説明

レーザ加工装置及びレーザ加工方法

【課題】 加工開始直後のレーザ加工跡を良好にする。
【解決手段】 レーザ加工装置は、テーブル21を回転しながらレーザ光を加工対象物10の表面に照射することにより、テーブル21にセットされた加工対象物10の表面をレーザ加工開始位置からレーザ加工する。非加工用のレーザ光を加工用レーザ光源21から出射させているとき、オフセット信号発生回路62は、非加工用のレーザ光の入射時における対物レンズ35の焦点距離から加工用のレーザ光の入射時における対物レンズ35の焦点距離への変化分に対応したレベルのオフセット信号を発生して、レーザ光の焦点位置をオフセットしておく。非加工用のレーザ光の出射から加工用のレーザ光の出射の切換え時に、オフセット信号発生回路62からのオフセット信号の発生が停止され、レーザ光の焦点位置を加工対象物10の表面に一致させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物の表面にレーザ光を照射して、加工対象物の表面に微細なピット、連続した溝、又は反応跡を形成するレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、加工対象物を円盤状のテーブル又はドラム状の固定治具に固定し、テーブル又は固定治具を回転させながら、加工対象物に加工ヘッドからレーザ光を照射し、レーザ光の照射位置を半径方向又は回転軸方向に移動させることにより、加工対象物の表面に微細なピット、連続した溝、又はそれらをエッチングにより形成する際の元となる反応跡(以下、これらを総称して加工跡という)を形成するレーザ加工装置は知られている。このようなレーザ加工装置は、加工対象物の回転により、加工対象物の表面はレーザ光の光軸方向に微変動する。このような加工対象物の表面の微変動があっても、レーザ光の焦点位置を加工対象物の表面に常に一致させるために、この種のレーザ加工装置においては、例えば下記特許文献1に示されているように、加工対象物の表面からの反射光により生成した信号を用いて、対物レンズをレーザ光の光軸方向に駆動するフォーカスサーボ制御を行うようにしている。
【特許文献1】特開2001−243663号公報
【0003】
一方、この種のレーザ加工装置において、半径位置ごと又は軸方向位置ごとに、レーザ加工開始点とレーザ加工終了点とを同一にするレーザ加工が行われることがある。すなわち、円盤状のテーブルを用いてレーザ光の照射位置を半径方向に移動させるレーザ加工においては、図8に示すように、円盤状の加工対象物の表面に複数の同心円状の加工跡を形成することがある。また、ドラム状の固定治具を用いてレーザ光の照射位置を回転軸方向に移動させるレーザ加工においては、ドラムの回転軸方向に所定間隔で複数の円形状の加工跡を形成することがある。このようなレーザ加工においては、一つの半径方向位置又は軸方向位置のレーザ加工が終了した時点で、レーザ光の照射強度を非加工用に切換え、すなわち加工用のレーザ照射強度よりも小さな非加工用のレーザ照射強度に切換えて、レーザ光の照射位置を次の半径方向位置又は軸方向位置まで移動する。そして、前記レーザ光の照射位置を次の半径方向位置又は軸方向位置まで移動した後、レーザ光の照射強度を加工用に切換え、すなわち非加工用のレーザ照射強度よりも大きな加工用のレーザ照射強度に切換えてレーザ加工を行う。
【発明の開示】
【0004】
前記のようなレーザ加工において、本発明者は、非加工用のレーザ照射強度から加工用のレーザ照射強度に切換えた直後、すなわち各半径方向位置又は各軸方向位置における初期のレーザ加工跡が良好に形成されないことを発見した。特に、この現象は、加工跡が微細になるほど顕著となる。図9(a)は、連続した溝状の加工跡が良好に形成されていない例を示しており、レーザ加工開始した直後には加工跡の幅が正常な幅よりも狭く、その後に次第に大きくなって正常な幅になっている。図9(b)は、複数のピット状の加工跡が良好に形成されていない例を示しており、レーザ加工開始した直後にはピットの径が正常なピットの径よりも小さく、その後に次第に大きくなって正常な径になっている。
【0005】
本発明者は、前記加工跡が良好に形成されない原因を究明した結果、この原因は次の理由によるものであるという結論を得た。第1の理由は、レーザ光源から出射されるレーザ光の強度が変化すると、レーザ光の波長が微妙に変化する。一般的に、レーザ光の強度が大きくなると、図10に示すように、レーザ光の波長は微小ではあるが、大きくなる。すなわち、非加工用のレーザ光から加工用のレーザ光に切り換わったとき、レーザ光の波長は大きくなる。凸レンズでレーザ光を集光している場合は、レーザ光の波長が大きくなると、直後には、図11に示すように、レーザ光の焦点位置が加工対象物の表面から加工対象物の内部へずれる。また、レーザ光を集光する光学系に複数のレンズを用いている場合には、前記場合とは逆に、レーザ光の焦点位置が加工対象物の表面からレンズ側にずれることもある。この焦点位置のずれはフォーカスサーボ制御によりその後に回復するが、図12のフォーカスエラー信号の変化が示すように、回復には多少の時間が必要である。この焦点位置がずれた状態では、加工跡が加工対象物の表面に的確に形成されない。
【0006】
第2の理由は、加工対象物の表面に加工用の大きな強度のレーザ光を連続して照射している状態では、焦点近傍の加工対象物の表面が強度の大きなレーザ光により熱せられて温度がある程度上昇している。したがって、レーザ光によって実際に加工される位置の加工対象物の表面の温度は事前に上昇しており、加工跡が形成され易い。しかし、非加工用のレーザ光の強度は小さいので、レーザ光の強度が非加工用の小さな強度から加工用の大きな強度に切換えられた直後には、レーザ光によって実際に加工される位置の加工対象物の表面の温度は低く、加工跡が形成され難い。
【0007】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、非加工用のレーザ照射強度から加工用のレーザ照射強度に切換えた直後においても、レーザ加工跡が良好に形成されるようにしたレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することにある。
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の特徴は、加工対象物をセットするためのセット部と、セット部を回転させる回転手段と、加工対象物の表面をレーザ加工するためのレーザ光を出射する加工用レーザ光源、前記出射されたレーザ光を集光する対物レンズ、及び対物レンズをレーザ光の光軸方向に駆動するフォーカスアクチュエータを含む加工ヘッドと、加工対象物の表面からの反射光に基づくフォーカスサーボ信号をフォーカスアクチュエータに供給することによりフォーカスアクチュエータを駆動制御して、レーザ光の焦点位置を加工対象物の表面に保つフォーカスサーボ制御回路と、加工対象物の表面に対するレーザ光の照射位置を移動する移動手段と、加工用レーザ光源に駆動信号を出力して、駆動信号のレベルに応じた強度のレーザ光を加工用レーザ光源に出射させる加工用レーザ駆動回路と、移動手段を制御してレーザ光の照射位置をレーザ加工開始位置まで移動させるとともに、加工用レーザ駆動回路を制御して加工対象物の表面がレーザ加工されない程度に小さな強度の非加工用のレーザ光を加工用レーザ光源から出射させてフォーカスサーボ制御回路を作動させた後、加工用レーザ駆動回路を制御して非加工用のレーザ光の強度よりも大きな強度の加工用のレーザ光を加工用レーザ光源から出射させる制御手段とを備え、セット部にセットされた加工対象物の表面をレーザ加工開始位置からレーザ加工するレーザ加工装置において、さらに、非加工用のレーザ光の入射時における対物レンズの焦点距離から加工用のレーザ光の入射時における対物レンズの焦点距離への変化分に対応したレベルのオフセット信号を発生して、フォーカスサーボ信号に重畳するオフセット信号発生回路を設け、制御手段は、非加工用のレーザ光を加工用レーザ光源から出射させているとき、オフセット信号発生回路にオフセット信号を発生させてレーザ光の焦点位置を加工対象物の表面から前記変化分に対応した距離だけずらしておき、非加工用のレーザ光の出射から加工用のレーザ光の出射への切換え時に、オフセット信号発生回路にオフセット信号の発生を停止させてレーザ光の焦点位置を加工対象物の表面に一致させるようにしたことにある。この場合、前記セット部は、例えば加工対象物が載置されて固定されるテーブル又は加工対象物が外周面上に巻かれて固定されたるドラム状の固定部材である。
