説明

レンズアレイ、レンズユニット、LEDヘッド、露光装置、画像形成装置及び読取装置

【課題】複数のレンズが直線状に配列されたレンズアレイの断面形状を、物体と結像とを結ぶ直線と平行な軸に対して非線対称とすることによって、光量を増加させることができ、明るい結像を得ることができるようにする。
【解決手段】直線状に配列された複数のレンズを含むレンズアレイであって、物体31aと結像31cとを結ぶ直線と平行な方向を第1の方向とし、前記レンズの配列方向を第2の方向とし、該第2の方向と直交する平面をXZ平面としたとき、該XZ平面による断面形状は、前記第1の方向に平行な軸に対して非線対称である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイ、レンズユニット、LEDヘッド、露光装置、画像形成装置及び読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のLED(Light Emitting Diode)を配列させたLEDヘッドを用いた電子写真方式のプリンタ、ファクシミリ機、複写機等の画像形成装置や、複数の受光素子を配列させた受光部に読取原稿の像を結像させるスキャナ、ファクシミリ機等の読取装置に複数のレンズを配列させたレンズアレイが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。該レンズアレイは、物体の等倍正立像をライン状に形成する光学系である。
【0003】
物体の等倍正立像を形成するように複数のマイクロレンズを略直線に配置することによって、物体の等倍正立像を高い解像度で形成する光学系を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−092006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のレンズアレイでは、光量増加が困難であった。
【0006】
画像形成装置においては、解像度を向上させるために、LEDヘッドの各LED素子を縮小して実装密度を高めようとすると、各LED素子の発光光量が低下するので、光学系の光量増加が求められる。
【0007】
また、読取装置においては、原稿を照明する照明装置の消費電力を低く抑えるために、光学系の光量増加が求められる。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、複数のレンズが直線状に配列されたレンズアレイの断面形状を、物体と結像とを結ぶ直線と平行な軸に対して非線対称とすることによって、光量を増加させることができ、明るい結像を得ることができるレンズアレイ、該レンズアレイを有するレンズユニット並びに該レンズユニットを有するLEDヘッド、露光装置、画像形成装置及び読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明のレンズアレイにおいては、直線状に配列された複数のレンズを含むレンズアレイであって、物体と結像とを結ぶ直線と平行な方向を第1の方向とし、前記レンズの配列方向を第2の方向とし、該第2の方向と直交する平面をXZ平面としたとき、該XZ平面による断面形状は、前記第1の方向に平行な軸に対して非線対称である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レンズアレイにおいては、複数のレンズが直線状に配列され、断面形状が、物体と結像とを結ぶ直線と平行な軸に対して非線対称となっている。これにより、光量を増加させることができ、明るい結像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるLEDヘッドの側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態におけるLEDヘッドの横断面図であり、図2におけるA−A矢視断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットの分解斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるレンズ板の平面図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロレンズの断面図であり、図5におけるB−B矢視断面図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロレンズの断面図であり、図5におけるC−C矢視断面図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における2つのレンズ列のマイクロレンズのレンズ面の形状を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロレンズの物体側レンズ面の形状を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態におけるマイクロレンズの結像側レンズ面の形状を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態における遮光板の平面図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態における開口部の形状を示す平面図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットと物体面及び結像面との関係を示す断面図であり、図5及び11におけるB−B矢視断面に相当する断面図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットと物体面及び結像面との関係を示す断面図であり、図5及び11におけるC−C矢視断面に相当する断面図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニット及び比較例のレンズユニットの各部寸法を示す図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットのレンズ曲面形状を表す係数の値を示す図である。
【図17】比較例のレンズユニットのレンズ曲面形状を表す係数の値を示す図である。
【図18】本発明の第1の実施の形態における評価に使用した画像を示す図である。
【図19】本発明の第2の実施の形態における読取装置の構造を示す図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態における読取ヘッドの断面構造を示す図である。
【図21】本発明の第2の実施の形態における読取ヘッドの光学系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概略図である。
【0014】
