説明

レーザスクライブ装置、基板の分断方法及び電気光学装置の製造方法

【課題】レーザスクライブするとき、レーザ光が塵による影響を受けにくいレーザスクライブ装置、基板の分断方法及び電気光学装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板9にレーザ光を照射してスクライブするレーザスクライブ装置1に係る。レーザ光を発光するレーザ光源2と、基板9の内部にレーザ光を集光する集光部8と、基板9と集光部8とを相対移動するテーブル部4と、基板9上に付着する塵を除去する吸引装置14とを有し、塵を除去した場所に、レーザ光を集光しながら、照射することにより、改質部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザスクライブ装置、基板の分断方法及び電気光学装置の製造方法に係り、特に、基板上における塵の除去に関する。
【背景技術】
【0002】
光透過性のある基板を品質良く切断するために、レーザ光を基板に照射して基板内部に改質領域(以下、改質部と称す。)を形成するレーザスクライブ装置と、このレーザスクライブ装置を用いたレーザスクライブ方法が特許文献1に開示されている。それによると、パルス幅が1μs以下のレーザ光を出射し、集光レンズで基板内部に集光し、集光部におけるピークパワー密度を1×108(W/cm2)以上にする。これにより、加工対象物の内部に多光子吸収による改質部を形成するものである。
【0003】
また、このレーザスクライブ装置を用いて、加工対象物の内部に形成される改質部あるいはこれを起点として形成される改質部の大きさは、集光レンズの特性と、レーザ光のピークパワー密度に依存する。例えば、上記特許文献1に示されたガラス(厚さ700μm)に対してYAGレーザを用いて切断する実施例では、集光レンズの開口数が0.55の場合、ピークパワー密度がおよそ1×1011(W/cm2)では、改質部の大きさは、およそ100μmである。また、ピークパワー密度がおよそ5×1011(W/cm2)では、およそ250μmである。基板の内部に改質部を配列して形成し、改質部を押圧することで、基板を改質部に沿って品質良く分断することができる。
【0004】
電気光学装置の一つに、液晶表示装置がある。液晶表示装置は、基板を2枚貼り合わせて、基板間に液晶を挿入された構造をしている。そして、この基板は、大判のガラス基板を2枚貼り合わせた後、分断されている。この分断する工程において、レーザスクライブ装置を採用することにより、分断時のガラス粉の発生を抑えることが可能となっている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−192370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザスクライブ装置は、レーザ光源を備え、レーザ光源が発光するレーザ光を集光レンズが集光して、基板の内部に照射して、改質部を形成している。そして、基板を移動するテーブルを備え、テーブルを移動することにより、基板に改質部を配列して形成している。
【0007】
基板をレーザスクライブ装置に載置する前の工程で、基板を洗浄し、基板上に付着する塵を除去している。しかし、基板の運搬途中及び、装置のテーブル上において、空中に浮遊する塵が、基板に付着することがある。この塵は、基板にレーザ光を照射するとき、レーザ光の一部を遮光するので、基板内部に集光される光エネルギが弱くなり、改質部が小さくなっていた。
【0008】
そして、改質部が小さくなるので、基板を分断するとき、基板が改質部に沿って分断せず凹凸の大きな形状に分断されるという問題点があった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、レーザスクライブするとき、レーザ光が塵による影響を受けにくいレーザスクライブ装置、基板の分断方法及び電気光学装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のレーザスクライブ装置は、基板にレーザ光を照射してスクライブするレーザスクライブ装置であって、レーザ光を発光するレーザ光源部と、基板の内部にレーザ光を集光して照射する集光部と、基板と集光部とを相対移動する移動手段と、基板上に付着する塵を除去する塵除去部とを有し、塵を除去した場所に、レーザ光を照射して改質部を形成することを特徴とする。
【0011】
ここで、スクライブとは、レーザスクライブを示す。つまり、基板にレーザ光を照射して改質部を複数配列して、形成することを示す。そして、基板を分断し易くすることをいう。
このレーザスクライブ装置によれば、まず、基板に付着する塵を、塵除去部が除去する。次に、塵の付着していない場所における基板の内部に、レーザ光源が発行するレーザ光を、集光部が集光して照射する。そして、レーザ光が集光される集光場所には改質部が形成される。
【0012】
塵が基板上に付着しているときは、塵がレーザ光を遮光する。すると、集光場所には、改質部を形成するために必要なエネルギが集中されずに、改質部が形成できにくくなる。ところが、このレーザスクライブ装置は、塵除去部が塵を除去する為、改質部が品質良く形成することができる。その結果、品質良くスクライブできるレーザスクライブ装置とすることができる。
【0013】
本発明のレーザスクライブ装置は、基板上の塵を検出する第1塵検出部と、塵を除去するか、塵を除去しないかの判断をする塵除去判断部とを備え、塵除去判断部は、基板上に塵を検出するとき、塵の大きさと閾値とを比較して、塵が、閾値より大きいとき塵を除去する判断をすることを特徴とする。
【0014】
このレーザスクライブ装置によれば、第1塵検出部が検出する塵の大きさと閾値とを、塵除去判断部が比較判断している。塵の大きさが大きいとき、塵が遮光する光エネルギが大きくなるので、改質部を形成しにくくなる。そして、このレーザスクライブ装置は、塵が大きいときに、塵を除去する判断をしている。従って、品質良く改質部を形成する為の対応をとることができる。
【0015】
本発明のレーザスクライブ装置は、第1塵検出部が、塵を検出した後、塵除去判断部が塵を除去する判断をしたとき、塵除去部が塵を除去することを特徴とする。
【0016】
このレーザスクライブ装置によれば、塵の大きさが閾値より大きいとき、塵を除去する判断をし、塵除去部が、その塵を除去している。従って、改質部を形成しにくくする塵が除去される為、改質部を品質良く形成することができる。さらに、塵の除去が必要なときにのみ、塵を除去することから、総ての塵を除去するときに比べて、塵を除去する回数を減らすことができる。その結果、生産性良く塵を除去することができる。
【0017】
本発明のレーザスクライブ装置は、塵除去部が塵を除去した場所の塵を検出する第2塵検出部と、第2塵検出部が検出する塵の場所を記憶する塵位置記憶部とを備え、塵位置記憶部が記憶する位置の塵を、塵除去部が除去することを特徴とする。
【0018】
このレーザスクライブ装置によれば、塵除去部が塵を除去できないとき、その塵を第2塵検出部が検出し、塵の場所を塵位置記憶部が記憶する。そして、塵除去部が除去する。従って、塵除去部が塵を除去できないとき、再度、塵除去部が塵を除去することから、1回の塵除去に比べて、除去されない塵を少なくすることができる。その結果、品質良く改質部を形成することができる。さらに、塵がある場所を記憶した後、塵の除去できない場所に限って、塵の除去を行っている。従って、基板の総ての場所で、塵の検出と、塵の除去とを2回行う場合に比べて、生産性良く塵を除去することができる。
【0019】
本発明のレーザスクライブ装置は、改質部の有無と大きさとを検査する検査部と、検査部が検査する検査結果により、レーザ光の照射を継続するか、停止するかの判断をするレーザ光照射判断部とを備え、レーザ光照射判断部は、改質部が形成されないときと改質部が閾値より小さいときとのいずれかが所定の回数以上、連続して生ずるとき、レーザ光の照射を停止する判断をすることを特徴とする。
【0020】
このレーザスクライブ装置によれば、検査部が検査する改質部の有無と大きさを参照して、レーザ光照射判断部が、レーザ光の照射を継続するか、停止するかの判断をしている。
【0021】
改質部が形成されないとき、又は、改質部の大きさが閾値より小さいとき、のいずれかが所定の回数以上、連続して生ずるとき、基板に応力を加えて、基板を分断できないことがある。もしくは、基板が、分断したい形状に比べて凹凸の大きな形状に分断されてしまう場合がある。つまり、分断したとき、断面に大きな凹凸が存在する不良基板を製造することになる。
【0022】
本発明では、改質部が形成されないときと、改質部の大きさが閾値より小さいときとの、いずれかが所定の回数以上、連続して生ずるとき、レーザ光の照射を停止する判断をしている。そして、分断するときに、不良な基板が形成されることを防止している。従って、品質良く改質部を形成できるスクライブ装置とすることができる。
【0023】
本発明のレーザスクライブ装置では、第1塵検出部は、塵の画像を撮像する撮像装置と、画像の面積を演算する画像演算装置とを備えることを特徴とする。
【0024】
このレーザスクライブ装置によれば、撮像装置が撮像する画像を、画像演算装置が画像の面積を演算している。撮像装置は、塵の輪郭を捉えことができる。画像演算装置は、輪郭の内側と外側とを区別して、輪郭の内側の面積を演算することにより、塵を撮像装置から見た画像の面積を演算して算出することができる。その結果、塵の画像における面積を精度良く算出することができる。
【0025】
本発明のレーザスクライブ装置では、第1塵検出部は、基板に光を照射する照射装置と、基板に照射された光が反射又は透過する光を、受光する受光装置と、受光装置が受ける光の光量を演算する光量演算装置とを備えることを特徴とする。
【0026】
このレーザスクライブ装置によれば、塵に光を照射して、基板を反射する反射光、又は、基板を透過する透過光を受光装置が受光した後、受光する光量により、光量演算装置が、塵の大きさを推定している。反射光を用いるとき、基板に照射して反射する光路に、塵があると、塵が光路上の光を遮光するため、反射光が弱くなる。同様に、透過光を用いるとき、基板に照射して透過する光路に、塵があると、塵が光路上の光を遮光するため、反射光が弱くなる。塵が大きい程、塵が遮光する光量が大きくなることから、受光装置が受光する光量が小さくなる。従って、塵の有無と塵の大きさを推定することができる。
【0027】
この構成では、塵の有無と、塵の大きさの推定に、光量のみで判断することから、簡単な構成で塵の大きさを推定することができる。その結果、生産性良く製造されるレーザスクライブ装置とすることができる。
【0028】
本発明のレーザスクライブ装置では、改質部を基板の深さ方向に複数形成するとき、塵除去判断部は、改質部を形成する場所が深いときの閾値に比べて、浅いときの閾値の方が、小さい値であることを特徴とする。
【0029】
このレーザスクライブ装置によれば、塵を除去するか、しないかの判断をするとき、塵の大きさを区別する閾値を、改質部を形成する場所で、切り換えている。集光部がレーザ光を集光場所に集光することにより、改質部が形成される。レーザ光をその光軸と直交する平面で区切るとき、レーザ光のエネルギ密度は、集光部に近い平面の方が、集光場所に近い平面に比べて、低いエネルギ密度となる。
【0030】
平面上に塵があって、この塵がレーザ光を遮光するとき、同じ大きさの塵が、レーザ光を遮光するとき、エネルギ密度の高い場所にある塵の方が、低い場所にある塵に比べて大きなエネルギを遮断する。遮光されるエネルギが大きい方が、形成される改質部の大きさが小さくなる。基板の表面が、集光場所に近い方が、集光部に近い方に比べて、基板表面におけるレーザ光のエネルギ密度が高くなる。それで、基板表面が集光場所に近い方が、塵による影響が大きくなる。
【0031】
改質部を形成する場所が浅いときは、集光場所を、基板の表面に、近い場所にするので、塵の閾値を小さくすることにより、塵がレーザ光を遮光する光量を小さくすることができる。その結果、レーザ光は、塵の影響を受けにくくなり、品質良く改質部を形成することができる。