【0009】
前記のように構成したレーザ加工装置においては、加工対象物の表面がレーザ加工される前には、強度の小さな非加工用のレーザ光が加工対象物の表面に照射されるとともに、対物レンズによるレーザ光の焦点位置がオフセットされる。そして、レーザ加工開始時には、強度の大きな加工用のレーザ光が加工対象物の表面に照射されるとともに、対物レンズによるレーザ光の焦点位置のオフセットが解除される。このオフセット解除により、レーザ光源から出射されるレーザ光の強度変化によってレーザ光の波長が変化しても、非加工用のレーザ光から加工用のレーザ光への切換え直後から、対物レンズによるレーザ光の焦点位置は加工対象物の表面に正確に一致し、レーザ加工跡が良好に形成されるようになる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、さらに、回転手段による回転の基準位置を検出する基準位置検出手段を設け、前記制御手段は、基準位置の検出時に加工用レーザ駆動回路を切換え制御して、加工用レーザ光源から出射されるレーザ光を、非加工用のレーザ光から加工用のレーザ光に切換え、又は加工用のレーザ光から非加工用のレーザ光に切換え、かつ前記制御手段は、非加工用のレーザ光が加工用レーザ光源から出射されているときのみ、移動手段を制御して前記レーザ光の照射位置をレーザ加工開始位置まで移動させるようにしたことにある。
【0011】
基準位置を加工開始位置とするとともに加工終了位置とするような円形状のレーザ加工においては、複数の異なる位置が次々にレーザ加工される。したがって、このようなレーザ加工においては、複数の異なる位置ごとにレーザ加工が開始されることになるので、前記本発明の他の特徴がより有効となる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記加工用レーザ駆動回路は、非加工用のレーザ光の出射から加工用のレーザ光の出射への切換え時に駆動信号のレベルを過渡的に上昇させて、その後に所定レベルに復帰させるようにしたことにある。
【0013】
上記のように構成した本発明の他の特徴においては、加工用レーザ駆動回路から出力される駆動信号は、加工用強度のレーザ光への切換え直後から所定の短時間だけ高くなる。そして、加工用レーザ光源は、駆動信号のレベルに対応した強度のレーザ光を出射するので、加工用強度のレーザ光への切換え直後には、加工対象物の表面のレーザ加工箇所の温度の上昇が大きくなる。その結果、加工用強度のレーザ光への切換え直前に、加工対象物の表面におけるレーザ加工箇所の温度が充分に上昇していなくても、前記温度上昇により、加工対象物が良好にレーザ加工されるようなる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記加工ヘッド内に、加工用のレーザ光源によるレーザ光が移動する方向において、加工用レーザ光源によるレーザ光の照射位置よりも手前位置の加工対象物の表面に余熱用のレーザ光を照射する余熱用レーザ光源をさらに設け、さらに、前記制御手段による前記加工用レーザ駆動回路に対する前記非加工用のレーザ光の出射から前記加工用のレーザ光の出射への切換えを、余熱用のレーザ光の照射位置と加工用のレーザ光の照射位置との距離に対応した、加工用のレーザ光源によるレーザ光の照射位置の移動時間だけ遅延する遅延回路と、余熱用レーザ光源を駆動するための駆動信号であって、制御手段による非加工用のレーザ光の出射から加工用のレーザ光の出射への切換え時に過渡的に上昇して、それ以外は所定レベルとなる駆動信号を余熱用レーザ光源に出力して、駆動信号に応じた強度のレーザ光を余熱用レーザ光源に出射させる余熱用レーザ駆動回路とを設けたことにある。
【0015】
上記のように構成した本発明の他の特徴においては、加工用レーザ光源によるレーザ光の照射位置の直前位置の温度が余熱用レーザ光源によるレーザ光の照射により上昇する。そして、余熱用レーザ光源によるレーザ光の強度が過渡的に上昇制御され、レーザ加工開始時の直前でその前後の照射強度より大きくなる。したがって、加工対象物の表面のレーザ加工箇所の温度が、加工用レーザ光源による加工用強度のレーザ光への切換え直前であっても、それ以降と同程度に上昇する。その結果、加工対象物が良好にレーザ加工されるようになる。
【0016】
さらに、本発明の実施にあたっては、加工対象物をレーザ加工するレーザ加工装置の発明に限定されることなく、加工対象物をレーザ加工するレーザ加工方法及び同レーザ加工方法を実現するコンピュータプログラムの発明としても実施し得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明すると、図1は、同実施形態に係るレーザ加工装置の全体概略図である。このレーザ加工装置は、加工対象物10を固定支持する支持部材としてのテーブル21と、加工対象物10に向けてレーザ光を照射して加工対象物をレーザ加工する加工ヘッド30とを備えている。テーブル21は、円形に形成されていて、スピンドルモータ22及びフィードモータ23によって駆動される。なお、テーブル21は本発明のセット部に対応する。
【0018】
スピンドルモータ22は、その回転により、回転軸22aを介してテーブル21を回転駆動する。スピンドルモータ22内には、同モータ22すなわちテーブル21の回転を検出して、同回転を表す回転検出信号を出力するエンコーダ22bが組み込まれている。この回転検出信号は、テーブル21の回転位置が一つの基準回転位置に来るごとに発生されるインデックス信号Indexと、所定の微小な回転角度ずつハイレベルとローレベルを繰返すパルス列信号からなるとともに互いにπ/2だけ位相のずれたA相信号φA及びB相信号φBとからなる。インデックス信号Indexは、後述するコントローラ70に供給される。A相信号φA及びB相信号φBは、スピンドルモータ制御回路51に供給される。スピンドルモータ制御回路51は、エンコーダ22bからのA相信号φA及びB相信号φBを用いてスピンドルモータ22の回転速度を計算し、コントローラ70の指示により、前記計算した回転速度がコントローラ70によって指定された回転速度に等しくなるようにスピンドルモータ22の回転を制御する。
【0019】
フィードモータ23は、スクリューロッド24を回転させて、テーブル21を半径方向に駆動する。スクリューロッド24は、その一端にてフィードモータ23の回転軸に一体回転するように連結され、その他端に支持部材25に固着されたナット(図示しない)に螺合している。支持部材25は、スピンドルモータ22を固定支持するとともに、テーブル21の径方向への移動のみが許容されている。したがって、フィードモータ23が回転すると、スピンドルモータ22、テーブル21及び支持部材25はスクリューロッド24及びナットからなるねじ機構によりテーブル21の径方向に変位する。
【0020】
フィードモータ23内にも、フィードモータ23の回転を検出して、前記エンコーダ22bと同様な回転検出信号(インデックス信号Index及びA相信号φA及びB相信号φB)を出力するエンコーダ23aが組み込まれている。このA相信号φA及びB相信号φBは、半径位置検出回路52に出力される。半径位置検出回路52は、エンコーダ23aからのA相信号φA又はB相信号φBをフィードモータ23の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンするカウント回路を有し、このカウント回路のカウント値に基づいてレーザ光が照射されるテーブルの半径位置を算出して、半径位置を表す検出信号をフィードモータ制御回路53及びコントローラ70に出力する。なお、カウント回路の初期設定は、電源投入時にコントローラ70の指示によって行われる。