図において、10は画像形成装置としてのプリンタであり、例えば、電子写真方式のカラープリンタであるが、モノクロプリンタであってもよい。また、前記プリンタ10は、スキャナ、ファクシミリ機、複写機等の機能を併せ持つ複合機であってもよい。本実施の形態において、前記プリンタ10は、電子写真方式によって画像を形成するものであり、色材としての顔料を含む樹脂から成るトナーによって、画像データをもとに印字媒体としての用紙11上に画像を形成するカラープリンタであるものとして説明する。
【0015】
そして、前記プリンタ10の内部には、用紙11を貯留する給紙カセット60が装着され、さらに、用紙11を給紙カセット60から取り出す給紙ローラ61と、給紙カセット60から取り出された用紙11を搬送する搬送ローラ62及び63とが配設される。
【0016】
前記プリンタ10は、いわゆるタンデム方式のカラー電子写真式プリンタであって、各色のトナー像を形成する画像形成部、及び、該画像形成部が形成したトナー像を用紙11に転写する転写部を有する。
【0017】
そして、前記画像形成部は、用紙11の搬送経路に沿ってタンデムに配設され、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各色の画像を、それぞれ形成する4つのプロセスユニットを有する。さらに、各プロセスユニットは、静電潜像担持体としての感光体ドラム41、該感光体ドラム41に形成された静電潜像をトナーによって現像し、トナー像を形成する現像器50、該現像器50にトナーを供給するトナーカートリッジ51、感光体ドラム41の表面に電荷を供給して帯電させる帯電ローラ42、感光体ドラム41の表面に残留したトナーを除去するクリーニングブレード43、及び、帯電された感光体ドラム41の表面に画像データに基づいて選択的に光を照射して、静電潜像を形成する露光装置のLEDヘッド30を備える。なお、前記トナー像はトナーによって静電潜像を可視化した像である。そして、クリーニングブレード43は、トナー像を用紙11に転写した後のトナーを掻(か)き取るために、感光体ドラム41に接触して配設される。
【0018】
また、前記転写部は、用紙11を搬送する転写ベルト81、及び、前記感光体ドラム41上に形成されたトナー像を用紙11上に転写する転写ローラ80を備える。該転写ローラ80は、転写ベルト81を挟んで、各プロセスユニットの感光体ドラム41に対向するように配設される。なお、クリーニングブレード82は、転写ベルト81に付着したトナーを掻き取るために、転写ベルト81に接触して配設される。
【0019】
そして、用紙11の搬送方向に関して前記画像形成部の下流側には、用紙11上に転写されたトナー像を熱及び圧力で定着する定着器90が配設される。さらに、該定着器90を通過した用紙11を搬送する搬送ローラ64、及び、用紙11を貯留する排出部70に用紙11を排出する排出ローラ65が配設される。
【0020】
また、前記帯電ローラ42及び転写ローラ80には、図示されない電源によって所定の電圧が印加される。そして、前記転写ベルト81、感光体ドラム41及び各ローラは、それぞれ、図示されないモータと駆動を伝える図示されないギヤとによって回転駆動される。さらに、現像器50、LEDヘッド30、定着器90及び図示されない各モータには、それぞれ、図示されない電源及び制御装置が接続される。
【0021】
そして、前記プリンタ10は、図示されないネットワーク等に接続され、外部装置と通信を行って上位装置から印刷データを受信する図示されない外部インターフェイスと、該外部インターフェイスから印刷データを受信し、プリンタ10全体の制御を行う制御装置とを有する。
【0022】
次に、前記LEDヘッド30の構成について説明する。
【0023】
図2は本発明の第1の実施の形態におけるLEDヘッドの側面図、図3は本発明の第1の実施の形態におけるLEDヘッドの横断面図であり、図2におけるA−A矢視断面図である。
【0024】
図に示されるように、LEDヘッド30にはレンズユニット20が配設される。該レンズユニット20は、ホルダ34によってLEDヘッド30に固定されている。31は、発光部としてのLED素子である。図2に示されるように、複数のLED素子31が略直線状に配列され、LEDアレイ35を構成する。なお、前記LED素子31の配列方向は、Y方向(図における水平方向)である。
【0025】
また、前記レンズユニット20は、長尺の部材であって、その長手方向が、LEDアレイ35と平行に、Y方向となるように配設される。
【0026】
さらに、AXRは感光体ドラム41の回転軸である。感光体ドラム41は、その回転軸AXRが、LEDアレイ35及びレンズユニット20の長手方向と平行に、Y方向に延在するように配設される。
【0027】
なお、レンズユニット20は、複数のレンズとしてのマイクロレンズ22を含み、該マイクロレンズ22の光線が入射及び出射する方向を光軸とすると、該光軸がZ方向(図2及び3における鉛直方向)となるように配設される。また、前記マイクロレンズ22は、Y方向に延在するように配列される。
【0028】
図3に示されるように、X方向に関するレンズユニット20の中心線をCLとすると、該中心線CLを外挿した直線上に、LEDアレイ35が含むLED素子31、及び、感光体ドラム41の回転軸AXRが配設される。なお、LED素子31及びドライバIC32は、配線基板36上に配設され、ワイヤ33により結線される。
【0029】
本実施の形態においては、LEDヘッド30は1200〔dpi〕の解像度を有し、また、LEDアレイ35におけるLED素子31は1インチ(1インチは約25.4〔mm〕)当たり1200個配設されている。すなわち、LED素子31の配列ピッチPDは、0.02117〔mm〕である。
【0030】
次に、前記レンズユニット20の構成について説明する。
【0031】
図4は本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットの分解斜視図、図5は本発明の第1の実施の形態におけるレンズ板の平面図、図6は本発明の第1の実施の形態におけるマイクロレンズの断面図であり、図5におけるB−B矢視断面図、図7は本発明の第1の実施の形態におけるマイクロレンズの断面図であり、図5におけるC−C矢視断面図、図8は本発明の第1の実施の形態における2つのレンズ列のマイクロレンズのレンズ面の形状を示す図、図9は本発明の第1の実施の形態におけるマイクロレンズの物体側レンズ面の形状を示す図、図10は本発明の第1の実施の形態におけるマイクロレンズの結像側レンズ面の形状を示す図、図11は本発明の第1の実施の形態における遮光板の平面図、図12は本発明の第1の実施の形態における開口部の形状を示す平面図である。
【0032】
図4に示されるように、レンズユニット20は、2枚のレンズアレイとしてのレンズ板21と、遮光部材としての遮光板14とを有する。図において、21−1は物体側のレンズアレイとしての第1のレンズ板であり、21−2は結像側のレンズアレイとしての第2のレンズ板である。そして、第1のレンズ板21−1と第2のレンズ板21−2とは、遮光板14を挟んで対向するように配設される。
【0033】