【0032】
さらに、改質部を形成する場所が深いときは、閾値を大きくする。従って、小さい塵は除去しないことにより、除去する塵を少なくしている。その結果、生産性良く塵を除去して、改質部を形成することができる。
【0033】
本発明のレーザスクライブ装置は、塵除去部と、集光部とが並んでいる方向と、基板が移動する方向とを切り換える方向切替装置を備えることを特徴とする。
【0034】
このレーザスクライブ装置によれば、塵除去部と、集光部とが並んで配置されている方向に、基板を移動することにより、塵除去部が塵を除去して、その後、集光部がレーザ光を集光して改質部を形成する。従って、塵の少ない基板上に、レーザ光を照射する為、品質良く改質部を形成することができる。
【0035】
さらに、レーザスクライブ装置は、方向切替装置を備えている。それで、塵除去部と、集光部とが並んで配置されている方向と、基板の移動方向とを切り換えることができる。従って、基板の複数の方向において、塵の除去、改質部の形成を続けて行うことにより、複数の方向に改質部を、品質良く、配列して形成することができる。
【0036】
本発明のレーザスクライブ装置では、塵除去部は、大気圧に対して負圧を形成して、塵を吸引する塵吸引装置を備え、基板上から塵を除去することを特徴とする。
【0037】
このレーザスクライブ装置によれば、塵除去部に塵吸引装置を備えている。塵吸引装置は、負圧を形成することにより、気体の流れを形成する。そして、気体の流れが塵に当り、塵を基板から剥離させて、吸引する。その結果、塵を基板上から除去することができる。
【0038】
上記課題を解決するために、本発明の基板の分断方法は、基板上に存在する塵を除去する第1塵除去工程と、基板にレーザ光を照射して、改質部を配列して形成する照射工程と、基板に配列して形成される改質部に沿って分断する分断工程とを有し、第1塵除去工程と照射工程とが繰り返して行われることを特徴とする。
【0039】
この基板の分断方法によれば、塵の除去と、改質部の形成が連続して行われる。基板から塵を除去した後、続けて、レーザ光を照射して、改質部を形成する為、レーザ光を照射する場所では、塵が少ない状態で、レーザ光を照射することができる。その結果、品質良く改質部を配列して形成することができる為、品質良く分断することができる。
【0040】
本発明の基板の分断方法は、第1塵除去工程の前に、基板上に存在する塵を検出する第1塵検出工程と、塵を除去するか、塵を除去しないかの判断をする第1塵除去判断工程とを備え、第1塵除去判断工程では、基板上に塵を検出するとき、塵の大きさと閾値とを比較し、塵が、閾値より大きいとき塵を除去する判断をし、塵除去工程では、第1塵除去判断工程で塵を除去する判断をするときに限って、塵の除去を行うことを特徴とする。
【0041】
この基板の分断方法によれば、塵を検出した後、塵の大きさを閾値と比較して、除去するか、除去しないかを判断している。そして、除去する判断をしたとき、塵を除去している。従って、塵を総て除去する場合に比べて、塵を除去する回数を減らすことができる。その結果、塵の除去のために消費するエネルギを減らすことができる為、省資源な基板の分断方法とすることができる。
【0042】
本発明の基板の分断方法は、第1塵除去工程の後に、基板上に存在する塵を検出する第2塵検出工程と、第2塵検出工程で検出する塵の場所を記憶する記憶工程と、第2塵検出工程で検出する塵を除去する第2塵除去工程と、第2塵除去工程で、塵を除去した場所にレーザ光を照射する照射工程とを備えることを特徴とする。
【0043】
この基板の分断方法によれば、第1塵除去工程において、塵を除去した後に、第2塵検出工程において、塵を検出することにより、塵が除去できたかを確認している。そして、記憶工程において、塵の場所を記憶した後、第2塵除去工程において、塵を除去している。そして、再照射工程において、塵を除去した場所にレーザ光を照射して改質部を形成している。
【0044】
第1除去工程において塵が除去できなかったとき、塵を再度除去してから、レーザ光を照射して改質部を形成している。従って、塵を除去する為、塵の上からレーザ光を照射することが少なくなっている。その結果、品質良く改質部を形成することができる。さらに、記憶工程で、塵のある場所を記憶している為、塵のある場所に移動して、塵の除去と、レーザ光の照射を行っている。従って、基板の総ての場所で、塵の検出と、塵の除去とを2回行う場合に比べて、生産性良く塵を除去しながら、改質部を形成することができる。
【0045】
本発明の基板の分断方法は、照射工程の後で、改質部の有無と大きさとを検査する検査工程と、検査工程の検査結果により、レーザ光を照射する条件を調整するか、調整しないかの判断をする調整判断工程と、レーザ光を照射する条件を調整する調整工程とを備え、
調整判断工程では、改質部が形成されないときと改質部が所定の大きさより小さいときとが所定の回数以上連続するとき、調整する判断をすることを特徴とする。
【0046】
この基板の分断方法によれば、改質部の有無と大きさとを検査した後、改質部が所定の回数連続して形成されない場合と、改質部の大きさが所定の回数連続して小さく形成された場合に、レーザ光を照射する条件を調整している。従って、改質部が所定の回数以上連続して形成されないことを防止し易くできる。同様に、大きさが小さい改質部が所定の回数以上連続して形成されることを防止し易くできる。その結果、改質部が品質良く形成される為、基板を品質良く分断することができる。
【0047】
本発明の基板の分断方法では、閾値は、改質部を形成する場所が深いときの閾値に比べて、浅いときの閾値の方が、小さい値であることを特徴とする。
【0048】
この基板の分断方法によれば、塵を除去するか、しないかの判断をするとき、塵の大きさを区別する閾値を、改質部を形成する場所で、切り換えている。基板表面が集光場所に近い方が、塵による影響が大きくなる。改質部を形成する場所が浅いときは、基板の表面が、集光場所に近くすることから、塵の閾値を小さくする為、塵がレーザ光を遮光する量が小さくすることができる。その結果、レーザ光は、塵の影響を受けにくくなり、品質良く改質部を形成することができる。
【0049】
さらに、改質部を形成する場所が深いときは、閾値を大きくすることにより、小さい塵は除去しないことから、除去する塵の数を少なくしている。その結果、生産性良く塵を除去して、スクライブすることができる。
【0050】
上記課題を解決するために、本発明の電気光学装置の製造方法は、基板を有する電気光学装置の製造方法であって、基板にレーザ光を照射して、改質部を配列して形成するスクライブ工程と、基板に配列して形成される改質部に沿って分断する分断工程とを有し、スクライブ工程及び分断工程に、上記に記載の基板の分断方法が用いられていることを特徴とする。
【0051】
この電気光学装置の製造方法によれば、電気光学装置を構成する基板を分断するとき、前記する基板の分断方法を用いて基板が分断されている。従って、基板をスクライブするときに塵の影響を受け難くスクライブされており、基板が品質良く分断される電気光学装置の製造方法とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明を具体化した実施例について図面に従って説明する。
尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
【0053】
(第1の実施形態)
本実施形態では、塵を検出する装置を有するスクライブ装置を用いて、レーザスクライブ方法によりスクライブして分断する場合の例を説明する。ここで、本発明の特徴的な製造方法について説明する前にスクライブ装置について図1を用いて説明する。
【0054】
(レーザスクライブ装置)
図1は、レーザスクライブ装置の構成を示す模式概略図である。
図1に示すように、レーザスクライブ装置1は、レーザ光を出射するレーザ光源2と、出射されたレーザ光をワークに照射する光学経路部3と、光学経路部3に対してワークを相対的に移動させる移動手段としてのテーブル部4と、動作を制御する制御装置5を主として構成されている。
【0055】
レーザ光源2は、出射するレーザ光を加工対象物の内部に集光して多光子吸収による改質部を形成できる光源であれば良い。例えば、レーザ光源2は、本実施形態において、LD励起Nd:YAG(Nd:Y3Al512)のレーザ媒質からなり、第3高調波(波長:355nm)のQスイッチパルス発振のレーザ光を出射する発光条件を採用している。パルス幅はおよそ14ns(ナノ秒)、パルス周期は10kHz、出力はおよそ60μJ/パルスのレーザ光を出射する発光条件を採用している。
【0056】
光学経路部3はハーフミラー6を備えている。ハーフミラー6は、レーザ光源2から照射されるレーザ光の光軸7a上に配置されている。ハーフミラー6はレーザ光源2から照射されるレーザ光を反射して、光軸7aから光軸7へ進行方向を変更する。ハーフミラー6に反射したレーザ光が通過する光軸7上に集光部8が配置されている。集光部8は、その内部に凸レンズである集光レンズ8aを備え、レーザ光を集光可能にしている。テーブル部4には基板9が配置され、集光部8を通過したレーザ光が基板9に照射されるようになっている。
【0057】
集光部8はレンズ支持部10により、レンズ移動機構11に支持されている。レンズ移動機構11は、図示しない直動機構を有し、集光部8を光軸7が進行する方向(図中Z方向)に移動させて、集光部8を通過したレーザ光が集光する位置を移動可能としている。
【0058】
直動機構は、例えばZ方向に延びるネジ軸(駆動軸)と、同ネジ軸と螺合するボールナットを供えたネジ式直動機構であって、その駆動軸が所定のパルス信号を受けて所定のステップ単位で正逆転する図示しないZ軸モータに連結されている。そして、所定のステップ数に相当する駆動信号がZ軸モータに入力されると、Z軸モータが正転又は反転して、レンズ移動機構11が同ステップ数に相当する分だけ、光軸7方向に沿って往動又は復動するようになっている。
【0059】
集光部8とハーフミラー6とを通過する光軸7の延長線上にあって、ハーフミラー6に対して集光部8と反対側には、撮像装置12を備えている。撮像装置12は、例えば、図示しない同軸落射型光源とCCD(Charge Coupled Device)が組み込まれたものである。同軸落射型光源から出射した可視光は、集光部8を透過して基板9を照射する。撮像装置12は、集光部8とハーフミラー6とを通して基板9を撮像することが可能となっている。
【0060】
レンズ移動機構11の右側には、第2検出部としての撮像装置13、塵除去部及び塵吸引装置としての吸引装置14、第1検出部としての撮像装置15、照明装置16が並んで配置されている。撮像装置13及び撮像装置15は、撮像装置12と同様に、同軸落射型光源とカラー画像用のCCDが組み込まれ、基板9を撮像することが可能となっている。照明装置16は、可視光を発光して、基板9を照射する。照射される可視光は、基板9上に存在する塵も照射する。そして、塵が反射する光と、基板9が反射する光の差により、塵を認識し易くなっている。
【0061】
吸引装置14は、真空ポンプ、タンク、電磁弁などから構成され、タンク内の気体を真空ポンプが吸引することにより、タンク内の気圧を大気圧に対して負圧にすることが可能となっている。吸引装置14には、吸引管14aと排気管14bとが接続され、配置されている。吸引管14aは、電磁弁を介してタンクと接続され、電磁弁を開くとき、吸引管14aの一端に形成されている吸引口14cから、気体が吸引されるようになっている。そして、基板9上に塵があるとき、塵は、塵の周囲の気体と伴に吸引される。
【0062】
排気管14bは、吸引装置14と、工場内に配置されている排気ダクトとに接続されている。そして、吸引装置14の真空ポンプが排出する気体は、吸引された塵と伴に、排気ダクトに排気されるようになっている。
【0063】