【0021】
すなわち、コントローラ70は、電源投入時に、フィードモータ制御回路53に支持部材25の初期位置への移動及び半径位置検出回路52に初期設定を指示する。この指示により、フィードモータ制御回路53は、フィードモータ23を回転させて支持部材25を初期位置に移動させる。なお、この初期位置は、フィードモータ23によって駆動される支持部材25の駆動制限位置である。半径位置検出回路52は、この支持部材25の移動中、エンコーダ23aからのA相信号φA又はB相信号φBを入力し続けている。そして、支持部材25が初期位置まで達してフィードモータ23の回転が停止すると、半径位置検出回路52はエンコーダ23aからのA相信号φA又はB相信号φBの入力停止を検出して、内蔵のカウント回路のカウント値を「0」にリセットする。このとき、半径位置検出回路52は、フィードモータ制御回路53に出力停止のための信号を出力し、これにより、フィードモータ制御回路53はフィードモータ23への駆動信号の出力を停止する。その後に、フィードモータ23が駆動された際には、半径位置検出回路52は、A相信号φA又はB相信号φBをフィードモータ23の回転方向に応じてカウントアップ又はカウントダウンして、そのカウント値に基づいてレーザ光が照射されるテーブル21の半径位置を算出し、半径位置を表す信号をフィードモータ制御回路53及びコントローラ70に出力し続ける。
【0022】
フィードモータ制御回路53は、コントローラ70の指示により、フィードモータ23を駆動制御して、レーザ光の照射位置をテーブル21の指定半径位置へ移動させる。具体的には、フィードモータ制御回路53は、コントローラ70によって指定半径位置へのレーザ光の照射位置の移動が指示されたときには、半径位置検出回路52によって検出される半径位置を用いてフィードモータ23の回転を制御し、検出される半径位置が前記指定半径位置に等しくなるまでフィードモータ23を回転させる。
【0023】
加工ヘッド30は、レーザ光源31、コリメートレンズ32、偏光ビームスプリッタ33、1/4波長板34、対物レンズ35、集光レンズ36、シリンドリカルレンズ37及びフォトディテクタ38を備えている。そして、この加工ヘッド30においては、レーザ光源31からのレーザ光を、コリメートレンズ32、偏光ビームスプリッタ33、1/4波長板34及び対物レンズ35を介して、加工対象物10の表面に集光させ、加工対象物10の表面に光スポットを形成する。レーザ光源31は、レーザ駆動回路54によってフィードバック制御回路55を介して駆動制御される。
【0024】
加工ヘッド30内には、集光レンズ41及び受光素子42も設けられている。集光レンズ41は、レーザ光源31からコリメートレンズ32を介して偏光ビームスプリッタ33に入射されて、偏光ビームスプリッタ33にて僅かに反射されたレーザ光を受光素子42に集光する。受光素子42は、この受光されたレーザ光すなわち偏光ビームスプリッタ33によって反射されたレーザ光の強度を検出することにより、レーザ光源31によるレーザ光の出射強度を表す信号をフィードバック制御回路55に供給する。
【0025】
レーザ駆動回路54は、コントローラ70からの非加工用強度のレーザ照射開始の指令に応答して、図3(a)及び図3(b)に示すように、低レベル(すなわち非加工レベル)L1の直流信号からなる駆動信号を出力する。この非加工レベルL1は、レーザ光源31から出射されるレーザ光の加工対象物10の表面への照射によって加工対象物10の表面がレーザ加工されない程度に低く、かつ後述するフォーカスサーボ制御を可能とする程度のレベルを有するように設定されている。また、レーザ駆動回路54は、コントローラ70からの加工用強度のレーザ照射開始の指令に応答して、図3(a)及び図3(b)に示すように、高レベル(すなわち加工レベル)L2の駆動信号を出力する。図3(a)の加工レベルL2の駆動信号は、加工対象物10の表面に連続する溝を形成するための直流的信号の例である。図3(b)の加工レベルL2の駆動信号は、加工対象物10の表面に微細なピットを形成するためのパルス状信号の例である。なお、レーザ駆動回路54から出力される加工信号種類(直流的信号又はパルス状信号)は、コントローラ70によって制御されるものであり、他の種類の信号波形も可能である。
【0026】
本実施形態における特徴は、前記加工レベルL2の駆動信号の波形の種類ではなく、加工レベル(直流的信号の場合は直流レベル、パルス状信号の場合はパルスレベル)L2が、レーザ光源31から出射されるレーザ光の加工対象物10の表面への照射によって加工対象物10の表面がレーザ加工される程度に高いことである。なお、この加工レベルL2の駆動信号は、当然に、後述するフォーカスサーボ制御を可能とするものである。また、これらの加工レベルL2の駆動信号の特徴は、その開始時、すなわち非加工信号から加工信号への切換え時に、連続したレーザ加工時における定常的な加工レベルL2よりも過渡的に高くなる部分Aを有する点である。これは、レーザ光の強度が非加工用の小さな強度から加工用の大きな強度に切換えられた直後は、レーザ光によって実際に加工される位置の加工対象物の表面の温度は低いために、加工跡が形成され難くなることを回避するためである。
【0027】
フィードバック制御回路55は、受光素子42からの検出信号を用いたフィードバック制御により、前記駆動信号の非加工レベルL1及び加工レベルL2に対応した強度のレーザ光をレーザ光源31に出射させる。
【0028】
また、この加工対象物10の表面に形成された光スポットからの反射光は、対物レンズ35、1/4波長板34、偏光ビームスプリッタ33、集光レンズ36及びシリンドリカルレンズ37を介して、フォトディテクタ38に導かれて受光される。フォトディテクタ38は、分割線で区切られた4つの同一正方形状の受光素子からなる4分割受光素子によって構成されており、各受光素子は受光量に比例した検出信号Sa,Sb,Sc,Sdをそれぞれ受光信号として出力する。なお、検出信号Sa,Sb,Sc,Sdは、左上から時計回りに配置された各受光素子の受光量を表している。また、この加工ヘッド30は、フォーカスアクチュエータ43も備えている。フォーカスアクチュエータ43は、対物レンズ35をレーザ光の光軸方向(加工対象物10の表面に対して垂直方向)に駆動する。
【0029】
このレーザ加工装置は、フォトディテクタ38に接続されて、その検出信号Sa,Sb,Sc,Sdをそれぞれ増幅するHF信号増幅回路56を備えている。このHF信号増幅回路56には、フォーカスエラー信号生成回路57が接続されている。フォーカスエラー信号生成回路57は、HF信号増幅回路56を介したフォトディテクタ38からの検出信号Sa〜Sdを用いた演算(具体的には、非点収差法によるフォーカスサーボ制御の場合は(Sa+Sc)−(Sb+Sd)の演算)により、フォーカスエラー信号を生成して、フォーカスサーボ回路58に出力する。フォーカスサーボ回路58は、コントローラ70により作動制御され、フォーカスエラー信号に基づいてフォーカスサーボ信号を生成してドライブ回路59に供給する。ドライブ回路59は、このフォーカスサーボ信号に応じてフォーカスアクチュエータ43を駆動制御して、対物レンズ35を光軸方向に変位させる。これらのフォーカスエラー信号生成回路57及びフォーカスサーボ回路58により、対物レンズ35は、加工対象物10の表面にレーザ光を集光させ続ける。
【0030】