また、第1のレンズ板21−1は、直線状の2本の列を形成するように配列された第1のマイクロレンズ22−1を備え、第2のレンズ板21−2は、直線状の2本の列を形成するように配列された第2のマイクロレンズ22−2を備える。
【0034】
なお、第1のレンズ板21−1と第2のレンズ板21−2とを統合的に説明する場合には、レンズ板21として説明し、第1のマイクロレンズ22−1と第2のマイクロレンズ22−2とを統合的に説明する場合には、マイクロレンズ22として説明する。
【0035】
そして、第1のマイクロレンズ22−1及び第2のマイクロレンズ22−2は、その中心軸AXLがZ方向に延在するように配設される。なお、第1のマイクロレンズ22−1及び第2のマイクロレンズ22−2の配列間隔を含む配列形態は、同一であり、それぞれの中心軸AXLが一致する。
【0036】
また、遮光板14には、絞りとしての開口部15が形成される。該開口部15の配列間隔を含む配列形態は、第1のマイクロレンズ22−1及び第2のマイクロレンズ22−2の配列形態と同一であり、遮光板14は、前記中心軸AXLが開口部15を通過するように配設される。すなわち、レンズユニット20は、光軸が一致するように配置された2枚のマイクロレンズ22と絞りとから成るレンズ群を、光軸に対して直交する方向に2列に配設した構成となっている。
【0037】
図5には、第1のレンズ板21−1の平面形状が示されている。図5に示されるように、第1のレンズ板21−1には、第1のマイクロレンズ22−1が間隔PYで2列となるように配列される。第1のマイクロレンズ22−1の配列方向は、第1のレンズ板21−1の長手方向であって、Y方向である。また、X方向の第1のマイクロレンズ22−1の配列間隔はPXである。なお、2つの第1のマイクロレンズ22−1の列、すなわち、レンズ列の各々を、24−1及び24−2とすると、レンズ列24−1と24−2とは平行で、レンズ列24−1と24−2との間隔はPXとなる。
【0038】
そして、第1のマイクロレンズ22−1は、同一列内において隣接する第1のマイクロレンズ22−1と境界で接し、光線を透過する素材で一続きとなるように一体的に形成されている。つまり、同一列内の隣接する第1のマイクロレンズ22−1同士の境界と中心軸AXLとの距離をLB1とし、第1のマイクロレンズ22−1のレンズ径をRLとすると、RL>LB1となっている。また、LB1=PY/2である。
【0039】
また、第1のマイクロレンズ22−1は千鳥状に配設される。そして、互いに隣接するレンズ列24−1内の第1のマイクロレンズ22−1とレンズ列24−2内の第1のマイクロレンズ22−1との間隔は、PNである。なお、LED素子31の列は、レンズ列24−1と24−2との間であって、略中央に位置するように配置されている。
【0040】
本実施の形態におけるレンズアレイでは、互いに隣接するレンズ列24−1内の第1のマイクロレンズ22−1とレンズ列24−2内の第1のマイクロレンズ22−1とが、境界で接し、光線を透過する素材で一続きとなるように一体的に形成されている。つまり、互いに隣接するレンズ列24−1内の第1のマイクロレンズ22−1とレンズ列24−2内の第1のマイクロレンズ22−1との境界と、第1のマイクロレンズ22−1の中心軸AXLとの距離をLB2とし、第1のマイクロレンズ22−1のレンズ径をRLとすると、RL>LB2となっている。また、LB2=PN/2である。
【0041】
なお、第2のレンズ板21−2の構成は、第1のレンズ板21−1の構成と同様であり、図5に示される第1のレンズ板21−1を第2のレンズ板21−2に置き換え、第1のマイクロレンズ22−1を第2のマイクロレンズ22−2に置き換えたものと同等である。
【0042】
ところで、各図面に示した方向X、Y及びZは、Y方向がマイクロレンズ22の配列方向を示し、Z方向が物体と結像とを結ぶ方向を示し、X方向がY方向及びZ方向のいずれの方向にも直交する方向を示している。そして、X方向を座標軸とする座標をX座標、Y方向を座標軸とする座標をY座標、Z方向を座標軸とする座標をZ座標とすると、第1のマイクロレンズ22−1及び第2のマイクロレンズ22−2の各曲面は、次の式(1)で表されるXY多項式面で構成することができる。
【0043】
なお、関数Z(X、Y)は、物体から結像へ向かう方向を正の数で表す。また、中心軸AXLは座標(X、Y)=(0、0)を通るZ座標の座標軸と一致する。さらに、CRは曲率半径であり、Kはコーニック定数であり、CPnmは多項式の係数であり、n及びmはそれぞれX及びYのべき指数であって正の整数である。
【0044】
【数1】

図6には、図5に示される第1のレンズ板21−1における第1のマイクロレンズ22−1のB−B矢視断面の形状が示されている。図6に示されるように、第1のマイクロレンズ22−1は、Z方向と中心軸AXLとが平行になるように配置されている。なお、物体はZ方向における負の方向(図6における下方向)に配設され、結像はZ方向における正の方向(図6における上方向)に形成される。
【0045】
また、第1のマイクロレンズ22−1の配列方向は、前述のようにY方向である。そして、第1のマイクロレンズ22−1の各部におけるX方向と直交する平面、すなわち、YZ平面による断面形状は、図6に示されるように、中心軸AXLを対称軸として線対称になっている。つまり、物体と結像とを結ぶ直線と平行な軸に対して線対称となっている。よって、前記式(1)におけるmが奇数である場合の係数CPnmの値は、CPnm=0である。
【0046】
図7には、図5に示される第1のレンズ板21−1における第1のマイクロレンズ22−1のC−C矢視断面の形状が示されている。図7に示されるように、第1のマイクロレンズ22−1は、Z方向と中心軸AXLとが平行になるように配置されている。なお、物体はZ方向における負の方向(図7における下方向)に配設され、結像はZ方向における正の方向(図7における上方向)に形成される。
【0047】
また、第1のマイクロレンズ22−1の配列方向は、前述のようにY方向、すなわち、図7の図面に対して垂直な方向である。そして、第1のマイクロレンズ22−1の各部におけるY方向と直交する平面、すなわち、XZ平面による断面形状は、図7に示されるように、中心軸AXLに関して非線対称になっている。つまり、物体と結像とを結ぶ直線と平行な軸に関して非線対称となっている。よって、前記式(1)におけるnが奇数である場合の係数CPnmのうち少なくとも1つの値は、CPnm≠0である。
【0048】
図8においては、レンズ列24−1における第1のマイクロレンズ22−1の面形状とレンズ列24−2における第1のマイクロレンズ22−1の面形状とが同一の座標上に示されている。つまり、2つのレンズ面の中心軸AXLがZ座標の座標軸と一致するように、2つのレンズ面上の座標(X、Y)=(0、0)の高さZ(0、0)が重なるように示されている。
【0049】