レンズ移動機構11の左側には、検査部としての撮像装置17、照明装置18が並んで配置されている。撮像装置17は、撮像装置12と同様に、同軸落射型光源とCCDが組み込まれ、基板9の内部を撮像することが可能となっている。その上、撮像装置17は、オートフォーカス装置を備え、基板9の内部に形成される改質部の深さが、浅い場所から深い場所まで、焦点を合わせて撮像することが可能になっている。照明装置18は、可視光を発光して、基板9を照射する。照射される可視光は、基板9の内部に形成される改質部も照射する。そして、改質部が反射する光と、基板9が反射する光の差により、改質部を認識し易くなっている。
【0064】
テーブル部4は、基台20を備えている。基台20の光学経路部3側には、レール21が凸設して配置されており、レール21上にはX軸スライド22が配置されている。X軸スライド22は、図示しない直動機構を備え、レール21上のX方向に移動可能となっている。直動機構は、レンズ移動機構11が備える直動機構と同様な機構であり、所定のステップ数に相当する駆動信号に対応してX軸スライド22が同ステップ数に相当する分だけ、X方向に沿って往動又は復動するようになっている。
【0065】
X軸スライド22の光学経路部3側にはレール23が凸設して配置されており、レール23上にはY軸スライド24が配置されている。Y軸スライド24は、X軸スライド22と同様な直動機構を備え、レール23上をY方向に移動可能となっている。
【0066】
Y軸スライド24の光学経路部3側には、方向切替装置としての回転テーブル25が配置されている。回転テーブル25は、図示しない回転機構を有し、基板9を回転させて、X軸スライド22及びY軸スライド24が移動するとき、基板9が移動する方向を変更可能としている。
【0067】
回転機構は、例えば、駆動軸に歯車を備えたステップモータと、同歯車と噛み合う減速ギアとを供えた回転機構である。その駆動軸が所定のパルス信号を受けて所定のステップ単位で正逆転する。そして、所定のステップ数に相当する駆動信号がステップモータに入力されると、ステップモータが正転又は反転して、回転テーブル25が同ステップ数に相当する分だけ、回転するようになっている。
【0068】
回転テーブル25の光学経路部3側には、ステージ26が配置され、ステージ26の上面には図示しない吸引式のチャック機構が設けられている。そして、基板9を載置すると、チャック機構によって、基板9がステージ26の上面における所定の位置に位置決めされ固定されるようになっている。
【0069】
制御装置5は、メインコンピュータ27、インターフェース28、メモリ29を備えている。メインコンピュータ27は内部に図示しないCPU(Central Processing Unit)を備えている。CPUはメモリ29内に記憶されたプログラムソフト30に従って、レーザスクライブ装置1の動作を制御するものである。具体的な機能実現部として、レーザ光照射演算部31、塵除去判断部32、レーザ光照射判断部33、塵位置記憶部34などを有する。
【0070】
レーザ光照射演算部31は、レーザ光を照射する場所と、レーザ光の光強度等を演算する機能を有する。塵除去判断部32は、基板9上に塵が検出されるとき、この塵を除去するか、しないかの判断をする機能を有する。レーザ光照射判断部33は、塵の有無の検出結果をもとに、レーザ光を照射するか、しないかの判断をする機能を有する。そして、塵位置記憶部34は、基板9上に、除去できなかった塵があるとき、この塵の場所を記憶する機能を有する。
【0071】
メモリ29は、RAM、ROM等といった半導体メモリや、ハードディスク、CD−ROMといった外部記憶装置を含む概念である。機能的には、レーザスクライブ装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト30を記憶する記憶領域が設定される。さらに、基板9内におけるレーザ光を照射する位置の座標データである照射位置データ35を記憶するための記憶領域も設定される。他にも、塵を除去するかと、除去しないかとを判断するときの塵面積閾値や、改質部の大きさを判定する改質部閾値等の判定閾値データ36を記憶するための記憶領域や、除去されなかった塵の場所を示す塵位置データ37の記憶領域が設定される。その上、メインコンピュータ27のためのワークエリアやテンポラリファイル等として機能する記憶領域やその他各種の記憶領域が設定される。
【0072】
インターフェース28は、入力装置38、表示装置39、レーザ光制御装置40、レンズ制御装置41、画像演算装置42、塵除去制御装置43、ステージ制御装置44等と接続されている。
【0073】
入力装置38は、レーザ加工の際に用いられる各種加工条件のデータを入力する装置であり、表示装置39はレーザ加工時の各種情報を表示する装置である。メインコンピュータ27は、入力される各種加工条件とプログラムソフト30とに従って、レーザ光の照射を行い、加工状況を表示装置39に表示する。操作者が表示装置39に表示される各種情報を見て、加工状況を確認して操作するようになっている。
【0074】
レーザ光制御装置40は、レーザ光源2を駆動するパルス信号のパルス幅、パルス周期、出力の開始と停止、等を制御する装置であり、メインコンピュータ27の制御信号により制御される。
【0075】
レンズ制御装置41は、レンズ移動機構11の移動、停止を制御する装置である。レンズ移動機構11には、移動距離を検出可能な図示しない位置センサが内蔵されており、レンズ制御装置41は、この位置センサの出力を検出することにより、集光部8の光軸7方向の位置を認識する。レンズ制御装置41は、レンズ移動機構11にパルス信号を送信し、レンズ移動機構11を所望の位置に移動することができるようになっている。
【0076】
画像演算装置42は、撮像装置12から出力される画像データを演算する機能を備えている。ステージ26に基板9を配置し、撮像装置12で撮像した画像を観察するとき、レンズ移動機構11を操作して、集光部8と基板9との距離を変えることにより画像が鮮明になるときとぼやけるときが存在する。集光部8を移動して、基板9のステージ26側の面に焦点が合うときと、基板9の光学経路部3側の面に焦点が合うときに、撮像される画像が鮮明になる。一方、焦点が合っていないとき、撮像される画像は、ぼやけた画像となる。
【0077】
集光部8を光軸7の方向に移動して、撮像装置12が撮像する画像が鮮明になる集光部8の位置を、内蔵する位置センサで検出することにより、基板9の厚みを測定することが可能となる。
【0078】
撮像装置12で撮像するときに焦点が合う合焦点位置と、レーザ光を照射したときに、集光部8により集光される集光位置との差の距離を計測することで、合焦点位置と集光位置の差の距離であるオフセット距離を知ることができる。例えば、透明な2枚の基板を重ねた物を基板9としてステージ26に設置し、2枚の基板の接触部に撮像装置12の焦点が合うように集光部8を移動する。次に、レーザ光を照射して改質部を形成する。2枚の基板の接触部と改質部の距離を計測することでオフセット距離を設定することができる。
【0079】
集光部8を光軸7方向(図中Z方向)に移動して、基板9の光学経路部3側の面に撮像装置12の焦点を合わせる。レーザ光を照射したい位置とオフセット距離とのデータを用いて、集光部8の移動距離を演算し、演算した移動距離に対応する距離分、集光部8を移動させる。この方法で基板9における所定の深さにレーザ光を集光することが可能となる。
【0080】
画像演算装置42は、撮像装置13及び撮像装置15から出力される画像データを演算する機能を備えている。撮像装置13及び撮像装置15は、基板9を撮像した画像データを、画像演算装置42に送信する。画像演算装置42は、撮像する画像に塵が撮像されているとき、塵の輪郭を抽出する。そして、輪郭に囲まれる内側の面積を演算して、塵の面積を算出する。
【0081】
同様に、画像演算装置42は、撮像装置17から出力される画像データを演算する機能を備えている。撮像装置17は、基板9の内部に形成される改質部を撮像した画像データを、画像演算装置42に送信する。画像演算装置42は、撮像する画像に改質部が撮像されているとき、改質部の輪郭を抽出する。そして、輪郭に囲まれる内側の面積を演算して、改質部の面積を算出する。
【0082】
塵除去制御装置43は、吸引装置14を制御して、気体の吸引と停止を制御する装置である。塵除去制御装置43は、メインコンピュータ27の制御信号により制御され、吸引装置14における電磁弁の開閉を制御する。並びに、塵除去制御装置43は、吸引装置14が備えるタンクの圧力を監視して、所定の負圧を維持する。従って、吸引口14cから安定した気圧差で気体を吸引することが可能となっている。
【0083】
ステージ制御装置44は、X軸スライド22、Y軸スライド24及び回転テーブル25の位置情報の取得と移動制御を行う。X軸スライド22、Y軸スライド24及び回転テーブル25には図示しない位置センサが内蔵されており、ステージ制御装置44は位置センサの出力を検出することにより、X軸スライド22、Y軸スライド24及び回転テーブル25の位置を検出する。ステージ制御装置44は、X軸スライド22、Y軸スライド24及び回転テーブル25の位置情報を取得し、メインコンピュータ27から指示される位置情報とを比較し、差に相当する距離に対応して、X軸スライド22、Y軸スライド24及び回転テーブル25を駆動して移動する。ステージ制御装置44はX軸スライド22、Y軸スライド24及び回転テーブル25とを駆動して、所望の位置及び角度に基板9を移動することが可能となっている。
【0084】
画像演算装置42が集光レンズ8aの焦点位置を検出した後、レンズ制御装置41がレーザ光を集光する光軸7方向の位置を制御する。ステージ制御装置44が基板9をXY方向に移動して、基板9にレーザ光が照射される場所を制御する。そして、レーザ光制御装置40がレーザ光源2を制御しレーザ光を発光させる。上述した制御を行い所望の位置にレーザ光を集光して照射することが可能となっている。
【0085】
ここで、多光子吸収による改質部の形成について説明する。集光部8によって集光されたレーザ光は、基板9に入射する。そして、基板9がレーザ光を透過する材料であっても、材料の吸収バンドギャップよりも光子のエネルギが非常に大きいとき、基板9は光子エネルギを吸収する。これを多光子吸収と言い、レーザ光のパルス幅を極めて短くすることでエネルギを高めて、多光子吸収を基板9の内部に起こさせると、多光子吸収のエネルギが熱エネルギに転化せずに、永続的な構造変化が誘起された領域が形成される。
【0086】
本実施形態では、この構造変化領域を改質部と呼ぶ。改質部のうち、大きく構造変化した結果複数のクラックが形成された領域をクラック部と呼ぶ。尚、材料の種類によっては、例えば石英などの場合には、クラック部は複数のクラックにならず、空洞が形成される場合もある。
【0087】
このような改質部を形成するためのレーザ光の照射条件は、加工対象物毎にレーザ光の出力やパルス幅、パルス周期、レーザスキャン速度等の設定が必要になる。特に、レーザ光源2が照射するレーザ光の出力は、ハーフミラー6や集光部8のような光軸7上に配置される透過性物質による吸収で減衰することを考慮する必要がある。従って、実際の加工対象物を用いた予備試験を実施して、最適な照射条件を導くことが望ましい。
【0088】
(基板の分断方法)
次に本発明の基板の分断方法について図1〜図9にて説明する。図2は、基板の分断方法のフローチャートであり、図3〜図9は基板の分断方法を説明する図である。
【0089】
図2のフローチャートにおいて、ステップS1は基板移動工程に相当し、レーザスクライブ装置に設置されている基板を移動して、改質部を形成する予定の場所を撮像装置15と対向する場所に移動する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は、第1塵検出工程に相当し、基板に付着している塵を検出する工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は、第1塵判断工程に相当し、ステップS2にて、塵が検出されたとき、塵の大きさと塵面積閾値とを比較して、塵を除去するか、除去しないかを判断する工程である。塵を除去しない判断をするとき(NOのとき)、ステップS7に移行する。塵を除去する判断をするとき(YESのとき)、ステップS4に移行する。