フォーカスサーボ回路58とドライブ回路59との間には、加算器61が接続されている。この加算器61は、フォーカスサーボ回路58からのフォーカスサーボ信号にオフセット信号発生回路62からのオフセット信号を加算(すなわち重畳)して出力するものである。オフセット信号発生回路62は、コントローラ70によって制御され、図4に示すように、非加工状態でオフセット信号を出力し、加工状態でオフセット信号の出力を停止する(すなわち、オフセット信号のレベルを「0」にする)。このオフセット信号のレベルは、非加工時におけるレーザ光の焦点位置を、前記レーザ光の強度の切換え直後における焦点位置のずれ量に等しい距離だけ、加工対象物10の表面から離れる方向にずらしておく、すなわちオフセットしておくためのもので、前記距離だけ焦点位置をずらす値に設定されている。これにより、加工用のレーザ光源31からのレーザ光の強度が非加工用強度から加工用強度に切換えられた直後における焦点位置のずれがなくなる。
【0031】
コントローラ70は、CPU、ROM、RAM、ハードディスクなどの不揮発性メモリなどからなるコンピュータによって構成されており、キーボード、マウスなどからなる入力装置71からの指示に従って、図2に示すレーザ加工プログラムを実行することにより、レーザ加工装置を作動させる。また、コントローラ70には、作動指示及び作動状況を作業者に対して視覚的に知らせるための表示装置72も接続されている。
【0032】
次に、上記のように構成したレーザ加工装置の動作を説明する。作業者は、レーザ加工装置の図示しない電源をオンして、図1に示す各種回路の作動を開始させる。前記電源の投入時には、コントローラ70は、図示しないプログラムの実行により、半径位置検出回路52及びフィードモータ制御回路53に対して初期設定を指示する。この指示により、上述した半径位置検出回路52及びフィードモータ制御回路53の初期設定動作により、半径位置検出回路52は、レーザ光が照射される半径位置を表す信号を出力し始める。
【0033】
次に、コントローラ70は、図示しないプログラムの実行により、表示装置72を用いて、加工対象物10の加工に必要な加工データの入力を作業者に促す。作業者は、入力装置71を用いて、レーザ加工開始半径位置、レーザ加工終了半径位置、半径方向の加工ピッチP、加工対象物10に対するレーザ光スポットの回転線速度、溝加工又はピット加工の指定、ピット加工の場合には回転方向のピット間隔などを入力する。コントローラ70は、入力された加工データを内部の記憶装置に記憶する。なお、加工データがコントローラ70内に既に記憶されている場合には、この処理を省略してもよい。
【0034】
このような初期処理の実行後、レーザ加工プログラムが図2のステップS10から実行開始され、コントローラ70は、ステップS12にて、レーザ光の照射位置を半径方向に移動するための変数nを初期値「0」に設定する。次に、コントローラ70は、ステップS14にて、フィードモータ制御回路53に、前記入力されたレーザ加工開始半径位置を出力するとともに、レーザ光の照射位置をレーザ加工開始半径位置に移動するように指示する。フィードモータ制御回路53は、半径位置検出回路52によって検出された半径位置を入力しながら、レーザ光の照射位置がレーザ加工開始半径位置に一致するまで、フィードモータ23の回転を制御してテーブル21を移動する。半径位置検出回路52によって検出された半径位置がレーザ加工開始半径位置に等しくなると、フィードモータ制御回路53はフィードモータ23の回転を停止する。これにより、レーザ光の照射位置がレーザ加工開始半径位置まで移動する。
【0035】
前記ステップS14の処理後、コントローラ70は、ステップS16にて、前記入力されたレーザ加工開始半径位置及び回転線速度を用いて、スピンドルモータ22の回転速度を計算し、この計算した回転速度をスピンドルモータ制御回路51に出力するとともにスピンドルモータ22の回転開始を指示する。スピンドルモータ制御回路51は、エンコーダ22bからのA相信号φA及びB相信号φBを用いてスピンドルモータ22の回転速度を計算し、この計算した回転速度が前記コントローラ70から入力された回転速度に等しくなるようにスピンドルモータ22の回転を制御する。
【0036】
前記ステップS16の処理後、コントローラ70は、ステップS18にて、非加工用強度のレーザ光の出射をレーザ駆動回路54に指示する。レーザ駆動回路54は、図3(a)(b)に示すように、非加工レベルL1の駆動信号をフィードバック制御回路55を介してレーザ光源31に出力し始める。レーザ光源31は、非加工レベルL1に対応した非加工用強度のレーザ光を出射し始める。したがって、加工対象物10には、非加工用強度のレーザ光が照射され始める。そして、このレーザ光の照射によって加工対象物10の表面に光スポットが形成され、光スポットからの反射光がフォトディテクタ38によって検出され始める。
【0037】
前記ステップS18の処理後、コントローラ70は、ステップS20にてフォーカスサーボ回路58に作動開始を指示する。このとき、前記フォトディテクタ38によって検出された反射光に応じた受光信号はHF信号増幅回路56を介してフォーカスエラー信号生成回路57に供給されており、フォーカスエラー信号生成回路57は前記反射光に応じたフォーカスエラー信号をフォーカスサーボ回路58に出力している。したがって、フォーカスサーボ回路58は、前記作動開始の指示により、図示しないフォーカスアクチュエータ駆動回路とS字検出回路によるフォーカス引き込み後、作動開始し、フォーカスサーボ信号を加算器61及びドライブ回路59を介してフォーカスアクチュエータ43に供給して、対物レンズ35をレーザ光の光軸方向に駆動するフォーカスサーボ制御が開始される。すなわち、フォーカスサーボ回路58は、対物レンズ35によるレーザ光の焦点位置が加工対象物10の表面に一致するようにフォーカスアクチュエータ43を駆動制御し始める。
【0038】
前記ステップS20の処理後、コントローラ70は、ステップS22にて、オフセット信号発生回路62にオフセット信号の発生を指示する。これに応答して、オフセット信号発生回路62は、図4に示すように、所定レベルのオフセット信号を加算器61に出力し始める。加算器61は、フォーカスサーボ回路58からのフォーカスサーボ信号にオフセット信号を加算(重畳)して、ドライブ回路59に供給する。ドライブ回路59は、このオフセット信号の加算(重畳)されたフォーカスサーボ信号に従ってフォーカスアクチュエータ43を駆動制御する。したがって、フォーカスアクチュエータ43は、対物レンズ35を加工対象物10の表面から離れる方向にオフセット信号のレベルに対応した量だけ移動させる。その結果、この状態では、対物レンズ35によるレーザ光の焦点位置は、図5の破線で示すように、オフセット信号のレベルに対応した量だけ加工対象物10の表面から離れた位置となる。なお、この状態では、フォーカスサーボ回路58が出力する信号は、前記レーザ光の焦点位置のずれを表すレベルに保たれている。
【0039】
前記ステップS22の処理後、コントローラ70は、ステップS24にて時間計測を開始し、ステップS26にて前記時間計測の開始から所定の短時間だけ経過したか否かを判定する。そして、前記所定の短時間が経過すると、コントローラ70は、ステップS26にて「Yes」と判定して、ステップS28以降の処理を実行する。これらのステップS24,S26の処理は、ステップS28以降の処理により、オフセット信号が出力されるタイミングとほぼ同時に、インデックス信号Indexの到来に応答してレーザ加工が開始されないようにするためである。ステップS28においては、エンコーダ22bからインデックス信号Indexの入力を待つ。すなわち、レーザ光の照射位置が加工対象物10に対して基準回転位置に来るまで待つ。
【0040】
レーザ光の照射位置が加工対象物10に対して基準回転位置に来て、インデックス信号Indexがコントローラ70に入力されると、コントローラ70は、ステップS28にて「Yes」と判定し、ステップS30にて加工用強度のレーザ光の出射をレーザ駆動回路54に指示し、ステップS32にてオフセット信号発生回路62にオフセット信号の出力停止を指示する。これにより、レーザ駆動回路54は、図3(a)又は(b)に示すように、加工レベルL2の駆動信号をフィードバック制御回路55を介してレーザ光源31に出力し始める。レーザ光源31は、加工レベルL2に対応した加工用強度のレーザ光を出射し始める。したがって、加工対象物10には加工用強度のレーザ光が照射され始めて、加工対象物10の表面がレーザ加工され始める。また、オフセット信号発生回路62は、オフセット信号の発生を停止する。
