
は、水素原子を表し、Pは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表すか、PとPとが一緒になって、炭素数3〜12の環を形成してもよい。
【0043】
式(IXd)中、P10〜P21は、互いに独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
Eは、硫黄原子又は酸素原子を表す。
mは、0又は1を表す。]
【0044】
アルキル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルキル基等は、上記と同様である。
環式炭化水素基としては、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる
環としては、3員環〜12員環(好ましくは3員環〜7員環)が挙げられ、これらの環の−CH−は、−O−、−S−又は−CO−で置き換わっていてもよい。具体的には、チオラン−1−イウム環(テトラヒドロチオフェニウム環)、チアン−1−イウム環、1,4−オキサチアン−4−イウム環、オキソシクロヘプタン環、オキソシクロヘキサン環、オキソノルボルナン環、オキソアダマンタン環等が挙げられる。
【0045】
前記の式(IXz)で表されるカチオンの中でも、例えば、式(IXa)で表されるカチオン等が好ましい。

[式(IXa)中、
〜Pは、互いに独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルコキシ基あるいは炭素数4〜36の脂環式炭化水素を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシジルオキシ基あるいは炭素数2〜4のアシル基で置換されていてもよい。]
【0046】
特に、脂環式炭化水素基として、アダマンチル骨格、イソボルニル骨格を含むものが適しており、好ましくは2−アルキル−2−アダマンチル基、1−(1−アダマンチル)−1−アルキル基及びイソボルニル基等が挙げられる。
【0047】
式(IXa)で表されるカチオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。


【0048】
式(IXa)で表されるカチオンの中でも、式(IXe)で表されるカチオンが、その製造が容易であること等の理由により、好ましく挙げられる。
【0049】

[式(IXe)中、
22、P23及びP24は、互いに独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルキル基あるいは直鎖状又は分岐状の炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。]
【0050】
前記式(IXb)で表されるカチオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。

【0051】
前記式(IXc)で表されるカチオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。

【0052】
前記式(IXd)で表されるカチオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。

【0053】

なかでも、Zは、アリールスルホニウムカチオンであるものが好ましい。
上述したアニオン及びカチオンは、任意に組合せることができる。
【0054】
例えば、式(AA)で表される塩としては、以下のものが挙げられる。

【0055】

【0056】

【0057】

【0058】

【0059】

【0060】

【0061】
塩(AA)は、例えば以下の方法によって製造することができる。
例えば、Xが−CO−O−である式(IA)で表される塩は、式(IA−a)で表される塩と式(IA−b)で表される化合物とを酸触媒下、溶剤中で反応させることにより得ることができる。

酸触媒としては、硫酸等が挙げられる。
溶剤としては、モノクロロベンゼン等が挙げられる。
式(IA−b)で表される塩としては、特開第2008−13551号公報に記載された方法によって製造することができる。
【0062】
式(IA−b)で表される化合物としては、以下で表される化合物などが挙げられる。

【0063】
式(AA)で表される塩は、レジスト組成物の酸発生剤として用いることができ、単独で用いてもよいし、複数種を同時に用いてもよい。
また、レジスト組成物は、酸発生剤として、さらに、式(AA)で表される塩以外の公知の塩、式(AA)で表される塩に含まれるカチオン及び公知のアニオンからなる塩並びに式(AA)で表される塩に含まれるアニオン及び公知のカチオンからなる塩等を含んでいてもよい。
【0064】
酸発生剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上(より好ましくは3質量部以上)、好ましくは30質量部以下(より好ましくは25質量部以下)である。
【0065】
<式(II)で表される化合物に由来する繰り返し単位を有する樹脂>

[式(II)中、
は、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
Xは、−CH−、−O−又は−S−を表す。]
ハロゲン原子を有してもよいアルキル基としては、例えば、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロsec−ブチル基、ペルフルオロtert−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基などが挙げられる。
【0066】
式(II)で表される化合物では、Rは、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
式(II)で表される化合物としては、下記の化合物が挙げられる。
【0067】

【0068】
本発明のレジスト組成物に含まれる樹脂は、式(II)で表されるモノマーに由来する繰り返し単位に加えて、さらに、酸に不安定な基を有し、アルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸の作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂であることが好ましい。
【0069】
本発明のレジスト組成物において、酸発生剤である式(AA)で示される塩は、露光により酸を発生し、樹脂中の基であって酸に不安定な基に対して触媒的に作用して開裂させ、樹脂をアルカリ水溶液に可溶なものとする。かかるレジスト組成物は化学増幅型ポジ型レジスト組成物として好適である。
【0070】
つまり、「酸に不安定な基」を有する樹脂とは、酸との接触前ではアルカリ水溶液に不溶又は難溶であるが、酸との接触後にはアルカリ水溶液に可溶となることを意味する。このような樹脂は、分子内にある親水性基の一部又は全部が、酸との接触により脱離し得る保護基により保護されているものであり、樹脂が酸と接触すると当該保護基が脱離して、樹脂はアルカリ水溶液に可溶な樹脂に転化する。当該保護基により保護されている親水性基を以下、「酸に不安定な基」ということにする。該親水性基としては、ヒドロキシ基又はカルボキシ基が挙げられ、カルボキシ基がより好ましい。
【0071】
親水性基がカルボキシ基である場合の酸に不安定な基は、該カルボキシ基の水素原子が、有機残基に置き換わり、オキシ基と結合する該有機残基の原子が3級炭素原子である基が挙げられる。このような酸に不安定な基のうち、好ましい酸に不安定な基は、例えば、以下の式(1)で表されるもの(以下、場合により「酸に不安定な基(1)」という。)である。