【0090】
ステップS4は、第1塵除去工程に相当し、基板上に検出された塵を除去する工程である。次にステップS5に移行する。ステップS5は、第2塵検出工程に相当し、基板に付着する塵を検出する工程である。次にステップS6に移行する。ステップS6は、記憶工程に相当し、ステップS5において、検出された塵の場所をメモリに記憶する工程である。次にステップS7に移行する。
【0091】
ステップS7は、照射工程に相当し、基板にレーザ光を照射して改質部を形成する工程である。次にステップS8に移行する。ステップS8は、検査工程に相当し、改質部が正常に形成されているかを検査する工程である。次にステップS9に移行する。ステップS9は、調整判断工程に相当し、改質部が正常に形成されないことが、連続するとき、照射条件を調整する判断をする工程である。調整しない判断をするとき(NOのとき)、ステップS11に移行する。調整する判断をするとき(YESのとき)、ステップS10に移行する。ステップS10は、調整工程に相当し、照射条件を調整する工程である。次にステップS1に移行する。
【0092】
ステップS11は予定した領域総てに照射したかを判断する工程に相当し、改質部を配列して形成している段において、改質部を形成する予定の領域と改質部を形成した領域とを比較し、改質部を形成する予定の領域で、まだ改質部を形成していない領域を検索する工程である。改質部を形成する予定の領域で、まだ改質部を形成していない領域があるとき(NOのとき)、ステップS1に移行する。改質部を形成する予定の領域で、改質部を形成していない領域がないとき(YESのとき)、ステップS12に移行する。
【0093】
ステップS12は、塵の残る場所を総て除去したかを判断する工程に相当し、ステップS6で、塵の場所をメモリに記憶したとき、メモリに記憶した塵の場所において、まだ塵を除去して改質部を形成していない場所を検索する工程である。まだ、塵を除去して、改質部を形成していない場所があるとき(NOのとき)、ステップS13に移行する。メモリに記憶した塵の除去と、改質部の形成とをしていない場所がないとき(YESのとき)、ステップS15に移行する。
【0094】
ステップS13は、移動工程に相当し、塵を除去して、吸引装置の吸引口と対向する場所に、改質部を形成する予定の場所を移動する工程である。次にステップS14に移行する。ステップS14は、第2塵除去工程に相当し、基板上に検出された塵を除去する工程である。次にステップS7に移行する。
【0095】
ステップS15は、予定する段を総て照射したかを判断する工程に相当し、基板の内部に改質部を配列して形成する段を、複数形成するとき、予定する段数を、総て形成したかを判断する工程である。まだ、改質部を形成していない段があるとき(NOのとき)、ステップS1に移行する。予定する段数を、総て形成したとき(YESのとき)、ステップS16に移行する。
【0096】
ステップS16は、直交する2方向に照射したかを判断する工程に相当し、基板を分断する予定の方向である2つの方向に対して、改質部を配列して形成したかを判断する工程である。1方向にのみ、配列を形成して、次に、直交するもう一つの方向に改質部を形成するとき(NOのとき)、ステップS17に移行する。直交する2つの方向に配列して改質部が形成されているとき(YESのとき)、ステップS18に移行する。
【0097】
ステップS17は、回転工程に相当し、回転テーブルを90度回転する工程である。次にステップS1に移行する。ステップS18は、分断工程に相当し、基板の改質部が配列して形成された場所を押圧して、基板を分断する工程である。以上の工程により基板を分断する工程が完了する。
【0098】
次に、図1、図3〜図9を用いて、図2に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。図3(a)は、本実施形態で分断する基板の模式平面図である。図3(a)に示す様に、基板9は矩形の板で構成されている。基板9は、レーザ光に透過性のある材質からなり本実施形態では、例えば、石英ガラスを採用している。
【0099】
基板9の平面方向において、基板9の長尺方向をX方向とし、X方向と直交する方向をY方向とする。また、基板9の厚さ方向をZ方向とする。基板9において、X方向の中心線を通る厚さ方向(Z方向)の面を第1切断予定面47とする。同じく基板9において、Y方向の中心線を通る厚さ方向(Z方向)の面を第2切断予定面48とする。第1切断予定面47は、ステップS1〜ステップS15において、スクライブする面であり第2切断予定面48は、ステップS17において、基板9を回転した後、ステップS1からステップS15を繰り返して、スクライブする面である。
【0100】
図3(b)及び図3(c)はステップS1に対応する図である。図3(b)に示す様に、撮像装置17、集光部8、撮像装置13、吸引装置14、撮像装置15、が配列する方向を第1切断予定面47と対向する場所に配列するようにする。このとき、X軸スライド22、Y軸スライド24、回転テーブル25を駆動することにより、基板9の方向と場所を移動する。
【0101】
次に、図3(c)に示す様に,基板9を移動して、最初に改質部を形成する予定となる端部9aが、撮像装置15と対向する場所となる様に、基板9を移動する。
【0102】
図4(a)はステップS2に対応する図である。図4(a)に示す様に、照明装置16を点灯することにより、基板9を照射する。そして、撮像装置15が基板9を撮像する。基板9上に塵49が付着しているとき、塵49に光が照射され、撮像装置15が撮像する画像には、塵49が、写される。
【0103】
撮像装置15は、撮像する画像を画像データとして、画像演算装置42に送信する。画像演算装置42は、画像の輪郭を抽出した後、輪郭の内側の面積を演算する。そして、演算した面積の値(以下、塵の面積値と称す)をメインコンピュータ27に送信する。
【0104】
図4(b)、図4(c)、図5(a)は、ステップS3に対応する図である。ステップS3では、塵49を除去するか、除去しないかの判断を行う。メインコンピュータ27は、メモリ29の判定閾値データ36から塵面積閾値を参照して、ステップS2で演算した塵の面積値と、塵面積閾値とを比較する。そして、塵の面積値が、塵面積閾値以上のとき、塵49を除去する判断をする。塵の面積値が、塵面積閾値未満のとき、塵49を除去しない判断をする。
【0105】
図4(b)に示す様に、塵面積閾値50は、集光部8が集光する集光場所の深さ51と対応して、設定されている。図の横軸は、集光場所の深さ51を示し、縦軸は、塵面積閾値50を示している。そして、閾値線52が、集光場所の深さ51と塵面積閾値50との関係を示している。閾値線52が示す様に、集光場所の深さ51が深い場所では、塵面積閾値50が大きく設定されており、集光場所の深さ51が浅い場所では、塵面積閾値50が小さく設定されている。
【0106】
その理由について、詳細に説明する。図4(c)及び図5(a)は、基板9に塵49が付着している場所に、集光部8が、レーザ光53を集光して、集光場所54に照射している状態を示している。図4(c)は、集光場所54が深い場所となっており、図5(a)は、集光場所54が浅い場所となっている。集光場所54が深いときは、集光場所54が浅いときと比べて、基板表面9bの広い面積をレーザ光53が通過して集光される。従って、同じ大きさの塵49が基板表面9bに付着しているとき、集光場所54が深いときは、集光場所54が浅いときと比べて、遮蔽されるレーザ光53は少なくなっている。そのため、集光場所54が深いときは、集光場所54が浅いときと比べて、塵49による光エネルギ減少が少なくなる。
【0107】
本実施形態では、改質部の形成に必要な光エネルギより大きいエネルギが供給されている。そして、改質部を形成するのに必要な光エネルギは、集光場所54の深さによる影響が略ないので、集光場所54が深いときは、集光場所54が浅いときと比べて、広い面積を遮光されても、改質部を形成可能となっている。その結果、閾値線52が示す様な、集光場所の深さ51と塵面積閾値50との関係にすることができている。
【0108】
図5(b)及び図5(c)はステップS4に対応する図である。図5(b)に示す様に、基板9を移動して、基板9上の塵49を吸引装置14の吸引口14cと対向する場所へ移動する。そして、吸引装置14の電磁弁を開くことにより、塵49周辺の気体と伴に、塵49を吸引口14cから吸引する。その結果、図5(c)に示す様に、基板9上において、吸引口14cと対向する場所から塵49が排除される。
【0109】
図6(a)は、ステップS5に対応する図である。図6(a)に示す様に、ステップS4で、塵49が排除されないとき、塵49は、撮像装置13と対向する場所に移動する。そして、撮像装置13が塵49と基板9とを撮像するので、撮像装置13が撮像する画像には、塵49が、写される。
【0110】
撮像装置13は、撮像する画像を画像データとして、画像演算装置42に送信する。画像演算装置42は、画像の輪郭を抽出した後、輪郭の内側の面積を演算する。そして、演算した面積の値(以下、塵の面積値と称す)をメインコンピュータ27に送信する。
【0111】
ステップS6において、メインコンピュータ27の塵除去判断部32は、メモリ29の判定閾値データ36から塵面積閾値を参照して、ステップS5で演算した塵の面積値と、塵面積閾値とを比較する。そして、塵の面積値が、塵面積閾値以上のとき、メインコンピュータ27の塵位置記憶部34は、塵位置データ37をメモリ29に記憶する。塵位置データ37は、ステージ制御装置44が、X軸スライド22、Y軸スライド24及び回転テーブル25の位置情報を取得したデータが参照される。
【0112】
図6(b)はステップS7に対応する図である。図6(b)に示す様に、集光部8がレーザ光53を集光して、基板9の内部を照射する。レーザ光53が集光して照射される場所には、改質部55が形成され、改質部55の中央には、空洞となっているクラック部56が形成される。並びに、照射した場所のデータを照射済の位置として、照射位置データ35に記憶する。
【0113】
図6(c)はステップS8に対応する図である。図6(c)に示す様に、照明装置18及び撮像装置17から可視光を基板9内部の改質部55を照射する。撮像装置17は、改質部55に焦点を合わせて、改質部55と基板9とを撮像する。すると、クラック部56が、撮像装置17により、撮像される。
【0114】
撮像装置17は、撮像する画像を画像データとして、画像演算装置42に送信する。画像演算装置42は、画像の輪郭を抽出した後、輪郭の内側の面積を演算する。そして、演算した面積の値(以下、改質部面積値と称す)をメインコンピュータ27に送信する。
【0115】
ステップS9において、メインコンピュータ27は、メモリ29の判定閾値データ36から改質部閾値を参照して、ステップS8で演算した改質部面積値と、改質部閾値とを比較する。そして、改質部面積値が、改質部閾値より小さい、もしくは、改質部55が形成されていないときが、2回以上連続して発生するとき、調整工程を行う判断をする。
【0116】
ステップS9において、調整工程を行う判断をするとき、ステップS10にて、調整工程を行う。この工程では、改質部55が形成されない原因を、操作者が調査した後、操作者がレーザスクライブ装置1を調整する。具体的には、レーザ光源2におけるレーザ光53の光エネルギの量を調査して、レーザ光源2が備える発光管が劣化しているとき、発光管を交換するか、発光管に投入する電力を増加する。光学経路部3に、レーザ光53の光エネルギの量を減少させる汚れなどがあるときは、汚れを除去して、レーザ光53における光エネルギの量が減少しにくい様にする。続いて、ステップS1において、改質部55が形成されなかった場所と対向する場所に、撮像装置15が移動して、ステップS2から継続する。
【0117】