【0041】
前記非加工用強度のレーザ光から加工用強度のレーザ光への切換えにより、レーザ光の波長が大きくなり、対物レンズ35による焦点距離が大きくなる。この場合、加工用強度へのレーザ光の切換え前には、すなわち非加工用強度のレーザ光の照射時には、オフセット信号により、レーザ光の焦点位置が加工対象物10の表面から離れたオフセット位置に設定されていた。そして、このオフセット位置の加工対象物10の表面からの距離は、前記非加工用強度のレーザ光から加工用強度のレーザ光への切換えによる焦点位置の変化量に等しく設定されている。したがって、加工用強度のレーザ光への切換え及び前記オフセット信号の停止により、加工用強度のレーザ光への切換え直後から、対物レンズ35によるレーザ光の焦点位置は、加工対象物10の表面に正確に一致するようにフォーカスサーボ制御が行われる。
【0042】
また、ステップS30においては、コントローラ70は、前記入力された溝加工又はピット加工の指定、及びピット加工の場合には回転方向のピット間隔に基づいて、レーザ駆動回路54に直流的な駆動信号の発生又は計算されたパルス幅を有するパルス状の駆動信号の発生を指示する。したがって、直流的な駆動信号の発生が指示された場合には、レーザ駆動回路54は、図3(a)に示すような加工レベルL2を有する直流的な駆動信号をフィードバック制御回路55を介してレーザ光源31に出力して、レーザ光源31に加工用強度のレーザ光を連続して出射させる。また、パルス状の駆動信号の発生が指示された場合には、レーザ駆動回路54は、図3(b)に示すような加工レベルL2を有するパルス状の駆動信号をフィードバック制御回路55を介してレーザ光源31に出力して、レーザ光源31に加工用強度のレーザ光を非連続で出射させる。
【0043】
また、これらの加工レベルL2の駆動信号は、共に、加工用強度のレーザ光への切換え直後から所定の短時間だけ、定常的な加工レベルL2よりも過渡的に高い部分Aを有し、レーザ光源31からもレーザ強度を過渡的に高くしたレーザ光を出射する。これは、加工用強度のレーザ光が加工対象物10の表面に照射され続けている際には、加工対象物10の表面のレーザ加工箇所が直前に熱せられて同加工箇所の温度が比較的高くなっているので、加工対象物10が良好にレーザ加工される。しかし、加工用強度のレーザ光への切換え直後には、直前の非加工用強度のレーザ光強度は低いので、加工対象物10の表面のレーザ加工箇所が直前にあまり熱せられずに同加工箇所の温度が低く、加工対象物10が良好にレーザ加工されない。これに対して、前記のように、本実施形態では、加工用強度のレーザ光への切換え直後から所定の短時間だけ定常的な加工レベルL2よりも過渡的に高い部分Aを設けるようにしたので、加工対象物10の表面のレーザ加工箇所が直前にあまり熱せられない場合でも、加工対象物10が良好にレーザ加工されるようになる。また、前記オフセット信号による焦点位置のオフセット量を非加工レベルL1から加工レベルL2のピーク値までの強度差による焦点距離の変化量に等しくするようにすれば、前記レーザ光の焦点位置の変化の影響を有効になくすことができる。
【0044】
このようなレーザ加工の開始後、コントローラ70は、ステップS34にて、前記ステップS28と同様に、エンコーダ22bからインデックス信号Indexの入力を待つ。レーザ光の照射位置が加工対象物10に対して基準回転位置に来て、インデックス信号Indexがコントローラ70に入力されると、コントローラ70は、ステップS34にて「Yes」と判定し、ステップS36にて非加工用強度のレーザ光の出射をレーザ駆動回路54に指示する。これにより、レーザ駆動回路54は、高い加工レベルL2の駆動信号の発生を停止して、ふたたび低い非加工レベルL1の駆動信号をフィードバック制御回路55を介してレーザ光源31に出力し始める。したがって、レーザ光源31は、ふたたび非加工用強度のレーザ光を加工対象物10に出射し始める。その結果、一つの半径位置における1周分のレーザ加工が終了する。
【0045】
前記ステップS36の処理後、コントローラ70は、ステップS38にて変数nに「1」を加算する。次に、コントローラ70は、ステップS40にて、前記入力したレーザ加工開始半径位置及び半径方向の加工ピッチPを用いて、レーザ加工開始半径位置にn・Pを加算して、前記レーザ加工が終了した半径位置よりも1つ外側の半径位置(レーザ加工開始半径位置+n・P)を計算する。そして、この半径位置(レーザ加工開始半径位置+n・P)が、前記入力したレーザ加工終了半径位置よりも大きいか否かを判定する。レーザ加工終了半径位置よりも大きくなければ、コントローラ70は、ステップS40にて「No」と判定してステップS42,S44に進む。
【0046】
ステップS42においては、コントローラ70は、フィードモータ制御回路53に、前記新たな半径位置(レーザ加工開始半径位置+n・P)を出力するとともに、レーザ光の照射位置を前記新たな半径位置に移動するように指示する。フィードモータ制御回路53は、半径位置検出回路52によって検出された半径位置を入力しながら、レーザ光の照射位置が前記新たな半径位置(レーザ加工開始半径位置+n・P)に一致するまで、フィードモータ23の回転を制御してテーブル21を半径方向に移動する。これにより、レーザ光の照射位置が、前記新たな半径位置(レーザ加工開始半径位置+n・P)まで移動する。次に、コントローラ70は、ステップS44にて、前記新たな半径位置(レーザ加工開始半径位置+n・P)及び前記決められた回転線速度を用いて、スピンドルモータ22の回転速度を計算し、この計算した回転速度をスピンドルモータ制御回路51に出力する。スピンドルモータ制御回路51は、前記ステップS16の処理で説明したように、スピンドルモータ22を前記入力された回転速度で回転させる。
【0047】
前記ステップS44の処理後、コントローラ70は、前述したステップS22〜S36により、加工対象物10の前記新たな半径位置(レーザ加工開始半径位置+n・P)をレーザ加工する。そして、コントローラ70は、ふたたび、ステップS38にて変数nに「1」を加算し、ステップS40にてレーザ加工が終了した半径位置よりも1つ外側の半径位置(レーザ加工開始半径位置+n・P)を計算するとともに、この半径位置(レーザ加工開始半径位置+n・P)が、前記入力したレーザ加工終了半径位置よりも大きいか否かを判定する。レーザ加工終了半径位置よりも大きくなければ、コントローラ70は、ステップS40にて「No」と判定してステップS42,S44に進み、前述したステップS22〜S40の処理をふたたび実行する。このようなステップS22〜S44からなる循環処理により、新たな半径位置(レーザ加工開始半径位置+n・P)がレーザ加工終了半径位置よりも大きくなると、コントローラ70は、ステップS40にて「Yes」と判定して、ステップS46に進む。
【0048】
ステップS46においては、コントローラ70は、フォーカスサーボ回路58に作動停止を指示して、フォーカスサーボ回路58によるフォーカスサーボ制御を停止させる。次に、コントローラ70は、ステップS48にて、レーザ駆動回路54にレーザ光の出射停止を指示して、レーザ光源31からのレーザ光の出射を停止させる。次に、コントローラ70は、ステップS50にて、スピンドルモータ制御回路51にスピンドルモータ22の回転停止を指示して、スピンドルモータ22の回転を停止させる。その後、コントローラ70は、ステップS52にてレーザ加工プログラムの実行を終了する。これにより、加工対象物10は、前記入力されたレーザ加工開始半径位置からレーザ加工終了半径位置まで、前記入力された半径方向の加工ピッチPごとにレーザ加工される。