式(1)中、
a1、Ra2及びRa3は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基又は炭素数3〜20の脂環基を表すか、或いは、Ra1及びRa2は互いに結合して、それらが結合する炭素原子とともに炭素数3〜20の環を形成する。Ra1及びRa2が互いに結合して形成される環、該脂肪族炭化水素基又は該脂環基がメチレン基を有する場合、それに含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−CO−で置き換わっていてもよい。*は結合手を表す。
【0072】
a1〜Ra3の脂肪族炭化水素基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等のアルキル基が挙げられる。
a1〜Ra3の脂環基は、単環式及び多環式のいずれでもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロへキシル基、シクロヘプチル基及びシクロオクチル基などのシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、デカヒドロナフチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基及びメチルノルボルニル基並びに下記に示す基などが挙げられる。

この脂環基は、好ましくは炭素数が1〜16である。
【0073】
a1及びRa2が互いに結合して環を形成する場合、−C(Ra1)(Ra2)(Ra3)基としては、下記の基が挙げられる。

式(1)では、このような環の炭素数は、好ましくは3〜12である。
【0074】
このようなカルボン酸エステルを有する基としては、(メタ)アクリル酸エステル、ノルボルネンカルボン酸エステル、トリシクロデセンカルボン酸エステル、テトラシクロデセンカルボン酸エステルを有する基が挙げられる。
【0075】
酸に不安定な基(1)の具体例は、
1,1−ジアルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1〜Ra3が全てアルキル基である基、このアルキル基のうち、1つはtert−ブトキシカルボニル基であると好ましい。)、
2−アルキル−2−アダマンチルオキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2が互いに結合し、これらが結合する炭素原子とともにアダマンチル環を形成し、Ra3がアルキル基である基)及び
1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルコキシカルボニル基(式(1)中、Ra1及びRa2がアルキル基であり、Ra3がアダマンチル基である基)などが挙げられる。
【0076】
親水性基がヒドロキシ基である場合の酸不安定基は、ヒドロキシ基の水素原子が、有機残基に置き換わり、アセタール構造を含む基となったものが挙げられる。このような酸に不安定な基のうち、好ましい酸に不安定な基は、例えば、以下の式(2)で表されるもの(以下、場合により「酸不安定基(2)」という。)が挙げられる。


式(2)中、
b1及びRb2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基を表し、Rb3は、炭素数1〜20の炭化水素基を表すか、あるいは、Rb2及びRb3は互いに結合して、それらが各々結合する炭素原子及び酸素原子とともに炭素数3〜20の環を形成する。Rb2及びRb3は互いに結合して形成される環又は該炭化水素基メチレン基を有する場合、それに含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−CO−で置き換わっていてもよい。*は結合手を表す。
【0077】
炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。ここで、該脂肪族炭化水素基及び該脂環基は、Ra1〜Ra3の基として説明したものと同じである。該芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、p−メチルフェニル基、p−tert−ブチルフェニル基、p−アダマンチルフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、2,6−ジエチルフェニル基、2−メチル−6−エチルフェニル等のアリール基等が挙げられる。
b1〜Rb2のうち、少なくとも1つは水素原子であることが好ましい。
【0078】
酸に不安定な基(2)としては、以下の基が挙げられる。