ステップS9において、調整工程を行う判断をしないとき、ステップS11にて、予定した領域の総てに、レーザ光53を照射したかを判断する。メモリ29に格納されている照射位置データ35には、照射する位置の場所に関するデータと、照射済の位置に関するデータが記憶されている。メインコンピュータ27は、照射する予定の位置に関するデータと、照射済の位置に関するデータとを比較する。そして、照射する予定の位置のなかで、照射していない場所を検索する。照射していない場所があるとき、ステップS1に移行して、その照射していない場所に移動した後、加工を継続する。
【0118】
ステップS11において、照射していない場所がないとき、ステップS12にて、塵の残る場所を総て照射したかを判断する。ステップS6において、塵49のある場所を、メモリ29の塵位置データ37に記憶している。この塵位置データ37に記憶されている場所の内、再度、塵除去を行った後、レーザ光53を照射していない場所を検索する。検索して、該当する場所があるとき、ステップS13に移行する。
【0119】
図7(a)及び図7(b)はステップS13及びステップS14に対応する図である。図7(a)に示す様に、にステップS13において、その塵49のある場所と対向する場所に、吸引口14cが来る様に、基板9を移動する。メインコンピュータ27は、塵位置データ37をステージ制御装置44に送信する。ステージ制御装置44は、X軸スライド22、及びY軸スライド24を駆動して、基板9を移動する。
【0120】
ステップS14において、吸引装置14が、塵49を吸引口14cから吸引する。そして、図7(b)に示す様に、塵49が除去される。塵49が吸引された場所と対向する場所には、改質部55が形成されていない場合がある。なぜなら、レーザ光53が塵49に遮られて、改質部55を形成するのに必要な、光エネルギが集中できない場合があるからである。そして、ステップS7に移行する。
【0121】
図7(c)及び図7(d)はステップS7に対応する図である。図7(c)に示す様に、塵49が吸引された場所が、集光部8と対向する場所となる様に、基板9を移動する。そして、集光部8が、レーザ光53を集光して、基板9の内部に照射する。その結果、図7(d)に示す様に、レーザ光53が集光して照射された場所には、改質部55が形成される。そして、ステップS8に移行して、加工が継続される。
【0122】
ステップS12において、レーザ光53を照射していない場所を検索した後、該当する場所がないとき、ステップS15に移行する。ステップS15では、メインコンピュータ27が、照射位置データ35から、照射して改質部55を形成する予定の段数のデータを参照する。そして、改質部55を形成した段数と、改質部55を形成する予定の段数と比較する。改質部55を形成した段数が、改質部55を形成する予定の段数より少ないとき、改質部55を形成した段に対してZ方向に隣接する場所に、改質部55が配列する段を形成する判断をする。
【0123】
そして、ステップS1に移行する。ステップS1では、レンズ移動機構11が集光部8を移動して、レーザ光53を集光する場所をZ方向に移動する。続いて、ステージ制御装置44が、X軸スライド22、及びY軸スライド24を駆動して、基板9を移動した後、加工を継続する。
【0124】
図8(a)は、ステップS1にて、レーザ光53を集光して照射する場所を、Z方向に移動して、加工を継続した後の、ステップS7に対応する図である。図8(a)に示す様に、1段目に形成されている改質部55aと隣接する場所に、改質部55を配列して、2段目の改質部55bを形成する。その結果、図8(b)に示す様に、第1切断予定面47に沿って、改質部55が、配列されて形成されている第1スクライブ面57が形成される。
【0125】
ステップS16において、第1切断予定面47と、第2切断予定面48とにレーザ光53を照射して、改質部55を配列して、形成したかを判断する。第2切断予定面48に、改質部55を配列して、形成していないとき、ステップS17に移行する。
【0126】
図8(c)はステップS17に対応する図である。図8(c)に示す様に、ステージ制御装置44が、回転テーブル25を駆動して、基板9を回転することにより、撮像装置15、吸引装置14、撮像装置13、集光部8、撮像装置17が配列している方向と、第2切断予定面48の方向とを合わせる。そして、ステージ制御装置44が、X軸スライド22、及びY軸スライド24を駆動して、集光部8と対向する場所に、第2切断予定面48が来る様に、基板9を移動する。
【0127】
そして、ステップS1〜ステップS15を繰り返す。その結果、図8(b)に示す様に、第2切断予定面48に沿って、改質部55が配列されて形成されている第2スクライブ面58が形成される。 ステップS16において、第2切断予定面48に、改質部55を配列して、形成した判断をして、ステップS18へ移行する。
【0128】
図9(a)〜図9(c)はステップS18に対応する図である。図9(a)に示す様に、基板9を弾性材などより少なくともなる台59の上に配置する。第1切断予定面47に形成された第1スクライブ面57と対向する場所を、加圧部材60を用いて押圧する。基板9は台59に沈み込み、クラック部56に張力が作用する。基板9は、台59と接する面に近いクラック部56aを起点として破断が進行し、分断する。
【0129】
図9(b)に示す様に、同様に、第2切断予定面48に形成された第2スクライブ面58と対向する場所を、加圧部材60を用いて押圧する。基板9は台59に沈み込み、クラック部56に張力が作用する。基板9は、台59と接する面に近いクラック部56aを起点として破断が進行し、分断する。
【0130】
その結果、図9(c)に示す、基板9が第1スクライブ面57、及び第2スクライブ面58で分断され、4分割される。
【0131】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、まず、基板9に付着する塵49を、吸引装置14が除去する。次に、塵49の付着していない場所における基板9の内部に、集光部8がレーザ光53を集光して照射する。そして、レーザ光53が集光される集光場所54には改質部55が形成される。
【0132】
塵49が基板9上に付着しているときは、塵49がレーザ光53を遮光する。すると、集光場所54には、改質部55を形成するために必要な光エネルギが集中されずに、改質部55が形成できにくくなる。ところが、このレーザスクライブ装置1は、吸引装置14が塵49を除去する為、レーザ光53は、塵49により遮光されにくくなるので、改質部55が品質良く形成することができる。その結果、品質良くスクライブできるレーザスクライブ装置1とすることができる。
【0133】
(2)本実施形態によれば、撮像装置15及び画像演算装置42が検出する塵49の大きさと、判定閾値データ36の塵面積閾値とを、塵除去判断部32が比較判断している。塵49の大きさが大きいとき、塵49が遮光する光エネルギが大きくなる為、改質部55を形成しにくくなる。そして、このレーザスクライブ装置1は、塵49が大きいときに、塵49を除去する判断をしている。従って、品質良く改質部55を形成する為の対応をとることができる。
【0134】
(3)本実施形態によれば、塵49の大きさが、判定閾値データ36の塵面積閾値より大きいとき、塵49を除去する判断をした後、吸引装置14が、その塵49を除去している。従って、改質部55を形成しにくくする塵49が除去される為、改質部55を品質良く形成することができる。さらに、塵49の除去が必要なときにのみ、塵49を除去することから、総ての塵49を除去するときに比べて、塵49を除去する回数を減らすことができる。その結果、生産性良く塵49を除去することができる。
【0135】
(4)本実施形態によれば、吸引装置14が塵49を除去できないとき、その塵49を撮像装置13、及び画像演算装置42が塵49を検出し、塵49の場所を塵位置記憶部34が記憶する。そして、吸引装置14が、再度、除去している。従って、1回の塵49の除去に比べて、除去されない塵を少なくすることができる。その結果、品質良く改質部55を形成することができる。
【0136】
さらに、塵49がある場所を記憶した後、塵49の除去できない場所に限って、塵49の除去を行っている。従って、基板9の総ての場所で、塵49の検出と、塵49の除去とを2回行う場合に比べて、生産性良く塵49を除去することができる。
【0137】
(5)本実施形態によれば、撮像装置17、及び画像演算装置42が検査する改質部55の有無と大きさとを参照して、レーザ光照射判断部33が、レーザ光53の照射を継続するか、停止するかの判断をしている。そして、改質部55が形成されないとき、又は、改質部55の大きさが、判定閾値データ36の改質部閾値より小さいときとのいずれかが2回数以上、連続して生ずるとき、レーザ光53の照射を停止する判断をしている。
【0138】
改質部55が形成されないとき、又は、改質部55の大きさが改質部閾値より小さいとき、のいずれかが所定の回数以上、連続して生ずるとき、基板9に応力を加えて、基板9を分断できないことがある。もしくは、基板9が、分断したい形状に比べて凹凸の大きな形状に分断されてしまう場合がある。つまり、分断したとき、断面に大きな凹凸が存在する不良な基板9を製造することになる。本発明では、分断するとき、不良な基板9が形成されるレーザ光53の照射を停止する為、品質良く改質部55を形成できるレーザスクライブ装置1とすることができる。
【0139】
(6)本実施形態によれば、撮像装置13,15が撮像する画像を、画像演算装置42が画像の面積を演算している。撮像装置13,15は、塵49の輪郭を捉えことができる。画像演算装置42は、輪郭の内側と外側とを区別して、輪郭の内側の面積を演算することにより、塵49を撮像装置13,15から見た画像の面積を演算して算出することができる。その結果、塵49の画像における面積を精度良く算出することができる。
【0140】
(7)本実施形態によれば、塵49を除去するか、しないかの判断をするとき、塵49の大きさを区別する塵面積閾値を、改質部55を形成する深さで、切り換えている。改質部55を形成する場所が浅いときは、集光場所54を、基板9の表面に、近い場所にするので、塵面積閾値を小さくすることにより、塵49がレーザ光53を遮光する量を小さくすることができる。その結果、レーザ光53は、塵49の影響を受けにくくなり、品質良く改質部55を形成することができる。
【0141】
さらに、改質部55を形成する場所が深いときは、塵面積閾値を大きくしている。従って、小さい塵49は除去しないことにより、除去する塵49を少なくしている。その結果、生産性良く塵49を除去して、改質部55を形成することができる。
【0142】
(8)本実施形態によれば、レーザスクライブ装置1は、回転テーブル25を備えている。それで、撮像装置13,15,17と、吸引装置14と、集光部8とが並んで配置されている方向と、基板9の移動方向とを切り換えることができる。従って、基板9の複数の方向において、塵49の検出、塵49の除去、改質部55の形成を続けて行うことにより、複数の方向に改質部55を、品質良く、配列して形成することができる。
【0143】
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した液晶表示装置の製造方法の一実施形態について図10〜図13を用いて説明する。
本実施形態では、本発明における基板の分断方法を用いて液晶表示装置を製造する場合の例を説明する。ここで、本発明の特徴的な製造方法について説明する前に、液晶表示装置について説明する。
【0144】
(液晶表示装置)
まず、液晶表示装置について説明する。図10(a)は、液晶表示装置の模式平面図であり、図10(b)は、図10(a)の液晶表示装置のA−A’線に沿う模式断面図である。
【0145】
図10(a)及び図10(b)において、本実施形態の電気光学装置としての液晶表示装置62は、対をなすTFTアレイ基板63と対向基板64とが熱硬化性の封止材であるシール材によって貼り合わされて形成されている。このシール材が固化したシール65によって、区画される領域内に封入された液晶66などにより少なくともなる液晶層を備えている。シール65は、基板面内の領域において閉ざされた枠形状に形成されている。