図8に示されるように、第1のマイクロレンズ22−1は、中心軸AXL(Z座標の座標軸)に対して左右非対称、すなわち、非線対称であり、Sを正の数としたとき、レンズ面上の座標(X、Y)=(0、0)から距離S離れた位置におけるレンズ面の高さZ(S、0)と高さZ(一S、0)とが異なっている。また、レンズ列24−2の第1のマイクロレンズ22−1は、レンズ列24−1の第1のマイクロレンズ22−1と形状が同じで、Z座標の座標軸を回転軸として180度回転した形状となっている。
【0050】
図9には、レンズ列24−2における第1のマイクロレンズ22−1の物体に対向する面、すなわち、物体側レンズ面の形状が座標上に示されている。なお、X座標は、レンズ板21の外側へ向う方向が正となり、中央へ向う方向が負となるように示されている。
【0051】
そして、Pを正の数としたとき、レンズ面上の座標(X、Y)=(0、0)から正の方向へ距離P離れた位置におけるレンズ面の高さZ(P、0)は、レンズ面上の座標(X、Y)=(0、0)から負の方向へ距離P離れた位置におけるレンズ面の高さZ(−P、0)に比べて小さくなっている。すなわち、第1のマイクロレンズ22−1の物体側レンズ面は、物体のある方向を向いており、物体からの光線を多く取り込むことができ、明るい結像を形成することができる。
【0052】
図10には、レンズ列24−2における第2のマイクロレンズ22−2の結像に対向する面、すなわち、結像側レンズ面の形状が座標上に示されている。なお、X座標は、レンズ板21の外側へ向う方向が正となり、中央へ向う方向が負となるように示されている。
【0053】
そして、Pを正の数としたとき、レンズ面上の座標(X、Y)=(0、0)から正の方向へ距離P離れた位置におけるレンズ面の高さZ(P、0)は、レンズ面上の座標(X、Y)=(0、0)から負の方向へ距離P離れた位置におけるレンズ面の高さZ(−P、0)に比べて大きくなっている。すなわち、第2のマイクロレンズ22−2の結像側レンズ面は、結像のある方向を向いており、結像に向っての多くの光線が出射され、明るい結像を形成することができる。
【0054】
なお、前記レンズ板21は、発光部としてのLED素子31の光線を透過する素材によって形成される。具体的には、本実施の形態において、レンズ板21は、シクロオレフィン系樹脂である光学樹脂(日本ゼオン社製、商品名;ZEONEX(ゼオネックス)E48R)を素材として使用し、射出成形によって複数のマイクロレンズ22を一体的に含むように成形した。
【0055】
図11に示されるように、遮光板14には複数の開口部15が形成される。前述のように、該開口部15の配列形態はマイクロレンズ22の配列形態に一致する。すなわち、開口部15は、Y方向に間隔PYで2列に配列される。さらに、開口部15のX方向の配列間隔はPXとなっている。
【0056】
なお、前記遮光板14は、LED素子31の光線を遮光する素材によって形成される。具体的には、本実施の形態において、遮光板14は、ポリカーボネートを素材として使用し、射出成形によって成形した。
【0057】
図12に示されるように、開口部15の開口径はRAであり、配列方向の開口寸法の半値はABである。そして、前記開口部15の形状は、半径RAの円と、半径RAの円の中心から(PX−TB)/2の距離に配置した開口部15の配列方向(Y方向)に平行な直線と、半径RAの円の中心から開口部15の配列方向へ距離ABに配置した開口部15の配列方向に直交する直線とから成る形状である。
【0058】
また、半径RAの円の中心は、中心軸AXLと一致する。つまり、配列方向の開口寸法の半値ABは、開口部15の配列方向における中心軸AXLから開口部15の内壁までの距離となっている。図12において、中心軸AXLの延在する方向は図面に対して垂直な方向である。
【0059】
次に、前記レンズユニット20について詳細に説明する。
【0060】
図13は本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットと物体面及び結像面との関係を示す断面図であり、図5及び11におけるB−B矢視断面に相当する断面図、図14は本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットと物体面及び結像面との関係を示す断面図であり、図5及び11におけるC−C矢視断面に相当する断面図である。
【0061】
図13は、X方向と直交し中心軸AXLを含む平面を断面とするレンズユニット20の断面を示し、図5及び11におけるB−B矢視断面に相当する断面図である。図において、OPは物体面(LED素子31の発光面)を示し、IPはレンズユニット20の結像面(感光体ドラム41の表面)を示している。なお、第1のマイクロレンズ22−1及び第2のマイクロレンズ22−2は、前述のように、配列方向がY方向であり、中心軸AXLがZ方向と平行になるように配設されている。
【0062】
物体面OP上にLEDアレイ35が配設され、物体面OPから距離LOの位置に第1のマイクロレンズ22−1が配設される。また、第2のマイクロレンズ22−2は、第1のマイクロレンズ22−1に対向し、かつ、中心軸AXLが一致して、距離LSを隔てるように配設される。なお、レンズユニット20の結像面IPは、第2のマイクロレンズ22−2から中心軸AXLの方向に距離LIを隔てた位置にある。
【0063】
そして、第1のマイクロレンズ22−1は、厚さがLT1であり、物体側レンズ面から中心軸AXLの方向に距離LO1を隔てた位置にある物体31a(LEDアレイ35の発光しているLED素子31)の像を、中間像31bとして、結像側レンズ面から中心軸AXLの方向に距離LI1を隔てた中間像面IMP上に形成する。また、第2のマイクロレンズ22−2は、厚さがLT2であり、物体側レンズ面から中心軸AXLの方向に距離LO2を隔てた位置にある中間像面IMP上の中間像31bの結像31cを、結像側レンズ面から中心軸AXLの方向に距離LI2を隔てた位置に形成する。
【0064】
レンズユニット20の物体面OPから第1のマイクロレンズ22−1までの距離LOは距離LO1と等しく設定され、第1のマイクロレンズ22−1と第2のマイクロレンズ22−2の間隔LSは、LS=LI1+LO2に設定され、第2のマイクロレンズ22−2からレンズユニット20の結像面IPまでの距離LIは、LI2と等しく設定される。
【0065】
物体31aは、Y方向に直線状に配列され、かつ、中心軸AXLに対して左右対称に配列される。したがって、第1のマイクロレンズ22−1及び第2のマイクロレンズ22−2のX方向と直交する平面、すなわち、YZ平面による断面形状は、中心軸AXLを対称軸として、線対称となっている。
【0066】
図14は、Y方向と直交し中心軸AXLを含む平面を断面とするレンズユニット20の断面を示し、図5及び11におけるるC−C矢視断面に相当する断面図である。
【0067】
レンズユニット20のX方向(幅方向)に関する中心線CLを外挿した直線上に物体31aが配設される。LEDアレイ35とレンズ列24−1との距離、及び、LEDアレイ35とレンズ列24−2との距離は、等しくなるように設定される。
【0068】