【0079】
樹脂は、酸に不安定な基とオレフィン性二重結合とを有するモノマーを付加重合して製造することができる。
かかるモノマーとしては、酸に不安定な基として、2−アルキル−2−アダマンチル基、1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル基などのような脂環式構造などの嵩高い基を含むモノマーが、得られるレジストの解像度が優れる傾向があることから好ましい。
【0080】
具体的な嵩高い基を含むモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−アルキル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル、α−クロロアクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、α−クロロアクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルなどが挙げられる。
【0081】
とりわけ(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルやα−クロロアクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルをモノマーとして用いた場合は、得られるレジストの解像度が優れる傾向があることから好ましい。
【0082】
具体的には、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルとしては、例えば、アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、アクリル酸2−n−ブチル−2−アダマンチルなどが挙げられる。α−クロロアクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルとしては、例えば、α−クロロアクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、α−クロロアクリル酸2−エチル−2−アダマンチルなどが挙げられる。
【0083】
これらの中でも(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル又は(メタ)アクリル酸2−イソプロピル−2−アダマンチルを用いた場合、得られるレジストの感度が優れ耐熱性にも優れる傾向があることから好ましい。
【0084】
(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルは、通常、2−アルキル−2−アダマンタノール又はその金属塩とアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとの反応により製造できる。
【0085】
樹脂は、酸に安定なモノマーに由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。ここで、酸に安定なモノマーに由来する構造とは、酸発生剤によって開裂しない構造を意味する。
具体的には、アクリル酸やメタクリル酸のような遊離のカルボン酸基を有するモノマーに由来する繰り返し単位、無水マレイン酸や無水イタコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物に由来する繰り返し単位、2−ノルボルネンに由来する繰り返し単位、(メタ)アクリロニトリルに由来する繰り返し単位、酸素原子に隣接する炭素原子が2級炭素原子または3級炭素原子のアルキルエステルや1−アダマンチルエステルである(メタ)アクリル酸エステル類に由来する繰り返し単位、p−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系モノマーに由来する繰り返し単位、ラクトン環がアルキル基で置換されていてもよい(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンに由来する繰り返し単位などを挙げることができる。なお、1−アダマンチルエステルは、酸素原子に隣接する炭素原子が4級炭素原子であるが、酸に安定な基であり、1−アダマンチルエステルには水酸基などが結合していてもよい。
【0086】
具体的な酸に安定なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル、α−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、式(a)で示される繰り返し単位を与えるモノマー、式(b)で示される繰り返し単位を与えるモノマー、ヒドロキシスチレン、ノルボルネンなどの分子内にオレフィン性二重結合を有する脂環式化合物、無水マレイン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物、無水イタコン酸などが例示される。
【0087】
なかでも、特に、p−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系モノマーに由来する繰り返し単位、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルに由来する繰り返し単位、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルに由来する繰り返し単位、式(a)で示される繰り返し単位、式(b)で示される繰り返し単位のいずれかを含む樹脂から得られるレジストは、基板への接着性及びレジストの解像性が向上する傾向にあることから好ましい。
【0088】

(式中、R1及びR2は、互いに独立に、水素原子又はメチル基を表し、R3及びR4は、互いに独立に水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はハロゲン原子を表し、i及びjは、1〜3の整数を表す。iが2または3のときには、R3は互いに異なる基であってもよく、jが2または3のときには、R4は互いに異なる基であってもよい。)
【0089】
(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3、5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルなどのモノマーは、市販されている。例えば、対応するヒドロキシアダマンタンを(メタ)アクリル酸又はそのハライドと反応させることにより、製造することもできる。
【0090】
また、(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンなどのモノマーは、ラクトン環がアルキル基で置換されていてもよいα−もしくはβ−ブロモ−γ−ブチロラクトンにアクリル酸もしくはメタクリル酸を反応させるか、又はラクトン環がアルキル基で置換されていてもよいα−もしくはβ−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンにアクリル酸ハライドもしくはメタクリル酸ハライドを反応させることにより製造できる。
【0091】
式(a)、式(b)で示される繰り返し単位を与えるモノマーは、例えば、次のような水酸基を有する脂環式ラクトンの(メタ)アクリル酸エステル、それらの混合物等が挙げられる。これらのエステルは、例えば、対応する水酸基を有する脂環式ラクトンと(メタ)アクリル酸類との反応により製造することができる(例えば、特開2000−26446号公報参照)。
【0092】

【0093】
ここで、(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンとしては、例えば、α−アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイロキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0094】
KrFエキシマレーザ露光、EUV露光の場合は、樹脂の繰り返し単位として、p−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系モノマーに由来する繰り返し単位を用いても充分な透過率を得ることができる。このような共重合樹脂を得る場合は、該当する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとアセトキシスチレン、及びスチレンをラジカル重合した後、酸によって脱アセチルすることによって得ることができる。
スチレン系モノマーに由来する繰り返し単位を与えるモノマーとしては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0095】

【0096】
以上のモノマーのうち、4−ヒドロキシスチレン又は4−ヒドロキシ−α−メチルスチレンが特に好ましい。
【0097】
また、2−ノルボルネンに由来する繰り返し単位を含む樹脂は、その主鎖に直接脂環式骨格を有するために頑丈な構造となり、ドライエッチング耐性に優れるという特性を示す。2−ノルボルネンに由来する繰り返し単位は、例えば対応する2−ノルボルネンの他に無水マレイン酸や無水イタコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物を併用したラジカル重合により主鎖へ導入し得る。したがって、ノルボルネン構造の二重結合が開いて形成されるものは式(c)で表すことができ、無水マレイン酸無水物及び無水イタコン酸無水物の二重結合が開いて形成されるものはそれぞれ式(d)及び式(e)で表すことができる。
【0098】