【0049】
そして、新たな加工対象物10を前記と同様にレーザ加工する場合には、作業者は、新たな加工対象物10をテーブル21上に載置してテーブル21に固定し、図2のレーザ加工プログラムの実行をふたたび開始させる。これにより、新たな加工対象物10が、前記と同様にレーザ加工される。
【0050】
上記実施形態によれば、加工対象物10がレーザ加工される前には、ステップS18の処理により非加工用強度のレーザ光を加工対象物10の表面に照射するとともに、ステップS22の処理により対物レンズ35によるレーザ光の焦点位置をオフセットするようにした。そして、レーザ加工開始時には、ステップS30の処理により加工用強度のレーザ光を加工対象物10の表面に照射するとともに、ステップS32の処理により対物レンズ35によるレーザ光の焦点位置のオフセットを解除するようにした。このオフセット解除により、レーザ光源31から出射されるレーザ光の強度変化によってレーザ光の波長が変化し、焦点距離が変化しても、非加工用強度のレーザ光から加工用強度のレーザ光への切換え直後から、対物レンズ35によるレーザ光の焦点位置は加工対象物10の表面に正確に一致し、レーザ加工跡が良好に形成されるようになる。
【0051】
また、前記ステップS30の処理によりレーザ駆動回路54から出力される駆動信号は、加工用強度のレーザ光への切換え直後から所定の短時間だけ、定常的な加工レベルL1よりも過渡的に高い部分Aを有する。そして、レーザ光源31は、前記駆動信号のレベルに対応した強度のレーザ光を出射するので、加工用強度のレーザ光への切換え直後には、加工対象物10の表面のレーザ加工箇所の温度の上昇が大きくなる。その結果、加工用強度のレーザ光への切換え直前に、加工対象物10の表面におけるレーザ加工箇所の温度が充分に上昇していなくても、前記加工レベルL2の高い部分Aによる前記温度上昇により、加工対象物10が良好にレーザ加工されるようなる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について詳しく説明したが、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形も可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態においては、レーザ加工開始時(非加工用強度から加工用強度への切換え時)におけるレーザ光強度がそれ以降のレーザ光強度より過渡的に大きくなるようにした。しかし、これに代え又はこれと共に、加工用強度のレーザ光の照射点の直前位置を余熱用レーザ光で照射し、この余熱用レーザ光の照射強度をレーザ加工開始時の直前でその前後の照射強度より大きくして、レーザ加工開始時のレーザ照射点の照射前の温度上昇をそれ以降と同じ程度になるようにしてもよい。以下、この変形例に係るレーザ加工装置について図面を用いて説明する。
【0054】
図6は、この変形例に係るレーザ加工装置の全体概略図を示している。このレーザ加工装置においては、上記実施形態に係るレーザ加工装置に加えて、加工ヘッド30内に余熱用のレーザ光源44を備えるとともに、このレーザ光源44を駆動するためのレーザ駆動回路63及びフィードバック制御回路64を備えている。レーザ光源44は、前記加工用のレーザ光源31とは異なる波長のレーザ光を出射するもので、レーザ光源44から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ45及び偏光ビームスプリッタ46を介してダイクロイックミラー47に入射する。ダイクロイックミラー47は、上記実施形態の偏光ビームスプリッタ33と1/4波長板34の間に設けられて、レーザ光源31からのレーザ光及び同レーザ光による加工対象物10の表面からの反射光をそのまま通過させるとともに、レーザ光源44からのレーザ光及び同レーザ光による加工対象物10の表面からの反射光を反射する。コリメートレンズ45及び偏光ビームスプリッタ46を介してレーザ光源44から入射したレーザ光は、ダイクロイックミラー47で反射されて、1/4波長板34及び対物レンズ35を介して加工対象物10の表面に集光される。この場合、レーザ光源44からのレーザ光の光軸は、レーザ光源31からのレーザ光の光軸に対して加工対象物10の回転方向とは逆方向に僅かに傾けられており、レーザ光源44からのレーザ光は、レーザ光源31のレーザ光の照射位置よりも加工対象物10の回転方向とは逆方向に僅かに離れた位置に集光される。
【0055】
また、ダイクロイックミラー47で反射された反射光は偏光ビームスプリッタ46に入射して、偏光ビームスプリッタ46によって反射されて集光レンズ48に入射する。集光レンズ48は、偏光ビームスプリッタ46による反射光を受光素子49に集光する。受光素子49は、偏光ビームスプリッタ46によって反射されたレーザ光の強度を検出することにより、レーザ光源44によるレーザ光の出射強度を表す信号をフィードバック信号としてフィードバック制御回路64に供給する。レーザ駆動回路63は、図7のS1で示すように、駆動状態にて定常的に所定レベルL3に保たれていて、コントローラ70からの加工開始の指示タイミングT1におけるレベルアップの指示により、前記所定レベルL3から所定のレベルだけ上昇させ、その後、徐々に減衰して所定レベルL3に復帰する駆動信号をフィードバック制御回路64に出力する。フィードバック制御回路64は、前記駆動信号に対応した強度のレーザ光を出射するようにレーザ光源44を駆動制御する。
【0056】
また、この変形例に係るレーザ加工装置は、上記実施形態のレーザ駆動回路54とコントローラ70との間に遅延回路65を備えている。遅延回路65は、コントローラ70によって設定された遅延時間だけ、コントローラ70から供給される非加工用強度及び加工用強度のレーザ照射開始の指示を遅延してレーザ駆動回路54に出力する。この場合、レーザ駆動回路54は、遅延回路65によって遅延されたコントローラ70からの非加工用強度のレーザ照射開始の指示に応答して、図7のS2で示すように、低レベル(すなわち非加工レベル)L1の直流信号からなる駆動信号を出力する。また、レーザ駆動回路54は、遅延回路65によって遅延されたコントローラ70からの加工用強度のレーザ照射開始の指示に応答して、図7のS2の実線で示すように、ステップ状に変化する高レベル(すなわち加工レベル)L2の駆動信号を出力する。他のハード構成に関しては、上記実施形態と同じであるので、上記実施形態と同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0057】
次に、上記のように構成した変形例の動作について説明すると、コントローラ70は、図2に示すレーザ加工プログラムとほぼ同じレーザ加工プログラムを実行する。また、上記実施形態と異なる点は、作業者が、加工対象物10に対するレーザ光スポットの回転線速度を入力した際に、この入力された回転線速度を用いて遅延回路65の遅延時間ΔTを計算して、遅延回路65に出力する点である。この遅延時間ΔTの計算においては、余熱用のレーザ光源44による加工対象物10の表面へのレーザ照射位置と、加工用のレーザ光源31による加工対象物10の表面へのレーザ照射位置との予め設定された間隔を前記回転線速度で除算することにより遅延時間ΔTを計算する。遅延回路65は、前記コントローラ70から供給された遅延時間ΔTを記憶して、非加工用強度及び加工用強度のレーザ照射開始の指示の遅延時間を設定する。
【0058】