図14において、物体31aであるLEDアレイ35は、図面に対して垂直な方向に延在するように配設される。さらに、LEDアレイ35は、レンズ列24−1の第1のマイクロレンズ22−1の中心軸AXLに対して図における左側のみに配設され、レンズ列24−2の第1のマイクロレンズ22−1の中心軸AXLに対して図における右側のみに配設される。このように、物体31a(LEDアレイ35)は、第1のマイクロレンズ22−1の中心軸AXLに対して左右非対称、すなわち、非線対称に配設されるので、第1のマイクロレンズ22−1のY方向と直交する平面、すなわち、XZ平面による断面形状は、中心軸AXLに対して非線対称でなければならず、かつ、レンズ列24−2の第1のマイクロレンズ22−1は、レンズ列24−1の第1のマイクロレンズ22−1を、Z座標の座標軸を回転軸として、180度回転した形状でなければならない。
【0069】
また、第1のマイクロレンズ22−1と第2のマイクロレンズ22−2を同一の構成とすることができる。この場合、第1のマイクロレンズ22−1及び第2のマイクロレンズ22−2は、ともに、厚さをLT1とし、レンズユニット20の物体面OPから第1のマイクロレンズ22−1までの距離LOは距離LO1と等しく設定される。さらに、第1のマイクロレンズ22−1の物体側レンズ面の曲面と同じ形状の曲面が第2のマイクロレンズ22−2の結像側レンズ面の曲面となるように対向して配置され、第2のマイクロレンズ22−2から中間像面IMPまでの距離LO2は距離LI1と等しく設定される。第1のマイクロレンズ22−1と第2のマイクロレンズ22−2との間隔LSは、LS=2×LI1に設定され、第2のマイクロレンズ22−2からレンズユニット20の結像面IPまでの距離LIは、距離LO1と等しく設定され、LI=LOである。
【0070】
次に、本実施の形態における実施例のレンズユニット20と比較例のレンズユニットの各部寸法を説明する。
【0071】
図15は本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニット及び比較例のレンズユニットの各部寸法を示す図、図16は本発明の第1の実施の形態におけるレンズユニットのレンズ曲面形状を表す係数の値を示す図、図17は比較例のレンズユニットのレンズ曲面形状を表す係数の値を示す図である。
【0072】
本実施の形態におけるレンズユニット20と比較例のレンズユニットとは、レンズ面の形状が異なる。本実施の形態におけるレンズユニット20と比較例のレンズユニットとでは、ともに、第1のマイクロレンズ22−1及び第2のマイクロレンズ22−2の形状が同じで、第1のマイクロレンズ22−1の物体側レンズ面の曲面と同じ形状の面が第2のマイクロレンズ22−2の結像側レンズ面の曲面となるように対向して配設されている。
【0073】
比較例のレンズユニットにおける第1のマイクロレンズ及び第2のマイクロレンズの各レンズ面の曲面は、次の式(2)で表される回転対称高次非球面で構成した。なお、関数Z(r)は、第1のマイクロレンズ及び第2のマイクロレンズの各曲面において、物体から結像へ向かう方向を正の数で表す。また、rは、Z座標の座標軸を軸とする半径方向の回転座標系を示し、
【0074】
【数2】

の関係がある。さらに、中心軸AXLは座標(X、Y)=(0、0)を通るZ座標の座標軸と一致する。さらに、CRは曲率半径であり、Kはコーニック定数であり、Aは非球面係数4次の係数であり、Bは非球面係数6次の係数であり、Cは非球面係数8次の係数である。
【0075】
【数3】

次に、前記構成のプリンタ10の動作について説明する。
【0076】
図1に示されるように、感光体ドラム41の表面は、図示されない電源によって電圧が印加された帯電ローラ42により帯電される。続いて、感光体ドラム41が回転することによって、帯電された感光体ドラム41の表面がLEDヘッド30の付近に到達すると、該LEDヘッド30によって露光され、感光体ドラム41の表面に静電潜像が形成される。該静電潜像は現像器50により現像され、感光体ドラム41の表面にトナー像が形成される。
【0077】
一方、給紙カセット60にセットされた用紙11が給紙ローラ61によって給紙カセット60から取り出され、搬送ローラ62及び63により、転写ローラ80及び転写ベルト81の付近に搬送される。
【0078】
そして、感光体ドラム41が回転することによって、現像により得られた感光体ドラム41の表面上のトナー像が転写ローラ80及び転写ベルト8lの付近に到達すると、図示されない電源によって電圧が印加されている転写ローラ80と転写ベルト81により、感光体ドラム41の表面上のトナー像は用紙11上に転写される。
【0079】
続いて、表面にトナー像が形成された用紙11は、転写ベルト81の回転によって、定着器90に搬送される。用紙11上のトナー像は定着器90によって、加圧されながら過熱されることにより溶融し、用紙11上に固定される。
【0080】
さらに、該用紙11は、搬送ローラ64及び排出ロ一ラ65により、排出部70に排出され、プリンタ10の動作が終了する。
【0081】
次に、本実施の形態のLEDヘッド30の動作について説明する。
【0082】
受信した画像データに基づきプリンタ10の制御装置によりLEDヘッド30の制御信号が発信されると、図3に示されるようなドライバIC32の制御信号により任意の光量でLED素子31が発光する。該LED素子31が発行した光線はレンズユニット20に入射し、感光体ドラム41上に結像が形成される。
【0083】
次に、前記構成のレンズユニット20の動作について説明する。
【0084】
物体面OP上の物体31aとしてのLED素子31からの光線は、図13に示されるように、第1のマイクロレンズ22−1に入射し、該第1のマイクロレンズ22−1によって中心軸AXLの方向に距離LI1を隔てた位置に中間像31bが形成される。さらに、第2のマイクロレンズ22−2によって前記中間像31bの結像31cが形成されることにより、結像面IP上に物体31aの結像31cが形成される。前記中間像31bは物体31aの縮小倒立像であり、結像面IP上のLED素子31の結像31cは中間像31bの第2のマイクロレンズ22−2による拡大倒立像である。また、第1のマイクロレンズ22−1と第2のマイクロレンズ22−2との間では物体面OP上の各点からの光線の主光線が平行である、いわゆるテレセントリックになっている。
【0085】
ここで、LEDアレイ35のすべてのLED素子31が点灯した場合、中間像31bは、開口部15内部の中間像面IMP上に直線状に形成される。
【0086】
なお、物体31aとしてのLED素子31からの光線のうち、結像に寄与しない光線は、遮光板14により遮断される。
【0087】
また、第1のマイクロレンズ22−1と第2のマイクロレンズ22−2とを同じ構成のレンズとした場合も、レンズユニット20は物体31aの等倍正立像を形成する。物体31aとしてのLED素子31からの光線は、第1のマイクロレンズ22−1に入射し、該第1のマイクロレンズ22−1によって光軸方向にLS/2隔てた位置に中間像31bが形成される。さらに、第2のマイクロレンズ22−2によって中間像31bの結像31cが形成されることにより、結像面IP上に物体31aの結像31cが形成される。また、第1のマイクロレンズ22−1と第2のマイクロレンズ22−2との間ではテレセントリックになっている。