【0099】
ここで、式(c)中のR5及びR6は、互いに独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、カルボキシル基、シアノ基もしくは−COOU(Uはアルコール残基である)を表すか、あるいは、R5及びR6が結合して、−C(=O)OC(=O)−で示されるカルボン酸無水物残基を表す。
5及びR6が基−COOUである場合は、カルボキシル基がエステル基となったものであり、Uに相当するアルコール残基としては、例えば、置換されていてもよい炭素数1〜8程度のアルキル基、2−オキソオキソラン−3−又は−4−イル基などを挙げることができる。ここで、該アルキル基は、水酸基や脂環式炭化水素残基などが置換基として結合していてもよい。
5及びR6がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられ、水酸基が結合したアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
【0100】
このように、酸に安定な繰り返し単位を与えるモノマーである、式(c)で示されるノルボネン構造の具体例としては、次のような化合物を挙げることができる。
2−ノルボルネン、
2−ヒドロキシ−5−ノルボルネン、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシ−1−エチル、
5−ノルボルネン−2−メタノール、
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物。
【0101】
なお、式(c)中のR5及びR6の−COOUのUにおいて、酸素原子に隣接する炭素原子が4級炭素原子である脂環式エステルなどの酸に不安定な基であれば、ノルボルネン構造を有するといえども、酸に不安定な基を有する繰り返し単位である。ノルボルネン構造と酸に不安定な基を含むモノマーとしては、例えば、5−ノルボルネン−2−カルボン酸−t−ブチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−シクロヘキシル−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチルシクロヘキシル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−メチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−エチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−メチルシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチル−1−(4−オキソシクロヘキシル)エチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチルなどが例示される。
【0102】
さらに、酸に安定な基として、式(b1)で表される繰り返し単位及びフッ素原子を含有する繰り返し単位を含有してもよい。
【0103】

[式(b1)中、
は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。
ARは、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1個以上がフッ素原子に置換されている。該炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−N(R)−で置き換わっていてもよく、該炭化水素基に含まれる水素原子は、水酸基あるいは直鎖状又は分岐状の炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。Rは、上記と同じ意味を表す。]
【0104】
式(b1)で表される繰り返し単位を与えるモノマーとしては、具体的には、以下のモノマーを挙げることができる。
【0105】

【0106】

【0107】
樹脂は、パターニング露光用の放射線の種類、酸に不安定な基の種類などによっても変動するが、通常、樹脂における酸に不安定な基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の含有量を10〜80モル%の範囲に調整する。
【0108】
酸に不安定な基を有するモノマーに由来する繰り返し単位として、特に、メタクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルメタクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル、アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルメタアクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルに由来する繰り返し単位を含む場合は、該繰り返し単位が樹脂を構成する全繰り返し単位のうち15モル%以上となると、樹脂が脂環基を有するために頑丈な構造となり、与えるレジストのドライエッチング耐性の面で有利である。
【0109】
分子内にオレフィン性二重結合を有する脂環式化合物及び脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物をモノマーとする場合には、これらは付加重合しにくい傾向があるので、この点を考慮し、これらは過剰に使用することが好ましい。
【0110】
用いられるモノマーとしてはオレフィン性二重結合が同じでも酸に不安定な基が異なるモノマーを併用してもよいし、酸に不安定な基が同じでもオレフィン性二重結合が異なるモノマーを併用してもよいし、酸に不安定な基とオレフィン性二重結合との組合せが異なるモノマーを併用してもよい。
【0111】
樹脂(B)の重量平均分子量は、好ましくは2,500以上100,000以下であり、より好ましくは2,700以上50,000以下であり、さらに好ましくは3,000以上40,000以下である。
【0112】
本発明のレジスト組成物は、塩基性化合物を含むことが好ましい。塩基性化合物としては、好ましくは、塩基性含窒素有機化合物、より好ましくはアミン又はアンモニウム塩が挙げられる。塩基性化合物をクエンチャーとして添加することにより、露光後の引き置きに伴う酸の失活による性能劣化を改良することができる。クエンチャーに用いられる塩基性化合物の具体的な例としては、以下の各式で示されるようなものが挙げられる。
【0113】