【0146】
シール65の内側で対向基板64の液晶66側の面には、遮光性材料で配線を隠すための周辺見切り67が形成されている。シール65の外側の場所には、データ線駆動回路68及び電極端子69がTFTアレイ基板63の辺63a(図10(a)中、下側の辺)に沿って形成されており、この辺63aに隣接する辺63b及び辺63c(図10(a)中、左右の辺)に沿って走査線駆動回路70が形成されている。データ線駆動回路68、電極端子69及び走査線駆動回路70は光透過性の導電膜である配線71aにより電気的に接続されている。TFTアレイ基板63の残る辺63d(図10(a)中、上側の辺)には、2つの走査線駆動回路70の間を接続するための光透過性の導電膜である配線71bが設けられている。また、対向基板64のコーナー部の4箇所においては、TFTアレイ基板63と対向基板64との間で電気的導通をとるための基板間導通材72が配設されている。
【0147】
また、液晶表示装置62はカラー表示用として構成しており、対向基板64において、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタ73R,73G,73Bが保護膜とともに形成されている。カラーフィルタ73R,73G,73Bの各フィルタ素子の間には、遮光膜74が形成されており、カラーフィルタ73R,73G,73Bを通過しない光は遮光膜74が遮断するようになっている。さらに、カラーフィルタ73R,73G,73Bの保護膜のTFTアレイ基板63側には対向電極75と配向膜76とが配置されている。
【0148】
液晶は、該液晶を挟持する電極に電圧を印加すると液晶分子の液晶の傾き角度が変化する性質を持っており、TFTのスイッチング動作により、液晶にかける電圧をコントロールして液晶の傾き角度を制御し、画素毎に光を透過させたり遮ったりする動作を行う。それにより、透過した光は、画素毎に相対して設置される赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色フィルタを有するカラーフィルタを透過することで、画素毎に対応する各色フィルタの色を色光として透過する。尚、光が液晶により遮られた画素に対応する色フィルタには当然光は入射しないため、黒色となる。このようにTFTのスイッチング動作により、液晶をシャッタとして動作させることにより、画素毎に光の透過をコントロールし、画素を明滅させることにより、カラー映像を表示させることができる。
【0149】
このような構造を有する液晶表示装置62の画像を表示する領域には、複数の画素がm行n列のマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素の各々には、画素信号をスイッチングするスイッチング素子であるTFT(Thin Film Transistor)が形成されている。画素信号を供給するデータ線(ソース配線)がTFTのソース電極に電気的に接続され、走査信号を供給する走査線(ゲート配線)がTFTのゲート電極に電気的に接続され、TFTのドレイン電極に画素電極77が電気的に接続されている。画素電極77はカラーフィルタ73R,73G,73Bの各フィルタ素子と対向する場所に形成されている。走査線が接続されるTFTのゲート電極には、所定のタイミングで、走査線からパルス信号の走査信号が供給される。
【0150】
画素電極77は、TFTのドレイン電極に電気的に接続されており、TFTを一定期間だけオン状態とすることにより、データ線から供給される画素信号が各画素の画素電極77に所定のタイミングで供給される。このようにして画素電極77に供給された所定レベルの画素信号の電圧レベルは、対向基板64の対向電極75との間で保持され、画素信号の電圧レベルに応じて、液晶66の光透過量が変化する。液晶表示装置62はカラーフィルタを備えており、カラーフィルタ73R,73G,73Bを透過する光を液晶66より少なくともなる液晶層を挟持する電極に印加する画像信号により制御することで、液晶表示装置62はカラー画像を表示することができる。
【0151】
画素電極77の対向基板64側には配向膜78が配置されている。配向膜76と配向膜78とにはその表面に溝状の凹凸が形成されており、配向膜76と配向膜78との間に充填された液晶66は、溝状の凹凸に沿って配列して形成される。
【0152】
TFTアレイ基板63及び対向基板64において、液晶66と反対側の面には、偏光シート79,80が配置され、偏光シート79,80及び液晶66の作用により、液晶表示装置62を透過する光透過量が変化するようになっている。
【0153】
(液晶表示装置の製造方法)
次に、上述した液晶表示装置62における基板の分断方法について図11〜図13にて説明する。図11は、液晶表示装置の製造方法のフローチャートであり、図12は、液晶表示パネルが区画形成されたマザー基板を示す模式図である。図13は液晶表示装置の製造方法を説明する図である。
【0154】
図11のフローチャートにおいて、ステップS21は対向マザー基板の第1スクライブ工程に相当し、対向マザー基板の一方向にスクライブする工程である。次にステップS22に移行する。ステップS22は対向マザー基板の第2スクライブ工程に相当し、対向マザー基板において、ステップS21でスクライブした方向と直交する方向にスクライブする工程である。次にステップS23に移行する。
【0155】
ステップS23はTFTアレイマザー基板の第1スクライブ工程に相当し、TFTアレイマザー基板の一方向にスクライブする工程である。次にステップS24に移行する。ステップS24はTFTアレイマザー基板の第2スクライブ工程に相当し、TFTアレイマザー基板において、ステップS23でスクライブした方向と直交する方向にスクライブする工程である。ステップS21〜ステップS24とを合わせてステップS31とする。ステップS31は、スクライブ工程に相当する。次にステップS25に移行する。
【0156】
ステップS25はTFTアレイマザー基板の第1分断工程に相当し、TFTアレイマザー基板の一方向を分断する工程である。次にステップS26に移行する。ステップS26はTFTアレイマザー基板の第2分断工程に相当し、TFTアレイマザー基板において、ステップS25で分断した方向と直交する方向を分断する工程である。次にステップS27に移行する。ステップS27は対向マザー基板の第1分断工程に相当し、対向マザー基板の一方向を分断する工程である。次にステップS28に移行する。ステップS28は対向マザー基板の第2分断工程に相当し、対向マザー基板において、ステップS27で分断した方向と直交する方向を分断する工程である。ステップS25〜ステップS28とを合わせてステップS32とする。ステップS32は、分断工程に相当する。以上の工程により、液晶表示装置62が形成される。
【0157】
次に、図12及び図13を用いて、図11に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。図12(a)は、液晶表示装置が区画形成されたマザー基板を示す模式図である。図12(b)は、図12(a)のB−B’線に沿った模式断面図である。
【0158】
図12(a)及び図12(b)に示すように、対向マザー基板87とTFTアレイマザー基板83とがシール材86により接着され、マザー基板89が形成されている。対向マザー基板87及びTFTアレイマザー基板83の製造方法と、対向マザー基板87及びTFTアレイマザー基板83の組立て方法は公知であり、説明を省略する。尚、TFTアレイマザー基板83を構成する基板84及び対向マザー基板87を構成する基板88は、石英ガラスにより形成されている。
【0159】
図10に示す液晶表示装置62を形成する為に、対向マザー基板87を分断する予定の面をH対向切断面90、V対向切断面91とし、TFTアレイマザー基板83を分断する予定の面をH素子切断面92、V素子切断面93と表記する。
H対向切断面90は、一点鎖線で示した対向マザー基板87の切断面であり、図12(a)のX軸方向に延在する切断面である。図12(a)に示した、90a,90b,90c,90d,90eは、それぞれH対向切断面90である。
【0160】
V対向切断面91は、一点鎖線で示した対向マザー基板87の切断面であり、図12(a)のY軸方向に延在する切断面である。図12(a)に示した、91a,91b,91cは、それぞれV対向切断面91である。
【0161】
H素子切断面92は、一点鎖線で示したTFTアレイマザー基板83の切断面であり、図12(a)のX軸方向に延在する切断面である。図12(a)に示した、92a,92b,92cは、それぞれH素子切断面92である。
【0162】
V素子切断面93は、一点鎖線で示したTFTアレイマザー基板83の切断面であり、図12(a)のY軸方向に延在する切断面である。V素子切断面93は、V対向切断面91と対向する場所に位置し、図12(a)に示した、93a,93b,93cは、それぞれV素子切断面93である。
【0163】
図13(a)〜図13(b)はステップS21に対応する図である。図13(a)に示す様に、マザー基板89をレーザスクライブ装置1のステージ26に配置する。続いて、V対向切断面91のレーザ光53を照射する場所と対向する場所に、撮像装置15が位置する様に、マザー基板89を移動する移動工程と、移動工程の後に、塵49を検出する第1塵検出工程とを行う。そして、検出した塵49を除去する第1塵除去工程と、塵49の除去を確認すべく、再度、塵49を検出する第2塵検出工程とを行う。そして、塵49を検出するとき、塵49の場所を塵位置データ37として、メモリ29に記憶する。次に、集光部8が、レーザ光53を集光して照射する照射工程と、改質部55が正常に形成されたかを検査する、検査工程とを行う。
【0164】
レーザ光53が集光されて照射された集光場所54には、改質部55が形成され、改質部55の中央には、クラック部56が形成される。本実施形態においては、基板88に石英ガラスを用いていることから、クラック部56には、空洞が形成される。
【0165】
そして、一つの段において、改質部55を配列して形成した後、第2塵検出工程で検出した塵49に対して、塵49がある場所へ移動する移動工程と、塵49を除去する第2除去工程とを行う。そして、集光部8が、レーザ光53を集光して照射する照射工程と、改質部55が正常に形成されたかを検査する、検査工程とを行う。以上の移動工程〜検査工程を繰り返して、スクライブを行う。段毎に、移動工程〜検査工程を繰り返して、塵49が検出された場所で、再度、スクライブを行う。
【0166】
以上の移動工程〜検査工程を繰り返して、スクライブを行い、改質部55を配列して1段目の改質部55aを、基板88のV対向切断面91に沿って形成する。続いて、1段目と隣接する場所に改質部55を配列して2段目の改質部55bを形成する。3段目以降についても、同様の方法で、改質部55を配列して形成する。その結果、図13(b)に示す様に、基板88のV対向切断面91総てに、改質部55が配列して形成され、改質部55の中央にはクラック部56が形成される。この一連の工程は、第1の実施形態に記載の方法を用いて行われる。
【0167】
ステップS22においては、基板88のH対向切断面90に沿ってレーザ光53を照射し、スクライブを行う。続いて、ステップS23において、マザー基板89を反転し、基板84のV素子切断面93に沿ってレーザ光53を照射して、スクライブを行う。続いて、ステップS24において、基板84のH素子切断面92に沿ってレーザ光53を照射し、スクライブを行う。スクライブ方法については、ステップS21と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0168】