【0088】
図14に示されるように、物体31aとしてのLED素子31からの光線は、第1のマイクロレンズ22−1に入射する。このとき、LED素子31からの光線は、第1のマイクロレンズ22−1の一部で、レンズユニット20の幅方向外側に入射する。そして、第1のマイクロレンズ22−1によって中心軸AXLの方向に距離LI1を隔てた位置に中間像31bが形成される。このとき、該中間像31bは、開口部15の内部で、第1のマイクロレンズ22−1の軸よりもレンズユニット20の幅方向外側に形成される。さらに、第2のマイクロレンズ22−2によって中間像31bの結像31cが形成されることにより、結像面IP上に物体31aの結像31cが形成される。このとき、該結像31cはレンズユニット20の中心線CL上に形成される。
【0089】
本実施の形態におけるレンズユニット20において、物体31a(LEDアレイ35)は、前述のように、レンズ列24−1の第1のマイクロレンズ22−1の中心軸AXLに対して図における左側のみに配設され、レンズ列24−2の第1のマイクロレンズ22−1の中心軸AXLに対して図における右側のみに配置される。このように、物体31a(LEDアレイ35)は、第1のマイクロレンズ22−1の中心軸AXLに対して左右非対称、すなわち、非線対称に配設されるので、第1のマイクロレンズ22−1のY方向と直交する平面、すなわち、XZ平面による断面形状を、中心軸AXLに対して非線対称となるように設定し、かつ、レンズ列24−2の第1のマイクロレンズ22−1を、レンズ列24−1の第1のマイクロレンズ22−1が、Z座標の座標軸を回転軸として、180度回転した形状と設定することにより、明るい結像を得ることができる。
【0090】
さらに、第1のマイクロレンズ22−1の物体側レンズ面は、物体31aのある方向を向いているので、物体31aからの光線を多く取り込むことができ、明るい結像31cを形成することができる。また、第2のマイクロレンズ22−2のの結像側レンズ面は結像31cのある方向を向いているので、結像31cに向っての多くの光線が出射され、明るい結像31cを形成することができる。
【0091】
なお、本発明の発明者は、本実施の形態におけるレンズユニット20を用いたLEDヘッド30と比較例のレンズユニットを用いたLEDヘッドとについて、結像31cの解像度を示すMTF(Modulation Transfer Function:振幅伝達関数)を測定した。
【0092】
すると、本実施の形態におけるレンズユニット20を用いたLEDヘッド30では、MTFが80〔%〕となった。これに対し、比較例のレンズユニットを用いたLEDヘッドでは、MTFが36〔%〕であった。
【0093】
ここで、MTFとは、露光装置の解像度を示し、露光装置で点灯している発光部の結像のコントラストを示す。MTFが100〔%〕である場合、結像のコントラストが最も大きく、露光装置としての解像度が高いことを示し、MTFが小さいほど光量のコントラストが小さく、露光装置としての解像度が低いことを示す。MTFは、結像の光量の最大値をEMAXとして、隣り合う2つの結像の間の光量の最小値をEMINとすると、次の式(3)のように定義される。
【0094】
【数4】

MTFの測定においては、LEDヘッド30のレンズユニット20の結像面IP上、第2のマイクロレンズ22−2の結像側レンズ面の頂点面から距離LIだけ離れた位置の結像31cを顕微鏡デジタルカメラによって撮影し、撮影画像によりLED素子31の結像31cの光量分布を解析し、前記式(3)により値を算出した。なお、LED素子31の配列間隔がPD=0.02117〔mm〕であるLEDヘッド30を用いた。
【0095】
また、本実施の形態におけるレンズユニット20を用いたLEDヘッド30と比較例のレンズユニットを用いたLEDヘッドとについて、結像31cの明るさを測定したところ、比較例のレンズユニットを用いたLEDヘッドに比べて、本実施の形態におけるレンズユニット20を用いたLEDヘッド30では、結像31cの明るさが1.13倍であった。
【0096】
ここで、結像31cの明るさは、LEDヘッド30のレンズユニット20の結像面IP上、第2のマイクロレンズ22−2の結像側レンズ面の頂点面から距離LIだけ離れた位置の結像31cを顕微鏡デジタルカメラによって撮影し、撮影画像によりLED素子31の結像31cの光量分布を解析し、結像31cの光量の最大値EMAXを測定した。
【0097】
次に、前記レンズユニット20を用いたプリンタ10によって形成される画像の評価について説明する。
【0098】
図18は本発明の第1の実施の形態における評価に使用した画像を示す図である。
【0099】
なお、本発明の発明者は、前記プリンタ10と同様の構成を有する実際のカラーLEDプリンタを使用して、本実施の形態において説明したレンズユニット20を用いた場合の画像と、比較例のレンズユニットを用いた場合の画像とを評価した。具体的には、図18に示されるように、ドットの間隔PD=0.02117〔mm〕、解像度1200〔dpi〕の全ドットのうち1つおきにドットを形成した画像を媒体上の印字領域全面に形成し、画像品質の良否を評価した。
【0100】
本実施の形態におけるレンズユニット20を用いた場合には、良好な画像が得られた。これに対し、比較例のレンズユニットを用いた場合には、用紙の搬送方向と平行に筋や帯が発生した。
【0101】
このように、本実施の形態において説明したレンズユニット20を用いることによって、明るい結像を得ることができた。
【0102】
なお、本実施の形態では、第1のマイクロレンズ22−1及び第2のマイクロレンズ22−2の各曲面をXY多項式面で構成する場合についてのみ説明したが、第1のマイクロレンズ22−1及び第2のマイクロレンズ22−2の各曲面の構成はこれに限定されるものではなく、マイクロレンズ22の配列方向と直交する平面によるマイクロレンズ22の断面形状が、マイクロレンズ22の中心軸AXLに対して非対称な曲面で構成されていれば、同様の効果を得ることができる。
【0103】
また、本実施の形態において、レンズ板21は、金型成形によって成形されているが、樹脂を型に用いた型成形方法で成形されてもよく、切削加工によって成形されてもよい。さらに、レンズ板21の素材として、樹脂を用いているが、ガラスを用いてもよい。
【0104】
さらに、本実施の形態において、遮光板14は、素材としてポリカーボネートを用い、射出成形によって成形されているが、切削加工によって成形されてもよく、金属をエッチングして成形されてもよい。
【0105】
さらに、本実施の形態においては、発光部としてのLED素子31を複数配設したLEDアレイ35を用いたが、例えば、有機ELを発光部にしてもよく、レーザを用いた露光装置でもよい。
【0106】