【0114】
式中、R11、R12及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。該アルキル基は、好ましくは1〜6個程度の炭素原子を有し、該シクロアルキル基は好ましくは5〜10個程度の炭素原子を有し、該アリール基は、好ましくは6〜10個程度の炭素原子を有する。さらに、該アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、又は1〜6個の炭素数を有するアルコキシ基で置換されていてもよい。該アミノ基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に1〜4個の炭素数を有するアルキル基で置換されていてもよい。
【0115】
13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表す。該アルキル基は、好ましくは1〜6個程度の炭素原子を有し、該シクロアルキル基は、好ましくは5〜10個程度の炭素原子を有し、該アリール基は、好ましくは6〜10個程度の炭素原子を有し、該アルコキシ基は、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。又は、R13とR14とが結合して芳香環を形成していてもよい。
該アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアルコキシ基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基又は1〜6個程度の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい。該アミノ基上の水素原子の少なくとも1個は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基で置換されていてもよい。
【0116】
15は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はニトロ基を表す。該アルキル基は、好ましくは1〜6個程度の炭素原子を有し、該シクロアルキル基は、好ましくは5〜10個程度の炭素原子を有し、該アリール基は、好ましくは6〜10個程度の炭素原子を有し、該アルコキシ基は、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。
該アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアルコキシ基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、又は1〜6個程度の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい。該アミノ基上の水素原子の少なくとも1個は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基で置換されていてもよい。
【0117】
16は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。該アルキル基は、好ましくは1〜6個程度の炭素原子を有し、該シクロアルキル基は、好ましくは5〜10個程度の炭素原子を有する。該アルキル基又はシクロアルキル基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい。該アミノ基上の水素原子の少なくとも1個は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基で置換されていてもよい。
【0118】
18、R19及びR20は、それぞれ独立にアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。該アルキル基は、好ましくは1〜6個程度の炭素原子を有し、該シクロアルキル基は、好ましくは5〜10個程度の炭素原子を有し、該アリール基は、好ましくは6〜10個程度の炭素原子を有する。更に、該アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい。該アミノ基上の水素原子の少なくとも1個は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基で置換されていてもよい。
【0119】
Wは、アルキレン基、カルボニル基、イミノ基、スルフィド基又はジスルフィド基を表す。該アルキレン基は、好ましくは2〜6程度の炭素原子を有する。
また、R11〜R20において、直鎖構造と分岐構造の両方をとり得るものについては、そのいずれでもよい。
芳香環としては、上述した芳香族炭化水素と同じもの等が挙げられる。
【0120】
このような化合物として、具体的には、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、アニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジイソプロピルアニリン、1−又は2−ナフチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、N−メチルアニリン、ピペリジン、ジフェニルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、2,6−イソプロピルアニリン、イミダゾール、ピリジン、4−メチルピリジン、4−メチルイミダゾール、ビピリジン、2,2’−ジピリジルアミン、ジ−2−ピリジルケトン、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ビス(2−ピリジル)エチレン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン、1,2−ビス(4−ピリジルオキシ)エタン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン、2,2’−ジピコリルアミン、3,3’−ジピコリルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−オクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称:コリン)などを挙げることができる。なかでも、ジイソプロピルアニリンが好ましい。
【0121】
さらに、特開平11−52575号公報に開示されているような、ピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物をクエンチャーとすることもできる。
【0122】
本発明のレジスト組成物は、その全固形分量を基準に、樹脂を80〜99.9重量%程度、酸発生剤を0.1〜20重量%程度の範囲で含有することが好ましい。
また、クエンチャーである塩基性化合物を用いる場合は、レジスト組成物の全固形分量を基準に、0.01〜1重量%程度の範囲で含有するのが好ましい。
レジスト組成物としては、さらに、必要に応じて、増感剤、溶解抑止剤、他の樹脂、界面活性剤、安定剤、染料など、各種の添加物を少量含有してもよい。
【0123】
本発明のレジスト組成物は、通常、上記の各成分が溶剤に溶解された状態でレジスト液組成物とされ、シリコンウェハなどの基体上に、スピンコーティングなどの通常工業的に用いられている方法によって塗布される。ここで用いる溶剤は、各成分を溶解し、適当な乾燥速度を有し、溶剤が蒸発した後に均一で平滑な塗膜を与えるものであればよく、この分野で通常工業的に用いられている溶剤が使用できる。
【0124】
例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類、γ−ブチロラクトンのような環状エステル類などを挙げることができる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0125】
本発明のレジスト組成物を用いてパターンを形成方法としては、
(1)上述した本発明のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物から溶剤を除去して組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光機を用いて露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、
(5)加熱後の組成物層を、現像装置を用いて現像する工程を含む方法が挙げられる。
【0126】
レジスト組成物の基体上への塗布は、スピンコーターなど、通常、用いられる装置によって行うことができる。
【0127】
溶剤の除去は、例えば、ホットプレート等の加熱装置を用いて溶剤を蒸発させることにより行われるか、あるいは減圧装置を用いて行われ、溶剤が除去された組成物層が形成される。この場合の温度は、例えば、50〜200℃程度が例示される。また、圧力は、1〜1.0×10Pa程度が例示される。
【0128】
得られた組成物層は、露光機を用いて露光する。露光機としては、例えば、液浸露光機が挙げられる。この際、通常、求められるパターンに相当するマスクを介して露光が行われる。露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2レーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、種々のものを用いることができる。
【0129】
露光後の組成物層は、脱保護基反応を促進するための加熱処理が行われる。加熱温度としては、通常50〜200℃程度、好ましくは70〜150℃程度である。
加熱後の組成物層を、現像装置を用いて、通常、アルカリ現像液を利用して現像する。ここで用いられるアルカリ現像液は、この分野で用いられる各種のアルカリ性水溶液であればよい。例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液等が挙げられる。
現像後、超純水でリンスし、基板及びパターン上に残った水を除去することが好ましい。
【0130】
また、本発明のレジスト組成物は、特に、化学増幅型フォトレジスト組成物に有用であり、半導体の微細加工、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、さらにその他のフォトファブリケーション工程等、広範な用途に好適に利用することができる。とりわけ、ArFやKrFなどのエキシマレーザーリソグラフィならびにArF液浸露光リソグラフィ、EUV露光リソグラフィに好適な化学増幅型フォトレジスト組成として用いることができる。また、液浸露光のほか、ドライ露光などにも用いることができる。さらに、ダブルイメージング用にも用いることができ、工業的に有用である。
【実施例】
【0131】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例及び比較例中、含有量及び使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり質量基準である。
樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーにより求めた値である。
【0132】
装置;HLC−8120GPC(東ソー(株)製)
カラム:TSKgel Multipore HXL−M 3本+ guardcolumn(東ソー(株)製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μL
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー(株)製)
【0133】
化合物の構造は、NMR(GX−270型又はEX−270型;日本電子(株)製)、質量分析(LC:Agilent製1100型、MASS:Agilent製LC/MSD型又はLC/MSD TOF型)を用いて確認した。
【0134】
酸発生剤A1の合成