図13(c)〜図13(d)はステップS25に対応する図である。図13(c)に示す様に、マザー基板89を弾性材より少なくともなる台59の上に配置する。マザー基板89のTFTアレイマザー基板83が台59と接する様に配置し、対向マザー基板87において、H素子切断面92に配列して形成されているクラック部56と対向する場所を、加圧部材60を用いて押圧する。TFTアレイマザー基板83は台59に沈み込み、クラック部56に張力が作用する。TFTアレイマザー基板83は、台59と接する面に近いクラック部56を起点として破断が進行し、分断する。
図13(d)に示す様に、その結果、TFTアレイマザー基板83は、H素子切断面92で分断される。
【0169】
ステップS26においては、TFTアレイマザー基板83のV素子切断面93に沿って形成されているクラック部56を分断する。続いて、ステップS27において、マザー基板89を反転し、対向マザー基板87のH対向切断面90に沿って形成されているクラック部56を分断する。続いて、ステップS27において、対向マザー基板87のV対向切断面91に沿って形成されているクラック部56を分断する。分断方法については、ステップS25と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0170】
以上の工程により、マザー基板89が分割されて、図10(a)に示す液晶表示装置62の形状に形成され、図10(b)に示す偏光シート79,80を接着して液晶表示装置62が完成する。
【0171】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、基板88に付着する塵49を、吸引装置14が除去する。次に、塵49の付着していない場所における基板88の内部に、集光部8がレーザ光53を、集光して照射している。そして、レーザ光53が集光される集光場所54には改質部55が形成される。
【0172】
塵49が基板88上に付着しているときは、塵49がレーザ光を遮光する。すると、集光場所54には、改質部55を形成するために必要なエネルギが集中されずに、改質部55が形成できにくくなる。ところが、吸引装置14が塵49を除去する為、改質部55が品質良く形成することができる。その結果、品質良く改質部55を形成することができる為、マザー基板89を品質良く分断して、液晶表示装置62を形成することができる。
【0173】
(第3の実施形態)
次に、本発明を具体化したレーザスクライブ装置の一実施形態について図14を用いて説明する。
この実施形態が、第1の実施形態と異なるところは、撮像装置に換えて、光反射型のセンサを用いた点にある。尚、第3の実施形態において、前記第1の実施形態と同様の部材又は、部位については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0174】
図14は、レーザスクライブ装置95の構成を示す模式概略図である。すなわち、本実施形態では、図14に示す様に、吸引装置14の左側に塵検出装置96を備え、吸引装置14の右側に、塵検出装置97を備えている。塵検出装置96は、照射装置としての投光部96a及び受光装置としての受光部96bを備えている。
【0175】
投光部96aは、LED(Light Emitting Diode)と集光レンズとを有し、LEDが光98を発光した後、集光レンズが、その光98を集光して基板9を照射している。基板9を照射する光98が、基板9にて反射する。そして、反射する光98の光軸上に受光部96bが配置されている。受光部96bは、フォトダイオードなどからなり、光98を受光して、光98の量に対応した電流を流動するようになっている。塵検出装置96は、この光98の量に対応した電流を、電圧に変換して、出力している。
【0176】
塵検出装置96は、光量演算装置としての塵検出制御装置99に接続され、光98の量に対応した電圧を、塵検出制御装置99に出力する。塵検出制御装置99は、光98の量に対応した電圧を入力して、光98の光量を演算する。塵検出制御装置99は、予め電圧と光量との関係を測定して求められた換算表を備え、この換算表を用いて、光98の光量に相当する光量値を演算している。
【0177】
塵検出制御装置99は、インターフェース28と接続され、インターフェース28を介して、光量値をメインコンピュータ27に送信する。
【0178】
基板9上に、塵49が付着しており、この塵49に、投光部96aから光98が照射されるとき、光98の一部が、吸収又は、反射して光路を変更するので、受光部96bを照射する光98は減少する。塵49の大きさが大きい程、変更される光98の量が大きくなり、受光部96bが受光する光98の量に相当する受光量は小さくなる。つまり、塵49の大きさと、受光量は、負の相関を有する。従って、塵49の有無と塵49の大きさは、受光量を用いて、推定することができる。
【0179】
メインコンピュータ27は、塵検出制御装置99が出力する光量値と、判定閾値データ36の塵面積閾値とを比較する。比較した以降の動作は、第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0180】
塵検出装置97も、塵検出装置96と同様に、投光部97a及び、受光部97bを備え、塵検出装置96と同様の動作を行う様になっている。
【0181】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、塵49の有無と、塵49の大きさの推定を、光量のみで判断することから、簡単な構成で塵49の大きさを推定することができる。その結果、生産性良く製造されるレーザスクライブ装置95とすることができる。
【0182】
(2)本実施形態によれば、基板9の外部に光98通して、塵49を検出していることから、基板9が光98を透過し難い材質で構成されている場合にも、塵検出装置96,97は、塵49を検出することができる。
【0183】
(第4の実施形態)
次に、本発明を具体化したレーザスクライブ装置の一実施形態について図15を用いて説明する。
この実施形態が、第3の実施形態と異なるところは、塵検出装置に、光透過型のセンサを用いた点にある。尚、第4の実施形態において、前記の第1の実施形態及び前記第3の実施形態と同様の部材又は、部位については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0184】
図15は、レーザスクライブ装置102の構成を示す模式概略図である。すなわち、本実施形態では、図15に示す様に、回転テーブル25の上に中空のステージ103を備えている。ステージ103の内部には、照射装置としての投光装置104,105が備えられ、基台20に立設された支持部106により支持されている。ステージ103は、支持部106が配置されている側の面103aにおける壁がないので、支持部106がステージ103の内部に、延在可能となっている。
【0185】
吸引装置14の左側に受光装置としての塵検出装置107を備え、吸引装置14の右側に、受光装置としての塵検出装置108を備えている。塵検出装置107は受光部107aを備え、塵検出装置108は受光部108aを備えている。受光部107aは、投光装置104と対向する場所に位置しており、ステージ103は、塵検出装置107,108と対向する面が空洞となっている。それで、投光装置104が照射する光98は、ステージ103及び、基板9を通過して、受光部107aを照射する様になっている。同様に、受光部108aは、投光装置105と対向する場所に位置しており、投光装置105が照射する光98は、受光部108aを照射する様になっている。
【0186】
投光装置104,105は、LEDと集光レンズとを有し、LEDが光98を発光した後、集光レンズが、その光98を集光して基板9を照射している。基板9を照射する光98が、基板9を透過する。そして、透過する光98の光軸上に受光部107a,108aが配置されている。受光部107a,108aは、フォトダイオードなどからなり、光98を受光して、光98の量に対応した電流を流動するようになっている。塵検出装置107,108は、この光98の量に対応した電流を、電圧に変換して、出力している。
【0187】
塵検出装置107,108は、塵検出制御装置99に接続され、光98の量に対応した電圧を、塵検出制御装置99に出力する。塵検出制御装置99は、光98の量に対応した電圧を入力して、光98の光量を演算する。塵検出制御装置99は、予め電圧と光量との関係を測定して求められた換算表を備え、この換算表を用いて、光98の光量に相当する光量値を演算している。
【0188】
塵検出制御装置99は、インターフェース28と接続され、インターフェース28を介して、光量値をメインコンピュータ27に送信する。
【0189】
基板9上に、塵49が付着しており、この塵49に、投光装置104,105から光98が照射されるとき、光98の一部が、遮光されるので、受光部107a,108aを照射する光98は減少する。塵49の大きさが大きい程、遮光される光98の量が大きくなり、受光部107a,108aが受光する光98の量に相当する受光量は小さくなる。つまり、塵49の大きさと、受光量は、負の相関を有する。従って、塵49の有無と塵49の大きさは、受光量を用いて、推定することが可能となっている。
【0190】
メインコンピュータ27は、塵検出制御装置99が出力する光量値と、判定閾値データ36の塵面積閾値とを比較する。比較した以降の動作は、第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0191】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、この構成では、塵49の有無と、塵49の大きさの推定に、光量のみで判断することから、簡単な構成で塵49の大きさを推定することができる。その結果、生産性良く製造されるレーザスクライブ装置102とすることができる。
【0192】
(2)本実施形態によれば、基板9の表面に反射しにくい処理が施されている場合には、第3の実施形態における反射光を用いた塵検出装置96を採用できないときがある。この場合にも、本実施形態における透過光を用いた塵検出装置107,108は、塵49を検出することができる。
【0193】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態においては、回転テーブル25が、基板9を回転することにより、撮像装置13,15,17、吸引装置14、集光部8が配列する方向と、基板9をスクライブする方向とを合わせている。これに限らず、撮像装置13,15,17、吸引装置14、集光部8を回転させる回転装置を備えても良い。基板9が、大型であるとき、基板9を回転させる為にレーザスクライブ装置1が大きくなることがある。そのとき、撮像装置13,15,17、吸引装置14、集光部8を回転させることにより、レーザスクライブ装置1を大型にしないことにより省スペースな装置とすることができる。
【0194】
(変形例2)
前記第1の実施形態においては、吸引装置14が塵49を吸引して、塵49を除去したが、圧縮した気体を吹き付けて塵49を除去しても良い。気体を吸引する方法に比べて、圧縮した気体を吹き付ける方が、特定の場所に強い気体の圧力を加えることができることから、除去し難い塵49を除去することができる。さらに、吸引と、吹き付けとを同時に行っても良い。塵49を吹き飛ばした後、吸引することにより、塵49を確実に、基板9上から排除することができる。
【0195】
(変形例3)
前記第1の実施形態においては、吸引装置14が塵49を吸引して、塵49を除去したが、粘着性のある物、又はシート等に塵49を接触させて、塵49を除去しても良い。例えば、粘着性のある棒状の物を基板9上にて、転がしても良い。粘着性を調整することにより、塵49を除去する力を調整することができる。
【0196】
(変形例4)
前記第1の実施形態においては、吸引装置14が塵49を吸引して、塵49を除去したが、ブラシを用いて、ブラシと塵49とを接触させて、塵49を除去しても良い。塵49に応力を加えることから、除去し難い塵49を除去することができる。さらに、吸引と、ブラシを用いた除去とを同時に行っても良い。塵49を除去した後、吸引することにより、塵49を確実に、基板9上から排除することができる。その上、ブラシを回転させた回転ブラシを用いても良い。ブラシが塵49と衝突する運動エネルギが加わることから、さらに塵49を除去し易くすることができる。