従来のレンズユニットにおいては、明るい結像を得るために、2列のレンズ列に配列したマイクロレンズが、配列方向と直交する方向で、一方の列のマイクロレンズの傾きの方向に対して、他方の列のマイクロレンズの傾きの方向が反対方向になるように構成され、マイクロレンズのレンズ面がライン上に配列された発光部の方向を向くように構成されていた。
【0107】
これに対し、本実施の形態におけるレンズユニット20は、マイクロレンズ22のレンズ面の形状が物体と結像とを結ぶ方向に対して非対称となっている。そのため、レンズ面が物体のある方向及び結像の形成される方向を向いているので、明るい結像を得ることができるのに加え、結像を形成する光線の収差を低減するので、コントラストの高い結像を形成することができる。
【0108】
このように、本実施の形態においては、光源である発光部としてのLED素子31からの光線を多く取り込み、明るい結像を形成することができる。したがって、露光装置のLEDヘッド30のLED素子31の光量が低下しても、十分な明るさの結像を形成することができる。
【0109】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによって、その説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び効果についても、その説明を省略する。
【0110】
図19は本発明の第2の実施の形態における読取装置の構造を示す図である。
【0111】
図において、100は、原稿107の電子データを生成する読取装置としてのスキャナである。読取ヘッド110は、原稿107の表面で反射した光線を取り込み、電子データに変換する。なお、読取ヘッド110は、レール103上にスライド可能に配置される。
【0112】
そして、電子データが生成される原稿107は、原稿台102上に載置される。該原稿台102は可視光線を透過する素材から成る。
【0113】
また、101は、照明装置としてのランプであり、該ランプ101から照射された光が原稿107の表面で反射し、読取ヘッド110内に取り込まれるよう配置される。
【0114】
さらに、105は駆動ベルトであって、複数の滑車104により張架され、駆動ベルト105の一部は読取ヘッド110の一部に接続される。
【0115】
そして、106は駆動源としてのモータであり、駆動ベルト105を駆動し、読取ヘッド110をスライドさせる。
【0116】
次に、前記読取ヘッド110の構成について説明する。
【0117】
図20は本発明の第2の実施の形態における読取ヘッドの断面構造を示す図、図21は本発明の第2の実施の形態における読取ヘッドの光学系を示す図である。
【0118】
図において、112は、原稿107で反射された光線の光路を折り曲げるミラーである。そして、レンズユニット20は、原稿107の結像をラインセンサ111の受光面に形成する。なお、前記ラインセンサ111は、直線状に配列された複数の受光素子を備え、原稿107の結像を電気信号に変換する。
【0119】
図21に示されるように、本実施の形態においては、レンズユニット20の物体面OPが原稿107となり、結像面IPがラインセンサ111の受光面となるように配設される。 なお、本実施の形態におけるレンズユニット20の構成は、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0120】
また、本実施の形態において、ラインセンサ111は、1200〔dpi〕の解像度を備え、受光素子が1インチ(1インチは約25.4〔mm〕)当たり1200個配置されている。すなわち、受光素子は、0.02117〔mm〕間隔で配列されている。
【0121】
次に、前記構成のスキャナ100の動作について説明する。
【0122】
まず、図19に示されるように、ランプ101が点灯し、光線が原稿107の表面を照射することによって、該原稿107の表面で反射した光線が読取ヘッド110内に取り込まれる。そして、モータ106によって駆動ベルト105が駆動されると、読取ヘッド110とランプ101とが図19における横方向に移動し、読取ヘッド110は、原稿107の全面から反射した光線を取り込むことができる。
【0123】
次に、前記構成の読取ヘッド110の動作について説明する。
【0124】
まず、図20に示されるように、原稿107の表面で反射された光線は、原稿台102を透過し、ミラー112を用いて光路が折り曲げられ、レンズユニット20に入射する。該レンズユニット20によって、前記原稿107の結像は、ラインセンサ111上に形成される。そして、該ラインセンサ111は、形成された原稿107の結像を電気信号に変換する。
【0125】
本発明の発明者が、本実施の形態で説明したようなスキャナ100と同様の構成を有する実際のスキャナを使用したところ、原稿とほぼ同一の良好な電子データを得ることができた。この場合、前記原稿の電子データは、前記第1の実施の形態における図18に示されるとおりのものであって、ドットの間隔PD=0.02117〔mm〕、解像度1200〔dpi〕の全ドットのうち、1つおきにドットを形成した画像が媒体上の印字領域全面に形成された。
【0126】
なお、本実施の形態においては、原稿画像を電子データに変換する読取装置がスキャナ100である例について説明したが、前記読取装置は、光学的信号を電気的信号に変換するセンサ又はスイッチ、及び、それらを用いた入出力装置、生態認証装置、通信装置、寸法測定器等であってもよい。
【0127】
このように、本実施の形態においては、照明装置の光量を抑制しても、十分な明るさの結像を形成することができる。
【0128】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、レンズアレイ、レンズユニット、LEDヘッド、露光装置、画像形成装置及び読取装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0130】
10 プリンタ
14 遮光板
15 開口部
20 レンズユニット
21−1 第1のレンズ板
21−2 第2のレンズ板
22 マイクロレンズ
22−1 第1のマイクロレンズ
22−2 第2のマイクロレンズ
24−1、24−2 レンズ列
30 LEDヘッド
31a 物体
31c 結像
100 スキャナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に配列された複数のレンズを含むレンズアレイであって、
物体と結像とを結ぶ直線と平行な方向を第1の方向とし、前記レンズの配列方向を第2の方向とし、該第2の方向と直交する平面をXZ平面としたとき、
該XZ平面による断面形状は、前記第1の方向に平行な軸に対して非線対称であることを特徴とするレンズアレイ。
【請求項2】
隣接する前記レンズ同士がほぼ隙間なく接している請求項1に記載のレンズアレイ。
【請求項3】
前記レンズの配列間隔が、前記第2の方向における前記レンズの半径のほぼ2倍である請求項1又は2に記載のレンズアレイ。
【請求項4】