【0135】
化合物(aa−1−b)30.00部、モノクロロベンゼン120.00部及び化合物(aa−1−a)16.00部を仕込み、攪拌下、23℃で硫酸1.40部を仕込み、125℃に昇温、濃縮した。得られた反応物に、モレキュラーシーブ(4A 和光純薬)4.00部を添加し、125℃で8時間還流脱水した後、濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム166部及びイオン交換水83部を添加して洗浄し、分液して有機層を回収した。この水洗を計6回行った。回収された有機層に、活性炭1.66部を添加し、攪拌した後、ろ過した。回収されたろ液を濃縮することにより、淡黄色オイル42.26部を得た。得られた淡黄色オイルにアセトニトリル42.26部を添加し、均一化後、メチル−t−ブチルエーテルを126.78部加え撹拌後静置した。二層に分離した下層を回収し、さらにアセトニトリル42.26部を添加し、均一化後、メチル−t−ブチルエーテルを126.78部加え撹拌後静置した。二層に分離した下層を集め濃縮し、撹拌後ろ過することにより、白色固体として、化合物(aa−1−1)8.53部(収率20%)を得た。化合物(aa−1−1)をA1とした。
【0136】
MS(ESI(+)Spectrum):M 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M 347.0
1H−NMR(クロロホルム−d、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)1.77−1.79(m,1H)、2.03−2.07(m,1H)、2.16−2.21(m,1H)、2.27−2.29(m,1H)、2.65(m,1H)、3.45―3.47(m,1H)、3.50−3.53(m,1H)、4.77(m,1H)、4.82−4.83(m,1H)、7.71−7.81(m,15H)
【0137】
酸発生剤A2の合成

化合物(aa−2−b)32.88部、モノクロロベンゼン120.00部及び化合物(aa−1−a)16.00部を仕込み、攪拌下、23℃で硫酸1.40部を仕込み、125℃に昇温、濃縮した。得られた反応物に、モレキュラーシーブ(4A 和光純薬)4.50部を添加し、125℃で8時間還流脱水した後、濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム170部及びイオン交換水85部を添加して洗浄し、分液して有機層を回収した。この水洗を計6回行った。回収された有機層に、活性炭1.50部を添加し、攪拌した後、ろ過した。回収されたろ液を濃縮した後、得られた濃縮物にアセトニトリル40部を添加して溶解した後、濃縮し、メチル−tert−ブチルエーテル100部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去して下層を取り出し、これを濃縮した。得られた濃縮液に酢酸エチル60.00部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去し、下層を取り出してこれを濃縮することによって、化合物(aa−2−1)8.64部を得た。化合物(aa−2−1)をA2とした。
【0138】
MS(ESI(+)Spectrum):M 305.1
MS(ESI(−)Spectrum):M 347.0
【0139】
酸発生剤A3の合成