そして、作業者は、加工対象物10をテーブル21上に載置してテーブル21に固定し、レーザ加工プログラムの実行を開始させる。この変形例に係るレーザ加工プログラムにおいては、図2のステップS18,S36の非加工用強度のレーザ照射開始の指示及びステップS30の加工用強度のレーザ照射開始の指示は遅延回路65に出力される。遅延回路65は、前記非加工用強度及び加工用強度のレーザ照射開始の指示を、余熱用のレーザ光源44によるレーザ照射位置と加工用のレーザ光源31によるレーザ照射位置との予め設定された間隔に対応した遅延時間ΔTだけ遅延してレーザ駆動回路54に出力する。したがって、図7に示すように、コントローラ70によって指定される、非加工用強度のレーザ光から加工用強度のレーザ光への切換えタイミングT1に対して前記遅延時間ΔTだけ遅れたタイミングT2にて、加工用のレーザ光源31のレーザ強度は非加工レベルL1から加工レベルL2に切換えられる。
【0059】
また、この変形例に係るレーザ加工プログラムにおいては、図2のステップS18の括弧内に示すように、遅延回路65への非加工用強度のレーザ照射開始の指示出力に加えて、レーザ駆動回路63を作動開始させる。これにより、レーザ駆動回路63は、受光素子49及びフィードバック制御回路64と協働して、所定レベルL3に対応した強度のレーザ光をレーザ光源44に発生し始める。また、図2のステップS30の括弧内に示すように、遅延回路65への加工用強度のレーザ照射開始の指示出力に加えて、レーザ駆動回路63にレベルアップの指示信号を出力する。これに応答して、レーザ駆動回路63は、加工開始の指示タイミングT1で、所定レベルL3の駆動信号を所定のレベルだけ上昇させ、その後、徐々に減衰して所定レベルL3に復帰させる。この駆動信号に応答して、余熱用のレーザ光源44は、加工開始の指示タイミングT1にて、過渡的に上昇する強度のレーザ光を出射する。また、図2のステップS48においては、余熱用のレーザ光源44の出射停止の指示もレーザ駆動回路63に出力され、加工用のレーザ光源31のレーザ光の出射停止に加えて、余熱用のレーザ光源44のレーザ光の出射も停止制御される。なお、余熱用のレーザ光源44からのレーザ光の強度は前記加工開始の指示タイミングT1後に自動的に所定レベルL3に戻されるので、図2のステップS36においては、レーザ駆動回路63へのコントローラ70による制御はなされない。
【0060】
上記のような変形例に係るレーザ加工装置においては、図2のステップS18の括弧内の処理により、加工用のレーザ光源31によるレーザ光の照射点の直前位置が余熱用のレーザ光源44によるレーザ光の照射により温度上昇する。また、図2のステップS30の括弧内の処理により、余熱用のレーザ光源44によるレーザ光の照射強度が、過渡的に上昇制御され、レーザ加工開始時の直前でその前後の照射強度より大きくなる。したがって、加工対象物10の表面のレーザ加工箇所の温度が、加工用のレーザ光源31による加工用強度のレーザ光への切換え直前であっても、それ以降と同程度に上昇する。その結果、加工対象物10が良好にレーザ加工されるようなる。
【0061】
また、前記変形例に係るレーザ加工装置においても、図7のS2に破線で示すように、レーザ駆動回路54は、タイミングT2すなわち加工開始時に過渡的にレベルを上昇させた部分A’を有する駆動信号でレーザ光源31の出射強度を制御するようにしてもよい。ただし、この場合には、前記部分A’の上昇レベルは、上記実施形態の部分A(図3参照)に比べて小さい。これによれば、前記部分A’に対応したレーザ光源31によるレーザ光の強度の増加により、加工開始時における加工対象物10の表面のレーザ加工箇所の温度が充分に上昇する。その結果、加工対象物10の表面のレーザ加工箇所の温度が、その加工開始時に、余熱用のレーザ光源44からのレーザ光によって充分に上昇していない場合でも、加工対象物10が良好にレーザ加工される。
【0062】
また、上記実施形態及びその変形例においては、1つの対物レンズ35でレーザ光を集光させる加工ヘッド30を用いた。そして、この場合は、レーザ光の波長が長くなると焦点距離が長くなるため、焦点位置が加工対象物10の表面から対物レンズ30側に離れるようにオフセット信号をフォーカスサーボ信号に重畳した。しかし、これに代えて、複数のレンズを用いてレーザ光を集光させる加工ヘッドを用いてもよい。そして、この場合は、レーザ光の波長が長くなると、逆に焦点距離が短くなる場合があるため、レーザ光の波長が長くなった場合の焦点距離の変化に合わせて、オフセット信号の符号及びレベルを設定すればよい。
【0063】
また、上記実施形態及びその変形例においては、回転の基準位置を検出すると同時に加工用のレーザ光を非加工用強度から加工用強度へ切換え、また加工用強度から非加工用強度に切換えた。しかし、これに代えて、加工用のレーザ光の非加工用強度から加工用強度への切換えは回転の基準位置の検出と同時に行い、加工用強度から非加工用強度への切換えを、回転の基準位置の検出から僅かな時間が経過した後に行うようにしてもよい。これによれば、レーザ加工開始点とレーザ加工終了点の間に未加工箇所が存在することがなくなる。加工用強度から非加工用強度への切換えを、回転の基準位置を検出してから僅かな時間が経過した後に行うためには、遅延回路を用いるようにすればよい。また、A相信号φA又はB相信号φBのパルス数のカウントをインデックス信号Indexが入力してから開始し、1回転に相当するカウント値より僅かに大きなカウント値になったときを回転の基準位置として検出するようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態及びその変形例においては、平板で構成したテーブル21に加工対象物10を固定し、テーブル21を回転させてレーザ光を照射するレーザ加工装置及びレーザ加工方法に本発明を適用した。しかし、これに代えて、ドラム状(すなわち円筒状)の固定治具(本願発明のセット部)の外周面に加工対象物を固定し、ドラム状の固定治具をその軸線周りに回転させるとともにレーザ光を照射して、固定治具の回転軸方向に所定間隔で複数の円形状の加工跡を形成するレーザ加工装置及びレーザ加工方法にも本発明は適用できる。
【0065】
また、上記実施形態及びその変形例においては、異なる半径位置ごとに、レーザ加工開始点とレーザ加工終了点が同じである同心円状のレーザ加工跡を形成するレーザ加工装置及びレーザ加工方法に本発明を適用した。しかし、これに代えて、レーザ光を加工対象物に対して螺旋状に移動させて、螺旋状のレーザ加工跡を形成するレーザ加工装置及びレーザ加工方法にも本発明は適用できる。この場合、レーザ加工開始点は1つのみであるが、このレーザ加工開始点にも本発明は適用できる。
【0066】
さらに、上記実施形態では、フィードモータ23によってテーブル21を半径方向に移動させることにより、加工ヘッド30を加工対象物10に対して半径方向に移動させるようにした。しかし、加工ヘッド30は、テーブル21に対して相対的に半径方向に移動されるようにすればよい。したがって、テーブル21に代えて、加工ヘッド30をモータにより駆動して、テーブル21に対して半径方向に移動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザ加工装置の全体を示す概略図である。
【図2】図1のコントローラにより実行されるレーザ加工プログラムを示すフローチャートである。
【図3】レーザ駆動回路から出力される駆動信号のレベル及びレーザ光源から出射されるレーザ光の強度の変化を示すタイムチャートである。
【図4】オフセット信号のタイムチャートである。
【図5】非加工状態及び加工状態でのレーザ光の焦点位置の変化を説明するための図である。
【図6】前記実施形態の変形例に係るレーザ加工装置の全体を示す概略図である。
【図7】前記変形例に係る加工用及び余熱用のレーザ光源から出射されるレーザ光の強度変化を示すタイムチャートである。
【図8】加工対象物に形成される円形のレーザ加工例を説明するための加工対象物の上面図である。
【図9】従来装置によるレーザ加工跡を示す図である。
【図10】レーザ光の強度と波長との関係を示すグラフである。
【図11】従来装置による非加工状態及び加工状態でのレーザ光の焦点位置の変化を説明するための図である。
【図12】従来装置によるフォーカスエラー信号の時間変化を示す信号波形図である。
【符号の説明】
【0068】