前記第1の方向及び第2の方向のいずれに対しても直交する方向を第3の方向とし、該第3の方向を座標軸とする座標をX座標とし、前記第2の方向を座標軸とする座標をY座標とし、前記第1の方向を座標軸とする座標をZ座標とし、CRを曲率半径とし、Kをコーニック定数とし、n及びmをそれぞれ正の整数とし、CPnmを多項式の係数としたとき、前記レンズの形状が式(1)のXY多項式面で表され、
【数1】

nが奇数である前記CPnmのうちの少なくとも1つは、CPnm≠0である請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンズアレイ。
【請求項5】
前記第3の方向と直交する平面をYZ平面としたとき、前記レンズの前記YZ平面による断面形状は、前記第1の方向に平行な軸に対して線対称である請求項1〜4のいずれか1項に記載のレンズアレイ。
【請求項6】
前記レンズの形状が前記式(1)のXY多項式面で表され、mが奇数である前記CPnmは、CPnm=0である請求項4又は5に記載のレンズアレイ。
【請求項7】
前記レンズは、複数のレンズ列を形成するように配列され、一方のレンズ列を第1のレンズ列とし、他方のレンズ列を第2のレンズ列としたとき、該第2のレンズ列のレンズの形状は、前記第1のレンズ列のレンズを前記第1の方向に平行な軸を回転軸として180度回転させた形状である請求項1〜6のいずれか1項に記載のレンズアレイ。
【請求項8】
前記第3の方向において、前記レンズアレイの外側へ向う方向を正とし、中央へ向う方向を負とするX座標で示したとき、前記レンズの物体に対向する面は、前記式(1)のXY多項式面で表され、Xが正である前記レンズの物体に対向する面上の点Z(X、Y)は、Xが負である前記レンズの物体に対向する面上の点Z(X、Y)より小さい請求項7に記載のレンズアレイ。
【請求項9】
前記第3の方向において、前記レンズアレイの外側へ向う方向を正とし、中央へ向う方向を負とするX座標で示したとき、前記レンズの結像に対向する面は、前記式(1)のXY多項式面で表され、Xが正である前記レンズの結像に対向する面上の点Z(X、Y)は、Xが負である前記レンズの結像に対向する面上の点Z(X、Y)より大きい請求項7又は8に記載のレンズアレイ。
【請求項10】
複数の対物レンズが略直線状に配列されたレンズアレイと、複数の結像レンズが前記対物レンズの配列方向と同じ方向に配列されたレンズアレイと、複数の絞りが一方向に配列された遮光部材とを有するレンズユニットであって、
前記絞りは前記対物レンズ及び結像レンズの光軸上に配置され、
前記対物レンズは物体の縮小倒立像を形成し、
前記結像レンズは前記縮小倒立像の拡大倒立像を形成し、
前記対物レンズが配列されたレンズアレイ又は前記結像レンズが配列されたレンズアレイの少なくとも一方が、
物体と結像とを結ぶ直線と平行な方向を第1の方向とし、レンズの配列方向を第2の方向とし、該第2の方向と直交する平面をXZ平面としたとき、
該XZ平面による断面形状は、前記第1の方向に平行な軸に対して非線対称であるレンズアレイであり、物体の等倍正立像を形成することを特徴とするレンズユニット。
【請求項11】
複数の対物レンズが略直線状に配列されたレンズアレイと、複数の結像レンズが前記対物レンズの配列方向と同じ方向に配列されたレンズアレイと、複数の絞りが一方向に配列された遮光部材とを備えるレンズユニットであって、
前記絞りは前記対物レンズ及び結像レンズの光軸上に配置され、
前記対物レンズは物体の縮小倒立像を形成し、
前記結像レンズは前記縮小倒立像の拡大倒立像を形成し、
前記対物レンズが配列されたレンズアレイ又は前記結像レンズが配列されたレンズアレイの少なくとも一方が、
物体と結像とを結ぶ直線と平行な方向を第1の方向とし、レンズの配列方向を第2の方向とし、該第2の方向と直交する平面をXZ平面としたとき、
該XZ平面による断面形状は、前記第1の方向に平行な軸に対して非線対称であるレンズアレイであり、物体の等倍正立像を形成するレンズユニットを有するLEDヘッド。
【請求項12】
複数の対物レンズが略直線状に配列されたレンズアレイと、複数の結像レンズが前記対物レンズの配列方向と同じ方向に配列されたレンズアレイと、複数の絞りが一方向に配列された遮光部材とを備えるレンズユニットであって、
前記絞りは前記対物レンズ及び結像レンズの光軸上に配置され、
前記対物レンズは物体の縮小倒立像を形成し、
前記結像レンズは前記縮小倒立像の拡大倒立像を形成し、
前記対物レンズが配列されたレンズアレイ又は前記結像レンズが配列されたレンズアレイの少なくとも一方が、
物体と結像とを結ぶ直線と平行な方向を第1の方向とし、レンズの配列方向を第2の方向とし、該第2の方向と直交する平面をXZ平面としたとき、
該XZ平面による断面形状は、前記第1の方向に平行な軸に対して非線対称であるレンズアレイであり、物体の等倍正立像を形成するレンズユニットを備えるLEDヘッドを有する露光装置。
【請求項13】
複数の対物レンズが略直線状に配列されたレンズアレイと、複数の結像レンズが前記対物レンズの配列方向と同じ方向に配列されたレンズアレイと、複数の絞りが一方向に配列された遮光部材とを備えるレンズユニットであって、
前記絞りは前記対物レンズ及び結像レンズの光軸上に配置され、
前記対物レンズは物体の縮小倒立像を形成し、
前記結像レンズは前記縮小倒立像の拡大倒立像を形成し、
前記対物レンズが配列されたレンズアレイ又は前記結像レンズが配列されたレンズアレイの少なくとも一方が、
物体と結像とを結ぶ直線と平行な方向を第1の方向とし、レンズの配列方向を第2の方向とし、該第2の方向と直交する平面をXZ平面としたとき、
該XZ平面による断面形状は、前記第1の方向に平行な軸に対して非線対称であるレンズアレイであり、物体の等倍正立像を形成するレンズユニットを備えるLEDヘッドを備える露光装置を有する画像形成装置。
【請求項14】
複数の対物レンズが略直線状に配列されたレンズアレイと、複数の結像レンズが前記対物レンズの配列方向と同じ方向に配列されたレンズアレイと、複数の絞りが一方向に配列された遮光部材とを備えるレンズユニットであって、
前記絞りは前記対物レンズ及び結像レンズの光軸上に配置され、
前記対物レンズは物体の縮小倒立像を形成し、
前記結像レンズは前記縮小倒立像の拡大倒立像を形成し、
前記対物レンズが配列されたレンズアレイ又は前記結像レンズが配列されたレンズアレイの少なくとも一方が、
物体と結像とを結ぶ直線と平行な方向を第1の方向とし、レンズの配列方向を第2の方向とし、該第2の方向と直交する平面をXZ平面としたとき、
該XZ平面による断面形状は、前記第1の方向に平行な軸に対して非線対称であるレンズアレイであり、物体の等倍正立像を形成するレンズユニットを有する読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−247566(P2012−247566A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118222(P2011−118222)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】