化合物(aa−3−b)31.15部、モノクロロベンゼン120.00部及び化合物(aa−1−a)16.00部を仕込み、攪拌下、23℃で硫酸1.40部を仕込み、125℃に昇温、濃縮した。得られた反応物に、モレキュラーシーブ(4A 和光純薬)4.00部を添加し、125℃で8時間還流脱水した後、濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム170部及びイオン交換水85部を添加して洗浄し、分液して有機層を回収した。この水洗を計6回行った。回収された有機層に、活性炭1.50部を添加し、攪拌した後、ろ過した。回収されたろ液を濃縮した後、得られた濃縮物にアセトニトリル40部を添加して溶解した後、濃縮し、メチル−tert−ブチルエーテル100部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去して下層を取り出し、これを濃縮した。得られた濃縮液に酢酸エチル60.00部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去し、下層を取り出してこれを濃縮することによって、化合物(aa−3−1)6.84部を得た。化合物(aa−3−1)をA3とした。
【0140】
MS(ESI(+)Spectrum):M 280.1
MS(ESI(−)Spectrum):M 347.0
【0141】
酸発生剤A4の合成

化合物(aa−4−b)26.17部、モノクロロベンゼン120.00部及び化合物(aa−1−a)16.00部を仕込み、攪拌下、23℃で硫酸1.40部を仕込み、125℃に昇温、濃縮した。得られた反応物に、モレキュラーシーブ(4A 和光純薬)4.00部を添加し、125℃で8時間還流脱水した後、濃縮した。得られた濃縮物に、クロロホルム170部及びイオン交換水85部を添加して洗浄し、分液して有機層を回収した。この水洗を計6回行った。回収された有機層に、活性炭1.50部を添加し、攪拌した後、ろ過した。回収されたろ液を濃縮した後、得られた濃縮物にアセトニトリル40部を添加して溶解した後、濃縮し、メチル−tert−ブチルエーテル100部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去して下層を取り出し、これを濃縮した。得られた濃縮液に酢酸エチル60.00部を添加し、攪拌した後、2層に分離した上澄み液を除去し、下層を取り出してこれを濃縮することによって、化合物(aa−4−1)4.98部を得た。化合物(aa−4−1)をA4とした。
【0142】
MS(ESI(+)Spectrum):M 207.1
MS(ESI(−)Spectrum):M 347.0
【0143】
〔樹脂B1の合成〕
モノマーE、モノマーF、モノマーB、モノマーC及びモノマーDを、モル比30:14:6:20:30の割合で仕込んだ。次いで、全モノマーの合計質量に対して、1.5質量倍のジオキサンを加えた。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とを全モノマーの合計モル数に対して、それぞれ、1.00mol%と3.00mol%との割合で添加し、これを73℃で約5時間加熱した。その後、反応液を、大量のメタノールと水との混合溶媒(4:1)に注いで沈殿させる操作を3回行うことにより精製し、重量平均分子量が約8.1×10である共重合体を収率65%で得た。得られた共重合体は、次式の各モノマーに由来する繰り返し単位を有するものであり、これを樹脂B1とした。
【0144】

【0145】
〔樹脂Y1の合成〕
モノマーA、モノマーB及びモノマーCを、モル比50:25:25の割合で仕込み、次いで、全モノマーの合計質量に対して、1.5質量倍のジオキサンを加えた。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とを全モノマーの合計モル数に対して、それぞれ、1mol%と3mol%との割合で添加し、これを77℃で約5時間加熱した。その後、反応液を、大量のメタノールと水との混合溶媒(3:1)に注いで沈殿させる操作を3回行うことにより精製し、重量平均分子量が約8.0×10である共重合体を収率60%で得た。この共重合体は、次式の各モノマーに由来する繰り返し単位を有するものであり、これを樹脂Y1とした。

【0146】
〔樹脂B2の合成〕
モノマーA、モノマーF、モノマーB、モノマーC及びモノマーDを、モル比30:14:6:20:30の割合で仕込んだ。次いで、全モノマーの合計質量に対して、1.5質量倍のジオキサンを加えた。得られた混合物に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルとアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)とを全モノマーの合計モル数に対して、それぞれ、1.00mol%と3.00mol%との割合で添加し、これを78℃で約5時間加熱した。その後、反応液を、大量のメタノールと水との混合溶媒(4:1)に注いで沈殿させる操作を3回行うことにより精製し、重量平均分子量が約7.2×10である共重合体を収率68%で得た。得られた共重合体は、次式の各モノマーに由来する繰り返し単位を有するものであり、これを樹脂B2とした。
【0147】


【0148】
実施例及び比較例
(レジスト組成物の調製)
表1に示すように、以下の各成分を混合して溶解することにより得られた混合物を孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルタで濾過することにより、化学増幅型フォトレジスト組成物を調製した。
【0149】
【表1】

【0150】
<酸発生剤>
X1:

A1:

A2:

A3:

A4:

<クエンチャー>
Q1:2,6−ジイソプロピルアニリン
<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 265部
2−ヘプタノン 20.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0部
γ−ブチロラクトン 3.5部
【0151】
(レジスト組成物の評価)
シリコンウェハに、有機反射防止膜用組成物(ARC−29;日産化学(株)製)を塗布して、205℃、60秒間の条件でベークすることによって、厚さ78nmの有機反射防止膜を形成した。
次いで、前記の有機反射防止膜の上に、上記の化学増幅型フォトレジスト組成物を乾燥後の膜厚が85nmとなるようにスピンコートした。
【0152】
レジスト組成物塗布後、得られたシリコンウェハをダイレクトホットプレート上にて、表1の「PB」欄に記載された温度で60秒間プリベーク(PB)した。このようにして化学増幅型フォトレジスト組成物の膜が形成されたシリコンウェハに、ArFエキシマステッパー〔FPA5000−AS3;(株)キャノン製、NA=0.75、2/3Annular〕用いて、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。
露光後、ホットプレート上にて、表1の「PEB」欄に記載された温度で60秒間ポストエキスポジャーベーク(PEB)を行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。
【0153】
解像性評価:100nmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量で露光し、レジストパターンを走査型電子顕微鏡で観察し、85nmを解像しているものを○、解像していないもの又はパターン倒れが観察されるものを×とした。
【0154】
マスクエラーファクター評価(MEF):85nmのラインアンドスペースパターンが1:1となる露光量で露光し、マスクサイズが90nm、95nm、100nmのマスクパターンをそれぞれ形成した。マスクサイズを横軸に、各マスクパターンを用いて形成したラインパターンの線幅を縦軸にプロットした。直線の傾きが、2.3以下のものを○、2.3を超えるものを×とした。
【0155】
フォーカスマージン評価(DOF):マスクサイズ90nmのラインアンドスペースパターンの線幅が、90nmになる露光量で、フォーカスを振った場合、線幅が90nm±5%の幅にある範囲(約85.5〜94.5nm)を線幅指標とし、DOFが0.60μm以上であるものを○、0.60μm未満であるものを×とした。
これらの結果を表2に示す。
【0156】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明のレジスト組成物によれば、優れた形状、DOF及びMEFを有するパターンを形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(AA)で表される塩と、式(II)で表される化合物に由来する繰り返し単位を有する樹脂とを含むレジスト組成物。

[式(AA)中、
及びQは、互いに独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
は、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜17の2価の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
Tは、炭素数4〜36の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシジルオキシ基又は炭素数2〜4のアシル基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる−CH−は、少なくとも1つの−SO−で置き換わっており、さらに、−CO−、−O−、−S−、−SO−又は−N(R)−で置き換わっていてもよい。Rは、水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表す。
は、有機カチオンを表す。]

[式(II)中、
は、水素原子、ハロゲン原子又はハロゲン原子を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
Xは、−CH−、−O−又は−S−を表す。]
【請求項2】
Tが、式(T1)で表される基である請求項1記載のレジスト組成物。

[式(T1)中、
環に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシジルオキシ基又は炭素数2〜4のアシル基で置換されていてもよく、環に含まれる−CH−は、少なくとも1つの−SO−で置き換わっており、さらに、−CO−、−O−、−S−、−SO−又は−N(R)−で置き換わっていてもよい。Rは、上記と同じ意味を表す。
*は、Xとの結合手を表す。
は、酸素原子又はメチレン基を表す。]
【請求項3】
Tが、式(T2)で表される基である請求項1又は2記載のレジスト組成物。

[式(T2)中、
環に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシドキシ基又は炭素数2〜4のアシル基で置換されていてもよく、環に含まれる−CH−は、−CO−、−O−、−S−、−SO−又は−N(R)−で置き換わっていてもよい。R及び*は、上記と同じ意味を表す。]
【請求項4】
が、式(x−1)で表される基である請求項1〜3のいずれか記載のレジスト組成物。

[式(x−1)中、
は、炭素数1〜16の2価の飽和炭化水素基を表す。
は、単結合又は炭素数1〜16の2価の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−CO−又は−N(R)−で置き換わっていてもよく、該飽和炭化水素基に含まれる水素原子はフッ素原子、ヒドロキシル基、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。Rは、水素原子あるいは炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表す。
mは0〜2の整数を表す。]
【請求項5】
が、*−CO−O−(*は、−C(Q)(Q)−との結合手を表す)である請求項1〜4のいずれか記載のレジスト組成物。
【請求項6】
が、アリールスルホニウムカチオンである請求項1〜5のいずれか記載のレジスト組成物。
【請求項7】
樹脂は、さらに酸に不安定な基を有し、かつアルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸の作用によりアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂である請求項1〜6のいずれか記載のレジスト組成物。
【請求項8】
さらに塩基性化合物を含有する請求項1〜7のいずれか記載のレジスト組成物。

【公開番号】特開2011−28247(P2011−28247A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141242(P2010−141242)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】