【0197】
(変形例5)
前記第1の実施形態においては、ステップS5において、塵49を検出したとき、ステップS6にて、メモリ29に保存したが、検出される塵49の数が少ないとき、レーザスクライブ装置1を停止して、操作者が確認して加工を継続しても良い。塵49の場所を記憶する機能や、記憶した場所へ移動する機能が不要となることから、装置を簡便にすることができる。その結果、生産性良く製造されるレーザスクライブ装置102とすることができる。
【0198】
(変形例6)
前記第1及び、第2の実施形態では、レーザ光源2にYAGレーザを用いたが、フェムト秒レーザを用いても良い。出射するレーザ光を加工対象物の内部に集光して多光子吸収による改質部を形成できる光源であれば良い。例えば、チタンサファイアを固体光源とするレーザ光をフェムト秒のパルス幅で出射するいわゆるフェムト秒レーザを採用しても良い。発光条件及び集光レンズの条件の例としては、パルスレーザ光は、波長分散特性を有しており、中心波長が800nmであり、その半値幅はおよそ20nmである。またパルス幅はおよそ300fs(フェムト秒)、パルス周期は1kHz、出力はおよそ700mWである。集光レンズは、この場合、倍率が100倍、開口数(NA)が0.8、WD(Working Distance)が3mmの対物レンズを採用しても良い。
【0199】
(変形例7)
前記第1の実施形態においては、テーブル部4は、X軸スライド22とY軸スライド24とを用いて基板9を、X方向及びY方向に移動している。Y軸スライド24に換えて、光学経路部3をY方向に移動する移動機構を設けても良い。基板9が大型のとき、X軸スライド22とY軸スライド24とを移動させると装置が大きくなる。X方向とY方向との一方を、基板9を移動される機構とする。そして、基板9の移動する方向と直交する方向に光学経路部3が移動するようにする。このとき、基板9の移動範囲が狭くすることができる為、省スペースな装置にすることができる。
【0200】
(変形例8)
前記第1の実施形態においては、テーブル部4は、X軸スライド22とY軸スライド24とを用いて基板9を、X方向及びY方向に移動している。基板9を床に対して固定し、光学経路部3をX方向及び、Y方向に移動させる移動機構を備えても良い。このとき、基板9の移動範囲が狭くすることができる為、省スペースな装置にすることができる。
【0201】
(変形例9)前記第1の実施形態では、メインコンピュータ27は、メモリ29内に動作手順に沿ったプログラムソフト30を記憶し、プログラムソフト30によりレーザスクライブ装置1の制御を行ったが、これに限らず、電気回路にて構成される制御装置にて制御しても良い。周辺機器が手順通りに制御されれば良い。
【0202】
(変形例10)
前記第2の実施形態では、液晶表示装置62に本発明の基板の分断方法を用いたが、液晶表示装置62以外の電気光学装置にも用いることができる。基板を備えた電気光学装置として、例えば、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、真空蛍光ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等における基板の分断手段として好適に用いることができる。いずれの場合でも、基板を分断する工程で、品質良く分断される基板を備えた電気光学装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】第1の実施形態に係るレーザスクライブ装置の構成を示す模式概略図。
【図2】基板の分断方法のフローチャート。
【図3】基板の分断方法を説明する図。
【図4】基板の分断方法を説明する図。
【図5】基板の分断方法を説明する図。
【図6】基板の分断方法を説明する図。
【図7】基板の分断方法を説明する図。
【図8】基板の分断方法を説明する図。
【図9】基板の分断方法を説明する図。
【図10】第2の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示す模式概略図。
【図11】液晶表示装置の製造方法のフローチャート。
【図12】液晶表示パネルが区画形成されたマザー基板を示す模式図。
【図13】液晶表示装置の製造方法を説明する図。
【図14】第3の実施形態に係るレーザスクライブ装置の構成を示す模式概略図。
【図15】第4の実施形態に係るレーザスクライブ装置の構成を示す模式概略図。
【符号の説明】
【0204】
1,95,102…レーザスクライブ装置、2…レーザ光源、4…移動手段としてのテーブル部、8…集光部、9,84,88…基板、13…第2検出部としての撮像装置、14…塵除去部及び塵吸引装置としての吸引装置、15…第1検出部としての撮像装置、17…検査部としての撮像装置、25…方向切替装置としての回転テーブル、32…塵除去判断部、33…レーザ光照射判断部、34…塵位置記憶部、42…第1検出部及び第2検出部及び検査部としての画像演算装置、49…塵、53…レーザ光、55a…改質部、96b…照射装置としての受光部、96…受光装置としての塵検出装置、99…光量演算装置としての塵検出制御装置、104,105…照射装置としての投光装置、107a,108a…受光装置としての受光部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にレーザ光を照射してスクライブするレーザスクライブ装置であって、
前記レーザ光を発光するレーザ光源部と、
前記基板の内部に前記レーザ光を集光して照射する集光部と、
前記基板と前記集光部とを相対移動させる移動手段と、
前記基板上に付着する塵を除去する塵除去部とを有し、
前記塵を除去した場所に、前記レーザ光を照射して改質部を形成することを特徴とするレーザスクライブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザスクライブ装置であって、
前記基板上の前記塵を検出する第1塵検出部と、
前記塵を除去するか、前記塵を除去しないかの判断をする塵除去判断部とを備え、
前記塵除去判断部は、前記基板上に前記塵を検出するとき、前記塵の大きさと閾値とを比較して、前記塵が、前記閾値より大きいとき前記塵を除去する判断をすることを特徴とするレーザスクライブ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザスクライブ装置であって、
前記第1塵検出部が、前記塵を検出した後、前記塵除去判断部が前記塵を除去する判断をしたとき、前記塵除去部が前記塵を除去することを特徴とするレーザスクライブ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザスクライブ装置であって、
前記塵除去部が前記塵を除去した場所の前記塵を検出する第2塵検出部と、
前記第2塵検出部が検出する前記塵の場所を記憶する塵位置記憶部とを備え、
前記塵位置記憶部が記憶する位置の前記塵を、前記塵除去部が除去することを特徴とするレーザスクライブ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のレーザスクライブ装置であって、
前記改質部の有無と大きさとを検査する検査部と、
前記検査部が検査する検査結果により、前記レーザ光の照射を継続するか、停止するかの判断をするレーザ光照射判断部とを備え、
前記レーザ光照射判断部は、前記改質部が形成されないときと前記改質部が閾値より小さいときとのいずれかが所定の回数以上、連続して生ずるとき、レーザ光の照射を停止する判断をすることを特徴とするレーザスクライブ装置。
【請求項6】
請求項2又は3に記載のレーザスクライブ装置であって、
前記第1塵検出部は、前記塵の画像を撮像する撮像装置と、
前記画像の面積を演算する画像演算装置とを備えることを特徴とするレーザスクライブ装置。
【請求項7】
請求項2又は3に記載のレーザスクライブ装置であって、
前記第1塵検出部は、前記基板に光を照射する照射装置と、
前記基板に照射された前記光が反射又は透過する前記光を、受光する受光装置と、
前記受光装置が受ける前記光の光量を演算する光量演算装置とを備えることを特徴とするレーザスクライブ装置。
【請求項8】
請求項2又は3に記載のレーザスクライブ装置であって、
前記改質部を前記基板の深さ方向に複数形成するとき、
前記塵除去判断部は、前記改質部を形成する場所が深いときの前記閾値に比べて、浅いときの前記閾値の方が、小さい値であることを特徴とするレーザスクライブ装置。
【請求項9】
請求項1に記載のレーザスクライブ装置であって、
前記塵除去部と、前記集光部とが並んでいる方向と、前記基板が移動する方向とを切り換える方向切替装置を備えることを特徴とするレーザスクライブ装置。
【請求項10】
請求項1に記載のレーザスクライブ装置であって、
前記塵除去部は、大気圧に対して負圧を形成して、前記塵を吸引する塵吸引装置を備え、前記基板上から前記塵を除去することを特徴とするレーザスクライブ装置。
【請求項11】
基板を分断する基板の分断方法であって、
前記基板上に存在する塵を除去する第1塵除去工程と、
前記基板にレーザ光を照射して、改質部を配列して形成する照射工程と、
前記基板に配列して形成される前記改質部に沿って分断する分断工程とを有し、
前記第1塵除去工程と前記照射工程とが繰り返して行われることを特徴とする基板の分断方法。
【請求項12】
請求項11に記載の基板の分断方法であって、
前記第1塵除去工程の前に、
前記基板上に存在する前記塵を検出する第1塵検出工程と、
前記塵を除去するか、前記塵を除去しないかの判断をする第1塵除去判断工程とを備え、
前記第1塵除去判断工程では、前記基板上に前記塵を検出するとき、前記塵の大きさと閾値とを比較し、
前記塵が、前記閾値より大きいとき前記塵を除去する判断をし、
前記塵除去工程では、前記第1塵除去判断工程で前記塵を除去する判断をするときに限って、前記塵の除去を行うことを特徴とする基板の分断方法。
【請求項13】
請求項11に記載の基板の分断方法であって、
前記第1塵除去工程の後に、
前記基板上に存在する塵を検出する第2塵検出工程と、
前記第2塵検出工程で検出する前記塵の場所を記憶する記憶工程と、
前記第2塵検出工程で検出する前記塵を除去する第2塵除去工程と、
前記第2塵除去工程で、塵を除去した場所にレーザ光を照射する照射工程とを備えることを特徴とする基板の分断方法。
【請求項14】
請求項11に記載の基板の分断方法であって、
前記照射工程の後で、
前記改質部の有無と大きさとを検査する検査工程と、
前記検査工程の検査結果により、前記レーザ光を照射する条件を調整するか、調整しないかの判断をする調整判断工程と、
前記レーザ光を照射する条件を調整する調整工程とを備え、
前記調整判断工程では、前記改質部が形成されないときと前記改質部が所定の大きさより小さいときとが所定の回数以上連続するとき、前記調整する判断をすることを特徴とする基板の分断方法。
【請求項15】
請求項12に記載の基板の分断方法であって、
前記閾値は、前記改質部を形成する場所が深いときの前記閾値に比べて、浅いときの前記閾値の方が、小さい値であることを特徴とする基板の分断方法。
【請求項16】
基板を有する電気光学装置の製造方法であって、
前記基板にレーザ光を照射して、改質部を配列して形成するスクライブ工程と、
前記基板に配列して形成される前記改質部に沿って分断する分断工程とを有し、
前記スクライブ工程及び前記分断工程に、請求項11〜15のいずれか一項に記載の基板の分断方法が用いられていることを特徴とする電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−149348(P2008−149348A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339499(P2006−339499)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】