10…加工対象物、21…テーブル、22…スピンドルモータ、23…フィードモータ、30…加工ヘッド、31,44…レーザ光源、51…スピンドルモータ制御回路、52…半径位置検出回路、53…フィードモータ制御回路、54,63…レーザ駆動回路、55,64…フィードバック制御回路、58…フォーカスサーボ回路、61…加算器、62…オフセット信号発生回路、70…コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工対象物をセットするためのセット部と、
前記セット部を回転させる回転手段と、
加工対象物の表面をレーザ加工するためのレーザ光を出射する加工用レーザ光源、前記出射されたレーザ光を集光する対物レンズ、及び前記対物レンズをレーザ光の光軸方向に駆動するフォーカスアクチュエータを含む加工ヘッドと、
加工対象物の表面からの反射光に基づくフォーカスサーボ信号を前記フォーカスアクチュエータに供給することにより前記フォーカスアクチュエータを駆動制御して、前記レーザ光の焦点位置を加工対象物の表面に保つフォーカスサーボ制御回路と、
加工対象物の表面に対する前記レーザ光の照射位置を移動する移動手段と、
前記加工用レーザ光源に駆動信号を出力して、前記駆動信号のレベルに応じた強度のレーザ光を前記加工用レーザ光源に出射させる加工用レーザ駆動回路と、
前記移動手段を制御して前記レーザ光の照射位置をレーザ加工開始位置まで移動させるとともに、前記加工用レーザ駆動回路を制御して加工対象物の表面がレーザ加工されない程度に小さな強度の非加工用のレーザ光を前記加工用レーザ光源から出射させて前記フォーカスサーボ制御回路を作動させた後、前記加工用レーザ駆動回路を制御して前記非加工用のレーザ光の強度よりも大きな強度の加工用のレーザ光を前記加工用レーザ光源から出射させる制御手段と
を備え、前記セット部にセットされた加工対象物の表面を前記レーザ加工開始位置からレーザ加工するレーザ加工装置において、さらに、
前記非加工用のレーザ光の入射時における前記対物レンズの焦点距離から前記加工用のレーザ光の入射時における前記対物レンズの焦点距離への変化分に対応したレベルのオフセット信号を発生して、前記フォーカスサーボ信号に重畳するオフセット信号発生回路を設け、
前記制御手段は、前記非加工用のレーザ光を前記加工用レーザ光源から出射させているとき、前記オフセット信号発生回路にオフセット信号を発生させて前記レーザ光の焦点位置を加工対象物の表面から前記変化分に対応した距離だけずらしておき、前記非加工用のレーザ光の出射から前記加工用のレーザ光の出射への切換え時に、前記オフセット信号発生回路にオフセット信号の発生を停止させて前記レーザ光の焦点位置を加工対象物の表面に一致させるようにしたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、さらに、
前記回転手段による回転の基準位置を検出する基準位置検出手段を設け、
前記制御手段は、前記基準位置の検出時に前記加工用レーザ駆動回路を切換え制御して、前記加工用レーザ光源から出射されるレーザ光を、前記非加工用のレーザ光から前記加工用のレーザ光に切換え、又は前記加工用のレーザ光から前記非加工用のレーザ光に切換え、かつ
前記制御手段は、前記非加工用のレーザ光が加工用レーザ光源から出射されているときのみ、前記移動手段を制御して前記レーザ光の照射位置をレーザ加工開始位置まで移動させるようにしたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、
前記加工用レーザ駆動回路は、前記非加工用のレーザ光の出射から前記加工用のレーザ光の出射への切換え時に前記駆動信号のレベルを過渡的に上昇させて、その後に所定レベルに復帰させるようにしたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれ一つに記載のレーザ加工装置において、
前記加工ヘッド内に、前記加工用のレーザ光源によるレーザ光が移動する方向において、前記加工用レーザ光源によるレーザ光の照射位置よりも手前位置の加工対象物の表面に余熱用のレーザ光を照射する余熱用レーザ光源をさらに設け、さらに、
前記制御手段による前記加工用レーザ駆動回路に対する前記非加工用のレーザ光の出射から前記加工用のレーザ光の出射への切換えを、前記余熱用のレーザ光の照射位置と前記加工用のレーザ光の照射位置との距離に対応した、前記加工用のレーザ光源によるレーザ光の照射位置の移動時間だけ遅延する遅延回路と、
前記余熱用レーザ光源を駆動するための駆動信号であって、前記制御手段による前記非加工用のレーザ光の出射から前記加工用のレーザ光の出射への切換え時に過渡的に上昇して、それ以外は所定レベルとなる駆動信号を前記余熱用レーザ光源に出力して、前記駆動信号に応じた強度のレーザ光を前記余熱用レーザ光源に出射させる余熱用レーザ駆動回路とを設けたことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項5】
加工対象物をセットするためのセット部と、
前記セット部を回転させる回転手段と、
加工対象物の表面をレーザ加工するためのレーザ光を出射する加工用レーザ光源、前記出射されたレーザ光を集光する対物レンズ、及び前記対物レンズをレーザ光の光軸方向に駆動するフォーカスアクチュエータを含む加工ヘッドと、
加工対象物の表面からの反射光に基づくフォーカスサーボ信号を前記フォーカスアクチュエータに供給することにより前記フォーカスアクチュエータを駆動制御して、前記レーザ光の焦点位置を加工対象物の表面に保つフォーカスサーボ制御回路と、
加工対象物の表面に対する前記レーザ光の照射位置を移動する移動手段とを備えたレーザ加工装置に適用され、
前記移動手段を制御して前記レーザ光の照射位置をレーザ加工開始位置まで移動させる移動工程と、
加工対象物の表面がレーザ加工されない程度に小さな強度の非加工用のレーザ光を前記加工用レーザ光源から出射させて、加工対象物の表面に非加工用のレーザ光を照射する非加工用レーザ光照射工程と、
前記非加工用レーザ光照射工程の後、前記非加工用のレーザ光の強度よりも大きな強度の加工用のレーザ光を前記加工用レーザ光源から出射させて、加工対象物の表面に加工用のレーザ光を照射する加工用レーザ光照射工程と
を含み、前記セット部にセットされた加工対象物の表面をレーザ加工するレーザ加工方法において、
前記非加工用レーザ光照射工程による加工対象物の表面への前記非加工用のレーザ光の照射時に、前記フォーカスサーボ制御回路によるフォーカスサーボ制御に加えて前記フォーカスアクチュエータをオフセット制御して、前記非加工用のレーザ光の入射時における前記対物レンズの焦点距離から前記加工用のレーザ光の入射時における前記対物レンズの焦点距離への変化分に対応した距離だけ、前記レーザ光の焦点位置を加工対象物の表面からずらすオフセット工程と、
前記加工用レーザ光照射工程による前記非加工用のレーザ光の照射から前記加工用のレーザ光の照射への切換え時に、前記フォーカスアクチュエータに対するオフセット制御を解除して、前記レーザ光の焦点位置を加工対象物の表面に一致させるオフセット解除工程とを含むことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ加工方法において、
前記加工用レーザ照射工程による前記非加工用のレーザ光の照射から前記加工用のレーザ光の照射への切換え時に、前記加工用のレーザ光の強度を過渡的に上昇させて、その後に所定レベルの強度に復帰させるようにしたことを特徴とするレーザ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−255150(P2009−255150A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109729(P2008−109729)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】